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2023年1月11日 公開

プロシーディングス目次(アブストラクト付き) (論文掲載 274 件、○印は発表者)

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10月18日(火)口頭発表セッション
(合同セッションに引き続き、萌芽的加速器技術の提案ポスターの要約発表セッション開始)
 合同セッション(10月18日 会議室A 9:40- ) 4 件
 加速器技術(加速器制御)(10月18日 会議室A 16:00 ) 4 件
 ビームダイナミクス・加速器理論/加速器技術(真空)①(10月18日 会議室B 16:00 ) 4 件
 
10月19日(水)口頭発表セッション
 電子加速器(10月19日 会議室A 9:00- ) 5 件
 企画セッション①(10月19日 会議室A 11:00 ) 1 件
 加速器技術(粒子源)/レーザー(10月19日 会議室A 15:30 ) 6 件
 加速器技術(真空)/加速器土木・放射線防護(10月19日 会議室B 9:00- ) 5 件
 加速器技術(高周波源・LLRF)(10月19日 会議室B 15:30 ) 6 件
 
10月20日(木)口頭発表セッション
 光源加速器(10月20日 会議室A 9:00- ) 5 件
 企画セッション②(10月20日 会議室A 11:00 ) 1 件
 受賞講演(10月20日 会議室A 15:50 ) 2 件
 加速器応用・産業利用(10月20日 会議室B 9:00- ) 5 件
 
10月21日(金)口頭発表セッション
 ハドロン加速器①(10月21日 会議室A 9:00- ) 4 件
 ハドロン加速器②/加速器技術(加速構造)①(10月21日 会議室A 10:30 ) 5 件
 加速器技術(加速構造)②(10月21日 会議室A 15:30 ) 4 件
 加速器技術(ビーム診断・ビーム制御)①(10月21日 会議室B 9:00- ) 4 件
 加速器技術(ビーム診断・ビーム制御)②/加速器技術(電磁石と電源)①(10月21日 会議室B 10:30 ) 5 件
 加速器技術(電磁石と電源)②(10月21日 会議室B 15:30 ) 4 件
 
10月18日(火)ポスターセッション
 ポスター①(10月18日 会議室P 13:30-15:30 ) 60 件
 
10月19日(水)ポスターセッション
 ポスター②(10月19日 会議室P 13:00-15:00 ) 57 件
 
10月20日(木)ポスターセッション
 ポスター③(10月20日 会議室P 13:00-15:00 ) 59 件
 
10月21日(金)ポスターセッション
 ポスター④(10月21日 会議室P 13:00-15:00 ) 60 件
 
10月18日(火)~21日(金)萌芽的加速器技術の提案
 常設ポスター(10月18日-21日 会議室P 18日13:30-15:30/その他13:00-15:00 ) 1 件
 
10月18日(火)~19日(水)施設技術報告ポスター
 ポスター①②(10月18日・19日 会議室P 18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 ) 15 件
 
10月20日(木)~21日(金)施設技術報告ポスター
 ポスター③④(10月20日・21日 会議室P 13:00-15:00 ) 15 件

合同セッション (10月18日 会議室A)
9:40-10:10 
TUOPA01

[Slides]
重力波観測の今・未来
Gravitational wave observation -now and future
○都丸 隆行(国立天文台)
○Takayuki Tomaru (National Astronomical Observatory of Japan)
 
2022年現在までに合計90個の重力波イベントが観測されており、そのほとんどは太陽質量の数10倍の質量を持つ連星ブラックホール合体から放射されたものである。何故これほど多くの重いブラックホールが宇宙に存在するのかについては謎である。また、連星中性子星合体や中性子星-ブラックホール連星合体からの重力波イベントもいくつか発見されている。特に2017年に検出された連星中性子星合体GW170817では重力波検出の1.7秒後にショートガンマ線バースト(SGRB)が観測され、長年謎であったSGRBの起源がほぼ特定されるなど大きな成果を上げた。 このように、重力波天文学は飛躍的に発展を続けている。日本では米国LIGO、ヨーロッパVirgoに続いて第3極の重力波望遠鏡KAGRAの運用を開始したところであり、これによりイベント位置の特定精度向上や重力波偏波の検出などに寄与することを目指している。KAGRAはLIGO・Virgoより20年遅れて建設されたため、LHCで培われた超高真空技術など新しい加速器技術が多く導入されており、しばしば2.5世代重力波望遠鏡と呼ばれる。また、KAGRAの技術を採用したヨーロッパのEinstein Telescope(ET)など第3世代重力波望遠鏡計画も急速に進展している。ETでは最終的に連星ブラックホール合体イベントに対して赤方偏移50近くまでの感度を持つ予定であり、ブラックホールの起源について解明出来る可能性がある。 本講演では、最新の重力波観測とETなど将来の超大型重力波望遠鏡計画について報告する予定である。
 
10:10-10:40 
TUOPA02

[Slides]
加速器制御への機械学習の適用
Application of machine learning to the accelerator operation tuning
○岩崎 昌子(阪公大理学研究科・阪大RCNP)
○Masako Iwasaki (Osaka Metropolitan Univ. / Osaka Univ. RCNP)
 
近年、情報分野での最先端技術である、機械学習の加速器制御への適用について、様々な研究開発事例が報告されている。機械学習や深層学習は、自動走行や、医療画像の自動診断などで注目されている、AIの基盤技術である。機械学習では、明確なモデルや事象の関連性が特定できなくても学習によって入出力の関係をモデル化できるため、非線形な応答を高速に、高精度で得ることが可能である。 ここで、大型加速器制御では、構成機器点数が多く、複雑な運転システムの制御が必要である。また、温度変化や振動、潮汐力等、周囲の環境が変化するため、最適な制御パラメータを得るために、常時調整を行う必要もある。これらの問題を解決するために、機械学習が有効であると考えられる。最先端の機械学習技術の導入によって、人では到達できないような、高効率、高精度な制御の実現が期待される。 本講演では、種々の機械学習技術についての導入的な説明を行い、その後、様々な加速器への適用状況を紹介する。また、機械学習適用開発の実例として、KEK Linac加速器への適用開発について、現状を含めて紹介する。
 
10:40-11:10 
TUOPA03
p.1
J-PARC 3GeVシンクロトロンにおける大強度ビーム損失低減の達成
Achievement of low beam loss at high-intensity operation of J-PARC 3 GeV RCS

○サハ プラナブ,岡部 晃大,仲野谷 孝充,吉本 政弘,菖蒲田 義博,原田 寛之,田村 文彦,沖田 英史,畠山 衆一郎,守屋 克洋,山本 風海(原子力機構, J-PARC センター),發知 英明(KEK/J-PARC)
○Pranab Saha, Kota Okabe, Takamitsu Nakanoya, Masahiro Yoshimoto, Yoshihiro Shobuda, Hiroyuki Harada, Fumihiko Tamura, Hidefumi Okita, Shuichiro Hatakeyama, Katsuhiro Moriya, Kazami Yamamoto (JAEA, J-PARC), Hideaki Hotchi (KEK/J-PARC)
 
In the 3-GeV RCS (Rapid Cycling Synchrotron) of J-PARC, the beam power is increased to 800 kW for operation to the MLF (Material and Life Science Experimental Facility). The total beam loss up to the designed 1 MW has already been well controlled, but for further minimizing the beam loss, especially the uncontrolled ones caused by the foil scattering of the circulating beam during multi-turn charge-exchange injection, recently we have implemented a new approach by minimizing the injection beam size and using a smaller size stripper foil. A smaller foil reduces foil hitting of the circulating beam so does the foil scattering uncontrolled beam loss mainly at the injection area. In addition, an optimized transverse painting area matching with a smaller injection beam also gives a smaller circulating beam emittance to reduce beam loss at the collimator section and the downstream. The corresponding residual radiation at 700 kW was measured to be significantly reduced as compared to that with an original bigger injection beam size and a larger foil. An optimized injection beam size with a smaller foil have been successfully implemented for the RCS operation.
 
11:10-11:40 
TUOPA04

九州大学における素粒子・原子核研究と加速器科学
Nuclear and particle physics and accelerator science at Kyushu University
○若狭 智嗣(九州大学大学院理学研究院)
○Tomotsugu Wakasa (Department of Physics, Kyushu University)
 
九州大学では、理学研究院・工学研究院等の部局と、超重元素研究センター (RCSHE)・先端素粒子物理研究センター(RCAPP)・加速器ビーム応用科学センター(CABAS)のセンターが連携した「先端素粒子・原子核研究拠点」を形成し、素粒子・原子核等の基礎科学の分野において国際的なネットワークを構築すると共に、若手研究者や博士課程学生の育成を推進している。現在、元素の周期表は7周期目まで完成し、九州大学は基幹組織として119番新元素合成実験を理化学研究所で推進している。新元素合成は極めて長期間に渡る研究であるが、119番・120番の新元素を発見することは科学のフロンティアである。他方、素粒子実験においても、CERN/LHCにおいて令和4年2月からRun3実験が開始され、ヒッグス粒子の性質の測定や、標準理論を超える物理の探索などが行われる。また、J-PARC/COMETにおいても令和4年12月には最初のミューオンビームを用いたPhase-α実験が予定されている。加速器センターにおいては、タンデム加速器のビームは教育・研究に供されており、新元素・新同位体・不安定核研究に用いる検出器開発等が行われている。また、FFAG加速器からの100 MeV級陽子ビームを実験に供する為の「FFAGビーム照射システム」や、京都大学から移設した「ERIT中性子発生装置」の整備が進みつつある。 本講演では、このような九州大学における原子核・素粒子物理学や加速器科学の研究について最近の成果や将来計画・展望を紹介する。
 
加速器技術(加速器制御) (10月18日 会議室A)
16:00-16:20 
TUOA01
p.6
4K以下の温度計測を目的とした温度センサの開発
Development of temperature sensor for temperature measurement of 4K or less

○丸山 卓也,山田 光二,原 和宏,三谷 晃司,久保田 秀樹,肥後橋 誠,木村 和弘,齊藤 理,山名 勝(岡崎製作所),清水 洋孝,仲井 浩孝(高エネルギー加速器研究機構)
○Takuya Maruyama, Koji Yamada, Kazuhiro Hara, Kouji Mitani, Hideki Kubota, Makoto Higobashi, Kazuhiro Kimura, Osamu Saito, Masaru Yamana (OKAZAKI MANUFACTURING COMPANY), Hirotaka Shimizu, Hirotaka Nakai (KEK)
 
近年の超伝導加速器では4K以下の温度で冷却される超伝導機器が多くなってきた。そこで、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構と株式会社岡崎製作所は、2016年度より4K以下の温度計測を目的とした品質の安定した温度センサの開発を行っている。従来は4Kまでしか測定できないとされていた白金コバルト温度センサ(以下Pt-Co RTD)は、4K以下でも良好な抵抗値変化が見られることが確認できた。さらに、4K以下の温度校正(精密な抵抗値測定)及び再現性、自己加熱特性について基礎的なデータの取得を行い、4K以下での温度特性および性能が明らかとなった。開発したPt-Co RTDの形状及び構造、現在までに取得したデータについて報告を行う。また、開発したPt-Co RTDをKEKのSTF-2クライオモジュール内に取り付け、実機での温度計測を検証中であり、今後の展開についても報告する。
 
16:20-16:40 
TUOA02
p.9
アーカイバーアプライアンスのRIBF制御系への展開
Deployment of archiver appliance to RIBF control system

○内山 暁仁,木寺 正憲,込山 美咲(理研仁科センター),金子 健太(住重加速器サービス)
○Akito Uchiyama, Masanori Kidera, Misaki Komiyama (RIKEN Nishina Center), Kenta Kaneko (SHI Accelerator Service)
 
加速器を構成するコンポーネントの履歴データを蓄積するシステムをデータアーカイブシステムと呼んでいる。これは加速器運転中における予期しないビーム状態の変化の原因解析や各運転パラメータ間の相関の検索、また性能向上を目的としたデータ解析等で利用されている。RILAC制御系のために新たに導入されたArchiver Applianceは超伝導線形加速器の振る舞いの理解や異常検知に大いに役立ち、当初の計画通りにビームを加速することに成功、プロジェクトに貢献することができた。この成功の結果、Archiver ApplianceはRIBF制御系全体へ拡張されてきて、現在ほぼ全てのEPICS Process Variable(PV)の点数、約20万点のパラメータが格納されている。一般的な使い方としてデータの相関を見る時、関係しそうなパラメータを選択し、視覚化する作業が必要になる。これはある程度原因に見当がついていないケースではコストは大きい。一方、相関関係を表す一つの指標としてピアソン相関係数があるが、ビーム電流や真空度のデータと他パラメータのピアソン相関係数を自動で検索、分析するツールがあれば、コスト削減に有効ではないかと考えている。また膨大なパラメータから必要なデータを探すコストを小さくする目的でPVの日本語でのディスクリプションを用意し、検索機能も実装した。会議ではRIBF制御系全体に展開されたArchiver Applianceの運用状況と開発されたツールの報告を行う。
 
16:40-17:00 
TUOA03

ベイズ最適化を用いた陽子線ビームサイズ・位置の自動調整システムの検討
Examination of automatic adjustment system for proton beam size and position using Bayesian optimization
○中島 秀,天野 大三,滝 和也,福井 基文,白澤 克年,宮下 拓也,橘 正則(住友重機械工業)
○Shu Nakajima, Daizo Amano, Kazuya Taki, Motofumi Fukui, Katsutoshi Shirasawa, Takuya Miyashita, Masanori Tachibana (Sumitomo Heavy Industries, Ltd)
 
陽子線がん治療装置の据え付け後の調整作業の中で時間を要している作業がビーム輸送系の調整であり、輸送する陽子のエネルギー毎にビーム輸送系を構成する各電磁石のパラメータを最適化する必要がある。ビーム輸送調整は輸送計算を元に実施しているが、調整は熟練性が求められるため限られた作業者によって行われることが多く、作業の標準化や効率化が急務である。解決策としてAIを使ったビーム調整の可能性について、ビーム軌道シミュレーションを用いて検討したので報告する。 ビーム調整に使用したAIは機械学習のハイパーパラメータ探索によく使用されるベイズ最適化を用いた。ベイズ最適化は学習フェーズを必要とせず、最適化したい関数の形状が分からない場合にも使用できる。そのため、初期条件が変動した場合や全く異なるビーム輸送系でもターゲットと測定値を知るだけで最適化が行え、複雑な輸送計算を必要としない。 本検討で作成したAIはビームサイズ調整とビーム位置調整の機能を分離した構成とした。電磁石の電流値や初期ビーム条件を設計値付近から調整させた場合と設計値からずらした場合の調整結果について報告する。また、本結果と比較するために一般的な最適化手法であるNelder-Mead法で調整した結果についても報告する。
 
17:00-17:20 
TUOA04
p.14
[Slides]
SACLAにおける機械学習による故障予知・異常検知アプリケーションの試作
Prototypes of failure prediction and anomaly detection applications using machine learning in SACLA

○佐藤 悠史(中央電子(株), 理研),清水 俊吾,上條 慎二(中央電子(株)),岩井 瑛人(理研, 高輝度光科学研究センター),前坂 比呂和(理研)
○Yuji Sato (CHUO ELECTRONICS CO., LTD., RIKEN SPring-8 Center), Shungo Shimizu, Shinji Kamijo (CHUO ELECTRONICS CO., LTD.), Eito Iwai (RIKEN SPring-8 Center, JASRI), Hirokazu Maesaka (RIKEN SPring-8 Center)
 
X線自由電子レーザー施設SACLAでは、多岐にわたる大量のセンサーが設置されており、施設安定稼働のために有効利用されている。しかしながら膨大な点数のため、十分には活用しきれていないデータも存在している。また、アナログ計器であるため、数値の読取りは目視で行うような計器類も多く存在する。そこで我々は、そういったセンサーデータや計器類に着目し、メンテナンス性の向上や点検の効率化のために機械学習を用いた手法を役立てられないか検討した。調査の結果、サイラトロンの余命推定、装置運転停止時のユーザー待機時間の推定、アナログ流量計の数値読取りといった対象を見つけるに至った。サイラトロンの自爆回数等にベイズ学習を適用して余命推定(故障予兆検知)することによる計画的なメンテナンスの実現、運転停止時のアラーム発報状況を基にした決定木回帰等によるユーザーへの待機予定時間の自動連絡、畳み込みニューラルネットワークを用いて画像認識したアナログ流量計の数値読取りによる点検作業の効率化である。本発表では、これらの取り組みに関して、試作したアプリケーション、および、評価結果について報告する。
 
ビームダイナミクス・加速器理論/加速器技術(真空)① (10月18日 会議室B)
16:00-16:20 
TUOB01
p.19
[Slides]
J-PARC MR Eddy-current type septum magnet用ビーム結合インピーダンス対策の評価の進捗
Progress of evaluation of beam coupling impedance reduction for the Eddy-current type septum magnet in J-PARC MR

○小林 愛音,外山 毅,中村 剛(KEK),菖蒲田 義博(JAEA),石井 恒次,冨澤 正人,佐藤 洋一,竹内 保直(KEK)
○Aine Kobayashi, Takeshi Toyama, Takeshi Nakamura (KEK), Yoshihiro Shobuda (JAEA), Koji Ishii, Masahito Tomizawa, Yoichi Sato, Yasunao Takeuchi (KEK)
 
J-PARC main ringではcoasting beamを作るデバンチングの過程において、縦方向ビーム不安定性による密度変調が発生し、それが電子雲の発生、そして電子雲による横方向ビーム不安定性を引き起こしている。横方向ビーム不安定性はビームロスを、そして電子雲は真空悪化を引き起こし、いずれもビーム強度増強の妨げになるため原因解明と対策が必須である。特に数百MHzの縦方向インピーダンスが関連していることが調べられており、個々の装置のインピーダンスを低減する対策を進めている。今年新しくインストールされるEddy-current type septum magnetは、シミュレーションにより大きなインピーダンスを持つことがわかり、テーパーを設ける空間的余裕がない場所にも適用可能なSiC電波吸収体を装荷したフランジによるインピーダンスの低減方法を検討している[1]。今回の発表では、実機に使用するSiCの特性評価、SiC評価結果を反映したインピーダンスシミュレーション、およびワイヤー法によるインピーダンス測定によるインピーダンス対策効果の評価、ビームシミュレーションおよびビームスタディーによるビームに対する効果の評価を進めており、結果および進捗について報告する。 [1] A.Kobayashi et al., NIM-A,1031,2022,166515,ISSN 0168-9002.
 
16:20-16:40 
TUOB02
p.24
KEK-ATFにおける極小ビームのビーム強度依存性とウェイク場の影響評価
Intensity dependence of nano meter small beams at KEK-ATF and evaluation of wake field effects

○阿部 優樹(総研大),久保 淨,奥木 敏行,照沼 信浩(高エネ研、総研大)
○Yuki Abe (SOKENDAI), Kiyoshi Kubo, Toshiyuki Okugi, Nobuhiro Terunuma (KEK, SOKENDAI)
 
ATFでは国際リニアコライダー(ILC)に求められる極小ビームを実現する最終収束技術の研究開発を進めている。目標鉛直ビームサイズ37nmに対して、2016年には鉛直ビームサイズ41nmまで達成していることを確認した。ATFの極小ビームはウェイク場を主たる原因とするビーム強度依存性を持つ。2016年にはウェイク場の影響を低減するためのビームラインの改造が行われ、先行研究にてビーム強度依存性が緩和されたことを確認した。ただし、ウェイク場の影響評価を行った解析結果と実験結果が定量的に一致しなかった。原因の一つとして、考慮できていないウェイク源がビームライン上にあると考えられている。安定な極小ビームの生成、ATFビームラインの更なる高度化を検討する上で各ウェイク源に対する更なる理解が重要とされている。報告者らは十分考慮されていなかった加速器コンポーネント(真空部品、可撓部品など)の電磁場解析を実施し、実際のビームラインをより正確に再現する計算モデルの構築を行った。また、ウェイク場の影響評価試験のためにATFビームラインへの真空容器のインストールを検討している。本報告ではこれらに向けた作業の進捗と現状について述べる。
 
16:40-17:00 
TUOB03
p.28
有限な厚みをもつ2次元抵抗性壁面インピーダンス --その数学的構造と物理的意味--
Two-dimensional resistive-wall impedance with finite thickness: Its mathematical structures and their physical meanings

○菖蒲田 義博(原研/J-PARC)
○Yoshihiro Shobuda (JAEA/J-PARC)
 
相対論的ビームに対してスキンデプスがチャンバーの厚さより大きい場合、有限の厚さを持つ円筒形チャンバーの抵抗壁インピーダンスは周波数に比例して減少する。この現象は一般に、電磁場がチャンバーから漏れていると解釈されている。しかし、従来の抵抗壁インピーダンスの式では、スキンデプスがチャンバーの厚みを超えたときに壁電流がどのように漏れ場に変換されるかを動的に表現できない。そのため、チャンバー上の壁電流とチャンバーからの漏れ場の関係は不明であった。本研究では、それらを基礎的な立場から見直し、有限の厚さを持つ縦方向の抵抗性インピーダンスについて、より適切な描像を提供する。
 
17:00-17:20 
TUOB04
p.33
SuperKEKBにおける銅溶射ビームパイプの電子密度の測定
Measurement of electron density in copper thermal spray beam pipe in SuperKEKB

○姚 慕蠡(総研大),末次 祐介,柴田 恭,石橋 拓弥(KEK, 総研大),久松 広美,金澤 健一,白井 満,照井 真司(KEK)
○Mulee Yao (SOKENDAI), Yusuke Suetsugu, Kyo Shibata, Takuya Ishibashi (KEK, SOKENDAI), Hiromi Hisamatsu, Ken-ichi Kanazawa, Mitsuru Shirai, Shinji Terui (KEK)
 
In the previous studies, we confirmed that the copper thermal spray coating has low secondary electron yield (SEY). The lowest δmax (the maximum SEY within scanning) after conditioning reached ~0.7. We produced a straight aluminum beam pipe with copper thermal spray coating using optimized conditions and installed it in the positron ring of SuperKEKB, in order to observe the effect of the coating on reducing the electron cloud. Its surface resistance was also measured as a reference for whether it can be used in accelerators. The results show that the electron density in the copper thermal spray beam pipe was much smaller than that in the bare aluminum beam pipe and was comparable to that of the TiN-coated beam pipe.
 
電子加速器 (10月19日 会議室A)
9:00-9:20 
WEOA01

LAPLACIAN: a step forward for compact LPA based electron accelerators
○Driss Oumbarek Espinos, Zhan Jin, Zhenzhe Lei, Naveen Pathak, Yoshio Mizuta, Alexei Zhidkov, Tomonao Hosokai, Yuji Sano (Institute of Scientific and Industrial Research (ISIR), Osaka University, Mihogaoka 8-1, Ibaraki, 5 6 Osaka, 567-0047, Japan), Kai Huang, Izuru Daito, Nobuhiko Nakanii, Masaki Kando (Kansai Photon Science Institute, National Institutes for Quantum and Radiological Science and 10 Technology, 8-1, Umemi-dai, Kizugawa, Kyoto 619-0215, Japan.), Shigeru Yamamoto (KEK High Energy Accelerator Organization, 1-1, Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan)
 
The LAPLACIAN (Laser Acceleration Platform as a Coordinated Innovation Anchor) experimental facility inside the MIRAI project framework is the Japanese answer to the global effort for the development of compact accelerators based on laser plasma acceleration (LPA) for its application to free electron laser (FEL). Situated in the SPRING-8 site, LAPLACIAN aims for the generation of X-ray FEL with relativistic electrons (GeV) from an LPA source in a beamline of under 10 m. Due to the non-linear character of the plasma-laser interaction, achieving the proper electron beam parameters in a consistent manner and a reliable coupling with the undulator is non-trivial, therefore, each step of the process is a matter of careful research. Thus, in LAPLACIAN, for the electron generation multiple gas targets and LPA schemes are being studied, for the electron acceleration to GeV energies a multiple plasma stages setup is planned and for the beam correction and transport to the undulator a beamline based on classical magnetic elements is under development. In this work the LPA acceleration principle will be introduced, a facility overview shown, and some results and future steps presented.
 
9:20-9:40 
WEOA02
p.38
[Slides]
SuperKEKBにおけるスキュー六極磁場の試験導入
SuperKEKB test operation with skew sextupole magnets

○中村 衆,増澤 美佳,菅原 龍平,植木 竜一,川本 崇,大見 和史,Zhou Demin,森田 昭夫,大西 幸喜,杉本 寛,小磯 晴代(高エネ研)
○Shu Nakamura, Mika Masuzawa, Ryuhei Sugahara, Ryuichi Ueki, Takashi Kawamoto, Kazuhito Ohmi, Demin Zhou, Akio Morita, Yukiyoshi Ohnishi, Hiroshi Sugimoto, Haruyo Koiso (KEK)
 
SuperKEKBでは衝突点でのChromatic x-y coupling補正のため、陽電子リングのLERに、自身が回転することでスキュー六極磁場を発生させる回転六極電磁石を24台設置している。また、電子リングのHERにはKEKBで使用したスキュー六極電磁石8ペア、16台を設置している。LERに設置している回転六極電磁石は、回転架台に固定した六極電磁石を遠隔操作で±30度の範囲で傾けることによってスキュー六極磁場成分を発生させている。 Run 2021cにおいてLERの回転六極電磁石を用いたChromatic x-y coupling補正を実施し、衝突型加速器としては初めて傾斜角の異なる六極磁石によるChromatic coupling補正に成功した。またRun 2022aではHERにおいても、スキュー六極電磁石を用いたChromatic x-y coupling補正のビーム試験を実施し、一定の補正ができることを確認した。 ここでは、回転六極電磁石の詳細について報告するとともに、それぞれのリングでのChromatic x-y coupling補正の結果について報告する。
 
9:40-10:00 
WEOA03
p.42
[Slides]
IQ変調器を用いた高周波パルスの振幅位相平坦化による電子ビームの高品質化
Amplitude and phase control of RF pulse using IQ modulator for realizing high quality electron beam

○山田 志門,柏木 茂,長澤 育朗,南部 健一,高橋 健,日出 富士雄,三浦 禎雄,武藤 俊哉,鹿又 健,柴田 晃太郎,濱 広幸(東北大電子光)
○Shimon Yamada, Shigeru Kashiwagi, Ikurou Nagasawa, Ken'ichi Nanbu, Ken Takahashi, Fujio Hinode, Sadao Miura, Toshiya Muto, Ken Kanomata, Koutaro Shibata, Hiroyuki Hama (Tohoku Univ.)
 
我々の研究グループでは、東北大学電子光理学研究センターの試験加速器(t-ACTS)において、進行波加速管内での速度集群法(Velocity bunching)により極短パルス電子ビームを生成することで、コヒーレント放射やビームダイナミクスの基礎研究を進めている。今回、新たにローレベル高周波システムにIQ変調器を導入することで、電子ビームの高品質化を図った。具体的には、熱陰極RF電子銃に供給する高周波パルスの振幅と位相を平坦化することにより、ビームのマクロパルス内で速度集群法に適した運動量分布が均一かつ狭い電子ビームを生成する。現在、高周波の振幅及び位相の平坦化に機械学習の導入なども試みている。本発表では、t-ACTSに導入したIQ変調器を使った高周波振幅・位相変調システム及び、極短パルス電子ビームからのコヒーレント放射を用いた電子ビーム評価実験について報告する。
 
10:00-10:20 
WEOA04
p.46
[Slides]
ILCに向けたSTF-2クライオモジュールによる電子ビーム加速運転
Report of electron beam acceleration with STF-2 cryomodules for the ILC

○倉田 正和,山本 康史,加古 永治,梅森 健成,阪井 寛志,佐伯 学行,道前 武,マシュー オメット,片山 領,井藤 隼人,荒木 隼人,松本 利広,道園 真一郎,江木 昌史,明本 光生,荒川 大,片桐 広明,川村 真人,中島 啓光,早野 仁司,福田 将史,本田 洋介,島田 美帆,アレキサンダー アリシェフ(高エネルギー加速器研究機構),栗木 雅夫,荒本 真也,ザカリージョン リプタック(広島大学),坂上 和之(東京大学),仲井 浩孝,小島 裕二,原 和文,本間 輝也,中西 功太,清水 洋孝,近藤 良也,山本 明,木村 誠宏,荒木 栄,森川 祐,大山 隆弘,高原 伸一,増澤 美佳,植木 竜一(高エネルギー加速器研究機構),岩下 芳久(京都大学)
○Masakazu Kurata, Yasuchika Yamamoto, Eiji Kako, Kensei Umemori, Hiroshi Sakai, Takayuki Saeki, Takeshi Dohmae, Omet Mathieu, Ryo Katayama, Hayato Ito, Hayato Araki, Toshihiro Matsumoto, Shinichiro Michizono, Masato Egi, Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Masato Kawamura, Hiromitsu Nakajima, Hitoshi Hayano, Masafumi Fukuda, Yosuke Honda, Miho Shimada, Aryshev Alexander (KEK), Masao Kuriki, Shinya Aramoto, Liptak Zachary (Hiroshima University), Kazuyuki Sakaue (The University of Tokyo), Hirotaka Nakai, Yuuji Kojima, Kazufumi Hara, Teruya Honma, Kota Nakanishi, Hirotaka Shimizu, Yoshiaki Kondou, Akira Yamamoto, Nobuhiro Kimura, Sakae Araki, Yu Morikawa, Takahiro Oyama, Shin-ichi Takahara, Mika Masuzawa, Ryuichi Ueki (KEK), Yoshihisa Iwashita (Kyoto University)
 
KEKの超伝導リニアック試験施設(STF)において、7回目のSTF-2クライオモジュールの冷却試験とビーム運転が2021年11月から12月にかけて行われた。 これまでの冷却試験・ビーム運転の結果として、9空洞平均で33MV/mの加速勾配が得られており、これはILCのスペックを満たしている。 7回目の冷却試験では、これまでと同等の加速性能が得られることを確認した後、ビームロスとエミッタンス増大の問題に取り組んだ。 2021年4月のビーム運転において、クライオモジュール下流でエミッタンスの異常な増加が観測されていたため、今回の冷却試験前に空洞の中を望遠鏡で覗いてエミッタンス増大の原因となるような物理的な障害物がないことを確認した。 ビーム運転においてはエミッタンス増大の原因となるであろう候補一つ一つについて様々な測定を行った。 またILCと同等のパルス長(726us)、バンチ電流値(5.8mA)で運転を行うために、100usのパルス長のビームを用いてSTF-2のビームラインにおいて、ビームロスを抑えつつ運転ができることを確認した。 この際、高周波制御においてビームローディング補償のパラメータセットを初めて用いた。 本学会では、7回目の冷却試験におけるビーム運転の内容について報告する。
 
10:20-10:40 
WEOA05
p.51
ILC電子ドライブ陽電子源の設計
A desing study of ILC electron driven positron source

○栗木 雅夫,田地野 浩希,金野 舜,リプタック ザカリー,高橋 徹(広島大院先進理工),横谷 馨,浦川 順治,大森 恒彦(高エネ研)
○Masao Kuriki, Hiroki Tajino, Shun Konno, Zachary Liptak, Tohru Takahashi (Hiroshima U. ADSE), Kaoru Yokoya, Junji Urakawa, Tsunehiko Omori (KEK)
 
現在の素粒子物理学における最大の課題は、素粒子の標準理論を超える物理の探索であり、ヒッグス粒子の詳細研究はその突破口となると目されている。ヒッグスの詳細研究、ヒッグスの自己結合、超対称性粒子やダークマターをはじめとする新粒子探索など、これからの素粒子物理の展開にはリニアコライダーが不可欠である。リニアコライダーでは、時間あたり大量の電子・陽電子の生成が必要であるが、特に陽電子は標的破壊の問題があり、効率的な生成が必要である。現在、日本への建設が検討されているILC国際リニアコライダーでは、従来型の電子ドライブ方式を検討し、その設計研究が進められている。主線形加速器は超伝導加速器を使用するが、標的への負荷軽減の観点から、陽電子生成には常伝導加速器を利用し、マルチバンチ加速を行う。また、キャプチャーライナックに大口径のAPS定在波型加速空洞を採用し、あわせて効率的な陽電子生成をおこなう。講演では、電子ドライブ陽電子源の設計の現状について報告する。
 
企画セッション① (10月19日 会議室A)
11:00-12:00 
WESA01
p.56
[Slides]
測量から、アライメントを崩す要因探索のための変動・振動測定まで
From survey to fluctuations and vibration measurement for source of brake alignment

○松井 佐久夫(理研)
○Sakuo Matsui (RIKEN)
 
加速器の測量やアライメントにはレーザートラッカーが使われ、最近はSAなど3次元の汎用ソフトが広まっている。ただ、加速器建設の前に測量用基準点の位置、数を決めるためやトラッカーの実力評価のシミュレーション、また相対誤差の表示も必要なため2次元の網平均計算のプログラムを書いた。さらにエクセルのVBAに書換え公開した。運転が始まると、気温、気圧、降雨、潮汐、や電源電圧、ポンプや冷却水による振動で、ビームは乱され原因調査と対策に種々のセンサーを取り付けた。温度、変位、傾斜、風速、気圧、湿度、振動、さらに、水レベルなどである。 変動の場合、センサーからはアナログ電圧をスキャナーモジュール付デジボルに入力している。蓄積リングのビームの変動からキックの大きさを位置-時間で解析すると多くの場所で昼12時などで明確に変化していた。これは電源電圧の変動がファンの風速・・・ビームのキックへつながっていることが確認できた。 振動も加速器の様々な機器で問題となり振動源や伝搬の向きや経路を特定する課題が発生してきた。例えばビーム振動で30Hz付近にピークが見られた。4極電磁石内のアルミチャンバーが原因と気づく前には、ハンディのFFTにコイルを取り付け、収納部内を探索した。また、放射光の振動が問題になり、多くの速度センサーをミラーの筐体に取り付け、ゆれる放射光とコヒーレンシのあるミラーを特定したこともある。
 
加速器技術(粒子源)/レーザー (10月19日 会議室A)
15:30-15:50 
WEOA06
p.61
線形ポールトラップイオン源からの選択的イオン取出しに関する研究
Study on the selective ion extraction from a linear Paul trap ion source

○宮脇 信正,石井 保行,百合 庸介,鳴海 一雅(量研高崎),室尾 健人,伊藤 清一,岡本 宏己(広大院先進)
○Nobumasa Miyawaki, Yasuyuki Ishii, Yousuke Yuri, Kazumasa Narumi (QST Takasaki), Kento Muroo, Kiyokazu Ito, Hiromi Okamoto (AdSE, Hiroshima Univ.)
 
固体量子情報デバイスに使用する量子もつれ効果の実現方法の一つとして、ダイヤモンド中に窒素-空孔センター間の配列を20nm以下の間隔で形成する方法が提案されている。QST高崎ではこの配列を製作するために、線形ポールトラップ (LPT)をイオン源として使用し、後段に静電集束レンズを組み合わせた装置の開発を行っている。本研究では、LPTからの低エミッタンス単一窒素イオンの取出し方法について検討した。窒素イオンは、LPT中でドップラーレーザー冷却が可能なカルシウムイオンとの共同冷却によって絶対零度近傍まで冷却され、低エミッタンスでの取出しが期待できる。そこで、LPTから低エミッタンスで単一窒素イオンを取出す方法について、LPTの電極構造を境界条件としてマックスウェル方程式を数値的に解き、得られた3次元電場ポテンシャル中での多粒子運動のシミュレーションを実施した。その結果、冷却完了後のカルシウムイオンと窒素イオンの個数や並び方が取出し時のエミッタンスに影響すること、さらにLPTからの単一窒素イオンのみの選択的な取出しは、これに加えて電極電圧の時間制御によって実現できることがわかった。
 
15:50-16:10 
WEOA07
p.65
[Slides]
金属3Dプリンタにより造形された純タングステン材の評価
Evaluation of pure tungsten made with metal 3D printer

○渡邉 丈晃(KEK)
○Hiroaki Watanabe (KEK)
 
J-PARCハドロン実験施設では、30GeVに加速された陽子ビームを金属標的へ照射し、そこで生成されるK中間子等の2次粒子を利用したバラエティーに富んだ原子核・素粒子実験を遂行している。標的の材質としては、2次ビームの要請などから高密度の金属が望ましく、次期標的材として円盤形状のタングステンが1つの候補となっている。しかし、タングステンは難切削材のため、放熱のためのフィン加工といった複雑な形状の機械加工は極めて困難である。これを解決する1つの方法として、金属3Dプリンタによるタングステンの造形が考えられる。金属3Dプリンタであれば、相当複雑な形状でさえも実現可能であると期待される。しかしながら、金属3Dプリンタにより造形されたタングステン素材については、基本的な機械特性や物性については十分明らかにされていない。そこで、現在最も普及しているパウダーベッド型レーザー照射方式の金属3Dプリンタでタングステン素材の造形を行い、そこから各種試験片の製作を行った。さらに試験片の半数について熱間等方圧加圧法(HIP)を施工した。本発表では、これらの試験片についての評価結果について報告を行う。
 
16:10-16:30 
WEOA08

[Slides]
レーザー原子冷却による極低温電子源の開発
Development of a cold electron source based on laser cooling of atomic gas
○本田 洋介(高エ研)
○Yosuke Honda (KEK)
 
電子源の性能を飛躍的に改善することにより、例えば高速電子顕微鏡や開口の狭いテラヘルツ加速器へのビーム供給など、幅広い用途への応用が期待できる。 電子源のエミッタンスは、原理的にはカソードの温度で決まる。そこで、レーザー冷却の手法を用いて原子ガスをミリケルビン以下に冷却しレーザーで電離することで極低温の電子を生成する、新しい電子源の開発を行っている。 本発表では、電子源の開発計画とレーザー冷却装置の開発状況について報告する。
 
16:30-16:50 
WEOA09
p.70
レーザー逆コンプトン光子の光中性子生成二重微分断面積測定への応用
Application of laser inverse Compton photon on measurement of photoneutron production double differential cross section

○佐波 俊哉(KEK/総研大),トラン トゥエト(CEA Saclay),グエン トウォン(総研大),山崎 寛仁(KEK/総研大),糸賀 俊朗(JASRI),桐原 陽一(原研),波戸 芳仁(KEK/総研大),中島 宏(北大),宮本 修治(大阪大学),橋本 智(兵庫県大 / 高度研),浅野 芳裕(大阪大学)
○Toshiya Sanami (KEK/SOKENDAI), Tuyet Tran (CEA Saclay), Thuong Nguyen (SOKENDAI), Hirohito Yamazaki (KEK/SOKENDAI), Toshiro Itoga (JASRI), Yoichi Kirihara (JAEA), Yoshihito Namito (KEK/SOKENDAI), Hiroshi Nakashima (HOKUDAI), Syuji Miyamoto (Osaka University), Satoshi Hashimoto (University of Hyogo / LASTI), Yoshihiro Asano (Osaka University)
 
光核反応による中性子生成は数10MeVの電子加速器の遮蔽設計において重要となる。これまで に、多くの核種に対する中性子生成量とそのエネルギー分布の測定が、国内外の研究所において 行われてきた。我々の実験グループは、レーザー逆コンプトン光子により得られる単色で偏光方向がそろった光子がパルス状に得られることを利用し、これを薄いターゲットに入射させ、生成した中性子の量とエネルギー分布を測定することにより、光中性子生成二重微分断面積を得ている。これまでに、ニュースバルBL01において17MeVを中心としたエネルギーの直線偏光光子を用いて、金や銅などの中重核ターゲットの光中性子生成二重微分断面積を得た。この実験結果から、角度依存性を持たない低いエネルギー部分に分布する成分と、偏光方向に対する角度依存性を有する高いエネルギー部分に分布を持つ成分が、測定したすべてのターゲットについて存在することが明らかとなった。発表では、測定法の概要について説明し、これまでに得られた結果を紹介する。これに基づいて今後の実験計画について述べる。
 
16:50-17:10 
WEOA10

UVSOR-IIIにおけるガンマ線源開発と利用研究
Development of gamma ray sources and their application studies in UVSOR-III
○平 義隆,杉田 健人,岡野 泰彬(分子研),平出 哲也,遠藤 駿典(原子力機構),全  炳俊(京都大学),静間 俊行(量研機構)
○Yoshitaka Taira, Kento Sugita, Yasuaki Okano (IMS), Tetsuya Hirade, Shunsuke Endo (JAEA), Heishun Zen (Kyoto University), Toshiyuki Shizuma (QST)
 
分子科学研究所の放射光施設であるUVSOR-IIIのBL1Uでは、高エネルギー電子ビームとレーザーの逆トムソン散乱によってガンマ線を発生し、ユーザーに提供している。逆トムソン散乱によって発生するガンマ線には、放射性同位元素から発生するガンマ線や制動放射ガンマ線と比較してエネルギー可変かつ準単色、低バックグラウンド、高い指向性といった優れた特徴がある。また、偏光レーザーを使う事で偏光ガンマ線を発生することが可能である。BL1Uでは、このガンマ線を用いて原子核共鳴蛍光散乱による同位体イメージングなどの原子核物理実験やガンマ線検出器の評価およびガンマ線誘起陽電子消滅分光法による材料分析の研究を行っている。陽電子消滅分光法は、結晶を構成する原子の一部が存在しない単原子空孔などsub-nm ~ 数nmの欠陥分析を行える強力な手法である。陽電子は対生成によってガンマ線からも発生することができるため、ガンマ線を試料に照射することで試料内部で陽電子を発生し厚さ数cmのバルク試料の欠陥分析が可能である。本年会では、UVSOR-III BL1Uにおけるガンマ線源開発、円偏光ガンマ線の磁気コンプトン散乱実験、ガンマ線誘起陽電子消滅分光の開発、円偏光ガンマ線を用いたスピン偏極陽電子の計測技術開発について発表する。
 
17:10-17:30 
WEOA11
p.75
[Slides]
単一サイクルFEL原理実証用超短パルスレーザー光源の開発
Ultrashort laser light source for demonstrating the monocycle FEL scheme

○貴田 祐一郎(高輝度光科学研究センター),橋本 智(兵庫県立大高度研),宮本 修治(阪大レーザー研),富樫 格,冨澤 宏光(高輝度光科学研究センター/理研放射光センター),岡部 純幸,後長 葵,金島 圭佑,田中 義人(兵庫県立大理学),田中 隆次(理研放射光センター)
○Yuichiro Kida (JASRI), Satoshi Hashimoto (University of Hyogo, LASTI), Shuji Miyamoto (Osaka University, ILE), Tadashi Togashi, Hiromitsu Tomizawa (JASRI/RIKEN SPring-8 Center), Sumiyuki Okabe, Aoi Gocho, Keisuke Kaneshima, Yoshihito Tanaka (University of Hyogo, Science), Takashi Tanaka (RIKEN SPring-8 Center)
 
自由電子レーザー光を生み出す周期磁場中の蛇行電子と光電場の相互作用は、光スリッページと呼ばれるパルス伸長に繋がる効果を同時に作り出す。この効果を制御することなく単一サイクルの極短パルス幅を有する自由電子レーザーを実現することはできない。以上の背景の下、光スリッページを制御する手法が提案され[1]、現在その原理実証プロジェクトがニュースバル放射光施設において推進されている[2]。当該プロジェクトはテーパーアンジュレータ、蓄積リング、シード用超短パルスレーザー光、同期タイミングシステム等複数要素を包含する分野横断プロジェクトである。 本講演では一要素であるサブ15 fs超短パルスレーザー光源に関して、その位置づけ、要求性能、光源設計、開発済みの実機性能を紹介する。また、レーザー光を蓄積リングへ入射する入射光学系、電子との相対位置座標を検出するモニタについても、概念、光学系、開発した実機について紹介する予定である。 最後に、単一サイクル自由電子レーザー原理実証実験プロジェクト全体の進捗状況について報告する。 [1] T. Tanaka, Phys. Rev. Lett. 114, 044801 (2015) [2] T. Tanaka et al., Proc. of PASJ2018, FROL02 (2018)
 
加速器技術(真空)/加速器土木・放射線防護 (10月19日 会議室B)
9:00-9:20 
WEOB01
p.79
[Slides]
大口径・薄板・耐圧を実現する金属積層造形によるTi-6Al-4V合金製ビーム窓の開発
Development of beam window with a large diameter, a thin wall thickness, and a large proof pressure out of Ti-6Al-4V through additive manufacturing

○牧村 俊助(KEK, J-PARC),設楽 弘之,長澤 豊,尾ノ井 正裕(金属技研),深尾 祥紀,亀井 直矢,栗下 裕明(KEK, J-PARC)
○Shunsuke Makimura (KEK, J-PARC), Hiroyuki Shidara, Yutaka Nagasawa, Masahiro Onoi (MTC), Yoshinori Fukao, Naoya Kamei, Hiroaki Kurishita (KEK, J-PARC)
 
超伝導電磁石による粒子輸送を基本とする次世代粒⼦加速器の運転において電磁⽯を冷却する液体ヘリウムがビームライン中に急激に放出される重⼤事故に備えて、ビーム窓には高い耐圧が要求される。一方で、ビーム窓は、透過する粒⼦のロスを低減するために低密度で薄い材料で製造する事が望まれる。内圧を受ける薄板の設計においては、中央部を球殻形状にするとともに端部を厚くすることで、耐圧性能を向上できることが知られている。KEKでは⾦属技研株式会社との共同研究によって、このような設計思想を応⽤し、⼤⼝径・薄板・耐圧を実現する積層造形によるTi-6Al4V合⾦製ビーム窓の開発を進めている。現在、解析上、10気圧以上の耐圧を持つと予想される直径260 mm、厚み0.5 mmの球殻状ビーム窓の製造を進めている。レーザーによる積層造形を終えた後に、造形時の材料中に残存する気孔を潰し密度を向上させるために熱間等方圧加圧(HIP)処理を行った。引き続いて研磨工程を進めている。本発表では積層造形によるTi-6Al4V合⾦製ビーム窓開発の現状を報告する。
 
9:20-9:40 
WEOB02

核融合中性子源A-FNS加速器用高エネルギービーム輸送系とターゲット境界の真空設計
Design of the vacuum system for the interface of the HEBT and target system in A-FNS
○蛯沢 貴,佐藤 聡,落合 謙太郎,春日井 敦,長谷川 和男(量研 六ヶ所研究所),林崎 規託(量研 六ヶ所研究所, 東工大)
○Takashi Ebisawa, Satoshi Sato, Kentaro Ochiai, Atsushi Kasugai, Kazuo Hasegawa (QST Rokkasho), Noriyosu Hayashizaki (QST Rokkasho, Tokyo Tech)
 
核融合原型炉材料の高速中性子照射データ取得を目的として、量研六ヶ所研究所に核融合中性子源A-FNSの建設が検討されている。A-FNS加速器の主要機器である高エネルギービーム輸送系(HEBT: High Energy Beam Transport)では、125 mA/40 MeVのCW重陽子ビーム分布を矩形に成形してビーム輸送し、自由表面の液体リチウムターゲットに照射し、重陽子とリチウムとの核反応により高エネルギーの中性子を発生させる。加速器は残留ガスによるビームロスを抑制するため、HEBT側は真空圧力を10-5 Pa以下にする必要がある。一方、液体リチウムターゲット側はリチウムの沸騰防止のため、10-4 Pa から10-3 Pa台に維持しなくてはならない。加速器側とターゲット側で真空圧力は2桁異なっており、真空を隔てる窓がなく径が大きなビームダクトで接続された両者の異なる圧力条件を満たす差動排気系の設計が、HEBTの設計課題の一つである。簡易な計算モデルを用いてHEBTの真空設計を実施し、真空ポンプを適切に配置することで、HEBT側は10-6Pa台、ターゲットとの境界を10-3Pa台に維持できる差動排気が可能な設計条件の見通しを得た。本発表では、A-FNS加速器のHEBT-リチウムターゲット間の真空差動排気系設計のための計算結果及びHEBT設計について報告する。
 
9:40-10:00 
WEOB03
p.83
[Slides]
加速器トンネルでのロボット活用の検証
Verification of robot utilization in accelerator tunnel

○川端 康夫,松田 浩朗,松元 和伸(飛島建設株式会社),田頭 茂明(関西大学),冨井 洋平 (綜合警備保障株式会社),石井 恒次,山本 昇,別所 光太郎(KEK),吉岡 正和(岩手大学)
○Yasuo Kawabata, Hiroaki Matsuda, Kazunobu Matsumoto (TOBISHIMA CORP.), Shigeaki Tagashira (Kansai Univ.), Yohei Tomii (ALSOK), Koji Ishii, Noboru Yamamoto, Kotaro Bessho (KEK), Masakazu Yoshioka (Iwate Univ. )
 
 2019年よりJ-PARC MR 加速器トンネルにおいて、作業者のリアルタイム位置情報、及び双方向情報伝達等を実現した防災システムを運用している。これまでに様々な機能等を付加し、ユーザにとって日常的に使いやすいシステムにすることにより、発災時に直ちに活用できるシステムとすべく、開発に取り組んできた。  現在、更なる安全性向上や作業の効率化を実現するため、ロボットやドローンの活用を検討している。例えば、ビーム停止後の放射線の監視や各種計器の計測など、現状、人による測定に頼っている部分にこれらロボットを活用したい。  開発した防災システムと連携させることで、高度な防災システムが構築できるものと期待している。2021年度に自律走行ロボット“REBORG-Z”を用いてMRトンネル内で走行試験を行った。また自律飛行ドローンもトンネル内に持ち込み、飛行試験を行った。これら試験では様々な課題が見つかっており、本文ではそれらを詳述する。また防災システムとの連携及び作業支援の観点から、ロボット・ドローン活用の可能性についても本文で議論する。
 
10:00-10:20 
WEOB04

[Slides]
吸着式蓄熱材を用いた大型加速器からの排熱利用に関する研究(3) ~放熱装置・蓄熱装置の改良~
Study of utilizing waste heat from a large-scale accelerator with adsorption thermal storage materials (3) - modification of heat storage and radiation devices -
○水戸谷 剛,赤堀 卓央,佐々木 明日香(東日本機電開発株式会社),鈴木 正哉,万福 和子(産業技術総合研究所),小久保 孝,谷野 正幸,佐藤 現,村岡 慎一(高砂熱学工業株式会社),高橋 福巳,姉帶 康則(株式会社WING),大平 尚(岩手県),吉岡 正和,成田 晋也(岩手大学)
○Goh Mitoya, Takao Akabori, Asuka Sasaki (HKK), Masaya Suzuki, Kazuko Manpuku (AIST), Takashi Kokubo, Masayuki Tanino, Gen Sato, Shinnichi Muraoka (Takasago Thermal Engineering Co., Ltd.), Fukumi Takahashi, Yasunori Anetai (WING Co., Ltd.), Hisashi Odaira (Iwate Prefectural Office), Masakazu Yoshioka, Shinya Narita (Iwate University)
 
The International Linear Collider (ILC) is being considered for construction in Japan, and Iwate Prefecture is a candidate site. The energy supplied to an accelerator such as the ILC is dissipated as low-grade heat in the end. In addition, exhaust heat from factories and hot springs in this region is unused and discarded. Now recovery and utilization of these heat resources are expected to contribute to the realization of a sustainable society. Therefore, we have been studying the establishing an off-line heat transport system using a portable case in a mountainous area with low population density, considering the regional characteristics of Iwate Prefecture. We have been developing the heat recovery and utilization system using the material, HASClay, which stores heat by adsorbing water vapor. We have conducted a field test using the HASClay to recover heat from hot springs and use it to heat greenhouses. As a result, we have demonstrated that the amount of fuel used for heating in the greenhouses can be reduced. In this paper, we report the updated results of the field test using the heat storage and radiation devices which has been modified considering the previous study.
 
10:20-10:40 
WEOB05
p.88
ILCにおける持続可能なエネルギーマネジメント、その2
Study on sustainable energy management system in ILC, Part-II

○吉岡 正和(岩手大学・岩手県立大学),狩野 徹(岩手県立大学),成田 晋也(岩手大学),平井 貞義,上田 理絵(NTTファシリティーズ),川端 康夫(飛島建設・土木部),澤井 淳司(三井住友建設・土木部),大平 尚(岩手県庁)
○Masakazu Yoshioka (Iwate Univ., Iwate Prefectural University), Toru Kano (Iwate Prefectural University), Shinya Narita (Iwate University), Sadayoshi Hirai, Rie Ueda (NTT Facilities, INC., Urban Planning & Development Division, Customer Solution Headquarters), Yasuo Kawabata (TOBISHIMA CORPORATION, Civil Engineering Divisionvelopment Division, Customer Solution Headquarters), Junji Sawai (Sumitomo Mitsu Construction Co., Ltd. Civil Engineering Division), Hisashi Odaira (Iwate Prefectural Office)
 
This paper is part 2 of a paper submitted to the 2020 Annual Meeting of the Accelerator Society of Japan. The previous paper summarized and introduced the basic concept of Green ILC activities in the Tohoku region and specific activities in line with this concept. Since then, both domestic and international policies have been announced with the specific goal of achieving carbon neutrality by 2050. Naturally, Green ILC activities must also be based on specific numerical targets in line with these policies. The activities are organized into following three categories. (1) Promotion of energy-saving technologies and their return to society. (2) Increase the ratio of renewable energy in cooperation with local communities and improve energy management technologies such as waste heat recovery. (3) Efforts to enhance absorption of global warming gases derived from human activities in cooperation with local communities; to achieve this goal, it is important to make agriculture, forestry, and fisheries smarter, and the construction and long-term operation of the ILC must serve these goals. This paper will report in detail on item (3) in particular.
 
加速器技術(高周波源・LLRF) (10月19日 会議室B)
15:30-15:50 
WEOB06

KEKLUCXファシリティFPGAベースのLLRF位相および振幅フィードバック開発ステータスレポート
KEK LUCX facility FPGA based LLRF phase and amplitude feedback development status report
○ポポフ コンスタンチン,アリシェフ アレクサンダー(KEK, SOKENDAI),--(KEK),--(KEK, SOKENDAI)
○Konstantin Popov, Alexander Aryshev (KEK, SOKENDAI), Junji Urakawa (KEK), Terunuma Nobuhiro (KEK, SOKENDAI)
 
KEK LUCX facility is linear accelerator technology and beam instrumentation R&D test-bench for the ILC, KEK-ATF and any other present and future KEK accelerators. New LLRF phase and amplitude feedback based on FPGA board is under development at KEK LUCX facility. RedPitaya 125-14 (also known as STEMLab 125-14) FPGA board was chosen as the development board because of its high specifications* and affordable price**. The LLRF feedback loop includes digitization of down-converted RF signal, I/Q demodulation, PI controller for I and Q terms corrections calculation, I/Q modulation and RF signal regeneration. This report presents the LLRF feedback development and implementation status. Also, the technical issues of the feedback implementation into LLRF system of the KEK LUCX accelerator are discussed.
 
15:50-16:10 
WEOB07
p.92
[Slides]
J-PARC MR 次世代LLRF制御システム
Next generation LLRF control system for J-PARC MR

○杉山 泰之,吉井 正人,大森 千広,原 圭吾,長谷川 豪志(KEK/J-PARC),田村 文彦,山本 昌亘,野村 昌弘,沖田 英史,島田 太平(JAEA/J-PARC)
○Yasuyuki Sugiyama, Masahito Yoshii, Chihiro Ohmori, Keigo Hara, Katsushi Hasegawa (KEK/J-PARC), Fumihiko Tamura, Masanobu Yamamoto, Masahiro Nomura, Hidefumi Okita, Taihei Shimada (JAEA/J-PARC)
 
J-PARC MRのこれまでのデジタルLLRF制御システムにおいては、RFフィードフォワードを用いた加速空胴へのビームローディング補償を行うことで大強度ビームによる縦方向不安定性を抑制していたが、ビーム強度が500kWに近づくにつれて補償が不十分となり縦方向バンチ結合不安定性を誘起するようになり、大強度化に向けた課題にもなっていた。一方で、これまで10年以上用いてきたVMEベースのLLRF制御システムでは新しい機能拡張やシステムの維持が困難であるため、mTCA.4ベースの次世代LLRF制御システムを開発し、ビーム不安定性を解決するためのベクトル空胴電圧フィードバックを取り入れた制御機能を導入した。 本発表では次世代LLRF制御システムの構成と機能の概要を述べ、ビーム試験の結果や今後の導入計画について報告する。
 
16:10-16:30 
WEOB08

[Slides]
周波数分割型高周波増幅による高速高電圧パルス発生器の開発
Development of a fast high-voltage pulse generator by frequency-segmented rf amplification
○渡川 和晃,前坂 比呂和(理研),小花 利一郎(株式会社アールアンドケー),田中 均(理研)
○Kazuaki Togawa, Hirokazu Maesaka (RIKEN), Reichiro Kobana (R&K Company Limited), Hitoshi Tanaka (RIKEN)
 
理化学研究所のX線自由電子レーザー施設SACLAの電子入射器では、熱電子銃により発生したマイクロ秒ビームからナノ秒ビームを切り出すために、ビームチョッパーシステムを使用している。ビームチョッパーの偏向電極にはアバランシェ型高速パルサーで生成した数kVの矩形高電圧パルスを印加するのであるが、高電圧パルスの出力が不安定になるなど故障頻度が高いことや、パルス波形の調整が容易でないことなど幾つかの問題点を抱えている。これらの問題を克服するために、安定な高周波増幅器を利用した新しいパルサーの開発を行った。幾つかの周波数を用いれば任意の波形を再構成できるという原理に基づき、信号源の種パルスを周波数分解して周波数毎に信号増幅、群遅延補正、振幅調整を行い、それらを合成してパルスを出力するという手法である。製作した試作機では、パルス幅2 ns、パルス波高0.2 kV、フラットトップ平坦度0.8%の安定した矩形パルスを生成することに成功した。任意の信号を増幅することが可能であるので、マルチバンチや高繰り返しなど複雑なビーム構造への対応が要求されるデバイスで重要な役割を果たすことが期待される。
 
16:30-16:50 
WEOB09
p.97
[Slides]
J-PARCリニアックでの位相ドリフトモニターのインストールと評価
Installation and test of the phase drift monitor at J-PARC linac

○チーチェック エルシン ,方 志高,福井 佑治,二ツ川 健太,溝端 仁志(高エネ研),佐藤 福克(NAT)
○Ersin Cicek, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Kenta Futatsukawa, Satoshi Mizobata (KEK), Yoshikatsu Sato (NAT)
 
Achieving a stable rf field for all cavities in the J-PARC linac is one of the significant tasks for the successful operation of J-PARC. In particular, a long-term stable rf field is a crucial challenge in suppressing the drift of the injection beam momentum from the linac to the Rapid Cycling Synchrotron (RCS). In addition, it was found that environmental factors such as humidity and temperature cause rf phase drift in the cavities, resulting in the drift in the beam injection momentum, making the compensation of phase drift a priority job. To this end, a phase drift correction algorithm is carried out within the low-level radio frequency (LLRF) system in the linac. Although this system has been operated successfully, we aim for an updated design to directly measure and correct the phase drift of the cavities operating at different frequencies. Therefore, a real-time phase drift compensation system based on a direct sampling technique deploying RF System-on-Chip (RFSoC) technology is adopted to measure two different rf frequencies without local oscillator (LO) signals. This study presents the installation stage of the device in the linac and long-term cavity rf phase results.
 
16:50-17:10 
WEOB10
p.102
Sバンド球形空洞型パルス圧縮器の波形パルス解析手法
Analysis scheme of pulse waveform for S-band spherical-cavity type pulse compressor

○坂東 佑星(総研大),肥後 壽泰(高エネ研),惠郷 博文,阿部 哲郎,由元 崇(高エネ研, 総研大),東 保男(高エネ研),牛本 信二(三菱電機SC)
○Yusei Bando (SOKENDAI), Toshiyasu Higo (KEK), Hiroyasu Ego, Tetsuo Abe, Takashi Yoshimoto (KEK, SOKENDAI), Yasuo Higashi (KEK), Shinji Ushimoto (Mitsubishi SC)
 
KEK電子陽電子入射器ではエネルギー増強の手段として、高周波パルス圧縮器を使用している。2021年に球形空洞型のSバンドパルス圧縮器のプロトタイプを製作し、高電力試験を実施してきた。低電力試験と異なり、高電力試験では時間ドメインの測定に限定されるため、装置の高周波特性を表現する空洞パラメータを運転中に取得することが困難である。そこで入出力のパルス波形を再現するパルス圧縮器の空洞パラメータ群を推定する手法推定する手法を実装した。本報告では解析手法の詳細について述べ、また同手法を異常波形の解析に応用した事例について報告する。
 
17:10-17:30 
WEOB11
p.106
[Slides]
20 MWおよび高効率8 MW Xバンドクライストロンの設計と試験結果
Design and test results of 20-MW and high efficiency 8-MW X-band klystrons

○阿武 俊郎(キヤノン電子管デバイス株式会社)
○Toshiro Anno (Canon Electron Tubes & Devices Co., Ltd.)
 
近年Xバンド周波数帯の大電力クライストロンを高周波源に用いたコンパクトかつ高勾配な加速器が各所で使用されている。Xバンドでは従来10~50 MWの中間程度に位置する20 MW出力のクライストロンが市場になかったが、研究用や産業用として要求があった。キヤノン電子管デバイス株式会社では、11.4 GHzと12 GHzの20 MWクライストロンを2021年と2022年にそれぞれ開発した。いずれも試験で20 MWの安定な出力が得られた。また既存の6 MWクライストロンを多空胴化することにより高効率化し、8 MW出力を目指す開発を2018年からCERNと共同で進めている。相互作用部の設計にマルチセル第2高調波空胴とマルチセル出力空胴を含む8個の空胴を使用し、シミュレーションではビーム電圧154 kV、ビーム電流94 Aで出力8.16 MW、効率56.4%を得た。2021年に初号機を製作し試験を行った。試験ではダイオード運転でいくつかの発振が観測され、安定運転できる電圧が制限されたため目標出力を得ることができなかった。二号機での改良のためCERNで発振対策の空胴の設計変更を行った。新たな設計を取り入れたクライストロンを製作中である。これらのクライストロンの設計と試験結果について報告する。
 
光源加速器 (10月20日 会議室A)
9:00-9:20 
THOA01
p.111
スミス=パーセル放射角度分布の計測とバンチ長計測への応用
Measurement of Smith-Purcell radiation angular distribution and its application to bunch length measurement

○山田 悠樹,柏木 茂,日出 富士雄,武藤 俊哉,三浦 禎雄,山田 志門,熊谷 航平,南部 健一,長澤 育郎,高橋 健,鹿又 健,柴田 晃太朗,濱 広幸(東北大電子光)
○Hiroki Yamada, Shigeru Kashiwagi, Fujio Hinode, Toshiya Muto, Sadao Miura, Shimon Yamada, Kouhei Kumagai, Kenichi Nanbu, Ikurou Nagasawa, Ken Takahashi, Ken Kanomata, Koutaro Shibata, Hiroyuki Hama (ELPH)
 
現在、東北大学電子光理学研究センターの試験加速器t-ACTSではコヒーレントスミス=パーセル放射を用いた非破壊・リアルタイムバンチ長モニターの開発に向けた基礎研究を進めている。これまで、スミス=パーセル放射のテラヘルツ領域での性質の確認や、ごく狭い範囲での角度分布の測定を通して、バンチ長モニターへの応用可能性を検討してきた。今回、より広い角度範囲でのスミスパーセル放射の観測を行い、理論計算から予想される角度分布とどのような差異があるのかについて調べた。本発表では測定の結果とバンチ長モニターへの応用に向けた展望について発表する予定である。
 
9:20-9:40 
THOA02
p.115
光陰極高周波電子銃の導入によるKU-FELの性能向上に関するシミュレーション研究
Simulation of a new Photocathode RF Gun in KU-FEL

○趙 宇皓,全 炳俊,大垣 英明(京大エネ研)
○Yuhao Zhao, Heishun Zen, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.)
 
This presentation will evaluate the KU-FEL linac performance by installation of a new 1.6-cell photocathode RF gun. Beam simulation was performed using General Particle Tracer and its performance will be compared with the existing parameter.
 
9:40-10:00 
THOA03

中赤外自由電子レーザの分散制御によるパルス圧縮
Pulse compression of mid-infrared free electron laser by dispersion control
○全 炳俊,大垣 英明(京大エネ研),羽島 良一(量研)
○Heishun Zen, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.), Ryoichi Hajima (QST)
 
京都大学中赤外自由電子レーザ(KU-FEL)ではこれまでにパルス幅5サイクルを下回る様な超短パルス発生に成功している。パルス構造および移相発展の詳細計測にも成功しており、発生時点でdown chirpしていること、輸送路上屈折光学系の影響でパルス伸長が生じていることなどが明らかとなっている。数サイクルパルスは波長帯域が広く、パルス幅への分散の影響が大きいため、超短パルスとして使用するには輸送後に分散補償を行い、パルス圧縮する必要がある。本講演では正のGroup Velocity Dispersionを有する光学窓を用いたパルス圧縮の可能性を示すと共に、テスト実験の結果を報告する。本研究は文部科学省の光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP、JPMXS0118070271)によるものである。
 
10:00-10:20 
THOA04
p.118
極短周期アンジュレータの開発における磁場増強と装置の小型軽量化
Development of a very-short-period undulator employing a newly devised magnetic circuit

○山本 樹(高エネルギー加速器研究機構・物構研・放射光)
○Shigeru Yamamoto (KEK, IMSS, PF)
 
近年我々は通常数10mmであったアンジュレータの周期長を約1/10に“極短周期化”することを目標にした,板状磁石に極短周期アンジュレータ磁場を書き込む多極着磁方式の研究開発を行って来た。周期長の短縮に伴う放射の高エネルギー化を期待できるからである。 これまで,周期長4mmの磁石開発を行い,東北大・電子光理学研究センターS-Band Linac において放射光評価試験を実施することに成功した。また,SPring-8 旧SCSS 収納部に建設したレーザー航跡場加速試験施設では,10mm周期500mm長のアンジュレータから可視領域放射光の生成を確認し,レーザー加速電子のビーム開発に応用している。 次のステップとして,生成されるアンジュレータ磁場の増強を試みている。このために従来の板状磁石を用いた磁気回路周期構造において1周期を構成する磁区の数を2から4に増加させることによりアンジュレータ磁場増強を可能にする,新しい磁気回路の開発を行った。現在の開発状況について報告する。 さらに,これまで開発した板状磁石の着磁方式は,アンジュレータ主列磁石の周囲に反発磁石を配置することで主列磁石の磁場吸引力を効果的に相殺しアンジュレータ本体を小型軽量化できる,磁力相殺システムの構築に非常に有効である。小型軽量アンジュレータ架台開発の現状についても報告する。
 
10:20-10:40 
THOA05
p.123
[Slides]
交叉型アンジュレータを用いたTHz域偏光可変超放射発生の研究
Study of generation of variably polarized superradiance in THz region employing a crossed-undulator configuration

○齊藤 寛峻(高エネ研),武藤 俊哉,柏木 茂,日出 富士雄,濱 広幸(東北大電子光)
○Hirotoshi Saito (KEK), Toshiya Muto, Shigeru Kashiwagi, Fujio Hinode, Hiroyuki Hama (ELPH)
 
THz放射は多くの物質への透過性や分子の振動、回転運動に関わる特徴的な吸収スペクトルなどのユニークな性質を持ち、様々な分野から注目を集めている。THzギャップと呼ばれ長年にわたり遅れていた光源開発は近年進んできているものの、偏光操作の技術は未だ成熟しておらず、偏光の利用には制限があるのが現状である。そこで我々は高い放射強度と任意かつ高速な偏光操作を実現しうる光源スキームとして、100 fs程度の短パルス電子ビームからの超放射(コヒーレント放射)に交叉型アンジュレータによる偏光操作法を適用した偏光可変THz光源を新たに考案した。これまでに東北大学電子光理学研究センターの試験加速器t-ACTSでの実験を想定したプロトタイプ光源の電子ビームライン設計や、シミュレーション、理論的な解析による放射特性の研究を行ってきた。本発表では本光源スキームに適した電子ビームライン設計と、本光源の典型的な強度、偏光特性について総括する。
 
企画セッション② (10月20日 会議室A)
11:00-12:00 
THSA01

加速器の省エネ化:ーグリーンILCの活動の経験からー
Topics for efficient accelerators - From the experiences of green ILC activities -
○佐伯 学行(高エネ研)
○Takayuki Saeki (KEK)
 
加速器科学を推進させるための加速器の建設と運転には膨大なエネルギーの消費を伴うが、一方で、近年、省エネ、Sustainable Development Goals (SDGs)、カーボンニュートラルといったことが日常的に言われるようになっている。このような社会的状況の中で、加速器科学の研究活動においても、エネルギーの消費を抑えたり環境に配慮することはもやは必須の条件となりつつある。次世代の巨大加速器である国際リニアコライダー(International Linear Collider / ILC)を検討するにあたり、その実験の規模から、当然、こういった社会的な要求に応える活動が必須となっている。その活動は、グリーンILCと呼ばれ、2013年ごろからILCグループの中で組織的に取り組まれてきた。グリーンILCの活動は、国際的な研究者コミュニティーにおける活動、ILCに関わる企業との協力、ILC候補地の地域社会との連携など多岐にわたっている。最終的にILCが建設された場合には、ILCの研究者コミュニティーとILCを取り巻く地域社会との密接な協力関係によってその目標が達成される。これまでのグリーンILCの活動の経験を加速器科学のコミュニティーにおいて共有することは、現在あるいは今後の加速器科学の推進において有益と思われる。この発表では、その活動についてまとめて報告する。
 
受賞講演 (10月20日 会議室A)
15:50-16:10 
THPA01

円型加速器中の電子ビームの運動で見る光の回折的振る舞い
Diffraction-like behavior of electron beam motion in a circular accelerator
○平岩 聡彦(理研放射光科学研究センター)
○Toshihiko Hiraiwa (RIKEN Spring-8 Center)
 
近年、世界各地で第4世代光源リングの建設や既存の大型放射光施設のアップグレード計画が進行しており、日本においても、軟X線領域をターゲットとした次世代光源リング、通称3GeVリングの建設が本格的に行われている。3GeVリングを始めとする次世代光源リングでは、高密度かつ高電流の電子ビームを蓄積しているため、ビームを廃棄する際に、真空チェンバー保護の観点から、通常、電子蓄積リングで行われているような、言わば成り行きで廃棄する手法は適用できない。3GeVリングでは、電子ビームを安全に廃棄するため、各セルの分散ピーク部に電子ビームアブソーバーを設置し、エネルギー供給遮断後、ビームシェイカーによって一定周波数の正弦波型キックをビームに与え、垂直方向にビームを広げ十分に密度を下げた後に廃棄する。ここで注意すべきは、電子ビームへのエネルギー供給が遮断されているため、ベータトロンチューンはシンクロトロン放射により時々刻々と変化し、それに伴い、共鳴条件も変化していくということである。そこで、我々は、廃棄電子ビームの運動を定式化し、振動振幅の周波数応答を計算してみたところ、それは、光の回折と全く同様の振る舞いをすることを見出した。 本講演では、安全なビーム廃棄の方法を検討する中で偶然に発見した、円型加速器中での電子ビームの運動と光の回折現象との間に潜む類似性とその応用について議論する。
 
16:10-16:30 
THPA02
p.127
SuperKEKBビーム最終集束用超伝導磁石システムの開発
Development of SuperKEKB beam final focus superconducting magnet system

○大内 徳人(高エネ研)
○Norihito Ohuchi (KEK)
 
SuperKEKBの先代器であるKEKBは、ビーム衝突実験に於いて「小林・益川理論」の検証に貢献し、また加速器の衝突性能(ルミノシティ)においても世界最高を記録しました。SuperKEKBは、ビームサイズを衝突点でKEKBの20分の1まで絞り、ビーム電流を2倍まで上げることでKEKBの40倍のルミノシティを目指して設計・建設されました。SuperKEKBでは、ビーム最終集束用超伝導電磁石システムは、ビーム衝突点でのビームサイズを垂直方向に50~60ナノメータ、水平方向に10マイクロメータまで絞る為のキーデバイスです。本システムは、ビーム集束用超伝導4極電磁石8台、ビーム調整用超伝導補正磁石43台、Belle-II検出器ソレノイド磁場(1.5T)をビームライン上で積分値として打ち消す超伝導ソレノイド4台で構成され、極めて制約された空間に総数55台の超伝導電磁石を2台のクライオスタットに収納した超精密超伝導電磁石デバイスです。 超伝導電磁石システムは2017年3月にSuperKEKBビームラインに建設を完了し、SuperKEKBは2018年3月からビーム運転を開始、2022年前期の運転でy*を0.8mm(設計値0.3mm)まで絞り込むことに成功しています。今回の講演では、この超伝導電磁石システムについて、超伝導電磁石構成とその磁場性能、システムとしての製作精度について発表します。
 
加速器応用・産業利用 (10月20日 会議室B)
9:00-9:20 
THOB01
p.132
[Slides]
ビーム窓の散乱を利用した数GeV二次陽子利用法の開発
Development of secondary GeV protons utilization using scattering at beam window

○明午 伸一郎,山口 雄司,中野 敬太,杉原 健太(J-PARC/JAEA)
○Shin-ichiro Meigo, Yuji Yamaguchi, Keita Nakano, Kenta Sugihara (J-PARC/JAEA)
 
宇宙開発事業において、衛星搭載用のセンサーの応答測定のため数百MeVからGeV領域の陽子の利用が必要となるが、400 MeV以上のエネルギー領域で供給が可能な加速器施設は世界的に少なく、国内にはJ-PARCが唯一となる。J-PARC加速器施設ではユーザー運転を安定に継続するために、利用者の実験装置を陽子ビームダクト内への設置は困難となる。また、シンクロトロン加速器の特性により検出器の動作確認ができる程度の微弱なビーム供給はできない。また、加速器駆動核変換システム(ADS)等の大強度陽子加速器施設では核内カスケードモデル(INCL)の高度化が重要となる。INCLの改良のためには、最前方方向の放出粒子のDDXが重要となるが、実験値が殆どないため新たなデータの取得が望まれる。宇宙開発利用の推進およびINCLの高精度化のため、J-PARC 3NBTビームダンプ入口のビーム窓(Al)における散乱陽子のエネルギースペクトルを測定した。 実験では、プラスティクシンチレータを用いて400 MeV陽子を用いた。この結果、弾性散乱による鋭いピークを有するスペクトルとなることが明らかになった。 INCLを用いたPHITSコードの計算は、実験データの準弾性散乱の寄与を過大評価するものの、弾性散乱による鋭いピークをよく再現した。以上より、本手法により宇宙開発に向けた数GeV領域の陽子利用が可能なことが明らかになった。
 
9:20-9:40 
THOB02
p.137
レーザー加速器駆動の中性子源を用いた中性子共鳴透過分析法の開発
Development of neutron resonance transmission analysis using a laser accelerator driven neutron source

○伊藤 史哲(高エネ研),李 在洪,弘中 浩太,小泉 光生(原子力機構),余語 覚文(大阪大学)
○Fumiaki Ito (KEK), Jaehong Lee, Kota Hironaka, Mitsuo Koizumi (JAEA), Akifumi Yogo (Osaka Univ.)
 
核物質の平和利用を担保するため、原子力施設等においては、国際原子力機関等からの検認を受けている。核物質の利用拡大に伴い、査察業務の効率化が急務であることから、その場で簡便に核物質の計量が適う非破壊分析(NDA)法の高度化が求められている。 中性子共鳴透過分析(NRTA)は、パルス中性子を計量したい核物質に照射し、飛行時間(TOF)法を用いて測定を行う動的なNDA技術の一つである。試料中の原子核は、固有の共鳴エネルギーにおいて大きな核反応確率を示し、それを中性子透過率の減少として観測することで、核種別の計量が行える。試料と検出器を離して設置できるため、核分裂生成物を多く含むような高い放射能を有する核物質に対しても有効であり、高精度でTOF測定を行うことで、化学的処理を必要とする破壊分析法と比較してもそん色のない精度で核物質計量が可能である。 しかし、NRTAの様々な施設への導入には、システムのコンパクト化が求められる。そのため、短い中性子飛行距離でTOF測定を行うことは重要であるが、その上で高精度に測定するためには、短パルスの中性子源が必要となる。近年の発展著しい超高エネルギーレーザーを用いた粒子加速器は、レーザーが極短パルスであることから、短パルスの荷電粒子を発生させることができる。そこで我々はレーザー加速器駆動の中性子源を用いたNRTAの技術開発を行い、実証実験を行った。その結果について報告する。
 
9:40-10:00 
THOB03

フォトカソードRF電子銃を用いた超高圧パルス電子顕微鏡の開発
Ultrahigh-voltage pulsed electron microscopy with photocathode RF gun
○楊 金峰,菅 晃一,神戸 正雄,吉田 陽一(阪大産研)
○Jinfeng Yang, Koichi Kan, Masao Gohdo, Yoichi Yoshida (Sanken, Osaka U.)
 
超高速の構造ダイナミクスの観察は、機能の解明や新物質の創製に非常に重要である。我々は、高周波(RF)加速器技術を利用して相対論的フェムト秒電子線パルスを用いた超高圧パルス電子顕微鏡装置の研究開発を推進している。今までは、フェムト秒短パルスレーザーが駆動する常伝導SバンドフォトカソードRF電子銃を用いてエネルギーが3MeV、パルス幅が100fs、パルス当たり電子数が10の7乗個のフェムト秒電子線パルスを発生し、このパルスを用いて金ナノ粒子や微結晶等の物質のTEM像観察に成功した。しかし、常伝導RF電子銃では、大電力のRFパルスを利用するため、ビームの平均電流値とパルスごとのエネルギー安定性の制限を生じる。電子顕微鏡の空間分解能を向上するために、これらの制限を打破しなければならない。本講演会では、開発の現状、問題点および解決策について報告する。
 
10:00-10:20 
THOB04
p.141
[Slides]
陽子線がん治療向け超電導 AVF サイクロトロンのコミッショニング
Commissioning of a superconducting AVF cyclotron for proton therapy

○江原 悠太,筒井 裕士,中島 秀,原 周平,野村 真史,菅 啓大,吉田 潤,滝 和也,村田 裕彦,高橋 伸明,橋本 篤,酒見 俊之,上口 長昭,荒川 慶彦,森江 孝明,平山 貴士,小田 裕陽,藤田 慎一,金倉 純,三上 行雄,鶴留 武尚,宮下 拓也,熊田 幸生(住友重機械工業株式会社)
○Yuta Ebara, Hiroshi Tsutsui, Shu Nakajima, Shuhei Hara, Shinji Nomura, Keita Suga, Jun Yoshida, Kazuya Taki, Hirohiko Murata, Nobuaki Takahashi, Atsushi Hashimoto, Toshiyuki Sakemi, Nagaaki Kamiguchi, Yoshihiko Arakawa, Takaaki Morie, Takashi Hirayama, Hiroaki Oda, Shinichi Fujita, Jun Kanakura, Yukio Mikami, Takehisa Tsurudome, Takuya Miyashita, Yukio Kumata (Sumitomo Heavy Industries, Ltd.)
 
陽子線治療向け230 MeV AVFサイクロトロンが住友重機械によって開発された。超電導コイルを用いることで、ヨークサイズは直径2.8 m、高さ1.7 m、重量65 tと小さく、このサイクロトロンは陽子線治療向けのサイクロトロンとして現時点における世界最小サイズを実現している。小型化により敷地面積や材料コストが低減されるため、大型の病院はもちろん中小規模の病院での導入も期待されている。また、1 μA の大電流の連続ビームを特徴とし、治療時間短縮への貢献やFLASH治療への応用が期待される。さらに、超電導コイルを用いることで、低消費電力運転によるランニングコスト低減や、夜間連続励磁による病院における日々の調整時間短縮が実現される。また、コイル冷却に無冷媒伝導冷却方式が採用され、高い安全性とメンテナンス性を実現している。 このサイクロトロンは、低コストでありながら十分な性能を得られるように工夫して設計された。特徴として、外周部で±6 mmという狭いギャップかつ大きなスパイラルアングルをもつセクター、2つのDee電極、歳差引出方式によるビーム引出しなどが挙げられる。 新たに建設されたテストサイトへのサイクロトロンの移設、組立、事前試験が2020年に実施され、同年末にコミッショニングが開始された。2021年4月末に加速試験が開始され、同年7月にビームの引出しに成功した。 本報告では、コミッショニングの様子と測定された基本性能を紹介する。
 
10:20-10:40 
THOB05
p.146
粒子線治療装置運転・維持管理データベースPT-DOMの開発
Development of particle therapy database of operation and maintenance

○想田 光,金井 貴幸,イ ソンヒョン,宮坂 友侑也,柴 宏博,岩井 岳夫(山形大),菅藤 洋平,盛 道太郎,佐藤 亜都紗,田口 貴之,大内 章央,勝間田 匡(AEC),佐藤 啓,佐藤 慎哉,上野 義之,根本 建二(山形大)
○Hikaru Souda, Takayuki Kanai, Sun Hyun Lee, Yuya Miyasaka, Hongbo Chai, Takeo Iwai (Yamagata Univ.), Yohei Kanto, Michitaro Sei, Azusa Sato, Takayuki Taguchi, Fumihisa Ouchi, Masashi Katsumata (AEC), Hiraku Sato, Shinya Sato, Yoshiyuki Ueno, Kenji Nemoto (Yamagata Univ.)
 
医療機器としての粒子線治療装置には一般の加速器より高い可用性が求められる。特にトラブルに対するユーザーの初期対応は重要であり、オペレータが経験を積むことと合わせて、過去の事象を整理・検索することも重要である。しかし、これまで粒子線治療装置について分析に利用可能なデータベースは存在せず、Excel等を用いて手作業で管理が行われていた。そこで、粒子線治療装置のトラブル管理を目的としたデータベースParticle Therapy Database of Operation and Maintenance(PT-DOM)を製作した。システムの構成としては、Ubuntu Linuxサーバ上でPostgreSQLをバックエンドとしてWebフレームワークDjangoを使用している。最も大きな特徴は、イオン源放電などの再発事象を「トラブル類型」としてまとめて扱うことで、入力の簡素化と再発頻度の把握を可能としたことである。また、治療・測定件数など運転記録を入力し、トラブル事象の装置停止時間と合わせて装置稼働率を自動的に算出することが可能である。さらに、改修後の経過観察など忘れやすい項目に対するリマインダー機能や、消耗品の在庫管理機能を備え、維持管理に要する人手を削減できるようにした。本データベースは山形大学医学部東日本重粒子センターで2021年1月から運用を開始した。1年4ヶ月経過した時点で、トラブル事象は5139個、トラブル類型は548個となっており、多数の事象に対して効率的な管理が可能となっている。
 
ハドロン加速器① (10月21日 会議室A)
9:00-9:20 
FROA01
p.151
[Slides]
J-PARC MRにおける高繰り返しビーム試験結果
Results of high repetition beam commissioning in J-PARC MR

○安居 孝晃,佐藤 洋一,發知 英明,五十嵐 進,石井 恒次,岩田 宗磨,魚田 雅彦,大越 隆夫,大見 和史,大森 千広,岡田 雅之,岡村 勝也,織井 安里,門脇 琴美,上窪田 紀彦,木村 琢郎,久保田 親,栗本 佳典,小林 愛音,佐々木 知依,佐藤 健一,佐藤 健一郎,佐藤 吉博,芝田 達伸,嶋本 眞幸,下川 哲司,白形 政司,杉本 拓也,杉山 泰之,高野 淳平,瀧山 陽一,手島 昌己,冨澤 正人,外山 毅,中村 剛,仁木 和昭,橋本 義徳,長谷川 豪志,原 圭吾,松本 教之,松本 浩,三浦 一喜,武藤 亮太郎,村杉 茂,森田 裕一,柳岡 栄一,山田 秀衛,山本 昇,楊 敏,吉井 正人(KEK),島田 太平,菖蒲田 義博,田村 文彦,畠山 衆一郎,野村 昌弘,山本 昌亘(JAEA),浅見 高史,小関 忠(KEK/東大)
○Takaaki Yasui, Yoichi Sato, Hideaki Hotchi, Susumu Igarashi, Koji Ishii, Soma Iwata, Masahiko Uota, Takao Oogoe, Kazuhito Ohmi, Chihiro Ohmori, Masashi Okada, Katsuya Okamura, Asato Orii, Kotomi Kadowaki, Norihiko Kamikubota, Takuro Kimura, Chikashi Kubota, Yoshinori Kurimoto, Aine Kobayashi, Tomoi Sasaki, Kenichi Sato, Kenichirou Satou, Yoshihiro Sato, Tatsunobu Shibata, Masayuki Shimamoto, Tetsushi Shimogawa, Masashi Shirakata, Takuya Sugimoto, Yasuyuki Sugiyama, Junpei Takano, Yoichi Takiyama, Masaki Tejima, Masahito Tomizawa, Takeshi Toyama, Takeshi Nakamura, Kazuaki Niki, Yoshinori Hashimoto, Katsushi Hasegawa, Keigo Hara, Noriyuki Matsumoto, Hiroshi Matsumoto, Kazuki Miura, Ryotaro Muto, Shigeru Murasugi, Yuichi Morita, Eiichi Yanaoka, Shuei Yamada, Noboru Yamamoto, Min Yang, Masahito Yoshii (KEK), Taihei Shimada, Yoshihiro Shobuda, Fumihiko Tamura, Shuichiro Hatakeyama, Masahiro Nomura, Masanobu Yamamoto (JAEA), Takashi Asami, Tadashi Koseki (KEK/The University of Tokyo)
 
大強度陽子加速器施設(J-PARC)の主リング(MR)では、長基線ニュートリノ振動実験(T2K)に向けパルスあたり陽子数が世界最大の陽子ビームを供給している。より高統計の物理実験を可能にするため、MRではこれまでT2Kに向け515 kWで供給していたビーム強度を1.3 MWにまで増強するアップグレード計画を打ち出している。MRアップグレード計画の最大の特徴は、運転繰り返し周期を2.48 sから1.36 sへと短縮することである。高繰り返しを実現するために、新電源開発を経て2021年度に電磁石電源を入れ替えると共に、加速器全体を高繰り返しへと対応させるべく増強を行い、2022年度にビーム調整を再開させた。本発表では大規模改造後初となる高繰り返しビーム試験結果を報告する。また1.3 MW運転実現に向けた今後の計画についても述べる。
 
9:20-9:40 
FROA02
p.156
[Slides]
FRIB加速器のコミッショニングに向けたビームラインの整備と統括
System integration and technical readiness for FRIB accelerator commissioning

○Ao Hiroyuki,Arend Ben,Bultman Nathan,Casagrande Fabio,Compton Chris,Cortesi Marco,Curtin John,Davidson Kelly,Elliott Kyle,Ewert Brandon,Ganshyn Andrei,Glasmacher Thomas,Hao Yue,Hausmann Marc,Holland Kent,Ikegami Masanori,Jager Davin,Jones Shelly,Joseph Nathan,Kanemura Takuji,Kim Sang-hoon,Larmann Mike,LeTourneau John,Lidia Steven,Machicoane Guillaume,Mugerian Martin,Manwiller Peter,Miller Samuel,Morris Dan,Ostroumov Peter N.,Popielarski John,Popielarski Laura,Priller John,Ren Haitao,Saito Kenji,Stolz Andreas,Walker Roben,Wang Xiaole,Wei Jie,West Genevieve,Xu Ting,Yamazaki Yoshishige,Yoonhyuck Choi,Zhao Qiang(FRIB, MSU)
○Hiroyuki Ao, Ben Arend, Nathan Bultman, Fabio Casagrande, Chris Compton, Marco Cortesi, John Curtin, Kelly Davidson, Kyle Elliott, Brandon Ewert, Andrei Ganshyn, Thomas Glasmacher, Yue Hao, Marc Hausmann, Kent Holland, Masanori Ikegami, Davin Jager, Shelly Jones, Nathan Joseph, Takuji Kanemura, Sang-hoon Kim, Mike Larmann, John Letourneau, Steven Lidia, Guillaume Machicoane, Martin Mugerian, Peter Manwiller, Samuel Miller, Dan Morris, Peter N. Ostroumov, John Popielarski, Laura Popielarski, John Priller, Haitao Ren, Kenji Saito, Andreas Stolz, Roben Walker, Xiaole Wang, Jie Wei, Genevieve West, Ting Xu, Yoshishige Yamazaki, Choi Yoonhyuck, Qiang Zhao (FRIB, MSU)
 
After Michigan State University (MSU) was selected for the site of the Facility for Rare Isotope Beams (FRIB) in 2008, technical construction started from 2014. The FRIB accelerator attained Key Performance Parameters (KPP) of project completion (CD-4) defined by US Department of Energy (DOE) in December 2021, and beam was finally delivered through the entire FRIB project scope in January 2022. The FRIB accelerator is the world’s highest-energy Continuous Wave (CW) hadron linac and designed to accelerate all stable ions to energies above 200 MeV/u. During the construction, FRIB pursued a phased commissioning approach to proceed with installation and commissioning in parallel. Beamline installation and beam test started from the Front End segment, and then the beam line was extended to Transfer Hall in several steps. This paper seeks to describe system integration and technical readiness for FRIB accelerator commissioning and give an overview of the FRIB installation and commissioning until the project completion.
 
9:40-10:00 
FROA03
p.161
J-PARC 主リングにおけるCOD応答を用いた高精度Optics測定
High-precision optics measurement using COD response in J-PARC Main Ring

○浅見 高史,小関 忠(東大/KEK),佐藤 洋一,安居 孝晃,五十嵐 進,發知 英明(KEK)
○Takashi Asami, Tadashi Koseki (UTokyo/KEK), Yoichi Sato, Takaaki Yasui, Susumu Igarashi, Hideaki Hotchi (KEK)
 
大強度陽子シンクロトロンJ-PARC 主リング(MR)では1.3MW化アップグレード計画のためのビーム調整が進行している。アップグレードは繰り返し時間の短縮と陽子数の増加によって行われ、それらのビーム運動への影響を理解することが不可欠である。特にベータ関数はビーム運動を決める最も重要なパラメータの一つである。これまでMRのベータ関数は、ビーム位置モニタのTurn by Turn信号を用いた測定手法により3%程度の設定精度で運用されてきた。しかしアップグレードによって増大する空間電荷効果や機器上渦電流の影響評価において、ベータ関数をさらに正確に測定する事が重要な課題となる。本研究ではMRの周上に設置されているステアリング電磁石によるCOD応答を用いたベータ関数測定手法により、MRの入射待ち受け時間及び加速中の両方について、設定精度1%以下でのベータ関数調整を試みた。本稿ではその詳細について述べる。
 
10:00-10:20 
FROA04
p.166
RCNP AVFサイクロトロンにおけるビームコミッショニング
Beam commissioning of the RCNP AVF cyclotron

○福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,安田 裕介(阪大RCNP),中尾 政夫(群大GHMC),畑中 吉治,齋藤 高嶺,田村 仁志,森信 俊平,永山 啓一,吉田 英智,阿野 真治,友野 大,鎌野 寛之,青井 考,嶋 達志,井手口 栄治,大田 晋輔,小林 信之,古野 達也,今城 想平,村田 求基,山本 康崇,鈴木 智和,今 教禎,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,荘 浚謙,Zhao Hang,橘高 正樹,松井 昇大朗(阪大RCNP)
○Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Yuusuke Yasuda (RCNP), Masao Nakao (GHMC), Kichiji Hatanaka, Takane Saito, Hitoshi Tamura, Shunpei Morinobu, Keiichi Nagayama, Hidetomo Yoshida, Shinji Ano, Dai Tomono, Hiroyuki Kamano, Toshi Aoi, Tatsushi Shima, Eiji Ideguchi, Shinsuke Ota, Nobuyuki Kobayashi, Tatsuya Furuno, Shohei Imajo, Motoki Murata, Yasutaka Yamamoto, Tomokazu Suzuki, Yukiyoshi Kon, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Tsun Him Chong, Hang Zhao, Masaki Kittaka, Shotaro Matsui (RCNP)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では、2019年度にK140 AVFサイクロトロンの高性能化を目指したアップグレードに着手し,2019年度に建屋の遮蔽増強や老朽化した設備の改修、2020年度に従来のAVFサイクロトロンの解体と機器の更新,2021年度に構成機器の調整やRFパワー試験などを行った後に,2022年3月から加速を開始して4月にAVFサイクロトロンから65MeVの陽子ビームを取り出すことに成功した。本アップグレードにおいてはビーム強度を従来の10倍以上に増強することを目的としてイオン源の加速電圧を15kVから50kVに増やし,入射エネルギーの増加に適合するようにインフレクター電極等の中心領域の電極配置や構造などを全面的に更新した。また,開き角87度の2つのディー電極を対向させた同軸型ショート板方式の共振器システムを導入してRF周波数帯域を従来の2~3倍の16~36MHzに上げ、加速ハーモニクス2を基本とする加速モードによってエネルギー利得を最大化してデフレクターでの引出効率の向上とビーム損失の低減を図った。本体電磁石の磁極とヨーク,メインコイルは旧来のものを再利用したことから最大平均磁場はこれまでと変わらず,加速可能なエネルギー範囲も従来と同じ幅広い範囲をカバーしている。本発表においては、アップグレードしたAVFサイクロトロンの性能とビームコミッショニングの状況などについて報告する。
 
ハドロン加速器②/加速器技術(加速構造)① (10月21日 会議室A)
10:30-10:50 
FROA05
p.170
[Slides]
J-PARC MR速い取り出し用新セプタム電磁石の故障への対応
Countermeasures for the failure of the new septum magnet for fast extraction in J-PARC Main Ring

○岩田 宗磨,石井 恒次,佐藤 洋一,五十嵐 進,發知 英明,安居 孝晃,芝田 達伸,杉本 拓也,松本 浩,松本 教之(高エネルギー加速器研究機構)
○Soma Iwata, Koji Ishii, Yoichi Sato, Susumu Igarashi, Hideaki Hotchi, Takaaki Yasui, Tatsunobu Shibata, Takuya Sugimoto, Hiroshi Matsumoto, Noriyuki Matsumoto (KEK)
 
J-PARCではビームパワーの高出力化が進められている。ニュートリノビーム(NU)ラインまたはAbortラインへの速い取り出し(FX)機器についても、2021年7月から2022年5月にかけて低磁場セプタム電磁石(SM)と高磁場SMの交換を実施した。しかし2021年夏、高磁場SMのうち、NUライン向けのSM32Eのコイルに漏水とロウ付け不良が発見されたため、SM32のインストールを延期した。コイルは再製作を必要とし、SM32の完全復旧は2023年夏の見込みである。本講演ではコイル故障の詳細、SM32復旧計画について紹介し、復旧までの期間中SM32を使用しないビーム取り出し方法の検討、及び2022年6月のビーム試験の結果について報告する。SADを用いたビーム取り出し方法の検討ではSM32無しでエミッタンス15π mm mradの30GeV陽子ビームを取り出す場合、電源への負担軽減も重要な課題であることがわかった。その対応についても報告する。
 
10:50-11:10 
FROA06
p.175
[Slides]
J-PARC MR フラットトップにおける非断熱的バンチ操作への縦方向インピーダンスの影響
Effects of the longitudinal impedances on non-adiabatic bunch manipulation at flattop of J-PARC MR

○田村 文彦,大森 千広,吉井 正人,冨澤 正人,外山 毅,杉山 泰之,長谷川 豪志,小林 愛音,沖田 英史(J-PARCセンター)
○Fumihiko Tamura, Chihiro Ohmori, Masahito Yoshii, Masahito Tomizawa, Takeshi Toyama, Yasuyuki Sugiyama, Katsushi Hasegawa, Aine Kobayashi, Hidefumi Okita (J-PARC Center)
 
J-PARC MR は大強度陽子ビームをニュートリノ実験に供給している。高いピーク電流を持つ 8つのバンチが速い取り出しによって MR から取り出され、従ってニュートリノビームも同様の時間構造を持つ。将来の実験では Intermediate Water Cherenkov Detector (IWCD) が導入される予定であり、IWCD はピーク電流が低い時間構造を要求するため、MR のフラットトップでのバンチ操作によるピーク電流低減を検討中である。ビームパワーの低下を抑えるためバンチ操作はできるだけ短期間で行わねばならず、またキッカーの立ち上がり期間のビームロスを防ぐために、最終バンチと先頭バンチの間隔を保つ必要がある。これらの要求を満たすために、加速ハーモニック近傍のマルチハーモニック RF 電圧を用いた非断熱的なバンチ操作が提案されている。この過程においては MR 全周の縦方向インピーダンスの影響が考えられるため、シミュレーションを行い、大強度ビームのバンチ操作の成立可能性についての議論を行う。
 
11:10-11:30 
FROA07
p.179
[Slides]
加速器駆動未臨界システム用の30-MWビーム輸送ラインの堅牢でコンパクトな設計
Robust and compact design of a 30-MW beam transport line for an accelerator-driven subcritical system

○イーレンドン ブルース,近藤 恭弘,田村 潤,中野 敬太,前川 藤夫,明午 伸一郎(JAEA)
○Bruce Yee-rendon, Yasuhiro Kondo, Jun Tamura, Keita Nakano, Fujio Maekawa, Shininchiro Meigo (JAEA)
 
The Japan Atomic Energy Agency accelerator-driven subcritical system (JAEA-ADS) pursues the reduction of nuclear waste by transmuting minor actinides. JAEA-ADS project drives a 30MW proton beam to a lead-bismuth eutectic (LBE) spallation target to produce neutrons for a subcritical core reactor. To this end, the JAEA-ADS beam transport line (BTL) must provide a suitable beam profile and stable beam power to the beam window of the spallation target to avoid high-thermal stress in the target and reactor components. The JAEA-ADS BTL was optimized by tracking a large number of macroparticles to mitigate the beam loss in the region outside the reactor, performance with high stability in the presence of errors, and fulfill the length requirement. This work presents the design and the beam dynamics studies of the first scheme of the BTL for the JAEA-ADS project.
 
11:30-11:50 
FROA08
p.184
[Slides]
Efforts to improve the assembly work of SRF cavities in the clean room to suppress field emission
○Mathieu Omet, Hayato Araki, Takeshi Dohmae, Hayato Ito, Ryo Katayama, Hiroshi Sakai, Kensei Umemori, Yasuchika Yamamoto (High Energy Accelerator Research Organization)
 
Our main objective is to achieve as high as possible quality factors Q0 and maximal accelerating voltages Eacc within 1.3 GHz superconducting radio frequency (SRF) cavities. Beside an adequate surface treatment, key to achieve good performance is a proper assembly in the clean room prior cavity testing or operation. In this contribution we present the methods and results of our efforts to get a better understanding of our clean room environment and the particulate generation caused during the assembly work. Furthermore, we present the introduced measures of documentation to support the planning, the performance, and the analysis of the assembly work.
 
11:50-12:10 
FROA09
p.188
次世代放射光源用加速器のための1.5 GHz TM020型高調波空洞の大電力実機に向けた設計研究
High-power model design of the 1.5 GHz TM020-type harmonic cavity for the future synchrotron light sources

○山口 孝明(総研大(加速器)),坂中 章悟,山本 尚人,内藤 大地,高橋 毅(高エネ研)
○Takaaki Yamguchi (SOKENDAI), Shogo Sakanaka, Naoto Yamamoto, Daichi Naito, Takeshi Takahashi (KEK)
 
TM020型空洞[1]はビーム不安定性を誘引する寄生モードの減衰に優れ、且つバンチギャップによる過渡的電圧変動を抑制できる。我々はこの空洞方式を100 pm rad級の低エミッタンス放射光源でバンチ伸長用高調波空洞として用いることを考え、設計研究を行っている。2020年頃まで電磁場設計を行い主要な寄生モードを大きく減衰できることを電磁場計算で示し、2021年春にアルミ合金製低電力モデルを製作して加速モードの共振周波数とQ値及び寄生モードの減衰性能を確認した[2]。その後本格的に大電力実機試作に向け設計検討を進めた。この検討過程で、寄生モード減衰機構に関して、RF吸収体の合計体積を増やす、またRF吸収体導入部を真空封止する、という理由から設計変更の必要性が生じ、低電力モデルの構造から若干の改良を施した。その後、ANSYSによる熱応力解析を行い、1空洞当たり約10 kWの熱負荷にも対応できる冷却水路・機械構造を検討した。こうした検討の結果、実機の設計が概ね固まった。本発表では、これらの検討結果に基づく大電力実機の最終設計を提示する。[1] H. Ego, et al., PASJ2014, MOOL14. [2] T. Yamaguchi, PASJ2021, WEOA03.
 
加速器技術(加速構造)② (10月21日 会議室A)
15:30-15:50 
FROA10
p.193
[Slides]
J-PARC SDTLで発生したマルチパクタ抑制のための空洞内洗浄について
Cavity cleaning for suppression of multipactor occurred at the J-PARC SDTL

○伊藤 崇,森下 卓俊,平野 耕一郎,北村 遼,小林 史憲,新井 宇宙(日本原子力研究開発機構),南茂 今朝雄(高エネルギー加速器研究機構),根本 康雄,小坂 知史(株式会社NAT)
○Takashi Ito, Takatoshi Morishita, Koichiro Hirano, Ryo Kitamura, Fuminori Kobayashi, Sora Arai (JAEA), Kesao Nanmo (KEK), Yasuo Nemoto, Tomofumi Kosaka (NAT)
 
J-PARCリニアックの主要加速器であるSDTLでは、一部のSDTLに対し、運転電力付近で反射電力が増加するためSDTL空洞内に電力を正常に供給できない不具合が発生していた。空洞内部の調査やシミュレーションを行った結果、その原因は空洞内壁面で発生しているマルチパクタであることが判明した。この問題を解決するため、我々はSDTL空洞に対しいくつかの対策を実施してきたが、最も効果的な対策は空洞の内部洗浄であった。空洞の洗浄にはアセトン、希硫酸、希塩酸を用い、これまで6空洞に対し実施し、とりわけ不具合の状態が酷かった2空洞を含め、不具合をほぼ解消することができた。本稿では、これまでに実施したSDTL空洞の内部洗浄の詳細について報告する。
 
15:50-16:10 
FROA11
p.197
[Slides]
ミューオン線形加速器APF方式IH-DTLプロトタイプの大電力試験
High-power test of an APF IH-DTL prototype for the muon linac

○中沢 雄河,飯沼 裕美(茨大理工),岩田 佳之(放医研),Cicek Ersin,惠郷 博文,二ツ川 健太,大谷 将士,河村 成肇,齊藤 直人,溝端 仁志,三部 勉,山崎 高幸,吉田 光宏(高エネ研),北村 遼,近藤 恭弘,森下 卓俊(原研),須江 祐貴,鷲見 一路,四塚 麻衣(名大),竹内 佑甫(九大),林崎 規託(東工大),安田 浩昌(東大)
○Yuga Nakazawa, Hiromi Iinuma (Ibaraki Univ.), Yoshiyuki Iwata (NIRS), Ersin Cicek, Hiroyasu Ego, Kenta Futatsukawa, Masashi Otani, Naritoshi Kawamura, Naohito Saito, Satoshi Mizobata, Tsutomu Mibe, Takayuki Yamazaki, Mitsuhiro Yoshida (KEK), Ryo Kitamura, Yasuhiro Kondo, Takatoshi Morishita (JAEA), Yuki Sue, Kazumichi Sumi, Mai Yotsuzuka (Nagoya Univ.), Yusuke Takeuchi (Kyushu Univ.), Noriyosu Hayashizaki (Tokyo tech), Hiromasa Yasuda (Univ. of Tokyo)
 
2021年に発表された米国フェルミ研究所(FNAL)によるミューオン異常磁気能率(g-2)の測定結果は、先行実験であるブルックヘブン研究所(BNL)の測定結果と無矛盾であり、素粒子標準模型予測値との乖離が4.2標準偏差であることを示した。この乖離は未知粒子の兆候と考えられる一方で、FNALとBNLではエミッタンスの大きいミュオンビームに由来する不定性が存在している。そこでJ-PARCではミューオンの高周波線形加速による低エミッタンスビームを実現することで、全く新しいミューオンg-2測定の展開を目指している。ミューオン特有の問題である加速中の崩壊損失を抑制するべく、低速部領域には高加速効率を有するInter-digital H-mode drift tube linac (IH-DTL)を採用する。さらに高周波電場のみで横方向収束を行うAlternative Phase Focusing(APF) 方式を導入することによって、高加速効率と空洞の小型化を実現した。一方でミューオン専用のIH-DTL開発の前例はないため、我々は原理実証のための実機の1/3スケールのプロトタイプを製作し大電力試験を実施した。30時間程度のコンディショニングの結果、IH-DTLプロトタイプは定格パワー(75 kW, duty 0.1%)で安定な状態となることを達成した。本講演では、IH-DTLプロトタイプの開発及び大電力試験の結果について報告する。
 
16:10-16:30 
FROA12
p.202
[Slides]
ミューオン加速用円盤装荷型加速管におけるカプラーセルの設計
Design of coupler cells in the disk-loaded structure for the muon linac

○鷲見 一路,飯嶋 徹,居波 賢二,茨木 優花,須江 祐貴,四塚 麻衣(名大理),惠郷 博文,大谷 将士,齊藤 直人,三部 勉,吉田 光宏(KEK),近藤 恭弘,守屋 克洋(JAEA),竹内 佑甫(九大理),中沢 雄河(茨大理工),安田 浩昌(東大理)
○Kazumichi Sumi, Toru Iijima, Kenji Inami, Yuka Ibaraki, Yuki Sue, Mai Yotsuzuka (Nagoya Univ.), Hiroyasu Ego, Masashi Otani, Naohito Saito, Tsutomu Mibe, Mitsuhiro Yoshida (KEK), Yasuhiro Kondo, Katsuhiro Moriya (JAEA), Yusuke Takeuchi (Kyushu Univ.), Yuga Nakazawa (Ibaraki Univ.), Hiromasa Yasuda (Univ. of Tokyo)
 
J-PARCで計画しているミューオンの異常磁気能率及び電気双極子能率の精密測定実験では、ミューオン加速で生成する低エミッタンスビームを用い、先行実験により示された素粒子標準模型を超える物理の兆候を独立に検証する。ミューオン線形加速器には各速度域に適した4種類の高周波加速空洞を用い、低崩壊損失で運動エネルギー5.6 keVから212 MeVまで加速することで、横方向エミッタンス約1pi mm mradかつ運動量分散0.1%以下のビームを得る。最後段の高速部には高加速勾配が得られる円盤装荷型加速管(DLS)を採用し、2592 MHzのTM01-2pi/3モードで生じる約20 MV/mの加速勾配で40 MeV以降の加速を担う。ミューオン用DLSはビームの速度に応じてディスクの間隔が変化するため、 カプラーセルに隣接する通常セルの構造に揃えた基準管とミューオン用準定勾配管を用いたカプラーセルの構造最適化を三次元電磁場解析コードで行った。さらに、カプラーセルで生じる電磁場の歪みがビームに及ぼす影響を評価したので、それらの結果について報告する。
 
16:30-16:50 
FROA13

ニオブダイレクトスライス材の活用による超伝導空洞の低コスト化
Cost reduction of SRF cavities utilizing sliced ingot niobium
○山中 将,道園 真一郎(高エネ研)
○Masashi Yamanaka, Shinichiro Michizono (KEK)
 
超伝導空洞に用いられる高純度ニオブの素材は、電子ビーム溶解により製造されたインゴットであり、粒径10~200 mmの多結晶体である。1.3 GHz超伝導空洞の中央のセル部分は、厚さ約3 mmのニオブ板材をプレス加工して製造する。ニオブ板材は、通常インゴットを鍛造・圧延して生産する。結晶は微細化され、粒径は0.01~0.1 mm程度である。これをファイングレイン(FG)と呼ぶ。一方、円筒のインゴットをスライスしてセル材料とし、これをプレス加工して空洞を製造する方法がある。スライスされた円板には大きな結晶粒が含まれているので、ラージグレイン(LG)と呼ぶ。LG空洞はFG空洞に比べて最大加速勾配とQ値が高い等の特徴がある。また鍛造・圧延工程に比べてスライス工程は簡単なため、素材の二次加工コストの低減に有効である。2018年度より文部科学省の補助事業「先端加速器の低コスト化基盤技術の開発」の一部として、「ニオブダイレクトスライス材料の活用」に取り組んでいる。これまで開発してきた中RRR高Taのニオブを使ったLG空洞と最近、新たに製造した高RRR高Taのニオブを使ったLG空洞について紹介する。関連する材料強度試験結果や空洞の破裂試験結果についても述べる。さらに、材料コストがどの程度、低減できるかを詳細に検討した。
 
加速器技術(ビーム診断・ビーム制御)① (10月21日 会議室B)
9:00-9:20 
FROB01
p.207
White Rabbitを用いたDistributed TDCシステム
Distributed TDC system based on White Rabbit

○梶 裕志(高エネルギー加速器研究機構)
○Hiroshi Kaji (KEK)
 
Distributed DAQシステムは加速器の制御関係者により提唱された新しいビーム診断技術である。本システムは加速器ビームライン上に分散されたモニター機器の時計を高精度で同期させ、ビームライン上で同時多発する事象の測定データを時刻をもとに紐づけるものである。この方法を用いると、例えば、加速器ビームが異常状態に陥り、ビームライン上の複数モニターで異常状態を示すデータが検知された場合に、それらデータをすべて紐づけ1つの事象として解析することが可能である。最新のタイミングシステムを用いたシステムでは、すべての機器の時計をサブナノ秒レベルと極めて高い精度でGPSと同期する。KEKつくばキャンパスの電子陽電子衝突型加速器SuperKEKBはいち早くDistributed DAQシステムを運転に取り入れた先駆的な存在である。本公演では、そのうち、White RabbitシステムのスレイブモジュールをTDCとして用いるdistributed TDCシステムについて解説する。またその運用例として、ビームアボート診断用ロスモニターシステムについてもその概要を紹介する。
 
9:20-9:40 
FROB02

ビームリサイクル技術開発を目的とした重イオン蓄積リングRUNBAの動作原理
Design principle of Recycled-Unstable-Nuclear Beam Accumulator (RUNBA) aiming at development of beam recycling techniques
○小川原 亮(京大化研),阿部 康志,大西 哲哉(理研仁科センター),塚田 暁,前原 義樹(京大化研),山口 由高(理研仁科センター),若杉 昌徳(京大化研)
○Ryo Ogawara (ICR, Kyoto University), Yasushi Abe, Tetsuya Ohnishi (RNC, RIKEN), Kyo Tsukada, Yoshiki Maehara (ICR, Kyoto University), Yoshitaka Yamaguchi (RNC, RIKEN), Masanori Wakasugi (ICR, Kyoto University)
 
 原子核科学の大きな夢の一つは、安定の島元素を合成し殻構造による原子核の存在限界を検証することである。それには中性子過剰な不安定核 (RI) 同士の融合反応が必須だが、既存の技術では不可能である。我々はこの問題を克服するため、重イオン蓄積リングRUNBAを用いてビームリサイクルという新しい加速器技術開発を開始した。  通常の核反応実験において、反応を起こさなかった 99% 以上のビームは廃棄されてしまっている。ビームリサイクルではこの捨てられるはずだったビームを蓄積リングで再利用し、反応するまで標的に衝突させ続ける。これは RI 研究に対して「ビーム大強度化」とは異なる「有効利用」という新しいアプローチである。ビームリサイクルでは1秒間の蓄積を実現することで、10^18個/cm2の炭素内部標的を用いた場合10^24 /cm2/sのルミノシティーを実現する。しかし、蓄積イオンは内部標的を通過するたびにエネルギーを損失し、また同時にstragglingによってエネルギー分散と角度分散が増大する。これらの補正を行わない場合僅か数十マイクロ秒で蓄積イオンは失われてしまう。したがって、ビームリサイクルには必要な補正量をフィードバックするためのアクティブ内部標的と、それぞれの分散を補正するためのデバイスが必要不可欠である。本講演ではRUNBAの動作原理と、その原理から得られた各デバイスに要求される仕様を発表する。
 
9:40-10:00 
FROB03
p.212
バンチシェイプモニタによるフロントエンドでの大強度ビームの縦方向測定
Longitudinal measurement of high-intensity beam with bunch-shape monitor in front-end

○北村 遼,林 直樹,平野 耕一郎(JAEA),宮尾 智章(KEK),三浦 昭彦,森下 卓俊(JAEA)
○Ryo Kitamura, Naoki Hayashi, Kouichirou Hirano (JAEA), Tomoaki Miyao (KEK), Akihiko Miura, Takatoshi Morishita (JAEA)
 
大強度陽子加速器施設J-PARCリニアックでは出射ビームの横エミッタンス低減等ビーム品質の向上に向けて、フロントエンドでの縦方向分布を精度良くかつ迅速に測定するためのバンチシェイプモニタ(BSM)を開発している。 大強度ビームからの熱負荷を克服するため、熱耐久性の高いグラファイト製標的を導入したことに伴い、BSM分解能への影響を評価した。 BSMによる縦方向測定結果からエミッタンスを評価するためには、空間電荷効果の影響を考慮できる3D PICコードであるIMPACTを用いた。 ビーム試験を通して評価したBSMの不確かさを計算に考慮することで、より厳密にエミッタンスを評価する手法を開発した。 本講演では一連の測定結果、開発したビーム評価手法、及びビームシミュレーションとの比較検討結果について報告する。
 
10:00-10:20 
FROB04
p.215
[Slides]
画像認識技術により、マウンテンプロット画像から運動量広がりと縦方向のビーム形状を求める
Image recognition technology is used to obtain momentum distribution and longitudinal beam shape from mountain plot image

○野村 昌弘,沖田 英史,島田 太平,田村 文彦,山本 昌亘(原子力開発機構),杉山 泰之,長谷川 豪志,原 圭吾,大森 千広,吉井 正人(加速器研究機構)
○Masahiro Nomura, Hidefumi Okita, Taihei Shimada, Fumihiko Tamura, Masanobu Yamamoto (JAEA), Yasuyuki Sugiyama, Katsushi Hasegawa, Keigo Hara, Chihiro Ohmori, Masahito Yoshii (KEK)
 
J-PARCでは、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)よる画像認識技術により、マウンテンプロットと呼ばれる画像から、RCSの調整時等に必要な前段のLinacからの入射ビームに関する情報が得られるように整備している。これらの情報の中で、入射ビームの運動量広がりについてはガウス分布の標準偏差として、また縦方向のビーム形状については強度が一定としてその時間幅として求めている。しかし、これらの情報は値としてではなく、分布や形状として求められることが望まれる。そこで、今回CNNの教師データとして、単なる値ではなく、運動量分布やビーム形状を学習させることにより、学習後のCNNから運動量広がりや縦方向のビーム形状を求められるようにした。発表では、使用したCNN及び教師データについて、そしてそれらにより得られた結果について報告する。
 
加速器技術(ビーム診断・ビーム制御)②/加速器技術(電磁石と電源)① (10月21日 会議室B)
10:30-10:50 
FROB05
p.218
[Slides]
J-PARC muon g-2/EDM実験に向けた3次元らせん入射実証実験
Demonstration of three-dimensional spiral injection for J-PARC muon g-2/EDM experiment

○飯沼 裕美(茨大理工),松下 凌大(東大理),大澤 哲,中山 久義(高エネ研),小田 航大(茨大理工),小川 真治(九大理),齊藤 直人(高エネ研, 東大理),古川 和朗(高エネ研),三部 勉(高エネ研, 東大理),Muhammad Abdul Rehman(高エネ研)
○Hiromi Iinuma (Ibaraki univ.), Ryota Matsushita (Univ. of Tokyo), Satoshi Ohsawa, Hisayoshi Nakayama (KEK), Kodai Oda (Ibaraki univ.), Shinji Ogawa (Kyushu univ.), Naohito Saito (KEK, Univ. of Tokyo), Kazuro Furukawa (KEK), Tsutomu Mibe (KEK, Univ. of Tokyo), Rehman Muhammad Abdul (KEK)
 
3次元らせん入射は、J-PARC muon g-2/EDM実験において、磁場3Tの蓄積ソレノイド磁石内に運動量300MeV/cのミューオンビームを入射し蓄積するために用いられる手法である。これは世界初の手法であるため、KEKにおいてテストベンチを構築し、80keVの電子ビームと磁場82.5gaussの蓄積磁石を使った実証実験を行うための研究開発を進めてきた。これまでの研究開発によって、実証実験に用いるパルスビーム(パルス幅100ns, 繰り返し周波数>50Hz)の生成と、蓄積磁石中で径方向のパルス磁場を発生させ、ビームに垂直方向のキックを与えることで蓄積するキッカー装置の準備が完了し、実証実験を開始した。ビーム蓄積を達成する鍵は、蓄積磁石内部におけるソレノイド軸方向のビーム運動量の制御であり、蓄積平面においてこの値を0にすることで、弱収束磁場によってビームを蓄積することが可能となる。本講演では、ビーム位相空間と、蓄積磁石へビームを入射する際の入射角、キッカーの作動タイミング、キッカーに印加する電流量をパラメータとしたときの、蓄積槽内部のビーム空間分布の測定結果を比較する。更に、シミュレーションより予想される分布と実際のビーム分布の差異を基に、ビーム調整のフィードバックシナリオを考察する。
 
10:50-11:10 
FROB06
p.224
COMET実験のためのSiCミュー粒子ビームモニタの開発
Development of the SiC muon beam monitor for the COMET experiment

○深尾 祥紀,藤田 陽一,岸下 徹一(KEK),児島 一聡,小杉 亮治,升本 恵子(AIST),西口 創,庄子 正剛(KEK),田中 保宣(AIST)
○Yoshinori Fukao, Yowichi Fujita, Tetsuichi Kishishita (KEK), Kazutoshi Kojima, Ryouji Kosugi, Keiko Masumoto (AIST), Hajime Nishiguchi, Masayoshi Shoji (KEK), Yasunori Tanaka (AIST)
 
茨城県東海村にあるJ-PARCハドロン実験施設では、COMET実験の建設が進められており、2024年に物理データの取得を開始する計画である。COMET実験では、ニュートリノを放出せずにミュー粒子が電子へ転換する事象(mu-e転換事象)を探索する。mu-e転換事象は素粒子の標準模型内では非常に低い確率でしか起こらないため、発見された場合、新物理の存在が明らかとなる。mu-e転換事象は非常に稀にしか発生しないため、偽の信号の混入を可能な限り抑制し、測定環境の健全性を監視する必要がある。我々は、実験で使用する二次ミュー粒子ビームの安定性を監視するために、シリコンカーバイド(SiC)半導体を使用したビームモニタ検出器の開発を進めている。COMET実験のミュー粒子ビームは二次ビームではあるものの、強度が高く、例えば、シンチレーターや通常のシリコン半導体を用いた検出器では、ビーム照射による放射線損傷によって壊れてしまうため、より放射線耐性の高いSiC半導体を採用する計画である。SiC半導体検出器単体については、ベータ線源、ビームを利用した性能評価が進められている。一方、ビームモニタとしての要求性能をもとに、シミュレーションを用いてモニタ全体の設計の最適化を行っている。この発表では、上述のミュー粒子ビームモニタの概要および開発状況について報告する。
 
11:10-11:30 
FROB07
p.228
[Slides]
放射光ビームラインにおけるパルス・モード計測型光位置モニタの評価
Evaluation of a pulse-mode X-ray beam position monitor for a synchrotron radiation beamline

○青柳 秀樹,大沢 仁志,小林 和生,藤田 貴弘,高橋 直(高輝度光科学研究センター)
○Hideki Aoyagi, Hitoshi Osawa, Kazuo Kobayashi, Takahiro Fujita, Sunao Takahashi (JASRI)
 
大型放射光施設SPring-8の放射光ビームラインにおいてパルス毎の位置計測を可能とするパルス・モード計測型光ビーム位置モニタの実用化に取り組んでいる。本モニタは、高周波特性を向上させるために、ダイヤモンド・ヒートシンクを用いたブレード型検出素子の浮遊電気容量を低減させ、かつ、マイクロ・ストリップライン伝送路を用いてインピーダンスを整合させている。これにより、パルス長の短い単極性パルス信号の発信が可能となり、放射光ビームの光軸の変動をパルス毎に観測することができる。耐熱性能を更に高める改良を施した試験機の評価試験を挿入光源ビームラインにて実施した。本講演では、蓄積リングのビームシェーカを用いて水平/垂直方向にベータトロン振動を励起して本モニタの感度、及び、分解能の評価結果や、ユーザー運転中の入射直後のパルス毎のビーム振動の観測について報告する。
 
11:30-11:50 
FROB08
p.233
レーザー駆動イオン加速機構におけるビームエミッタンス評価
Parameter evaluation of an ion beam emittance in laser-driven ion acceleration mechanism

○宮武 立彦(九大院 総理工),小島 完興,榊 泰直(量研 関西研),竹本 伊吹(九大院 総理工),近藤 康太郎,西内 満美子,ヂン タンフン,畑 昌育,錦野 将元(量研 関西研),渡辺 幸信(九大院 総理工),岩田 佳之,白井 敏之(量研 放医研),神門 正城,近藤 公伯(量研 関西研)
○Tatsuhiko Miyatake (Kyushu Univ. ), Sadaoki Kojima, Hironao Sakaki (QST), Ibuki Takemoto (Kyushu Univ. ), Kotaro Kondo, Mamiko Nishiuchi, Thanh-hung Dinh, Masayasu Hata, Masaharu Nishikino (QST), Yukinobu Watanabe (Kyushu Univ. ), Yoshiyuki Iwata, Toshiyuki Shirai, Masaki Kando, Kiminori Kondo (QST)
 
レーザー駆動イオン加速機構は,その機構が作り出す加速勾配の大きさ(~TV/m)から,装置の小型化が期待され,本機構を用いた加速器実現に向け世界各国で開発が進められている。一般に,加速器を開発する上で発生するビーム特性を把握することは不可欠であるが,中でもビームの横方向エミッタンスを把握することは,加速器のビーム輸送性能を決定する上で極めて重要である。これまでに,レーザー加速プロトンに関して,その横方向エミッタンスが0.004 mm-mrad(規格化RMS値)であるという報告もあり,これは既存のRF加速器と比較して2桁以上小さい。一方で,レーザー照射条件に応じてエミッタンス値が変化する可能性は十分に考えられるが,レーザー加速イオンのエミッタンスに寄与するパラメータは体系的に診断されておらず,ビームのエミッタンスを最適値に制御する方法は理解されていない。本発表では,レーザー加速イオンの横方向エミッタンス特性について理解するために、イオン発生に用いる固体薄膜とレーザーの条件をパラメータにした場合の,エミッタンスとの相関関係について報告する予定である。
 
11:50-12:10 
FROB09
p.237
J-PARCリニアックにおけるエミッタンス増大抑制のための四極八極結合型電磁石の開発
Development of quadrupole-octupole combined magnet for emittance-growth mitigation in the J-PARC linac

○地村 幹(東北大理),原田 寛之,高柳 智弘,金正 倫計(原子力機構J-PARC)
○Motoki Chimura (Dept. of Phys., Tohoku Univ.), Hiroyuki Harada, Tomohiro Takayanagi, Michikazu Kinsho (J-PARC Center, JAEA)
 
加速器最上流部の低エネルギー領域で引き起こされるエミッタンス増大は,加速器全体のビーム品質の悪化および放射化の原因となる。発表者はこれまでの研究によって強い空間電荷場が働く加速器の低エネルギー領域において,数 m程度の短距離で急激なエミッタンス増大が引き起こされることを確認した。これより,このエミッタンス増大は空間電荷場の非線形性に起因することを明らかにし,八極磁場を用いることでエミッタンス増大を抑制することを提案した。さらに,ビームに八極磁場を印加することでエミッタンス増大が緩和されることをシミュレーションより示した。このエミッタンス増大の抑制法を実際の加速器に適用するため,電磁石の開発を行なった。これまでの研究より,ビーム幅の大きい地点に八極磁場を印加することでエミッタンス増大を最大限抑制することができるという結果を得ていた。そこで,他に類を見ない形状を持つ,四極磁場と八極磁場を同時に発生可能な電磁石を製作した。この電磁石は,既存の四極電磁石と交換することによって新たなスペースを確保することなく本電磁石を導入できるという利点もある。本発表では,この四極八極結合型電磁石の構造および磁場測定の結果について述べる。さらに,本電磁石を用いたエミッタンス増大の抑制実験についても議論を行う。
 
加速器技術(電磁石と電源)② (10月21日 会議室B)
15:30-15:50 
FROB10
p.242
J-PARCにおける加速器用パルス電源の半導体化
Semiconductor pulse power supplies for accelerators at J-PARC

○高柳 智弘,小野 礼人,不破 康裕,篠崎 信一(J-PARC/JAEA),堀野 光喜,植野 智晶(NAT),杉田 萌,山本 風海,小栗 英知,金正 倫計(J-PARC/JAEA),小田 航大(茨城大学),亀崎 広明,生駒 直弥,中田 恭輔,虫邉 陽一,徳地 明(PPJ)
○Tomohiro Takayanagi, Ayato Ono, Yasuhiro Fuwa, Shinichi Shinozaki (J-PARC/JAEA), Koki Horino, Tomoaki Ueno (NAT), Moe Sugita, Kazami Yamamoto, Hidetomo Oguri, Michikazu Kinsho (J-PARC/JAEA), Kodai Oda (Ibaraki University), Hiroaki Kamezaki, Naoya Ikoma, Kyosuke Nakata, Yoichi Mushibe, Akira Tokuchi (PPJ)
 
パワー半導体の性能向上により、低損失で高耐圧・大電流の用途に優れたシリコンカーバイド(SiC)製パワー半導体が実用化されている。J-PARCでは、放電管のサイラトロンを用いたキッカー電源を代替する半導体短パルス電源と、既設のクライストロン電源システムを更新する小型化・省電力化に優れた半導体長パルス電源の開発を進めている。キッカー用半導体スイッチ電源においては、誘導電圧重畳回路(LTD)方式を採用した40kV/2kA/1.2usの実機仕様のユニット電源を製作し、必要な性能を確認した。現在、LTD電源の製作過程で着想した、絶縁油を使わず、絶縁体構造のみでコロナ放電を抑制する高耐圧絶縁筒碍子の開発を進めている。また、クライストロン用半導体パルス電源においては、MARX方式を採用し、8kV/60A/830usの矩形パルス出力用主回路ユニットと、フラットトップのドループを10%から1%に改善する800V/60Aの補正回路ユニットを開発した。さらに、本MARX電源用に2.2kV/2.4kWの高耐圧SiCインバータ充電器を製作し、組み合わせ試験による特性評価を進めている。本電源の最終仕様は、主回路ユニット15段と補正回路ユニット10段の構成により、120kV/60A/830us/平坦度±0.1%以下のパルス出力を実現する。発表では各試験の評価結果と、半導体化の開発について今後の展望を報告する。
 
15:50-16:10 
FROB11
p.247
J-PARC MR 入射キッカー電磁石のための新しいインピーダンス整合回路の性能評価
Performance of new impedance matching circuit for J-PARC MR injection kicker magnet

○杉本 拓也,石井 恒次,芝田 達伸,岩田 宗磨,松本 浩(KEK)
○Takuya Sugimoto, Koji Ishii, Tatsunobu Shibata, Soma Iwata, Hiroshi Matsumoto (KEK)
 
本報告では、J-PARC MR入射キッカー電磁石において、新しく製作した導電性セラミック抵抗器を搭載したインピーダンス整合回路の通電試験を実施した結果について議論する。J-PARC MRでは、バンチ当たりの粒子数を増やし、繰り返し周期を短縮する事により、早い取り出し方式による陽子ビーム出力を1.3MWへアップグレードする事を計画している。これまでの研究により、1.3MW運転では、パルス励磁電流による発熱と陽子ビームにより誘起される電流による発熱で、入射キッカー電磁石のインピーダンス整合用抵抗器の表面温度が350℃を超える事がわかった。そのため、抵抗器の容量を4.5倍(体積比)に増加し、抵抗器を冷却するためのアルミ製水冷ヒートシンクを導入した。さらに、円筒型の抵抗器内部の熱伝導率を改善するために、φ3mmのアルミナ製ビーズを充填した。2022年春に実機に導入し、繰り返し周期1.36秒でのパルス通電試験を実施。抵抗器表面温度の測定結果と熱流体シミュレーションと比較することで1.3MW運転での抵抗器温度を推定し、今後の冷却能力増強の必要性について議論する。
 
16:10-16:30 
FROB12
p.253
[Slides]
J-PARC MRの速い取り出し用新セプタム電磁石の漏れ磁場軽減対策
The reduction of the leakage field of the new septum magnets for fast extraction in J-PARC-MR

○芝田 達伸,岩田 宗磨,石井 恒次,松本 教之,佐藤 洋一,五十嵐 進,發知 英明,杉本 拓也,松本 浩,安居 孝晃(高エネ研),浅見 高志(東大/高エネ研)
○Tatsunobu Shibata, Soma Iwata, Koji Ishii, Noriyuki Matsumoto, Yoichi Sato, Susumu Igarashi, Hideaki Hotchi, Takuya Sugimoto, Hiroshi Matsumoto, Takaaki Yasui (KEK), Takashi Asami (UT/KEK)
 
J-PARCのMRでは2021年7月から2022年5月までの長期停止期間中に大規模なアップグレードが行われた。ニュートリノ実験施設へ取り出す速い取り出し用セプタム電磁石は新しいセプタム電磁石に交換された。新セプタム電磁石の周回ビームライン上に発生する漏れ磁場は交換前のセプタム電磁石よりも小さくする必要がある。その理由は大強度化する陽子ビームに対してより精密なビーム調整が必要なるため、漏れ磁場によって曲げられるビームがより問題視されるためである。これまでの各セプタム電磁石の通電試験を通して漏れ磁場軽減は多くされてきた。2021年度には更に漏れ磁場の軽減を目的として全ての新セプタム電磁石に内部シールドと呼ぶダクト型の純鉄シールドを導入した。本講演では内部シールドの詳細と導入後の漏れ磁場軽減結果、その結果から見えてくるこれからの漏れ磁場軽減の課題について報告する。内部シールドは周回ライン内に設置するため肉厚を厚くするとビームロスに繋がる。そのため肉厚はビームシミュレーションの結果も使って慎重に決定した。全ての内部シールドは2021年度に製作した。内部シールドの効果を最初に確認したのは低磁場セプタム電磁石(EDDYセプタム電磁石)であり、2022年3月である。高磁場セプタム電磁石については2022年5月と7月以降の夏のメンテナンス期間に測定を行う予定である。また2022年6月のビーム試験に於いても漏れ磁場の影響を調査する予定である。
 
16:30-16:50 
FROB13
p.258
SuperKEKB超伝導6極電磁石用超細線ストランドNb3Alケーブル開発(1)
Development of super fine strand Nb3Al cable for SuperKEKB superconducting sextupole magnet (1)

○大内 徳人(高エネ研),菊池 章弘(物材研),王 旭東,土屋 清澄,有本 靖,宗 占國,大木 俊征,青木 和之(高エネ研),山本 優,河野 雅俊(明興双葉)
○Norihito Ohuchi (KEK), Akihiro Kikuchi (NIMS), Xudong Wang, Kiyosumi Tsuchiya, Yasushi Arimoto, Zhanguo Zong, Toshiyuki Oki, Kazuyuki Aoki (KEK), Masaru Yamamoto, Masatoshi Kawano (Meiko Futaba)
 
KEKつくばキャンパスで稼働中のSuperKEKBでは、Chromaticity調整用に常伝導6極電磁石が加速器主リングに沿って配置されている。特にビーム衝突点近傍の6極電磁石は、ビーム衝突点のクラブウエスト調整に使用され、ルミノシテイ向上に貢献している。この6極電磁石の機能を更に高めた電磁石として超伝導6極電磁石が検討されている。この超伝導6極電磁石には、主成分のNormal 6極磁場のビームに対するアライメント用にSkew6極補正電磁石、Normal 4極補正電磁石、Skew 4極補正電磁石が組み込まれている。超伝導6極電磁石システムは加速器リングに散在して設置されるため、小型冷凍機で冷却される。小型冷凍機の冷凍能力は4Kで数Wのレベルであることから、運転マージンを大きくするために超伝導コイル線材としてA15化合物超伝導ケーブルの開発が行われている。今回の発表では、超伝導6極電磁石システム用に開発されている超細線ストランドNb3Al超伝導ケーブルの開発状況について発表する。
 
ポスター① (10月18日 会議室P)
13:30-15:30 
TUP001
p.262
J-PARC RCSにおける大強度ビーム加速時に加速ギャップに発生する高次高調波の評価
Evaluation of higher harmonics generated in acceleration gaps during the high power beam acceleration at J-PARC RCS

○沖田 英史,田村 文彦,山本 昌亘,野村 昌弘,島田 太平(JAEA J-PARCセンター),吉井 正人(KEKJ-PARCセンター),大森 千広,原 圭吾,長谷川 豪志,杉山 泰之(KEK J-PARCセンター)
○Hidefumi Okita, Tamura Fumihiko, Masanobu Yamamoto, Masahiro Nomura, Taihei Shimada (JAEA J-PARC center), Masahito Yoshii, Chihiro Ohmori, Keigo Hara, Katsushi Hasegawa, Yasuyuki Sugiyama (KEK J-PARC center)
 
J-PARC 3GeV シンクロトロン (RCS) では広帯域の高周波加速空胴を使用している。大強度ビーム加速時にはウェイク電圧等により加速ギャップに高調波を含む電圧が発生する。現在、LLRF制御システムでは基本波の四倍までの高調波について検波しており、全ての高次高調波が加速中の縦方向のビーム挙動に影響していることが分かってきた。本研究では、大強度ビーム加速中の加速ギャップ電圧を測定し、周波数解析から四倍より高次の高調波について評価した。加えて、ビームトラッキングシミュレーションを用いて四倍より高次の高調波が縦方向のビーム挙動に与える影響を評価した。その結果、加速後半において四倍より高次の高調波がRFバケツを歪めバンチ形状を変形させることが確認された。本発表では、大強度ビーム加速中の加速ギャップ電圧の高調波解析結果と四倍より高次の高調波を反映したビームトラッキングシミュレーション結果の詳細について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP002
p.267
一様なスピルでかつ高速ビームON/OFFができるマルチバンドRFKOによる遅いビーム取出し
Slow beam extraction with multiband RFKO to obtain uniform spill as well as fast beam switching

○中西 哲也,奥川 雄太郎,塩川 智也(日本大学生産工学部),栗田 哲郎(若狭湾エネルギー研究センター)
○Tetsuya Nakanishi, Yutaro Okugawa, Tomoya Shiokawa (Nihon University CIT), Tetsuro Kurita (The Wakasa Wan Energy Research Center)
 
マルチバンドのRF信号を用いたRFKO取出し実験が若狭湾エネルギー研究センターのシンクロトロンを使って詳細に行われた。RF信号は1/3共鳴周波数とその高調波を含み、それぞれの周波数バンド幅はチューン幅にほぼ等しい。本実験ではバンド数は最大10で行った。スピルの強度変化は周回ビームをバンチングしなくてもバンド数を増やすと一様になり、かつビームoff時間は応答速度の速い線量モニタを使えば100μs程度以下にできることを示した。また、バンチングの条件を変えてスピルの強度変化を測定し、10バンドとすることでバンチングでスピルが一様になるのと同じ効果が得られることを示した。論文ではより高周波で使用できるRFKOシステムのall-pass networkについても提案する。
 
13:30-15:30 
TUP003
p.272
J-PARC 3GeVにおける400MeV負水素イオンのレーザー荷電変換原理検証実験の状況
Status of POP demonstration of 400 MeV H- laser stripping at J-PARC RCS

○サハ プラナブ,原田 寛之,金正 倫計(原子力機構, J-PARC センター),米田 仁紀,道根 百合奈(電通大, レーザー研),佐藤 篤(NAT),柴田 崇統(KEK)
○Pranab Saha, Hiroyuki Harada, Michikazu Kinsho (JAEA, J-PARC), Hitoki Yoneda, Yurina Michine (UEC, ILS), Atsushi Sato (NAT), Takanori Shibata (KEK)
 
To overcome the realistic issues and practical limitations associated with H- charge-exchange injection done by using a solid stripper foil, we proposed a foil less H- charge-exchange injection system by using only lasers. To establish our method, we are preparing for a POP (proof-of-principle) demonstration of 400 MeV H- stripping to proton by using lasers at J-PARC. The R&D of the laser systems is in progress through experimental studies of 3 MeV H- neutralization. To sufficiently reduce the seed laser power, a multi-reflection laser cavity system has been developed and also been tested to achieve 17% neutralization efficiency by using only 8 micro Joule seeder laser energy. The laser system including the cavity are further developed to increase the stripping efficiency, where the goal is more than 90%. The next study at 3 MeV will be carried out in June 2022. The preparation of laser system setup near the 400 MeV H- beam transport of J-PARC Linac, remote laser transport and control systems including the H- beam manipulation are in progress. The POP demonstration 400 MeV H- stripping is planned to start at the end of 2022.
 
13:30-15:30 
TUP004
p.277
J-PARC 3 GeVシンクロトロン 1 MW運転状況(2)
Results of 1-MW operation in J-PARC 3 GeV rapid cycling synchrotron (2)

○山本 風海,山本 昌亘,山崎 良雄,菅沼 和明,藤来 洸裕,野村 昌弘,神谷 潤一郎,畠山 衆一郎,吉本 政弘,仲野谷 孝充,田村 文彦,沖田 英史,菖蒲田 義博,Saha Pranab,金正 倫計(J-PARCセンター/原子力機構)
○Kazami Yamamoto, Masanobu Yamamoto, Yoshio Yamazaki, Kazuaki Suganuma, Kosuke Fujirai, Masahiro Nomura, Junichiro Kamiya, Shuichiro Hatakeyama, Masahiro Yoshimoto, Takamitsu Nakanoya, Fumihiko Tamura, Hidefumi Okita, Yoshihiro Shobuda, Pranab Saha, Michikazu Kinsho (J-PARC Center, JAEA)
 
The J-PARC 3GeV Rapid Cycling Synchrotron (RCS) is aiming to provide the proton beam of very high power for neutron experiments and the main ring synchrotron. We have continued the beam commissioning and the output power from RCS have been increasing. In recent years, we have been trying continuous supply of 1-MW high-intensity beam, which is the design value, to a neutron target. We tried to operate continuously for over 40 hours in June 2020. However, some trouble occurred and the operation was frequently suspended. In June 2021, we tried again 1-MW operation but it was suspended due to deterioration of the cooling water performance. Last summer shutdown period, we recovered performance of the cooling water system and it enables us to deriver 1-MW beam even if summer condition. In this presentation, we will summarize the results of 1-MW operation.
 
13:30-15:30 
TUP005
p.282
高強度小型サイクロトロンの実現に向けたLEBTの研究
Numerical simulation of low energy beam transportation for a high-power compact cyclotron

○山﨑 敦博,松田 洋平(甲南大),伊藤 正俊,足立 智,服部 幸平,米倉 章平,篠塚 勉(東北大CYRIC),福田 光宏,神田 浩樹,依田 哲彦,武田 佳次朗,原 隆文(阪大RCNP),倉島 俊,宮脇 信正(量研高崎研),涌井 崇志(量研量医研),中尾 政夫(群大重医セ)
○Nobuhiro Yamasaki, Yohei Matsuda (Konan Univ.), Masatoshi Itoh (CYRIC,Tohoku Univ.), Satoshi Adachi, Kohei Hattori, Shohei Yonekura, Tsutomu Shinozuka (CYRIC, Tohoku Univ.), Mitsuhiro Fukuda, Hiroki Kanda, Tetsuhiko Yorita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara (RCNP, Osaka Univ.), Satoshi Kurashima, Nobumasa Miyawaki (QST-Takasaki), Takashi Wakui (QST-NIRS), Masao Nakao (GHMC)
 
核医学検査や核医学療法に用いられる医療用RIの国内安定供給に向けて高強度の小型サイクロトロン加速器の実現が望まれている。この高強度化で問題となるのが、空間電荷効果である。空間電荷効果は、低エネルギーのビームに対して強く働くため、低エネルギービーム輸送系(LEBT)の輸送効率に影響してくる。本研究では三次元の電磁場計算ならびに三次元空間電荷効果を考慮したシミュレーションツール OPALを用い、ビーム電流値とビームエネルギーがLEBTの輸送効率に与える影響について検討した。 東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンター(CYRIC)では、昨年度大強度負水素・重水素イオン源が導入された。このイオン源は負水素イオンを10 mAの強度で供給可能である。そこで、10 keV強の負水素イオンの輸送効率のビーム電流依存性を調べ、輸送系の最適化により輸送効率の向上が可能か検討した。 大阪大学核物理研究センター(RCNP)では、加速器のアップグレードに伴い、イオン源の引き出し電圧が50 kVに昇圧される。そこで、輸送効率のビームエネルギー依存性を調べると共に高圧化の実現に向けて検討した。 本講演ではこれらの結果について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP006
p.286
JAEA-ADSプロジェクトの30-MWプロトンライナックの利用可能性分析
Availability analysis for the 30-MW proton linac of the JAEA-ADS project

○イーレンドン ブルース,近藤 恭弘,田村 潤,中野 敬太,前川 藤夫,明午 伸一郎(JAEA)
○Bruce Yee-rendon, Yasuhiro Kondo, Jun Tamura, Keita Nakano, Fujio Maekawa, Shin-inchiro Meigo (JAEA)
 
Japan Atomic Energy Agency (JAEA) is designing a 30 MW proton linear accelerator (linac) as one of the fundamental components for its accelerator-driven subcritical system (ADS) project. ADS accelerators demand extremely high reliability and availability to avoid thermal stress in the subcritical reactor structures. Thus, reliability and availability assessments of the accelerator are mandatory to detect weakness in the lattice designed and evaluate redundancy configurations to fulfill the demanded operation. This study applied the Reliability Block Diagrams (RBD) method to calculate the Medium Time Between Failures (MTBF) for different linac configurations: all the linac's elements in a series configuration and a combination of hot-standby for the low-energy section of the linac and k-out-n redundancy for the high-energy part. The estimation considered the detailed arrangement of the cavities and magnets that compose the linac lattice. In this report, we describe the reliability model of the JAEA-ADS linac, report the MTBF results, and point out the potential route toward operating with the required availability.
 
13:30-15:30 
TUP007
p.291
SuperKEKB加速器の真空システム -約6年間の運転経験と現状-
Vacuum system of the SuperKEKB accelerator - experiences in these six years operation and present status -

○末次 祐介,柴田 恭,石橋 拓弥(高エネ研, 総研大),白井 満,照井 真司(高エネ研),Yao Mu Lee(総研大),金澤 健一,久松 広美(高エネ研)
○Yusuke Suetsugu, Kyo Shibata, Takuya Ishibashi (KEK, SOKENDAI), Mitsuru Shirai, Shinji Terui (KEK), Mu Lee Yao (SOKENDAI), Ken-ichi Kanazawa, Hiromi Hisamatsu (KEK)
 
SuperKEKB加速器は、KEKつくばキャンパスにある電子・陽電子衝突型粒子加速器で、周長約3 kmの主リング(MR)にて4 GeVの陽電子と7 GeVの電子を衝突させ、B中間子領域での新しい物理現象を探索している。運転は2016年に始まり、2019年からはBelle II測定器を用いた本格的物理実験を継続しており、ルミノシティ(衝突頻度に相当)の世界記録を2020年以降更新し続けている。SuperKEKBのMRおよび入射路にある1.5 GeV陽電子ダンピングリング(DR)の真空システムは、運転開始以降ほぼ問題無く稼働している。MRの最大蓄積ビーム電流は、陽電子、電子各リングでそれぞれ1.02 A、0.8 Aである。アーク部の単位ビーム電流当たりの圧力上昇は、それぞれ、約7E-8 Pa/A、約1E-8 Pa/Aと、ビームパイプ内面の積分光子数と共に堅調に減少している。SuperKEKB用に開発・導入された様々な真空機器は概ね想定通り運転に供している。また、陽電子リングの電子雲不安定性はこれまでのところ問題となっていない。MR運転での喫緊の課題は、急激な(20~30 μs、即ちリング2~3周)ビーム損失とそれに伴うビームコリメータと呼ばれる真空機器の損傷で、その損失機構の解明と対策が急務となっている。ここでは、運転開始以降約6年間のSuperKEKB真空システムの経験と現状を報告する。
 
13:30-15:30 
TUP008

TiZrV、Ag、Pdコーティング膜の放射光刺激脱離評価
Synchrotron radiation-stimulated desorption studies for TiZrV, Ag and Pd coating films
○金 秀光,谷本 育律,内山 隆司,本田 融(高エネルギー加速器研究機構)
○Xiuguang Jin, Yasunori Tanimoto, Takashi Uchiyama, Tohru Honda (High Energy Accelerator Research Organization)
 
Gas desorption due to synchrotron radiation (SR) stimulation is the main outgassing source in operation of the particle accelerator. Non-evaporable getter (NEG) coating films are known to reduce gas desorption in response to SR, and the pumping surface seemed to be the main reason. The aim of this study was to clarify mechanism by which the desorption of gases form NEG films reduced. TiZrV, Ag and Pd films were prepared using a magnetron sputtering on Cu substrates. After heating at 180 °C for 24h, TiZrV films exhibits pumping while Ag films do not. However, both films showed similar desorption yields indicating that the pumping surface had little effect on the gas desorption. Compared with commercial Cu, coating films had lower desorption yields. The lower gas desorption was probably attributed to the coating process, which led less impure films. In addition, less oxide in the activated TiZrV surface and Ag surface also contributed to lower desorption yields. Pd films also depicted the possibility of further decrease of the desorption yield. This study supports new applications, e.g. introduction of coating films on the absorbers, collimators, to reduce the gas desorption.
 
13:30-15:30 
TUP009
p.296
Web技術を用いたEPICS Channel AccessからHTTPへの単方向ゲートウェイの提案
Proposal for a unidirectional gateway from EPICS Channel Access to HTTP using web technologies.

○山田 秀衛(KEK/J-PARC)
○Shuei Yamada (KEK/J-PARC)
 
J-PARC, KEKB, RIBFといった大型加速器はEPICSを用いて制御システムが構築されている。EPICSはネットワーク分散型制御システムを構築するためのフレームワークであるが、EPICSで用いるChannel Access(CA)プロトコルは加速器制御のための内部ネットワークで利用することが前提となっている。その一方で、自宅や外出先など所外のネットワークから加速器の運転に関する様々な機器の状況を確認したいという要望があるが、所外から加速器の機器を操作することは禁止したい。本稿では、Web技術を用いたCAからHTTPへの単方向ゲートウェイと、タブレットやスマートホンからでも利用可能なWebアプリケーションを提案する。
 
13:30-15:30 
TUP010
p.300
J-PARC Linacにおけるビーム窓保護ユニットの開発
Development of beam window protection unit for J-PARC linac

○高橋 博樹(日本原子力研究開発機構),宮尾 智章(高エネルギー加速器研究機構),畠山 衆一郎(日本原子力研究開発機構),石山 達也(三菱電機システムサービス)
○Hiroki Takahashi (JAEA), Tomoaki Miyao (KEK), Shuichiro Hatakeyama (JAEA), Tatsuya Ishiyama (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd)
 
J-PARC Linacでは、複数のビームダンプ(BD)を用いてビームコンディショニングとスタディが行われている。これらBDの上流には、ビームラインに沿ってビーム窓が設置されている。ビーム窓には、電流値50 mA、長さ100 μs、ノーチョップ、繰り返し周波数2.5 Hzのビームの入射が可能である。一方で、許容値を超えるビームの入射を避けることが必須であるが、BDに入射されるビームのパラメータが許容範囲内かどうかは運転員が確認するのみであった。そして2018年のビーム試験において、人為的なミスにより0度(0deg)BDに許容値を超えるビームが入射され、ビーム窓が割れるトラブルが発生した。 そこで、このトラブル回避を目的としたビーム窓保護ユニットの開発を開始した。本ユニットには確実なビーム(粒子数)計測および監視が必須であるため、J-PARC 加速器において粒子数監視に使用されている粒子カウンターをベースとして開発を進めることとした。本件では、開発したビーム窓保護ユニットの詳細と性能について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP011
p.305
KEK電子陽電子入射器におけるGrafanaを用いたネットワーク監視システムの導入
Introduction of network monitoring system using Grafana in the KEK electron/positron injector linac

○佐武 いつか,佐藤 政則,佐々木 信哉(高エネルギー加速器研究機構),廣瀬 雅哉(関東情報サービス株式会社),草野 史郎,工藤 拓弥(三菱電機システムサービス株式会社)
○Itsuka Satake, Masanori Satoh, Shinya Sasaki (KEK), Masaya Hirose (KIS), Shiro Kusano, Takuya Kudou (MSC)
 
KEK電子陽電子入射器では、SuperKEKB電子/陽電子、陽電子ダンピングリング、PF、PF-ARの異なる5つの下流リングに対して、電子及び陽電子ビームを供給している。安定したビーム入射のため、加速器制御システムには精度の高い迅速な異常検知と運用が求められる。KEK入射器では、これまでIT インフラ監視のためにCactiを利用してきた。近年ではネットワーク情報の可視化ツールとしてKibanaの利用を開始している。Kibanaでは入射器制御ネットワークに接続されたサーバーのパケット通信量やBroadcast情報、一部サーバーのシステム情報を表示していた。より効率的な監視システムを構築するため、新たに監視ソフトウェアツールであるZabbixと、データ可視化ツールであるGrafanaを導入することとした。これらを用いることで、サーバーやネットワークスイッチ、EPICS IOCの監視に加えて、異常検知及びアラート通知が可能となる。本稿では、新たに導入した監視システムと運用状況について詳細を報告する。
 
13:30-15:30 
TUP012
p.309
J-PARCハドロン実験施設における新二次粒子生成標的温度測定および制御システムの開発
Development of temperature-measurement and control system for new production target at J-PARC Hadron Experimental Facility

○上利 恵三,里 嘉典,豊田 晃久,森野 雄平,秋山 裕信(高エネルギー加速器研究機構)
○Keizo Agari, Yoshinori Sato, Akihisa Toyoda, Yuhei Morino, Hironobu Akiyama (KEK)
 
J-PARCハドロン実験施設では新型の二次粒子生成標的を使用したビーム運転が2020年に開始された。この新標的は旧標的を2個上下対称に設置した構造となり、旧標的に比べ約2倍ものビーム強度(95kW)まで受け入れ可能になった。旧標的と同様に、新標的はビームを吸収する部分の素材が金、その土台が無酸素銅、冷却用ステンレス配管から構成され、ビーム寄与による熱応力を減少させるため金部分はビーム方向に6分割されている。温度による健全性確認のため標的に熱電対を設置し、旧標的では金上面中心にビーム方向に6個設置したが、新標的では金上面左右端に2個、ビーム方向に6個、計12個設置した。上下対称構造に加え左右にも増加したことにより熱電対の数は4倍に増えたため、温度計測制御システムの開発を行った。この計測制御機器は標的上下部を独立で温度測定できる2系統のProgrammable Logic Controller (PLC)とした。測定周期は100ミリ秒で、各温度はトレンドグラフに加え、ビームスピルに同期した温度波形も表示し、さらに各温度にしきい値を設定し、それを超えればインターロック信号によりビーム運転を安全に停止できる。2020年以降のビーム運転でこのシステムは温度計測またはインターロックが安全・安定的に動作することを確認した。今回はJ-PARCハドロン実験施設の新二次粒子生成標的の温度計測・制御システムやソフトウェアの開発について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP013
p.313
日本大学LEBRA電子線形加速器を用いた高強度テラヘルツ光源の研究開発
Research and development of high-power terahertz sources at LEBRA-linac in Nihon University

○境 武志(日大量科研),清 紀弘(産総研),早川 恭史(日大量科研),住友 洋介(日大理工),早川 建,田中 俊成,野上 杏子,髙橋 由美子(日大量科研),長瀬 敦(日大院理工)
○Takeshi Sakai (LEBRA, Nihon University), Nirihiro Sei (AIST), Yasushi Hayakawa (LEBRA, Nihon University), Yoske Sumitomo (CST, Nihon University), Ken Hayakawa, Toshinari Tanaka, Kyoko Nogami, Yumiko Takahashi (LEBRA, Nihon University), Atsushi Nagase (CST, Nihon University)
 
日本大学電子線利用研究施設LEBRAでは、高エネルギー加速器研究機構と産業技術総合研究所との共同研究において、100MeV電子線型加速器の高度化をすすめ、自由電子レーザー(FEL)とパラメトリックX線放射(PXR)の光源開発を進め、最近では、テラヘルツ波(THz)光源開発も行っており、学内外共同利用を進めている。FELライン、PXRラインそれぞれでTHz光源開発を進めており、2019年度からTHz帯のコヒーレントエッジ放射(CER)光源開発、コヒーレント遷移放射(CTR)光源開発に加え、平面波コヒーレントチェレンコフ放射(CCR)源開発を行っている。CCR光源には形状を工夫した高抵抗Si誘電体中空円錐管を用い、各基礎測定を進めている。またCCR光源部上部には、CTR光源のターゲット形状をらせん状にした簡易的なテラヘルツ帯域CTRの光渦光源開発を進めている。本発表では、これら各THz光源開発に関して報告する。
 
13:30-15:30 
TUP014
p.316
横方向傾斜磁場アンジュレータからの放射計算
Calculation of radiation from transverse gradient undulator

○武藤 俊哉,柏木 茂,日出 富士雄,南部 健一,三浦 禎雄,長澤 育郎,髙橋 健,鹿又 健,熊谷 航平,柴田 晃太朗(東北大学ELPH),齊藤 寛俊(高エネルギー加速器研究機構),山田 悠樹,山田 志門,濱 広幸(東北大学ELPH)
○Toshiya Muto, Shigeru Kashiwagi, Fujio Hinode, Kenichi Nanbu, Sadao Miura, Ikuro Nagasawa, Ken Takahashi, Ken Kanomata, Kohei Kumagai, Kotaro Shibata (ELPH, Tohoku Univ.), Hirotoshi Saito (KEK), Hiroki Yamada, Shimon Yamada, Hiroyuki Hama (ELPH, Tohoku Univ.)
 
レーザー航跡場加速は理論的には非常に高い加速勾配を得ることが可能であり既存の高周波加速器を凌駕する革新的な加速技術として期待される。最近では比較的高品質の電子ビームを生成したという報告はあるが既存の高周波加速器で得られるような安定度は持っておらず中心エネルギーはショットごとに揺らいでおりそのエネルギー広がりも大きい。横方向傾斜磁場アンジュレータ(Transverse Gradient Undulator:TGU)はそのような電子ビームのエネルギー広がりを抑制する方法の一つとして提案されている。 TGUは横方向に磁場勾配を持っておりTGUでの運動量分散をコントロールすることによって異なるエネルギーの粒子が同一の波長で共鳴することができ、放射光のエネルギー広がりを抑制できることが期待される。 我々のグループでは東北大学電子光理学研究センターの試験加速器t-ACTSを用いてTGUの原理実証実験を計画している。 昨年の発表では3次元磁場計算コードRADIAを用いてTGUの磁場計算を行ったが本発表では計算された磁場分布をもちいてTGUから得られる放射光の計算を行った。 電子ビームの入射条件をマッチさせることによってエネルギー広がりを持った電子ビームでも単一の波長で共鳴でき、放射光の線幅を抑制することが出来ることが確認できた。
 
13:30-15:30 
TUP015
p.320
PF-ARにおけるGeV領域エネルギー電子を使った測定器開発用テストビームライン建設
Construction of the GeV-range test beamline at KEK PF-AR

○満田 史織,本田  融,内山 隆司,坂中 章悟,佐々木 洋征,高木 宏之,谷本 育律,内藤 大地,中村 典雄,長橋 進也,野上 隆史,山本 尚人(高エネ研加速器),花垣 和則,池上 陽一,宇野 影二(高エネ研素核),佐藤 康太郎(高エネ研加速器),外川 学,中村 勇,幅 淳二(高エネ研素核),森 隆志(高エネ研加速器),安部 草太(神戸大理),小田川 高大(京大理),鷲見 一路(名大理),寺村 七都(神戸大理),前田 朱音(名大理),前田 順平(神戸大理)
○Chikaori Mitsuda, Tohru Honda, Takashi Uchiyama, Shogo Sakanaka, Hiroyuki Sasasaki, Hiroyuki Takaki, Yasunori Tanimoto, Daichi Naito, Norio Nakamura, Shinya Nagahashi, Takashi Nogami, Naoto Yamamoto, Kazunori Hanagaki, Yoichi Ikegami, Shoji Uno, Kotaro Satoh, Manabu Togawa, Isamu Nakamura, Junji Haba, Takashi Mori (KEK), Sota Abe (Kobe Univ.), Takahiro Odagawa (Kyoto Univ.), Kazumichi Sumi (Nagoya Univ.), Natsu Teramura (Nobe Univ.), Akane Maeda (Nagoya Univ.), Junpei Maeda (Kobe Univ.)
 
KEK放射光源リングPF-ARにおいて、蓄積リング内にインターナルターゲットを置くことでGeV領域エネルギー電子を生成し、素粒子原子核実験用測定器の開発を進めるためのテストビームラインの建設工事が行われた。PF-ARは6.5 GeVまたは5 GeVのエネルギーにて単バンチを50mA蓄積することで放射光利用運転を行っており、2017年のLinacからの直接入射路建設以降、トップアップ入射によって蓄積電流値が維持されている。ターゲットワイヤと蓄積電子ハロー部の衝突によって生成するガンマ線を、リング偏向電磁石チェンバの端部のコンバータで電子・陽電子対に変換し電子ビームを生成しながら、トップアップ運転により蓄積電流値を維持し放射光ユーザー利用との共存を図る。テストビーム用ビームラインは2014年に計画の立案があり2020年度に予算化がなされ、設計検討、機器調達と製作、工事計画の立案が完了し、2021年度夏に建設工事が進められビームラインが完成した。本会では完成したテストビームライン全体システムの概要と完成後のビームコミッショニングに向けた動き、そして、今後の計画について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP016

SAGA-LS電子蓄積リングにおける画像収録システム
Image acquisition system at the SAGA-LS electron storage ring
○岩崎 能尊(九州シンクロトロン光研究センター)
○Yoshitaka Iwasaki (SAGA-LS)
 
SAGA-LS光源加速器は2006年の開所以来様々なトラブルに見舞われつつも今日まで安定した運転を継続している。加速器で発生するトラブルやビームの予期しない振る舞いに対し、その原因解明と対策に必要な各種標準的な観測システムが整備されている。しかし、ビーム軌道、チューン、ビームサイズあるいは加速器構成機器類のモニター値といった1次元的な数値データーによっては必ずしも原因を特定できない現象もあり、画像を含む2次元データーの計測システムの整備が求められていた。我々はまず加速器診断用ビームラインにて計測されるビームプロファイル画像を他の数値データーと同時に収録する計測システムを構築した。プラットフォームにはNational Instruments社PXIを用いた。収録された画像データーと他の数値データーの同期した時系列解析は、蓄積リング内でのビーム加速時に発生するステップライクなビームロス発生メカニズムの解明に繋がった。本会議において、画像と数値データーの同時収録システムの概要とその解析事例についての報告を行う。
 
13:30-15:30 
TUP017
p.325
UVSOR-IIIにおける単一電子蓄積
Single electron storage at UVSOR-III

○加藤 政博,四之宮 諒,浅井 佑哉(広島大),島田 美帆,宮内 洋司(KEK)
○Masahiro Katoh, Ryo Shinomiya, Yuya Asai (Hiroshima U.), Miho Shimada, Hiroshi Miyauchi (KEK)
 
単一電子蓄積は、蓄積リング中での単一電子の運動の観測や単一電子からの放射の標準光源としての利用などを目的としていくつかの先行研究例があるが、我々の知る限り、我が国の放射光源での微弱電流蓄積を積極的に利用した研究の報告は見当たらない。 我々は、エネルギー750MeV、周長約50mの放射光源UVSOR-IIIにおいて単一電子蓄積を試みた。光源開発用ビームラインBL1Uにおいて紫外線領域でのアンジュレータ光を取り出し放射光強度を計測しながらビームスクレーパを用いてビーム強度を減少させたところ、少数電子蓄積下での階段関数的な強度変化を観測することに成功し、最終的に単一電子蓄積を確認できた。また、2時間以上にわたって単一電子を蓄積することにも成功した。この運転モードを利用して、今後様々な研究を展開していきたいと考えている。
 
13:30-15:30 
TUP018
p.327
J-PARCハドロンhigh-p ビームライン用高感度残留ガスプロファイルモニタの開発(3)
Development of high sensitivity residual gas ionization profile monitor for J-PARC hadron high-p beamline(3)

○豊田 晃久,青木 和也,上利 恵三,秋山 裕信,家入 正治,加藤 洋二,倉崎 るり,小松 雄哉,里 嘉典,澤田 真也,白壁 義久,高橋 仁,田中 万博,広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 史真,森野 雄平,山野井 豊,渡辺 丈晃(KEK)
○Akihisa Toyoda, Kazuya Aoki, Keizo Agari, Hironobu Akiyama, Masaharu Ieiri, Yohji Kato, Ruri Kurasaki, Yusuke Komatsu, Yoshinori Sato, Shinya Sawada, Yoshihisa Shirakabe, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Fumimasa Muto, Yuhei Morino, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (KEK)
 
J-PARCハドロン実験施設のBライン(高運動量ビームライン)は、Aラインの一次陽子ビームの一部を分岐させ使用するビームラインである。このビームラインは分岐部で削り出すのでビームロスがあり、放射線レベルは高い。しかし、輸送するビーム強度は比較的低いため、高感度でかつ放射線耐性の高いプロファイルモニタが必要となる。そこでビーム通過により残留ガスで生じた電離電子を光変換し、光増幅してプロファイルを測定するモニタを考案した。現在実用化に向けてR&Dを進めている。今回は電離電子が蛍光板に当たって生じる蛍光をとらえる光学の設計、光学システムの構築および光学テストの結果などについて発表する。
 
13:30-15:30 
TUP020
p.330
大強度・低速H-ビーム用バンチシェイプモニタを用いたビーム計測手法に関する研究
Studies of beam diagnostics with bunch-shape monitor for high-power and low-beta H- beam

○北村 遼,林 直樹,平野 耕一郎(JAEA),小坂 知史(NAT),宮尾 智章(KEK),根本 康雄(NAT),森下 卓俊(JAEA)
○Ryo Kitamura, Naoki Hayashi, Kouichiro Hirano (JAEA), Satoshi Kosaka (NAT), Tomoaki Miyao (KEK), Yasuo Nemoto (NAT), Takatoshi Morishita (JAEA)
 
大強度陽子加速器施設J-PARCリニアックでは、フロントエンドの大強度・低速H-ビームを測定するためにビーム熱負荷への耐久性を向上させた改良型バンチシェイプモニタ(BSM)を開発している。 ビームと相互作用させるプローブに新素材であるグラファイト製標的を導入することで、これまで不可能であった大強度ビーム中心領域でのプロファイル測定を実現した。 改良型BSMではビーム全体のプロファイルが測定可能になったため、BSMの特徴を生かした応用的なビーム診断手法を提案する。 本講演では、二次電子計測による横プロファイル測定、横プロファイルからのビーム電流測定等、BSM本来の目的である縦方向測定の枠組みを超えてBSMの多様な運用可能性について議論する。
 
13:30-15:30 
TUP021
p.333
KEKB入射器陽電子源における陽電子捕獲過程の直接観測
Direct observation of positron capture process at the positron source of the KEKB injector linac

○諏訪田 剛(KEK加速器)
○Tsuyoshi Suwada (KEK Acc. Lab.)
 
KEK電子陽電子入射器では、SKEKBリングへの陽電子増強を目指し、2020年夏期保守にe+捕獲部の改造を行なった. 本改造では、e+集束用フラックスコンセントレータの放電対策、及びe+捕獲部の4箇所に偏向電磁石と広帯域モニターが新たに設置された. e+捕獲部は、上流のe+標的により放射線環境が悪いこと、ソレノイド電磁石列により設置空間の余裕が厳しいこと、さらにe+標的内でほぼ等量の電子と陽電子が同時に生成されるので広帯域に分解しないと分離検出が難しいという問題があり、これまで診断装置は設置されていなかった. e+捕獲部内では、磁場による横方向の閉じ込めと加速管による加速が同時に行われる. この結果、e-e+は各バンチの位相スリップ過程を通し軸方向にわずかな走行時間差を生じる.このような極短時間のe-e+分離検出をどのように実現するのかが課題となる. 電子ビームの2バンチ加速に伴う陽電子の2バンチ生成時におけるe-e+の同時分離検出が広帯域モニターにより可能になった. 典型的なe-e+走行時間差は150-250 psである.このためe-e+分離検出にはモニターの広帯域化が必須であった. 広帯域モニターの実現により、e-e+の同時検出だけでなく、さらに複雑なe-e+の位相スリップ過程の直接観測も可能になった. これは世界初の成果である. 本報告に、これまでの経緯と得られた成果についてまとめることにする.
 
13:30-15:30 
TUP022
p.338
J-PARCハドロン実験施設における残留ガスを用いたビーム強度モニタの信号応答
Signal response of the residual gas ionization current monitor in J-PARC Hadron Experimental Facility

○里 嘉典,青木 和也,上利 恵三,秋山 裕信,家入 正治,加藤 洋二,倉崎 るり,澤田 真也,白壁 義久,高橋 仁,田中 万博,豊田 晃久,広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 史真,森野 雄平,山野井 豊,渡邉 丈晃(KEK素核研)
○Yoshinori Sato, Kazuya Aoki, Keizo Agari, Hironobu Akiyama, Masaharu Ieiri, Yohji Katoh, Ruri Kurasaki, Shinya Sawada, Yoshihisa Shirakabe, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Fumimasa Muto, Yuhei Morino, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (KEK/IPNS)
 
大強度陽子加速器(J-PARC)ハドロン実験施設では、50GeVシンクロトロン(MR)から遅い取り出し法によって取り出された30GeV陽子ビームが0.1 Pa程度の残留ガス中を通過した際に生じる電離電子を電場と磁場によって垂直方向に平行移動させ、電荷信号として計測することによってビーム強度を測定するビームモニタ(Residual Gas Ionization Current Monitor: RGICM)を運用している。2021年6月の時点での実績として、遅い取り出しビームの強度は65 kW (7.0x10^13 protons/shot, 取り出し時間約2秒)であった。RGICMで測定された陽子ビーム強度の精度は、上流の50GeVシンクロトロン(MR)のDCCTで測定されたビーム強度と比較して、相対的に約10%となっている。また、RGICMは、MRから陽子ビームが短パルスで取り出された場合にビーム取り出し中止信号(ビームアボート)を発生させる機能も担っており、遅い取り出しビームの安定的な運用にとって重要である。本発表では、RGICMの信号処理システム、信号応答、及び今後の計画について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP023
p.343
バンチの傾きモニタの線形加速器への応用の検討
Bunch slope monitor for linac

○中村 剛(高エネ研)
○Takeshi Nakamura (KEK)
 
ピコ秒の短いバンチの傾きを、通常のビーム位置モニタに持ちいられているボタン型電極の信号を用いて測定する手法を提案している[1]。これまでは得られた傾き情報をもとに bunch-by-bunch 傾きフィードバックを実現しSuperKEKBにおいて問題となっているシングルバンチ不安定性を抑制することを念頭に、バンチ間隔が短い場合での傾きを測定可能、という制限を課して検討してきたが、今回は、線形加速器のバンチや、放射光リングなどでの孤立バンチへの適用などを念頭に、孤立したバンチに対して適用可能な、より簡便な方法を提案する。また、これまではボタン型電極についての検討であったが、今回は、ストリップライン電極を用いての測定の可能性を検討する。さらに、蓄積リングでは安定して周回するビームを用いて重心の生成する信号波形を取得し、それを傾きの信号波形と区別することで、傾きの情報を抽出することができたが、線形加速器では常に重心と傾きが混在していることから、その区別する手法が必要となる。これについても検討する。[1] T.Nakamura, THP089, PASJ2018.
 
13:30-15:30 
TUP024
p.348
超低速ミュオンのぺニングトラップ用箱型電極の設計検討
Design studies of box-shaped electrodes for a penning trap of ultraslow muons

○小久保 拓登,飯沼 裕美,平石 雅俊(茨大理工),下村 浩一郎,永谷 幸則,西村 昇一郎,Amba Dat Pant,岩井 遼斗(KEK 物構研),足立 恭平,仁尾 真紀子(理研),樋口 嵩(阪大RCNP),岡部 博孝(東北大金研)
○Hiroto Kokubo, Hiromi Iinuma, Masatoshi Hiraishi (Graduate school of Sci. and Eng., Ibaraki Univ), Koichiro Shimomura, Yukinori Nagatani, Shoichiro Nishimura, Pant Amba Dat, Ryoto Iwai (KEK IMSS), Taihei Adachi, Makiko Nio (RIKEN), Takashi Higuchi (RCNP,Osaka Univ), Hirotaka Okabe (IMR,Tohoku Univ)
 
 J-PARCミュオンH-Lineにおいて、ミュオンと電子の束縛状態であるミュオニウムの微細構造測定からミュオンの磁気能率を決めるMuSEUM実験が進行している。さらに、超低速のミュオンを一様静磁場・4重極静電ポテンシャルに捕獲し閉じ込めて磁気能率を精密測定するミュオントラップ実験計画が新たに始まった。ミュオンの基礎物理量を異なる方法で精密測定することで、新物理探索の可能性をさらに高めることを目的としている。この新実験において磁気能率を測定するうえでミュオントラップ用の電極開発は重要な課題となっている。  通常、ぺニングトラップを行う4重極静電ポテンシャルは回転対称性を持った電極によって作られるが本実験ではビーム通過率の向上と作製の容易さの点から並進対称性を持った4重極静電ポテンシャルの使用を検討しており、それを生成する直方体の内部表面に形成された分布電極モデルの設計を進めている。高精度測定を行うためにはこの箱内の分布電極の配置が重要で、実際に設計したモデルが作る4重極静電ポテンシャルをOPERA-3Dで算出し、理想的な4重極静電ポテンシャルとの差異を評価し、トラップ中心付近での理想ポテンシャルとの誤差を最小にするような電極配置の検討を行っている。  本発表では上記の内容について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP025
p.353
レーザー変調の電子ビーム実験
Experiment of laser modulation for electron beam

○菅 晃一,神戸 正雄,楊 金峰,吉田 陽一(阪大産研)
○Koichi Kan, Masao Gohdo, Jinfeng Yang, Yoichi Yoshida (SANKEN(ISIR), Osaka University)
 
阪大産研では、レーザーフォトカソード RF 電子銃ライナックを導入し、高時間分解能パルスラジオリシスの開発を行っている。パルスラジオリシスの時間分解能を向上するためには超短パルス電子ビームの発生が不可欠である。 本発表では、超短パルス電子ビーム発生のためのレーザー変調におけるアンジュレータについて報告する。レーザー変調とは、アンジュレータの周期磁場に、共鳴波長に相当するレーザーと電子ビームを同軸で入射し、電子ビームをエネルギー変調する手法である。エネルギー変調を適宜調整することにより、下流の自由空間の輸送により、軸方向の密度変調に変換する。発表では、レーザー変調の電子ビーム実験の進捗について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP026
p.356
6MVタンデム加速器を用いた長半減期放射性セシウム135の加速器質量分析法の開発
Development of accelerator mass spectrometry for long-half-life radioactive cesium-135 using the 6MV tandem accelerator

○笹 公和,椎根 大輔,高橋 努,松村 万寿美,坂口 綾(筑波大AMS)
○Kimikazu Sasa, Daisuke Shiine, Tsutomu Takahashi, Masumi Matsumura, Aya Sakaguchi (AMS, Univ. Tsukuba)
 
加速器質量分析法(AMS)では、Csスパッタ負イオン源からの負イオンをタンデム加速器により高エネルギーに加速することで対象核種と同重妨害核種との分離識別をおこなっている。近年、核時代の人為起源核種の一つとして、長半減期核種であるセシウム135(Cs-135: 半減期 230万年)の高感度検出法の開発が求められている。しかし、タンデム加速器を用いたAMSでは、Csスパッタ負イオン源の使用から、セシウム同位体の分析が制限されることになる。本研究では、筑波大学6MVタンデム加速器において、Csの代わりに同じアルカリ金属元素であるルビジウム(Rb)を使用したRbスパッタ負イオン源の開発をおこなった。また、カソード試料からのCs負イオンビームの引き出しについて検討するために、Cs2SO4,CsNO3,Cs2CO3,CsI,CsBr試薬を準備し、添加物としてPbF2を混合してRbでスパッタした。PbF2を混合したカソード試料では133Cs32S-,133Cs16O2-,133Cs19F2-と同定されるスペクトルが得られた。また、133Cs19F2-ビームの強度が最も高い結果となった。これまでに、133Cs19F2-では0.2μAの負分子イオンビームが得られている。CsF2-は加速電圧6MVで加速され、Arガスストリッパーを通過したCs9+(58.7 MeV)を極微量核種検出ラインに通して、ガス電離箱で質量数135の粒子検出を試みた。本発表では、長半減期放射性セシウム135の加速器質量分析法の開発現状について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP027

電子線加速器の産業応用に向けたcERLにおける照射実験
Irradiation experiment in cERL for industrial application of electron beam accelerator
○森川 祐,山本 将博,東 直,原田 健太郎,阪井 寛志,三浦 考子,中村 典雄,神谷 幸秀,松村 宏,吉田 剛,豊田 晃弘(KEK),遠藤 貴士,榊原 圭太,熊谷 明夫(AIST),平戸 利明,曲 慧(東亜道路工業株式会社)
○Yu Morikawa, Masahiro Yamamoto, Nao Higashi, Kentaro Harada, Hiroshi Sakai, Takako Miura, Norio Nakamura, Yukihide Kamiya, Hiroshi Matsumura, Go Yoshida, Akihiro Toyoda (KEK), Takashi Endo, Keita Sakakibara, Akio Kumagai (AIST), Toshiaki Hirato, Kei Kyoku (TOA ROAD CORPORATION)
 
電子線加速器の産業応用として電子線照射による医療用RI製造や材料改質が考えられる。これら産業応用の可能性を検証するために、cERL照射部において医療用RIであるMo-99/Tc-99mやCu-67の製造、木材やアスファルトの材料改質試験を行った。今回、これら照射実験の概要を紹介する。
 
13:30-15:30 
TUP028
p.360
ニオブスズ超伝導空洞を用いた材料照射用大強度電子ビーム加速器の設計開発
Development of high-current electron beam accelerator using Nb3Sn superconducting RF accelerator for various materials

○阪井 寛志,本田 洋介,中村 典雄,原田 健太郎,東 直,山本 将博,田中 織雅,梅森 健成,清水 洋孝,森川 祐,山田 智宏,神谷 幸秀(KEK)
○Hiroshi Sakai, Yosuke Honda, Norio Nakamura, Kentaro Harada, Nao Higashi, Masahiro Yamamoto, Olga Tanaka, Kensei Umemori, Hirotaka Shimizu, Yu Morikawa, Tomohiro Yamada, Yukihide Kamiya (KEK)
 
KEKでは、超伝導空洞加速器を用いた様々な照射実験を行っている。具体的には2019年からcERLの超伝導空洞加速器で照射ビームラインを建設し、99MoなどのRI製造、アスファルトの改質実験、また、木材に電子ビームを照射し、ナノセルロースの高効率生成実験を行ってきた。特にこれらの実験から、電子ビームの照射に関する大強度電子ビームへの需要が大きな課題となっていることが分かった。超伝導空洞を用いることで大電流ビームの加速は実現できる一方、汎用の照射ビームとしては、小型の加速器が望まれる。本研究では、超伝導加速器のさらなる大強度化を見越した小型の加速器の設計を行った。具体的にはナノセルロースの製造実験から、木材照射の実用化に向けた10MeV、50mAの大電流ビーム源の設計を行った。加速器の全体設計を行い、電子銃、超伝導空洞、照射部の具体的な設計から、10MeV、50mAの大電流ビームが照射可能な設計を行った。特にKEKのcERL加速器で使用したNb製超伝導空洞に対し、新たなNb3Sn空洞を用いることで。小型化かつ省電力化がどれくらい可能かを見積もった。本発表では、全体の設計のもとに、電子銃、超伝導クライオモジュール、照射部の設計を紹介する。 (謝辞)本研究はNEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/高効率ナノセルロース製造のための革新的量子ビーム技術開発によって行われたものである。
 
13:30-15:30 
TUP029

ILCに向けたSTF-2クライオモジュールの超伝導空洞の性能の変遷
Changes of cavity performance of STF-2 cryomodules for ILC
○山本 康史,加古 永治,梅森 健成,阪井 寛志,佐伯 学行,荒木 隼人,マチュウ オメット,片山 領,井藤 隼人(高エネルギー加速器研究機構)
○Yasuchika Yamamoto, Eiji Kako, Kensei Umemori, Hiroshi Sakai, Takayuki Saeki, Hayato Araki, Omet Mathieu, Ryo Katayama, Hayato Ito (KEK)
 
2014年に完成した12台の9セル空洞が収められたSTF-2クライオモジュールは、高エネルギー加速器研究機構(KEK)内にある超伝導高周波試験施設(STF)のトンネルに設置され、これまでに7回の冷却試験(ビーム運転含む)が行われた。ハイパワー試験中は空洞の最大加速勾配を確認すると同時に、空洞から発生する放射線を定点観測しており、空洞の状況を知るのによい手段である。また、放射線が出てきたところの電界強度(onset-gradientという)も重要な測定対象である。本講演では、これまで実施された冷却試験におけるSTF-2クライオモジュールの性能の変遷について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP030
p.365
ILC電子ドライブ陽電子源のキャプチャーライナックにおけるビームローディング補償の研究
A study of beam loading compensation in the capture linac of ILC electron driven positron source

○田地野 浩希,栗木 雅夫,金野 舜,リプタック ザカリー(広島大学 加速器物理研究室),高橋 徹(広島大学 高エネルギー物理研究室),横谷 馨,大森 恒彦,浦川 順治(高エネルギー加速器研究機構(KEK))
○Hiroki Tajino, Masao Kuriki, Shun Konno, Zachary Liptak, Tohru Takahashi (Hiroshima University Accelerator Physics Group), Kaoru Yokoya, Tunehiko Oomori, Junji Urakawa (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
ILC国際リニアコライダーは重心系エネルギー250GeVのヒッグス粒子工場として開始を計画している電子・陽電子リニアコライダーである。電子ドライブ陽電子源のキャプチャーライナックは、陽電子生成標的の直下に置かれ、生成された陽電子を集群し加速する役割を担っている。陽電子は6.15ns間隔で複数のバンチ(ビームのかたまり)として生成されるが、オフクレストに乗ったビームが減速場を誘起するため、加速電場の振幅と位相がともに変化する過渡的ビームローディングが発生する。本研究では、入力RFへの位相および振幅変調を行い、この陽電子キャプチャーライナックにおけるビームローディングの補償する方法について検討した。キャプチャーライナック加速空洞の等価回路モデルを用い、陽電子の加速時に発生するビームローディングを模擬し、その補償について評価を行った
 
13:30-15:30 
TUP031

Furnace bakingによる超伝導加速空洞の高性能化
High-performance superconducting accelerating cavities via furnace baking process
○井藤 隼人,荒木 隼人,梅森 健成(KEK),髙橋 光太郎(総合研究大学院大学)
○Hayato Ito, Hayato Araki, Kensei Umemori (KEK), Kotaro Takahashi (SOKENDAI)
 
We report the influence of a new baking process called furnace baking on the performance of superconducting accelerating cavities in terms of accelerating gradient and Q-value. Baking is applied to the cavity in a vacuum furnace at temperatures ranging from 200C to 800C as the final step of cavity surface treatment. We find that the accelerating gradient and Q-value vary with different baking temperatures, especially furnace baking at temperatures ranging from 250C to 400C produces cavities with extremely high Q-value and lower accelerating gradient than the standard cavity, similar to those obtained by N-doping. In a more recent development, we find that baking at 200C can achieve a higher Q-value while maintaining the accelerating gradient comparable to those of the standard cavity. We report the results of a detailed investigation on the performance of these cavities.
 
13:30-15:30 
TUP032
p.370
放電をともなうSバンド加速管における音響スペクトル解析
Acoustic spectral analysis for identifying S-band accelerating tubes with RF breakdown

○由元 崇,肥後 壽泰,惠郷 博文,荒木田 是夫(高エネ研),牛本 信二(三菱電機システムサービス(株))
○Takashi Yoshimoto, Toshiyasu Higo, Hiroyasu Ego, Yoshio Arakida (KEK), Shinji Ushimoto (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.)
 
KEK電子陽電子入射器では60の加速ユニットから構成され、各ユニットでは一台のクライストロンから四本の加速管にRF電力が供給されている。ビームの安定供給においてはどの加速管においてRF放電が発生しているのかを特定することが重要となるが、本加速器では加速管毎にRF出力信号を計測するようなシステムは構築されていない。その代替手段として音響センサを加速管カプラー部および終端抵抗部に取り付け、その信号波形を解析することにより放電加速管を特定する研究が長年なされてきた。本発表では音響スペクトル解析を用いた手法について計測結果とともに報告する。
 
13:30-15:30 
TUP033
p.373
SuperKEKBにおける超伝導空洞のSiC製HOMダンパーのビーム試験
Status of SiC HOM absorbers for superconducting cavities at SuperKEKB

○岡田 貴文,赤井 和憲(高エネ研),西脇 みちる(高エネ研、総研大),古屋 貴章,光延 信二(高エネ研),森田 欣之(高エネ研、総研大)
○Takafumi Okada, Kazunori Akai (KEK), Michiru Nishiwaki (KEK, SOKENDAI), Takaaki Furuya, Shinji Mitsunobu (KEK), Yoshiyuki Morita (KEK, SOKENDAI)
 
SuperKEKB加速器は、KEKB加速器の40倍のルミノシティを目指す電子・陽電子衝突型リング加速器である。 2019年の物理実験開始から運転・調整を続け、ビーム電流の増強とともにルミノシティの記録を毎年更新している。 現在までの物理実験における最大ビーム電流は電子リングで920mA、陽電子リングで1150mAに到達しているが、 さらに3倍近い設計ビーム電流を実現するためにはRFシステムでもさらなる増強が必要である。 電子リングでは、KEKB加速器用に開発された8台の509 MHz HOM減衰型超伝導空洞が用いられており、 ビームパイプ部分にはフェライト製HOMダンパーが備えられている。 しかし、SuperKEKBの大電流を達成するにはさらなるHOMの対策が必要である。 超伝導空洞で発生するHOMパワーの約半分が空洞からビーム下流方向へ抜け出て下流の空洞の負荷を増加させると推測されている。 そのため、空洞下流のビームライン上にSiC製のHOMダンパーを追加し、ビームによるHOMを吸収する対策を検討している。 これまでに、2台のSiC製HOMダンパーが2台の空洞の下流のビームラインに設置され、HOM吸収の評価が行われた。 SiC製HOMダンパーによるHOM吸収が確認され、下流側の空洞への負荷の減少が実証されている。 本稿では、SiC製HOMダンパーのこれまでのビーム運転による試験結果およびロスファクターの評価について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP034
p.379
J-PARC MUSEにおけるトリプレット電磁石のアップグレード
Upgrade of triplet magnets at J-PARC MUSE

○湯浅 貴裕,藤森 寛,河村 成肇,パトリック ストラッサー(高エネ研),目黒 学,砂川 光,川端 公貴(NAT)
○Takahiro Yuasa, Hiroshi Fujimori, Naritoshi Kawamura, Strasser Patrick (KEK), Manabu Meguro, Hikaru Sunagawa, Koki Kawabata (NAT)
 
J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)における崩壊ミュオンビームライン(Dライン)の二つの実験エリア(D1, D2)の内D1実験エリアでは主に表面ミュオン(30MeV/c相当)を用いた物性実験が行われている。当エリアでは実験条件によってミュオンの運動量を変えることができ、近年ではより高い運動量(90MeV/c)のミュオンを用いた実験が要求されるようになった。しかし、D1実験エリア直前に設置されている四重極三重項電磁石(D1トリプレット)では70MeV/cのミュオンを輸送するのが限界である。そこで、高運動量対応の既存トリプレットを再構築しD1トリプレットとして使えるように電磁石ピッチの変更、新規架台の製作等の改変を施し、将来的に120MeV/cのミュオンを輸送できるようにアップグレードされた。今回の発表ではD1トリプレットのアップグレード前後のパラメータ比較による性能評価およびビームオプティクスに対するGL積の最適化について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP035
p.382
高繰り返し・高電圧対応型バイポーラMARX方式パルス電源の開発
Development of a bipolar MARX type pulse generator corresponding to high-repetition and high-voltage

○中山 響介,徳地 明((株)パルスパワー技術研究所)
○Kyosuke Nakayama, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Lab. Co. Ltd.)
 
近年、高繰り返し、高電圧のパルスパワー電源の需要が産業応用の分野で高まっている。一般的に、高圧パルスを生成するためには多くの半導体スイッチ素子を直列に接続することが考えられる。しかし、この方法では各素子の分圧を均一に揃えるところに技術的な問題を抱えることが多い。我々はこの問題を解決するために半導体MARX方式を採用し、更に正極用MARX回路と負極用MARX回路を組み合わせ、任意に正負のパルスを生成することが可能なパルスパワー電源を開発している。ここでは最近の開発成果を発表する。
 
13:30-15:30 
TUP036
p.385
J-PARC muon g-2/EDM実験用ビーム入射キッカーの磁場設計
Design work of pulsed radial kick field for J-PARC muon g-2/EDM experiment

○飯沼 裕美(茨大理工),阿部 充志(KEK),佐々木 憲一,中山 久義,三部 勉(高エネ研),高柳 智弘(原研),徳地 明(パルスパワー技術研究所)
○Hiromi Iinuma (Ibaraki-Univ.), Mitsushi Abe, Ken'ichi Sasaki, Hisayoshi Nakayama, Tsutomu Mibe (KEK), Tomohiro Takayanagi (JAEA), Akira Tokuchi (PPJ)
 
J-PARC Muon g-2/EDM実験では、医療用MRI電磁石サイズのソレノイド型超電導電磁石内に運動量300MeV/cのMuonビームを直径66cmの軌道で蓄積し、異常磁気能率(g-2)の超精密測定とEDM探索を行う計画である。蓄積電磁石内部の精密調整された蓄積領域へ静磁場を乱さずにビーム入射を行うことが実験技術の要の一つであり、我々は、蓄積領域付近に径方向パルス磁場を発生させ、ビームのソレノイド軸鉛直方向の運動を制御するキッカー装置制作に取り組んでいる。線形な磁場計算が可能な入射領域とミューオン蓄積領域の磁場分布の算出は、多数の円電流で再現する手法を取り入れることで、3次元有限要素法で設計した磁場分布と0.1ppm以内の一致を実現しつつ、ビーム軌道計算及びスピンベクトルの計算を実現している。開発本発表では、蓄積電磁石内部の磁場空間分布を考慮したビーム入射軌道から、パルス磁場の空間・時間分布の最適解算出手法を議論し、蓄積ビーム品質の評価、実機用のパルス磁場発生用のキッカーコイル形状、コイルに流す電流時間構造の具体パラメータを示す。キッカー装置の性能は、蓄積領域内のビーム軌道、ベータトロン振幅の大きさや入射効率を決定づけるので、実際のビーム運転時のキッカー調整手法シナリオも併せて議論する。また、コイルに掛かる機械的・熱的負荷の評価の進捗を報告する。
 
13:30-15:30 
TUP037
p.391
動作範囲の広いサイリスタアバランシェモードスイッチの開発
Development of a thyristor avalanche mode switch with a wide operating voltage

○内藤 孝,明本 光生(高エネルギー加速器研究機構)
○Takashi Naito, Mitsuo Akemoto (KEK)
 
加速器のキッカーマグネットなどで使われるパルス電源はサイラトロンと呼ばれるガス放電管が使われkAのパルス電流が生成されている。これを半導体に置き換える試みが多くの研究所などで行われている。我々は大電流素子であるサイリスタをアバランシェモードでスイッチさせる方式でサイラトロンと同等の電流をスイッチする回路を開発している。既に1.5kA以上のパルスを生成出来ることを確認している。 アバランシェモードスイッチで問題となるのは使用出来る電圧範囲に制限があり、使用電圧を大きく変えることが難しいことである。 加速器のデバイスとして使用するにはパルス電流は可変にする必要があり、可変範囲は広い方が自由度が高く使い易い。今回、動作範囲の広いアバランシェモードスイッチ回路の開発を行った。 本報告では、その開発状況について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP038
p.395
大電力クローバー回路用半導体スイッチ
Development of semiconductor switches for high-power crowbar circuits

○小野 礼人,高柳 智弘,不破 康裕,篠崎 信一(J-PARC/JAEA),堀野 光喜,植野 智晶(株式会社NAT),杉田 萌,山本 風海,金正 倫計(J-PARC/JAEA),生駒 直弥,亀崎 広明,森 均,徳地 明(株式会社パルスパワー技術研究所)
○Ayato Ono, Tomohiro Takayanagi, Yasuhiro Fuwa, Shinichi Shinozaki (J-PARC/JAEA), Koki Horino, Tomoaki Ueno (NAT Corporation), Moe Sugita, Kazami Yamamoto, Michikazu Kinsho (J-PARC/JAEA), Naoya Ikoma, Hiroaki Kamezaki, Hitoshi Mori, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Laboratory Ltd.)
 
J-PARCでは、直線型加速器の加速用高周波を増幅する真空管型高周波増幅器(クライストロン)電源の短絡保護装置(クローバー装置)に水銀整流器(イグナイトロン)を用いている。イグナイトロンは、世界的に使用が制限されている水銀を使用しており、将来的に製造中止が見込まれる。そこで、大電力半導体素子(MOSゲートサイリスタ)を用いたクライストロン短絡保護用の半導体クローバー装置を開発している。基板1枚当たり、3kV,40kA,50usの動作出力を実現するオーバル型基板モジュールを製作した。120kVの高電圧を想定した各基板モジュールへの制御電源供給は、基板ごとに高圧トランスが必要となり、トランスの設置場所や部分放電(コロナ放電)を考慮する必要がある。本機器では、高圧トランスを用いず、各基板モジュール1枚に分担充電される電圧(3kV)から高圧DCDCコンバータで制御電源を作り出す自己給電方式を採用した。この基板モジュール20枚を20直列で接続し、既設機器(120kV,40kA)の電圧に対して1/2スケール(60kV,40kA)での動作性能を確認することができた。その出力試験結果について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP039
p.400
J-PARC MR高繰り返し化に向けた主電磁石電源のアップグレード
Upgrade of main magnet power supply system in J-PARC MR for high-repetition rate operation

○三浦 一喜,下川 哲司,森田 裕一(高エネ研),佐川 隆(ユニバーサルエンジニアリング),織井 安里,大越 隆夫(高エネ研),国安 祐(三菱電機システムサービス株式会社),吉成 柾(株式会社NAT),五十嵐 進(高エネ研)
○Kazuki Miura, Tetsushi Shimogawa, Yuichi Morita (KEK), Ryu Sagawa (Universal Engineering), Asato Orii, Takao Oogoe (KEK), Yuu Kuniyasu (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd), Masaki Yoshinari (NAT), Susumu Igarashi (KEK)
 
J-PARCではビーム大強度化計画として、主リング(MR)の運転周期を2.48秒から 1.36秒へと速める高繰り返し化を実現することが求められており、その計画の一部として主電磁石用新電源の開発および主電磁石既存電源再編成の検討が進められてきた。2021年度のJ-PARC MR長期シャットダウン期間では、新電源インストール、既存電源の再編成および主電磁石の負荷分割やケーブル再配線といった大規模なアップグレードが多岐にわたって実施された。大強度陽子加速器の主電磁石電源は大電力機器であり、今回のような大規模なアップグレード実施後の運転に向けては、電源の立ち上げや調整以外にも各種配線作業後の配線確認や安全性を始めとした入念な確認が必須となる。本報告では、J-PARC MR高繰り返し化に向けた主電磁石電源の状況について、再編成後に実施した各種確認作業や通電試験結果を紹介する。
 
13:30-15:30 
TUP040
p.404
京都大学FFAG加速器を用いた加速器駆動型核変換システム(ADS)用核データの実験的研究
Experimental study of nuclear data for Accelerator-Driven Transmutation System (ADS) using Kyoto University FFAG accelerator

岩元 大樹,○明午 伸一郎,中野 敬太(J-PARC/JAEA),西尾 勝久,佐藤 大樹,岩元 洋介,廣瀬 健太郎,牧井 宏之(JAEA),岡部 晃大(J-PARC/JAEA),Orlandi Riccardo,大泉 昭人,洲嵜 ふみ,塚田 和明(JAEA),前川 藤夫(J-PARC/JAEA),石 禎浩,上杉 智教,栗山 靖敏,八島 浩,森 義治(京大),杉原 健太(J-PARC/JAEA, KEK)
Hiroki Iwamoto, ○Shin-ichiro Meigo, Keita Nakano (J-PARC/JAEA), Katsuhisa Nishio, Daiki Sato, Yosuke Iwamoto, Kentaro Hirose, Hiroyuki Makii (JAEA), Kota Okabe (J-PARC/JAEA), Riccardo Orlandi, Akito Oizumi, Fumi Suzaki, Kazuaki Tsukada (JAEA), Fujio Maekawa (J-PARC/JAEA), Yoshihiro Ishi, Tomonori Uesugi, Yasutoshi Kuriyama, Hiroshi Yashima, Yoshiharu Mori (Kyoto Univ.), Kenta Sugihara (J-PARC/JAEA, KEK)
 
令和元年度より、京都大学の固定磁場強収束(FFAG)加速器を用いて加速器駆動核変換システム(ADS)の研究開発に資する核データを取得する実験的研究プログラムを開始した。本プログラムは、ADSの核設計及び京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)未臨界炉物理実験の解析で重要となる鉄、鉛及びビスマスの陽子入射中性子収量及び鉛とビスマスの核分裂に関する核データを対象とした。これまでに、中性子の飛行時間(TOF)測定で要求される短パルスビームの技術開発を行い、その要求値となるビーム幅10 ns以下を達成するとともに、107 MeV陽子入射による厚い標的中性子収量TTNY及び中性子生成二重微分断面積DDXをTOF法により測定した。TTNY及びDDXの測定には、小型の液体有機シンチレータNE213と光電子増倍管から構成される中性子検出器を用いた。測定で得られた結果をADSの核設計で用いられるモンテカルロ粒子輸送計算コードPHITSによる解析値と比較した。さらに、マイクロチャンネルプレート(MCP)と多芯線比例計数管(MWPC)を組み合わせて、107 MeV陽子入射による鉛-208の核分裂反応から生成される核分裂片の質量数分布を測定した。本プログラムの最終年度となる令和4年度は、ビスマス-209に対する核分裂片の質量数分布と核分裂で生じる核分裂中性子の測定を実施するとともに、Np-237核分裂計数管を用いて、陽子と標的との核反応で形成される中性子場の測定を実施する予定である。
 
13:30-15:30 
TUP041

KEKのERL開発棟の老朽化による雨漏りの発生とその対策
Maintenance of the leaking roof at the ERL development building in KEK
○本田 洋介,加藤 龍好,阪井 寛志,赤池 健,多田野 幹人(高エ研),山田 浩気(日本アドバンストテクノロジー)
○Yosuke Honda, Ryukou Kato, Hiroshi Sakai, Ken Akaike, Mikito Tadano (KEK), Hiroki Yamada (NAT)
 
KEKのERL開発棟(旧東カウンターホール)はKEKで最も古い建物の一つである。建物の老朽化にともなってこれまでも度々屋根の雨漏りが発生し、その都度補修を行ってきたが、2021年度の冬期には雨漏り発生箇所が爆発的に増え、対処療法的な修理が追いつかない状況になった。 本発表では昨年度の状況と、今年度の改修工事の状況について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP042
p.410
薄膜フォトカソード用金属メッシュ上のグラフェンとhBN膜基板の加熱効果の評価
Evaluation of heat cleaning of graphene and hBN film substrate on a metal mesh for photocathode

○後藤 啓太(名大工),郭 磊(名大工、名大SRセンター),山口 尚登(米ロスアラモス国立研),仲武 昌史(あいちSR),高倉 将一(名大SRセンター),山本 将博(高エネ研),高嶋 圭史(名大工、名大SRセンター)
○Keita Goto (Nagoya Univ), Lei Guo (Nagoya Univ, NUSR), Hisato Yamaguchi (LANL), Masashi Nakatake (AichiSR), Shoichi Takakura (NUSR), Masahiro Yamamoto (KEK), Yoshifumi Takashima (Nagoya Univ, NUSR)
 
薄膜フォトカソードは低エミッタンス、高い励起光率などの利点がある。一般的に薄膜フォトカソードは、平坦な基板上にカソード元素を蒸着することにより作製され、カソード性能は基板表面状態に強く依存することが知られている。我々は近年、グラフェンあるいは六方晶窒化ホウ素(hBN)という二次元材料を基板とした場合に、作製された薄膜フォトカソードの量子効率等への影響を調べている。その一環として、金属メッシュ上にグラフェンとhBN膜を架橋し、二次元材料が空間に浮いている状態の場合の研究も進めている。しかし、空間に浮いている二次元材料を基板として用いた場合に、カソード生成後の基板を加熱洗浄せずに大気に暴露すると、薄膜フォトカソード-二次元材料基板が機械破壊されていることが分かった。その原因を調べるために本研究では、カソード成膜前の二次元材料基板を真空環境の中で、薄膜フォトカソードを通常除去する温度まで加熱洗浄し、金属メッシュ上のグラフェンとhBN膜基板の状態の評価を行った。具体的には、300、400、500℃で真空加熱し、その後の基板表面をXPSとXAS用いて分析した。さらに、SEMを用い、500℃加熱後の膜基板の状態を確認した。この一連の結果を報告する。
 
13:30-15:30 
TUP043
p.414
RCNPイオン源の高輝度化
Improvement of the brightness of ion sources at RCNP

○橘髙 正樹,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,畑中 吉治,斎藤 高嶺,田村 仁志,安田 祐介,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,荘 浚謙,ZHAO HANG,松井 昇大朗(阪大RCNP)
○Masaki Kittaka, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Kichiji Hatanaka, Takane Saitou, Hitoshi Tamura, Yusuke Yasuda, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Tsum Him Chong, Hang Zhao, Syotaro Matsui (RCNP)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では、RI 製造や中性子、μ 粒子といった2次ビームの利用が近年拡大している。そのため加速器からの 1 次ビームの増強を進めている。本研究では、RCNPにおけるビーム増強の開発の一環として、イオン源の高輝度化を実施した。この高輝度化の実施は、イオンビームの高強度化はもちろんのこと、同時にエミッタンスを低減することで、ビームロスに伴う機器への熱負荷や放射化を抑えるためである。イオン源の高輝度化を実現するため、既存のECRイオン源の加速電圧の高圧化を行った。既存の ECR イオン源は引き出し電圧が 15 kV で運用されていたが、50 kV まで高圧化することで、イオン源から引き出されるビームの高輝度化を目指す。改造にむけて、まず、OPERA 3D,IGUN を用いて電磁場シミュレーションと電磁場中でのイオンビームのシミュレーションを行う。電磁場シミュレーションの結果をもとに、新しい絶縁構造を設計し、製作を行う。製作された電極と絶縁体を使用して、高圧印加試験とビームテストの測定を行う。本発表ではイオン源の改造設計と高輝度ビーム生成の現状を報告する。
 
13:30-15:30 
TUP044
p.418
REBCOコイルを用いた高温超伝導ECRイオン源の開発
Development of high temperature superconducting ECRIS with REBCO coils

○荘 浚謙,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,畑中 吉治,斎藤 高嶺,安田 裕介,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,Zhao Hang,橘高 正樹,松井 昇大朗(阪大RCNP),石山 敦士(早大),野口 聡(北大),植田 浩士(岡山大),福井 聡(新潟大),松原 雄二,三上 行雄,吉田 潤,平山 貴士(住友重機),長屋 重夫,渡辺 智則(中部電力)
○Tsun Him Chong, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Kichiji Hatanaka, Takane Saito, Yusuke Yasuda, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Hang Zhao, Masaki Kittaka, Shotaro Matsui (RCNP), Atsushi Ishiyama (Waseda Univ.), So Noguchi (Hokkaido Univ.), Hiroshi Ueda (Okayama Univ.), Satoshi Fukui (Niigata Univ.), Yuji Matsubara, Yukio Mikami, Jun Yoshida, Takashi Hirayama (SHI Ltd), Shigeo Nagaya, Tomonori Watabe (Chubu Electric Power Co.,Inc)
 
A High Temperature Superconducting ECR ion source (HTS-ECR) is under development in RCNP, Osaka University. The magnetic mirror and sextupole fields of the HTS-ECR will be produced by three circular and six racetrack REBCO coils respectively. Performance tests of the second-generation high temperature superconducting coils were positioned as a key technology development of the skeleton cyclotron, an air-core compact accelerator using REBCO coils as main magnets. The HTS-ECR was designed for both 2.45 GHz and 10 GHz operation in order to estimate the coils’ capability of modifying magnetic field configuration in a short time. In this work, results of the low temperature performance test of the REBCO coils will be presented. Besides, the magnetic field configuration and plasmas chamber design for both 2.45 GHz and 10 GHz operation, aimed for high intensity proton, deuteron and He2+ production, will also be discussed.
 
13:30-15:30 
TUP045
p.427
ハドロン実験施設における回転円盤型2次粒子生成標的のための気体軸受の設計
Design of gas bearing for rotating-disk-type secondary-particle production target at J-PARC Hadron Experimental Facility

○渡邉 丈晃,上利 恵三,秋山 裕信,青木 和也,家入 正治,加藤 洋二,倉崎 るり,里 嘉典,澤田 真也,高橋 俊行,髙橋 仁,田中 万博,豊田 晃久,広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 史真,森野 雄平,山野井 豊(KEK)
○Hiroaki Watanabe, Keizo Agari, Akiyama Hironobu, Kazuya Aoki, Masaharu Ieiri, Yohji Katoh, Ruri Kurasaki, Yoshinori Sato, Shin'ya Sawada, Toshiyuki Takahashi, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Fumimasa Muto, Yuhei Morino, Yutaka Yamanoi (KEK)
 
J-PARCハドロン実験施設では、30GeVに加速された陽子ビームを金属標的へ照射し、そこで生成されるK中間子等の2次粒子を利用したバラエティーに富んだ原子核・素粒子実験を遂行している。2020年から1次陽子ビーム強度で最大95kWに対応した固定型標的を使用しており、2021年には64kWの安定したビーム運転を達成している。しかしながら、熱負荷が一定位置となる固定型の標的では100kWを超えるビーム強度を受けることが困難であるため、熱負荷を分散させることのできる回転円盤型標的の開発を進めている。この円盤として、外径346mm-厚さ66mmで円盤外周部は金やタングステンといった高密度の金属とし、円盤内周側は熱伝導率のよい銅にフィン加工を施したものをベース案としており、円盤とシャフトを合わせた重量は約40kgとなる。この円盤の回転軸受として、標的近傍の放射線環境で実績のある耐放射線ボールベアリングを採用する場合、200rpmの回転速度で軸受寿命が約1年となる。ハドロン施設では1つの標的を5年程度使用する計画のため、より長寿命の軸受を必要としている。そこで、基本的には寿命に制約がなく、放射線環境で運用でき、より高速回転にも対応可能な気体軸受の開発を進めている。本発表では、気体軸受の設計および試作機による評価結果について報告を行う。
 
13:30-15:30 
TUP046
p.432
位相変調を用いたコヒーレントなシンクロトロン振動の抑制
Suppression of coherent synchrotron oscillation using phase modulation to RF accelerating voltage

○大島 隆,前坂 比呂和,岩井 瑛人,稲垣 隆宏(理研)
○Takashi Ohshima, Hirokazu Maesaka, Eito Iwai, Takahiro Inagaki (RIKEN)
 
SPring-8では蓄積ビームのコヒーレントなシンクロトロン振動をマスターオシレータに対する FM変調で抑制するシステムが運用されている。しかし、この方法ではCOD測定などにおいて基 準となる信号に対して位相雑音を増加させることになり、それらの測定精度の悪化を引き起こす 可能性がある。また、SPring-8のアップグレード計画で想定されている低エミッタンスリングでの輝度への影響も懸念される。そこで、我々は4つのRFステーションのうちの1つに対して、ビームのエネルギー変動の情報をもとに位相変調を印加することにより、コヒーレントなシンクロトロン振動を抑制する方法を試みた。LLRFおよび一部のBPMシステムはMTCA.4規格のモジュールで構成されており、柔軟な位相変調、シリアル通信を用いたBPMデータの転送が可能となっている。このシステムを用いたプレリミナリーな試験において、振動のピークの振幅をおよそ1/4程度に抑制できることを確認した。今回の報告では試験のセットアップ、結果および今後の予定について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP047
p.435
LIPAc Phase-B+のRFQ/SRF用RF増幅系におけるRFノイズとリークの問題
RF noise and leakage issue in RF power amplifier chains for driving RFQ and SRF cavities in the Phase-B+ of LIPAc

○廣澤 航輝,久保 直也,春日井 敦(QST/六ケ所研究所),マルチェナ アルバロ(BTESA),モヤ イバン(F4E),斎藤 健二(NIFS),小林 仁(KEK)
○Kouki Hirosawa, Naoya Kubo, Atsushi Kasugai (QST/Rokkasho), Alvaro Marchena (BTESA), Ivan Moya (F4E), Kenji Saito (NIFS), Hitoshi Kobayashi (KEK)
 
LIPAc (Linear IFMIF Prototype Accelerator) is a EU-JA collaboration 9 MeV and 125 mA CW hadron linac that aims to validate the technology will be used in the IFMIF accelerator (40 MeV, 2 x 125 mA CW). The RF accelerating system of LIPAc consists of three types of components: RFQ cavity, buncher cavities, and superconducting half wave resonators (SRF). The RF control system of LIPAc is designed to optimized CW operation, and 8 high power RF amplifier chain is used for each RFQ cavity and SRF cavities, individually. After amplification by tetrodes, a Y-stripline ferrite circulator controls RF with nominal output power 220kW for RFQ and 105kW for SRF. During the Phase-B+ beam commissioning and RFQ conditioning campaign started from FY2021, strong RF signal with similar pulse shape for set RF parameters had been detected by using spectrum analyzer. The RF leak can make noise floor and unexpected malfunctions for each diagnostic. By measuring the noise from the cables and free space, we could find one of critical sources of RF leakage. In this report, measurement and analyzation results, an idea to fix, and discussion about other candidate of the large RF leakage will be reported.
 
13:30-15:30 
TUP048
p.440
SuperKEKBにおけるRFステーション位相およびビーム負荷配分の調整
Adjustment of RF phase and beam loading distribution among RF stations in SuperKEKB

○小笠原 舜斗,赤井 和憲,小林 鉄也,中西 功太,西脇 みちる(KEK)
○Shunto Ogasawara, Kazunori Akai, Tetsuya Kobayashi, Kota Nakanishi, Michiru Nishiwaki (KEK)
 
SuperKEKBは電子・陽電子蓄積リングからなる衝突型加速器で、高ルミノシティ達成のために設計ビーム電流も3.6Aという大電流に設定されている。現状では1Aの蓄積電流を達成し、ルミノシティの世界記録を更新しているが、目標達成に向けさらなる増強を目指す。高周波加速システムは、両リング合わせて30ステーションの高周波源系と2種38台の加速空洞で構成され、前例のない巨大なビームパワーを多数のRFステーションで分担することになる。このとき、ビームの安定性や電力効率、構成機器への負荷などの面から、それぞれの空洞が負担するビームパワー(ビーム負荷)をステーション間で適切に分配することが重要である。ビーム負荷を調整することは、各ステーションでビームに対するRF位相(加速位相)を調整することに相当する。加速位相は空洞ピックアップ信号などからビーム蓄積前に予め調整されるが、周長3kmのリング全体で位相を精密に調整することは困難である。ビーム負荷をより精密に分配し、運転状況の変化等にも臨機応変に対応するためには、蓄積ビームを用いて加速位相を評価する仕組みが有効である。そこでSuperKEKBでは、空洞におけるRF電力収支からビーム負荷を求め、それを基に位相調整を適宜行っている。本稿では、多数のRFステーションを抱えるSuperKEKBにおけるステーション間のビーム負荷(加速位相)評価および調整方法と、その運用について紹介する。
 
13:30-15:30 
TUP049
p.445
Nextef2 : KEKにおけるXバンド高電界試験スタンドの再生
Nextef2 : a reborn X-band high-gradient test stand at KEK

○阿部 哲郎,明本 光生,佐武 いつか,佐藤 政則,中島 啓光,夏井 拓也,東 保男,肥後 壽泰,松本 修二(高エネ研),工藤 拓弥(三菱電機SC)
○Tetsuo Abe, Mitsuo Akemoto, Itsuka Satake, Masanori Satoh, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Yasuo Higashi, Toshiyasu Higo, Shuji Matsumoto (KEK), Takuya Kudou (Mitsubishi SC)
 
Nextef は数十メガワット級のXバンド(11.4GHz)高電界試験スタンドであるが、2019年4月に大きな火災を起こしてからこの3年間、その構成を変えて復旧を行ってきた。ハードウエア的にもソフトウエア的にもより高い安全性を導入し、試験の目的も、これまでの欧州CLICプロジェクト指向から、応用加速器指向へと方向転換している。 本試験スタンドが「Nextef2」として再スタートをきるまでを報告する。
 
13:30-15:30 
TUP050
p.450
次世代光源における過渡的電圧補償のための広帯域空洞コールドモデルの性能評価
Performance evaluation of the wide-band cavity cold-model to compensate the transient beam loading in the next generation light sources

○内藤 大地,山本 尚人,高橋 毅(高エ研),山口 孝明(総研大),坂中 章悟(高エ研)
○Daichi Naito, Naoto Yamamoto, Takeshi Takahashi (KEK), Takaaki Yamaguchi (SOKENDAI), Shogo Sakanaka (KEK)
 
第四世代リング型光源では横方向の極低エミッタンス実現を目指している。それにはバンチ内における電子同士の散乱を抑制するため、基本波の加速空洞の他に高調波空洞を導入してバンチ伸長を行う必要がある。しかしリング型光源ではイオン捕獲抑制のためのバンチギャップにより空洞内の電圧が時間変動してバンチ伸長の効率が悪化してしまう。そこで我々のグループでは広帯域キッカーを用いた過渡的電圧補償手法と具体的な広帯域キッカーのデザインについて提唱した[1][2]。そして前年度には補償空洞の性能実証をするため、アルミでできたコールドモデルの設計及び製造を行なった。本発表ではコールドモデルの機械設計と性能評価試験の状況について報告する。[1]N. Yamamoto et al., Phys. Rev. Accel. Beams 21, 012001. [2]D. Naito et al., Proc of IPAC2021.
 
13:30-15:30 
TUP051
p.454
コンパクトERLにおける機械学習によるビームオプティクスの自動調整
Automatic tuning of beam optics by machine learning in compact ERL

神尾 彬(HiSOR),○加藤 政博(UVSOR),島田 美帆,宮内 洋司,帯名 崇(KEK)
Akira Kano (HiSOR), ○Masahiro Katoh (UVSOR), Miho Shimada, Yoji Miyauchi, Takashi Obina (KEK)
 
エネルギー回収型ライナック(ERL)は、超電導直線加速器で加速した電子ビームを周回させた後、再び超電導加速器を通してそのエネルギーを回収し、これを次のビームを加速するために利用する新しい概念の加速器である。KEKではその実証機としてコンパクトERL(cERL)が建設され、研究開発が推進されている。cERLにおいては周回部でのビームの損失や品質の劣化を防ぐためにビームオプティクス調整が重要であり、運転調整において最も時間がかかるとともに熟練も必要とされる。cERLでは、運転の省電力化や自動化を目指して、機械学習の一種であるベイズ最適化を用いてオプティクスの自動調整を試行している。本研究では、cERL周回部に設置されている複数のスクリーンモニタ画像を使って最適化を試みた。目的関数としてcERL周回部に設置されている複数のスクリーンモニタ画像から得られる電子ビームサイズと設計値との差を一定のルールに基づいて評価したものを設定し、これを最小にするように四極電磁石の電流値を最適化した。ビームサイズの計測、電磁石電流値の算出、電流値の設定までを自動化し、40回程度の反復で一定の精度で調整できることが確認できた。
 
13:30-15:30 
TUP052
p.456
臨界磁場測定用半球形状空洞のアンテナ設計
Antenna design of hemispherical cavity for critical magnetic field measurement

○服部 綾佳(茨城高専),早野 仁司(KEK)
○Ayaka Hattori (NIT (KOSEN), Ibaraki College), Hitoshi Hayano (KEK)
 
超伝導薄膜のRF下での臨界磁場測定のため、半球形状空洞のアンテナ設計を進めている。半球形状空洞内にTE013モードを安定して共振できるアンテナ形状を決めるべく、シミュレーションを実施した。本発表ではアンテナ設計のために実施したシミュレーションについて報告する。
 
13:30-15:30 
TUP053
p.461
組み合わせ速度集群法によるテラヘルツ帯アンジュレーター放射実験
Report on THz undulator radiation experiment with combination of velocity bunchings

○住友 洋介,境 武志,早川 建,早川 恭史(日大理工)
○Yoske Sumitomo, Takeshi Sakai, Ken Hayakawa, Yasushi Hayakawa (Nihon Univ. CST)
 
電波技術の進展に伴いより高い周波数帯域の需要が指数関数的に高まっている。特に、電波と赤外領域の間に位置しているテラヘルツ帯域は、電波技術と光科学の双方の技術進展で迫っている領域であり、また、近年の目覚ましい光源開発も手伝い、近い将来の産業活用を含めた飛躍的な進展が期待されている。加速器はピコ秒以下に圧縮された電子バンチを用いることで、ピーク強度が高く時間幅の短いテラヘルツパルスを生成することを得意としており、需要の高まるテラヘルツ科学での推進力となるポテンシャルを秘めている。 本研究では独自のバンチ圧縮法である「組み合わせ速度集群法」を提案し、圧縮された電子バンチをアンジュレーターの周期磁気回路と相互作用させることで、準単色コヒーレントテラヘルツ放射の生成を行うことを目的としている。日本大学の100 MeV加速器を用いて行なった実験では、これまでに経験のない13 MeV程度の低いエネルギーでのビーム生成を行い、既存の赤外用アンジュレーターを転用してテラヘルツ光を発生させることに成功した。この発表では、提案しているバンチ圧縮法や広がりの大きな光取り出しなどを含め、実験結果についての報告を行う。
 
13:30-15:30 
TUP054
p.464
SKEKB MR大電力高周波源における矩形導波管型ウォーターロードの現状
Survey and analysis of the actual condition of the rectangular waveguide type water load for high power rf system in MR of SKEKB

○渡邉 謙(KEK),相澤 修一,奥山 恒幸,福住 直貴(日本高周波(株))
○Ken Watanabe (High Energy Accelerator Research Organization), Shuichi Aizawa, Tsuneyuki Okuyama, Naoki Fukuzumi (Nihon Koshuha Co., Ltd.)
 
 SuperKEKB加速器主リングでは空洞トリップおよびビームアボート時に発生する反射電力からクライストロンを保護することを目的にサーキュレーター第3ポートもしくはMagic-T第4ポートに大電力用ウォーターロードを設置している。  富士、日光地区のRFステーションで使用されるウォーターロードは矩形導波管型であり、全数KEKB加速器建設時に製作されたものである。SKEKB建設時、ロードの健全性調査を実施し、その調査結果に基づき性能向上のための改造を検討しつつ保守を進めた。主リングにおける予備機確保のため、2018年から2021年にかけて約10年ぶりに当該ロード計3台を新規に製作した。  製作後の受け入れ試験や保守時に発生した問題点や長期運転における損耗状況など現在の開発状況を報告する。
 
13:30-15:30 
TUP055
p.469
SuperKEKBにおける加速モード起因結合バンチ不安定性抑制システムの位相調整
Phase tuning for damper system of coupled bunch instability caused by acceleration mode in SuperKEKB

○小林 鉄也(高エネ研),廣澤 航輝(量研/六ヶ所)
○Tetsuya Kobayashi (KEK), Kouki Hirosawa (QST/Rokkasho)
 
SuperKEKBは電子・陽電子衝突型リング加速器で、前人未踏(KEKBの40倍)のルミノシティを目指し運転・調整が続けられている。目標までは更なる増強が必要な状況であるが、継続してルミノシティの世界記録が更新されている。 高いルミノシティを得るために非常に大きな蓄積ビーム電流が必要であり、RF制御にとっては、加速モードに起因する結合バンチ不安定性(CBI)の抑制が重要な課題の一つである。そのため、SuperKEKBでは新たに多モードに対応した高精度なCBIダンパーが開発された。本ダンパーは、これまでの運転で有効に機能し、大電流の蓄積に欠かせないシステムになっている。しかしながら、位相の調整方法に課題があった。CBIダンパーはフィードバック制御の一種であるが、これまで、閉ループの状態でしか調整できず、不安定性が発生してから位相をスキャンして最適な位相を探す、という方法を行っていた。この方法では、不安定性が起きないと調整できない。また、やみくもに最適位相を探すので時間がかかる上、スキャン中にアボートさせてしまう、などの問題が多かった。 そこで、機能を拡張し、開ループでビームを振動させ、ビームの応答からループ位相を決定する方法を可能にした。これにより、予め位相調整を済ませることができ、不安定性を発生させずに大電流蓄積ができ、また調整時間も大幅に短縮され、コミッショニングの効率化にも貢献している。
 
13:30-15:30 
TUP056
p.474
自由電子レーザーシーディング用差周波発生中赤外光源システム開発の現状
Development of the mid-infrared light source system based on difference frequency generation for seeding of a free electron laser

○川瀬 啓悟,羽島 良一,森 道昭,永井 良治(QST)
○Keigo Kawase, Ryoichi Hajima, Michiaki Mori, Ryoji Nagai (QST)
 
平成30年度光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)次世代レーザー基礎基盤研究「自由電子レーザーで駆動する高繰り返しアト秒光源のための基礎基盤技術の研究(課題番号:JPMXS0118070271)」としてQST、京大、日大、KEKで進めている中赤外自由電子レーザー(FEL)による高次高調波発生(HHG)のための基礎研究において、FELのキャリアエンベロープ位相(CEP)を安定化するためのCEP安定中赤外シード光源を開発している。所属機関等の諸事情により今年度、レーザーシステム全体をQST東海量子ビーム応用研究センターからQST関西光科学研究所に移設し、再構築を進めている。本発表では、システム再構築と差周波発生開発の進捗状況を報告する。
 
13:30-15:30 
TUP057
p.478
レーザーコンプトン散乱に向けた自発共鳴型光蓄積共振器の開発
Study on a self-resonating optical cavity for laser-compton scattering

○福島 千夏良,小柴 裕也,山下 洸輝,鷲尾 方一(早大・理工総研),アリシェフ アレキサンダー,浦川 順治,大森 恒彦,照沼 信浩,福田 将史,本田 洋介,ポポフ コンスタンティン(高エネ研),上杉 祐貴(東北大・多元研),坂上 和之(東大・光量子研),高橋 徹(広大・先進理工),保坂 勇志(量研)
○Chikara Fukushima, Yuya Koshiba, Koki Yamashita, Masakazu Washio (WISE Waseda Univ), Alexander Aryshev, Junji Urakawa, Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Masafumi Fukuda, Yosuke Honda, Konstantin Popov (KEK), Yuki Uesugi (IMRAM Tohoku Univ), Kazuyuki Sakaue (UT-PSC), Tohru Takahashi (Hiroshima Univ), Yuji Hosaka (QST)
 
レーザーコンプトン散乱(LCS)とは、加速器によって生成される高エネルギー電子ビーム とレーザーの衝突によって準単色のX線やガンマ線を生成する手法である。LCS光源は大型放射光施設と同等の品質の光子を小型(10m×10m程度)な装置で生成することが期待されているものの、実用化に向けては散乱光強度の低さが課題となっている。この課題を解決するために我々は、高繰り返しかつ高ピークパワーの衝突用レーザーを生成するための光蓄積共振器の開発を行ってきた。しかし、加速器環境下では雑音が大きくその下での光蓄積共振器の運用は共振器長制御による共鳴維持が蓄積光パワーを制限する。そこで我々は,光蓄積共振器とレーザー発振器を閉ループでつなぎ一体化させることで自発的に共鳴を維持する自発共鳴型光蓄積共振器を考案し、その開発に取り組んでいる。 本研究では、10MWの光蓄積が目標であるが、繰り返し357MHzの電子ビームとのレーザーコンプトン散乱を見据え、自発共鳴型光蓄積共振器における繰り返し357MHzの安定した光蓄積の実現をマイルストーンとし実験を行ってきた。 本講演では、自発共鳴型光蓄積の現状とその温度依存性に関して報告する。
 
13:30-15:30 
TUP058
p.483
SuperKEKB RF電子銃用レーザー安定化の開発
Development of laser stabilization for SuperKEKB RF gun

○張 叡(高エネルギー加速器研究機構),豊富 直之(三菱電機システムサービス(株)),吉田 光宏(高エネルギー加速器研究機構)
○Rui Zhang (High Energy Accelerator Research Organization (KEK)), Naoyuki Toyotomi (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Mitsuhiro Yoshida (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
Electron beam with high charge and low emittance is required for SuperKEKB high energy ring (HER) injection. After entering phase III commissioning of SuperKEKB, about 2.0 nC electron beam with comparable low emittance has been achieved successfully for injection. For continuous and stable injection and physics run, the stability of laser operation is extremely important. Due to the temperature fluctuation and long transporting line from laser hut to tunnel, the laser beam pointing stability was about 50 μm along horizontal and vertical direction. For improving the laser pointing stability, laser beam position sensor and piezo mirror mount feedback system have been developed and applied. By use of this system, the laser pointing stability has been improved dramatically. Furthermore, it is no necessary to adjust the laser beam position manually during the continuous injection and commissioning.
 
13:30-15:30 
TUP059
p.486
大強度イオン線形加速器の基本設計用多粒子シミュレーションモデルの構築
Construction of a multi-particle simulation model for the basic designs of high-intensity linear ion accelerators

○小島 邦洸,岡本 宏己(広大院先進),守屋 克洋(日本原子力研究開発機構)
○Kunihiro Kojima, Hiromi Okamoto (AdSE, Hiroshima Univ.), Katsuhiro Moriya (JAEA/J-PARC)
 
周期的な外力を受けながら伝搬する荷電粒子ビームは一定の条件下で共鳴的に不安定化することが知られている。一方で線形加速器の単位構造長は一般にはビーム重心エネルギーの増加に伴って徐々に長くなるため外場は厳密な周期性を持たない。ベータトロン振動およびシンクロトロン振動のチューンも単位構造長の変化に伴って推移する場合が多い。したがって入射時点でのチューンの選択等に依ってはビームを加速する過程で動作点が共鳴帯を横切る可能性がある。その影響の大小はビームの重心エネルギー、空間電荷力の強弱、共鳴帯の横断速度等に依存した複雑な問題となることが予想される。こういった現象の系統的な調査を念頭に、アルバレ型ドリフトチューブ (DTL) を想定したシミュレーションモデルを構築し Particle-In-Cell コード IMPACT に実装した。本講演ではモデルの詳細に加えて、現在稼働中である J-PARC DTLの設計パラメーターを参考にして試験的に行ったシミュレーションの結果について報告する。
 
13:30-15:30 
TUP060
p.491
高純度ニオブの真空焼鈍によるRRRの低下と回復
Degradation and recovery of RRR by vacuum annealing for high purity niobium

○山中 将,嶋田 慶太(高エネ研)
○Masashi Yamanaka, Keita Shimada (KEK)
 
超伝導加速器に用いる高純度ニオブを真空炉を使って焼鈍したところ、残留抵抗比(RRR)が低下した事例がある。一方、ニオブ試験片をチタン製の箱に入れることにより、RRRが低下しないという事例もある。これらの現象を詳しく調べるために、RRRが250程度のラージグレインニオブの試験片を用いた実験を行った。真空炉の種類、チタン箱の有無などの組み合わせで焼鈍を行い、RRRの変化を調べた。またRRRが低下したニオブのRRR回復を試みた。
 
13:30-15:30 
TUP061
p.494
バッファガス冷却器を備えたビーム物理研究用イオントラップシステムの開発
Development of an ion trap system with a buffer-gas cooler for beam dynamics studies

○伊藤 清一(広大院先進)
○Kiyokazu Ito (AdSE, Hiroshima Univ.)
 
イオントラップに捕捉したイオンプラズマの運動は空間電荷効果を考慮しても加速器ビームと等価である.広島大学ではビーム物理研究に最適化したイオントラップシステムS-PODを用い,主に空間電荷効果がビームの挙動に与える影響について実験的研究を進めている.S-PODに捕捉したイオンプラズマのrmsチューンデプレッションは最も小さい時でおよそ0.85であり,一般的な円形加速器よりは小さい.しかし線形加速器の中にはより小さな値を取るものもある.この様な位相空間密度の高いビームの挙動を調べるためにはイオンプラズマもより高密度化する必要がある.S-PODのイオンプラズマの温度は約0.3eVと比較的高いので冷却による高密度化が期待できる.バッファガス冷却は低温の軽いガスとの衝突でイオンを冷却する方法であり,ハドロンビームで用いられる電子冷却と同様の手法である.当然より低温のガスを用いる方がイオンプラズマの到達温度は低くなる.そこで,クライオスタットにより冷却した低温のヘリウムガスをバッファガスとして導入するシステムの開発を進めている.開発状況と予備的な結果について報告する.本研究はJSPS科研費JP21H03737の助成を受けたものです.
 
ポスター② (10月19日 会議室P)
13:00-15:00 
WEP001
p.499
Equipartitioned ビーム方式に基づく ADS RFQの設計とビームダイナミクスの研究
Design and beam dynamics studies of an ADS RFQ based on an equipartitioned beam scheme

○イーレンドン ブルース,近藤 恭弘,田村 潤,中野 敬太,前川 藤夫,明午 伸一郎(JAEA),ーー ーー(Institut Angewandte Physik, Frankfurt, Germany)
○Bruce Yee-rendon, Yasuhiro Kondo, Jun Tamura, Keita Nakano, Fujio Maekawa, Shin-inchiro Meigo (JAEA), Robert. A Jameson (Institut Angewandte Physik, Frankfurt, Germany)
 
The Japan Atomic Energy Agency (JAEA) is designing a 30-MW proton linear accelerator (linac) for the accelerator-driven subcritical system (ADS) project. The radio frequency quadrupole (RFQ) is an essential component for the performance of high-intensity linac, especially in ADS projects where stringent reliability is demanded. The JAEA-ADS RFQ will capture a 20 mA proton beam and accelerate from the energy of 35 keV to 2.5 MeV, where the space-charge effects are severe. The JAEA-ADS RFQ's design employs the equipartitioning (EP) beam scheme to control the emittance growth and compactness. As a result, the beam halo formation was minimized and allowed the optimization of the superconducting linac downstream part. A remarkable feature of this RFQ is the low Kilpatrick factor of 1.2 adopted to achieve high stability by reducing the probability of surface sparking on the vane. This work presents and discusses the results of this RFQ design.
 
13:00-15:00 
WEP002
p.503
粒子加速器における非破壊での遅いビーム取り出し手法の研究
Study of non-destructive slow beam extraction method in particle accelerator

○永山 晶大(東北大学),原田 寛之(JAEA),下川 哲司(KEK),山田 逸平(JAEA),地村 幹(東北大学),山本 風海,金正 倫計(JAEA)
○Shota Nagayama (Tohoku University), Hiroyuki Harada (JAEA), Tetsushi Shimogawa (KEK), Ippei Yamada (JAEA), Motoki Chimura (Tohoku University), Kazami Yamamoto, Michikazu Kinsho (JAEA)
 
リング型粒子加速器であるシンクロトロン加速器ではリング内にビームを溜め込み、周回させながら加速したビームを徐々に供給する「遅い取り出し」技術で最先端の物理実験や放射線がん治療を実現している。従来の手法では周回するビームを広げつつ、静電セプタムで発生させた電場境界を超えた粒子を周回ビームから徐々に蹴り出し、削るように分断して取り出している。静電セプタムはビームの分断のためにビーム軌道上にリボン電極などの物体を直接挿入する構造になっており、故に「原理的」に避けられないビームと構造物の直接的な衝突による機器の損傷・放射化がビーム出力の大強度化やビーム供給の安定化を制限している。本研究では上記課題の原因である「ビーム軌道上に挿入される構造物」を廃した新たな手法に基づく「非破壊型静電セプタム」が考案されている。従来型の静電セプタムと同等に粒子を周回ビームから蹴り出す為には、境界面で不連続のギャップを持つ階段関数のような分布の力を発生させるのが理想である。本発表では階段関数に近い分布のローレンツ力を真空中に発生させるための電極・電線配置の最適化の計算方法や、発生させるローレンツ力によるビームの分断の計算結果について報告する。また、現在進行中である本手法の原理実証に向けて開発した小型原理実証機についても紹介し、今後の展望についても議論する。
 
13:00-15:00 
WEP003
p.508
レーザー駆動イオン加速の実用化を目指したビーム輸送系の開発
Beam transport system for laser-driven ion acceleration

○榊 泰直(量研関西研),宮武 立彦(九大大学院),小島 完興(量研関西研),竹本 伊吹(九大大学院),錦野 将元(量研関西研),白井 敏之(量研放医研),近藤 公伯(量研関西研)
○Hironao Sakaki (QST), Tatsuhiko Miyatake (Kyusyu-Univ.), Sadaoki Kojima (QST), Ibukiibuki Takemoto (Kyusyu-Univ.), Masaharu Nishikino, Toshiyuki Shirai, Kiminori Kondo (QST)
 
量研関西研では、量子メスプロジェクトの入射器に用いるレーザー駆動イオン加速型入射器の開発を進めている。レーザー駆動イオン加速では、エネルギーがブロードで多核種のイオンが混在するビームが生成されるが、そのビームをビーム輸送系を利用して、シンクロトロンで求められるビーム特性に制御していかねばならない。そこで、我々はレーザー駆動イオン加速におけるビーム輸送系のテスト装置を設置することを計画している。本研究では、レーザー駆動イオン加速におけるビーム輸送の課題と、テスト装置の進捗について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP004
p.511
自動サイクロトロン共鳴加速法を用いた陽子加速器のテストベンチ開発状況
Status of the development of a testbench for the cyclotron autoresonant accelerator

○原 隆文,福田 光宏,神田 浩樹,依田 哲彦,武田 佳次朗,荘 浚謙(阪大RCNP),篠塚 勉,伊藤 正俊(東北大CYRIC),倉島 俊,宮脇 信正(量研高崎研),涌井 崇(量研量医研),中尾 政夫(群大重医セ),松田 洋平(甲南大)
○Takafumi Hara, Mitsuhiro Fukuda, Hiroki Kanda, Tetsuhiko Yorita, Keijiro Takeda, Tsun Him Chong (RCNP, Osaka Univ.), Tsutomu Shinozuka, Masatoshi Ito (CYRIC, Tohoku Univ.), Satoshi Kurashima, Nobusaki Miyawaki (QST-Takasaki), Takashi Wakui (QST-NIRS), Masao Nakao (GHMC), Yohei Matsuda (Konan Univ.)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では、自動サイクロトロン共鳴加速法を用いた陽子加速器の実現を目指している。自動サイクロトロン共鳴加速法は実例が少なく、また回転する特殊な電場が必要であること、陽子を加速するためには10 T級の磁場が必要になるなど開発のハードルが高い。そのため、スケールダウンした電子のテストベンチの開発を行い、回転させる電場の機構の開発や、ビームの引き出し、高周波パワーの伝達効率などのデータの収集を行い、開発予定の陽子加速器の性能評価を行う。テストベンチは、電子を発生させるための電子銃と、加速に必要な電磁場を発生させる真空チェンバーとソレノイドコイル、導波管などから構成される。電子銃は新たに開発を行い、磁場は現在RCNPで開発中の10 GHzECRイオン源のミラーコイルを流用し、電流値の調整により電子の加速に最適な磁場分布を形成する。高周波電源にはイオン源に使用している2.45GHzマイクロ波電源を転用する。電子の加速の確認は、真空チェンバー下流に蛍光体を用いた磁場中の粒子の軌道の解析や発生するX線のエネルギー分析によって行う。本発表では、テストベンチ開発の、進捗や検討について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP005
p.514
アダマール変換に基づく横方向エミッタンス診断系の開発
Development of transverse emittance diagnostic system based on Hadamard transform

○竹本 伊吹(九大大学院),榊 泰直(量研関西研),宮武 立彦(九大大学院),小島 完興,錦野 将元(量研関西研),白井 敏之(量研放医研),近藤 公伯(量研関西研)
○Ibuki Takemoto (Kyusyu-Univ.), Hironao Sakaki (QST), Tatsuhiko Miyatake (Kyusyu-Univ.), Sadaoki Kojima, Masaharu Nishikino, Toshiyuki Shirai, Kiminori Kondo (QST)
 
量研関西研では,超小型重粒子線がん治療装置(量子メス)の実現に向けて,レーザー駆動イオン加速技術を用いた小型炭素イオン入射器の開発に挑戦している。レーザー駆動イオン加速によって生成される炭素ビームを下流のシンクロトロンの設計軌道にマッチさせたビーム軌道で入射させる必要があるため、ビームの横方向エミッタンスの制御が必要である。 横方向エミッタンスとは,ビームを構成する粒子の位置・運動方向による位相空間の大きさであり,ビームの層流性を表すパラメータである。これまで,レーザー駆動加速により生成される陽子ビームの横方向エミッタンスは,現行のECRイオン源によって生成されるビームと比較して2桁以上優れた値であることが報告されている。一方で,炭素ビームに関しては,同時加速される陽子ビームや酸素ビームを弁別することが困難であるために,炭素ビームの横方向エミッタンスが評価された例はない。そこで我々は,四重極磁石による核種の磁場弁別とダブルスリット法を組み合わせた炭素ビーム横方向エミッタンス診断系の開発を進めている。本研究では, レーザ駆動イオン加速における横方向エミッタンス計測で生じる課題と診断系の進捗について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP006
p.517
東北大CYRICにおける大強度負イオン加速に向けたサイクロトロン加速器入射系のビーム軌道計算
Simulation of the beam trajectory in the cyclotron accelerator incident system at CYRIC for high power negative ions acceleration

○服部 幸平,伊藤 正俊,足立 智,米倉 章平,篠塚 勉,今間 可奈子,林 拓夢,細谷 弦生,山崎 峻平(東北大CYRIC),松田 洋平,山﨑 敦博(甲南大),福田 光宏,神田 浩樹,依田 哲彦(阪大RCNP),中尾 政夫(群大重医セ),倉島 俊,宮脇 信正(量研高崎研),涌井 崇志(量研量医研)
○Kohei Hattori, Masatoshi Itoh, Satoshi Adachi, Shohei Yonekura, Tsutomu Shinozuka, Kanako Komma, Hiromu Hayashi, Genki Hosoya, Shumpei Yamazaki (CYRIC, Tohoku Univ.), Yohei Matsuda, Nobuhiro Yamasaki (Konan Univ.), Mitsuhiro Fukuda, Hiroki Kanda, Tetsuhiko Yorita (RCNP, Osaka Univ.), Masao Nakao (GHMC), Satoshi Kurashima, Nobumasa Miyawaki (QST-Takasaki), Takashi Wakui (QST-NIRS)
 
加速器で加速したビームを用いて生成する大強度の中性子ビームは、原子核物理実験や医療用 RI 製造、核廃棄物の核変換といったあらゆる分野の研究、応用利用に用いることができる。このため、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(CYRIC)では、C(d,n) 反応を用いた大強度中性子ビーム生成に向けて、大強度の負重水素イオンを供給することができる負イオン源を導入し、エネルギー 25MeV, 電流値 100uA という目標に向けて、現状のマルチイオン源による多種多様なイオンの加速を維持しつつ、大強度の負重水素イオンを効率よく加速するための研究を行っている。大強度負重水素イオン加速におけるビーム損失の大きな原因である空間電荷効果は、エネルギーが低くビーム電流が大きい、低エネルギービーム輸送時に強くはたらくため、まずは負イオン源からサイクロトロン加速器までのビームの振る舞いを理解し、入射効率の改善を進める必要がある。本研究では、空間電荷効果を考慮した軌道計算が可能である OPAL を用いて、CYRIC の入射系に おける軌道計算を行い、実際の CYRIC での入射テストと比較し、今後の課題と CYRIC の入射系の改善策を検討した。本講演では、これらの結果について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP016

FFA加速器にける任意パルス長ビーム取り出し
Beam extraction from KURNS FFA accelerator with an arbitrary pulse length
○上杉 智教,石 禎浩(京大複合研)
○Tomonori Uesugi, Yoshihiro Ishi (KURNS)
 
京大熊取FFAG加速器にて、最高エネルギー軌道での断熱圧縮を用いて任意パルス長でのビーム取り出しを行った。
 
13:00-15:00 
WEP007
p.521
溶接ステンレス板を使った大口径ピローシールの開発(2)
Development of a large-diameter pillow-seal using welded stainless-steel plates (2)

○倉崎 るり,山野井 豊,渡邉 丈晃(KEK),中村 哲朗(株式会社ミラプロ)
○Ruri Kurasaki, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (KEK), Tetsuro Nakamura (MIRAPRO CO., LTD.)
 
これまでのピローシールのダイヤフラムは継ぎ目のない一体物のステンレス板から製作されてきた。そのため現状としては、ピローシールの大きさ(口径)は入手できるステンレス板の大きさで制限されている。そこで本 研究では、より大口径のピローシールを作ることを目的としている。前回の発表で、溶接で接合したステンレス板で作ったダイヤフラムを口径110mmのピローシールへ組み込んで基礎的な性能評価を実施し、実機に適用可能であることが示された。そこで、口径1200mmの大口径ピローシールの実機を製作した。今回の発表では、溶接型ダイヤフラムを使用した口径1200mmのピローシールのHeリーク量などの測定結果について報告を行う。
 
13:00-15:00 
WEP008

Zr、ZrPdコーティング膜の排気性能の評価
Pumping properties for Zr, ZrPd coating films
○金 秀光,内山 隆司,谷本 育律,本田 融(高エネルギー加速器研究機構)
○Xiuguang Jin, Takashi Uchiyama, Yasunori Tanimoto, Tohru Honda (High Energy Accelerator Research Organization)
 
非蒸発ゲッター(NEG)コーティングはNEG材を真空チェンバ―の内壁に成膜することで、従来のガス源である内壁をポンプに変える技術である。NEG材にはCERNが開発したTiZrV合金がよく使われているが、その抵抗率は200 micro ohm cm(銅は1.6 micro ohm cm)と大きく、発熱やビーム不安定をもたらす原因でもある。最近、Zr純金属も低温で再活性化できるという報告がある。Zrの抵抗率が40 micro ohm cmと小さいため、NEG膜の伝導率の改善が期待できる。また、Pdも水素の排気速度が速く、抵抗率が10.9 micro ohm cmと小さいため、抵抗率を下げる候補材料である。本研究では、高い排気性能かつ低い抵抗率のNEG材の開発を目指し、Zr、ZrPd膜を作製し、その排気性能を評価した。  成膜は銅製ダクト(内径25 mmで長さ450 mm)の内面に、Magnetron Sputtering装置を用いて行った。Zr、Zr0.7Pd0.3、Zr0.5Pd0.5膜を作製し、異なる温度で再活性化し、その排気性能を調べた。比較のため、TiZrV膜の作製と評価も行った。同じ活性化条件において、Zr膜はTiZrV膜より半分以下のH2吸着確率を示す。この結果は、Zr膜の排気性能がTiZrV膜と同程度である前の報告と異なる。また、残念ながらPdの添加によりH2の吸着確率が徐徐に低下した。本発表では、これらの結果に関して考察して報告する。
 
13:00-15:00 
WEP009
p.526
DCマグネット電源用組み込み制御システムのソフトウェア開発
Software development for integrated control system of DC magnet power supply

○王 迪,榎本 嘉範,佐藤 政則(高エネルギー加速器研究機構)
○Di Wang, Yoshinori Enomoto, Masanori Satoh (KEK)
 
To enhance the system reliability and maintainability, an integrated DC magnet power supply control board is designed to effectively consolidate several control functions into a unified whole. A Raspberry Pi Compute Module, a STM32 micron controller, an Intel CPLD as well as other functional ICs, such as energy measurement IC, ADCs and DACs, are embedded into a single board. The software implementation handles the control logic and communications among these ICs. An EPICS IOC runs inside the Raspberry Pi deals with the EPICS communication towards our main control network while the micro controller aggregates hardware status information from ICs and reports them to the IOC. The CPLD is mainly used for the interlock signal processing. The communication protocol design between those parts and programming practice experiences are introduced in this work.
 
13:00-15:00 
WEP010
p.529
J-PARC RCS H0コリメータにおけるステッピングモータのノイズ対策
Reducing the effect of noise generated from stepper motor for H0 collimator in J-PARC RCS

○藤山 浩樹(三菱電機システムサービス(株)),髙橋 博樹,岡部 晃大(日本原子力研究開発機構),伊藤 雄一((株)トータル・サポート・システム),畠山 衆一郎(日本原子力研究開発機構),鈴木 隆洋,大津 聡,山川 龍人(三菱電機システムサービス(株))
○Hiroki Fujiyama (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd), Hiroki Takahashi, Kota Okabe (JAEA), Yuichi Ito (TOSS), Shuichiro Hatakeyama (JAEA), Takahiro Suzuki, Satoru Otsu, Ryuto Yamakawa (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd)
 
J-PARC RCSのコリメータやLINAC及びRCSのプロファイルモニタ(ワイヤスキャナモニタ)の駆動にはステッピングモータが使用されている。これら駆動部のハードウェアはJ-PARC稼働初期から使用しているものが多く、経年劣化対策が必要となっている。そこで、2017年頃より駆動系のステッピングモータ並びに制御系の更新を開始した。しかしながら、RCS H0コリメータにおいて、既存のステッピングモータから現在製造されているステッピングモータへ更新したところ、ステッピングモータから発生するノイズにより制御系が正常に動作しないことが明らかとなった。これは、ステッピングモータ更新後のノイズにより、制御系がリミットスイッチの信号を正常に受信できなくなったため、駆動部が操作不可となったものである。そこで最初に、ステッピングモータの動力系とリミットスイッチの信号系の配線を分離する対策を実施した。これにより、ノイズを1/10に低減でき、正常な操作の確保に成功した。さらに、安定した動作を確保するために、より効果的なノイズ低減策について検討を進めている。本件ではRCS H0コリメータ駆動部におけるノイズ対策とその効果を示すとともに、さらなるノイズ対策の検討状況の報告を行う。
 
13:00-15:00 
WEP011
p.532
RCNPイオン源群のEPICSによる運用と大強度化
Developments of intense ion sources with EPICS control at RCNP

○依田 哲彦,森田 泰之,福田 光宏,神田 浩樹(阪大RCNP)
○Tetsuhiko Yorita, Yasuyuki Morita, Mitsuhiro Fukuda, Hiroki Kanda (RCNP, Osaka Univ.)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では2019年から2021年にかけて、AVF サイクロトロンの改造を中心としたサイクロトロン施設の更新が実施された。このAVF サイクロトロンの更新では、加速電極をシングルディーからツーディーに変更する改造、トリムコイルの新規入れ替え、軸入射ラインの新規製作、真空度向上を目指した真空箱改造と排気システムの刷新などが行われた。イオン源室においても、既存の機器にNANOGANが追加されるなど、イオン源群の更新が行われた。また、これらのイオン源やビーム輸送ライン周辺の電源等の機器類は、かつて半数以上がスタンドアロンで手動制御されるものであったところ、今回の更新に伴い、遠隔操作可能な機器への入れ替えが実施され、EPICSによる運用に完全に移行された。この結果、Archiver Appliance との組み合わせにより、過去の運転データへのアクセスが飛躍的に容易になり、ビームの強度や輝度といったビームクオリティの向上が大きく進むことが期待されている。また、ガウス過程回帰を利用した機械学習による運転の最適化の仕組みの構築も順次進められ、一部のイオン源については半自動調整が実現した。
 
13:00-15:00 
WEP012
p.535
SACLA-BL1加速器 (SCSS+) およびニュースバル新入射器のスクリーンモニタへのGigEカメラ制御システムの適用
Application of GigE vision camera control system for screen monitors of SACLA-BL1 (SCSS+) and NewSUBARU injector linac

○清道 明男,出羽 英紀,松原 伸一,柳田 謙一(高輝度光科学研究センター),福井 達,丸山 俊之(理研),石井 健一,住友 博史(スプリングエイトサービス)
○Akio Kiyomichi, Hideki Dewa, Shinichi Matsubara, Kenichi Yanagida (JASRI), Toru Fukui, Toshiyuki Maruyama (RIKEN), Kenichi Ishii, Hiroshi Sumitomo (SES)
 
SPring-8ではSACLA LinacをSPring-8 Storage Ringの入射器とするアップグレードにおいて、ビーム輸送系(XSBT)のスクリーンモニタ用カメラにPoE給電対応のGigE Vision規格を採用しオープンソースライブラリAravisを使用したカメラ制御ソフトウェアを開発・導入した[1]。一方、SACLA/SCSS+のスクリーンモニタ用カメラはCamera Link規格で伝送距離が短いために延長器や切替器を組み合わせた構成であるが、複雑なシステムのためトラブル時の原因特定が手間取るといった問題を抱え安定運用に支障をきたしていた。そこでXSBTで開発したGigEカメラ制御システムへ移行することとした。またNewSUBARU新入射器のスクリーンモニタ用カメラにもGigEカメラを導入した。本発表ではXSBTへのGigEカメラ制御システム導入後の進展として、DBを活用した画像収集システムmdaq_imgの開発、Qtを利用したGUI開発、新規採用したAVALDATA製PoE対応Ethernetカード向けの給電制御ボード作成などの開発と、SCSS+で22台およびNewSUBARU新入射器で8台のGigEカメラ導入とスクリーンモニタ制御について報告する。それぞれの加速器での運用状況やトラブル事例・対策、さらには仙台に建設中の次世代放射光施設でのGigEカメラ制御システム導入やSACLAで予定しているGigEカメラ移行および機械学習による自動調整でのカメラ高速切り替えに対応したアプリの改良についても報告したい。 [1] PASJ2020 FRPP24
 
13:00-15:00 
WEP013
p.540
レーザープラズマ加速場入射用極短パルス電子線型加速器制御システムの設計
Control system design of linac to inject ultrashort-pulsed electron beams into a laser plasma acceleration field

○増田 剛正,益田 伸一,熊谷 教孝,大竹 雄次(JASRI)
○Takemasa Masuda, Shinichi Masuda, Noritaka Kumagai, Yuji Otake (JASRI)
 
我々は、横方向ビームサイズが50μm (rms)程度でバンチ長が10fs(rms)以下の極短パルス電子ビームを生成し、後段のレーザープラズマ加速場に入射するための線型加速器の開発を進めている。レーザープラズマ加速はフェムト秒領域の極限現象であり、未だその詳細な物理は確立していない。本加速器開発の主な目的は、生成した電子ビームを用いてレーザープラズマ加速場の位相空間をスキャンすることにより、その特性を明らかにすることである。ビームエネルギーや位置、RF位相などの関連する多大なデータから真の物理を見出すためには、それらの解析に機械学習を応用することが最良の方法であると考える。そのため線型加速器の制御システムは、最大30ppsでの加速器の運転に同期して関心のある全てのデータを収集し、収集したデータを用いてその場で機械学習による解析を行えることが求められる。豊富な数学ライブラリおよび機械学習ライブラリが揃っていること、スクリプト言語による迅速な開発が可能であることから、ソフトウェア開発はPythonを用いて進める。そして上記の要求を満たすための最適解として、制御フレームワークとしてはEPICSを、ハードウェアプラットフォームとしてはEtherCATを採用する。本発表では、開発中の線型加速器の制御システムの詳細な設計について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP014
p.545
バルクMgB2を用いた超伝導アンジュレータ試験機の開発
Development of prototype bulk SC undulaor using bulk MgB2

○紀井 俊輝(京大),富田 優,赤坂 友幸(鉄道総研)
○Toshiteru Kii (Kyoto Univ.), Masaru Tomita, Tomoyuki Akasaka (RTRI)
 
京都大学では、複数のバルク超伝導体を周期的に配置し、超伝導転移後に磁場変化を与え超伝導体内部に遮蔽電流を誘導することで、ビーム軌道上に周期交替磁場を生成するバルク超伝導体アンジュレータの開発を進めている。 これまで磁場強度を優先し、実用臨界電流密度の高い希土類銅酸化物超伝導体(REBCO)を用いてきたが、REBCOには超伝導体の製法上、結晶成長過程で比較的大きな個体間の特性のばらつきが生じてしまうという欠点がある。そこで、超伝導弱結合をもたず結晶成長が不要な二ホウ化マグネシウム(MgB2)に着目し調査・検討を進めた。 今回、アンジュレータ試験機でバルクMgB2超伝導体10片を用い周期10mm,磁極間隔4mmで5周期のアレイを構築し周期磁場生成を行った。REBCOと比較して磁場強度は弱いもののピーク磁場強度のばらつきが小さくなる傾向が観察された。発表では、アンジュレータ試験機の詳細およびREBCOとMgB2を用いた場合のピーク磁場強度の比較について報告を行う。
 
13:00-15:00 
WEP015
p.548
KEKB入射器陽電子源における広帯域ビームモニターの特性解析
Characteristic analysis of wideband beam monitor at the positron source of the KEKB injector linac

○諏訪田 剛(KEK加速器)
○Tsuyoshi Suwada (KEK Acc. Lab.)
 
KEK電子陽電子入射器では、SKEKBリングへの陽電子増強を目指し、2020年夏期保守にe+捕獲部の改造を行なった. 本改造では、e+集束用フラックスコンセントレータの放電対策、及びe+捕獲部の4箇所に偏向電磁石と広帯域モニターが新たに設置された. e+捕獲部は、上流のe+標的により放射線環境が悪いこと、ソレノイド電磁石列により設置空間の余裕が厳しいこと、さらにe+標的内でほぼ等量の電子と陽電子が同時に生成されるので広帯域に分解しないと分離検出が難しいという問題があり、これまで診断装置は設置されていなかった. 今回開発した広帯域モニターは、e+捕獲部内におけるe-e+分離検出を可能とする. モニターは、信号検出全系の広帯域化とさらにフィードスルー電極(SMA)に対する高精度な校正が要求される.信号検出全系を構成する同軸ケーブルを含むrf部品の広帯域にはネットワークアナライザー(VNA)を用いた周波数領域における損失と位相補正は欠かせない.他方、電極のゲイン補正は、単純なコネクター接続ができないので簡単ではない.フィードスルー型電極ではVNA計測が困難である. そこで各電極に信号を外部から送信し対向又は隣接電極への誘起信号をVNAで計測した. この手法から各電極の損失、位相変化、さらには電極間の結合強度を実験的に計測することが可能になり、各電極のゲイン校正が可能となった. 本報告では、誘起信号を用いた新しい校正手法を紹介する.
 
13:00-15:00 
WEP017
p.553
BelleⅡECLにおけるビームバックグラウンドの研究
A study of beam background on BelleII ECL

○熱田 真大,リップタック ザカリー,栗木 雅夫(広島大学)
○Masahiro Atsuta, Zachary Liptak, Masao Kuriki (Hiroshima univ.)
 
茨城県つくば市のSuperKEKB加速器では2019年から物理データを取得しています。約10年間の寿命でルミノシティ 6 x 10^35 電子陽電子衝突・cm^2 s^-1の目標を目指します。衝突を増せば増すほど、ビーム性バックグラウンドが増大し、加速器の運転と物理解析の邪魔となります。そのような迷惑なBGをなくすため、Belle IIの電子カロリメーター(ECL)で取得したデータを用いて加速器パラメータによるバックグラウンド事情を把握し、改良するためにシミュレーションと比較します。 具体的には、ECLの中のバックグラウンドイベントの空間分布もイベントレートを計算し、様々なビームパラメータの効果を把握したうえでビーム状況を改良します。尚、その結果を使用して現在の加速器や検出器のシミュレーションの精密さ・正しさを査定して将来のシミュレーションを改良することに努力します。
 
13:00-15:00 
WEP019
p.557
機械学習によるベータトロン振動波形のリアルタイム解析
Real-time analysis of betatron oscillation waveforms using machine learning at the NewSUBARU storage ring

○藤井 将,渡部 圭祐,橋本 智(兵庫県大 高度研)
○Hitoshi Fujii, Keisuke Watanabe, Satoshi Hashimoto (LASTI, Univ. pf Hyogo)
 
ニュースバル放射光施設では、ベータトロンチューンの蓄積電流や挿入光源ギャップ値への依存性、蓄積エネルギー加減速時の変動などに対応するため、ベータトロン振動波形を常に監視し、チューン値のリアルタイム補正を行うことで電子ビームの安定性を高めている。チューン値のリアルタイム補正を行うためにはノイズを含む波形から高速かつ正確にチューン値を評価する必要がある。これまでに開発した補正システムでは、多数の閾値・条件を組み合わせた複雑なアルゴリズムを使用してきた。しかし、このプログラムでは多様な運転モードには対応出来ず、また条件分岐が多くなり、保守や更新が困難であった。そこで我々は様々な機械学習手法、例えば、局所外れ値因子法や、ロジスティック回帰、ディープラーニング等を用いたチューン波形解析手法の適用を検討してきた。これまでにチューン波形を高精度かつリアルタイムに解析できるPythonコードを開発し、模擬的に正常動作することを確認した。今後はチューン補正システムへの実装を進めて、実際のビーム運転で動作を検証する予定である。本発表では、それぞれの機械学習手法の具体的な適用結果について紹介する。
 
13:00-15:00 
WEP020
p.560
J-PARC Main Ring の入射ビームのための OTRと蛍光を用いたワイドダイナミックレンジプロファイルモニターの開発 (3)
Development of a wide dynamic-range beam profile monitor using OTR and fluorescence for injected beams in J-PARC Main Ring (3)

○佐々木 知依,橋本 義徳,佐藤 洋一,外山 毅,三橋 利行,手島 昌己,照井 真司,中村 剛,魚田 雅彦(KEK),酒井 浩志(三菱電機システムサービス)
○Tomoi Sasaki, Yoshinori Hashimoto, Yoiti Sato, Takeshi Toyama, Toshiyuki Mitsuhashi, Masaki Tejima, Shinji Terui, Takeshi Nakamura, Masahiko Uota (KEK), Hiroshi Sakai (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.)
 
J-PARCメインリング (MR) の入射ビーム輸送ライン(3-50BT)で、OTRおよび蛍光スクリーンを使用した、6桁程度の広いダイナミックレンジを持つ2次元ビームプロファイルモニターが運用されている。さらに同様の1台をMR用として導入できれば、3-50BT用のモニターと併せて使用することにより、大強度陽子ビームの入射時のコアとハローを異なる位相で診断することができる。特にビームコリメータによるビームカット効果の測定と、入射後の周回ビーム20ターン程度のビームハローを含む2次元ビームプロファイル測定がビームダイナミクスからの要求である。 現在テストベンチでの特性試験が行われており、特に真空内光学系での高周波共振に起因する縦方向カップリングインピーダンスが、ビーム安定性への影響から問題になっている。測定結果では、1 GHz までの領域でZ/n の値で最大3.7 Ω(150MHz)をはじめ1 Ωクラスのピークが複数あった。その対策としてSiC またはフェライトを用いてこれら高周波の吸収を検討している。シミュレーションでは、0.8Ω程度以下までインピーダンスを低減できる結果を得ており、SiC テストブロックによるインピーダンス低減の試験を行っている。本報告ではそれらの現状を紹介する。 *本研究は、科研費 JP16H06288により行われている。
 
13:00-15:00 
WEP021
p.565
電気光学サンプリングを用いたシングルショット電子ビーム計測
Single-shot measurement of electron beam by electro-optic sampling

○菅 晃一(阪大産研),太田 雅人(阪大レーザー研),駒田 蒼一朗(三重大電気電子工),王 有為(阪大レーザー研・関大システム理工),C. Agulto Verdad,K. Mag-usara Valynn,有川 安信(阪大レーザー研),松井 龍之介(三重大電気電子工),坂和 洋一,中嶋 誠(阪大レーザー研)
○Koichi Kan (SANKEN(ISIR), Osaka University), Masato Ota (ILE, Osaka University), Soichiro Komada (Department of Electrical and Electronic Engineering, Mie University), Youwei Wang (ILE, Osaka University / Faculty of Engineering Science, Kansai University), Verdad C. Agulto, Valynn K. Mag-usara, Yasunobu Arikawa (ILE, Osaka University), Tatsunosuke Matsui (Department of Electrical and Electronic Engineering, Mie University), Youichi Sakawa, Makoto Nakajima (ILE, Osaka University)
 
阪大産研では、レーザーフォトカソードRF電子銃ライナックを利用し、高時間分解パルスラジオリシスによる反応解析および電子ビーム発生・計測の研究を行っている。このようなピコ秒・フェムト秒における電子の時間プロファイルの計測手法は、電子ビームを利用した時間分解計測のみならず、慣性核融合分野においても超高速プラズマダイナミクスの温度・密度情報を理解する観点から、必要となっている。 本発表では、電気光学サンプリングを用いた35 MeVの電子ビームのシングルショット時空間分布計測について報告する。エシェロンミラーもしくは回折格子によりフェムト秒レーザーの時空間分布を調整し、電子ビームが電気光学結晶へ作用したポッケルス効果をCCDカメラにより測定することによりシングルショット計測が可能となった。電子ビームの周りのテラヘルツ電場の時空間分布(電子ビームの進行方向の一軸とその垂直方向の空間の一軸)計測について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP022
p.569
LIPAc Phase-B+コミッショニングでのビーム位置位相モニタの現状とビーム試験
Beam test and status of beam position and phase monitor in the LIPAc Phase-B+ commissioning

○廣澤 航輝,権 セロム(QST/六ケ所研究所),ポダデラ イバン(CIEMAT),カリン ヤン(F4E),モラレス ベガ フアン カルロス(Universidad de Granada)
○Kouki Hirosawa, Saerom Kwon (QST/Rokkasho), Ivan Podadera (CIEMAT), Yann Carin (F4E), Juan Carlos Morales Vega (Universidad de Granada)
 
LIPAc (Linear IFMIF Prototype Accelerator) is a hadron LINAC developed and operated within a EU-JA collaboration, aiming at establishing and validating technologies to accelerate a 9 MeV deuteron beam at CW, and high beam current (125 mA). LIPAc is presently in the commissioning phase namely B+, where the beam line is fully constructed without the superconducting LINAC replaced by an intermediate transport line. Since measuring beam-profiles by using interceptive beam diagnostics will become more difficult after increasing the duty cycle, it is important to validate specifications and to establish measurement methods by using non-interceptive diagnostics from low duty cycle by crosschecking with the interceptive ones. Also, changes in beam properties caused by difference of operation parameters can be traced by comparing BPM data. The 5-MeV operation of Phase-B+ is very interesting configuration to study bunch lengthening by self-field and compression by bunchers by using BPM. This report presents the progress of the BPM with the results of the low duty cycle stage of Phase-B+ in 2021, and about the studies related to RF noise floor of the BPM signals.
 
13:00-15:00 
WEP023
p.574
FELOのマスター方程式
Master equations on FELOs

○尾崎 俊幸(高エネ研 加速器)
○Toshiyuki Ozaki (KEK)
 
通常の量子レーザーでは、マスター方程式によって、その特性が議論されている。FELOでも、基本式、つまり、3元連立1次微分方程式から、文献(1)のようにマスター方程式が導かれる。この方程式を解くにあたり、彼らは、ゲインが最大になる動作点では、その一次微分がゼロであるから、その項を無視して議論している。しかしながら、本来、ゲイン関数は複素数であり、虚部が残る。本論文では、マスター方程式に対するグリーン関数を導出し、一般化された条件での解の特徴を数値計算で調べた。 さらに、XFELOでは、ミラーとして結晶を用いるので、文献(2)のように、バンドパス特性を持つ項をマスター方程式に加えることになる。この式は、調和振動子を持つ時間依存シュレディンガー方程式と同型であり、レーザー理論で良く知られた方法で解析解を求めることができる。この解を数値計算で議論する。 文献 (1) G. Shvets and J.S. Wurtele, “Frequency shifting in free-electron lasers”, Phys. Plasmas 1(1), January 1994, pp.157-166. (2) R. R. Lindberg and K. -J. Kim, “Mode growth competition in the x-ray free electron laser oscillator start-up from noise”, Proceedings of FEL08, Korea, pp. 32-35.
 
13:00-15:00 
WEP024
p.579
PF-ARにおける5 GeVトップアップ運転実現の検討 (2)
Realization of top-up operation of PF-AR with 5 GeV (2)

○東 直,満田 史織,長橋 進也,原田 健太郎,野上 隆史,内山 隆司,中村 典雄,本田 融,佐藤 政則,岡安 雄一,榎本 嘉範(高エネ研)
○Nao Higashi, Chikaori Mitsuda, Shinya Nagahashi, Kentaro Harada, Takashi Nogami, Takashi Uchiyama, Norio Nakamura, Tohru Honda, Masanori Satoh, Yuichi Okayasu, Yoshinori Enomoto (KEK)
 
高エネルギー加速器研究機構 (KEK)にはPhoton Factory (PF)とPhoton Factory Advanced Ring (PF-AR)の2つの放射光加速器があり, 周回エネルギーはそれぞれ2.5 GeVと6.5 GeVとなっている. 2017年にLinacからPF-ARへ直接電子を供給する輸送路 (BT: beam transport line)の建設が行われ, 以後PFとPF-ARの同時top-up運転が行われている. また, 2019年から運転経費減少の中で運転時間を確保するため, PF-ARの周回エネルギーを6.5 GeVから5 GeVへ下げた運転が始まっている. しかしPFとPF-ARのBTには互いに交差する点があり, そこにはどちらの電子ビームにも作用する共通DC偏向電磁石が存在するため, PF-ARのエネルギーを5 GeVに下げた場合, 両方の設計軌道を同時に成立させることは不可能となる. 2020年度の年会では, この問題を解決するための案をいくつか提示した. これをもとに昨年度 (2021年度), 提案の1つが予算化され, 今年度 (2022年度)の夏にphase1の改造工事が実施される. 本発表では今夏実現されるphase1の詳細と, 近い将来に適用可能性のあるphase2案について説明する.
 
13:00-15:00 
WEP025

京都大学中赤外自由電子レーザの更なる引き出し効率向上に向けた検討
Study on further increase of extraction efficiency of Kyoto University free electron laser
○全 炳俊,大垣 英明(京大エネ研),羽島 良一(量研)
○Heishun Zen, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.), Ryoichi Hajima (QST)
 
京都大学中赤外自由電子レーザではこれまでに動的位相変調および既設熱陰極高周波電子銃の光陰極運転により9.4%とという高い引き出し効率を達成している。現在、光陰極運転専用高周波電子銃の導入を進めており、これによってバンチあたり電荷量を現在の約200pCから1nC程度まで増大させることを計画している。このアップグレードによりFELゲインが5倍程度増大し、引き出し効率が約20%程度まで向上することが期待されている。FELゲイン(g)と光共振器損失(α)の比(g/α)が大きくなると自由電子レーザの引き出し効率が大きくなることが数値計算により明らかにされており、新電子銃導入により期待される20%よりも更に引き出し効率を向上させるには更にFELゲインを向上させるかもしくは光共振器損失を低減させれば良い。本研究ではアンジュレータの狭ギャップ化、光共振器設計の最適化、光取り出し方法の変更の3つによる大幅な引き出し効率向上について検討状況を報告する。本研究はJSPS科研費JP22H03871および文部科学省の光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP、JPMXS0118070271)の助成を受けたものです。
 
13:00-15:00 
WEP026
p.583
日大LEBRA-PXR線源による40keV単色X線の生成とその特性
Characteristics of monochromatic 40-keV X-rays produced by the LEBRA-PXR source at Nihon University

○早川 恭史,早川 建,野上 杏子,境 武志,高橋 由美子,田中 俊成(日大LEBRA),胡桃 聡,住友 洋介,吉川 将洋(日大理工)
○Yasushi Hayakawa, Ken Hayakawa, Kyoko Nogami, Takeshi Sakai, Yumiko Takahashi, Toshinari Tanaka (LEBRA, NU), Satoshi Kurumi, Yoske Sumitomo, Masahiro Yoshikawa (CST, NU)
 
日大電子線利用研究施設(LEBRA)では、シリコン単結晶に電子リニアックからの100MeV電子ビームを照射することで発生するパラメトリックX線放射(PXR)を放射原理とした、エネルギー可変単色X線源を運用している。これまではPXR放射源としてSi(111)またはSi(220)結晶を用いることで、4keV〜34keVの範囲のX線ビームを利用研究に供給し、回折強調イメージングなどの先端的な応用を実現してきた。最近、ユーザー利用者から重元素を含む試料の非破壊分析を可能とする高エネルギー単色X線ビームの要求があったことから、より高次の結晶面の利用した高エネルギーX線の生成を検討した。理論計算の結果をふまえると、40keV以上のPXRの発生にはSi(400)面の使用が有利と考えられたため、無擾乱研磨を施したSi(400)結晶を用意し、約7年間使用していたSi(220)結晶と交換した。得られるX線の光子数は低エネルギーの場合と比べて1桁以上少なくなるが、47keVまでのX線の発生が期待できる。Si(400)を放射源とする試験運転では、実際に40keVのPXRビームの発生を確認することができた。得られた高エネルギーPXRの特性について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP027
p.588
重粒子線小型シンクロトロン用超伝導電磁石を模擬したショートモデルコイルによるパターン励磁試験
Pattern excitation test results using a short model coil of a superconducting magnet for a compact heavy-ion synchrotron

○高山 茂貴,天野 沙紀,折笠 朝文,中西 康介,平田 寛(東芝エネルギーシステムズ株式会社),藤本 哲也(加速器エンジニアリング株式会社),水島 康太,楊 叶,松葉 俊哉,野田 悦夫,浦田 昌身,岩田 佳之,白井 敏之(量子科学技術研究開発機構)
○Shigeki Takayama, Saki Amano, Tomofumi Orikasa, Kosuke Nakanishi, Yutaka Hirata (Toshiba Energy Systems & Solutions Corporation), Tetsuya Fujimoto (Accelerator Engineering Corporation), Kota Mizushima, Ye Yang, Shunya Matsuba, Etsuo Noda, Masami Urata, Yoshiyuki Iwata, Toshiyuki Shirai (National Institutes for Quantum Science and Technology)
 
重粒子線がん治療装置の普及拡大を目指し、量子メス研究プロジェクトの一環で超伝導技術による加速器主リング(シンクロトロン)の小型化を検討している。現状のシンクロトロンは直径約20mと大型であるが、超伝導電磁石を適用することで7m四方と設置面積を1/10程度まで小型化可能となっている。一方で通常のビーム輸送系用電磁石と比べ、シンクロトロン用電磁石はより高い磁場均一度と高速な運転が求められる。超伝導電磁石を高速に励消磁した場合、大きな交流損失(発熱)が発生するため、その冷却が課題となっている。開発中の超伝導電磁石は、GM冷凍機による伝導冷却方式を採用しており、運転電流265 Aで3.5 Tの二極磁場を発生することが可能である。さらに、ランプ速度0.64 T/sでの高速励磁が可能な仕様となっている。この様な高速励磁による発熱対策としてフィラメント径が細く、臨界電流値の高いNbTi線材を適用すると共に、楕円状のコイル断面形状を採用した。本対策の効果を検証することを目的にショートモデルコイルを試作し実機を想定したパターン励磁を実施することで冷却成立性を評価したので、その試験結果について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP028

ニオブスズ超伝導加速空洞の伝導冷却に向けた要素試験
Component tests towards conduction cooling of Nb3Sn superconducting RF cavity
○山田 智宏,梅森 健成,阪井 寛志,井藤 隼人,加古 永治(高エネ研)
○Tomohiro Yamada, Kensei Umemori, Hiroshi Sakai, Hayato Ito, Eiiji Kako (KEK)
 
超伝導加速空洞は常伝導空洞に比べ表面抵抗を小さく抑えることができるため、より高い電場での連続的な運転が可能となり、現在世界中の大型加速器で広く用いられている。空洞材料としてはニオブを使用したものがほとんどで、液体ヘリウム温度4Kやさらに表面抵抗を下げて発熱を減らすため2Kまで減圧して冷却することも多い。一方で、浸漬冷却に使用する液体ヘリウムの製造やクライオモジュールの高圧ガス保安法対応など、利用までのハードルが高く、社会的に広く普及しているとは言い難い。 現在KEKでは、上記の問題を一掃する方法としてニオブに代わりニオブスズを用いた空洞に関する研究を進めている。ニオブスズは、ニオブの2Kに匹敵する高いQ値を4K程度で実現できるため、液体ヘリウムを用いず市販の小型4K冷凍機での冷却が可能になり、高圧ガス対応も不要になる。また、クライオモジュールの構造が簡潔になることで小型化を実現し、さらにTurn keyでの運転が可能となる。 一方で、これまで浸漬冷却によって空洞表面が均一に冷却されていたのに対し、小型冷凍機の場合は熱伝導を用いて冷却する必要があり効率的な冷却手法を新たに開発する必要がある。本発表では、今後のニオブスズ超伝導加速空洞の伝導冷却試験に向けた1)温度マッピングに用いる安価な温度センサーの開発、2)ニオブスズ空洞母材のニオブの熱伝導率測定について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP029
p.591
加速器分野への機械学習の応用を通じた人材育成の試み
Human resource development through application of machine learning to particle accelerators

大山 博史,岩野 成,小池 隆太,原田 直幸,丸山 太洋(広島商船高専),笠井 聖二,澤田 康輔(呉工業高専),○加藤 政博,神尾 彬,浅井 佑哉(広島大),広田 克也,帯名 崇,本田 融(KEK)
Hiroshi Ohyama, Shigeru Iwano, Ryuta Koike, Naoyuki Harada, Taiyou Maruyama (Hiroshima-cmt), Seiji Kasai, Kousuke Sawada (Kure-nct), ○Masahiro Katoh, Akira Kano, Yuya Asai (Hiroshima U.), Katsuya Hirota, Takashi Obina, Tohru Honda (KEK)
 
広島大学、呉工業高専、広島商船高専では、KEK加速器総合育成事業の支援を得て、最新デジタル技術の加速器分野への応用とそれを通じた人材育成に取り組んでいる。近年、社会の様々な領域で利用が急速に拡大しているAI・機械学習に関心を持つ学生は多いことから、その加速器分野への応用を通じて関連する知識を身に着ける機会を創出し、合わせて加速器分野への興味を高めることを目指している。2021年度には、KEK Photon Factoryの運転データベースにアクセスできる環境を整えた。2022年度は、加速器運転中常時計測されているビーム位置検出器のデータをもとに、機械学習の手法でビームの異常や検出系の故障の検出を行うことを目指して研究を進めている。その最新の状況を報告する。
 
13:00-15:00 
WEP030
p.594
超伝導加速空洞の表面磁場効果
The surface magnetic field effects on superconducting accelerating cavities

○江木 昌史(高エネ研)
○Masato Egi (KEK)
 
超伝導加速空洞のBCS抵抗と呼ばれる理論式はジュール損失の性質を良く表している。一方で空洞内の表皮電流により作られる表面磁場もジュール損失に大きな影響を与えると考えられている。BCS抵抗と表面磁場の関係について考察する。
 
13:00-15:00 
WEP031
p.598
新規ニオブ材を使用した超伝導空洞の性能測定
Performance measurement of superconducting cavities using new niobium material

○荒木 隼人,阿部 慶子,道前 武,井藤 隼人,佐伯 学行,梅森 健成,渡邉 勇一,山中 将(KEK)
○Hayato Araki, Keiko Abe, Takeshi Dohmae, Hayato Ito, Saeki Takayuki, Kensei Umemori, Yuichi Watanabe, Masashi Yamanaka (KEK)
 
KEKの空洞製造技術開発施設(CFF)では,超伝導空洞の低コスト化及び高性能化に取り組んでいる.2020年度,コスト削減が期待できる2種類の材料を使用した3セル空洞を2台ずつ,合計4台の空洞を製造した.2021年度からはこれらの空洞の性能測定を行っており,その結果を報告する.
 
13:00-15:00 
WEP032

超伝導空洞のクリーンルーム作業で用いられる自動クリーニングシステムの開発
Development of automatic cleaning system used in clean room work of superconducting cavity
○山本 康史,平木 雅彦,梅森 健成,阪井 寛志,道前 武(高エネルギー加速器研究機構)
○Yasuchika Yamamoto, Masahiko Hiraki, Kensei Umemori, Hiroshi Sakai, Takeshi Dohmae (KEK)
 
高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、2020年度に日仏協力の下で超伝導空洞のクリーンルーム作業で必須の技術であるイオンガンによるクリーニングの自動(無人)化を目的とした自動クリーニングシステムを開発した。通常、クリーニング作業は、作業者が片手にイオンガンを、もう片手でパーティクルカウンターを持ち、ボルト穴などからのダストが無くなるまでクリーニングし続ける。対象となるダストの径はこれまでは0.3µmであったが、フィールドエミッション抑制のさらなる向上のため、今回は0.1µmまでモニターすることにした。この作業は時に長時間に及ぶことがあるため、自動化を行うことで、作業者の負担を軽くすると同時に、ダスト源である作業者のアクセスを必要最小限に抑えることができる。本講演では、この自動クリーニングシステムの開発状況について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP033

Medium Grainニオブを用いた超伝導加速空洞の製造と評価
Fabrication of 1.3GHz SRF elliptical cavities using medium grain niobium discs directly sliced from forged ingot
○道前 武,阿部 慶子,井上 均,Ashish Kumar,道園 真一郎,佐伯 学行,梅森 健成,渡邉 勇一,山本 明,山中 将,吉田 孝一(KEK),Lannoy Nathan,Arnel Fajardo(ATI Specialty Alloys and Components),Myneni Ganapati(Jefferson Lab)
○Takeshi Dohmae, Keiko Abe, Hitoshi Inoue, Kumar Ashish, Shinichiro Michizono, Takayuki Saeki, Kensei Umemori, Yuichi Watanabe, Akira Yamamoto, Masashi Yamanaka, Kouichi Yoshida (KEK), Nathan Lannoy, Fajardo Arnel (ATI Specialty Alloys and Components), Ganapati Myneni (Jefferson Lab)
 
Medium grain (MG) niobium disc which is directly sliced from forged ingot is newly investigated for the SRF cavity material. An effective cost reduction can be achieved using MG niobium since rolling process which is necessary for typical niobium sheet can be skipped during MG niobium production. Grain size of MG niobium is much smaller than large grain (LG) niobium directly sliced from melted niobium ingot. Hence, the formability of MG niobium is much better than LG niobium. KEK had fabricated two 1.3 GHz single cell cavity using MG niobium. In this talk, characteristic of MG niobium during fabrication and RF test results will be reported.
 
13:00-15:00 
WEP034
p.601
1/4波長型超伝導空洞の内面電解研磨の実施報告(2)
Reports of electro-polishing implementation for quarter-wave resonators (2)

○仁井 啓介,井田 義明,上田 英貴,山口 隆宣(マルイ鍍金工業株式会社),株本 裕史,神谷 潤一郎,近藤 恭弘,田村 潤,原田 寛之,松井 泰,松田 誠(JAEA)
○Keisuke Nii, Yoshiaki Ida, Hideki Ueda, Takanori Yamaguchi (Marui Galvanizing Co., Ltd), Hiroshi Kabumoto, Junichiro Kamiya, Yasuhiro Kondo, Jun Tamura, Hiroyuki Harada, Yutaka Matsui, Makoto Matsuda (JAEA)
 
マルイ鍍金工業では、日本原子力研究開発機構(JAEA)と共同で東海タンデム加速器後段の超伝導ブースター用1/4波長型超伝導空洞(QWR)について再表面処理の検討を行っている。この空洞はニオブ-銅のクラッド板で製作されており、底部に大きな開口があるため、再度の電解研磨処理等が可能な構造になっている。再表面処理では、内面ニオブに電解研磨(EP)を施工して表面粗さを小さくし、高い加速電界(5MV/m以上)を発生できるようにすることを目標としている。2020年度には、マルイ鍍金工業がニオブ9セル空洞EPの経験で得た各種パラメータとJAEA所有の電極、治具等を組み合わせて、予備の空洞に対してEPを施工した。しかし、EP後のニオブ表面は光沢が増すものの表面粗さが良好な状態とはならず、加速電界もEP前よりは改善したが、目標値には達していなかった。2021年度には空洞のニオブ表面粗さと加速電界の改善を目指して、EPのパラメータ(電極面積、電圧、流量と揺動)を変えての実験を行い、設備、条件、表面粗さ等の評価を行った。また、今回はこれまでに観察してこなかった中心導体のドリフトチューブ部内面などについても広く観察を行ったので、そちらの結果も併せて報告する。
 
13:00-15:00 
WEP035
p.605
g-2/EDM 精密計測用ミューオン蓄積磁石内の軌道シミュレーション用 2D 磁場再構成
Two-dimensional magnetic field reconstruction for simulation of spiral injection in muon g-2/EDM precision measurements magnet

○阿部 充志(高エネ研),飯沼 裕美(茨城大),荻津 透,齊藤 直人,佐々木 憲一,三部 勉,中山 久義(高エネ研)
○Mitsushi Abe (KEK), Hiromi Iinuma (Ibaraki Univ.), Toru Ogitsu, Naohito Saito, Ken-ichi Sasaki, Tsutomu Mibe, Hisayoshi Nakayama (KEK)
 
ミューオンの磁気・電気モーメント高精度測定に用いる磁石は、ミューオンを周回・蓄積するシリンダー状の領域(断面3cm幅、10cm高で直径66.6cm)に、高磁場(3.0T)で超高均一磁場(磁場振幅±0.1ppm、均一度0.2ppm)を持つ。また、周辺磁場は螺旋入射を可能とする磁場分布である。このような磁場を発生する起磁力配置の設計手法は既に開発し、起磁力配置設計例と共に報告した(加速器学会, 北大, 2017、NIMA, Vol. 890, 2018)。今回、ミューオン軌道のシミュレーションにより、キッカー・ステアリング磁石等の配置・仕様を最適化するための2次元磁場再構成手法を開発し、入射軌道検討に適用している。3D非線形磁場を計算(18600点程度)し、2D磁場成分の分布を多数の円電流(560本程度)で再構成する。超伝導コイルが作る磁場の再構成には、コイル断面のガウス積分点に置いた円電流に磁場計算値の電流値を配分する。鉄yokeが作る磁場の再構成には、鉄yoke内面に等間隔配置した円電流の値を、入射領域・蓄積領域および検出器領域に配置した磁場評価点の磁場分布を再現するように決める。これらの円電流の組み合わせで周回方向平均磁場(2D成分磁場)を精度良く再現でき、入射軌道の把握に利用している。
 
13:00-15:00 
WEP036
p.610
次世代パワー半導体を用いた新キッカー電源用の低ジッタ回路の構築
Construction of low-jitter circuit for new kicker power supply using next-generation power semiconductor

○小田 航大,飯沼 裕美(茨城大学),高柳 智弘,小野 礼人,杉田 萌(J-PARC/JAEA),堀野 光喜,植野 智晶(NAT),森下 卓俊(J-PARC/JAEA),亀崎 広明,生駒 直弥,中田 恭輔,徳地 明(株式会社パルスパワー技術研究所)
○Kodai Oda, Hiromi Iinuma (Ibaraki University), Tomohiro Takayanagi, Ayato Ono, Moe Sugita (J-PARC/JAEA), Koki Horino, Tomoaki Ueno (NAT), Takatoshi Morishita (J-PARC/JAEA), Hiroaki Kamezaki, Naoya Ikoma, Kyosuke Nakata, Akira Tokuchi (PPJ)
 
J-PARCのキッカー電源は、取り出すビームのバンチ長に合わせ、フラットトップ幅が約1μsの矩形パルスを数十nsの短時間で瞬間的に出力する。現在、放電スイッチのサイラトロンの代替を目的に、次世代パワー半導体を用いた新キッカー電源の開発を進めている。パワー半導体のスイッチ動作のタイミングは、外部からのトリガ信号の入力で決まる。そのタイミングの時間軸方向に対するブレ(ジッタ)が大きいと、出力パルスの再現性が低下し、ビームロスの要因となる不安定なビーム軌道偏位を引き起こす。そのため、キッカー用半導体スイッチ電源には、±1.0ns以下の高再現性を実現する低ジッタ回路が求められる。ジッタの成分にはトリガ信号の揺らぎと半導体スイッチ動作のばらつきが含まれる。そこで、制御回路を構成する種々のデバイスに対する評価試験を実施し、最適なデバイスの選定、かつ、温度とノイズ対策を施した低ジッタ回路の試験機を製作した。発表では、制御回路を構成するアナログ回路とデジタル回路のデバイスに対し、環境とデバイスの温度、サンプリングクロックの周波数、パルスエッジのブレに対する評価試験の結果と、構築した低ジッタ回路の構成について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP038
p.615
KEK入射器棟のFC電源におけるノイズ低減について
Noise reduction of FC modulator in KEK linac

○夏井 拓也,松本 修二,設楽 哲夫,明本 光生,中島 啓光,川村 真人,榎本 嘉範(KEK)
○Takuya Natsui, Shuji Matsumoto, Tetsuo Shidara, Mitsuo Akemoto, Hiromitsu Nakajima, Masato Kawamura, Yoshinori Enomoto (KEK)
 
KEK入射器棟ではSuperKEKB Main Ring へ電子・陽電子ビームの入射を行っている.入射器では電子ビームをタングステンターゲットへ当て,変換された陽電子をFulx Concentrator (FC)により集束させて陽電子ビームとして加速を行う.このFCはパルス大電流を必要とするもので,電源であるFCモジュレータは非常に大きなノイズを発生させていた.ノイズとして観測されていたリーク電流の電気回路的な意味を理解し,パルス波形を改善するとともに,ノイズ電流が機器の外へ出ないような改善も行った.この結果,大幅なノイズ低減に成功したのでこれを報告する.
 
13:00-15:00 
WEP039
p.619
SuperKEKBビーム最終集束用超伝導4極電磁石の磁場時間変化測定
Time decay magnetic field measurement of SuperKEKB beam final focus superconducting quadrupole magnets

○有本 靖,大木 俊征,大内 徳人(高エネ研)
○Yasushi Arimoto, Toshiyuki Oki, Norihito Ohuchi (KEK)
 
KEKつくばキャンパスで稼働中のSuperKEKBは、ビーム衝突点の電子・陽電子ビームをBetay*=1mm、Betax*=60mm まで絞り込みビーム運転を行っている。ビームの絞り込みは超伝導4極電磁石8台で行われているが、超伝導4極電磁石を再励磁した場合に長時間にわたる4極磁場強度の変化が原因と考えられるビーム垂直方向チューンの変化が観測された。このチューンの変化の原因を探るために、実際にビーム衝突点に組み込まれている超伝導4極電磁石とほぼ同じ磁石パラメータを持つR&D機とプロトタイプ機を用いて磁場測定を行った。今回の発表では、超伝導4極電磁石の6時間定電流磁場測定結果と時間的な磁場変化を抑えるための対処方法について発表する。
 
13:00-15:00 
WEP040
p.624
加速器冷却水系で発見された異物の化学的評価
Chemical evaluation of foreign substance found in accelerator coolant systems.

○石田 正紀,野上 隆史,山本 将博 ,谷本 育律,本田 融,植木 竜一,武智 英明(高エネ研)
○Masaki Ishida, Takashi Nogami, Masahiro Yamamoto, Yasunori Tanimoto, Tohru Honda, Ryuichi Ueki, Hideaki Takechi (KEK)
 
加速器の冷却水系において、系内に存在する異物に起因したトラブルが度々起こっている。発見される異物の大部分は銅系、鉄系の化合物であり、特に銅系の化合物であることが多い。これらは配管等由来の腐食生成物と考えられ、含有化合物を詳細に分析したところ、発見場所ごとに化合物の種類や含有比率が異なることが分かった。腐食生成物と発見場所の関連を調査し、腐食の進行原因を明らかにできれば、冷却水系トラブルの解決や防止に役立つものと期待できる。今回は、KEKつくばキャンパスの加速器冷却水系を対象とし、発見場所ごとに異物を整理した上で、その化学的な評価結果について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP041

STFビームダンプ周辺の放射線防護について
Radiation protection around the beam dump of STF accelerator
○森川 祐,大山 隆弘,早野 仁司,山本 康史(KEK),岡田 昭和(株式会社ケーバック)
○Yu Morikawa, Takahiro Oyama, Hitoshi Hayano, Yasuchika Yamamoto (KEK), Terukazu Okada (K-VAC)
 
STF加速器ではより大電流でのビーム加速試験に向けて今冬には最大電子ビーム強度を9.675kWまで増強する。STFビームダンプ周辺ではビーム強度増強に向けて放射線防護の対策を進めた。ビームダンプの冷却水の放射化対策として、ビームダンプ専用の冷却水系を構築した。また加速器トンネル内空気の放射化低減の為、ビームダンプ遮蔽体にポリエチレン遮蔽体を追加する。これらSTFビームダンプ周辺の放射線防護対策について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP042
p.629
J-PARC 3GeVシンクロトロンにおける荷電変換フォイルの最近の使用状況
Recent usage status of charge-exchange stripper foil for 3GeV synchrotron of J-PARC

○仲野谷 孝充,吉本 政弘,サハ プラナブ(原子力機構 J-PARCセンター),竹田 修,佐伯 理生二,武藤 正義(株式会社NAT)
○Takamitsu Nakanoya, Masahiro Yoshimoto, Pranab Saha (JAEA J-PARC), Osamu Takeda, Riuji Saeki, Masayoshi Mutoh (NAT Corporation)
 
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS:Rapid Cycling Synchrotron)では、前段加速器であるリニアックから入射した400MeVのH-ビームを荷電変換フォイルによりH+ビームに変換して、3GeVまで加速させている。RCSで使用している荷電変換フォイルは、少量のホウ素を炭素棒に添加し、これを電極としてアーク蒸着法により作製したHBCフォイル(Hybrid Boron mixed Carbon stripper foil)である。2017年から原子力機構でフォイルの内製を開始し、2018年以降これを利用運転で使用している。これまでのところフォイルを起因とする大きな問題は生じていない。一方でこの間、RCSのビームパワーは500kWから830kWへと段階的に上昇してきた。これによりRCSの設計出力である1MWを達成するためのフォイルの課題が徐々に明らかになってきた。本発表では近年のJ-PARC利用運転でのフォイルの使用状況と課題ついて報告する。
 
13:00-15:00 
WEP043
p.634
J-PARCハドロン回転標的監視のための耐放射線変位センサーの開発
Development of radiation-resistant displacement sensor for monitoring rotating production target at J-PARC Hadron Facility

○武藤 史真,青木 和也,上利 恵三,秋山 裕信,家入 正治,倉崎 るり,小松 雄哉,里 嘉典,澤田 真也,白壁 義久,高橋 仁,田中 万博,豊田 晃久,広瀬 恵理奈,皆川 道文,森野 雄平,山野井 豊,渡辺 丈晃(高エネ研)
○Fumimasa Muto, Kazuya Aoki, Keizo Agari, Hironobu Akiyama, Masaharu Ieiri, Ruri Kurasaki, Yuya Komatsu, Yoshinori Sato, Shinya Sawada, Yoshihisa Shirakabe, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Yuhei Morino, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (KEK)
 
J-PARCハドロン実験施設では大強度ビーム(想定強度150kW)に対応した新しい二次粒子生成標的として回転円盤型標的を開発している。回転標的は冷却効率や長期運用の観点からビームの大強度化に有利であるが、固定標的と比べて温度、回転速度、偏芯などの状態監視が難しい。加えて大強度ビームによって生じる放射線、高温、限られたスペースなどの過酷な動作環境のため、状態監視に使用できる測定機器は数少ない。この問題を解決するため、静電容量型の変位計を用いて回転標的の状態監視を行うことを試みている。変位計プローブはシンプルな構造のため小型化できる。加えて耐放射線性能を確保するためにセラミックと金属のみで製作することができると考えている。このプローブを2台以上組み合わせることで状態監視のため測定すべきパラメータをほぼ網羅できると期待される。本発表では、耐放射線性を持つセラミック絶縁の変位計プローブの開発状況について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP044
p.639
KEK-PFのローレベRF系更新の準備状況とプロトタイプ試験
The upgrade status of the KEK-PF low-level-RF system and performance test of their prototype

○内藤 大地,山本 尚人,高橋 毅(高エ研),岩城 孝志,寺田 晃,張替 豊旗,漁師 雅次(三菱電機特機システム株式会社),坂中 章悟(高エ研)
○Daichi Naito, Naoto Yamamoto, Takeshi Takahashi (KEK), Takashi Iwaki, Akira Terada, Toyoki Harigae, Masatugu Ryoshi (Mitsubishi Electric TOKKI Systems), Shogo Sakanaka (KEK)
 
KEKのPF 2.5 GeVリングでは今年度と来年度にかけてローレベルRF系の更新をおこなう。新システムはμTCA.4規格のeRTM, AMC, μRTMといったデジタル制御ボード群で構成する。eRTMはSPring-8で開発されたものを、AMCについてはJ-PARCで開発されたものを採用する。μRTMはJ-PARCで開発されたもののADC入力部とDIO部分を変更して用いる。前年度にはプロトタイプのμRTMボードの設計/製造を行なった。一方、ローレベル系のシステム構成や空洞の制御方式についてはSPring-8[1]やSuperKEKB[2]のシステムを参考に設計した。RF信号の取得についてはSPring-8で実績のあるアンダーサンプリング法[1]を採 用する。アンダーサンプリングのパラメータに関しては、次世代光源で有用な過渡的電圧 変動の補償に適したパラメータを採用する。こちらについても前年度に制御用ファームウェア1式を開発した。本発表では新しいローレベルRF系の構成や制御方式について説明したのち, ローレベルRF系のプロトタイプでの試験と更新の準備状況について報告する。[1]T. Ohshima et al.,Proc of PASJ2018. [2]T. Kobayashi et al.,Proc of PASJ2014.
 
13:00-15:00 
WEP045
p.644
Sバンド球形単空洞型コンパクトパルスコンプレッサー実機の製作
Production of the S-band spherical-cavity-type pulse compressor for the KEK electron and positron injector LINAC

○惠郷 博文,阿部 哲郎,由元 崇,肥後 壽泰,東 保男(高エネ研),坂東 佑星(総研大),牛本 信二(三菱電機システムサービス(株)),芦田 宗信,宇崎 聡太,武田 千夏(明昌機工(株))
○Hiroyasu Ego, Tetsuo Abe, Takashi Yoshimoto, Toshiyasu Higo, Yasuo Higashi (KEK), Yusei Bando (SOKENDAI), Shinji Ushimoto (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd), Munenobu Ashida, Sota Uzaki, Chinatsu Takeda (MEISHO KIKO)
 
約40年に渡りKEK電子陽電子入射器で使用されているSLED型パルスコンプレッサー老朽化への代替機として、新機軸の球形単空洞型パルスコンプレッサーの開発を2020年より行なってきた。電子陽電子入射器で必要な平均2倍のビームエネルギーゲインを得るパルス圧縮条件を満足し、50pps・40MW入力の高繰返・高負荷運転条件に耐えうる冷却効率、確実で低コスト量産に向けた製造方法の検討などの観点から高周波・熱・機械設計を進め、プロトタイプ機製作と高電力試験を実施した。プロトタイプ機で良好な試験、解析結果を得たため、量産用実機の製作を2021年度に行なった。本報告ではプロトタイプ機の評価と高周波特性を整えるまでの実機製作について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP046
p.647
球形空洞型パルス圧縮器のデチューナー設計
Detuner design for spherical-cavity-type pulse compressor

○肥後 寿泰,東 保男,阿部 哲郎,惠郷 博文(高エネルギー加速器研究機構),坂東 佑星(総研大),林 显彩,施 嘉儒(清華大学)
○Toshiyasu Higo, Yasuo Higashi, Tetsuo Abe, Hiroyasu Ego (KEK), Yusei Bando (SOKENDAI), Xiancai Lin, Jiaru Shi (Tsinghua University)
 
KEK電子陽電子入射器では、現行のSLED型パルス圧縮器(SLED)に置き換え可能な球形空洞型パルス圧縮器(SCPC)の開発を進めてきた。試験機では高電力特性も良好なことが分かってきているが、実際の運転では必要に応じてパルス圧縮無しの運転が必要であるため、デチューナーの設計を行った。本稿では、その電気設計及び機械設計の詳細を述べる。これまで長期に使用してきているSLEDのデチューナーロッドには放電によると思われる変色が認められるので、原因となるパワーの引込みに注意する必要がある。本稿のSCPC用デチューナーは同軸構造を採用した、という観点ではSLEDと同様の設計であるので、その点にも留意して設計したので詳細に議論する。
 
13:00-15:00 
WEP047
p.652
SKEKB加速器2022abまでのMR大電力高周波源の状況
Current status of the high power rf system of MR for the operation until 2022ab in SKEKB

○渡邉 謙,吉田 正人,吉本 伸一,丸塚 勝美(KEK)
○Ken Watanabe, Masato Yoshida, Shin-ichi Yoshimoto, Katsumi Matustuka (High Energy Accelerator Research Organization)
 
SuperKEKB加速器地上部大電源棟に設置されている大電力高周波源は、地下トンネルに設置されたARES空洞および超伝導加速空洞へRFを供給する役割を持つ。本報告では2022abまでの期間における運転状況および老朽設備の更新状況などについて報告する。
 
13:00-15:00 
WEP048
p.657
SuperKEKBにおける超伝導空洞用新LLRF制御システムの開発
Development of new LLRF control system for superconducting cavity in SuperKEKB

○小林 鉄也,赤井 和憲,岡田 貴文,小笠原 舜斗,可部 農志,中西 功太,西脇 みちる(高エネ研),岩城 孝志,林 和孝,張替 豊旗,山浦 正義,漁師 雅次(三菱電機特機システム)
○Tetsuya Kobayashi, Kazunori Akai, Takafumi Okada, Shunto Ogasawara, Atsushi Kabe, Kota Nakanishi, Michiru Nishiwaki (KEK), Takashi Iwaki, Kazutaka Hayashi, Toyoki Harigae, Masayoshi Yamaura, Masatsugu Ryoshi (MELOS)
 
SuperKEKBは電子・陽電子衝突型リング加速器で、前人未踏(KEKBの40倍)のルミノシティを目指し運転・調整が続けられている。目標まで更なる増強が必要な状況ではあるが、毎年ルミノシティの世界記録を更新している。 RFシステムは、常伝導、超伝導の2種類の加速空洞が用いられ、全体で約30式のRFステーション(クライストロン)で構成される。これらの装置は多くがKEKBから再利用されているが、一部の常伝導空洞用ステーション(全体の約1/3)では、FPGAを用いたデジタル低電力高周波(LLRF)制御システムに更新されている。残りのステーションもデジタル化を進めるため、新たに超伝導空洞用デジタルLLRF制御システムの開発を行った。 本システムは、現在の常伝導空洞用システムをベースに多くの新機能(ピエゾチューナー制御、ブレイクダウン/クエンチ検出、直接RFフィードバック制御、パルス・エージング機能など)がFPGAに追加されている。特にブレイクダウン検出は3種類の検出方法がFPGAに組み込まれた。 これらの機能を含め、新たに開発された超伝導空洞用LLRF制御システムの詳細を紹介する。また、空洞シミュレータを用いた特性評価、および実際の超伝導(予備)空洞を用いた大電力試験の結果を報告する。空洞シミューレータは、ピエゾチューナーやビーム負荷(バンチ・ギャップ込み)を模擬することが可能で、これについても紹介する。
 
13:00-15:00 
WEP049
p.663
半導体クローバスイッチのための自己給電回路の開発
Development of a self-power feeding circuit for semiconductor crowbar switches

○生駒 直弥,亀崎 広明,森 均,徳地 明(株式会社パルスパワー技術研究所),小野 礼人,高柳 智弘,不破 康裕,篠崎 信一(J-PARC/JAEA),堀野 光喜,植野 智晶(株式会社NAT)
○Naoya Ikoma, Hiroaki Kamezaki, Hitoshi Mori, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Laboratory Ltd.), Ayato Ono, Tomohiro Takayanagi, Yasuhiro Fuwa, Shinichi Shinozaki (J-PARC/JAEA), Koki Horino, Tomoaki Ueno (NAT Corporation)
 
半導体素子の高性能化に伴い,加速器用パルスパワー電源の半導体化が急速に進んでいる.そのような電源では,半導体素子を多数直列にすることで放電管に匹敵する高い定格電圧を得るが,高電位に浮いた各段の素子に対し,それらのゲート駆動電力を如何に供給するかが重要な開発課題となる.この度当社では,DCかつ100kVを超える電圧が印加されるクライストロン高圧電源用半導体クローバスイッチ向けに,素子そのものに印加された高電圧から自身の駆動電力を得る「自己給電回路」を開発したので,報告する.
 
13:00-15:00 
WEP050
p.666
低出力レーザーによるレーザー航跡場加速実験
Laser wakefield acceleration by low peak-power laser

○大塚 崇光,郡司 貴大,飯田 紘一,高橋 瑠伊,西田 大紀,五十嵐 崚,片谷 光祐,ペレラ ドゥティカ,湯上 登(宇都宮大学)
○Takamitsu Otsuka, Takahiro Gunji, Kouichi Iida, Rui Takahashi, Taiki Nishida, Ryo Igarashi, Kosuke Kataya, Duthika Perera, Noboru Yugami (Utsunomiya Univ.)
 
プラズマ中の電子の疎密波によって生じる電場 (航跡場) を利用し荷電粒子を加速するレーザー航跡場加速の研究を行なっている.一般にレーザー航跡場研究では10^18 W/cm^2 を超える集光強度が必要であり,さらに効率良く航跡場を励起するためにはレーザーパルス長をプラズマ長程度とすることも求められる.このような条件を満たすためには大型かつ複雑なレーザーシステムが必要となり,大学の小規模実験室で運用することは難しい.本研究では小規模実験室で運用可能な 1 TW級レーザーを用いてレーザー航跡場加速による小型電子源を開発することを目標としている. 電子密度が 10^20 cm^-3 のプラズマ中を伝搬するレーザー (エネルギー 120 mJ,パルス幅 120 fs,集光強度 10^19 W/cm^2) を二次元粒子シミュレーションコードにより計算した.レーザーパルスの崩落線がプラズマ波との相互作用によって変調され大電場が励起され (自己変調レーザー航跡場),低出力レーザによって数 MeV 程度の電子ビーム生成が可能であることを明らかにした.比較的高密度プラズマを用いるため脱位相長が短く,実験では適切なターゲットを開発しこれを用いる必要がある.発表ではこれまでに得られている数値解析の結果と,実験的に検証するために進めているターゲット開発及び計測装置の開発の現状について述べる.
 
13:00-15:00 
WEP051
p.668
SuperKEKB電子銃用レーザーシステム及びレーザー多機能化の応用
Laser system for SuperKEKB RF gun and its multi-functionalized application

○張 叡,周 翔宇(高エネルギー加速器研究機構),豊富 直之,熊野 宏樹(三菱電機システムサービス(株)),吉田 光宏(高エネルギー加速器研究機構)
○Rui Zhang, Xiangyu Zhou (High Energy Accelerator Research Organization (KEK)), Naoyuki Toyotomi, Hiroki Kumano (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Mitsuhiro Yoshida (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
Electron beam generated by RF gun is used for SuperKEKB high energy ring (HER) injection. Based on the commissioning experience before, stable and continuous injection has been realized successfully. In order to generate high charge electron beam, upgrade of Nd:YAG laser amplification modules and amplification of powerful modules have been adopted in our laser system. Meanwhile, with the aim of generating a high charge beam with low emittance, essential spatial reshaping of UV laser has been investigated. Diffractive optical element (DOE) is set in UV laser part for studying and operation. The best emittance measurement results in B-sector and BT part have been achieved for better HER injection. Finally, we also realized the multi-functionality of the 2nd laser line for HER electron beam generation and photocathode cleaning during SuperKEKB commissioning.
 
13:00-15:00 
WEP052
p.671
PF-AR測定器開発テストビームラインのための電磁石設置と加速器インターロックシステムの改修
Installation of magnets and upgrade of accelerator safety interlock system for the GeV-range test beamline at PF-AR

○長橋 進也,池上 陽一,内山 隆司,高木 宏之,谷本 育律,外川 学,中村 勇,中村 典雄,野上 隆史,花垣 和則,本田 融,満田 史織,森 隆志,吉田 剛(高エネ研),鷲見 一路(名大)
○Shinya Nagahashi, Yoichi Ikegami, Takashi Uchiyama, Hiroyuki Takaki, Yasunori Tanimoto, Manabu Togawa, Isamu Nakamura, Norio Nakamura, Takashi Nogami, Kazunori Hanagaki, Tohru Honda, Chikaori Mitsuda, Takashi Mori, Go Yoshida (KEK), Kazumichi Sumi (Nagoya Univ.)
 
高エネルギー加速器研究機構(KEK)のX線領域の単パルス専用放射光源であるPhoton Factory Advanced Ring(PF-AR)では、2021年の夏に、素粒子・原子核実験の測定器開発を行うためのテストビームラインの建設が行われた。テストビームラインは、PF-ARに蓄積された電子ビームの一部を標的に当て、制動放射により生成されたガンマ線をコンバーターで再び電子・陽電子に変換して取り出し、電磁石群で電子ビームを加速器シールド壁外の測定器開発を行う場所まで輸送するものである。テストビームラインの電磁石群は、エネルギー選択用偏向電磁石1台、電子ビーム収束用四極電磁石7台、補正用ステアリング電磁石2台で構成されている。電磁石設置のための罫書きやシールド壁の貫通口位置の測量、電磁石の精密アライメントには、レーザートラッカー(Leica AT-402)と水準儀(Wild N3)を使用した。  本発表では、電磁石の設置検討、罫書き、設置、精密アライメントの詳細と、テストビームライン建設にともなう加速器インターロックシステムの改修状況を報告する。
 
13:00-15:00 
WEP053
p.675
大強度高周波負水素イオン源用J-PARC製内部アンテナのガス放出特性
Outgassing characteristics from the J-PARC-made internal antenna for a high-intensity radio-frequency H- ion source

○神藤 勝啓(J-PARC/JAEA),柴田 崇統(J-PARC/KEK),大越 清紀(J-PARC/JAEA),南茂 今朝雄,池上 清(J-PARC/KEK),小栗 英知(J-PARC/JAEA)
○Katsuhiro Shinto (J-PARC/JAEA), Takanori Shibata (J-PARC/KEK), Kiyonori Ohkoshi (J-PARC/JAEA), Kesao Nanmo, Kiyoshi Ikegami (J-PARC/KEK), Hidetomo Oguri (J-PARC/JAEA)
 
J-PARCでは高周波放電によるイオン源を用いて、大強度負水素イオンビームを生成している。イオン源を構成する機器はほぼ全てJ-PARCで設計・製作したものであるが、高周波放電用の内部アンテナのみ米国オークリッジ研究所で用いているものをJ-PARC用にカスタマイズして使用している。そこで、J-PARCでは、アンテナの製作法や製作したアンテナの性能を理解することを目的として、J-PARC製内部アンテナを試作し試験を進めてきた。高密度プラズマ放電中に内部アンテナより不純物がプラズマ中に放出されることで、アンテナ自身やイオン源真空容器、ビーム引き出し部の電極などがスパッタリングにより損傷する恐れがある。今回、四重極質量分析器によるイオン源残留ガス分析とイオン源チャンバー内プラズマの分光計測をオフラインで実施し、アンテナからのガス放出特性を調べた。本発表では、その測定結果について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP054
p.680
KEKにおける超伝導RF電子銃2号機の横測定試験
Horizontal test of Superconducting RF gun #2 at KEK

○許斐 太郎(ミシガン州立大学FRIB),井上 均,王 旭東,植木 竜一,梅森 健成,加古 永治,近藤 良也,土屋 清澄,高富 俊和,寺島 昭男,原 和文,細山 謙二,本田 洋介,増澤 美佳,オメット マチュー(高エネ研)
○Taro Konomi (MSU, FRIB), Hitoshi Inoue, Xudong Wang, Ryuichi Ueki, Kensei Umemori, Eiji Kako, Yoshinari Kondo, Kiyosumi Tsuchiya, Toshikazu Takatomi, Akio Terashima, Kazufumi Hara, Kenji Hosoyama, Yosuke Honda, Mika Masuzawa, Mathieu Omet (KEK)
 
超伝導RF電子銃は高いビーム繰り返しと高電界加速を両立する電子銃であり、CW-FEL用電子銃をはじめとして世界的に開発が進められている。KEKにおいてもERLで使用することを目的として基礎的な性能実証を行うための電子銃開発が開始された。本超伝導RF電子銃は1.3GHz、1.5セルの超伝導RF空洞と2Kまで冷却されるニオブ製カソードプラグに蒸着したK2CsSbフォトカソードから構成される。電子銃空洞単体での高電界試験の結果は最大表面電界75MV/m、最大表面磁場170mTと高い値を示した。しかし、ビーム試験のためのフォトカソードチャンバーや超伝導ソレノイド、ビーム診断ラインを組み込んで行う横型試験では強いフィールドエミッションにより最大表面電界は42MV/mに低下した。これは組立時に微小なごみを空洞に巻き込んでしまったことが原因であると考えられる。また、ビーム試験のために超伝導ソレノイドと常伝導90度偏向電磁石の製作、レーザー光源の整備を進めた。本発表では超伝導RF電子銃の設計から各コンポーネントの単独試験、ビーム試験準備までについて報告する。
 
13:00-15:00 
WEP055
p.685
高純度ニオブの焼鈍温度と引張強度の関係
Relation between tensile strength and annealing temperature for high purity niobium

○山中 将,嶋田 慶太(高エネ研)
○Masashi Yamanaka, Keita Shimada (KEK)
 
超伝導加速器に用いる高純度ニオブの焼鈍温度と引張強度の関係を実験的に求めた。残留抵抗比(RRR)>300のファイングレインニオブを用いて試験片を製作し、800~1100度の範囲で温度を変えて焼鈍し、室温で引張試験を行った。焼鈍温度が高くなると、引張強度が低下した。焼鈍後のRRR測定、硬さ測定、組織観察を合わせて行った。これらの結果を総合して、高純度ニオブの焼鈍温度と引張強度の関係を考察する。
 
13:00-15:00 
WEP056
p.690
SuperKEKB入射器におけるCSR由来のシンクロベータトロン結合
CSR induced synchro-betatron coupling in the SuperKEKB linac

○由元 崇,周 徳民,飯田 直子,清宮 裕史,菊池 光男(高エネ研)
○Takashi Yoshimoto, Demin Zhou, Naoko Iida, Yuji Seimiya, Mitsuo Kikuchi (KEK)
 
SuperKEKB用電子陽電子入射器では高電荷・低エミッタンスビームが求められているが、その輸送ラインにはJ-arcなどの偏向磁石がある区間がいくつか存在する。そのような区間においては有限な運動量分散関数が存在し、コヒーレントシンクロトロン放射光(Coherent Synchrotron Radiation、CSR)由来のWake fieldによるビームエネルギー変調によってシンクロベータトロンカップリングによる振動励起が原理的に発生する。本発表では、金属ダクトによる遮蔽効果を含めたCSR効果(Shielded CSR effect)について電荷依存性とともに報告する。
 
13:00-15:00 
WEP057

バンチエネルギーチャープとテーパーアンジュレータを組み合わせた短パルスXFELの検討
Short pulse XFEL utilizing energy chirped electron beam and taperd undulator
○本田 洋介,吉田 光宏(高エ研)
○Yosuke Honda, Mitsuhiro Yoshida (KEK)
 
将来建設が提案されているアト秒レーザー施設の光源の一つとして、従来のFELよりさらに1桁短い、サブフェムト秒の短パルスのXFELの検討が進められている。電子バンチを極限まで短パルス化した場合、アンジュレータにおける光パルスの時間スリッページの影響で、電子と光の重なりが失われてしまい、1次元のFELモデルでは扱えない条件になる点が、従来のXFELと異なる。 大きなスリッページの特徴を生かして、電子バンチにエネルギーチャープを与えると同時にテーパーアンジュレータを用いる設計を検討している。 本発表ではFELのシミュレーション結果について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP058
p.694
リソグラフィー用ERL EUV-FELに向けた入射器設計
Injector design towards ERL-based EUV-FEL for lithography

○田中 織雅,中村 典雄,宮島 司,谷川 貴紀(高エネルギー加速器研究機構)
○Olga Tanaka, Norio Nakamura, Tsukasa Miyajima, Takanori Tanikawa (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
ERL FELを使用した高出力EUV光源は10kW以上のEUV出力の生成が可能で、多数の半導体露光装置に将来必要となる1kW以上のEUV光を同時に供給することができる。電子ビームはFEL上流の第1アークでバンチ圧縮されて、高いピーク電流を得る必要がある。また、その時のビームの運動量広がりや横方向エミッタンスもFEL出力に影響する。このEUV FEL入射器の要件としては、横方向エミッタンス以上に縦方向エミッタンスを小さくすることが重要である。また、入射器出口でのバンチ長は下流のアーク部でのバンチ圧縮やFELの出力を考えて設定する必要がある。多目的遺伝的アルゴリズムを使用して空間電荷効果を制御しながら、FEL高出力化のために最適な入射器ビームについて設計検討を行った。本発表では、ERL EUV-FELに適した入射器の最適化について報告する。
 
13:00-15:00 
WEP059
p.698
放射光源リングにおけるアクティブ高調波空洞を用いたバンチ伸長システムの検討
Feasibility study of an active harmonic cavity for bunch lengthening in an electron storage ring

○山本 尚人,坂中 章悟(高エネ研),Marchand Patrick,Gamelin Alexis,Nagaoka Ryutaro(Synchrotron SOLEIL)
○Naoto Yamamoto, Shogo Sakanaka (KEK), Patrick Marchand, Alexis Gamelin, Ryutaro Nagaoka (Synchrotron SOLEIL)
 
電子蓄積リングにおいて、主加速空洞に加え高調波空洞を導入することでバンチ長の制御が可能となる。例えば、高調波RFにより主RF場の電圧勾配を高調波で局所的に緩和することでバンチ伸長できる。バンチ伸長は高輝度光源において自己散乱によるエミッタンス劣化やビーム寿命低下の抑制につながるため特に重要である。 放射光源リングでは様々なユーザーの希望に答えるため複数の運転モードを用意することが多いが、想定する全ての運転モードにおいて適切にバンチ長制御をおこなうためには、従来のビーム誘起電圧のみを利用したパッシブ型ではなく外部電力を用いたアクティブ型の高調波空洞が有用である。 発表者はSOLEIL-U(2.75GeV,仏)を例としてアクティブシステムの検討を行った。検討では平均20mAのシングルバンチ(SB)運転と500mAのマルチバンチ(MB)運転の双方でバンチ伸張率3倍以上を達成することを目標とした。システム設計では通常行う空洞消費電圧等に加え、高調波空洞の存在により問題となるAC Robinson不安定性、さらにはRF場の勾配がゼロに近づいた際に発生する特殊な不安定性についても考慮を行い、解析的及び数値的な評価を進めた。 現在までにSB運転では十分なバンチ長が達成できそうであるが、MB運転では3倍弱の伸張率に留まっている。MB運転においてさらなる改善を得るためには、特殊なフィードフォワード/バック技術の導入など新たなアイディアが必要だと考えている。
 
ポスター③ (10月20日 会議室P)
13:00-15:00 
THP001
p.703
CYRICの負イオン加速における多層グラフェンのストリッパーフォイルへの適正評価
Evaluation of suitability of multilayer graphene for stripper foil in CYRIC negative ion acceleration

○米倉 章平,伊藤 正俊,足立 智,服部 幸平,今間 可奈子,林 拓夢,細谷 弦生,山崎 峻平(東北大学 CYRIC),松田 洋平(甲南大学),高橋 研,高橋 直人,鈴木 惇也,本間 隆之(住重加速器サービス)
○Shohei Yonekura, Masatoshi Itoh, Satoshi Adachi, Kohei Hattori, Kanako Komma, Hiromu Hayashi, Genki Hosoya, Shumpei Yamazaki (CYRIC, Tohoku Univ.), Yohei Matsuda (Konan Univ.), Ken Takahashi, Naoto Takahashi, Junya Suzuki, Takahiro Homma (SHI Accelerator Service Ltd)
 
現在CYRICでは大強度中性子ビーム生成に向けて負重水素イオンの加速を試みている。サイクロトロン加速器での負イオン加速の引き出しに用いるストリッパーフォイルは長寿命であることが望ましく、フォイル交換の頻度を減らすことができるため運転効率の向上が見込める。今回使用したカネカ製の多層グラフェンは、銅の4倍ほどの熱伝導性や高い熱安定性や強度が報告されているフォイルである。本研究では、ストリッパーフォイルとして多層グラフェンフォイルと蒸着生成されたカーボンフォイルをそれぞれ使用し、負イオンの引き出し前後で厚さを測定した。フォイルの厚さは、アルファ線源を用いて測定したフォイルのエネルギー損失から求めた。負イオン照射後の多層グラフェンフォイルとカーボンフォイルの厚さの変化を比較し、多層グラフェンのストリッパーフォイルとしての適正について報告する。
 
13:00-15:00 
THP002
p.706
Beam-Based Alignmentを用いたIFMIF原型加速器の四極電磁石のミスアライメントの評価
Evaluation of quadrupole magnets misalignment in the IFMIF prototype accelerator using the beam based-alignment method

○玄 知奉,宇佐美 潤紀,廣澤 航輝,権 セロム,赤木 智哉(量研機構),水野 明彦(量研機構, 高輝度光科学研究センター),増田 開,近藤 恵太郎(量研機構),アロンソ マヌエル(IPFN),スカンタビューロ フランチェスコ(F4E),ポタデラ イバン,ブラナス ベアトリス(CIEMAT)
○Jibong Hyun, Hiroki Usami, Koki Hirosawa, Saerom Kwon, Tomoya Akagi (QST), Akihiko Mizuno (QST, JASRI), Kai Masuda, Keitaro Kondo (QST), Manuel Alonso (IPFN), Francesco Scantamburlo (F4E), Ivan Podadera, Beatriz Branas (CIEMAT)
 
現在、量子科学技術研究開発機構(QST)六ヶ所研究所では国際核融合材料照射施設(IFMIF: International Fusion Materials Irradiation Facility)の実現に向け、連続運転で125 mAの重陽子ビームを9 MeVまで加速することができる原型加速器(LIPAc: Linear IFMIF Prototype Accelerator) の性能実証試験を欧州の研究所と共に進めている。2021年夏からビーム診断機器の動作・仕様確認のために、低電流の陽子・重陽子ビームを用いてビームコミッショニングを開始し、現在、様々な加速器機器の調整を行っている。今回、四極電磁石のアライメントを確認するために、陽子(10 mA, 2.5 MeV)と重陽子ビーム(20 mA, 5 MeV)を用いてBeam-Based Alignment(BBA)を実施し、レーザートラッカーで測定した結果と比較した。RFQ出口と中エネルギービーム輸送部(MEBT)の第一四極電磁石間には、水平方位に設計値を越えた0.5 mm程度のミスアライメントが存在することを両測定で確認することができた。一方で、一部のセクションでは、BBAの測定精度に問題があることも判明した。本発表では、今回測定した結果の報告、及び、今後のビームコミッショニングに向けたBBAの測定方法について議論する。
 
13:00-15:00 
THP004
p.711
J-PARCメインリングの光学補正ツールの開発
Development of beam optics correction tool for J-PARC Main Ring

○冨澤 正人,木村 琢郎,村杉 茂 ,武藤 亮太郎,沼井 一憲,岡村 勝也,白壁 義久,高野 淳平,柳岡 栄一(高エネ研/J-PARCセンター)
○Masahito Tomizawa, Takuro Kimura, Shigeru Murasugi, Ryotaro Muto, Kazunori Numai, Katsuya Okamura, Yoshihisa Shirakabe, Junpei Takano, Eiichi Yanaoka (KEK/J-PARC)
 
J-PARCメインリング(MR)では、速い取り出しを用いるニュートリノ振動実験や遅い取り出しを用いるハドロン実験のビームパワーを増強するために、加速パターンの繰り返し周期を早くする計画が進行している。このために偏向電磁石電源と四極電磁石電源を新規に製作したが、予算の都合で四極電磁石電源の一部は、今まで使用されていた電源を流用することになった。その結果四極電磁石のファミリー数11に対して、電源の台数は11台から16台に増えることになった。各電源の電流の再現性をできるだけ高めるための調整はMRの電源グループにより実施されているが、電流偏差によるビーム光学パラメーターの許容できないずれも想定しておく必要がある。遅い取り出しでは特にフラットトップのビーム光学パラメーターが重要である。そこで、応答行列とディスパージョンの測定結果を用いて、SADコードにより目標とするモデルに対して四極電磁石電源の強さの補正量を求めるツールを開発した。この方法では補正量と同時に補正前のベータ関数やディスパージョンが求まることになる。過去の測定データから得られた応答行列とディスパージョンを用いて、モデルからの補正量を求めた結果を報告する。また本年6月に予定されている遅い取り出しのためのビーム調整において、実際に補正を行い補正前後の結果を比較する予定である。
 
13:00-15:00 
THP005
p.716
自己遮蔽型高温超伝導スケルトンサイクロトロンの概念設計
Conceptual design of the high temperature superconducting self-shielding type skeleton cyclotron

○松井 昇大朗,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,畑中 吉治,斎藤 高嶺,田村 仁志,安田 裕介,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,荘 浚謙,ZHAO HANG,橘高 正樹(阪大RCNP),石山 敦士(早大),野口 聡(北大),植田 浩士(岡山大),福井 聡(新潟大),松原 雄二,三上 行雄,吉田 潤,平山 貴士(住友重機),長屋 重夫,渡部 智則(中部電力)
○Shotaro Matsui, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Kichiji Hatanaka, Takane Saitou, Hitoshi Tamura, Yusuke Yasuda, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Tsun Him Chong, Hang Zhao, Masaki Kittaka (RCNP), Atsushi Ishiyama (Waseda Univ.), So Noguchi (Hokkaido Univ.), Hiroshi Ueda (Okayama Univ.), Satoshi Fukui (Niigata Univ.), Yuji Matsubara, Yukio Mikami, Jun Yoshida, Takashi Hirayama (Sumitomo Heavy Industries,Ltd), Shigeo Nagaya, Tomonori Watanabe (Chubu Electric Power Co.,Inc)
 
近年、超伝導加速技術を利用したエネルギー効率の高い高強度小型加速器が求められている。特に,アルファ線核医学治療に必要とされる211AtやPET検査用18Fに代表されるような短寿命RIの大量製造や加速器ベースのBNCT用中性子源などには,病院内に設置可能な自己遮蔽型小型加速器が望ましい。そこで,高温超伝導コイルを用いた自己遮蔽型のスケルトンサイクロトロン(HTS-SC)の設計に着手した。HTS-SCはメインコイルとセクターコイルに空芯型HTSコイルを使用することで軽量化を図るとともに,再現性良く高精度な高磁場を短時間で形成することができる特徴をもつ。最大加速エネルギーは4He2+で80MeV,重陽子で40MeV,陽子で70MeVまでを想定し,引出半径50cmで数100μA以上の高強度ビームの生成を目指している。これまで,完全空芯型の引出半径40cmのHTS-SCの設計[1]を進めてきたが,放射線遮蔽と磁気遮蔽を兼ねたリターンヨークを装備した新たなHTS-SCの概念設計を進めている。HTS-SCを病院内で利用するには、現有の院内設備に放射線の影響を出さないために、自己遮蔽型にする必要があります。本発表では自己遮蔽型HTS-SCの検討状況について報告する。[1]H.W. Koay, M. Fukuda, H. Kanda, T. Yorita. (2021),Beam dynamics and characterization of a new high-intensity compact air-core high temperature superconducting skeleton cyclotron(HTS-SC).Results in Physics 33(2022)105090
 
13:00-15:00 
THP006
p.721
iBNCT加速管冷却水システムの増強と調整
Reinforcement and tuning of a cooling water system for the iBNCT accelerator

○佐藤 将春,久保田 親,栗原 俊一,小林 仁,杉村 高志,方 志高,内藤 富士雄(高エネ研),熊田 博明,田中 進(筑波大),大場 俊幸,名倉 信明(NAT),豊島 寿一(ATOX)
○Masaharu Sato, Chikashi Kubota, Toshikazu Kurihara, Hitoshi Kobayashi, Takashi Sugimura, Zhigao Fang, Fujio Naito (KEK), Hiroaki Kumada, Susumu Tanaka (Univ. Tsukuba), Toshiyuki Ohba, Nobuaki Nagura (NAT), Toshikazu Toyoshima (ATOX)
 
iBNCTプロジェクトでは次世代粒子線がん治療のひとつである加速器ベースのホウ素中性子捕捉療法(BNCT)をJ-PARCで実績のあるRFQおよびDTLからなる加速管構成により実現を目指す。8 MeVまで加速した陽子をベリリウム標的に照射して中性子を生成し治療に利用するが、必要な熱中性子束を得るためには陽子ビームの平均電流値として数mAが必要であり、高いデューティーファクターが要求される。安定した運転を行う為には加速管冷却システムは極めて重要なコンポーネントであり、とりわけRFQの安定性を向上させるために、段階的にその増強や調整に努めてきた。現在までに繰り返し75Hz、平均電流2mAでの安定運転を達成し、2021年度11月より非臨床試験を開始した。本講演では現在まで行ってきた加速管冷却水システムの増強や、冷却水温調整方法の改善を報告する。
 
13:00-15:00 
THP007
p.726
インバーター制御多段式ルーツ型真空ポンプのノイズ対策
Countermeasures against noise of inverter-controlled multi-stage root pump in J-PARC linac beam dump

○小林 史憲,神谷 潤一郎,守屋 克洋(日本原子力研究開発機構),宮尾 智章(高エネルギー加速器研究機構),古徳 博文,髙野 一弘(アルバックテクノ株式会社)
○Fuminori Kobayashi, Junichiro Kamiya, Katsuhiro Moriya (J-PARC/JAEA), Tomoaki Miyao (KEK), Hirofumi Kotoku, Kazuhiro Takano (ULVAC TECHNO)
 
 J-PARC LINACにおいて、LINACと3 GeVシンクロトロンをつなぐビーム輸送ラインであるL3BTの真空排気系は、粗引き排気用にターボ分子ポンプとルーツポンプ、メイン排気用にイオンポンプが使用されている。また、L3BTには、LINAC のビームラインに対して0度、30度、90度、100度の位置にビームダンプが真空仕切り窓を介して接続されており、それぞれのビームダンプの排気系としてルーツポンプが使用されている。これらルーツポンプのコントローラーは放射線による故障を防ぐために、加速器トンネルに設置したポンプ本体から100 m程度離れた位置に設置している。これまでインバーターを使用したルーツポンプコントローラーからの電気ノイズがビームモニターへ悪影響を与えることから、インバーターを取り外した特殊仕様のコントローラーを利用してた。しかし特殊仕様のコントローラーでは、ポンプの排気性能の不安定さや性能のばらつき等の不具合が発生していた。 今回、ルーツポンプコントローラーのインバーターに対し、各種のフィルター、ケーブル種、アースのとり方等を調査した。その結果、最適なノイズ対策を実施することで、ビームモニターの使用が可能となる状態までノイズが低減されたことを確認できたため、ここに報告する。
 
13:00-15:00 
THP008

表面窒化無酸素チタン蒸着ICFフランジの水素排気特性評価と放射光ビームラインへの応用
Evaluation of Hydrogen Pumping Properties of Surface Nitrided Oxygen-free Titanium Deposited ICF Flanges and Application to Synchrotron Radiation Beamlines
片岡 竜馬,○菊地 貴司,間瀬 一彦(高エネ研)
Ryoma Kataoka, ○Takashi Kikuchi, Kazuhiko Mase (KEK)
 
真空容器の内面に非蒸発型ゲッター(NEG)を蒸着すると、ベーキング後に真空容器がNEGポンプとなり、無電力で10-7 Pa程度以下の到達圧力を維持できる。NEG蒸着の利点は、活性な残留ガスを排気できることに加えて、真空容器からの脱ガスを低減できること、NEGポンプ設置のためのスペースが必要ないこと、専用電源、電流導入が必要ないこと、装置を小型化できること、電源消失時の安全安心を確保できること、である。しかしながら従来のNEG蒸着にはTiZrV合金を使用していたため、活性化温度が180~300℃と高く、放射光ビームラインの通常のベーキング温度(80~150℃)では十分活性化できない。そこで我々は、新しいNEG蒸着法の開発に取り組み、内面に表面窒化無酸素Tiを蒸着した真空容器は、真空排気、185℃、6時間ベーキング、真空封止すると10–7 Pa台の超高真空を維持すること、真空封止下でH2、H2O、O2、CO、CO2の分圧は10–8 Pa程度以下に保たれること、高純度N2導入、大気曝露、真空排気、185℃、6時間ベーキングのサイクルを30回くりかえしても残留ガスを排気することを見出した。本発表では、活性化温度を100℃程度まで下げることを目的として、無酸素Tiの純度をさらに上げた表面窒化高純度無酸素Ti蒸着ICFフランジの水素排気特性評価結果と放射光ビームラインへの応用について報告する
 
13:00-15:00 
THP009

表面部分窒化無酸素チタン蒸着を利用した非蒸発型ゲッターポンプの開発
Development of a nonevaporable getter pump using oxygen-free titanium deposition with partially nitrided surface
○吉田 圭佑(横浜国立大学)
○Keisuke Yoshida (Yokohama National University)
 
非蒸発型ゲッター(NEG)は超高真空中で加熱すると反応性の高い表面が生成し、H2O、H2、CO、CO2、O2などの残留ガスを吸着して排気する。NEGポンプは、活性後は電力を必要しないこと、振動を生じないこと、完全オイルフリーであること、低コストであることから、加速器で広く利用されている。しかしながら従来のNEG蒸着にはTiZrV合金を使用していたため、活性化温度が180~300℃と高いという欠点があった。これに対して、我々は10-7 Pa台の超高真空中でのTiの昇華によるTi蒸着法を開発し、酸素濃度0.05%以下、純度99.95%以上のTi(無酸素Ti)を蒸着して、窒素を導入すると185℃、6時間加熱で活性化することを見出した。さらに、溝加工したICF203フランジに表面部分窒化無酸素チタン蒸着を行って、NEGポンプを製作し、1)100℃、12時間のベーキングによりCOを排気すること、2)COを飽和吸着すると排気性能が失われるが、もう一度100℃、12時間ベーキングするとCOを排気するようになること、3)ベーキングとCO排気を繰り返すと徐々に排気性能が低下すること、4)もう一度大気にさらすと排気性能が失われること、を見出した。以上の結果から、表面部分窒化無酸素チタン蒸着膜表面は100℃、12時間のベーキングで活性化するが、表面が炭素で汚染されると排気性能が失われると推測している。
 
13:00-15:00 
THP010

J-PARC 新MR-MPSユニットの開発と導入
Development and introduction of new MR-MPS unit in J-PARC
○木村 琢郎(J-PARCセンター(高エネ研))
○Takuro Kimura (J-PARC Center (KEK))
 
MR-MPSはJ-PARC Main Ring(MR)の加速器および実験施設の安全システムであるMachine Protection Systemとして、MRの運転が開始された2008年から運用されてきた。 前システムを導入から10年以上を経過していることや、2022年には新主電磁石電源や新RF空胴が新たに導入されることから、それらに合わせて新MR-MPSの開発と導入を計画してきた。 本発表では、新MR-MPSユニットに実装されている機能についてハードウェア・ファームウェア・ソフトウェアの3つの観点から解説を行う。 また2022年11月からは新MR-MPSユニットと現行MR-MPSの両方を用いた運用を計画している。そのためそれらのの準備状況や現行のMR-MPSユニットとの同時運用を可能する互換機能の紹介を行うとともに、 今後の新MR-MPSユニットへの更新計画についても紹介する。
 
13:00-15:00 
THP011
p.731
SuperKEKBにおける制御用サーバー計算機の現状
Present status of server infrastructure for the SuperKEKB control system

○佐々木 信哉,杉村 仁志,中村 達郎(KEK),中村 卓也,吉井 兼治(三菱電機SC),廣瀬 雅哉(関東情報サービス株式会社)
○Shinya Sasaki, Hitoshi Sugimura, Tatsuro Nakamura (KEK), Takuya Nakamura, Kenji Yoshii (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Masaya Hirose (KIS)
 
SuperKEKBではDNSやDHCP、LDAP、NTPなどの制御システムの基幹となるサービスの実行、および加速器制御用アプリケーションの開発や実行のためにブレードサーバーを運用してきた。ブレードサーバーはSuperKEKBの前身であるKEKBの頃から利用しており、その保守が終了する前に新しいシステムへの移行が求められた。そのため、2020年からラックマウントサーバーの導入とサービスの移行を進めてきた。これまでのシステムでは仮想化技術を利用せず、サーバー上で直接アプリケーションを実行していたが、用途の異なる複数のアプリケーションが同一の実行環境で動作しており、管理が煩雑化していた。新システムではKVMによる仮想マシンを利用することで、用途ごとに実行環境が分離されて管理が容易になった。サーバーや仮想マシンの構成管理にはAnsibleを利用することで、環境構築の再現性や再利用性を高め、システム管理の属人化を防ぐようにしている。システムの監視にはiDRACやZabbixを利用しており、サーバーや仮想マシンの利用状況の確認やアラートのメール通知を行っている。また、Cockpitを利用してサーバーや仮想マシンをWebから管理、操作できるようにしている。本発表では導入したサーバーの詳細およびその運用状況に関して報告する。
 
13:00-15:00 
THP012
p.735
3 GeV次世代放射光施設の加速器インターロックシステム
Accelerator interlock system for 3 GeV synchrotron light source

○保坂 勇志,安積 隆夫,西森 信行(量研),糸賀 俊朗,大石 真也,大島 隆,近藤 力,櫻井 辰幸,小路 正純,田村 和宏,深見 健司,渡部 貴宏(高輝度光科学研究センター,理研,量研),青木 毅,佐治 超爾,高野 史郎,谷内 友希子,増田 剛正(高輝度光科学研究センター,量研),稲垣 隆宏,高橋 直,前坂 比呂和(理研,高輝度光科学研究センター),福井 達,田中 均(理研)
○Yuji Hosaka, Takao Asaka, Nobuyuki Nishimori (QST), Toshiro Itoga, Masaya Oishi, Takashi Ohshima, Chikara Kondo, Tatsuyuki Sakurai, Masazumi Shoji, Kazuhiro Tamura, Kenji Fukami, Takahiro Watanabe (JASRI,RIKEN,QST), Tsuyoshi Aoki, Choji Saji, Shiro Takano, Yukiko Taniuchi, Takemasa Masuda (JASRI,QST), Takahiro Inagaki, Sunao Takahashi, Hirokazu Maesaka (RIKEN,JASRI), Toru Fukui, Hitoshi Tanaka (RIKEN)
 
東北大学青葉山新キャンパスにて3 GeV次世代放射光施設の建設が進められている。この施設ではエネルギー3 GeVの電子ビームを用いて軟X線・テンダーX線領域の高コヒーレンス、高輝度放射光を提供する。年間6000時間の運転を目指す本放射光施設において、安全性・信頼性の高い運転を行い、将来の軟X線FEL並列運転にも対応するため、加速器構成機器の状態を監視し、電子ビーム入射器及び蓄積リングの運転を制御するインターロックシステムが必要である。具体的な監視対象は、真空容器の圧力値や温度、電磁石電源の状態、高周波加速管の放電、各部の冷却水の流量、放射線安全など多岐にわたる。これらの情報に基づき、運転状態の制御、機器の保護、人的安全の観点から施設の制御を行う。3 GeV次世代放射光施設では真空・磁石・RFなど細分化されたインターロックシステムを設け、各インターロックシステム間で信号を取り合うことで全体の制御を実現する。本発表では3 GeV次世代放射光施設の加速器インターロックシステムの全体像を紹介し、運転制御と機器保護の観点を主軸に監視対象と動作について概要を説明する。
 
13:00-15:00 
THP013
p.740
UVSORアンジュレーター制御系のPLC化
Undulator control system using PLC at UVSOR

○林 憲志,太田 紘志,山崎 潤一郎,平 義隆(分子研 UVSOR),加藤 政博(分子研 UVSOR 広島大 HiSOR),仲谷 光司(日立造船)
○Kenji Hayashi, Hiroshi Ota, Jun-ichiro Yamazaki, Yoshitaka Taira (IMS, UVSOR), Masahiro Katoh (IMS, UVSOR Hiroshima-Univ., HiSOR), Koji Nakatani (Hitachi-zosen Co.)
 
放射光源UVSOR-IIIでは6台のアンジュレータが稼働しており、それぞれが独立した制御系を備えている。これら制御系は、アンジュレータ本体に加え、アンジュレータのビームへの影響を補正するための専用のステアリング電磁石や四極磁石コイルを制御している。放射光利用実験中には、随時、放射光ビームライン側から指令を受けアンジュレータ磁石列のギャップや位相の変更を行い、これと同時に上記の補正磁石によるフィードフォワード制御を行う。制御系について、これまでは日立造船社の固有のコントローラーであるMCUとサーバーPC、通信プロトコルとしてはCORBAを用いていたが、使用されるハードウエアや技術の持続性や汎用性を考え、一般的に入手可能であって安定性に優れるPLCによる制御への変更を検討した。2022年3月に最も老朽化の進んでいたU3と呼ばれるアンジュレーター制御系を三菱電機製PLCとSLMPプロトコルによるシステムに更新した。本発表では、新しい制御系の性能や稼働状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP014
p.743
ガフクロミックフィルムによるビームロス評価
Beam loss evaluation by Gafchromic film

○塩澤 真未,帯名 崇(高エネ研)
○Mami Shiozawa, Takashi Obina (KEK)
 
加速器シールド内での放射線量分布を正確に計測することは、運転中にどの場所でビームロスが発生しているのかを知るために非常に重要である。さらに、加速器室内の機器を故障前に交換したり、遮蔽鉛等で保護したりするにあたっても放射線量の高い場所をみつける目安にもなる。一般的に放射線量はサーベイメータやフィルムバッチ、各種のビームロスモニタ等によって測定可能であるが加速器室内の広範囲にわたって詳細な分布を知るためには安価で設置・計測の容易なツールが望ましい。そこで、放射線を簡便に測定できるツールとしてガフクロミックフィルムを用いてKEK内の加速器compact Energy Recovery Linac (cERL)とPhoton Factory (PF)においてビームロスを測定した。ガフクロミックフィルムとは放射線への暴露により放射線感受性モノマーの破断、重合作用で変色するラジオクロミックフィルムの一種であり、もともとは医療分野でX線やγ線の線量分布測定用に開発、販売されてきたが、近年加速器分野においても応用されつつある。本発表では、ガフクロミックフィルムの説明や取り扱い上の注意などを紹介したあとに、実際に測定した加速器の運転パターンによるビームロス分布の違いや、放射線エリアモニターを用いた絶対値の較正等について報告する。
 
13:00-15:00 
THP015
p.748
TIARA AVFサイクロトロンにおける4次元アクセプタンス測定方法の検討
Study of four-dimensional acceptance measurement method at the TIARA AVF cyclotron

○柏木 啓次,宮脇 信正,倉島 俊(量研高崎)
○Hirotsugu Kashiwagi, Nobumasa Miyawaki, Satoshi Kurashima (QST Takasaki)
 
QST高崎AVFサイクロトロンでは迅速で安定したビーム提供のため、ビーム位相空間測定に基づいたビーム入射調整技術の開発を行っている。入射調整は、イオン源からサイクロトロンまでの低エネルギービームライン(LEBT)の電磁石を用いて、ビームのエミッタンスとサイクロトロンのアクセプタンスを整合させることに等しい。LEBT設置されたソレノイドレンズによるビームの集束においてはビームの横方向の回転が生じるため、整合のためにはエミッタンスとアクセプタンスの4次元位相空間分布が必要である。ビームのエミッタンスは、イオン源の分析電磁石直後に設置した4次元情報が取得可能なペッパーポット装置(PPEM)で測定する。この測定ではビームを多孔マスクを通して各孔からのビームの拡がりを下流で蛍光画像により一度に測定することで、1秒以内での測定で可能である。アクセプタンスの測定では、微小な位相空間領域のビームをサイクロトロンに入射し、そのビームが加速されるか否かを1領域ずつ加速後のビーム強度モニタで検出する。この測定はPPEMとは異なり逐次測定のため長時間測定となることが懸念される。そこで、比較的短時間で測定する方法としてダブルスリットで切り出した微小位相空間領域のビームをステアリング電磁石で走査する方法を検討し、測定試験を行った。
 
13:00-15:00 
THP016
p.751
J-PARC MR新BPM信号処理システムのための低反射・低歪信号アテネータ開発
Development of signal attenuator with low reflection and low distortion for new BPM signal acquisition system of J-PARC MR

○佐藤 健一郎,外山 毅,山田 秀衛,小林 愛音(J-PARC/高エネ研)
○Kenichirou Satou, Takeshi Toyama, Shuei Yamada, Aine Kobayashi (J-PARC/KEK)
 
J-PARC MRでは1.3MWビーム安定供給のためにBPMシステムの信号処理装置の更新を行う。既存の処理装置は設計から18年を経ており、回路部品の入手性が悪くメンテナンスができないためである。さらに、1MWを超えるビームの調整には、高精度な光学パラメータの同定が必要であり、高精度な位置データを大量に処理する必要がある。 現装置の位置測定精度は、RF周波数2倍高調波を処理した閉軌道測定誤差が約30μm、パルス波形を処理したバンチ毎測定誤差が約300μmと報告されている。新システムでは、1)アテネータ入力端子部の反射係数の低減、2)アテネータおよびADCでの信号歪とゲイン温度係数の低減、3)ADCの垂直分解能の改善、4)デジタル信号処理部での帯域フィルタリング、によって誤差を1/3に低減することを目指している。 我々は5年前より新アテネータ装置の開発を進め、昨年度には必要数の半数であるが量産を行った。大強度ビームは50Ω入力端で最大200Vppを発生するため、ADC装置の入力電圧範囲に合わせて信号レベルを減衰する必要がある。低反射を実現するため入力インピーダンスを±2%の範囲で微調整し、ケーブルと整合をとる機能を採用し、さらにテスト信号を入力して整合度とケーブル減衰を測定する機能を実現した。また、回路部品を注意深く選定することで出力端子換算の高調波歪80dB以上を達成した。 本発表では、新アテネータ装置の試験結果について報告する。
 
13:00-15:00 
THP017
p.756
J-PARC主リングのビームコリメータ7台体制
Beam collimator system which consists of seven units in J-PARC Main Ring

○白形 政司,高野 淳平,門脇 琴美(高エ研)
○Masashi Shirakata, Junpei Takano, Kotomi Kadowaki (KEK/J-PARC)
 
茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCでは、取り扱う陽子ビームの品質を上げるためにビームラインおよび各加速器リングにビームコリメータを設置している。建設当初、MRのビームコリメータに要求されたビームロス容量は450Wであったが、ビーム強度増強のため必要量は最終的に3.5kWまで上昇した。ビームコリメータはビームのハロー成分を物理的に取り除く際、多量の高エネルギーγ線、中性子線を周囲に放射するため、鉄やコンクリートを使って適切に遮蔽を行う必要がある。トンネルの構造からビームロス一箇所あたりの最大容量が500Wに制限されるため、シングルパス型のコリメータを7台並べて対応する。2012年からコリメータの置き換えを開始し、この度ほぼ最終形となった。MRコリメータシステムは歴史的経緯から二種類のコリメータで構成されており、制御系もふたつに分かれているので、全体の構成をとりまとめて報告しておく。
 
13:00-15:00 
THP018
p.761
テラヘルツ領域におけるチェレンコフ回折放射の測定
Measurement of cherenkov diffraction radiation in the Terahertz region

○南部 健一,日出 富士雄,柏木 茂,鹿又 健,柴田 晃太朗,髙橋 健,長澤 育郎,三浦 禎雄,武藤 俊哉,山田 悠樹,山田 志門,熊谷 航平,濱 広幸(東北大学電子光理学研究センター)
○Kenichi Nanbu, Fujio Hinode, Shigeru Kashiwagi, Ken Kanomata, Kotaro Shibata, Ken Takahashi, Ikuro Nagasawa, Sadao Miura, Toshiya Muto, Hiroki Yamada, Shimon Yamada, Kohei Kumagai, Hiroyuki Hama (ELPH, Tohoku University)
 
東北大学電子光理学研究センターでは、チェレンコフ回折放射を用いた非破壊ビーム位置モニターの開発を行っている。チェレンコフ回折放射の放射強度のビーム位置依存性などの特性を調べるために、今回高密度ポリエチレン製のラジエーターを用いて、テラヘルツ領域のチェレンコフ回折放射を発生させ、その強度分布や分光測定を行ったので報告する。
 
13:00-15:00 
THP019

カーボンナノチューブワイヤーを用いたビームプロファイル測定試験(5)
Beam profile measurement using carbon nanotube wires (5)
○宮尾 智章(KEK J-PARC)
○Tomoaki Miyao (KEK J-PARC)
 
J-PARCリニアックではピークビーム電流50mAで運転しており、3GeVシンクロトロンから1MW以上の出力を目指している。ワイヤーの素材としてカーボンナノチューブを採用してから3MeVの負水素イオン(H-)ビームの調整を実施して現在に至っている。本発表では、ビーム幅を伸ばした状態でのビームプロファイル測定結果とワイヤーに印加するバイアス電圧との関係について述べる。
 
13:00-15:00 
THP020
p.764
超重元素探索実験に於けるHeガス発光を用いたビームプロファイルの測定
Beam profile measurement using helium gas light emission for superheavy element search experiment

○渡邉 環(理研),鴨志田 敦史(日本ナショナルインスツルメンツ),西 隆博,内山 暁仁(理研),金子 健太(住重加速器サービス)
○Tamaki Watanabe (RIKEN), Atsushi Kamoshida (National Instruments Japan Corporation), Takahiro Nishi, Akito Uchiyama (RIKEN), Kenta Kaneko (SHI Accelerator Service Ltd.)
 
新規に建設した超伝導線形加速器SRILACに於いて、ニホニウムに続く新超重元素発見や、医療用放射線同位元素の製造を目指し稼働を続けている。ここで、超重元素探索実験に於いては、ターゲット近傍にヘリウムガスを流しているが、ビームとの衝突によって励起された電子が脱励起する際に発せられる光をCCDカメラで常時監視し、ビームのプロファイルを得ている。ここで得られる画像データは、ビデオサーバーを介して画像解析用PCに送信され、デジタル処理を行っている。新超重元素実験では、可能な限りターゲットの耐久性を延ばしたいので、ビームはターゲット上に十分に広げる必要がある。Heガス発光を用いてビーム拡がりを測定する手法は、非破壊で常時測定できる優位性がある。他に、バッフルスリット、タングステンワイヤ、弾性散乱等の測定と総合的に判断して、ターゲットの安全性を確保している。これらの測定やフィッティング等の解析はLabVIEWによってプログラミングされており、必要に応じて臨機応変にプログラムの変更が可能である。一方、解析データはCA Labを介し、大規模なEPICS 制御システムと共有化しており、更に有効な情報となっている。今回の学会では、測定システムと測定結果について報告する。
 
13:00-15:00 
THP021
p.768
同軸管のマルチパクタリング測定
Measurement of multipactoring in coaxial tube

○岡田 雅之,外山 毅(KEK J-PARC加速器)
○Masashi Okada, Takeshi Toyama (KEK J-PARC)
 
加速器において軌道から外れた粒子が真空ダクトに衝突するなどして発生した浮遊電子は、正荷電ビームによる加速を受けダクト壁に衝突、2次電子を発生させる。二次電子はさらにビームによる加速・衝突を繰り返し、「電子雲」と呼ばれるまでに成長する。電子雲は相互作用によってビームの運動に影響を与えるが、特に同じダクト内をビームが周回するシンクロトロンではその影響は大きくビームを不安定にしロスを発生させる。J-PARC MRでも遅い取り出し運転において電子雲の影響が大きくビーム強度の上限を決める一因となっている。そこで、ビームの代わりに内導体に高周波を印加する同軸管構造のテストベンチを製作し、マルチパクタリングによって発生した電子を電子雲と見立てて電子雲モニタの動作試験やコーティングによる電子雲の抑制の試験を行う事にした。今回、同軸管型のテストベンチの製作し、SUSのダクトのマルチパクタリングの測定を行ったのでその結果を報告する。
 
13:00-15:00 
THP022

GeV領域エネルギー電子を使った測定器開発用テストビームラインのワイヤーターゲットがPF-ARの蓄積ビームおよび入射ビームに与える影響
Effect of the GeV-range test beamline wire target on the stored and injected beams at KEK PF-AR
○高木 宏之,満田 史織,本田 融,内山 隆司,坂中 章悟,佐々木 洋征,谷本 育律,内藤 大地,中村 典雄,長橋 進也,野上 隆史,山本 尚人,池上 陽一,宇野 彰二,佐藤 康太郎,外川 学,中村 勇,花垣 和則,幅 淳二,森 隆志(KEK),安部 草太,寺村 七都,前田 順平(神戸大理),小田川 高大(京大理),鷲見 一路,前田 朱音(名大理)
○Hiroyuki Takaki, Chikaori Mitsuda, Tohru Honda, Takashi Uchiyama, Shogo Sakanaka, Hiroyuki Sasaki, Yasunori Tanimoto, Daichi Naito, Norio Nakamura, Shinya Nagahashi, Takashi Nogami, Naoto Yamamoto, Yoichi Ikegami, Shoji Uno, Kotaro Satoh, Manabu Togawa, Isamu Nakamura, Kazunori Hanagaki, Junji Haba, Takashi Mori (KEK), Sota Abe, Natsu Teramura, Jumpei Maeda (Kobe Univ.), Takahiro Odagawa (Kyoto Univ.), Kazumichi Sumi, Akane Maeda (Nagoya Univ.)
 
蓄積リング内にインターナルターゲットを設置し、蓄積ビームによる制動放射を利用してGeV領域エネルギー電子を生成する素粒子原子核実験用測定器開発のテストビームラインが、KEK PF-ARに建設された。PF-ARは放射光利用運転を行っており、今回建設したテストビームラインは放射光実験と並行して運用される。したがって、インターナルターゲットが放射光の品質に影響を及ぼす事は極力避ける必要があり、蓄積ビームと入射ビームへの影響がないように考慮する必要がある。GeV領域エネルギー電子の生成量を多くするにはワイヤーターゲットをビーム軌道中心に近づけた方が有利となる一方で、ターゲットとの相互作用により蓄積ビームの一部が失われるためビーム寿命は短くなる。どこまで近づける事ができるかはPF-ARのビーム寿命との兼ね合いとなる。また、2017年のKEK LINACからの直接入射路建設以降、PF-ARではトップアップ入射が実施されており、入射時のみターゲットワイヤーを抜くという事ができないため、入射ビームが失われることなくワイヤーの内側に放射減衰することも重要になる。今回の発表では、ターゲットワイヤーの蓄積ビームおよび入射ビームに対する影響を粒子トラッキングを用いて評価したので報告する。
 
13:00-15:00 
THP023

大出力CW-FELに向けたcERL運転調整の現状
Current status of compact ERL operation toward high-power CW-FEL
○谷川 貴紀,島田 美帆,田中 織雅,山本 将博,本田 洋介,宮島 司,下ケ橋 秀典,帯名 崇,加藤 龍好,東 直,中村 典雄,倉田 正和,阪井 寛志(高エネ研)
○Takanori Tanikawa, Miho Shimada, Olga Tanaka, Masahiro Yamamoto, Yosuke Honda, Tsukasa Miyajima, Hidenori Sagehashi, Takashi Obina, Ryukou Kato, Nao Higashi, Norio Nakamura, Masakazu Kurata, Hiroshi Sakai (KEK)
 
2013年に建設されたエネルギー回収型加速器の試験機であるcERLは2016年に1mAの大電流ビームのエネルギー回収に成功した。2020年、NEDOプロジェクトのもとでERLベースの赤外FEL発生の実証の為、2台のアンジュレータが追加され、エネルギー回収なしのバーストモードにおいてレーザー増幅の観測に成功した。 2018年の1mAエネルギー回収達成時はエネルギー回収に最適な低電荷用加速器オプティクスを使用したが、大出力CW-FELの達成にはビームロスのない大電流ビーム輸送、そしてFEL発振の為の高電荷ビーム輸送の両立が必要となる。2020年のレーザー増幅観測後、高電荷FEL用加速器オプティクスを使用してバーストモードによる高電荷ビームのビーム回収の確立、そして高電荷FEL用加速器オプティクスのまま低電荷ビームの高繰り返し化を行い、その際に様々なビームロスが観測された。本発表ではビームロスが発生した原因、そしてその対策について議論しつつ、CW-FELに向けた将来展望を述べる。
 
13:00-15:00 
THP024
p.771
長波長赤外領域における数サイクルFELパルスによる気体、固体の発光現象
Emission phenomena of gases and solids by few-cycle FEL pulses in long-wavelength infrared

○羽島 良一(量研),全 炳俊,大垣 英明(京大エネ研)
○Ryoichi Hajima (QST), Heishun Zen, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.)
 
超放射領域で動作する共振器型自由電子レーザーでは、光の電場を数周期しか含まない極短パルスが生成される。われわれは、京都大学のFEL施設(KU-FEL)にて、このようなFELパルスの生成に成功し、従来の固体レーザーでは実現が困難であった中赤外、長波長赤外の波長領域における強光子場実験に着手した。これまでに8μm 以上の長波長赤外FELパルスを気体(大気、窒素、アルゴン)に集光した際の発光、固体(ZnSe)に集光した際の発光をそれぞれ観測した。本発表では、実験時の運転モード(熱陰極モード、光陰極モード)による集光強度の違いを考慮して、これらの発光のメカニズムを考察した結果を報告する。 本研究は、文部科学省の光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP、JPMXS0118070271)、京都大学ゼロエミッションエネルギー研究拠点(ZE2022B-23)、科研費(22H03881)の助成を受けたものである。
 
13:00-15:00 
THP025
p.775
光クライストロン用バンチャー電磁石の性能改善に関する検討
Consideration for improvement of buncher magnets using for optical klystron

○坂本 文人(秋田高専),全 炳俊(京大エネ研),平 義隆,加藤 政博(UVSOR),山川 清志,近藤 祐治(秋田県産業技術センター),佐々木 昭二,細矢 潤(三栄機械),今野 弘樹(今野工業所)
○Fumito Sakamoto (NIT, Akita college), Heishun Zen (Kyoto Univ.), Yoshitaka Taira, Masahiro Katoh (UVSOR), Kiyoshi Yamakawa, Yuji Kondo (AIT), Shuji Sasaki, Jun Hosoya (Sanei-kikai), Hiroki Konno (Konno-Kogyosyo)
 
光クライストロンを用いてコヒーレント高調波を得るには,電子ビームとシードレーザーパルスの時空間における重なりを精度良く合わせることで電子ビームにたいして十分なエネルギー変調を与えるとともに,エネルギー分散を利用したバンチャー電磁石によるマイクロバンチングの効果を得る必要がある.分子科学研究所UVSORにおいて設置されている光クライストロンでは,3組のダイポール電磁石から成るバンチャー電磁石が採用されているが,これまでのコヒーレント高調波の生成実験では,バンチャー電磁石が持つ保磁力が大きいことが起因となる磁場の不確定性により,これまで理論的に提唱されてきたシードレーザーが持つ周波数チャープが高調波の発生に与える影響など,観測に至っていない現象が多く残っている状況である.既存のバンチャー電磁石は一般的な鋼材であるSS400が用いられているが,これを純鉄またはケイ素鋼材に置き換えた場合,保磁力が低減されることによりヒステリシス特性が改善されることから,磁場の再現性が向上することが期待される.現在,既存ダイポールをスケールダウンしたSS400,純鉄,ケイ素鋼を磁性材料に用いたテストモデルを制作し磁場特性を評価している.本発表では各材料を採用したテストモデルダイポールの磁気特性に関して議論し,バンチャー電磁石の改造についての展望を報告する.
 
13:00-15:00 
THP026

電子線傾き制御によるコヒーレントTHz波の生成および光蓄積共振器の開発研究
Study on generation of coherent THz pulse by tilted electron bunches and development of an optical cavity
○蓼沼 優一,村越 孔太,越智 有希乃,鷲尾 方一(早大理工総研),黒田 隆之助(産総研),坂上 和之(東大光量子研)
○Yuichi Tadenuma, Kota Murakoshi, Yukino Ochi, Masakazu Washio (WISE, Waseda Univ.), Ryunosuke Kuroda (AIST), Kazuyuki Sakaue (UT-PSC)
 
相対論的速度を持つ荷電粒子が媒質中を運動するとき、媒質の屈折率と粒子の速度に依存した角度にチェレンコフ放射と呼ばれる円錐状の放射が発生する。複数の電子からなる電子バンチからこのチェレンコフ放射を発生させる場合、コヒーレント放射を得るにはバンチ圧縮が一般的な手法である。これに対して我々は、新しいコヒーレントチェレンコフ放射の生成手法として電子バンチの傾き制御を実施している。これまでに、特性評価を計測して行っており、現在はさらなる強度増大を目指して光共振器の開発を進めている。早稲田大学のrf-gunではマルチバンチ運転が可能であり、119MHzの繰り返しで150バンチ程度まで対応している。この周波数に対応した共振器長とすることで、THzパルスを同位相で蓄積増大させる。また、往復する光はTOPAS上で全反射することで共振器内に蓄えられるが、この際にTOPAS境界面でのフレネル反射による損失が懸念される。そこで、共振器の設計においてはブリュースター角での入射によって反射による損失を軽減させることを検討した。増大させたTHzパルスは、片方のミラーに空いた取り出し穴から外部へ取り出す設計となっている。本発表では、これまで実施してきたTHzパルスの発生手法とその特性評価、および現在進めている共振器の開発状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP027
p.780
KAGRA真空監視システムへの加速器技術の導入
Introduction of accelerator know-hows to KAGRA's vacuum system

○楊 敏,上窪田 紀彦(KEK/J-PARC),浅見 高史(東大/KEK),山田 秀衛(KEK/J-PARC),都丸 隆行(NAOJ),内山 隆(ICRR)
○Min Yang, Norihiko Kamikubota (KEK/J-PARC), Takashi Asami (UTokyo/KEK), Shuei Yamada (KEK/J-PARC), Takayuki Tomaru (NAOJ), Takashi Uchiyama (ICRR)
 
KAGRA is a large-scale cryogenic gravitational wave telescope in Japan. In December 2022, next collaborative observation on gravitational waves will start. The stable operation of pumps, gate valves and gauges in KAGRA vacuum system is critical, while there has been less effort to develop a remote monitoring system for them. With an MOU between KEK accelerator division, NAOJ and ICRR since 2020, we (KEK) discussed with KAGRA staff and developed a small EPICS-based vacuum monitoring system for KAGRA, which simulates the vacuum control system of J-PARC Main Ring. The system consists of a saba-taro micro server, a MOXA serial device server (a RS485-LAN converter), and a PLC controller with I/O modules. The micro server works as an EPICS IOC. The MOXA connects a cathode gauge (CC-10) and an ion pump (gamma digitel MPCq). The PLC I/O modules accept on/off/fault signals of a roots pump and a TMP (turbo molecular pump), and open/close signals of gate valves. In February 2022, this vacuum monitoring system was installed and tested successfully in the KAGRA tunnel. During the FY2022, we proceed to increase the number of remote monitoring stations. More details will be given in the paper.
 
13:00-15:00 
THP028
p.783
連続運用可能なMeV領域の陽子生成装置の開発
Long term operation of table-top MeV proton generator

○依田 哲彦,森田 泰之,神田 浩樹(阪大RCNP),高久 圭二(神戸常盤大),嶋 達志,福田 光宏(阪大RCNP)
○Tetsuhiko Yorita, Yasuyuki Morita, Hiroki Kanda (RCNP, Osaka Univ.), Keiji Takahisa (Kobe Tokiwa Univ.), Tatsushi Shima, Mitsuhiro Fukuda (RCNP, Osaka Univ.)
 
十数MeVの陽子ビームは、短寿命RIであるPET薬剤の18Fや67Cu等の生成に利用される。この陽子ビームをサイクロトロンなどの加速器を使わず、より手軽な方法として核融合反応 3He+D→p+4He (D:重 陽子、p:陽子)を利用することを検証してきた。この核融合反応の結果放出される 14.67MeV の陽子により、研究室レベルで気軽に使用でき、また、導入コストが低いテーブルトップ サイズの小型陽子源の実現が期待される。この核融合反応による陽子生成を連続運転しようとした場合、3Heビームの安定生成の他にD標的の安定性が重要となってくる。本研究で3Heイオン源の大強度化とともに、D標的の構造の最適化が重要となってくる。つまり大強度ビームの熱負荷に耐えられつつ、生成した陽子のエネルギーロスを極限まで低減する構造であり、更にDが標的として安定して存在することが求められる。発表ではTi蒸着膜形成装置を利用した標的装置による陽子生成実験の状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP029
p.787
山形大学医学部東日本重粒子センター建設の現状 (4)
Construction status of East Japan Heavy Ion Center, Faculty of Medicine, Yamagata University (4)

○岩井 岳夫,想田 光,金井 貴幸,宮坂 友侑也,イ ソンヒュン,柴 宏博(山形大・医),勝間田 匡(加速器エンジニアリング),佐藤 啓,佐藤 慎哉,上野 義之,根本 建二(山形大・医)
○Takeo Iwai, Hikaru Souda, Takayuki Kanai, Yuya Miyasaka, Sung Hyun Lee, Hongbo Chai (School of Medicine, Yamagata Univ.), Masashi Katsumata (AEC), Hiraku Sato, Shinya Sato, Yoshiyuki Ueno, Kenji Nemoto (School of Medicine, Yamagata Univ.)
 
山形大学医学部では2017年に重粒子線治療施設建設プロジェクトを開始し、2021年2月に治療を開始した。水平ビームによる前立腺癌の治療を実施しているが、2022年5月に回転ガントリーを用いた頭頸部癌の治療をスタートし、順次対象部位を拡大する予定である。 主加速器は普及小型重粒子線治療装置の設計を踏襲した430 MeV/uシンクロトロンである。運転開始当初は加速途中のロスが大きくビーム利用効率が悪かったため前立腺の照射時間が2分程度かかっていたが、メーカーと協力して改善し、1分30秒程度で照射できるようになった。今後は減速中のロスを低減し低エネルギー帯の効率改善を目指している。稼働初期に真空悪化や低エネルギービーム輸送系のアインツェルレンズ電源の故障などで長時間の治療遅延を余儀なくされたことはあったが、ここ11ヶ月は3時間を超えるような遅延なく治療に提供できている。 水平ポートのみの固定照射室では、スキャニング照射法による前立腺癌の治療を実施している。1日30件弱の照射により、既に治療完了した患者数は350を超えている。 回転ガントリー照射室では、ガントリー角度毎のビーム調整を実施しており、現状で7角度のみ完了している。今後はガントリーより上流側のビーム輸送系の再調整を実施し、角度補間を機能させて治療に使える角度を増やすこととしている。講演では、最新のセンター運用状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP030

マルチイオン源の低エネルギー輸送系における4He2+ビームのエミッタンス増大量の評価
Emittance growth of 4He2+-ion beams in low-energy beam transport for a new ECR ion source
○片桐 健,村松 正幸,岩田 佳之,白井 敏之(量研),野村 真史,坪松 悟史,楠岡 新也,藤原 正,戸内 豊,橘 正則(住重),佐々野 利信,鈴木 太久,高橋 勝之,白石 直浩(AEC)
○Ken Katagiri, Masayuki Muramatsu, Yoshiyuki Iwata, Toshiyuki Shirai (QST), Shinji Nomura, Satoshi Tsubomatsu, Shinya Kusuoka, Tadashi Fujiwara, Yutaka Touchi, Masanori Tachibana (SHI), Toshinobu Sasano, Taku Suzuki, Katsuyuki Takahashi, Tadahiro Shiraishi (AEC)
 
HIMAC(QST)における重粒子線がん治療では,さらなる治療効果の向上と副作用の低減を狙って,4種類のイオン(He, C, O, Ne)により線質・線量分布を最適化して治療照射を行う,マルチイオン照射法の実用化が進められている。この照射法が用いられる,次世代の小型重粒子線治療装置である量子メスのために,素早いイオン切り替え機能を持つECRイオン源(マルチイオン源)の開発が現在進められている。 これまでにHIMACで実施した4He2+イオンの加速試験では,イオン源の直下流で十分な電流量(I ~ 1―2 mA)が得られていても,長い低エネルギー輸送系(LEBT)を通過する間にビームロスが生じ,後段のRFQ入り口では治療供給に要求される電流量を十分に得られないことが明らかになっている。この主な原因は,空間電荷効果によるエミッタンスの増大であると考えられており,量子メスにおけるLEBTの設計の際にはその影響を十分に検討する必要がある。本発表では,Particle-in-cell法によるイオンの軌道解析の結果,及びマルチイオン源テストベンチにおける実験結果との比較により,エミッタンス増大量の電流依存性,輸送距離依存性を調査し,LEBT設計の際の要件を検討する。
 
13:00-15:00 
THP031

超伝導空洞のストリング組立に用いられるブランクフランジ・ベローズ交換システムの開発
Development of replacement system between blank flange and bellows for cavity string assembly of superconducting cavity
○山本 康史,平木 雅彦,梅森 健成,阪井 寛志,道前 武(高エネルギー加速器研究機構)
○Yasuchika Yamamoto, Masahiko Hiraki, Kensei Umemori, Hiroshi Sakai, Takeshi Dohmae (KEK)
 
高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、2021年度に日仏協力の下で超伝導空洞の空洞ストリング(連結)作業のために用いられるブランクフランジとベローズの交換システムを開発した。空洞ストリング作業は、通常、3名の作業者がイオンガンによるクリーニングの後、ブランクフランジ取外 → ベローズ取付 → ボルト締結、という流れで作業が進む。このブランクフランジとベローズの交換を、人を介さずに行うことで、空洞内へのダスト混入のリスクを下げることができる。すでにコミッショニングに成功しており、今後、さらなる改良を行う予定である。本講演では、このブランクフランジとベローズの交換システムの開発状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP032

Nb3Sn超伝導加速空洞のための新規成膜手法の開発
Development of a novel deposition method for Nb3Sn superconducting accelerating cavities
○井藤 隼人,早野 仁司,文珠四郎 秀昭(KEK),柏木 茂(東北大学),本多 史憲(九州大学)
○Hayato Ito, Hitoshi Hayano, Hideaki Monjushiro (KEK), Shigeru Kashiwagi (Tohoku University), Fuminori Honda (Kyushu University)
 
We report on a new deposition method for Nb3Sn superconducting accelerating cavities. In the conventional method, SnCl2 and Sn are heated and evaporated in a vacuum furnace to perform Nb3Sn nucleation by SnCl2 vapor and Nb3Sn grain growth by Sn vapor. However, in this method, the nucleation density is limited by the SnCl2 vapor pressure resulting in the formation of the Nb3Sn layer with poor surface smoothness. This study aims to fundamentally solve the limitation caused by SnCl2 vapor pressure by depositing an Sn layer on the Nb substrate before the nucleation process. In this contribution, we present the detail of the deposition method to solve this problem and test results for the samples.
 
13:00-15:00 
THP033
p.790
機械学習を用いた空洞内面欠陥自動検出ソフトの開発
Development of automatic cavity defect detection software with machine learning

○荒木 隼人(KEK),浅野 峰行(株式会社NAT),早野 仁司(KEK),飯竹 真之(S-works)
○Hayato Araki (KEK), Mineyuki Asano (NAT Co., Ltd.), Hitoshi Hayano (KEK), Masayuki Iitake (S-works)
 
ニオブ製超伝導加速空洞の性能を制限する原因の一つに,溶接部付近の欠陥 (defect) の存在がある.この対策として,内面検査装置を使用して内面を撮影して欠陥を発見,局所研磨装置で除去するという方法がある.現状では撮影した画像から人の目で欠陥を探しているが,これを機械学習による物体検出の手法で自動化するソフトウェアを開発している.過去10年以上に渡る KEK での内面検査結果を教師データとして活用することで,テストデータにおける性能比較では人間による検査に劣らない精度が得られた.このソフトウェアの仕組みと開発の現状,高性能化に向けた今後の開発予定を報告する.
 
13:00-15:00 
THP034
p.793
サイクロトロンの高エネルギー効率化に向けた高温超伝導加速空洞の物理設計
High-temperature superconducting cavity design for improving energy efficiency of cyclotron

○武田 佳次朗,福田 光宏,神田 浩樹,依田 哲彦(核物理研究センター),篠塚 勉,伊藤 正俊(東北大CYRIC),倉島 俊,宮脇 信正(QST高崎),涌井 崇志(QST量医研),中尾 政夫(群大GHMC),松田 洋平(甲南大),森田 泰之,原 隆文,荘 浚謙(核物理研究センター)
○Keijiro Takeda, Mitsuhiro Fukuda, Hiroki Kanda, Tetsuhiko Yorita (RCNP), Tsutomu Shinoduka, Masatoshi Ito (CYRIC), Satoshi Kurashima, Nobumasa Miyawaki (QST-Takasaki), Takashi Wakui (QST-NIRS), Masao Nakao (GHMC), Yohei Matsuda (Konan Univ), Yasuyuki Morita, Takaumi Hara, Tsun Him Chong (RCNP)
 
サイクロトロンは同一の電磁石と加速空洞を使ってCW運転できるためエネルギー効率が高い傾向がある。その中でもPSIのリングサイクロトロンHIPAは18%という最大のエネルギー効率を誇るが、常伝導加速空洞が全消費電力の約70%を消費しており、更なる高効率化には大強度化または省電力化が求められる。大阪大学RCNPではイオン源、入射/引出効率などの大強度化に向けた要素技術開発を行いつつ、高温超電導磁石や超伝導加速空洞などの高エネルギー効率化に向けた概念~詳細設計を進めてきた。 本研究では、超伝導物質MgB2を使用したサイクロトロン高温超伝導加速空洞の物理設計を行い、陽子1MW(100MeV, 10mA)をエネルギー効率30%で加速可能であると示すことを目的としている。MgB2は臨界温度が39Kと高く20K程度での運転が期待されているが、下部臨界磁場が20mTと小さく、加速空洞と隣り合わせで存在する電磁石の漏洩磁場下でも安定的に運転させる必要がある。またMgB2成膜技術に加え、数mサイズの空洞を超伝導化させることも重要な課題である。 本発表では、サイクロトロン超伝導加速空洞のRF解析、クライオモジュールを含めた熱解析結果を報告し、エネルギー効率30%を達成するための課題についても議論する。
 
13:00-15:00 
THP035
p.798
KEKの縦型電解研磨装置向けカソード、空洞水冷機構の作製
Fabrication of a cathode and a cavity water cooling system for KEK vertical electro-polishing equipment

○仁井 啓介,井田 義明,上田 英貴,朱 龍,中根 圭造(マルイ鍍金工業株式会社),赤堀 卓央,佐々木 明日香,東山 正人,三澤 宏太,水戸谷 剛,吉本 恵一(東日本機電開発株式会社),姉帯 康則,菊池 真哉,高橋 福巳(株式会社WING),梅森 健成,後藤 剛喜,早野 仁司(KEK)
○Keisuke Nii, Yoshiaki Ida, Hideki Ueda, Long Zhu, Keizo Nakane (Marui Galvanizing Co., Ltd.), Takao Akabori, Asuka Sasaki, Masato Higashiyama, Kota Misawa, Goh Mitoya, Keiichi Yoshimoto (Higashi-Nihon Kidenkaihatsu Co., Ltd.), Yasunori Anetai, Shinya Kikuchi, Fukumi Takahashi (WING Co., Ltd.), Kensei Umemori, Takeyoshi Goto, Hitoshi Hayano (KEK)
 
KEKの超伝導加速器利用促進化推進棟(COI棟)では、ニオブ製9セル空洞用縦型電解研磨(VEP)装置が導入、設置されVEP実施に向けた立上げが進められている。今回、岩手コラボの三社(マルイ鍍金工業株式会社、東日本機電開発株式会社、株式会社WING)とKEKが共同でこのVEP装置で使用するニンジャカソード一式、空洞水冷機構(冷却水循環機構、EPベッドカバーなど)を設計、作製した。これらの仕様、設置状況、動作確認の結果等について報告する。また、電解液の2フロー方式によるVEP実施に向けた改造、調整も進めている。これらの進捗状況についても報告する。
 
13:00-15:00 
THP036
p.802
KEK におけるニオブ製超伝導空洞の高加速勾配化・低損失化の研究
High-Q and high-G R&D at KEK for Nb superconducting RF cavity

○片山 領,梅森 健成,道園 真一郎,オメット マチュー,井藤 隼人,荒木 隼人(高エネルギー加速器研究機構)
○Ryo Katayama, Kensei Umemori, Shinichiro Michizono, Omet Mathieu, Hayato Ito, Hayato Araki (kek)
 
超伝導空洞の性能は空洞に施された冷却過程と表面処理工程の如何に応じて大きく変化するが、近年、海外研究機関において、空洞の急速冷却、低温電解研磨、二段階の低温ベーキング処理(2-step bake)など、従来の手法よりもさらなる性能向上を達成できる実験技術・表面処理工程が相次いで発見・報告されている。実際にその技術的な制御が可能であれば、超伝導空洞のさらなる高電界化・低損失化(High-G, High-Q 化)を実現でき、ILC 計画や超伝導空洞の産業応用等にインパクトがあると予想される。そこで、KEK でも上記の手法を適用した空洞の電界性能を評価することにより、その有効性の実験的な検証を進めてきた。本報告では、主に空洞の急速冷却、低温電解研磨、 2-step bake に関連した超伝導空洞の高電界化・低損失化の研究の現状について報告する。
 
13:00-15:00 
THP037
p.806
KEK-COI棟の縦型電解研磨設備設置の進捗状況
Installation progress of the vertical electropolishing facility in KEK-COI building

○後藤 剛喜,早野 仁司,梅森 健成,文珠四郎 秀昭(高エネ研)
○Takeyoshi Goto, Hitoshi Hayano, Kensei Umemori, Hideaki Monjushiro (KEK)
 
現在,高エネルギー加速器研究機構(KEK)の超伝導加速器利用促進化推進(COI)棟において,超伝導Nb空洞の表面処理能力を増やすために縦型電解研磨(EP)設備の導入工事が進捗しており,その状況について報告する。本設備ではKEKで既に導入実績がある横型EP方式(空洞を水平姿勢でEP処理)ではなく,空洞を垂直姿勢でEP処理を行う縦型方式を採用している。その理由として,(1)縦型方式の方が設備の機械機構の大幅な簡略化が可能(空洞姿勢の回転機構が不要など),(2)縦型の方が設備設置に必要なエリアが狭くできるなど,大幅なコスト削減が可能となるためである。Nb空洞のEP処理に用いる電解液はフッ酸-硫酸の混酸と非常に危険な液体であり,その取扱や環境への漏洩の防止に関して厳しい対策が必要となる。そのため、管理柵と防液堤の設置,漏液と有害ガス発生の検知を含めた化学安全設備を構築し,第1段階として水を用いた設備運転を行なって運転の安全性を確かめた。それらの詳細について報告する。
 
13:00-15:00 
THP038
p.811
電磁石コイルのインピーダンス測定による健全性評価の検討
Evaluation of the integrity of electromagnet coils by impedance measurement

○門脇 琴美,白形 政司,高野 淳平(高エネルギー加速器研究機構)
○Kotomi Kadowaki, Masashi Shirakata, Junpei Takano (KEK)
 
J-PARCにはLINAC, RCS, MRの3つの加速器があり、3-50BTはRCSとMRを繋ぐビーム輸送路である。 2019年、3-50BTに設置されている電磁石がコイルからの漏水により故障し、ビーム停止となる事象が2回起こった。故障した電磁石のコイルについて様々な調査を行ったところ、正常な状態からの変化を捉えるために最も有用な手法だったのはインピーダンス測定であった。 調査の結果から、2件の故障のうち1件はコイル内部にあるホローコンダクターの継ぎ目からの漏水が原因であり、もう1件はホローコンダクターと通水パイプの継ぎ目からの漏水が原因であったと推測された。3-50BTには漏水を起こした電磁石と同様の設計の電磁石が複数設置されており、今後同様の故障が起こることが懸念されている。 これまでの調査結果から、コイルのインピーダンス測定により電磁石の 異常の予兆を捉えることができると考えられているため、現在は定期的にインピーダンス測定を行っている。しかし、電磁石の台数が多く、時間や労力が限られていることから、より効率的な測定を行うために測定手法の検討が行われている。 本発表では、電磁石のインピーダンス測定手法の検討結果およびこれまでの測定結果について報告する。
 
13:00-15:00 
THP039
p.815
1.7kV SiC MOSFETを用いた半導体キッカー電源用LTD回路ユニットの連続運転
Evaluation of an LTD circuit unit continuous running operation using 1.7kV SiC MOSFET for a semiconductor kicker power supply

○亀崎 広明,生駒 直弥,虫邊 陽一,中田 恭輔,徳地 明(株式会社パルスパワー技術研究所),高柳 智弘,小野 礼人,杉田 萌(J-PARC/JAEA),堀野 光喜,植野 智晶(株式会社NAT)
○Hiroaki Kamezaki, Naoya Ikoma, Yoichi Mushibe, Kyosuke Nakata, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Laboratory Ltd.), Tomohiro Takayanagi, Ayato Ono, Moe Sugita (J-PARC/JAEA), Koki Horino, Tomoaki Ueno (NAT Corporation)
 
我々はLTD(Linear Transformer Driver)方式の半導体キッカー用電源の開発を続けている.2021年にはLTD回路基板に1.7kV SiC MOSFETを採用した.これにより,LTD回路基板ユニットは従来型と比較して540mmの短尺化と,抵抗負荷20Ωに対して定格40kV,2kApを単発出力し,立ち上がり時間140nsから60nsへの高速化を実現した.今回,20Ωの同軸ケーブル負荷に対して25Hzの定格連続運転を実施した.この結果を報告する.
 
13:00-15:00 
THP040
p.818
13kV SiC- MOSFETを用いた高電圧パルス電源の開発
Development of high voltage pulsed power supply using 13kV SiC- MOSFET

○中田 恭輔,徳地 明(㈱パルスパワー技術研究所),東使 潔,小林 進二(京都大学)
○Kyosuke Nakata, Akira Tokuchi (PPJ), Kiyoshi Tohshi, Shinji Kobayashi (Kyoto University)
 
核融合研究や加速器研究において、高電圧パルス電源にはサイラトロンや四極管などの真空管が広く用いられているが、これらのデバイスは寿命が短く、又、生産中止等で供給が不安定であるなど多くの問題を抱えている。これらの問題を解決し、研究を不安なく継続できるようにするために、我々は13kVという高耐圧のSiC-MOSFETを用いて高電圧パルス電源の開発を進めている。 最近の開発状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP041
p.822
超伝導RF電子銃のエネルギー測定のための90度偏向電磁石の製作と磁場測定
Manufacture and magnetic field measurement of 90 degrees bending magnet for superconducting RF gun emittance measurement

○植木 竜一,大澤 康伸,土屋 清澄,寺島 昭男,増澤 美佳,王 旭東(KEK),許斐 太郎(ミシガン州立大学)
○Ryuichi Ueki, Yoshinobu Ohsawa, Kiyosumi Tsuchiya, Akio Terashima, Mika Masuzawa, Xudong Wang (KEK), Taro Konomi (MSU)
 
超伝導RF電子銃は高電界加速および高繰り返し運転の両方が実現可能な電子銃であり、CW-FELへの応用など世界的に開発が進められている。KEKでは、ERLへの応用を目指して1.3 GHz、1.5セルの超伝導空洞とK2CsSBフォトカソードから構成される超伝導RF電子銃の開発が行われている。2021年までに超伝導RF電子銃2号機の製造および電子銃単体での性能試験が行われ、最大表面電場75 MV/m、最大表面磁場170 mTという高い値を実現した。現在、電子銃のビーム性能試験のための各コンポーネントの整備が進められている。ビーム試験の一つとして、電子ビームのエネルギー測定が予定されており、電子ビーム収束用の超伝導ソレノイド磁石を通過したビームを90度偏向させ、ビームモニターを使って測定を行う。90度偏向電磁石は、曲率半径100 mmとし、磁極の中心から±10 mmにおいて±0.5%の磁場精度が要求される。また500 keVおよび2 MeVのビームエネルギーでの試験が予定されているため、どちらのエネルギー領域にも対応でき、要求される磁場精度を実現するための偏向電磁石の設計を行った。2022年3月までに製作および磁場測定が終了した。本発表では、ERL用に開発された超伝導RF電子銃のエネルギー測定を行うために製作した90度偏向電磁石の設計と製作、磁場測定の詳細を報告する。
 
13:00-15:00 
THP042

電磁石電源用 650V/3000A 水冷大電流IGBTユニットの開発
Development of water cooled large current 650 V/3000 A IGBT Unit for magnet power supply
○渡辺 泰広(日本原子力研究開発機構)
○Yasuhiro Watanabe (JAEA)
 
シンクロトロンで使用する電磁石電源において,出力電流1000 Aクラスの電磁石電源を構成する場合, 既存のIGBTユニットでは電流容量が不足することから, 所要の電流容量を確保するためIGBTユニットを並列接続する必要がある。 IGBTユニットを並列接続する場合,IGBTユニット間の循環電流を抑制するため出力側にリアクトルを接続することが不可欠となるが, IGBTユニットの員数分必要となることから,電源盤の体積増加や電力損失増加の要因となる。 本論文では,シンクロトロン用電磁石電源に適した大電流水冷IGBTユニットの開発について報告する。 開発したIGBTユニットは,三相ダイオード整流回路とフルブリッジ回路を一体化したものであり, 出力側をカスケード接続することにより,最大8直列のマルチレベル変換器が構成可能である。 IGBTユニットに搭載するIGBTモジュールとダイオードモジュールは,共通の水冷フィンで冷却することで冷却効率を高め,ユニット寸法の低減と, 電源室の空調負荷の低減を図っている。 フルブリッジ回路に使用するスイッチング素子として, 定格電圧650V,定格電流600AのIGBTモジュールを5並列接続して共通のゲート回路でドライブすることにより, 等価的に定格3000Aを得ることができるため,IGBTユニットを並列接続することなく大電流の電源回路を構成することが可能となる。
 
13:00-15:00 
THP043
p.826
KEK電子陽電子入射器における大電力高周波源の運転及び維持管理(2021年度)
Operation and maintenance activity of RF system in KEK electron-positron linac(FY2021)

○東福 知之,今井 康雄,馬場 昌夫,久積 啓一(三菱電機システムサービス(株)),明本 光生,荒川 大,荒木田 是夫,片桐 広明,川村 真人,設楽 哲夫,竹中 たてる,中島 啓光,夏井 拓也,本間 博幸,松本 利広,松下 英樹,三浦 孝子,矢野 喜治,松本 修二(高エネルギー加速器研究機構)
○Tomoyuki Toufuku, Yasuo Imai, Masao Baba, Keiichi Hisazumi (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Yoshio Arakida, Hiroaki Katagiri, Masato Kawamura, Tetsuo Shidara, Tateru Takenaka, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Hiroyuki Honma, Toshihiro Matsumoto, Hideki Matsushita, Takako Miura, Yoshiharu Yano, Shuji Matsumoto (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器は、最大で7GeVの電子および4GeVの陽電子を加速する線形加速器であり、4つのエネルギーの異なるリングへの入射を行なっている。高周波源として総数60台の大電力Sバンドクライストロンが使用され、また高電圧スイッチとしてサイラトロンが使用されている。2021年度中は約6,400時間の運転が行われた。現在設置されている大電力Sバンドクライストロンアセンブリの平均運転時間は約74,000時間である。2021年度にはクライストロン冷却水配管からの水漏れによる交換やクライストロンタンク内水混入による交換など計4台の交換が行われた。クライストロンタンク内の水混入については別途点検の為、クライストロンアセンブリを解体した際に判明し、交換に至った。現在設置されているサイラトロンの平均運転時間は約38,000時間である。2021年度はキープアライブ電流低下などのトラブルにより計6台の交換が行われた。クライストロンから加速管へ至るマイクロ波搬送路の途中に設置されている導波管高周波窓の平均運転時間は約102,000時間である。2013年長期メンテナンス後から2021年度までの期間でユニット追加や復元により新たに設置する事はあったが、真空トラブルなどにより交換する事は無かった。本稿ではクライストロン,サイラトロン,導波管高周波窓に関する統計及び高周波源に関する不具合事例と運転維持管理について報告する。
 
13:00-15:00 
THP044
p.831
RFSoCのMTCA規格制御カードの評価状況
Evaluation status of RFSoC MTCA control card

○漁師 雅次,岩城 孝志,黒崎 裕也,濱洲 竜斗,林 和孝,張替 豊旗,平林 透矢,山浦 正義,山崎 伸一(三菱電機特機システム株式会社)
○Masatsugu Ryoshi, Takashi Iwaki, Yuya Kurosaki, Ryuto Hamasu, Kazutaka Hayashi, Toyoki Harigae, Touya Hirabayashi, Masayoshi Yamaura, Shinnichi Yamazaki (Mitsubishi Electric TOKKI Systems)
 
加速器制御では、安定したビームを作るために空洞内の高周波信号の振幅や位相をモニタしてフィードバック制御している。また、空洞の入力部などの進行波および反射波をモニタして高周波機器の制御をしている。最新のFPGA(Field Programmable Gate Array)であるRF-SoC(Radio Frequency - System on Chip)は、一部のXバンドまでのRF信号を直接A/D(Analog/Digital)変換したり、D/A(Digital/Analog)変換にて出力したりできる。これにより多くの高周波制御機器の非線形性のある回路をなくす構成が可能となる。高密度実装技術により、RFSoCを実装した基板サイズが73.5[mm]x180.6[mm]と小さいMTCA規格の制御カードを開発した。1次試作の評価で見られた課題に対して改善を試みた2次試作の評価状況を報告する。
 
13:00-15:00 
THP045
p.836
RCNP AVFサイクロトロン新RF共振器立ち上げの現状
Status of the new RF cavity for the AVF cyclotron in RCNP

○安田 裕介,福田 光宏,畑中 吉治,関 亮一,森信 俊平,齋藤 高嶺,依田 哲彦,神田 浩樹,友野 大,田村 仁志,永山 啓一,Koay HuiWen,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,荘 浚謙,Zhao Hang,橘高 正樹,松井 昇大朗(阪大RCNP)
○Yusuke Yasuda, Mitsuhiro Fukuda, Kichiji Hatanaka, Ryoichi Seki, Shunpei Morinobu, Takane Saito, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Dai Tomono, Hitoshi Tamura, Keiichi Nagayama, Huiwen Koay, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Tsunhim Chong, Hang Zhao, Masaki Kittaka, Shotaro Matsui (RCNP, Osaka University)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では、2019年度からAVFサイクロトロンの高機能化工事を実施し、2022年3月からビーム加速を再開した。 高機能化工事の中でAVFサイクロトロンのRF加速部分は、1ターンあたりのエネルギーゲインを上げるため、これまでの180度ディー共振器1台を廃し、新たに90度ディー共振器2台を導入した。これまでは、励振周波数6~18MHzで、主にハーモニクス1での加速を行っていたが、新しい2台の共振器では、16~36MHzの励振周波数で、ハーモニクス1、2、3、6での加速を行う。   これまでのところ、新しいRFアンプと共振器の組み合わせで、Dee電圧50kV以上を目指して調整を続けているが、目標到達は一部周波数にとどまっている。励振周波数によっては、RFアンプから共振器との間で2倍波、3倍波が大きくなる状況となり、共振器にパワーが入らなかったり、アンプ内部での放電や出力同調コンデンサ、電力伝送同軸管の焼損トラブルが発生した。   2倍波、3倍波の影響を回避するために、RFアンプ、共振器、RFアンプから共振器までを接続した系のインピーダンス測定を行い、それらを基に改善に取り組んでいる。   本発表では、実施した対策とその効果、RF運転の状況について報告する。
 
13:00-15:00 
THP046
p.839
STF-2加速器におけるLバンドRF電子銃ロングパルス運転に向けた高周波系
RF system for long-pulse operation of L-band RF-gun at STF-2 accelerator

○沼田 直人,石本 和也,塙 泰河(NAT),明本 光生,荒川 大,片桐 広明,中島 啓光,松本 修二,,松本 利広,三浦 孝子(KEK)
○Naoto Numata, Kazuya Ishimoto, Taiga Hanawa (NAT), Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Hiromitsu Nakajima, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura (KEK)
 
KEKの超伝導RF試験施設(STF)では、国際リニアコライダー(ILC)開発に向けた超伝導空洞を用いた線形加速器(STF-2加速器)の運転を行っている。STF-2加速器は、RF電子銃から電子ビームを加速する構成である。このRF電子銃空洞へ安定なマイクロ波を供給するため、5 MWクライストロンによる高周波系を構築、管理をしてきた。2021年度のビーム加速試験では、繰り返し5 Hz、RFパルス幅150 μs、RF電子銃入力パワー 3.87 MWで運転している。今年度以降、STF-2加速器は7倍にビームパワーを上げて運転を行う予定である。このため、RF電子銃の高周波系でもロングパルスでの安定的な運転が要求され、放電等の発生状況や発生箇所の特定等の精度を高めるためのモニタシステムの開発や放電発生後の復旧時間の短縮を目指した高周波系の開発を進めている。本報告では、現状のRF電子銃の運転状況とビームパワーを上げた時に安定に運転を行うための各種対策について報告を行う。
 
13:00-15:00 
THP048
p.844
サイラトロン代替用半導体スイッチの開発
Solid-state switch development for thyratron replacement

○明本 光生,本間 博幸,川村 真人,松本 修二,中島 啓光,夏井 拓也,設楽 哲夫(KEK),徳地 明,木田 保雄(PPJ)
○Mitsuo Akemoto, Hiroyuki Honma, Masato Kawamura, Shuji Matsumoto, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Tetsuo Shidara (KEK), Akira Tokuchi, Yasuo Bokuda (PPJ)
 
 KEK電子・陽電子入射器は高周波源として60台の最大50 MW、パルス幅4 µs、繰り返し50ppsのマイクロ波を出力するSバンドクライストロンを使用している。それを駆動する電源としてサイラトロンを使用したPFNタイプのパルス電源が用いられている。本発表では、このサイラトロン代替用43kV, 4.3kA半導体スイッチの開発について報告する。
 
13:00-15:00 
THP049
p.848
SuperKEKB超伝導四極収束電磁石の振動測定装置の開発
Development of vibration measurement system for superconducting quadolepole magnet in SuperKEKB

○山岡 広,大内 徳人,青木 和之(高エネ研),Parker Brett(BNL),Jain Animesh(ANL)
○Hiroshi Yamaoka, Norihito Ohuchi, Kazuyuki Aoki (KEK), Brett Parker (BNL), Animesh Jain (ANL)
 
現在本所では、KEKB加速器の40倍のルミノシティを目指してSuperKEKB計画が進行し、ビーム運転をしている。このルミノシティを実現するための1つの手段として、衝突点でのビームを垂直方向に50nmまで絞り込むための最終収束超伝導電磁石(QCS)が衝突点を挟んで左右に2台設置されている。ルミノシティ向上のためには、QCS内部に複数組み込まれている四極電磁石の相対的振動レベルを知ることが重要な事である。このため、この振動を測定するための低振動測定装置システムの開発をおこなった。システムはピックアップコイルが先端に取付けてある約3.5mのCFRPロッドと、それを支える支持架台から構成される。システムの開発にあたって本体そのものが振動してはいけない事から振動レベルを数ナノメートル以下に抑える事を目標とした。このため支持架台はパッシブ除振思想を取り入れた構造として開発をおこない、アクティブ除振台と組み合わせることで低振動化を目指した。その結果、システムの振動レベルを1ナノメートル以下に抑えることができ、またピエゾアクチュエータを用いた加振台を製作し、永久四極磁石(PMQ)を用いた加振試験で電圧信号を無事測定することが出来た。 本報告ではこの振動測定システムの開発について述べる。
 
13:00-15:00 
THP050
p.853
SuperKEKB電磁石用冷却水の現状(2)
Status of the SuperKEKB magnet cooling water system (2)

○大澤 康伸,植木 竜一,古澤 将司,増澤 美佳(高エネ研)
○Yasunobu Ohsawa, Ryuichi Ueki, Masashi Furusawa, Mika Masuzawa (KEK)
 
SuperKEKB加速器は、2010年まで運転を続けたKEKB加速器を大幅にグレードアップさせたものである。2018年4月に初めてビーム衝突が行われ、2019 年3月11日からBELLE II検出器がフル装備され物理実験が開始された。2022年5月10日には、ピークルミノシティ3.939E34 cm^-2s^-1の世界最高記録を更新し、現在も物理実験が行なわれている。 安定した衝突実験を行い加速器の性能を上げていくためには、電磁石の安定した運用が必要不可欠である。そのためには、水冷式電磁石1750台に送られる冷却水の温度、圧力、流量の状態を安定に維持することが重要である。運転初期には、ストレーナーやバルブに酸化銅由来の不純物の付着などが多く見られ、流量低下によるビームアボートを引き起こした。その後、KEKB加速器から再利用した電磁石のフロースイッチからの水漏れによりビーム運転を停止する事態も起きた。このように運転開始からいくつかの電磁石冷却水由来のビームアボートが発生したが、その都度、不純物や老朽化への対応策を行ってきた。これらの対策が功を奏し、2019年10月の運転以降、3年近く電磁石冷却水由来のビームアボートがない状態が続いている。 本論文では、SuperKEKBで発生した電磁石冷却水関連のトラブルとその対応策を報告する。
 
13:00-15:00 
THP051
p.857
SuperKEKB HER-QAマグネットの冷却水配管清掃
The cooling water pipe cleaning of SuperKEKB HER-QA magnet

○古澤 将司,植木 竜一,大澤 康伸,増澤 美佳(高エネ研)
○Masashi Furusawa, Ryuichi Ueki, Yasunobu Ohsawa, Mika Masuzawa (KEK)
 
SuperKEKB加速器では、電子、陽電子リングで使用されている常伝導電磁石の冷却のために、合計約21640L/minの冷却水が地上の8棟の機械棟から送られている。2021年の夏季シャットダウン中に行った流量測定の結果、電子リングの四極電磁石の一種のHER-QA電磁石において、冷却水配管への不純物堆積により流量が低下していることが分かった。この流量低下の対策として、2021年秋の運転から加速器メンテナンス時に、1~2台のHER-QA電磁石の配管清掃を実施した。この際、より効率的に流量が改善できるように清掃器具の選定および清掃方法の検討も同時に行った。冷却水ホースの長さに合わせた特注の清掃用ブラシを製作し清掃するなどの方法で1台の電磁石にかかる清掃時間を短縮し、さらに流量回復を実現することができた。この方法を用いて昨年から今年まで清掃を実施したHER-QAマグネット148台について、大幅に流量が回復し大きな成果が得られた。特に2021年末の長期メンテナンス5日間で清掃を実施した109台分については、清掃前後で1台当たり平均7.6L/minから11.0L/min程度まで流量が回復した。本会では、HER-QA電磁石の冷却水流量低下、これまでに実施した冷却水配管清掃作業の概要、及び清掃前後の流量の推移について報告する。
 
13:00-15:00 
THP052

パルスX線源のためのコンパクト直流型光陰極電子銃の軌道シミュレーション
Simulation of compact DC photocathode gun for short-pulsed X-ray tube
○澁谷 達則,加藤 英俊,佐藤 大輔(産総研),東口 武史(宇大),黒田 隆之助,大島 永康(産総研)
○Tatsunori Shibuya, Hidetoshi Katoh, Daisuke Satoh (AIST), Takeshi Higashiguchi (Utsunomiya Univ.), Ryunosuke Kuroda, Nagayasu Ooshima (AIST)
 
小型のX線菅は可搬性に優れており、インフラ診断や医療診断などに利用されている。民生品では連続からマイクロ秒までのパルス発生が可能であるが、その基本的な発生原理は制動放射であるため、放出時間は電子が原子から偏向されるフェムト秒まで短くすることができると考えられる。本研究では、フェムト秒レーザーによる光陰極型の電子源を用いることでさらなる短パルスのX線発生を実現するためのシミュレーションについて報告する。
 
13:00-15:00 
THP053
p.860
14 GHz Hyper ECRイオン源を用いたECRプラズマの研究
Studies on ECR plasma using 14 GHz hyper ECR ion source

○鎌倉 恵太,小高 康照(東大CNS),中川 孝秀(理研仁科セ),武藤 英(諏訪理科大),大西 純一(理研仁科セ),畑中 吉治(阪大RCNP),後藤 彰(KEK物構研),山口 英斉,今井 伸明,下浦 享,酒見 泰寛(東大CNS)
○Keita Kamakura, Yasuteru Kotaka (CNS, UTokyo), Takahide Nakagawa (Nishina Center, RIKEN), Hideshi Muto (Suwa University of Science), Jun-ichi Ohnishi (Nishina Center, RIKEN), Kichiji Hatanaka (RCNP, Osaka Univ.), Akira Goto (IMSS, KEK), Hidetoshi Yamaguchi, Nobuaki Imai, Susumu Shimoura, Yasuhiro Sakemi (CNS, UTokyo)
 
東京大学CNSでは14GHz Hyper ECRイオン源を用いて理研AVFサイクロトロンに様々なイオンを供給している。本イオン源では、これまで引出系の改良や固体試料蒸気生成技術の開発などにより、多価重イオンビームの大強度化が行われてきた。現在さらなる大強度安定供給を目指し、ECRプラズマの研究が進められている。ECRプラズマの状態は、ミラー磁場、RFパワー、イオン化ガス・サポートガス流量など数多くの運転パラメータの組み合わせで決まる。それらのパラメータが多価重イオン生成に与える影響について、Krをイオン化ガスに用いて実験を行った。本発表では、この実験結果の評価により得られた知見を紹介する。
 
13:00-15:00 
THP054
p.863
J-PARCイオン源長時間運転後のRFアンテナ寿命評価
Evaluation of RF antenna lifetime after long-term operation of J-PARC ion source

○柴田 崇統(KEK),神藤 勝啓,大越 清紀(JAEA),南茂 今朝雄,池上 清(KEK),小栗 英知(JAEA),石田 正紀(KEK)
○Takanori Shibata (KEK), Katsuhiro Shinto, Kiyonori Ohkoshi (JAEA), Kesao Nanmo, Kiyoshi Ikegami (KEK), Oguri Hidetomo (JAEA), Masaki Ishida (KEK)
 
J-PARCでは高周波放電型(RF)負水素イオン(H-)源を用いることで、5ヶ月間(3651時間)のイオン源連続運転を達成し、J-PARCユーザー利用運転期間(約7ヶ月間)のイオン源メンテナンスフリー目標に近づきつつある。 イオン源の連続運転時間を制限する主要因は、プラズマ生成室内で使用しているRFアンテナの寿命である。プラズマ中でアンテナ絶縁材の損耗が進むと、パワー投入の不安定化によるパルス抜けやビームエミッタンス増加を生じ、イオン源の交換が必要になる。イオン源の更なる連続運転時間延伸の可能性を評価するためには、長時間運転後のアンテナ表面における異常やビーム性能の劣化の有無について確認する必要がある。 本報告では、長時間運転後のアンテナ表面状態の変化、およびビーム運転追試験における結果を説明する。
 
13:00-15:00 
THP055
p.868
ベイズ最適化を用いたイオン源制御手法の開発
Development of ion source control system using bayesian optimization

○森田 泰之,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,畑中 吉治,斎藤 高嶺,田村 仁志,安田 祐介(阪大RCNP),鷲尾 隆(阪大産研),中島 悠太(阪大IDS),岩崎 昌子(大阪公立大学),武田 佳次郎,原 隆文,荘 浚謙,Zhao Hang,橘高 正樹,松井 昇大朗(阪大RCNP)
○Yasuyuki Morita, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Kichiji Hatanaka, Takane Saitou, Hitoshi Tamura, Yusuke Yasuda (RCNP), Takashi Washio (Department of Reasoning for Intelligence, Osaka University ), Yuta Nakashima (Institute for Datability Science, Osaka University), Masako Iwasaki (Osaka metropolitan university), Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Tsun Him Chong, Hang Zhao, Masaki Kittaka, Shotaro Matsui (RCNP)
 
近年、医療分野や産業分野など加速器の社会実装が進んでいるが、加速器本体やイオン源調整や制御の困難さが課題となっている。すべての加速器に専用のオペレーターをつけて運転することは困難なため、加速器が社会に広く浸透するためにはいつ・誰が調整しても一定以上の強度・質のビームを短時間で供給でき、かつ操作が非常に簡単である必要がある。そこでまずはイオン源の調整の高度化・自動化を目指し、機械学習の一種であるベイズ最適化を用いた新たな調整手法の開発を行った。多くの場合、ビーム強度を指標としてイオン源の大強度化調整を行うが、本研究ではビームの大強度化だけでなく、低エミッタンス化も実現できるようにビーム輝度を指標とした調整を自動で行うことができるアルゴリズムを開発した。その性能評価を行うため、大阪大学核物理研究センターにて実際にイオン源を用いて複数パラメーターの同時調整を行った。本発表では調整技術及び実験の現状に関して報告を行う。
 
13:00-15:00 
THP056
p.872
教育加速器(KETA)におけるビームコミッショニング
Beam commissioning in the KEK education and training accelerator(KETA)

○福田 将史,森川 祐,濁川 和幸,竹内 保直,肥後 壽泰,福田 茂樹(高エネ研)
○Masafumi Fukuda, Yu Morikawa, Kazuyuki Nigorikawa, Yasunao Takeuchi, Toshiyasu Higo, Shigeki Fukuda (KEK)
 
KEKのERL開発棟内に教育的利用を目的とした教育加速器(KETA)を建設した。ここでは、加速器科学に貢献できる人材の育成を目指して、総研大の授業や加速器セミナーなどにおいて、この加速器を用いた実習を行い、加速器の実務の一部を経験してもらう予定である。対象としては大学院生、加速器に携わる大学などの技官、企業の方、若い研究者を想定している。この加速器は、熱電子銃、S-band定在波型バンチャー、S-band 2m進行波加速管で構成された線形加速器で、最大でエネルギー25MeV、平均電流100nAの電子ビームを生成する。教育目的の他に、最大11MeVのビームを用いた照射試験のために照射部も設けている。この加速器は、変更許可申請の承認が下りており、現在は原子力規制庁による施設検査に向けて試運転中である。本発表では、このビーム調整や今後の計画などについて報告する。
 
13:00-15:00 
THP057
p.877
コンパクトERL入射器の現状
Present status of the injector at the compact ERL at KEK

○田中 織雅,宮島 司,谷川 貴紀(高エネルギー加速器研究機構)
○Olga Tanaka, Tsukasa Miyajima, Takanori Tanikawa (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
KEKのコンパクトERL(cERL)は、ERL技術の開発とその産業利用等への応用研究を行うための試験加速器である。近年cERLでは、高効率加工プロセス用中赤外高出力レーザー光源開発やリソグラフィー用大強度EUV FELの概念実証を目的として、IR-FELを周回部に建設して運転を行ってきた。IR-FELの入射器運転の最初のターゲットとして、2020年には、入射器は60 pCのバンチ電荷、480 kVのDC電子銃電圧、5 MeVの入射エネルギー、2 ps rmsのバンチ長で運転し、IR-FELに必要なビーム品質をエネルギー回収のないバーストモード(マクロパルス長1 us, 最大繰り返し5 Hz)で実現した。次の目標は、エネルギー回収モードで高出力のIR-FEL生成を実証することである。入射エネルギーは入射・ダンプビームと周回ビームのエネルギー比の制限(およそ1/5以下)により、3.5MeVに下げる必要がある。また、電子銃のトラブルにより、当面は電子銃電圧を390kVに下げて運転する必要もある。この入射ビーム輸送には空間電荷効果の制御がより重要になってくる。本発表では、cERL入射器最適化の戦略とその結果および将来の見通しについて述べる。
 
13:00-15:00 
THP058

ERL型EUV自由電子レーザーの設計状況
Design study of the ERL EUV-FEL
○本田 洋介,谷川 貴教,加藤 龍好(高エ研)
○Yosuke Honda, Takanori Tanikawa, Ryukou Kato (KEK)
 
将来の半導体製造に向けた光リソグラフィの光源として、エネルギー回収型の大平均強度EUV-FELの設計検討を行っている。Genesisを用いてFEL部のパラメータサーチを行い、要求ビーム性能とアンジュレータ部の概念設計を検討した。また、入射器以降のERL型加速器の設計について、入射器のビーム設計の困難を緩和できる可能性がある多段型の構成を新たに検討し、機械学習の手法を導入したビーム光学の設計を行った。
 
13:00-15:00 
THP059
p.881
スピン偏極SuperKEKBの開発
Development of a polarized beam for SuperKEKB

○リプタック ザカリー(広島大学先進理工科学)
○Zachary Liptak (Hiroshima University Graduate School of Advanced Science and Engineering)
 
茨城県つくば市のSuperKEKBコライダーは2016年から電子・陽電子をBELLE II実験へ送り、2018年から衝突させています。それ以来ビーム電流を上げ、両ビームを「ナノビーム」まで絞り、前世代加速器であったKEKBの瞬間ルミノシティの40倍、蓄積したデータの40倍を目指しています。その他には、将来SuperKEKBの技術を高めたり、BELLE IIの物理プログラムを更に広げるため、偏極電子ビームを開発する可能性を探っています。この発表はSuperKEKBにおける偏極電子ビームの企画やチャレンジ、及び新たに開ける可能性と本来の開発進捗について説明します。
 
13:00-15:00 
THP060

cERLアーク部における高次分散関数の影響と測定
Effects and measurements of higher-order dispersion functions at the cERL arc section
○中村 典雄,島田 美帆,帯名 崇(高エネ研)
○Norio Nakamura, Miho Shimada, Takashi Obina (KEK)
 
cERLアーク部は45度偏向電磁石4台、四極電磁石6台で主に構成され、バンチ圧縮・伸長などのバンチ長制御を行えるように縦方向1次分散関数R56可変のTBA(Triple-Bend Achromat)ラティスを採用している。アーク部のR56値の評価にはアーク中央の横方向分散関数から評価する方法と直接縦方向分散を測定する方法があるが、このTBAラティスによるオプティクスでは1次分散関数と比較して2次分散関数が縦・横方向共に無視できず、バンチ圧縮の評価・調整において1次分散関数と2次分散関数の情報が同時に必要となる。我々は、cERLアーク部の異なるR56値を持つオプティクスに対して縦・横方向の2次を含む分散関数を測定・評価して2次分散関数の影響を調べた。また、縦方向2次分散関数T566制御のために設置した六極電磁石の磁場と軌道補正のために設置した四極電磁石サブコイルのステアリング磁場による1次・2次分散関数の変化も測定して磁場測定にもとづく計算機シミュレーションと比較した。本発表では、cERLアーク部における分散関数測定とバンチ圧縮の評価や調整における高次分散関数の影響について報告する。
 
13:00-15:00 
THP061

非線形集束力を用いた荷電粒子ビームの分布変換・修整について
On the transformation and correction of the profile of a charged-particle beam using the nonlinear focusing force
○百合 庸介(量研高崎研)
○Yosuke Yuri (QST, Takasaki)
 
荷電粒子ビームは、しばしば粒子源や加速器での生成・加速・輸送過程において空間電荷効果等の影響を受け複雑な強度分布を呈し、これにより適切なビーム輸送や照射利用が妨げられる場合があることが課題である。そこで、本研究では、ビームの位相空間形状や実空間分布の多様な変換が可能な多重極電磁石の非線形力によってビームの複雑な強度分布を変換し修整する可能性を検討した。発表では、その原理検証として、ビームラインにおいて8極電磁石で故意に集束・変形させたビームを下流の8極電磁石で元の分布に戻すこと想定し、必要なビーム光学系の条件を理論的に考察した結果について述べる。
 
ポスター④ (10月21日 会議室P)
13:00-15:00 
FRP001
p.885
J-PARC線形加速器におけるMEBT1に関するビーム実験
Beam study on MEBT1 at the J-PARC linac

○岡部 晃大,劉 勇,大谷 将士,守屋 克洋,宮尾 智章,北村 遼,平野 耕一郎,小栗 英知,金正 倫計(J-PARC)
○Kota Okabe, Yong Liu, Masashi Otani, Katsuhiro Moriya, Tomoaki Miyao, Ryo Kitamura, Kouichirou Hirano, Hidetomo Oguri, Michikazu Kinsho (J-PARC)
 
J-PARC 線形加速器では、RFQとDTLの間にビームライン(MEBT1)を設けている。MEBT1には後段の円形加速器(RCS)に整合するように縦方向のビーム形状を整形するためのRFビームチョッパーシステムなどが設置されている。既設MEBT1にはチョッパーシステムと下流DTLにビームの縦方向形状を整合させることを目的としてバンチャー空洞が2台設置されているが、原理的にはチョッパーシステムに1台、DTLとのビーム形状整合に2台と合計3台のバンチャーが必要となる。そのため、MEBT1にバンチャーを一台追加した新MEBT1の設計について長く議論がなされてきた。一方、MEBT1では空間電荷効果が非常に強く顕在化することに加えて、DTLセクション内でビームモニタ類の設置が難しいこともあり、数値シミュレーションを用いて現状の実験結果を明らかにすることが難しい状況にある。そこで、まずは系統的なビーム実験を行い、MEBT1にバンチャーを追加することで、どの程度ビームの質の向上が見込めるかを調査した。 ビーム実験結果とMEBT1を作り変えることにより発生するリスクとの兼ね合いを検討した結果、J-PARC加速器における1MW強のビームパワーの達成を目標とする上で、新MEBT1設置のメリットは少なく、現行のMEBT1で十分対応可能であると判断した。本講演ではMEBT1に関するビーム実験結果と新MEBT1の検討過程について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP002
p.889
TIARA AVF サイクロトロンの高精度ビームエネルギー制御の検討
Study on high-precision beam energy control for the TIARA AVF cyclotron

○宮脇 信正,渡辺 茂樹,柏木 啓次,石岡 典子,倉島 俊(量研高崎),福田 光宏(阪大RCNP)
○Nobumasa Miyawaki, Shigeki Watanabe, Hirotsugu Kashiwagi, Noriko Ishioka, Satoshi Kurashima (QST Takasaki), Mitsuhiro Fukuda (RCNP, Osaka Univ.)
 
QST高崎のTIARA AVFサイクロトロンでは、HeビームをBiターゲットに照射してアルファ線核医学治療で用いるAt-211(半減期7.2時間)の製造を行っている。At-211の生成率は、Heのエネルギーが高ければ増加するが、エネルギーが一定以上高くなると化学的に分離不能なAt-210(半減期8.1時間)が生成し、その壊変によって放射性毒性の高いPo-210(半減期138日)が生じる。At-211の生成率の最大化とPo-210の混入防止のためには、Heビームのエネルギーの制御が重要である。一般的にビームエネルギーの調整は、ターゲット直前に設置する金属板等で行うが、サイクロトロンの調整によってAt-211の生成率に差が生じることがあり、リアルタイムでのビームエネルギーの測定とその調整が求められた。そこで、ビームエネルギー・位置モニターを用いてリアルタイムでビームエネルギーを測定しつつ、サイクロトロンのパラメータを調整し、ビームエネルギーの微調整を行った。その結果、加速電圧や磁場によってビームエネルギーをある範囲内で任意に調整することができた。発表では、サイクロトロンのパラメータの変更に伴うエネルギーの測定結果及びこれを用いたAt-211の製造実験の結果について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP003
p.893
J-PARCメインリングにおける遅い取り出しスピルシュミレーション
Simulation study on the beam spill structure of the slow extraction at J-PARC Main Ring

○武藤 亮太郎,木村 琢郎,村杉 茂,沼井 一憲,岡村 勝也,白壁 義久,冨澤 正人,柳岡 栄一(高エ研),松村 秋彦(NAT)
○Ryotaro Muto, Takuro Kimura, Shigeru Murasugi, Kazunori Numai, Katsuya Okamura, Yoshihisa Shirakabe, Masahito Tomizawa, Eiichi Yanaoka (KEK), Akihiko Matsumura (NAT)
 
J-PARCメインリング(MR)では、3次共鳴を利用して30GeV陽子ビームの遅い取り出しを実施している。遅い取り出しビームにおいて達成するべき重要な性質の1つは、ビームの時間構造の高い平坦性である。MRでは、ベータトロンチューンをゆっくりと3次共鳴に近づけることで、約2秒のスピル長のビーム取り出しを実現し、ハドロン実験施設に向けて供給しているが、主電磁石電源の電流リップルに起因するベータトロンチューンのリップルが大きく、取り出しビームは大きな時間構造を持っている。現在MRでは主電磁石電源の更新作業を行っており、電源の電流リップルは大きく改善されると期待される。そこで、MRでの遅い取り出しの簡易ビームシミュレーションを行い、ビームの時間構造に対するチューンリップルの影響を調査した。さらに、現在ビーム取り出しにおいて用いている、速いQ磁石を使用した取り出しに対するフィードバック制御と、ストリップラインキッカーを使用した横方向RFキックの効果をシミュレーションで調べた。その結果を報告する。
 
13:00-15:00 
FRP004

J-PARC LINAC MEBT1 ビーム集束系への永久磁石適用に関する検討
Application of permanent magnets to beam focusing system in J-PARC linac MEBT1
○不破 康裕,高柳 智弘,守屋 克洋(原子力機構 J-PARC)
○Yasuhiro Fuwa, Tomohiro Takayanagi, Katsuhiro Moriya (J-PARC, JAEA)
 
J-PARC LINAC MEBT1 のビーム集束系に永久磁石を用いた集束磁石を応用することを検討する。MEBT1 は RFQ と DTL の間に位置するビームエネルギー 3 MeV の区間で、その集束系の性能は加速ビームの品質に直結する。今後 J-PARC のさらなる大強度化に向けて、ビームロスやエミッタンス増大に対する制限が厳しくなることが予測されるため集束系の高度化を検討する必要がある。集束系の高度化においては、高信頼化・低消費電力化のために永久磁石を使用することを選択肢の1つとしている。本発表では、MEBT1 に永久磁石を用いた集束磁石を用いる場合の可用性を議論する。
 
13:00-15:00 
FRP005
p.897
ハイブリッド型エネルギー回収内部ターゲットリングの概念設計
Conceptual design of hybrid energy recovery internal target ring

○小塚 公貴(京大院),石 禎浩,上杉 智教,栗山 靖敏,森 義治(京大複合研)
○Koki Kozuka (Kyoto University), Yoshihiro Ishi, Tomonori Uesugi, Yasutoshi Kuriyama, Yoshiharu Mori (KURNS)
 
京都大学複合原子力科学研究所では、高効率な二次粒子生成を目的とした内部標的型加速器ERITの概念が提案され、その鍵となるエネルギー回復機構については実機を用いた原理実証が行われた。一方、パイ中間子などの二次粒子の発生には、より高いエネルギーまでの加速が必要であり、ERIT機構に適した低いk値*では加速による軌道変位が大きくなってしまう問題が発生することになる。そこで我々は1つのリング内で2つの異なるk値をとるハイブリッドERIT(HYERIT)を提案する。HYERITでは、リング内の半径方向に“加速のための高いk値”から“ERITスキームのための低いk値”に急峻に変化させることで、コンパクトなリングで大強度の二次粒子生成を実現することを目指す。本講演では、HYERITの概念設計についての報告を行う。*磁場勾配を示す値
 
13:00-15:00 
FRP006
p.901
J-PARC MR速い取り出し用新セプタム電磁石のインストール
The installation of the new septum magnets for fast extraction in J-PARC Main Ring

○岩田 宗磨,石井 恒次,芝田 達伸,杉本 拓也,佐藤 洋一,五十嵐 進,松本 浩,松本 教之(高エネルギー加速器研究機構)
○Soma Iwata, Koji Ishii, Tatsunobu Shibata, Takuya Sugimoto, Yoichi Sato, Susumu Igarashi, Hiroshi Matsumoto, Noriyuki Matsumoto (KEK)
 
J-PARC MRでは、ニュートリノ実験施設への供給ビームを500kWから1.3MWに増強する計画が進められている。運転周期が2.48秒から1.16秒に短縮されることによる熱対策やビームロス低減に向けたアパーチャ拡張のために速い取り出し(FX)用の低磁場セプタム電磁石(SM)と高磁場SM交換を実施した。ビームラインはニュートリノ(NU)ラインとAbortラインがあり、SMの配置は各ラインで対称である。低磁場SM全てをパターン運転だったものからパルス運転タイプの渦電流誘導型SMへと交換した。高磁場SMにはSM30, SM31, SM32, SM33があるが、SM30-SM32を交換し、Abortライン側の旧SM32AはNUライン側の新SM33Aとして再利用した。Abortライン側のSM33Aのみ交換しない。本発表では各SMのビームラインへの設置作業、およびレーザートラッカーを用いたアライメント結果について報告する。アライメントにおいては、各部、特に真空ダクトの製作または組付け精度により、ずれを妥協しなければならない箇所が生じた。アクセプタンスへの影響も報告する。
 
13:00-15:00 
FRP007
p.906
ミュオンサイクロトロンの開発状況
Progress in development of muon cyclotron

○大西 純一(理研仁科センター),永谷 幸則,後藤 彰,山崎 高幸,三宅 康博(高エネ研),足立 泰平(理研仁科センター),湯浅 貴裕,安達 利一(高エネ研),筒井 裕士,楠岡 新也,熊田 幸生,恩田 昂(住重)
○Jun-ichi Ohnishi (RNC), Yukinori Nagatani, Akira Goto, Takayuki Yamazaki, Yasuhiro Miyake (KEK), Taihei Adachi (RNC), Takahiro Yuasa, Toshikazu Adachi (KEK), Hiroshi Tsutsui, Shinya Kusuoka, Yukio Kumata, Takashi Onda (SHI)
 
透過型ミュオン顕微鏡の実現をめざして、J-PARC MLFの超低速ミュオン(30 keV)を5 MeVまで再加速するためのミュオンサイクロトロンの開発を進めている。サイクロトロンの設計仕様、磁場測定などについては2020年、2021年の本年会の発表を参考にされたい。2021年後半はKEKつくばにおいてRF試験(加速周波数108 MHz)を行った。ローレベル系は自作で、パワーアンプも市販の1.5 kWアンプ16台と自設計したコンバイナーから製作した。RF試験では共振周波数とQ値測定、CST計算値との比較、Q値(2200-2700)改善の試行、発熱部の改造、シャントインピーダンス測定を行った。アンプ回路の改善も同時に行い、最終的に約17 kWのRFパワーを投入することができ、加速に必要なパワー(19 kW)入力のめどが得られた。現在、J-PARC MLFビームラインへの設置作業を行っているところであるが、インターロック試験、安全審査などが間に合えば、今期のビームタイム中に加速試験を開始したいと考えている。
 
13:00-15:00 
FRP008
p.911
SuperKEKB用ハイブリッドコリメータの開発
Development of hybrid collimator for SuperKEKB

○照井 真司,石橋 拓弥(高エネ研),ナトチー アンドリー(ハワイ大学),森川 祐,白井 満,柴田 恭,末次 祐介(高エネ研)
○Shinji Terui, Takuya Ishibashi (KEK), Andrii Natochii (University of Hawaii), Yu Morikawa, Mitsuru Shirai, Kyo Shibata, Yusuke Suetsugu (KEK)
 
SuperKEKBの目標ピークルミノシティはKEKBの約40倍の8×1035 cm-2s-1である。この目標を実現するためにSuperKEKBでは蓄積電流を2.6 A(電子リング)、3.6 A(陽電子リング)、また、約5 mm(電子リング)、約6 mm(陽電子リング)という短いバンチ長さでデザインしている。コリメータはビーム軌道近くのハローを削る装置で、素粒子検出器(Belle II)のバックグラウンドを低減するために使用される。また各加速器コンポーネントを周回ビームから防護する目的でも使用される。 現在、SuperKEKBでは、コリメータのギャップを非常に狭い状態(一番狭い場所でハーフギャップが1mm程度)で運転している。ギャップが非常に狭いため、ビーム軌道などが異常になると、コリメータにビームがぶつかって損傷する事象が出ている。コリメータが損傷した場合、バックグラウンドを十分に減らすことができなく、加速器運転に支障を及ぼす事例も出てきた。 我々は、加速器の安定運転を目指して、タンタルとカーボンを用いた、壊れにくく、かつ、ビームインピーダンスが小さいコリメータの開発を行った。本会では、製作のための試験・計算結果と加速器内で使用した結果について、報告する。
 
13:00-15:00 
FRP009
p.916
SuperKEKB LERにおけるインピーダンスモデリング
Impedance modeling in SuperKEKB LER

○石橋 拓弥,周 徳民(高エネ研・加速器),ミリョラーティ マウロ(ローマ・ラ・サピエンツァ大学),柴田 恭,阿部 哲郎,飛山 真理,照井 真司(高エネ研・加速器)
○Takuya Ishibashi, Demin Zhou (KEK accelerator laboratory), Mauro Migliorati (Sapienza Universita di Roma), Kyo Shibata, Tetsuro Abe, Makoto Tobiyama, Shinji Terui (KEK accelerator laboratory)
 
In the Low Energy Ring (LER) for positrons in SuperKEKB, an unexpected vertical beam-size blow-up has occurred at approximately 1.0 mA/bunch. This bunch current threshold depends on apertures of vertical collimators in the ring, thus this single bunch instability can be caused by the impedance. The threshold in the actual machine is smaller than that in the simulations by approximately 60% or more, so we have reconstructed the impedance model in the ring. This paper summarizes the updated results of impedance calculations for components.
 
13:00-15:00 
FRP010

無酸素Pd/Ti非蒸発型ゲッター(NEG)を蒸着したサンドブラスト処理ステンレス製ICF203ブランクフランジの排気性能の砂粗さ依存性
Dependence of pumping performance of stainless steel ICF203 blank flange deposited with oxygen-free Pd/Ti nonevaporable getter (NEG) on sand roughness
○狩野 悠,矢部 学,加藤 良浩(入江工研(株)),菊地 貴司(KEK物構研),間瀬 一彦(KEK物構研/総研大)
○Yu Kano, Manabu Yabe, Yoshihiro Kato (IKC), Takashi Kikuchi (KEK), Kazuhiko Mase (KEK/SOKENDAI)
 
加速器では、完全オイルフリー、無騒音、無振動、省スペース、省エネルギー、低コストでありながら、10-7 Pa以下の超高真空下において高い排気速度を持つ真空ポンプが必要である。このためCERNでは、真空ダクトの内面に非蒸発型ゲッター(NEG)をスパッター製膜して、真空ダクト自体をNEGポンプとする技術が1997年ごろに開発された。しかし従来のNEG蒸着には活性化温度が180~300℃と高いという課題が残されている。そこで、間瀬らは新しいNEGである無酸素Pd/Tiを開発した[1]。無酸素Pd/Tiは133℃、12時間のベーキング後にH2とCOを排気し、真空排気とベーキング、大気導入のサイクルを繰り返しても排気速度が低下しない[2]。本研究では、表面積を大きくすることで蒸着面積を増やし、排気性能を上げることを目的に、ICF203ブランクフランジに粗さの違う3つの砂でサンドブラスト処理を実施し、無処理のものと合わせて計4枚のブランクフランジへの無酸素Pd/Ti蒸着を行い、オリフィス法での排気速度測定および封じ切り試験を行ったので報告する。 [1] T. Miyazawa et al., J. Vac. Sci. Technol. A 36, 051601 (2018). [2] T. Kikuchi et al., AIP Conf. Proc. 2054, 060046 (2019).
 
13:00-15:00 
FRP011
p.921
PFリングにおける高速軌道フィードバックシステムの高度化計画
Upgrade plan of fast orbit feedback system at PF-ring

○高井 良太,帯名 崇,多田野 幹人,下ヶ橋 秀典,塩澤 真未(高エネ研)
○Ryota Takai, Takashi Obina, Mikito Tadano, Hidenori Sagehashi, Mami Shiozawa (KEK)
 
KEKの放射光源加速器“PFリング”では、蓄積ビームが作る閉軌道を放射光ユーザーが望む基準軌道に常時補正し続けるための高速軌道フィードバックシステムの高度化が進められている。これまで使用してきたシステムは、65台のBPMに対して12台のアナログ検波回路を用いた切替方式を採用しているため、ビーム軌道の測定から各補正電磁石の設定が完了するまでの周期が約12 ms(80 Hz)に制限されており、その分抑制できる軌道変動の周波数も0.3 Hz程度が上限となっている。そこで、現在開発中の新システムでは、光ファイバーで連結された最新のデジタル検波・信号処理回路をBPMと同数設置し、全BPM信号を並列に処理することでシステム全体の大幅な高速化・高精度化を図る。軌道フィードバックの周期は最速で100 us(10 kHz)となり、100~200 Hz程度までの軌道変動を抑制することを目標とする。これは第3世代光源における標準的な性能であり、PFリングの次期計画にも十分流用可能なシステムとなっている。本発表では、2021年度に製作したMicroTCA.4規格の信号処理回路の概要と、それらの基礎的な性能評価試験の結果を紹介する。
 
13:00-15:00 
FRP012
p.927
KEK電子陽電子入射器ビーム同期データ収集、解析システム開発
Development of systems for archiving and analyzing beam synchronous data for KEK e+/e- Linac

○宮原 房史(高エネ研),早乙女 秀樹,大房 拓也(関東情報サービス),工藤 拓弥(三菱電機システムサービス),榎本 嘉範,佐藤 政則,佐武 いつか,王 迪(高エネ研)
○Fusashi Miyahara (KEK), Hideki Saotome, Takuya Ofusa (KIS), Takuya Kudou (MELSC), Yoshinori Enomoto, Masanori Satoh, Itsuka Satake, Di Wang (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器は20 ms(50 Hz)ごとに SuperKEKB HER/LER, PF, PF-AR へ電荷量、エネルギーの異なる電子/陽電子ビームを供給している。入射器では入射する円形加速器に対応したビームモードを用意し、モードごとのビーム制御を行っている。ビームモードはイベントシステムを用いて光信号でショット番号とともに入射器の各機器に配信されている。RFユニットにはイベントシステムに対応したRFモニターが設置してあり、RFの振幅、位相が測定され、ビームモード、ショット番号とともに全パルスの測定データが保存される。オプティックス制御は全モードに共通のDC電磁石とモードごとに電流値を変更できるパルス電磁石を用いて行っており、パルス電磁石の電流値もショットごとの全データが保存される。ビーム位置はストリップライン型BPMで測定され、全ショットが保存される。ビームモードとショット番号の比較によりビーム軌道とRFモニター、パルス電磁石の同期データの生成が可能で、ビームの安定性評価やHER/LERビームアボートを起こす入射器内の異常なビーム軌道の発生原因特定などに役立っている。各データは50 Hzで更新され、データ量が膨大となる。そこでデータ解析の高速化のためにファイルサイズの大きなデータでもインデックス管理の必要なく高速にデータ抽出が可能なHDF5ファイル形式を用いた同期データアーカイビングシステムとWEBベースの解析ツールの開発をしている。
 
13:00-15:00 
FRP013
p.931
J-PARC MRアボートラインのマルチリボンプロファイルモニター
A multi-ribbon beam profile monitor in a beam dump line of J-PARC MR

○橋本 義徳,佐藤 洋一(KEK/J-PARC),酒井 浩志(三菱電機システムサービス),濱田 英太郎(KEK)
○Yoshinori Hashimoto, Yoichi Sato (KEK/J-PARC), Hiroshi Sakai (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Eitaro Hamada (KEK)
 
J-PARCメインリング(MR)のアボートラインにおけるマルチリボンプロファイルモニター(AbortMRPM)について述べる。MRでは速い取り出しシステムにより3 GeVでの入射から30 GeV加速までの任意のタイミングでアボートラインにビームを取り出すことが可能である。このため周回および加速中のエミッタンス及びバンチ形状の推移が把握できる。2次電子生成ターゲットには1.5, 2.5 mm幅の厚み1ミクロンのチタンフォイルリボンがH64 ch, V32 ch 並び、各電極で生成された2次電子信号は、220 m 遠隔の6台のCAVARIER-II モジュール(12bit-250MS/s-ADC, 16 ch, FPGA)で収集される。薄いチタンフォイルによりロスを低減しているため、MRの最大バンチ陽子数4E13にも十分対応している。各リボンチャンネルの感度レンジは、CAVARIER-II の前段のリモート減衰器を調整することにより1E10 程度からのビーム評価が可能である。このような測定性能は、大強度ビームだけでなく種々のMRビームの調整においても、ビーム最適化のツールとして効力を発揮している。本報告では、AbortMRPMの装置性能、AbortMRPMによるビーム診断方法とビーム評価の事例を紹介する。
 
13:00-15:00 
FRP014
p.936
J-PARC MR におけるイントラバンチ・フィードバックのシステム更新のための評価
Evaluation for updating the intra-bunch feedback at J-PARC Main Ring

○吉村 宣倖(京都大学),外山 毅,小林 愛音,中村 剛,岡田 雅之(KEK),菖蒲田 義博(JAEA),中家 剛(京都大学)
○Nobuyuki Yoshimura (Kyoto University), Takeshi Toyama, Aine Kobayashi, Takeshi Nakamura, Masashi Okada (KEK), Yoshihiro Shobuda (JAEA), Tsuyoshi Nakaya (Kyoto University)
 
大強度陽子シンクロトロンJ-PARC Main Ring (MR) は現在の510 kW (2.63×10^14 ppp, MRサイクル2.48 秒) から1.3 MW (3.14×10^14 ppp, 1.16 秒) へと大強度化する予定である。ビームのウェイク場や電子雲などの集団効果によりビームの振動が不安定になるためにビーム損失が発生し、これを抑制するためにビーム位置モニター (BPM)、FPGA、ストリップラインキッカーを用いた intra-bunch feedback system (IBFB) が設置されている。ビーム強度が増強されると横方向不安定性が増大して制限要因となることが予想され、対策として今後1,2年でIBFBを新システムに更新して200 MHzまでの高周波に対応することが計画されている。この事前調査として100 MHzまでに対応した現行システムでの性能限界と新システム (200 MHz) で十分に不安定性を抑えられるかを評価する必要があり、6月に行われたビーム試験でのデータをもとにした評価を報告する。
 
13:00-15:00 
FRP015

16電極ビームモニターの開発の現状と展望
Current status and prospects of 16-electrode beam monitor development
○李 耀漢(京都大学高エネルギー研究室)
○Yohan Lee (High Energy Physics Laboratory, Kyoto University)
 
T2K実験においてはニュートリノ振動の精密測定によりCP対称性の破れの探索を行っており、現在さらなる測定精度の向上を目指している。測定精度を上げるには、ニュートリノのビームラインのビームパワーを上げる必要があり、そのためJ-PARCのMain Ring(MR)のビームパワーのアップグレードが進められている。ビームパワーのアップグレードによりビームの強度に依存する不安定性が増大する。これはビームロスの原因となるため安定的なビームラインの運用のためにはこの現象の深い理解が不可欠であり、そのためにはビームプロファイルの測定が必要である。 16電極ビームモニターは、MRのビームの大強度化に合わせ、非破壊でビームプロファイルを測定するために開発されたビームモニターである。従来のビームプロファイルモニターとは違い、16電極ビームモニターは非破壊でビームを測定するので、原理的に大強度のビームの測定時にもビームに悪影響を及ぼすことや、ビームにより悪影響を受けることなく精度良くビームの測定が可能である利点を持つ。 現在我々は16電極ビームモニターから得られたデータの解析の方法について議論を続いており、アップグレードされたビームの測定データを用い、解析の方法の検証を行う計画を立てている。本発表では、16電極ビームモニターの開発の現状及び今後の展望について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP016
p.942
SuperKEKB入射器におけるJ-arc放射光モニターの開発
Development of J-arc synchrotron radiation monitor at SuperKEKB linac

○張 叡(高エネルギー加速器研究機構),豊富 直之,工藤 拓弥(三菱電機システムサービス(株)),吉田 光宏(高エネルギー加速器研究機構)
○Rui Zhang (High Energy Accelerator Research Organization (KEK)), Naoyuki Toyotomi, Takuya Kudou (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Mitsuhiro Yoshida (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
SupreKEKB Linac injector generates and accelerates electron beam and positron beam for SuperKEKB High Energy Ring (HER) and Low Energy Ring (LER) injection. At the same time, Linac also undertakes the electron beam injection tasks for Photon Factory (PF) and Photon Factory Advanced Ring (PF-AR). Four rings simultaneous injection has been realized from phase II commissioning. During 4 ring simultaneous injection, non-destructive beam measurements are important for high quality injection, one synchrotron radiation monitor (SRM) is constructed after the last bending magnet of Linac J-arc section. Two dimensional and pulse by pulse beam profiles have been obtained successfully and applied for nondestructive beam adjustment from 2020c operation. In this work, the design and operation results of J-arc SRM are introduced.
 
13:00-15:00 
FRP017

超伝導線形加速器による大強度電子ビーム照射システムのビーム輸送シミュレーション
Beam transport simulation for the high power electron irradiation system utilizing a superconducting linear accelerator
○本田 洋介,阪井 寛志,山本 将博,梅森 建成(高エ研)
○Yosuke Honda, Hiroshi Sakai, Masahiro Yamamoto, Kensei Umemori (KEK)
 
伝導冷却を採用したニオブスズ超伝導加速空洞による、大強度電子ビーム照射システムの検討が行われている。従来の大掛かりな液体ヘリウム設備を必要とせず、超伝導加速空洞が動作できるため、大平均強度加速器の汎用化と高効率化が期待できる。 この加速器では、クライオモジュール内でのビーム損失は冷凍機にたいする熱負荷になってしまう。照射システムで目標とする50mAのビーム電流を出しながら、伝導冷却システムの冷凍能力の範囲内に熱負荷を抑えるには、ビーム損失をppmレベルまで抑える必要がある。このためには、各加速空洞のRFの振幅および位相を最適化したビーム輸送が必要不可欠である。 本発表では概念設計のためのビーム輸送シミュレーションについて報告する。
 
13:00-15:00 
FRP018
p.945
共振器FELにおける超放射発振の非平均コードによるシミュレーション
Simulations of superradiance in FEL oscillators by unaveraged codes

○羽島 良一(量研)
○Ryoichi Hajima (QST)
 
共振器型自由電子レーザーでは、電子バンチ長、スリップ長、ゲイン、光共振器の損失とデチューニング長が一定の条件を満たす時、光の電場を数周期しか含まない極短パルスが生成される。このようなFEL発振は、超放射FEL(superradiance FEL)と呼ばれる。一般的なFELシミュレーションコードでは、電子を表すマクロ粒子を特定のバンチスライスに固定し光の波長で多数のマクロ粒子を平均化することでFELパルスの成長を計算する。超放射発振では、電子のエネルギーがアンジュレータ中で大きく変化するため、マクロ粒子をバンチスライスに固定しない非平均シミュレーション(unaveraged simulation)が必要となる。本発表では、共振器FELにおける超放射発振について、非平均シミュレーションコードを用いた計算結果を報告する。 本研究の一部は、文部科学省の光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP、JPMXS0118070271)、科研費(22H03881)の助成を受けたものである。
 
13:00-15:00 
FRP019
p.949
UVSOR-FELの再立上げとIntra-cavity Compton Scatteringによるガンマ線発生
Revival of UVSOR-FEL and gamma-ray generation via intra-cavity Compton scattering

○全 炳俊(京大エネ研),山崎 潤一郎,藤本 將輝,林 憲志,太田 紘志,平 義隆(分子研 UVSOR),加藤 政博(分子研 UVSOR, 広大 HiSOR)
○Heishun Zen (IAE, Kyoto Univ.), Jun-ichiro Yamazaki, Masaki Fujimoto, Kenji Hayashi, Hiroshi Ota, Yoshitaka Taira (UVSOR IMS), Masahiro Katoh (UVSOR IMS, HiSOR Hiroshima Univ.)
 
UVSORでは1992年の初発振の後、2011年度まで蓄積リングを周回する電子ビームを用いたFEL発振を行ってきた。2011年度末にそれまで使用してきた直線部(S5)に設置された光共振器を解体し、2015年4月に新規に構築したオプティカルクライストロンを有する直線部(S1)に光共振器を再構築したが、その後、FEL発振には至っていなかった。今回、移設後初めてのFEL発振を波長524nmにて達成すると共に、共振器内に蓄積されたFELと電子バンチの衝突によるガンマ線発生を実施したので報告する。
 
13:00-15:00 
FRP020
p.953
Lattice design for future plan of UVSOR
○Elham Salehi, Yoshitaka Taira, Masaki Fujimoto, Masahiro Katoh (UVSOR)
 
UVSOR, a 750 MeV synchrotron light source, has been operational for about 40 years. We have made major upgrades twice and minor ones continuously. Now, 10 years have passed since the last major upgrade. We have started a design study for the future plan of UVSOR. First, we considered another major upgrade on the present machine. Now, we consider a totally new facility as another choice. We have designed a storage ring of 1 GeV electron energy, which is larger than the present value, 750 MeV. The magnetic lattice is based on a compact double bend achromat cell, which consists of two bending magnets and four focusing magnets, all of which are of combined function. The circumference is around 80 m. The emittance is around 5 nm in the achromatic condition, which becomes lower in the non-achromatic condition. The lattice of 6-fold symmetry has six straight sections of 4 m long and six of 1.5 m long. We are now working on optimizing the dynamic aperture of the storage ring. In the annual meeting, we report the latest results from the design study.
 
13:00-15:00 
FRP021
p.955
PF-ARに建設した測定器開発テストビームラインにおけるターゲットと真空系の設計と整備
Design of target and vacuum components for PF-AR test beamline

○佐々木 洋征,本田 融,野上 隆史,内山 隆司,谷本 育律,花垣 和則,満田 史織,高木 宏之,長橋 進也,坂中 章悟,山本 尚人,内藤 大地,外川 学,森 隆志(高エネ機構),小田川 高大(京大理),鷲見 一路,前田 朱音(名大理)
○Hiroyuki Sasaki, Tohru Honda, Takashi Nogami, Takashi Uchiyama, Yasunori Tanimoto, Kazunori Hanagaki, Chikaori Mitsuda, Hiroyuki Takaki, Shinya Nagahashi, Shogo Sakanaka, Naoto Yamamoto, Daichi Naito, Manabu Togawa, Takashi Mori (KEK), Takahiro Odagawa (Kyoto Univ.), Kazumichi Sumi, Akane Maeda (Nagoya Univ.)
 
現在KEK放射光源リングPF-ARにテストビームラインが建設中である。蓄積電子ビームのハロー部に炭素製のターゲットを設置することでガンマ線を生成し、リング偏向電磁石チェンバー末端に設置した銅コンバータに照射することで電子・陽電子対を発生させる。このGeV領域電子ビームは素粒子原子核実験用測定器開発に供される。ターゲットとコンバータは強い放射光に晒されることから、材料をよく検討した上で、その発熱と温度分布を有限要素法ソフトウエアのANSYSを用いて解析してきた。さらにターゲットによる寄生モード損失による発熱にも留意する必要がある。これらの結果をふまえて製作された各コンポーネントについて、設置と試運転の状況についても報告する。
 
13:00-15:00 
FRP022
p.958
APU型アンジュレータの磁場測定の経験
Experience of magnetic measurement of adjustable phase undulator

○土屋 公央,阿達 正浩,齊藤 寛俊,江口 柊,塩屋 達郎,加藤 龍好(KEK加速器)
○Kimichika Tsuchiya, Masahiro Adachi, Hirotoshi Saito, Shu Eguchi, Tatsurou Shioya, Ryukou Kato (KEK Accelerator Laboratory)
 
高エネルギー加速器研究機構のエネルギー回収型ライナック(cERL)においては赤外波長域の自由電子レーザーの開発のために、長さ3m、周期長24mmのアンジュレータを2台建設して運転している。この2台のアンジュレータは、最小ギャップが10mmの固定Gapであり、下側磁石列を長手方向にスライドさせることで光の波長を制御するadjustable phase undulator (APU)である。このAPUの磁場測定で得られた磁場分布を解析したところ、磁石列のスライド量に応じてアンジュレータのスペクトル性能を示すフェーズエラーが見かけ上大きく変化する現象が見られた。この原因としてAPUでは磁石列のスライドに伴い、磁場の3次元分布が変化し、磁場測定素子の位置や角度の微小な変化が影響を与えていると考えている。これは通常のプラナー型アンジュレータでは見られなかった現象であり、磁場測定にも十分な対策が必要であることが判った。 本発表ではcERL自由電子レーザー用アンジュレータの磁場測定に関して解析を行い、ホール素子の位置安定性について行った考察について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP023
p.961
KEK入射器におけるビーム位置表示ソフトウェアの現状
Present status of beam position display software at KEK injector linac

○工藤 拓弥(三菱電機システムサービス(株)),佐藤 政則,宮原 房史(高エネルギー加速器研究機構),草野 史郎(三菱電機システムサービス(株))
○Takuya Kudou (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Masanori Satoh, Fusashi Miyahara (KEK), Shiro Kusano (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.)
 
KEKの電子陽電子入射器は、4つの異なるリング(SuperKEKB HER/LER、PF、PF-AR)へ電子および陽電子ビームを供給している。供給するビームの位置、バンチ電荷量は約100台の非破壊型ビーム位置モニタにより計測される。また、計測されたビーム情報は、同期が保証された形式で全ショット記録されている。ビーム位置表示ソフトウェアにより表示されるこれらの情報は、ビームの異常監視およびビーム調整の重要な指針となっている。 本稿では、ビーム位置表示ソフトウェアの現状について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP024

KEK電子陽電子入射器におけるAngularを用いたオペレータインターフェースの開発
Development of operator interface using Angular in KEK e-/e+ injector linac
○木村 俊介(三菱電機システムサービス(株)),佐藤 政則,佐武 いつか(高エネルギー加速器研究機構),草野 史郎,工藤 拓弥(三菱電機システムサービス(株))
○Shunsuke Kimura (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Masanori Satoh, Itsuka Satake (KEK), Shiro Kusano, Takuya Kudou (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.)
 
KEK電子陽電子入射器では、1995年にリレーショナルデータベースを用いた電子運転ログブックシステムの開発および運用を開始し、加速器運転に関する詳細かつ高品質な情報を自動記録することが可能となった。2010年にはデータベースの冗長化、Adobe Flashを用いたフロントエンドの開発、画像添付機能の追加などシステムの品質向上に取り組んできた。データアーカイバシステムにおいては、2011年にCSSアーカイバが導入された。バックエンドデータベースとしてPostgreSQLを使用し、Web Viewerとして独自にAdobe Flashを用いたアプリケーションを開発して運用していた。このように、Webアプリケーションのフロントエンド開発のフレームワークとして、Adobe Flashを多く使用していた。しかし、2020年のAdobe Flash Playerサポート終了を受けて新たなフレームワークへの移行が急務となった。現在、Google社のAngularはReactなどと並んで代表的なWebアプリケーションフレームワークとして知られている。入射器では、Adobe Flashに代わるフレームワークとしてAngularに着目した。そして、開発に取り組み、運用に至っている。本稿では、入射器で運用しているオペレータインターフェースのうち、Angularを用いて開発されたものをいくつか報告する。
 
13:00-15:00 
FRP025
p.964
モバイル端末を利用した加速器運転情報アプリケーションの開発
Development of accelerator status application for mobile devices

○草野 史郎(三菱電機システムサービス(株)),佐藤 政則,佐武 いつか(高エネルギー加速器研究機構)
○Shiro Kusano (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd), Masanori Satoh, Itsuka Satake (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器は、4つの異なるエネルギーのリング型加速器(SKEKB LER 4GeV/HER 3GeV, PF 2.5GeV AR 5GeV)にビームを供給している。 長期間運転する状況において安定したビームを供給するには、加速器運転状況を把握することは非常に重要である。 近年、モバイル端末の進化は著しく、これらの端末を利用することでいつでもどこからでも加速器の状況を把握することが出来る。 今回、iOS、Android OSで動作する加速器運転ログ表示用のアプリケーションを開発した。本アプリケーションの開発環境及び言語は、Xcode/Swift、Android Studio/kotlinを用いて開発を行った。本稿では、本アプリケーションについて、詳細を報告する。
 
13:00-15:00 
FRP026
p.968
SuperKEKBイベントタイミングシステム6年間の運用報告
Status report of the SuperKEKB event timing system for six years

○杉村 仁志,梶 裕志(高エネ研)
○Hitoshi Sugimura, Hiroshi Kaji (KEK)
 
SuperKEKBのイベントタイミングシステムは運用から5年が経過した。 これまで様々なトラブルとそれに対する対処を行い、安定的な運用を目指している。 また、機能向上のためにBucket Selectionのサブルーチンの改修や、 Distributed bus bitを用いたビームゲート処理や、入射器RF位相のパルスごとの変調などの制御を行ってきた。 これらの詳細な報告を行う。
 
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FRP027
p.973
KEK電子陽電子入射器おける電磁石情報管理用Webアプリケーション
Magnet information management system based on web application for the KEK e-/e+ injector linac

○佐藤 政則(KEK加速器),工藤 拓弥(三菱電機システムサービス(株)),榎本 嘉範(KEK加速器)
○Masanori Satoh (KEK Acc.), Takuya Kudou (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Yoshinori Enomoto (KEK Acc.)
 
KEKの電子陽電子入射器は,SuperKEKB電子,陽電子,陽電子ダンピングリング,PF,およびPF-ARの5つの異なるリングへ同時トップアップ入射をおこなっている.2010年6月のKEKBプロジェクト終了後,SuperKEKBへ向けた入射器の改造が進められてきた.2017年には入射器下流部のDC電磁石約100台がパルス電磁石に置き換えられるなど,電磁石システムは特に大幅な更新作業がおこなわれてきた.全長700 mの入射器では,現在,約600台の電磁石が運転に使用されているが,SuperKEKB入射ビームのさらなる品質向上のため,今後も段階的にDC電磁石からパルス電磁石への置き換えが計画されている. 電磁石システムの情報管理として,これまでは単純なテキストファイルを用いたデータベースを使用してきた.本データベース中にある電磁石名称,電磁石電源名称,励磁曲線情報などは,EPICS IOCを始めとした種々のアプリケーションに使用されている.しかしながら,本データベースは情報更新の作業性が良いとはいいがたく,更新時の操作ミスにも気がつきにくい.そのため,リレーショナルデータベースを基盤としたWebアプリケーションを開発し,運用を開始している.本発表では,KEK電子陽電子入射器で導入したWebベースの電磁石情報管理システムの詳細について,今後の展望と共に報告する.
 
13:00-15:00 
FRP028
p.976
レーザー加速イオンの超伝導シンクロトロンへの直接入射の検討Ⅴ
Direct injection of laser-accelerated ions into a superconducting synchrotron V

○野田 悦夫,白井 敏之,岩田 佳之,水島 康太,近藤 公伯(量研機構),藤本 哲也(加速器エンジニアリング)
○Etsuo Noda, Toshiyuki Shirai, Yoshiyuki Iwata, Kota Mizushima, Kiminori Kondo (QST), Tetsuya Fujimoto (AEC)
 
量研機構では、重粒子線がん治療装置の小型化を目指す量子メスプロジェクトを進めている。従来の入射器と超伝導シンクロトロンを用いた第4世代装置、さらに小型化を目指した、レーザー加速イオン源と組み合わせた第5世代装置と開発を進めていく。その一環として、レーザー加速イオンの超伝導シンクロトロンへの直接入射に関するフィージビリティスタディを行っている。具体的には、Beam Transportとパルス圧縮以降のレーザー光学系とビーム発生チャンバーをシンクロトロンの内側に設置することを想定して、Beam Transportを設計し、シンクロトロンでの最終的な補足粒子数を軌道計算により調べてきた。 今回、第4世代向け超伝導シンクロトロンの設計がほぼ固まってきたことを受け、このシンクロトロンを対象として、Beam Transportの設計を見直し、最終捕捉粒子数の計算を行った。特に、お互いのマグネット等が干渉しないようにビーム入射角度を大きくとるとともに配置の見直しを行った。その結果、最終捕捉粒子数は、加速イオンのエネルギー広がり、レーザーによる生成粒子のバラツキ等を考慮しても目標とする1ショットあたり1E8個の粒子数が最終的に捕捉できることが計算で確かめられた。今後、周回中の粒子損失についての詳細な検討を行うとともに、入射用kicker magnetの動作時の磁場強度変化が最終捕捉粒子数に与える影響についても調べていく。これらの検討結果も含め報告する。
 
13:00-15:00 
FRP029
p.981
高温超伝導スペクトロスコピータイプガントリーシステムの概念設計
Conceptual design of a high temperature superconducting spectroscopy-type gantry system

○趙 航,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,安田 裕介,畑中 吉治,斎藤 高嶺,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,荘 浚謙,橘高 正樹,松井 昇太郎(阪大RCNP)
○Hang Zhao, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Yusuke Yasuda, Kichiji Hatanaka, Takane Saitou, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Tsun Him Chong, Masaki Kittaka, Shotaro Matsui (RCNP)
 
Radiation therapy is a kind of extremely efficient cancer treatment that uses high doses of radiation to kill cancer cells. In radiation therapy with high energy particles, the dose is usually applied to the tumor with irradiation from several directions, to limit the dose in healthy tissue in vicinity of the tumor. In order to realize a continuous angular range of irradiation, a spectroscopy-type beam delivery device (i.e. the gantry) is proposed. In the conception of spectroscopy-type gantry, beam is guided to the appropriate azimuthal angle with cylindrical magnetic field surrounding the patient, and treatment angles are set by adjusting magnetic strength, instead of rotating a gantry with magnets of the beam transport around the patient. With this conception as well as high temperature superconducting materials, continuous angular range of irradiation could be realized by a super compact spectroscopy-type gantry. In this work, the conceptual design of a high temperature superconducting spectroscopy-type gantry system will be presented.
 
13:00-15:00 
FRP030
p.984
高エネ機構における加速器VRコンテンツ開発
Accelerator VR-contents development at KEK

○古坂 道弘,広田 克也,清水 邦昭,ハイス 由乃,太田 律子,池松 克昌,山口 誠哉,肥後 寿泰,阿部 哲郎,福田 茂樹,池田 進(高エネ機構),岩下 芳久(京大),矢野 博明(筑波大)
○Michihiro Furusaka, Katsuya Hirota, Kuniaki Shimizu, Yoshino Hayes, Ritsuko Ota, Katsumasa Ikematsu, Seiya Yamaguchi, Toshiyasu Higo, Tetsuo Abe, Shigeki Fukuda, Susumu Ikeda (KEK), Yoshihisa Iwashita (Kyoto Univ.), Hiroaki Yano (Tsukuba Univ.)
 
  KEK VR開発チームは筑波大と協力し、UNITYゲーム環境を用い「KEK教育用加速器」、「X-band加速空洞」などをVR世界に再現した。再現された加速器を体験すると、その現実感に、また中を覗きその内部構造、模擬ビームまで見られることに驚く人が多い。後者では空洞の中の電磁場、電子の加速の様子を表現する試みも行っている。KEK VR開発チームは、高エネ機構IINAS事業、オープンイノベーション推進部、加速器研究施設を中心としたメンバーで構成されたチームで立ち上げられ、今年度からはIINAS-NX事業の一つの柱として活動を続けている。
 
13:00-15:00 
FRP031
p.989
NaCl水溶液へのパルス大強度相対論的電子ビーム照射によるOHラジカル生成量の算出
Calculation of OH radical production by pulsed intense relativistic electron beam irradiation of aqueous NaCl solutions

○長谷川 聡一(長岡技科大),Kladphet Thanet(長岡高専),高橋 一匡,佐々木 徹,菊池 崇志(長岡技科大),今田 剛(新潟工科大学,長岡技科大・極限エネルギー密度工学研究センター)
○Soichi Hasegawa (NUT), Thanet Kladphet (NIT, Nagaoka College), Kazumasa Takahashi, Toru Sasaki, Takashi Kikuchi (NUT), Go Imada (NIIT, NUT EDI)
 
産業発展に伴って排水に含まれる難分解性物質による水環境汚染が問題となっている。難分解性化合物の処理方法として熱処理や薬剤処理が挙げられるが、高コストであることや薬剤性が残存してしまうといった課題がある。それらに代わる処理方法の1つとして、パルス大強度相対論的電子ビーム(PIREB: Pulsed Intense Relativistic Electron Beam)を用いた方法が検討されている。PIREB照射による間接作用によって生成されるOHラジカルは強力な酸化剤であり、多くの物質と反応する。この性質から難分解性化合物の分解に有効であるとされており、PIREBの複合処理効果において重要な役割を担っていると考えられる。先行研究より、PIREBの照射線量とOHラジカルの副生成物として生成される過酸化水素の収量の関係が調べられているが、OHラジカルの収量はわかっていない。そこで本研究では、NaCl水溶液にPIREBを照射した際、水の放射線分解によって生成されるOHラジカルの収量を算出することを目的とし、照射実験と数値シミュレーションを行った。照射実験では水溶液へのPIREB照射により生成された過酸化水素の収量を計測し、数値シミュレーションでは水の放射線分解における化学反応のレート方程式を解くことで、OHラジカルと過酸化水素の関係を調査した。
 
13:00-15:00 
FRP032
p.994
エタノール-硫酸を用いたNb材のフッ酸無し電解研磨法の開発
Development of HF-free electropolishing of Nb materials using ethanol-sulfuric acid solution

○後藤 剛喜,武智 英明,石田 正紀,文珠四郎 秀昭(高エネ研)
○Takeyoshi Goto, Hideaki Takechi, Masaki Ishida, Hideaki Monjushiro (KEK)
 
現在,超伝導線形加速器に用いられているNb空洞の表面処理には,フッ酸-硫酸の混酸を電解液として用いた電解研磨工程が必須である。この混酸は取扱が非常に危険である上に環境負荷も高いため,化学安全や外部への漏洩を防ぐための複雑な化学安全警報システムが電解研磨設備に必須となっている。本研究ではフッ酸を用いないNb材の電解研磨法として,エタノール-硫酸の混合液を電解液として用いる検討を行った。その結果について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP033
p.997
高周波構造設計における位相幾何学的手法
Topological approach to RF structure design

○影山 達也(高エネ研)
○Tatsuya Kageyama (KEK)
 
よく知られているように円管と角管は位相幾何学的には同形とされる。そして、管内に励振される電磁場モードの大局的様相は管形状の位相幾何学的性質に従う。一方、製造技術的・構造力学的な観点からすると円管と角管は異なる「かたち」として峻別される。裏を返せば、高周波構造の設計に位相幾何学的自由度を導入することにより読者諸氏が直面する技術的諸問題を柔軟に回避・解決する道が開かれるであろうと期待される。本論文では、電波吸収体を装荷したビームチェンバーの例を皮切りに、高周波構造のデザインにおける位相幾何学的設計手法の具体例をいくつか紹介する。
 
13:00-15:00 
FRP034
p.1002
高周波窓用セラミックの使用環境による特性変化
Changes in characteristics of ceramics for RF windows depending on environmental changes

○山本 裕亮(京セラ株式会社),山本 康史(KEK),吉住 浩之(京セラ株式会社),道園 真一郎(KEK)
○Yuusuke Yamamoto (Kyocera Corp.), Yasuchika Yamamoto (KEK), Hiroyuki Yoshizumi (Kyocera Corp.), Shinichiro Michizono (KEK)
 
京セラと高エネルギー加速器研究機構は高周波窓としての必要特性を満たす材料開発に関して共同研究を進めております。 アルミナ材料AO479Uの材料特性は高周波窓に使用されるAO479Bなどの他材料と同等であることが、これまでの研究から得られました。実際の製造時や使用時の環境を考慮した特性の測定を進めており、今回ご報告します。加速器の製造工程の影響として想定する各種炉でロウ付けと同等の熱処理をおこなった時の条件違いによる特性変化と、入力結合器に使用する高周波窓と同等のサイズにて一個体内での場所による二次電子放出係数のバラツキの確認と、超伝導加速器の大電力運転と同じように冷却による温度サイクルを経た時のリークの有無などを確認しました。同時に、誘電率・誘電正接の温度特性についても測定しました。 また、高周波窓のマルチパクタ放電を抑制するコーティングとして酸化クロム膜の特性評価を進めております。
 
13:00-15:00 
FRP035
p.1007
大強度ビーム加速のための単胞型空胴の電場分布評価
Evaluation of the electric field distribution in single cell cavity for high current beam acceleration

○佐古 貴行(東芝エネルギーシステムズ),森 義治,石 禎浩,上杉 智教,栗山 靖敏(京大複合研),津守 克嘉(核融合研),安藤 晃(東北大)
○Takayuki Sako (Toshiba Energy Systems), Yoshiharu Mori, Yoshihiro Ishi, Tomonori Uesugi, Yasutoshi Kuriyama (Kyoto Univ.), Katsuyoshi Tsumori (NIFS), Akira Ando (Tohoku Univ.)
 
核融合プラズマの加熱にはNBI(中性粒子ビーム入射加熱: Neutral Beam Injection heating)が用いられている。ITERの次の段階であり、発電実証を目的とする原型炉においてはプラズマが大型化するため、ビームの高エネルギー化が必要である。一方で既存の静電加速方式では絶縁耐圧上の制約により高エネルギー化には困難を伴う。そこで静電加速に代わる新たな加速方式として単胞型空胴を用いた高周波加速を検討している。単胞型空胴は加速空胴1台毎に単一の加速ギャップを設け、各空胴の高周波を独立に制御することでビームを加速する。RFQを始めとする従来のイオン用の線形加速器と比較して大口径のビームダクトを備える特徴を有する。そのため、ビームサイズを広げ空間電荷効果を抑制することで従来加速器以上のアンペア級のビーム電流を加速できる可能性がある。しかしながら、ビームサイズを広げるために従来方式以上にビームダクト内の電場分布の影響が大きくなる。単胞型空胴によるビーム加速を検証するため、大口径のビームダクトを備え、単胞型空胴と同一の加速モードであるERIT空胴を用いて電場分布測定を実施した。本発表において電場分布の測定結果について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP036

自動サイクロトロン共鳴加速用回転TE111モードRF共振空洞の設計
Designing of the rotationg TE111 mode RF cavity for cyclotron auto-resonant acceleration
○神田 浩樹,福田 光宏,依田 哲彦,安田 裕介,原 隆文,武田 佳次朗(阪大RCNP),篠塚 勉,伊藤 正俊(東北大CYRIC),宮脇 信正,倉島 俊(量研高崎研),中尾 政夫(群大重医セ),松田 洋平(甲南大),涌井 崇志(量研量医研)
○Hiroki Kanda, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Yuusuke Yasuda, Takafumi Hara, Keijiro Takeda (RCNP, Osaka Univ.), Tsutomu Shinozuka, Masatoshi Ito (CYRIC, Tohoku Univ.), Nobumasa Miyawaki, Satoshi Kurashima (QST Takasaki), Masao Nakao (GHMC), Yohei Matsuda (Konan Univ.), Takashi Wakui (QST QMS)
 
自動サイクロトロン共鳴を応用した粒子加速器は高い電力効率で大電流のビーム加速が可能であることが示されており、RI製造や中性子源など大強度ビームが必要となる用途に向けた加速器としての実用化が期待されている。 この方式の加速原理を陽子などのイオンに適用する場合、サイクロトロン共鳴の周波数を考慮すると回転するTE111モードの定在波を利用することが望ましい。私たちは陽子を加速することを目標として、8Tのソレノイド磁場と回転TE111モード高周波電磁場を用いた粒子運動のシミュレーションを行い、mAを超える陽子ビームの加速が可能であることを確認してきた。この、RFのパワーを効率よく粒子の加速に用いることができる回転TE111モードは、同一の周波数で偏極方向および位相を90°ずらしたTE111モードのRFを重畳することで形成することができる。これを実際の共振空洞で実現するためには、円筒形の共振器、二方向に偏極したRFの入力、チューニング、モニターを独立して行うことが必須である。コンピューターシミュレーションによって、RF入力のための結合器、チューニング機構、モニター用のピックアップの構造を検討してきた成果を報告する。
 
13:00-15:00 
FRP037

KEK における超伝導特性評価のための第三高調波測定システムの開発
Development of the third harmonic measurement system for evaluating superconducting characteristics at KEK
○片山 領,佐伯 学行,早野 仁司(高エネルギー加速器研究機構),岩下 芳久(京都大学),頓宮 拓(京都大学化学研究所),飯竹 真之(S-works)
○Katayama Ryo, Saeki Takayuki, Hayano Hiotoshi (KEK), Iwashita Yoshihisa, Tongu Hiromu (Kyoto University), Iitake Masayuki (S-works)
 
現在、KEK COI 棟に第三高調波電圧誘導法により異なる四つの超伝導サンプルの転移温度と磁束侵入開始磁場を同時に評価するための専用の実験システムの構築を進めている。これにより、超伝導多層薄膜サンプルや酸化膜の拡散等の影響を調べることが目的である。本報告で本実験設備の構築の現状について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP038

KEKにおけるダイレクトスライスNb材による超伝導9セル空洞製造の研究開発
R&D of fabrication of SRF 9-cell cavity with direct slicing Nb material at KEK
○渡邉 勇一,阿部 慶子,道前 武,平木 雅彦,井上 均,Kumar Ashish,道園 真一郎,佐伯 学行,牛谷 唯人,山中 将,吉田 孝一(KEK)
○Yuichi Watanabe, Keiko Abe, Takeshi Dohmae, Masahiko Hiraki, Hitoshi Inoue, Ashish Kumar, Shinichiro Michizono, Takayuki Saeki, Yuito Ushitani, Masashi Yamanaka, Kouichi Yoshida (KEK)
 
国内誘致が検討されている国際リニアコライダー(ILC)の加速器建設では、約9000台の超伝導9セル空洞の製造が必要である。ILC計画を実現するためには、建設コストの削減が重要な課題となっている。このため、KEKでは、ILC用超伝導9セル空洞の製造コストの削減に関する研究開発を行っている。この研究開発では、高RRRのNbイゴットからダイレクトスライス法によって切り出した巨大結晶粒Nb板材を使用してセンターセル部を製作することで、空洞の製造コストを抑えることを目指している。KEKの空洞製造施設(Cavity Fabrication Facility: CFF)では、この製造法によって1台の超伝導9セル空洞の製造を行った。この発表では、その製造工程の詳細について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP039

普及型RFQリニアックの開発
Development of commercial RFQ linac
山内 英明,○舛岡 優史(タイム)
Hideaki Yamauchi, ○Masashi Masuoka (TIME Co.)
 
高周波四重極線形加速器(RFQリニアック)は低エネルギー領域でのイオン加速に適した装置であり、弊社は精密機械加工技術を応用した三体構造による新しい製造方法を特許化・実用化した。2021年には高デューティ化に向けたチューナーレス技術を開発して海外に納品している。本発表では弊社における普及型RFQリニアックの開発について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP040
p.1010
KEK-PF高速パルスキッカーのための試作SiC-MOSFETスイッチングモジュールの性能評価
Development of a fast pulsed power supply using SiC-MOSFETs for KEK-PF

○篠原 智史,満田 史織,内藤 大地(KEK),奥田 貴史,中村 孝(ネクスファイ テクノロジー)
○Satoshi Shinohara, Chikaori Mitsuda, Daichi Naito (KEK), Takafumi Okuda, Takashi Nakamura (NexFi Technology)
 
放射光源加速器KEK-PFでは孤立電子バンチを数周回ごとに制御して特定の孤立バンチの放射光を提供できるような運転を計画しており、そのためにはキッカーとそれを駆動するパルス電源が必要である。しかしリングの周長が比較的短いことや孤立バンチ前後の間隔を考慮するとパルス電源への要求値は高く、ピーク電流値 500 Aで安定度1%を切り、100 ns幅の短パルスを1 MHzで駆動可能な電源が必要である。またピーク電流値とパルス幅、キッカーのインダクタンスから計算される必要な印加電圧は15 kVであり高耐圧も求められる。このため電源の開発では高耐圧化と大電流高繰り返しによる発熱への対応、短パルス出力が可能な高速スイッチングシステムの構築が鍵となる。そこでKEK-PFでは低損失で高速動作可能なSiC-MOSFETに注目しパルス電源の開発を行っている。SiC-MOSFETは素子あたりの耐圧や電流容量は大きくないため多積層の技術も必要となる。そこで初めに耐圧性能を重視して開発を進め、SiC-MOSFETを16直列1並列接続したスイッチングモジュールとパルス電源付帯回路の試作を行った。本発表では試作したSiC半導体パルス電源の印加電圧特性や出力安定性等の評価結果について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP041
p.1015
永久磁石を用いた軌道補正磁石の評価
Evaluation of orbit correction magnet with permanent magnets

○栗山 靖敏,岩下 芳久(京大複合研),不破 康裕(原子力機構),照沼 信浩(高エネ研)
○Yasutoshi Kuriyama, Yoshihisa Iwashita (KURNS), Yasuhiro Fuwa (JAEA), Nobuhiro Terunuma (KEK)
 
ILCダンピングリングにおける軌道補正用磁石として、永久磁石を用いた軌道補正磁石が候補の1つとなっている。製作をおこなった永久磁石軌道補正磁石の試作機について、性能評価を実施した。本発表では、永久磁石軌道補正磁石の性能について議論を行う。
 
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FRP042
p.1019
ビーム入射のための八極型セラミックスチェンバー一体型パルスマグネットの磁場評価
Magnetic field evaluation of an octupole type Ceramics Chamber with integrated Pulsed Magnet for beam injection

○Lu Yao(総研大),満田 史織,高木 宏之,小林 幸則,内山 隆司,野上 隆史(高エネ研)
○Yao Lu (SOKENDAI), Chikaori Mitsuda, Hiroyuki Takaki, Yukinori Kobayashi, Takashi Uchiyama, Takashi Nogami (KEK)
 
An air core pulsed magnet named Ceramics chamber with integrated Pulsed Magnet(CCiPM) was developed as a fast dipole kicker at first. Because of its flexibility of magnetic field, an octupole-like magnetic field can also be generated. A prototype of an octupole type CCiPM was fabricated for electron beam injection at KEK Photon Factory (KEK-PF). The magnetic field performance of the octupole type CCiPM is measured for DC and pulsed current supply. Some measurement subjects of eddy-current magnetic field evaluation and background noise treatment around zero approximate magnetic field region at the center of magnet are discussed.
 
13:00-15:00 
FRP043
p.1024
J-PARC RCS 主電磁石電源制御系の更新
Renewal of control system of the J-PARC RCS magnet power supply

○渡辺 泰広,柳橋 孝則(日本原子力研究開発機構),小松崎 誠(アイムス)
○Yasuhiro Watanabe, Takanori Yanagibashi (JAEA), Makoto Komatsuzaki (Aimusu)
 
J-PARC RCSの主電磁石電源の電流制御システムは,シンクロトロンの運転周期である25Hzに同期した正弦波パターンで電流制御する必要がある。 現在運用している電流制御システムは,電流波形をモニタするためのADCユニット,リファレンス波形を生成するための高速ディジタル出力基板, 各ハードウエアにタイミング信号を供給するためのタイミングユニットから構成されており, 1台の電源を電流制御するための機能が複数のハードウエアに分かれている。 そのため,異常が生じた場合の原因の特定に時間を要することなど,制御システムを運用する上で支障が生じている。 さらに,一部の使用部品が生産中止となるなど予備品の製作が困難となっていることから,電源制御システムの更新を検討している。 本論文では,現在の電源制御システムの運用経験をもとに新たに開発した,J-PARC RCS 主電磁石電源の制御システムの試験結果について報告する。 本制御システムは,1台の電源を制御するために必要な機能を1つの制御ユニットに集約して電源に内蔵することにより,制御システムの大幅な簡素化を実現した。 。
 
13:00-15:00 
FRP044
p.1029
KEK電子陽電子入射器におけるパルス電磁石
Pulsed magnets at KEK electron/positron injector linac

○横山 和枝,榎本 嘉範,柿原 和久,紙谷 琢哉,染谷 宏彦,田中 窓香,夏井 拓也(高エネルギー加速器研究機構)
○Kazue Yokoyama, Yoshinori Enomoto, Kazuhisa Kakihara, Takuya Kamitani, Hirohiko Someya, Madoka Tanaka, Takuya Natsui (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器では、低エミッタンスビームの良質なビームを保持したまま複数のリングへ同時入射をするために、さまざまな高精度のパルス動作機器を開発している。従来の共通磁場を用いたDC電磁石のビーム輸送方式では、低エミッタンスを保持したまま各リングの要求するビーム(エネルギー・電荷量の異なる)を加速輸送し、同時入射を達成することは困難である。そのため、KEK電子陽電子入射器では、DC電磁石をパルス化することによって、各ビームモードに最適なオプティクスでビームの加速輸送を行うことで良質なビームを実現している。パルス電磁石の実用試験運転は2015年頃から開始された。2017年に、ダンピングリング(DR)上流の1, 2セクターにパルスステアリングを増設し、DR下流の3セクター以降のDC四極電磁石はダブレットタイプのパルス四極電磁石に置き換え、パルスステアリングも導入した。その後、入射部AセクターやJアーク部のDCマグネットの一部もパルス電磁石に置き換え、今後もパルス電磁石を増設する予定である。本発表では、現在運用しているパルス電磁石のまとめと今後製作予定のパルス四極電磁石について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP045

J-PARCリニアック LLRFシステムの現状
Status of the LLRF system for the J-PARC linac
○二ツ川 健太,Cicek Ersin,方 志高,福井 佑治,溝端 仁志(高エネ研),佐藤 福克(NAT)
○Kenta Futatsukawa, Ersin Cicek, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Satoshi Mizobata (KEK), Yoshikatsu Sato (NAT)
 
J-PARCリニアックの低電力高周波制御(LLRF)システムでは、空洞電界の安定度の性能要求を満たすために、FPGAを用いたデジタルフィードバック(DFB)とデジタルフィードフォワード(DFF)システムを採用している。機器の更新に伴い、2021年の夏期シャットダウン後から、RFQ, DTL1-2にデジタイザを用いたDFB・DFFシステムを、MEBT1にTCA.4ベースのDFB・DFFシステムを導入して運用を開始している。新規に追加した機能により、システム全体の状態を把握できるようになり、より安定した運転につながっている。 LLRFのインターロック管理システムを開発して、2022年1月から実機での本格的な運用を開始した。発報内容や発報時刻だけでなく、波形データを解析情報や自動復帰の有無、ビームの有無や停止時間などの情報を半自動で整理させている。このシステムの導入により、現状の把握とシステムの脆弱な点をいち早く発見できるようになった。 新しい取り組みとして、デジタイザを導入して監視できる点が増加した324MHz RFシステムに関して伝達関数を測定してRFモデルと比較をする作業を開始した。また、加速空洞におけるビーム負荷からビームと空洞電場との相対位相の変動を測定することを検討している。 本講演では、現在のJ-PARCリニアックのLLRFシステムの紹介と新しい試みについて発表する予定である。
 
13:00-15:00 
FRP046
p.1034
KEK電子陽電子入射器棟クライストロンギャラリー最下流部の更新
Update of most downstream part of klystron gallery in KEK electron/positron injector linac

○川村 真人,中島 啓光,松本 修二,夏井 拓也,明本 光生,本間 博幸,設楽 哲夫,竹中 たてる(高エネ研)
○Masato Kawamura, Hiromitsu Nakajima, Shuji Matsumoto, Takuya Natsui, Mitsuo Akemoto, Hiroyuki Honma, Tetsuo Shidara, Tateru Takenaka (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器棟クライストロンギャラリー最下流部では、現在陽電子用エネルギー圧縮システム(ECS)の為のパルスクライストロンと大型(共振充電型)モジュレータを運転している。今年度より電子用ECS等の予算が認められたので、大型モジュレータの小型化(インバータ充電型への変更)やテストスタンドの構築などの更新作業を開始した。当初の予想より、小型モジュレータの納期が長期になる事、冷却水設備増強の費用が高騰し工期が長期になる事、などの課題が生じ、計画的な更新が必要となっている。本報告では、当該更新作業の現状や今後の予定などを報告する。
 
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FRP047
p.1037
SuperKEKB入射器のノイズ対策-3
Noise counterplan of SuperKEKB Injector Linac-3

○矢野 喜治,明本 光生,荒川 大,片桐 広明,川村 真人,中島 啓光,夏井 拓也,本間 博幸,松下 英樹,松本 修二,松本 利広,三浦 孝子(KEK)
○Yoshiharu Yano, Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Masato Kawamura, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Hiroyuki Honma, Hideki Matsushita, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura (KEK)
 
KEKの電子陽電子入射器は1982年にPFリングの電子入射器として稼働をはじめ、様々な増設、改造を重ね現在はPF、PF-AR、SuperKEKBの入射器として運用中である。入射器には様々な機器があるが60台の高周波電源はLinac運転中に大きなノイズを発している。このノイズは機器の誤動作を引き起こしビームの品質を下げる要因となっている。また、商用のAC電圧は数%程度変動するためそれぞれの機器で対策をしているが想定外の変動があった場合はやはりビームの品質が低下してしまう。ここではRaspberry Piを使ったノイズモニタとAC100(V)モニタを使って分電盤のコモンモードノイズとAC100(V)の変動を記録し機器の誤動作等の原因を探った。
 
13:00-15:00 
FRP048

ILCクライストロン用チョッパ型マルクス電源の現状
Present status of chopper-type marx modulator for ILC klystron
○明本 光生,川村 真人,中島 啓光,夏井 拓也(KEK),江 偉華(長岡技術科学大学),徳地 明,澤村 陽(PPJ)
○Mitsuo Akemoto, Masato Kawamura, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui (KEK), Weihua Jiang (Nagaoka University of Technology), Akira Tokuchi, Yo Sawamura (PPJ)
 
Marx電源の利点は規格化されたモジュールを多用するので量産に向き、また組み立ても容易であること、また使用される電子部品、特に半導体スイッチ、コンデンサ等の耐圧は充電電圧値でよいので、汎用品が利用できることから電源の大幅な低コスト化ができる。一番の大きな利点は長パルス用高圧パルストランスを使わないことである。これはサイズ、コストを削減するだけでなく、出力パルスの立ち上がり、立ち下がり特性も大きく改善し、電源の効率を上げることができる。現在開発中のMarx電源は80段の降圧チョッパ回路で構成され、それぞれ-1.5kVの出力を合成して-120 kV (±0.5 % )、140 A、1.65 ms、5 Hzの長パルスを発生させる。本発表では、この電源の開発状況について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP049
p.1041
J-PARCリニアッククライストロンテストスタンドの概要
Overview of the J-PARC linac klystron test stand

○溝端 仁志,Cicek Ersin,方 志高,福井 佑治,二ツ川 健太(高エネ研),篠崎 信一,不破 康裕(原子力機構),岩間 悠平,佐藤 福克(NAT)
○Satoshi Mizobata, Ersin Cicek, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Kenta Futatsukawa (KEK), Shinichi Shinozaki, Yasuhiro Fuwa (JAEA), Yuhei Iwama, Yoshikatsu Sato (NAT)
 
J-PARCリニアックではクライストロン45台を用いて加速器の運転が行われている。1台の高圧電源に対して最大4本のクライストロンを接続して運転しており、それぞれの高圧電源の設定電圧は異なっている。クライストロンによってはゲインが低いものもあり、低い電圧で運用する時は入力電力を大きくする必要がある。クライストロン交換の際には設定電圧と必要なRF出力を勘案してクライストロンを選定しなければならない。テストスタンドで事前にクライストロンの性能を評価することで交換時の選定がしやすくなる。本件ではテストスタンドの概要と測定例を発表する予定である。
 
13:00-15:00 
FRP050
p.1043
クライストロン電源用ビデオ監視システムの導入
Introduction of video surveillance system for kystron modulators

○牛本 信二(三菱電機システムサービス株式会社),松本 修二,白川 明広 ,佐藤 政則,中島 啓光,榎本 嘉範,佐武 いつか(高エネルギー加速器研究機構),草野 史郎,久積 啓一,白仁田 圭悟(三菱電機システムサービス株式会社)
○Shinji Ushimoto (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.), Shuji Matsumoto, Akihiro Shirakawa, Masanori Sato, Hiromitsu Nakajima, Yoshinori Enomoto, Itsuka Satake (KEK), Shiro Kusano, Keiichi Hisazumi, Keigo Shiranita (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.)
 
KEK 電子陽電子入射器には試験施設の電源を含め、およそ70台のクライストロン用パルス電源が設置されている。2019年にはその内の1台で火災が発生し、およそ1か月に亘り加速器運転を停止する事態となった。以降の加速器運転では、より安全に配慮する目的で、高圧印加に関わるインターロックが発生した際には、現場で異常の有無を確認し復帰を試みることとなった。結果的に安全面の信頼度は向上したものの、従来に比べてトラブル時の復旧に時間を要することとなった。 この状況を改善するため、2021年度ビデオ監視システムの導入をおこなった。このシステムは入射器棟内に設置した120台あまりのネットワークカメラと2台の録画・配信用サーバー計算機を専用ネットワークで接続したものである。これらの内、70台のカメラがクライストロン電源を監視している。このシステム導入以降、制御室から遠隔でクライストロン電源の状態を確認しながらインターロックの復帰をおこなうことで、安全面を確保しつつトラブル復旧時間の短縮を実現している。
 
13:00-15:00 
FRP051

ILC候補地域における林産業の活性化とカーボンニュートラルに関する研究
Study of forestry revitalization and carbon neutrality in ILC candidate site
○寺澤 弘陽,高野 裕司,大角 美森(アジア航測株式会社 社会インフラマネジメント事業部 PPP/PFI推進室),吉田 琴音(岩手県 ILC推進局 事業推進課),大平 尚(岩手県 理事),成田 晋也,吉岡 正和(岩手大学)
○Hiroaki Terasawa, Yuji Takano, Mimori Oshumi (PPP/PFI Promotion office , Social Infrastructure Management Division, ASIA AIR SURVEY CO., LTD.), Kotone Yoshia (Office of ILC Promotion, Department of Policy and Regional Affairs, Iwate Prefectural Government), Hisashi Odaira (Chair, Iwate Prefectural Government), Shinya Narita, Masakazu Yoshioka (Iwate University)
 
ILCは、全長20㎞におよぶ世界最高、最先端の電子・陽電子衝突型加速器であり、現在、北上山地を候補地として国内誘致が検討されている。ILC建設にあたっては、地域への負荷を最小限にする「グリーンILC」の考え方に基づき、加速器構成設備の徹底的な省エネと高効率化や再生可能エネルギーの利用、排熱エネルギーの回収と地域産業への活用が検討されている。また、近年、地球の温暖化防止のため脱炭素化社会への取り組みが進む中、国や企業、各事業においてカーボンニュートラルの実現が求められており、ILC建設もまた例外ではないと考えられる。  本研究はこれまで、ILC候補地域の地形情報を収集し赤色立体地図を作成したほか、UAVレーザ計測を使用した森林資源解析等を行い、ILC建設を契機とした森林資源の利用推進、林産業の活性化に向けた検討を行った。また、今年度は候補地域におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、森林資源やCO2吸収ポテンシャルの算定に取り組んでいる。さらに、地域の林産業において人材不足や木材流通の停滞等の課題があることも踏まえ、ILC建設を契機としてこれらの地域課題を解決しながらカーボンニュートラルを実現するための方策についても検討した。  なお、本研究は岩手大学、岩手県、アジア航測㈱の共同研究の一環で実施したものである。
 
13:00-15:00 
FRP052
p.1047
KEK-ATFにおけるアライメントの現状
Present status of alignment for KEK-ATF beam line

○荒木 栄,照沼 信浩,奥木 敏行,久保 浄,黒田 茂(高エネ研),阿部 優樹(総研大),清水 健一((有)エスケーサービス),菊地 隆平((株)関東情報サービス)
○Sakae Araki, Nobuhiro Terunuma, Toshiyuki Okugi, Kiyoshi Kubo, Shigeru Kuroda (KEK), Yuki Abe (SOKENDAI), Kenichi Shimizu (SK-service INC.), Ryuhei Kikuchi (Kantou Information Service)
 
KEKの先端加速器試験装置(ATF)では国際リニアコライダー(ILC)において必要とされるビーム計測・制御技術の開発を進めている。 近年、長期的な地盤などの変動によるミスアライメントも発生しているが、床構造的に強弱があり、変動が大きいエリアがある。 本年3月の地震(つくば市震度4)後、許容範囲を超える箇所が見つかり、横方向に最大1mm、高さ方向で0.3mmのアライメント修正を行った。ダンピングリングの基準平面の傾きも変動した模様。ナノメートルレベルでのビーム位置制御を実現するために、ダンピングリング(DR)からATF2ビームラインを確認した。アライメントの現状を報告する。
 
13:00-15:00 
FRP053

SKEKB陽電子標的の熱解析と標的材(タングステン)の引張試験
Thermal analysis of SKEKB positron target and tensile test of target material (tungsten)
○森川 祐,榎本 喜範(KEK)
○Yu Morikawa, Yoshinori Enomoto (KEK)
 
標的への入射ビーム強度が高いほどより多くの2次粒子が生成され、目的の実験に恩恵をもたらす。SKEKB陽電子標的では駆動電子ビームの電磁シャワーより陽電子を捕獲するため、捕獲陽電子量は駆動電子ビームの電流量に比例する。入射可能なビーム電流を制限する要因の1つに標的の耐熱性能がある。SKEKB陽電子標的の熱的裕度を評価するため、有限要素解析により温度と熱応力を計算評価した。具体的には放射線輸送コードFLUKAにより計算したビーム発熱分布を有限要素解析ソフトANSYSに取り込み標的の温度と応力負荷を評価した。また、標的材(タングステン)の強度は製法や運用温度に応じて変化する。標的材の強度評価の為に、実際に使用している標的材料を標的運用温度帯で引張試験を行った。本報告では、熱解析と引張試験の結果と、これら評価に基づくSKEKB陽電子標的の熱的裕度の検証を紹介する。
 
13:00-15:00 
FRP054
p.1051
マルチイオン照射のための小型ECRイオン源のビーム試験
Beam test of new compact ECR ion source for multi-ion radiotherapy

○村松 正幸,片桐 健(量研機構),野村 真史,坪松 悟史,楠岡 新也,藤原 正,戸内 豊,橘 正則(住友重機),鈴木 太久,髙橋 勝之,白石 直浩,佐々野 利信(加速器エンジニアリング),岩田 佳之(量研機構)
○Masayuki Muramatsu, Ken Katagiri (QST), Shinji Nomura, Satoshi Tsubomatsu, Shinya Kusuoka, Tadashi Fujiwara, Yutaka Touchi, Masanori Tachibana (SHI), Taku Suzuki, Katsuyuki Takahashi, Tadahiro Shiraishi, Toshinobu Sasano (AEC), Yoshiyuki Iwata (QST)
 
量子科学技術研究開発機構(QST)では、数種類のイオンを標的に照射することで理想的なLETおよび線量分布を形成するマルチイオン照射を推進している。想定されるイオン種はHe、C、O、Neの4種類で、複数のイオン源を専有すれば比較的容易に切り替えが可能となるが、普及型の粒子線がん治療施設では、コストと運転・メンテナンスの観点から、永久磁石型のECRイオン源1台で対応することが望まれる。イオン源へのビーム電流の要求値は、He2+:940 µA、C4+:290 µA、O6+:330 µA、Ne7+:245 µAとなっている。 イオン源の設計・製作は住友重機械工業との共同研究で行われ、2022年3月にHIMACのイオン源室へ設置された。現在は各機器の動作確認を行った後に、要求値を満たすためのビーム試験を行っており、He2+では1040 µA、C4+では230 µAのビームが得られている。ガス流量の最適化や、イオン源内部のクリーニング、マイクロ波2重加熱の効果の確認など十分に行われていないため、まだ十分な性能が得られていないと考えられる。今後は酸素、ネオンの生成試験と、ビーム電流の増強を行う予定である。
 
13:00-15:00 
FRP055
p.1054
液体金属をターゲットとしたレーザーイオン源の基礎的検討
Study on basic characteristics of laser ion source using liquid metal target

○高橋 一匡,宮崎 翔,春川 直都,石黒 薫子,石川 慎也,佐々木 徹,菊池 崇志(長岡技大)
○Kazumasa Takahashi, Kakeru Miyazaki, Naoto Harukawa, Kaoru Ishikuro, Shinya Ishikawa, Toru Sasaki, Takashi Kikuchi (NUT)
 
レーザーイオン源は通常、レーザーを固体ターゲットに照射して発生させたアブレーションプラズマからイオンビームを引き出すイオン源である。1価イオンやその近傍の比較的低い価数のイオンの供給ではターゲット照射時のレーザーパワー密度を抑えて、同じレーザー照射面から繰り返し安定にプラズマを生成可能である。一方、高い価数のイオンを供給したい場合にはターゲットへのレーザー照射強度を高める必要があり、一度レーザーを照射した箇所はクレーター状のレーザー照射痕が形成されるため、安定なプラズマ供給には照射毎に新しい面を利用する必要がある。このような利用ではレーザー照射回数がターゲット面積に制限されるためレーザーイオン源の定常運転にはレーザーターゲットの寿命が課題となる。これを回避するため、ターゲットの損傷が回復する液体のレーザーターゲットを用いることを検討している。本発表では液体金属として比較的低融点の合金であるU-アロイを用いて静的に設置された状態の液体金属ターゲットに繰り返しレーザーを照射し、イオン電流を計測することで安定にプラズマを形成できる条件について議論する。
 
13:00-15:00 
FRP056

コンパクトERLにおけるアーク部オプティクススタディ
Optics study of the arc section in the compact ERL
○島田 美帆(高エネ研)
○Miho Shimada (KEK)
 
コンパクトERLのアーク部は曲率半径1m程度の偏向電磁石とトリプレット四極電磁石で構成される。赤外FELやTHz光源のために、アクロマート光学系を維持しつつ、バンチ圧縮のために転送行列のR56成分を連続的にスキャンできるようなオプティクスが必要となる。これまでは、トリプレットの極性はDFDで運転してきた。K値を小さく抑えられるというメリットがあったものの、アーク部で垂直方向に大きく発散し、トリプレット中心で分散関数が大きくなるというデメリットがあった。そこで、最大分散関数を減らし、エネルギーアクセプタンスを上げるために、FDFのオプティクスの検討を行った。その結果について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP057
p.1058
温度勾配の対称性を利用した空洞冷却技術の開発
Development of cavity cooling scheme using symmetry of temperature gradient

○清水 洋孝(KEK)
○Hirotaka Shimizu (KEK)
 
超伝導加速技術を利用した加速器施設では、クライオモジュールと呼ばれる真空断熱層の中に収められた加速空洞や電磁石を、液体ヘリウムの様な寒剤を用いて冷却する事が一般的である。大型の加速器施設では、専用のヘリウムの液化プラントを併設する事で、直接浸漬方式での冷却が採られている場合が多いが、この方式では、浸漬に必要となる液体ヘリウムの量を抑える工夫として、冷却される加速空洞の周りに、ヘリウム保存用の容器(ジャケット)が取り付けられる事が多い。加速空洞本体が純ニオブ製である事が多いのに対して、ジャケットにはチタン等の金属が用いられ、これらの接合部では異種金属による溶接点が形成される事になる。この様な異種金属接合を含む構造体を冷却する場合、一般には温度勾配が発生して、それに伴う熱起電力が誘起され、結果として、加速空洞の周りに磁場が発生する事が知られている。磁束の捕捉を極端に嫌う超伝導加速空洞の性能を損なわない様に、安全に冷却を行う為には、誘起される磁場の特性を詳しく理解し、適切な冷却手法の検討が重要であると考えられる。以上の考えに基づいて、温度勾配の対称性を利用した、空洞の冷却技術の開発について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP058
p.1063
スーパーカミオカンデ検出器較正用電子加速器の開発
Development of an electron accelerator for the Super-Kamiokande detector

○鈴木 良一,佐藤 大輔(産総研),関谷 洋之(東大宇宙線研)
○Ryoichi Suzuki, Daisuke Satoh (AIST), Hiroyuki Sekiya (ICRR, Univ. Tokyo)
 
東京大学宇宙線研究所スーパーカミオカンデにおいて、超新星背景ニュートリノの観測を目指して検出器の純水中にガドリニウムを加えニュートリノの観測感度を向上させるプロジェクトが進行中である。超新星背景ニュートリノの観測のためには、スーパーカミオカンデ検出器のエネルギー領域が30 MeV程度まで必要とされるが、現在同施設内に設置されている検出器較正用の電子リニアックは10 MeVまでしか加速できず、それ以上のエネルギー較正ができないことから、新たな電子加速器の開発を進めている。この電子加速器の設置室のスペースは限られていることから、新たな電子加速器ではCバンドの定在波型加速管(加速管長90 cm)を用い、電子ビームを折り返すことによって往復加速をすることにより20-30 MeVの高エネルギー電子を発生させることを計画しており、その開発状況について報告する。
 
13:00-15:00 
FRP059
p.1065
電子銃が生成する電子ビームの輝度の理論的限界について
Theoretical limit of electron beam brightness generated from electron guns

○栗木 雅夫(広島大院先進理工)
○Masao Kuriki (Hiroshima U. ADSE)
 
電子ビームの性能は、電子銃で生成されるビームの品質に大きく左右され、とくにそれは線形加速器において顕著である。ピアース型の熱電子型であるDC電子銃が標準的なものとして加速器では使われてきたが、1990年代にRF電子銃が加わり、近年ではレーザープラズマ加速による電子銃(Laser Plasma Wakefield electron Gun, LPWG)も実用化が視野に入りつつある。本研究では、これらの電子銃から生成可能なビームについて、理論的な限界について考察することを目的とする。エミッタンスは線形変換において不変量となるからビームを評価する指標として適しているが、一方でビーム電流(電荷量)を含まない点が不満である。そこで、ビーム電荷をエミッタンスで規格化したものをビーム輝度として定義し、それを指標として各電子銃から生成可能な輝度の理論的な限界について考察することにする。本講演では技術的実現性については深く議論することはしないが、発表において適切な助言が得られることを期待している。
 
13:00-15:00 
FRP060
p.1070
位相空間回転によるSTFでの高ルミノシティビーム生成のための実験的研究
Experimental study of high luminosity beam generation in STF by phase space rotation

栗木 雅夫,荒本 真也,ザカリー リプタック,○伊達 圭祐(広島大),早野 仁司,山本 康央,山本 尚人(KEK),鷲尾 方一(早稲田大),坂上 和之(東京大),柏木 茂(東北大)
Masao Kuriki, Sinya Aramoto, Liptak Zachary, ○Keisuke Date (Hiroshima Univ.), Hitoshi Hayano, Yasuo Yamamoto, Naoto Yamamoto (KEK), Masakazu Washio (Waseda Univ.), Kazuyuki Sakaue (Tokyo Univ.), Shigeru Kasiwagi (Tohoku Univ.)
 
ILCをはじめとしたリニアコライダーは、200GeVを大きく超える高い重心系エネルギーで電子・陽電子衝突を実現する唯一の方法である。限られた電力でルミノシティを高め、かつBeamsrahlungによるエネルギー幅の増大を抑制する方法が、非対称ビームによる衝突である.放射減衰によるダンピングリングを用いる方法にかわり、ビームの位相空間の自由度間の再配分によりILCの要求値であるεnx=10 ㎛, εny=0.04 ㎛ の非対称エミッタンスビームの生成を提案する. エミッタンスの再配分には, x-y間での再配分と、x-z交換の二つを用いる。大きなバンチ電荷を生成するために大きなビームスポットからビームを生成し、x-y再配分によりεny=0.04㎛とする。結果としてεnxは過大となるが、x-z交換によりεnx=10 ㎛とする。KEK-STFを想定したシミュレーションではεn,x/εn,y=200のエミッタンス比が得られる見通しであったが、昨年行った予備実験では大きなエミッタンス増大がビームライン途中で生じていることが確認され、残念ながら大きなエミッタンス比は確認されなかった。今回はSTFにおけるx-y再配分の実験結果と、ILCビーム生成に向けた設計の現状について報告する。
 
常設ポスター (10月18日-21日 会議室P)
18日13:30-15:30/その他13:00-15:00 
IPP001

X-band誘電体アシスト型加速管の設計
Design of X-band dielectric assist accelerating structure
○佐藤 大輔,鈴木 良一(産総研)
○Daisuke Satoh, Ryouichi Suzuki (AIST)
 
誘電体アシスト型加速管(Dielectric assist accelerating structure, DAA)は、金属筐体内に誘電体同軸構造と誘電体円盤からなる誘電体セルを周期的に装荷した誘電体加速管で、加速モードとしてTM_02nモードを利用することで室温動作で無負荷Q値が10万(5.712 GHz)を越える非常に高効率な加速管である[1]。誘電体セル表面は、ダイヤモンドライクカーボンで保護することで高いQ値は維持しつつ10 MV/m以上の加速電界が得られており[2]、産業用加速器として利用できる性能水準まで到達した。本研究では、DAA管の高電力効率性を生かし、産業用非破壊X線検査に向けた1MeV以下のコンパクトな加速器駆動X線源用DAA管を検討した。本加速管は、運転周波数をX-bandとし、特に低エネルギー領域の誘電体加速セルの最適化を行った。本年会では、このX-band誘電体アシスト型加速管の設計について報告する。[1] D. Satoh et al., Phys. Rev. Accel. Beams 20, 091302 (2017). [2] S. Mori et al., Phys. Rev. Accel. Beams 24, 022001 (2021).
 
ポスター①② (10月18日・19日 会議室P)
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP001
p.1075
理研AVFサイクロトロン運転の現状報告
Status report on the operation of RIKEN AVF cyclotron

矢冨 一慎(住重加速器サービス),○大関 和貴(理研仁科センター),福澤 聖児,濱仲 誠,石川 盛,小林 清志,小山 亮,茂木 龍一,仲村 武志,西田 稔,西村 誠,柴田 順翔,月居 憲俊(住重加速器サービス),足立 泰平,藤巻 正樹,福西 暢尚,長谷部 裕雄,日暮 祥英,今尾 浩士,上垣外 修一,木寺 正憲,込山 美咲,熊谷 桂子,真家 武士,三宅 泰斗,長友 傑,中川 孝秀,西 隆博,大西 純一,奥野 広樹,坂本 成彦,須田 健嗣,内山 暁仁,渡部 秀,渡邉 環,渡邉 裕,山田 一成(理研仁科センター),鎌倉 恵太,小高 康照(東京大学原子核研究センター)
Kazuyoshi Yadomi (SHI Accelerator Service Ltd.), ○Kazutaka Ozeki (RIKEN Nishina Center), Seiji Fukuzawa, Makoto Hamanaka, Shigeru Ishikawa, Kiyoshi Kobayashi, Ryo Koyama, Ryuichi Moteki, Takeshi Nakamura, Minoru Nishida, Makoto Nishimura, Junsho Shibata, Noritoshi Tsukiori (SHI Accelerator Service Ltd.), Taihei Adachi, Masaki Fujimaki, Nobuhisa Fukunishi, Hiroo Hasebe, Yoshihide Higurashi, Hiroshi Imao, Osamu Kamigaito, Masanori Kidera, Misaki Komiyama, Keiko Kumagai, Takeshi Maie, Yasuto Miyake, Takashi Nagatomo, Takahide Nakagawa, Takahiro Nishi, Jun-ichi Ohnishi, Hiroki Okuno, Naruhiko Sakamoto, Kenji Suda, Akito Uchiyama, Shu Watanabe, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe, Kazunari Yamada (RIKEN Nishina Center), Keita Kamakura, Yasuteru Kotaka (Center for Nuclear Study, University of Tokyo)
 
理研AVFサイクロトロンは、理研リングサイクロトロン(RRC)の入射器として使用されるほか東京大学原子核科学研究センターのグループによる原子核実験、及びRI製造に単独使用される。本稿では2021年8月から2022年7月までの期間における加速ビーム種、運転時間と調整時間の集計、発生した故障とその対処、性能改善に向けて行われた取り組みついて報告する。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP002
p.1079
京都大学自由電子レーザ施設の現状
Present status of free electron laser facility at Kyoto University

○全 炳俊,紀井 俊輝,大垣 英明(京大エネ研)
○Heishun Zen, Toshiteru Kii, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.)
 
京都大学エネルギー理工学研究所では、エネルギー材料研究への応用を主な対象とし、S-band高周波電子銃を電子源とした小型で経済的な中赤外自由電子レーザ(KU-FEL)を開発し、中赤外波長可変レーザの発生とその利用研究を行っている。加えて、2018年度から中赤外自由電子レーザにより駆動するガス高次高調波アト秒光源の実現に向けた基盤技術研究を開始した。また、近年、光陰極高周波電子銃を電子源として用いたコヒーレントアンジュレータ放射光源の開発も行っている。本報告では、これら光源の現状について報告する。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP003
p.1084
下記論文には訂正があります。 Corrections applied to the paper: TWP003_errata.pdf
理研RIBFにおけるリングサイクロトロンの運転報告
Status report of the operation of RIBF ring cyclotrons

小林 清志(住重加速器サービス),○須田 健嗣(理研仁科センター),福澤 聖児,濱仲 誠,石川 盛,小山 亮,茂木 龍一,仲村 武志,西田 稔,西村 誠,柴田 順翔,月居 憲俊,矢冨 一慎(住重加速器サービス),足立 泰平,段塚 知志,藤巻 正樹,藤縄 雅,福西 暢尚,長谷部 裕雄,日暮 祥英,池沢 英二,今尾 浩士,上垣外 修一,金井 保之,木寺 正憲,込山 美咲,熊谷 桂子,真家 武士,三宅 泰斗,長友 傑,中川 孝秀,中村 仁音,大西 純一,奥野 広樹,大関 和貴,坂本 成彦,内山 暁仁,渡部 秀,渡邉 環,渡邉 裕,山田 一成(理研仁科センター)
Kiyoshi Kobayashi (SHI Accelerator Service Ltd.), ○Kenji Suda (RIKEN Nishina Center), Seiji Fukuzawa, Makoto Hamanaka, Shigeru Ishikawa, Ryo Koyama, Ryuichi Moteki, Takeshi Nakamura, Minoru Nishida, Makoto Nishimura, Junsho Shibata, Noritoshi Tsukiori, Kazuyoshi Yadomi (SHI Accelerator Service Ltd.), Taihei Adachi, Tomoyuki Dantsuka, Masaki Fujimaki, Tadashi Fujinawa, Nobuhisa Fukunishi, Hiroo Hasebe, Yoshihide Higurashi, Eiji Ikezawa, Hiroshi Imao, Osamu Kamigaito, Yasuyuki Kanai, Masanori Kidera, Misaki Komiyama, Keiko Kumagai, Takeshi Maie, Yasuto Miyake, Takashi Nagatomo, Takahide Nakagawa, Masato Nakamura, Ohnishi Jun-ichi, Hiroki Okuno, Kazutaka Ozeki, Naruhiko Sakamoto, Akito Uchiyama, Shu Watanabe, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe, Kazunari Yamada (RIKEN Nishina Center)
 
理研RIBFにおける4台のリングサイクロトロン (RRC、fRC、IRC、SRC) の2021年8月から2022年7月までの運転状況を報告する。ビーム強度増強と安定供給に向けて、改造、ビーム調整、保守に取り組んでいる。本稿ではこれまでの加速ビームの実績、当該期間における運転時間の統計、また発生した故障とその対処等について報告する。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP004
p.1089
筑波大学タンデム加速器施設の現状報告
Status report of the tandem accelerator complex at the University of Tsukuba

○笹 公和,石井 聡,高橋 努,大和 良広,田島 義一,吉田 哲郎,松村 万寿美,森口 哲朗,上殿 明良(筑波大応用加速器)
○Kimikazu Sasa, Satoshi Ishii, Tsutomu Takahashi, Yoshihiro Yamato, Yoshikazu Tajima, Tetsuro Yoshida, Masumi Matsumura, Tetsuaki Moriguchi, Akira Uedono (UTTAC)
 
筑波大学研究基盤総合センター応用加速器部門(UTTAC)では、6MVタンデム加速器と1MVタンデトロン加速器からなる複合タンデム加速器施設の維持管理と運用、および学内外との共同利用研究を推進している。6MVタンデム加速器は、5台の負イオン源と12本のビームラインを有している。2021年度は、学内課題12件、学外の施設共用課題9件が採択されており、133日間のマシンタイムを実施した。加速器稼働時間は1,423時間であり、ビーム加速時間は1147時間であった。6MVタンデム加速器の主な利用分野は、加速器質量分析(AMS)、マイクロビーム分析、宇宙用素子放射線耐性試験、偏極陽子ビームを用いた原子核実験および検出器開発となっている。ラムシフト型偏極イオン源(PIS)からの偏極重陽子ビームの加速では、PIS下流での偏極度は約65%で、ビーム強度は約30 nAだった。加速器質量分析(AMS)の分野では、新たな試みとしてRbスパッタ負イオン源によるCsビームの生成試験を行なった。将来的には長半減期核種のCs-135のAMS開発を目指している。2021年度は、ビーム出力が不安定だったRF荷電変換イオン源(アルファトロス)の整備とタンデトロン実験室の中性子エリアモニタの更新を実施した。本発表では、2021年度の加速器施設の整備および運用状況について報告する。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP005

東大ライナック・レーザー施設報告2022
Status report of linac/laser facility of University of Tokyo in 2022
○橋本 英子,安見 厚志,山下 真一(東大原子力)
○Eiko Hashimoto, Atsushi Yasumi, Shinichi Yamashita (NPS, UTokyo)
 
Sバンド電子ライナック、重照射研究施設は順調に研究・共同利用が実施されている。950keV/3.95MeV Xバンド電子ライナックは、大型構造物の非破壊検査の実証試験に取り組んでいる。特に、3.95MeV Xバンド電子ライナックは、橋梁非破壊検査実用化のため実橋でのオンサイト試験を行っている。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP006
p.1092
阪大産研量子ビーム科学研究施設の現状報告
Status report of Research Laboratory for Quantum Beam Science, SANKEN, Osaka University

○古川 和弥,誉田 義英,磯山 悟朗,福井 宥平,徳地 明,吉田 陽一,楊 金峰,菅 晃一,神戸 正雄,細貝 知直(大阪大学 産業科学研究所)
○Kazuya Furukawa, Yoshihide Honda, Goro Isoyama, Yuhei Fukui, Akira Tokuchi, Yoichi Yoshida, Jinfeng Yang, Koichi Kan, Masao Gohdo, Tomonao Hosokai (SANKEN, Osaka University)
 
阪大産研量子ビーム科学研究施設はLバンド40 MeV電子ライナック、フォトカソードRF電子銃ライナック、Sバンド150 MeV電子ライナック、コバルト60γ線照射装置を有する放射線共同利用施設である。Lバンドライナックはナノ秒とサブピコ秒領域のパルスラジオリシスを用いた放射線化学の研究や、FELによる大強度テラヘルツ波の発生と利用に用いられている。昨年度は電子ビーム振り分けシステムの原子力規制庁への申請が承認され、これに伴いインターロックや制御プログラムの更新を行った。さらに半導体スイッチへの自己給電回路の搭載と動作試験、FEL共振器の機械部品の更新、電磁石電源の修理・交換等を行った。RF電子銃ライナックはサブフェムト秒超短パルス電子ビーム発生とTHz計測に関する研究を中心に行った。RF電子銃を装備したMeV電子顕微鏡は電子線パルスの繰り返しを増やして平均電流値の増強を行い、さらに構造変化を引き起こすための励起光パルス光学系を構築した。また2019年度に故障したピコ秒レーザーの復旧を完了させた。150 MeVのSバンドライナックは冷却水系統の整備、ノイズ対策等を行いながら、陽電子ビームの発生実験を行った。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP007
p.1095
日本大学電子線利用研究施設の電子線形加速器の運転と光源の現状
Status of electron linac operation and light sources at LEBRA in Nihon University

○野上 杏子,早川 恭史,境 武志,高橋 由美子,早川 建,田中 俊成,住友 洋介(日大電子線利用研究施設),清 紀弘,小川 博嗣(産総研),古川 和朗,道園 真一郎,土屋 公央,吉田 光宏,諏訪田 剛,福田 茂樹,榎本 收志,大澤 哲,山本 樹,新冨 孝和(高エネ研)
○Kyoko Nogami, Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai, Yumiko Takahashi, Ken Hayakawa, Toshinari Tanaka, Yoske Sumitomo (LEBRA, Nihon University), Norihiro Sei, Hiroshi Ogawa (AIST), Kazuro Furukawa, Shinichiro Michizono, Kimichika Tsuchiya, Mitsuhiro Yoshida, Tsuyoshi Suwada, Shigeki Fukuda, Atsushi Enomoto, Satoshi Ohsawa, Shigeru Yamamoto, Takakazu Shintomi (KEK)
 
2021年度における日本大学電子線利用研究施設(LEBRA)125MeV電子線形加速器の稼働日数は100日、クライストロン通電時間は689時間、電子ビーム加速時間は363時間で、これは前年度とほぼ同程度であった。2021年2月にクライストロン2号機のパルスモジュレータ放電部バックダイオード回路が故障したため、同年4月から加速器の運転を停止し、1号機を含めすべてのバックダイオードの交換を行った。修理完了までに約2ヶ月半要したが、この停止期間中にモジュレータ室空調の修理、自由電子レーザビームラインに電子ビームポジションモニタの増設、既存のイオンポンプの電源を全て印加電圧可変型の小型電源へ交換する作業などを実施した。7月にはモジュレータ充電直流電源のオイルコンデンサーの焼損が原因で加速器運転が不可となったが、すべてのオイルコンデンサーを焼損リスクが低いフィルムコンデンサーに交換する対応をとった。光源開発としては、パラメトリックX線放射用標的をSi(400)結晶へ交換、またコヒーレントチェレンコフ放射発生によるTHz光発生装置を導入しそれぞれ基礎実験を行っている。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP008
p.1099
KEK放射光源加速器PFリングとPF-ARの現状
Present status of PF ring and PF-AR at KEK

○小林 幸則,阿達 正浩,上田 明,内山 隆司,江口 柊,尾崎 俊幸,帯名 崇,影山 達也,金 秀光,齊藤 寛峻,坂井 浩,坂中 章悟,佐々木 洋征,佐藤 政行,佐藤 佳裕,下ヶ橋 秀典,塩澤 真未,塩屋 達郎,篠原 智史,島田 美帆,下崎 義人,髙井 良太,高木 宏之,髙橋 毅,多田野 幹人,田中 オリガ,谷本 育律,田原 俊央,多和田 正文,土屋 公央,内藤 大地,長橋 進也,中村 典雄,濁川 和幸,野上 隆史,芳賀 開一,原田 健太郎,東 直,本田 融,丸塚 勝美,満田 史織,三増 俊広,宮内 洋司,山本 尚人,山本 将博,吉田 正人,吉本 伸一,渡邉 謙(KEK加速器研究施設)
○Yukinori Kobayashi, Masahiro Adachi, Akira Ueda, Takashi Uchiyama, Shu Eguchi, Toshiyuki Ozaki, Takashi Obina, Tatsuya Kageyama, Xiuguang Jin, Hirotoshi Saito, Hiroshi Sakai, Shogo Sakanaka, Hiroyuki Sasaki, Masayuki Sato, Yoshihiro Sato, Hidenori Sagehashi, Mami Shiozawa, Tatsuro Shioya, Satoshi Shinohara, Miho Shimada, Yoshito Shimosaki, Ryota Takai, Hiroyuki Takaki, Takeshi Takahashi, Mikito Tadano, Olga Tanaka, Yasunori Tanimoto, Toshihiro Tahara, Masafumi Tawada, Kimichika Tsuchiya, Daichi Naito, Shinya Nagahashi, Norio Nakamura, Kazuyuki Nigorikawa, Takashi Nogami, Kaiichi Haga, Kentaro Harada, Nao Higashi, Tohru Honda, Katsumi Marutsuka, Chikaori Mitsuda, Toshihiro Mimashi, Hiroshi Miyauchi, Naoto Yamamoto, Masahiro Yamamoto, Masato Yoshida, Shinichi Yoshimoto, Ken Watanabe (Accelerator Laboratory, KEK)
 
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光実験施設(フォトンファクトリー:PF)は、1982 年から今日まで大学共同利用を中心にした運営を行い、物質科学および生命科学を中心にした基礎科学の発展に貢献してきた。現在では、2.5GeV PFリングと6.5 GeV PFアドバンストリング(PF-AR)の2つの放射光専用リングを運転し、年間3,000 人を超えるユーザに対して紫外線からX線までの放射光を供給している。PFリング、PF-ARともに稼働から約40年経過しており、各種装置の老朽化が顕著になってきているが、随時対策を講じながら故障率1%台の安定な運転を維持してきた。2021年度、PFリングでは、ビーム診断システムの高度化の作業を継続するとともに、4極および6極電磁石電源の更新、低電力RFシステムの更新、安全インターロックシステムの更新作業にも着手した。PF-ARでは、南実験棟において測定器開発テストビームラインの建設が完了し、内部標的を挿入しての電子ビーム生成および取り出し等のコミッショニングを開始した。本年会では、2020年度より実施している高度化・老朽化および故障対策等を含めたPFリングとPF-ARにおける運転の現状について報告する。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP009

高エネ研STF/COI施設報告
Report on STF/COI at KEK
○山本 康史,道園 真一郎(高エネルギー加速器研究機構)
○Yasuchika Yamamoto, Shinichiro Michizono (KEK)
 
KEK内超伝導高周波試験施設(STF棟)および超伝導加速器利用促進化推進棟(COI棟)では、国際リニアコライダー(ILC)計画を始めとする様々な超伝導加速器に関する研究・開発が行われている。STF棟の地下にはトンネルがありSTF-2加速器が設置されている。2019年から始まったビーム運転以降、ビームラインの整備やビームモニターの増強などが行われてきた。一方、ここ最近のCOI棟のインフラ整備として、電解研磨設備、空洞のプリチューニングシステム、クリーンルームで使用される自動クリーニングシステムやブランクフランジとベローズの交換システムやクリーンオーブン、などを導入してきた。本講演では、両施設の最近の活動状況について報告する。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP010
p.1104
KEKコンパクトERLの現状
Present status of the compact ERL at KEK

○加藤 龍好,阪井 寛志,本田 洋介,山本 将博,島田 美帆,谷川 貴紀,河田 洋(高エネ研)
○Ryukou Kato, Hiroshi Sakai, Yosuke Honda, Masahiro Yamamoto, Miho Shimada, Takanori Tanikawa, Hiroshi Kawata (KEK)
 
エネルギー回収型線形加速器(Energy Recovery Linac, ERL)の小型実証機として建設されたコンパクトERL(cERL)は、応用超伝導加速器イノベーションセンターの管理下で、機構内外の共同研究者・研究協力者からなる超伝導加速器利用推進チームの協力を得て保守・運営され、超伝導加速器技術・ERL技術の産業応用を目指している。昨年度は10月と2~3月の2回のビーム実験を行った。10月のビーム実験では、NEDOからの競争的資金で実施されている効率的ナノセルロース製造に関連して木材への電子線照射実験を進め、2~3月の実験では主にアンジュレータを設置した状態でのCW運転の確立を目指した。ここでは2021年度のcERL運転と保守の状況、および研究成果の概要について報告する。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP011
p.1107
九州大学加速器・ビーム応用科学センターの現状報告2022
Status report of Center for Accelerator and Beam Applied Science of Kyushu University in 2022

○米村 祐次郎,有馬 秀彦,池田 伸夫,渡辺 賢一,魚住 裕介,執行 信寛(九大工),森田 浩介,若狭 智嗣,寺西 高,坂口 聡志,市川 雄一,郷 慎太郎,西畑 洸希,岩村 龍典(九大理),中山 久義,高木 昭(高エネ研),森 義治(京大)
○Yujiro Yonemura, Hidehiko Arima, Nobuo Ikeda, Kenichi Watanabe, Yusuke Uozumi, Nobuhiro Shigyo (Faculty of Engineering, Kyushu University), Kosuke Morita, Tomotsugu Wakasa, Takashi Teranishi, Satoshi Sakaguchi, Yuichi Ichikawa, Shintaro Go, Hiroki Nishibata, Tatsunori Iwamura (Faculty of Science, Kyushu University), Hisayoshi Nakayama, Akira Takagi (KEK), Yoshiharu Mori (Kyoto University)
 
九州大学加速器・ビーム応用科学センターでは、FFA加速器と8 MVタンデム静電型加速器を利用した加速器施設の整備が進められている。FFA加速器棟では、取り出しビーム強度増強のためのビーム実験と並行して、FFA加速器の性能向上を目的とした加速器要素技術の研究とビーム利用へ向けた機器整備が行われている。タンデム加速器棟・実験棟では、タンデム加速器のビーム強度増強のための機器調整と本格的なビーム利用へ向けた実験室の整備が進められている。本発表では、FFA加速器とタンデム加速器の現在の整備状況について報告する。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP012
p.1109
原子力機構-東海タンデム加速器の現状
Present status of JAEA-Tokai tandem accelerator

○株本 裕史,松田 誠,中村 暢彦,石崎 暢洋,沓掛 健一,乙川 義憲,遊津 拓洋,松井 泰,中川 創平,阿部 信市(原子力機構 東海)
○Hiroshi Kabumoto, Makoto Matsuda, Masahiko Nakamura, Masahiro Ishizaki, Kenichi Kutsukake, Yoshinori Otokawa, Takuhiro Asozu, Yutaka Matsui, Sohei Nakagawa, Shinichi Abe (JAEA-Tokai)
 
原子力機構-東海タンデム加速器施設は最高運転電圧が約18MVの大型静電加速器で、重イオンビーム等を用いた核物理、核化学、原子物理、材料照射などの各分野で利用されている。本発表では、2021年度における加速器の運転・整備状況およびビーム利用開発等について報告する。 当施設では近年、運転中の放電が頻発するため、加速電圧を約15MVと以前よりも低く抑えている。これは加速電圧に対する絶縁性能が必要な機器類(セラミック製加速管や発電機駆動用アクリルシャフト等)が経年劣化してきているためと思われる。2021年度には低エネルギー側加速管7本(3.5MV相当)とアクリルシャフト2本の交換作業を行い、絶縁性能の回復を図った。2020年度にも同様の交換作業を行っており、全体的に経年劣化が進んでいると思われることから、今後は抜本的な対策を検討する必要があると考えている。 また、当施設では、現在の施設のアップグレードを行い、後継となる加速器を導入する計画の立案を行っている。超伝導加速器の技術を使用し、高エネルギー・高強度の重イオンビーム等を発生させるものであり、こちらの概要についても併せて報告する。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP013

KEK空洞製造施設(KEK Cavity Fabrication Facility / KEK-CFF)の現状報告
Status report of KEK Cavity Fabrication Facility (KEK-CFF)
○佐伯 学行(KEK)
○Takayuki Saeki (KEK)
 
KEK空洞製造施設(KEK Cavity Fabrication Facility、以下 KEK-CFF)は、Nb製超伝導加速空洞(以下、超伝導空洞)の量産製造の技術開発を行っている施設である。KEK-CFFでは,超伝導空洞の製作のために必要な機器,すなわち,プレス機,旋盤,化学研磨室,電子ビーム溶接(Electron Beam Welding / EBW)機などが一ヵ所に集約設置されている。我々は,この施設を使用して,2009年からILCのための超伝導9セル空洞の製作の研究を行っている. この研究は,特にILCでの超伝導9セル空洞の量産における高い歩留まりとコスト削減に焦点を絞って行われている。この発表では、KEK-CFFの現状について報告する。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP014
p.1114
KEK先端加速器施設(ATF)におけるナノビーム技術開発
Development of the nanometer beam technology at the accelerator test facility

○照沼 信浩,久保 浄,黒田 茂,奥木 敏行,内藤 孝,福田 将史,中村 英滋,アリセフ アレクサンダー,クルーチニン コンスタンテイン,荒木 栄,森川 祐,大森 恒彦,倉田 正和(KEK),阿部 優樹,ポポフ コンスタンテイン(総研大)
○Nobuhiro Terunuma, Kiyoshi Kubo, Shigeru Kuroda, Toshiyuki Okugi, Takashi Naito, Masafumi Fukuda, Eiji Nakamura, Alexander Aryshev, Konstantin Kurichinin, Sakae Araki, Yu Morikawa, Tsunehiko Omori, Masakazu Kurata (KEK), Yuuki Abe, Konstantin Popov (SOKENDAI)
 
KEKのATFは、国際リニアコライダー(ILC)において必要とされるビーム計測・制御技術、特に衝突ビームに必要なナノメートルビーム技術の開発を行う試験加速器である。最終収束システム試験ライン(ATF2)を拠点として、ILCでの衝突ビームサイズ7nm(垂直方向)に対応する37nm極小ビームの技術開発が進められ、今までに垂直方向41 nmを達成した。また、ナノメートルレベルでの電子・陽電子ビーム衝突を安定にするために、ビームパルス内のバンチ-バンチ間で高速に応答するビーム位置フィードバック開発も進められ、133nsでの応答を確認した。これらによりILC最終収束系に必要な基本技術は概ね実証されたと評価されている。近年はナノメートルビームに対するウェイク場の影響とその軽減手段の見極めに焦点を当てている。ATF2は、20nm位置分解能の空洞型BPM、ナノメートル極小ビームを測定するレーザー干渉縞型ビームサイズモニターを有し、ナノメートル極小ビームに対するウェイク場の影響研究に適した施設である。ATFでの今までの結果を踏まえてILCにおけるウェイク場の影響が見積もられているが、ILCの場合ではエネルギーが高く、その影響は限定的と評価されている。ATFではこれらの評価の信頼性を上げることを含め、ビームモニターの高度化を進めながら、更なる極小ビームの実現と安定化を目指すナノメートルビーム技術開発を追求している。
 
18日13:30-15:30/19日13:00-15:00 
TWP015
p.1119
ニュースバル放射光施設の現状
Present status of the NewSUBARU synchrotron light facility

○橋本 智,藤井 将(兵庫県立大 高度研),櫻井 辰幸,牛澤 昂大(高輝度センター),皆川 康幸,鍛治本 和幸,中田 祥太郎,平山 英之(スプリングエイトサービス)
○Satoshi Hashimoto, Hitoshi Fujii (LASTI, Univ. of Hyogo), Tatsuyuki Sakurai, Takahiro Ushizawa (JASRI), Yasuyuki Minagawa, Kazuyuki Kajimoto, Shotaro Nakata, Hideyuki Hirayama (SES)
 
兵庫県立大学高度産業科学技術研究所の運用するニュースバル放射光施設加速器の現状を報告する。本施設の加速器は周長118mの電子蓄積リングと2021年から運用を開始した専用入射器で構成される。蓄積リングは1GeV/350mA±0.2mAのTopUp 運転、および週に1、2日の1.5GeV/ 400mAの加速/Decay運転を行っている。2021年度の加速器の運転では大きなトラブルがいくつかあり、 利用運転停止時間は例年より少し多い57.5時間であった。トラブルの内容としては、SIP高圧電極部の腐食による大気リーク、GUI不具合による入射不調、GUN MARX電源の故障などであった。電子蓄積リングは建設から20年以上経過し故障する機器が多いため、順次更新を行なっていく方向である。加速器の性能改善としては、蓄積電流値の増加(300→350mA@1.0GeV TopUp、350→400mA@1.5GeV decay)、電子ログの運用などがある。また新たな形態でのリング運転に向けた調整にも取り組んでいる。
 
ポスター③④ (10月20日・21日 会議室P)
13:00-15:00 
TFP001
p.1122
SuperKEKB加速器の最近の運転状況
Recent status of SuperKEKB operation

○大西 幸喜(KEK)
○Yukiyoshi Ohnishi (KEK)
 
最新のSuperKEKB加速器の運転状況について報告する。SuperKEKB加速器は、世界で初めてナノー・ビーム方式を採用した陽電子・電子衝突型加速器である。B中間子対生成を目的とし世界最高ルミノシティを更新し続けている。また、本格的にクラブ・ウエスト方式を採用し実用化したことで、ルミノシティ性能が向上している。ナノ・ビーム方式によって、衝突点垂直ベータ関数は、バンチ長よりもかなり小さくすることが可能となっている。衝突点における垂直ベータ関数とビームサイズは、衝突型加速器のなかでも世界最小である。ここまでに至る過程について述べた上で、今後さらなるルミノシティ性能向上に向けて、ビーム物理的な見地から何が問題となっているか、克服すべき課題は何かについて紹介を行う。
 
13:00-15:00 
TFP002
p.1128
群馬大学重粒子線医学センターの現状
Present status of Gunma University Heavy Ion Medical Center

○中尾 政夫,遊佐 顕,島田 博文,松村 彰彦,川嶋 基敬,酒井 真理,Varnava Maria,野田 耕司,田代 睦(群大重医セ)
○Masao Nakao, Ken Yusa, Hirofumi Shimada, Akihiko Matsumura, Motohiro Kawashima, Makoto Sakai, Maria Varnava, Koji Noda, Mutsumi Tashiro (GHMC)
 
群馬大学重粒子線医学センターでは、普及型炭素線治療装置による炭素線治療を行っている。2021年には738名の治療が行われ、治療を開始した2010年からの累計は5229名となった。2021年度には入射器の位相のロックが外れるトラブルや、シンクロトロンの六極電磁石電源のトラブルで一部の患者の治療を1日延期せざるを得ないことがあったが、いずれの場合も1日以内に復旧できた。一方で加速器以外のX線装置や治療室内のカメラの異常等も以前から同様の頻度で発生している。多くの場合では装置の再起動などで数分後には正常動作するようになるが、部品の交換が必要になることもある。また、実験用のビームラインではスキャニング方式で照射を行っているが、2021年3月にスキャニング磁石やレンジシフタ等の制御系が故障した。既に部品生産も修理対応も終了しているため借用品で仮復旧しており、このビームラインの制御系を2021年度~2023年度の3年かけて部分ごとに更新していく予定である。このような当施設での加速器の運転時間の統計と、主な故障とそれに対する対処、機器更新の状況について報告する。
 
13:00-15:00 
TFP003
p.1132
若狭湾エネルギー研究センターシンクロトロンの現状
Present status of the synchrotron at WERC

○栗田 哲郎,羽鳥 聡,山田 裕章,廣戸 慎,清水 雅也,山口 文良,淀瀬 正夫,渕上 隆太,小田部 圭佑,古川 靖士,羽田 祐基(若エネ研),田村 文彦(J-PARC)
○Tetsuro Kurita, Satoshi Hatori, Hiroaki Yamada, Shin Hiroto, Masaya Shimizu, Fumiyoshi Yamaguchi, Masao Yodose, Ryuta Fuchigami, Keisuke Otabe, Seishi Furukawa, Yuki Haneda (WERC), Fumihiko Tamura (J-PARC)
 
若狭湾エネルギー研究センター加速器施設(W-MAST)は、タンデム加速器および、それを入射器としたシンクロトロンによって、広範囲のエネルギーのイオンビーム(陽子 : 数MeV-200MeV; He, C : 数 MeV- 55MeV/u)を様々な実験に供給している。 現在、加速高周波制御のLLRFの開発に取り組んでいる。これまで、DSPとDDSおよびアナログ回路によって構成されていたものをFPGAを用いたデジタル制御に置き換える。2018-2019年にFPGA回路の設計および制作を行なった。2020年度はLLRFと一体のシステムとして動作するビーム位置信号制御系を製作した。現在、ビームテストを実施している。 出射ビームラインの真空リークが確認されているプロファイルモニタを、真空容器の設計を見直したものに更新した。 運転状況と合わせて、高周波制御系の試験状況、出射ビームラインの真空系について報告する。
 
13:00-15:00 
TFP004

京都大学化学研究所における電子加速器の現状
Present status of electron accelerators at ICR in Kyoto University
○小川原 亮,塚田 暁,前原 義樹,頓宮 拓,若杉 昌徳(京大化研)
○Ryo Ogwara, Kyo Tsukada, Yoshiki Maehara, Hiromu Tonguu, Masanori Wakasugi (ICR, Kyoto University)
 
現在 京都大学化学研究所 イオン線形加速器棟には7 MeV陽子線形加速器、100 MeV電子線形加速器(KAKEN Electron Linac: KEL)、300 MeV 電子蓄積リング(KAKEN Storage Ring: KSR)の3台の加速器が存在する。それらの加速器は2018年度まで全て休止中だったが、KELとKSRは電子ビームをプローブとした原子核実験に非常に有用であり、また不安定核静止標的を生成するためのSCRIT(Self-Confining RI ion target)法を導入することで、世界最先端の原子核研究を行うことが可能である。そこで、京大化研ではKSRを新しい原子核物理実験用に特化した装置へと改造するため、2019年度から施設再編プロジェクトをスタートした。2019年度には冷却水などのインフラ整備と並行し、全ての現行機器の健全性を調査した。それらの調査結果から、2020年度には老朽化した電源や高周波系機器などの更新を行い、ローカル試験によってKELが加速器として動作することを確認した。2021年度には制御系を一新し、PLC、EPICS、CSS を用いた加速器制御系を全て自前で開発した。先ずはKELを動作させることに注力し、現在は10 ~ 80 MeV の範囲内の任意のエネルギーの電子ビームを、最大ピーク電流0.5 A(パルス幅1 us、繰り返し20 Hz)で安定的に加速することができている。本講演では、これまでの施設再編の詳細な報告と、KSR稼働やその後の物理実験に向けた今後の展望について発表する。
 
13:00-15:00 
TFP005
p.1136
都市大タンデムの現状(2022年度)
Status of the TCU-Tandem (FY2022)

○羽倉 尚人(都市大)
○Naoto Hagura (TCU)
 
東京都市大学原子力研究所(神奈川県川崎市)には廃止措置中の研究用原子炉「武蔵工大炉」がある。1963年1月から1989年12月まで運転し、中性子放射化分析やホウ素中性子捕捉療法(BNCT)など様々な目的に使用された。また、全国大学共同利用施設として多くの研究者・技術者・学生を受入れてきた。原子炉施設としては廃止措置段階となったが、RI施設、核燃施設としては継続している。2008年に設置された本学理工学部原子力安全工学科や、2010年に設置された早稲田大学と共同で運営する共同原子力専攻の学生・院生を主な対象としつつ、教育・研究活動を展開している。2018年5月には新たな実験設備として1.7MVペレトロン・タンデム加速器(都市大タンデム(TCU-Tandem))の運転を開始した。プロトンビームによる荷電粒子励起X線分光法(PIXE)の実験を学生実験の一テーマとして実施するなど利用を進めている。本発表では、本加速器システム構築の経緯と今後の研究計画を紹介する。
 
13:00-15:00 
TFP006
p.1138
東北大学電子光理学研究センター加速器施設の現状
Status of accelerator facility in Research Center for Electron Photon Science, Tohoku University

○日出 富士雄,柏木 茂,鹿又 健,柴田 晃太朗,髙橋 健,長澤 育郎,南部 健一,三浦 禎雄,武藤 俊哉,濱 広幸(東北大電子光)
○Fujio Hinode, Shigeru Kashiwagi, Ken Kanomata, Kotaro Shibata, Ken Takahashi, Ikuro Nagasawa, Kenichi Nanbu, Sadao Miura, Toshiya Muto, Hiroyuki Hama (ELPH, Tohoku Univ.)
 
東北大学電子光理学研究センター(ELPH)では、1.3 GeV の電子シンクロトロンや3台の線形加速器を有し、制動放射によるの高エネルギーガンマ線を用いたクォーク・ハドロン核物理の研究をはじめ、RI製造や放射・核化学の研究、さらには超短パルス電子ビームからのコヒーレント放射を用いたテラヘルツ光源やビームモニターの開発研究などが進められている。電子光理学研究センター加速器施設の現状や最近の改善事項について報告する予定である。
 
13:00-15:00 
TFP007
p.1141
RCNPサイクロトロン施設の現状
Status of the RCNP cyclotron facility

○神田 浩樹,福田 光宏,畑中 吉治,関 亮一,森信 俊平,齋藤 高嶺,依田 哲彦,友野 大,田村 仁志,永山 啓一,安田 裕介,Koay HuiWen,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,荘 浚謙,Zhao Hang,橘高 正樹,松井 昇大朗(阪大RCNP)
○Hiroki Kanda, Mitsuhiro Fukuda, Kichiji Hatanaka, Ryoichi Seki, Morinobu Shunpei, Takane Saito, Tetsuhiko Yorita, Dai Tomono, Hitoshi Tamura, Keiichi Nagayama, Yuusuke Yasuda, Huiwen Koay, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Tsunhim Chong, Hang Zhao, Masaki Kittaka, Shotaro Matsui (RCNP, Osaka University)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)ではK140 AVFサイクロトロンとK400リングサイクロトロンを稼働しており、原子核物理学、加速器科学、情報科学、物性物理学、宇宙物理学、医学等に向けたビームの利用を推進している。ビーム強度をこれまでより10倍に増強する目的で、2019年2月に加速器運転を終了し、2020年度にかけてAVFサイクロトロン本体や付属機器類、施設の老朽化対策および性能の向上を目的とした集中メンテナンス、アップグレードを実施してきた。2021年度にはアップグレード工事完了後のAVFサイクロトロンの再稼働に向けて、AVFサイクロトロンの各種機器のコミッショニングおよび、イオン源や引き出し後のビームコースの整備を行った。さらに、AVFサイクロトロンからのビームを入射するリングサイクロトロンや、実験で使用するビームコースについても再稼働に向けた準備を実施した。 本発表ではAVFサイクロトロンのコミッショニングを中心に、RCNPの現状について報告する。
 
13:00-15:00 
TFP008

IFMIF原型加速器LIPAcの現状
Status of linear IFMIF prototype accelerator (LIPAc)
○増田 開,長谷川 和男,春日井 敦,近藤 恵太郎,杉本 昌義(QST六ヶ所研),Carin Yann ,Gex Dominique ,Cismondi Fabio (IFMIF/EVEDAプロジェクトチーム),Cara Philippe ,Dzitko Herve (F4E),Fagotti Enrico (INFN),Marroncle Jacques ,Chauvin Nicolas (CEA),Podadera Ivan ,Jimenez Rey David (CIEMAT)
○Kai Masuda, Kazuo Hasegawa, Atsushi Kasugai, Keitaro Kondo, Masayoshi Sugimoto (QST Rokkasho), Yann Carin, Dominique Gex, Fabio Cismondi (IFMIF/EVEDA Project Team), Philippe Cara, Herve Dzitko (F4E), Enrico Fagotti (INFN), Jacques Marroncle, Nicolas Chauvin (CEA), Ivan Podadera, David Jimenez Rey (CIEMAT)
 
Construction and validation of LIPAc have been conducted in Rokkasho within the IFMIF/EVEDA project under the EU-JA collaborative framework of the Broader Approach agreement. The present beam commissioning stage has been initiated since July 2021, with major goals of validation of a 100 keV Injector and the world longest 5 MeV RFQ, followed by an MEBT, an HEBT, a state-of-the-art Diagnostic Plate and a High Power Beam Dump with the world highest deuteron beam current of 125 mA CW. Characterization of the beam properties is of major importance in preparation to the final configuration with a 9 MeV SRF LINAC. This paper will present efforts and progresses made after the last annual meeting, such as a low-current and low-duty beam commissioning completed in Dec. 2021, CW operation campaign of the injector towards the nominal beam current, and RF conditioning of the RFQ towards CW.
 
13:00-15:00 
TFP009
p.1144
理研重イオンリニアックの現状報告
Present status of RILAC

山内 啓資,大木 智則,小山田 和幸,田村 匡史,遊佐 陽,金子 健太(住重加速器サービス株式会社),○西 隆博,坂本 成彦,藤巻 正樹,今尾 浩士,木寺 正憲,長友 傑,大関 和貴,須田 健嗣,内山 暁仁,渡邉 環,渡邉 裕,山田 一成,上垣外 修一(理研 仁科加速器科学研究センター)
Hiromoto Yamauchi, Tomonori Ohki, Kazuyuki Oyamada, Masashi Tamura, Yusa Akira, Kenta Kaneko (SHI Accelerator Service Ltd.), ○Takahiro Nishi, Naruhiko Sakamoto, Masaki Fujimaki, Hiroshi Imao, Masanori Kidera, Takashi Nagatomo, Kazutaka Ozeki, Kenji Suda, Akito Uchiyama, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe, Kazunari Yamada, Osamu Kamigaito (RIKEN Nishina Center)
 
理研仁科加速器科学研究センターの理研重イオンリニアック(RILAC)は、1981年に単独運転が開始され、40年以上運転を続けている。2016年よりアップグレードが行われ、実験設備のほかに、超伝導ECRイオン源と超伝導線型加速器SRILACの建設が実施された。 2020年1月28日のファーストビーム以降、ビームコミッショニングを実施、6月からはマシンタイムを開始した。2021年8月にRILAC本体系冷却水ポンプ制御盤を改造し、冷却塔送風機3台を自動で切り替え水温を台数制御できるようになった。2022年2月には、真空系冷却塔散水ポンプ及びファンの運転も改造、1次系冷却水温度による自動制御となった。これにより以前より加速器が安定して運用することができるようになり、それ以降安定にビーム供給を続けている。 本発表ではこの加速器の現状報告として、この10年間の運転状況、及びこの1年間における保守作業などについて報告する。
 
13:00-15:00 
TFP010
p.1148
iBNCT加速器の現状報告2022
Status of the iBNCT accelerator in 2022

○杉村 高志,池上 清,帯名 崇,久保田 親,栗原 俊一,小林 仁,佐藤 将春,柴田 崇統,高木 昭,内藤 富士雄,南茂 今朝雄,方 志高,福井 佑治,福田 将史,二ツ川 健太,三浦 太一,宮島 司(高エネ研),熊田 博明,田中 進,松本 孔貴(筑波大),大場 俊幸,名倉 信明(NAT),豊島 寿一(ATOX),小栗 英知(JAEA,J-PARC)
○Takashi Sugimura, Kiyoshi Ikegami, Takashi Obina, Chikashi Kubota, Toshikazu Kurihara, Hitoshi Kobayasi, Masaharu Sato, Takanori Shibata, Akira Takagi, Fujio Naito, Kesao Nanmo, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Masafumi Fukuda, Kenta Futatsukawa, Taichi Miura, Tsukasa Miyajima (KEK), Hiroaki Kumada, Susumu Tanaka, Yoshitaka Matsumoto (U. of Tsukuba), Toshiyuki Ohba, Nobuaki Nagura (NAT), Toshikazu Toyoshima (ATOX), Hidetomo Oguri (JAEA,J-PARC)
 
いばらき中性子医療研究センターでは、粒子線がん治療法の一つであるホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy, BNCT)の実施を目指し研究開発を行っている。2021年秋には非臨床試験を開始し、実際のビームを使ったGLP試験は2021年度内に終了し、2022年夏まで、照射後の生体観察が続く。以前から、RFQでの放電によるインターロックの発報の頻度が高く、その後のビーム復帰に時間がかかることが課題となっていたため、冷却水の増強や、真空排気の強化、運転、制御の自動化などを段階的に進め、ようやく治験を目前とするところまで来ることが出来た。 現在の運転はビームパルス幅920 μs、 繰り返し75 Hzで、平均ビーム電流2.1 mAで行っており、これらのパラメーターはここ数年ほぼ安定している。このビームは、非臨床試験以外にも細胞や、マウスに対する生物実験や、水ファントム内での線量分布を測定する物理実験などに供給され、2021年には約150回の実験が行われた。また、加速器のスタディーとしてほぼ同数の照射が行われている。本報告では、これらの運転状況を中心に、加速器の改良やトラブルなどの報告を行う。
 
13:00-15:00 
TFP011

UVSOR光源加速器の現状2022
Status of UVSOR-III synchrotron electron accelerator in 2022
○太田 紘志,平 義隆,杉田 健人,林 憲志,山崎 潤一郎,水口 あき(分子研 UVSOR),全 炳俊(京大エネ研),加藤 政博(分子研 UVSOR、広大HiSOR)
○Hiroshi Ota, Yoshitaka Taira, Kento Sugita, Kenji Hayashi, Jun-ichiro Yamazaki, Aki Minakuchi (UVSOR,IMS), Heishun Zen (IAE, Kyoto Univ.), Masahiro Katoh (UVSOR,IMS HiSOR, Hiroshima Univ.)
 
分子科学研究所の放射光電子蓄積リングUVSOR-IIIの運転状況および光源開発の状況を報告する。UVSORは1983年のファーストライト以降、運転から38年が経過している。複数回の高度化改造を経ているものの、老朽化に起因する真空事故なども発生しており、2016年、2021年と真空事故に伴う約1か月のシャットダウンが発生した。各地で先進光源の建設が進む中、光源性能面での競争力低下が進むことが予想されているため、ユーザーコミュニティと施設の次期計画について議論を始めており、発表では次期計画のコンセプトについても説明する。 光源開発研究では、アンジュレータ光による光渦の発⽣やベクトルビームの発生、原子の量子状態制御、逆トムソン散乱ガンマ線の開発などの研究に加え、2021年度は光源開発用ビームラインとその周辺の改造、2011年から停止していた蓄積リングを用いたFELの再発振に成功した。これらの研究の現状について説明する。
 
13:00-15:00 
TFP012
p.1152
広島大学放射光科学研究センター光源加速器の現状
Present status of HiSOR

○加藤 政博,Lu Yao,島田 美帆,宮内 洋司,後藤 公徳(HiSOR)
○Masahiro Katoh, Yao Lu, Miho Shimada, Hiroshi Miyauchi, Kiminori Goto (HiSOR)
 
広島⼤学放射光科学研究センターの光源加速器HiSORは、1996年の稼働以降、約25年にわたり安定に稼働を続けてきた。共同利用のための年間のビームタイムは1500時間に及び、真空紫外・軟X線領域の放射光を国内外の物質・生命科学を中⼼とする研究者に供給している。HiSORの加速器は150MeVの入射用マイクロトロンと700MeVの小型電子シンクロトロンからなる。電子シンクロトロンは周長22mと小型ながら2本の直線部を有し2台のアンジュレータが装着され高輝度の真空紫外光を生成できる。また常伝導ながら2.7Tと高磁場の偏向磁石により軟X線を中心とする幅広い波長域で放射光を生成できる。近年、加速器の老朽化や光源性能面での競争力低下が顕著となってきたことから、将来計画の検討を急いでいる。本発表では加速器の現状と将来計画に向けた取り組みについて報告する。
 
13:00-15:00 
TFP013
p.1155
QST量医研サイクロトロン(NIRS-930, HM-18)の現状報告
Status report of NIRS-930 and HM-18 cyclotrons at QST-iQMS

○杉浦 彰則,涌井 崇志,北條 悟,村松 正幸(量研 量医研),岡田 高典,神谷 隆,山口 道晴(加速器エンジニアリング),白井 敏之(量研 量医研)
○Akinori Sugiura, Takashi Wakui, Satoru Hojo, Masayuki Muramatsu (QST-iQMS), Takanori Okada, Takashi Kamiya, Michiharu Yamaguchi (AEC), Toshiyuki Shirai (QST-iQMS)
 
量子科学技術研究開発機構量子医科学研究所のサイクロトロン施設には、放射性同位元素の製造を主目的とした2台のサイクロトロンが稼働している。1台は1974年に運転を開始したAVF-930型サイクロトロンNIRS-930(K=110)である。NIRS-930は、放射性同位元素の製造以外にも物理実験や生物実験などにも利用されている。もう一台のサイクロトロンは、1994年に運転を開始したPET診断用核種製造専用のHM-18(K=20)である。 2021年11月にサイクロトロン棟電源室において火災が発生した。人的被害はなかったが、煤と消火に用いられた水によりNIRS-930用電源等に被害があったため、NIRS-930とHM-18共に停止している。現在は、比較的被害の少なかったHM-18の早期復旧を目指している。 NIRS-930の2021年度の総運転時間は火災の影響を受けて2020年度(1534時間)より約27.1%少ない1119時間であった。利用の割合としては、特に放射性同位元素の製造の利用割合が増えて、2020年度の47.5%から57.0%と9.5%増加した。HM-18の2021年度の総運転時間は昨年度(1219時間)より約15.5%少ない1030時間であった。 本報告では、サイクロトロン施設の運転状況や利用状況、故障事例、火災の影響とその復旧作業について述べる。
 
13:00-15:00 
TFP014
p.1158
あいちSR光源加速器の現状
Present status of accelerators of Aichi Synchrotron Radiation Center

○藤本 將輝,石田 孝司,岡島 康雄,郭 磊,高嶋 圭史(名大SRセンター, あいちSR),大熊 春夫(あいちSR, 阪大RCNP),金木 公孝,鈴木 遥太,森里 邦彦(スプリングエイトサービス),加藤 政博(広大HiSOR, 分子研UVSOR, 名大SRセンター),國枝 秀世(あいちSR)
○Masaki Fujimoto, Takashi Ishida, Yasuo Okajima, Lei Guo, Yoshifumi Takashima (NUSR, AichiSR), Haruo Ohkuma (AichiSR, RCNP), Kimitaka Kaneki, Youta Suzuki, Kunihiko Morisato (SES), Masahiro Katoh (HiSOR, UVSOR, NUSR), Hideyo Kunieda (AichiSR)
 
あいちシンクロトロン光センター(あいちSR)は、愛知県の科学技術政策である「知の拠点あいち」計画における中核施設として、中部地区を中心とする大学、研究機関、産業界、愛知県の協力によって建設され、あいちSRが運営してきた。2013年3月26日の供用開始から今年で10年目となる。加速器は、50 MeV直線加速器、1.2 GeVブースターシンクロトロン、1.2 GeV蓄積リングから構成されている。蓄積リングは周長72 m、ラティス構成はTriple-bendの4回対称であり、ユニットセルの3台の偏向電磁石の内、両端の2台は磁場強度1.4T、偏向角39°の常伝導電磁石であるが、中央の1台はピーク磁場5T、偏向角12°の超伝導電磁石であり、25keV程度までの実用強度を持つ放射光が得られるというあいちSRの特徴を担っている。直線部の1カ所にはAPPLE-II型アンジュレータ1台が設置されている。供用開始当時のビームラインは6本であったが、現在では企業専用ビームライン2本および大学によるビームライン1本を含む12本のビームラインが稼働している。2021年度における加速器の総運転時間は1979時間であり放射光ユーザーの利用時間は1235時間であった。計画されたユーザー利用運転時間に対して光源が運転できなかった時間は約39時間であり、稼働率は約97.0 %であった。本発表では、あいちSR光源加速器の現状について報告する。
 
13:00-15:00 
TFP015
p.1161
量研高崎研TIARA施設の現状報告2022
2022 status report of TIARA facility at QST Takasaki

○倉島 俊,千葉 敦也,吉田 健一,石坂 知久,山田 圭介,湯山 貴裕,平野 貴美,細谷 青児,宮脇 信正,柏木 啓次,百合 庸介,石堀 郁夫,奈良 孝幸,居城 悟,高野 圭介,金井 信二,青木 勇希,橋爪 将司(量研高崎研)
○Satoshi Kurashima, Atsuya Chiba, Ken-ichi Yoshida, Tomohisa Ishizaka, Keisuke Yamada, Takahiro Yuyama, Yoshimi Hirano, Seiji Hosoya, Nobumasa Miyawaki, Hirotsugu Kashiwagi, Yosuke Yuri, Ikuo Ishibori, Takayuki Nara, Satoshi Ishiro, Keisuke Takano, Shinji Kanai, Yuuki Aoki, Masashi Hashizume (QST Takasaki)
 
量子科学技術研究開発機構(QST)高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設TIARAには4台の加速器が設置されており、主にバイオ技術や材料開発の研究分野へ様々なイオン種のビームを幅広いエネルギー範囲で提供している。2021年度から運転計画を大幅に見直した結果、AVFサイクロトロン(K110)、3MVタンデム加速器、3MVシングルエンド加速器、400kVイオン注入装置の転時間はそれぞれ1366.6h、1021.4h、1227.1h、918.2hと、これまでの6~7割程度となった。年間を通じて大きな故障はなく、コロナ禍による実験キャンセルを除けば、計画した照射実験はすべて実施した。主な保守・整備としては、静電加速器に関して、制御系PCの更新を行った。タンデム加速器については、CAMACモジュールの置き換えや一部電磁石電源の更新も行っている。サイクロトロンに関しては、メインコイルの冷却水ホースの交換、本体電流プローブの修理、電磁石電源のメンテナンスなどを行った。主な技術開発として、タンデム加速器とシングルエンド加速器のビームラインに備わっているマイクロビーム形成装置の更新作業を行った。本発表では、上記に加え、その他加速器の保守・整備及び技術開発、施設の利用状況について報告する。