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2024年10月28日 公開

プロシーディングス目次(アブストラクト付き) (論文掲載 289 件、○印は発表者)

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7月31日(水)口頭発表セッション
 合同セッション( テルサホール 10:00 ) 4 件
 加速器制御( テルサホール 15:10 ) 4 件
 加速器応用・産業利用( アプローズ 15:10 ) 4 件
 電子加速器( テルサホール 16:40 ) 4 件
 電磁石と電源( アプローズ 16:40 ) 4 件
 
8月1日(木)口頭発表セッション
 ビーム診断・ビーム制御( テルサホール 8:40 ) 4 件
 真空( アプローズ 8:40 ) 4 件
 ビーム診断・ビーム制御/粒子源( テルサホール 10:10 ) 5 件
 ビームダイナミ/レーザー( アプローズ 10:10 ) 5 件
 企画セッション①( テルサホール 15:10 ) 1 件
 受賞講演( テルサホール 16:50 ) 2 件
 
8月2日(金)口頭発表セッション
 加速構造( テルサホール 8:30 ) 4 件
 高周波源・LLRF( アプローズ 8:30 ) 4 件
 企画セッション②( テルサホール 13:00 ) 1 件
 加速構造/ハドロン加速器( テルサホール 14:10 ) 6 件
 光源加速器/加速器土木( アプローズ 14:10 ) 7 件
 
7月31日(水)ポスターセッション(1F大会議室他)
 ポスター①( 1F大会議室 13:00-15:00 ) 92 件
 
8月1日(木)ポスターセッション(1F大会議室他)
 ポスター②( 1F大会議室 13:00-15:00 ) 89 件
 
8月2日(金)ポスターセッション(1F大会議室他)
 ポスター③( 1F大会議室 10:00-12:00 ) 91 件
 
7月31日(水)~8月1日(木)施設技術報告(1F大会議室他)
 ポスター①②( 1F大会議室  ) 18 件
 
8月1日(木)~8月2日(金)施設技術報告(1F大会議室他)
 ポスター②③( 1F大会議室  ) 19 件

合同セッション (7月31日 テルサホール)
10:00-10:30 
WEOP01
p.1
粒子線治療の現状と将来
Current status and future prospective of particle therapy

○岩井 岳夫,想田 光,宮坂 友侑也,柴 宏博,石澤 美優,佐藤 啓,小藤 昌志(山形大学医学部東日本重粒子センター)
○Takeo Iwai, Hikaru Souda, Yuya Miyasaka, Hongbo Chai, Miyu Ishizawa, Hiraku Sato, Masashi Koto (Yamagata Univ)
 
1946年にRobert Wilsonが荷電粒子のブラッグピークによるがん治療、いわゆる粒子線治療を提唱して以来、粒子線治療は徐々に広がりを見せ、現在では世界で100を超える施設が治療を実施している。日本は米国に次いで2番目に施設数が多く、また世界全体の施設の約1/3は日本メーカーが納入しており、この分野において日本の加速器業界が果たした貢献はきわめて大きいと言える。本講演では、粒子線治療が近年どのように発展しているか、またこれからどういう方向に向かおうとしているのかを概説する。 粒子線治療は照射粒子として陽子を使う陽子線治療と、主として炭素を使う重粒子線治療に大別される。ブラッグピークによる線量集中性の良さは陽子線と重粒子線で共通であるが、がん細胞を殺傷する生物学的効果は重粒子線が高い。いずれも治療には水中で30cm程度の飛程を必要とするが、重粒子線の方が粒子エネルギーが高くm/qも大きいため磁気剛性が約3倍大きくなり、その分装置が大型になる。これはコストに直結し、陽子線施設に比べて重粒子線施設が少ない原因の一つとなっている。また、照射ビームの角度を変更するための回転ガントリー装置は陽子線では普及しているが、重粒子線では前述の磁気剛性のため小型化が難しく、世界でも本学を含めまだ4台しか稼働していない。国内では長く先進医療(保険収載するか自由診療にするかを見極める段階の評価医療)の枠組みで粒子線治療施設は治療を続けていたが、良好な臨床成績を積み重ね、2016年以降多くの部位に公的保険が適用されるようになった。山形大学の例では2023年度は患者の約95%は公的保険で治療を実施しており、国内では既に特別ではない、当たり前の治療と言えるところまで普及してきている。粒子線治療を含む放射線治療は、照射の精度を高める方向へ急激な発展を続けている。現在注目されているのはadaptive radiotherapy(適応放射線治療)である。従来のワークフローでは照射の数週間前に撮影したCT画像を頼りに線量分布を決めていたが、照射当日、治療寝台の上で得た画像情報を元にオリジナルの線量分布を修正するonline adaptive radiotherapyがX線治療では既に実用化され、広がりを見せつつある。online adaptive particle therapyの研究開発も進められているが、まだ実現には至っていない。今後機械学習などによりワークフローが高速化されることで、実現に近づくと予測されている。また最近の目立った動きとしては、直立型照射装置の実用化が挙げられる。Leo Cancer Care(英国)によって商品化されたMarieTMシステムは、座位ベースで患者位置を制御・回転させ、治療位置で上下する縦型CTの画像で患者の位置決めを実施するものである。これは海外では近く臨床使用が始まると見られており、国内でも群馬大学が同社と提携して研究を進めると発表された。これを使ってどの部位でも治療できることになれば、陽子線も重粒子線も回転ガントリーが不要になり、小型の陽子線加速器と組み合わせられれば既存のX線治療室に導入できるサイズにまで小型化・低コスト化される。これは粒子線治療のgame changerとなるポテンシャルを秘めており、今後の発展が注目される。この他、超高線量率照射(Flash)や、LET制御などの新しい技術動向について概説する。
 
10:30-11:00 
WEOP02

高次高調波によるアト秒レーザーの進展
Progress on attosecond lasers by high-order harmonic generation
○緑川 克美(理研)
○Katsumi Midorikawa (RIKEN)
 
2023年のノーベル物理学賞は, 原子や分子中の電子の挙動を一瞬で捉えるアト秒パルスを発生する方法を実現したPierre Agostini (Ohio State University) , Anne L’uillier (Lund University), Ferenc Krausz (Max Planck Institute of Quantum Optics )の3博士に授与された. 人間の目では捉えられない超高速の現象を捉えようとする試みは,レーザーの発明により飛躍的な進展を遂げた.レーザーによる超短光パルスの発生は,1964年のHe-Neレーザーでのモード同期発振に端を発し, そのパルス幅は急激に短くなり1987年には6fsという極超パルスが達成された. しかし、その後, 今回の受賞の成果となる高次高調波によるアト秒パルスの発生が報告されるまでの14年間, 人類はフェムト秒の壁を破ることはできなかった. では如何にして1フェムト秒の壁を破りアト秒領域に到達することができたのか, 本講演では、理研におけるアト秒科学研究の成果を含めてその過程をわかり易く紹介する.
 
11:00-11:30 
WEOP03
p.5
ナノテラスにおける蓄積ビームモニターシステムのコミッショニング
Commissioning of the stored beam monitor system in NanoTerasu

○上島 考太,小原 脩平,西森 信行,安積 隆夫,菅 晃一,保坂 勇志(量研),青木 駿尭,芳賀 浩一,伊原 彰,伊藤 優仁,岩下 大器,門脇 聖弥,小林 創,及川 治彦,齋田 涼太,櫻庭 慶佑,高橋 隼也,土山 翼,井場 祐人,金浜 蓮人,高橋 滉希,田中 達輝,西原 秀雄,森谷 佳津貴,吉岡 里紗(量研、NAT),高野 史郎,正木 満博,藤田 貴弘,出羽 英紀,清道 明男,阿部 利徳(高輝度光科学研究センター),前坂 比呂和(理研)
○Kota Ueshima, Shuhei Obara, Nobuyuki Nishimori, Takao Asaka, Koichi Kan, Yuji Hosaka (QST), Toshitaka Aoki, Koichi Haga, Akira Ihara, Katsumasa Ito, Taiki Iwashita, Masaya Kadowaki, Hajime Kobayashi, Haruhiko Oikawa, Ryota Saida, Keisuke Sakuraba, Shunya Takahashi, Tsubasa Tsuchiyama, Yuto Iba, Rento Kanahama, Kouki Takahashi, Tatsuki Tanaka, Hideo Nishihara, Katsuki Moriya, Risa Yoshioka (QST,NAT), Shiro Takano, Mitsuhiro Masaki, Takahiro Fujita, Hideki Dewa, Akio Kiyomichi, Toshinori Abe (JASRI), Hirokazu Maesaka (RIKEN)
 
2023年6月よりナノテラス蓄積リングのビームコミッショニングを開始し、当初予定していたスケジュールより1カ月以上前倒しで、コミッショニングを進めることができた。蓄積リングコミッショニング開始初日にRFパワー投入無しの状態で300ターンの電子ビーム周回を確認でき、すぐにBPM全112台のタイミング調整を行った。RF空洞調整後、すぐに電子ビーム蓄積にも成功し、bunch-by-bunch feedback システムを用いたチューン測定の調整をおこなった。7月にはX線ピンホールカメラによる蓄積電子ビームプロファイルの撮像に成功し、蓄積電子ビーム形状をモニターしながらコミッショニングを進めることができた。8月から24時間のビーム運転を行い、真空焼き出しを行いつつ、蓄積電流の増加をおこなった。蓄積電流が10mAを超えると横方向の不安定性が発生したが、BBFの調整を行い、横方向の不安定性を抑制した。9月からの挿入光源の調整前にBPMのビームベースドアライメントを行い、近傍4極電磁石の磁場中心へのBPMオフセットを求め、蓄積電子ビームの品質を向上させた。2024年4月からはユーザー利用運転を蓄積電流160mAで開始し、非常に安定で高品質なX線ビームを提供している。本講演では蓄積リングのモニター機器のコミッショニング、ユーザー利用運転状況について報告する。
 
11:30-12:00 
WEOP04
p.10
加速器質量分析法を用いた太陽活動研究
Research on solar activity using accelerator mass spectrometry

○宮原 ひろ子(武蔵野美術大学)
○Hiroko Miyahara (Musashino Art University)
 
銀河系内から飛来する銀河宇宙線は、大気との相互作用により炭素14やベリリウム10などの核種を生成する。銀河宇宙線は主に陽子であり、太陽圏に広がる太陽風磁場によって遮蔽を受けるため、大気中での炭素14やベリリウム10などの生成率は太陽活動度のレベルに応じて変化することとなる。太陽活動の観測データは長いものでも黒点の400年程度のデータしかない一方で、太陽活動には数百年~千年のスケールにおよぶ長期変動があるため、樹木年輪に取り込まれる炭素14や氷床コア・堆積物等に残されるベリリウム10は、太陽活動の挙動を理解する上で貴重な代替指標となる。太陽活動の低下は、小氷期と呼ばれる寒冷化をもたらすことが明らかになってきており、そうした観点でも、太陽の物理を理解し、予測を実現することが重要である。また近年、樹木年輪の炭素14の分析から、過去に太陽が大規模なフレア現象を度々起こしてきたことも明らかになってきており、そうしたフレア現象の探索も重要なトピックになってきている。本講演では、加速器質量分析法を用いた太陽活動研究の近況について紹介する。
 
加速器制御 (7月31日 テルサホール)
15:10-15:30 
WEOT01
p.12
SuperKEKB加速器ビームアボートシステムアップグレード
Upgrade of beam abort system at SuperKEKB

○梶 裕志,小玉 恒太,多和田 正文,三増 俊広,宇野 健太,中山 浩幸(高エネルギー加速器研究機構),角野 秀一,北村 和樹(東京都立大学),ウアブシャト ベラ,アヴェルサーノ ミケーレ(名古屋大学),吉原 圭亮(ハワイ大学マノア校)
○Hiroshi Kaji, Kota Kodama, Masafumi Tawada, Toshihiro Mimashi, Kenta Uno, Hiroyuki Nakayama (KEK), Hidekazu Kakuno, Kazuki Kitamura (Tokyo Metropolitan University), Bela Urbschat, Michele Aversano (Nagoya University), Keisuke Yoshihara (University of Hawaii at Manoa)
 
SuperKEKBではビーム電流の数割が1,2周のうちに失われるSudden Beam Loss事象が頻発している。同アクシデント事象はビーム運転を阻害するのみならず、ビームロスに伴う放射線が加速器機器を損傷することもあるため、プロジェクトにとり大きな問題となっている。そのため我々は「ビームアボート(破棄)システムの応答を高速化」し「異常状態に陥り放射線を発生しているビームを直ちにアボートし機器を保護する」ことを目的としたアップグレード計画を実施している。計画に先立ち行った2022年予備実験では、応答速度の速い衝突点アボートセンサー(CLAWS検出器)をビームライン上流にも増設することで、アボート応答を10us高速化可能という結果が得られた。同結果はビームライン上流で早期にビーム異常検出できること、検出場所がビームダンプに近くアボート要求信号の伝達時間が短くなることの2つの効果から得られる。これをうけて2022年から2024年の長期シャットダウン中、衝突点から750m上流の新設コリメータ付近にCLAWS検出器も新設した。2024年運転中に行ったの同検出器のコミッショニングでは既存のビームアボートシステムより5usから50us早くビームアボート可能であることが示され、3月末より運転への実装が実現された。本講演ではアップグレード計画の全容、上述したこれまでの成果とともに今後の展望について報告する。
 
15:30-15:50 
WEOT02
p.18
Multi-objective Bayesian optimization of electron cyclotron resonance ion source
○Andrea De Franco, Tomoya Akagi (QST), Benoit Bolzon (CEA), Fabio Cismondi (F4E), Nicolas Chauvin (CEA), Herve Dzitko (F4E), Tomonobu Itagaki, Keitaro Kondo, Kai Masuda (QST)
 
ECR ion sources require tuning by an expert to achieve best performance. We developed a Multi-Objective Bayesian optimization for the ECR of LIPAc. The free parameters are: RF power, gas flow, position of 2 RF tuners and current of 2 solenoid coils. The machine learning approach demonstrated a fast convergence to a working point where not only the extracted beam current is >130mA, but also the emittance is successfully constrained to <0.25 π mm mrad and the intra-pulse and inter-pulse current fluctuations are <3mA. We present the detailed algorithm, testing methodology, results achieved and encountered challenges posed by the dimensionality of the problem, hysteresis and evolving state of the system.
 
15:50-16:10 
WEOT03
p.22
LIPAcにおけるBACnetベースの二次冷却水監視システムのEPICS統合
EPICS integration of BACnet-based monitoring system for secondary water-cooling in LIPAc

○金子 尚実,小嶋 聖樹,近藤 恵太郎,中山 尚英,坂本 響,杉本 昌義,宇佐美 潤紀(QST),Carin Yann(IFMIF/EVEDA Integrated Project Team)
○Naomi Kaneko, Masaki Kojima, Keitaro Kondo, Takahide Nakayama, Hibiki Sakamoto, Masayoshi Sugimoto, Hiroki Usami (QST), Yann Carin (IFMIF/EVEDA Integrated Project Team)
 
日欧共同事業の一環として開発されているIFMIF原型加速器(LIPAc)の制御システムは、主にEPICSをベースに構築されているが、一部EPICS以外のシステムで作られているものも存在する。その一例である二次冷却水設備は、EPICSと互換性の無い商用ソフトウェアによって監視・制御されており、BACnetと呼ばれる産業用ネットワークプロトコルを用いて、温度、流量等の計測データを扱っている。大電流・大電力加速器であるLIPAcにおいて、冷却水の温度変化などは機器の特性に直接影響を与える可能性があるが、このような事情から同一事象における一次冷却水と二次冷却水の相関を同じEPICSフレームワーク上の時系列で比較し影響を分析することができず、現象の理解や原因究明を行うことが困難だった。この課題を解決するため、ネットワーク上でBACnetのデータパケットを収集・解析し、EPICS環境に取り込む仕組みを実現した。本発表では、その実装方法の詳細について説明する。
 
16:10-16:30 
WEOT04
p.26
SACLAにおけるグリッド電圧波形データを用いたサイラトロンの異常検知ソフトウェアの開発
Development of software to detect anomalies of thyratrons using grid voltage waveform data in SACLA

○佐藤 伸行(中央電子(株)),岩井 瑛人(高輝度光科学研究センター、理研RSC),前坂 比呂和(理研RSC、高輝度光科学研究センター),安留 健嗣(理研RSC),近藤 力(高輝度光科学研究センター、理研RSC),稲垣 隆宏(理研RSC、高輝度光科学研究センター)
○Nobuyuki Sato (CHUO ELECTRONICS CO., LTD.), Eito Iwai (JASRI, RIKEN RSC), Hirokazu Maesaka (RIKEN RSC, JASRI), Kenji Yasutome (RIKEN RSC), Chikara Kondo (JASRI, RIKEN RSC), Takahiro Inagaki (RIKEN RSC, JASRI)
 
SACLAのパルス大電力高周波源の大電力スイッチであるサイラトロンは、寿命が比較的短く個体差が大きい。そのため、製品寿命による劣化や故障の際の交換作業が頻繁に発生する。サイラトロンが劣化するとグリッド電圧波形が変化することが分かっているため、その波形からサイラトロンの劣化の進み具合が推定できないかと考えた。サイラトロンの劣化度を自動で指標化・可視化できれば、ユーザ利用の合間の調整時間に計画的にサイラトロンの交換作業を行うことなどにより、突然の故障によるダウンタイムを低減できる。そこで我々は、これまで蓄積したグリッド電圧波形を利用し、機械学習の手法によりサイラトロンの劣化度を推定することができるか検討を行った。機械学習の出力からはサージ電圧の増加と劣化度に関連性が高いことが示唆された。これはサイラトロンの動作メカニズムからも妥当なものである。この結果を元に、サイラトロンの劣化度を推定するとともに、推定使用時間(運転時間)を併せて出力するソフトウェアを制作した。制作したソフトウェアにより、サイラトロンの交換作業にかかる保守業務を補助し、加速器施設の安定稼働に資することが期待される。今後、このソフトウェアをSACLAの加速器全体に展開していく予定である。本発表では、これらの取り組みに関して、制作したソフトウェア、および、評価結果について報告する。
 
加速器応用・産業利用 (7月31日 アプローズ)
15:10-15:30 
WEOA01
p.32
宇宙開発機器のためのJ-PARCにおける陽子ビーム
Proton beam utilization for space development equipment at J-PARC

○明午 伸一郎,岩元 大樹,山口 雄司(J-PARC/JAEA)
○Shin-ichiro Meigo, Hiroki Iwamoto, Yuji Yamaguchi (J-PARC/JAEA)
 
宇宙開発における衛星搭載機器の開発において、数MeVから数GeVにわたる広いエネルギー領域の陽子利用が必要となるが、400 MeV以上のエネルギー領域で供給が可能な加速器施設は世界的に少なく、国内ではJ-PARCが唯一となる。J-PARCでは様々な施設の利用者に二次粒子を安定に継続する必要があるため、実験装置を加速器の真空槽に設置することは困難となる。この要求に対応するため、J-PARCで建設を進めている「陽子ビーム照射施設」により試験を進める計画としている。本施設ではLINACの400 MeV H-ビームから、レーザー荷電変換器により微弱なビームを取り出し、デグレーダにより利用者が要求するエネルギーの陽子ビームを供給する予定となる。本報ではこの施設の詳細について報告する。 また、宇宙開発での陽子利用は極めて高く、宇宙航空研究開発機構(JAXA)および情報通信研究機構(NICT)では、衛星搭載の宇宙線センサーにおける試験の強い要求があった。しかし、加速器を安定に運転させる必要があるため、真空槽に試験装置を組み込むのは困難となり、さらに試験で必要な微弱なビームを得るのは困難となる。このため、我々はビーム窓の散乱による陽子を利用する方法を開発し、JAXAおよびNICTと共同研究を結びセンサーの試験を開始した。ビーム散乱のデータは、陽子加速器において重要なデータとなるもののデータはほとんど存在しないため、散乱陽子の測定を開始した。
 
15:30-15:50 
WEOA02

次世代超高速電子顕微鏡用のNb3Sn超伝導RF電子銃の開発
Design of Nb3Sn superconducting RF gun for next ultrafast electron microscopy
○楊 金峰(阪大産研),許斐 太郎(Michigan State University/FRIB),井藤 隼人,山田 智宏,梅森 健成,阪井 寛志(高エネルギー加速器研究機構)
○Jinfeng Yang (SANKEN, Osaka U.), Taro Konomi (Michigan State University/FRIB), Hayato Ito, Tomohiro Yamada, Kensei Umemori, Hiroshi Sakai (KEK)
 
ナノメートル領域の原子・電子の動き、構造変化等の高速現象を観察し、それによる物性決定のメカニズムを明らかにして、高性能化するための知見を得ることが極めて重要である。そのために、フェムト秒時間分解能と原子レベルの空間分解能を併せ持つ計測技術が強く求められている。その有望な方法の一つは短パルス電子線を用いた超高速電子顕微鏡である。現在は加速電圧が100~200kVのフォトエミッション直流加速型電子銃を用いて、装置開発が行われている。これらの開発では、加速電場が低く、電子同士が反発する「空間電荷効果」の制約によりフェムト秒と原子スケールを両立した時空間分解能の実現が難しい。このことを打破するため、本研究では、加速電場が高く、4.2Kの小型冷凍機による冷却運転が可能な0.5セルNb3Sn超伝導RF電子銃を開発し、大電流の相対論的フェムト秒短パルス電子ビームを発生する。それを用いて、時間的に50fs、空間的に1Åの分解能を併せ持つ「超高速電子顕微鏡」技術の確立を目指す。本講演会では、Nb3Sn超伝導RF電子銃の設計、熱計算、ビームシミュレーションの結果およびこれを用いた超高速電子顕微鏡の設計について報告する。
 
15:50-16:10 
WEOA03
p.38
XバンドLINACを用いた屋外使用可能な非破壊検査用3.95 MeV小型X線源の開発
Development of 3.95 MeV small X-ray source using X-band LINAC system for field use NDT

○吉田 昌弘,山田 貴典,石渡 淳平,尾崎 健人(金属技研),山本 昌志(オメガソリューションズ),森重 晶,栗原 嵩司,林 太一,長谷川 大祐(金属技研),川副 貴裕,田中 常稔(アトックス)
○Masahiro Yoshida, Takanori Yamada, Junpei Ishiwata, Kento Ozaki (MTC), Masashi Yamamoto (Omega Solutions), Akira Morishige, Takashi Kurihara, Taichi Hayashi, Daisuke Hasegawa (MTC), Takahiro Kawazoe, Tsunetoshi Tanaka (ATOX)
 
高度経済成長期に建設されたトンネルや橋梁などの社会インフラ設備は、その多くが建設からすでに50年以上経過しており、現在、それらを適切に維持管理し有効活用するための検査技術の開発が盛んに行われている。橋梁の点検では、外観の目視検査や打音検査が基本となっており、点検により不具合箇所が確認された場合、詳細調査が実施される。詳細調査において重大な損傷を見逃さず、適切な補修を行う上で、高精度な非破壊検査技術が求められている。また、2013年に道路法が改正され、道路構造物の点検を5年に1回の頻度で実施することが義務化されたこともあり、高精度な非破壊検査技術の実用化が急務となっている。高エネルギーX線を用いた鉄筋コンクリート橋梁に対する非破壊検査技術の開発では、9.3GHz帯のXバンドマグネトロンを用いた3.95MeV小型電子ライナックによる東大と土木研の先行研究により、従来のX線管のエネルギー領域では視覚化が困難であった厚い鉄筋コンクリートの内部観察が可能であることが示された。本発表では、国内に多く存在するPC橋梁の箱桁部分のマンホールを通過できるサイズを基準として装置を小型化し、配線共通化による現場での運用性の向上、移動時に想定される衝撃対策、粉塵・防水対策といった厳しい屋外環境での加速器システムの使用を考慮した3.95MeV小型X線源の実用機開発について報告する。
 
16:10-16:30 
WEOA04
p.44
メタバース加速器博物館による人材育成と広報
Metaverse accelerator museum for education and public relations

○古坂 道弘,広田 克也,池松 克昌,池田 進,福田 将史,設楽 哲夫(高エネ機構),岩下 芳久(京大),山本 昌志(オメガソリューション),城野 哲((株)エー・イー・テー),加美山 隆,平賀 富士夫,長倉 宏樹(北大),矢野 博明,笹 公和,大和 良広,吉田 哲郎(筑波大),O'Rourke Brian E.(産総研),加藤 政博(広島大),林 憲志,清水 康平(分子研),太田 紘志(JASRI),田中 慎一郎(阪大産研)
○Michihiro Furusaka, Katsuya Hirota, Katsumasa Ikematsu, Susumu Ikeda, Masafumi Fukuda, Tetsuo Shidara (KEK), Yoshihisa Iwashita (Kyoto Univ.), Masashi Yamamoto (Omega Solutions, Inc.), Tetsu Jono (AET Inc. ), Takashi Kamiyama, Fujio Hiraga, Hiroki Nagakura (Hokkaido Univ.), Hiroaki Yano, Kimikazu Sasa, Yoshihiro Yamato, Teusuro Yoshida (Univ. Tsukuba), Brian E. O'rourke (AIST), Masahiro Katoh (Hiroshima Univ.), Kenji Hayashi, Shimizu Kohei (IMS), Hiroshi Ota (JASRI), Shin-ichiro Tanaka (SANKEN, Osaka Univ.)
 
メタバースソーシャルネットワーク(VRChat)の中に「メタバース加速器博物館」を制作した。現在は数十の加速器施設を収容可能な「メタバース加速器博物館の玄関ホール」と、そこから入室可能な、実際に存在する「教育加速器(KETA)」およびKEK コンパクトERL棟を模擬した実験室をメタバースの中に再現している。年度内にさらに幾つかの大学あるいは研究所の加速器施設が追加される。これは、実物の加速器だけでは実現が難しい、教育·広報の手段として効果の高い方法である。アバターとして説明する人、説明を受ける人が会話をすることが可能で、実際に加速器の構成部分を指差しながら説明し、バンチャーの中に頭を近づけることでセル構造を見るなどのことが可能である。ボタンを押せば各部の説明が読めて聞ける。もちろん、講師、聴講者がリモートからアバターとして参加することができるメリットも大きい。また、電子がバンチングされ、加速される様子もアニメーションで見ることができる。現在はイメージだけであるが、近い将来、正確なシミュレーションの結果を見えるようにする。この事業は高エネ機構外部連携推進室のメンバーが中心となって、数ヶ所の大学あるいは研究所で加速器施設を持つメンバー、および幾つかの高専のメンバーが主としたチームを作成し、加速器科学国際育成事業の公募事業の一つとして推進されている。
 
電子加速器 (7月31日 テルサホール)
16:40-17:00 
WEOT05
p.49
排水浄化のための5MeV SRF電子リニアックの数値解析
Numerical study of 5 MeV SRF electron linac for wastewater purification

○カバール アンジャリバグワン,柏木 茂,武藤 俊哉,安彦 颯人,日出 富士雄,工藤 滉大,長澤 育郎,南部 健一,柴田 晃太朗,高橋 健,山田 悠樹,濱 広幸(東北大先端量子)
○Anjali Bhagwan Kavar, Shigeru Kashiwagi, Toshiya Muto, Hayato Abiko, Fujio Hinode, Kodai Kudo, Ikuro Nagasawa, Kenichi Nanbu, Kotaro Shibata, Ken Takahashi, Hiroki Yamada, Hiroyuki Hama (RARIS, Tohoku University)
 
Superconducting Radio Frequency (SRF) technology is a proven solution for generating high-power electron beams (EB), suitable for tasks like purifying wastewater from challenging impurities like PFAS. This study elaborates on effectiveness of EB treatment and outlines design considerations for a 1.3 GHz SRF linac operating at 5 MeV with an average beam current of 10 mA. Given the need for high beam current, achieving a high bunch repetition rate is paramount. The primary focus of this paper is on the design of an injector system that accepts the time-width of the bunch produced by the electron gun as long as possible and compresses it to a bunch length suitable for smooth acceleration to 5 MeV in a 1.3 GHz linac. Numerical analyses for the accelerator system, ensuring that the beam reaches 5 MeV with the desired characteristics, lead to a compact beamline structure. This structure includes a 100 kV thermionic gridded gun, a 650 MHz buncher cavity, a 1.3 GHz 3-cell low beta booster cavity, and three 2-cell 1.3 GHz accelerator cavities, along with necessary focusing solenoids, all fitting within ~4 meters. The results of the numerical studies will be presented at this conference.
 
17:00-17:20 
WEOT06
p.53
t-ACTS電子銃の光陰極化に向けたレーザーシステムの構築
Development of a fiber laser system for a photo-injector of t-ACTS facility, Tohoku University

○工藤 滉大,柏木 茂,日出 富士雄,武藤 俊哉,南部 健一,長澤 育郎,高橋 健,柴田 晃太朗,山田 悠樹,Kavar Anjali,安彦 颯人,濱 広幸(東北大先端量子)
○Kodai Kudo, Shigeru Kashiwagi, Fujio Hinode, Toshiya Muto, Kenichi Nanbu, Ikuro Nagasawa, Ken Takahashi, Kotaro Shibata, Hiroki Yamada, Anjali Kavar, Hayato Abiko, Hiroyuki Hama (RARIS)
 
東北大学先端量子ビーム科学研究センター(旧電子光理学研究センター)の試験加速器t-ACTS(test Accelerator as Coherent THz Source)ではCeB6を熱陰極としたRF電子銃を採用しているが,コヒーレント放射の出力増強や共振器型FELの応用研究などを見据えて1バンチあたりの電荷量を増加させるため,及び光共振器との同期を得るため,CeB6あるいはCuを光陰極として利用することを計画している。現在のt-ACTSでは1バンチあたり5pCが得られており,50pCまでの増加を目標としているが,熱陰極で電荷量を増加させようとするとバックボンバードメントが大きくなるため,電子銃を安定に運転することが困難になる。光陰極ではレーザー照射のタイミングによって光電子放出のタイミングをRFの加速位相に限定できるため,バックボンバードメントを抑制して電荷量を増加させることができる。光陰極化にあたり励起レーザーをRF周波数(2856MHz)で発振させることは難しいため,マクロパルスあたりのバンチ数は減少する。しかし,コヒーレント放射の強度は1バンチあたりの電荷量の2乗に比例するので,1バンチあたりの電荷量を増加させることは非常に有効である。レーザーシステムはYbファイバーレーザー発振器(発振波長1047nm),マルチパス増幅器,4倍高調波発生(262nm)で構成する。現在は発振器の組み立てが完了し,RFとの同期作業に着手している。本発表ではレーザーシステム構築の進捗状況について報告する。
 
17:20-17:40 
WEOT07
p.57
NanoTerasuにおける線型加速器のビーム安定性の評価
Beam stability evaluation of 3GeV-linear accelerator in NanoTerasu

○菅 晃一,安積 隆夫,上島 考太,小原 脩平,保坂 勇志,西森 信行(量研),青木 駿尭(株式会社NAT)
○Koichi Kan, Takao Asaka, Kota Ueshima, Shuhei Obara, Yuji Hosaka, Nobuyuki Nishimori (QST), Toshitaka Aoki (NAT Corporation)
 
NanoTerasu入射器である3 GeV線型加速器は2023年1月に完成し、同年5月には目標ビーム性能に到達した。その後、蓄積リングへの安定供給による蓄積リング、ならびにビームラインのコミッショニングを経て、当初の計画通り2024年4月からユーザー運転が開始されている。蓄積リングでは、MBAラティスによる低エミッタンス化に伴う入射アクセプタンスの狭小化のため、入射器には低エミッタンスの電子ビーム(エネルギー安定度 <0.2%、エミッタンス <2 nm rad)の安定供給が求められている。加速器の設計段階から配慮された様々な工夫により、コミッショニング以降、低エミッタンスビームの安定入射が実現している。 本発表では、40 MeV入射部における加速空胴の電圧・位相調整、エネルギー3 GeVまでの加速、現在得られているビーム性能(電荷量 0.3 nC、エネルギー安定度 <0.06%、エミッタンス <2 nm rad)の詳細を示し、線型加速器のビーム性能と安定性について報告する。
 
17:40-18:00 
WEOT08

小型XUV-FELを目指したLWFAの開発
Development of LWFA towards a table-top XUV-FEL
○金 展,GU Yanjun,LEI Zhenzhe,佐藤 新悟(阪大産研),黄 開,中新 信彦,大東 出,神門 正城(量子科学技術研究開発機構関西研),細貝 知直(阪大産研)
○Zhan Jin, Yanjun Gu, Zhenzhe Lei, Shingo Sato (SANKEN, Osaka Univ.), Kai Huang, Nobuhiko Nakanii, Izuru Daito, Masaki Kando (KPSI, QST), Tomonao Hosokai (SANKEN, Osaka Univ.)
 
In order to develop a stable laser wakefield acceleration (LWFA)-based accelerator and demonstrate FEL generation, the unique LWFA platform was constructed in the RIKEN SPring-8 center. Systematic experiments have been conducted, financially supported by ImPACT (2013-2018) and JST MIRAI (2018-) programs. It was found that the undulator radiation was unstable, due to the poor electron pointing stability and large energy fluctuations. In order to solve the above problems, the accelerated electron beam quality has been improved by developing the shock injection scheme enabling a precise injection control and a stable plasma condition. This development has dramatically improved the reproducibility and stability of the LWFA electron beam. The preliminary proof-of-concept experiment has recently demonstrated the clear amplification of the undulator radiation and the possibility of LWFA based FEL in XUV range. The talk will be presenting the outline of the LWFA platform, the setup of a proof-of-concept experiment focusing on key improvements and obtained results.
 
電磁石と電源 (7月31日 アプローズ)
16:40-17:00 
WEOA05
p.61
SiC-MOSFETを用いたキッカー電磁石用LTDパルス電源
LTD pulse power supply for kicker magnets using SiC-MOSFETs

○高柳 智弘(J-PARC/JAEA),小野 礼人(KEK),堀野 光喜,杉田 萌,植野 智晶,不破 康裕,篠崎 信一(J-PARC/JAEA),徳地 明,生駒 直弥,亀崎 広明,中田 恭輔,趙 鉄陽(PPJ)
○Tomohiro Takayanagi (J-PARC/JAEA), Ayato Ono (KEK), Koki Horino, Moe Sugita, Tomoaki Ueno, Yasuhiro Fuwa, Shinichi Shinozaki (J-PARC/JAEA), Akira Tokuchi, Naoya Ikoma, Hiroaki Kamezaki, Kyosuke Nakata, Tieyang Zhao (PPJ)
 
加速器では、指定したビームバンチのみに作用する短パルス磁場でビーム軌道を偏向するキッカー電磁石が用いられている。キッカー電磁石には、高速励磁特性と高繰り返し特性に優れたパルス電源が必要である。J-PARC/JAEAでは、次世代パワー半導体の一つであるSiC-MOSFETを用いて、従来のサイラトロンスイッチ電源に代わる半導体スイッチ電源の開発に取り組んできた。そして、LTD(Linear Transformer Driver)回路を用いて、既設電源の置き換えが可能な定格出力40kV/2kA、パルス幅1.2us、繰り返し25Hzを可能とする半導体スイッチ電源を開発した。パルス波形の再現性とフラットトップ平坦度はそれぞれ要求仕様の±0.2%以下を満足し、さらに、制御基板を恒温槽に入れ、クロック1GHzのFPGAを用いて±1ns以下のパルスジッターを実現した。また、8時間以上の安定した連続運転も実現した。発表では、開発したSiC-MOSFET のLTDパルス電源回路の仕様、高電圧印加部のコロナフリー構造、及び、冷却ファン用エアダクト効果について報告する。
 
17:00-17:20 
WEOA06
p.66
g-2/EDM 精密計測用ミューオン蓄積磁場一様化の受動シミング機構の設計
Design of passive shimming structures for precision magnetic field shimming on muon storage volume in the superconducting muon storage magnet for g-2/EDM measurements

○阿部 充志,佐々木 憲一,三部 勉,小川 真治(高エネ研),飯沼 裕美(茨城大学)
○Mitsushi Abe, Ken-ichi Sasaki, Tsutomu Mibe, Shinji Ogawa (KEK), Hiromi Iinuma (Ibaraki Univ.)
 
J-PARCで準備を進めているミューオンの磁気・電気モーメント(g-2/EDM)高精度測定に用いる磁石はミューオンを周回・蓄積するシリンダー状の領域(3cm半径幅、10cm高で直径66.6cm)に、高磁場(3.0T)で超高一様磁場(振幅±0.1ppm)を持つ。螺旋入射したmuonを赤道面付近の周回軌道を安定に保つ弱収束磁場(WFF: Weak Focus Field)分布を加えても、理想磁場から±0.1ppm以内の残差とする必要がある。しかし、設置直後の磁場(素磁場)は、組立・設置誤差などで、最大1000ppm程度の誤差磁場を持つ。そこで、実験に先立ち磁場分布を精密に調整(シミング)する。シミングには、小コイル群を使う能動と強磁性体の磁化シム片を使う受動シミングを用意する。前者は実験途中の緩やかな誤差磁場分布の調整に使うが、後者では素磁場から目標の一様磁場まで調整する。今回、MRI磁石の方法を参考に、受動シミング用のシミング手法(計測磁場からシム片配置を計算するシミング計算とシム片配置位置)を検討した。シミング計算は計測磁場からmuon蓄積領域の磁場分布再構成する部分と、その磁場分布を一様化するためのシム片配置計算部から構成される。さらに、このシミング計算を、仮想的な誤差磁場を含む磁場に適用に、シム片配置(周回方向・高さ方向の位置・個数)を検討した。これらの検討結果を報告する。
 
17:20-17:40 
WEOA07
p.72
シンクロトロン用蛇腹構造ビームダクトの渦電流抑制効果の数値的評価
Numerical evaluation of eddy current suppression effect of bellows-structured beam duct for synchrotron

川口 秀樹(室蘭工大),○加藤 政博(HiSOR, UVSOR)
Hideki Kawaguchi (Muroran IT), ○Masahiro Katoh (HiSOR, UVSOR)
 
放射光源電子蓄積リングなどの入射器として用いられることの多いブースターシンクロトロンは、小型直線加速器などの前段入射器から供給される低エネルギー電子ビームを1秒前後の短い時間で加速し蓄積リングへ送り出す。加速時の偏向電磁石内の磁場強度の急激な増加に伴いビームダクト表面に渦電流が誘導され、これにより二次的に発生する磁場が電子ビームに許容できない影響を与える可能性がある。放射光源UVSORのブースターシンクロトロンはおよそ40年前に建設されたものであるが、渦電流の影響を低減するために蛇腹構造のビームダクトが採用されている。しかし、このような構造のビームダクトによる渦電流抑制効果はこれまで定量的に評価されてこなかった。本研究では、将来のブースターシンクロトロンの増強や更新に向けて、電流ベクトルポテンシャル法(T法)に基づく3次元渦電流解析を用いて、蛇腹構造の渦電流抑制効果を系統的・定量的に評価する。
 
17:40-18:00 
WEOA08
p.76
機械的曲げを持つNb3Al極細素線超伝導ケーブルの超伝導特性の研究
Studies of bent ultra-fine strands Nb3Al cables on the superconducting performance

○植木 竜一,大内 徳人(KEK),菊池 章弘(NIMS),山本 優(JSA),有本 靖,青木 和之(KEK)
○Ryuichi Ueki, Norihito Ohuchi (KEK), Akihiro Kikuchi (NIMS), Masaru Yamamoto (JSA), Yasushi Arimoto, Kazuyuki Aoki (KEK)
 
SuperKEKB加速器は、7GeVの電子と4GeVの陽電子を衝突させる非対称エネルギー電子陽電子衝突型加速器である。衝突点における垂直ビームサイズ数十ナノメートルを達成するため、衝突点の両サイドには強力な超伝導四極電磁石が配置されている。衝突点近傍で発生する色収差を補正するため、衝突エリアの直線部に常伝導六極電磁石が16台設置されている。色収差調整の高精度化を行うため、3種類の補正電磁石を持った超伝導六極電磁石システムの開発を進めている。冷却システムの動作温度を考慮し、補正磁石のコイルに使用する超伝導線材としてA15化合物超伝導体であるNb3Alを検討しており、Nb3Alケーブルを用いたreact and winding法を用いたコイルの開発を行っている。今回、素線径が50umのストランド線49本で構成されたNb3Al超細素線ストランド超伝導ケーブルを開発し、曲げ半径、温度、外部磁場を変化させたときの臨界電流の測定を行った。本論文では、熱処理後の機械的な曲げたNb3Alケーブルの臨界電流の温度および外部磁場依存性について報告する。
 
ビーム診断・ビーム制御 (8月1日 テルサホール)
8:40-9:00 
THOT01
p.81
フィードバックによるSACLA加速器運転の安定化
Stabilization of SACLA accelerator operation by feedback

○家納 寛,藤本 賢治(スプリングエイトサービス株式会社 ),田中 均,原 徹(理化学研究所放射光科学研究センター)
○Yutaka Kano, Kenji Fujimoto (SES), Hitoshi Tanaka, Toru Hara (RIKEN SPring-8 Center)
 
SACLAでは電子ビームエネルギーをバンチ毎に制御し、XFEL運転を行いながら同時にSPring-8へトップアップビーム入射を行っている。ユーザー実験施設であるSACLAでは、ビーム入射を行いながら2本のXFELビームラインへ安定なレーザーを供給することが非常に重要である。しかしXFEL 利 用の普及と高度化に連れ、ユーザーからの要求はレーザー強度や安定性だけでなく、短パルス、空間プロファイル、二波長発振など多種多様になった為、レーザー発振が環境や加速器パラメータの変化に敏感になり、様々なモニタを見ながら運転員が加速器を手動で調整する従来の方法では、レーザー発振状態の安定維持が難しくなった。長時間同じレーザー発振状態を維持する為、どのモニタを使ってどのパラメータにフィードバックをかければよいか、日々の運転状態と各モニタを注意深く解析した結果、電子銃下流の丸穴コリメータを通過する電子ビームの電荷量変化がレーザー発振状態に影響を与えている事がわかった。磁気レンズを使用して電荷量を一定に保つことで、3段のバンチ圧縮器のCSRモニタが正しくバンチ長を評価できる様になり、上流から個別にフィードバックできる様になった。また、CSRモニタの出力をRFの位相フィードバックの入力として利用することも可能となった。本発表ではこれらのフィードバックによるSACLA加速器運転の安定化について報告する。
 
9:00-9:20 
THOT02
p.85
深層生成モデルのマウンテンプロット画像への適用
Applying a deep generative model to mountain plot images

○野村 昌弘,島田 太平,田村 文彦,沖田 英史,宮越 亮輔(原子力機構),清矢 紀世美,吉井 正人,大森 千広,原 圭吾,長谷川 豪志,杉山 泰之(高エネ研)
○Masahiro Nomura, Taihei Shimada, Fumihiko Tamura, Hidefumi Okita, Ryosuke Miyakoshi (JAEA), Kiyomi Seiya, Masahito Yoshii, Chihiro Ohmori, Keigo Hara, Katsushi Hasegawa, Yasuyuki Sugiyama (KEK)
 
J-PARC RCSでは、調整時等に必要なLinacからの入射ビームに関する情報をマウンテンプロットと呼ばれる画像とすることにより、入射ビームの運動量や入射タイミングのオフセットが視覚的に分かる様にしている。最近話題となっている深層生成モデルの一つにCVAE(Conditional Variational Auto Encoder) がある。CVAEでは、多くの手書き数字を学習することにより、筆跡はそのままで別の数字を生成することができている。今回このCVAEの特性を活かして、測定したマウンテンプロットの画像から、運動量広がりや時間幅等の条件はそのままで、入射ターン数だけを30ターンから1ターンに変えた新たな画像を生成することにより、入射タイミングのオフセット等に加えて、運動量広がりや時間幅の情報も視覚的に分かる様にした。発表では、使用したCVAEと画像生成等について述べる。
 
9:20-9:40 
THOT03
p.89
理研RIBFにおける静電誘導型ピックアップによるビーム電流測定への応用
Application to beam current measurement using electrostatic pickups at RIBF

○小山 亮(住重加速器サービス),渡邉 環(理研仁科センター),鴨志田 敦史(日本ナショナルインスツルメンツ),羽場 宏光(理研仁科センター)
○Ryo Koyama (SHI Accelerator Service Ltd.), Tamaki Watanabe (RIKEN Nishina Center), Atsushi Kamoshida (National Instruments Japan Corp.), Hiromitsu Haba (RIKEN Nishina Center)
 
理研RIBFにおいてはRI生成実験や超重元素合成実験など照射している重イオンのエネルギーが重要となるいくつかの実験において,静電誘導型ピックアップ(位相プローブ:PPまたはビームエネルギー位置モニター:BEPM)で非破壊に検出した信号を元にビームエネルギーを算出し,加速器のチューニングや監視に使用している.特にRIを定量的に製造するために、ビーム電流もリアルタイムに正確に測定することが求められている.そこで,静電誘導型ピックアップの出力がビームの縦方向の電荷分布を微分した信号であることに着目し,この信号を積分し更に一周期分の面積を計算する:即ち二回積分することでビーム電流の情報も得られることがわかり,エネルギーと同時に測定を行なっている.信号処理にはNational Instruments社のPXIシステムを採用しており,その後の演算やUIにはLabVIEWを用いている.本稿ではこの静電誘導型ピックアップを利用した非破壊ビーム電流測定の開発と運用状況について報告する.
 
9:40-10:00 
THOT04
p.94
突発ビームロス事象解明のための新型バンチ振動レコーダーの開発
Development of a new bunch oscillation recorder for disentangling of sudden beam loss events

○能丸 理玖(東大理),三塚 岳(高エ研),Larry Ruckman(SLAC)
○Riku Nomaru (UTokyo), Gaku Mitsuka (KEK), Larry Ruckman (SLAC)
 
電子と陽電子を衝突させるSuperKEKB/Belle II実験では今後ルミノシティを大幅に向上させる計画であるが、Sudden Beam Lossという突発現象がその大きな障害となっている。これは数十マイクロ秒の間に蓄積ビームが突然ロスし、ビームアボートに繋がってしまうという現象で、未だ原因や発生箇所が特定されていない。Sudden Beam Loss現象を測定するためにAMD/Xilinx社のRadio Frequency System on Chip (RFSoC)を用いてバンチ振動レコーダーを新開発した。これは、ビームがアボートされる直前のバンチごとの位置情報を記録するものであり、Sudden Beam Loss現象の詳細な解析を可能にする。SLACと共同開発した回路や、実際のビームアボートを測定した結果などについて報告する。
 
真空 (8月1日 アプローズ)
8:40-9:00 
THOA01

放射光源加速器の真空のための高機能コーティング膜の開発
Development of high performance coating films for vacuum of synchrotron radiation accelerators
○金 秀光,谷本 育律,内山 隆司,本田 融(高エネルギー加速器研究機構)
○Xiuguang Jin, Yasunori Tanimoto, Takashi Uchiyama, Tohru Honda (High Energy Accelerator Research Organization)
 
非蒸発ゲッター(NEG)コーティングは、NEG材をチェンバーの内壁にコーティングして、従来のガス源である内壁をポンプに変える技術である。CERNの開発したTiZrV合金は比較的低温で再活性化でき、また低い光刺激脱離(PSD)と電子刺激脱離を有することから、多くの加速器のチェンバーに利用されている。 NEGコーティングには2つの改善すべき課題がある。1つは寿命問題である。NEGは大気開放中に大量の酸素と水分を吸収する。そのため、大気開放を繰り返すと表面が酸素リッチになり、排気性能が低下する。もう一つは抵抗率である。TiZrV膜の抵抗率はCuのそれより2桁も大きく、低エミッタンスのリングでは電子ビームが不安定になる原因である。 我々は、Pdの酸素と水分とは反応しないが、水素とCOは吸着する特性に注目し、Pd/TiZrV膜(Pd表面層を導入したTiZrV)を開発した。Pd/TiZrV膜の排気性能は大気開放の影響を受けないことと、水素の排気速度を向上させることを見つけた。また、Pd/TiZrV膜のPSDはTiZrV膜のそれよりさらに低いことも世界初で発見した。続いて、密なPd膜を開発し、PSDがTiZrV膜より低く、また抵抗率はTiZrVより1桁も低いことも確認した。これらのコーティング膜はPF-HLSへの応用が期待される。
 
9:00-9:20 
THOA02
p.99
J-PARC 3GeVシンクロトロン真空システムの維持管理
Sustainment of vacuum system in J-PARC 3GeV rapid cycling synchrotron

○山田 逸平,神谷 潤一郎(原子力機構/J-PARC)
○Ippei Yamada, Junichiro Kamiya (JAEA/J-PARC)
 
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)は1 MWの大強度陽子ビームを出力する加速器であり,大電流かつ25 Hzの速い繰り返しにより大強度を実現している.大電流なビームでも安定に制御するためにペイント入射手法によりビーム径を太くしているため,ビームパイプは大口径である.加速器の安定運転のためには,このような大容積な系でも超高真空に維持する必要がある.また,速い繰り返しの磁場中では渦電流により発熱や誤差磁場が生じるため,金属パイプが使用できない.このような真空システムへの要求に対し,輸送式ポンプであるターボ分子ポンプを放射線対策や長尺化することで主排気装置として使用したり,アルミナセラミック製の大口径ビームダクトを開発することにより,安定な1 MW運転に貢献してきた.しかし,J-PARC RCSは建設から15年以上が経過し,装置製作用機器の老朽化や製品の設計変更等により,建設時の製作手法・製作会社による安定な機器供給が困難となっている.安定な加速器運転に支障をきたさないために,現在,セラミックスダクトや真空ベローズ等の形状および製作手法の再検討を進めている.本発表では,今後のJ-PARC RCS真空システムの維持管理のための真空機器製作に関する再検討に関して報告する.
 
9:20-9:40 
THOA03

A-FNS加速器HEBTの真空特性評価に関する実験的研究
Experimental study of vacuum characteristics estimation for HEBT in A-FNS accelerator
○蛯沢 貴,佐藤 聡,小柳津 誠(量研),林崎 規託(量研、東工大),池田 翔太(東工大)
○Takashi Ebisawa, Satoshi Sato, Makoto Oyaizu (QST), Noriyosu Hayashizaki (QST, Tokyo Tech), Shota Ikeda (Tokyo Tech)
 
核融合中性子源A-FNS加速器の高エネルギービーム輸送系(HEBT: High Energy Beam Transport)と自由表面液体リチウムターゲットの設計課題の一つとして、加速器系とターゲット系の両者間で2桁以上異なる差圧を維持する真空設計要件を満たす必要があり、シミュレーションにより要求を満たす設計について実現可能な見通しを得た。本研究では実験的検証により、A-FNS加速器HEBTの真空設計に必要な真空特性に関する知見を得ることを目的に、実機の約1/10スケールであるHEBTを模擬する差動排気体系と液体リチウムループシステムとを組み合わせ、液体リチウム流動下での真空特性を評価する実験体系を設計し、実験体系を組立て、実験を行った。液体リチウムループシステムを10-2Pa台、HEBTを模擬する配管側を10-4Pa台に差動排気しながら、安定な液体リチウム流動を実証した。さらに、残留ガスモニタ等を組み合わせ、加速器側への流入が想定されるガス種の計測を行った。本発表では、実験結果の詳細について報告する。
 
9:40-10:00 
THOA04
p.104
SuperKEKB 用 非線形コリメータ の最初の試験結果の報告
Report on the results of the first experiments on a nonlinear collimator for SuperKEKB

○照井 真司(高エネ研),ブロッジ ジャコモ(ローマサピエンツァ大学),船越 義裕,飯田 直子,石橋 拓弥,小磯 晴代(高エネ研),リュウ チングアン(ハワイ大学),森田 昭夫,ヤオ ムーリー,中村 衆(高エネ研),ナトチー アンドリー(ビーエヌエル),宇野 健太(高エネ研),生出 勝宣(ジュネーブ大学),大西 幸喜,杉本 寛(高エネ研)
○Shinji Terui (KEK), Giacomo Broggi (Sapienza University of Rome), Yoshihiro Funakoshi, Naoko Iida, Takuya Ishibashi, Haruyo Koiso (KEK), Qingyuan Liu (University of Hawaii), Akio Morita, Mulee Yao, Shu Nakamura (KEK), Andrii Natochii (BNL), Kenta Uno (KEK), Katsunobu Oide (University of Geneva), Yukiyoshi Ohnishi, Hiroshi Sugimoto (KEK)
 
SuperKEKBは、より高いルミノシティに到達するために、ビーム最終集束用超伝導マグネットを用いて、より衝突点での垂直方向ビームサイズを絞っていき、より高いビーム電流を目指していく必要がある。その際に、問題になる1つが素粒子検出器でのビームバックグラウンドノイズの増加である。ビームバックグラウンドを減らすために、コリメータを用いているが、コリメータとビームの距離を近づけすぎると、インピーダンスの影響でビームが不安定になる。SuperKEKBでは、素粒子検出器のビームバックグラウンドノイズの低減と、ビームインピーダンスの低減を両立させるために、スキュー6極を用いた非線形コリメータ( nonlinear collimator(NLC))の導入を決定した。2024年の2月からの運転では、NLCを用いたビームスタディを行ってきた。本学会では、インピーダンス測定、ビームバックグラウンドリダクションの測定、スキュー6極有り無しでのビームライフタイムの測定等の結果について報告する。
 
ビーム診断・ビーム制御/粒子源 (8月1日 テルサホール)
10:10-10:30 
THOT05
p.110
ミュオン選別可能な高感度ビーム位置モニター開発
Development of a high-sensitivity beam position monitor capable of muon identification

○宮原 房史,大谷 将士,三部 勉(高エネ研)
○Fusashi Miyahara, Masahi Otani, Tsutomu Mibe (KEK)
 
近年、次世代の衝突型加速器やミュオンの異常磁気能率測定を用いた標準模型の検証のためミュオン加速が注目され、ミュオン加速器が新しい物理を切り開く道具として注目されている。J-PARC muon g-2/EDM実験ではエネルギー212 MeVのミュオン線形加速器の開発、建設が進んでおり、現在低速部の加速試験を行っている。エネルギー40 MeV以降の加速はディスクロード型のS-band進行波加速管を用いる。コミッショニング初期段階ではパルス当たりのミュオンが数個レベルと非常に少ないことが予想され、さらに加速管から放出される暗電流がバックグラウンドとして混入してくる。このためビームと並走する壁電流や空洞に誘起される電磁場を測定して位置を求める従来の方法ではミュオンビームの位置を評価することが出来ない。そこで暗電流に紛れた極低電荷量のミュオンビームを選別して位置測定を行うためにチェレンコフ放射を用いたビーム位置モニターを開発している。チェレンコフ光の媒質はエネルギーに応じて耐放射線ガラスやシリカエアロゲルを検討している。チェレンコフ光は特殊なミラーを経由して平行光となり、レンズにより検出器に集光される。一方、電子から放出されるチェレンコフ光は検出器まで届かない。光学設計解析ソフトウェアを用いたシミュレーションでは検出した光の分布の重心からビーム位置を再現出来ることを確認した。この新しい位置モニターの設計と性能、開発を報告する。
 
10:30-10:50 
THOT06
p.114
高精度ペッパーポット型エミッタンスモニターの開発
Development of high-accuracy pepper pot emittance monitor

○森田 泰之,長友 傑(理研仁科センター),中島 悠太(阪大IDS)
○Yasuyuki Morita, Takashi Nagatomo (RNC), Yuta Nakashima (IDS)
 
理研仁科センター(RNC)では、ペッパーポット型エミッタンスモニター(PPEM)を使ってLow Energy Beam Transportにてエミッタンス測定を行っている。PPEMの大きなメリットとして、短時間での測定が可能であり、x,x’,y,y’の4次元情報を一度に得られる点があげられる。一方でペッパーポットマスク(PPM)の穴とスクリーン上の像のマッチングが困難であり、測定精度には大きな課題が残っている。一般にPPEMでは、PPMとスクリーン間の距離が小さいほどエミッタンスを過大評価してしまい、かつ測定精度も低下する。しかし距離が大きくなるとPPM上の穴とスクリーン上の像とのマッチングが困難になり、過剰に距離を大きくすると正確な測定ができない。この課題を解決するため、RNCではPPMとスクリーンの距離を可変にすることで正確な測定が可能な範囲で距離を最大化する工夫をしてきた。今回、この距離可変型のPPEMについて、新たにOptical Flowを用いた解析手法の開発を行った。Optical Flowを用いることで、PPMとスクリーン間の距離を変化させた際のスクリーン上の像の変化を追跡することが可能となった。これにより従来の解析手法よりも距離を大きくできるようになり、測定精度の向上を実現した。本発表ではOptical Flowを用いた解析手法の概要と従来の解析手法との比較、RNCでの運用状況について報告を行う。
 
10:50-11:10 
THOT07

広帯域高周波アンプ型パルサーと高インピーダンスビームチョッパーを用いたマルチバンチ低エミッタンス電子ビームの生成
Generation of a low-emittance electron beam with multi-bunch structure using a wide-band radio-frequency amplifier pulser and a high-impedance beam chopper
○渡川 和晃,前坂 比呂和,Goryashko Vitaliy,田中 均(理研),前平 晃太郎,竹村 育浩,林田 寿和(スプリングエイトサービス株式会社)
○Kazuaki Togawa, Hirokazu Maesaka, Vitaliy Goryashko, Hitoshi Tanaka (RIKEN), Koutarou Maehira, Yasuhiro Takemura, Toshikazu Hayashida (SPring-8 Service Co., Ltd.)
 
At the SPring-8 campus, an R&D program on an advanced electron injector for the X-ray free-electron laser (XFEL) facility SACLA has started. The electron injector comprises a pulsed high-voltage DC gun and a nanosecond chopper to extract a short beam for SACLA operation. Recently, a new beam chopper system has been developed. It consists of a wide-band radio-frequency amplifier pulser and a high-impedance stripline chamber, and aims at enhancing the stability and flexibility of XFEL operation. Taking the advantage of arbitrary wave amplification, the generation of a low-emittance electron beam with multi-bunch structure has been successfully demonstrated at the gun test stand. This development marks a significant milestone, paving the way for new modes of SACLA operation, future SACLA upgrades for high-repetition-rate operation, and flexible time structures of XFEL radiation pulses for user experiments.
 
11:10-11:30 
THOT08

イオン注入用レーザーイオン源の開発:レーザープラズマの磁場集束
Development of laser ion source for ion implantation : laser-plasma focusing by magnetic field
○柏木 啓次,山田 圭介,細谷 青児(量研高崎)
○Kashiwagi Hirotsugu, Yamada Keisuke, Hosoya Seiji (QST Takasaki)
 
レーザーイオン源は、真空チェンバー内の固体試料にパルスレーザーを集光照射することで生成するプラズマからイオンを電場で引き出してビームとして利用するイオン源である。多種の固体試料を用いることで、多核種のイオンビームを迅速に切り替えて生成可できる。この特長を生かし、我々は多様なイオン種が必要とされるイオン注入装置用のレーザーイオン源を開発している。 レーザーイオン源で発生したプラズマは広い角度分布をもって3次元的に拡散し、引出電極孔付近に到達したプラズマのイオンのみが電場によってビームとして引き出される。そのため、発生したイオンのごく一部のみがビームとして利用可能であり、大部分はイオン源内で損失する。そこで、ビーム引出領域に到達するイオンの量を増加させてビームの大強度化を行うため、プラズマの拡散を抑制するためのソレノイド電磁石及び磁場中でのプラズマのイオン電流を測定する装置を開発した。発表では本装置を用いたプラズマ集束実験について報告する。
 
11:30-11:50 
THOT09

ILC陽電子生成標的の開発
Development of ILC positron production target
○森川 祐,榎本 嘉範,福田 将史,佐藤 幹,早野 仁司(KEK)
○Yu Morikawa, Yoshinori Enomoto, Masafumi Fukuda, Motoki Sato, Hitoshi Hayano (KEK)
 
International Linear Collider(ILC)における陽電子標的の設計、模型製作、試験結果について報告する。
 
ビームダイナミ/レーザー (8月1日 アプローズ)
10:10-10:30 
THOA05
p.118
J-PARC 3GeV シンクロトロンの更なる大強度化に向けたビーム損失低減の研究
Study on the mitigation of the beam loss for further beam power ramp-up in J-PARC RCS

○小島 邦洸,原田 寛之,地村 幹,サハ プラナブ(原子力機構, J-PARC センター)
○Kunihiro Kojima, Hiroyuki Harada, Motoki Chimura, Pranab Saha (JAEA/J-PARC)
 
J-PARC 3 GeVシンクロトロンでは、設計出力1 MW を超える大強度化に向け研究開発を進めている。このような大強度陽子加速器において出力を制限する最大の要因はビーム損失に起因する装置の放射化である。一般的にリング加速器では、粒子は収束電磁石などによる横方向のベータトロン振動数が共鳴条件に抵触すると振幅が大きくなり、ビーム損失に繋がる。そのため、その条件を避けるように収束力を設定する。しかし、強度が増大するにつれてビームの密度は高くなり、粒子間のクーロン斥力も増大、しいては収束力が低下に直結し、各粒子が設定と異なる振動数となり共鳴条件に抵触する可能性がある。そのため、大強度陽子加速器ではビーム損失に繋がる共鳴の同定及び安定領域の確保が非常に重要である。本研究の目的は、3GeVシンクロトロンの更なる大強度に向けた安定領域の拡充とビーム損失低減である。まずクーロン斥力の影響を排除する低強度ビームを用いて、ビーム損失に影響する共鳴条件が2次の非構造共鳴であることを同定した。次に、シミュレーションと実験の双方からこの共鳴の補正を追求し、ビーム損失の大幅な低減を実現した。さらに、大強度ビームにて実験を行い、この共鳴付近でのビーム損失が低減したことを確認した。本発表では、低強度時の共鳴補正手法と実験結果に加えて、大強度時のビーム損失低減などに関して報告する。
 
10:30-10:50 
THOA06

マイクロバンチの空間コヒーレント成分抽出によるFELシミュレーションの高速化
Reduction of numerical cost in FEL simulations by retrieving a spatially coherent component of microbunching
○田中 隆次(理研放射光センター)
○Takashi Tanaka (RIKEN SPring-8 Center)
 
自由電子レーザー(FEL)シミュレーションにおいては、電子の運動や光との相互作用、さらに光の伝播を記述する一連の方程式を数値計算で解くことによって光の増幅を評価する。一般的なシミュレーションコードでは、多数の電子を適切な初期条件が与えられたマクロ粒子で近似することで計算コスト(メモリや計算時間)の軽減が図られている。一方、同近似に伴うアーティファクト(人為的エラー)はマイクロバンチやFELゲインを過大評価するため、信頼できる計算結果を得るためには十分な数のマクロ粒子が必要となり、結果として計算コストが増大する。上記の問題を克服するため、マイクロバンチの空間プロファイルから実際に増幅に寄与するコヒーレントな成分を抽出し、これを源とするFEL増幅を記述する計算手法を開発した。これにより、従来の手法よりも遥かに少ないマクロ粒子数で数値収束に至ることが確認され、この結果、信頼できる結果を得るための計算時間が1桁から2桁程度短縮可能であることが示された[1]。学会では本手法の概要と、計算例について紹介する。 [1] T. Tanaka, Phys. Rev. Accel. Beams 27, 030703 (2024)
 
10:50-11:10 
THOA07

Emittance control by a ponderomotive laser lens
○Vitaliy Goryashko (SPring-8, RIKEN), Johan Ribbing, Giovanni Perosa (Uppsala University), Kazuaki Togawa (SPring-8, RIKEN)
 
Emittance of an electron beam is the key parameter that determines the degree of transverse coherence and the efficiency of a SASE X-ray Free-Electron-Laser (XFEL). The emittance preservation of a high-brightness beam during acceleration, compression and transportation from the cathode to the undulator in an XFEL is a challenging task. The beam emittance tends to degrade, for example, due to nonlinear space-charge forces and chromatic effects during compression. Here, we propose a method that allows to control and suppress linear and nonlinear emittance growth using a time-profiled laser field. The laser field works as a time-dependent lens based on a ponderomotive force effect – the effect used in a plasma acceleration method, in which a laser pulse is focused into a plasma. In contrast, we study the case of an electron beam propagating in a transversely and longitudinally profiled laser beam, which works as a lens. Advanced linear emittance compensation can be implemented applying such a laser lens. The SACLA XFEL injector is used as a theoretical case study to demonstrate capabilities of the proposed ponderomotive laser lens. A plan for experimental studies is also discussed.
 
11:10-11:30 
THOA08

レーザープラズマ電子加速を用いたXUV FELの発振実験
XUV FEL generation experiment using laser-plasma electron acceleration
○神門 正城(量研関西研),金 展(阪大産研),中新 信彦(量研関西研),Gu Yanjun(阪大産研),黄 開(量研関西研),山本 樹(高エネ機構),Lei Zhenzhe,佐藤 新悟(阪大産研),武藤 俊哉(東北大先端量子),宮内 洋司(高エネ機構),大東 出(量研関西研),Alexandre Rondepierre,Zhidkov Alexei,細貝 知直(阪大産研)
○Masaki Kando (KPSI, QST), Zhan Jin (SANKEN, Osaka U.), Nobuhiko Nakanii (KPSI, QST), Yanjun Gu (SANKEN, Osaka U.), Kai Huang (KPSI, QST), Shigeru Yamamoto (KEK), Zhenzhe Lei, Shingo Sato (SANKEN, Osaka U.), Toshiya Muto (RARIS, Tohoku U.), Hiroshi Miyauchi (KEK), Izuru Daito (KPSI, QST), Rondepierre Alexandre, Alexei Zhidkov, Tomonao Hosokai (SANKEN, Osaka U.)
 
高強度・極短パルスレーザーをガスに集光して電子を生成するレーザープラズマ電子加速は、10~100 GV/mの高い加速勾配を持つことから小型加速器として注目されている。我々は、1 J, 27 fsのレーザーを用いて、レーザープロファイルの改善と新設計のノズルを用いることで、エネルギー拡がり1%を切る400 MeVの電子バンチの生成に成功した。この電子ビームを周期長25 mm、長さ 2 mの真空封止アンジュレータまで輸送し、極端紫外領域の放射光、FEL発振の実験を行なった。現在までにアンジュレータの長さに対して非線形に放射光の強度が増える結果を得ており、XUV FELの発振の兆候を得たと考えている。講演ではこの実験の最新結果と詳細について発表する。
 
11:30-11:50 
THOA09
p.123
レーザー駆動イオン加速型ビーム入射器によるビーム試験
Beam commissioning for injector by laser driven ion acceleration

○榊 泰直,小島 完興,ヂン タンフン,畑 昌育(量研関西研),松本 悠椰(九州大学大学院),大友 清隆,筒井 裕士(住友重機),黒木 宏芳,井上 典弘(日立造船),大石 沙也加,岡野 朱莉,石井 邦和(奈良女子大),白井 敏之(量研量医研),近藤 公伯(量研関西研)
○Hironao Sakaki, Sadaoki Kojima, Thanhhung Dinh, Masayasu Hata (QST), Haruya Matsumoto (Kyushu-Univ.), Kiyotaka Ohtomo, Hiroshi Tsutsui (SHI), Hiroyoshi Kuroki, Norihiro Inoue (Hitz), Sayaka Oishi, Akari Okano, Kunikazu Ishii (Nara Womens Univ.), Toshiyuki Shirai, Kiminori Kondo (QST)
 
2023年度に完成したレーザー駆動イオン加速型ビーム入射器原型機によるビームコミッショニングが進んでいる。新たに位相回転空胴を入れたビームコミッショニングを開始した。それらのデータなどを提示して行きたいと考えている。
 
企画セッション① (8月1日 テルサホール)
15:10-16:10 
THOS01

大電流蓄積リング真空システムの技術的課題 -KEKB加速器での経験-
Technical challenges of vacuum system for high-current storage rings - Experiences at the KEKB accelerator -
○末次 祐介(高エネ研)
○Yusuke Suetsugu (KEK)
 
加速器の真空システムは、高エネルギーの荷電粒子ビームが通る/蓄積されるビームパイプに直接関係した、加速器のサブシステムの中で最もビームに近いシステムである。真空システムの役割は、粒子ビームの“通り道を確保”し、そして粒子ビームを“安定に維持”することである。つまり、ビームパイプを超高真空にして残留気体分子との衝突によるビームロスを低減する、ビームパイプ内の余計な電磁場やイオン・電子の影響を軽減してそれらに起因するビーム不安定性を抑制する、等である。ビームに最も近いシステムということは、ビームへの影響が大きいと同時にビームの影響を強く受けやすい、ということでもあり、上記を実現するためには様々な課題を解決していく必要がある。具体的には、シンクロトロン放射光による熱負荷・ガス負荷、光電子放出、ビームに伴う高次電磁波の励起、パルス的壁電流の誘起、機器のインピーダンスやパイプ内に発生した電子やイオンによるビーム不安定性励起、ビームと機器やダスト粒子との衝突、などである。これらの課題は、蓄積ビーム電流が高いほど顕著になり、厳しいものとなる。ここでは、アンペア台の電子・陽電子ビームを蓄積するKEKB、SuperKEKB加速器の真空システムでの具体的事例を引用しつつ、大電流ビーム蓄積リング真空システムの技術的課題とそれらへの対処法を紹介する。
 
受賞講演 (8月1日 テルサホール)
16:50-17:10 
THOP01

J-PARC RCSに高強度運転におけるビーム損失とビームエミッタンスの最小化
Beam loss and beam emittance minimization in the J-PARC RCS at high intensity operation
○SAHA PRANAB KUMAR(原子力機構 J-PARCセンター)
○Pranab Kumar Saha (JAEA J-PARC)
 
The 3-GeV RCS (Rapid Cycling Synchrotron) at J-PARC simultaneously delivers high-intensity proton beam to the muon and neutron production targets at the MLF (Material and Life Science Experimental Facility) as well as to the MR (Main Ring). Beam loss mitigation is highly essential not only to keep the machine activation lower at high intensity for a stable operation, but also to ensure a high-quality beam having a lower beam emittance and minimum beam halos. Systematic simulations and beam studies were performed for betatron resonance correction, optimization of the longitudinal and transverse paintings as well as the betatron tune. We have obtained significant beam loss and beam emittance mitigations for the beam delivered to both MLF and the MR. The improvements in the RCS have also been well recognized at both MLF and the MR by reducing the beam losses at the beam transport as well as at each facility. The residual radiation in the RCS recently at 1 MW beam power has been significantly reduced as compared to 1 MW trail operation in 2020 to realize a sustainable operation with record high of nearly 99% availability.
 
17:10-17:30 
THOP02

機械学習法の導入によるX線自由電子レーザー性能の高度化
Advanced x-ray free electron laser performance by introducing machine learning
○岩井 瑛人(JASRI),前坂 比呂和(理研)
○Eito Iwai (JASRI), Hirokazu Maesaka (RSC)
 
X 線自由電子レーザー(XFEL)の特性は、6 次元位相空間内の電子ビーム輝度などによって決まり、理想とする電子ビーム分布を得るにはバンチ圧縮過程での多段の高周波位相・振幅調整による縦方向のバンチ形状の最適化に加え、多数の磁気レンズや四極電磁石による横方向のバンチ形状の最適化が重要である。また、複数のビームラインを持つ線形加速器ベースのXFEL施設では、各ビームラインの異なる実験要求を同時に満たすために、電子ビームのエネルギーとバンチ圧縮を適切に調整する必要がある。加えて、実験条件はユーザーとともに数日ごとに変化するため、効率的かつ迅速なビーム調整が極めて重要である。この課題を解決するため、我々はベイズ最適化を用いた自動調整システムを開発した。専用のGUIを整備し、操作インターフェースを工夫することで、運転員の経験や技量に依らず、安定に短時間で再現性よくレーザー光を調整できる。このツールは、中心波長やパルスエネルギーだけでなく、スペクトル形状や横方向のレーザープロファイルを含む性能指標を最適化することができる。SACLAの高い運転柔軟性と組み合わせることで、厳しい実験要求をほぼ満たすXFELの提供に貢献している。本発表では、この自動調整システムと、これを用いたSACLAでの活用について紹介する。
 
加速構造 (8月2日 テルサホール)
8:30-8:50 
FROT01

KEKにおけるITNクライオモジュール用空洞チューナーの開発
Development of a cavity tuner for the ITN cryomodule at KEK
○オメット マチュー,梅森 健成,山本 康史,道前 武,クマール アシーシ,山田 智宏,山本 明(KEK),--,--(FNAL)
○Mathieu Omet, Kensei Umemori, Yasuchika Yamamoto, Takeshi Dohmae, Ashish Kumar, Tomohiro Yamada, Akira Yamamoto (KEK), Yuriy Pischalnikov, Crispin Contreras-martinez (FNAL)
 
In this contribution we report on the status of the development of a cavity tuner. It will be used in a cryomodule, which is being developed and will be built and tested in the scope of the International Linear Collider (ILC) Technology Network (ITN) at KEK until 2027. Simulations of Lorentz-force detuning of the according SRF 1.3 GHz 9-cell TESLA-type cavities were performed in order to understand the tuner requirements better. The LCLS-II double-lever tuner was selected as the base of the ITN cavity tuner design. In a collaboration with Fermilab an LCLS-II tuner on an LCLS-II cavity was tested at room temperature and atmospheric pressure at KEK. Furthermore, a domestically produced prototype tuner was tested on the same cavity at the same conditions. Design adjustments are being considered based on the gained experience. The driving electronics for the slow and fast tuner were partially selected.
 
8:50-9:10 
FROT02

液圧成形によるニオブコーティング用銅フルシームレス空洞の開発
Development of copper full-seamless cavity for niobium coating
○山中 将,荒木 隼人(高エネ研),ロザス ギローム(セルン)
○Masashi Yamanaka, Hayato Araki (KEK), Guillaume Rosaz (CERN)
 
超伝導空洞のコストを低減するために、銅で空洞本体を製作し、内部をニオブでコーティングして超伝導を発現させ、廉価な空洞を実現する研究が近年、盛んに行われている。加速空洞の内面は滑らかさが求められ、コーティングの下地は継ぎ目の無い空洞が理想的である。そこで、1本の銅パイプから継ぎ目のないシームレス空洞を製造することを着想し、液圧成形による試作に成功した。 1本のパイプを一気に空洞形状に成形する方法を試したが難しいことがわかり、2工程による成形を発案した。2種類の金型を用意し、液圧成形のみで仕上げた。完成した空洞2台の内面にCERNにて、マグネトロンスパッタリングによりニオブコーティングを施した。ニオブの膜厚は約5 µmである。その後、KEKにて電界性能試験を行い、加速勾配は4.7Kで12 MV/m、1.85Kで16 MV/mに到達した。
 
9:10-9:30 
FROT03
p.125
エチレングリコールを電解液とするNb電解研磨法の開発
Development of Nb electropolishing using ethylene glycol electrolyte solution

○後藤 剛喜(高エネ研)
○Takeyoshi Goto (KEK)
 
現在,超伝導加速器に用いられるNb空洞の表面処理には,フッ酸-硫酸の混酸を電解液として用いる電解研磨工程が必須である。この混酸は取扱が非常に危険であり環境負荷も高いため,化学安全や外部への漏洩を防ぐために複雑な設備や安全システムが必要となる。本研究では引火点が高く,入手性が容易なエチレングリコール溶液を電解液とするNbの電解研磨法の開発状況について報告する。本法は従来法に比べフッ酸を用いない点に加え、電解研磨時にNb内に取り込まれる水素の量が低くなると言う利点がある。
 
9:30-9:50 
FROT04
p.128
マイスナー効果に着目した微小磁場シールド
Faint magnetic field shielding using the Meissner effect

○岩下 芳久,栗山 靖敏(京都大学複合研),不破 康裕(J-PARCセンター)
○Yoshihisa Iwashita, Yasutoshi Kuriyama (KURNS), Yasuhiro Fuwa (J-PARC)
 
磁場は多くの物理研究で重要な位置を占め、多くの物理実験の測定項目では微少磁場の制御を必要とする。超伝導加速空胴は小電力で高電界発生が可能だが、素材のニオブは第II種超伝導体であり、超伝導転移時に周囲磁束を捕捉すると運転時の損失が増加するため微少磁気遮蔽が重要である。更なる省電力化を目指す際、微少磁気遮蔽の強化は必須である。そこで、極低温における微小磁場の効果的遮蔽が重要となってくる。従来、磁気遮蔽には高透磁率磁性素材が使われるが、極低温用の素材も極低温、微小磁場領域では透磁率が下がり、磁気遮蔽効果が薄れる傾向がある。また、機械的歪みを嫌うなど取り扱いが容易ではなく、高価である。そこで、完全反磁性となる超伝導体のマイスナー効果に着目して微少磁場の遮蔽効果の研究を始めている。 高感度のAMR(Anisotropic-Magneto-Resistive)型の3軸センサーを選出し、5個の3軸センサーを極低温下で駆動して、それらの信号を多重化により電源含め、8本のケーブルで室温側に持ってくることに成功している。極低温下でFluxGate計測器の出力と比較したところ、ほぼ同レベルの信号が得られることを確認した。これらの結果について報告する。
 
高周波源・LLRF (8月2日 アプローズ)
8:30-8:50 
FROA01
p.131
KEK PF 2.5 GeV リング LLRF システムのコミッショニングと運用状況
Commissioning and operation status of the LLRF system at the KEK Photon Factory 2.5 GeV ring

○内藤 大地,山本 尚人,高橋 毅,本村 新,坂中 章悟(高エ研)
○Daichi Naito, Naoto Yamamoto, Takeshi Takahashi, Arata Motomura, Shogo Sakanaka (KEK)
 
KEKの2.5 GeVリングでは2023年夏にLLRFシステムをアナログからデジタルに更新した。 この新システムはμTCA.4規格のeRTM, AMC, μRTMといったデジタル制御ボード群で構成されている。新システムの開発ではSPring-8やJ-PARC、SuperKEKBで培われた技術を流用する事で開発期間の短縮を行なった。また、このシステム独自の技術として電子バンチの周回周波数に同期したRF信号の測定を実現しており、システムの詳細については2023年度の加速器学会にて報告した[1]。本講演ではシステム更新後、初めてのビーム運転時のコミッショニングで問題となった、空洞電圧安定化フィードバックの発振とその解決について報告する。また発振事象の定性的理解と450mA蓄積時のフィードバックパラメータの安定領域の調査結果についても報告する。ビーム利用運転開始後は4ヶ月間の運転で特に問題は起こらず、非常に安定して運用ができた。本講演ではビーム運転中の空洞電圧の長期安定性についても報告する。 [1]D.Naito et al.,Proc of PASJ2023.
 
8:50-9:10 
FROA02
p.137
RFSoCによるXバンドの高周波信号のモニタ機能の評価
Evaluation of X-band high frequency signal monitoring by RFSoC

○漁師 雅次,岩城 孝志,神本 圭貴,北川 隆太,津本 敦,濱洲 竜斗,林 和孝,張替 豊旗,山浦 正義,山崎 伸一(三菱電機ディフェンス&スペーステクノロジーズ株式会社)
○Masatsugu Ryoshi, Takashi Iwaki, Yoshitaka Kamimoto, Ryuta Kitagawa, Atsushi Tsumoto, Ryuto Hamasu, Kazutaka Hayashi, Toyoki Harigae, Masayoshi Yamaura, Shinnichi Yamazaki (MITSUBISHI ELECTRIC DEFENSE AND SPACE TECHNOLOGIES CORPORATION)
 
Xilinx製のRFSoC (Radio Frequency System on Chip) を用いてXバンドの高周波信号をモニタする回路を開発して評価した。RFSoCは、高周波信号の直接デジタル化を可能にする新たな技術であり、これにより従来のアナログRFチェーンを大幅に簡素化することが可能となる。まずRFSoCの概要とその特性について説明する。次に、RFSoCでXバンドの高周波信号をモニタするための回路について説明する。具体的には、RFSoCのADC (Analog to Digital Converter)にTHA(Track and Hold Amplifier)を拡張して信号の取得を行い、その性能を評価する。さらに、実際に構築したシステムを用いてXバンドの高周波信号のモニタを行い、その結果を報告する。この結果を通じて、RFSoCを用いた高周波信号モニタリングシステムの有用性と可能性を示す。今回は、RFSoCのような新たな技術を用いて高周波信号のモニタすることで、従来のシステムに比べてより高精度かつ効率的な信号処理が可能となることを示すものであり、その結果が今後の高周波信号処理に寄与することを期待する。
 
9:10-9:30 
FROA03
p.142
半導体スイッチを用いた加速器用高電圧パルス電源の系統的研究
Systematic study of high-voltage pulsed power supplies for accelerators using solid-state switches

○生駒 直弥,徳地 明(パルスパワー技術研究所)
○Naoya Ikoma, Akira Tokuchi (PPJ)
 
加速器では,クライストロンモジュレータ電源やキッカー電源を筆頭に,多数の高電圧パルス電源が用いられる.そのような電源では,従来はスイッチングデバイスとしてサイラトロンが用いられてきたが,近年はSiC MOSFETをはじめとしたパワー半導体デバイスの普及や,それらを活用した種々の回路方式の提案により,加速器用高電圧パルス電源の全固体化も進んでいる.本研究では,半導体スイッチを用いた直列スイッチ,MARX,LTDなどの主回路方式,さらにはDroop補正回路や高電圧部への給電回路といった周辺回路についても,系統的に比較検討し,要求仕様に応じた回路方式の適切な選択について議論する.
 
9:30-9:50 
FROA04
p.147
マイクロ波源ジャイロトロン開発のためのCSTシミュレーション
Development of a gyrotron by using CST simulation

○金田 健一,宮澤 順一,後藤 拓也,中村 誠,田村 仁(株式会社Helical Fusion),山本 昌志(株式会社オメガソリューションズ),南 龍太郎,假家 強(筑波大学 プラズマ研究センター)
○Kenichi Kaneta, Junichi Miyazawa, Takuya Goto, Makoto Nakamura, Hitoshi Tamura (Helical Fusion Co. Ltd.), Masashi Yamamoto (Omega Solutions Co. Ltd.), Ryutaro Minami, Tsuyoshi Kariya (University of Tsukuba)
 
マイクロ波発生源としてジャイロトロンは開発されてきた。ジャイロトロンのメカニズムは電子銃からの電子ビームをカソードとアノード間電圧で加速させつつ、ソレノイド場でビームを収束させながら空洞共振器内で自励発振させることにある。開発プロセスは必要な電圧、ビーム電流、空洞共振器寸法、ソレノイド磁場強度を最適化することにある。古くは最適化条件を理論式や簡易2次元コードを用いて算出していたが、現在ではCSTを含む市販コード、専用コード等多くの3次元シミュレータが用いられている。さらに製作したジャイロトロンの発振試験を元にパフォーマンスの最適化を行っている。本研究では産学連携共同研究により筑波大学で設計を行ったヘリカル型核融合炉用ジャイロトロンの設計を元に発振までの過渡解析計算をCSTで実施している。CSTを用いることで、これまでは計算時間が長く不可能であった電子銃から電磁波の自励発振までの統合シミュレーションが可能になる。また近年の高速コンピューティングクラウドAWSを使ってシミュレーションの加速化を実施した。これまで計算時間が長いため検討が難しかった3次元形状でのシミュレーションによる開発体系を確立して、このシミュレーション結果をもとに実機の製作を進めていく。ジャイロトロンの産業利用としては核融合炉やロケットの推進力に用いることが検討されており、将来的に発展していく必要のある分野であると認識している。
 
企画セッション② (8月2日 テルサホール)
13:00-14:00 
FROS01

放射光加速器のグリーン化 - SPring-8/SACLA加速器コンプレックスにおける取り組みと展望 -
A roadmap towards a "greener" facility of synchrotron light sources - Activities and prospect at SPring-8/SACLA accelerator complex -
○田中 均(理研)
○Hitoshi Tanaka (RIKEN)
 
近年、人間のあらゆる社会的活動において、温暖化ガス排出を抑制し持続的発展を可能とするシステムの変革が叫ばれ、推進されてきた。加速器施設においても、その社会的要求を無視することはできない。以前の性能至上主義では、もはや加速器の大規模アップグレードや新規の建設が難しい状況になってきた。このため、性能と共に省資源、省エネルギーを両立する加速器システムのグリーン化が急務になってきている。加速器は道具である。よって、その利用のされ方によってはグリーン化が非常に難しいケースもある。例えば、加速する1次粒子を直接使用する高エネルギー物理実験を目的とした加速器の場合、簡単には進まない。一方で、加速粒子を直接用いない、放射光光源のようなシステムであれば、グリーン化の余地はそれなりに残されている。本講演では、基本的な放射光発生の原理から、同様の光のスペクトル領域を消費電力を抑制しながら可能にする基本的な仕組みや、システムの合理化の可能性等の一般論を示し、具体的な事例として、理研の播磨キャンパスで進行中の放射光光源加速器コンプレックスのグリーン化への取り組みに関して概説する。
 
加速構造/ハドロン加速器 (8月2日 テルサホール)
14:10-14:30 
FROT05
p.151
縦方向分割方式Cバンド小型加速管の設計・試験
Design and test of C-band compact accelerating structure made of longitudinally-split two halves

○阿部 哲郎,肥後 壽泰(高エネルギー加速器研究機構),木村 優志,菅野 東明,重岡 伸之,原 博史,比嘉 究作(三菱重工機械システム株式会社)
○Tetsuo Abe, Toshiyasu Higo (High Energy Accelerator Research Organization), Masashi Kimura, Tomei Sugano, Nobuyuki Shigeoka, Hiroshi Hara, Kyusaku Higa (Mitsubishi Heavy Industries Machinery System, Ltd.)
 
従来の常伝導加速管は、ビーム軸に垂直な平面で分割した数十枚のディスクを周期的に積層して金属結合する「ディスク・スタック方式」で製作されてきたが、それとは直交するものとして「縦方向分割方式」がある。縦方向分割方式では、加速構造はビーム軸を含む平面で分割されるため、パーツの個数は2個(2分割)または4個(4分割)であり、数十枚のディスクを接合するディスク・スタック方式よりも部品点数が1桁少なくて済む。また、縦方向分割方式では、いかなる接合箇所もビームから見えないところに位置するため、接合箇所に起因する問題発生の心配がない。さらにパーツの接合方法として、従来のろう付けや拡散接合の他、電子ビーム溶接の適用が容易である。我々は、上記の利点に着目して、欧州のリニアコライダー計画CLIC向けのXバンド高電界加速管を縦方向分割方式で製作する開発研究を行ってきた。現在、その経験を産業向けの小型加速管に適用する開発研究を三菱重工機械システム株式会社と共同で行っている。本発表では、複雑な構造であるサイドカップル型加速管(Cバンド)を縦方向分割方式で製作するための設計、および単セル空洞を用いた高電界性能試験の結果について報告する。
 
14:30-14:50 
FROT06
p.156
加速空洞ブレークダウン電流の観測実験およびPICシミュレーションとの比較
Experimental study of the breakdown current in a normal-conducting accelerating cavity and comparison with PIC simulation

○山口 孝明,阿部 哲郎,小林 鉄也(高エネ研)
○Takaaki Yamaguchi, Tetsuo Abe, Tetsuya Kobayashi (KEK)
 
極限のルミノシティ性能を目指す電子陽電子衝突型加速器であるSuperKEKB加速器では現在、Sudden Beam Lossと呼ばれる突発的なビーム損失現象によりビーム電流が制限されている。この現象は一般的なビーム不安定性と異なり、ビーム軌道等に予兆が見られず、さらにビームが蓄積リングを1周する約10 µsの早い時間スケールで大きなビーム損失が観測される。原因は未だに解明されていないが、現状有力な仮説としてfireball仮説が提唱されている。この仮説では、fireballと呼ばれる数十µmサイズの高融点の高温微粒子がビームコリメータの銅表面に衝突し、これが引き金となり放電が発生、蓄積ビームを大きく蹴りビーム損失が発生すると考えられている。Fireball起因の放電現象は元々、509 MHz加速空洞のブレークダウン現象の観測実験[1]で初めて発見された。本研究では空洞ブレークダウン実験を再度実施し、fireball仮説の検証を行った。ビームがコリメータ表面に誘起する電界強度は空洞壁面のそれと同程度(~10 MV/m)であり、空洞内で起こる放電と同規模の放電がコリメータでも発生しうると予測できる。観測実験では放電発生時に空洞内を飛散する電子の電流を測定、同時にParticle-in-Cellシミュレーションを行うことで、fireballによる放電電流を定量的に評価した。本発表では、これまでの実験結果、及びシミュレーション結果の比較検討を行う。 [1] T. Abe et al., PRAB 21, 122002 (2018).
 
14:50-15:10 
FROT07
p.162
IFMIF原型加速器(LIPAc)の高デューティビーム試験結果
Results of high duty cycle beam operation of LIPAc

○赤木 智哉(量研、IFMIF/EVEDA PT),Benedetti Florian(F4E, CEA),Carin Yann(F4E, IFMIF/EVEDA PT),Chambrillon Janic,Cismondi Fabio,Dzitko Herve(F4E),Gex Dominique(F4E, IFMIF/EVEDA PT),長谷川 和男(量研),Jimenez Rey David(F4E, CIEMAT),近藤 恵太郎(量研),熊谷 公紀,増田 開(量研、IFMIF/EVEDA PT),Moya Ivan,Scantamburlo Francesco(F4E, IFMIF/EVEDA PT),杉本 昌義(量研、IFMIF/EVEDA PT),IFMIF/EVEDA Integrated Project Team(量研、F4E、IFMIF/EVEDA Project Team、CEA、CIEMAT、INFN)
○Tomoya Akagi (QST, IFMIF/EVEDA PT), Florian Benedetti (F4E, CEA), Yann Carin (F4E, IFMIF/EVEDA PT), Janic Chambrillon, Fabio Cismondi, Herve Dzitko (F4E), Dominique Gex (F4E, IFMIF/EVEDA PT), Kazuo Hasegawa (QST), David Jimenez Rey (F4E, CIEMAT), Keitaro Kondo (QST), Kohki Kumagai, Kai Masuda (QST, IFMIF/EVEDA PT), Ivan Moya, Francesco Scantamburlo (F4E, IFMIF/EVEDA PT), Masayoshi Sugimoto (QST, IFMIF/EVEDA PT), Ifmif/eveda Integrated Project Team (QST, F4E, IFMIF/EVEDA Project Team, CEA, CIEMAT, INFN)
 
国際核融合材料照射施設(IFMIF)の原型加速器(LIPAc)は、日欧の国際協力のもと試験が進められている。LIPAcは125 mAの重陽子ビームを9 MeVまで加速し、CW運転することを目標としており、入射器、RFQ、超伝導線形加速器(SRF)、ビーム輸送系およびビームダンプから構成される。段階的に機器の据付と試験が進められており、現在LIPAcはSRFを除き最終的な構成となっており、Phase B+と呼ばれる高デューティ試験を実施中である。この試験の主な目的は長パルス重陽子ビーム運転の実証、及びビーム特性の評価であり、2024年6月末に完了予定である。2024年4月末の時点で、電流約115 mA、パルス長3 ms、デューティ約4%のビームを加速することに成功しており、引き続き高デューティ化(Phase B+における目標は10%)に向けた試験を継続する。また、本試験の完了後はSRFを加速器室に搬入し、据付作業を実施する予定である。本講演では、Phase B+試験で得られた試験結果について報告する。
 
15:10-15:30 
FROT08
p.166
J-PARC MRの高繰り返し化によるビーム強度増強のための縦方向シミュレーション
Beam longitudinal dynamics simulation for high-power upgrade of J-PARC MR

○杉山 泰之,清矢 紀世美,吉井 正人,大森 千広,原 圭吾,長谷川 豪志(KEK/J-PARC),田村 文彦,山本 昌亘,野村 昌弘,島田 太平,沖田 英史,宮越 亮輔(JAEA/J-PARC)
○Yasuyuki Sugiyama, Kiyomi Seiya, Masahito Yoshii, Chihiro Ohmori, Keigo Hara, Katsushi Hasegawa (KEK/J-PARC), Fumihiko Tamura, Masanobu Yamamoto, Masahiro Nomura, Taihei Shimada, Hidefumi Okita, Ryosuke Miyakoshi (JAEA/J-PARC)
 
J-PARC MRでは、周回粒子数の増加と繰り返し時間の短縮を組み合わせてビーム強度増強を進めている。 2021年から2022年にかけた長期シャットダウンの際にMRの繰り返し時間をそれまでの2.48秒から1.36秒へと短縮した。 繰り返し時間が短くなることにより、加速時間も短くなり、より高い加速電圧が加速空胴に求められることとなった。 このため、縦方向シミュレーションを用いて、短い加速時間で安定に大強度ビームを加速できる条件を検討した。 検討にはCERNで開発されているBLonDを用いて空間電荷効果や加速空胴のインピーダンスによる影響を考慮したシミュレーションを行った。 検討の結果、450kV以上の高い加速電圧に加えて、バンチ結合振動抑制のために加速空胴に対する幅広いハーモニクス成分でのビームローディング補償が不可欠であることがわかった。 こうして得られた運転パラメータを用いて高繰り返しサイクルでのビーム加速を行い、2023年12月には750kWビーム加速を実現することが出来た。 本発表では、検討に用いた縦方向シミュレーションの過程及び結果と、実ビーム測定結果との比較について述べる。
 
15:30-15:50 
FROT09
p.171
冷却ミュオンの高周波加速実証
Demonstration of rf linear acceleration of cooled muon by laser ionization

○鷲見 一路,茨木 優花,市川 忠樹,飯嶋 徹,居波 賢二,糀 翔太,近藤 彩夏,杉山 蒼,鈴木 一仁,上田 晃市,四塚 麻衣(名大),有留 翔一,松下 凌大,小山 駿,佐藤 太希(東大),二ツ川 健太,池戸 豊,石田 勝彦,上岡 修星,河村 成肇,木村 眞人,幸田 章宏,児島 一輝,三部 勉,中村 惇平,岡崎 祐太,大谷 将士,齊藤 直人,下村 浩一郎,Strasser Patrick,山崎 高幸,吉田 光宏(KEK),原 秀明,今井 康貴,宮本 祐樹,植竹 智,山基 真佑(岡山大),早坂 圭司,佐藤 優太郎,矢村 昴暉(新潟大),飯沼 裕美,葛葉 昌弥,佐藤 颯人(茨城大),Kamal Saeid(UBC),近藤 恭弘(JAEA),中沢 雄河(理研),小川 真治,塩谷 漸,竹内 佑甫,谷田 征輝,東城 順治,山田 瑞樹,吉岡 瑞樹(九大),Xie Xinhai(Peking Univ.)
○Kazumichi Sumi, Yuka Ibaraki, Tadaki Ichikawa, Toru Iijima, Kenji Inami, Shota Koji, Ayaka Kondo, Soh Sugiyama, Kazuhito Suzuki, Koichi Ueda, Mai Yotsuzuka (Nagoya Univ.), Shoichi Aritome, Ryota Matsushita, Shun Oyama, Taiki Sato (Univ. of Tokyo), Kenta Futatsukawa, Yutaka Ikedo, Katsuhiko Ishida, Shusei Kamioka, Naritoshi Kawamura, Masato Kimura, Akihiro Koda, Kazuki Kojima, Tsutomu Mibe, Jumpei Nakamura, Yuta Okazaki, Masashi Otani, Naohito Saito, Koichiro Shimomura, Patrick Strasser, Takayuki Yamazaki, Mitsuhiro Yoshida (KEK), Hideaki Hara, Yasutaka Imai, Yuki Miyamoto, Satoshi Uetake, Shinsuke Yamamoto (Okayama Univ.), Kiyoshi Hayasaka, Yutaro Sato, Koki Yamura (Niigata Univ.), Hiromi Iinuma, Masaya Kuzuba, Hayato Sato (Ibaraki Univ.), Saeid Kamal (UBC), Yasuhiro Kondo (JAEA), Yuga Nakazawa (RIKEN), Shinji Ogawa, Zen Shioya, Yusuke Takeuchi, Masaki Tanida, Junji Tojo, Mizuki Yamada, Tamaki Yoshioka (Kyushu Univ.), Xinhai Xie (Peking Univ.)
 
J-PARCで計画しているミュオンの異常磁気能率及び電気双極子能率の精密測定実験では、先行実験により示された素粒子標準模型を超える物理の兆候を独立に検証することを目指している。この実験に不可欠な低エミッタンスミュオンビームは、運動エネルギー4 MeVの正ミュオンをシリカエアロゲルに照射した際に生成されるミュオニウムからレーザーを用いて25 meVのミュオンを解離し、静電レンズと速度域に適した4種類の高周波加速空洞を用いて212 MeVまで加速することで実現する。今回、波長244 nmの超高安定レーザーにより、ミュオニウムから解離した冷却ミュオンの生成を実現し、高周波四重極リニアックにより約90 keVまで加速されたミュオンをマイクロチャンネルプレートで観測した。本講演では、冷却ミュオン生成実験および高周波加速試験を通して行ったミュオン飛行時間測定と位相空間分布測定について報告する。
 
16:10-16:30 
FROT11
p.176
ERITリングをもちいたミュオン触媒核融合炉
Muon catalyzed fusion with ERIT ring

○森 義治,上杉 智教,石 禎浩(京都大学)
○Yoshiharu Mori, Tomonori Uesugi, Yoshihiro Ishi (Kyoto University)
 
ミュオン触媒核融合(MuCF)によるエネルギー生産におけるブレークイーブン実現は、永年の課題である。実現には2つの大きな問題がある。すなわち、①負ミュオン生成のエネルギー効率、②α粒子への負ミュオン付着による連鎖反応制限である。本講演では、これらを原理的に解決するERIT(Energy Recovery Internal Target)リングを用いたミュオン触媒核融合炉(MuCF reactor)の新提案について発表する。
 
光源加速器/加速器土木 (8月2日 アプローズ)
14:10-14:30 
FROA05

自由電子レーザーで駆動する高繰り返しアト秒光源の研究: 2024
Research towards attosecond x-ray pulse generation using free-electron laser oscillators: 2024
○羽島 良一,川瀬 啓悟(量研),全 炳俊,大垣 英明(京大),早川 恭史,境 武志(日大),金井 恒人(京大 / 分子研)
○Ryoichi Hajima, Keigo Kawase (QST), Heishun Zen, Hideaki Ohagaki (Kyoto U.), Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai (Nihon U.), Tsuneto Kanai (Kyoto U./ IMS)
 
われわれは、文科省の光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)の支援のもと、2018年度から、自由電子レーザーで駆動する高繰り返しアト秒光源の研究を行っている。本研究は、共振器型の赤外自由電子レーザーを超放射領域で動作させ、発生した数サイクルの超短パルスをガス中に集光することで、高次高調波としてアト秒X線の生成を目指すものである。これまで、京都大学、日本大学の自由電子レーザー施設にて、パルスエネルギーの増大とパルスの短縮、生成したパルスの評価を進めてきた。その結果、両施設にて、気体のトンネル電離に十分なFEL強度を実現し、気体からの高調波の発生に成功した。また、FEL実験と並行して、数サイクルパルスの位相安定化に必要な中赤外レーザーの開発も行っている。10年間の研究期間の半分を折り返したところであり、これまでの成果を報告する。
 
14:30-14:50 
FROA06
p.179
Laser 加速電子Beamを用いたXUV-FEL実証試験のための極短周期Undulator磁石技術に基づく小型・軽量Undulatorの開発
Undulator fabricated for XUV-FEL characterization experiment using a laser-accelerated electron beam which has a compact slender and lightweight frame based on a magnet technology developed for very-short-period undulators

○山本 樹(高エネ機構・物質構造科学研究所),宮内 洋司(高エネ機構・加速器研究施設)
○Shigeru Yamamoto (KEK-IMSS), Hiroshi Miyauchi (KEK-ACC)
 
我々は近年, 通常数10mmだったアンジュレータの周期長を約1/10に“極短周期化”することを目標にして, 板状磁石に極短周期アンジュレータ磁場を書き込む多極着磁方式の研究開発を行って来た。これまで周期長数mmの板状磁石の着磁技術, 長尺化のための連結方式を確立した(周期長4mmの時 2.5GeV加速器で12keVの基本波を生成可能)。 次のステップとして, アンジュレータ主列磁石間に働く磁場吸引力を, 反発磁石を用いて相殺する方式を開発している。アンジュレータ駆動軸に働く吸引力は主列磁石の周囲に反発磁石を配置することで効果的に軽減・相殺出来る。 この方式を応用すると, 磁場吸引力を抑制して, 通常は巨大になるアンジュレータ本体を小型で華奢かつ軽量の精密機械装置として完成することが可能になる。今回, JST-MIRAIプロジェクトにおいて現在SP-8レーザー加速プラットフォームで開発中のXUV-FEL光源として建設・設置した, 小型・軽量アンジュレータについて報告する(周期長25mm, 磁石長2m, K値1.4(於gap=6.4mm), 重量500kg/m, 2分割され1mユニット毎のギャップの独立制御可能)。 このプラットフォームに於いて, XUV-FEL実証試験のためのビームテストを開始し, 上記アンジュレータからの初生光観測に成功した。現在, 放射光データの集積と解析を継続中である。
 
14:50-15:10 
FROA07
p.184
ナノテラスにおける蓄積リングビームオプティクスのコミッショニング
Commissioning of the beam optics in the storage ring at NanoTerasu

○小原 脩平,上島 考太,保坂 勇志,西森 信行,安積 隆夫,菅 晃一(量研),青木 駿尭,芳賀 浩一,伊原 彰,伊藤 優仁,岩下 大器,門脇 聖弥,小林 創,及川 治彦,齋田 涼太,櫻庭 慶佑,高橋 隼也,土山 翼,井場 祐人,金浜 蓮人,高橋 滉希,田中 達輝,西原 秀雄,森谷 佳津貴,吉岡 里紗(量研, NAT),住友 博史,山本 龍(SES)
○Shuhei Obara, Kota Ueshima, Yuji Hosaka, Nobuyuki Nishimori, Takao Asaka, Koichi Kan (QST), Toshitaka Aoki, Koichi Haga, Akira Ihara, Katsumasa Ito, Taiki Iwashita, Masaya Kadowaki, Hajime Kobayashi, Haruhiko Oikawa, Ryota Saida, Keisuke Sakuraba, Shunya Takahashi, Tsubasa Tsuchiyama, Yuto Iba, Rento Kanahama, Koki Takahashi, Tatsuki Tanaka, Hideo Nishihara, Kazuki Moriya, Risa Yoshioka (QST, NAT), Hiroshi Sumitomo, Ryo Yamamoto (SES)
 
2023年6月よりナノテラス蓄積リングのビームコミッショニングを開始し、8月の夏季停止期間を含みながらも10月までの4ヶ月でほぼ設計値通りのビームオプティクスを得ることができた。エミッタンスはエネルギー広がりと畳み込まれた形でのみX線ピンホールカメラ(XPC)で測定できるが、不定性の範囲内でモデルと一致した。クロマティシティに関してはビーム不安定性を抑制するため、設計値よりも少し大きな値に設定している。加速空胴における加速電圧は、反射等による停止頻度を抑えるため設計値よりも低い値から運転を開始しているものの、モーメンタムアクセプタンスおよび電子ビーム寿命の観点からは、Dispersive Sectionにおける効果とconsistentなレベルにしている。水平-垂直カップリングは未調整ではあり設計値1%に対して現状が2%と2倍になっているが、ユーザーニーズやビーム寿命を考慮して今後調整を行う予定である。本講演では上述の約半年間における蓄積リングのビームオプティクスに関するコミッショニング内容について報告する。
 
15:10-15:30 
FROA08
p.189
ナノテラスにおけるAPPLE II型アンジュレータ多極磁場の補正
Correction of higher-order magnetic field of APPLE II undulators at NanoTerasu

○保坂 勇志,安居院 あかね,稲葉 健斗,上島 考太,小原 脩平,西森 信行(量研),齋田 涼太,櫻庭 慶佑(NAT, 量研),山本 達(東北大学),福澤 宏宣(光科学イノベーションセンター),早乙女 光一(理研, 高輝度光科学研究センター),田中 均(理研)
○Yuji Hosaka, Akane Agui, Kento Inaba, Kota Ueshima, Shuhei Obara, Nobuyuki Nishimori (QST), Ryota Saida, Keisuke Sakuraba (NAT, QST), Susumu Yamamoto (Tohoku University), Hironobu Fukuzawa (PhoSIC), Kouichi Soutome (RIKEN, JASRI), Hitoshi Tanaka (RIKEN)
 
3 GeV高輝度放射光施設ナノテラスは昨年2023年6月より蓄積リングのビームコミッショニングを開始し、2024年4月よりユーザー利用運転を開始した。放射光をユーザーに提供するビームラインは運用開始時点で10本が整備されている。ナノテラスではビームライン10本のうち5本において挿入光源としてAPPLE II型のアンジュレータを採用している。APPLE II型アンジュレータは、磁石列をビーム軸方向に駆動することで放射光の偏光切替が可能であり、直線偏光・楕円偏光を一つのアンジュレータで生成できる利点がある一方、多極磁場を生み出し蓄積電子ビームに複雑な悪影響を及ぼす。4極磁場によるベータトロンチューンシフトについてはリング内の4極電磁石の調整によって補正が可能であるが、8極以上の多極成分に関しては電磁石による補正が不可能であるため、ナノテラスでは真空槽の上下面にカレントストリップと呼ばれる厚さ0.3 mm程度の導線を貼付し、直流電流を流し磁場を発生させ補正を行う。多極磁場は入射ビームのような大振幅ビームに大きな影響を及ぼすが、カレントストリップ補正を施したナノテラスにおいては初期10本のビームラインを全て稼働させてもビーム入射効率の低下は全く観測されていない。本発表では実際にナノテラスにおいて行っているカレントストリップ補正電流計算や、補正有無での振幅依存チューンの実測値の変化について報告する。
 
15:30-15:50 
FROA09
p.195
IFMIF原型加速器における冷却水システムの保守に関する現状と課題
Maintenance experience of the water-cooling system in the linear IFMIF prototype accelerator (LIPAc)

○熊谷 公紀,近藤 恵太郎,長谷川 和男(量研),ヤン カリン,ドミニク ヘックス,ダビデ クレイナー,フランチェスコ スカンタンビューロ(IFMIF/EVEDA Project Team),ファビオ シモンディ,エルベ ジッコ(F4E)
○Kohki Kumagai, Keitaro Kondo, Kazuo Hasegawa (QST), Carin Yann, Gex Dominique, Kleiner Davide, Scantamburlo Francesco (IFMIF/EVEDA Project Team), Cimondi Fabio, Dzitko Herve (F4E)
 
IFMIF/EVEDAプロジェクトの一環として、IFMIF原型加速器 (LIPAc) のビームコミッショニングが六ヶ所フュージョンエネルギー研究所で実施されている。LIPAc加速器では125 mAの重陽子ビームを連続波で9 MeVまで加速することを目指しており、これはビーム出力として1.125 MWに値する。LIPacは入射器、及びRFQ、SRF、ビーム輸送系、ビームダンプといったサブシステムで構築されている。LIPAcでは高出力のビーム生成のため水冷を多用しており、各サブシステムは専用の冷却水システムを有する。これらの冷却水システムは、キャビティ温度の制御や、機器(例えばスリット、ビームターゲット部)の熱負荷による損傷を防ぐために用いられる。冷却水システムの適切な保守管理は、サブシステム運転時の故障を予防し、LIPAc加速器の稼働率を向上するために重要である。LIPAc加速器ではこれまで冷却水システムについて様々な問題に直面してきた。それらは例えば、冷却水経路の腐食、目詰まり、水質の悪化、水漏れ、冷却能力の不足、であった。本発表では、これらの問題を解決するためにこれまでに実施された冷却水システムの改修・改良について紹介する。また、冷却水システムにおける問題の再発を未然に防ぐためにLIPAc加速器で行われている保守活動について報告する。冷却水システムの安定した運転は、LIPAc加速器におけるビーム運転の信頼性向上に貢献している。
 
15:50-16:10 
FROA10
p.198
数GeV電子照射によるJLABビームダンプ下流における遮蔽実験
Shielding experiment in the downstream of the JLAB beam dump with several GeV electron beam

○中尾 徳晶(清水建設(株)),ウェルチ キース,ワイズマン マーク,スタボラ アダム,デグティアレンコ パベル(ジェファソン研究所),佐波 俊哉,照沼 信浩,森川 祐,坂木 泰仁(高エネ研)
○Noriaki Nakao (Shimizu Corporation), Keith Welch, Mark Wiseman, Adam Stavola, Pavel Degtiarenko (JLAB), Toshiya Sanami, Nobuhiro Terunuma, Yu Morikawa, Yasuhito Sakaki (KEK)
 
米国ジェファソン国立加速器研究所(JLAB)において、数GeV電子がビームダンプに照射された際に生じる二次粒子による遮蔽実験を行なった。電子エネルギーは2.2、4.3、6.4および8.45 GeVであり、ビームダンプはアルミ製で冷却水が循環している。その下流には、コンクリート遮蔽が設置されており、その遮蔽には地上から約10m深さのビームライン軸まで届く垂直方向の測定孔(直径約5cm)が3つ(遮蔽表面から91、273および570 cm厚)設置されている。その測定孔にアルミまたは黒鉛の試料を設置して照射を行ない、照射後の試料からのガンマ線を測定し、Na-24またはC-11の生成放射性核種生成率およびその減衰曲線を評価した。モンテカルロシミュレーションの結果との比較を行ない、実験値と2倍程度の良い一致を得た。 本実験はJLAB および米国エネルギー省(DOE)の協力のもと行なわれた。
 
16:10-16:30 
FROA11
p.201
グリーンILCに関わる最近の研究
Recent research activities related to Green ILC

○吉岡 正和(岩手大学),照沼 信浩(KEK),佐貫 智行(東北大)
○Masakazu Yoshioka (Iwate University), Nobuhiro Terunuma (KEK), Tomoyuki Sanuki (Tohoku Univ.)
 
グリーンILCについて昨年9月に盛岡における国際ワークショップWSFA2023(The International Workshop on Sustainability in Future Accelerators)においてグローバルなコンセンサスが得られた。先ず第1にライフサイクルアセスメントが必要である。そこでCO2排出に関してライフサイクルのステージ毎に数値的な評価をし、次いでそれらを減ずる具体的な方策を検討する。本報告では日本の事情に特化した方策について、最新状況を述べる。
 
ポスター① (7月31日 1F大会議室)
13:00-15:00 
WEP001
p.205
JAEA-ADS LEBT用チョッパーの設計とビームダイナミクス研究
Design and beam dynamics studies of a chopper for the JAEA-ADS LEBT

○イーレンドン ブルース,近藤 恭弘,田村 潤,明午 伸一郎,前川 藤夫(JAEA)
○Bruce Yee-rendon, Yasuhiro Kondo, Jun Tamura, Shin-ichiro Meigo, Fujio Maekawa (JAEA)
 
The Japan Atomic Energy Agency (JAEA) designs a 30-MW CW proton linear accelerator (linac) as a key component for the accelerator-driven subcritical system (ADS) project. The low energy beam transport (LEBT) in JAEA-ADS uses charge neutralization to minimize space-charge effects, which are the primary cause of beam loss in high-power accelerators. During commissioning and power ramp-up, precise control of the duty cycle is required for safety and machine protection; thus, a chopper system will be installed to manage the beam power. The chopper is located at the LEBT, to facilitate the disposal of the excess beam power, but its operation will affect the charge neutralization producing beam transients that could lead to beam loss. To shed light on this, we created a beam optics model for the chopper using an analytic approach to determine the required characteristics like voltage and dimensions, which was confirmed through TraceWin simulations. Subsequently, we analyzed the chopper's impact on space-charge compensation to evaluate the beam transients in the LEBT. This study reports the design of the chopper and its effects on beam performance for the JAEA-ADS LEBT.
 
13:00-15:00 
WEP002
p.210
J-PARC MRビームのエミッタンス制御のための50-80MHz空洞
50-80MHz RF cavity for emittance control of J-PARC MR beam

○大森 千広(高エネルギー加速器研究機構/J-PARCセンター)
○Chihiro Ohmori (KEK/J-PARC Center)
 
J-PARC MRは高周波システムや電磁石電源などのアップグレードにより繰返し周期を1.36秒とし760kWのビーム運転を実現した。また遅い取り出し運転の周期も4.24秒となり80kWビームをハドロン実験施設に供給している。今後HyperK実験に向けビーム強度を1.3MWへ増強することを計画している。この際、加速器の近くに設置されるNear Detectorでは水チェレンコフ検出器が考えられており、ニュートリノ強度が高いため検出のパイルアップが懸念されている。これを防ぐために取り出しビームエミッタンスを増加させるなどによりピーク強度を下げることが望ましい。シンクロトロンでは様々な手法によりエミッタンス制御を行っているが、ここでは高調波を用いた手法について述べる。この高調波空洞は金属磁性体空洞と短い同軸管を組み合わせることで、加速中の高調波周波数変化に対応できるため、早い加速周期と両立できる。この手法で使用する高調波空洞はSX運転においてビーム入射時のエミッタンス分布をなめらかにし、加速後のデバンチ時のエミッタンスを広げることにも応用が可能である。
 
13:00-15:00 
WEP003
p.214
理研超伝導重イオン線形加速器(SRILAC)の性能と展望
Present performance and perspectives of the RIKEN Heavy-Ion Superconducting LINAC (SRILAC)

○坂本 成彦,上垣外 修一,大関 和貴,須田 健嗣,山田 一成,内山 暁仁,長友 傑,日暮 祥英,西 隆博(理研仁科センター)
○Naruhiko Sakamoto, Osamu Kamigaito, Kazutaka Ozeki, Kenji Suda, Kazunari Yamada, Akito Uchiyama, Takashi Nagatomo, Yoshihide Higurashi, Takahiro Nishi (RIKEN Nishina Center)
 
理研超伝導重イオン線形加速器(SRILAC)は2020年1月のコミッショニング以来、順調に超重元素合成実験にビーム供給し続けている。定期のメンテナンスや大故障による停止期間を除くビーム供給期間において加速器全体の可用度は約90%で超伝導空洞線形加速器単体では99%を超える可用度を達成している。超伝導空洞のX線の増加により加速に利用できる加速電圧の減少が一番の問題となっていたが、これは高電圧パルスパワーによるコンディショニングによって抑制できることがわかった。現在は設置当初よりもX線が発生し始める電圧が高くなり利用可能な加速電圧が回復している。本発表ではSRILACの現在の性能と将来的な展望について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP005
p.218
J-PARCにおける過去5年間のH-レーザー荷電変換の進捗状況
5-year progress of H- laser stripping at J-PARC RCS

○サハ プラナブ,原田 寛之,金正 倫計,吉本 政弘,山田 逸平(原子力機構, J-PARC センター),米田 仁紀,道根 百合奈,小野田 元喜(電通大, レーザー研),佐藤 篤(NAT),柴田 崇統,山根 功,入江 吉郎(KEK)
○Pranab Saha, Hiroyuki Harada, Michikazu Kinsho, Masahiro Yoshimoto, Ippei Yamada (JAEA, J-PARC), Hitoki Yoneda, Yurina Michine, Genki Onoda (UEC, ILS), Atsushi Sato (NAT), Takanori Shibata, Isao Yamane, Yoshiro Irie (KEK)
 
To overcome the issues and practical limitations associated with the stripper foil used of H- charge exchange injection, we aim to establish a foil-less H- charge exchange injection by using only lasers. For that purpose, we are about to start a POP (proof-of-principle) demonstration of 400 MeV H- stripping to proton at J-PARC RCS. The YAG laser system will be used for stripping two electrons in the H- beam, while a deep UV laser will also be used for exciting the deeply bound 2nd electron before stripping by the YAG laser. The YAG laser system and also a new type of multi-reflection cavity system has been developed through multiple experimental studies of 3 MeV H- beam neutralization at J-PARC RFQ-TF. We have also demonstrated non-destructive H- beam diagnostics at 3 MeV, which can be easily implemented at J-PARC linac for beam diagnostics at full intensity as well as online beam monitoring and feedback during user operation. The R&D of the deep UV laser of 213 nm producing from the YAG laser by the higher harmonic technique is also in progress. The laser system setup at J-PARC linac is good progress to start the POP study for 400 MeV H- beam at the end of this year.
 
13:00-15:00 
WEP006
p.223
J-PARC遅い取り出し運転における高繰り返し化のための縦方向ビームシミュレーション
Longitudinal beam simulation for a high repetition cycle J-PARC slow extraction

○冨澤 正人,淺見 高史,武藤 亮太郎,清矢 紀世美,杉山 泰之(KEK/J-PARC),田村 文彦(J-PARC/JAEA)
○Masahito Tomizawa, Takashi Asami, Ryotaro Muto, Kiyomi Seiya, Yasuyuki Sugiyama (KEK/J-PARC), Fumihiko Tamura (J-PARC/JAEA)
 
J-PARCメインリングでは、加速、立ち下がり時間を短くして加速パターンの繰り返しを上げることにより、ビーム出力をアップする改造を実施した。ニュートリノ振動実験のための速い取り出し運転では、繰り返し時間が2.48秒から1.36秒に短縮されたパターンでの運転を開始した。一方遅い取り出しを利用するハドロン実験においては、2.61秒のフラットトップ時間の変更はせず、速い取り出し運転と同じ加速と立ち下げ時間により繰り返しを5.2秒から4.24秒に短縮する方針とした。遅い取り出し運転においては、取り出し前のデバンチ過程で発生する横方向のビーム不安定性の抑制のために縦方向のエミッタンスを大きくする必要があり、このためにビーム入射時にRF位相にオフセットをつけている。さらにフラットトップでRF電圧を2段階でゼロにする操作が有効である。加速時間は速い取り出しと同じ1.4秒から0.65秒へ短縮されるが、必要なRF電圧が高くなることによるビームエミッタンスや運動量の広がりへの影響をいくつかのRF電圧パターンについて自作のシミュレーションコードにより評価した。シミュレーションの結果から提案されたRF電圧パターンは、現在の30 GeV、80 kWでの遅い取り出し運転に用いられている。
 
13:00-15:00 
WEP007
p.228
ビーム位置モニター用信号取り出し端子の破壊現象
Breakdown phenomenon of signal extraction pickups for beam-position monitors

○諏訪田 剛,柿原 和久,宮原 房史(KEK加速器)
○Tsuyoshi Suwada, Kazuhisa Kakihara, Fusashi Miyahara (Acc. Lab., KEK)
 
2023.July.31夕刻、入射器第3スイッチヤードにあるSKEKB陽電子エネルギー圧縮部中央に位置するビーム位置モニター(BPM)の信号取り出し端子から真空リークが発生した、との一報を受けた. 夏期保守中であったことが不幸中の幸いであった. BPMをビームラインから取り出し当該リーク端子を取り外し、SUS板を溶接することで真空封じをした後、三端子BPMとして元に戻した. その後、予備機を至急発注し、冬期保守中に予備機と交換した. その後当該BPMは問題なくSKEKB運転に供している. 入射器では同様な120台以上ものBPMを運転に使用しているが、これまでBPM端子からのリークの経験は無かった. もし、原因が端子の構造問題に関わるのであれば、大きな問題に発展する可能性があり、早急に原因特定に取り組むことにした. 端子はSMAのセラミック付き真空フィードスルーである. リークはセラミックの機械的破壊によるものであった. 以降、BPMのリーク端子と他三端子を取り外し、また別に無垢の端子を準備し、端子に対し荷重試験を実施した. この試験により、真空パージ時に、端子に激しい振動が加わり劣化を引き起こし破壊に至った、とのシナリオが強く示唆された. この現象はBPMに限らず、加速器では広く用いられているセラミック材料に対する取り扱いとして重要と思われる. 破壊に至った経緯とその調査結果について詳細を報告する.
 
13:00-15:00 
WEP008
p.233
RFチョッパーからの漏れビーム測定
Measurement of leakage beam from RF chopper

○北村 遼,不破 康裕(JAEA),栗山 靖敏(京大),宮尾 智章(KEK)
○Ryo Kitamura, Yasuhiro Fuwa (JAEA), Yasutoshi Kuriyama (Kyoto Univ.), Tomoaki Miyao (KEK)
 
大強度陽子加速器施設J-PARCのリニアックではRFチョッパーで後続の3 GeVシンクロトロンへの入射に必要なバンチ時間構造を整形している。 チョッパーから不完全に蹴られた漏れビームは下流加速器でのビームロスとなるため、大強度運転の妨げとなる。 チョッパー下流に設置された縦方向モニタを用いて漏れビームを測定した。 本講演では漏れビーム測定についての現状と展望を紹介する。
 
13:00-15:00 
WEP009
p.235
炭素線スキャニングビームによる位置モニタ劣化
Degradation of position monitoring by carbon scanning beam

○佐藤 亜都紗,勝間田 匡,小林 泉,菅藤 洋平,大内 章央,永井 恭平,李 潤起,橋本 勝則(加速器エンジニアリング株式会社),想田 光,李 聖賢,岩井 岳夫,宮坂 友侑也(山形大学大学院医学系研究科先進的医科学専攻重粒子線医学講座)
○Azusa Sato, Masashi Katumata, Izumi Kobayashi, Yohei Kanto, Fumihisa Ouchi, Kyohei Nagai, Junki Lee, Katunori Hashimoto (AEC), Hikaru Souda, Sung Hyun Lee, Takeo Iwai, Yuya Miyasaka (Yamagata university)
 
山形大学医学部東日本重粒子センターでは2021年から治療が開始され、2023年度には年間治療人数が662人となり年々治療件数は増加傾向である。そのため、より安定したビーム供給が使命であり、それらを支える装置側でも計画的な部品交換をすることが重要である。特に放射線による経年劣化については、ビーム位置とサイズを担保するモニタで顕著に見えており、すでに交換を実施している。本施設での炭素ビームは、ビームを走査するスキャニング電磁石下流に設置された位置モニタで位置とサイズを担保している。位置モニタとは、平面電極と複数本のワイヤー間に高電圧を印加し、ビームが通過した際に生じる電離ガスと電子を増幅し、信号として取り出す多線式比例計数管方式の非破壊型位置検出器(MWPC)である。位置モニタはリアルタイムでビームを監視し、測定された位置ずれ量からフィードバック制御でビーム位置を補正しており、本施設ビーム制御の要である。位置モニタ劣化は平面照射において、特に照射頻度の高い中心部分での感度低下として観測された。それによって、フィードバック制御が過度に働き、線量が中心部で高くなる不具合が発生し、2部屋それぞれについて運用開始から1-2年で交換を実施した。このような不具合を未然に防ぐために、位置モニタでは中心部分の感度をトレンドで管理することで、次回の交換時期を早期に見積もり、効率的な運用を可能とする。
 
13:00-15:00 
WEP010
p.239
3 GeV陽子ビーム軌道の変化に基づくソレノイド漏れ磁場の調査と軌道補正
Investigation of solenoid fringe field based on change in 3-GeV proton beam orbit and the orbit correction

○山口 雄司,明午 伸一郎(原子力機構 J-PARCセンター),山崎 高幸(KEK 物構研)
○Yuji Yamaguchi, Shin-ichiro Meigo (J-PARC Center, JAEA), Takayuki Yamazaki (IMSS, KEK)
 
J-PARC 3 GeV陽子ビーム輸送施設(3NBT)では,3 GeVシンクロトロンから物質・生命科学実験施設の粒子生成標的へ陽子ビームを輸送している。ミュオン生成標的で生成する二次粒子は四極電磁石やソレノイドによって二次ビームラインへ取り出されるが,大強度ミュオンビームラインのソレノイドの漏れ磁場は,3 GeV陽子の軌道に大きく影響し,ミュオン生成標的より下流の中性子生成標的上のビーム位置を変化させ,機器保護システムにより運転を停止させ得る。安定したビーム運転のためには正確な軌道補正が重要となるが,そのためにはソレノイドの励磁電流と漏れ磁場の関係を正確に理解する必要がある。本発表では,ソレノイドの励磁による陽子ビームの軌道の変化から励磁電流と漏れ磁場の関係を明らかにするとともに,軌道補正結果を報告する。
 
13:00-15:00 
WEP011
p.244
機械学習によるAVFサイクロトロンの最適なパラメーターの探索
Optimizing avf cyclotron parameters through machine learning

○井村 友紀,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,齋藤 高嶺,田村 仁志,安田 裕介,荘 浚謙,ZHAO HANG,松井 昇大朗,Ahsani Hafizhu Shali,渡辺 薰,石畑 翔,板倉 菜美(核物理研究センター)
○Tomoki Imura, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Takane Saito, Hitoshi Tamura, Yusuke Yasuda, Tsun Him Chong, Hang Zhao, Shotaro Matsui, Shali Ahsani Hafizhu, Kaoru Watanabe, Sho Ishihata, Nami Itakura (RCNP)
 
加速器技術は、原子核・素粒子分野の発展を支え、新たな物理現象の探索実験に不可欠である。さらに、医療分野でがん治療やがん検査用ラジオアイソトープの生成、使用済核燃料廃棄物を減容するためのADS核変換技術など、応用分野においても加速器への期待が高まっている。中性子生成、μ粒子生成、ラジオアイソトープ生成の効率化に大強度ビームが求められている。AVFサイクロトロンでの大強度加速を目指す場合、空間電荷効果の取り扱いが問題となる。ビームの軌道を解析的に求めるのが困難なため、シミュレーションを実施した。本研究のシミュレーションは空間電荷効果を含むParticle in Cell計算コードのOPAL-cyclを使用し、1個のメインコイルと16個のトリムコイル、合計17個の磁石の最適な電流値による大強度加速を目指した。磁場パラメータの最適化は機械学習の一つの手法であるベイズ最適化により実施した。更にベイズ最適化の効率化と計算速度向上のために次元削減を検討した。この最適化の高速化は迅速な加速器制御においても重要である。講演ではAVFサイクロトロンのシミュレーションに対して機械学習を適用し最適なパラメータの探索状況について発表する。
 
13:00-15:00 
WEP012
p.248
J-PARCリニアックにおけるワイヤスキャナモニタ駆動系由来のノイズ測定
Measurement of noise originating from wire scanner monitor drive system in the J-PARC linac

○宮尾 智章(KEK/J-PARC),岡部 晃大,高橋 博樹,鈴木 康夫(JAEA/J-PARC),鈴木 隆洋(三菱電機システムサービス株式会社),割貝 敬一(アルバックテクノ株式会社),守屋 克洋(JAEA/J-PARC)
○Tomoaki Miyao (KEK/J-PARC), Kota Okabe, Hiroki Takahashi, Yasuo Suzuki (JAEA/J-PARC), Takahiro Suzuki (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Keiichi Warigai (ULVAC TECHNO, Ltd.), Katsuhiro Moriya (JAEA/J-PARC)
 
J-PARCリニアックでは大強度ビームの横方向プロファイル測定にワイヤスキャナモニタ(WSM)を使用しており、WSMは四極電磁石の電流値を決定する重要なビーム診断装置である。J-PARCリニアックが稼働して15年ほど経ち、機器の経年劣化が問題となっている。WSMではモータ駆動系であるステッピングモータの故障が度々発生し、予備品と交換してきたが、該当機器の生産終了により入手できなくなった。同じメーカーの代替機を購入して入れ替えを行ったが、制御方式の変更によりモータドライバからのノイズが問題になっている。本発表ではWSM駆動時に生じるノイズ測定結果について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP013
p.251
RCNP AVFサイクロトロン大強度化のためのLEBTシステムの最適化
Optimization of low energy beam transport system for high intensity AVF cyclotron at RCNP

○板倉 菜美,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,齋藤 高嶺,友野 大,安田 裕介,田村 仁志,荘 浚謙,趙 航,Shali Ahsani Hafizhu,松井 昇大朗,井村 友紀,渡辺 薫,石畑 翔(阪大RCNP),Gabriel Pecar(Duquesne University)
○Nami Itakura, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Takane Saito, Dai Tomono, Yusuke Yasuda, Hitoshi Tamura, Tsunhim Chong, Hang Zhao, Ahsani Hafizhu Shali, Shotaro Matsui, Tomoki Imura, Kaoru Watanabe, Sho Ishihata (RCNP, Osaka University), Pecar Gabriel (Duquesne University)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では、2019年からK140 AVFサイクロトロンの高性能化、すなわち加速ビームの大強度化を目的としたアップグレードが進められてきた。大強度化を実現するために、AVFサイクロトロン中心領域へのビーム入射効率を高めることが重要である。そのため、イオン源からインフレクタ電極までの低エネルギービーム輸送(LEBT)システムを最適化する必要がある。具体的には、イオン源からのビームを高強度かつ低エミッタンスで輸送するようなLEBTシステムを設計する。大強度ビームの輸送計算をする際、空間電荷効果を考慮する必要があり、解析的な計算をすることが難しいためシュミレーションを実施する。実際のシュミレーション計算には、Particle In Cell法で空間電荷効果を含めた計算が可能なOPAL-t等を使用する。その後、シュミレーションの結果を確認するために、AVFサイクロトロンの上流にあるペッパーポット型エミッタンスモニターで実際にエミッタンスを測定する。本発表では、LEBTシステムのシュミレーション計算とエミッタンス測定の詳細について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP014

シリコン単結晶薄膜における相対論的電子ビームのレインボー散乱の初観測
Observation of rainbow scattering of relativistic electrons in an ultrathin Si crystal
○高林 雄一(九州シンクロトロン光研究センター)
○Yuichi Takabayashi (SAGA Light Source)
 
原子や原子核どうしの衝突現象は古くから研究されてきたが,1960年から70年代にかけて,レインボー散乱と呼ばれる現象が観測された.レインボー散乱とは,虹の散乱過程と同様に,粒子がある特定の方向に散乱される確率(散乱断面積)が高まる現象である.一方,1980年代に,標的が結晶の場合でもレインボー散乱が起こることが理論的に予言され,その後,陽子ビームとシリコン単結晶薄膜を用いて,レインボー散乱が観測された.陽子は正の荷電粒子であるが,次のステップとして,電子のような負の荷電粒子のレインボー散乱についても興味が持たれる.しかし,その後,その方面の研究は進んでこなかった.そこで,本研究では,単結晶薄膜における電子のレインボー散乱の初観測を目的とする.実験はSAGA-LSのリニアックからの255 MeV電子ビームを利用して行った.標的として厚さ470 nmのシリコン単結晶薄膜を用いた.結晶透過後の電子ビームの角度分布は,結晶から5.12 m下流に設置されたスクリーンモニタを用いて測定した.電子ビームを結晶の<100>軸に平行に入射した条件(軸チャネリング条件)と,その条件から結晶を0.1度程度まで傾けた条件で測定を行い,レインボー散乱に特徴的な角度分布の測定に成功した.また,測定結果は,シミュレーションによってよく再現され,正の荷電粒子とは異なる散乱角度の衝突係数依存性が重要な役割を果たしていることが明らかになった.
 
13:00-15:00 
WEP015
p.254
大強度イオンビーム用ペッパーポット型エミッタンス測定器開発の現状
Current status of developing pepper-pot emittance monitor for high-intensity ion beam

○小高 康照,鎌倉 恵太,山口 英斉,今井 伸明,酒見 泰寛(原子核科学研究センター),大西 純一(仁科加速器科学研究センター),松崎 浩之(東京大学タンデム加速器研究施設)
○Yasuteru Kotaka, Keita Kamakura, Hidetoshi Yamaguchi, Nobuaki Imai, Yasuhiro Sakemni (CNS), Jun-ichi Ohnishi (RIKEN Nishina center), Hiroyuki Matsuzaki (MALT)
 
東京大学原子核科学研究センターにおいてフランシウム(Fr)の電気双極子能率を世界最高精度で測定する研究が進んでいる。Frは理研AVFサイクロトロンで加速された酸素18イオンビームを金標的に照射し、核融合反応により生成する。このために要求されるビーム強度は3pμA以上であるが、実験装置に繋がるビームラインにこのような大強度ビームを輸送するとビーム輸送効率が約60%に低下する。この問題を解決するために大強度イオンビーム用ペッパーポット型エミッタンス測定器(PEM)開発を進めている。エミッタンス測定値を初期値としたビーム軌道計算の場合は計算結果に測定誤差が影響する。PEMの測定誤差を評価するため東京大学タンデム加速器施設においてビーム照射テストを行った。直線ビームライン上の異なる3つの位置のビーム分布から推定したエミッタンスは誤差が無視できると仮定し、これに測定誤差を導入したエミッタンスを初期値としたビーム軌道計算を行い、PEMのエミッタンス測定値を初期値としたビーム軌道計算結果と比較した。今回使用した測定器の場合は位置誤差0.1mm、角度誤差0.6mradで説明ができる結果が得られた。またこの測定誤差を小さくする手段としてPEMの蛍光板で発光するビーム像を撮影するカメラ画素数増とカメラ視野拡大の組み合わせの最適化を進めており、その進捗も報告する。
 
13:00-15:00 
WEP016
p.260
加速器運転状況報告用ウェブサイトにおける報告ページの自動生成システムの開発
Development of auto-generation system of shift report web page for accelerator operation status

○杉村 仁志,大西 幸喜,古川 和朗,由元 崇(KEK加速器),廣瀬 雅哉(関東情報サービス)
○Hitoshi Sugimura, Yukiyoshi Ohnishi, Kazuro Furukawa, Takashi Yoshimoto (Accl. Lab., KEK), Masaya Hirose (KIS)
 
SuperKEKB加速器では毎朝一日の運転状況を報告するための打ち合わせを行っている。 これまで打ち合わせでは報告資料をプレゼンテーションスライドの形式で作成し、共有ストレージで管理していた。 報告資料にはさまざまなビーム調整等の加速器スタディやトラブルの状況やその対処などが含まれており、今後の運転のフィードバックをする上で貴重な資料、情報が含まれている。 しかしながらプレゼンテーション形式のスライドでは時系列順に単調にファイルが並べられているだけであり、過去の有益な情報を探し出し、読み返すことが困難であった。 そこでウェブサイトとして報告ページを集約するシステムを開発し、過去の情報を読み返ししやすくした。 ブラウザでの閲覧となることで、パソコンやスマートフォンでどこでも閲覧をしやすくし、検索もできるようになった。 また、報告資料で運転のトレンドグラフや一部のビーム調整の結果などを自動生成することで報告資料の作成にかかる時間を削減する工夫も施した。 このシステムの構築に関わるウェブ技術の詳細を発表する。
 
13:00-15:00 
WEP017

X線CT用電子リニアックの設計
Design of the electron linear accelerator for X-ray CT
○長江 大輔(東工大),吉田 昌弘,尾崎 健人,山田 貴典,長谷川 大祐,塩田 佳徳(金属技研),山本 昌志(オメガソリューションズ)
○Daisuke Nagae (Tokyo Tech), Masahiro Yoshida, Kento Ozaki, Takanori Yamada, Daisuke Hasegawa, Yoshinori Shiota (MTC), Masashi Yamamoto (Omega Solutions)
 
厚く密度の大きい金属で構成されている検体にも対応できるX線CTの開発を,東京工業大学と金属技研株式会社を中心として進めている。X線は電子銃からの電子をXバンドで動作するサイドカップル型電子リニアックにより加速し,タングステンターゲットに照射することにより発生させる。本発表では,電子リニアックの計算機シミュレーションと設計について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP018

普及型RFQリニアック用ECRイオン源の開発
Development of the ECR ion source for the commercial RFQ linac
○長江 大輔,池田 翔太,菊地 漱祐,林崎 規託(東工大),舛岡 優史,脇本 大介,山内 一成,山内 英明(タイム)
○Daisuke Nagae, Shota Ikeda, Sosuke Kikuchi, Noriyusu Hayashizaki (Tokyo Tech), Masashi Masuoka, Daisuke Wakimoto, Issei Yamauchi, Hideaki Yamauchi (TIME Co.)
 
タイム社株式会社は自社の精密機械加工技術を応用し、三体構造をしている陽子ビーム用の普及型RFQリニアックを開発した。東京工業大学とタイム社では、このRFQに適合するECRイオン源の開発を進めている。このECRイオン源の動作周波数は2.45 GHzであり、常電導磁石で必要な磁場を生成している。本発表ではこのECRイオン源の性能について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP019
p.263
粒子線治療用高温超伝導スペクトロスコピー型ガントリーシステムの概念設計
Conceptual design of a high temperature superconducting spectroscopy-type gantry system for particle therapy

○趙 航,福田 光宏(大阪大学核物理研究センター),Gerbershagen Alexander(PARTREC, UMCG, Groningen, The Netherlands),Schippers J. Marco(PSI, Villigen, Swizerland & PARTREC, UMCG, Groningen The Netherlands),Nesteruk P. Konrad(MGH and Harvard Medical School, Boston, MA, USA),依田 哲彦,神田 浩樹,Chong Tsun Him,Shali H. Ashani,松井 昇太郎,渡辺 薫,井村 友紀,石畑 翔,板倉 菜美(大阪大学核物理研究センター)
○Hang Zhao (RCNP, Osaka University, Japan), Mitsuhiro Fukuda (RCNP, Osaka, Japan), Alexander Gerbershagen (PARTREC, UMCG, Groningen, The Netherlands), Marco J. Schippers (PSI, Villigen, Swizerland & PARTREC, UMCG, Groningen, The Netherlands), Konrad P. Nesteruk (MGH and Harvard Medical School, Boston, MA, USA), Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Tsun Him Chong, Ashani H. Shali, Shotaro Matsui, Kaoru Watanabe, Tomoki Imura, Sho Ishihata, Nami Itakura (RCNP, Osaka, Japan)
 
In a particle therapy facility, accelerated particles are transported to treatment room, then delivered towards a tumor by a gantry system to acquire multiple treatment angles, so that multiple treatment angles can be used to minimize the dose in healthy tissue in vicinity of the tumor. To realize the rapid change of treatment angle, enabling stereotactic irradiations to mitigate motion effect on the dose distribution, we are designing a HTS (High Temperature Superconducting) Spectroscopy-type Gantry System. In the conception of spectroscopy-type gantry, the beam is guided to the appropriate azimuthal angle with cylindrical magnetic field surrounding the patient, and treatment angles are set only by adjusting the strength of dedicated magnets, instead of rotating a gantry with magnets of the beam transport around the patient. This method is realizing a fast change of azimuthal angle in a static gantry system. The rapid change of treatment angle also gives potential possibility of FLASH therapy. In this work, a conceptual design of a HTS Spectroscopy-type Gantry System and different methods to optimize its beam transportation to the patient will be discussed.
 
13:00-15:00 
WEP020
p.269
非回転型重粒子線ガントリーの概念検討
Conceptual study of non-rotating heavy-particle irradiation gantry for cancer therapy

○渡辺 薫,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,斎藤 高嶺,田村 仁志,安田 祐介,友野 大,荘 浚謙,ZHAO HANG,松井 昇大朗,Shali Ahsani Hafizhu,井村 友紀,石畑 翔,板倉 菜美(阪大 RCNP)
○Kaoru Watanabe, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Takane Saitou, Hitoshi Tamura, Yusuke Yasuda, Dai Tomono, Tsum Him Chong, Hang Zhao, Syotaro Matsui, Ahsani Hafizhu Shali, Tomoki Imura, Sho Ishihata, Nami Itakura (RCNP Osaka Univ.)
 
重粒子線治療は,炭素線を用いて体内のがん細胞を死滅させる非常に効果的ながん治療法の一種で、重粒子線のブラッグピークを腫瘍患部位置に合わせることで治療を行う。重粒子線は,X線や陽子線に比べて線量集中性が高く生物学的な効果が高い。粒子線治療では,粒子が通過する領域にある健康な細胞へのダメージを最小限にするために,複数の異なる角度からの照射で治療が行われる。そこで,照射方向の変更のために、回転型ガントリーが用いられてきた。しかし、重粒子線の場合、磁気剛性が最大6.6Tmにも及ぶため回転ガントリーの大型化が避けられなかった。今回の概念検討では,粒子の偏向面内の方位角方向に複数の小型超伝導電磁石を配置し、粒子軌道に沿った磁場分布を調整することで、ガントリー自体を回転させることなくビームを最適な治療角度に誘導する照射システムの概念検討を行った。これにより、従来の重粒子線用回転ガントリーよりもコンパクトで制御性に優れた照射システムによる高効率な治療が期待される。今回は、この非回転型ガントリーの機器構成や磁場分布及びビーム輸送解析などについて発表する。
 
13:00-15:00 
WEP021

重粒子線治療用小型シンクロトロンのための超伝導偏向電磁石におけるコイル製作精度の影響評価
Evaluating the effect of coil fabrication accuracy on superconducting bending magnets for a compact heavy-ion therapy synchrotron
○水島 康太,楊 叶,松葉 俊哉,野田 悦夫,浦田 昌身,宮武 立彦,岩田 佳之(量研),藤本 哲也(加速器エンジニアリング),天野 沙紀,折笠 朝文,高山 茂貴,平田 寛(東芝エネルギーシステムズ)
○Kota Mizushima, Ye Yang, Shunya Matsuba, Etsuo Noda, Masami Urata, Tatsuhiko Miyatake, Yoshiyuki Iwata (QST), Tetsuya Fujimoto (AEC), Saki Amano, Tomofumi Orikasa, Shigeki Takayama, Yutaka Hirata (Toshiba ESS)
 
量子科学技術研究開発機構では、次世代の重粒子線治療装置として超伝導電磁石を採用した小型シンクロトロンを設計開発中である。シンクロトロンに使用される超伝導電磁石の特徴としては、最大二極磁場を3.5 Tとし、液体ヘリウムを使用しない小型冷凍機による伝導冷却システムを採用しながら、およそ0.7 T/sの速い励磁速度を実現することを目標としている。また、加速中のビームロスを抑えて十分なビーム強度を確保するため、ビーム周回領域内で10-4台の高い磁場均一度が求められる。超伝導電磁石の場合、コイルを構成する超伝導体の配置精度が磁場均一度に強く影響する。そのため、超伝導コイルの製作精度が非常に重要となるが、超伝導線の巻き線や積層時の製作誤差によっては許容できない大きな多極磁場誤差を生じてしまう。本発表では、超伝導コイルの製作誤差によって想定される多極磁場成分から、シンクロトロンを周回するビームへの影響を評価し、コイル製作に求められる精度について検討した結果を報告する。
 
13:00-15:00 
WEP022

次世代重粒子線がん治療装置開発に関する現状報告
Recent progress on the development of a next-generation medical accelerator for heavy-ion radiotherapy
○岩田 佳之,白井 敏之,水島 康太,松葉 俊哉,片桐 健,宮武 立彦,佐藤 眞二,浦田 昌身,野田 悦夫(量刑機構),藤本 哲也(加速器エンジニアリング),近藤 公伯,榊 泰直,西内 満美子(量研機構・関西研),折笠 朝文,高山 茂貴,天野 沙紀,吉行 健(東芝ESS),橘 正則,戸内 豊,高田 和尚,坪松 悟史(住友重機械)
○Yoshiyuki Iwata, Toshiyuki Shirai, Kota Mizushima, Shunya Matsuba, Takeshi Katagiri, Tatsuhiko Mitayake, Shinji Sato, Masami Urata, Etsuo Noda (QST), Tetsuya Fujimoto (AEC), Kiminori Kondo, Hironao Sakaki, Mamiko Nishiuchi (QST KPSI), Tomofumi Orikasa, Shigeki Takayama, Saki Amano, Takeshi Yoshiyuki (Toshiba ESS), Masanori Tachibana, Yutaka Touchi, Kazuhisa Takada, Satoshi Tsubomatsu (SHI)
 
量研機構では、次世代重粒子がん治療装置である「量子メス」の研究開発プロジェクトを推進している。「量子メス」とは、量子ビームによる腫瘍除去手術になぞらえて名付けられてものであり、超伝導技術等を応用して装置の画期的小型化を図ると共に、複数種のイオンを最適に利用して治療の高度化を実現するものである。量子メスの加速器部は、永久磁石型14 GHz ECRイオン源、RFQ線形加速器、APF型IH-DTL線形加速器から構成される入射器、超伝導シンクロトロン、並びにビーム輸送ラインにより構成される。特に、超伝導シンクロトロンは、最大磁場3.5Tの90度偏向超伝導電磁石を採用することにより、リングサイズを8.6m×8.6mまで小型化することが可能となる。現在、量子メス実証機の詳細設計・製作、並びに、専用建屋の建設を推進しているところであり、2027年度の装置稼働を計画している。本発表では、装置開発の進捗や建設状況について報告する。
 
ポスター① (7月31日 2F交流ラウンジ)
13:00-15:00 
WEP023
p.273
SuperKEKB用の新型レーザーアボートシステムに関する研究
Study on a novel laser abort system for SuperKEKB

○張 叡,梶 裕志,宇野 健太,中山 浩幸(高エネルギー加速器研究機構),北村 和樹,角野 秀一(都立大)
○Rui Zhang, Hiroshi Kaji, Kenta Uno, Hiroyuki Nakayama (KEK), Katsuki Kitamura, Hidekazu Kakuno (Tokyo Metropolitan University)
 
To ensure stable and continuous commissioning of SuperKEKB, the machine protection system (MPS) plays a crucial role in safeguarding the accelerator's hardware from damage caused by beam loss. The response time of the MPS is a critical factor in mitigating hardware damage caused by the radiation of abnormal beams. In this study, we investigate a novel laser abort system for the SuperKEKB accelerator to reduce the response time of the beam abort trigger. The laser, serving as the trigger signal, is transmitted through free space. Compared to the traditional method, the transmission speed is 1.5 times faster than that in optical fiber. This faster signal transmission can shorten the abort time, enabling the realization of effective MPS. The optical design for long-distance laser beam propagation and measurement of coupled laser power have been studied. Investigation will be conducted regarding the long-term stability of the laser beam inside the accelerator tunnel.
 
13:00-15:00 
WEP024
p.277
白金コバルト温度センサによるKEK STF-2加速器の温度計測
Temperature measurement of the KEK STF-2 accelerator with a platinum cobalt temperature sensor

○丸山 卓也,山田 光二,原 和宏,三谷 晃司,久保田 秀樹,肥後橋 誠,木村 和弘,齊藤 理,山名 勝(株式会社 岡崎製作所),清水 洋孝,仲井 浩孝(大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構)
○Takuya Maruyama, Kouji Yamada, Kazuhiro Hara, Kouji Mitani, Hideki Kubota, Makoto Higobashi, Kazuhiro Kimura, Osamu Saito, Masaru Yamana (OMC), Hirotaka Shimizu, Hirotaka Nakai (KEK)
 
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構と株式会社岡崎製作所は、2016年度より超伝導加速器の温度計測を目的とした温度センサの開発を行っている。極低温での温度-抵抗値特性が優れている白金コバルト素子を感温部に持つ温度センサ(以下Pt-Co RTD)を製作し、試験用クライオスタットにて4 K以下の基礎的なデータ(精密な抵抗値測定、再現性、自己加熱特性)の取得を行った結果、4 K以下でも良好な特性を持つことが明らかとなった。次のステップとして、KEK STF-2加速器のクライオモジュール内にPt-Co RTDを取り付け、超伝導加速空洞用ヘリウムジャケット及び蒸発ガスの戻り配管の温度変化を計測した。STF-2加速器の超伝導加速空洞は2 K超流動ヘリウムによって冷却されるが、実際のビーム加速運転中においても、取り付けたPt-Co RTDは極低温温度環境下で安定した抵抗値を示し、実機への適合性を有していることが確認できた。本報告では、Pt-Co RTDの試験用クライオスタットでの取得データ、ならびにSTF-2加速器での温度計測結果について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP025
p.281
KEKにおけるSRF5カ年計画(MEXT-ATD)のためのEuropean XFELタイプ入力結合器の設計と製造
Design and production of european XFEL-type power coupler for STF 5-year plan (MEXT-ATD) at KEK

○片山 領,阪井 寛志,オメット マチュウ,道前 武,山田 智宏,山本 康史(高エネルギー加速器研究機構),カザコフ セルゲイ(フェルミ研究所)
○Ryo Katayama, Hiroshi Sakai, Mathieu Omet, Takeshi Dohmae, Tomohiro Yamada, Yasuchika Yamamoto (KEK), Sergey Kasakov (Fermi Laboratory)
 
2023年度よりKEKにて、文科省補助金による5カ年計画(MEXT advanced Accelerator element Technology Development (MEXT-ATD))が始まった。最終目標は、ILC(国際リニアコライダー計画)スペックを満足するクライオモジュールを製造し、冷却試験することである。これに必要な、空洞、入力結合器、磁気シールド、などは2013年に出版された技術設計書(TDR)に基づいて製造される。入力結合器は、欧州で運転中のEuropean XFEL仕様の設計を導入することになっているが、より高い信頼性を得るため、最近、KEKと国内メーカーとで共同開発された新しいセラミック窓を導入することにした。このため、日米科学技術協力の下で高周波設計をやり直し、セラミック厚みの最適化を図った。また、ロウ付けの機械強度確認、サーマルサイクル試験、TiN coating練習のためにセラミックサンプルを製造した。2024年度は、入力結合器の実機製造に入る予定である。本講演では、最近の進捗について報告する。 Acknowledgement : S. Belomestnykh (FNAL), H. Weise, D. Kostin (DESY), W. Kaabi, A. Miyazaki (IJCLAB).
 
13:00-15:00 
WEP026
p.285
KEK次期光源のための六極磁場係数の最適化
Optimization of sextupole magnetic fields for KEK future light source

○下崎 義人(高エネルギー加速器研究機構)
○Yoshito Shimosaki (KEK)
 
ビームの色収差を補正するために使用される六極磁場は同時に非線形共鳴や振幅依存チューンシフトなどのビーム物理現象をも誘起し、空間をビームの存在しうる安定領域とビームの存在できない不安定領域とに分ける。ビームの安定領域が狭いとビーム入射などに悪影響を与え、ユーザー運転に支障をきたすことになる。複数台の六極磁石の磁場係数を組み合わせることで色収差と非線形共鳴などの同時補正が可能となり、ビーム安定領域を拡張することが可能となる。ハミルトニアンで記述される色収差・非線形共鳴・振幅依存チューンシフト・非線形分散関数などの解析式を連立的に解くことにより、KEK次期光源におけるビーム安定領域の拡張を行なっている。連立解からlocal momentum acceptanceを求めてタウシェックビーム寿命を計算することで、次期光源においてシングルバンチ運転が可能かどうかの評価などを進めている。最適化手法と進捗について報告する予定。
 
13:00-15:00 
WEP027

コンパクトERLにおける大電流ビーム運転
Recent studies on high current operation at the compact ERL
○倉田 正和,下ヶ橋 秀典,阪井 寛志,塩澤 真未,山本 将博,島田 美帆,田中 オリガ,加藤 龍好,谷川 貴紀,帯名 崇,本田 洋介(KEK),Koay Hui Wen(TRIUMF)
○Masakazu Kurata, Hidenori Sagehashi, Hiroshi Sakai, Mami Shiozawa, Masahiro Yamamoto, Miho Shimada, Olga Tanaka, Ryukou Kato, Takanori Tanikawa, Takashi Obina, Yosuke Honda (KEK), Hui Wen Koay (TRIUMF)
 
コンパクトERL(cERL)は、2017年より産業利用ビーム研究のために運転している。2020年には、次世代リソグラフィ用の高出力EUV-FEL光源の研究開発を目的として、2台のアンジュレータが設置された。次のR&Dのステップはアンジュレータの小さな真空ダクト内径のもとでの低バンチ電荷(0.77 pC)での1 mAビーム運転、および高バンチ電荷(60pC)におけるFEL発振とエネルギー回収を両立した運転の実現である。また、機械学習を用いて高平均ビーム電流の維持とビームロスの抑制を同時に考慮したビーム調整を行い、平均ビーム電流が大幅に向上させることができることを実証した。また空間電荷効果の影響が強いバンチ電荷60pCでのFEL発振およびエネルギー回収運転の両立について最初の調査を行った。この発表では2023年のcERL大電流ビーム運転の成果について概観する。
 
13:00-15:00 
WEP028
p.290
KEK PF 2.5 GeV リング 新規デジタルLLRFの開発と性能評価
Performance evaluation and development of the new digital LLRF system at the KEK 2.5 GeV ring

○内藤 大地,山本 尚人,高橋 毅,本村 新,坂中 章悟(高エ研)
○Daichi Naito, Naoto Yamamoto, Takeshi Takahashi, Arata Motomura, Shogo Sakanaka (KEK)
 
KEK PFの2.5 GeVリングでは2022年度に新規デジタルLLRFシステム試作機の性能評価を行い、順次改善策をフィードバックして実機を完成させた。このLLRFシステムはμTCA.4規格のeRTM, AMC, μRTMといったデジタル制御ボード群で構成され、SPring-8やJ-PARC、SuperKEKBで培われたLLRF技術を流用して開発した。完成したLLRFシステムは2023年夏にPF RFシステムにインストールして運転調整を行った[1]。その後はビーム運転で問題なく安定に運用できている。一方でビーム運転の合間にはLLRFシステムの性能評価を進め、デジタル制御ボードのファームウェア改造によりLLRFシステムの性能向上を行なってきた。本講演では実機に施した試作機からの改善部分、特にRF信号入力部の反射率改善の評価について報告する。また2023年度に実機で行ったRF入出力信号の歪みの評価とその改善、RF読み出し部の安定性評価についても報告する。[1]D.Naito et al.,Proc of PASJ2023.
 
13:00-15:00 
WEP029
p.295
KEK PF-ARにおける新設GeVレンジ測定器開発テストビームラインの始動
Launch of the new GeV range test beamline for the development of an instrumentation technology in the KEK PF-AR

○満田 史織,本田 融,野上 隆史,長橋 進也,内山 隆司,高木 宏之,花垣 和則,池上 陽一,中村 勇,宇野 影二,森 隆志(高エネルギー加速器研究機構),前田 順平(神戸大学理学部)
○Chikaori Mitsuda, Tohru Honda, Takashi Nogami, Shinya Nagahashi, Takashi Uchiyama, Hiroyuki Takaki, Kazunori Hanagaki, Yoichi Ikegami, Isamu Nakamura, Shoji Uno, Takashi Mori (KEK), Jyunpei Maeda (Kobe Univ.)
 
KEK PF-ARでは、放射光源加速器の多角利用一環としてKEK素粒子原子核研究所の測定器開発室と連携協力し2021年にGeVレンジ測定器開発用テストビームラインの建設がなされた。加速器内にインターナルターゲットを挿入し、蓄積電子ビームとターゲットとの衝突から生まれるガンマ線をコンバータに照射し蓄積電子ビームエネルギーと同レベルのエネルギーを有する電子対生成を利用する。ここで得られる電子を利用した電子ビーム照射実験は放射光ユーザー実験に影響を与えずに共立運用されることが重要で、放射光加速器の運転時間の削減が著しい昨今において、多角利用が光源加速の存続と運転価値を高めることの鍵となっている。PF-ARにトップアップ運転を可能にする直接入射路が完成し、エネルギー可変の輸送が可能になったことでその推進の好機がおとずれた。放射光との共立運転に向けた加速器調整の取り組み、2023年にいよいよ開始されたユーザー利用の加速器運転の状況の詳細について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP030

京都大学自由電子レーザ施設におけるスクレーパ型光取出し方式の試験
Test operation of scraper out-coupling in Kyoto University free electron laser
○全 炳俊(京大エネ研)
○Heishun Zen (IAE, Kyoto Univ.)
 
共振器型自由電子レーザ(FEL)は電子ビームの運動エネルギーをレーザの電磁場エネルギーに変換することでレーザ増幅を行い、発振させるレーザである。この際の変換効率は引き出し効率と呼ばれ、共振器型FELの性能を決める重要なパラメータの一つである。京都大学エネルギー理工学研究所に設置された赤外自由電子レーザ施設KU-FELでは、これまでに9.4%という高い引き出し効率を達成している。光共振器損失をFEL増幅率で割ったものを規格化ロスと定義すると、共振器型FELの引き出し効率は規格化ロスの平方根の逆数に比例すると考えられている。本研究ではKU-FELにおいてこれまで用いてきたミラー中央に設けた貫通孔から共振器外に光を取り出すHole-coupling方式から共振器中にスクレーパミラーを挿入して共振器外に光を取り出すscraper out-couplingに変更することで、光共振器損失を低減し、引き出し効率の向上を目指した。結果として、FEL発振波長11μmにおいて光共振器損失を3.9%から2.2%まで低減することに成功した。約12.5%の最大引き出し効率を達成した。一方、scraper out-couplingではスクレーパーミラーの挿入量を変えて、光共振器損失を増加させる事ができるが、光共振器損失を4.5%まで増加させても顕著な引き出し効率低下は観測されなかった。この結果は光共振器損失以外の要因で引き出し効率が頭打ちになっている事を示唆している。
 
13:00-15:00 
WEP031
p.301
PF-ARにおけるMiddle-low-emittance Opticsの適用
Application of the middle-low-emittance optics to PF-AR

○東 直,長橋 進也,満田 史織(KEK)
○Nao Higashi, Shinya Nagahashi, Chikaori Mitsuda (KEK)
 
PF-AR (Photon Factory Advanced Ring)は6.5 GeVもしくは5 GeVの放射光加速器であり、年間2000時間前後のユーザー運転を行っている。 これまでPF-ARは293 nmというエミッタンスで運転を続けてきたが、ノーマルセルの位相進みを最適な値に設定できれば、元のおよそ半分程度である163 nmまで抑制できる。2000年代初頭にこの実現を目指す試みが何度かおこなわれたものの、真空リークやFB用アンプの故障などのトラブルに見舞われ、中断を強いられていた。 2017年より、PF-ARの入射路がSuperKEKBから独立し、リングエネルギーと同じ6.5 GeVで入射が可能となった。これにより、ramp-upに伴う種々の不安定性から開放され、低エミッタンスopticsの実現性がより高まった。 しかし2000年代初頭に発生したハードウェアの故障を未然に防ぐための措置として、放射光による真空リークを防ぐためのマスクがRF空洞近傍に設置された。これにより元の低エミッタンスopticsでは十分な物理apertureを確保することができなくなった。 そこで今回、このRFマスクの存在を考慮しつつ、293 nmと163 nmの間となるような中程度の低エミッタンスになるようなopticsを検討、実際の運転に適用した。今回はこのopticsと適用に至るまでの試行、現在の運用状況そして今後の課題について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP032
p.307
テラヘルツ自由電子レーザーで見る半導体高密度表面キャリアダイナミクス
Study for dynamics of high-density carriers on the semiconductor surface probing by the terahertz free electron laser

○川瀬 啓悟(QST)
○Keigo Kawase (QST)
 
大阪大学産業科学研究所量子ビーム科学研究施設のテラヘルツ自由電子レーザーは、数マイクロ秒にわたって数十ナノ秒間隔でピコ秒幅の高強度テラヘルツパルス列を発生する。この広い時間スケールのパルス列を用いて、フェムト秒高強度レーザーを半導体表面に照射することにより励起した高密度表面プラズマからのテラヘルツパルスの反射と透過の過渡的変化を計測することでキャリアダイナミクスを研究する。本研究では特に直接遷移型半導体であるGaAsと間接遷移型半導体であるGe, Siとを比較して実験している。本発表では、これまでに得られたGaAsとGe, Siについての過渡的応答についての計測結果を報告し、詳細を議論する。
 
13:00-15:00 
WEP033

垂直偏光超伝導マルチポールウィグラーのためのコイル形状の検討
Study of coil geometry for a vertically polarized superconducting multipole wiggler
○齊藤 寛峻,土屋 公央,満田 史織,帯名 崇(高エネ研)
○Hirotoshi Saito, Kimichika Tsuchiya, Chikaori Mitsuda, Takashi Obina (KEK)
 
KEK PFではピーク磁場5 Tの超伝導3極ウィグラーが稼働している。世界的にも珍しい水平ギャップ・磁場を採用しており、垂直偏光の高エネルギー白色光を利用したユニークな研究が可能となっている。しかし本光源には軌道振幅が大きい(6 mm)というビームダイナミクス上のデメリットがあることや老朽化が進んでいることから、新規光源の研究開発が進められている。軌道振幅を抑えるためにポール長を短くするとピーク磁場は落ちるがポール数を増やせば光子数を稼げることから、新規光源としては超伝導マルチポールウィグラー(SCW)が適していると考えている。垂直偏光かつ10 keV以上の高エネルギー帯域の放射光を生成するには40~50 mm程度の比較的大きな水平方向ギャップで2~3 T以上の高磁場を出す必要がある。また周期長は100 mm程度以下に抑えるのが理想的である。このような条件を満たす光源は世界的にも例がなく、本研究ではこれを実現し得るSCWの設計検討を行っている。SCWのコイル形状としては、ビーム偏向面内にコイルを巻く水平巻きが一般的である。しかし近年はNbTiより高い臨界電流密度を持つNb3Sn線材を使った円形コイルの技術開発が進んできていることから、この円形コイル面がビームに垂直になるよう並べた垂直巻きコイルも有力候補と考えている。本発表では磁場計算をもとにコイル形状による磁場の違いや現実的な垂直偏光SCWのパラメータについて議論する。
 
13:00-15:00 
WEP034
p.310
J-PARC MR真空制御システムのアップグレード
Upgrade of vacuum control system for J-PARC Main Ring

○楊 敏,上窪田 紀彦,佐藤 吉博,佐々木 知依,西川 雅章(KEK/J-PARC)
○Min Yang, Norihiko Kamikubota, Yoshihiro Sato, Tomoi Sasaki, Masaaki Nishikawa (KEK/J-PARC)
 
The vacuum control system in J-PARC Main Ring has been in operation for about 15 years, and the ion pumps had been controlled by a commercial EPICS-embedded PC, microIOC. However, the microIOC was discontinued, and no spare available since 2018. Therefore, we replaced the microIOCs with MOXA servers (serial-LAN server) and saba-taro micro-servers during 2023 and 2024. In addition, we redesigned: a) the hardware cable connections (to have smaller number of RS485 devices in a chain), and b) the EPICS database configurations (to have faster response time). The upgraded system has been in operation without a problem since Jan. 2024. More details will be described in the paper.
 
13:00-15:00 
WEP036
p.314
J-PARC Linacにおけるビームロスモニター用MPSモジュールの更新
Update of BLM MPS module for J-PARC Linac

○高橋 博樹,加藤 威(原子力研究開発機構),宮尾 智章(高エネ研),鈴木 隆洋(三菱電気システムサービス株式会社)
○Hiroki Takahashi, Takeru Kato (JAEA), Tomoaki Miyao (KEK), Takahiro Suzuki (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.)
 
J-PARC Linacは大強度の加速器であるため、異常が発生した際に高速にビームを停止させ、ビームによる影響を最小限にすることを目的とした機器保護システム(Machine Protection System: MPS)が構築されている。 一方で、MPSを構成する既存MPSモジュールは、J-PARC稼働初期から使用されており、その経年化による動作不具合の発生が懸念されている。そのため、MPSを構成するモジュールの計画的な更新(交換)を進めている。 既存のビームロスモニタ(BLM)用MPSモジュールは、コンパレータ機能を有しており、入力されたBLMの計測信号について、閾値(外部入力電圧)より高い場合はMPS発報する設計となっている。一方で、電源等の一般的なインターロック信号への対応は考慮されていないため、既存のLinac MPSは、標準MPSモジュールとBLM MPSモジュールを組み合わせて構成されている。しかしながら、既存モジュールの再製作においては、主要部品の生産中止に伴う部品変更が必要不可避となっており、再設計が必要となっている。 そこで、既存BLM MPSモジュールの基本機能を有し、且つ、標準MPSモジュールのインターフェースとの互換性を有するBLMコンパレータモジュールを開発し、ビームロスモニタ用MPSの更新を進めることとした。本件では、Linacにおけるビームロスモニター用MPSモジュールの更新状況及び計画について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP037
p.318
eBPFを用いたEPICSアプリケーションの監視ツールの検討
Investigation of monitoring tools for EPICS application using eBPF

○佐々木 信哉(KEK)
○Shinya Sasaki (KEK)
 
EPICSは加速器の制御システム構築のために広く利用される、ネットワーク分散型制御システムを構築するためのフレームワークである。EPICSではI/O Controller (IOC) 上でEPICSアプリケーションを実行し、所望の制御システムを構築する。制御システムの安定な動作や、トラブル時の原因究明のためにもEPICSアプリケーションの動作を監視することは重要である。EPICSアプリケーションの監視にはデバイスサポートなどのサポートモジュールをIOCに組み込んで行うことが多い。例えば、IOCの状態を表すレコードを提供するiocStatsや、IOCに対するChannel Access Putの操作を記録するためのCaPutLogなどが利用される。しかし、サポートモジュールを利用する場合、監視したいEPICSアプリケーションの実行前にモジュールを組み込んでおく必要がある。また、監視したい内容によってはサポートモジュールで行うには難しい場合もある。そこで、Linuxカーネルで提供されるeBPF機能を用いた監視ツールを検討した。eBPFを利用する事で、サポートモジュールでは実現しにくい監視をEPICSアプリケーションそのものに手を加えずに実現できる。また、事前にEPICSアプリケーションに組み込む必要がないため、EPICSアプリケーションの実行後にeBPFプログラムを起動して監視を行うことができる。本稿ではEPICSアプリケーションの監視にeBPFを用いる利点および欠点を考察し、作成したeBPFプログラムに関して報告する。
 
ポスター① (7月31日 2Fリハーサル室)
13:00-15:00 
WEP038
p.324
トリガ付き加速器スケーラモジュールによるMPS発報の可視化
Visualization of mps alarms using triggered scaler module

○田島 佑斗(関東情報サービス),上窪田 紀彦(研究員),Yang Min(KEK/J-PARC)
○Yuto Tajima (Kanto Information Service), Norihiko Kamikubota (Researcher), Min Yang (KEK/J-PARC)
 
 J-PARCで開発されたPLC型「トリガ付き加速器スケーラ」モジュールは、J-PARCタイミングシステムが加速器機器向けに配信している各種タイミング信号の異常、例えば稀に発生する電源機器開始トリガ抜けが起こった事を現場で検知できるように開発されたモジュールである。 一方、MPS(Machine Protection System)は、加速器機器に異常が発生した時に加速器の運転を安全に停止するシステムである。MPSが発報した時、J-PARC MR加速器の周期(1.36s or 4.24s)のどこで発生したか、運転員にはわからない。そこでトリガ付き加速器スケーラモジュールを使用し、MPSがMR加速器周期の何処で発生したかを可視化するシステムを開発中である。 開発したシステムでMPS発報の時間情報を運転員が確認できるようになる。今後の運用では、MPS発報の原因特定から加速器の運転再開までの時間の短縮が期待できる。
 
13:00-15:00 
WEP039
p.328
機械学習を用いたSuperKEKB加速器入射調整ツールの改良
Improvement of machine-learning-assisted injection tuning for SuperKEKB

○加藤 臣之輔(東大理),三塚 岳(高エ研)
○Shinnosuke Kato (UTokyo), Gaku Mitsuka (KEK)
 
フレーバー物理精密測定や新物理探索を主な目的とするBelleⅡ実験/SuperKEKB加速器にとって、ルミノシティ向上は喫緊の課題である。2022ランまでに改善すべき問題として、ビーム輸送路(BT)からSuperKEKBメインリングへの電子・陽電子ビーム入射において入射効率が安定しないことが挙げられ、これは積分ルミノシティの低下を招く。ビームの入射調整に用いられるマグネットは主にDCステアリングマグネット、セプタムマグネット、キッカーマグネットであり、現在はオペレーターがこれらを組み合わせ合計6個のパラメータとして手動で調整している。我々は入射調整を効率化するために、機械学習、特にベイズ最適化に基づく調整ツールを開発した。 本講演では入射調整ツールの改良及び、2024年1月末以降の物理ランにおける調整ツール用いた入射効率最適化試験結果の発表を予定している。
 
13:00-15:00 
WEP040
p.332
小型野生動物によるJ-PARCメインリングの光ファイバー通信への被害
Damage to fibre optic communications in the J-PARC Main Ring caused by small wildlife

○山田 秀衛,上窪田 紀彦,木村 琢郎(高エネルギー加速器研究機構/J-PARCセンター),国安 祐(三菱電機システムサービス(株)),佐藤 健一,下川 哲司(高エネルギー加速器研究機構/J-PARCセンター)
○Shuei Yamada, Norihiko Kamikubota, Takuro Kimura (KEK/J-PARC center), Yu Kuniyasu (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Kenichi Sato, Tetsushi Shimogawa (KEK/J-PARC center)
 
J-PARC Main Ringは2008年に運転を開始した大強度陽子シンクロトロンで、周長1600mの加速器トンネル、複数の電源棟、2つの実験施設で構成されている。2022年に、加速器制御ネットワークと主電磁石電源のタイミング信号分配システムの2つの異なる光ファイバーネットワークで通信障害が発生した。これらは建設期に敷設されたもので、当初は損傷や経年劣化が疑われた。調査の結果、いずれも建物内で迷惑な小型野生動物による食害だったことが判明した。障害発生から原因究明までの経緯とその後の対策について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP041
p.335
表面増強LIBS法を用いたニオブ電解研磨液の分析
Analysis of niobium electro-polishing liquid using surface-enhanced LIBS method

○仁井 啓介,井田 義明(マルイ鍍金工業株式会社),遠山 裕太,島津 佑輔,松本 歩,八重 真治(兵庫県立大学)
○Keisuke Nii, Yoshiaki Ida (Marui Galvanizing Co., Ltd.), Yuta Toyama, Yusuke Shimazu, Ayumu Matsumoto, Shinji Yae (University of Hyogo)
 
ニオブ製超伝導空洞の製造では、性能向上のための表面処理として電解研磨が採用されている。空洞量産に向けて電解研磨の品質を向上させるためには、電解液中に溶け込んでいるニオブの量を簡便に分析、確認する必要がある。レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS法)はレーザーアブレーションで生成するプラズマの発光分光により試料の元素分析を行う方法であり、多様な環境で簡便に多元素を分析できる手法として注目されている。今回、微量溶液の分析が可能な表面増強LIBS法を用いて電解研磨後のニオブ電解液中のニオブ量の定量分析を試みた。分析の感度や精度を向上させるため、基板には多孔質シリコンを使用した。その結果ニオブ溶解量1~10g/Lの範囲で直線的な検量線が得られ、定量分析が可能であることが分かった。
 
13:00-15:00 
WEP042
p.338
10A級大電流ビームの加速に向けた大口径高周波空胴の高次モード電場分布測定
Higher order mode electric field distribution measurement of the large aperture RF cavity for the acceleration of 10-ampere-class high current beam

○佐古 貴行(東芝エネルギーシステムズ),石 禎浩,上杉 智教,栗山 靖敏,森 義治(京大),津守 克嘉(量研機構),安藤 晃(東北大),米村 祐次郎(九大)
○Takayuki Sako (Toshiba Energy Systems), Yoshihiro Ishi, Tomonori Uesugi, Yasutoshi Kuriyama, Yoshiharu Mori (Kyoto Univ.), Katsuyoshi Tsumori (QST), Akira Ando (Tohoku Univ.), Yujiro Yonemura (Kyushu Univ.)
 
イオンビームの低エネルギー領域の加速にはRFQ(高周波四重極線形加速器:Radio Frequency Quadrupole)が広く利用されている。RFQでは100mA級のビーム加速が実証されている一方、核融合プラズマの加熱や原子力発電により生じる長寿命放射性廃棄物の核変換処理等の分野では1~10A級のイオンビーム加速が求められている。このような大電流ビームの領域では空間電荷効果による発散力が強く働くため、従来の加速器によるビーム加速は困難である。この課題を解決するため、単胞型空胴と呼ばれる新たな加速方式が考案された。単胞型空胴は大口径ビームダクトと単一の加速ギャップを備えた高周波空胴を複数台並べ、空胴毎に独立に高周波を投入することでイオンビームを加速する方式である。大口径のビームダクト内でビームサイズを広げて空間電荷効果を抑制し、超電導電磁石によりビームを収束することで大電流ビームの加速を目指している。単胞型空胴の設計に際しては、大口径ビームダクト内の電場分布の解析精度が重要な点となるが、基本モードについては検証が完了し、解析と実験が良く一致することを確認した。 本発表において、高次モードの電場分布について解析と実験の比較検証結果を報告する。
 
13:00-15:00 
WEP043

TE211型複合加速構造単空洞リニアックの高周波特性解析
RF simulation of TE211-mode single hybrid cavity linac
○池田 翔太,林崎 規託(東工大 研究院)
○Shota Ikeda, Noriyusu Hayashizaki (Tokyo Tech IIR)
 
東工大では、低エネルギー領域における高効率大強度陽子ビーム加速に適した、TE211型複合加速構造単空洞(TE211型SHC)リニアックの研究開発をおこなっている。 TE211型SHCリニアックは、RFQセクション(4ベイン型RFQ線形加速器)、ドリフトチューブセクション(トリプレット電磁石内蔵マッチングセル&ダブルInterdigital-H型ドリフトチューブ線形加速器)により構成される。 TE211型SHCリニアックの高周波特性を明らかにするため、3次元電磁場シミュレーションソフトウェアにより電磁場解析をおこなった。各セクションの空洞内径やエンドカット等といった空洞形状に対する電場分布や共振周波数を解析し、解析結果から電場分布が均一となる空洞形状のデザインをおこなった。 本発表では、解析結果及び空洞のデザイン経過について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP044

東京工業大学における加速器開発の歩み
History of particle accelerators development in Tokyo Institute of Technology
○林崎 規託,池田 翔太,岡村 昌宏(東工大)
○Noriyosu Hayashizaki, Shota Ikeda, Masahiro Okamura (Tokyo Tech)
 
東京工業大学と東京医科歯科大学が統合して,今年10月より東京科学大学がスタートする。これまで発表されてきた論文や資料などをもとに,東京工業大学における加速器開発の歩みを振り返り,今後の展開について考える。
 
13:00-15:00 
WEP045

超伝導加速器のための極めて清浄なストリングアッセンブリ手法の検討
Investigation of an extremely clean string assembly method for superconducting accelerators
○井藤 隼人,山田 智宏,道前 武,山本 康史,梅森 健成(KEK)
○Hayato Ito, Tomohiro Yamada, Takeshi Dohmae, Yasuchika Yamamoto, Kensei Umemori (KEK)
 
超伝導加速器の組み立て時に空洞内部にゴミ・チリが混入すると、発熱やfield emissionによる空洞性能の著しい低下が起きてしまう。そのため、クリーンルームでのゴミ・チリの混入を許さない清浄な組み立て技術の確立は超伝導加速器にとって重要な開発事項である。 昨年度からKEKでは、国際リニアコライダー(ILC)計画の実現に向けた技術開発を国際的に進める新たな枠組みである「ILCテクノロジーネットワーク(ITN)」とも関連した、新たな5カ年計画(MEXT-ATD)が始まっており、プロトタイプクライオモジュールの設計・製作を進めている。本モジュール製作におけるクリーンルームでの空洞連結作業(ストリングアッセンブリ)では、従来よりも更に清浄な組み立てを目指し、そのための研究開発を進めている。 昨年度末、1.3GHz TESLA型9セル超伝導空洞のエンド部を模擬した空洞モックアップを製作し、ストリングアッセンブリ時に空洞内に侵入するようなゴミ・チリの数をパーティクルモニタで評価できるシステムを構築した。本発表では、構築したシステムを用いて実施した組立作業時に空洞内部や空洞管ベローズに侵入するゴミ・チリの評価結果や、これらの侵入を抑制するような新しい組み立て手順・手法の検討について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP046

小型成膜炉を用いたNb3Sn成膜試験および膜質評価
Nb3Sn deposition test using a small deposition furnace and film quality evaluation
○井藤 隼人,山田 智宏,梅森 健成,阪井 寛志(KEK),笠間 奏平(東北大学)
○Hayato Ito, Tomohiro Yamada, Kensei Umemori, Hiroshi Sakai (KEK), Sohei Kasama (Tohoku University)
 
Nb3SnはNbに比べて約2倍高い転移温度を持つことから、これまでNb空洞が2Kの温度で達成していた高Q値を4Kの温度で実現することができ、液体ヘリウムを用いない伝導冷却での加速器運転も可能とする。また、臨界磁場もNbに比べて約2倍高いため、将来的にはNb空洞の2倍高い加速勾配も期待できる。これらの観点から、Nb3Snは次世代超伝導加速空洞の材料として有望視されている。 KEKでは世界でも主流となっている蒸気拡散法によるNb3Sn空洞製造の研究を進めている。本手法はNb空洞内でSnCl2やSnを加熱・蒸発させることで空洞内面にNb3Sn膜を成膜する手法であるが、製造した空洞内面のNb3Sn膜質を直接詳細に分析することは技術面、コスト面から考えて難しい。そこで今回、蒸気拡散法により成膜されたNb3Sn膜の膜質と成膜パラメータの関係の理解を早め、Nb3Sn空洞製造研究全体のスループットを高めるために、サンプル成膜用の小型成膜炉を立ち上げ、サンプルに対するNb3Sn成膜試験を開始した。本発表では、サンプルに対する成膜試験の概要と成膜したNb3Sn膜の表面・断面分析、超伝導特性評価の結果について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP047
p.342
HOM減衰型スポーク空洞の研究
Study of HOM-damped spoke cavities

○沢村 勝(量研機構)
○Masaru Sawamura (QST)
 
スポーク空洞を光源用加速器として用いるため研究を進めているが、大電流加速を行う場合に超伝導加速器のHOMモードの減衰が重要になってくる。同じ周波数ならばスポーク空洞は楕円空洞に比べて、空洞サイズが小さくすることができるが、従来のHOM減衰器では大きさが変わらないため、加速器全体をコンパクトにすることができない。そこでスポーク内部にHOM減衰機能を組み込むことにより、コンパクト化を可能にするスポーク空洞について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP050
p.345
蓄積リング高周波空洞用導波管真空封止セラミック窓の放電抑制
Suppression of discharge for a waveguide-type vacuum window in RF cavities of a storage ring

○山口 博史,大島 隆(高輝度光科学研究センター),早賀 紀久男(スプリングエイトサービス),安積 隆夫(量子科学技術研究開発機構),惠郷 博文(高エネルギー加速器研究機構),稲垣 隆宏(理化学研究所)
○Hiroshi Yamaguchi, Takashi Ohshima (JASRI), Kikuo Hayaga (SES), Takao Asaka (QST), Hiroyasu Ego (KEK), Takahiro Inagaki (RIKEN)
 
SPring-8では、次世代の蓄積リング高周波空洞としてTM020モードHOM減衰型高周波空洞と、本空洞に備わる結合度可変カプラーに接続する導波管で真空封止をするセラミック窓を開発してきた。本セラミック窓は、現在SPring-8で使用しているカプラー一体型のセラミック窓(東芝社製E4263)と比較して小型であるため、セラミックの冷却や破損時の交換が容易になり、かつ空洞結合部と機能を分離しているためにビーム負荷に応じて結合度を調整することが可能である点が特徴である。この空洞とセラミック窓は、3GeV高輝度放射光施設ナノテラスが蓄積リング高周波空洞として採用し、昨年から運転に使われている。 本セラミック窓の大電力試験において、セラミック窓の真空側で放電が頻繁に発生し、真空度が悪化するとともに高周波電力が反射してインターロックで停止するという問題が発生した。この放電は、特定の電力領域で特に起こりやすいので、セラミック表面での一面性マルチパクタ放電によるものではないかと推測している。この問題を解決するために、1) セラミックに垂直に磁場をかけること、および2) セラミック表面に二次電子放出係数(SEY)の小さい物質をコーティングすること、の2方法で放電を抑制することを考え、実際に試験を行った。本報告では、これらの方法による放電抑制の状況について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP051
p.350
Xバンド電子ビーム縦方向診断システムのためのSUS430製渦巻き型ダミーロードの開発
Development of a spiral-shaped dummy load made of SUS430 for the X-band transverse deflector system

○安留 健嗣(理研),稲垣 隆宏,前坂 比呂和(理研, 高輝度光科学研究センター),岩井 瑛人,近藤 力,大島 隆(高輝度光科学研究センター, 理研),松原 伸一,斗米 貴人(高輝度光科学研究センター)
○Kenji Yasutome (RIKEN), Takahiro Inagaki, Hirokazu Maesaka (RIKEN, JASRI), Eito Iwai, Chikara Kondo, Takashi Ohshima (JASRI, RIKEN), Shinichi Matsubara, Takato Tomai (JASRI)
 
X線自由電子レーザー線形加速器施設SACLAでは、電子ビームの縦方向密度分布を診断する装置として、分解能1 fsを目標としたXバンドの高周波ディフレクターシステムの開発を進めている。本システムでは電子ビームを、空洞に投入する20 MW程度の大電力マイクロ波が励起する電磁場により横方向に蹴り、空洞の下流に設置されている偏向磁石によりディフレクターの蹴り角と垂直方向に曲げる。この電子ビーム分布形状をスクリーンとカメラを用いて撮像することで、バンチの縦方向分布とエネルギー情報を同時に得ることができる。このシステムにおいては、空洞を通過したマイクロ波を出力側で適切に終端することで、マイクロ波が入力側に反射することを防ぐ必要がある。この目的のため、我々はSUS430製の渦巻き型ダミーロードの開発を進めている。SUSは銅に比べて電気伝導度が一桁程度小さいため、短い空洞で減衰させることができる。また、空洞の形状を渦巻き型にすることで、さらなる小型化が可能である。現在はダミーロードの試作機を製作中であり、6月初旬に完成する見込みである。試作機の性能評価の後、実機の製作を行う予定である。本発表では、ディフレクターシステムの概要を述べ、ダミーロード試作機を用いた低電力マイクロ波による反射特性の測定とシミュレーションとの比較について報告し、実機製作の展望を述べる。
 
13:00-15:00 
WEP052
p.356
電気/永久型ハイブリッド磁石の研究開発
Research and development of an electric/permanent hybrid magnet

○LU YAO(広島大学),島田 美帆,宮内 洋司,帯名 崇,原田 健太郎(高エネ研),高嶋 圭史(名古屋大学),加藤 政博(広島大学)
○Yao Lu (HiSOR), Miho Shimada, Hiroshi Miyauchi, Takashi Obina, Kentaro Harada (KEK), Yoshifumi Takashima (NuSR), Masahiro Katoh (HiSOR)
 
Permanent magnet is a reasonable option to replace electromagnet in a magnetic lattice to save power consumption of accelerator facility. However, the usage of permanent magnet is still very limited until now. One of the reasons is the temperature dependence of permanent magnet properties. We are designing electric/permanent hybrid magnet for future synchrotron light sources, which would be capable of field adjustability for flexible accelerator operation. A model permanent dipole magnet developed at Nagoya University is used to investigate the thermal effect generated by the coils and hysteresis effect in the magnet operation. Through the research, a magnetic field compensation scheme is developed. An active feedback system uses the real-time temperature of the permanent magnet to estimate the magnetic field strength and adjust the coil current. A design for an electric/permanent magnet is also in progress. The experimental result and design will be presented.
 
13:00-15:00 
WEP053
p.361
SuperKEKB ダンピングリング 六極電磁石冷却水配管の洗浄
Cleaning of sextupole magnet cooling water pipe in SuperKEKB damping ring

○植田 猛,小玉 恒太(高エネ研)
○Takeshi Ueda, Kota Kodama (KEK)
 
KEKつくばキャンパスにあるSuperKEKB電子陽電子衝突型加速器と入射用加速器(Linac)をつなぐビーム輸送路(BT)には約90台の偏向電磁石が設置されている。これらの電磁石はKEKB時代の物が流用されており、ホロ―コンダクタ内に酸化銅による詰まりが発生し、流量低下によるトラブルが起きている。また、BTの陽電子ラインに付随するDamping Ring(DR)にある電磁石でも同様に詰まりによる流量低下がみられた。特に六極電磁石において顕著であったためキャビテーション発生装置によるホロ―コンダクタ―内及び冷却水配管の洗浄を行った。本発表では流量低下の現状と洗浄作業の内容について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP054
p.364
ギャップスイッチの自己破壊電圧特性について
Study on self breakdown voltage characteristics of gap switches

○中田 恭輔,伊藤 俊輝,徳地 明(株式会社パルスパワー技術研究所)
○Kyosuke Nakata, Toshiki Ito, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan laboratory ltd.)
 
昨今はSiCやGaNといった高性能な半導体スイッチが登場し、広く使われている。しかし、未だに数十kVや数kAの定格を持つ半導体スイッチは市販されていない。ギャップスイッチは構造が簡単で、半導体スイッチでは難しい高電圧・大電流のスイッチングを実現できるが、自己破壊電圧など不確定要素が多い。本研究では、ギャップスイッチの自己破壊電圧の特性を、流れる電流とギャップスイッチ間の充填空気圧に着目して調べ、その結果を考察した。
 
13:00-15:00 
WEP055
p.367
SPring-8-IIに向けたID光軸調整用ステアリング電磁石の開発
Steering magnet for ID photon beam axis tuning at SPring-8-II

○谷内 努,青木 毅,安積 則義,川瀬 守弘,田島 美典,増田 剛正,松原 伸一,山口 博史(JASRI),深見 健司,小路 正純,田村 和宏,渡部 貴宏(JASRI/理研)
○Tsutomu Taniuchi, Tsuyoshi Aoki, Noriyoshi Azumi, Morihiro Kawase, Minori Tajima, Takemasa Masuda, Shinichi Matsubara, Hiroshi Yamaguchi (JASRI), Kenji Fukami, Masazumi Shoji, Kazuhiro Tamura, Takahiro Watanabe (JASRI/RIKEN)
 
SPring-8からSPring-8-IIへの移行においては既存の挿入光源(ID)からの光軸を再現する必要があるが、長期的な床面変動で蓄積リングと放射光ビームラインの位置関係が変化した場合も光軸を維持し続けなければならない。そこで、セル両端付近のステアリング(ST)機能付き8極電磁石に加えてID上下流にもST電磁石を設置し、ID内にローカルバンプを作ることで光軸調整を行う事とした。ST電磁石はBPMとゲートバルブ間の真空ベローズ部を覆うように設置されるため設置スペースが限られており、隣接する4極電磁石との磁気干渉を最小限にするためにもコンパクトかつフリンジ磁場を抑えた形状が望ましい。さらに、内側の真空ベローズの機械中心とビーム軸は23 mmのオフセットがあるため、ST磁場中心を機械中心からシフトさせる設計や、磁場分布に影響を与えるベローズ溶接部の透磁率にも配慮が必要である。ST電磁石に要求される6 GeV電子ビームのキック角は60 μradであるが、隣接する4極電磁石との磁気干渉による積分磁場減やキック角にある程度の余力を持たせるため、空冷コイルの電流密度は2.2 A/mm2を目標とした。その際のコイル温度上昇を抑えるため、コイルの中間部に外部へ伸びる銅板を挟み込んで放熱板とした。本発表では、ID光軸調整用ST電磁石の設計および試作機の性能等について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP056
p.372
J-PARC MR 速い取り出し用新高磁場セプタム電磁石SM32の復旧と性能評価
The recover and performance evaluation of a new high field septum magnet SM32 for fast extraction in J-PARC MR

○芝田 達伸,岩田 宗磨,石井 恒次,松本 教之,松本 浩(高エネ研)
○Tatsunobu Shibata, Soma Iwata, Koji Ishii, Noriyuki Matsumoto, Hiroshi Matsumoto (KEK)
 
J-PARC MRは現在アップグレードが進行中である。運転周期を1.32秒に短縮する事でニュートリノ実験施設への供給ビームパワー750kWを達成した。速い取り出し用の高磁場セプタムもアップグレードのため3台の新しいセプタム電磁石を製作した。それぞれをSM30、SM31、SM32と呼ぶ。ところが2021年8月SM32のNU側コイルで致命的な故障が発生したためインストールを延期した。故障したSM32用のコイルに代わる新コイルの製作は2021年度から開始され、NU側コイルが2022年11月に完成し、2023年1月にビーム運転のために直ぐに導入された。アボート側コイルは2023年3月に完成し、2023年夏のメンテ期間に導入した。本発表では新コイルを用いたSM32の性能評価として主に磁場測定結果について報告する。SM32は性能評価を充分行う前にビーム運転に導入されたため、磁場測定を行ったのはこれが初めてである。磁場測定として、印加電流値と磁極内磁場との線形性、磁極内磁場の水平方向の位置依存性、周回ダクトライン上の漏れ磁場測定の詳細について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP057
p.378
速い繰り返し誘導加速シンクロトロン用パターン電圧発生高圧直流電源 の研究
A Study on the Pattern Waveform High-Voltage Power Supply for the Fast Cycling Induction Synchrotron

○岡村 勝也,由元 崇,高山 健( 高エネ研),徳地 明( (株)パルスパワー技術研究所)
○Katsuya Okamura, Takashi Yoshimoto, Ken Takayama (KEK), Akira Tokuchi (PPJ)
 
10 Hz繰返し誘導加速シンクロトロン(IS)の次世代重粒子線セラピードライバーへの適用を検討している。ISはパルス電圧によってビームを加速することを特徴とするが、これまでは技術的制約からパルス電圧の大きさを加速条Vac=𝜌C0dB/dt (Vac:ターン当たりの加速電圧、𝜌: 偏向磁石の曲率半径、C0:リング周長、dB/dt:偏向磁石磁束密度励磁勾配)に完全には合わせることができず、短時間移動平均の電圧を加速条件に適合させるパルス密度変調方式としていた。しかし、この方式ではSynchro-Beta Couplingが誘発され、エミッタンス増大が不可避であった[1]。ガン治療用ドライバーとしての本格応用[2]にはこの加速条件を厳密に満たすことが必須である。通常の直流電源では電力変換が単方向であるために電圧上昇時はパターン追従できても、電圧下降時はエネルギーを損失することになる。本論文では双方向DC-DCコンバータ回路を用いることにより高効率で完全なパターン運転を実現する高圧直流電源の開発について述べる。 [1] “Induction Acceleration of Heavy Ions in the KEK Digital Accelerator: Demonstration of a Fast Cycling Induction Synchrotron”, K. Takayama et al., Phys. Rev. ST-AB 17, 010101 (2014). [2] ”Compact hadron driver for cancer therapies using continuous energy sweep scanning”, Leo Kwee Wah et al., Phys. Rev. A&B 19, 042802 (2016).
 
13:00-15:00 
WEP058
p.382
無絶縁高温超伝導ECRイオン源の開発
Development of non-insulation high temperature superconducting ECR ion source

○荘 浚謙,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,Zhao Hang,Shali Ahsani Hafizhu,松井 昇大郎,渡辺 薫,井村 友紀,板倉 菜美,石畑 翔(阪大RCNP),石山 敦士(早稲田大),野口 聡(北海道大),植田 浩史(岡山大),吉田 潤(住重),渡辺 智則(中電)
○Tsun Him Chong, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Hang Zhao, Ahsani Hafizhu Shali, Shotaro Matsui, Kaoru Watanbe, Tomoki Imura, Nami Itakura, Sho Ishihata (RCNP, Osaka U.), Atsushi Ishiyama (Waseda U.), So Noguchi (Hokkaido U.), Hiroshi Ueda (Okayama U.), Jun Yoshiada (SHI), Tomonori Watanabe (Chubu Electric Power Co.)
 
Development of non-insulation high-temperature superconducting magnet has advanced remarkably in recent years. With its properties of high current density and little degradation under strong external magnetic field, it can be applied to electromagnets used for high magnetic field instruments. ECR ion source can benefit from it, since high magnetic field is required for electron confinement in plasma, especially for highly charged ion beam production. As a prototype, a 10 GHz ECR ion source is under development in The University of Osaka. This ECR ion source uses non-insulation high temperature superconducting coils for both mirror and sextupole magnetic field. The design of the ion source coil system will be presented, and results of the high temperature superconducting coil performance test will also be discussed.
 
13:00-15:00 
WEP059
p.386
J-PARC MRの電磁石電源用SoC FPGAをベースとしたデータ収集システム
The data acquisition system based on SoC FPGA for the magnet power supplies in J-PARC MR

○TAN YULIAN,森田 裕一,下川 哲司,吉井 正人,三浦 一喜,小野 礼人(KEK),佐川 隆(ユニバーサルエンジニアリング),吉成 柾(NAT)
○Yulian Tan, Yuichi Morita, Tetsushi Shimogawa, Masahito Yoshii, Kazuki Miura, Ayato Ono (KEK), Ryu Sagawa (Universal Engineering), Masaki Yoshinari (NAT)
 
The magnet power supply output current's ripple, accuracy, and stability are significant to improve the beam quality. All these elements are closely related to the data acquisition probe, Analog-to-Digital Converter (ADC). In this paper, a data acquisition system based on System-on-Chip (SoC) Field Programmable Gate Array (FPGA) for ADC data readout is described. Moreover, the results of several typical ADCs, such as multi-channel, high-resolution, high-rate throughput, Successive Approximation Register (SAR) ADC, and Delta-sigma ADC are compared and discussed.
 
13:00-15:00 
WEP060
p.390
KEK-PF高速パルスキッカーのためのSiC半導体スイッチを用いた高速パルス電源の開発と高繰り返し試験
High repetition tests of a prototype pulsed power supply using SiC-MOSFETs for a fast kicker system in KEK-PF

○篠原 智史,満田 史織,内藤 大地(KEK),奥田 貴史,中村 孝(NexFi Technology Inc.)
○Satoshi Shinohara, Chikaori Mitsuda, Daichi Naito (KEK), Takafumi Okuda, Takashi Nakamura (NexFi Technology Inc.)
 
放射光源加速器KEK-PFではカムシャフトバンチシステムの導入を計画しており、そのための高速パルスキッカーとそれを駆動するパルス電源が必要である。特にパルス電源には極めて高い性能が要求されるためパルス電源の新規開発がシステム実現の鍵となっている。具体的にはパルス電源は 500 A 100 ns幅の大電流短パルスを1 MHzで駆動することが要求され、これはサイラトロンなどの従来のスイッチングデバイスでは実現が困難である。そこでKEK-PFでは高繰り返しで短パルス出力可能なSiC-MOSFET半導体に注目し、パルス電源の開発を行ってきた。試作初号機開発では、NexFi Tech.社製の特注SiC-MOSFETスイッチングモジュールを使用し、10Hzの低繰り返し試験ではあるが500Aの大電流を0.2%以上の安定度で出力可能なパルス電源の構築に成功した。一方で初号機は高繰り返し運用に伴う発熱の対処やパルス電源パルサー部への充電能力が十分でなく100kHzを超えるような高繰り返し試験はできなかった。そこでパルサー部への供給電流を低減し発熱も軽減可能な、エネルギー回収回路を導入した試作次号機開発を行った。本発表では、新型パルス電源の設計や、エネルギー回収回路の性能、100kHzを超える高繰り返し試験時の電流出力とその安定性について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP061
p.396
SuperKEKBビーム輸送路における電磁石用冷却水の維持管理
Maintenance of magnet cooling water for SuperKEKB beam transport line

○小玉 恒太,植田 猛(高エネ研)
○Kota Kodama, Takeshi Ueda (KEK)
 
加速器における主要な構成要素である電磁石の冷却水を維持,管理することは安定的な加速器運転を行う上でかかせない役割である.SuperKEKBビーム輸送路ではSuperKEKB運転開始初期において,酸化銅の詰まりによる流量低下により加速器運転を停止させることが頻繁にあった.現在では様々な対策により安定的な加速器運転を実現している.本発表ではその対策について報告する.
 
ポスター① (7月31日 3F研修室A)
13:00-15:00 
WEP062
p.399
SuperKEKB電子陽電子入射器におけるコヒーレントパルススタッキング法によるレーザー時間幅の制御
Temporal reshaping of lasers through the coherent pulse stacking technique in the SuperKEKB Electron/Positron Injector

○周 翔宇,本田 洋介,吉田 光宏(高エネ研/総研大),熊野 宏樹,豊富 直之(三菱電機システムサービス)
○Xiangyu Zhou, Yosuke Honda, Mitsuhiro Yoshida (KEK/SOKENDAI), Hiroki Kumano, Naoyuki Toyotomi (MSC)
 
For SuperKEKB, the laser employed to generate electrons can produce mJ-level ultraviolet light and has been operating flawlessly on the Linac for several years. To diminish the emittance of the electron beams, it is imperative to reshape the laser pulse cylindrically in three dimensions using an adaptive optics system. With the incorporation of Diffractive optical element (DOE), the spatial profile shaping of the laser has been effectively achieved. However, in the pursuit of low-emittance beams, temporal profile shaping assumes a more significant role than spatial profile shaping. By capitalizing on the group velocity mismatch between the two different polarizations of a birefringent crystal, a series of pulses can be assembled into the desired temporal pulse shape. Consequently, a coherent pulse stacking process is employed to shape flat-top temporal laser pulses.
 
13:00-15:00 
WEP063
p.403
表面相互作用のためのレーザー駆動加速を備えた超短パルスビーム入射装置の開発
Development of ultra-short-pulse beam injector with the laser-driven acceleration for interactions at surface

○大石 沙也加(奈良女子大学),小島 完興,Dinh Thanhhung(量研),松本 悠耶,村川 真宙(九州大学),岡野 朱莉,石井 邦和(奈良女子大学),榊 泰直(量研)
○Sayaka Oishi (Nara Women's University), Sadaoki Kojima, Thanhhung Dinh (QST), Haruya Matsumoto, Mahiro Murakawa (Kyushu University), Akari Okano, Kunikazu Ishii (Nara Women's University), Hironao Sakaki (QST)
 
重粒子線がん治療は、病巣に狙いを定めた照射が容易となり、体への負担が少ない治療である。しかし治療に必要なエネルギーを得るために高額な建設コストが問題となっている。そこで加速器の小型化による治療コストの減額を目指し、次世代重粒子線がん治療装置の入射器としてレーザー駆動型粒子線加速入射器の開発を行っている。 レーザー駆動イオン加速手法は、時間的かつ空間的に集束された極めて高強度なビームを創り出すために、放射線医学の分野においてFLASH効果等の実験に用いられている。しかし、この加速手法は一般的な加速器ビームとは異なり、ビーム中に多種のイオン(実験では不純物イオン)が多く含まれる欠点があり、実験精度を落としている。そこで、ビーム輸送系を利用して不純物イオンを飛行時間分析法とパルス電場を利用して取り出すことで、表面相互作用実験に向けた高強度ビームを創り出す。 本発表では、まず、レーザー駆動イオン加速の原理とビームの特徴を説明する。そして、飛行時間法とパルス電場によるイオン種の分離原理を示す。そして、量子科学技術研究開発機構関西研にて実施された10ナノ秒程度のパルス電場によるレーザー駆動イオンビームの高ピーク強度生成実験の結果について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP064
p.405
時空間的に収束したイオンビームによる固体からのX線放出現象解明のための装置設計
Design for the clarification of X-ray emission phenomena from solids by spatio-temporally focused ion beams

○岡野 朱莉(奈良女, 量研),大石 沙也加(奈良女, 量研),劉 暢,熊谷 嘉晃(奈良女),榊 泰直,ヂン タンフン,小島 完興(量研),石井 邦和(奈良女)
○Akari Okano, Sayaka Oishi (NWU, QST), Chang Liu, Yoshiaki Kumagai (NWU), Hironao Sakaki, Thanh Hung Dinh, Sadaoki Kojima (QST), Kunikazu Ishii (NWU)
 
 レーザー技術の発展により、レーザー駆動イオン加速器は近年注目を集めている。レーザー駆動によるイオンビームは、一般的な加速器のビームと性質が極端に異なる。一般的な加速器のイオンビームは直流電流ビームで1秒間に10^8〜10^10個程度であるのに対し、レーザー駆動のイオンビームは1ナノ秒程度の時間幅のパルスビームで同程度のイオン個数となる。この超短パルスイオンビームを物質に照射すると、大量のX線が放出されることが予測できる。  X線の放出現象を用いた分析手法として、蛍光X線分析(XRF)やX線回折法(XRD)、粒子誘起X線発光(PIXE)などが有名である。例えばPIXEでは、物質に陽子やヘリウムイオンなどのビームを照射すると、原子の内殻電離によって、その物質固有のX線が発生する現象を利用する。放出された特性X線を半導体検出器で測定することで、物質中に含まれている元素の量を求めることができる。  そこで、時空間的に集光されたレーザー駆動イオンビームを物質に照射した際、一般的な加速器のイオンビームと比較して、特性X線がどのように変化するのかに着目する。本報告では、レーザー駆動イオンビームとタンデム加速器によるイオンビームを照射したターゲットからのX線放出現象を比較するための実験装置の設計について述べる。
 
13:00-15:00 
WEP065
p.408
THz 加速器のためのプラズマ THz 源及びレーザー航跡場電子源の開発
Development of plasma THz source and laser wakefield electron source for THz accelerator

○大塚 崇光,鈴木 優太,植田 大智,片谷 光祐,白坂 幹人,塩澤 友紀,坂本 千明,種倉 遥斗,髙久 隼太郎,湯上 登(宇都宮大学)
○Takamitsu Otsuka (Utsunomiya University), Yuta Suzuki, Daichi Ueda, Kousuke Kataya, Mikito Shirasaka, Tomoki Shiozawa, Chiaki Sakamoto, Haruto Tanekura, Juntaro Takaku, Noboru Yugami (Utsunomiya Univ.)
 
レーザー航跡場加速電子源とプラズマ電磁波源の組み合わせによるテラヘルツ加速の実証を目指し研究を行っている.駆動レーザーは実験室で運用可能な 1TW の超短パルスレーザー (波長 800 nm,最大エネルギー 120 mJ,パルス幅 120 fs) である. レーザー装置のパルス長が比較的長いため,レーザー航跡場加速の方式は自己変調航跡場加速である.これまでに二次元粒子コードによって最適なプラズマ密度,プラズマ長を明らかにした.計算結果で得られた条件を達成するため,ガスジェットノズルを製作しその評価を行っている. 並行してレーザー生成ガスプラズマ電磁波の研究を進めている.超短パルスレーザーを中性ガスに集光照射することによりプラズマを励起し,励起したプラズマにレーザー進行方向と並行に外部電場を印加した.電磁波はレーザー進行軸に対して角度をもって放射され,偏波はラジアル偏波であった.また,電磁波強度は印加電場の2 乗程度で増加した.得られた結果を説明する電磁波の放射モデルの構築を進めている.
 
13:00-15:00 
WEP066
p.411
可逆性ゲル線量計の基礎特性と加速器施設における利用に関する検討
An overview of reusable gel dosimeters and how accelerator facilities utilize them

○飯島 康太郎(順天堂大学医学部 放射線治療学講座),早川 恭史,境 武志(日本大学量子科学研究所),高津 淳,村上 直也,小此木 範之,川本 晃史,小杉 康夫,村本 耀一,小島 佳奈子,加藤 奏,鹿間 直人(順天堂大学医学部 放射線治療学講座)
○Kotaro Iijima (Department of Radiation Oncology, Juntendo University Graduate School of Medicine), Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai (Institute of Quantum Science, Nihon University), Jun Takatsu, Naoya Murakami (Department of Radiation Oncology, Juntendo University Graduate School of Medicine), Noriyuki Okonogi (Department of Radiation Oncology, Juntendo University Graduate School of MedicineDepartment of Radiation Oncology, Juntendo University Graduate School of Medicine), Terufumi Kawamoto, Yasuo Kosugi, Yoichi Muramoto, Kanako Kojima, Kanade Katou, Naoto Shikama (Department of Radiation Oncology, Juntendo University Graduate School of Medicine)
 
加速器施設では放射線による機器の故障が度々問題となる。この問題を予測する一つの方法は長期的に線量を測定し、機器の故障と積算線量を関連付ける方法である。多くの施設では積算線量計として破壊読出しで飽和しやすい線量計を用いているが、これは定期的な測定やデータ取得後の継続測定には不向きである。このような観点から非破壊的な読出しが可能で、積算線量を継続的に測定できる線量計が求められている。化学線量計の一つであるゲル線量計はモノマーの重合反応や色素の酸化反応を用いた固体線量計である。今まで、ゲル線量計を加速器施設で利用するにはいくつかの制限があった。例えば酸化による線量応答性の消失や線量積算依存性、対数的な線量応答性、狭い測定レンジ等である。近年本邦で開発された可逆性ゲル線量計であるPVA-Iゲル線量計は従来のゲル線量計が持つ様々な制限を克服した。特に特徴的なのが、線量応答の高い線形性と非常に広い測定レンジ、熱によるアニーリング性である。PVA-Iゲル線量計は線量に比例して赤色化するため、可視光分析器や一般的なスキャナで非破壊的線量読出しが可能である。本発表では、外部放射線治療用加速器を用いた実験によって得られたPVA-Iゲル線量計の基礎特性(線形性、測定可能レンジ、線量率非依存性、アニーリング特性等)と、日本大学電子線利用研究施設における利用について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP067

吸着式蓄熱材を活用した排熱回収技術の事業化と基礎研究
Commercialization and fundamental research of waste heat recovery technology using adsorption heat storage materials
○水戸谷 剛,河野 裕一(東日本機電開発株式会社),鈴木 正哉,万福 和子(産業技術総合研究所),小久保 孝,谷野 正幸,佐藤 現,村岡 慎一(高砂熱学工業株式会社),髙橋 福巳,姉帶 康則(株式会社WING),大平 尚,菊池 和也(岩手県),廣沢 一郎(九州シンクロトロン光研究センター),吉岡 正和,成田 晋也,吉本 則之,藤崎 聡美,武田 洋一(岩手大学)
○Goh Mitoya, Yuichi Kono (HKK), Masaya Suzuki, Kazuko Manpuku (AIST), Takashi Kokubo, Masayuki Tanino, Gen Sato, Shinichi Muraoka (Takasago Thermal Engineering Co.,Ltd.), Fukumi Takahashi, Yasunori Anetai (WING Co.,Ltd.), Hisashi Odaira, Kazuya Kikuchi (Iwate Prifectural Office), Ichiro Hirosawa (SAVA-LS), Masakazu Yoshioka, Shinya Narita, Noriyuki Yoshimoto, Satomi Fujisaki, Yoichi Takeda (Iwate University)
 
Based on the Green ILC concept, an R&D program is underway to recover and utilize thermal energy emitted from the ILC facilities.Iwate Prefecture, where the ILC candidate site is located, is 80% mountainous, which is not suitable for online transportation of thermal energy.In order to effectively utilize the thermal energy emitted from the ILC facilities, a thermal energy circulation model suitable for such regional characteristics is required. We are aiming to commercialize an off-line waste heat circulation model that utilizes an innovative adsorptive thermal storage material, "HASClay", which can utilize low-grade waste heat.So far, they have developed a portable container that can hold approximately 10kg of dry HASClay and have evaluated its heat storage and emission performance.On the other hand, one of the issues for practical use is to elucidate the mechanism of water vapor adsorption/desorption on the microstructure of "HASClay". Here, we discuss two issues: (1) a demonstration test for commercialization of a thermal energy circulation model and (2) basic research to understand the structure and adsorption/desorption mechanism of "HASClay" using synchrotron radiation.
 
13:00-15:00 
WEP068
p.416
SuperKEKB 入射ビーム調整のためのPersonnel Protection Systemの変更
Personnel protection system modification for SuperKEKB injection beam tuning

○三増 俊広,小野 正明,工藤 喜久雄(高エネルギー加速器研究機構),田中 幹朗,田中 直樹(三菱電機システムサービス(株)),小川 英一郎(有限会社サイバーテクノ)
○Toshihiro Mimashi, Masaaki Ono, Kikuo Kudo (High Energy Accelerator Research Organization), Mikio Tanaka, Naoki Tanaka (Mitsubishi Electric System & Service Co. Ltd.), Eiichirou Ogawa (Cyber Techno Limited Company)
 
In recent years, the injectionn beam tuning has become more important in improving the performance of SuperKEKB. As the beam current in the main ring and the luminosity increases, the lifetime of the beam becomes shorter, so that there is an increasing demand for constantly maintaining high injection beam efficiency. Know-how on the injection beam tuning has been accumulated, and it has become possible to improve the condition of the injection beam if enough time is taken. In the Personnel Protection System at KEKB, when a person is working at Belle II, which is 1.5 km away from the injection point, it was not possible to tune the injection beam using a beam dump at the end of the beam transport line. Personnel Protection System was modified so that it could be possible to guide the beam up to the beam dump at the end of beam transport line during a person access to the Belle II
 
13:00-15:00 
WEP069

PF-ARにおける5GeVトップアップ運転実現のための電磁石設置 Phase 1.5
Installation of magnets for realizing the top-up injection with 5 GeV at the PF-AR on phase 1.5
○長橋 進也,内山 隆司,岡安 雄一,佐藤 政則,中村 典雄,野上 隆史,原田 健太郎,東 直,本田 融,満田 史織,川野 壽美,藤川 雄次(高エネ研)
○Shinya Nagahashi, Takashi Uchiyama, Yuichi Okayasu, Masanori Satoh, Norio Nakamura, Takashi Nogami, Kentaro Harada, Nao Higashi, Tohru Honda, Chikaori Mitsuda, Toshimi Kawano, Yuji Fujikawa (KEK)
 
高エネルギー加速器研究機構(KEK)のX線領域の単パルス専用放射光源であるPhoton Factory Advanced Ring(PF-AR)では、2017年に直接入射路(AR-BT)が完成したことにより、6.5 GeVまでの任意のエネルギーの電子ビームを入射することが可能となった。しかしながら、AR-BTで使用している偏向電磁石のうちの1台を、PFリングの入射路(PF-BT)と共有しており、この偏向電磁石内の電子ビーム軌道は、PF-ARの6.5 GeVとPFリングの2.5 GeVのエネルギー比で決まってしまう。このため、PF-ARを6.5 GeVよりも低いエネルギーで運転する場合には、PFリングとの同時入射ができず、偏向電磁石の磁場を一定の時間間隔で切り換えることで両リングへの入射を行っていた。そこで、2022年にPF-BTへ新たに3台の偏向電磁石を追加して両リングへの同時入射を実現し(Phase 1)、2023年に1台の偏向電磁石を設置してビーム軌道の調整裕度を増加するための改造を行った(Phase 1.5)。本発表では、それら偏向電磁石の設置と、その設置作業に伴って実施したPF-BTの電磁石のアライメントについて報告する。
 
ポスター① (7月31日 3F交流室A)
13:00-15:00 
WEP070
p.420
パルストRF信号の位相振幅検出
Measurement of phase and amplitude of pulsed RF signal

○大島 隆,岩井 瑛人(理研)
○Takashi Ohshima, Eiti Iwai (RIKEN)
 
XFEL施設では線形加速器の空洞に供給されるパルスRF信号の位相・振幅を高い精度で制御する 必要がある。そのために雑音を極限にまで抑えた機器が開発され、実運転に供されている。一方 で、高周波大電力増幅器の製造メーカーでは高価な測定機器を揃えることが困難な場合がある。 しかし、大電力増幅器においても過剰な雑音の増加は大きな問題であり、製造メーカーにおいて ノイズ源の特定、対処ができることが望まれる。ここで要求される測定器としては、増幅器を通 すことによって生じる雑音の評価であり、その目的においてはコストパフォーマンスの優れた方 法があるのでは無いかと考えた。本発表ではSPring-8で使用されている低電力高周波制御装置 と簡便な雑音評価装置とについて報告する。
 
13:00-15:00 
WEP071
p.425
実用化に向けた半導体を使用したMARX型クライストロンモジュレータの評価
Evaluation of a MARX-type klystron modulator using semiconductors for practical application

○中山 響介,徳地 明((株)パルスパワー技術研究所)
○Kyosuke Nakayama, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Lab. Ltd.)
 
我々はSiC半導体を使用したMARX型クライストロンモジュレータを開発した。本装置は145kV,120A,パルス幅10usのパルスを繰り返し周波数200Hzで出力する。半導体MARX回路は内蔵の主コンデンサから10kV/1800Aのパルスを切り出すのに使用し、後段のパルストランスで145kVまで昇圧する。 今回はパルス平坦度や電圧安定度など、各種測定結果に加え、負荷短絡時の動作を保証するためのFETの破壊試験の結果をまとめる。
 
13:00-15:00 
WEP072
p.429
Lバンド-レゾナントリング安定運転に向けた改良と今後の試験予定
Improvements and future test plans of L-band resonant ring

○石本 和也,沼田 直人,塙 泰河(株式会社 NAT),明本 光生,荒川 大,片桐 広明,中島 啓光,松本 修二,松本 利広,三浦 孝子(高エネルギー加速器研究機構)
○Kazuya Ishimoto, Naoto Numata, Taiga Hanawa (NAT), Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Hiromitsu Nakajima, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura (KEK)
 
国際リニアコライダー(ILC)での超伝導空洞への高周波源として10 MWマルチビームクライストロン(MBK)の使用を予定しており、仕様は運転周波数1300 MHz, パルス幅1.6 5ms, 繰り返し 5Hz, 最大出力10MW(5 MW×2ポート)である。超伝導空洞に付帯した入力カプラーまでL-band方形導波管(WR650)を用いて立体回路を構築しRFを供給する。このため、導波管は最大で5 MWのRF出力に耐えることが要求される。現在KEK STF棟内にはハイパワー試験設備としてレゾナントリングが構築されている。しかしILCで要求されるRFパワーに満たないところでレゾナントリングを構成しているコンポーネントでの管内放電が頻発している。本発表ではレゾナントリングの不具合及び安定運転に向けた改良、今後の試験予定について報告を行う。
 
13:00-15:00 
WEP074
p.432
Sバンド高効率マルチビームクライストロンのRFセクションの設計研究とモデリング
Design study and modeling of the RF section for an S-band high-efficiency multi-beam klystron

○王 盛昌,松本 修二,夏井 拓也,松本 利広,三浦 孝子,福田 茂樹(KEK)
○Shengchang Wang, Shuji Matsumoto, Takuya Natsui, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Shigeki Fukuda (KEK)
 
An S-band high-efficiency multi-beam klystron is currently in development to modernize the existing 50MW klystron utilized in the KEK e+/- injector. With an emphasis on energy conservation, the RF-section of this multi-beam klystron is designed to achieve a target efficiency of 73%, a substantial improvement from the 45% efficiency of the current 50MW klystron. Initial parameter selection is facilitated using a two-dimensional particle-in-cell code. The final design comprises 6 cavities, projecting an efficiency of 76%. Subsequently, A detailed three-dimensional model is built based on this layout. The three-dimensional particle-in-cell simulation confirms the efficiency of 73%. Tolerance analysis is performed to assess practical scenarios deviating slightly from the design specifications. Moreover, the impact of cavity high-order modes on klystron performance is evaluated and optimized through three-dimensional simulations. A comprehensive simulation encompassing the RF section, electron gun, and focusing magnetic field is also conducted.
 
13:00-15:00 
WEP075
p.436
SuperKEKBのビーム電流増強に向けたRFシステムの課題
Issues for SuperKEKB RF system for future beam current increases

○赤井 和憲,阿部 哲郎,池野 孝,榎本 瞬,岡田 貴文,小笠原 舜斗,小野 礼人,小野 正明,影山 達也,小林 鉄也,坂井 浩,竹内 保直,中西 功太,西脇 みちる,古屋 貴章,丸塚 勝美,光延 信二,森田 欣之,山口 孝明,吉田 正人,吉野 一男,吉本 伸一,渡邉 謙(高エネ研)
○Kazunori Akai, Tetsuo Abe, Takashi Ikeno, Shun Enomoto, Takafumi Okada, Shunto Ogasawara, Ayato Ono, Masaaki Ono, Tatsuya Kageyama, Tetsuya Kobayashi, Hiroshi Sakai, Yasunao Takeuchi, Kota Nakanishi, Michiru Nishiwaki, Takaaki Furuya, Katsumi Marutsuka, Shinji Mitsunobu, Yoshiyuki Morita, Takaaki Yamaguchi, Masato Yoshida, Kazuo Yoshino, Shin-ichi Yoshimoto, Ken Watanabe (KEK)
 
SuperKEKBは2018年に衝突実験を開始し、これまでにピークルミノシティはKEKBの2倍を超えた。蓄積ビーム電流は各種ハードウェアのリスク等を考慮しつつ慎重に増やしてきており、これまでの運転での最大値はLER 1.4A、HER 1.1Aである。設計ビーム電流はLER 3.6A、HER 2.6Aと、いずれもKEKB実績値の約2倍である。RFシステムは現状ビーム電流を制限する要因となっていないが、今後新たな電流領域に向かうに備え、現有RFシステムで蓄積可能な最大ビーム電流を評価するとともに、更なるビーム電流増強に向けた課題について検討した。具体的なポイントは、(1) ビームパワー供給能力、(2) ARESとSCC各空洞の高次モード(HOM)ダンパーの性能、(3) ビームローディングに起因する加速モードの不安定性への対策である。本報告では、個別課題のこれまでの検討状況も踏まえ、SuperKEKBの長期運転計画策定に資する目的で、RFシステム全体として俯瞰する。
 
13:00-15:00 
WEP076
p.442
レーザープラズマ航跡場入射用極短パルス線型加速器の低電力高周波システム試験
Test of a low power RF system for a linac for ultrashort pulsed electron beams injection into laser plasma wakefields

○増田 剛正(阪大産研, 高輝度光科学研究センター),益田 伸一,熊谷 教孝,大竹 雄次(高輝度光科学研究センター)
○Takemasa Masuda (SANKEN Osaka Univ., JASRI), Shinichi Masuda, Noritaka Kumagai, Yuji Otake (JASRI)
 
我々は、極短パルス電子ビームを生成し、後段のレーザープラズマ航跡場に追加速入射するためのCバンド線型加速器の開発を進めてきた。許容される電子ビームのパルス長は、プラズマ加速のレーザー強度を落としたとしても30fs(rms)程度が最大であり、10fs(rms)以下であることが望まれる。今回、本プロジェクトで設計・製作したマスターオシレータ、マスタートリガー、高周波電力・位相制御装置(LLRF制御装置)、半導体増幅器を組み合わせて低電力高周波システムの総合試験を実施したので、その結果について報告する。この低電力高周波システムは、マスターオシレータからの5712MHzの信号をLLRF制御装置を通してパルス化し、電力および位相を制御して、その2.5µs幅で1mW程度の高周波信号を800W出力のGaN半導体増幅器を通してクライストロンを駆動できる電力レベルまでに増幅する。LLRF制御装置と半導体増幅器は、マスターオシレータから出力される79.3MHzの信号に同期したマスタートリガーで生成した30Hzの繰り返し信号により起動される。今回の試験において、LLRF制御装置の高周波電力・位相モニター機能を用いて本システムからの2.5µs幅850W出力パルスの測定を行なったところ、立ち上がり後1〜2.3µsのパルス内位相平坦度は1.3度、短時間のパルス毎の振幅ジッターと位相ジッターはそれぞれ0.03%(rms)、0.04度(rms)であるという結果が得られ、許容されるパルス長よりも短い値となった。
 
13:00-15:00 
WEP077
p.447
KEK LUCX加速器におけるデジタルLLRFによる位相および振幅フィードフォワードを用いたビーム安定化
Beam stabilization at KEK LUCX facility by Digital LLRF phase&amplitude feedforward implementation into RF system

○ポポフ コンスタンティン,アリシェフ アレクサンダー,照沼 信浩(High Energy Accelerator Research Organization (KEK), 1-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan)
○Konstantin Popov, Alexander Aryshev, Nobuhiro Terunuma (High Energy Accelerator Research Organization (KEK), 1-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan)
 
KEK LUCX facility is a normal conductive multi-bunch electron linear accelerator devoted to develop an intense monochromatic source of laser-Compton X-ray for tomography applications. In order to perform samples tomography, stable laser-Compton X-ray beam is necessary. From accelerator side, laser-Compton X-ray generation stability is basically defined by electron beam parameters stability, while these parameters depend on accelerating field phase and amplitude. Therefore, the stabilization of accelerating field is a milestone to generate stable X-ray. Digital LLRF phase and amplitude feedforward system was developed, tested and implemented into KEK LUCX facility RF system for the accelerating field precise control. This research presents results of electron beam parameters stabilization at KEK LUCX facility. These parameters are beam average energy, energy spread (RMS), bunch charge, beam arrival time, transverse normalized emittance. Also, Digital LLRF feedforward system technical details are explained. Moreover, the beam parameters stabilization was simulated in the ASTRA tracking code.
 
13:00-15:00 
WEP078
p.451
イオンポンプおよび冷陰極真空計用高電圧導入端子の高湿度下での促進試験
Accelerated testing of high voltage feedthroughs for ion pumps and cold-cathode gauges under high humidity condition

○末次 祐介,柴田 恭,石橋 拓弥,白井 満,照井 真司,Yao Mu-Lee(高エネ研)
○Yusuke Suetsugu, Kyo Shibata, Takuya Ishibashi, Mitsuru Shirai, Shinji Terui, Mu-lee Yao (KEK)
 
SuperKEKB加速器では、真空排気ポンプとしてイオンポンプ、真空計として冷陰極真空計(Cold Cathode Gauge、CCG)が使用されている。これらは、信頼性の高い超高真空用真空ポンプ、真空計として、粒子加速器など大型真空システムに限らず広く用いられている。通常、高電圧導入端子を介して、イオンポンプでは容器内部のペニングセルに5~7 kVの、CCGでは内部の逆マグネトロン型セルに1~3 kVの高電圧が印加される。これら高電圧導入端子部では、装置が設置されている環境(例えば地下トンネル内)が、高湿度(低露点)など通常より悪い条件となった場合、沿面放電による異常放電や碍子ろう付け部の腐食が起きやすく、場合によっては絶縁破壊や端子の損傷に至る可能性がある。SuperKEKBでも例外ではなく、トンネル内温度や冷却水温度が変化した時などに導入端子部の過熱や焼損、リークがたびたび発生している。そこで、市販のイオンポンプやCCGで現在よく使用されている高電圧導入端子(コネクタ)や一般的な高電圧導入端子について、高湿度環境下で長時間高電圧を印加しそれらの高電圧特性や耐性を調べる促進試験を実験室で行っている。ここでは、2023年11月から開始した試験の状況やこれまでの結果を報告する。
 
13:00-15:00 
WEP079
p.456
SuperKEKB加速器真空システムにおける機械学習を応用した圧力異常検知システムの検討 -その2-
Study on a pressure anomaly detection system applying machine learning for the SuperKEKB vacuum system -2-

○末次 祐介(高エネ研)
○Yusuke Suetsugu (KEK)
 
SuperKEKB加速器真空システムにおいて、機械学習を応用した圧力の異常検知システムを検討している。検知システムでは、まず、SuperKEKB主リングの真空計約600個各々について、調べたい期間の数日前の測定圧力を参照データとし、経験や知見等に基づいたモデルを使い回帰曲線を導く。そして、調べたい期間の測定圧力(調査データ)と導出した回帰曲線との二乗平均平方根誤差などを入力パラメータとして2層の順伝搬型ニューラルネットワーク(FNN)を構築し、過去の異常データから学習して調査データを「正常」と「異常」にクラス分けする。昨年(2023年)は、2021-2022年運転時のデータ使った模擬試験を通して、圧力異常の兆候を検知できることを報告した。今回、機械学習で一般的に用いられるTensorFlow上のライブラリーKerasを使用することで入力パラメータを単純化し、また数を増やす等改良を加えた。さらに、異常な事例について、参照データおよび調査データの回帰曲線の重みパラメータ等を入力パラメータとして異常の原因、例えば、リーク、異常放電などを推定するFNNを追加した。プログラムは今期2024年4月から実機運転で試用を開始し、リークの兆候を検知するなどの成果がみられている。一方、原因推定に関して改善の余地も明らかとなっている。ここでは、これまでの開発・試用状況等を報告する。
 
13:00-15:00 
WEP080
p.461
EPICS制御イオンポンプ電源の開発と進捗
Development and progress of EPICS control ion pump power supply

○路川 徹也(株式会社 東日本技術研究所),山本 将博,内山 隆司(高エネルギー加速器研究機構)
○Tetsuya Michikawa (East Japan Institute of Technology Co., Ltd.), Masahiro Yamamoto, Takashi Uchiyama (KEK)
 
蓄積リングなど大型で超高真空が必要とされる加速器ではイオンポンプが多数使用されており、常時高電圧を出力し続けるその電源は基板への吸湿や粉塵等が原因となり度々故障が発生する。また、電源本体の定期的な保守や修理にはコストと時間を要し、予備電源を十分な台数を常時保持するのは金額的な負担が大きい問題がある。これらの問題を解決するために、防塵対策を施し、メンテナンス性に優れ、制御や監視が容易にできるイオンポンプ電源の開発を進めている。昨年試作したイオンポンプ電源の回路を元に4チャネル版を製作し、cERL診断部での実運用試験を開始する。現時点での開発の進捗と問題点及び今後の予定を報告する。
 
13:00-15:00 
WEP081
p.466
二重無酸素Pd/Ti蒸着を行った非蒸発型ゲッター(NEG) ポンプの開発と排気性能評価
Development and pumping performance evaluation of nonevaporable getter (NEG) pump with dual oxygen-free Pd/Ti deposition

○間瀬 一彦(KEK),菅野 隆之輔(横国大),菊地 貴司(KEK),西口 宏(バロックインターナショナル),大野 真也(横国大)
○Kazuhiko Mase (KEK), Ryunosuke Kanno (YNU), Takashi Kikuchi (KEK), Hiromu Nishiguchi (Baroque International Inc.), Shinya Ohno (YNU)
 
非蒸発型ゲッター(nonevaporable getter, NEG)は、超高真空中で加熱すると蒸発を伴わずに反応性の高い表面が生成し、室温に戻すと活性な残留ガスを排気する。反応性の高い表面を生成する工程を活性化、活性化に必要な温度を活性化温度と呼ぶ。NEGを用いた真空ポンプをNEGポンプと呼び、10–8 Pa台以下の超高真空排気に利用されている。我々が開発した新しいNEGである無酸素Pd/Tiは125℃、6時間のベーキングで活性化して、残留水素(H2)と一酸化炭素(CO)を排気し、大気導入、真空排気、ベーキングを繰り返しても排気性能は低下しない。無酸素Pd/Ti蒸着ICFゼロレングスNEGポンプは、溝加工を施したICFブランクフランジに無酸素Pd/Tiを蒸着して製作したもので、完全オイルフリー、専用電源不要、無振動、無騒音、スパッタ不要、10–9 Pa台まで排気可能、軽量、コンパクト、非磁性といった特徴がある。本研究では、溝加工を施したICF152ブランクフランジに無酸素Pd/Tiを2重に蒸着して、NEGポンプを製作した。本NEGポンプを150℃、6時間のベーキングで活性化したところ、H2に対して1650L/s、COに対して650L/sの初期排気速度が得られた。この排気速度は、従来品より高い。2重無酸素Pd/Ti蒸着によりPd表面積、Pd/Ti界面面積が増大したことが原因であると推測している。
 
13:00-15:00 
WEP082

Agメッキ膜の光刺激脱離評価
Photon-stimulated desorption analysis for Ag plating films
○金 秀光,谷本 育律,内山 隆司,本田 融(高エネルギー加速器研究機構)
○Xiuguang Jin, Yasunori Tanimoto, Takashi Uchiyama, Tohru Honda (High Energy Accelerator Research Organization)
 
放射光源用加速器では、発生するハイパワーの放射光を水冷アブソーバーで受け止め、下流にある真空ダクトやベローズを保護する。アブソーバーは無酸素銅やアルミナ分散強化銅で製作されており、放射光照射により大量のガスが発生し、近くに大排気量の真空ポンプを配置した上で、通常は長時間の光焼出しが必要となっている。 アブソーバー表面に低い光刺激脱離(PSD)の材料を成膜し、ビーム運転中の真空圧力を改善することで、光焼出し時間の短縮、加速器の安定運転のより短時間での達成が可能になる。我々はCu上にAgをスパッタリングすることで、スパッタリング無いCuに比べ、PSD係数が1桁以上低下することを発見した。 Ag膜を容易に作製し、また複雑な形状の部品にも成膜するために、メッキに注目した。基礎研究として、Cu板上にAgメッキを成膜し、PF BL21においてPSDの評価を行った。メッキは光沢剤の添加により、表面ラフネスが制御でき、平らと凹凸の表面を持つ2種類のAgメッキ膜を作製した。測定結果、いずれのAgメッキ膜のPSD係数はAgスパッタリング膜のそれより大きい。メッキ溶液中の水分が膜に混入し、PSDの増加をもたらしたと考えられる。また、凹凸のAgメッキ膜が平らなAgメッキ膜より高いPSD係数を示し、表面積の増加により放出するガス量も増えたと考えられる。
 
13:00-15:00 
WEP083
p.470
SPring-8-II用真空機器の熱解析及び構造解析
Thermal and structural analyses of vacuum components for SPring-8-II

○鈴木 伸司,出羽 英紀,正木 満博,増田 剛正(JASRI),大石 真也,小路 正純,高野 史郎,田村 和宏(JASRI, 理研),谷内 友希子,上田 庸資(JASRI),渡部 貴宏(JASRI, 理研)
○Shinji Suzuki, Hideki Dewa, Mitsuhiro Masaki, Takemasa Masuda (JASRI), Masaya Oishi, Masazumi Shoji, Shiro Takano, Kazuhiro Tamura (JASRI, RIKEN), Yukiko Taniuchi, Yosuke Ueda (JASRI), Takahiro Watanabe (JASRI, RIKEN)
 
大型放射光施設SPring-8のアップグレード計画であるSPring-8-IIでは、省エネルギー化等の環境性能の向上とともに、電子ビームの低エミッタンス化による大幅な光源性能の向上を目指している。周長1435 mのSPring-8-II蓄積リングの真空系を構成する真空チェンバーには、偏向磁石中に設置される偏向部チェンバー(Bending Section Chamber: BSC)と多極磁石中に設置される直線部チェンバー(Straight Section Chamber: SSC)の、断面形状の異なる2種類のチェンバーがある。真空チェンバーは抵抗性インピーダンス及び放射光の入熱により発熱するため、水冷の必要性についての検討が必須であり、水冷が必要な場合には入熱分布、磁極形状等を考慮した上で最適な冷却チャンネルの構造、配置を決定しなければならない。真空チェンバーの定常状態での温度・応力分布を調べるため、有限要素法を用いた熱解析及び構造解析を行った。BSC、SSCともに水冷をしない場合には90℃以上に到達するが、水冷をした場合には40℃以下に抑えられることを確認した。また、真空引きによって生じる応力と発熱による熱応力は、材料であるステンレスの0.2%耐力以下であることを確認した。ビーム位置モニターやベローズなどのSPring-8-II用真空機器についても同様の解析を行い、設計の最適化を図った。本発表ではこれらSPring-8-II用真空機器の熱解析及び構造解析の結果について報告する。
 
ポスター① (7月31日 3Fホワイエ)
13:00-15:00 
WEP084
p.475
高輝度エネルギー選択式放射光源リングにおけるバンチ伸張システムの検討
Design study of the bunch lengthening system for an energy switchable synchrotron ring

○山本 尚人,内藤 大地,高橋 毅,坂中 章悟(高エ研)
○Naoto Yamamoto, Daichi Naito, Takeshi Takahashi, Shogo Sakanaka (KEK ACCL)
 
2.5/5.0GeVエネルギー選択式高輝度放射光源リングについてバンチ伸張システムの設計検討を行った。本リングでは、5.0GeVにて200mA蓄積可能であり、2.5GeVにおいても500mAを安定周回できる高周波システムが必要となる。想定するビームエミッタンスはエネルギー2.5GeV,5GeVに対し、それぞれ200pmradと1nmradである。また、リング周長は750mとした。この際、鍵となるのは2.5GeV運転においてもバンチ結合型ビーム不安定性を励振しない高性能な寄生モード減衰型空洞の採用と、2.5GeV運転時のバンチ伸張運転の両立である。バンチ伸張運転はIntrabeam Scatteringと大電荷孤立バンチ運転時のHead-tail不安定性の抑制が目的であり、目標となるバンチ伸張率は4倍となる。 検討では、SKEKBの陽電子ダンピングリングで実績のあるRF空洞(SKEKB DR空洞)を主空洞に、共振周波数1.5GHzのTM020空洞を高調波空洞としてシステム設計を行った。本発表では、まず主空洞の寄生モードによるバンチ結合型ビーム不安定性の解析的な見積もりを紹介する。次に、高調波空洞も含めた場合のAC Robinson不安定性に関する考察、及びこの不安定性を回避する高周波システム設計について述べる。さらに、バンチ伸張時に出現する特有の縦方向モード結合型ビーム不安定性に関する検討結果も併せて紹介する。
 
13:00-15:00 
WEP085
p.480
小型リングの性能を評価するためのトラッキングコードの開発
Development of a tracking code for a small storage ring

○LU YAO,加藤 政博(広島大学),島田 美帆,宮内 洋司(高エネ研)
○Yao Lu, Masahiro Katoh (HiSOR), Miho Shimada, Hiroshi Miyauchi (KEK)
 
A tracking code based on C++ language has been developed for HiSOR-II which is under designing for the future plan at Hiroshima Research Institute for Synchrotron Radiation Science. If the radiation effect is taken into consideration, the electron motion in a ring is non-symplectic. Therefore, the explicit Runge-Kutta method can be applied in numerical tracking in electron storage ring. In addition to general magnet models calculated by Hamiltonian, an element model based on Runge-Kutta method is developed, which can take the 3D magnetic field into calculation. Because magnet components of HiSOR-II are combined-function magnets, the adjustability of sextupole components is limited. We want to use the magnetic field in longitudinal direction produced by the edge effect to estimate chromaticity, which will be compared with the Maxwellian fringe field effect. This program can perform a 6D tracking updated from a previous Runge-Kutta tracking code. The ring optics parameters such as closed orbit, Twiss parameter and tune can also be obtained.
 
13:00-15:00 
WEP086
p.483
ビーム負荷パワーのビーム電流依存性から求めたPF-ARのロスファクター
Loss-factor measurement of the PF-AR by means of a dependence of beam-loading power on the beam current

○坂中 章悟,山本 尚人,内藤 大地,高橋 毅,本村 新,高井 良太(高エネルギー加速器研究機構)
○Shogo Sakanaka, Naoto Yamamoto, Daichi Naito, Takeshi Takahashi, Arata Motomura, Ryota Takai (KEK)
 
PF-ARは大電荷(約63 nC)の単一バンチを蓄積し、時分割実験等のために大強度の硬X線を供給する放射光リングである。PF-ARはバンチ電荷が大きいため、バンチが空洞などの構造体を通過する際に失う電力(寄生モード損失)が大きい。このため、寄生モード損失の大きさを示すロスファクターの値は重要である。文献[1]では、ビームが空洞内から持ち去るパワー(ビームパワー)のビーム電流依存性から電子蓄積リングのロスファクターを求める手法が報告されている。この方法では、RFシステムにおいてビームがRF空洞内から持ち去るパワーを様々なビーム電流に対して測定し、これをビーム電流の2次関数でフィットする。ビームパワーのうち、シンクロトロン放射損失による寄与はビーム電流に比例するのに対して、寄生モード損失による寄与はビーム電流の2乗に比例する。このビーム電流依存性の違いを利用して寄生モード損失パワーを分離し、ロスファクターを求める。我々はこの手法をPF-ARに適用し、リングの合計ロスファクターを求めた。本発表では、この手法で評価したPF-ARのロスファクターを報告し、得られた結果について議論する。 [1] N. Novokhatski, Proc. PAC07, MOOAKI02.
 
13:00-15:00 
WEP087
p.488
バッファガス冷却器を備えたビーム物理研究用イオントラップシステムの開発 III
Development of an ion trap system with a buffer-gas cooler for beam dynamics studies III

○伊藤 清一(広大院先進)
○Kiyokazu Ito (AdSE, Hiroshima Univ.)
 
イオントラップに捕捉したイオンプラズマの運動は空間電荷効果を考慮しても加速器ビームと等価である.広島大学ではビーム物理研究に最適化したイオントラップシステムS-PODを用い,主に空間電荷効果がビームの挙動に与える影響について実験的研究を進めている.S-PODに捕捉したイオンプラズマのrmsチューンデプレッションは最も小さい時でおよそ0.85である.より位相空間密度の高いビームの挙動を調べるためにはイオンプラズマもより高密度化する必要がある.S-PODのイオンプラズマの温度は約0.3eVと比較的高いので冷却による高密度化が期待できる.バッファガス冷却は低温の軽いガスとの衝突でイオンを冷却する方法であり,ハドロンビームで用いられる電子冷却と同様の手法である.当然より低温のガスを用いる方がイオンプラズマの到達温度は低くなる.そこで,クライオスタットにより冷却した低温のヘリウムガスをバッファガスとして導入するシステムの開発を進めてきた.初期的な実験結果について報告する.
 
13:00-15:00 
WEP088
p.492
J-PARC MRにおける共鳴と今後の調整方針
Resonances in J-PARC MR and future strategy

○安居 孝晃,佐藤 洋一,發知 英明,五十嵐 進(KEK)
○Takaaki Yasui, Yoichi Sato, Hideaki Hotchi, Susumu Igarashi (KEK)
 
大強度陽子加速器施設(J-PARC)の主リング(MR)ではビーム強度増強のため、新電源開発をはじめとする機器の入れ替えを経て、速い取り出し(FX)運転における運転繰り返し周期を2.48 sから1.36 sへと短縮した。これによりMRの所期性能の750 kW運転を達成し、現在は新たに設定された目標であるFX 1.3 MW運転の実現に向けて研究が進められている。FX 1.3 MW運転実現にはさらなるビームロス削減が必須であり、ビームロスを引き起こすベータトロン共鳴の同定・対策が重要である。パルスあたり粒子数が世界最大であるMRでは特に空間電荷効果によって励起される共鳴も大きな影響を持ち、仮に電磁石の設置誤差・磁場勾配誤差がない理想的な条件でもビームロスが起きるとシミュレーションで予測されている。本発表では理想的な条件と実際の条件の両方の観点から各共鳴の影響を評価し、今後の調整方針について考察する。
 
13:00-15:00 
WEP089
p.498
高品質含浸型カソードを用いた加速器用グリッド制御電子銃について
Advanced grided gun using high-quality Ir coated dispenser cathode for electron accelerator

○菅野 浩一(株式会社エーイーティー),井関 操,木村 徹,小畑 英幸(日清紡マイクロデバイス株式会社)
○Koichi Kanno (AET,Inc.), Misao Iseki, Toru Kimura, Hideyuki Obata (Nisshinbo Micro Devices Inc.)
 
含浸型カソードは大電流電子源として安定で信頼性が高く、大電力マイクロ波管や加速器の電子銃として長年にわたり非常によく使用されてきた。医療用電子加速器の電子銃に関しては、日清紡マイクロデバイス株式会社が電子管製造で培われた技術を活かした設計・製造実績を持っており、研究用・産業用電子加速器の電子銃にも適した電子銃の供給が現在行われている。本発表では、日清紡マイクロデバイス株式会社が開発・製造する高品質なIrコーティング含浸型カソードを用いた加速器用グリッド制御電子銃について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP090
p.502
陽電子源用フラックスコンセントレータの開発
Development of a flux concentrator for positron source

○榎本 嘉範,高富 俊和,保住 弥紹,牛谷 唯人,福田 将史,森川 祐,佐藤 幹(高エネ研)
○Yoshinori Enomoto, Toshikazu Takatomi, Mitsugu Hosumi, Yuito Ushitani, Masafumi Fukuda, Yu Morikawa, Motoki Sato (KEK)
 
大強度陽電子源では、ターゲットで生成された陽電子を効率的に捕捉、加速するために、ターゲット直後にフラックスコンセントレータと呼ばれるパルス電磁石が設置されることがある。本発表ではILCの陽電子源をターゲットに開発を進めている、ピーク磁場5Tのフラックスコンセントレータについて、設計の詳細、製作の進捗、今後の予定などについて報告する。
 
13:00-15:00 
WEP091
p.507
ハドロン実験施設における回転円盤型2次粒子生成標的の開発
Development of a rotating-disk-type production target at J-PARC Hadron Experimental Facility

○渡邉 丈晃,青木 和也,上利 恵三,秋山 裕信,家入 正治,倉崎 るり,里 嘉典,澤田 真也,高橋 俊行,髙橋 仁,田中 万博,豊田 晃久,広瀬 恵理菜,皆川 道文,武藤 文真,森野 雄平,山我 拓巳,山野井 豊(KEK)
○Hiroaki Watanabe, Kazuya Aoki, Keizo Agari, Hironobu Akiyama, Masaharu Ieiri, Ruri Kurasaki, Yoshinori Sato, Shin'ya Sawada, Toshiyuki Takahashi, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Fumimasa Muto, Yuhei Morino, Takumi Yamaga, Yutaka Yamanoi (KEK)
 
J-PARCハドロン実験施設では、30GeVに加速された陽子ビームを金属標的へ照射し、そこで生成されるK中間子等の2次粒子を利用したバラエティーに富んだ原子核・素粒子実験を遂行している。2020年から1次陽子ビーム強度で最大95kWに対応した固定型標的を使用しており、2024年には82kWの安定したビーム運転を達成している。しかし、熱負荷が一定位置となる固定型の標的では100kWを超えるビーム強度を受けることが困難であるため、熱負荷を円周方向に分散させることのできる回転円盤型標的の開発を進めている。この円盤の素材として、高密度でかつ耐熱性に優れた純タングステンを候補の1つとしている。本発表では、純タングステン製円盤の試作試験の結果、および気体軸受を使用した回転システムの試験結果などの開発状況の報告を行う。
 
13:00-15:00 
WEP092
p.513
2次粒子生成標的のための金属3Dプリンタにより造形されたタングステン材の評価 (2)
Evaluation of tungsten made with 3D printer for secondary-particle production target (2)

○渡邉 丈晃(KEK)
○Hiroaki Watanabe (KEK)
 
J-PARCハドロン実験施設では、30GeVに加速された陽子ビームを金属標的へ照射し、そこで生成されるK中間子等の2次粒子を利用したバラエティーに富んだ原子核・素粒子実験を遂行している。標的の素材としては、2次ビームの要請などから高密度の金属が望ましく、次期標的として円盤形状のタングステンが1つの候補素材となっている。しかし、タングステンは難切削材のため、放熱のためのフィン形状といった複雑な形状の機械加工は極めて困難である。これを解決する1つの方法として、積層造形(金属3Dプリンタ)によるタングステンの造形が考えられる。金属3Dプリンタであれば、相当複雑な形状でも実現可能であると期待される。しかしながら、金属3Dプリンタにより造形されたタングステン素材については、基本的な機械特性や物性については十分明らかにされていない。そこで、現在最も普及しているレーザー照射方式パウダーベッド型の金属3Dプリンタでタングステン素材の造形を行い、そこから各種試験片の製作を行った。さらに造形能力の実証のため3次元的なフィン形状を持つ円盤の造形試験を実施した。本発表では、前回に引き続き機械特性の評価結果およびフィン造形試験の結果について報告を行う。
 
13:00-15:00 
WEP093
p.518
QST量医研サイクロトロン(NIRS-930)用小型ECRイオン源の復旧1
Restoration of compact ECR ion source for NIRS-930 cyclotron at QST-iQMS

○村松 正幸,涌井 崇志,北條 悟,杉浦 彰則(量研-量医研),岡田 高典,神谷 隆(加速器エンジニアリング)
○Masayuki Muramatsu, Takashi Wakui, Satoru Hojo, Akinori Sugiura (QST-iQMS), Takanori Okada, Takashi Kamiya (AEC)
 
量子科学技術研究開発機構(QST)量子医科学研究所(量医研)のサイクロトロン施設には、1974年に運転開始したNIRS-930 (K=110)と、1994年に運転を開始した放射線核種(RI)生産専用として利用しているHM-18(K=20) の2台のサイクロトロンがある。2021年11月の火災によりNIRS-930とHM-18は共に停止していたが、まずはHM-18の復旧作業を進め、2022年9月より供給運転を行っている。 NIRS-930では核医学、生物学、物理学分野における基礎科学・応用研究のためにビームの供給を行っていた。主に利用されていたイオン種は陽子、ヘリウムであり、また、炭素、ネオンなどの重イオンの供給も行っていた。これらのイオンの生成には、永久磁石のみで閉じ込め磁場を形成するECRイオン源(Kei-source)を使用している。Kei-sourceも火災の被害を受けており、主に煤の汚れとそれによる部品表面の腐食であるが、火災発生時の温度上昇による樹脂部品や永久磁石の劣化も考えられた。そこで、イオン源の復旧に向けて、永久磁石の磁場測定を行い減磁していなければ再利用することとした。ホールプローブを用いた磁場測定を行った結果、ミラー磁場、6極磁場に減磁は無く再利用可能であることが分かった。本発表では、磁場測定結果と引出電極部分の改造について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP094
p.521
RCNPにおける短パルスファイバーレーザーイオン源開発の検討
Study on short pulse fiber laser ion source development in RCNP

○松井 昇大朗,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,齋藤 高嶺,田村 仁志,安田 裕介,友野 大,荘 浚謙,ZHAO HANG,Shali Ahsani Hafizhu,井村 友紀,渡辺 薫,石畑 翔,板倉 菜美,橘髙 正樹(阪大RCNP),岩下 芳久,栗山 靖敏(京大複合研),不破 康裕(J-PARC/JAEA)
○Shotaro Matsui, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Takane Saito, Hitoshi Tamura, Yusuke Yasuda, Dai Tomono, Him Chong Tsun, Hang Zhao, Ahsani Hafizhu Shali, Tomoki Imura, Kaoru Watanabe, Sho Ishihata, Nami Itakura, Masaki Kittaka (RCNP, Osaka Univ.), Yoshihisa Iwashita, Yasutoshi Kuriyama (KURNS, Kyoto Univ.), Yasuhiro Fuwa (J-PARC/JAEA)
 
大強度ビームは、医療、物質科学、エネルギー研究など幅広い分野での需要が高まっている。例えば、ADS(加速器駆動型核変換システム)にはMW級サイクロトロンが必要となるが、その実現には、高バンチ密度による空間電荷効果の基礎研究が必要不可欠である。この課題に対応するため、短パルスイオン源により、サイクロトロン内部の高密度単バンチの挙動を詳細に解析することを目指す。短パルスイオン源はレーザーイオン源により実現することができる。レーザーイオン源は、固体あるいは気体にレーザー照射を行い、発生したプラズマから電場を用いて、イオンを直接引き出すイオン源である。今回、低出力でありながら、高いエネルギー密度が実現できるフェムト秒の極短パルスが生成可能なファイバーレーザーを利用することとした。今回構築したイオン源は、40MHzで発振するモード同期ファイバーレーザーを音響光学素子で切り出し、ファイバーアンプで増幅したのち、パルス幅を圧縮し金属標的に照射する構造とした。本発表では、イオン生成状況の詳細について発表する。
 
13:00-15:00 
WEP095

ECRイオン源のビーム量増強と運用効率向上のための引き出し電極の改良
Improvement of extraction electrode in ECR ion source for increasing beam amount and improving operational efficiency.
○斎藤 僚太(東北大学 RARIS 加速器核物理研究部)
○Ryota Saito (Tohoku university RARIS Division of Accelerator)
 
東北大学先端量子ビーム科学研究センター(RARIS)の保有する930型AVFサイクロトロンでは、 イオン源から供給されたイオンを加速し、ターゲットに当てることで原子核反応を生じさせ、 散乱の様子などを観測することで原子核の性質を調べるということを行なっている。イオン源からサイクロトロンに供給できるビームを増やすことができれば、ターゲットまで輸送できるイオンの量が増加し、原子核反応数の増加による統計誤差の減少や加速器の運用時間の短縮などの利点が期待できる。今回の実験では、AVFサイクロトロンにイオンを供給するイオン源のうち、炭素や酸素などのイオンを供給するECRイオン源の電極を改良することでビーム量を増強させることを試みた。
 
13:00-15:00 
WEP096
p.525
J-PARC大強度高周波駆動負水素イオン源の運転状況(2023-2024)
Operation status of the J-PARC high-intensity rf-driven negative hydrogen ion source in 2023/2024

○神藤 勝啓,大越 清紀(J-PARC/原子力機構),柴田 崇統,南茂 今朝雄(J-PARC/高エネ研),川井 勲(日本アクシス),池上 清(J-PARC/高エネ研),上野 彰(J-PARC/原子力機構)
○Katsuhiro Shinto, Kiyonori Ohkoshi (J-PARC/JAEA), Takanori Shibata, Kesao Nanmo (J-PARC/KEK), Isao Kawai (Nihon Axis Co.,Ltd.), Kiyoshi Ikegami (J-PARC/KEK), Akira Ueno (J-PARC/JAEA)
 
J-PARCでは、2014年秋に高周波駆動型の大強度負水素イオン源でのビーム供給を開始して10年が経過した。これまで大きなトラブルはほとんどなく、アンテナ破損による運転停止、交換作業も3回しかない。本発表では、2023年秋から2024年夏までのJ-PARC大強度高周波駆動負水素イオン源の運転状況と、現在イオン源グループが主に行っているJ-PARC製アンテナの開発状況について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP097
p.529
レーザーイオン源におけるプラズマ集束のためのテーパー型ソレノイド電磁石の設計検討
Design study of the taper solenoid magnet for plasma focusing in a laser ion source

○細谷 青児,柏木 啓次,山田 圭介(量研高崎)
○Seiji Hosoya, Hirotsugu Kashiwagi, Keisuke Yamada (QST Takasaki)
 
レーザーイオン源(LIS)はパルスレーザーを固体試料に集光して照射することでプラズマを発生させるイオン源であり、多様な元素のイオンビームを生成可能である。このプラズマからイオンを引き出す事によって加速器へイオンを供給するイオン源として用いることができる。QST高崎量子応用研究所では400 kVイオン注入装置へのLISの実装を目的として研究・開発を行っている。ビーム大電流化のためには拡散するレーザープラズマを効率的に集束させることが重要になる。これまでも直線型のソレノイドを用いてプラズマを集束させ、ビームを大電流化した例はいくつかある。しかし、レーザー光路の制限等からターゲットから離れた位置に設置することが多く、プラズマが直線ソレノイドに入るまでに大部分は損失してしまう。そこで我々は、より高効率にプラズマ集束するためにターゲット付近にテーパー型のソレノイド電磁石を設置すること検討している。テーパーソレノイドを用いることによって磁気モーメント保存則から、レーザープラズマの大きな発散角を小さくして下流に輸送することが可能になる。本発表ではシミュレーションを用いたテーパーソレノイドの設計検討について報告する。
 
ポスター② (8月1日 1F大会議室)
13:00-15:00 
THP001
p.532
J-PARC主リング速い取り出しビーム軌道計算の評価
Evaluation of beam orbit simulation for fast extraction in J-PARC main ring

○岩田 宗磨,石井 恒次,芝田 達伸,佐藤 洋一,安居 孝晃,浅見 高史,松本 教之,松本 浩(高エネルギー加速器研究機構)
○Soma Iwata, Koji Ishii, Tatsunobu Shibata, Yoichi Sato, Takaaki Yasui, Takashi Asami, Noriyuki Matsumoto, Hiroshi Matsumoto (KEK)
 
J-PARC主リングでは、ニュートリノビーム(NU)ラインまたはAbortラインへの速い取り出し(FX)が行われている。FX機器はキッカー電磁石4台と低磁場セプタム電磁石(SM) 2台、高磁場SM 4台から構成され、出射ビームが周回ラインと十分に分離されるまで、四極電磁石も通過する。それらの電磁石の設置位置と生成磁場を考慮し、SADコードを使用した軌道計算を行っているが、NUラインやAbortラインに設置されたビームプロファイルモニタで観測されるビーム位置は、計算結果よりも取出し側にずれる。NUラインでは、FX機器群の終端から約2.7m下流の位置で3mm程度のずれだった。このため、高磁場SMの出力電流を最大-6%ほど調整している。このずれの原因について調査を開始した。SAD計算においては入力した電磁石設置位置情報や磁場データの見直しと、ビーム運転の情報が正しく反映されているか確認する。実際の機器配置もレーザートラッカーで再測量を行う。それらの調査について進捗状況を報告する。
 
13:00-15:00 
THP002
p.538
非破壊型静電セプタム実現に向けたビーム分離試験装置の開発
Development of the beam separation exam device for the non-destructive electrostatic septum

○永山 晶大(東北大),原田 寛之(原子力機構),下川 哲司(高エネ研),佐藤 篤(NAT),山田 逸平,地村 幹,小島 邦洸,山本 風海,金正 倫計(原子力機構)
○Shota Nagayama (Tohoku Univ.), Hiroyuki Harada (JAEA), Tetsushi Shimogawa (KEK), Atushi Sato (NAT), Ippei Yamada, Motoki Chimura, Kunihiro Kojuma, Kazami Yamamoto, Michikazu Kinsho (JAEA)
 
シンクロトロンにおけるビームの遅い取り出し技術は,最先端の物理実験や放射線がん治療の実現における要である.従来の遅い取り出し機器では,ビーム軌道上に配置されたセプタム電極とビームとの衝突によるビームロスが原理的に回避できず,機器の損傷・放射化がビーム出力の大強度化やビームの安定供給の妨げとなっている.我々は上記課題の解決を目指し,ビーム軌道上に物質を含まない,非破壊型静電セプタムの開発を進めている.これまでに,非破壊型静電セプタム小型試作機を製作し,その電場測定手法を考案して,試作機で形成される電場の評価を行った.測定装置の仕様上,評価可能な電場は中心軸上の一次元分布に限られるが,測定結果は計算と良く一致した.加えて,二次元の電場分布を測定し,より詳細な評価を行うために,本研究では水平・鉛直両軸にワイヤモニタを持つ新たな電場測定装置の開発を進めている.次に,本装置の加速器実機への導入を想定して,周回ビームへの電場の影響やビームロスを計算により評価した.計算モデルの電場分布を多重極展開し,加速器の収束構造として導入して,J-PARC における遅い取り出しを計算上で再現した.計算の結果,従来の静電セプタムと比較してビームロスが有意に減少し,周回ビームへの悪影響は非常に少ないという結果が得られた.本発表では,上述の周回ビームシミュレーションと新たな電場測定装置の設計について報告する.
 
13:00-15:00 
THP003
p.543
縦方向計算コードBLonDのGPUバックエンドのベンチマーク
Benchmarking GPU backend of longitudinal simulation code BLonD

○足立 恭介,田村 文彦,野村 昌弘,島田 太平,宮越 亮輔,沖田 英史,吉井 正人,大森 千広,清矢 紀世美,原 圭吾,長谷川 豪志,杉山 泰之(J-PARC センター)
○Kyosuke Adachi, Fumihiko Tamura, Masahiro Nomura, Taihei Shimada, Ryosuke Miyakoshi, Hidefumi Okita, Masahito Yoshii, Chihiro Ohmori, Kiyomi Seiya, Keigo Hara, Katsushi Hasegawa, Yasuyuki Sugiyama (J-PARC Center)
 
CERN により開発が続けられている縦方向シミュレーションコード BLonD は正確な計算能力と優れた拡張性を有しており、近年 J-PARC 3GeV シンクロトロン (RCS) の縦方向シミュレーションに用いられている。これまでに RCS でのビームの挙動をよく再現するモデルを構築することができたが、特に空間電荷効果を含めたシミュレーションでは計算時間が長くかかることが課題となっていた。最新の BLonD では GPU バックエンドによるシミュレーションの高速化が可能となった。この発表では、RCS の縦方向シミュレーションを主な題材として、BLonD GPU バックエンドの評価を行う。
 
13:00-15:00 
THP004
p.547
J-PARC MRのビームパワー増強に向けたRFシステムの準備状況 2024
Preparation status 2024 of RF system for J-PARC MR upgrade

○長谷川 豪志,原 圭吾,大森 千広,清矢 紀世美,杉山 泰之,吉井 正人(KEK and JAEA J-PARC Center),宮越 亮輔,沖田 英史,島田 太平,田村 文彦,山本 昌亘(JAEA and KEK J-PARC Center)
○Katsushi Hasegawa, Keigo Hara, Chihiro Ohmori, Kiyomi Seiya, Yasuyuki Sugiyama, Masahito Yoshii (KEK and JAEA J-PARC Center), Ryosuke Miyakoshi, Hidefumi Okita, Taihei Shimada, Fumihiko Tamura, Masanobu Yamamoto (JAEA and KEK J-PARC Center)
 
J-PARC MRでは、繰り返しを早くする事とバンチ当たりの粒子数を増やす事でビームパワーを増強する計画が進んでいる。その結果、2023年12月には当初目標の750kWを達成し、更にハイパーカミオカンデ実験に向けた1.3MWへの増強も続いている。この増強計画のRFシステムは、基本波空胴11台と2次高調波用空胴2台の合計13台のRFシステムが必要となる。2023年秋からは基本波空胴9台と2次高調波用空胴2台の合計11台のRFシステムが稼働しており、更に2システム分の準備を進めている。また安定な利用運転を行うため陽極電源の故障対策も行ってきた。対策を行った2019年秋以降の運転では陽極電源を構成するインバーターユニットの重故障も減っており効果が現れている。本発表では、RFシステム増設の準備状況と利用運転時の稼働状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP005
p.551
J-PARCハドロン実験施設における残留ガスビーム強度モニタを用いた 遅い取り出しビームの duty factor 測定
Measurement of duty factor of slow-extraction proton beams with a residual gas ionization current monitor in J-PARC Hadron Experimental Facility

○里 嘉典,上利 恵三,秋山 裕信,豊田 晃久,森野 雄平(KEK)
○Yoshinori Sato, Keizo Agari, Hironobu Akiyama, Akihisa Toyoda, Yuhei Morino (KEK)
 
大強度陽子加速器(J-PARC)ハドロン実験施設では、Main Ring から遅い取り出し法によって取り出された30GeV陽子ビームが 0.1 Pa 程度の残留ガス中を通過した際に生じる電離電子を電場と磁場によって垂直方向に平行移動させ、電荷信号として計測することによってビーム強度を測定するビーム強度モニタ(RGICM)を運用している。遅い取り出しビームの品質を表す指標として、ビームの duty factor が重要である。この指標が悪いと瞬間的なビーム強度が高くなって実験データ収集効率が低下し、結果としてJ-PARCの大強度ビームのメリットを十分に生かせなくなる。現在、duty factor はハドロン実験施設のビームラインに設置された真空膜でのビームロスをシンチレータで測定することによって算出され、おおむね 55 % 程度と評価されている。ビームロスをシンチレータで計測する方法では、瞬間的な強度上昇で信号が飽和するデメリットがある。同様の方法は、ハドロン実験施設の二次ビームラインにおいてπ中間子ビーム(2E+6 / shot)を用いて測定されているが、物理実験によってセットアップが変わる可能性がある。加速器調整のための指標としては、一次ビームラインにおいて同じ条件で duty factor を安定・継続的に測定できることが望ましい。本発表では、RGICMを用いた遅い取り出しビームの duty factor 測定、信号応答、及び今後の計画について報告する。
 
13:00-15:00 
THP006
p.555
J-PARCハドロンBライン用強度モニタの開発
Development of B line intensity monitor for J-PARC hadron beamline

○豊田 晃久,青木 和也,上利 恵三,秋山 裕信,家入 正治,倉崎 るり,里 嘉典,澤田 真也,白壁 義久,高橋 俊行,高橋 仁,田中 万博,広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 史真,森野 雄平,山我 拓巳,山野井 豊,渡辺 丈晃(KEK)
○Akihisa Toyoda, Kazuya Aoki, Keizo Agari, Hironobu Akiyama, Masaharu Ieiri, Ruri Kurasaki, Yoshinori Sato, Shinya Sawada, Yoshihisa Shirakabe, Toshiyuki Takahashi, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Fumimasa Muto, Yuhei Morino, Takumi Yamaga, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (KEK)
 
J-PARCハドロン実験施設は30 GeV陽子ビームを約2秒かけてゆっくり取り出す遅い取り出しビームを利用する。ビームが金属標的に照射されることで生じる様々な二次粒子を利用して素粒子原子核実験を行っている。J-PARCハドロンBラインは、現在81 kWのAライン陽子ビームの一部を削り出して使用するビームラインである。ビームサイクルは現在4.24秒で、ビーム強度は1x10^9から1x10^10個/spill程度である。今回はBライン最上流の強度を測定するためのモニタ2種類を開発した。一つはSMIM(Septum Magnet Intensity Monitor)でもう一つはBIM(B line Intensity Monitor)である。SMIMはAラインからビームの一部を削り出す磁石で生じるビームロスを3連シンチレーション検出器で測定するもので、BIMはBライン上流部にある真空仕切り膜で生じるビームロスを3連シンチレーション検出器で測定するものである。それぞれの検出器の設計、実機製作およびビーム試験の結果などについて報告する。
 
13:00-15:00 
THP007
p.558
J-PARC MR の入射ビーム用プロファイルモニターのアプリケーション開発
A development of application on beam profile monitor for injection beam in J-PARC MR

○酒井 浩志(関東情報サービス株式会社),濱田 英太郎,佐藤 洋一,橋本 義徳(高エネルギー加速器研究機構)
○Hiroshi Sakai (Kanto Information Service Co., Ltd (KIS)), Eitaro Hamada (KEK), Yoichi Sato, Yoshinori Hashimoto (KEK/J-PARC)
 
J-PARC MRの入射ビームのビームプロファイル診断ツールには次がある。 入射ビームライン(3-50BT)に10台のマルチリボンビームプロファイルモニター(MRPM)とOTRと蛍光を用いたビームハローモニター(OTR/FL)、そしてリングの入射地点に入射直後の100ターンの測定のための入射マルチリボンプロファイルモニター(INJ-MRPM)、また周回するビームハローカットの情報を取得するためにMRコリメータ群に設置されたシンチレータ(SCNT)である。これらの診断ツールのために測定と解析のアプリケーションの開発を継続して行ってきた。近年では、FPGAを搭載したADCボードや、PCオシロスコープを用いてデータ収集の高速化を図っている。またユーザーフレンドリーな環境の構築も行っている。本報告ではこれらの近況を報告する。
 
13:00-15:00 
THP008

発振型FELにおける引き出し効率のシングルショット測定に向けたアレイ型二次電子放出型モニターの開発
Development of array-type secondary electron emission monitor toward single-shot determination of extraction efficiency of oscillator FELs
○畢 壮,田中 虎太郎,全 炳俊,大垣 英明(京大エネ研)
○Zhuang Bi, Kotaro Tanaka, Heishun Zen, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.)
 
The extraction efficiency is one of the key parameters of an FEL oscillator. In the conventional way of extraction efficiency measurement in Kyoto University FEL (KU-FEL), temporal evolutions of the electron beam energy distribution in a macro-pulse with and without FEL lasing were measured by a Faraday cup placed after an energy analyzer. Then the extraction efficiency is evaluated from the difference between the instantaneous average energy with and without the FEL lasing. Due to the scanning nature, the conventional way needs a long measurement time. To enable single-shot determination of the extraction efficiency, we developed a monitor that enables us to measure the temporal evolution of the electron beam energy in a macro-pulse by using an array-type secondary electron emission monitor. The monitor consists of 24 ribbon-shaped electrodes and 2 shielding electrodes are placed after the energy analyzer magnet. The beam energy evolutions in a macro-pulse with and without FEL lasing were measured in a single-shot with <100-ns temporal resolution. This monitor will enable single-shot determination of the extraction efficiency of FEL oscillators.
 
13:00-15:00 
THP009
p.564
非パルス計数型放射線検出回路の製作
Development of non pulse counting type radiation detection circuit

○下ヶ橋 秀典,帯名 崇(高エネ研)
○Hidenori Sagehashi, Takashi Obina (KEK)
 
KEK-PF電子蓄積リングトンネル内で放射線計測を行う場合、大きく分けて2種類のパターンがあることが判明している。1つ目は入射した電子の一部が失われることに起因する短時間で強い(ピークの高い)パターンであり、これは入射点付近(下流)やリング内の物理開口サイズが狭い部分において強く検出される。もう1つはリングの蓄積電子が発生するX線由来の放射線であり、PFでは超伝導ウィグラー付近(下流)で特に強く検出される。この2種類の放射線の両方に対して検出可能な機器の開発を行っている。まずは検出部として、動作速度20us程度の非パルス計測型(DC出力型)の放射線検出回路を数種類試作した。パルス計数型の場合、短時間で強いパターンでの数え落としが問題となるため非パルス計数型とした。検出部はフォトダイオード(PD)とシンチレータ、1チップのプリアンプで構成した。これはビームダクトから数十cm離れた位置に設置した状態でも十分なSN比で検出可能とするためである。最終的には加速器室内に多数(数10~100個程度)のセンサを分散して設置することを想定し、シンプルで安価な回路構成としている。机上テストを行なった後、PFリング内で実ビームによる検出波形観測を行った。今回は製作した検出回路の説明と各種テスト結果、波形観測結果、問題点について報告を行う。
 
13:00-15:00 
THP010
p.569
SPring-8におけるパルス・モード計測型光位置モニタの性能評価と運用実績
Performance tests and operational results of pulse-mode X-ray beam position monitor at SPring-8

○青柳 秀樹,高橋 直,佐野 睦,甲斐 智也(高輝度光科学研究センター)
○Hideki Aoyagi, Sunao Takahashi, Mutsumi Sano, Tomoya Kai (JASRI)
 
大型放射光施設SPring-8の挿入光源ビームラインにおいて、パルス毎のビーム位置を計測することのできるパルス・モード計測型光位置モニタの運用を開始している。本モニタの検出素子の特徴は、ヒートシンクとしてのダイヤモンド基板上にコンパクトな受光素子(チタン蒸着)を配置することで、高い耐熱性能を保持したまま浮遊電気容量を低下させている。これにより、検出素子の持つ時定数をサブナノ秒オーダーに低減させている。そして、真空容器内の信号伝送はマイクロ・ストリップラインを用いることで、パルス長の短い単極性パルス信号の発信を可能としている。本モニタは、従来型光位置モニタ同様にDCモード計測型としても動作するので、トレードオフを気にすることなくモニタを更新することが出来る。本報告では、パルス・モードとDCモードの両方の基本性能、および、運用実績について議論する。
 
13:00-15:00 
THP011
p.573
突発ビームロス事象解明のためのターン毎ビームサイズモニター開発
Development of turn-by-turn beam size monitors for disentangling of sudden beam loss events

○三塚 岳,石田 孝司,岩渕 周平(高エネ研)
○Gaku Mitsuka, Takashi Ishida, Syuhei Iwabuchi (KEK)
 
SuperKEKB加速器の高ルミノシティ化を妨げる最大の障壁が突発ビームロス事象である。突発ビームロス事象とは前兆無く発生するビームロス事象であり、たった数ターン、つまり数十マイクロ秒以内にビーム電流の半分程度がロスしてしまう。現在、突発ビームロス事象がなぜ、どのように、どの条件で発生するのか、全く未解明である。 我々は突発ビームロス事象の発生メカニズムを解明するため、ターン毎ビームサイズモニター開発し、突発ビームロス事象発生時のサイズ変動を測定している。本発表では超高速CMOSカメラを用いたビームサイズモニターの開発、および突発ビームロス事象発生時のサイズ変動を報告する。
 
13:00-15:00 
THP012
p.577
Spresenseカメラモジュールを用いた放射線検出器の開発
Development of radiation detector using Spresense camera module

○塩澤 真未,帯名 崇(高エネ研),路川 徹也(株式会社 東日本技術研究所)
○Mami Shiozawa, Takashi Obina (KEK), Tetsuya Michikawa (East Japan Institute of Technology Co., Ltd.)
 
ビームの調整を行ったり機器を保護したりするためにも、加速器を運転する際にビームロスから発生する放射線を計測することは非常に重要である。用途や目的に応じて様々な種類の放射線検出器が市販されているが、比較的高価なものが多い。特に加速器のビーム調整を目的とする場合には加速器室内に多数の放射線検出器を設置し、どこでビームロスしているかをリアルタイムでモニターする必要があるため、市販の放射線検出器を多数設置することは現実的ではない。そこで我々は放射線環境下でも動作するSONY製のマイコンSpresenseとCMOSセンサ搭載のカメラモジュールを用いた安価で小型な放射線検出器を開発することにした。一般的にカメラの撮像素子(CCD、CMOS等)に放射線が当たると画像にノイズとして白いスポット(スターダスト)が見える事は良く知られているため、それを利用し白く見えるスポット(ピクセル)をカウントすることで放射線量を計測する構成である。またカメラモジュールとマイコンをあわせても大きさは5cm程度、重さも数十グラム程度であり、PoEスプリッタを用いるという構成にすれば配線はPoEケーブルを一本引くのみで、設置場所の自由度が高い上に設置の手間もさほどかからない。これまで運転中の加速器室内に設置して放射線計測を何度か行い、実際に放射線を検出できることを実証した。本発表ではその結果及び解析方法、開発の進捗状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP013
p.582
J-PARCリニアックのビームロスモニタの機器構成と現状
Status and equipment configuration of beam loss monitors in the J-PARC linac

○中野 秀仁,守屋 克洋(原子力機構),宮尾 智章(高エネ研),不破 康裕,高橋 博樹,神谷 潤一郎(原子力機構)
○Hideto Nakano, Katsuhiro Moriya (JAEA), Tomoaki Miyao (KEK), Yasuhiro Fuwa, Hiroki Takahashi, Junichiro Kamiya (JAEA)
 
J-PARCではリニアックと3GeVシンクロトロンで加速されたビームを物質・生命科学実験施設(MLF)と50GeVシンクロトロン(MR)へ供給している。現在、MLF(設計出力1MW)へ950kWのビームを供給し、MR(設計出力950kW)では960kWを実現した。設計出力を超えた運転を実現するためには、加速器の更なる安定化や高度化は必須である。ビームロスは機器の放射化だけでなく、最悪の場合機器のメンテナンスを困難にしてしまう。そのため、ビームロスを診断するビームモニタは大強度化実現に不可欠な機器である。本報告では、J-PARCリニアックでビームロスを検知するビームロスモニタの機器構成と現状について報告する。
 
13:00-15:00 
THP014

離調されたRF空洞を活用したパルス内振動測定の検討
Theoretical study of monitoring the intra-pulse oscillation by a detuned RF cavity
○廣澤 航輝(量研 六ケ所),IFMIF/EVEDA Integrated Project Team(量研、F4E、IFMIF/EVEDA Project Team、CEA、CIEMAT、INFN)
○Kouki Hirosawa (QST Rokkasho), Integrated Project Team Ifmif/eveda (QST, F4E, IFMIF/EVEDA Project Team, CEA, CIEMAT, INFN)
 
125mA重陽子RF線形加速器であるLinear IFMIF Prototype Accelerator(LIPAc)は、国際核融合材料照射施設(IFMIF)の初期9MeVまでのCW加速を実証するために開発された。LIPAcでは、ビーム負荷時の熱サイクルや成長率を伴う現象のスタディのため、パルス運転でデューティーを上げるアプローチを取っている。イオン源からRFQまでの荷電粒子のフォーメーション由来の振る舞いを捉える試みとして、RFQ出力ビームのパルス内振動を測定評価するため、下流で離調休止させているRF空洞を用いる方法を考察した。バンチビーム電流波形の各形状パラメータが固有の周期で変動する場合に、離調した空洞に誘起される電圧の時間発展を、サンプリングによる離散化も考慮して分析し、縦方向振動を定量的に評価する方法について理論的検討を議論する。
 
13:00-15:00 
THP015
p.585
3次元らせん入射手法によるビーム蓄積の実証
Demonstration of beam accumulation by three-dimensional spiral injection scheme

○松下 凌大(東大理),飯沼 裕美(茨大理工),大澤 哲,小川 真治,中山 久義,古川 和朗,齊藤 直人,三部 勉(高エネ研)
○Ryota Matsushita (Univ. of Tokyo), Hiromi Iinuma (Ibaraki univ.), Satoshi Ohsawa, Shinji Ogawa, Hisayoshi Nakayama, Kazuro Furukawa, Naohito Saito, Tsutomu Mibe (KEK)
 
J-PARCにおいてミューオンの異常磁気能率(g-2)と電気双極子能率(EDM)を超精密に同時測定することを目的とした実験計画を推進している。物理測定のため、300MeVまで加速したミューオンビームを磁場強度3T、直径66cmの精密ソレノイド磁場中に入射・蓄積する必要があり、これを達成するため「3次元らせん入射」という手法を開発し採用する。本手法によるビーム蓄積実証のため、KEKにおいて低エネルギー電子ビームを用いた実証実験を行っており、以前の年会においてビーム蓄積の兆候となる信号が測定できたことを報告した。今回ビーム蓄積の確固たる証拠を得るため、シンチレーションファイバーを用いた検出器を使用し、蓄積ビーム分布の測定を行ったので報告する。また、測定で得られた時間波形より蓄積ビームの運動状態についての情報も得ることができるのでこれについても議論する。
 
13:00-15:00 
THP016
p.591
タンデム静電加速器に関するVRを利用した教育用教材の開発
Development of educational materials using VR for electrostatic tandem accelerator

○吉田 哲郎,大和 良広,笹 公和(筑波大学応用加速器部門),広田 克也,古坂 道弘(高エネルギー加速器研究機構)
○Tetsuro Yoshida, Yoshihiro Yamato, Kimikazu Sasa (UTTAC), Katsuya Hirota, Michihiro Furusaka (KEK)
 
筑波大学放射線・アイソトープ地球システム研究センター応用加速器部門では、6MVタンデム加速器および1MVタンデトロン加速器の2台の静電加速器を有し、加速器や放射線を利用した様々な計測実験と研究および教育活動を行なっている。これらの加速器をバーチャルリアリティー(VR)技術を用いて表現し、KEKと連携してVRゴーグルで疑似体験できる環境の整備や、VRを利用した教育用教材の開発を行った。具体的には、加速器内部の詳細な3D図面の作成やVRゴーグルを装着した人自身で加速器を学ぶことができるようにするための説明表示を新たに加えた。また、所有する6個のVRゴーグルを同時に画面共有することができるような環境を構築した。VR技術の改良により、タンデム静電加速器のVRが教育用教材としての効果が上がり、VRゴーグル使用者の加速器への興味・関心や理解度の向上につながった。令和5年度は、高校生の大学施設見学、技術職員の研修会等において、約580名の参加者が加速器に関する学習・研修に利用した。本発表では作成したVRの詳細について報告する。
 
13:00-15:00 
THP017
p.594
医療用RI製造に向けe-/γコンバータの構造最適化
Structural optimization of e-/γ converter for medical RI production

○森川 祐,阪井 寛志(KEK),高野 直樹,大家 哲郎(慶應義塾大学 理工学部・理工学研究科)
○Yu Morikawa, Hiroshi Sakai (KEK), Naoki Takano, Tetsuro Oya (Faculty of Science and Technology, Keio University)
 
電子線加速器による医療用RI製造ではe-線をγ線に変換し、γ線の光核反応により目的のRIを製造する。e-/γの変換にはコンバータを利用することが多く、RI製造試料の前段にコンバータを設置することで、RI製造試料に不要な熱負荷(e-線)を避けることができる。一方でコンバータはe-線の照射に曝されるために、コンバータの耐熱性能が受容可能なe-線強度に直結する。 水冷式コンバータの基本構造を作成した上で、基本構造における被照射部位と冷却水導入構造の最適化を進めることでコンバータの受容可能e-線強度の向上を図った。被照射部位の最適化ではトポロジー最適化で得られる構造を経験的に想定し、当該構造の設計パラメータ最適化を進めた。冷却水導入構造においてはベンチュリ構造や渦発生器を導入し、水冷能力向上を目的とした構造最適化を進めた。本発表ではこれら構造最適化の概要とコンバータ性能向上の可能性について報告する。
 
13:00-15:00 
THP018

電子線形加速器ベースX線源の焦点サイズシミュレーション
Focal spot size simulation of X-ray source based on the electron linear accelerator
○塩田 佳徳(金属技研),長江 大輔(東工大),吉田 昌弘,尾崎 健人,山田 貴典,長谷川 大祐(金属技研),山本 昌志(オメガソリューションズ)
○Yoshinori Shiota (MTC), Daisuke Nagae (Tokyo Tech), Masahiro Yoshida, Kento Ozaki, Takanori Yamada, Daisuke Hasegawa (MTC), Masashi Yamamoto (Omega Solutions)
 
東京工業大学と金属技研株式会社は電子線加速器ベースの高エネルギーX線CTの開発を進めている。線質に起因するX線空間分解能は焦点サイズとして評価され、X線イメージング・CTにおいて重要な性能ファクターである。焦点サイズは電子線エネルギー、電子線ビーム径、およびX線ターゲット構造の条件で変化し、単純な見積りが難しい。そこで粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを用いて焦点サイズ測定法を模擬したモンテカルロシミュレーションを実施し、焦点サイズについて検討した。本発表では、種々の条件と焦点サイズについて報告する。
 
13:00-15:00 
THP019
p.598
高エネルギー放射線照射環境構築に向けたシミュレーションによる線量評価
Simulation dose evaluation for a high-energy radiation irradiation environment

○倉田 瑞希,住友 洋介,大和 紗也香,土屋 颯太,日南 健(日大理工),早川 建,早川 恭史,境 武志(日大LEBRA)
○Mizuki Kurata, Yoske Sumitomo, Sayaka Yamato, Sota Tsuchiya, Ken Hinami (CST Nihon Univ), Ken Hayakawa, Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai (LEBRA Nihon Univ)
 
近年、高まっている宇宙開発において宇宙環境下での高エネルギー放射線による機器や材料の放射性耐性が今後重要になると考えられる。日本大学理工学部には100 MeVまで加速可能である電子線形加速器があり、設置されている船橋校舎は首都圏からのアクセスが良くベンチャーを初めとした多くの企業に使用の敷居を下げて機器の開発を促進させる効果が大きく期待できる。また、加速器の他の利用とも共存できるよう、加速器の通常運転時から発生する高エネルギーの放射線を活用して、機器や材料の影響評価が行える照射環境の構築を目指している。電子線形加速器では、加速の仕方を利用してエネルギーの広がりを持つ電子ビームを45度偏向電磁石を2つ使って90度に曲げることで、自由電子レーザーに適した品質の電子ビーム作成を行っている。この際に、大きなエネルギー差を設けることから、45度偏向電磁石で真空ダクト内を通過できずに生成される放射線を利用して機器や材料の影響評価を行う予定である。本発表においては、加速部での電子ビームのエネルギー分散やビームロス、45度偏向電磁石で発生する放射線量についてシミュレーションに関する結果を報告する。
 
13:00-15:00 
THP020
p.602
高いエネルギーの放射線照射環境構築に向けた加速器まわりの線量評価
Development of dose assessment around accelerator for high-energy irradiation experiments

○大和 紗也香,住友 洋介,倉田 瑞希,日南 健,土屋 颯太(日大理工),境 武志,早川 建,早川 恭史(日大LEBRA)
○Sayaka Yamato, Yoske Sumitomo, Mizuki Kurata, Ken Hinami, Sota Tutiya (CST, Nihon Univ.), Takeshi Sakai, Ken Hayakawa, Yasushi Hayakawa (LEBRA, Nihon Univ.)
 
近年、企業における材料開発で物質の放射線耐性を調べたいという要望が年々増加している。これは放射線耐性素材の開発や、近年急速に高まりつつある宇宙開発が背景にある。特に宇宙空間では高エネルギーの放射線にさらされるため、様々な装置やそれを構成している物質がどのように放射線損傷するかを知ることは重要である。そのため、高エネルギーの放射線を発生させることができる加速器を用いて放射線影響評価が行える環境を整えることが、今後の宇宙開発において重要である。以上のことから放射線照射線量と磁石を含む物質の性質変化の関係についての評価をする必要があると考え、その評価をするための環境構築に着手している。本研究では電離箱、シンチレーション検出器、ガラス線量計を用いてアンジュレーター周辺の照射線量を測定し、比較をすることで評価を行う。また、放射線計算コード「PHITS」によるシミュレーションも行っていく。
 
ポスター② (8月1日 2F交流ラウンジ)
13:00-15:00 
THP021
p.605
S-band 80 MW マルチビームパルスクライストロンの電子銃およびマグネット設計
Design of the gun and the magnet for S-band 80 MW multi-beam pulsed klystron

○夏井 拓也,松本 修二,松本 利広,三浦 孝子,Wang Shengchang,福田 茂樹(KEK)
○Takuya Natsui, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Shengchang Wang, Shigeki Fukuda (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器では,S-band 50 MWのパルスクライストロンが約60台稼働している.これらクライストロンは30年ほど前に開発されたもので,その効率は45%程度と現在ではとても高効率とは言えない.昨今の電力価格の高騰からもクライストロンの高効率化が望まれている. そこで,我々はマルチビームクライストロンでの高効率化検討を2022年頃より始め,現在までにシミュレーション上では良好な結果を得ている. 基本方針は,現在のモジュレータをそのまま使い,クライストロンのみを置き換えることで,高出力を狙い,目標効率を73%に設定してマルチビームクライストロンの設計を進めている.大電力パルスS-band帯域でのマルチビームクライストロンの開発は世界的にも珍しく今後のクライストロン開発にも貢献できると考えている.本発表では電子銃とマグネット設計に重きを置いて報告したい.
 
13:00-15:00 
THP022

cERLエネルギー回収運転におけるエネルギー収支
Energy balance in the energy-recovery operation at cERL
○本田 洋介,倉田 正和,阪井 寛志,島田 美帆(KEK)
○Yosuke Honda, Masakazu Kurata, Hiroshi Sakai, Miho Shimada (KEK)
 
ビーム加速時に消費された加速空洞のエネルギーをビーム減速時に回収することで、加速空洞のエネルギー収支がキャンセルされる。この原理により、加速空洞への投入エネルギーを抑えて大電流連続運転が可能になる。cERLでは1mAクラスの大電流運転の調整が確立し、加速空洞のビーム負荷が精度良く測定できるようになった。ビーム条件を変えてエネルギー収支を測定し、簡単な計算との比較を行った。
 
13:00-15:00 
THP023
p.608
SuperKEKB入射性能向上へのKEK電子陽電子入射器アップグレード
Upgrade status of KEK electron/positron injector LINAC for improvement on beam injection to SuperKEKB

○惠郷 博文,明本 光生,荒川 大,飯田 直子,岡安 雄一,柿原 和久,片桐 広明,紙谷 琢哉,川村 真人,佐武 いつか,佐藤 政則,設樂 暁,設楽 哲夫,周 翔宇,白川 明広,諏訪田 剛,清宮 裕史,染谷 宏彦,竹中 たてる,田中 窓香,張 叡,中島 啓光,夏井 拓也,古川 和朗,東 保男,肥後 寿泰,松下 英樹,松本 修二,松本 利広,三浦 孝子,宮原 房史,矢野 喜治,横山 和枝,吉田 光宏,由元 崇,王 迪,王 盛昌(高エネ研)
○Hiroyasu Ego, Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Naoko Iida, Yuichi Okayasu, Kazuhisa Kakihara, Hiroaki Katagiri, Takuya Kamitani, Masato Kawamura, Itsuka Satake, Masanori Satoh, Satoru Shitara, Tetsuo Shidara, Xiangyu Zhou, Akihiro Shirakawa, Tsuyoshi Suwada, Yuji Seimiya, Hirohiko Someya, Tateru Takenaka, Madoka Tanaka, Rui Zhang, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Kazuro Furukawa, Yasuo Higashi, Toshiyasu Higo, Hideki Matsushita, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Fusashi Miyahara, Yoshiharu Yano, Kazue Yokoyama, Mitsuhiro Yoshida, Takashi Yoshimoto, Di Wang, Shengchang Wang (KEK)
 
素粒子物理学実験と放射光科学実験のために、KEK電子陽電子入射器は最大7GeVの電子と最大4GeVの陽電子を4つの蓄積リング(SuperKEKB HER/LER、PFリング、PF-AR)に同時トップアップ入射にて供給している。この入射スキームでは、各リングから要求される複雑なビームパラメータを50Hzで高速に切り換えながらビーム生成と加速を行う。SuperKEKBリングのビーム寿命は10分以下であるため、同時トップアップ運転においても低エミッタンスかつ大電荷のビーム入射を安定に行わなければならない。その要求に応えるため、入射性能を向上させる新たなパルス電磁石、高速補正電磁石、加速管、機械学習によるビーム制御等が導入された。本報告では入射器アップグレード全体像と現状について報告する。
 
13:00-15:00 
THP024
p.613
コンパクトERLのCW 運転用の入射器設計
Injector design for Compact ERL CW operation

○田中 織雅,山本 将博,倉田 正和(高エネルギー加速器研究機構)
○Olga Tanaka, Masahiro Yamamoto, Masakazu Kurata (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
Achieving continuous wave (CW) operation in a Compact Energy Recovery Linac (cERL) injector requires meticulous tuning and accurate model preparation. However, a startup issue arose on November 27th. The buncher response deviated from expectations, and an unexpectedly high field in INJ1 necessitated lowering the field in INJ2-3. This revealed shortcoming in the initial RF optimization. The culprit? The standard two-step optimization process, which minimizes transverse emittance vs bunch length followed by longitudinal emittance vs bunch length minimization, was incomplete. Only the first step was performed. Fortunately, after completing the full optimization process, the final injector parameters closely resembled those achieved during tuning. This experience underscores the importance of a step-wise optimization approach that factors in actual injector parameters like injection energy, gun voltage, and initial beam distribution. Moreover, it highlights the need for continuous model refinement to minimize discrepancies between the model's predictions and the real injector's behavior – a key focus of our current study.
 
13:00-15:00 
THP025
p.616
SuperKEKBの陽電子ビーム輸送路におけるエミッタンス増大の調査
Investigation of emittance blowup in the positron beam transport line for the SuperKEKB

○飯田 直子,船越 義裕,古川 和朗,池田 仁美,池野 孝,石橋 拓哉,伊藤 史哲,紙谷 琢哉,小林 鉄也,小玉 恒太,菊池 光男,三浦 孝子,宮原 房史,森 隆志,内藤 孝,中澤 遊,夏井 拓也,大西 幸喜(KEK),生出 勝宣(ジュネーブ大学),佐々木 信哉,佐藤 政則,清宮 裕史,設樂 暁,杉本 寛,杉村 仁志,多和田 正文,照井 真司,植田 猛,ワン ディ,ワン シェンチャン,山口 孝明,由元 崇(KEK)
○Naoko Iida, Yoshihiro Funakoshi, Kazuro Furukawa, Hitomi Ikeda, Takashi Ikeno, Takuya Ishibashi, Fumiaki Ito, Takuya Kamitani, Tetsuya Kobayashi, Kota Kodama, Mitsuo Kikuchi, Takako Miura, Fusashi Miyahara, Takashi Mori, Takashi Naito, Yu Nakazawa, Takuya Natsui, Yukiyoshi Ohnishi (KEK), Katsunobu Oide (University of Geneva), Shinya Sasaki, Masanori Satoh, Yuji Seimiya, Satoru Shitara, Hiroshi Sugimoto, Hitoshi Sugimura, Masafumi Tawada, Shinji Terui, Takeshi Ueda, Di Wang, Shengchang Wang, Takaaki Yamaguchi, Takashi Yoshimoto (KEK)
 
SuperKEKBではNano-beam-schemeやCrab-waist方式をとっている事からリングの力学口径が狭いため、入射ビームは電荷量が高くエミッタンスを小さく抑える必要がある。現在ピークルミノシティは4.65x1034 [/cm/s](2022年6月)であり、次の近目標は1x1035 [/cm/s]である。この目標達成のために陽電子入射ビームは、2バンチビーム入射、各バンチの電荷量を3nC、エミッタンスを水平方向100um、垂直方向20um以下に抑える必要がある。陽電子ビームはDamping Ring(DR)、Injector(LINAC)に続くビーム輸送路(BT)を通過して入射される。DRでの設計エミッタンスからBT終端での測定エミッタンスは、水平方向で65umから175umに、垂直方向で1umから25umに増大している。増大の主な場所は、水平方向にはDRからLINACへの出射路(RTL)で、垂直方向にはBT内で起こっており、本論文では、BT内のエミッタンス増大についての調査のまとめについて報告する。結果として、垂直エミッタンス増大は主にBT内の第3アークの偏向電磁石の非線形磁場により発生していることが分かった。また、当初BTの第1アークでCoherent Synchrotron Radiation(CSR)による水平エミッタンス増大が疑われたため、陽電子ビームをChamber内壁近傍を通すため偏向電磁石およびそのChamberを垂直方向にOffsetさせたが、CSRの影響は観測されなかった。
 
13:00-15:00 
THP026
p.621
高調波発生駆動のための日本大学LEBRA FELのビーム特性評価
Beam characterization of the LEBRA FEL at Nihon University to drive high-harmonic generation

○川瀬 啓悟(QST),全 炳俊(京大),境 武志,早川 恭史(日大),大垣 英明(京大),羽島 良一(QST)
○Keigo Kawase (QST), Heishun Zen (Kyoto Univ.), Takeshi Sakai, Yasushi Hayakawa (Nihon Univ.), Hideaki Ohgaki (Kyoto Univ.), Ryoichi Hajima (QST)
 
高強度数サイクルレーザーパルスを気体中に集光することによる高次高調波発生(HHG)は、アト秒光源として研究開発されている。HHGの最大フォトンエネルギーは駆動レーザーの波長の自乗でスケールするため、より高いフォトンエネルギーで短パルス長のHHG光を発生させるためには、より長波長の数サイクルレーザーパルスを用いる必要がある。これまでのところ、波長3.9 umの中赤外レーザー駆動による最大1.6 keVのHHGが報告されている。日本大学量子科学研究所の赤外自由電子レーザー(LEBRA FEL)は1.5 umから6 umの波長領域を連続的にカバーする光源で、HHGの駆動波長依存性の探索に適している。そこで本研究ではHHG駆動のためのレーザー集光強度を見積もるためのFELのパルス長と集光性能の評価測定を実施した。本発表では測定で得られた評価結果を報告する。
 
13:00-15:00 
THP027

小型X線源のためのレーザー加速電子を入射器に用いる電子蓄積リングの設計開発
Development of an electron storage ring with LPA injector for a compact X-ray source
○設楽 弘之(金属技研(株)),神門 正城,中新 信彦(量研)
○Hiroyuki Shidara (MTC), Masaki Kando, Nobuhiko Nakanii (QST)
 
レーザープラズマ加速機構(Laser Plasma Acceleration, LPA)を入射器とする小型電子蓄積リング、そして蓄積電子ビームを逆コンプトン散乱によりX線を生じさせる構成とすることで、既存のX線源に比べ格段に小型化できる装置の開発を進めている。実現化に向け概念設計、基本設計、部分的性能試験、詳細設計を行う。目標とするX線エネルギーは100 keV、1 MeV、10 MeVの3種類とし各エネルギーに合わせた装置の開発を行うが、まずは100 keVの装置の設計を進めている。本開発の特徴は、LPAと電子蓄積リングを組み合わせた構成により、LPAによる小型化と蓄積リングでの安定化にある。本開発においては、例えば、バンチ長 > 10 mm、運動量アクセプタンス >±15 %、電流値 > 15 mAを目指している。cSTART(KIT/ドイツ)やNESTOR(KIPT/ウクライナ)などの構成について検討を行い、本開発のリング構成の参考形状とした。発表においては、進捗として幾つかの構造案、シミュレーションにより得られたパラメータ群、今後の計画などについて報告する。
 
13:00-15:00 
THP028
p.625
バルク超伝導アンジュレータ試験機のハイブリッド化
Development of prototype hybrid bulk SC undulaor

○紀井 俊輝(理研)
○Toshiteru Kii (RIKEN)
 
理化学研究所では、複数のバルク超伝導体を周期的に配置したアレイに超伝導転移後に磁場変化を与え超伝導体内部に遮蔽電流を誘導することでビーム軌道上に周期交替磁場を生成する、バルク超伝導体アンジュレータの開発を進めている。 非磁性体とバルク超伝導体を組み合わせたアレイで周期 10 mmギャップ 4 mmの条件で 2.22 Tの周期磁場の発生を確認しているが、強磁性体片と組み合わせることでさらなる磁場強度の増強試験を行った。6 T印加の状態で超伝導転移させ、外部磁場を段階的に減らし、その後逆方向に 6 T印加することでバルク超伝導体に大電流の高密度遮蔽電流を誘導するが、強磁性体は飽和レベルよりはるかに高い磁場にさらされるほか磁場分布も複雑でその効果の推定は容易ではない。 実験では、強磁性体片に厚さ 1 mmのYEP-2Vを用い3周期分をハイブリッド化したアレイと厚さ 1 mmの真鍮を用いたアレイを用いた。ハイブリッド化することで、周期 12 mmでアンジュレータ磁場は 2.24 Tから 2.54 Tに増強されることを確認した。発表では、ハイブリッド化試験の詳細について報告を行う。
 
13:00-15:00 
THP029
p.628
遮蔽効果を考慮した表面電流モデルを用いたスミス・パーセル放射の評価
Evaluation of Smith-Purcell radiation using surface current model with shading effect

○山田 悠樹,武藤 俊哉,日出 富士雄,柏木 茂,南部 健一,長澤 育郎,髙橋 健,柴田 晃太朗,B. Kavar Anjali,工藤 滉大,濱 広幸(東北大先端量子)
○Hiroki Yamada, Toshiya Muto, Fujio Hinode, Shigeru Kashiwagi, Kennichi Nanbu, Ikuro Nagasawa, Ken Takahashi, Kotaro Shibata, Anjali B. Kavar, Kodai Kudo, Hiroyuki Hama (RARIS)
 
東北大学先端量子ビーム科学研究センターの試験加速器t-ACTSではバンチ長100fs以下の極短電子バンチを利用して、テラヘルツ領域のコヒーレントスミス=パーセル放射(CSPR)の測定とCSPRを利用したバンチ長モニターへの応用についての研究を行っている。このCSPRの強度分布を計算するにあたって表面電流モデルと呼ばれる計算モデルが広く用いられてきた。しかし、必ずしもモデル計算と測定結果が一致しないことが確認されていた。これについて回折格子の構造による遮蔽効果を考慮することでモデル計算を修正することを考えた。このとき、方位角分布、偏光成分、回折格子の傾斜角が異なる際の強度は遮蔽効果を考慮する場合とそうでない場合で傾向が大きく異なる。修正したモデル計算と測定結果を比較し、遮蔽効果について評価を行う。
 
13:00-15:00 
THP030

compact ERLにおける再生増幅型FELの開発
Development of regenerative-amplifier FEL at the compact ERL
○谷川 貴紀,本田 洋介,加藤 龍好,島田 美帆,中村 典雄,山本 将博,阪井 寛志(高エネ研)
○Takanori Tanikawa, Yosuke Honda, Ryukou Kato, Miho Shimada, Norio Nakamura, Masahiro Yamamoto, Hiroshi Sakai (KEK)
 
ERL原理の実証機として2013年にKEKに建設されたcompact ERLは、その後2台のアンジュレータが設置され、2021年に中赤外FEL光の光増幅が観測された。しかしながら光強度は飽和に至っておらず、今後の産業利用展開を鑑みると更なる光強度増強が必要となる。光強度増強には様々な手法が考えられるが、その一つとして再生増幅型FELを選択し、その開発に着手した。本発表では開発中の再生増幅型FELの状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP031
p.633
J-PARCハドロン実験施設における二次粒子生成標的の10ミリ秒周期温度測定システムの開発
Development of temperature measurement at 10-millisecond sampling interval for the production target in the J-PARC Hadron Experimental Facility

○上利 恵三,里 嘉典,豊田 晃久,森野 雄平,秋山 裕信(KEK)
○Keizo Agari, Yoshinori Sato, Akihisa Toyoda, Yuhei Morino, Hironobu Akiyama (KEK)
 
J-PARCハドロン実験施設では陽子ビームパワー95kW対応の二次粒子生成標的を使用したビーム運転が2024年現在、行われている。標的の素材はビームが直接照射される部分が金、その土台が無酸素銅、冷却用配管がステンレスから構成されている。30GeVメインリングから約2秒で取り出されるビーム運転時の温度測定、誤って瞬間的(数ミリ秒)に取り出される短パルスビームによる多大な熱や熱応力の発生の検知、標的本体の健全性確認のため、標的に熱電対を設置した。熱電対の温度計測機器はProgrammable Logic Controller (PLC)やそのCPUモジュールにインストールされたExperimental Physics and Industrial Control System (EPICS)から構成されている。この標的は2023年6月まで100ミリ秒周期で温度測定していたが、標的温度、短パルスビーム、そして標的の健全性などをより速く測定・検知するため、10ミリ秒周期で温度測定可能なシステムを開発している。また測定周期変更に対応したPLCのラダーやEPICSのプログラムを更新し、2024年4月のビーム運転でこの温度計測システムが安全・安定的に動作することを確認した。今回はJ-PARCハドロン実験施設の二次粒子生成標的温度計測周期の高速化について報告する。
 
13:00-15:00 
THP032
p.637
説明可能 AI を用いた KEK 電子陽電子入射器調整性能向上に寄与する重要パラメータの推定
Estimation of critical parameters for the KEK electron/positron injector linac tuning using explainable AI algorithm

○上村 恒介(阪公大理),岩崎 昌子(阪公大理、阪大RCNP、阪大IDS),中島 悠太(阪大IDS),武村 紀子(九工大、阪大IDS),長原 一(阪大IDS),中野 貴志(阪大RCNP),佐藤 政則,佐武 いつか,宮原 房志(KEK加速器),末原 大幹(東大ICEPP)
○Kosuke Uemura (Osaka Metropolitan Univ.,), Masako Iwasaki (Osaka Metropolitan Univ., Osaka Univ.RCNP, Osaka Univ. IDS), Yuta Nakashima (Osaka Univ. IDS), Noriko Takemura (Kyutech, Osaka Univ. IDS), Hajime Nagahara (Osaka Univ. IDS), Takashi Nakano (Osaka Univ. RCNP), Satoh Masanori, Itsuka Satake, Fusashi Miyahara (KEK Acc.), Taikan Suehara (Tokyo Univ. ICEPP)
 
本研究では、説明可能AI(Explainable AI,XAI)を用いてKEK電子陽電子入射器調整性能向上に寄与する重要パラメータの推定を行った。KEK電子陽電子入射器運転調節の問題点として、構成要素が1000パラメータ以上と多く複雑である点や、周囲の環境変化(温度、振動、潮汐力など)に影響されるため、オペレーターによる常時調整が必要である点などが挙げられる。この研究の目的は、複雑な加速器運転調節機構を理解し、性能を向上させることである。そのために、機械学習を用いた入射効率向上に寄与するパラメータの推定を行った。具体的には、以下の手順で研究を進めた。1)環境を含む加速器データを入力し、入射効率を予測する機械学習モデルを回帰ニューラルネットワークで構築し、2)構築した回帰モデルに対してXAIの技術を使用し、入射効率向上に寄与するパラメータを推測した。ここでXAIとは、機械学習による出力決定の判断根拠や機械学習モデル全体の振る舞いを人間が理解できるように説明する技術のことを指す。本研究ではXAIのアルゴリズムとしてSHAPを使用した。SHAPでは、機械学習モデルにおいて、各データに対して入力パラメータと予測結果の線形モデルを作り、入力パラメータが予測に与える影響を定量評価する。本発表では、KEK電子陽電子入射器実運転データから構築された回帰モデルにSHAPを適用して得られた結果について報告する。
 
13:00-15:00 
THP033
p.643
RCNPサイクロトロン安定運用のための時系列解析による異常検知機構の開発
Development of anomaly detection system with time series analysis for cyclotron stable operation at RCNP

○依田 哲彦,神田 浩樹,福田 光宏(阪大RCNP)
○Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Mitsuhiro Fukuda (RCNP, Univ. of Osaka)
 
加速器を故障させることなく高い信頼性のもと安定に運転することは、非常に重要である。特に、近年の電気代などのエネルギーコストが上昇している状況下では、コスト削減の観点でもダウンタイムの少ない運転がより重要となってくる。ダウンタイムにつながるような重大故障を未然に防ぐ方策として、加速器の機器の状態を表す各種パラメータに異常の兆候が無いかを監視することが基本となる。監視対象は通常多岐にわたるので、制御システムで収集されるデータに対して、時系列解析を実施し重大事故の前駆現象の兆候を見出す自動システムの構築が必要となる。このとき、監視しているパラメータのノイズに埋もれがちな成分を効率的にピックアップできるよう、ベイズ推定の仕組みを取り入れた手法などにより、検出精度の向上を目指すことが肝要である。講演では、RCNPで構築した漏水検知システム及びRF異常検知システムの詳細について紹介する。
 
13:00-15:00 
THP034
p.646
高精度バンチ電流測定システムの開発:MTCA.4と高速サンプリングによる高精度化の実現
Development of a high-precision bunch current measurement system: high-accuracy realization with MTCA.4 and high-speed sampling

○阿部 利徳(高輝度光科学研究センター),前坂 比呂和(理研、高輝度光科学研究センター),藤田 貴弘,正木 満博,清道 明男(高輝度光科学研究センター),上島 考太(量研),齋田 涼太,土山 翼(量研、NAT)
○Toshinori Abe (JASRI), Hirokazu Maesaka (RIKEN,JASRI), Takahiro Fujita, Mitsuhiro Masaki, Akio Kiyomichi (JASRI), Kota Ueshima (QST), Ryota Saida, Tsubasa Tsuchiyama (QST,NAT)
 
SPring-8-IIにおける高精度なバンチ電流測定を実現するため、外部クロック入力で高速波形サンプリングができるMTCA.4ベースの高速デジタイザADQ7と高速波形サンプリング用クロック生成器からなるシステムを開発した。ADQ7は、RF基準信号周波数(508.58MHz)の4逓倍をサンプリングクロックとして入力すると、8.13728GSPSで波形を測定でき、バンチあたり16点の波形データを取得できる。今回開発したシステムでは、サンプリングクロックをRF基準信号周波数の4逓倍からあえてズラし、5ターン分の波形データを取得することで、1バンチあたり80点、約40GSPSの等価サンプリングが可能となる。さらに、100ターン分取得して平均化することで、S/N比の向上を図り、高精度な測定を実現した。今回開発したシステムは、SPring-8において従来のバンチ電流測定システムと並列にバックアップとして安定に稼働している。また、NanoTerasuにおいてもバンチ電流測定システムとして導入されている。
 
ポスター② (8月1日 2Fリハーサル室)
13:00-15:00 
THP035
p.650
電磁石電流変動監視システムCurs-BISの開発
Development of a monitoring system for electromagnet current fluctuations

○熊谷 桂子,内山 暁仁(理研仁科センター),福澤 聖児(住重加速器サービス)
○Keiko Kumagai, Akito Uchiyama (RIKEN Nishina Center), Seiji Fukuzawa (SHI Accelerator Service Ltd.)
 
RIビームファクトリーの加速器は主に5台のサイクロトロンとそれをつなぐビームトランスポートライン、実験装置までつながるビームラインなどから構成されており、使用されている電磁石電源は700台以上にのぼる。全ての電源が安定に稼働することでビーム運転及び実験が維持できる。電磁石電源をはじめとする加速器構成要素のトラブルが起きたとき、ビームから加速器を構成する装置類を守るためにビームインターロックシステム(BIS)が稼働している。これは電磁石電源の異常またはOFF信号、あるいはサイクロトロン入出射部に設置してあるバッフル信号の異常値等様々な異常を検知すると、ビームを止めるシステムであり大強度ビームから加速器を保護する根幹のシステムとなっている。近年ビーム強度が増加したことにより、ビームが真空チェンバーに当たれば短時間で真空容器が損傷する恐れが出てきた。電磁石電源が故障、OFFにならなくても、意図しない電流値の変化によりチェンバーが損傷する事例も起きた。このような事象を防ぐために電磁石電源は、電源異常のみならず、電流値を常時モニターし、意図しない変化があった場合にはビームを停止する必要が出てきた。2018年よりこの電磁石電流変動監視システムCurs-BISを開発し全電源に導入したので、その仕組みと稼働状況、今後の課題について報告する。
 
13:00-15:00 
THP036
p.655
J-PARC MR加速器制御ネットワークの第三期更新
The third phase update of control network in J-PARC MR

○佐藤 健一,山田 秀衛,上窪田 紀彦(KEK/J-PARC),高橋 博樹(JAEA/J-PARC)
○Kenichi Sato, Shuei Yamada, Norihiko Kamikubota (KEK/J-PARC), Hiroki Takahashi (JAEA/J-PARC)
 
J-PARCにおける加速器制御ネットワークは、加速器を構成する各種電源や測定器等を分散制御するために専用に設けられたローカルネットワークである。制御ネットワークはコアスイッチ、2段のエッジスイッチ、必要に応じて電源筐体の内部・近傍に設置するための末端スイッチで構築されている。 制御ネットワークは2005年末に最初の設計がされて2024年でおよそ20年になる。制御ネットワークの更新は一般的なメーカー保守期間を鑑み、概ね7年を目処に全面的な機種更新を実施している。そのサイクルの中で2018年ごろから第三期更新が計画されていた。しかしながら、世界的な半導体不足に巻き込まれ、更新予定の機器の入手が困難になった。それにより当初の予定より大幅な見直しが行われたが、制御ネットワークの第三期更新におけるMR担当分は2023年度をもって完了した。 本発表では第三期までの更新でどのように制御ネットワークの性能が変化したか、当初の制御ネットワークの設計・思想とどう変わってきたかをまとめ、今後の展望として第四期以降の機器更新がどのようになるべきかの展望を含めて議論する。
 
13:00-15:00 
THP037
p.659
J-PARCメインリングにおける機器保護システムの更新とインターロック信号の光化
Update of machine protection system and opticalization of interlock signals in J-PARC Main Ring

○木村 琢郎(J-PARC Center/KEK)
○Takuro Kimura (J-PARC Center/KEK)
 
MR-MPSは異常を検知した際に、ビーム運転の停止およびビームアボート処理を行うことでJ-PARC メインリング、ニュートリノおよびハドロン実験施設の安全を担保する機器保護システムである。メインリングの運転が開始された2008年から運用されてきたが、 従来のシステムは導入から10年以上が経過しており、2022年には主電磁石電源の更新や新RF空胴が新たに導入されたことに伴い、それらに合わせて新たに開発したMR-MPSの更新を開始した。従来のMR-MPSでは電源等インターロック信号は接点を用いハードワイヤ―でローカル制御室のMPS装置へと入力していた。これらはローカル制御室へのノイズの流入源となりその他の制御機器の誤動作の原因となりえた。そのため新MR-MPSでは接点でのインターロック信号入力を排し光信号での入力へと仕様変更を行った。大半のインターロック信号は接点入力を前提として設計されていたため接点を光信号に変換する対応が必要となっている。本発表では、MR-MPSの更新とインターロック信号の光化への対応状況を紹介するとともに今後のMR-MPS全台の更新と全インタ―ロック信号の光化の計画について紹介する。
 
13:00-15:00 
THP038
p.662
ILC陽電子捕獲ライナック用LバンドAPS加速管の設計および製作方法の検討
Design and fabrication study of L-band alternating periodic structure(APS) cavity for the ILC positron capture linac

○福田 将史,榎本 收志,榎本 嘉範,佐藤 幹,高富 俊和,早野 仁司,肥後 壽泰,森川 祐(高エネ研),栗木 雅夫(広大)
○Masafumi Fukuda, Atsushi Enomoto, Yoshinori Enomoto, Motoki Sato, Toshikazu Takatomi, Hitoshi Hayano, Toshiyasu Higo, Yu Morikawa (KEK), Masao Kuriki (Hiroshima Univ.)
 
国際リニアコライダー(ILC)の電子駆動型の陽電子源において、陽電子は、3GeVの電子ビームをターゲットに照射した際の電磁シャワーにより生成し、ソレノイド磁場中の陽電子捕獲ライナックで加速する。この加速管では、大電流のマルチバンチ陽電子ビームを加速するため、ビームローディング補償や電磁シャワーによる10kW以上の熱負荷への対処が課題となる。この課題解決のため、群速度が大きく、ビームローディングやセルの周波数誤差などの外乱に強いπ/2モードのLバンドのAlternating Periodic Structure(APS)加速管を用いる。これまでに、高い熱負荷に対応する冷却水路のスペースを考慮した、加速セル11cell、結合セル10cellの合計21cell APS加速管の空洞設計を行ってきた。現在は、加工上の事情を考慮した設計の微調整や加工時の各セルや各モードの共振周波数測定およびその調整方法の検討を行っている。空洞設計については、加工上の事情を考慮しカプラーセルの一部形状を修正した。また、APS空洞では、合流条件を満たすように加速セルと結合セルの共振周波数を等しくする必要があるため、空洞の追加工や加速セルに取り付けたチューナーによる共振周波数の調整、および各セルの共振周波数の測定の方法をシミュレーションにより検討している。これら加速管の設計や製作方法について報告する。
 
13:00-15:00 
THP039
p.668
超伝導加速空洞用高純度ニオブ板の機械特性の統計的評価
Statistical evaluation of mechanical properties of high purity niobium sheets for superconducting accelerator

○梅澤 裕明(総合研究大学院大学),山中 将(高エネルギー加速器研究機構),西田 尚志(東京電解株式会社)
○Hiroaki Umezawa (The Graduate University for Advanced Studies), Masashi Yamanaka (KEK), Naoshi Nishida (Tokyo Denkai Co., Ltd.)
 
超伝導加速空洞を800台使ったEuropean-XFELに、東京電解は7800枚の高純度ニオブ板を供給した。続いて同じL-Band空洞を使ったLCLS-II、 LCLS-II HE、SHINEにも高純度ニオブ板を供給し、総数は延べ20000枚を超える。ニオブ板を出荷する際には必ず試験成績表を発行するため、大量の試験データを取得している。本報告は引張試験等の機械特性のデータから高圧ガス保安法と異方性に関する検討を行い、空洞製造や設計に有益な情報を提供することを目的とする。具体的にはJISで規格されている高圧ガス保安法の設計応力強さにはニオブの値がないため、使用者が機械的特性値を取得して提出する義務がある。本研究において引張強さ、0.2%耐力、伸びのデータはどれも正規分布し、平均値–3σから最小引張強さ、最小0.2%耐力はそれぞれ154MPa、48MPaを得た。JIS B8226におけるニオブの設計応力強さは0.2%耐力が支配的であり、32MPaとなった。圧延方向とそれに直交する方向の引張試験結果はそれぞれの20%以内であることが要求されているが、引張強さと0.2%耐力はこれを満たし、伸びについては外れている。
 
13:00-15:00 
THP040

結晶方位を考慮したラージグレインニオブの強度評価
Strength evaluation of large grain niobium considering crystal orientation
○梅澤 裕明(総合研究大学院大学),山中 将(高エネルギー加速器研究機構),西田 尚志(東京電解株式会社)
○Hiroaki Umezawa (The Graduate University for Advanced Studies), Masashi Yamanaka (KEK), Naoshi Nishida (Tokyo Denkai Co., Ltd.)
 
超伝導空洞のコストダウンのため、素材となるニオブにインゴットを直接スライスする方法が研究されている。通常の圧延材のニオブの結晶粒径が数十μmなのに対し、インゴットをスライスして作られたニオブ板の結晶粒径は十数cmにもなることから、この製法の板はラージグレインと呼ばれている。金属の降伏強度はその結晶粒の大きさに反比例するホール-ペッチの法則はニオブにも当てはまり、ラージグレイン材の強度はファイングレイン材と比べて低い。また超伝導空洞は圧力容器とみなされるため高圧ガス保安法の規制を受けるが、その際に必要なラージグレインニオブの機械的強度の最小値は明らかになっていない。そこでラージグレイン材から大量にランダムに切り出された試験片の引張試験を行い、統計的にラージグレインニオブ材の機械強度の評価を行なった。しかしながらばらつきが大きく算出が難しいことから、単結晶丸棒の引張試験片を作成し、結晶方位を調べて引張試験を行なった。その結果、ニオブもシュミットの法則に当てはまることがわかった。さらに今回の実験から算出したニオブの臨界分解せん断応力を報告する。
 
13:00-15:00 
THP041
p.673
Nb製半球形状超伝導空洞による臨界磁場測定法の検討
Study of critical magnetic field measurement method using hemispherical superconducting cavity

○服部 綾佳(茨城高専),早野 仁司(KEK)
○Ayaka Hattori (NIT (KOSEN), Ibaraki College), Hitoshi Hayano (KEK)
 
超伝導薄膜のRF下での臨界磁場測定を目的としたNb製半球形状超伝導空洞の製作を開始した。本発表では、その空洞形状について報告し、低温試験および臨界磁場測定法について議論する。
 
13:00-15:00 
THP042
p.678
SPring-8-IIへ向けたベル型加速空洞における高次共振モードの検討
Investigation of high-order modes in bell-shaped cavities for SPring-8-II

○斗米 貴人(JASRI),稲垣 隆宏(理研, JASRI),大島 隆,山口 博史,正木 満博(JASRI, 理研),前坂 比呂和(理研, JASRI)
○Takato Tomai (JASRI), Takahiro Inagaki (RIKEN, JASRI), Takashi Ohshima, Hiroshi Yamaguchi, Mitsuhiro Masaki (JASRI, RIKEN), Hirokazu Maesaka (RIKEN, JASRI)
 
現在、SPring-8のアップグレード計画SPring-8-IIに向けた準備が進められている。SPring-8-IIでは電子ビームのエネルギーを8GeVから6GeVに下げ、蓄積ビーム電流を現在の100mAから200mAに増やして運転を行う予定である。加速空洞システムについては、現在のSPring-8で使用している32台のベル型加速空洞を半分の16台に減らし、組み換え・再配置する予定である。SPring-8-IIでは、ビーム電流の増加とエネルギーの低下により、空洞に誘起される高次共振モード(HOM)起因の結合バンチ不安定性が起こりやすい条件となるため、HOMのビームへの影響を検討した。ベル型空洞の電磁界シミュレーションにより、HOMの周波数とQ値、シャントインピーダンスを評価し、予備空洞での低電力測定の結果と比較した。また、SPring-8-IIを想定して、空洞でのビーム誘起信号の測定や運転条件を変えてビーム試験を行う予定である。本発表では、これらの検討結果を報告する。
 
13:00-15:00 
THP043
p.684
DFSNet for eigenmode simulation of RF cavity
○Ahsani Hafizhu Shali, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Tsun Him Chong, Hang Zhao, Shotaro Matsui, Kaoru Watanabe, Tomoki Imura, Nami Itakura, Sho Ishihata (RCNP Osaka U.)
 
Optimization of the quantity of interest of an RF cavity, such as the frequency and the quality factor, requires calculation from many samples with different geometric configuration with each of them requiring FEM simulation. Geometric modification of smaller components requires finer mesh thus a very high computational cost requirement. In this research, we propose a physics informed neural network model to solve eigenvalue problems for the lowest frequency mode of a fully three dimensional RF cavity. Three loss functions are used, the first one is related to the differential equation (LDE), the second one is related to the boundary condition (LBC), while the last one is used to make sure that the generated solution is not trivial (LReg). The input for the neural networks are the guess of the eigenvalue and a sampled spatial position, while the output is the value of the RF magnetic field at the corresponding spatial position. The sampled positions are chosen to be related to the nodes of a generated unstructured mesh of the cavity model. The result shows that the neural network model could give an accurate prediction of the frequency and the field for the lowest mode.
 
13:00-15:00 
THP044

KEKにおけるニオブスズ超伝導加速空洞の成膜研究および伝導冷却研究の現状
Status on coating and conduction cooling researches for Nb3Sn superconducting cavity in KEK
○山田 智宏,井藤 隼人,梅森 健成,阪井 寛志(高エネ研)
○Tomohiro Yamada, Hayato Ito, Kensei Umemori, Hiroshi Sakai (KEK)
 
超伝導加速空洞は常伝導空洞に比べ表⾯抵抗を⼩さく抑えることができるため、より高い電場での連続的な運転が可能となり、現在世界中の⼤型加速器で多数⽤いられている。空洞材料としてはニオブを使⽤したものがほとんどで、液体ヘリウム温度4K やさらに表⾯抵抗を下げて発熱を減らすため2Kまで減圧して冷却することも多い。⼀⽅で、浸漬冷却に使⽤する液体ヘリウムの製造やクライオモジュールの⾼圧ガス保安法対応など、利⽤までのハードルが高く、社会的に広く普及しているとは言い難い。現在KEKでは、スズ蒸気拡散法を用いたニオブスズ超伝導加速空洞の成膜研究並びにこれを小型4K冷凍機による伝導冷却によって冷却する技術開発を進めている。ニオブスズ(Nb3Sn)は、ニオブの2Kに匹敵する高いQ値を4K程度で実現できるため、2Kの超流動ヘリウムまで減圧する必要がなくなる。また、4K程度であれば液体ヘリウムを⽤いず市販の⼩型4K冷凍機での冷却が可能になり、⾼圧ガス対応も不要になる。ニオブスズの成膜研究はKEKでは2019年ごろから始まり、徐々にその性能を向上させてきている。2023年度に行った空洞成膜では、4.2Kで13.5MV/mとKEKで過去最高性能を記録した。また、同じ空洞を小型4K冷凍機(1.8W@4.2K)1台で伝導冷却し、7MV/mまで出すことができている。本ポスター発表では、KEKでのニオブスズに関連する最新の研究成果と今後の開発項目について報告する。
 
13:00-15:00 
THP045

超伝導加速空洞ストリングアセンブリ作業におけるロボット利用の具体的な検討
Specific considerations of robot applications for superconducting accelerating cavity string assembly
○山田 智宏,井藤 隼人,道前 武,山本 康史,梅森 健成(高エネ研)
○Tomohiro Yamada, Hayato Ito, Takeshi Dohmae, Yasuchika Yamamoto, Kensei Umemori (KEK)
 
超伝導加速空洞は常伝導空洞に比べ表⾯抵抗を⼩さく抑えることができるため、より高い電場での連続的な運転が可能となり、現在世界中の⼤型加速器で多数⽤いられている。一方、空洞およびその周辺部品の組み立て時に空洞内部にゴミやチリなどのパーティクルが混入すると、発熱やField Emissionにより空洞性能の著しい低下が起こるため、クリーン環境を整備することに加え、いかにパーティクルの発生および侵入を抑えるかという技術開発が重要である。一般に、クリーンルームにおけるパーティクル発生源の最も大きな寄与は人間であることが知られている。本研究では、この人間の介在を減らすための試みとしてロボットを導入し人間に代わって作業を行わせることを検討した。さらに、KEKでは、国際リニアコライダー(ILC)計画の実現に向けた技術開発を国際的に進める新たな枠組みである「ILCテクノロジーネットワーク(ITN)」とも関連した、新たな5カ年計画(MEXT-ATD)が始まっており、プロトタイプクライオモジュール1台の設計・製作を進めている。本モジュールのための空洞ストリングの組み立てにロボットを導入するべく、ロボット技術向上のためのマイルストーンを立てて進めている。本ポスター発表では、空洞ストリングアセンブリ作業におけるロボット活用方法とその課題、さらにMEXT-ATDのクライオモジュールでの利用を見据えたロボット技術開発スケジュールについて報告する。
 
13:00-15:00 
THP046
p.689
TE01モード円筒型空洞共振器を用いた粒子加速の検討
Study of particle acceleration using a circular TE01 mode cavity resonator

○石畑 翔,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,荘 浚謙,Zhao Hang,Shali Ahsani Hafizhu,松井 昇大郎,渡辺 薫,井村 友紀,板倉 菜美(阪大 RCNP)
○Sho Ishihata, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Tsun Him Chong, Hang Zhao, Ahsani Hafizhu Shali, Shotaro Matsui, Kaoru Watanabe, Tomoki Imura, Nami Itakura (RCNP Osaka U.)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では、自動サイクロトロン共鳴加速法(CARA)のシステムを用いて陽子を加速することで、高い電力効率を持つ陽子加速器の設計を行い、コンピューターシミュレーションによる性能評価を実施してきた。CARAの先行研究で得られた技術や知見から応用し、サイクロトロン共鳴条件を考慮せず、円筒型空洞内に励振したTE01モードの周方向に発生する電場を用いる加速器を考案した。原理としてはソレノイドによる静磁場を用意し、その磁場の方向に軸を向け配置した共振空洞にTE01モードの定在波を励振させる。このとき荷電粒子は軸に沿って入射することで、静磁場中の円運動と軸方向の等速直線運動を行い、TE01モードの周方向の電場と静磁場中の円運動の方向が一致することで加速が行われる。荷電粒子をTE01モードで発生する交流電場で加速させるために、共振空洞を電場が向きを変えるまでに粒子が通り抜けるように荷電粒子の速度・空洞共振器の構造を最適化する必要がある。本発表では、TE01モード用円筒型共振空洞の特性、粒子加速のための構造の最適化についてコンピューターシミュレーションなどによる検討状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP047
p.692
超伝導空洞の組み立てに使用するボルトの調査
Study of bolts used to assemble superconducting cavities

○山田 浩気((株)NAT),阪井 寛志,山本 将博,荒木 隼人,片山 領(高エネルギー加速器研究機構)
○Hiroki Yamada (NAT), Hiroshi Sakai, Masahiro Yamamoto, Hayato Araki, Ryo Katayama (KEK)
 
加速器の組み立ての工程で超伝導空洞を組み立てる際に注意しなければならない事の一つに、field emissionを引き起こす原因となるゴミの混入がある。KEKでは、超伝導空洞・真空部品はクリーンルーム(ISO class4)で組み立て、ビームラインとの接続箇所に簡易クリーンブースを設置、スロー排気システムによるゴミの舞い上げを抑制しながらの排気、などの対策を実行した結果、field emissionを抑制し尚且つ高い加速勾配の運転が実現できた。一方で改善する余地はまだ残っており、その一つのボルトについて取り上げる。今までステンレスボルトに焼き付きカジリ防止のため銀メッキ処理を施した物を使用していたが、メッキの剥がれによるゴミの混入の可能性も懸念されていた。また銀メッキは未加工品と比べて同じトルクで締めた場合に軸力が上がるということも判明しており、ボルト変更する場合はリークを起こさないために軸力の測定も重要になる。今回はそれらについて調べた事を発表する。
 
13:00-15:00 
THP048

大強度4Kニオブスズ超伝導電子線形加速器の開発
Development of high-power 4K Nb3Sn superconducting RF electron linac
○柏木 茂,武藤 俊哉,日出 富士雄,濱 広幸,南部 健一,長澤 育郎,髙橋 健,柴田 晃太朗,Kavar Anjali,山田 悠樹,工藤 滉大,安彦 颯人(東北大先端量子),梅森 健成,阪井 寛志,井藤 隼人,山田 智宏(高エネ研),菊池 章弘,大井 修一,立木 実,有沢 俊一(物材研)
○Shigeru Kashiwagi, Toshiya Muto, Fujio Hinode, Hiroyuki Hama, Kenichi Nanbu, Ikurou Nagasawa, Ken Takahashi, Kotarou Shibata, Anjali Kavar, Hiroki Yamada, Koudai Kudo, Hayato Abiko (RARIS, Tohoku Univ.), Kensei Umemori, Hiroshi Sakai, Hayato Ito, Tomohiro Yamada (KEK), Akihiro Kikuchi, Syuichi Ooi, Minoru Tachiki, Syunichi Arisawa (NIMS)
 
本研究グループでは、4Kニオブスズ超伝導電子加速器の開発をスタートした。ニオブスズ超伝導高周波空洞は大量の液体ヘリウムを必要とせず、伝導冷却で到達可能な4Kで運転が可能であるため、大学などの小規模な施設においても加速器システムの構築が可能である。我々は、医療用放射性同位元素(RI)製造や水の浄化などへの4Kニオブスズ超伝導電子線形加速器の応用を目指しており、そのための加速器設計研究も行っている。また、大強度ニオブスズ超伝導加速器実現の第一歩として、Sバンド(2856MHz)の単セル空洞を製作し、東北大学先端量子ビーム科学研究センターでのビーム加速実証実験を計画している。本学会では、ニオブスズ超伝導空洞およびその空洞を冷却するクライオモジュールの設計・製作状況などについて報告する。
 
13:00-15:00 
THP049
p.698
永久磁石を用いたバイポーラ補正磁石の設計検討
Design improvement of bipolar correction magnet with permanent magnets

○栗山 靖敏,岩下 芳久(京大複合研),不破 康裕(原子力機構),照沼 信浩(高エネ研)
○Yasutoshi Kuriyama, Yoshihisa Iwashita (KURNS), Yasuhiro Fuwa (JAEA), Nobuhiro Terumua (KEK)
 
永久磁石を用いた荷電粒子ビーム用補正磁石を開発している。開発中の補正磁石では、磁場を発生させる永久磁石のロッドを回転させることで、磁場を両極性に変化させることができる。この両極性変化の原理を検証するため、試作機を製作し性能評価を行った。試作機の性能評価の結果、永久磁石の残留磁化の不均一性が多極成分に大きな影響を与えることがわかった。この影響を抑制するために、異方性中間磁極を追加した補償磁石が検討されている。本発表では、多極成分を抑制するための改善策について検討した結果を報告する。
 
13:00-15:00 
THP050
p.703
伝導冷却でのカレントリードの種々の設計方法の比較について
Comparison of various design methods for current leads in conduction cooling

○清水 洋孝,宗 占国(高エネ研)
○Hirotaka Shimizu, Zhanguo Zong (KEK)
 
超伝導線材を用いた電磁石の利用では、転移温度以下極低温での電気抵抗の消失に伴い、大きな通電量が見込め、結果として高強度磁場の発生が可能となった。しかし同時に、極低温環境に置かれた電磁石に通電する為には、常温部から極低温部までを導線で繋ぐ必要がある為、これが大きな熱の通り道となる事で、侵入熱の問題が生じる。LHCやSuperKEKBのQCS電磁石の様な大型加速器での現場では、低温側熱浴からの蒸発蒸気の顕熱を利用して、導線部分を冷やす工夫が採用される事が一般的であるが、ILCのcryomodule内に収められる4極電磁石などでは、直接浸漬冷却される空洞とは別に、磁石本体が伝導冷却のみで冷やされるため、導線部分に関してもアンカーで熱を逃しながら、伝導のみでの冷却を行う必要がある。このため、熱侵入の大きな要因となる常温側からの伝導成分と、通電時に導線本体から発生するジュール熱成分を正しく評価して、適切なカレントリードの熱設計を行う事が重要になる。熱伝導率や電気伝導率を温度に依らない定数と見做す近似や、熱伝導積分値を用いる方法など、さまざまな設計の手法があるが、熱伝導方程式を近似を用いずに解析的に解いて評価した場合の結果を求める事で、他の結果との比較を行い、設計方法の違いがもたらす影響の大きさに関して報告する。
 
13:00-15:00 
THP051
p.708
SACLAマルチエネルギー運転における四極電磁石の高速電流変更システム
Fast current modulation system of Q-magnets for multi-energy operation in SACLA

○近藤 力(JASRI/RIKEN),中澤 伸侯(SES),福井 達(RIKEN SPring-8 Center),山田 遼,家納 寛,森本 理(SES),原 徹(RIKEN SPring-8 Center)
○Chikara Kondo (JASRI/RIKEN), Nobuyuki Nakazawa (SES), Toru Fukui (RIKEN SPring-8 Center), Ryo Yamada, Yutaka Kano, Osamu Morimoto (SES), Toru Hara (RIKEN SPring-8 Center)
 
SACLAでは、2本のXFELビームラインとSPring-8蓄積リングへのビーム入射ラインへ、繰り返し60 ppsの電子ビームをショット毎に振り分けている。この時、各ラインの要求に応じてビームエネルギーをショット毎に6-8GeVの間で変更するマルチエネルギー運転を行っている。これまで四極電磁石の励磁にはDC電源を使っていたため、振り分け前の線型加速器部ではビームエネルギーの差異によって四極電磁石の集束力が変わり、ビームエンベロップにミスマッチが生じていた。このミスマッチは、振り分け後の四極電磁石で補正する必要があり、XFELの調整に時間がかかっていた。そこで我々は、四極電磁石の励磁電流を60Hzで変更できるシステムを開発し、線型加速器の一部の四極電磁石に採用した。このシステムは積層鋼板電磁石と、DC電源に比べ高電圧化とフィードバック制御の高速化を施した電源で構成され、60Hzの磁場変更をショット毎の電流再現性100ppm以下で実現している。また通信制御系には、電流変更のタイミングがビームタイミングと同期するように、従来のDC電源用iDIOに外部トリガ機能を追加したものを採用した。本システムは2021年に開発を開始し、2023年秋からの本格的な運用後は、ビームエネルギー変更時のXFEL調整が迅速かつ簡便に行えるようになっている。本発表では、システム概要や技術詳細について報告する。
 
13:00-15:00 
THP052
p.713
PF-ringにおける偏向電磁石による軌道変動とコイルに関する調査
Orbit fluctuation in PF-ring and study on coil of bending magnet

○東 直,篠原 智史,原田 健太郎,帯名 崇(KEK)
○Nao Higashi, Satoshi Shinohara, Kentaro Harada, Takashi Obina (KEK)
 
PF-ring (Photon Factory)は2.5 GeVの放射光加速器である。 2021年11月、ユーザー運転中に水平方向に0.1 mm程度の軌道変動が発生した。この軌道変動はその後も断続的に発生し、軌道変動発生時のCODを最もよく再現するレスポンスから1番目の偏向電磁石 (B01)が軌道変動の発生源であることと推定した。このためB01の補正電磁石電源などの調査を行ったものの原因特定には至らず、運転終了後に B01を直接観察したところ、水冷コイルに冷却水漏れが発生した跡が残っていた。このため、2023年にB01の上半分のコイルをバックアップと交換したところ、軌道変動の発生は見られなくなった。 この外したコイルについて、その他の正常コイルとともにインピーダンス (LCR)測定を行い、比較を行った。本発表ではこれらについて詳しい説明を行う。
 
13:00-15:00 
THP053
p.718
LTDを使用した超高速応答高電圧パルス電源
Ultra-fast response high voltage pulse power supply using LTD

○廣瀬 幸子,徳地 明(パルスパワー技術研究所),江 偉華(長岡技術科学大学)
○Yukiko Hirose, Akira Tokuchi (PPJ), Weihua Jiang (Nagaoka University of Technology)
 
加速器に使用されるキッカーマグネット用の高電圧パルス電源などでは、トリガ信号が入ってから、出力電流が立ち上がるまでの遅れ時間を極力短くすることが要求される場合がある。従来のキッカー電源では高電圧を出力する為のスイッチにサイラトロンが多用されてきたが、グリッドパルスを発生するまでの遅れ時間に加え、サイラトロンが動作するまでの遅れ時間が加わりトータルとして500ns~1μs程度の遅れ時間が生じていた。我々はLTD(Linear Transformer Driver)回路を使用し、直並列接続された多数のMOSFETを外部トリガ信号でダイレクトに同時に駆動することにより、100ns以内の遅れ時間で数10kV、数kAのパルス電流を立ち上げる超高速応答高電圧パルス電源の開発を進めている。本発表では20kV、1kA程度のパルス発生の実験結果を報告する。
 
13:00-15:00 
THP055
p.722
重粒子線小型シンクロトロン用超伝導電磁石のヨーク形状最適化
Yoke shape optimization of the superconducting magnet for a compact heavy ion synchrotron

○藤本 哲也(加速器エンジニアリング),水島 康太,岩田 佳之,野田 悦夫,浦田 昌身,宮武 立彦,松葉 俊哉(量研機構),天野 沙紀,高山 茂貴,折笠 朝文,吉行 健(東芝エネルギーシステムズ)
○Tetsuya Fujimoto (AEC), Mizushima Kota, Yoshiyuki Iwata, Etsuo Noda, Masami Urata, Tatsuhiko Miyatake, Shunya Matsuba (QST), Saki Amano, Shigeki Takayama, Tomofumi Orikasa, Takeshi Yoshiyuki (Toshiba ESS)
 
超伝導技術を用いた超小型重粒子線がん治療装置の開発を進めている。本装置のシンクロトロンでは0.3Tから3.5 Tの磁場を連続的に10秒周期で上げ下げを実現する冷凍機伝導冷却方式を採用し、既存の普及型重粒子線シンクロトロンの周長63mに対して半分以下の周長28 mで炭素イオンを4 MeV/uから最大430 MeV/uまで加速することを目標としている。磁場を連続的に変化させるシンクロトロンに超伝導電磁石を使用するにあたり、発熱によるクエンチのリスクを低減するためには起磁力をできるだけ下げることが望ましい。コイルとヨークの間隔を狭めるほど起磁力を低減することが可能であるが、この間隔を狭めるほど鉄ヨーク中の磁束密度が高くなることから、ヨーク中磁束密度の飽和により高磁場側の磁場安定度が悪化する。この飽和状態における磁場安定度の改善について検討を行った。ここではヨークの外周形状およびヨークに穴を開けることで、高磁場時のヨーク中磁束の流れる経路を変えてボア中の磁場分布を変えられることを利用し、最適なヨーク形状を求めた。その結果、最大励磁電流を268Aから256Aまで約4.5%下げることが可能であった。本発表ではシンクロトロン用超伝導電磁石の起磁力低減のためヨーク形状の最適化を行った結果について報告する。
 
13:00-15:00 
THP056
p.726
アバランシェサイリスタスイッチを用いた高電圧スイッチの保護回路の開発
Development of high voltage switch protection circuit using avalanche thyristor switch

○内藤 孝,明本 光生(KEK)
○Takashi Naito, Mitsuo Akemoto (KEK)
 
高電圧大電流スイッチとして使用されてきたサイラトロンスイッチの半導体化が進められているが、半導体は単体で20kVを超える高電圧で動作させることが出来ないため多段接続で使用されることが多い。多段接続の半導体の一部に故障が発生するとほとんどの場合ショート状態となり、正常な半導体に故障した半導体の電圧も加わるためにさらなる故障を誘因する可能性がる。この問題を解決するために保護回路を開発した。その回路構成と動作試験について報告する。また、我々はサイリスタのアバランシェモードを用いたスイッチを開発しているが、アバランシェモードでは一定以上の電圧が印加されないとスイッチ動作しないため一定以上の電圧を印加した場合にのみスイッチ動作をする回路も付加した。その動作についても報告する。
 
13:00-15:00 
THP057
p.730
J-PARC RCS用ペイントバンプ電源の波形パターン調整システムの構築
Waveform pattern control system of paint bump power supply for J-PARC RCS

○杉田 萌,高柳 智弘(JAEA),植野 智晶,堀野 光喜(NAT),篠崎 信一(JAEA)
○Moe Sugita, Tomohiro Takayanagi (JAEA), Tomoaki Ueno, Koki Horino (NAT), Shinichi Shinozaki (JAEA)
 
J-PARC RCSでは、大強度ビームを生成するペイント入射に、4台の水平ペイントバンプ電磁石と2台の垂直ペイントバンプ電磁石を用いる。ペイントバンプ電磁石電源はIGBT制御のチョッパ回路で構成され、指令電流と指令電圧の高周波スイッチング制御により、ビーム軌道を時間変化させる任意の出力電流波形(ペイントパターン)を作成する。ビーム軌道の制御精度は指令電流と出力電流の差(出力電流偏差)で決まり、±1.0%以下の偏差が要求される。現在のペイントパターン調整では、電源制御の応答関数に応じて指令電圧を作成するソフトと、手動で指令電圧値を書き換える調整を組み合わせ、±0.2%以下の偏差を達成している。ソフトは時間を約30μ秒で区切り、その中で出力電流偏差を精度内に調整するため、ビーム入射時間が500μ秒のペイントパターンを作成する場合、指令電圧は数μ秒毎に不連続な階段状の値をとる。この波形はIGBTの高速動作によるスイッチング損失増加の原因となっている。そこで、可能な限り平滑化した指令電圧を手動で作成し、従来と同様の±0.2%以下の偏差を達成できることを確認した。作成には時間を要したが、基本的なルールと傾向の中で予測をしながら調整ができたため、スイッチング損失を低減したペイントバンプ電源独自の波形パターン調整システムを機械学習で構築できる見通しを得た。本発表では、パターン作成の現状と構築するシステムの構成について報告する。
 
ポスター② (8月1日 3F研修室A)
13:00-15:00 
THP058
p.733
量子メスに向けたレーザー駆動大強度イオンバンチの全電荷量測定
Total charge measurement of laser-driven high-intense ion bunch for quantum scalpel

○小島 完興,榊 泰直,ヂン タンフン(量研関西研),石井 邦和,熊谷 嘉晃,大石 沙也加,岡野 朱莉(奈良女子大学),近藤 公伯(量研関西研)
○Sadaoki Kojima, Hironao Sakaki, Thanh Hung Dinh (KPSI, QST), Kunikazu Ishii, Yoshiaki Kumagai, Sayaka Oishi, Akari Okano (Nara Women's University), Kiminori Kondo (KPSI, QST)
 
量子科学技術研究開発機構(QST)では、高い治療効果が明らかになっている重イオンがん治療装置の高性能化・小型化を目指す“量子メス”プロジェクトが進行中である。現在、提案されている第5世代重イオンがん治療装置(量子メス)は、イオン入射器・超伝導シンクロトロン・ビーム輸送系・超伝導回転ガントリーから構成されている。装置を小型化するためには、体積の大部分を占める入射器とシンクロトロンの小型化が不可欠である。レーザー駆動イオン加速は非常に大きな加速勾配を持つことから、この小型化の要求に応える技術として期待されている。既存のイオン入射器をレーザー駆動方式で置き換えるためには、イオンを駆動する小型のレーザーモジュールの開発とそれを用いたレーザー駆動による数MeV/uの炭素イオンの加速が必要である。QSTではレーザー部、イオン加速部、イオン輸送部を備えたテストベンチを開発し、この課題に統合的に取り組んでいる。これまでの統合実験ではレーザー駆動で加速したイオンバンチを3台の四重極磁石によって数msrの立体角で捕捉し、イオンバンチの全電荷量測定を行った。講演では、量子メス用レーザー駆動イオン入射器の開発に関わる最新の実験結果について報告する。
 
13:00-15:00 
THP059

KRS-5中における長波長赤外自由電子レーザパルスのスペクトル広帯域化
Spectral broadening of longwave-infrared free electron laser pulses in KRS-5
○全 炳俊(京大エネ研)
○Heishun Zen (IAE, Kyoto Univ.)
 
固体やガスに超短パルス高強度レーザを集光すると自己位相変調によりスペクトル広帯域化が生じる。固体レーザの分野において、こういった媒質中でのスペクトル広帯域化は数サイクルパルス発生やf-2f干渉計を用いたCarrier Envelope Phaseの変動計測に不可欠な技術である。長波長赤外領域では、KRS-5中でのスペクトル広帯域化により、波長9μm、パルスエネルギー10μJ、パルス幅145fsのレーザが1.5サイクルのパルス幅に相当する45fsまで圧縮されたという報告(Opt. Lett. 8, pp.2175-2178)が2020年になされた。この際、2μm程度まで短波長側の波長帯域が広がった。本研究では上記の先行研究を参考に、京都大学自由電子レーザにおいて発生させた波長11μmのFELパルス列を厚さ4mmのKRS-5円板に集光し、透過光を波長1.5~2.6μmにおいて感度を持つ計測系で測定することにより、スペクトル広帯域化現象の観測を試みた。その結果、KRS-5と集光点の位置関係を変えた際に観測される信号強度が変化し、観測された光が入射FELと同じ方向に直線偏光していることを観測した。これらはFELパルスのスペクトル広帯域化が発生していることを示唆している。また集光点の前と後にKRS-5円板を設置した際にFELマクロパルス中での観測された光のマクロパルス形状に大きな差が見られており、これは30MHzという高繰り返しで供給されるFELミクロパルスの蓄積効果に起因するものであると考えられる。
 
13:00-15:00 
THP060
p.735
中赤外自由電子レーザー光パルス間位相同期システム開発に向けた試験調和共振器の構築
Development of a test harmonized optical resonator for mid-IR phase-locked free electron laser

○久保田 月野,住友 洋介,曽我 怜大,原田 一輝(日大理工),境 武志,早川 建,早川 恭史(日大LEBRA)
○Tsukino Kubota, Yoske Sumitomo, Reo Soga, Kazuki Harada (CST Nihon Univ.), Takeshi Sakai, Ken Hayakawa, Yasushi Hayakawa (LEBRA Nihon Univ.)
 
日本大学の電子線形加速器から生成される自由電子レーザーは、高輝度で短時間幅な中赤外光パルスから構成されている。この中赤外光パルスを高輝度・高繰り返しで放出できる施設は珍しく、水やアンモニアなど水素関連分子の固有振動数に瞬間的な照射を逐次的に行うことにより非線形な反応を引き起こせる可能性がある。この自由電子レーザーの性能を高めるため、約3GHzで生成されるパルス列の位相を同期させることで高繰り返し光周波数コムの生成を計画しており、その際に必要となる特定の周波数成分に強度を集中させる仕組みとして位相同期システムの開発を計画している。本発表においては、光周波数コムや位相同期システムなどの研究概要の紹介と、準備段階として着手している試験的な位相同期システムの構築と実験に関して報告を行う。試験的な位相同期システムに関して、2枚の凹面鏡から構成される共振器内に、スプリッターと3枚目の凹面鏡を設置することにより光パルス間の位相同期を行うことが目的であり、スプリッターによるビーム損失率と共振器内に入射するビームパラメータの結果について報告を行う。
 
13:00-15:00 
THP061
p.738
銅薄膜を用いた腐食評価のための試験装置の立上げ
Start-up of a test equipment for corrosion evaluation using copper thin film

○菅沼 和明(JAEA/J-PARC),関山 喜雄(日本アクシス),本田 智幸(原子力エンジニアリング),出井 竜美,鈴木 勝夫,藤来 洸祐(JAEA/J-PARC),鈴木 博,仲田 守浩,細川 英洸(NAT),渡辺 泰広,山﨑 良雄(JAEA/J-PARC)
○Kazuaki Suganuma (JAEA/J-PARC), Yoshio Sekiyama (AXIS), Tomoyuki Honda (NECO), Tatsumi Dei, Katsuo Suzuki, Kousuke Fujirai (JAEA/J-PARC), Hiroshi Suzuki, Morihiro Nakata, Hideaki Hosokawa (NAT), Yasuhiro Watanabe, Yoshio Yamazaki (JAEA/J-PARC)
 
J-PARC加速器では、無酸素銅が電磁石等の機器材料として多用されている。一方、放射線場においては、機器の冷却に使用する純水は、防食防止のための添加剤が使用出来ない。加速器機器では、冷却配管の多くを占める銅配管の内表面を腐食させていると思われる事例が散見されている。 たとえば、原子力分野の防食腐食材料研究では、強酸性溶液又は強アルカリ性溶液と耐食材料による研究が盛んではあるが、純水と銅材料の防食腐食の文献は少ない。これは、一般的に銅材料が使用される業界が限られるからではないだろうか。加速器特有と言っても良いかもしれない純水と銅材料の防食腐食の試験方法と評価方法を検討したところ、薄膜を用いた腐食試験と統計手法を持ちいた評価が考えられた。本報告では、これまでの腐食評価の取り組みを報告するとともに、立上げ初期の段階ではあるが、新しい取り組みである薄膜を用いた腐食試験について現状報告をおこなう。
 
13:00-15:00 
THP062

ILC用超伝導空洞の暗電流による放射線場の測定と評価
Measurements and evaluation of radiation field from dark current of ILC superconducting cavities
○大山 隆弘,飯島 和彦,佐波 俊哉,山本 康史,松本 利広,マシュー オメット,荒木 隼人(KEK),ジョシ プラカシュ(総研大),町田 武(日本放射線エンジニアリング株式会社)
○Takahiro Oyama, Kazuhiko Iijima, Toshiya Sanami, Yasuchika Yamamoto, Toshihiro Matsumoto, Omet Mathieu, Hayato Araki (KEK), Prakash Joshi (SOKENDAI), Takeshi Machida (JREC)
 
ILCの放射線安全において、超伝導空洞で生ずる暗電流は主リニアック部の主要な放射線源と位置づけられている。また、KEKにおいてクライオモジュール試験施設の建設準備が進められているが、本施設の遮蔽壁の厚みと配置に関する検討を行う上で、暗電流による放射線場の評価が重要となる。空洞の暗電流と放射線の関係については空洞の研究開発の中で多くのデータが取得されているが、ガンマ線以外の中性子に関するデータや、複数台の空洞を同時運転した時の放射線場のふるまいに関する知見は少ない。ここでは、放射線安全管理の視点から行った、暗電流による放射線場の測定及び評価に関する試みを報告する。
 
13:00-15:00 
THP063
p.741
J-PARC 3 GeVシンクロトロン入射ダンプの中性子によるサンプル放射化評価
Evaluation of the sample activation at the injection dump of J-PARC 3 GeV Rapid Cycling Synchrotron

○山本 風海,中野 秀仁(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター),松本 哲郎(産業技術総合研究所 )
○Kazami Yamamoto, Hideto Nakano (J-PARC Center, Japan Atomic Energy Agency), Tetsuro Matsumoto (National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)
 
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)は、1 MWの大強度ビームを物質生命科学実験施設および主リングシンクロトロンに供給している。RCS内に大強度ビームを蓄積する際、リニアックで加速したH^-ビームから電子を二個剥ぎ取り陽子に変換して入射しているが、一部のビームは変換されずに入射ダンプに廃棄される。ダンプ内部はこの廃棄ビームによって二次粒子が飛び交うことになるので、それを照射試験場として使用できないか、検討を行っている。本報告では、Phitsを用いた計算およびビスマス試料を放射化させゲルマニウム半導体検出器で測定した結果を比較する。
 
13:00-15:00 
THP064

SAGA-LS電子蓄積リング4極電磁石の設置位置変動観測
Observation of the movements of the quadrupole magnets at the SAGA-LS storage ring
○岩崎 能尊(九州シンクロトロン光研究センター)
○Yoshitaka Iwasaki (SAGA-LS)
 
近年SAGA-LS電子蓄積リングにおいて電磁石及び真空槽用冷却水の温度変化に伴う± 20 μm程度のビーム軌道の変動が観測されている。放射光実験に対し影響の大きい垂直方向ビーム軌道の変動は軌道補正フィードバックシステムによりほぼ解消されたものの、冷却水温度変化に伴うビーム軌道変動の要因については未解明であった。要因のひとつとして冷却水温度変化に起因する4極電磁石の位置変動が推定されたため、電子蓄積リング4極電磁石に対し接触式精密変位計を設置し冷却水温度変化との相関を調査した。観測の結果、約±0.5 ℃の冷却水温度変化に対し、長期的なドリフトとは別に最大で約±2 μmの4極電磁石の周期的な位置変動が発生していることが確認された。4極電磁石の設置場所とビーム軌道の観測点にも依存するが、±2 μmの4極電磁石の位置変動は±10 μm程度のビーム軌道の歪みを発生させる。これは観測されるビーム軌道の変動量とオーダーが一致する。本学会において、4極電磁石設置位置の変動観測システム及びその観測結果を報告する。また、冷却水の温度変化が電磁石設置位置を変動させるメカニズムについての考察を含める。
 
13:00-15:00 
THP065
p.746
ミューオン加速管の放射線線量推定
Estimation of radiation level for the muon linear accelerator

○設樂 暁,岩瀬 広,大谷 将士,惠郷 博文(高エネルギー加速器研究機構),近藤 恭弘(日本原子力研究開発機構)
○Satoru Shitara, Hiroshi Iwase, Masashi Otani, Hiroyasu Ego (High Energy Accelerator Research Organization), Yasuhiro Kondo (Japan Atomic Energy Agency)
 
ミューオンg-2/EDM精密計測実験用線型加速器で用いられるディスク装荷型進行波加速管 (μDLS)の暗電流とそれに起因する2次放射線の評価および計算を行った。RFによって空洞表面から発生した電子は加速され,空洞表面に衝突して二次放射線を発生させる。そのため、放射線量の評価を行うにはμDLS空洞内での電子発生とダイナミクスを詳しく再現する必要がある。μDLSは,電子用DLS(eDLS)と比べ,空洞の構造が異なるため,暗電流電子の加速も異なると予想した。本研究では初めに,KEKつくばキャンパスにある電子陽電子入射器内のテストスタンドでeDLSから発生する放射線線量を計測し,シミュレーションコードPHITSにてテストスタンド内部の放射線分布を再現する換算方法を得た。次にμDLS内部で放出される電子のダイナミクスシミュレーションを行い,発生した電子ビームのデータをPHITSに入力して換算方法を適用し、μDLS放射線線量の推定を行った。本講演ではその詳細について報告する。
 
ポスター② (8月1日 3F交流室A)
13:00-15:00 
THP066
p.751
球形空洞型パルス圧縮器のデチューナー設計(2)
Design of detuner for spherical-cavity-type pulse compressor (2)

○肥後 寿泰,惠郷 博文,東 保男,阿部 哲郎,設楽 暁(高エネルギー加速器研究機構),坂東 佑星(総研大),牛本 信二(三菱電機システムサービス)
○Toshiyasu Higo, Hiroyasu Ego, Yasuo Higashi, Tetsuo Abe, Satoru Shitara (KEK), Yusei Bando (SOKENDAI), Shinji Ushimoto (Mitsubishi Electric System & Service )
 
KEK電子陽電子線形加速器では、球形空洞型Sバンドパルス圧縮器を開発し活用され始めている。パルス圧縮をしない運転も必要であり、デチューナーも開発しプロトタイプ機が動いているが、デチューナーの挿入量が大きく、長期安定性の向上を目指した設計変更ができると良い。この目的に沿って、挿入量を小さくした設計を試みたので、本稿ではその背景や設計方針と、具体的な設計詳細について述べる。
 
13:00-15:00 
THP067
p.755
半導体パルスモジュレータの運転試験と高効率化に向けた検討
High power test of a solid-state pulse modulator and study for higher efficiency

近藤 力(JASRI / 理研播磨),○稲垣 隆宏,前坂 比呂和(理研播磨),湯城 磨(スカンジノバ・システムズ株式会社)
Chikara Kondo (JASRI / RIKEN SPring-8 Center), ○Takahiro Inagaki, Hirokazu Maesaka (RIKEN SPring-8 Center), Osamu Yushiro (Scandinova systems K. K. )
 
X線自由電子レーザー施設SACLAの将来計画として、電力使用量を現在と同程度に保ったままパルス繰り返しを60 Hzから10倍上げることを想定し、加速管や高周波源、パルス電源等の高効率化を検討している。クライストロン用パルス電源については、近年普及している半導体パルスモジュレータの技術を検討した。半導体モジュレータは、高速な半導体をON/OFFすることでパルス幅を任意に制御し、無駄な電力を削減することができる。サイラトロンを使わないため、高繰り返し運転をしてもカソードの劣化や自爆の恐れがなく、安定かつ長寿命で運用できることが期待される。我々は、半導体モジュレータの実用性能と安定性、信頼性を評価し、高効率化に向けた知見を得るため、昨年度にScandiNova社の半導体モジュレータK-300を購入し、SACLA-BL1用加速器SCSS+の増設エリアに設置した。工場で実施した運転試験では、Cバンド・クライストロンに-360 kV, 320 A、4.2 sのパルス電力を供給できていることを確認した。パルスの立ち上がり、立下りの時間は約1 sで、遅れは主にパルストランスに由来し、IGBT自体のスイッチング速度は300 nsであることも確認した。本発表では、これらの工場試験や、今後行うSACLAでの運転試験の結果を報告し、高効率化に向けた改良策についても議論する。
 
13:00-15:00 
THP068
p.760
SuperKEKB低電力高周波制御における運動量アクセプタンス評価のための加速位相変調機能の導入
Implementation of acceleration phase modulation function for evaluation of momentum acceptance in SuperKEKB LLRF control

○小林 鉄也,赤井 和憲,大西 幸喜,小笠原 舜斗,岡田 貴文,梶 裕志,西脇 みちる,山口 孝明(高エネ研)
○Tetsuya Kobayashi, Kazunori Akai, Yukiyoshi Ohnishi, Shunto Ogasawara, Takafumi Okada, Hiroshi Kaji, Michiru Nishiwaki, Takaaki Yamaguchi (KEK)
 
SuperKEKBの高周波加速制御システムでは、コヒーレントな縦方向バンチ振動(ゼロモード振動)を抑制するためのゼロモードダンパー(ZMD)システムが運用されている。ZMDはビームpickup信号をモニターし、高周波基準信号(全空洞の加速位相)に変調を与えることでバンチ振動を抑える一種の縦方向フィードバック系である。このシステムを利用して、運動量アクセプタンスを測定・評価するために、任意のタイミングで強制的に加速位相を変調する(ビームに縦方向キックを与える)機能を新たに導入した。これまでSuperKEKBでは直接的に運動量アクセプタンスを測定する手段がなかったが、本機能によって容易に測定・評価できるようになり、非常に有効な手段であることが確認された。本発表では、新たに追加された強制加速位相変調機能および、その運用状況を紹介する。また、位相変調を与えた時のバンチ振動の応答(増大率)について計算と測定結果を比較しながら議論する。
 
13:00-15:00 
THP069
p.765
J-PARC RCSの高周波加速システムの回路シミュレーションモデルの構築
Circuit simulation model for the RF system of J-PARC RCS

○沖田 英史,山本 昌亘,田村 文彦,野村 昌弘,島田 太平,宮越 亮輔,吉井 正人,大森 千広,清矢 紀世美,原 圭吾,長谷川 豪志,杉山 泰之(JAEA KEK J-PARCセンター)
○Hidefumi Okita, Masanobu Yamamoto, Fumihiko Tamura, Masahiro Nomura, Taihei Shimada, Ryosuke Miyakoshi, Masahito Yoshii, Chihiro Ohmori, Kiyomi Seiya, Keigo Hara, Katsushi Hasegawa, Yasuyuki Sugiyama (JAEA KEK J-PARC center)
 
 J-PARC 3GeV シンクロトロン (RCS)の高周波加速システムは、金属磁性体コアを装填した加速空胴と真空管増幅器を含む高周波電源で構成される。1MW級の大強度陽子ビームを加速するRCSでは、ビームローディングにより高周波電源に大きな負荷がかかる。安定した大強度運転や、更なる大強度化に向けた検討には、ビームローディングを考慮した高周波電源の挙動評価が重要である。回路シミュレータLTSPICEを用いて金属磁性体コアや真空管の特性を考慮可能なモデルを構築した。本発表では構築した回路シミュレーションモデルの詳細について報告する。
 
13:00-15:00 
THP070
p.770
KEK 電子陽電子入射器における大電力高周波源の運転状況(2023年度)
Operation status of RF system in KEK electron-positron linac(FY2023)

○東福 知之,今井 康雄,馬場 昌夫,久積 啓一(三菱電機システムサービス(株) ),明本 光生,荒川 大,片桐 広明,川村 真人,設楽 哲夫,竹中 たてる,中島 啓光,夏井 拓也,松本 利広,松下 英樹,三浦 孝子,矢野 喜治,王 盛昌,松本 修二(高エネルギー加速器研究機構)
○Tomoyuki Toufuku, Yasuo Imai, Masao Baba, Keiichi Hisazumi (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Masato Kawamura, Tetsuo Shidara, Tateru Takenaka, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Toshihiro Matsumoto, Hideki Matsushita, Takako Miura, Yoshiharu Yano, Sheng Chang Wang, Shuji Matsumoto (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器は、高周波源として総数61台の大電力Sバンドクライストロンが使用されており、最大で7GeVの電子および4GeVの陽電子を加速する線形加速器である。2023年度中は約5,400時間の運転が行われた。 現在設置されている大電力Sバンドクライストロンアセンブリの平均運転時間は約82,000時間であり、2023年度は集束電磁石の絶縁抵抗低下により1台の交換が行われた(クライストロンは健全であった為、集束電磁石のみ入れ替え後、再設置を行なった)。 現在設置されているサイラトロンの平均運転時間は約42,000時間であり、2023年度はヒーターケーブル発熱などのトラブルによる4台と重要ユニットの事前交換(2年毎の定期交換)による6台の計10台の交換が行われた。 クライストロンから加速管へ至るマイクロ波搬送路の途中に設置されている導波管高周波窓の平均運転時間は約110,000時間である。保守作業により定期的に大気曝露が行なわれているが、2013年長期メンテナンス以降真空漏れ等のトラブルによる導波管高周波窓の交換は行われていない。 本稿では2023年度のクライストロン,サイラトロン,導波管高周波窓に関する統計及び高周波源に関する不具合事例と運転維持管理について報告する。
 
13:00-15:00 
THP071
p.774
J-PARC RCS での大強度ビーム取り出し時の空胴電圧跳ね上がりの抑制
Mitigation of cavity voltage jump due to high intensity beam extraction in J-PARC RCS

○田村 文彦,杉山 泰之,沖田 英史,山本 昌亘,吉井 正人,大森 千広,清矢 紀世美,野村 昌弘,島田 太平,長谷川 豪志,原 圭吾,宮越 亮輔,足立 恭介(J-PARCセンター)
○Fumihiko Tamura, Yasuyuki Sugiyama, Hidefumi Okita, Masanobu Yamamoto, Masahito Yoshii, Chihiro Ohmori, Kiyomi Seiya, Masahiro Nomura, Taihei Shimada, Katsushi Hasegawa, Keigo Hara, Ryosuke Miyakoshi, Kyosuke Adachi (J-PARC Center)
 
J-PARC 3GeV シンクロトロン (RCS) は金属磁性体 (MA) 空胴の特長を生かし最大ビーム強度8e13 ppp での陽子ビーム加速を行っている。ビームはキッカー電磁石により1ターンで取り出されるが、ビームの取り出し直後、空胴に短時間電圧の跳ね上がりが発生する。これは電圧制御フィードバックに遅延があり、1ターン取り出し時のステップ状のビーム電流の減少に対する応答には一定の時間がかかることが理由であり、広帯域 (Q=2) MA 空胴ではこの応答の遅れは電圧の跳ね上がりとして観測される。跳ね上がりは取り出し時の電圧が高い場合には空胴機器の損傷の原因となりうるものである。ゲインパターンを用いて取り出しと同時に出力を抑止すればこの跳ね上がりを抑制できるが、RCS のようなマルチハーモニックの場合、パターン設定が煩雑である。このため、LLRF 制御システムの機能としてビーム取り出しに同期し出力を抑止する仕組みを用意した。機能の詳細、試験結果、活用方法について報告する。
 
13:00-15:00 
THP072
p.777
KEK 電子陽電子入射器における SLED 調整の現状
Status of SLED tuning at KEK electron-positon linac

○牛本 信二(三菱電機システムサービス(株)),惠郷 博文(高エネルギー加速器研究機構)
○Shinji Ushimoto (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Hiroyasu Ego (KEK)
 
現在、KEK 電子陽電子入射器(LINAC)では全60か所ある加速ユニットのうち、56か所でSLEDを使用している。 Super KEKB に向けた高度化以前のSLED調整では、作業の度に入力部および出力部に設置されている方向性結合器からのRF信号を検波器を通してオシロスコープに取り込み、その波形を見ながら、SLED出力の増加とクライストロンへの反射波が減少するように調整をおこなっていた。 現在はEPICSをベースとしたRFのモニタシステムが整備されており、様々な場所からPCを用いることでRFの振幅および位相信号の確認が可能となっている。SLED調整時はプログラムでクライストロンの出力波形データからSLEDの理想的な出力を算出し、それと実際の出力波形を比較しながら最適な条件となるように調整をおこなっている。また、高所に設置されているSLEDの調整は、従来作業者が脚立に昇り不安定な態勢で作業をおこなっていた。これを改善するため、SLED調整部に取り付けるモーターユニットとそれを制御するコントローラーからなる遠隔調整ユニットを開発し、実際の調整で使用しその効果を確認した。 これら調整手法の改善により、短時間で効率良く且つ安全なSLED調整が可能となった。本報告では実際の調整結果を含めSLED調整の現状について報告する。
 
13:00-15:00 
THP073

無酸素Pd/Ti非蒸発型ゲッター(NEG)ポンプにおける 高温活性化による排気性能の拡張検討
Extended exhaust performance by high-temperature activation of oxygen-free Pd/Ti non-evaporative getter (NEG) pump
○狩野 悠,矢部 学,加藤 良浩,正岡 祐介,濱中 健一(入江工研(株)),吉川 一郎(東大)
○Yu Kano, Manabu Yabe, Yoshihiro Kato, Yusuke Masaoka, Kenichi Hamanaka (IKC), Ichiro Yoshikawa (U Tokyu)
 
宇宙観測機の保管容器は打上機に搭載してから打ち上げまで最大で1か月間に亘って保存容器内部を高真空状態で維持することが求められる。一方で、打ち上げまでの間は電源供給されない為、電源なしで排気できる非蒸発型ゲッター(NEG)ポンプが好適である。しかし、従来のNEGポンプに付属する加熱制御装置などは打上げ時の負荷や振動に耐えられないという課題がある。一方で、シンプルかつ堅牢であり、無電源で継続的に排気可能なICFフランジ型の無酸素Pd/Ti蒸着NEGポンプが好適である[1]。 この無酸素Pd/Ti蒸着NEGポンプは150度以下で加熱し活性化すると水素とCOを排気するが、水やその他の活性ガスは排気できない[2]。一方で、無酸素Pd/Ti蒸着NEGポンプを250度以上の高温で加熱し再活性化した場合、原理的には水素に加えて、水やCO2などを排気できることが示唆されている[3]。本研究では、無酸素Pd/Ti蒸着NEGポンプを250度以上の高温で活性化した際の容器内の分圧変化を四重極質量分析計を用いて評価したので報告する。 参考文献 1) T. Miyazawa et al., J. Vac. Sci. Technol. A 36, 051601 (2018). 2) T. Kikuchi et al., AIP Conf. Proc. 2054, 060046 (2019). 3) Y.Sugawara et al., U Tokyo Repository. 122,159490 (2019)
 
13:00-15:00 
THP074
p.781
NEGコーティングされた非円筒対称ビームダクトの真空排気特性評価
Evaluation of vacuum pumping performance of NEG-coated non- cylindrically symmetric beam ducts

○山本 将博,谷本 育律,内山 隆司(高エネ研),渡辺 瑠合(総研大)
○Masahiro Yamamoto, Yasunori Tanimoto, Takashi Uchiyama (KEK), Ruau Watanabe (SOKENDAI)
 
近年、世界の先端的ないくつかの蓄積リング型放射光源では非蒸発型ゲッター(NEG)コーティングしたビームダクトが採用されており、KEK-PFの次期将来光源計画の蓄積リングのビームダクトとしてNEGコーティングダクトの利用が検討されている。昨年、PFリングのQダクト形状の試験ビームダクトの内面に対してNEGコーティングを実施しており、通過法を用いてこの非円筒対称ビームダクトの真空排気特性評価を現在進めている。本発表ではその評価方法および結果について報告する。
 
13:00-15:00 
THP075
p.786
SPring-8-II真空システム設計の現状
Status of SPring-8-II vacuum system design

○田村 和宏(JASRI, 理研),出羽 英紀,正木 満博,増田 剛正(JASRI),大石 真也,小路 正純(JASRI, 理研),鈴木 伸司(JASRI),高野 史郎(JASRI, 理研),谷内 友希子,上田 庸資(JASRI),渡部 貴宏(JASRI, 理研)
○Kazuhiro Tamura (JASRI, RIKEN), Hideki Dewa, Mitsuhiro Masaki, Takemasa Masuda (JASRI), Masaya Oishi, Masazumi Shoji (JASRI, RIKEN), Shinji Suzuki (JASRI), Shiro Takano (JASRI, RIKEN), Yukiko Taniuchi, Yosuke Ueda (JASRI), Takahiro Watanabe (JASRI, RIKEN)
 
省エネルギー化/省資源化等、環境負荷の低減を図ると共に、約2桁の大幅な放射光輝度の向上を目指して大型放射光施設SPring-8を更新するSPring-8-II計画が進められている。狭小化、狭隘化する多極電磁石、偏向磁石に対応しつつ、電子ビームの寿命確保に必要な超高真空を実現する真空システムとして、小口径・薄肉のステンレス製チェンバと分散配置の小型光吸収体、および光吸収体直近に配置したNEGポンプにより光刺激脱離ガスを効率よく排気する真空システムの設計を進めている。製作コスト、製作期間の削減および更新作業の効率化のため、従来設計[1]から主に以下の点を変更した。1) 直線部チェンバの電子ビーム室の断面形状を菱形に変更。チェンバ壁を電子ビームから遠ざけ、壁抵抗性インピーダンスを低減させることにより、銅メッキ不要の設計とした。2) CuCrZr製フランジ一体型光吸収体の採用。材料の入手性向上や低コスト化、またフランジ一体型とすることでリークの恐れのない信頼性の高い光吸収体の製作が可能となった。3) チェンバ構成及び真空立上げ手順の変更。1セル約26mを長さ2~3mの11本のチェンバ構成に変更し、プリベークとトンネル内据付後の粗排気、NEG活性化のみで真空立上げを実施することとした。本発表では上記変更点を中心に、SPring-8-II真空システム設計の現状を報告する。[1] K. Tamura et al., in Proc. of IPAC’19, Melbourne, Australia, pp. 1272-1275.
 
13:00-15:00 
THP076
p.790
TiZrVおよび緻密Pdコーティングにおける抵抗壁インピーダンス評価と単バンチ不安定性シミュレーション
Resistive wall impedance evaluation and single bunch instability simulation for TiZrV and dense Pd coatings

○石橋 拓弥,金 秀光(KEK加速器)
○Takuya Ishibashi, Xiuguang Jin (KEK Accelerator Laboratory)
 
In beam pipes used in accelerators, the surface is sometimes coated with a low PSD material to limit gas desorption. TiZrV alloy is well known as a non-evaporable getter (NEG) coating material, and the photon-stimulated desorption (PSD) can be reduced by applying the coating to the beam pipe surface. It is also known that a dense Pd coating on the surface can reduce PSD. The DC resistivity of this coating is about an order of magnitude lower than that of TiZrV, which can also contribute to beam impedance reduction in accelerators. Therefore, we evaluated the resistive wall impedance of TiZrV and Pd coatings using Impedance Wake 2D (IW2D) and the effect of the coatings on single bunch instability using PyHEADTAIL for a future light source Hybrid Ring and a future lepton collider FCC-ee.
 
13:00-15:00 
THP077
p.795
放射光ビームライン用4象限スリットへの 無酸素Pd/Ti非蒸発ゲッター蒸着
Oxygen-free Pd/Ti nonevaporable getter deposition on 4-quadrant slits for synchrotron radiation beamlines

○菊地 貴司,片岡 竜馬,田中 宏和(高エネ研),若林 大佑,大東 琢治(高エネ研、総研大),石井 晴乃,仁谷 浩明(高エネ研),間瀬 一彦(高エネ研、総研大)
○Takashi Kikuchi, Ryoma Kataoka, Hirokazu Tanaka (KEK), Daisuke Wakabahashi, Takuji Ohigasi (KEK,SOUKENNDAI), Haruno Ishii, Hiroaki Nitani (KEK), Kazuhiko Mase (KEK,SOUKENNDAI)
 
超高真空中で加熱すると反応性の高い表面が生成し、残留ガスを排気する材料を非蒸発型ゲッター(nonevaporable getter, NEG)と呼ぶ。真空容器の内面にNEGを蒸着すると、真空容器からの脱ガスが減少するとともに、ベーキング後にNEG蒸着膜が活性な残留ガスを排気する。また、真空ポンプ設置スペースを削減できる、専用電源、電流導入を必要としない、装置を小型化できる、電源消失時にも安全安心を確保できる、低コストである、などの利点もある。加速器分野では真空ダクト内面にNEGの一種であるTiZrVを蒸着する技術が確立されているが、放射光ビームラインへの応用はまだ始まったばかりである。そこで我々は放射光ビームラインに適した新しいNEG蒸着である無酸素Pd/Ti蒸着、表面部分窒化高純度チタン蒸着を開発してきた。放射光ビームライン上流部では白色放射光ビームを成形するための4象限スリットを使用している。このスリットには白色放射光ビームが直接照射されるため、脱ガスを低減する必要がある。そこで、PFに新しく建設されるBL-11の軟X線用タンタル製4象限スリット4枚に無酸素Pd/Ti蒸着を行なった。その結果、4象限スリットからの脱ガスを低減し、光焼き出し時間を短縮することに成功したので報告する。
 
13:00-15:00 
THP078
p.800
プラズマとの相互作用実験のための真空保護インターロックシステムの高精度化
Improving the accuracy of vacuum interlock system for plasma interaction experiments

○伊東 幸輝,住友 洋介,高岸 太陽,根岸 慧,山口 晴矢(日大理工),小口 治久(産総研),早川 建,早川 恭史,境 武志(日大LEBRA)
○Koki Ito, Yoske Sumitomo, Taiyo Takagishi, Satoru Negishi, Haruya Yamaguchi (CST Nihon Univ.), Haruhisa Koguchi (AIST), Ken Hayakawa, Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai (LEBRA)
 
日本大学電子線利用施設では加速器が生成する高エネルギー電子ビームとプラズマの相互作用実験が計画されている。実験に際し、加速器側の高真空状態とプラズマ側の低真空状態を厚さ20µmのチタン膜で分断する予定となっているが、チタン膜上を通過する電子ビームが誤って集中的に照射され続けることがあれば電子ビームからのエネルギー付与によりチタン膜が融解し、プラズマ側から真空がリークする恐れがある。そうなれば電子ビームが加速されないだけでなく、加速器側に損傷が起こる可能性が否めない。そこで、加速器保護のためにリークを検知して、設定した値まで真空が悪化した時に自動でゲートバルブが閉じるインターロック装置の開発を行っている。テストスタンドでの動作結果からは、低真空側からのリーク量より高真空側のイオンポンプの排気量が上回った場合に装置が正常に動作しないことがあることが発見された。これに対応するため、現在より精度を高めるため、プラズマ生成による電離ガスのリークを直接検知するシステムの開発を行っている。本発表では、現状のインターロック装置の概要について紹介するとともに、新しい検知システムの開発状況について報告する。
 
ポスター② (8月1日 3Fホワイエ)
13:00-15:00 
THP079
p.804
NEGコーティング真空パイプのインピーダンス解析とPF-HLSリングへの応用
Impedance analysis of NEG-coated vacuum pipes and its application to the PF-HLS ring

○中村 典雄(高エネ研)
○Norio Nakamura (KEK)
 
NEGコーティング真空パイプは放射光源を含む加速器の真空度向上のために世界的に利用されている。しかし、NEGはパイプ金属よりも電気伝導率が低いためにインピーダンスへの影響を予め評価しておく必要がある。本発表では、最初にNEGコーティングされた円形真空パイプのインピーダンスを求める解析式[1]を示す。この解析式から直接インピーダンスを正確に計算することができるが、高周波領域で計算機の機械精度の限界によって問題が発生する。この高周波領域での問題は解析式の中に現れるベッセル関数の漸近展開を使うことで解決できることを次に示す。結果として全周波数領域でインピーダンスを計算できる。KEKで次期光源として設計されているPF-HLS (HLS: Hybrid Light Source)[2,3]でも、NEGコーティングを使用することが検討されている。PF-HLSでは、リング内を周回している電子ビームからの放射光及び超伝導リニアックから入射される極短バンチを持つ電子ビームからの放射光を同時利用する。ここでは、上の解析をPF-HLSリングに応用してNEGコーティングのインピーダンスへの影響を評価するとともに、ダクトの発熱やビーム不安定性などへの影響についても調べる。 [1] N. Nakamura, J. Phys.: Conf. Ser. 874, 012069 (2017). [2] K. Harada et al., J. Synchrotron Rad. 29, 118-124 (2022). [3] Photon Factory Hybrid Light Source Conceptual Design Report ver. 1 (2024).
 
13:00-15:00 
THP080
p.809
非常に小さいモーメンタムコンパクション因子を持つ蓄積リングにおける横方向ビーム不安定性の解析的研究
Analytical study of transverse beam instabilities in a storage ring with a very low momentum compaction factor

○中村 典雄(高エネ研)
○Norio Nakamura (KEK)
 
KEKでは次期光源としてPF-HLS光源 (HLS: Hybrid Light Source)[1,2]を設計検討している。PF-HLSでは、蓄積リング内を周回しているビームからの放射光及び超伝導リニアックから入射される極短バンチを持つビームからの放射光という複数の放射光ビームの同時利用を行う。PF-HLSリングでは単純な多バンチ運転だけでなく、孤立バンチと多バンチ群を含むフィルによる運転が求められている。また、入射される極短電子バンチが通過するリング内でそのバンチ長が極力維持できるようにPF-HLSリングは非常に小さいモーメンタムコンパクション因子を持っている。このような小さいモーメンタムコンパクション因子を持つ蓄積リングでは通常のリングと比べてシングルバンチなどの横方向ビーム不安定性の電流閾値は低くなる傾向にある。本発表では、PF-HLSリングでのシングルバンチ及びマルチバンチの横方向ビーム不安定性について解析的な方法を使って研究した結果について報告する。また、クロマティシティやバンチ長などによる影響とそれらによる横方向ビーム不安定性の抑制効果についても述べる。 [1] K. Harada et al., J. Synchrotron Rad. 29, 118-124 (2022). [2] Photon Factory Hybrid Light Source(PF-HLS) Conceptual Design Report (CDR) ver. 1 (2024).
 
13:00-15:00 
THP081

レーザー冷却イオンを用いたナノビーム照射・注入システムに関するシミュレーション研究
Simulation study on a nano-beam irradiation system based on laser-cooled ions
○百合 庸介,穂坂 綱一,宮脇 信正,細谷 青児,石井 保行,飯澤 正登実,柏木 啓次,山縣 諒平,齋藤 勇一,小野田 忍,鳴海 一雅(量研高崎研),室尾 健人,伊藤 清一,岡本 宏己(広島大院先進理工)
○Yosuke Yuri, Koichi Hosaka, Nobumasa Miyawaki, Seiji Hosoya, Yasuyuki Ishii, Masatomi Iizawa, Hirotsugu Kashiwagi, Ryohei Yamagata, Yuichi Saito, Shinobu Onoda, Kazumasa Narumi (QST Takasaki), Kento Muroo, Kiyokazu Ito, Hiromi Okamoto (Hiroshima Univ.)
 
QST高崎研では、量子材料開発に有用なナノメートルスケールでのイオン照射の実現を目指し、線形Paulトラップ(LPT)においてレーザー冷却により生成可能なクーロン結晶に基づいた超低エミッタンスイオン源と高い縮小率を有する静電加速・集束レンズ系を用いた、超精密単一イオン照射注入装置の開発を進めている。本装置の適切な運転条件の探索やイオン集束特性の評価のため、LPTにおけるイオンの捕捉、共同冷却、冷却イオンのLPTからの引出、LPTに接続された静電輸送系におけるイオンの加速、集束という本装置の一連の運転過程について粒子トラッキングシミュレーションを行っている。本発表では、これらのシミュレーション検討の結果を示す。
 
13:00-15:00 
THP082

Beam dynamics studies of emittance reduction in the SACLA injector
○Vitaliy Goryashko (SPring-8, RIKEN), Anatoliy Opanasenko, Giovanni Perosa (Uppsala University), Kazuaki Togawa (SPring-8, RIKEN)
 
The SACLA X-ray Free-Electron-Laser (XFEL) is planned to be upgraded with the aim of increasing its stability, repetition rate and brightness. An optimization of the electron injector is an essential ingredient for the successful SACLA upgrade. We report the results of beam dynamics studies in the SACLA injector and present possible measures for substantially reducing the present beam emittance. The SACLA injector uses a unique approach for the production of high-brightness electron bunches to drive the XFEL. Specifically, it makes use of a pulsed DC gun and a high-voltage chopper to produce nanosecond electron bunches, which are compressed down to the sub-10 femtosecond duration using ballistic bunching and magnetic compression in chicanes. The emittance quality is, however, not completely preserved due to space-charge forces and chromatic effects during the compression. Hence, we present a strategy for reducing total and slice emittance by reducing the thermal emittance and optimizing emittance compensation. By employing a smaller cathode size, increasing the accelerating field on the cathode and employing a new magnetic microlens, the emittance is reduced by a factor of two.
 
13:00-15:00 
THP084
p.813
5%デューティLaB6イオン源のビーム運転
Beam operation of 5%-duty factor LaB6 ion source

柴田 崇統,○杉村 高志,高木 昭,池上 清,栗原 俊一,佐藤 将春,南茂 今朝雄,内藤 富士雄,方 志高(KEK)
Takanori Shibata, ○Takashi Sugimura, Akira Takagi, Kiyoshi Ikegami, Toshikazu Kurihara, Masaharu Sato, Kesao Nanmo, Fujio Naito, Zhigao Fang (KEK)
 
安定したプラズマおよびビーム出力が得られ易く、かつ寿命の長い六ホウ化ランタン(LaB6)フィラメントイオン源は、従来KEK-PSやJ-PARCで最大1.25%前後のデューティで使用されてきた。LaB6イオン源は高デューティ比で運転した際、プラズマ点弧時の熱負荷によりフィラメント温度が上昇し、熱電子生成量が増えるためさらにプラズマ電流が増加する正帰還過程によってフィラメント寿命が劇的に縮まる運転モードを取りうる。本研究ではこれを回避するために、アークパルサー電源が電流制限をかける改造を施し、5%デューティでのプラズマ生成試験を実施した。今回さらに、高圧印加時のビーム生成への影響を調査する。
 
13:00-15:00 
THP085
p.817
機械学習を用いたECRイオン源ビーム電流予測
Machine learning-aided ECRIS beam current prediction

○鎌倉 恵太(東大CNS),森田 泰之(理研仁科センター),笠置 歩(立教大人工知能),西 隆博(理研仁科センター),岡 直哉(情報通信研究機構),小高 康照,酒見 泰寛(東大CNS)
○Keita Kamakura (CNS, UTokyo), Yasuyuki Morita (Nishina Center, RIKEN), Ayumi Kasagi (AI, Rikkyo), Takahiro Nishi (Nishina Center, RIKEN), Naoya Oka (NICT), Yasuteru Kotaka, Yasuhiro Sakemi (CNS, UTokyo)
 
東京大学CNSでは14GHz HyperECRイオン源を用いて理研AVFサイクロトロンに様々なイオンを供給している。本イオン源では設置から 30 年以上にわたり改良が続けられており、その多価重イオンビームの大強度供給技術は成熟してきた。一方で特に金属ビーム供給時のビーム安定度に課題が残っている。イオン源調整時に十分なビーム量が安定に出ていても、長期間の供給中にビーム量の低下やビーム生成の不安定化が起こる。現状ではビームの変動にあわせて加速器オペレータが細かくパラメータを調整することで安定化を図っているが、これには限界があり、実験を中断してビーム調整が必要になることも多い。この問題を解決するため、現在、機械学習 を用いてイオン源からの安定ビーム供給を維持・制御するシステムの開発が進められている。今回の発表では、その準備段階として開発を行った、プラズマ画像を用いたECRイオン源ビーム電流予測モデルについて紹介する。
 
13:00-15:00 
THP086
p.819
低速陽電子ビームパルスストレッチャー用複合電源システムの開発
Development of a combined power supply system for a slow-positron beam pulse stretcher

○磯田 幸識,徳地 明(パルスパワー技術研究所),和田 健,望月 出海,兵頭 俊夫(高エネルギー加速器研究機構,物理構造科学研究所)
○Sakinori Isoda, Akira Tokuchi (PPJ), Ken Wada, Izumi Motizuki, Toshio Hyodo (KEK,IMSS)
 
高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の低速陽電子実験施設で開発されたパルスストレッチャーは、パルス幅1.2 µsの低速陽電子ビームのパルス幅を、そのくり返し50Hzの上限の約20msまで伸長するシステムである。現在このパルスストレッチャーによってエネルギー5.2keVのビームが供給できるようになっており、多重検出を許さない検出器を用いた低速陽電子回折(LEPD,レプト)実験に使用されている。本複合電源システムは,接地電位に対して最大20kVの電圧を印加できる高電圧ステーションに重畳された、3つの電源によって構成されている。①陽電子パルスが入口ゲート電極に到達した時のみ入口ゲート電極の電位を下げてトラップ電極への侵入を許し,それ以外の時間では電位を十分に上げて陽電子パルスが通過できないようにする(高電圧ステーションに対し、出力950V,パルス幅1 µsのパルス電源)。②トラップ電極用で、陽電子パルスがトラップされた後、徐々にその電位を上げていき、より高い運動エネルギーを持った陽電子から順番に出口のゲート電極の電位を超えて下流側に供給するためのものである(外部の任意波形発生器からのアナログ信号を、高電圧ステーションに対し、最大出力1kVのアンプ電源)。③出口ゲート電極用で、接地電位に対するこの電位がパルス幅を伸長した後のビームエネルギーを決めている(高電圧ステーションに対し、500Vの一定の電圧を印加する電源)。
 
13:00-15:00 
THP087

レーザー原子冷却による極低温電子源の開発
Development of cold atom electron source
○本田 洋介(KEK)
○Yosuke Honda (KEK)
 
電子源の性能を飛躍的に改善することにより、幅広い用途への応用が期待できる。レーザー冷却の手法を用いてミリケルビン以下に冷却した原子ガスを電離して極低温の電子を生成する、新しい電子源の開発を行っている。 冷却用レーザーシステムの開発、電子銃実機の真空チェンバの製作、電離レーザーの整備、が完了した。本発表では、電子ビームの生成試験の状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP088
p.822
SACLA電子源ビームの時間分解エミッタンス測定装置
Time-resolved emittance measurement system for the SACLA electron source beam

○竹村 育浩,前平 晃太郎,林田 寿和(スプリングエイトサービス株式会社),Goryashko Vitaliy,渡川 和晃(理研)
○Yasuhiro Takemura, Koutarou Maehira, Toshikazu Hayashida (SPring-8 Service Co., Ltd), Vitaliy Goryashko, Kazuaki Togawa (RIKEN)
 
現在SACLAでは、XFEL光の品質向上を目指し電子源の高度化に取り組んでおり、電子ビームの特性を高い時間分解能で測定することが非常に重要な課題の一つとなっている。SACLA電子銃テストスタンドにおいて、既存の2組の水平・垂直スリットと新規に開発した壁電流モニターを使い、電子源から出射される時間幅1ナノ秒の電子ビームの空間プロファイルおよびエミッタンスを数10ピコ秒の時間分解能で測定した。本学会では、LabVIEWで構築したスリットスキャン測定システム及び、壁電流モニターの信号データ解析システムの詳細ついて報告する。
 
13:00-15:00 
THP089
p.826
10 mA CWビーム運転に向けたcompact-ERL電子銃の準備状況
Current status of compact-ERL electron gun preparation for 10 mA CW beam operation

○山本 将博,阪井 寛志,内山 隆司,長橋 進也,田中 オリガ,倉田 正和,谷川 貴紀,本田 洋介,東 直,野上 隆史(高エネ研)
○Masahiro Yamamoto, Hiroshi Sakai, Takashi Uchiyama, Shinya Nagahashi, Olga Tanaka, Masakazu Kurata, Takanori Tanikawa, Yosuke Honda, Nao Higashi, Takashi Nogami (KEK)
 
KEKでは、エネルギー回収型線形加速器(ERL)を産業応用として、最先端の半導体露光用光源としての高出力EUV-FELの検討を進めており、電子源には10 mA相当の大平均電流かつ低エミッタンスビームの長期安定供給が求められている。compact-ERL(cERL)では、これまで電子銃の真空リーク問題や電子銃の高電圧電源の出力不足が課題となっていたが、これに対処するための取り組みを進め、さらに今後の10 mA CWビーム生成試験に備え、2023年度にはcERLにおいて主ダンプ直接ビーム輸送で大電流運転を実施し、カソード寿命評価を行った。本発表では、これまでのcERL運転を通して明らかになった電子銃の課題への対策、ビーム試験結果、そして今後の課題と計画について報告する。
 
13:00-15:00 
THP090
p.831
KEK電子陽電子入射器の陽電子生成の現状と性能評価
Current status and performance evaluation of the positron generation of KEK Injector Linac

○宮原 房史,榎本 嘉範,紙谷 琢哉,夏井 拓也(高エネ研),Chaikovska Iryna,Alharthi Fahad(IJCLab)
○Fusashi Miyahara, Yoshinori Enomoto, Takuya Kamitani, Takuya Natsui (KEK), Iryna Chaikovska, Fahad Alharthi (IJCLab)
 
KEK電子陽電子入射器ではBelle II実験のため陽電子ビームを生成し、SuperKEKB LERへ供給している。陽電子ビームはターゲットへ2.9 GeV, 10 nC/bunchの電子ビームを照射し、電磁シャワーで生成された陽電子を強力なソレノイド磁場で捕捉しながら加速することで生成する。陽電子の収集効率は標的への入射位置、角度、ソレノイド磁場や陽電子加速の位相など様々なパラメータで変化する。陽電子生成部の詳細と実験とシミュレーションの比較、陽電子ビーム生成の性能評価、現状を報告する。
 
13:00-15:00 
THP091
p.835
グラフェン保護膜付き薄膜半導体フォトカソードの量子効率向上のための成膜手法の検討
The study of deposition method for improving the quantum efficiency of thin-film semiconductor photocathode with graphene protective layer

○郭 磊,坂本 龍一(名古屋大),山口 尚登(米ロスアラモス国立研),山本 将博(高エネ研),高嶋 圭史(名古屋大)
○Lei Guo, Ryuichi Sakamoto (Nagoya Univ), Hisato Yamaguchi (LANL), Masahiro Yamamoto (KEK), Yoshifumi Takashima (Nagoya Univ)
 
薄膜半導体フォトカソードは高量子効率(QE)や低エミッタンスを有し、可視光で励起可能などの特長を持つため、先端加速器や電子顕微鏡用の電子源として注目されている。一方、動作に10^-8Paの超高真空を要することやイオン衝撃に弱いために寿命が短いなどの欠点がある。これらの問題に対処するため、我々は近年、グラフェンなど光励起した電子が量子力学的に透過可能な二次元材料を数層用い、薄膜半導体フォトカソードを保護することに成功した。現在は、グラフェンを透過する光電子の測定からカソード性能(QE、寿命)の詳細な評価を進めている。現状、グラフェン膜透過の有無によるQEの違いは2桁以上あり、その違いが生じる原因の一つは、従来の成膜手法における蒸着順序に起因すると考えている。つまり、成膜時に基板として用いるグラフェン界面近傍のカソード構造が最適でない可能性がある。本研究では、アンチモン、カリウム、セシウムの3つの物質の蒸着順序を変え、グラフェン界面近傍のカソード構造を改善することで、その性能の向上を試みた。具体的には、蒸着順序をカリウム、アンチモン、セシウムに変更した。セシウムの蒸着はQEが飽和するまで行い、カリウムとアンチモンの蒸着は時間スケールで複数パターンを試した。この一連の結果を報告する。
 
ポスター③ (8月2日 1F大会議室)
10:00-12:00 
FRP001

SRF空洞シールドのための多層磁気シールド研究
Multi-layer magnetic shield study for SRF cavity shielding
○Shanab Safwan,梅森 健成(KEK)
○Safwan Shanab, Kensei Umemori (KEK)
 
The study investigates the effectiveness of multi-layer shielding in maintaining the efficiency of SRF cavities. These cavities are vulnerable to external magnetic fields, such as the Earth's magnetic field, which can degrade their intrinsic quality factor. To uphold peak performance, SRF cavities necessitate protection from magnetic interference. Typically, a single-layer magnetic shield serves this purpose. A comparative study assesses the efficacy of multi-layer shields versus single-layer ones in reducing cavity exposure to external magnetic fields is conducted. This poster presentation evaluates the performance of multi-layer magnetic shields in comparison to single-layer shielding.
 
10:00-12:00 
FRP002
p.839
J-PARCメインリング遅い取り出しにおける取り出し開始前のビームロスの原因の検討
Investigation of the cause of the beam loss before the start of the slow extraction at the J-PARC Main Ring

○武藤 亮太郎,浅見 高史,冨澤 正人(高エ研)
○Ryotaro Muto, Takashi Asami, Masahito Tomizawa (KEK)
 
J-PARCメインリングでは、ハドロン実験施設に向けて3次共鳴を用いた遅い取り出しを行っている。2024年4月のビーム調整では4.24秒に短縮された繰り返し周期でビームパワー81kWでの調整運転を行った。このとき、30 GeVまでの加速終了から遅い取り出しを開始する前までの間に、少量ではあるがビームロスが観測された。また同時に、ハドロン実験施設の高運動量ビームラインでも、ビームスピルの開始時に高いビームレートが2021年の運転時から観測されている。これらの現象のおこるメカニズムとしては、下記のことが考えられる。それは、加速終了後のフラットトップにおいて、横方向のビーム不安定性を減衰させるためにクロマティシティ補正を弱くしているために、運動量の大きなビーム成分がカップリングレゾナンスの影響を受けて横方向ビームサイズを増大させ、ビームロスを引き起こしている、ということである。この推測を確かめるために、フラットトップでのクロマティシティ補正を強くし、また鉛直方向のベータトロンチューンをカップリングレゾナンスから遠ざける操作を行い、効果をビーム試験で確かめた。この結果、取り出し開始前のビームロスが低減し、また高運動量ビームラインにおけるスピル開始時のピークも緩和されることを確認した。本発表ではこのビーム試験の詳細と、今後の計画について述べる。
 
10:00-12:00 
FRP003
p.843
iBNCT加速器における医療照射用制御システムの構築
Building a control system for medical irradiation in the iBNCT accelerator

○佐藤 将春,方 志高,門倉 英一,栗原 俊一,小林 仁,杉村 高志,内藤 富士雄,二ツ川 健太,福井 佑治,帯名 崇(KEK),熊田 博明,田中 進(筑波大学),大場 俊幸,名倉 信明(NAT)
○Masaharu Sato, Zhigao Fang, Eiichi Kadokura, Toshikazu Kurihara, Hitoshi Kobayashi, Takashi Sugimura, Fujio Naito, Kenta Futasukawa, Yuji Fukui, Takashi Obina (KEK), Hiroaki Kumada, Susumu Tanaka (Univ. of Tsukuba), Toshiyuki Ohba, Nobuaki Nagura (NAT)
 
iBNCTプロジェクトでは現在BNCTの主流となっている加速器ベースBNCTに対して、J-PARCで実績のあるRFQ及びDTLからなる加速管構成で8 MeVに加速した陽子をベリリウム標的に照射し治療に必要な中性子を得る事でBNCTの実現を目指している。プロジェクト開始以来、装置の導入と医療用加速器としての安定運転を目指した改修とともに、加速器制御システムやインターロック等も随時改良を行ってきた。2023年度に当該施設で治験を開始すべく手続きを進めるとともに、医療機器に対応した照射制御システムを構築した。具体的には、加速器運転に不慣れな医師が容易に照射及び停止ができるような制御システムを組み込んだ医師操作盤の増設、合わせて装置誤作動や照射量積算の不具合等による被験者に対する過剰照射を防止するインターロックを整備した。これらの結果、2024年1月に第I相の医師主導治験を開始することができた。本報告では、iBNCT加速器制御システムの現状を含め、治験へ向けて新規導入したシステムに関して報告する。
 
10:00-12:00 
FRP005
p.848
SPring-8-II蓄積リング用BPMシステムの開発状況
Development status of the BPM system for the SPring-8-II storage ring

○前坂 比呂和(理研RSC・高輝度光科学研究センター),鈴木 伸司(高輝度光科学研究センター),高野 史郎(高輝度光科学研究センター・理研RSC),出羽 英紀,藤田 貴弘,正木 満博(高輝度光科学研究センター)
○Hirokazu Maesaka (RIKEN RSC, JASRI), Shinji Suzuki (JASRI), Shiro Takano (JASRI, RIKEN RSC), Hideki Dewa, Takahiro Fujita, Mitsuhiro Masaki (JASRI)
 
放射光施設SPring-8の高輝度化アップグレードであるSPring-8-IIプロジェクトが本格化したことに伴い、新しい蓄積リングに340台設置する予定のボタン電極型BPMの詳細設計、試作評価、量産準備を進めている。SPring-8-IIのために新たに開発したボタン電極、耐放射線ケーブル、MTCA.4規格の信号処理回路は、次世代放射光施設ナノテラスのBPMシステムに採用され、コミッショニングとユーザ運転で優れた性能が実証されつつある。SPring-8-IIのBPMヘッドはナノテラスと同じボタン電極を用いて設計し、ビーム位置の感度係数やインピーダンス、発熱などの評価を行った。現在、機械的な設計検証のための先行セルに向けてBPMヘッドとその支持架台を製作中である。信号ケーブルには耐放射線同軸ケーブルとしてナノテラスと同様に電子ビームに近いBPMヘッドから架台脇まではPEEKセミリジッドケーブル、そこから先はポリエチレン絶縁コルゲートケーブルを使用する予定である。信号処理回路はMTCA.4規格のRFフロントエンド回路と高速デジタイザボードを使用する。本回路は現SPring-8のシングルパスBPMの更新として一部導入済みで、SPring-8-IIに先立って性能検証が進んでいる。本発表では、SPring-8-IIのBPMシステムの全体像と各構成要素の開発状況や基本性能について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP006
p.853
重イオンビーム照射によるSiCセンサーワイヤー試験 (2)
SiC sensor wire test by heavy ion beam irradiation (2)

○明午 伸一郎,山口 雄司(J-PARC/JAEA)
○Shin-ichiro Meigo, Yuji Yamaguchi (J-PARC/JAEA)
 
30 MWを超える大強度陽子加速器加速器を用いた、加速器駆動型核変換システム(ADS)が原子力機構(JAEA)で開発が進められている。核破砕中性子源においても、1 MWを超えるマルチMWの施設が提案されていおり、これらの施設において安定に入射するためには、ビームが正しく標的に入射していることを確認するプロファイルモニタが重要となる。J-PARCの核破砕中性子源では炭化ケイ素(SiC)のマルチワイヤからなるプロファイルモニタを用いており、約1 MWの利用運転では問題ないものの、今後の定常的な大強度運転ではワイヤの損傷が著しくなるものと考えられるため、ワイヤの損傷評価を定量的に行う事が重要となる。我々はモニタの開発の一環として、量子機構(QST) TIARAおよびJAEA タンデム加速器において、はじき出し損傷が数GeV陽子に比べ著しく高い重イオンビームを用いたビーム試験を実施した。JAEA タンデム加速器では様々なイオンビームを用いて、表面におけるLET依存性に関して調査を開始した。本発表では、この結果について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP007

大強度負イオン加速に向けたペッパーポット型エミッタンスモニターの開発
Development of a pepper-pot emittance monitor for high-intensity negative ion acceleration
○細谷 弦生(東北大学RARIS)
○Genki Hosoya (Tohoku Univ. RARIS)
 
東北大学先端量子ビーム科学研究センターの930型AVFサイクロトロンでは、大強度の負重水素イオン加速に向けて研究を行っている。加速されたビームを用いて生成された中性子ビームは、原子核物理実験や医療用RI製造、核廃棄物の核変換などのあらゆる分野で利用される。加速ビームの目標値はエネルギー40MeV・電流値100μAであり、現在はエネルギー25MeV・電流値20μAの加速に成功している。大強度化に伴うビーム損失の大きな原因である空間電荷効果は、イオン源からサイクロトロンまでの入射系輸送時に強く働くため、この部分のビームの振る舞いを把握する必要がある。そこで、これまでビーム診断系が存在しなかった負イオン入射系に対して、ペッパーポット型エミッタンスモニター(PPEM)を負イオン源直後に導入した。PPEMは、画像1ショットから4次元位相空間分布を瞬時に求めることができるため、負イオン源の性能評価やビーム調整の効率化も可能であるとして採用した。今回、負イオン源から引き出される負重水素イオンビームのエミッタンスをPPEMを用いて測定する。これらの結果と今後の改善案について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP008
p.859
J-PARC加速器施設における電流モニタの校正について
Calibration of beam current monitors at J-PARC accelerator facility

○佐藤 健一郎,外山 毅,宮尾 智章,小林 愛音(J-PARC/高エネ研),守屋 克洋,三浦 昭彦,吉本 政弘(J-PARC/日本原子力研究開発機構),畠山 衆一郎(三菱電機システムサービス株式会社)
○Kenichirou Satou, Takeshi Toyama, Tomoaki Miyao, Aine Kobayashi (J-PARC/KEK), Katsuhiro Moriya, Akihiko Miura, Masahiro Yoshimoto (J-PARC/JAEA), Shuichiro Hatakeyama (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd. )
 
大強度陽子加速器施設J-PARCの加速器は400 MeVリニアック、3GeV RCS、30 GeV MRで構成され、RCSは1 MW出力の定常運転を視野に入れ、MRでは運転周期の短縮によって建設当初の目標である750 kW出力を達成しさらに1.3 MW出力に向けた調整が進んでいる。J-PARCでは装置の放射化を抑えるためにビームロスを極めて低レベルに抑える必要があり、ビームロスモニタとビーム電流モニタの高度化が必要不可欠であり、したがって、それぞれの加速器では施設毎の測定要求精度に従って電流モニタの定期的な校正が行われてきたが、統一的な校正、運用が行われてきたわけではない。 本発表ではそれぞれのビーム電流モニタの校正手法と校正精度について報告し、J-PARC加速器施設全体としてのビーム電流測定精度について議論する。
 
10:00-12:00 
FRP009
p.863
Muon g-2/EDM実験用蓄積磁石の鉄ヨークチャンネル内磁場線形性の評価および中心軌道設計
Evaluation of magnetic field linearity in iron yoke channel and center orbit design of Muon g-2/EDM experimental storage magnet

○飯沼 裕美(茨大),阿部 充志(KEK低温),小川 真治(KEK素核研),大谷 将士(KEK加速器),佐々木 憲一(KEK低温),高柳 智弘(原科研),三部 勉(KEK素核)
○Hiromi Iinuma (Ibaraki Univ.), Mitsushi Abe (KEK-CRYO), Shinji Ogawa (KEK-IPNS), Masashi Otani (KEK-ACCL), Ken'ichi Sasaki (KEK-CRYO), Tomohiro Takayanagi (JAEA), Tsutomu Mibe (KEK-IPNS)
 
J-PARC Muon g-2/EDM 実験では、ソレノイド型超電導電磁石内(中心磁束密度3T)に運動量 300MeV/c の Muon ビームを直径 0.66 m の軌道で蓄積し、異常磁気能率 (g-2) の超精密測定と EDM 探索を行う計画である。 医療用MRIサイズの蓄積電磁石内部の精密調整された蓄積領域へ静磁場へビーム入射を行うため、磁石を囲む鉄ヨークにビーム通過用に入射角26度のチャンネル設け上流輸送ラインからのビームを通す。鉄ヨークにはチャンネル以外に磁場調整用シム鉄を挿入する穴も開いている為チャンネル内は局所的に磁場分布が変わる。また鉄ヨーク直下の内側は2Tの強い磁場になっている為、鉄ヨーク側のチャンネル出口での磁場分布が複雑な形状になり、線形近似の許される範囲内にビーム位相空間の広がりを留めねばならない。 更に、鉄ヨークチャンネルの入り口と出口ではソレノイド軸方向の磁束密度が0T~2Tへと変わるため円筒形のチャンネル内部でビーム中心軌道を緩やかに曲がることも考慮せねばならない。昨年度の研究報告[1]に続き、本発表では鉄ヨーク内部での目標X-Y結合・位相空間を満足させるために必要な、鉄ヨーク外側に配置する輸送ライン上の調整装置の要求仕様を議論する。また、上流輸送ラインとの接続を考慮した鉄ヨークチャンネル内のビーム中心軌道の検討結果を報告する。[1]PASJ2023 THP04
 
10:00-12:00 
FRP010

J-PARC muon g-2/EDM実験における精密な三次元ビーム入射を実現するビーム位相空間分布の設計
Design of beam phase space distribution to realize precise three-dimensional beam injection at J-PARC muon g-2/EDM experiment
○小川 真治,阿部 充志(高エネ研),飯沼 裕美(茨城大学),大谷 将士,佐々木 憲一(高エネ研),高柳 智弘(原子力機構),三部 勉(高エネ研)
○Shinji Ogawa, Mitsushi Abe (KEK), Hiromi Iinuma (Ibaraki-Univ.), Masashi Otani, Ken-ichi Sasaki (KEK), Tomohiro Takayanagi (JAEA), Tsutomu Mibe (KEK)
 
J-PARC muon g-2/EDM実験では、低エミッタンスのミュー粒子ビームをコンパクトで一様性の良い磁場中に蓄積することで、先行実験とは異なる系統誤差でミュー粒子の異常磁気能率(g-2)を測定する。目標とする統計誤差・系統誤差を実現するためには、コンパクトな蓄積軌道に精度よく入射する必要があり、どのような軌道にどのようなXY結合をかけたビームをどのような磁場分布に入射すると精度がよくなるかについて検討してきた。 本発表では新たに考案した、精密なビーム入射のためのビーム位相空間分布の設計手法について報告する。本実験におけるビーム入射の精度とは入射後の縦方向ベータトロン振幅の大きさのことであるが、これは複雑な磁場分布中でのビームトラッキングの結果として出てくる値である。そのためシミュレーションにおいてでも精度を改善する方法が明らかではなかった。新しい設計手法では、入射後の振幅と同等の意味を持つ特徴量として発見した「入射前のビーム位相空間上でのあるスカラー関数の勾配ベクトルとの内積」を活用する。この新しい特徴量は線形代数で表現できるためビーム力学の枠組みに組み込め、ビーム入射精度や各ビーム診断・制御装置に必要な条件を一括して定量的に議論する枠組みを与える。本発表では入射ビーム位相空間分布の新しい設計手法、およびその手法を用いた入射精度を改善させる具体的なビーム分布の検討状況について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP011
p.868
ビームエネルギー位置モニターを用いたビームエネルギー幅の測定
Measurement of beam energy width using beam energy position monitor

○宮脇 信正,柏木 啓次,渡辺 茂樹,石岡 典子,倉島 俊(量研高崎研),福田 光宏(阪大RCNP)
○Nobumasa Miyawaki, Hirotsugu Kashiwagi, Shigeki Watanabe, Noriko Ishioka, Satoshi Kurashima (QST Takasaki), Mitsuhiro Fukuda (RCNP, Osaka Univ.)
 
QST高崎のTIARA AVFサイクロトロンでは、これまでビームエネルギー・位置モニター(BEPM)を用いたリアルタイム計測により、At-211の製造に使用するHeビームのエネルギーを1%以上の間で任意に変更することに成功した。このエネルギー制御は、サイクロトロンの磁極のバレー部に設置され、ビームの回転中心を変えるハーモニックコイルの磁場を制御して、取り出しまでの加速回数を変えることによって達成された。しかし、ビームの軌道を変えることで従来の加速RF位相と異なった加速により、一般的に0.1%以上とされているビームエネルギー幅がさらに増加することが懸念された。特に、At-211の製造では、Heビームのエネルギー幅の増加で、化学的に分離不能なAt-210が生成するエネルギーの閾値を超え、その壊変によって毒性の高いPo-210が生じる可能性がある。そのため、Heビームのエネルギーを制御した上でさらにエネルギー幅も知る必要がある。そこで、BEPMを用いてビームエネルギー幅の測定について検討を行った。サイクロトロンで加速されたビームはそのバンチ内の粒子間でシンクロトロン振動が起こらないため、取り出し後はバンチ長が伸びる。このバンチ長の伸びの差をBEPMの上流と下流の2つの電極の信号からで測定することでエネルギー幅の導出を試みた。発表では、この導出と測定結果について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP012

ビームリサイクル用蓄積リングα-KSRのデザイン
Design of α-KSR for research and development of beam recycling technique
○小川原 亮,阿部 康志,大西 哲哉(理研仁科センター),塚田 暁,頓宮 拓(京大化研),山口 由高(理研仁科センター),若杉 昌徳(京大化研)
○Ryo Ogawara, Yasushi Abe, Tetsuya Ohnishi (RNC), Kyo Tsukada, Hiromu Tongu (ICR, Kyoto Univ.), Yoshitaka Yamaguchi (RNC), Masanori Wakasugi (ICR, Kyoto Univ.)
 
不安定核の核反応実験では一般的に固定標的に不安定核ビームを衝突させる。不安定核ビームは一般的に二次ビームであり、安定核ビームに比べ運動量分散が大きい。また、十分な統計量を得るために標的を厚くする必要があり、それも測定精度に制限をかける要因となっている。それらの問題を解決するために考案された技術がビームリサイクルであり、これは不安定核を重イオン蓄積リングに蓄積して核反応を起こすまで内部標的と衝突させ続ける技術である。ビームリサイクルでは内部標的通過に起因するエネルギー損失の補填や、エネルギー分散と角度分散の増大を補正する必要がある。これまでの研究ではビームリサイクルに必要な分散補正器等の性能を計算で明らかにしてきた。 ビームリサイクルのR&Dには蓄積リングが必要不可欠であり、本研究では京大化研の蓄積リングKSRを利用する。KSRは最大約10 MeV/uのα線を蓄積可能な磁気剛性である。α-KSRの設計ではα線の入射方法、リングパラメータ、分散補正器の要求性能が重要である。本研究では241Amから放出されるα線を用いた入射方法を検討し、既設のPerturbatorを利用することで入射可能であることを計算で示した。また、ビームリサイクルに必要なデバイスを既設装置と干渉せずに設置する必要がある。本研究では既設Latticeのままで上記の仕様を満たせることを計算で示し、α-KSRによるビームリサイクルR&Dが可能であることを明らかにした。
 
10:00-12:00 
FRP013
p.871
KEK ATF加速におけるICTビーム電流モニター読み出し系の高度化
KEK ATF Integrating Current Transformer signals Data Acquisition system upgrade status report

○ポポフ コンスタンティン,アリシェフ アレクサンダー,照沼 信浩(High Energy Accelerator Research Organization (KEK), 1-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan)
○Konstantin Popov, Alexander Aryshev, Nobuhiro Terunuma (High Energy Accelerator Research Organization (KEK), 1-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan)
 
KEK ATF has seven Integrating Current Transformers (ICTs) to measure a bunch charge and a transmission between the accelerator sections. These ICTs’ signals acquisition system is based on the CAMAC gated 12-bit ADC modules. It integrates the entire pulse within a width of an input gate signal. Typical gate signal width is ~1 microsecond to share with other analogue signals acquisition, while the ICT signal width is ~150 ns. As a result, an additional noise is accumulated with a bunch charge. Also, CAMAC gated ADC module can accept only negative polarity signals. So, there is necessity to invert polarity of ICT signals, as well as amplify it after the inversion. As a result, the bunch charge measurement resolution becomes ~3 % (RMS). In order to improve the bunch charge and transmission measurement resolution, upgrade of the DAQ system based on the digitizer system has been done. The RedPitaya STEMlab 125-14 FPGA board was chosen as a digitizer development platform. This upgrade demonstrated three times better bunch charge and transmission measurement resolution than the previous system, and contributes the improvement of beam tuning of ATF.
 
10:00-12:00 
FRP014
p.875
J-PARC Main Ring の入射ビームのためのOTRと蛍光を用いた ワイドダイナミックレンジプロファイルモニターの開発(5)
Development of a wide dynamic-range beam profile monitor using OTR and fluorescence for injected beams in J-PARC Main Ring (5)

○佐々木 知依,橋本 義徳,外山 毅,三橋 利行,照井 真司,中村 剛(KEK),酒井 浩志(関東情報サービス),手島 昌己,魚田 雅彦,佐藤 洋一(KEK)
○Tomoi Sasaki, Yoshinori Hashimoto, Takeshi Toyama, Toshiyuki Mitsuhashi, Shinji Terui, Takeshi Nakamura (KEK), Hiroshi Sakai (Kanto Information Service, Co., Ltd.), Masaki Tejima, Masahiko Uota, Yoichi Satou (KEK)
 
J-PARCメインリング(MR)に導入する、入射後20 ターン程度の周回ビームを測定するOTRと蛍光を用いた6桁のダイナミックレンジを持つ2次元ビームプロファイルモニターを開発している。問題であった周回ビームとのカップリングインピーダンス(Z/n)は、電磁波吸収体としてフェライトと炭化ケイ素(SiC)を真空容器に挿入し、その結果Z/n を3.8 Ωから0.8 Ωに低減できた。また、想定される電磁波吸収体での発熱を外部に逃がす構造の検証を行った。真空の観点からは吸収体の気体放出速度の測定を行い、気体放出量は真空チャンバーのそれの1/100程度であり、到達圧力への悪影響がないことを確認した。これらは前回までに報告した。 現在は、吸収体挿入のための固定ジグが完成し最終的なセットアップでのZ/n測定、フェライトとSiCの高周波特性とその温度依存性、固定ジグに取り付けたときの熱伝導特性の測定などを行っている。また本装置のチタンフォイルとアルミナセラミックスのターゲットの運用に関して、750 kW以上の大強度陽子ビームが周回するMRでの安全確保のためのMPSシナリオの検討を行っている。本発表では、それらの現状について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP015
p.881
J-PARC主リングでのRFSoCベースのイントラバンチフィードバックの開発:設計と初期評価
Development of new RFSoC based intra-bunch transverse feedback system at J-PARC MR : Design and initial evaluation

○中村 剛,佐藤 健一郎,外山 毅,岡田 雅史,小林 愛音(高エネ研),山田 逸平,菖蒲田 義博(原子力機構)
○Takeshi Nakamura, Kenichirou Satou, Takeshi Toyama, Masashi Okada, Aine Kobayashi (KEK), Ippei Yamada, Yoshihiro Shobuda (JAEA)
 
J-PARC の主リング(3GeV-30GeV 陽子シンクロトロン)では、ビームの横方向不安定性を抑制するためにディジタルフィードバックを用いて毎秒100Mサンプルすなわち 10ns刻みでバンチを分割し、その各部に対して独立してフィードバック処理を行いベータトロン振動を抑制している。しかし予定されているビーム電流の増強に向けて、より強い、そしてより高い周波数の不安定性への備えが必要とされ、また、現状の装置はビームの加速に伴う周回周期の変化への対応が容易ではなく、入射および加速の初期のみへの適用となっているが、これを全加速範囲に広げる必要がある。そこで今回、新たに毎秒576Mサンプルを目標としたフィードバックの開発を開始した。このフィードバックでは、RFSoCすなわち、信号処理用のFPGA、位置情報を取得するADC、そして処理結果によりキッカー駆動するDACが1チップ化された素子を用いるためプログラミングは容易となっている反面、クロック周波数が固定のため、フィードバックに必須な周回周期との同期はFPGA内で1周期に対応するサンプリング数を周回周期に応じて定義しなおすことで対応している。また周回周期の変動はビームのキッカー通過タイミングの変動を生じるので、それを補正するキックの遅延調整も組み込んでいる。本報告では、このフィードバックの概念設計および開発の現状を報告する。
 
10:00-12:00 
FRP016

稀少RIリングにおける共鳴型Schottky検出器の性能評価
Performance evaluation of resonant Schottky detector at Rare RI-Ring
○滝浦 一樹(埼玉大)
○Kazuki Takiura (Saitama Univ.)
 
理研RIBFには、短寿命不安定核の精密質量測定に特化した「稀少RIリング」が設置されており、2018年から今までに2つの中性子過剰領域(原子番号Z = 28, 46)で質量測定実験が行われた。稀少RIリングを使った質量測定における最終目標は、ミリ秒オーダーの短寿命を持ち生成断面積の小さい核種の質量を10の-6乗の高精度で決定することである。稀少RIリングは、等時性場の下で粒子を周回させる「Isochronous Mass Spectrometry (IMS) 法」を用いて質量を測定しており、等時性場の達成度は質量決定精度に直接影響する。この達成度を評価するために用いられているのが、本講演の主題である「共鳴型Schottky検出器」である。共鳴Schottky検出器は、周回粒子により励起される共鳴空洞内の電磁波をピックアップコイルで検出し、高速フーリエ変換することにより、周回周期の情報を非破壊的に得ることが出来る検出器である。稀少RIリングには既にこの検出器 (R3 Schottky) が導入されているが、今回R3 Schottkyより高い感度を目標に、新規のSchottky検出器を導入した。高感度化することで、Schottky検出器を用いた短寿命な不安定核の質量測定の実現も期待できる。本講演では、新規Schottky検出器について、設計、製作、オフライン試験、最終性能について発表する。また新規のSchottky検出器による将来の展望についても述べる。
 
10:00-12:00 
FRP017

電子加速器ベース小型中性子源AISTANSの現状報告
Current status of the accelerator based compact neutron source AISTANS
○オローク ブライアン(産業技術総合研究所),古坂 道弘(高エネルギー加速器研究機構),木野 幸一,大島 永康(産業技術総合研究所)
○Brian Orourke (AIST), Michihiro Furusaka (KEK), Koichi Kino, Nagayasu Oshima (AIST)
 
産業技術総合研究所にある電子加速器ベースの小型中性子源AISTANS [1-3]は、構造材料や製品等の非破壊評価のための中性子ラジオグラフィやブラッグエッジイメージング等の測定に使用されている[4]。 中性子発生に用いる電子加速器はSバンドで加速エネルギーは約40 MeVである。加速器は最大10kWの高いビームパワーで設計されており、ビーム電流は250 mA、最大デューティ 0.1%(パルス幅10 µ秒、繰り返し100Hz)である。ただし現在、加速器の連続運転時(1日約8時間)には、繰り返しを20 Hz以下に設定してビームパワーを1.4 kWに抑えている。現在、より高いビームパワーでの運転を目指し検討を行っている。例えば、中性子発生ターゲット周辺の中性子反射体・放射線遮蔽材での発熱・徐熱、Tiビームウィンドウの除熱、電子ビームロスの問題など、ビームパワーが変換されていく過程についてのより総合的、定量的な検討が必要とされている。 本講演では、AISTANS加速器の現状と、ビームパワー増強を進めるうえでの技術課題とその対策について紹介する。 [1] https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101275.html [2] K. Kino et al., Nucl. Instrum. Methods in Phys. Res. A 927 (2019) 407–418; Eur. Phys. J. Plus 137 (2022) 1260 [3] B. E. O’Rourke et al., Nucl. Instrum. Methods in Phys. Res. B 464 (2020) 41 [4] K. Kino et al., J. Neutron Res. 24 (2022) 395.
 
10:00-12:00 
FRP018
p.887
仮想陰極発振器における電子ビームの挙動と大電力マイクロ波の発生解析
Analysis of electron beam behavior and high-power microwave generation in virtual cathode oscillator

○ファム フータン,高橋 龍世,大久保 汐音,加葉田 駿(長岡技術科学大学),長尾 和樹(小山工業高等専門学校),須貝 太一,江 偉華(長岡技術科学大学)
○Huu Thanh Pham, Ryusei Takahashi, Shion Okubo, Shun Kabata (Nagaoka University of Technology ), Kazuki Nagao (National Institute of Technology, Oyama College), Taichi Sugai, Weihua Jiang (Nagaoka University of Technology )
 
ETIGO-IV(大電力パルスパワー発生装置)を用いた仮想陰極発振器(Virtual Cathode Oscillator)における電子ビームの挙動を行った。また、仮想陰極発振器による大電力マイクロ波の特性も行った。仮想陰極発振器は電子ビーム変調と仮想陰極周囲の電磁波との相互作用することにより、マイクロ波が発生する。シンプルな構造と広い周波数帯域という利点がある。ただし、仮想陰極発振器の問題は、効率が低くいし、周波数が不安定のことである。本研究では、仮想陰極発振器の電子ビームの測定にディテクタ大とディテクタ小という2種類のディテクタを使用し、電子ビームの挙動を解析した。 2種類のディテクタの結果により、仮想陰極振動の存在を示した。仮想陰極が存在する頃に仮想陰極発振器による大電力マイクロ波の特性が得られた。
 
10:00-12:00 
FRP019

マルチイオン治療に用いる小型ECRISに有用な多価イオン強度増強法
Intensity enhancement of multiply charged ions for electron cyclotron resonance ion sources
○片桐 健,岩田 佳之,白井 敏之(QST千葉)
○Ken Katagiri, Yoshiyuki Iwata, Toshiyuki Shirai (QST)
 
QSTは,重粒子線がん治療における副作用の低減,治療期間の短縮,及びさらなる治療効果の向上のために,線量分布だけでなく線質分布の最適化を可能とするマルチイオン治療の実用化を進めている.次世代重粒子線がん治療装置である量子メスにてこのマルチイオン治療を実施するために,4種類のイオン(He, C, O, Ne)の生成とそれらの素早い切り替えが行えるイオン源(マルチイオン源)の開発を我々は進めてきた.このイオン源におけるO6+やNe7+等の多価イオンの生成量向上を狙って,我々はシンプルな外付けの装置により容易に多価イオン強度増強を実現する方法を開発した.この多価イオン強度増強法は,普及型施設で用いられる10-GHz ECRISにも利用可能であるため,今後マルチイオン供給を予定する施設には有用である.本発表では,この新たな多価イオン強度増強法の詳細を示す.
 
10:00-12:00 
FRP020
p.891
高い安定性を持つ重粒子線治療用入射器の開発
Development of a heavy ion therapy injector with high stability

○安田 浩昌,大崎 一哉,川﨑 泰介,佐古 貴行,左古田 淳平,佐藤 潔和,富田 和仁,平田 寛,龍頭 啓充(東芝エネルギーシステムズ株式会社),林崎 規託,池田 翔太,岡村 昌宏(東工大),岩田 佳之,村松 正幸,山田 聰(QST)
○Hiromasa Yasuda, Kazuya Osaki, Taisuke Kawasaki, Takayuki Sako, Junpei Sakoda, Kiyokazu Sato, Kazuhito Tomita, Yutaka Hirata, Hiromichi Ryuto (Toshiba Energy Systems & Solutions Corporation), Noriyosu Hayashizaki, Shota Ikeda, Masahiro Okamura (Tokyo tech), Yoshiyuki Iwata, Masayuki Muramatsu, Satoru Yamada (QST)
 
重粒子線治療装置はQOL(Quality of Life)を維持するがん治療方法として世界的に注目を浴びている。東芝エネルギーシステムズ株式会社では重粒子線治療装置を国内病院等へ供給しており、海外病院への供給も始めている。重粒子線治療装置のさらなる普及拡大に向け、装置全体の安定性向上を目指しており、本発表では安定性向上を図った新しい入射器のビーム試験結果について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP021
p.894
サイクロトロンのIEC規格化に対する住友重機械の取り組み
Sumitomo Heavy Industries' efforts toward IEC standardization of cyclotrons

○筒井 裕士,立川 敏樹,江原 悠太,井上 淳一,川間 哲雄,盛田 琢造(住友重機械)
○Hiroshi Tsutsui, Toshiki Tachikawa, Yuta Ebara, Junichi Inoue, Tetsuo Kawama, Takuzo Morita (SHI)
 
中国主導で、加速器のIEC規格化の動きがあり、住友重機械はサイクロトロンの規格化に対応してきている。これまでのところ10 – 30 MeV高強度陽子サイクロトロンのIEC規格(IEC 63175:2021)ができ、現在はTC45/WG20において、200-400 MeVの超電導陽子サイクロトロンに関する規格案(IEC 63507)の審議をしている。同じWG20で放射線加工用電子線形加速器に関する規格案の審議も始まっている。IEC TC45/WG20での加速器の規格作成の現状や住友重機械の取り組みについて報告する。
 
ポスター③ (8月2日 2F交流ラウンジ)
10:00-12:00 
FRP023
p.897
SuperKEKBでの突発ビームロス事象の観測と原因究明
Observation and cause investigation of sudden beam loss at SuperKEKB

○池田 仁美,阿部 哲郎,福間 均,石橋 拓弥,梶 裕志,古賀 太一朗,小林 鉄也,小磯 晴代,松岡 広大,三塚 岳,三橋 利行,中山 浩幸,西脇 みちる,小笠原 舜斗,佐々木 信哉,末次 祐介,照井 真司,飛山 真理,宇野 健太,山口 孝明(高エネルギー加速器研究機構)
○Hitomi Ikeda, Tetsuo Abe, Hitoshi Fukuma, Takuya Ishibashi, Hiroshi Kaji, Taichiro Koga, Tetsuya Kobayashi, Haruyo Koiso, Kodai Matsuoka, Gaku Mitsuka, Toshiyuki Mitsuhashi, Hiroyuki Nakayama, Michiru Nishiwaki, Shunto Ogasawara, Shinya Sasaki, Yusuke Suetsugu, Shinji Terui, Makoto Tobiyama, Kenta Uno, Takaaki Yamaguchi (KEK)
 
SuperKEKBの最大の目的であるルミノシティー向上を目指す上で、最も大きな障害の一つとなっているのが突発ビームロス(Sudden Beam Loss、以下SBLと言う)である。SBLは1~3ターンという速さで突発的にバンチトレイン中のかなりの量のビームを失う現象で、コリメータ(および他の加速器コンポーネント)の損傷、QCSのクエンチ、Belle-II検出器への大きなバックグラウンドを引き起こす。また、SBLはビームアボートの原因となるため、大電流を蓄積する妨げとなる。そこで、SBLの原因を調査し解決することは我々の重要課題となっている。SBLが起きた時の情報を集めるために、リング内でビームロスの起きた順番を特定するためのロスモニターシステム、SBLが起こった瞬間のバンチ電流や軌道を記録するモニター、SBLの原因特定のための音響センサーなどを設置し、SBL事象の観測と原因究明に取り組んだ。この論文では、SBLの事例をあげ、原因究明及び、被害を最小限に押さえるための取り組みについて記述する。
 
10:00-12:00 
FRP024
p.901
機械学習による電子線駆動陽電子源の最適設計
Optimal design of ILC e-driven positron source with machine learning

○栗木 雅夫,黒口 俊平,高橋 徹,リプタック ザカリー(広島大院先進理工),浦川 順治(学術振興会),榎本 善範,大森 恒彦,福田 将史,森川 祐,横谷 馨(高エネ研)
○Masao Kuriki, Shunpei Kuroguchi, Tohru Takahashi, Zachary Liptak (Hiroshima U. ADSE), Junji Urakawa (JSPS), Yoshinori Enomoto, Tsunehiko Omori, Masafumi Fukuda, Yu Morikawa, Kaoru Yokoya (KEK)
 
国際リニアコライダー(ILC)は、重心系エネルギーが250GeVから1TeVの範囲で動作するように設計された次世代電子・陽電子コライダーであり、標準模型を超える物理を探求する機会を提供する。ILCの重要なコンポーネントは電子駆動陽電子源であり、大量の陽電子を発生させるには高度な技術が必要である。従来の加速器設計手法では、逐次最適化を行うが、これは非効率的であり、全体最適を達成するためには困難であった。本研究では、ブラックボックス最適化手法の一つであるTree-structured Parzen Estimator(TPE)アルゴリズムを導入し、ILCの電子駆動陽電子源の設計効率を向上させた。Optunaを用いてTPEアルゴリズムを実装し、最大8個のパラメータを最適化した結果、陽電子捕獲効率は1.42となり、手動最適化で得られた1.20を大幅に上回った。この大幅な改善により、ターゲット破壊の安全基準を大きな余裕度で満たすことが期待される。最適化プロセスも迅速化され、時間は約1週間から約半日に短縮された。これらの結果は、加速器設計における機械学習技術の可能性を示すものであり、より広いパラメータ空間を探索し、局所的な極小値を回避することで、より包括的な全体最適化を提供するものである。
 
10:00-12:00 
FRP025
p.907
KEK 電子入射器の運転統計の考察
Analysis of operational statistics at KEK injector linac

○古川 和朗,佐藤 政則,松本 修二(KEK),鈴木 和彦(三菱電機SC)
○Kazuro Furukawa, Masanori Satoh, Shuji Matsumoto (KEK), Kazuhiko Suzuki (MSC)
 
高エネルギー加速器研究機構 (KEK) の 7-GeV 電子陽電子入射器においては、年間約 5000 時間のビーム運転が行なわれており、2 つの放射光実験施設 (PF、PF-AR) と衝突型素粒子実験施設 (SuperKEKB) への電子と陽電子の入射を継続している。入射器がビーム入射運転を開始した 1982 年から現在までさまざまな改造を行いながら運転を継続しているが、これまでの実験プロジェクトの形態によって入射器の運転様式も大きく変化を重ね、運転統計情報にもさまざまな特徴が現れている。素粒子実験としては TRISTAN、KEKB、SuperKEKB の各実験プロジェクトに電子と陽電子を入射してきたが、実験ごとに要求される入射ビームの特性も大きく変わり、その対応のために各プロジェクトの初期には入射が停止するような障害が発生する場合もあったが、徐々に適切な対応が行われるようになり、円滑な運転が行われるようになる。高い性能を求める素粒子実験向けの入射ビームの開発が、徐々に放射光実験の入射にも活かされる場合も多い。これらの運転統計の情報を参考にしながら、実験ユーザーからの要求が大きく異なる素粒子物理実験と放射光科学実験の双方にバランスを考慮した入射運転最適化が期待されるところである。
 
10:00-12:00 
FRP027

ITN (ILC Technology Network)の下でのKEKにおける加速器開発の現状
Accelerator development status under ITN (ILC Technology Network) in KEK
○阪井 寛志,梅森 健成,佐伯 学行,山本 康史,道園 真一郎,山本 明,早野 仁司,オメット マチュー,道前 武,山田 智宏,片山 領,井藤 隼人,荒木 隼人,有本 靖,植木 竜一,クマール アシーシ,シャナブ サフアン,原 隆文,後藤 剛喜,新井 宇宙,江木 昌人,加古 永治,久保 毅幸,荒川 大,片桐 広明,松本 利広,中島 啓光,明本 光生,松本 修二,三浦 孝子,中西 功太,原 和文,清水 洋孝,仲井 浩孝,本間 輝也,平木 雅彦,照沼 信浩,奥木 敏行,阿部 優樹,アリセフ アレクサンダー,久保 浄,倉田 正和,クルーチニン コンスタンテイン,黒田 茂,中村 英滋,ポポフ コンスタンテイン,榎本 嘉範,福田 将史,森川 祐,佐藤 幹,横谷 馨(KEK)
○Hiroshi Sakai, Kensei Umemori, Takayuki Saeki, Yasuchika Yamamoto, Shinichiro Michizono, Akira Yamamoto, Hitoshi Hayano, Mathieu Omet, Takeshi Dohmae, Tomohiro Yamada, Ryo Katayama, Hayato Ito, Hayato Araki, Yasushi Arimoto, Ryuichi Ueki, Ashish Kumar, Safwan Shanab, Takafumi Hara, Takeyoshi Goto, Sora Arai, Masato Egi, Eiji Kako, Takayuki Kubo, Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Toshihiro Matsumoto, Hiromitsu Nakajima, Mitsuo Akemoto, Shuji Matsumoto, Takako Miura, Kota Nakanishi, Kazufumi Hara, Hirotaka Shimizu, Hirotaka Nakai, Teruya Honma, Masahiko Hiraki, Nobuhiro Terunuma, Toshiyuki Okugi, Yuki Abe, Alexander Aryshev, Kiyoshi Kubo, Masakazu Kurata, Konstantin Kruchinin, Shigeru Kuroda, Eiji Nakamura, Konstantin Popov, Yoshinori Enomoto, Masafumi Fukuda, Yu Morikawa, Motoki Sato, Kaoru Yokoya (KEK)
 
国際リニアコライダー(ILC)は、(1)電子・陽電子を効率よく衝突させるためのナノビーム収束技術、(2)高エネルギーに高効率で加速する超伝導加速空洞技術、(3)電子・陽電子を発生させる粒子発生技術などの先端的な加速器技術から構成されるが、いずれも世界の科学者が知恵を絞り、高性能のマシンとなる工夫を続けている。ILCは世界協力による技術開発が長年積み重ねられており、2023年度から、具体的にILC国際推進チーム(IDT)の下でILC Technology Network(ITN)として国際協力で研究開発に取り組むことになった。その中で、KEKは現在、世界最大強度の陽電子源をもつSuperKEKBが運用中であり、またTRISTAN以降、KEKB、STF、cERLで長年培ってきた超伝導加速技術の歴史がある。ナノビーム技術についてもKEKの加速器試験施設(ATF)で、国際協力で研究が進められている。これらKEKで培った技術をさらに発展させ、ITN開発に取組み始めた。本発表では、ITNで取り組むべき課題の中で特に重要な上記 (1)~(3)の開発について報告を行う。ITNを通じた開発はILCのみならず将来加速器の性能向上や産業・医療応用に適用可能であり、国際協力で、これらの世界の共通課題である加速器の重要要素・先端技術開発につながるものである。(謝辞)本研究は、文部科学省「将来加速器の性能向上に向けた重要要素技術開発」事業JPMXP1423812204の助成を受けたものです。
 
10:00-12:00 
FRP028
p.912
日本大学LEBRAにおけるテラヘルツ波光源開発
Development of terahertz sources at LEBRA in Nihon University

○境 武志(日大量科研),清 紀弘(産総研),早川 恭史(日大量科研),住友 洋介(日大理工),早川 建,田中 俊成,野上 杏子,髙橋 由美子(日大量科研)
○Takeshi Sakai (LEBRA, Nihon University), Norihiro Sei (AIST), Yasushi Hayakawa (LEBRA, Nihon University), Yoske Sumitomo (CST, Nihon University), Ken Hayakawa, Toshinari Tanaka, Kyoko Nogami, Yumiko Takahashi (LEBRA, Nihon University)
 
日本大学電子線利用研究施設LEBRAでは、高エネルギー加速器研究機構と産業技術総合研究所との共同研究により、100MeV電子線型加速器の高度化、自由電子レーザー(FEL)、パラメトリックX線放射(PXR)とテラヘルツ波(THz)光源開発を行っている。各光源は学内外の共同利用に用いられている。THz波源はFELライン、PXRラインそれぞれで開発しており、THz帯のコヒーレントエッジ放射(CER)光源開発、コヒーレント遷移放射(CTR)光源開発に加え、平面波コヒーレントチェレンコフ放射(CCR)源開発を行っている。CCR光源には人工水晶中空円錐管を用いており、各基礎測定を進めている。またCCR光源部の機構上部には、CTR光源のターゲット形状をらせん状にした簡易的なテラヘルツ帯域CTRの光渦光源開発を進めビームプロファイルやスペクトル測定など基礎測定を行っている。本発表では、これら各THz光源開発等に関して報告を行う。
 
10:00-12:00 
FRP029

あいちSR電子蓄積リングにおけるビーム基準アライメント
Beam based alignment of storage ring at AichiSR
○藤本 將輝(名大, あいちSR),小澤 舜ノ介(名大),高嶋 圭史(名大, あいちSR)
○Masaki Fujimoto (Nagoya Univ., AichiSR), Shunnosuke Ozawa (Nagoya Univ.), Yoshifumi Takashima (Nagoya Univ., AichiSR)
 
あいちシンクロトロン光センター(あいちSR)は、周長72 mの1.2 GeV電子蓄積リングを有し、産業利用を中心に放射光の供用を行っている。2013年3月の運用開始からすでに10年が経過しており、加速器の経時的な位置変化の観測やCOD補正を目的として、蓄積ビーム基準によるビーム位置モニタ(BPM)のアライメントを実施した。あいちSR蓄積リングは、5 Tの超伝導偏向電磁石1台を含むTriple-bendの4回対称で構成される。各ユニットセルには4ペアの集束・発散四極電磁石が設置されており、四極電磁石にはBPMが固定されている。アライメント実験は、四極電磁石中でのビーム位置を変えながら、各電磁石の補正コイルを用いてビームキックを与えたときに軌道変化を最小とする磁場中心の座標をBPMで探った。蓄積リングには水平・鉛直ステアリング電磁石が各16台ずつしか設置されておらず、四極電磁石を挟むバンプ軌道を作ることができない。そこで、測定対象となる四極電磁石位置でベータトロン振動が波腹となるように、対称点にあるステアリング電磁石を用いてビーム位置を制御した。この測定を計32台の四極電磁石とBPMの組合せに対して実施し、蓄積リング一周にわたって水平・鉛直方向のアライメントを行った。稼働開始当初に測定された結果と比較したところ、水平方向に最大400ミクロンのずれが生じていることがわかった。本発表では、あいちSRにおけるビーム基準アライメント実験について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP030
p.915
UVSOR-III における単一電子蓄積実験の現状
Status of single electron storage experiment at UVSOR-III

○浅井 佑哉(広島大先進理工),島田 美帆,宮内 洋司(KEK, HiSOR),加藤 政博(HiSOR, UVSOR)
○Yuya Asai (Hiroshima Univ. ADSE), Miho Shimada, Hiroshi Miyauchi (KEK, HiSOR), Masahiro Katoh (HiSOR, UVSOR)
 
我々は、放射光の量子性・可干渉性の応用の可能性を探っている。その一環で単一光子レベルでの放射光の特性を実験的に調べることを目的として、放射光源リングに単一電子を蓄積し、その放射を観測する実験に取り組んでいる。実験は、分子科学研究所の放射光源UVSORにおいて行っている。2021年度からの取り組みの結果、単一電子蓄積技術は確立できた。2023年度にはUVSORの光源開発用ビームライン BL1U において単一電子が放射する紫外線領域でのアンジュレータ光のスペクトル特性を観測することにも成功した。2024 年度は単一電子からの放射を光子統計的な観点から調べようとしている。年会ではその最新の状況を報告する。
 
10:00-12:00 
FRP031
p.917
原子核実験におけるアンジュレータ放射光干渉法による電子ビームエネルギー測定
Undulator radiation interferometry for electron beam energy measurement in nuclear physics

○西 幸太郎,中村 哲,永尾 翔(東大理),Klag Pascal(マインツ大)
○Kotaro Nishi, Satoshi Nakamura, Sho Nagao (the University of Tokyo), Pascal Klag (JGU)
 
我々はマインツマイクロトロン (MAMI) において崩壊パイ中間子法により軽いハイパー核の質 量分光を行っている 。ハイパー核の質量決定精度が数 keV程度の高分解能の分光法であるが、 スペクトロメータの較正精度(系統誤差)が100 keV程度と大きく実験全体の誤差を決定してい る。スペクトロメータの運動量較正に用いる電子ビームのエネルギー絶対値が系統誤差を生む主要因となっており、一桁高い精度で電子ビームエネルギー絶対値を測定することがハイパー核質量絶対値を決める上で非常に重要である。 この問題を解決するためにアンジュレータ放射光干渉法を開発した。電子ビームライン上の2台のアンジュレータから出る放射光の干渉光は、その位相差がアンジュレータ間距離に依存するため周期的に変化する。アンジュレータ間距離を変化させながらCMOS カメラで測定し、強度変化の周期から電子ビームエネルギー絶対値を決定できる。この手法で 200 MeV領域の電子ビー ムエネルギーを従来より一桁以上良い 3 keV の精度で測定できることを実証した。 本講演では、2024年3月に実施したビームタイムの結果および電子ビーム特性が測定結果に与える影響の解析結果を報告する。
 
10:00-12:00 
FRP032

EUV-FELの再生増幅化と光取り出しの検討
Investigation of regenerative amplification and light extraction of EUV-FEL
○加藤 龍好,本田 洋介,谷川 貴紀(高エネ研)
○Ryukou Kato, Yosuke Honda, Takanori Tanikawa (KEK)
 
KEKでは近い将来に先端半導体露光で必要とされる強力なEUV光源としてERL技術を用いた高平均出力のFEL(EUV-FEL)を提案している。EUV-FELのプロトタイプ機ではその全長が200mにおよぶため、実機ではよりコンパクトなサイズに収まることが求められている。コンパクト化を図る鍵となるのは、加速器セクションの多重ループ化とアンジュレータセクションの出口の光の一部を入り口に戻して種光とする再生増幅FELである。昨年度、我々は米国Lawrence Berkeley研究所のWebサイトで公開されているX線の反射率データベースを使用して、再生増幅の光フィードバック光学系と光取り出し光学系に使用可能なミラー材質とその配置について具体的な検討を行った。その結果、ミラー損失だけを考慮した場合、アンジュレータ出口の円偏光したFEL光のなかで、S偏光成分の45.6%、P偏光成分の43.0%をアンジュレータ入り口に戻すことができると解った。今回はこの結果をもとに、フィードバック系の途中に斜入射ミラーを挿入することで幾何学的に一部の光を切り出し、残りの光をアンジュレータ入り口に戻して再生増幅FELの種光とすることについて検討する。より現実的な再生増幅FELのシミュレーションにより、EUV光取出しミラーの幾何学形状とその配置、再生増幅に必要なアンジュレータシステムの長さの最適化を行う。
 
10:00-12:00 
FRP033
p.920
量子FELの研究
Study on quantum FEL

○尾崎 俊幸(カルピオ AI)
○Toshiyuki Ozaki (Carpio AI)
 
量子力学で記述される領域でのFELを議論する。まず、電子1個がアンジュレーター内を運動する場合、電子静止系でのシュレディンガー方程式を議論し、数値計算する方法を議論する。次に、電子が多数の場合、つまり、電子ビームであり、ボソンで近似できる事を説明し、第2量子化の方程式を導出する。また、量子もつれの可能性を議論する。
 
10:00-12:00 
FRP034
p.925
SPring-8/SACLAにおける加速器時系列データベースへの二次データ保存体系
A scheme to store processed data into the well-ordered database storage format at SPring-8/SACLA

○岡田 謙介,岩井 瑛人,鈴木 伸司,清道 明男(JASRI)
○Kensuke Okada, Eito Iwai, Shinji Suzuki, Akio Kiyomichi (JASRI)
 
SPring-8/SACLAにおいて、加速器運転性能の向上に役立てるため、機器の測定値、状態を時系列データとして保存している。加速器時系列データベース(DB)利用にあたっては、機器横断的な解析のために制御コマンドと連携した信号フォーマットを規定し、利用者が初めに信号の登録を行う取り決めで運用している。これまで加速器データ収集は、機器から直接取得可能な1次データを基本としてきたが、近年読み出し系の基盤が整ってきたことに伴い、別ネットワークセグメントの情報や、ステートレスが基本の機器制御方針と相性の悪い統計情報などの集計値、ニ次加工データを、DBに載せて活用したいとの要望が出てきた。ここで安易にDBに直接保存するAPIを提供した場合、不適切な書き込みによるDBの性能悪化や、データフォーマットの特殊化によって結果的に将来の利用者の利便性を損なうことになる。そこで、インメモリDBで間を取り持つことにより、既存の信号登録制をとりつつ、書き込みデータの自由度が高い方式を構築した。利用者は既存の方法でデータを読み出し、複数データの関連付けはイベント番号を活用する。本発表では、既存のデータ体系との整合性確保のための実装方法と、機械学習の目的関数となるビームライン側のモニター値、及びストレージリングバンチ純度測定の統計値への適用について述べる。
 
10:00-12:00 
FRP035
p.929
J-PARC 加速器PPS 情報収集・表示系の更新 (II) :GUIの自動生成
Upgrade of acquisition and monitoring system for J-PARC accelerator PPS(II) : Automatic generation of GUI

○渡邉 和彦(三菱電機システムサービス株式会社),仁木 和昭(KEK),高橋 博樹(JAEA),山本 昇(KEK),地村 幹(JAEA),福田 真平(三菱電機システムサービス株式会社)
○Kazuhiko Watanabe (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Kazuaki Niki (KEK), Hiroki Takahashi (JAEA), Noboru Yamamoto (KEK), Motoki Chimura (JAEA), Shinpei Fukuta (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.)
 
J-PARC 加速器のPersonnel Protection System(PPS)では中央制御棟に設置されたデータ収集用PC群と情報表示PC群で構成されるPPS Data Systemと、3つの加速器施設及び中央制御棟内に分散配置されたPLC群とをPPS用の独立したネットワーク(PPS Network)により接続することでデータ収集・表示を行っているが、2022年度からPPS Data Systemを段階的にEPICSベースのシステムに移行する作業を行っている。加速器学会第20回年会では、PPSという安全システムの安定的な運用と並行して更新を行う為、4段階に分けて移行を行う全体の流れと、第1段階である既存のSCADAでEPICS化するための手法と次段階であるGUI表示の進捗状況を報告した。今回は主にEPICSによる大規模なGUI部分の移行について報告する。GUIの作成にはControl System Studio(CSS)を使用する。通常の方法で作成した場合には、PPS Data Systemの監視する信号点数が多い為、非常に工数がかかり、その後のメンテナンスも容易ではない。そこで、プログラムにより自動生成することを考えた。一方で、GUIの自動生成に必要となる表示画面のどこに表示オブジェクトを配置するかという情報は存在しない。そこで、まず各信号の表示オブジェクトの自動生成を行い、それらを画面上に配置した後、座標を抽出して信号情報と紐づけし、GUIを生成する方法を考案した。本発表ではGUIの自動生成及び生成されたGUIの動作確認について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP036
p.933
RIBF次期計画における制御システムの設計検討
Design and planning of the control system for the next RIBF project

○内山 暁仁,込山 美咲,熊谷 桂子,大城 哲彦,木寺 正憲,今尾 浩士(理研仁科センター)
○Akito Uchiyama, Misaki Komiyama, Keiko Kumagai, Tetsuhiko Ohshiro, Masanori Kidera, Hiroshi Imao (RIKEN Nishina Center)
 
理化学研究所仁科センターでは高度化計画として荷電変換リング(Charge Stripper Ring : CSR)を軸としたRIBF施設のアップグレードの実現を目指している。 CSRの運用では、電磁石、ビーム診断、真空といったコンポーネントの数が現RIBF施設よりも急激に増えることから、ビームチューニングはより複雑になり、現施設よりオペレーションに時間がかかるようになると予想される。時間がかかるという事はマンパワーだけでなく、電気コストも上がることになるため、その運用コストを抑えるためにはオペレーションの効率化が重要である。それを実現するためには現在のRIBF制御系での問題点を洗い出し、制御システムで解決できる非効率なオペレーションをできるだけ避けなくてはならない。 次にCSR制御システム設計では開発工数を削減するために、産業用で広く利用されている商用ハードウェアとオープンソースソフトウェアは可能な限り利用するべきである。また、自己のビームからハードウェアを守る仕組みである、マシンプロテクションシステムも重要である。現在RIBF施設において48Ca~238U領域の重イオンでは10 kW級ビームパワーでの供給が可能となっている。一方CSRが実現すれば、これが50 kW級になり、今後のアップグレードを加味すると100 kW級のビームパワーにマシンプロテクションシステムは対応しなくてはならない。 本会議では、高度化計画における制御系の設計について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP037
p.938
リモートIO ホロニックハブの修理
Repairs of remote IO Holonic Hub devices

○古川 靖士,栗田 哲郎,山田 裕章,淀瀬 雅夫,廣戸 慎,清水 雅也,渕上 隆太,小田部 圭佑,羽田 祐基,北上 悟,石井 勇揮,羽鳥 聡(若狭湾エネ研)
○Seiji Furukawa, Tetsuro Kurita, Hiroaki Yamada, Masao Yodose, Makoto Hiroto, Masaya Shimizu, Ryuta Fuchigami, Keisuke Otabe, Yuki Haneda, Satoru Kitajyo, Yuki Ishii, Satoshi Hatori (werc)
 
若狭湾エネルギー研究センターでは、加速器の運転に必要な電磁石電源の遠隔操作を省配線システム「ホロニックハブ」で制御している。しかし、使用から20年が経ち、ホロニックハブシステムのリモートIOに位置する機器(ADC/DAC、DI/DO)の故障が相次いでいる。根本的な全リプレースを行うべきだが予算上現実的ではなかった。現システムの延命が必要であったがホロニックハブのリモートIO部はすでにメーカーが事業から撤退しており、サポートが終了している。  サポート終了品の補修を手掛ける業者の協力を得て、故障の主な原因が「DC-DCコンバータ」「通信IC」の二つであることがわかった。「DC-DCコンバータ」「通信IC」の代用品は現在も流通しており、その交換を行うことでリーズナブルにホロニックハブの修理体制を確立することができた。これにより、システムの継続した運用が行える。  本発表は、その「DC-DCコンバータ」「通信IC」に最も容易にアクセスできる方法と、その交換の仕方、交換後の通信チェックまでを記したものである。  当センターで自力修繕したホロニックハブのリモートIO部は19台に及ぶが、メインICが壊れていた1台を除き、18台は現在、現場取付可能な状態となっている。
 
ポスター③ (8月2日 2Fリハーサル室)
10:00-12:00 
FRP038
p.943
Raspberry Piを用いたGigEカメラコントローラーの開発
Development of GigE camera controller using Raspberry Pi

○草野 史郎,牛本 信二(三菱電機システムサービス(株)),佐藤 政則,宮原 房史(高エネルギー加速器研究機構)
○Shiro Kusano, Shinji Ushimoto (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd), Masanori Satoh, Fusashi Miyahara (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器では、約100台のスクリーンモニタが設置され、撮像用カメラとして CCD カメラを採用している。 2014年夏より、GigE Vision規格のカメラ(Allied Vision製)を導入し現在は30台を運用している。GigEカメラは、制御ネットワークに接続されており、同ネットワークに接続されたブレード計算機上のEPICS IOCから制御をおこなっている。 今回開発したGigEカメラコントローラーは、Raspberry Piを搭載しており、GigEカメラとRaspberry Piをネットワーク、電源などを直接接続し、Linux上のEPICS IOCで制御をおこなう。 これにより、制御ネットワークへの負荷を軽減し効率的に制御を可能としている。本稿では、GigEカメラコントローラーについて、詳細を報告する。
 
10:00-12:00 
FRP039
p.946
KEK電子陽電子入射器制御システム
KEK e-/e+ injector LINAC control system

○佐藤 政則,王 迪,佐武 いつか,宮原 房史,諏訪田 剛,古川 和朗(高エネ機構),工藤 拓弥,草野 史郎,水川 義和(三菱電機システムサービス(株)),早乙女 秀樹,大房 拓也(関東情報サービス(株))
○Masanori Satoh, Di Wang, Itsuka Satake, Fusashi Miyahara, Tsuyoshi Suwada, Kazuro Furukawa (KEK), Takuya Kudou, Shiro Kusano, Yoshikazu Mizukawa (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Hideki Saotome, Takuya Ofusa (Kanto Information Service Co., Ltd.)
 
 高エネルギー加速器研究機構の電子陽電子入射器では,衝突型円形リングであるSuperKEKBの電子,陽電子,陽電子ダンピングリングに加えて,放射光リングであるPF,PF-ARへ異なるエネルギーのビームを供給している.入射器の最大ビーム繰り返しは50 Hzであるが,20ミリ秒ごとに運転パラメタを切り替えることが可能であり,この仕組みを利用して下流の5つのリングへ同時トップアップ入射をおこなっている.このように複雑な運転形態を長期間安定に実現するため,EPICSを基盤とした制御システムを構築し,約400台のフロントエンド機器を制御している.本稿では,入射器制御システムの現状および今後の展望について報告する.
 
10:00-12:00 
FRP040
p.951
KEK電子陽電子入射器の安全系システム
KEK e-/e+ injector LINAC safety system

○佐藤 政則,佐武 いつか,白川 明広(高エネ機構),久積 啓一(三菱電機システムサービス(株))
○Masanori Satoh, Itsuka Satake, Akihiro Shirakawa (KEK), Keiichi Hisazumi (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd. )
 
KEK電子陽電子入射器は, SuperKEKB電子,陽電子,陽電子ダンピングリング,PF,およびPF-ARリングという5つの異なるリングへビームを供給している.これらリングでの物理実験効率を最大限高めるため,20ミリ秒ごとに入射先のリングを自由に選択可能な,全リング同時トップアップ運転をおこなっている.このように複雑な加速器ビーム運転を実現するためには,高い信頼性の安全系システムが不可欠である.本稿では,入射器安全系システムの現状および今後の展望について報告する.
 
10:00-12:00 
FRP042
p.955
縦方向分割方式Cバンド小型加速管の製作
Fabrication of C-band compact accelerating structure made of longitudinally-split two halves

○木村 優志,菅野 東明,重岡 伸之,原 博史,比嘉 究作(三菱重工機械システム株式会社),阿部 哲郎,肥後 壽泰(高エネルギー加速器研究機構)
○Masashi Kimura, Tomei Sugano, Nobuyuki Shigeoka, Hiroshi Hara, Kyusaku Higa (Mitsubishi Heavy Industries Machinery System, Ltd.), Tetsuo Abe, Toshiyasu Higo (High Energy Accelerator Research Organization)
 
常伝導加速管の製造方式には、無酸素銅製の円筒と円盤の部品をビーム軸方向に周期的に積層しろう付け接合するディスク・スタック方式などの、多数の部品を組み合わせる製造方式が採用されているが、部品点数が多く組立に時間を要する。当社で製作している産業用加速管においても、小型化と高加速勾配化のためサイドカップル型構造(Side-coupled structure:SC型構造)を採用しているが、形状が複雑で部品点数が多いため製造効率の観点から課題がある。一方で、近年CLICプロジェクトにおいて、Xバンド進行波加速管の縦方向分割方式(4分割方式ないしは2分割方式)による製造方法が研究されてきた。ディスク・スタック方式と比較した縦方向分割方式の利点として、表面電流が接合箇所を渡らない点、部品点数の大幅削減とそれによる組立コスト低減が期待できる点が挙げられ、特に後者の特徴は加速器の産業応用において有用である。上記背景より、当社では縦方向分割方式のSC型構造への適用可能性について、高エネルギー加速器研究機構と共同で開発を進めてきた。本発表では、縦方向分割方式を適用したCバンドSC型加速管試作機の製作及び低電力RF試験の進捗について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP043

誘電体加速に向けた単結晶窒化アルミニウムのレーザー加工
Laser material processing of single crystal aluminum nitride for dielectric laser accelerator
○澁谷 達則(産総研)
○Tatsunori Shibuya (AIST)
 
レーザー誘電体加速は小型かつナノサイズのビームを生成できる加速技術として注目されている。しかし、加速構造を製造する方法が未熟であり、構造の自由度や製造の簡便さ、選択できる材料などに課題がある。本研究では、高電界が期待できる単結晶窒化アルミニウムに注目し、この材料を高精度に加工することのできるレーザー加工法を開発し、その加工特性について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP044

磁束侵入開始磁場測定によるニオブサンプルの超伝導特性評価
Evaluation of superconducting properties of niobium samples by measuring the flux penetration initiation field
○津村 周作(総研大),梅森 健成,片山 領,久保 毅幸(総研大,高エネ研)
○Shusaku Tsumura (SOKENDAI), Kensei Umemori, Ryo Katayama, Takayuki Kubo (SOKENDAI, KEK)
 
現在、高エネルギー加速器研究機構(KEK)においてニオブ超伝導空洞に対する性能向上のための研究が進行している。本研究では、ニオブ板から切り出したφ20mmの円形サンプルに対して、卓上の電解研磨装置、アニーリング装置、小型真空炉を用いて通常の空洞に相当する表面処理を行い、酸素拡散サンプルを複数作成する。このサンプルに対して第三高調波測定を行い、磁束侵入開始磁場を評価する。 この測定により、加速勾配の勾配を最大化するベーキングパラメータの探索に繋げる。本発表では、この結果について報告を行う。
 
10:00-12:00 
FRP045

KEKにおけるSRF5カ年計画(MEXT-ATD)のためのクライオモジュールの仕様、設計と製造計画
Specification, design and production schedule of cryomodule for SRF 5-year plan (MEXT-ATD) at KEK
○山本 康史,阪井 寛志,梅森 健成,佐伯 学行,道園 真一郎,山本 明,早野 仁司,オメット マチュー,道前 武,山田 智宏,片山 領,井藤 隼人,荒木 隼人,有本 靖,植木 竜一,クマール アシーシ,シャナブ サフワン,原 隆文(高エネルギー加速器研究機構・加速器研究施設)
○Yasuchika Yamamoto, Hiroshi Sakai, Kensei Umemori, Takayuki Saeki, Shinichiro Michizono, Akira Yamamoto, Hitoshi Hayano, Mathieu Omet, Takeshi Dohmae, Tomohiro Yamada, Ryo Katayama, Hayato Ito, Hayato Araki, Yasushi Arimoto, Ryuichi Ueki, Ashish Kumar, Safwan Shanab, Takafumi Hara (High Energy Accelerator Research Organization)
 
2023年度よりKEKにて、文科省補助金による5カ年計画(MEXT advanced Accelerator element Technology Development (MEXT-ATD))が始まった。最終目標は、ILC(国際リニアコライダー計画)スペックを満足するクライオモジュールを製造・建設し、冷却試験を行うことである。クライオモジュールの3Dモデルは、2013年に出版された技術設計書(TDR)に採用されたType-4 CMをベースとするが、TDR以降、欧州ではEuropean XFELが、米国ではLCLS-IIが建設・運転され、そこから得られた最新の技術や経験も反映させる予定である。また、本計画では、将来展望を見越して、高エネ研・SRFグループとしては初めてとなる高圧ガス保安法の冷凍則に基づく設計にすることが決まっている。本講演では、クライオモジュールの基本仕様、設計に加えて、全体の製造スケジュール、および最近の進捗について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP046

X-band誘電体アシスト加速構造の研究
Reaserch of X-band dielectric assist accelerating structure
○佐藤 大輔(産総研),阿部 哲郎,松本 修二,高富 俊和,明本 光生,東 保男,肥後 寿泰(高エネ研)
○Daisuke Satoh (AIST), Tetsuo Abe, Shuji Matsumoto, Toshikazu Takatomi, Mitsuo Akemoto, Yasuo Higashi, Toshiyasu Higo (KEK)
 
誘電体アシスト加速構造(Dielectric Assist Accelerating (DAA) structure)は、低損失誘電体材料を用いた誘電体同軸構造と誘電体円盤を周期的に配置した内部構造を持ち、TM02nモードで動作する誘電体装荷型加速構造である。DAA構造は、加速構造内壁での導体損を大幅に低減できることが可能であり、その結果、通常の無酸素銅製常伝導加速管と比べてシャントインピーダンスが非常に高いという特徴を有している。一方、DAA構造は、マルチパクタやブレイクダウンによって達成可能な加速勾配が低いという大きな問題がある。これらの問題を解決するため、本研究ではXバンド定在波型DAA構造を開発し、その内部で発生する絶縁破壊現象の物理的理解に取り組んでいる。試験体としては、サファイアを用いた2セルからなるDAA構造を開発した。この加速構造の無負荷Q値は室温で60,000以上と測定され、シミュレーション結果とよく一致した。このDAA構造は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のXバンド大電力試験設備Nextef2を用いて試験を行う予定である。本会議では、XバンドDAA構造の開発状況と進捗状況について発表する。
 
10:00-12:00 
FRP047
p.959
SDTL空洞内壁で発生するマルチパクタ放電を抑制する内壁形状の検討
Study on inner wall geometry to suppress multipactor discharge occurring on the inner wall of SDTL cavity

○伊藤 崇,平野 耕一郎(日本原子力研究開発機構)
○Takashi Ito, Koichiro Hirano (JAEA)
 
J-PARCの主要加速器の一つであるSDTL空洞では、空洞内表面で発生するマルチパクタ放電のため、一部のSDTL空洞において設計定格電力で運転ができない問題が発生していたが、空洞内壁面表面に付着していた埃や油分などを除去することで解決した。この時マルチパクタ発生原因究明のために行ったシミュレーションでは、SDTLの空洞本体やドリフトチューブの形状では、空洞内壁面でのマルチパクタ発生は避けれられないことが判明した。また、同時期に実施した空洞内調査では、シミュレーションでマルチパクタが発生することが示された位置であっても、ポートやスリット形状など空洞内壁が変形する部分があると、その付近ではマルチパクタが発生していないことが判明した。そこで空洞内壁表面の形状を変化させることで定格電力付近でのマルチパクタを抑制できるのか、その可能性を検討したので報告する。
 
10:00-12:00 
FRP048
p.963
KEKにおけるNb空洞の縦型電解研磨処理の進捗
Progress of vertical electropolishing process for Nb cavity at KEK

○後藤 剛喜,早野 仁司(高エネ研)
○Takeyoshi Goto, Hitoshi Hayano (KEK)
 
現在,高エネルギー加速器研究機構(KEK)の超伝導加速器利用促進化推進(COI)棟において,超伝導線形加速器に用いる9セルNb空洞の電解研磨(EP)処理を行うための縦型電解研磨(VEP)設備の整備が進められている。本設備では2022年12月に設置工事が完了し,現在は9セルNb空洞のEP処理の開発が進められている。本講演ではその具体的な内容について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP049

KEK における多層薄膜構造の研究のための DC マグネトロンスパッタ装置
DC magnetron sputtering apparatus for multilayer structure at KEK
○片山 領,佐伯 学行,久保 毅幸,早野 仁司(高エネルギー加速器研究機構),岩下 芳久(京都大学),不破 康弘(日本原子力研究開発機構),佐貫 智行,佐々木 大成(東北大学)
○Ryo Katayama, Takayuki Saeki, Takayuki Kubo, Hitoshi Hayano (KEK), Yoshihisa Iwashita (Kyoto University), Yasuhiro Fuwa (JAEA), Tomoyuki Sanuki, Taisei Sasaki (Tohoku University)
 
We introduced the New DC magnetron sputtering apparatus at KEK to create multi-layer structure on the inner surface of a superconducting radio-frequency cavity. This apparatus has the capability of coating Nb3Sn, NbN, and AlN to the elliptical 3 GHz SRF cavity as well as flat substrates up to the disk of 2-inch diameter. The film formation using the flat sample is useful for searching the ideal condition of film formation with various sputtering parameters. The film-formation test to the flat substrate can be done with changing the temperature of the substrate by heater. Using these functions, we will synthesize Nb3Sn-AlN-Nb and NbN-AlN-Nb structures to flat samples as well as to cavities. In the first stage, we performed the film-formation tests of the Nb and NbN thin-films, and the mixture layer of Nb, Sn and AlN. In addition, we tried to evaluate the sputtering speed and the degree of adhesion on several films of different characteristics. We will report on the film-formation apparatus and the results of several film-formation tests, and will discuss the future plan.
 
10:00-12:00 
FRP050
p.966
超伝導加速空洞における積層薄膜構造の研究
Study of multilayer thin-film structures in superconducting acceleration cavities

○佐々木 大成(東北大学),佐伯 学行,久保 毅幸,片山 領(KEK),岩下 芳久(京都大学),不破 康裕(原子力機構),佐貫 智行(東北大学)
○Taisei Sasaki (Tohoku Univ.), Takayuki Saeki, Takayuki Kubo, Ryo Katayama (KEK), Yoshihisa Iwashita (Kyoto Univ.), Yasuhiro Fuwa (JAEA), Tomoyuki Sanuki (Tohoku Univ.)
 
International Linear Collider(ILC)は建設が検討されている次世代の粒子加速器であり、電子と陽電子を直線型の超伝導加速器で加速することで、重心系エネルギー=250GeVで正面衝突させてヒッグスボソンを生成し、その詳細な性質を低バックグランドの環境下で研究することを主な目的としている。現在、超伝導加速空洞としてはNb製空洞が世界中で標準的に使われている。このNb製空洞は、実験的に加速勾配𝐸𝑎𝑐𝑐 ≈ 50𝑀𝑉/𝑚まで達成している。対して内面に積層薄膜構造を生成した加速空洞では加速勾配𝐸𝑎𝑐𝑐 ≈ 100𝑀𝑉/𝑚まで到達できることが理論的に予言されている。このような大幅な性能向上は、ILC等の素粒子実験分野だけでなく、加速器の小型化など産業応用面でも大きな進歩となる。先行研究によって、平板サンプル上での積層薄膜構造の生成とその有用性は確かめられた。今後は空洞内部の成膜実験に向けて、製膜手法の確立を進める。特に、合金を加速空洞内にスパッタリングで製膜するための混合カソードの開発が重要である。またマグネトロンスパッタリングを用いるため、磁場を考慮したスパッタリングのシミュレーションを行い、生成される膜の分布や膜厚を検討する。これらの実験条件の探索を進めることで効率的に製膜試験を行い、空洞での積層薄膜構造の性能評価を行う。本発表では、これらの加速空洞内部への成膜に関する研究の詳細を報告する。
 
10:00-12:00 
FRP051

改良型cERL入射部プロトタイプカップラーの20kW CW 大電力試験の結果
High power test results of modified cERL injector prototype coupler up to 20kW in continuous wave mode operation
○Nama Pragya(総合研究大学院大学),Kumar Ashish,Miura Takako,Umemori Kensei,Sakai Hiroshi,Kako Eiji,Arakawa Dai(高エネルギー加速器研究機構)
○Pragya Nama (SOKENDAI), Ashish Kumar, Takako Miura, Kensei Umemori, Hiroshi Sakai, Eiji Kako, Dai Arakawa (KEK)
 
Fundamental power couplers are in SRF accelerators transfer RF power to the accelerating cavities, but high-power continuous wave (CW) mode operation generates significant thermal heat load. To address this, the cERL injector prototype coupler’s warm section was modified, including active water cooling for inner and outer conductor, and switching from copper-coated stainless steel to oxygen-free copper for the inner conductor. These changes effectively reduced thermal load: the increase in inner conductor’s temperature dropped from 128 degree C to 3 degree C whereas the increase in outer conductor’s temperature dropped from 57 degree C to 4.7 degree C at 20kW power level in continuous wave (CW) mode. Overall coupler’s temperature also decreased due to improved conduction cooling, demonstrating a highly effective approach to mitigating thermal load in critical coupler components.
 
10:00-12:00 
FRP052

ILC主線形加速器用NbTi伝導冷却超伝導四極・双極複合磁石の開発状況
Development status of a NbTi conduction-cooled superconducting quadrupole magnet combined with dipole correctors for the ILC main linac
○山田 智宏,有本 靖,山本 明,大内 徳人(高エネ研),ソリヤック ニコライ,サイニ アルン(FNAL),堀井 弘幸,野元 一宏(三菱電機)
○Tomohiro Yamada, Yasushi Arimoto, Akira Yamamoto, Norihito Ohuchi (KEK), Nikolay Solyak, Arun Saini (FNAL), Hiroyuki Horii, Kazuhiro Nomoto (MELCO)
 
国際リニアコライダー(ILC)主線形加速器では、超伝導加速空洞が電子・陽電子ビームをそれぞれ125GeVまで加速し、超伝導四極・双極複合磁石がビームの収束および軌道補正の役割を担う。KEKでは、昨年度より5か年計画で、ILCプロトタイプのクライオモジュール1台の設計・製作を進めている。本発表の超伝導磁石はこのクライオモジュールの中央に設置・運用されるものである。超伝導磁石は2023年度に超伝導コイル、コイルケース、鉄ヨークなどといった各要素およびこれらを一体とした磁石の設計が完了し、またクライオモジュールとの取り合い部分については設計が完了しつつある。今後、2024年度から2026年度で磁石の製造および単体性能評価試験を実施する予定である。本磁石はモジュール中で熱伝導により冷却・運用されるため、励磁試験およびトレーニングに使用するクライオスタットとして小型4K冷凍機を搭載した液体ヘリウムフリークライオスタットを新たに製作することにした。さらに、ILCでは上流の加速空洞表面で自然発生する電界放出電子による暗電流シャワーが下流の空洞で加速され、超伝導磁石へ偏向入射することによって超伝導コイルが発熱しクエンチするリスクが指摘されている。そこで、ビームパイプと超伝導電磁石の間に暗電流の吸収体を導入することを検討している。本発表では、上記3つの開発項目についてその現状について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP053
p.971
小型可搬型超高電圧パルス電源の開発状況
Status of development of a compact and transportable ultra high voltage pulsed power supply

○亀崎 広明,廣瀬 幸子,中田 恭輔,徳地 明,須貝 太一(パルスパワー技術研究所),江 偉華(長岡技術科学大学)
○Hiroaki Kamezaki, Yukiko Hirose, Kyosuke Nakata, Akira Tokuchi, Taichi Sugai (PPJ), Weihua Jiang (Nagaoka University of Technology)
 
長岡技術科学大学にはETICO-IVと呼ばれるパルス発生装置がある.これは,ピーク電圧400kV,ピーク電流13kA,パルス幅150ns,繰り返し周波数1Hzの超高電圧パルスを出力することができる.概形は,全長3.9m,幅1.1m,高さ2.7mであり大型と言えよう.一方で産業応用を視野に入れたとき,このようなパルス電源に対しても可搬性が要求されることがある.現在,我々はピーク電圧200kV,ピーク電流20kA,パルス幅100ns,全長1.5m,直径0.3m,繰り返し10Hzを目標に比較的小型なパルス電源システムを開発している.今回,小型可搬型超高電圧パルス電源のシステムの概要と,開発状況についての報告を行う.
 
10:00-12:00 
FRP054

全固体パルスパワー発生器の立ち上がり時間改善
Rise-time improvement for solid-state pulsed power generators
○李 汶茜,須貝 太一,德地 明,江 偉華(長岡技術科学大学)
○Wenqian Li, Taichi Sugai, Akira Tokuchi, Weihua Jiang (Nagaoka University of Technology)
 
In this study, the sharpening capacitor is used to increase the rise speed of the pulse, while the semiconductor switch is used to accurately control the charging and discharging process of the circuit, and the switch is chosen to be a semiconductor switch mosfet with high performance, which achieves a significant reduction in the rise time of the pulse. In the circuit design, the sharpening capacitor is charged by switch S1 control. The function of switch S2 is to close when the current of the inductor L matches the current of the load R, so as to release the energy stored in the sharpened capacitor C2 at the optimal time and realize a fast and effective pulse discharge. The simulation results show that the pulse rise time of the improved circuit is significantly better than that of the conventional CLR circuit under ideal conditions, thus verifying the effectiveness of the design. The experimental part compares and analyzes the impulse response performance of the two circuits by setting a conventional CLR circuit under the same conditions as a control group.
 
10:00-12:00 
FRP055

Waveform optimization of solid-state LTD based pulsed power generator
○Juan Wen, Taichi Sugai, Akira Tokuchi, Weihua Jiang (Nagaoka University of Technology)
 
The use of high repetition frequency and high power pulse to generate cold plasma is an indispensable technical means in the field of nuclear technology, and in industrial applications, it is the pursuit of small and compact equipment, flexible changes in waveform and shorter rise time to ensure the fine nanosecond control of the pulse. The development of solid-state switches has significantly helped the efficiency, output stability, and circuit diversity of high-voltage PPG(Power Electronic Pulse Generator). The SSLTD(Solid State Linear Transformer Driver) developed in this research can superimpose the induced voltage of any number of modules to output by inductive energy storage, which can theoretically achieve quite high output power. At the same time, the FPGA chip is programmed to independently control the pulse frequency and pulse width of each module, which can generate a more complex and refined output waveform, and adjust it through the output feedback to automatically approach the target waveform.
 
10:00-12:00 
FRP056
p.975
SPring-8-II 蓄積リング用磁石
Magnets for SPring-8-II storage ring

○深見 健司(理化学研究所、高輝度光科学研究センター),青木 毅,安積 則義(高輝度光科学研究センター),岩下 大器(量子科学技術研究開発機構),川瀬 守弘(高輝度光科学研究センター),近藤 力,高野 史郎(理化学研究所、高輝度光科学研究センター),田島 美典,谷内 努(高輝度光科学研究センター),西森 信行(量子科学技術研究開発機構),増田 剛正,松原 伸一,山口 博史(高輝度光科学研究センター),渡部 貴宏(理化学研究所、高輝度光科学研究センター)
○Kenji Fukami (RIKEN,JASRI), Tsuyoshi Aoki, Noriyoshi Azumi (JASRI), Taiki Iwashita (QST), Morihiro Kawase (JASRI), Chikara Kondo, Shiro Takano (RIKEN,JASRI), Minori Tajima, Tsutomu Taniuchi (JASRI), Nobuyuki Nishimori (QST), Takemasa Masuda, Shinichi Matsubara, Hiroshi Yamaguchi (JASRI), Takahiro Watanabe (RIKEN,JASRI)
 
次世代光源を目指すSPring-8-IIの蓄積リングはfive-bend achromatラティスで構成される。5台の偏向磁石のうち4台はビーム軸方向に磁場勾配を持つLongitudinal Gradient Bend部と横方向の磁場勾配を持つ偏向-四極複合部とから成り、残り1台は通常タイプの偏向磁石である。消費電力の抑制、電源故障によるダウンタイム解消のため、偏向-四極複合部を除いて偏向磁石は全て永久磁石とする。磁場の温度依存性、放射線による減磁についての対策方針を示す。偏向磁石中の偏向-四極複合部、並びにラティスを構成する四極、六極、八極磁石等の多極磁石は全て電磁石とし、多極電磁石の過度なパッキングを避けてビーム位置モニタ検出ヘッドや放射光吸収体等の真空機器を設置するスペース確保のため、多機能磁石を多数導入する。軌道補正用ステアリング磁場は六極、八極電磁石、カップリング補正用スキュー四極磁場は八極電磁石で発生させる。以上の磁石は10ミクロンオーダーの設置精度が要求される。このため、多極電磁石の精密設置にVibrating Wire Methodを導入する。SPring-8-IIのため進めて来た開発に基づき電磁石及び電源を設計・製作し磁石の精密設置を行なったナノテラス蓄積リングでの経験を踏まえ、SPring-8-IIの実機製作に向けた詳細設計を進めている。
 
10:00-12:00 
FRP057
p.979
KEK 電子陽電子入射器におけるビーム診断ライン用パルスベンドについて
Pulsed bending magnet for the beam diagnostic line at KEK electron/positron injector linac

○横山 和枝,染谷 宏彦(高エネルギー加速器研究機構)
○Kazue Yokoyama, Hirohiko Someya (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器は、異なるビームモード(エネルギー、電荷量など)で4つのリング(PF、PF-AR、KEKB e-/e+)へ同時入射を行っている。各ビームモード調整には、入射器最下流のダンプラインを使用しているが、このラインへの切り替えは直流電磁石を用いている。リアルタイムでのビーム診断やビーム照射実験を同時に行えるように、切り替え電磁石をパルス化し、ビームラインを改造することになった。ここでは、パルス偏向電磁石について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP058
p.983
並列回路で組まれた非線形抵抗器「バリスタ」による加速器用超伝導磁石保護システムの研究
Application of the parallel-scheme “Varistor” to the superconducting accelerator magnet as the energy extraction system

○西 将汰(神戸大学),鈴木 研人,菅野 未知央,中本 建志,荻津 透(KEK),山崎 祐司(神戸大学)
○Shota Nishi (Kobe University), Kento Suzuki, Michinaka Sugano, Tatsushi Nakamoto, Toru Ogitsu (KEK), Yuzi Yamazaki (Kobe University)
 
高エネルギー物理実験のための加速器用超伝導磁石の大口径化・高磁場化はビーム高輝度化の鍵である。しかしこの場合磁石蓄積エネルギーの増大に伴い、クエンチ保護がより重要となってくる。そのため、磁石内部へのエネルギー消失を抑えるため外部抵抗器の抵抗値を大きくし、エネルギー消費量を増やし磁石の温度上昇を抑えたいが、励磁回路部品や磁石材料の耐電圧設計の制限があるため抵抗値には上限が存在する。クエンチ時のヘリウムロスを抑えるため、KEKで製造を進めているHL-LHC向け超伝導双極磁石 D1 実機試験から、従来の固定抵抗器の代わりに並列回路構成の SiC製非線形抵抗器(バリスタ)を導入した。バリスタは、高電圧領域で線形抵抗と比べて大電流を流すことができるので、特に大電流を流す加速器用超伝導電磁石試験では効率よくエネルギーを取り出す事が可能となる。しかし、バリスタがもつIV特性の温度依存性・各個体の性能差は並列回路内で偏流を引き起こす可能性のため、磁石保護や回路への影響を監視しつつリスク評価する必要がある。本発表では、KEKで実施したこれまでのD1実機の励磁試験の結果を通し、並列回路構成のバリスタ保護システムの性能評価を報告する。また、独自に開発したクエンチシミュレーションにおいてバリスタの温度依存性や個体差を再現し、実験結果との比較を通して偏流がもたらす加速器用超伝導磁石保護への影響を考察する。
 
10:00-12:00 
FRP059

SoC FPGAを用いた1チップ電磁石電源制御システムの開発
Development of a single-chip controller for magnet power supply based on SoC FPGA
○渡辺 泰広(日本原子力研究開発機構),中根 正人(アイムス)
○Yasuhiro Watanabe (JAEA), Masato Nakane (Aimusu)
 
シンクロトロンで使用される大容量電磁石電源は, 電流検出器や電圧検出器,IO等を制御するため, 多数のプリント基板やPLCモジュールを使用し,これらを接続するため多数のバスラックや端子台を用いた大規模かつ複雑な電源制御システムが必要となる。このような電源制御システムで問題が生じた場合,異常個所を特定するのは容易ではない。  本論文では,電磁石電源の制御に関わるすべての演算機能を,FPGAとCPUという2つの機能を1つのチップに収納しているSoC FPGAに集約することを提案する。電磁石電源に必要な演算機能の内,低レイテンシが要求されるDuty演算やPWM演算,高速インタロックはFPGA側に実装し,プログラムによる変更が必要となるシーケンス機能や電流パターン演算はCPU側に実装することにより,電源制御システムの大幅な小型化,簡素化を実現する。ここでは,SoC FPGAとDRAM,eMMCなどの各種メモリ,Ethernet,SFPなどの各種インターフェイス回路を実装したメイン基板1枚と,ADC回路を実装したアナログ制御基板1枚,DI,DO回路を実装したディジタル制御基板1枚,合計3枚のプリント基板から構成される試作電源制御システムを製作した。
 
10:00-12:00 
FRP060
p.988
大強度電子ビーム発生用小型パルス電源の開発
Development of compact pulsed power source for high power electron beam generation

○須貝 太一,井上 翔太,寺島 尚紀,小野寺 勇介,加葉田 駿(長岡技術科学大学),徳地 明(パルスパワー技術委研究所),江 偉華(長岡技術科学大学)
○Taichi Sugai, Shota Inoue, Naoki Terajima, Yusuke Onodera, Syun Kahata (Nagaoka University of Technology), Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Laboratory), Weihua Jiang (Nagaoka University of Technology)
 
長岡技術科学大学極限エネルギー密度工学研究センターの“ETIGO-IV”は定格出力電圧400 kV、電流12 kA、パルス幅120 nsの大強度パルス電子ビーム発生装置であり、主に大電力マイクロ波、大強度X線発生の研究で使用され、電子ビームによる殺菌や水処理への応用も期待されている。一方で、本発生装置はサイラトロン、パルストランス、磁気スイッチ、PFLから成る、幅1.1 m、長さ3.9 m、高さ2.7 mの据置型の構造であるため、持ち運びが難しく応用上の制約となっている。そこで現在我々は、同等の出力で重さをETIGO-IVの1/20、サイズを1/10にした小型の可搬型電子ビーム用パルス電源を開発している。本電源は小型可搬型を実現するため、バッテリー駆動の充電器、テスラトランス、ギャップスイッチ、新方式構造のPFLから成る予定でそれぞれについて設計、製作し、特性評価を行った。本発表ではこれらの設計方法や特性評価試験の結果を示す。
 
10:00-12:00 
FRP061
p.991
SuperKEKB入射Kicker電磁石におけるサイラトロン自爆対策
Self firing countermeasures to injection kicker's thyratron in SuperKEKB

○小玉 恒太,内藤 孝,三増 俊広(高エネ研)
○Kota Kodama, Takashi Naito, Toshihiro Mimashi (KEK)
 
SuperKEKB加速器ではビーム輸送路から主リングへのビーム入射のために2対のKicker電磁石が使用されているが,それらのスイッチとして用いられるサイラトロンの自爆が定期的に発生し問題となっている.自爆を避けるため運転前のサイラトロンのエージングやリザーバーヒータ電圧調整等を行なっているが自爆の解決には至っていない.本報告ではSuperKEKB入射Kicker電磁石に使用されるサイラトロンの使用状況,自爆対策等を発表する.
 
ポスター③ (8月2日 3F研修室A)
10:00-12:00 
FRP062
p.995
ニュースバルLCSガンマ線源の高強度化に向けた研究
Research on increasing the intensity of NewSUBARU LCS gamma ray source

○平川 悠人,橋本 智(兵庫県立大学高度研)
○Haruto Hirakawa, Satoshi Hashimoto (LASTI, Univ. of Hyogo)
 
ニュースバル放射光施設ビームラインBL01は世界でも数少ないユーザー利用可能なレーザーコンプトン散乱(LCS)ガンマ線施設である。LCSガンマ線は、エネルギー可変、高指向性、準単色性、偏光性など優れた特徴を持ち、幅広い応用研究に利用されている。発生するガンマ線のエネルギーは、電子エネルギー、レーザー波長、および入射・散乱角度で決まる。典型的なパラメータとして、可視光領域の入射レーザー(532nm)を蓄積リング内に周回する相対論的電子(1.0GeV)と正面衝突させ、約33MeVのガンマ線を発生する。ガンマ線の強度(光子数)は、電子ビーム電流やレーザー出力に比例し、また、電子ビームと入射レーザーのオーバーラップによって決まる。入射レーザーは光学レンズにより集光され、蓄積リング直線部にあるビームウエストで最小径となる。ガンマ線強度を最大化するためには、2つのビームを効率的に衝突させる必要があり、電子ビームと入射レーザーのウエスト位置を整合させることや、レーザー光軸と電子ビーム軌道の良好な一致が不可欠である。BL01では、入射レーザーは約12m伝搬した後、15mに及ぶ蓄積リング直線部で電子と衝突する。このためガンマ線強度向上には高精度の光軸アライメントが必要である。本発表では、入射レーザーのウエスト位置、またビーム軌道とレーザー光軸との間の位置や角度の偏差などによるガンマ線強度への影響を実験および数値計算により評価したので報告する。
 
10:00-12:00 
FRP063
p.1000
軸対称偏光レーザーを用いて発生するガンマ線の空間分布測定
Spatial distribution measurement of gamma rays generated by using an axially symmetric polarized laser

○平 義隆(分子研)
○Yoshitaka Taira (IMS)
 
分子科学研究所の放射光施設UVSORでは、エネルギー750 MeVの電子ビームと波長800 nmのTi:Saレーザーの逆トムソン散乱によって発生するガンマ線源の開発とユーザー利用を行っている。この手法によって発生するガンマ線は、MeV領域でエネルギー可変かつ準単色、高偏光、1 mrad以下の発散角といった優れた特徴をもつ。直線偏光や円偏光のレーザーを使う事で、直線偏光及び円偏光ガンマ線が発生する事は理論的にも実験的にも確認されている。これらレーザーは、ビーム断面で偏光の空間分布は一様である。これに対して、偏光分布が不均一なレーザーも発生する事ができる。具体的な例として、半径方向に偏光が分布しているラジアル偏光や方位角方向に分布しているアジマス偏光が挙げられる。これらは、光軸に対して偏光分布が対象であるために軸対称偏光レーザー、またはベクトルビームと呼ばれる。軸対称偏光レーザーは、空間変調波長板(s-waveplate)を用いて発生可能である。これまでに、軸対称偏光レーザーを用いて発生するガンマ線の空間分布を測定し、直線偏光および円偏光ガンマ線と異なる空間分布が測定された。本年会では、実験の詳細について発表する。
 
10:00-12:00 
FRP064
p.1003
DLAテストスタンドの開発
Development of DLA test stand

○丸 征那(東京大学),佐藤 大輔,澁谷 達則(産総研),坂上 和之(東京大学)
○Sena Maru (The University of Tokyo), Daisuke Satoh, Tatsunori Shibuya (AIST), Kazuyuki Sakaue (The University of Tokyo)
 
レーザー誘電体加速(DLA)は従来よりも小型かつ高加速勾配を実現できる新しい加速手法である。加速に用いる構造体が加速電磁波の周波数が高くなるほどに小型になるとともに、誘電体が金属と比較して2桁程度高い破壊閾値を持つことに起因する。他にはない特徴を有するために各国で研究開発が進められているが、実証試験例は少なく、SiO2のグレーティング構造と近赤外のレーザーパルス用いた加速[1,2]、Siのピラー構造と中赤外域のレーザーパルスを用いた加速[3,4]が報告に大別される。 我々はこのDLA技術を加速器として活用するために、レーザー誘電体加速テストスタンドの構築を開始した。加速器として再現性良く、安定してDLA技術が使えるように研究開発を進めていく予定である。本講演では、テストスタンドの構築状況、誘電体加速構造設計及び今後の展望について報告する。 [1] K.P.Wootton, et al., Optics letters, 41, 2696-2699(2016). [2] J.Breuer, et al., Physical Review Special Topics-Accelerators and Beams, 17, 021301(2016). [3] T.Chlouba, et al. Nature, 622, 476-480(2023). [4] P. Broaddus, et al., Physical Review Letters, 132, 085001(2024).  
 
10:00-12:00 
FRP065
p.1006
転送行列を用いたレーザー駆動イオン加速のビーム輸送シミュレーションの開発
Development of beam transport simulation of laser-driven ion acceleration using transfer matrices

○村川 真宙(九州大学大学院),小島 完興(量研関西研),大石 沙也加(奈良女子大学 ),松本 悠椰(九州大学大学院),ヂン タンフン,畑 昌育,榊 泰直(量研関西研)
○Mahiro Murakawa (Kyushu University), Sadaoki Kojima (QST KPSI), Sayaka Oishi (Nara Woman's University), Haruya Matsumoto (Kyushu University), Thanhhung Dinh, Masayasu Hata, Hironao Sakaki (QST KPSI)
 
レーザー駆動イオン加速における一般的な加速メカニズムであるTNSA機構よるビームは、極めて短時間バンチにて幅広いエネルギーでマクセル分布に従うビーム分布かつ、エネルギー別の発散角をもって生成されるという特徴を持つ。QSTでは、2023年にTNSA機構を使ったレーザー駆動イオン加速入射器の原型機を完成させたが、原型機のコミッショニング時の磁場設定パラメータ調整などには、TNSA機構にて発生されるビーム特性を軌道を現場ですぐに確認することができ、直ちにビーム軌道調整が出来る即応性の高いシミュレーターが必要であるが、TraceWinなどの一般的なビームシミュレーターは単一エネルギーの入力しか出来ずコミッショニング効率が悪い。そこで、我々は、転送行列を用いてビーム計算を即応性が高いシミュレーターを開発することにした。今回は、我々が考えている開発と進捗について報告したい。
 
10:00-12:00 
FRP066
p.1010
ガフクロミックフィルムを用いたKEK 加速器放射線影響評価のための調査
Investigation of radiation effects assessment of KEK accelerator using Gafchromic Film

○田中 窓香,岩瀬 広,岩渕 周平,塩澤 真未(KEK)
○Madoka Tanaka, Hiroshi Iwase, Shuhei Iwabuchi, Mami Shiozawa (KEK)
 
高エネルギー加速器研究機構(KEK)の加速器で、ビームラインコンポーネントの損傷を防ぐための適切な線量把握のために、放射線暴露で変色するガフクロミックフィルムEBT3(0.01 - 10 Gy)とHD-V2(10-1000 Gy)を導入した。フィルムの色の変化と照射線量を対応付けるため、コバルト60 によるガンマ線を用いた校正照射を行い、校正曲線を作成した。また、実際にKEK 内の3 つの加速器(Linac、SuperKEKB、Photon Factory)でEBT3 とOSL 線量計、HD-V2 とRadFET を一緒に照射し、校正照射結果と比較した。EBT3 を使った測定では、殆どの点で3 σ内に入っており、加速器内で線量を測定するのには十分な結果が得られらたと考えられる。対してHD-V2 は加速器内での測定結果が校正曲線から大きく逸脱した。これはRadFET の特性が大きく関係していると考えられる。加速器運転による電子機器の破壊について正確に把握するためには、RadFET とガフクロミックフィルムの照射結果を精査し、十分に比較する必要がある。
 
10:00-12:00 
FRP067
p.1015
J-PARC MR 第一電源棟における機器冷却水アップグレード計画
Equipment cooling water upgrade plan at J-PARC MR D1 Power Supply Building

○白形 政司,大越 隆夫,久保田 親,西川 雅章(高エ研/J-PARC),国安 祐(三菱電機システムサービス)
○Masashi J. Shirakata, Takao Oogoe, Chikashi Kubota, Masaaki Nishikawa (KEK/J-PARC), Yu Kuniyasu (Mitsubishi Electric System & Service)
 
茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCでは、主リングのビーム強度を上げるために主電磁石をはじめとした各種電磁石電源の更新、高周波加速空胴の増設等を行っている。これに合わせ、第一電源棟ではこれまでに空調機のアップグレードを実施したが、今後冷却水の流量が足らなくなることが予測されている。電源棟は主リングに沿ってメインとなる三棟があり、それぞれが主電磁石電源の一部の他にビーム入射路と入射機器の電源を第一電源棟、遅い取り出し機器の電源を第二電源棟、速い取り出し機器と高周波加速空胴の電源を第三電源棟がそれぞれ受け持っている。各電源棟の冷却水設備は当初の設計に合わせて最適化されており、MRビーム強度増強のために棟内に設置される機器に大きな変更があったため、第一電源棟では近い将来冷却水の流量が不足することが明らかになった。電源棟は三台の冷却水ポンプを有し、常時二台を運転、一台を予備機とする運用を執っている。冷却水流量の増加にはポンプそのものをサイズアップする選択肢もあるが、その場合一度にそれなりの規模の改造をしなければならない。諸般の事情からそれは難しいので、ポンプ三台運転を可能にすることで流量不足解消を目指すこととした。2023年度から具体的な改造を始め、2024年度中にはとりあへずのポンプ三台運転が可能となるようにする。今後の対応も含めて、冷却水アップグレード計画をここで紹介する。
 
10:00-12:00 
FRP068
p.1019
北カウンターホールにおけるハドロンホール方式の活用
Utilization of the hadron hall method in the north counter hall(KEK)

○田中 伸晃(KEK)
○Nobuaki Tanaka (KEK)
 
北カウンターホールにおけるハドロンホール方式の活用を紹介する
 
10:00-12:00 
FRP069

PFリング内の放射線強度測定を目的とした遠隔電動台車の開発
Development of a remote-controlled electric cart for measuring radiation intensity in the PF ring
○高巣 晃(KEK),路川 徹也(東日本技術研究所),塩澤 真未,帯名 崇,平木 雅彦(KEK)
○Akira Takasu (KEK), Tetsuya Michikawa (e-JAPAN IT Co.,Ltd.), Mami Shiozawa, Takashi Obina, Masahiko Hiraki (KEK)
 
運転中の加速器リング内は放射線の発生があり人間が立ち入ることが出来ない。そのためセンサーをリング内の必要箇所に取り付けてモニタリングを行っている。しかし、固定式のセンサーで全ての箇所をモニタリングするには膨大な数の観測機器 (現在のPFで200~300点、KEKBで数千点) が必要であり全ての箇所にセンサーを取り付けるのは不可能である。そのため、人間に代わって安全に加速機リング内を巡回できる移動式のモニタリングロボットの開発が必要とされてきた。本研究では運転中のリング内の放射線強度マップ測定を行い、安全かつ安定した加速器の運用をサポートするための遠隔電動台車の開発を行っている。リング内で走行する台車の設計を行うにあたり、ご動作でリング内の機器を破損させない事に重点を置いた。軽量かつ車輪の駆動パワーを抑えた試験的な台車の開発を行い、実際に運転中のPFリング内を走行させるに至っている。現在は走行試験を重ねながらより大型の台車の開発を進めており、運転中のリング内を自由に走行してモニタリングできるシステムを目指している。
 
10:00-12:00 
FRP070
p.1022
KEK電子陽電子入射器における 改良型PINフォトダイオード放射線カウンターを用いた測定システムの構築
Construction of the measurement system usnig an improved PIN photodiode radiation counter at the KEK electron/positron injector linac

○佐武 いつか,岩瀬 広,諏訪田 剛(KEK),草野 史郎(三菱電機システムサービス株式会社),浅野 大輔,時吉 正憲(大成建設株式会社 原子力本部 原子力プロジェクト部 放射線チーム),松本 佳宣(慶應義塾大学理工学部物理情報工学科),石垣 陽(電気通信大学情報理工学研究科),佐藤 雅俊(ヤグチ電子工業株式会社)
○Itsuka Satake, Hiroshi Iwase, Tsuyoshi Suwada (KEK), Shiro Kusano (MSC), Daisuke Asano, Masanori Tokiyoshi (TAISEI CORPORATION, Project Planning Department, Nuclear Facilities Division), Yoshinori Matsumoto (Keio University, Faculty of Science and Technology, Department of Applied Physics and Physico-Informatics), Yo Ishigaki (The University of Electro-Comminications, Research Center for Realizing Sustainable Societies), Masatoshi Sato (YAGUCHI ELECTRIC CORPORATION)
 
放射線のリアルタイムモニタリングを可能とする、簡易放射線カウンター(Radiation-Watch社、商標PocketGeiger/PINフォトダイオード線量計)の開発版を用いたシステム構築と、動作試験を実施した。本システムはラズベリーパイを用いた、小型で可搬性を備えたシステムである。線源を用いた校正試験の結果から、実際の放射線量を決定づける。KEK電子陽電子入射器運転中及び運転停止時の放射線量測定試験を実施した。KEK電子陽電子入射器における、加速器運転中及び停止時の残留放射線量を測定することで、機器だけでなく放射線環境下での作業に関わる人の安全管理に役立てる。本稿では、本システムを用いた測定試験の結果について詳細を報告する。
 
ポスター③ (8月2日 3F交流室A)
10:00-12:00 
FRP071
p.1026
SACLA における 476MHz 半導体増幅器の導入
Introducing solid state amplifiers at SACLA

○岩井 瑛人(JASRI, RIKEN),前坂 比呂和(RIKEN, JASRI),大島 隆(JASRI, RIKEN),稲垣 隆宏(RIKEN, JASRI)
○Eito Iwai (JASRI, RIKEN), Hirokazu Maesaka (RIKEN, JASRI), Takashi Ohshima (JASRI, RIKEN), Takahiro Inagaki (RIKEN, JASRI)
 
兵庫県の大強度放射光施設 SPring-8 にあるX線自由電子レーザー施設SACLAは、8 GeV と 800 MeV の2つの線型加速器からなり、2つの硬X線FELビームライン, 1つの軟X線FELビームライン, そして SPring-8 蓄積リングへビームを供給している。高い安定度と信頼性が求められる476 MHzブースター空洞用 100 kW パルス高周波源として、これまで Inductive Output Tube (IOT) を用いてきたが、経年変化に伴う可用域の減少や保守部品の入手性の悪化から、IOT に変えて半導体増幅器の導入を進めている。半導体増幅器は多数の増幅モジュールの出力を合成する構成のため、部分的な故障があっても運転継続が可能であり、またモジュール単位での交換も容易である。また、IOTのように高電圧を用いないという点においても、障害耐性が高いことが期待される。8 GeV 線型加速器では、既存のIOT と切替可能な形で半導体増幅器を導入し高周波源を二重化して、昨年度初頭から半導体増幅器での運転を継続している。また、800 MeV 線型加速器に導入する半導体増幅器の製作も完了し、実機導入に先立って試験運転を進めている。これら半導体アンプの導入状況と性能, 安定度などの測定結果について紹介する。
 
10:00-12:00 
FRP072

KEK ATF リニアックおよびダンピング リング クライストロン高出力 RF 場の位相と振幅の安定性研究ステータス レポート
KEK ATF Linac and Damping Ring klystrons High-Power RF field phase&amplitude stability study status report
○ポポフ コンスタンティン,アリシェフ アレクサンダー,照沼 信浩(High Energy Accelerator Research Organization (KEK), 1-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan)
○Konstantin Popov, Alexander Aryshev, Nobuhiro Terunuma (High Energy Accelerator Research Organization (KEK), 1-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan)
 
KEK Accelerator Test Facility (ATF) conducts beam instrumentation R&D for International Linear Collider (ILC) project. ATF includes 1.3 GeV normal conductive S-band Linac and Damping Ring (DR). There are 9 S-band pulsed klystrons at Linac, which supply High-Power RF to accelerate electron beam up to 1.3 GeV, and 1 CW klystron at DR. Linac and DR High-Power RF field stabilization will improve the ATF performance. As a first step, the RF field phase and amplitude stability was measured. This report demonstrates KEK ATF Linac and DR High-Power RF field phase and amplitude stability measurement results. Also, a solution to stabilize the RF field is discussed.
 
10:00-12:00 
FRP073
p.1030
J-PARCリニアック低電力高周波制御システムの現状
Current status of LLRF system for J-PARC LINAC

○二ツ川 健太,Cicek Ersin,方 志高,福井 佑治,溝端 仁志(高エネルギー加速器研究機構),佐藤 福克(株式会社NAT),中野 秀仁(日本原子力研究開発機構),Delialioglu Osman(総研大)
○Kenta Futatsukawa, Ersin Cicek, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Satoshi Mizobata (KEK), Yoshikatsu Sato (NAT), Hideto Nakano (JAEA), Osman Delialioglu (SOKENDAI)
 
J-PARCリニアックにおける低電力高周波制御(LLRF)システム内のデジタルフィードバック・フィードフォワード(DFB & DFF)システムは, 高精度の空洞電界を実現し, 要求された出射運動量の安定性を実現させるために重要な役割を成す。特に, 大電流でビーム負荷が大きな加速器では, ビーム負荷補償を行うDFFが空洞電界の安定度を担保するために不可欠となる。これまで, 適応型のビーム負荷保障システムを開発と実装により, 電界の安定度が向上した。しかし, 中間パルスを間引かれたビームを使用する場合は, 要求性能を満たすことができない課題があった。そのため, 間引き対応のビーム負荷補償システムを開発し, 出力パワーを増加させずに電界の安定度を損なわないようにするためのビーム試験を実施し, 良好な結果を得た。また, LLRFシステムの高度化を図るため, メンテナンスからの立上げ時に測定値や設定値の確認, パラメータ調整などを自動で実施して, レポートを作成するプログラムを開発した。これにより, 担当者の労力の削減と確実性の向上に取り組んでいる。 本講演では, 現在のJ-PARCリニアックのLLRFシステムの現状をする予定である。
 
10:00-12:00 
FRP075
p.1035
1.3GHz 30MW パルスクライストロンの開発
Development of 1.3GHz 30MW pulsed klystron

○鈴木 健一郎,藤井 令史,大久保 良久(キヤノン電子管デバイス株式会社)
○Kenichiro Suzuki, Satoshi Fujii, Yoshihisa Okubo (Canon Electron Tubes & Devices Co., Ltd.)
 
キヤノン電子管デバイスでは、L-bandの電子加速器用RF源として周波数1.3GHz-ピーク出力30MWで動作するパルスクライストロンの開発を行っている。初号機として開発中のE37507,Bではピーク出力25MW-平均出力8kW-RFパルス幅10μsの仕様にて設計・製作を行っている。SACLA向けL-bandパルスクライストロンであるE37612(周波数1.428GHz-ピーク出力30MW-RFパルス幅6μs)を基本設計とし、RF周波数変更と長パルスでの安定動作を図り、ビーム電圧260kV-ビーム電流239Aでピーク出力25MWを見込んだ。L-band加速器はS-band加速器より高デューティーでの動作に適しており、RF源に対しても高デューティーの要求があることから、本設計では平均出力の60kW以上への拡張を視野に入れたものとするとともに、ビーム電圧280kV-ビーム電流267Aでピーク出力30MWを見込める拡張性のある設計とした。現在は初号機を製作中であり、2024年6月に初期評価を行う予定である。本発表では初号機設計の詳細と初期評価の試験結果について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP077
p.1038
KEKでのITN(ILC Technology Network)クライオモジュール試験用高周波系の開発
Development of RF System for cryomodule testing in the ILC Technology Network at KEK

○松本 利広,明本 光生,荒川 大,オメット マチュー,片桐 広明(高エネ研),ジョシ プラカシ(総研大),中島 啓光,松本 修二,三浦 孝子,道園 真一郎(高エネ研)
○Toshihiro Matsumoto, Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Mathieu Omet, Hiroaki Katagiri (KEK), Prakash Joshi (SOKENDAI), Hiromitsu Nakajima, Shuji Matsumoto, Takako Miura, Shinichiro Michizono (KEK)
 
国際リニアコライダー(ILC)は、超伝導加速空洞を用いた線形加速器として世界協力による技術開発が積み重ねられている。2023年度よりILC国際推進チーム(IDT)のもとでILC Technology Network(ITN)として国際協力で研究開発に取り組みを行っており、具体的にはKEKの超伝導加速器利用促進化推進棟(COI)内にILCの要求を満たす超伝導空洞を組み込んだクライオモジュールの製作並びに試験施設を構築、評価試験を目指して準備を進めている。本発表では、このクライオモジュール試験設備に向けた高周波系の開発状況について報告を行う。
 
10:00-12:00 
FRP078

長尺ケーブル仕様質量分析計の開発
Development of a mass spectrometer with a long cable
○和田 薫,志賀 隆史,岸川 信介(東京電子),Chester Sam(インフィコン),柳橋 亨,神谷 潤一郎(J-PARC/JAEA)
○Kaoru Wada (TEOL), Takashi Shiga, Shinsuke Kishikawa (TOEL), Sam Chester (INFICON), Toru Yanagibashi, Junichiro Kamiya (J-PARC/JAEA)
 
J-PARC RCSでは安定したビーム運転を行うために、ビームラインの圧力だけではなく残留ガス成分の把握が重要となる。このため、真空計に加えて質量分析計を設置して真空状態の観察を行っている。ビーム強度が増すにつれてビームパイプ周辺の放射線量が増加しており、その影響で質量分析計が異常停止するようになってきた。質量分析計はセンサーヘッドとセンサーコントローラで構成されており、コネクタにより直接接続されている。異常原因はセンサーコントローラ内部の電子部品の放射線による誤動作であることが判っており、耐放射線対策が必要となっている。センサーヘッドはビームパイプに直接設置されており、そこにコネクタ接続されたセンサーコントローラの放射線防護対策は非常に難しい。このため対策として、センサーコントローラを放射線の影響を受けない場所へ移設し、センサーヘッドとはケーブル接続することとした。しかし、複雑な制御・微弱な電流を扱うため質量分析計ではケーブル接続仕様の製品が無かった。さらに、放射線の影響を受けない場所に移設するにはケーブル長が15m以上の長尺仕様が必要となるため、新規開発することとした。試作機を製作し、J-PARC RCSのビームラインに設置して動作確認を行っている。その現状について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP079
p.1041
SuperKEKB用新規コリメータヘッド素材候補の調査
Investigation of new collimator head material candidates for SuperKEKB

○照井 真司,石橋 拓弥(高エネ研),ナトチー アンドリー(ビーエヌエル),リュウ チングアン(ハワイ大学),金 秀光,白井 満,ヤオ ムーリー,柴田 恭,阿部 哲郎(高エネ研)
○Shinji Terui, Takuya Ishibashi (KEK), Andrii Natochii (BNL), Qingyuan Liu (), Xiuguang Jin, Mitsuru Shirai, Mulee Yao, Kyo Shibata, Tetsuo Abe (KEK)
 
SuperKEKBのコリメータは、素粒子検出器のビームバックグラウンドノイズの低減と、重要機器の保護のために使用されている。現状のSuperKEKBでは、予兆現象がほとんどなく、突然起きるビームロスの課題に直面している。このビームロスは、sudden beam loss(SBL)と呼ばれ、時にはコリメータにビームが当たり、コリメータを損傷させてしまうことがある。このSBLの原因を突き止めるために、international taskforceが企画され、活動しているが未だ原因は不明のままである。損傷したコリメータは、損傷前のコリメータより、ビームバックグラウンドノイズの低減能力が著しく低下し、影響が大きい場合には、運転を中断してコリメータヘッドを交換する作業をする必要が出てくる。このため、堅牢なコリメータヘッドの素材が求められている。本学会では、SuperKEKB用新規コリメータヘッド素材候補と考えている銅含有のグラファイトの高周波領域での導電性、2次電子放出率、光刺激脱離等の測定結果と、銅含有のグラファイト素材を用いた場合のバックグラウンドのシミュレーション等の計算結果について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP080
p.1047
SPring-8-II真空システムにおける圧力分布シミュレーション
Simulation of pressure distribution in SPring-8-II vacuum system

○上田 庸資,出羽 英紀,正木 満博,増田 剛正(JASRI),大石 真也,小路 正純(JASRI, 理研),鈴木 伸司(JASRI),高野 史郎,田村 和宏(JASRI, 理研),谷内 友希子(JASRI),渡部 貴宏(JASRI, 理研)
○Yosuke Ueda, Hideki Dewa, Mitsuhiro Masaki, Takemasa Masuda (JASRI), Masaya Oishi, Masazumi Shoji (JASRI, RIKEN), Shinji Suzuki (JASRI), Shiro Takano, Kazuhiro Tamura (JASRI, RIKEN), Yukiko Taniuchi (JASRI), Takahiro Watanabe (JASRI, RIKEN)
 
SPring-8-IIは大型放射光施設SPring-8の次世代アップグレード計画である。消費エネルギー削減を含む施設のグリーン化と最小エミッタンス50pmradという世界最高レベルの性能の同時達成を目指している。 SPring-8-IIの多極磁石は高い磁場勾配を省電力で得られるよう磁極間隔を狭めているため、新規製作する真空チェンバの口径は小さくなり、排気コンダクタンスも低下する。加えて多数の磁石を密に配置するため、光吸収体等の真空機器の配置に利用可能な空間も減少する。これらの条件を満たすように、SPring-8-II真空システムでは小口径のステンレス製チェンバ及び分散配置の小型光吸収体を採用し、かつ光刺激脱離ガスの主な放出源である光吸収体の近傍にNEGポンプを設置することで高効率の排気系の実現を検討している。さらに本計画では周長約1,435mの蓄積リング全体を約1年という短期間で更新する必要があるので、作業の効率化のために真空チェンバの現場ベークは行わず、プリベークと蓄積リングトンネル内へ据付後の粗排気、NEG活性化のみで真空立上げを実施する計画である。 これらを考慮した新規真空システムの設計を進めつつ、真空機器の材質、表面処理、並びに配置の最適化を目的としてSynRad及びMolFlowを用いたモンテカルロシミュレーションによるSPring-8-II真空システムにおける圧力分布計算を行った。本発表ではシミュレーション及びその検討結果について報告を行う。
 
10:00-12:00 
FRP081

金属3DプリンタによるJ-PARC/ COMETフェーズ-1用アルミ合金製ビーム窓の開発
Development of 3D-printed beam windows for J-PARC/ COMET phase-1 bridge solenoid part
○栗原 謙太(金属技研㈱),牧村 俊助(高エネ研),髙橋 正和,設楽 弘之(金属技研㈱),深尾 祥紀(高エネ研),長澤 豊(金属技研㈱),亀井 直矢,吉田 誠(高エネ研),尾ノ井 正裕(金属技研㈱)
○Kenta Kurihara (MTC), Shunsuke Makimura (KEK), Masakazu Takahashi, Hiroyuki Shidara (MTC), Yoshinori Fukao (KEK), Yutaka Nagasawa (MTC), Naoya Kamei, Makoto Yoshida (KEK), Masahiro Onoi (MTC)
 
ミューオン電子転換過程の探索を目指すJ-PARC/ COMET(COherent Muon to Electron Transition)実験では、ビームパワーが0.3kWのフェーズ-αを実施した。その後ビームパワーが3.2kWのフェーズ-1実験を進める。フェーズ-α用では、Ti64積層造形による球殻状のビーム透過部を持つ窓厚t0.5-Φ270およびΦ220のJISフランジ規格のビーム窓を開発、ビームラインに設置されている。本開発対象であるフェーズ-1用のソレノイド内筒部用窓については、3気圧の差圧に対する耐圧が要求され、また環境温度は-60℃~室温となっている。同時に設置場所が狭所であり、ビーム窓を備える外径250のアルミ合金製-内筒部をボア径260の内部に設置する必要がある。従来のビーム窓では、輸送するべきミューオンがフランジ部で停止してしまうため、球殻状のビーム透過部をアルミ積層造形により製作、アルミ合金製の内筒部に直接、溶接するビーム窓の開発を進めている。構造検討、製作方法の検討(造形、HIP、研磨/厚み調整)、CADモデル化、構造解析、ビーム透過性能の解析、その後ビーム窓の製作を行う。また、実機窓の強度を確認するため、積層造形で製造した試料に関して、降伏応力を確認するための引張試験、溶接性の確認のため溶接試験を行う。本発表では、金属3DプリンタによるJ-PARC/COMETフェーズ-1用アルミ合金製ビーム窓の開発について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP082
p.1051
PFリングのNEGコーティングビームダクトの真空圧力履歴
Long-term trend of vacuum pressure at NEG-coated beam duct of PF-ring

○野上 隆史,本田 融,谷本 育律,内山 隆司,金 秀光,佐々木 洋征(KEK)
○Takashi Nogami, Tohru Honda, Yasunori Tanimoto, Takashi Uchiyama, Xiuguang Jin, Hiroyuki Sasaki (KEK)
 
PFリングでは2018年夏季停止期間中に挿入光源U#19を新しいAPPLE-II型のアンジュレーターに更新する改造作業が行われた。新しいU#19ではアルミニウム合金製のビームダクト内面に非蒸発型ゲッター(NEG)コーティングが施されており、真空作業後にビームダクトのベーキング及びNEG活性化を行っている。その後2023年までの5年間PFリングの運転が行われ、U#19部分の真空圧力の履歴を確認したところ、2021年から圧力上昇している傾向が見られた。ビームダクト内面に施したNEGコーティングの飽和による排気速度の低下が原因と考えられたため2023年夏季停止中にNEGの再活性化を行った。U#19更新以降の真空圧力の履歴とNEG再活性化の効果について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP083
p.1054
BPMとQマグネットを分離する新しいサポート
New support for BPM to separate from Q-Magnet

○姚 慕蠡,照井 真司,植木 竜一,白井 満,山岡 広,柴田 恭,末次 祐介,石橋 拓弥,大澤 康伸,古澤 将司,川本 崇,大西 幸喜,増澤 美佳,中村 衆(KEK)
○Mulee Yao, Shinji Terui, Ryuichi Ueki, Mitsuru Shirai, Hiroshi Yamaoka, Kyo Shibata, Yusuke Suetsugu, Takuya Ishibashi, Yasunobu Ohsawa, Masashi Furusawa, Takashi Kawamoto, Yukiyoshi Ohnishi, Mika Masuzawa, Shu Nakamura (KEK)
 
In SuperKEKB, the beam orbit distortion was found to be positively correlated with the beam current. It was found that in the electron ring (HER) the injection efficiency was improved by the correction of the horizontal beam orbit in the Local Chromaticity Correction region where a pair of strong sextupole magnets is installed. One of the possible causes is the dipole kick from Q-magnet generated by the deformation of the beam pipe. Since the beam pipe with beam position monitor (BPM) are fixed to the Q-magnet, the position of the Q-magnet will also be shifted when the beam pipe is deformed by SR heating. Besides, the β function in this region is large, so even a small kick can cause a large orbit distortion. Therefore, a new support was designed for BPM to separate it from Q-magnet. A prototype was produced and installed for the BPM at the Q-magnet QLY3LE in HER. During the shutdown period, the temperature of the cooling water was adjusted to observe the deformation of the beam pipes and Q-magnets to check their relation. During operation from February 2024, the preliminary results showed that the new support successfully prevented the Q-magnet from moving with the beam current.
 
10:00-12:00 
FRP084
p.1058
J-PARC MR周回リングのビーム運転中の残留気体分子測定 I
Measurement of residual gas molecule during beam operation in J-PARC MR ring I

○魚田 雅彦(KEK/J-PARC)
○Masahiko Uota (KEK/J-PARC Center)
 
大強度陽子加速器施設J-PARCのMRシンクロトロンの周回リング内の真空の残留気体分子分布測定は、大強度ビーム運転中は機器故障の恐れからこれまで満足に行われて来なかった。2023年10月に、リングに対しほぼ直結する位置で市販の一般的な四重極子質量分析計(QMS)を接続し、数週間に1回の頻度で間欠的に数分から1時間程度の測定を続けたところ、当初の予想に反して放射線で故障することなく半年以上測定を行うことに成功し現在も稼働しているので、その状況と測定で得られた気体分子分布についての知見に関して途中経過の形ではあるが報告する。
 
ポスター③ (8月2日 3Fホワイエ)
10:00-12:00 
FRP085
p.1064
自己場支配領域におけるバンチドビーム輸送のエミッタンス増大計算
Emittance growth calculations for bunched beam transport in self-induced electromagnetic fields dominated region

○地村 幹(原子力機構)
○Motoki Chimura (JAEA)
 
大強度イオン線形加速器の初段部に代表されるように,ビームが高密度かつ低速の場合には,ビームが単位距離を進む間に自己場から大きな力積を受け取るため,急速なビーム分布の変化が引き起こされる。自己場が有意に働くことによってハミルトニアンが線形項のみで表すことができない場合,その摂動項によって作用変数分布が変動し,エミッタンスの増大を引き起こす可能性がある。特に大強度イオン加速器におけるエミッタンスの増大は,ビーム透過率の悪化及び機器の高放射化を引き起こし,大強度かつ高安定な加速器運転を阻害する。本研究では,大強度イオン線形加速器J-PARCリニアックの上流に位置する3 MeVビーム輸送路をモデルとしたビーム軌道計算を行うことで,自己場支配領域におけるエミッタンス増大の評価を実施した。本ビーム輸送路は数 m程度と短く周期的な収束構造を持たないことに加え,時間方向と横方向のビーム幅に大きな差はない球体に近いバンチドビームであるため,周期解や2次元ビーム形状を仮定しない解析方法が要求される。よって,本研究では自己場支配領域におけるエミッタンス変動についての理論式を提案し,その計算から既存Particle-in-Cellコードとの比較を示した。さらに,時間反転計算を行うことによってモニタ出力から初期分布を再構成した場合及び,非線形外場を導入した際の位相空間分布の変化についても同様の計算から評価を実施した。
 
10:00-12:00 
FRP086
p.1070
一様磁場と自己電場により駆動される単粒子軌道の初速度に対する依存性
Initial velocity dependence of single particle trajectory driven by uniform magnetic field and self-electric field

○山本 英億(長岡技科大),朴 英樹(阿南高専),曾我 之泰(金沢大学),高橋 一匡,佐々木 徹,菊池 崇志(長岡技科大)
○Hideyasu Yamamoto (Nagaoka University of Technology), Youngsoo Park (NIT, Anan College), Yukihiro Soga (Kanazawa University), Kazumasa Takahashi, Toru Sasaki, Takashi Kikuchi (Nagaoka University of Technology)
 
重イオン慣性核融合などで必要とされる大電流ビームは、その空間電荷効果によって非線形な挙動を示し、質の劣化やハロー粒子の生成などを引き起こす。このため、Malmberg-Penning trapのように軸方向に一様な磁場をかけて電子を閉じ込めた非中性プラズマを用いて荷電粒子の挙動を検討することが行われている。荷電粒子は一様磁場の空間内で、粒子の速度にも磁場にも垂直な方向にローレンツ力を受け、ラーマー半径でサイクロトロン運動する。磁場に加えて電場が存在する空間内では、サイクロトロン運動しながら、案内中心が磁場に対して垂直に移動するドリフト運動が起こる。ラーマー半径は電場と磁場の強さだけでなく、荷電粒子の初速度によっても変化し、ラーマー半径が0となる条件が存在する。さらに、このラーマー半径が0となる初速度を基準として、粒子軌道の取りうる範囲が初速度によって分類できることを確認した 。円筒座標系でz軸方向の外部磁場と一様電荷による電場の場合、z軸方向に対して垂直な(r, θ)面で荷電粒子はサイクロトロン運動しながら一様電荷の中心の周り をドリフト運動する。このとき、ラーマー半径が0となる運動が起こる条件を解析的に導出し、数値解析で粒子軌道を確認した。また、その際の初速度の条件を基準として、初速度を変化させた場合の荷電粒子のサイクロトロン運動の取りうる軌道を比較して違いを調べた。
 
10:00-12:00 
FRP087
p.1074
SuperKEKBにおけるベータトロンチューンの振幅依存性
Amplitude detuning in SuperKEKB

○杉本 寛,大西 幸喜,森田 昭夫,小磯 晴代(高エネ研)
○Hiroshi Sugimoto, Yukiyoshi Ohnishi, Akio Morita, Haruyo Koiso (KEK)
 
SuperKEKBのは電子-陽電子の円形衝突型加速器であり、その大きな特徴としてビームを衝突点で非常に強くを絞り込むという点が挙げられる。衝突点のベータ関数を小さくするとそれに反比例して衝突点近傍でのベータ関数が大きくなる。そのため、最終収束電磁石のフリンジ磁場、対向ビームラインからの漏れ磁場などの非線形磁場がビームの運動に強く影響を与え、力学口径を縮小させる。本報告では、非線形効果の一つであるベータトロンチューンの振幅依存性に関して行なった数値シミュレーションとビーム測定の結果について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP088
p.1078
ATF最終収束ビームラインの高度化に向けたウェイク場低減効果の定量的評価
Evaluation of wakefield mitigation effects for upgrading the ATF final focus beamline

○阿部 優樹,久保 淨,照沼 信浩,奥木 敏行(KEK)
○Yuki Abe, Kiyoshi Kubo, Nobuhiro Terunuma, Toshiyuki Okugi (KEK)
 
KEK-ATFでは国際リニアコライダー(ILC)に求められる極小ビームを実現するための最終収束技術の検証とビーム制御、計測技術の研究開発が進められている。ATFは極小ビームに対するウェイク場の影響を詳細に研究できる理想的な研究環境である。ATFではバンチ強度を上げた際にビームサイズが増大するという現象が観測されており、その主たる要因はウェイク場とされている。評価の結果、ATFビームラインのベータ関数が大きな区間にインストールされている真空フランジや空洞型BPMなどの影響が強いことが示された。ウェイク源のミスアライメントに起因するウェイク場の影響は可動式のウェイク源によるカウンターキックを作用させることで、ある程度補正が可能である。しかしながら、完全な補正はできないためビームライン上のウェイク源を低減することも非常に重要である。現在、ウェイク場の影響を低減するためのビームラインの高度化の検討を進めている。そこで主要なウェイク源の一つである真空フランジに対して内部シールドを取付け、ウェイク場の低減効果の確認をすることにした。ビーム軌道の応答やビームサイズの変化を基に低減効果を定量的に評価した。本報告では、その低減効果に関する評価結果とウェイク場の影響を低減するためのビームラインの高度化に向けた作業の進捗と現状について述べる。
 
10:00-12:00 
FRP089
p.1084
RCNP白色中性子源の利用再開
Restart of the RCNP white neutron source

○神田 浩樹,小林 信之,嶋 達志,民井 淳,永山 啓一,福田 光宏,依田 哲彦,Zhao Hang(阪大RCNP),安部 晋一郎,岩元 洋介,佐藤 大樹(原子力機構)
○Hiroki Kanda, Nobuyuki Kobayashi, Tatsushi Shima, Atsushi Tamii, Keiichi Nagayama, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hang Zhao (RCNP), Shin-ichiro Abe, Yosuke Iwamoto, Daiki Sato (JAEA)
 
大阪大学核物理研究センターにおいて2004年より運用してきた白色中性子源は、宇宙線中性子の地表付近におけるエネルギースペクトルに近いエネルギースペクトルを示すことから、長年にわたり半導体のソフトエラーの試験に供され、半導体デバイスの放射線耐性に関する研究開発に貢献してきた。2019年度より、大阪大学核物理研究センターではビームの大強度化を図るため、施設および加速器の改修工事が実施されてきた。白色中性子源については、改修工事後に直径 300 mm の照射野への対応、ビーム大強度化対応、放射線対策を行った。2023年10月および2024年3月にはビームのコミッショニングおよび半導体のエラー試験のためのビーム利用を再開した。コミッショニングにおいては、標的とビームダンプを用いた陽子ビーム電流の測定、標的温度の測定を行い、放射化法を用いた中性子ビームプロファイルの測定を実施した。また、実験室内各所においてDarwinを用いた中性子空間線量の測定を行い、実験室の形状および室内の物体配置を忠実に再現したPHITS体系を用いたシミュレーション計算との比較を実施した。 この発表では中性子源整備の状況、コミッショニングの結果、今後の改良の予定について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP090

カソード背面レーザー加熱式三極管熱電子銃の開発
Development of a triode thermal electron gun with laser heating on the back of the cathode
○成田 大悟,林﨑 規託(東工大),佐藤 大輔(産総研)
○Daigo Narita, Noriyosu Hayashizaki (Tokyo Tech), Daisuke Satoh (AIST)
 
本研究では、電子加速器を用いた中性子発生に用いるための熱電子銃の開発を行っている。従来の熱電子銃は、フィラメントによるカソードの直熱または傍熱加熱により熱電子を発生をしている。そのため、電子銃の内部構造や高電圧回路が複雑であり、フィラメントの断線による大気解放を伴うメンテナンスが必要である。本電子銃は、カソード背面に高出力の連続光を照射することによって加熱する「レーザー加熱方式」を採用しており、従来のフィラメント加熱方式の熱電子銃に比べて電子銃並びに高電圧回路を簡略化し、フィラメントの断線による故障の可能性を排除することができる。 本研究では、カソード材として多結晶六ホウ化ランタン(LaB6)を採用した三極管熱電子銃を設計製作し、現状、レーザー出力127.6Wで6.5mAの電子ビームの発生に成功している。現在、電子ビームの大電流化に向けて、レーザー照射位置の最適化やカソード保持の検討、光吸収体の導入による高温運転を目指して研究開発を進めている。本発表ではカソード背面レーザー加熱式三極管熱電子銃の研究とその進捗について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP091
p.1089
電子サイクロトロン共鳴多価イオン源における軽元素ガスミキシングのイオンビーム電流の価数分布, プラズマパラメータおよびエミッタンスに対する効果
Effect of low Z gas mixing on the charge state distribution of ion beam currents, the plasma parameters and the emittance in an electron cyclotron resonance ion source

○藤村 優志,井手 章敦(大阪大学),浅地 豊久(滋賀県立大学),村松 正幸,北川 敦志(量研),加藤 裕史(大阪大学)
○Yushi Fujimura, Akinobu Ide (Osaka Univ.), Tyohisa Asaji (The University of Shiga Prefecture), Masayuki Muramatsu, Atsushi Kitagawa (QST), Yushi Kato (Osaka Univ.)
 
私たちは電子サイクロトロン共鳴(ECR)イオン源(ECRIS)における多価イオンの効率的な生成を目的とした研究を行っている. 多価イオン生成を効率化する手法として軽元素ガスミキシング法が知られている. 軽元素ガスミキシングが多価イオン生成の高効率化を引き起こす要因としては, 重さの異なるイオン同士の衝突によるイオンクーリングの効果やプラズマパラメータの変化による効果などが考えられている. 本研究では, 純ArプラズマとHeを混入させたArプラズマのそれぞれに対して, ファラデーカップによってイオンビーム電流量の質量価数分布(CSD)測定を行い, HeガスミキシングによるAr多価イオンビーム電流量増加の効果が再現性良く見られることを確認した. また, Heガスミキシングの有無それぞれにおけるArプラズマに対して, ラングミュアプローブを用いたプラズマパラメータ測定, イオン温度に依存するパラメータとしてワイヤープローブとマルチスリットを用いたrmsエミッタンス測定を行い, それぞれの実験結果を比較した. 私たちのグループでは, 軽元素イオンに対するイオンサイクロトロン共鳴(ICR)用RFの導入によって多価イオン生成のさらなる効率化を狙った実験も行っている. 本研究では, He+に対するICR用RF導入時のAr/Heプラズマに対してパラメータ測定を行い, RF導入のない典型的な測定結果と比較した. 本報告では, これらの実験結果についての詳細を述べる.
 
10:00-12:00 
FRP092
p.1094
ミュオン顕微鏡のためのサイクロトロンで加速された5 MeVミュオンビームのエミッタンス計算
Beam emittance calculations of cyclotron-accelerated 5 MeV muons for muon microscopy

○大西 純一(理研仁科センター),永谷 幸則(高エネ研),中沢 雄河(理研仁科センター),後藤 彰,山崎 高幸,三宅 康博(高エネ研)
○Jun-ichi Ohnishi (RNC), Yukinori Nagatani (KEK), Yuga Nakazawa (RNC), Akira Goto, Takayuki Yamazaki, Yasuhiro Miyake (KEK)
 
J-PARC MLFの超低速ミュオンビームライン(30 keV)に小型サイクロトロンを設置してミュオンを5 MeVまで再加速し、得られた低エミッタンスのビームを用いることにより透過型ミュオン顕微鏡の実現をめざしている。サイクロトロンはすでに完成してビームコミッショニングを待っているところである。ミュオン顕微鏡を実現するためにはサイクロトロンで加速されたビームを10マイクロm以下に収束させる必要がある。また、顕微鏡の解像度はビームのエミッタンスに依存するため、ビームエミッタンスを可能な限り小さくすることが極めて重要である。超低速ミュオンはJ-PARC の3 GeV 陽子ビームから生成される表面ミュオンビーム(約4 MeVの 正ミュオン)をタングステンまたはSiO2 の二次標的に停止させてミュオニウムを生成し、軌道電子をレーザーで乖離して得られる。この超低速ミュオンビームの規格化エミッタンスは0.4pi mmmrad (1 sigma) 程度であるが顕微鏡の実現のためには不十分であるため、さらにミュオニウム生成とレーザーによる乖離を繰り返す2段冷却によって0.02pi mmmrad程度にする計画である。本発表では超低速ミュオン生成時のエミッタンス及びビーム輸送とサイクロトロンによる再加速時のエミッタンス増加について計算を行い、強度を低下させることなくミュオン顕微鏡入口におけるビームのエミッタンスを最小化することについて述べる。
 
10:00-12:00 
FRP093

211At製造加速器用ECRイオン源におけるHe2+ビーム引き出しの研究
Study of the He2+ beam extraction system in the ECR ion source utilized for the 211At-production accelerator system
○菊地 漱祐(東工大)
○Sosuke Kikuchi (Tokyo Tech)
 
アルファ線内用療法のための放射性同位体211At製造用の大強度リニアックを検討している。十分な211Atの生成と加速器システムの小型化には、大電流のHe2+イオンビームを供給可能なイオン源が必要とされ、この目的に適した専用の電子サイクロトロン共鳴(ECR)イオン源の開発を目指している。大強度のHe2+イオンビームを想定し、電場分布の調整によるエミッタンス増大や逆流電子の抑制のため、3枚の電極によるビーム引き出しを検討している。本発表では、ビーム軌道計算を用いたHe2+ビーム引き出しに関して報告する。
 
10:00-12:00 
FRP095
p.1099
Status of the highly charged ion beam production from the RIKEN 18GHz ECRIS
○Glynnismae Saquilayan, Yoshihide Higurashi, Takashi Nagatomo, Osamu Kamigaito (RIKEN Nishina Center Accelerator Group Ion Source Team)
 
Electron Cyclotron Resonance Ion Sources (ECRIS) provide highly charged intense beams for the RI Beam Facility (RIBF) at RIKEN. One of the high-performance ion sources is the R-18GHz ECRIS where heavy ions of 40Ar11+, 84Kr20+, and 129Xe25+ are being accelerated and injected to the Azimuthally Varying Field (AVF) cyclotron. With the demand for more intense ion beams, optimization of ECR parameters and techniques to increase beam intensity have been used. Biased-disk position and dependence on RF power and gas pressure have been investigated to determine the conditions for increased beam intensity. For highly-charged state ion production, gas mixing effect on the charge state distribution was also investigated. Experiments at RIBF also requires high beam intensity of light ions (He2+, O6+). Since the performance of R-18GHz ECRIS has been optimized for highly charged heavy ions, lighter ion beams have been observed to have wider beam profiles. This requires the adjustment of the extraction system to ensure good beam quality of the extracted light ions. A pepper pot emittance monitor has been recently installed for a systematic study of the beam dynamics of these high intensity beams.
 
10:00-12:00 
FRP096
p.1102
レーザーイオン源のための液体金属流標的形成の検討
Study on formation of flowing liquid metal target for laser ion source

○高橋 一匡,渡邊 駆大,近藤 勇仁,佐々木 徹,菊池 崇志(長岡技大)
○Kazumasa Takahashi, Kakeru Watanabe, Yuto Kondo, Toru Sasaki, Takashi Kikuchi (Nagaoka Univ. Tech)
 
レーザーイオン源はレーザーをターゲットに照射して発生させたアブレーションプラズマからイオンビームを引き出すイオン源であり、通常は固体をレーザー標的に用いる。1価イオンなどの低価数のイオン供給ではレーザーパワー密度を抑えて同じ固体表面へレーザーを照射しても比較的長期間繰り返し安定にプラズマを生成可能である。一方で高価数のイオンを供給したい場合には標的へのレーザー照射強度を高める必要があり、レーザーを一度照射した箇所にはクレーター状のレーザー照射痕が形成され、照射ごとにプラズマ生成量が変化する。このため、安定なプラズマ供給にはレーザー照射毎に新しい表面を利用する必要がある。この場合、レーザー照射回数が標的面積に制限されるためレーザーイオン源の定常運転にはレーザー標的の寿命が課題となる。これを回避するため、標的の損傷が回復する液体のレーザー標的を検討している。本発表では低融点の液体金属を循環させて, 連続的に表面が更新されるレーザーイオン源の液体標的の形成について検討を行った結果について報告する。
 
10:00-12:00 
FRP097
p.1105
阪大RCNPにおける陽子中空ビームによるミューオン生成方法の検討
Simulation study of muon production using proton hollow beam at RCNP

○友野 大(阪大RCNP/KEK 物構研),百合 庸介(量研高崎研),森田 泰之(理研仁科センター),福田 光宏(阪大RCNP)
○Dai Tomono (RCNP, Osaka University / KEK IMSS), Yosuke Yuri (QST Takasaki), Yasuyuki Morita (RIKEN Nishina center), Mitsuhiro Fukuda (RCNP, Osaka University )
 
大阪大学核物理研究センターでは、大立体角ソレノイド電磁石を用いたミューオン源MuSICを開発し、ミューオンビーム供給を行なっている。この装置では、円柱状のグラファイトでできたミューオン生成標的をソレノイド内部に設置して陽子ビームを照射し、標的前面や側面から放出されるミューオンやパイオンを大立体角で集めることによって、高いビーム生成効率を実現している。本研究ではビームの改善を目的に、入射陽子ビームを中空ビーム化して標的側面近くに照射することを想定して、生成されるミューオンビームの評価を行なった。RCNPのミューオン源をモデルにした結果では、ホロービーム化により低エネルギーのパイオン、ミューオンの生成効率が上がり、ミューオンビームの強度や偏極度等の改善につながることがわかった。本発表では、RCNPに設置された装置の概要と、標的の形状と中空ビーム径を変化させた時のビーム強度と偏極度の検討結果について報告し、ミューオン生成における陽子中空ビームの有用性について議論する。
 
10:00-12:00 
FRP098
p.1108
理研28GHz超伝導ECRイオン源の高温オーブンを用いた鉛ビーム生成
Lead-ion beam production using high temperature oven of RIKEN 28-GHz superconducting electron cyclotron resonance ion source

○長友 傑,日暮 祥英,大西 純一,上垣外 修一(理研仁科センター)
○Takashi Nagatomo, Yoshihide Higurashi, Jun-ichi Ohnishi, Osamu Kamigaito (RIKEN Nishina Center)
 
理研仁科センターRIBFでは、現在、理研28GHz超伝導ECRイオン源(RIKEN 28-GHz ECRIS)によって生成された重イオンビームを用いて、宇宙・物質の創生の謎の解明を目指し、rプロセスに関与する中性子過剰不安定核を中心に原子核研究を推進している。今後、より質量の大きな原子核、例えば、鉛周辺の陽子過剰核構造の研究が計画されているため、鉛(Pb)イオンビームの開発を開始した。RIKEN 28-GHz ECRISでは、これまでに金属イオンビーム生成のため、イオン源プラズマチェンバー内で2000℃まで加熱可能な高温オーブン(HTO)の開発を行ってきた。このHTOは、側面に金属蒸気の噴出口(直径4mm)の開いた薄肉の円筒状のタングステン製坩堝である。坩堝本体に流れる400 A超の直流電流で発生するジュール熱で強熱された酸化ウランやバナジウム金属等の高融点物質は、蒸発し中性金属蒸気としてイオン源内のプラズマへ供給される。これら試料と比較して著しく低い融点のPb(融点327.5℃)の蒸発量を制御することが本開発の目的である。試料には、粉末状(粒径70ミクロン以下)の鉛金属を用いた。HTOと電気的に絶縁するため、HTO内にアルミナ製のるつぼを追加した。HTOと水晶振動子を用いた膜圧計を装備した真空容器を用意し、HTOでの消費電力(温度)と金属の蒸発量の相関を測定した。また、RIKEN 28-GHz ECRIS実機でのイオンビーム生成試験結果も報告したい。
 
ポスター①② (7月31日・8月1日 1F大会議室)
 
WTSP01
p.1112
理研AVFサイクロトロン運転の現状報告
Status report on the operation of RIKEN AVF cyclotron

柴田 順翔(住重加速器サービス),○大関 和貴(理研仁科センター),福澤 聖児,濱仲 誠,石川 盛,小林 清志,小山 亮,茂木 龍一,仲村 武志,西田 稔,西村 誠,月居 憲俊,矢冨 一慎(住重加速器サービス),足立 泰平,藤巻 正樹,福西 暢尚,長谷部 裕雄,日暮 祥英,今尾 浩士,上垣外 修一,木寺 正憲,込山 美咲,熊谷 桂子,眞家 武士,三宅 泰斗,長友 傑,中川 孝秀,西 隆博,大西 純一,奥野 広樹,坂本 成彦,サキラヤン グリニスメイ,須田 健嗣,内山 暁仁,渡部 秀,渡邉 環,渡邉 裕,山田 一成(理研仁科センター),鎌倉 恵太,小高 康照(東京大学原子核科学研究センター)
Junsho Shibata (SHI Accelerator Service Ltd.), ○Kazutaka Ozeki (RIKEN Nishina Center), Seiji Fukuzawa, Makoto Hamanaka, Shigeru Ishikawa, Kiyoshi Kobayashi, Ryo Koyama, Ryuichi Moteki, Takeshi Nakamura, Minoru Nishida, Makoto Nishimura, Noritoshi Tsukiori, Kazuyoshi Yadomi (SHI Accelerator Service Ltd.), Taihei Adachi, Masaki Fujimaki, Nobuhisa Fukunishi, Hiroo Hasebe, Yoshihide Higurashi, Hiroshi Imao, Osamu Kamigaito, Masanori Kidera, Misaki Komiyama, Keiko Kumagai, Takeshi Maie, Yasuto Miyake, Takashi Nagatomo, Takahide Nakagawa, Takahiro Nishi, Jun-ichi Ohnishi, Hiroki Okuno, Naruhiko Sakamoto, Glynnis Mae Saquilayan, Kenji Suda, Akito Uchiyama, Shu Watanabe, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe, Kazunari Yamada (RIKEN Nishina Center), Keita Kamakura, Yasuteru Kotaka (Center for Nuclear Study, University of Tokyo)
 
理研AVFサイクロトロンは、理研リングサイクロトロン(RRC)の入射器として使用されるほか東京大学原子核科学研究センターのグループによる原子核実験、及びRI製造に単独使用される。本稿では2023年8月から2024年7月までの期間における加速ビーム種、運転時間と調整時間の集計、発生した故障とその対処、性能改善に向けて行われた取り組みについて報告する。
 
 
WTSP02
p.1116
阪大産研量子ビーム科学研究施設の現状報告
Status report of Research Laboratory for Quantum Beam Science, SANKEN, Osaka University

○古川 和弥,誉田 義英,福井 宥平,徳地 明,楊 金峰,神戸 正雄,水田 好雄,細貝 知直(阪大産研)
○Kazuya Furukawa, Yoshihide Honda, Yuhei Fukui, Akira Tokuchi, Jinfeng Yang, Masao Gohdo, Yoshio Mizuta, Tomonao Hosokai (SANKEN, Osaka Univ.)
 
阪大産研量子ビーム科学研究施設はLバンド40 MeV電子ライナック、フォトカソードRF電子銃ライナック、コバルト60γ線照射装置を有する放射線共同利用施設である。Lバンドはナノ秒とサブピコ秒領域のパルスラジオリシスを用いた放射線化学の研究や、FELによる大強度テラヘルツ波の発生と利用に供され、建屋改修工事のため2023年12月末から長期の運転停止期間に入った。RF電子銃ライナックでは、量子効率が高いCsTeカソードを導入し、大強度の短パルス電子ビーム発生を行い、電子線パルスを利用した量子ビーム創薬や医学・薬学への利用研究を展開している。RF電子銃を装備したMeV電子顕微鏡の研究開発では、電子線パルスの高繰返し化や低エミッタンス化の検討を進めている。本会ではこれらの装置と建屋改修工事に関する現状報告を行う。
 
 
WTSP03
p.1119
筑波大学タンデム加速器施設の現状報告
Status report of the tandem accelerator complex at the University of Tsukuba

○笹 公和,石井 聡,高橋 努,大和 良広,吉田 哲郎,中沢 智幸,松村 万寿美,森口 哲朗(筑波大応用加速器)
○Kimikazu Sasa, Satoshi Ishii, Tsutomu Takahashi, Yoshihiro Yamato, Tetsuro Yoshida, Tomoyuki Nakazawa, Masumi Matsumura, Tetsuaki Moriguchi (UTTAC, Univ. Tsukuba)
 
筑波大学タンデム加速器施設(UTTAC)では、6MVタンデム加速器と1MVタンデトロン加速器からなる複合タンデム加速器施設の維持管理と運用及び学内外との共同利用研究を実施している。2024年3月末における研究課題は、6MVタンデム加速器で13件(学内8件、学外5件)、1MVタンデトロン加速器で7件(学内3件、学外4件)が承認されている。6MVタンデム加速器については、2023年度に96日間の実験を実施しており、加速器運転時間は1021.5時間、ビーム加速時間は832.3時間であった。前年度と比較するとビーム加速時間は82.4%に減少した。2023年10月末の低圧配電盤改修工事において、200Vの分電盤に400Vが供給される配線工事トラブルがあった。これが原因となり、配電盤や加速器昇圧用チェーンを駆動するインバーター電源などの機器に損傷が発生して、約2か月間の加速器稼働停止の期間があった。2024年3月の加速器定期整備では、ターミナル真空計用の光ファイバーケーブルの交換やノイズ対策としてリン青銅のシェル-ターミナル接触子を取り付けた。6MVタンデム加速器の主な利用分野は、加速器質量分析(利用割合63%)、原子核実験(20%)、イオン照射実験(7%)、イオンビーム分析(4%)などとなっている。加速イオンは全部で13種類であった。Pb-210のAMS開発におけるPbイオンや偏極重陽子の加速が新たにおこなわれた。本発表では、2023年度の筑波大学タンデム加速器施設の整備及び運用状況について報告する。
 
 
WTSP04
p.1123
都市大タンデムの現状(2024年度)
Status of the TCU-Tandem (FY 2024)

○羽倉 尚人,王 聿恒,劉 洪甫(都市大)
○Naoto Hagura, Yuheng Wang, Hong-fu Liu (TCU)
 
東京都市大学原子力研究所(神奈川県川崎市)には廃止措置中の研究用原子炉「武蔵工大炉」がある。1963年1月から1989年12月まで運転し、中性子放射化分析やホウ素中性子捕捉療法(BNCT)など様々な目的に使用された。また、全国大学共同利用施設として多くの研究者・技術者・学生を受入れてきた。原子炉施設としては廃止措置段階となったが、RI施設、核燃施設としては継続している。2008年に設置された本学理工学部原子力安全工学科や、2010年に設置された早稲田大学と共同で運営する共同原子力専攻の学生・院生を主な対象としつつ、教育・研究活動を展開している。2018年5月には新たな実験設備として1.7MVペレトロン・タンデム加速器(都市大タンデム(TCU-Tandem))の運転を開始した。プロトンビームによる荷電粒子励起X線分光法(PIXE)の実験を学生実験の一テーマとして実施するなど利用を進めている。2023年3月末には初めての定期検査・定期確認を受審し無事にパスした。本発表では、本加速器システム構築の経緯と今後の研究計画を紹介する。
 
ポスター①② (7月31日・8月1日 2F交流ラウンジ)
 
WTSP05
p.1126
東北大学先端量子ビーム科学研究センター三神峯事業所加速器施設の現状
Status of accelerator facility at RARIS-Mikamine, Tohoku University

○南部 健一,柏木 茂,柴田 晃太朗,髙橋 健,長澤 育郎,武藤 俊哉,日出 富士雄(東北大学先端量子ビーム科学研究センター三神峯事業所)
○Kenichi Nanbu, Shigeru Kashiwagi, Kotaro Shibata, Ken Takahashi, Ikuro Nagasawa, Toshiya Muto, Fujio Hinode (RARIS-Mikamine)
 
2024年4月1日、短寿命RIを用いた研究を加速するために、全国共同利用・共同研究拠点である東北大学電子光理学研究センター(電子光理学研究拠点)と、学内共同利用・共同研究施設であるサイクロトロン・ラジオアイソトープセンターは、組織統合され、先端量子ビーム科学研究センター(RARIS)が設立された。電子光理学研究センターはRARIS三神峯事業所となり、1.3 GeV Booster Storageリング(BST)において制動放射により生成した高エネルギーガンマ線を用いたクォーク・ハドロン核物理の研究をはじめ,70 MeV大強度電子線形加速器を用いたRI製造や核・放射化学の研究や極低運動量移行の電子弾性散乱により陽子半径を測定するULQ2 実験,さらには50 MeV試験加速器(t-ACTS) での超短パルス電子ビーム生成やこれを用いた光源開発の研究などを行っている。本発表では、これら加速器群の現状や運転状況、今後の予定などについて報告する。
 
 
WTSP06

STF/COI施設報告
Report on STF/COI at KEK
○山本 康史,阪井 寛志(高エネルギー加速器研究機構・加速器研究施設)
○Yasuchika Yamamoto, Hiroshi Sakai (High Energy Accelerator Research Organization)
 
KEK内超伝導高周波試験施設(STF棟)および超伝導加速器利用促進化推進棟(COI棟)では、国際リニアコライダー(ILC)計画を始めとする様々な超伝導加速器に関する研究・開発が行われている。2023年度、STFではクライオモジュールの冷却は行わず、入射部のみ運転を行った。また、新たに陽電子源開発エリアを設け、そこでILC用ターゲット試験機を開発中である。空洞の最適な表面処理の探索を目的とした縦測定は継続して行っている。一方、2023度から5カ年計画で始まったILC Technology Network (ITN)のための加速器要素技術開発(MEXT-ATD)において、必要なコンポーネント設計・製造を進めているのと同時に、COI棟内のインフラ整備を進めている。周波数チューナーはFNALから一式借りて、常温での試験が終わったところである。クライオモジュールの消磁は、小型のモックアップを用いて試験中である。クリーンルーム作業は、空洞端部を模したモックアップを製造し、今後、空洞ストリング組立の練習台とする。ヘリウム冷凍機設備については一般則から冷凍則への切替について県庁と相談している。高周波機器は、STFにある既存の設備から長距離導波管を設営し、使用することになった。クライオモジュール試験のバンカー遮蔽体設計については、放射線グループと検討中である。本講演では、両施設の最近の活動状況について報告する。
 
 
WTSP07
p.1129
理研重イオンリニアックの現状報告
Present status of RILAC

金子 健太,山内 啓資,小山田 和幸,田村 匡史,遊佐 陽,鈴木 惇也(住重加速器サービス株式会社),○日暮 祥英,坂本 成彦,藤巻 正樹,今尾 浩士,木寺 正憲,長友 傑,中川 孝秀,西 隆博,大関 和貴,須田 健嗣,内山 暁仁,渡邉 環,渡邉 裕,山田 一成,上垣外 修一(理研)
Kenta Kaneko, Hiromoto Yamauchi, Kazuyuki Oyamada, Masashi Tamura, Akira Yusa, Junya Suzuki (SHI Accelerator Service Ltd.), ○Yoshihide Higurashi, Naruhiko Sakamoto, Masaki Fujimaki, Hiroshi Imao, Masanori Kidera, Takashi Nagatomo, Takahide Nakagawa, Takahiro Nishi, Kazutaka Ozeki, Kenji Suda, Akito Uchiyama, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe, Kazunari Yamada, Osamu Kamigaito (RIKEN)
 
理研仁科加速器科学研究センターの理研重イオンリニアック(RILAC)は、1981年に単独運転が開始され、40年以上運転を続けている。2017年よりアップグレードが行われ、実験設備のほかに、超伝導ECRイオン源と超伝導線型加速器SRILACの建設が実施された。 2020年1月28日のファーストビーム以降、ビームコミッショニングを実施、6月からはマシンタイムを開始した。2023年3月にはRILAC LEBT,HEBTの一部で30年近く使用していた古い電磁石電源を更新し、7月には20年以上使われている常伝導空洞用励振器の冷却配管部品を真鍮製からステンレス製に交換し漏水対策を行った。また2024年3月には建設中であるRI製造コース用の電源負荷切り替盤の設置を行い、新コースへのビーム供給の準備も進められている。本発表ではこの加速器の現状報告として、この10年間の運転状況、及びこの1年間における保守・改良作業などについて報告する。(2024)
 
ポスター①② (7月31日・8月1日 2Fリハーサル室)
 
WTSP08
p.1133
RCNPサイクロトロン施設の現状
Status of the RCNP cyclotron facility

○神田 浩樹,福田 光宏,依田 哲彦,友野 大,安田 裕介,齋藤 高嶺,田村 仁志,永山 啓一,荘 浚謙,Zhao Hang,Shali Ahsani Hafizhu,松井 昇太郎,井村 友紀,渡辺 薫,石畑 翔,板倉 菜美(阪大RCNP)
○Hiroki Kanda, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Dai Tomono, Yuusuke Yasuda, Takane Saito, Hitoshi Tamura, Keiichi Nagayama, Tsunhim Chong, Hang Zhao, Ahsani Hafizhu Shali, Shotaro Matsui, Tomoki Imura, Kaoru Watanabe, Sho Ishihata, Nami Itakura (RCNP)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)ではK140 AVFサイクロトロンとK400リングサイクロトロンを稼働しており、原子核物理学、加速器科学、情報科学、物性物理学、宇宙物理学、医学等に向けたビームの利用を推進している。 2019年2月より2020年度にかけて加速器の運転を長期間運転停止して実施したAVFサイクロトロンのアップグレード作業の後、2021年度には機材コミッショニング、2022年度にはビームコミッショニングを実施し、2023年度よりビームコミッショニングをしつつビーム利用を順次再開してきた。2023年度にはアスタチン-211の製造、原子核物理学のための共同利用、半導体デバイスへのビーム照射を目的とした企業との共同研究など、比較的長時間のビームタイムを実施した。 また2024年2月にはアルファ線核医学治療拠点の建物が竣工し、現在では2026年を予定している加速器の導入と運転に向けた準備を進めている。 本報告では、RCNPの加速器運転状況や保守・整備および技術開発について現状を報告する。
 
 
WTSP09
p.1135
理研RIBFにおけるリングサイクロトロンの運転報告
Status report of the operation of RIBF ring cyclotrons

西田 稔(住重加速器サービス),○須田 健嗣(理研仁科センター),福澤 聖児,濱仲 誠,石川 盛,小林 清志,小山 亮,茂木 龍一,仲村 武志,西村 誠,柴田 順翔,月居 憲俊,矢冨 一慎(住重加速器サービス),足立 泰平,段塚 知志,藤巻 正樹,藤縄 雅,福西 暢尚,長谷部 裕雄,日暮 祥英,池沢 英二,今尾 浩士,上垣外 修一,木寺 正憲,込山 美咲,熊谷 桂子,眞家 武士,三宅 泰斗,長友 傑,中川 孝秀,中村 仁音,大西 純一,奥野 広樹,大関 和貴,坂本 成彦,内山 暁仁,渡部 秀,渡邉 環,渡邉 裕,山田 一成(理研仁科センター)
Minoru Nishida (SHI Accelerator Service Ltd.), ○Kenji Suda (RIKEN Nishina Center), Seiji Fukuzawa, Makoto Hamanaka, Shigeru Ishikawa, Kiyoshi Kobayashi, Ryo Koyama, Ryuichi Moteki, Takeshi Nakamura, Makoto Nishimura, Junsho Shibata, Noritoshi Tsukiori, Kazuyoshi Yadomi (SHI Accelerator Service Ltd.), Taihei Adachi, Tomoyuki Dantsuka, Masaki Fujimaki, Tadashi Fujinawa, Nobuhisa Fukunishi, Hiroo Hasebe, Yoshihide Higurashi, Eiji Ikezawa, Hiroshi Imao, Osamu Kamigaito, Masanori Kidera, Misaki Komiyama, Keiko Kumagai, Takeshi Maie, Yasuto Miyake, Takashi Nagatomo, Takahide Nakagawa, Masato Nakamura, Jun-ichi Ohnishi, Hiroki Okuno, Kazutaka Ozeki, Naruhiko Sakamoto, Akito Uchiyama, Shu Watanabe, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe, Kazunari Yamada (RIKEN Nishina Center)
 
理研RIBFにおける4台のリングサイクロトロン (RRC, fRC, IRC, SRC) の2023年8月から2024年7月までの運転状況を報告する。ビーム強度増強と安定供給に向けて、改造、ビーム調整、保守に取り組んでいる。本稿ではこれまでの加速ビームの実績、当該期間の運転時間と調整時間の統計、また発生した故障とその対処等について報告する。
 
 
WTSP10
p.1141
KEK放射光源加速器PFリングとPF-ARの現状
Present status of PF ring and PF-AR at KEK

○帯名 崇,阿達 正浩,上田 明,内山 隆司,江口 柊,尾崎 俊幸,影山 達也,金 秀光,小林 幸則,齊藤 寛峻,坂中 章悟,佐々木 洋征,下ヶ橋 秀典,塩澤 真未,塩屋 達郎,篠原 智史,下崎 義人,髙井 良太,高木 宏之,髙橋 毅,多田野 幹人,田中 オリガ,谷本 育律,田原 俊央,多和田 正文,土屋 公央,内藤 大地,長橋 進也,中村 典雄,濁川 和幸,野上 隆史,芳賀 開一,原田 健太郎,東 直,卞 抱元,本田 融,丸塚 勝美,満田 史織,三増 俊広,宮内 洋司,本村 新,山本 尚人,山本 将博,吉田 正人,吉本 伸一,渡邉 謙(高エネ研)
○Takashi Obina, Masahiro Adachi, Akira Ueda, Takashi Uchiyama, Shu Eguchi, Toshiyuki Ozaki, Tatsuya Kageyama, Xiuguang Jin, Yukinori Kobayashi, Hirotoshi Saito, Shogo Sakanaka, Hiroyuki Sasaki, Hidenori Sagehashi, Mami Shiozawa, Tatsuro Shioya, Satoshi Shinohara, Yoshito Shimosaki, Ryota Takai, Hiroyuki Takaki, Takeshi Takahashi, Mikito Tadano, Olga Tanaka, Yasunori Tanimoto, Toshihiro Tahara, Masafumi Tawada, Kimichika Tsuchiya, Daichi Naito, Shinya Nagahashi, Norio Nakamura, Kazuyuki Nigorikawa, Takashi Nogami, Kaiichi Haga, Kentaro Harada, Nao Higashi, Baoyuan Bian, Tohru Honda, Katsumi Marutsuka, Chikaori Mitsuda, Toshihiro Mimashi, Hiroshi Miyauchi, Arata Motomura, Naoto Yamamoto, Masahiro Yamamoto, Masato Yoshida, Shinichi Yoshimoto, Ken Watanabe (KEK)
 
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光実験施設 (フォトンファクトリー:PF)は、2.5GeV PFリングと6.5 GeV PFアドバンストリング(PF-AR)の2つの放射光専用リングを運用している。両リングともに稼働から約40年経過しており、各種装置の老朽化が顕著になってきているが、随時対策を講じながら故障率1%台の安定な運転を維持している。2023年度にはPFリングの低電力 RF(LLRF)システムを旧来のアナログシステムからデジタルシステムへの更新を実施した。PF-ARでは、測定器開発テストビームラインでの正式ユーザー運転を開始した。本年会では、PFリングとPF-ARにおける運転の現状について報告するとともに、次期計画として検討をすすめている超伝導線形加速器と高輝度蓄積リングを組み合わせたハイブリッド光源(PF-HLS)について検討状況を報告する。
 
 
WTSP11

IFMIF原型加速器LIPAcの現状2024
Status of Linear IFMIF Prototype Accelerator (LIPAc) in 2024
○増田 開,赤木 智哉,熊谷 公紀,杉本 昌義(量研、IFMIF/EVEDA PT),Carin Yann,Gex Dominique,Scantamburlo Francesco(F4E, IFMIF/EVEDA PT),長谷川 和男,春日井 敦,近藤 恵太郎(量研),Cismondi Fabio,Dzitko Herve(F4E)
○Kai Masuda, Tomoya Akagi, Kohki Kumagai, Masayoshi Sugimoto (QST, IFMIF/EVEDA PT), Yann Carin, Dominique Gex, Francesco Scantamburlo (F4E, IFMIF/EVEDA PT), Kazuo Hasegawa, Atsushi Kasugai, Keitaro Kondo (QST), Fabio Cismondi, Herve Dzitko (F4E)
 
Since the International Fusion Materials Irradiation Facility (IFMIF) requires an accelerator with unprecedented performances to provide 40 MeV, 125 mA D+ CW beam, the feasibility is being demonstrated with a prototype up to 9 MeV, namely the Linear IFMIF Prototype Accelerator (LIPAc), which is under commissioning in Rokkasho within the EU-JA collaborative framework of the IFMIF/EVEDA project under the Broader Approach agreement signed between EURATOM and the Japanese Government in 2007. This poster will present an overview of the efforts and progresses made after the last annual meeting, as well as up-to-date statistics from an Event Report system that register all types of unexpected events during installation, commissioning and operation of the LIPAc for the purpose of improving the safety and reliability.
 
ポスター①② (7月31日・8月1日 3F研修室A)
 
WTSP12
p.1147
山形大学医学部東日本重粒子センターの現状 (6)
Current status of East Japan Heavy Ion Center, Faculty of Medicine, Yamagata University (6)

○想田 光,宮坂 友侑也,柴 宏博,石澤 美優,小野 拓也,イ ソンヒョン(山形大),金井 貴幸(東京女子医大),岩井 岳夫(山形大),橋本 勝則,李 潤起,澤村 駿,永井 恭平,菅藤 洋平,盛 道太郎,田口 貴之,大内 章央,佐藤 亜都紗,勝間田 匡,小林 泉(AEC),佐藤 啓,土谷 順彦,上野 義之,根本 建二(山形大)
○Hikaru Souda, Yuya Miyasaka, Hongbo Chai, Miyu Ishizawa, Takuya Ono, Sung Hyun Lee (Yamagata Univ.), Takayuki Kanai (TWMU), Takeo Iwai (Yamagata Univ.), Katsunori Hashimoto, Junki Lee, Shun Sawamura, Kyohei Nagai, Yohei Kanto, Michitaro Sei, Takayuki Taguchi, Fumihisa Ouchi, Azusa Sato, Masashi Katsumata, Izumi Kobayashi (AEC), Hiraku Sato, Norihiko Tsuchiya, Yoshiyuki Ueno, Kenji Nemoto (Yamagata Univ.)
 
山形大学医学部では2017年から重粒子線治療施設の建設を開始し、2021年2月に水平ビームによる前立腺癌治療を開始した。重粒子線治療施設は、加速器と照射室の立体配置により世界最小の建屋面積45×45 mを実現した。入射器およびシンクロトロンは普及小型重粒子線治療装置の設計を踏襲した4 MeV RFQ+IH-DTL線形加速器と 430 MeV/uシンクロトロンであり、加速器で600段のエネルギーを利用可能とすることで0.5mm刻みの飛程制御を実現していることが大きな特徴である。照射装置は大幅に小型化されたスキャニング照射装置が初めて搭載され、これにより超伝導回転ガントリーも重量約200tまで小型化されている。回転ガントリーは2022年3月に2角度での運用を開始し、その後段階的に利用可能な角度を増やして2023年3月には15度刻み24角度での運用を開始した。治療で使用する角度については定期的な精度検証(Quality Assurance)測定でビーム位置・サイズを担保・調整する必要があり、実用エネルギー帯では全角度で概ね1mm以内の位置精度を維持している。大きなトラブルとしては、2023年12月にHEBT共通ラインで20mm程度のビーム位置ずれが発生し、メーカーと共同で週末2日かけて全角度での臨時ビーム軸調整を実施した。外部ユーザーの実験利用も段階的に行っており、多段階に変更可能なエネルギーを活かした多数条件での測定や、パルス内強度10 pps程度の超低強度ビームの利用が可能となっている。
 
 
WTSP13
p.1150
京都大学自由電子レーザ施設の現状
Present status of free electron laser facility at Kyoto University

○全 炳俊,大垣 英明(京大エネ研)
○Heishun Zen, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.)
 
京都大学エネルギー理工学研究所では、エネルギー関連研究への応用を主な対象とし、S-band高周波電子銃を電子源とした小型で経済的な中赤外自由電子レーザ(KU-FEL)を開発し、中赤外波長可変レーザの発生とその利用研究を行っている。加えて、2018年度から中赤外自由電子レーザにより駆動するガス高次高調波アト秒光源の実現に向けた基盤技術研究を開始した。また、近年、光陰極高周波電子銃を電子源として用いたコヒーレントアンジュレータ放射光源の開発も行っている。本報告では、これら光源の現状について報告する。
 
ポスター①② (7月31日・8月1日 3F交流室A)
 
WTSP14

KEKコンパクトERLの現状
Present status of the compact ERL at KEK
○島田 美帆(高エネ研)
○Miho Shimada (KEK)
 
コンパクトERL(compact ERL:cERL)はエネルギー回収型線形加速器(Energy Recovery Linac: ERL)の小型試験機として稼働をしており、応用超伝導加速器イノベーションセンター(iCASA)のもとでERL技術の産業応用への展開を目指している。昨年度は約5週間のビーム運転を行った。アンジュレータインストール後、初めて1mAのCW運転を行い、5カ年に一度の放射線定期検査に合格した。新しい試みとして、放射線レベルを低く抑えるために、機械学習を導入した。また、赤外FELの発振とエネルギー回収の両立を試みた。本報告では、これらのビーム運転の他、保守作業などについて報告する。
 
 
WTSP15
p.1154
九州大学加速器・ビーム応用科学センターの現状報告2024
Status report of Center for Accelerator and Beam Applied Science of Kyushu University in 2024

○米村 祐次郎,有馬 秀彦,池田 伸夫,渡辺 賢一,魚住 裕介,執行 信寛(九大工),森田 浩介,若狭 智嗣,坂口 聡志,寺西 高,市川 雄一,高峰 愛子,西畑 洸希,庭瀬 暁隆,岩村 龍典(九大理),髙木 昭(高エネ研),森 義治(京大)
○Yujiro Yonemura, Hidehiko Arima, Nobuo Ikeda, Kenichi Watanabe, Yusuke Uozumi, Nobuhiro Shigyo (Faculty of Engineering, Kyushu University), Kosuke Morita, Tomotsugu Wakasa, Satoshi Sakaguchi, Takashi Teranishi, Yuichi Ichikawa, Aiko Takamine, Hiroki Nishibata, Toshitaka Niwase, Tatsunori Iwamura (Faculty of Science, Kyushu University), Akira Takagi (KEK), Yoshiharu Mori (Kyoto University)
 
九州大学加速器・ビーム応用科学センターでは、FFA加速器と8 MVタンデム静電型加速器を利用した加速器施設の整備が進められている。FFA加速器棟ではビーム利用へ向けた施設整備と並行して、重イオンビーム加速の研究開発が進められている。タンデム加速器棟・実験棟では、タンデム加速器のビーム強度増強のための機器調整と本格的なビーム利用へ向けた実験室の整備が進められている。本発表では、FFA加速器とタンデム加速器の現在の整備状況について報告する。
 
ポスター①② (7月31日・8月1日 3Fホワイエ)
 
WTSP16
p.1156
量研高崎研TIARA施設の現状報告2024
2024 status report of TIARA facility at QST Takasaki

○菅沼 瑠里,千葉 敦也,吉田 健一,石坂 知久,山田 圭介,湯山 貴裕,平野 貴美,細谷 青児,倉島 俊,宮脇 信正,柏木 啓次,百合 庸介,石堀 郁夫,高野 圭介,齊藤 宏行,金井 信二,青木 勇希,橋爪 将司(量研高崎研)
○Ruri Suganuma, Atsuya Chiba, Kenichi Yoshida, Tomohisa Ishizaka, Keisuke Yamada, Takahiro Yuyama, Yoshimi Hirano, Seiji Hosoya, Satoshi Kurashima, Nobumasa Miyawaki, Hirotsugu Kashiwagi, Yosuke Yuri, Ikuo Ishibori, Keisuke Takano, Hiroyuki Saito, Shinji Kanai, Yuuki Aoki, Masashi Hashizume (QST Takasaki)
 
量子科学技術研究開発機構(QST)高崎量子技術基盤研究所のイオン照射研究施設TIARAには4台の加速器が設置されており、材料開発やRI製造、バイオ技術の研究分野へ様々なイオン種のビームを幅広いエネルギー範囲で提供している。AVFサイクロトロン(K110)、3MVタンデム加速器、3MVシングルエンド加速器、400kVイオン注入装置の2023年度の運転時間はそれぞれ655.6h、1012.1h、1088.4h、853.3hであり、実験キャンセルを除けば、計画した照射実験はすべて実施した。電気料金の高騰により、サイクロトロンの運転時間は2022年度に比べてほぼ半減した。2023年4月、イオン注入装置は累計運転50,000時間を達成した。主な保守・整備として、タンデム加速器の冷却水用チラーの更新、シングルエンド加速器の電圧測定抵抗の交換、イオン注入装置のアインツェルレンズ電源の更新、サイクロトロン冷却水ポンプの更新やメカニカルシール交換などを行った。主なトラブルとして、タンデム加速器の四重極電磁石用電源の不調、イオン注入装置のターボ分子ポンプコントローラーの経年劣化による故障、シングルエンド加速器の窒素ガスラインのチューブ破断や制御系トラブル、サイクロトロンのビームスキャナ電源の故障などがあった。本発表では上記に加え、その他の保守・整備及び技術開発、新ビーム加速、施設の利用状況について報告する。
 
 
WTSP17
p.1159
京大複合研電子線型加速器施設の現状
Status of KURNS-LINAC

○阿部 尚也,高橋 俊晴,堀 順一,木野村 淳,籔内 敦,阪本 雅昭,吉野 泰史,高見 清(京大複合研)
○Naoya Abe, Toshiharu Takahashi, Jun-ichi Hori, Atsushi Kinomura, Atsushi Yabuuchi, Masaaki Sakamoto, Hirohumi Yoshino, Kiyoshi Takami (KURNS)
 
京大複合研電子線型加速器施設は稼働している線型加速器としては国内最古の加速器であるが、全国共同利用施設として非常に活発に利用されている。前回発表時からの主な作業は、No.2モジュレータの高圧トランス(600V→13kV)損傷による交換、制御系更新、インジェクタ高圧測定碍子の追加を実施した。高圧トランスは、2022年に更新したが、2023年7月に層間短絡による故障が発生。代替品の入手までの約2か月の間、No.2モジュレータを動作できないため、No.1モジュレータのみを起動させる低エネルギービームの利用となった。制御系更新については、2023年前半に更新した際に完了できなかったシーケンスの導入及び利用するにつれて判明した不具合・不都合などの修正を行った。今回の更新により、高電圧印加及びトリガを除いた自動起動が可能になり、より簡易な加速器起動が可能になった。高電圧印加及びトリガに関しては安全のため自動起動は行わないようにする構想のため、今回の更新で自動起動については完了した。インジェクタ高圧貫通碍子については、安価にするためプラスチック製の碍子を採用した。放電による碍子損傷を減らすべく中心導体を半導体繊維にて覆った。また、樹脂リングの追加で碍子径の増大による漏れ電流の低減でコロナ放電の減少を期待している。
 
 
WTSP18
p.1162
広島大学放射光科学研究所光源加速器の現状
Present status of HiSOR

○加藤 政博,Lu Yao(HiSOR),島田 美帆,宮内 洋司(KEK, HiSOR),後藤 公徳(HiSOR)
○Masahiro Katoh, Yao Lu (HiSOR), Miho Shimada, Hiroshi Miyauchi (KEK, HiSOR), Kiminori Goto (HiSOR)
 
広島⼤学放射光科学研究所の光源加速器HiSORは、1996年に稼働し、その後四半世紀にわたり国内外の放射光利用者へ真空紫外線から軟X線領域の放射光を供給している。年間のビームタイムは1500時間に及ぶ。HiSORの加速器は150MeVの入射用マイクロトロンと700MeVの小型電子シンクロトロンからなる。電子シンクロトロンは周長22mと小型ながら2本の直線部を有し2台のアンジュレータが装着され高輝度の真空紫外光を生成できる。また常伝導ながら2.7Tと高磁場の偏向磁石により軟X線を中心とする幅広い波長域で放射光を生成できる。近年、加速器の老朽化や光源性能面での競争力低下が顕著となってきた。特に、最近、老朽化による複数の重篤な故障が発生した。本発表では加速器の現状や将来計画に向けた取り組みについて報告する。
 
ポスター②③ (8月1日・8月2日 1F大会議室)
 
TFSP01
p.1165
原子力機構-東海タンデム加速器の現状
Present status of JAEA-Tokai tandem accelerator

○株本 裕史,中村 暢彦,沓掛 健一,乙川 義憲,遊津 拓洋,松井 泰,中川 創平,池亀 拓麻,加藤 佑太,石崎 暢洋,松田 誠(日本原子力研究開発機構)
○Hiroshi Kabumoto, Masahiko Nakamura, Ken-ichi Kutsukake, Yoshinori Otokawa, Takuhiro Asozu, Yutaka Matsui, Sohei Nakagawa, Takuma Ikekame, Yuta Kato, Nobuhiro Ishizaki, Makoto Matsuda (Japan Atomic Energy Agency)
 
原子力機構-東海タンデム加速器施設は最高運転電圧が約18MVの大型静電加速器で、重イオンビーム等を用いた核物理、核化学、原子物理、材料照射などの各分野で利用されている。本発表では、2023年度における加速器の運転・整備状況及びビーム利用開発等について報告する。2023年度の運転状況としては、例年よりも運転日数が減少傾向となった。当施設は1982年より運転開始しているが、建屋のインフラの一つである水配管が経年劣化し、一部を更新するための工事に日数を要したためである。また、静電加速器の絶縁ガスとして六フッ化硫黄ガス(SF6)を使用しているが、経年劣化した一部のバルブの更新に日数を要したことも運転日数が減少した理由の一つである。整備関係では、実験室へビーム輸送するための振分電磁石の電源の故障が発生し、パワーモジュール素子の交換を行って復旧した。その他には、イオン源周辺の初段加速用の高圧電源(ターミナルECRイオン源の20kV電源、負イオン源の240kV電源)の故障が発生し、それぞれ素子交換等の修理を行って運転を継続した。また、ビーム利用開発としては、近年、宇宙用機器に使用する半導体等へイオンビームを照射するソフトエラー試験などの需要が高まっている。当施設としても、それらの需要に応えるために、試験に必要となる照射用チャンバー等の機器類やビームライン配置の検討を開始した。
 
 
TFSP02
p.1170
SuperKEKB加速器のロングシャットダウン(LS1)後の運転状況
Recent status of SuperKEKB operation after long-shutdown (LS1)

○大西 幸喜(高エネルギー加速器研究機構)
○Yukiyoshi Ohnishi (KEK)
 
SuperKEKB加速器は、世界で初めてナノー・ビーム方式を採用した陽電子・電子衝突型加速器である。B中間子対生成を目的とし世界最高ルミノシティを目指して運転されている。また、本格的にクラブ・ウエスト方式を採用し実用化したことで、ルミノシティ性能が向上している。 しかしながら、突然ビームが損失してしまう、放射光による真空パイプ発熱により電磁石が移動しビーム光学系が歪む、ビームビーム相互作用によるルミノシティ低下など、いくつかの問題点も浮上してきた。ここまでに至る過程について述べた上で、今後さらなるルミノシティ性能向上に向けて、ビーム物理的な見地から何が問題となっているか、克服すべき課題は何かについて紹介を行う。
 
 
TFSP03
p.1176
NanoTerasu加速器の現状
Present status of NanoTerasu

○安積 隆夫,上島 考太,小原 脩平,菅 晃一,保坂 勇志,西森 信行(QST)
○Takao Asaka, Kota Ueshima, Shuhei Obara, Koichi Kan, Yuji Hosaka, Nobuyuki Nishimori (QST)
 
NanoTerasuは国内初となるMBAラティスを採用した低エミッタンス蓄積リングであり、軟X線領域において世界最高水準の放射光を提供する施設である。2023年4月より開始した3GeV線型加速器、ならびに3GeV蓄積リングのビームコミッショニングは、当初の計画通り順調に進められ、設計ビーム性能の到達、高水準な安定性といったいわゆる次世代型放射光施設としての性能を確認するに至っている。その後、10本のビームライン(全28本)の光学調整や真空焼き出しについても、トラブルなく進められ、2024年4月から放射光ユーザーへの利用運転が開始された。本発表では、線型加速器、蓄積リングのビームコミッショニング状況と到達ビーム性能を示すとともに、本年4月からスタートした利用運転の状況について報告する。
 
 
TFSP04
p.1181
HIMACの現状報告
Present status of HIMAC

○松葉 俊哉,宮武 立彦,水島 康太,稲庭 拓,岩田 佳之,浦田 晶身,片桐 健,北川 敦志,佐藤 眞二,高田 栄一,野田 悦夫,村松 正幸,白井 敏之(量研機構),篠崎 直樹,川島 祐洋,甲斐 聡,中島 猛雄,若勇 充司,白石 直浩,藤本 哲也,勝間田 匡(加速器エンジニアリング)
○Shunya Matsuba, Tatsuhiko Miyatake, Kota Mizushima, Taku Inaniwa, Yoshiyuki Iwata, Masami Urata, Ken Katagiri, Atsushi Kitagawa, Shinji Sato, Eiichi Takada, Etsuo Noda, Masayuki Muramatsu, Toshiyuki Shirai (QST), Shinozaki Shinozaki, Masahiro Kawashima, Satoshi Kai, Takeo Nakajima, Mitsuji Wakaisami, Tadahiro Shiraishi, Tetsuya Fujimoto, Masashi Katsumata (AEC)
 
放射線医学総合研究所(2016年に量子科学技術研究開発機構に名称変更)は、1993年に重粒子線がん治療用加速器HIMACを建設し、炭素イオンを用いた重粒子線がん治療を行ってきた。今年で治療開始から31年目を迎え、2024年3月末までのがん治療の登録患者数は15911例となった。 この間、治療や装置の高度化を進め、2010年にはHIMACの既存施設に連結する形で新治療研究棟を建設し、2011年からは複雑な腫瘍形状に対応可能な三次元スキャニング照射法を適用した治療を開始している。また、2017年には超伝導電磁石を用いた回転ガントリー照射装置による治療が開始され、現在まで安定した治療運用がなされている。  そして現在は更なる普及を目指した次世代の重粒子線治療装置「量子メス」の研究開発が続けられている。量子メスではシンクロトロンに超伝導磁石を、入射器にレーザー駆動イオン加速器を用いることで装置を小型化し、ネオン、酸素、炭素、ヘリウムのイオンを組み合わせることで治療を高度化する。これまでの開発により超伝導シンクロトロンおよび小型マルチイオン源の実現の目途が立ち、2023年度からそれらを組み合わせた第4世代量子メス実証機の建設が進んでいる。本学会ではこれらの研究開発の現状やHIMACの運用状況について報告する。
 
ポスター②③ (8月1日・8月2日 2F交流ラウンジ)
 
TFSP05
p.1184
ニュースバル放射光施設の現状
Present status of the NewSUBARU synchrotron light facility

橋本 智(兵庫県立大 高度研),櫻井 辰幸,牛澤 昂大(高輝度センター),皆川 康幸,○中田 祥太郎,平山 英之,伊藤 基巳紀(スプリングエイトサービス)
Satoshi Hashimoto (LASTI, Univ. of Hyogo), Tatsuyuki Sakurai, Takahiro Ushizawa (JASRI), Yasuyuki Minagawa, ○Shotaro Nakata, Hideyuki Hirayama, Kiminori Ito (SES)
 
兵庫県立大学高度産業科学技術研究所の運用するニュースバル放射光施設加速器の現状を報告する。本施設の加速器は周長118mの電子蓄積リングと2021年から運用を開始した専用入射器で構成される。蓄積リングは1GeV/350mA±0.2mAのTopUp 運転、および週に1、2日の1.5GeV/400mAの加速/Decay運転を行っている。2023年度の加速器の運転では大きなトラブルがいくつかあり、 利用運転停止時間は108時間であった。トラブルの内容としては、リングのRFの集束コイル電源の故障、偏向電磁石電源の発振、セプタムDC電源の故障、リングRFのアラームによるビームアボート、入射器電荷積算計の関連機器故障、ビームラインでの漏水事故などであった。電子蓄積リングは建設から20年以上経過し故障する機器が多いため、順次更新を行なっていく方向である。加速器の性能改善としては補助電源の修理が完了し、1.5GeV運転の再開、低エネルギー(0.94~0.69GeV)の入射パラメータ作成、single+97bunchフィリングの運転などがある。
 
 
TFSP06
p.1188
日本大学電子線利用研究施設の電子線形加速器と光源の現状
Status of electron linac and light sources at LEBRA in Nihon University

○野上 杏子,早川 恭史,境 武志,髙橋 由美子,早川 建,田中 俊成(日大量科研),住友 洋介(日大理工),清 紀弘(産総研),恵郷 博文,道園 真一郎,土屋 公央,諏訪田 剛,吉田 光宏,大澤 哲,福田 茂樹,古川 和朗,山本 樹,新冨 孝和,榎本 收志(高エネ研)
○Kyoko Nogami, Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai, Yumiko Takahashi (LEBRA, Nihon Univ.), Ken Hayakawa (LEBRA, Nihon University), Toshinari Tanaka (LEBRA, Nihon Univ.), Yoske Sumitomo (CST, Nihon Univ.), Norihiro Sei (AIST), Hiroyasu Ego, Shinichiro Michizono, Kimichika Tuchiya, Tsuyoshi Suwada, Mitsuhiro Yoshida, Satoshi Ohsawa, Shigeki Fukuda, Kazuro Furukawa, Shigeru Yamamoto, Takakazu Shintomi, Atsushi Enomoto (KEK)
 
2023年度における日本大学電子線利用研究施設(LEBRA)125MeV電子線形加速器の稼働日数は143日、クライストロン通電時間は1168時間、電子ビーム加速時間は607時間であり、さらに光源別の通電時間の割合も含め前年度とほぼ同程度であった。クライストロン2号機パルス電圧およびサイラトロンキープアライブ電流が大きく変動するときがあり、これにより安定な電子ビーム加速が困難になることがある。このように変動が顕著なときは、サイラトロンのヒータ電圧、リザーバ電圧など調整し加速器運転を行っている。しかしかなりの頻度で調整が必要となるため、定常的に安定した加速器運転を行うため根本的な原因を調査する必要がある。THz光源開発では、コヒーレント遷移放射光渦発生用標的やコヒーレントチェレンコフ放射用円錐型標的を導入して、基礎測定を開始した。
 
 
TFSP07

UVSOR光源加速器の現状 2024
Status of UVSOR synchrotron in 2024
○林 憲志,太田 紘志,清水 康平,山崎 潤一郎,水口 あき,平 義隆(分子研 UVSOR),加藤 政博(分子研 UVSOR 広島大 HiSOR)
○Kenji Hayashi, Hiroshi Ota, Kohei Shimizu, Jun-ichiro Yamazaki, Aki Minaguchi, Yoshitaka Taira (IMS, UVSOR), Masahiro Katoh (IMS, UVSOR Hiroshima-Univ., HiSOR)
 
本施設報告ポスターでは分子科学研究所の放射光リングUVSOR-IIIの運転および光源開発の状況を報告する。稼働40年を超えたUVSOR-IIIでは老朽化の影響が各所に現れており度々運転停止が起きるものの、2023年度は年間36週のユーザー運転を予定通り実施することができた。 UVSORではユーザーコミュニティと次期施設計画について議論を深めている。2023年12月1日の40周年記念式典に合わせ、40周年記念冊子と次期計画のCDRを同時に刊行した。ポスターではそのコンセプトとラティスデザイン案について説明する。 2022年暮れから2023年春のシャットダウン期間をまたいで、ブースターシンクロトロンから電子蓄積リングへのビーム入射効率が著しく悪化した。放射線発生装置(加速器)に係る入射電子申請量の制限があるため、2023年度は蓄積電流を300mAから200mAへ下げて運転した。原因は調査中であるが、ブースターから取り出されるビームの質が悪化していることが懸念される。2025年春にブースターシンクロトロンを大気開放し原因の調査・修理を行う予定である。 光源開発研究では、逆トムソン散乱ガンマ線の開発や利用研究に加え、アンジュレータ光による光渦の発⽣やベクトルビームの発生、原子の量子状態制御、真空紫外域円偏光照射によるアミノ酸分子のキラリティ発現に関する研究等が精力的に行われており、単一電子蓄積を利用した放射光の時空間特性の研究においても成果が出始めている。
 
ポスター②③ (8月1日・8月2日 2Fリハーサル室)
 
TFSP08
p.1191
あいちSR光源加速器の現状2024
Present status of accelerators of Aichi Synchrotron Radiation Center in 2024

○藤本 將輝,岡島 康雄,石田 孝司,郭 磊,高嶋 圭史(名大SRセンター, あいちSR),堀米 利夫(あいちSR),金木 公孝,森里 邦彦,岸田 守(スプリングエイトサービス),加藤 政博(広大HiSOR, 分子研UVSOR, 名大SRセンター),國枝 秀世(あいちSR)
○Masaki Fujimoto, Yasuo Okajima, Takashi Ishida, Lei Guo, Yoshifumi Takashima (NUSR, AichiSR), Toshio Horigome (AichiSR), Kimitaka Kaneki, Kunihiko Morisato, Mamoru Kishida (SES), Masahiro Katoh (HiSOR, UVSOR, NUSR), Hideyo Kunieda (AichiSR)
 
あいちシンクロトロン光センター(あいちSR)は、愛知県の科学技術政策である「知の拠点あいち」計画における中核施設として、中部地区を中心とする大学、研究機関、産業界、愛知県の協力によって建設され、科学技術交流財団が運営してきた。2013年3月より産業利用を中心とした放射光の供用を行っている。あいちSR光源加速器は、50 MeV直線加速器、1.2 GeVブースターシンクロトロン、1.2 GeV蓄積リングから構成され、ビーム電流300 mAでトップアップ運転を行っている。蓄積リングは周長72 m、ラティス構成はTriple-bendの4回対称であり、ユニットセルの3台の偏向電磁石の内、両端の2台は磁場強度1.4 T、偏向角39°の常伝導電磁石であるが、中央の1台はピーク磁場5 T、偏向角12°の超伝導電磁石であり、比較的小型の蓄積リングながら25 keV程度までの実用強度を持つ放射光の供給を可能としている。直線部の1カ所にはAPPLE-II型アンジュレータ1台が設置されている。供用開始当時のビームラインは6本であったが、現在では企業専用2本および大学1本を含む計12本のビームラインが稼働している。2023年度における加速器の総運転時間は2,059時間であり放射光ユーザーの利用時間は1,389時間であった。計画されたユーザー利用運転時間に対して光源が運転できなかった時間は約27時間であり、稼働率は約98.0 %であった。本発表では、あいちSR光源加速器の現状について報告する。
 
 
TFSP09

東北大学RARISのサイクロトロン加速器施設の現状報告
Present status of the cyclotron facility at RARIS in Tohoku University
○足立 智(東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)
○Satoshi Adachi (RARIS, Tohoku University)
 
東北大学先端量子ビーム科学研究センター(RARIS)は、2024年4月に旧東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(CYRIC)と旧東北大学電子光理学研究センター(ELPH)が合併して新たな組織として設立された組織である。RARISは、旧CYRICのサイクロトロン施設と旧ELPHの電子線加速器施設を引き継ぎ、従来の研究に加えて短寿命RI製造・供給の安定化と拡大を行い、研究者ネットワーク構築による幅広い学術研究を発展的に研究を推進することを目指している。RARISのサイクロトロン施設は2台のサイクロトロン加速器、930型AVFサイクロトロン及びHM-12型サイクロトロンを有しており、理工学およびライフサイエンスの研究に供してきている。最近では、大強度加速器中性子源による医療量RI製造プロジェクトであるDATEプロジェクトを推進するために、様々な核種を様々なエネルギーのイオンビームを提供する能力を維持しながら、大強度の負重水素イオンビームの加速と引き出しシステムを開発している。また、原子核・宇宙物理学的興味から、宇宙における炭素合成反応率のさらなる理解のために必要となる10 MeV単色中性子源の開発も行っている。本発表では、最近の加速器の運転・利用状況及びトラブル例の報告とともに、負重水素イオン加速、10 MeV単色中性子源の開発、並びに大強度ビーム照射試験ラインの計画についての概略を報告する。
 
 
TFSP10
p.1194
群馬大学重粒子線医学センターの現状
Present status of Gunma University Heavy Ion Medical Center

○中尾 政夫,川嶋 基敬,松村 彰彦,酒井 真理,島田 博文,田代 睦,Varnava Maria,遊佐 顕(群大重医セ),想田 光(山形大),野田 耕司(量研)
○Masao Nakao, Motohiro Kawashima, Akihiko Matsumura, Makoto Sakai, Hirofumi Shimada, Mutsumi Tashiro, Maria Varnava, Ken Yusa (GHMC), Hikaru Souda (Yamagata Univ.), Koji Noda (QST)
 
群馬大学重粒子線医学センターの普及型炭素線治療装置は2010年に炭素線治療を開始した。2023年の治療症例は797症例となり、累計では6939症例となった。泌尿器のがん(前立腺がん)が約6割を占めており、肝臓がん、膵臓がん、骨軟部腫瘍が続いている。装置の運転状況、故障情報を集積するため、2023年4月からトラブルデータベースPT-DOMを使用している。ここに運転時間を毎日入力することで運転統計を容易に作成することができた。また、昨年度のトラブルのうち治療停止時間の長い順にソートすることで主なトラブルを一覧することができる。本発表では昨年度における当施設での加速器運転、治療の統計、主な故障とそれに対する対処について報告する。
 
 
TFSP11
p.1197
SAGA Light Source光源加速器の現状
Present status of accelerators of SAGA Light Source

○竹田 晴信,金安 達夫,高林 雄一,岩崎 能尊(九州シンクロトロン光研究センター)
○Harunobu Takeda, Tatsuo Kaneyasu, Yuichi Takabayashi, Yoshitaka Iwasaki (SAGA-LS)
 
SAGA Light Source (SAGA-LS)は周長75.6 mの1.4 GeV蓄積リングを有する佐賀県の放射光施設である.2006年のユーザー利用の開始以来,SAGA-LSでは週1日のスタディ運転および週4日のユーザー運転を定常的な運転サイクルとしている.入射器は255 MeVの線形加速器であり,蓄積リングは最大蓄積ビーム電流約300 mAからDecayモードにて放射光利用運転を行う.挿入光源は二台のアンジュレータ(APPLE-II型アンジュレータ,平面型アンジュレータ)と二台のハイブリッド型三極超電導ウィグラーを設置している.偏向電磁石光源と合わせて,SAGA-LSは小規模の放射光施設ながらも10 eVから40 keV程度にわたる広い波長範囲をカバーしている.放射光利用ビームラインは11本が設置されており,直近五年での年間ユーザー利用時間は1600時間程度であり,ビームアボート率は5%前後である.ビームアボートの主な原因は蓄積リング六極電磁石漏水,リニアッククライストロン故障、空洞反射、電子銃高圧電源の故障、電磁石電源の故障および瞬低であった.コミッショニング開始から20年が経過し特にリングRF系と電磁石電源の故障頻度が近年増加傾向にあり,本年度及び次年度にこれら機器の更新を予定している.加えてセプタム電磁石,セプタム・キッカー電磁石電源,蓄積リングステアリング電源に関しても更新のための準備を進めている.本発表ではSAGA-LSの現状を報告する.
 
 
TFSP12

東大ライナック・レーザー施設報告 2024
Status report of linac/laser facility of University of Tokyo in 2024
○橋本 英子,安見 厚志,坂上 和之(東大原子力専攻)
○Eiko Hashimoto, Atsushi Yasumi, Kazuyuki Sakaue (University of Tokyo, Nuclear Professional School)
 
東大電子線形加速器施設ライナックには、2本のビームライン(18L, 35L)を有しており、極短パルスを用いての放射線化学、量子ビーム工学、等の開発等の実験研究に利用されて着実に成果を出し続けている。また、学生実習でも利用されている。当施設は、利用開始から40年以上経過したこともあり、経年劣化による保守作業が頻発している。本報告では、運転・保守の現状について報告する。
 
ポスター②③ (8月1日・8月2日 3F研修室A)
 
TFSP13
p.1201
若狭湾エネルギー研究センターシンクロトロンの現状
Present status of the synchrotron at WERC

○栗田 哲郎,山田 裕章,廣戸 慎,清水 雅也,古川 靖士,渕上 隆太,小田部 圭佑,羽田 祐基,石井 勇揮,羽鳥 聡(若狭湾エネ研)
○Tetsuro Kurita, Hiroaki Yamada, Makoto Hiroto, Masaya Shimizu, Seiji Furukawa, Ryuta Fuchigami, Keisuke Otabe, Yuki Haneda, Yuki Ishii, Satoshi Hatori (WERC)
 
若狭湾エネルギー研究センター加速器施設(W-MAST)は、タンデム加速器および、それを入射器としたシンクロトロンによって、広範囲のエネルギーのイオンビーム(陽子 : 数MeV-200MeV; He, C : 数 MeV/u- 55MeV/u)を様々な実験に供給している。 現在、加速高周波制御のLLRFの開発に取り組んでいる。これまでDSPとDDSおよびアナログ回路によって構成されていた制御を、FPGAを用いたデジタル制御に置き換える。2018-2019年にFPGA回路の設計および制作を行なった。2020年度はLLRFと一体のシステムとして動作するビーム位置信号制御系を製作した。2023年10月から実際の運転に用いている。現在、BPM信号処理系のデバッグおよび、T-Clockモードの導入、四極モード位相振動フィードバックの改良に取り組んでいる。
 
ポスター②③ (8月1日・8月2日 3F交流室A)
 
TFSP14
p.1206
理研RIBFにおける稀少RIリングの現状
Present status of Rare-RI Ring at RIKEN RIBF

○山口 由高(理研仁科センター),矢野 朝陽(筑波大),大西 哲哉,阿部 康志(理研仁科センター),小沢 顕(筑波大),滝浦 一樹(埼玉大),長江 大輔(東工大),森口 哲朗(筑波大),山口 貴之(埼玉大),若杉 昌徳(京大化研)
○Yoshitaka Yamaguchi (RIKEN Nishina Center), Asahi Yano (Univ. of Tsukuba), Tetsuya Ohnishi, Yasushi Abe (RIKEN Nishina Center), Akira Ozawa (Univ. of Tsukuba), Kazuki Takiura (Saitama Univ.), Daisuke Nagae (Tokyo Institute of Technology), Tetsuaki Moriguchi (Univ. of Tsukuba), Takayuki Yamaguchi (Saitama Univ.), Masanori Wakasugi (ICR, Kyoto Univ.)
 
理研RIBFの重イオン蓄積リング「稀少RIリング」は、他の装置では測定できない領域、つまり、ミリ秒オーダーの極短寿命かつ1日に数個しか生成されない稀少なRIの精密質量測定を目指して、2012年に建設を開始した。2015年に78Krを用いたビームコミッショニングに成功し、不安定核ビームを用いたマシンスタディを重ね、2018年に最初の質量測定実験を実現した。現在も「測定効率と測定精度の向上」をキーワードとして改良を継続している。測定効率の向上のため、入出射に使用しているキッカー電磁石の改良を実施した。その結果として測定時間を実験開始当初の1/2~1/3に短縮することに成功した。また、実験開始当初からの懸念事項であったビームの軸ずれによる入射効率の低下については、垂直方向ステアリング電磁石を導入することで解決を図った。本講演では、測定効率の向上に関連するマシンスタディの結果とともにキッカー電磁石電源で発生した不具合を含め、稀少RIリングの現状を報告する。
 
 
TFSP15
p.1210
iBNCT加速器進捗状況報告
Progress report of the iBNCT accelerator

○方 志高,佐藤 将春,杉村 高志,栗原 俊一,柴田 崇統,二ツ川 健太,福井 佑治,溝端 仁志,内藤 富士雄,小林 仁,三浦 太一,帯名 崇,久保田 親,南茂 今朝雄(KEK),熊田 博明,田中 進(筑波大学),大場 俊幸,名倉 信明,豊島 寿一(NAT),小栗 英知(JAEA)
○Zhigao Fang, Masaharu Sato, Takashi Sugimura, Toshikazu Kurihara, Takanori Shibata, Kenta Futatsukawa, Yuji Fukui, Satoshi Mizobata, Fujio Naito, Hitoshi Kobayashi, Taichi Miura, Takashi Obina, Chikashi Kubota, Kesao Nanmo (KEK), Hiroaki Kumada, Susumu Tanaka (University of Tsukuba), Toshiyuki Ohba, Nobuaki Nagura, Toshikazu Toyoshima (NAT), Hidetomo Oguri (JAEA)
 
2011年からKEKと筑波大学が中心となり、また茨城県・つくば市・民間会社と連携する共同事業、つくば国際戦略総合特区のプロジェクトとしたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用の治療装置を開発するプロジェクトiBNCT(ibaraki-BNCT)が東海キャンパスで展開されている。加速器ベースの中性子源となる陽子リニアックはKEKがJ-PARCリニアックの技術を応用して開発され、また中性子ビームの大出力化より短時間での治療を可能とする医療仕様を実現されている。2019年にiBNCT加速器は非臨床試験及び治験に満たした平均ビーム電流2 mAを達成し、2021年から2022年までに細胞やマウスを対象にした非臨床試験を完了、2024年1月から治験を開始した。治験開始はiBNCT装置の実用化(医療導入)に向けた大きなマイルストーンであり、本稿ではiBNCT加速器の概要及び歴史、進捗状況、ビーム性能、それから将来の展望を紹介する。
 
ポスター②③ (8月1日・8月2日 3Fホワイエ)
 
TFSP16
p.1214
J-PARC加速器の現状
Status of J-PARC accelerators

○小栗 英知(J-PARCセンター)
○Hidetomo Oguri (J-PARC Center)
 
J-PARC施設は、リニアック、RCS (Rapid Cycling Synchrotron)およびMR (Main Ring synchrotron)の3加速器施設と、RCS からの3 GeV ビームを利用する物質生命科学実験施設(MLF)、MR からの30 GeV ビームを利用するハドロン実験施設(HD)およびニュートリノ実験施設(NU)の3実験施設から構成される。MRにおいては、2021年の夏から運転を長期休止し、サイクルの繰り返し周期を2.48秒から1.36秒に短縮する大改造を行った。2023年から1.36秒繰り返し周期によるビーム運転を再開し、同年12月にこれまでの最高となる760kWのビームパワーをNUに出すことに成功した。また、運転モードの異なるHDに対しても、大改造前の記録である65kWから80kWに増強することに成功した。RCSにおいては、ビームロス低減スタディを続けながら徐々にビームパワーを増強し、2024年4月からはMLFターゲットにほぼ定格の950kWのビーム供給を開始した。一方で、2023年4月と6月に2回、電源装置から火災が発生し、ビーム運転を長期間停止する事態に至った。本学会では、ビームパワー増強のプロセスや火災事象など、最近の加速器の運転状況について報告する。
 
 
TFSP17
p.1219
QST量医研サイクロトロン(NIRS-930, HM-18)の現状報告
Status report of NIRS-930 and HM-18 cyclotron at QST-iQMS

○北條 悟,涌井 崇志,杉浦 彰則,村松 正幸,片桐 健(量研-量医研),岡田 高典,神谷 隆(加速器エンジニアリング),岩田 佳之,白井 敏之(量研-量医研)
○Satoru Hojo, Takashi Wakui, Akinori Sugiura, Masayuki Muramatsu, Ken Katagiri (QST-iQMS), Takanori Okada, Takashi Kamiya (AEC), Yoshiyuki Iwata, Toshiyuki Shirai (QST-iQMS)
 
量子科学技術研究開発機構(QST)量子医科学研究所(量医研)のサイクロトロン施設には、1974年に運転開始したNIRS-930 (K=110)と、1994年に運転を開始した放射性核種(RI)生産専用のHM-18(K=20)の、2台のサイクロトロンがある。 2021年11月に発生した火災により2台のサイクロトロンは停止したが、2022年9月にHM-18の供給運転を再開した。HM-18における2023年度の総運転時間は1194時間で、その内の1123時間をRI生産に用いられた。その他の71時間は、放射線漏洩測定や調整運転に用いられた。大きな故障トラブル等もなく、順調に供給運転を行った。NIRS-930は、現在も復旧に向けて準備及び検討を進めている。 本報告では、HM-18の運転状況とNIRS-930の復旧に向けた準備と検討状況について報告を行う。
 
 
TFSP18
p.1222
KEK先端加速器施設(ATF)におけるナノビーム技術開発
Development of the nanometer beam technology at the accelerator test facility

○奥木 敏行,阿部 優樹,荒木 栄,アリセフ アレクサンダー,久保 浄,倉田 正和,クルーチニン コンスタンテイン,黒田 茂,照沼 信浩,内藤 孝,中村 英滋,福田 将史,ポポフ コンスタンテイン,森川 祐(高エネ研)
○Toshiyuki Okugi, Yuuki Abe, Sakae Araki, Alexander Aryshev, Kiyoshi Kubo, Masakazu Kurata, Konstantin Kurichinin, Shigeru Kuroda, Nobuhiro Terunuma, Takashi Naito, Eiji Nakamura, Masafumi Fukuda, Konstantin Popov, Yu Morikawa (KEK)
 
KEKのATFは、国際リニアコライダー(ILC)で必要な低エミッタンスビームを生成できるダンピングリングと、ダンピングリングで生成された低エミッタンスビームをナノメートル極小ビームまで収束できるATF2ビームラインを有して、ILCに必要とされるビーム収束技術、ビーム制御技術の開発を目的として作られた試験加速器である。また、ATF2ビームラインには、20nm位置分解能の空洞型BPM、ナノメートル極小ビームを測定するレーザー干渉縞型ビームサイズモニターといったナノメートル極小ビームに対するビーム計測装置があり、ILCのためのビーム収束技術に限らず、広くナノメートル極小ビームの研究に適した施設となっている。近年ATFでは、ナノビーム収束技術、ナノビームの安定運転、ナノビーム計測技術の3つの柱に対する研究を中心に研究開発を進めており、それらの目的を達成するために国際協働でナノメートル極小ビームに対する高次収差の影響、ウェイク場の影響の研究とその軽減、最新の加速器調整技術を使ったビーム調整技術開発の研究を進めている。
 
 
TFSP19
p.1227
筑波大学タンデム加速器施設における偏極イオン源の現状
Status of polarized ion source at the University of Tsukuba

○大和 良広,森口 哲朗(筑波大応用加速器),小沢 顕(筑波大数理物質系)
○Yoshihiro Yamato, Tetsuaki Moriguchi (UTTAC, Univ. Tsukuba), Akira Ozawa (IPAS, Univ. Tsukuba)
 
筑波大学 放射線・アイソトープ地球システム研究センター 応用加速器部門(UTTAC)では6MVタンデム加速器への入射器の一つとしてラムシフト型偏極イオン源(PIS)を所有している。偏極陽子(偏極度~85%)と偏極重陽子(偏極度~75%)の供給が可能であり、これらの最大ビームエネルギーは12 MeVである。 PIS は東日本大震災で被災したが移設、復旧を経て、現在も順調に稼働している。 主に原子核実験の分野で利用されており、特に、不安定核の核モーメント測定に利用されている。 本発表では、PIS の現状を中心に利用成果である核モーメント測定についても一部報告する。