プロシーディングス目次(アブストラクト付き) (論文掲載 350 件、○印は発表者)

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8月8日(水)口頭発表セッション
 合同セッション(8月8日(水) 大学会館講堂 10:00 ) 6  件
 電子加速器(8月8日(水) 大学会館講堂 13:00 ) 5  件
 電子加速器、放射光・FEL・ERL(8月8日(水) 大学会館講堂 14:50 ) 4  件
 ハドロン加速器(8月8日(水) 共通教育棟大講義室 13:00 ) 5  件
 ハドロン加速器、ビームダイナミクス・加速器理論(8月8日(水) 共通教育棟大講義室 14:50 ) 4  件
 特別講演(8月8日(水) 大学会館講堂 18:10 ) 1  件
 
8月9日(木)口頭発表セッション
 放射光・FEL・ERL1(8月9日(木) 大学会館講堂 8:50 ) 5  件
 放射光・FEL・ERL2(8月9日(木) 大学会館講堂 10:40 ) 4  件
 ビームダイナミクス・加速器理論、加速器技術/高周波加速空胴(8月9日(木) 共通教育棟大講義室 8:50 ) 5  件
 加速器技術/高周波加速空胴、高周波源、電磁石と電源(8月9日(木) 共通教育棟大講義室 10:40 ) 4  件
 技術研修会1(8月9日(木) 大学会館講堂 13:00 ) 1  件
 受賞講演(8月9日(木) 大学会館講堂 16:40 ) 5  件
 
8月10日(金)口頭発表セッション
 放射光・FEL・ERL、加速器技術/制御(8月10日(金) 大学会館講堂 8:50 ) 5  件
 加速器技術/制御、加速器応用・産業利用(8月10日(金) 大学会館講堂 10:40 ) 4  件
 加速器技術/電磁石と電源(8月10日(金) 共通教育棟大講義室 8:50 ) 5  件
 加速器技術/粒子源、LLRF(8月10日(金) 共通教育棟大講義室 10:40 ) 4  件
 技術研修会2(8月10日(金) 大学会館講堂 13:00 ) 1  件
 加速器応用・産業利用(8月10日(金) 大学会館講堂 14:10 ) 5  件
 加速器土木・放射線防護(8月10日(金) 大学会館講堂 16:00 ) 4  件
 加速器技術/ビーム診断、レーザー(8月10日(金) 共通教育棟大講義室 14:10 ) 5  件
 加速器技術/レーザー、真空(8月10日(金) 共通教育棟大講義室 16:00 ) 4  件
 
8月8日(水)ポスター発表セッション
 施設現状報告ポスター1(8月8日(水) 共通教育棟2階・3階ロビー・廊下 16:10 ) 11  件
 ポスター1(8月8日(水) 共通教育棟2階・3階ロビー・廊下 16:10 ) 128  件
 
8月9日(木)ポスター発表セッション
 施設現状報告ポスター2(8月9日(木) 共通教育棟2階・3階ロビー・廊下 14:00 ) 17  件
 ポスター2(8月9日(木) 共通教育棟2階・3階ロビー・廊下 14:00 ) 127  件

合同セッション (8月8日(水) 大学会館講堂)
10:00-10:20 
WEPL01
p.1
STF加速器のコミッショニング
Beam commissioning of STF accelerator at KEK

○渡邉 謙,明本 光生,Alex Aryshev,荒木 栄,加古 永治,福田 将史,福田 茂樹,原 和文,早野 仁司,本田 洋介,本間 輝也,片桐 広明,小島 祐二,近藤 良也,久保 浄,黒田 茂,松本 利広,松下 英樹,道園 真一郎,三浦 孝子,三好 敏善,両角 祐一,内藤 孝,仲井 浩孝,中島 啓光,中西 功太,野口 修一,奥木 敏行,大森 恒彦,佐伯 学行,阪井 寛志,佐藤 昌人,設楽 哲夫,清水 洋孝,宍戸 壽郎,竹中 たてる,田内 利明,照沼 信浩,土屋 清澄,梅森 健成,浦川 順治,山口 誠哉,山本 明,山本 康史,矢野 喜治(高エネルギー加速器研究機構),坂上 和之(早稲田大学),細田 誠一,飯島 北斗,栗木 雅夫(広島大学),磯山 悟朗,加藤 龍好,川瀬 啓悟(大阪大学),倉本 綾佳,Omet Mathieu,Rawankar Arpit(総合研究大学院大学),You Yan(清華大学)
○Ken Watanabe, Mitsuo Akemoto, Aryshev Alex, Sakae Araki, Eiji Kako, Masafumi Fukuda, Shigeki Fukuda, Kazufumi Hara, Hitoshi Hayano, Yousuke Honda, Teruya Honma, Hiroaki Katagiri, Yuuji Kojima, Yoshinari Kondo, Kiyoshi Kubo, Shigeru Kuroda, Toshihiro Matsumoto, Hideki Matsushita, Shinichiro Michizono, Takako Miura, Toshiyoshi Miyoshi, Yuuichi Morozumi, Takashi Naito, Hirotaka Nakai, Hiromitsu Nakajima, Kota Nakanishi, Shuichi Noguchi, Toshiyuki Okugi, Tsunehiko Omori, Takayuki Saeki, Hiroshi Sakai, Masato Sato, Tetsuo Shidara, Hirotaka Shimizu, Toshio Shishido, Tateru Takenaka, Toshiaki Tauchi, Nobuhiro Terunuma, Kiyosumi Tsuchiya, Kensei Umemori, Jyunji Urakawa, Seiya Yamaguchi, Akira Yamamoto, Yasuchika Yamamoto, Yoshiharu Yano (High energy accelerator research organization), Kazuyuki Sakaue (Waseda University), Seiichi Hosoda, Hokuto Iijima, Masao Kuriki (Hiroshima University), Goro Isoyama, Ryukou Kato, Keigo Kawase (Osaka University), Ayaka Kuramoto, Mathieu Omet, Arpit Rawankar (Sokendai), Yan You (Tsinghua University)
 
「超伝導加速器による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」プログラムとしてKEK-STF(超伝導リニアック試験棟)に建設を進めている量子ビーム実験用ビームライン(STF加速器)が2012年2月末に完成し、試験運転を開始した。本プログラムの目的はコンパクトな構成の加速器システムを用いて高輝度のX線を生成することであり、1 msの非常に長いバンチトレイン構造を持つ電子ビームとパルススタック光学空洞中に蓄積されたモードロックレーザーとのコンプトン散乱により1.3 x 10^10 photon/sec/1%bandwidthのX線生成を目指している。 STF加速器は、Cs2Teフォトカソードを電子源として用い、L-band常伝導1.5セルRF電子銃、シケイン等の入射部、L-band 9セル空洞2台を納めた超伝導加速空洞モジュール、20°ベンド電磁石、衝突点(X-ray生成点)、ビームダンプから成る。なお、衝突点およびビームダンプ以外のビームラインはILC(International Linear Collider)のための加速技術実証実験であるSTF Phase 2計画にそのまま使用される。 2011年夏から本格的なビームラインの建設が始まり、2012年2月末からフォトカソードRF電子銃(以下、RF電子銃)からのビーム取り出しのため試験運転、4月中旬から1m L-band 9-cell 超伝導加速空洞2台を用いて電子ビームを40MeVまで加速する試験運転を開始した。本報告ではSTF加速器のコミッショニングの状況について述べる。
 
10:20-10:40 
WEPL02
p.7
理研RIBFにおける大強度重イオンビーム加速
High intensity heavy-ion-beam operation of RIKEN RIBF

○坂本 成彦,段塚 知志,藤縄 雅,福西 暢尚,長谷部 裕雄,日暮 祥英,池上 九三男,池沢 英二,今尾 浩士,影山 正,上垣外 修一,加瀬 昌之,木寺 正憲,込山 美咲,久保木 浩功,熊谷 桂子,真家 武士,長瀬 誠,中川 孝秀,中村 仁音,奥野 広樹,大西 純一,須田 健嗣,渡辺 博,渡辺 環,渡辺 裕,山田 一成,盧 亮,山澤 秀行,大関 和貴(理研仁科センター)
○Naruhiko Sakamoto, Tomoyuki Dantsuka, Tadashi Fujinawa, Nobuhisa Fukunishi, Hiroo Hasebe, Yoshihide Higurashi, Kumio Ikegami, Eiji Ikezawa, Hiroshi Imao, Tadashi Kageyama, Osamu Kamigaito, Masayuki Kase, Masanori Kidera, Misaki Komiyama, Hironori Kuboki, Keiko Kumagai, Takeshi Maie, Makoto Nagase, Takahide Nakagawa, Makoto Nakamura, Hiroki Okuno, Junichi Ohnishi, Kenji Suda, Hiroshi Watanabe, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe, Kazunari Yamada, Liang Lu, Hideyuki Yamasawa, Kazutaka Ozeki (RIKEN Nishina Center)
 
2008年本格的な実験での使用開始以来、実験の要求に従ってビームの開発を行って来た。これまで加速したビームは、重陽子(偏極、非偏極)、ヘリウム、14N、18O、48Ca、124Xe、238Uで、その強度は酸素までの軽い核では目標の1 pμAを早々に達成、48Caも 0.4 pμAまで向上している。一方、124Xeや238Uは、2011年度より本格的に稼働を始めた28 GHz超伝導ECRイオン源と新入射器RILAC2によりそれぞれ、10 pnA、3,5 pnAを実現している。また、これまで問題であったSRC高周波系のダウンタイムの最小化に成功し、大強度ビームに伴う荷電変換膜の長寿命化、各機器の安定化により、48Caについて、当初60 %台程度であった可用度(Availability)が、最近では90 %近くまで改善した。本発表では、これまでの経緯とともにさらなる大強度化への取り組みについて報告する。
 
10:40-11:00 
WEPL03
p.12
X線自由電子レーザー施設SACLAの運転状況と今後の高度化
Operation Status and Performance Upgrade Plan of SACLA

○田中 均(理研播磨研放射光総合研究センターXFEL研究開発部門)
○Hitoshi Tanaka (XFEL R&D Division, RSC, RIKEN Harima Institute)
 
平成23年6月に波長1.2Åでレーザー増幅が確認されたSACLAは、その後の調整により、23年末には0.8~3Åの波長域にて、サブミリジュールのパルスエネルギーの安定生成が可能になった。平成24年年明けからは、3月のユーザー運転を目指し、電子銃カソード交換、調整手法の合理化と自動化、パラメータの最適化等が行われてきた。 この結果、平成24年3月から予定通りユーザー実験を開始するに至った。ユーザー実験は24時間の連続運転で行われ、基本的にレーザー性能維持を目的とした調整は挟まない。それでも、3日程度のユーザー実験期間に亘り、レーザー強度をほぼ一定に維持し、平均トリップ間隔約30分、平均レーザー利用率90%を超える運転が既に実現されている。SACLAのユーザー運転はまだ開始されたばかりではあるが、以下の4つの高度化が急務の課題として挙げられる:(1)加速器の安定化、特に入射部RF機器のドリフト抑制、(2)レーザー波長域の拡大、(3)レーザーパルス幅の制御、(4) レーザー強度の増大。これらと並行し、多モードのSASE XFEL のシード化(シングルモード化)、ビームラインの高速切り替え、SCSS 試験加速器のSACLAアンジュレータホールへの移設とアップグレード等の長期的課題も検討を進めている。本発表では、実験データを交えながらSACLAの運転状況を説明すると共に、現状のSACLAにおける加速器研究のアクティビティと今後の高度化の概要を示す。
 
11:00-11:20 
WEPL04
p.16
J-PARC Main Ringにおける大強度運転
High Power Beam Operation of J-PARC Main Ring

○佐藤 洋一,五十嵐 進,原 圭吾(KEK/J-PARC),發知 英明(JAEA/J-PARC),大見 和史(KEK),大森 千広,白形 政司,小関 忠,外山 毅,手島 昌己,佐藤 健一郎,橋本 義徳,山田 秀衛,中村 衆(KEK/J-PARC),田村 文彦(JAEA/J-PARC),岡田 雅之(KEK/J-PARC)
○Yoichi Sato, Susumu Igarashi, Keigo Hara (KEK/J-PARC), Hideaki Hotchi (JAEA/J-PARC), Kazuhito Ohmi (KEK), Chihiro Ohmori, Masashi Shirakata, Tadashi Koseki, Takeshi Toyama, Masaki Tejima, Kenichirou Satou, Yoshinori Hashimoto, Shuei Yamada, Shu Nakamura (KEK/J-PARC), Fumihiko Tamura (JAEA/J-PARC), Masashi Okada (KEK/J-PARC)
 
J-PARC Main Ringは、速い取出しによって、震災前に145 kW、震災後に200 kWのビームをニュートリノビームラインに供給した。 震災後のコミッショニングでは、ビーム強度を上げるために繰り返し周期を3.2 sから2.56 sに段階的に短縮した。 ビームロスの軽減に特に効果があったのは、加速開始時のチューン変動を抑えるための主電磁石の調整、ビーム不安定性による横方向振動を抑制するための6極電磁石によるクロマティシティの調整、バンチ毎の横方向フィードバックの調整、ビームローディング補償の導入、コリメータバランス最適化等である。 本発表では、これらのビーム調整についてシミュレーションとの比較を中心に述べるとともに、今後のビーム強度の増強についても議論する。
 
11:20-11:40 
WEPL05
p.21
SuperKEKBビーム衝突点用超伝導電磁石システムの設計
Design of the Superconducting Magnet System for the SuperKEKB Interaction Region

○大内 徳人,岩崎 昌子,多和田 正文,東 憲男,山岡 広,土屋 清澄,有本 靖,宗 占国,大木 俊征,小磯 春代,生出 勝宣,大西 幸喜,森田 昭夫,赤井 和憲(KEK),Wanderer Peter,Parker Brett,Anerella Michael(BNL)
○Norihito Ohuchi, Masako Iwasaki, Masafumi Tawada, Norio Higashi, Hiroshi Yamaoka, Kiyosumi Tsuchiya, Yasushi Arimoto, Zanguo Zong, Toshiyuki Oki, Haruyo Koiso, Katsunobu Oide, Yukiyoshi Onishi, Akio Morita, Kazunori Akai (KEK), Peter Wanderer, Brett Parker, Michael Anerella (BNL)
 
SuperKEKBでは電子・陽電子ビームの衝突頻度(ルミノシテイー)をKEKBより40倍高めることを目標とし、加速器の大幅な改造を進めている。特に、ビーム最終収束系は全て超伝導電磁石で構成する。電子・陽電子の両ビームを衝突させるために、各ビームラインには超伝導4極電磁石のダブレットを配置し、ビームサイズを約50ナノメータまで絞り込む。超伝導4極電磁石の台数は総数で8台となる。これらの超伝導4極電磁石は衝突点を挟んで2台のクライオスタットに組込まれる。又、超伝導4極電磁石は非常に精密なビームに対するアライメントを必要とする為、各4極電磁石には3種類の超伝導補正コイル(Skew Dipole、Normal Dipole、Skew Quadrupole)が磁石内部に組込まれる。この補正コイルの他に、光学検討から必要とされるNormal Octupoleコイル、漏れ磁場キャンセルコイル等、40台の超伝導コイルがシステムに組込まれる。又、素粒子検出器超伝導ソレノイドからの磁場をビームライン上で積分的にキャンセルする為の超伝導ソレノイドもクライオスタットに組み込まれる。本報告会では、これら超伝導電磁石システム、磁石の設計等を主に報告し、プロトタイプの開発状況についても時間の許す限り報告する。
 
11:40-12:00 
WEPL06
p.26
可搬型950 keV/3.95 MeV XバンドライナックX線源の現場透視検査の開始
Commissioning of portable 950 keV /3.95 MeV X-band linac X-ray source for on-site transmission testing

○上坂 充(東京大学大学院工学系研究科原子力専攻)
○Mitsuru Uesaka (Nuclear Professional School, School of Engineering, University of Tokyo)
 
可搬型950 keV XバンドライナックX線源が完成し、化学工場の反応塔の透視検査を実施した。結果、今までの300 kVX線管とイメージングプレートで測定が不可能であった、鉄等価厚さ約150mmの構造の透視画像を30分で取得した。加速管について、同軸結合型の1号機ではビームローディング、RFパワー振動、電子の減速、電流値減少が問題であったが、回路法による数値解析を行い、サイド結合型でそれらが解決できることを確認し、2号機を製作した。X線の強度は、50mSv/min@1mの設計値をほぼ達成した。これは数値解析と改良設計の妥当性が実証されたことを示す。この成果による上記鉄等価厚の構造健全性その場評価が可能となった。現在その他の状況での検査と装置システムの機器配置の最適化も検討している。また可搬型3.95 MeV XバンドライナックX線源も完成し、設計通りの2Gy/min@1mのX線強度を達成した。このシステムは橋梁検査に特化して管理区域外で使用可能である。しかし、日本で始めての実施のため、文科省の安全審査を受ける必要がある。つくば市の土木研究所でまず予備試験と安全審査を受ける予定である。安全を十分に検討した上での、3.95 MeV, 6 MeVのライナックX線源の管理区域外使用のための規制緩和への動きも解説する。加速器技術の社会インフラ健全性評価のOutreachへの大きな一歩と考える。
 
電子加速器 (8月8日(水) 大学会館講堂)
13:00-13:20 
WEUH01
p.29
小型電子線形加速器を用いた超高エネルギー宇宙線観測用望遠鏡較正
Absolute Energy Calibration of Ultra-High Energy Cosmic Telescope with a Portable Electron Linear Accelerator for

○芝田 達伸,池田 大輔(東大宇宙線研),池田 光男,榎本 收志,大沢 哲(高エネ研),荻尾 彰一(大阪市大理),柿原 和久(高エネ研),佐川 宏行(東大宇宙線研),佐藤 政則,杉村 高志(高エネ研),福島 正己(東大宇宙線研),福田 茂樹,古川 和朗,吉田 光宏(高エネ研),Beitollahi Masoud,Langely Karen,Matthews John,Thomas Stan,Thomson Gordon(ユタ大学),Cheon Byung Gu,Shin Bok Kyun(漢陽大学)
○Tatsunobu Shibata, Daisuke Ikeda (ICRR), Mitsuo Ikeda, Atsushi Enomoto, Satoshi Ohsawa (KEK), Shoichi Ogio (OCU), Kazuhisa Kakihara (KEK), Hiroyuki Sagawa (ICRR), Masanori Satoh, Takashi Sugimura (KEK), Masaki Fukushima (ICRR), Shigeki Fukuda, Kazurou Furukawa, Mitsuhiro Yoshida (KEK), Masoud Beitollahi, Karen Langely, John Matthews, Stan Thomas, Gordon Thomson (UoU), Byung Gu Cheon, Bok Kyun Shin (HanYang Univ.)
 
超高エネルギー宇宙線観測を目的としたテレスコープアレイ実験(TA実験)が2008年からアメリカ・ユタ州で開始された。TA実験では、一次宇宙線が空気中分子との衝突で引き起こすカスケードシャワー(空気シャワー)からの発光現象を大気蛍光望遠鏡(FD)を用いて検出する事で、一次宇宙線のエネルギー測定を行う。しかし昔から宇宙線観測実験ではエネルギーの絶対較正源が存在しなかった。我々は40MeVの電子ビームを空気中に射出し、電磁ビームによって生成される空気シャワーを直接観測する事で、FDの絶対エネルギー較正を行う。 小型電子線形加速器(ELS)は2009年3月にTAサイトに設置され、2010年9月に運転開始された。FDの絶対エネルギー較正において最も重要な点は空気中に射出されたビーム電荷量、エネルギーのモニターと、空気中でのエネルギー損失量の精密な計算である。本研究では以上点を踏まえての絶対エネルギー較正の現状と、ELSの運転状況について報告する。
 
13:20-13:40 
WEUH02
p.34
SuperKEKBリングの設計と建設の現状
Design and Construction Status of the SuperKEKB Rings

○小磯 晴代,赤井 和憲(KEK)
○Haruyo Koiso, Kazunori Akai (KEK)
 
SuperKEKBの建設が順調に進んでいる。ナノビーム方式に基づいて衝突点垂直ベータ関数を~300 μm (KEKBの約1/20)に絞り込み、同時に蓄積ビーム電流を増加(約2倍)して、KEKBの40倍の性能を実現するには、リングおよび入射器の全般にわたる改造が必要である。衝突点領域については、3次元磁場分布を取り入れた精密な光学系モデルによる最終収束系の最適化を行い、超伝導電磁石・クライオスタット等衝突点機器(左側)の製作を開始した。衝突点右側については、ビーム・バックラウンドの観点からさらに検討を続けている。LER曲線部新偏向電磁石の磁場測定、ビームパイプ内面の窒化チタンコーティングおよび新型ベーキング装置の立ち上げ等の進展等と併せて、衝突リングの設計と建設の現状について報告する。
 
13:40-14:00 
WEUH03
p.37
SuperKEKBに向けた入射器アップグレード
Linac Upgrade for SuperKEKB

○肥後 寿泰,明本 光生,荒木田 是夫,荒川 大,榎本 收志,福田 茂樹,古川 和郎,東 保男,本間 博幸,飯田 直子,池田 光男,門倉 英一,柿原 和久,紙谷 拓哉,片桐 広明,倉品 美帆,松下 英樹,松本 修二,松本 利広,道園 真一郎,三川 勝彦,三浦 孝子,宮原 房史,森 隆志,中島 啓光,中尾 克巳,夏井 拓也,大沢 哲,小川 雄二郎,佐藤 政則,設楽 哲夫,白川 明広,諏訪田 剛,杉本 寛,高富 俊和,竹中 たてる,矢野 喜治,横山 和枝,吉田 光宏,臧 磊,周 翔宇(KEK),佐藤 大輔(東工大)
○Toshiyasu Higo, Mitsuo Akemoto, Yoshio Arakida, Dai Arakawa, Atsushi Enomoto, Shigeki Fukuda, Kazuro Furukawa, Yasuo Higashi, Hiroyuki Honma, Naoko Iida, Mitsuo Ikeda, Eiichi Kadokura, Kazuhisa Kakihara, Takuya Kamitani, Hiroaki Katagiri, Miho Kurashina, Hideki Matsushita, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Shinichiro Michizono, Katsuhiko Mikawa, Takako Miura, Fusashi Miyahara, Takashi Mori, Hiromitsu Nakajima, Katsumi Nakao, Takuya Natsui, Satoshi Ohsawa, Yujiro Ogawa, Masanori Satoh, Tetsuo Shidara, Akihiro Shirakawa, Tsuyoshi Suwada, Hiroshi Sugimoto, Toshikazu Takatomi, Tateru Takenaka, Yoshiharu Yano, Kazue Yokoyama, Mitsuhiro Yoshida, Lei Zang, Xiangyu Zhou (KEK), Daisuke Satoh (TITECH)
 
SuperKEKBリングへの入射ビームの要求は、KEKBでのレベルに比べて、バンチチャージで4~5倍、エミッタンスでは数十~百倍以上の低減、を必要としている。電子ビームはRFガンからの低エミッタンスでバンチ形状を最適化したビームを発生させ、エミッタンス増大無きようにライナックでの加速を行う。陽電子ビームは、バンチチャージ増加は捕獲効率の増大をフラックスコンセントレータと大口径捕獲システムの採用により実現し、エミッタンスをダンピングリングで実現する。このビームをエミッタンスを増大させずに加速することにより実現する。両ビームのエミッタンス保存に対しては、Qマグネットや加速管のアラインメント精度が重要になるとともに、ビームを用いたアラインメントの向上が必須である。これらを総合してSuperKEKBの要求を満たすべく、いくつかの技術的、及び現実的選択を行いつつ進めてきている。これら最近の進展を踏まえた状況報告とT=0及びそれ以降の戦略について述べる。
 
14:00-14:20 
WEUH04
p.42
医療用小型電子加速器の進歩と次世代ロボット型放射線治療装置
Advances in Medical Electron Linear Accelerator Technologies and the Development of a Next Generation Robotic Radiation Therapy System

○田辺 英二((株)エーイーティー)
○Eiji Tanabe (AET Inc.)
 
20世紀の初頭に始まった300KV程度のX線によるがんの放射線治療は1950年代となり第二次世界大戦中に開発されたクライストロンやマグネトロンによる大電力マイクロ波と線形加速器の技術とを組み合わせる事により初めて医療現場で利用可能な放射線治療装置としての地位を確立した。近年特にコンピュータの技術の進歩と相まって放射線治療技術の進歩は著しく、多くの先進国においては、がん患者の半数以上が放射線治療の恩恵を受けている。医療用電子加速器は全世界で現在8,000台ほど存在し、放射線治療患者数は世界中において毎日12万人にも及ぶようになっており、加速器の技術が世界的に大きな社会貢献をなしている。我が国は放射線治療の後進国であったが、急速な高齢化と相まって、がんによる死亡は現在のところ全体の死亡原因の30%以上にも達しており外科主流によるがん治療の方法の見直しとQOLが求められるに伴い、国および医療現場、患者からの放射線治療に対する期待が大いに高まりつつある。現在内閣府が中心となり進めているがんの早期発見と早期治療に対するプロジェクトの中において、X-バンドを使った小型加速器と国産ロボットとを合体させた新たな次世代放射線治療装置開発がテーマとして採択されており、今回はその概要と国立国際医療研究センターに設置されたプロトタイプシステムの現状を報告する。
 
14:20-14:40 
WEUH05
p.48
ニュースバルにおけるエネルギー差を使った入射
Off-momentum Top-up Injection into NewSUBARU

○庄司 善彦(兵庫県立大学),皆川 康幸,竹村 育浩(高輝度光科学研究センター)
○Yoshihiko Shoji (University of Hyogo), Yasuyuki Minagawa, Yasuhiro Takemura (JASRI)
 
 NewSUBARUでは、交流6極電磁石によるクロマティシティー変調を行い、ビーム不安定性抑制や、準単色コヒーレント放射発生の研究を進めている。6極電磁石の設置位置は通常の運転では無分散であるため、この実証実験を行う際はこの部分に分散のあるラティスを用いる。このラティスでのtop-up 入射は、実証実験の必須条件では無いが、この実現により研究を効率的に進めることができる。  有限分散部への入射の最適条件について、既に理論計算を行っていたが、不安定抑制実験の休止により、実用には至らないままであった。しかし最近になっての実験再開と、新たなコヒーレント放射実験開始に伴い、入射を実用化した。  NewSUBARUに於ける入射の問題点は、入射直後のビームの大きなベータトロン振動である。入射部が有限分散である場合、入射ビームのエネルギーを蓄積リングから外す事によって、ベータトロン振幅をシンクロトロン振動に移す事が出来、結果的に入射効率の改善が得られる。  この方式によって、有限分散ラティスにおいてもtop-up運転が可能となった。
 
電子加速器、放射光・FEL・ERL (8月8日(水) 大学会館講堂)
14:50-15:10 
WEUH06
p.51
BEAM CHARACTERISTICS MEASUREMENT OF ITC RF GUN FOR T-ACTS PROJECT
BEAM CHARACTERISTICS MEASUREMENT OF ITC RF GUN FOR T-ACTS PROJECT

○黄 暖雅(1. 東北大学・電子光理学研究センター 2.台湾国立清華大学・光電工程研究所 ),柏木 茂,日出 富士雄,長澤 育郎,高橋 健,武藤 俊哉,南部 健一,柴崎 義信,河合 正之,濱 広幸(1. 東北大学・電子光理学研究センター)
○Nuanya Huang (1. Electron Light Science Centre, Tohoku University, Japan 2. Institute of Photonics Technologies, National Tsing Hua University, Taiwan), Shigeru Kashiwagi, Fujio Hinode, Ikurou Nagasawa, Ken Takahashi, Toshiya Muto, Kenichi Nanbu, Yoshinobu Shibasaki, Masayuki Kawai, Hiroyuki Hama (1. Electron Light Science Centre, Tohoku University, Japan )
 
We have installed a system for the measurement of beam characteristics from an independently tunable cells thermionic RF gun (ITC RF gun) that is worked as the electron source of the test accelerator system for high intensity THz radiation source (t-ACTS project). This measurement system includes a beam profile monitor and an energy spectrometer. The beam profile monitor consists of a YAG screen and a shutter CCD camera. The energy spectrometer is composed of a 45 degree bending magnet, an adjustable slit and the Faraday cup. The characteristics of the generated beam can be modified by adjusting separately the input RF field and the RF phase of the two cells. We have measured the beam characteristics under various operated conditions such as the heater current and the RF parameters. We will report the analysis of experimental result and its comparison with the simulation result that is calculated by the general particle tracer (GPT) code.
 
15:10-15:30 
WEUH07
SuperKEKB 用 RF電子銃による高電荷・低エミッタンス電子ビーム
High charge and low emittance electron beam using new RF-Gun for SuperKEKB
○吉田 光宏,夏井 拓也,周 翔羽,小川 雄二郎(高エネルギー加速器研究機構),佐藤 大輔(東京工業大学)
○Mitsuhiro Yoshida, Takuya Natsui, Xiangyu Zhou, Yujiro Ogawa (High Energy Accelerator Organization), Daisuke Sato (Tokyo Institute of Technology)
 
SuperKEKBでは非常に高いルミノシティーを得るため、低エミッタンス化によるダイナミックアパーチャーの減少とビーム寿命の減少はやむを得ない。これに対応して電子陽電子入射器も、電子で5nC、20mm・mrad が要求性能である。このためには電子銃では10mm・mrad 以下のエミッタンスが必要だが、これをRF電子銃で安定に運転可能な低電界で達成するには、理論的に数十ps の初期バンチ長が必須である。 5nC のビームを空間電荷による広がりを抑制しつつ加速する方法として、収束電界が利用できる外部結合型の空洞を採用し、カソード部も湾曲させる事で低エミッタンスを維持しつつビームを収束させる構造を採用している。 またフォトカソードとしては長期間の営業運転に対応するため、高融点・低仕事関数という特殊な性質を合わせ持つ Ir5Ce カソードを選択した。これにより QE=10^-4 という常温の金属系カソードとしては非常に高い量子効率が安定に得られた。この量子効率であれば5nCに必要なレーザーも飽和断面積からNd 系媒質で必要なパワーが得られた。既に 3-2ユニットに Disk And Washer (DAW) 型RF電子銃を導入し、この試験結果について報告すると共に、今後 A-1 ユニットにおいて、準進行波型サイドカップル型RF電子銃を導入し、レーザーも広帯域な Yb媒質系を用いる事で、時間構造の成形を検討している。これらの今後の計画や低エミッタンスビームの輸送についても簡単に報告する。
 
15:30-15:50 
WEUH08
p.54
SACLAにおける光源性能評価と光源高度化
Characterization of light source performance and upgrade option at SACLA

○田中 隆次(理研XFEL部門)
○Takashi Tanaka (RIKEN XFEL R&D Division)
 
X線自由電子レーザー(XFEL)施設における光源性能は電子ビームの品質に大きく依存する。即ち、電子ビームの品質が劣化しSASEの発振条件を満たさなくなった場合、自発放射が主たる放射過程となるため、光強度は大幅に低下する。この意味において、光と電子のコンボリューションによって光源性能が規定される従来型放射光施設とは、根本的に電子ビーム品質の重要性が異なる。従って、電子ビームの特性を実験的に把握しておくことは重要である。XFELにおいてレーザー発振と相関があるのは、電子バンチ全体にわたって時間的に平均された(投影された)ビーム特性ではなく、Cooperation Lengthで規定される狭い時間領域で平均された、いわゆるスライスされたビーム特性であり、通常の方法で精度良く測定することは容易ではない。このためSACLAでは、RFデフレクターによってバンチの時間構造を測定し、その情報を元にシミュレーションによりスライスエミッタンス等のビーム特性を推定している。本講演では、ゲイン長測定やスペクトル測定により明らかとなったSACLAの光源性能と、推定される電子ビーム特性について報告するとともに、アンジュレータの狭ギャップ化や、セルフシード法によるシード化の検討など、SACLAにおける今後の光源高度化の展望について述べる。
 
15:50-16:10 
WEUH09
p.59
SACLA電子ビーム性能向上に向けての取り組み
Improvement of SACLA electron beam performance

○原 徹,渡川 和晃,田中 均(理研播磨研放射光総合研究センターXFEL研究開発部門)
○Toru Hara, Kazuaki Togawa, Hitoshi Tanaka (XFEL R&D Division, RSC, RIKEN Harima Institute)
 
SACLAでは計算機シミュレーションの結果から加速器パラメータの設計ベースを作り、加速器のビーム調整を行ってきたが、実際には空間電化効果等シミュレーション自体の限界や、RFの設定誤差、アライメントエラーなどの誤差要因により、レーザー出力を指標にした最終的な加速器パラメータの最適化は必須である。しかしながら入射部で速度変調バンチ圧縮を行っているSACLA線形加速器はパラメータ数が多く、レーザー出力のみを見ながらの最適化は容易ではない。昨年6月のレーザー増幅達成時のパルス出力も10 keVで30μJと、設計値よりも1桁近く小さい値であった。そこで昨年秋からの調整では測定システムの改良を含め、投影エミッタンスの最適化によるアンジュレータ収束系に対するマッチングの改善や、RF deflectorを用いた電子バンチの時間形状およびE-t位相空間形状の最適化などを行った結果、出力を120μJまで向上させることができた。また同時にアンジュレータ部の軌道を精度よく直線にすることで、5~15 keVの広い波長範囲で発振を達成した。更に今年に入ってからは、ビームエネルギーとアンジュレータK値を上げ、10 keVで250μJを超えるレーザーパルスを現在ユーザー実験に提供している。本発表では、SACLAビーム性能向上に向けて行ってきた取り組みと、現状の問題点、今後の予定などについて報告する。
 
ハドロン加速器 (8月8日(水) 共通教育棟大講義室)
13:00-13:20 
WELR01
p.64
J-PARCリニアックにおける東日本大震災後のビームコミッショニングとビームロス低減
Beam commissioning of J-PARC linac after Tohoku Earthquake and its beam loss mitigation

○池上 雅紀,方 志高,二ツ川 健太,宮尾 智章,劉 勇(高エネルギー加速器研究機構),丸田 朋史,佐甲 博之,三浦 昭彦,田村 潤,魏 國輝(日本原子力研究開発機構)
○Masanori Ikegami, Zhigao Fang, Kenta Futatsukawa, Tomoaki Miyao, Yong Liu (KEK), Tomofumi Maruta, Hiroyuki Sako, Akihiko Miura, Jun Tamura, Guohui Wei (JAEA)
 
2011年3月に起こった東日本大震災による被害のため、J-PARCリニアックは運転を停止していたが、2011年12月にビーム運転を再開、2012年1月に7.2kWでのユーザー運転を再開した。その後、2012年3月には震災前のビームパワーである13.3kWでのユーザー運転を再開したが、この一連のビーム立ち上げ調整の過程において、J-PARCリニアックでは、震災前には見られなかったビームロスを経験した。本発表では、J-PARCリニアックの震災後のビーム再開時のビームコミッショニングについて報告するとともに、ビームロス低減のために行った調整とその結果について報告する。
 
13:20-13:40 
WELR02
p.68
大強度ウランビームのためのHeガス荷電ストリッパー
He gas charge stripper for high-intensity uranium beam

○今尾 浩士,奥野 広樹,久保木 浩功,上垣外 修一,長谷部 裕雄,福西 暢尚,渡邉 環,藤巻 正樹,渡邉 裕,眞家 武士,加瀬 昌之,矢野 安重(理研仁科センター加速器基盤研究部)
○Hiroshi Imao, Hiroki Okuno, Hironori Kuboki, Osamu Kamigaito, Hiroo Hasebe, Nobuhisa Fukunishi, Tamaki Watanabe, Masaki Fujimaki, Yutaka Watanabe, Takeshi Maie, Masayuki Kase, Yasushige Yano (RIKEN Nishina Center for Accelerator-Based Science)
 
現在、理研RIBFでは「核図表の飛躍的拡大」を基幹目標の一つとし、ウランビーム大強度化に向けた研究開発に重点的に取組んでいる。2011年度より28GHz超伝導ECRイオン源を含む新入射器RILAC2が本格稼動し、現在、従来の100倍以上の強度を狙い、その多段サイクロトロン加速に伴う諸問題に取り組んでいる。中でも最優先課題の一つが最適な「荷電ストリッパー」の探求開発であり、加速ビーム強度を決める鍵である。従来型炭素薄膜は耐久性や膜厚均一性に問題があり、大強度化に伴い新機軸が必要である。 Heガスはガスの非破壊性と均一性、low-Zガスの高い荷電変換能力を併せ持つ次世代ストリッパーの最有力候補といえる。これまでの試験で、多段サイクロトロン前段側(11 MeV/u)において、238Uに対し65価までの最高平均電荷が得られる事を実証した(例えばN2では56価)。しかし、大強度ビームの荷電変換には高真空中において、十分なビームパス(>φ10 mm)を確保しながら1 mg/cm2ものHeガスを安定蓄積しなければならない。この時、Heガスの漏れ量は非常に大きく(約300L/min)、大規模差動排気系とガス循環系の両立が不可欠である。断面積の低いHeではその純度も重要なパラメータとなる。更に、熱負荷によるガス密度減少等、大強度ウランビーム特有の問題の為、荷電変換能力や均一性が保たれるかも自明でない。発表では諸問題を克服するRIBFの新しいガス循環式Heガスストリッパーについて報告する。
 
13:40-14:00 
WELR03
p.72
横方向間接レーザー冷却の効率化に向けた制御ビームスクレーピング
Controlled beam scraping oriented for efficient indirect transverse laser cooling

○野田 章,中尾 政夫,想田 光,頓宮 拡(京大化研),神保 光一(京大エネ研),岡本 宏巳,大崎 一哉(広大先端研),百合 庸介(原研高崎),グリーザー マンフレッド(マックスプランク原子核研),何 争麒(清華大学)
○Akira Noda, Masao Nakao, Hikaru Souda, Hiromu Tongu, Kouichi Jimbo, Hiromi Okamoto, Kazuya Osaki (ICR, Kyoto Univ.), Yousuke Yuri (JAEA, Takasaki Insti.), Manfred Grieser (MPI-K, Heidelberg), Zhengqi He (Tsinghua University)
 
At S-LSR, laser cooling of 40 keV Mg ion has been performed in these several years. Longitudinal laser cooling of a coasting beam was realized and indication of indirect transverse laser cooling of a bunched beam with the use of synchro-betatron resonance coupling (SBRC) has been experimentally demonstrated, which, however, was not so efficient due to heating effect by intra-beam scattering for the beam intensity of 10E7. For the purpose of our research to attain very low temperature beam, it is inevitable to reduce the beam intensity without deterioration of beam detection signal. For this purpose, we have applied controlled scraping of laser cooled bunched Mg ion beam. After injection into S-LSR and rf captured, the beam is partially cut off from the outskirt by a scraper moving in the horizontal direction and laser cooled both in longitudinal and horizontal directions with SBRC. Then after some time the horizontal beam size was measured with another scraper moving also in the horizontal direction. With this scheme the beam intensity could be reduced from around 10E7 to 10E5, which resulted in a rather efficient indirect transverse laser cooling with cooling time around 1 sec.
 
14:00-14:20 
WELR04
p.75
J-PARC/JSNSにおける非線形ビームオプティクスを用いたビーム平坦化技術の開発
Development of Beam Flattening System Using Non-Linear Beam Optics at J-PARC/JSNS

○明午 伸一郎(JAEA/J-PARC),藤森 寛(KEK/J-PARC),坂元 眞一,二川 正敏(JAEA/J-PARC)
○Shin-ichiro Meigo (JAEA/J-PARC), Hiroshi Fujimori (KEK/J-PARC), Shinichi Sakamoto, Masatoshi Futakawa (JAEA/J-PARC)
 
加速器のビーム出力が増大するにつれターゲットの損傷が重大な問題となる。特にJ-PARCの核破砕中性子源(JSNS) の様に、水銀ターゲットと短パルスを用いた核破砕ではピッティングによる損傷が重大な問題となる。陽子ビームに起因する水銀ターゲットの容器における損傷は陽子ビームのピーク密度の4乗に比例することが知られており、ピーク密度を減少させることが施設を安定した状態で運転できる鍵となる。この問題を解決するために八極電磁石を用いた非線形のビームオプティクスによるビーム平坦化技術の開発を行った。八極電磁石でビームを広げ、適切な位相進行を持つことにより平坦化できることが明らかになった。J-PARCでは中性子ターゲットの上流にはミュオン生成用のターゲットがあり、ミュオン生成ターゲットによる影響が問題であったが、ビームをミュオン生成ターゲットでできるだけ絞ることにより散乱の影響を最小化でき、線形オプティクスに比べ30%程度のピーク密度減少が可能であることがわかった。
 
14:20-14:40 
WELR05
p.80
J-PARC遅い取り出しビーム高強度化へむけての取り組み
Approach for High Intensity Slow Extraction from J-PARC Main Ring

○冨澤 正人,新垣 良次,木村 琢郎,武藤 亮太郎,村杉 茂,中川 秀利,岡村 勝也,佐藤 皓,佐藤 健一郎,白壁 義久,外山 毅,柳岡 栄一,吉井 正人(KEK),堀川 大輔(総研大),田村 文彦(原科研/J-PARC),下川 哲司(佐賀大)
○Masahito Tomizawa, Yoshitugu Arakaki, Takuro Kimura, Ryotaro Muto, Shigeru Murasugi, Hidetoshi Nakagawa, Katsuya Okamura, Hikaru Sato, Kenichiro Sato, Yoshihisa Shirakabe, Takeshi Toyama, Eiichi Yanaoka, Masahito Yoshii (High Energy Accelerator Research Organization), Daisuke Horikawa (The Graduate University for Advanced Studies), Fumihiko Tamura (JAEA/J-PARC), Tetsushi Shimokawa (Saga University)
 
J-PARCメインリング(MR)で30 GeVに加速された陽子ビームは,3次共鳴を利用した遅い取り出しによって、素粒子・原子核実験施設へ供給される。遅い取り出し装置は、静電セプタム、セプタム磁石、バンプ磁石、共鳴を励起するための6極磁石、スピルフィードバック用の高速応答4極磁石(EQ,RQ)、そしてそれらの電源・制御系から構成される。静電セプタムとその下流にある低磁場セプタム磁石の位置調整、取り出しの途中でバンプ軌道をセパラトリックスに沿って動かすユニークで高度な手法を導入することにより、99.5%という極めて高い取り出し効率を達成した。  2011年に静電セプタムの下流に散乱粒子を吸収させるためのコリメーターを導入することにより、周辺ダクトの残留放射能を大幅に低減させることができた。  その後のビーム強度の増加に伴って、デバンチ過程のビーム減速現象を観測した。この現象はリングインピーダンスを起源としビーム強度に依存し取り出し効率を悪化させた。しかしながらビームが感じる実効インピーダンスの低減、高次のクロマティシティーを考慮した調整により、同等の高い取り出し効率を維持することが可能となった。以上の取り組みにより、2012年の6月の遅い取り出し運転期間においては6kW(7.5×10^13ppp)ビームを実験施設に供給することができた。 以上の内容に加えて、今後予定されているさらなる高強度化にむけての検討についても報告する。
 
ハドロン加速器、ビームダイナミクス・加速器理論 (8月8日(水) 共通教育棟大講義室)
14:50-15:10 
WELR06
p.84
カーボンナノチューブ・カーボン蒸着膜の開発
Development of new foil compounded from carbon nanotube and sputter-deposition carbon

○長谷部 裕雄,奥野 広樹,久保木 浩功,今尾 浩士,山根 功,福西 暢尚,加瀬 昌之,上垣外 修一(理研・仁科加速器研究センター)
○Hiroo Hasebe, Hiroki Okuno, Hironori Kuboki, Hiroshi Imao, Isao Yamane, Nobuhisa Fukunishi, Masayuki Kase, Osamu Kamigaito (RIKEN,RNC)
 
理研RIビームファクトリーではウラン(U)ビームの加速時に 荷電変換膜として炭素薄膜(C-foil)を使用している。 新入射器の導入等によりUビーム量は年々増大してきた。 反面、C-foilは単寿命となり長時間安定なビーム供給が困難になってきた。 2009年11月長寿命膜の開発の一環で カーボンナノチューブ膜(CNT-foil)にウランビームを照射してみた。 寿命は一般的に販売されているC-foilと同等だった。 しかし荷電変換後、使用出来る価数が得られるまでに時間を要したので CNT-foilは長寿命膜の開発対象に選ばなかった。 大強度ウランビーム用の回転円筒ストリッパー装置の大面積膜の開発は行き詰まっていた。 早急に平坦で機械的強度がある膜を完成させなければならなかった。 CNT-foilに炭素をスパッタ蒸着(SDC)した大面積膜を作ってみた。 試作した膜は回転円筒ストリッパーに取り付けられ 20011年6月、ウランビームを照射した。 約40時間照射したが膜に損傷は無かった。 2011年10月-12月、この新型CNT-SDC-foilをウラン実験に投入した。 長期間、大強度のビーム供給が成功した。 この新型CNT-SDC-foilを分析した結果と寿命について発表する。
 
15:10-15:30 
WELR07
p.89
J-PARC MR のマルチハーモニック RF フィードフォワードシステムの調整
Commissioning of multiharmonic feedforward system for J-PARC MR

○田村 文彦(原子力機構),大森 千広(高エネ研),山本 昌亘(原子力機構),吉井 正人(高エネ研),シュナーゼ アレクサンダー,野村 昌弘(原子力機構),戸田 信(高エネ研),島田 太平(原子力機構),長谷川 豪志,原 圭吾(高エネ研)
○Fumihiko Tamura (JAEA), Chihiro Ohmori (KEK), Masanobu Yamamoto (JAEA), Masahito Yoshii (KEK), Alexander Schnase, Masahiro Nomura (JAEA), Makoto Toda (KEK), Taihei Shimada (JAEA), Katsushi Hasegawa, Keigo Hara (KEK)
 
大強度陽子ビーム加速のためには、加速空胴に発生するウェーク電圧によるビームローディングの補償は重要な課題である。J-PARC MR では、金属磁性体 (MA) 空胴を採用し、空胴の Q値を20程度に調整することで、無同調で加速ハーモニック (h=9) の周波数スイープをカバーすることを可能としている。その一方で、空胴帯域には加速ハーモニックに隣接するハーモニクス (h=8,10) も含まれるため、ウェーク電圧は加速ハーモニック成分および、これら隣接するハーモニック成分の重畳となっており、これら3つのハーモニック成分のwake電圧をキャンセルすることが必要である。J-PARC MR では、J-PARC RCS と同様にRFフィードフォワード法を採用し、マルチハーモニック (h=8,9,10) のビームローディング補償を行うことを目指している。本発表では、大強度の陽子ビーム (1.0e14 ppp、約200 kW 相当) を用いた、マルチハーモニック RF フィードフォワードシステムの調整について報告する。調整の結果、ビームの見るインピーダンスを低下させ、また、ダイポール振動を抑制することに成功した。
 
15:30-15:50 
WELR08
p.94
超冷中性子加速器の実証
Demonstration of Accelerator for Ultracold Neutrons

有本 靖(KEK),Gertenbort Peter(ILL),○今城 想平(京大理),岩下 芳久(京大化研),北口 雅暁(京大炉),関 義親(理研),清水 裕彦(名大理),吉岡 瑞樹(九大理)
Yasushi Arimoto (KEK), Peter Gertenbort (ILL), ○Sohei Imajo (Dep. of Phys., Kyoto Univ.), Yoshihisa Iwashita (ICR, Kyoto Univ.), Masaaki Kitaguchi (KURRI), Yoshichika Seki (RIKEN), Hirohiko M. Shimizu (Dep. of Phys., Nagoya Univ.), Tamaki Yoshioka (Dep. of Phys., Kyushu Univ.)
 
中性子加速器を実証した。 中性子は磁場中でのスピン制御によってエネルギーを制御できる。高周波磁場と共鳴条件を満たす静磁場の位置でスピンは反転し、その位置の磁気ポテンシャル分だけエネルギーを交換する。勾配磁場中で高周波の周波数を変化させれば、中性子の加減速量を選ぶことが出来る。最大磁場1T、0.5T/25cmの勾配をもつ磁場を、異方性中間磁極を用いた電磁石で実現した。また30MHzから15MHzまで連続的に共振がとれるRFキャビティを作成した。これらを組み合わせて中性子加速器を構築した。 フランスILLの超冷中性子を用いて加減速を実証した。パルス化された中性子が速度に応じて拡散するのを適宜減速し、再集束させることに成功した。 これを用いれば、超冷中性子を発生源から実験位置まで高密度に輸送することが可能になり、中性子電気双極子モーメント測定実験などに強力な手段になる。
 
15:50-16:10 
WELR09
p.97
J-PARC MRで観測されているヘッドテイルビーム不安定性とフィードバック装置を使ったその抑制
HEAD-TAIL INSTABILITIES OBSERVED AT J-PARC MR AND THEIR SUPPRESSION USING A FEEDBACK SYSTEM

○陳 栄浩,栗本 佳典,帯名 崇,岡田 雅之,高田 耕治,飛山 真,外山 毅(高エネルギー加速器研究機構),菖蒲田 義博(日本原子力研究開発機構)
○Yong Ho Chin, Yoshinori Kurimoto, Takashi Obina, Masashi Okada, Koji Takata, Makoto Tobiyama, Takashi Toyama (KEK), Yoshihiro Shobuda (JAEA)
 
This talk presents analysis of head-tail instabilities observed at the J-PARC MR (Main Ring) and their suppression using a feedback system. At the MR, we have been observing serious instabilities during the injection and at the onset of acceleration. Without the feed-back system on, nearly one third of particles are lost due to the instabilities at the beam power of 120kW. At the injection, the instabilities take place on the horizontal plane by injection errors resulting in a large displacement of injected bunches and due to collateral kicks of already injected bunches by the kicker fields. On the other hand, the instabilities at the onset of acceleration develop on the vertical plane from the noise level. Measurements of the horizontal oscillation initially suggested higher-order head-tail modes excited during the injection. However, the detailed analysis unveils that a simple dipole mode can have temporal appearance of higher-order head-tail modes due to a large chromaticity. The comparison between the measurements and the theoretical prediction shows that they have very similar behaviours.
 
特別講演 (8月8日(水) 大学会館講堂)
18:10-19:10 
WESP01
極端パルス加速器開発と科学・産業への応用展開
Development and Application of Accelerators for ultra short pulses to Scientific and Industrial Uses From Fundamental Research to Industrial Application
○田川 精一(大阪大学 産業科学研究所)
○Seiichi Tagawa (The Institute of Scientific and Industrial Research, Osaka University)
 
1895年のレントゲンによるX線の発見から1898年のキューリー夫妻によるラジウムの発見までの数年間にベクレルによる放射能の発見、トムソンによる電子の発見など放射線・放射能の最も重要な発見がなされ、その直後にすぐX線やラジウムの医療応用が開始され、その後、今日まで、治療と診断の両分野で医学に多大の貢献をしてきた。加速器は1930年代に核物理の研究手段として開発されてきたが、放射線の産業利用の方は、医療に半世紀遅れ、1950年代になり、チャールスビーやドールによって見出された高分子の架橋反応による高分子の耐熱性向上をベースに電子線照射装置を用いて拡大していった。その後、加速器・放射性同位元素を用いた放射線利用は順調に増加していった。国内では基礎研究に関しては国力の増強に伴い、大型加速器の建設が進み現在に至っている。また、放射線から量子ビームへということで、放射線源と放射線利用の多様化が進み、放射線利用のすそ野が大きく拡大し、非常に多くの研究者が大型加速器の量子ビーム(放射線)を用いた研究を行える時代が来ている。しかし、研究を支える研究者・学生が所属している大学・研究所における加速器を用いた研究・教育環境はかなり厳しい状況になっている。また、多様な放射線利用の研究が展開されているが、放射線の経済効果という観点からは工業利用が非常に大きく、医療分野への利用がそれに続き、農業・生物分野への応用はまだ小さい。放射線利用の全体像を概観した上で、放射線の経済効果という観点からは最も大きな分野になっている半導体の微細加工及び最も多くの加速器を利用して国民生活に大きく貢献している医療の両分野での極端パルス加速器を用いた研究について紹介する。医療では放射線照射直後に水、DNAのイオン化等で生じる反応中間体の直接的な測定による反応機構の解明と実際の医療との隔たりは非常に大きいが、半導体の微細加工では20 nm以下のパターンを1 nmの精度で、非常に効率よく加工して行くためには極端パルス加速器を用いたナノ空間反応の解明が不可欠になっている。特に、数年後にせまった放射線(極端紫外光)を用いた半導体の量産は史上最大規模の放射線利用技術になる。しかも、その実現の鍵を握る極端パルス加速器を用いたナノ空間反応の解明は現在だけでなく、将来の10 nm以下の量産プロセスではさらに大きな課題となっているので、使いやすく、性能の高い極端パルス加速器の開発が強く望まれている。
 
放射光・FEL・ERL1 (8月9日(木) 大学会館講堂)
8:50 - 9:10 
THUH01
p.102
SACLA加速器構成機器の問題点と改善
Problem and Improvement of Accelerator Components at SACLA

○大竹 雄次(理研・XFEL研究開発部門)
○Yuji Otake (XFEL Research and Development Division)
 
SACLAは、2011年7月に0.06nmのX線レーザーの増幅に成功してユーザー運転中である。実用的な運転をするには、入射部高周波空洞の位相安定度が短期・長期とも50~100fs に収まる必要があり、大電力高周波源のトリップが1時間に1回程度以下に収まる必要がある。現状では、運転員による1時間に1~2回の入射部の微調整で24時間運転を実現しており、先の安定度はある程度満足している。しかしながら、建設が終了した昨年4月から以下に示す問題があることが判ってきた。1.運転員による定期的な微調から判るように、加速器の機器が0.1度程の温度変化に制御されているにもかかわらず、レーザー強度が外気温の影響を受けてドリフトしている。このようなレーザー強度のドリフトは、水冷の入射部高周波空洞や低電力高周波要素のなど温度位相安定度が不足していることから生じている。2.大電力高周波源でのサイラトロンのトリップ頻度の問題やインバータ高電圧充電器の故障、クライストロン高電圧トランスの放電がある。3.冷却水系での溶存酸素の増加で酸化銅が析出し、機器の圧力損失が増加する問題も出ている。既に以上の問題の対策として、当該低電力高周波要素の変更やトランスの耐圧強化、インバータ充電器の問題箇所の同定、冷却水系への脱酸素装置の設置などを計画または行っている。本発表では、SACLAの機器の現状と問題点や対策の詳細を述べる。
 
9:10 - 9:30 
THUH02
p.108
SACLAのXFEL強度安定化
Stability improvements of the XFEL intensity at SACLA

○前坂 比呂和,安積 隆夫,稲垣 隆宏,大島 隆(理研播磨),家納 寛,田尻 泰之,田中 信一郎(スプリングエイトサービス(株)),渡川 和晃(理研播磨),長谷川 太一(スプリングエイトサービス(株)),長谷川 照晃,原 徹(理研播磨),松原 伸一(高輝度セ),森永 拓也,山本 龍(スプリングエイトサービス(株)),田中 均,大竹 雄次(理研播磨)
○Hirokazu Maesaka, Takao Asaka, Takahiro Inagaki, Takashi Ohshima (RIKEN SPring-8 Center), Yutaka Kano, Yasuyuki Tajiri, Shin'ichiro Tanaka (SPring-8 Service, Co. Ltd.), Kazuaki Togawa (RIKEN SPring-8 Center), Taichi Hasegawa (SPring-8 Service, Co. Ltd.), Teruaki Hasegawa, Toru Hara (RIKEN SPring-8 Center), Shin'ichi Matsubara (JASRI), Takuya Morinaga, Ryo Yamamoto (SPring-8 Service, Co. Ltd.), Hitoshi Tanaka, Yuji Otake (RIKEN SPring-8 Center)
 
SACLAにおいて,安定にXFELを発生させるには,バンチ圧縮過程で用いるRF加速空洞の短期位相安定度として時間換算で50fs STDが必要で,長期安定度として数100fs以下が目標とされる。そのため,低ノイズ・高精度,かつ,安定なRF源・低電力RF制御・加速空胴の精密温度調整装置などを兼ね備えた加速器システムを構築した。ところが,SACLAで最初にXFELが発振した時点では,マシン調整をしてXFEL強度を高くしても1時間程度で強度が下がるような状況で,長期安定度が不十分であった。調査の結果,とくに入射部のRF位相のドリフトがビームのピーク電流や軌道の変動を引き起こし,FEL強度に影響していることがわかった。たとえば,入射部各所のビーム到達時間を,238, 476, 1428, 5712MHzの各加速空胴,および,到達時間測定用空胴にビームが誘起するRFの位相から測定すると,最大10ps程度のドリフトが見られた。そこで,入射部のRFの安定度を向上させるべく,空胴の温度安定度を0.08K pk-pkから0.01K pk-pkに高精度化するなどの改良を施した。その結果,到達時間測定用空胴にて1ps以下の位相安定度が達成でき,いくつかの調整ノブを運転員が適宜調整しさえすればXFELの強度を数日間かそれ以上にわたり維持することが可能となった。本発表では,これまでにおこなった改良点とその前後のデータ比較,および,今後の数100fsの長期安定度達成に向けた改良予定について報告する。
 
9:30 - 9:50 
THUH03
p.113
広い強度領域でのFELパワー発展測定による増幅率評価
Evaluation of the FEL gain by measurement of the power development in the wide range

○藤本 將輝,沈 杰,川瀬 啓悟,上司 文善,大角 寛樹,矢口 雅貴,加藤 龍好,入澤 明典(阪大産研),柏木 茂(東北大学電子光理学研究センター),山本 樹(高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所),磯山 悟朗(阪大産研)
○Masaki Fujimoto, Jie Shen, Keigo Kawase, Fumiyoshi Kamitsukasa, Hiroki Ohsumi, Masaki Yaguchi, Ryukou Kato, Akinori Irizawa (ISIR, Osaka University), Shigeru Kashiwagi (Research Center for Electron Photon Science, Tohoku University), Shigeru Yamamoto (Institute of Materials Structure Science, KEK), Goro Isoyama (ISIR, Osaka University)
 
我々は、阪大産研Lバンドライナックを高エネルギー電子源とするTHz-FELを用いてFELの物理研究と開発を行っている。増幅率はFELの特性を示す主要な指標であり、FELパワーの時間発展から評価する。従来、増幅率は応答が高速な検出器を用いて単一の光パルスを計測し、その時間波形立ち上がりから評価する。しかし、この手法による増幅率は検出システムのダイナミックレンジの制限からFEL飽和に影響され、さらに検出器の非線形な応答も無視できないことがわかった。そこで、我々は広い強度領域で線形な応答を示すSiボロメータを用いてFELパワー発展を測定する新しい手法を開発している。本手法による増幅率評価の予備的な結果は昨年の学会で報告した。これまで、阪大産研THz-FELでは光共振器内に入射する電子ビーム先頭に小さなパルスが存在し、Siボロメータはこのパルスが放射した光をバックグラウンドとしてFEL光と併せて検出するため、強度の小さなFEL光を計測することが困難であり、測定できるFEL光パルスのエネルギー発展は約6桁に限られた。現在、加速管への電子ビーム入射タイミングを調整することでこのパルスを除去し、より低強度な領域から光パルスのエネルギー発展を約8桁にわたって測定することに成功している。さらに、光パルスの時間構造を考慮した解析からFELパワー発展を求めており、より精確な増幅率の評価を目指している。本学会では新しい増幅率評価の現状について報告する。
 
9:50 -10:10 
THUH04
p.118
高速ボロメータによるFELミクロパルスの時間分解測定
Time resolved measurement of FEL micropulses using fast hot electron bolometers.

○上司 文善,大角 寛樹,入澤 明典,藤本 將輝,川瀬 啓悟,加藤 龍好,矢口 雅貴,徳地 明,末峰 昌二,磯山 悟朗(大阪大学産業科学研究所),Semenov Alexei,Huebers Heinz-wilhelm(IPR, German Aerospace Center),Probst Petra(IMS, Karlsruhe Institute of Technology)
○Fumiyoshi Kamitsukasa, Hiroki Ohsumi, Akinori Irizawa, Masaki Fujimoto, Keigo Kawase, Ryuko Kato, Masaki Yaguchi, Akira Tokuchi, Syoji Suemine, Goro Isoyama (ISIR, Osaka University), Alexei Semenov, Heinz-wilhelm Huebers (IPR, German Aerospace Center), Petra Probst (IMS, Karlsruhe Institute of Technology)
 
我々は、阪大産研のLバンド電子ライナックを用いてTHz自由電子レーザー(FEL)の研究開発を行っている。Lバンドライナックは、FEL用の運転モードでバンチ間隔9.2nsの電子ビームを発生するのに対して、光パルスが光共振器を往復する時間は37nsであり、光共振器内に4つの光パルスが各々独立に成長する。従来、我々はGe:Ga半導体検出器を用いてFELの時間構造を測定してきた。しかしながら、この検出器は時間分解能が約10nsであるため、9.2ns間隔のFELパルス列を分離することが出来ず、4系列のFELパルスを平均した発展過程しか追えない。今回、ドイツ航空宇宙センター(DLR)とカールスルーエ工科大学(KIT)で開発中の窒化ニオブ(NbN)とYBCOの2つの超伝導物質を用いた高速検出器(Hot Electron Bolometer)を用いてFELの時間分解測定を試みた。その結果、FELミクロパルス列の分離を実現し、4系列のFELの発展を独立に追跡することが可能になった。高速検出器を用いて測定した時間スペクトルの解析と、観測したFELの時間発展について報告する。
 
10:10-10:30 
THUH05
p.123
フェムト秒電子ビームを用いたスミス・パーセル効果の研究
Smith-Purcell effect using femtosecond electron beam

○菅 晃一,楊 金峰,小方 厚,近藤 孝文,樋川 智洋,法澤 公寛,小林 仁,吉田 陽一(阪大産研),萩行 正憲(阪大レーザー研),黒田 隆之助,豊川 弘之(産総研)
○Koichi Kan, Jinfeng Yang, Atsushi Ogata, Takafumi Kondoh, Tomohiro Toigawa, Kimihiro Norizawa, Hitoshi Kobayashi, Yoichi Yoshida (ISIR, Osaka Univ.), Masanori Hangyo (ILE, Osaka Univ.), Ryunosuke Kuroda, Hiroyuki Toyokawa (AIST)
 
本研究では、新たな高周波テラヘルツ放射源開発のために、フェムト秒電子ビームと金属回折格子を用いた、スミス・パーセル効果について報告する。スミス・パーセル効果は、金属回折格子の表面に沿って、格子の溝と垂直方向に電子ビームが走るときにおこる電磁波の放射現象である。 実験では、フォトカソードRF電子銃ライナックと磁気パルス圧縮器を用いて、エネルギー:≒30 MeV、パルス幅:≒200 fsのシングル電子ビームを発生した。また、周期長:2 mm、全長:300 mmの金属回折格子から≒1 mm離れて、電子ビームを通過させた。スミス・パーセル効果により放射される同じ次数のテラヘルツ波は、進行方向に対する放射角に応じて周波数が変化することが知られている。そのため、回転する平面鏡を用いて、ある放射角に放射されるテラヘルツ波を選択し、液体ヘリウム冷却ボロメータを備えたマイケルソン干渉計へ輸送し、測定した。その結果、放射角が70°の時、放射角と周期長による数値解析からも予測される、0.23、0.45、0.67 THzに離散的な周波数スパイクの観測に成功した。しかし、放射角によっては、周波数スパイクの位置が数値解析からの予測と一致しない場合もあり、解析を行う予定である。今後、非破壊のビーム診断、電子ビームとメタマテリアルを用いた新たなテラヘルツ波放射デバイス評価・開発に応用展開を行う。
 
放射光・FEL・ERL2 (8月9日(木) 大学会館講堂)
10:40-11:00 
THUH06
KUFELパルスのフリンジ分解自己相関測定と波長安定性評価への応用可能性について
Fringe-resolved autocorrelation measurement of KUFEL and its potential application to estimate the stability of lasing wavelength
○Qin Yu,全 炳俊,Wang Xiaolong,紀井 俊輝,中嶋 隆,大垣 英明(京大エネ研)
○Yu Qin, Heishun Zen, Xiaolong Wang, Toshiteru Kii, Takashi Nakajima, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.)
 
As we reported at the meeting in Tsukuba last summer, we have found, through the numerical experiments, that, even if the pulse duration remains the same, the envelope width of the Fringe-Resolved Autocorrelation (FRAC) signals becomes narrower if the FEL wavelength is not so stable. This implies that, if the pulse duration is already known by a separate measurement, the stability of the wavelength of the FEL may be estimated by the spectrally unresolved method, i.e., FRAC measurement, which may be particularly useful in the mid-infrared range where an array-type photodetector cannot be easily purchased. The physical origin of the envelope narrowing in the FRAC signals can be easily understood if one recalls that the fringe period in the FRAC signals coincides with the wavelength. Therefore instability in the FEL wavelength results in the disappearance of fringes at larger delays in the FRAC signals. Recently, we have carried out intensity autocorrelation (IAC) as well as FRAC of KUFEL, and the pulse duration has been measured to be sub-ps. In this report we discuss how the two autocorrelation measurements, IAC and FRAC, can be used to estimate the wavelength stability of KUFEL.
 
11:00-11:20 
THUH07
p.126
SPring-8蓄積リングにおける新オプティクスの設計とチューニング
Design and machine tuning of new optics for the SPring-8 storage ring

○下崎 義人,早乙女 光一,金木 公孝,高雄 勝,高野 史郎,正木 満博,中村 剛,大熊 春夫,大石 真也,小路 正純,小林 和生,深見 健司(JASRI / SPring-8)
○Yoshito Shimosaki, Kouichi Soutome, Kimitaka Kaneki, Masaru Takao, Shiro Takano, Mitsuhiro Masaki, Takeshi Nakamura, Haruo Ohkuma, Masaya Oishi, Masazumi Shoji, Kazuo Kobayashi, Kenji Fukami (JASRI / SPring-8)
 
蓄積リングオプティクスの低エミッタンス化によるフラックス密度と輝度の向上を目指す。 現状のラティス構造は変えずに磁場強度を変えることにより、低エミッタンス化のための線形及び非線形オプティクスの設計を行った。非線形オプティクスについては、ダイナミックアパーチャーを広げるとともに振幅依存チューンシフトも抑えるよう、遺伝的アルゴリズムを導入して最適化を行った。現在、ユーザー運転と同じ8 GeV運転でマシンチューニングを行っている。X方向エミッタンスが設計値程度まで低減すること、挿入光源からのフラックス密度が増大することを確認した。今後、低エミッタンスオプティクスに低エネルギー運転を導入することにより、昨今の重要なテーマとなっている「省エネルギー化」を行いながら「低エネルギー運転に伴う硬X線フラックス密度の低減を、オプティクスの低エミッタンス化で現在のユーザー運転時程度まで回復させること」についても検討する予定である。 SPring-8蓄積リングにおける新オプティクスの設計の概要と最新のチューニング結果を報告する。
 
11:20-11:40 
THUH08
東北放射光計画niokeru3GeV蓄積リングの概念設計
Conceptual design of the 3 GeV storage ring for synchrotron radiation facility in Tohoku-Japan
○浜 広幸,武藤 俊哉,日出 富士雄(東北大学電子光理学研究センター)
○Hiroyuki Hama, Toshiya Muto, Fujio Hinode (Electron Light Science Centre, Tohoku University)
 
2011年3月11日の東日本大震災から完全な復旧は程遠い状況であるが、東北地方の大学等の公的機関に所属する有志によって「大震災からの復興を含め東北地方全体のため、かつ基礎的な科学技術研究を見据える構想」が検討され東北放射光施設構想を立ち上げた。本構想は、東北地方にある7つの国立大学が連携して、復興とイノベーションの両立を目指す中規模3GeV高輝度放射光施設を設置する新規計画である。真空封止アンジュレータやCバンド加速器等の本邦独自の最新技術を活用して、海外の最先端高輝度リング光源の光源性能に出来る限り早期に追いつくことを目指したものである。 基本設計中の蓄積リングは周長約290mと小規模でありながら水平エミッタンスは1.6nmradであり、建設中のNSLS-IIやTPSなどと比べても遜色ない。ラティスは12回対称の4ベンドセルであり、10本の5m直線部にアンジュレータを設置し数十eVから20keVの波長領域をカバーし、最大輝度は10^20phs/s/mm^2/mrad^2/0.1%b.w.を見込んでいる。偏向磁石は光源として用いず、セルの中央に配した短い直線部にマルチポールウィグラーを挿入し、60-70keV程度までの硬X線光源とする。また遺伝的アルゴリズムを用いて、クロマティシティを補正しながら振幅依存チューンシフトを軽減して、広いダイナミックアパチャーを確保する6極磁石の強度組合せ解を得る事が出来ている。 光源性能実現への戦略とともに光学設計の現状を報告する。
 
11:40-12:00 
THUH09
p.131
HiSOR準周期APPLE-II型可変偏光アンジュレーター
APPLE-II type quasi-periodic variably polarizing undulator at HiSOR

○佐々木 茂美,宮本 篤,後藤 公徳(広大放射光センター),光安 孝史(広大院理学研究科)
○Shigemi Sasaki, Atsushi Miyamoto, Kimiknori Goto (Hiroshima Synchrotron Radiation Center), Takafumi Mitsuyasu (Graduate School of Science, Hiroshima U.)
 
広島大学放射光科学研究センターでは昨年の夏期シャットダウン中にそれまで挿入されていたSPring-8タイプのマルチモードアンジュレーターに替えて、APPLE-II型準周期可変偏光アンジュレーターを挿入した。このタイプの準周期アンジュレーターは1998年にELETTRAに挿入されたのを最初として、ALSとSOLEILで放射光利用研究に供されており、本邦での導入はHiSORが初めてである。このアンジュレーターは磁場周期長78 mm、周期数23、全長約1.8 mであり、最小ギャップ(23 mm)時に水平偏光モードで3.1 eV、垂直偏光モードで6.5 eV、円偏光モードで4.8 eVの光子エネルギーの1次光を発生する。準周期化は、各磁石列で6ヶ所の磁石構造を変えることで実現した。準周期化のパラメーターとしては、r=1.5、tan=√15を採用した。この値は、ELETTRAのアンジュレーターで採用したものと同じであるが、ELETTRAでは準周期位置の磁石を抜くことにより準周期構造を作っており準周期位置での磁場強度が必要以上に小さくなっていたため、本アンジュレーターではビーム軸方向に磁化した磁石ブロックを、ビーム軸から12 mm遠ざけ、より理想に近い磁場分布を得た。 本発表では、各偏光モードでの実際の放射光スペクトルと理想的準周期アンジュレータースペクトルとの違いの原因と、理想に近づけるための可能な対策があるかどうかについて議論する。また、蓄積電子ビームへの影響についても述べる。
 
ビームダイナミクス・加速器理論、加速器技術/高周波加速空胴 (8月9日(木) 共通教育棟大講義室)
8:50 - 9:10 
THLR01
p.134
荷電粒子ビームの表現方法と再現性
Description of charged particle beam

○宮島 司(KEK, 加速器研究施設)
○Tsukasa Miyajima (Accelerator Laboratory, KEK)
 
 加速器内での荷電粒子ビームは、ほぼ同じ速度をもった粒子集団として運動し、集団の重心運動だけでなく集団が作る分布の時間変化を追跡することも重要となる。ビームを構成する粒子数がN個の場合には、6N次元の位相空間での運動を考えることで荷電粒子ビームの運動を記述することができる。例えば、ERLで想定されている77 pC/bunchの電子ビームの場合には、4.8×10^8個の電子が含まれることになるが、解析的、数値的にこれらの電子数を直接扱うのは困難であり、通常調べたい物理に応じて何らかの近似を導入してビームを記述することになる。ビームの重心運動を調べる場合には単粒子で十分であり、また系に何らかの対称性がある場合にはそれを利用して自由度を減らして、ビームを記述することになる。系に対称性がない場合には、系を粗視化して幾つかの粒子を一纏めにして記述するマクロ粒子法が用いられることが多い。このようにビームを近似して表現する方法は幾つもあるが、最も本質的なことは対象とする物理を保持したまま系の自由度を減らすということである。さらに、自由度を減らす過程でどのような物理が失われるかも把握しておく必要がある。本研究では、基本に立ち返ってビームを記述する方法を整理し、粗視化後の自由度の数と元の荷電粒子ビームの再現性との関係について報告する。
 
9:10 - 9:30 
THLR02
p.138
最新の3次元電磁界・荷電粒子運動解析ソフトウェアとその応用
The leading-edge simulation software for 3D EM and charged particle dynamics, and its applications.

○菅野 浩一,田辺 英二(株式会社エーイーティー)
○Koichi Kanno, Eiji Tanabe (AET Inc.)
 
電子・イオンビームの利用は、高精度がん放射線治療装置を始め、非破壊検査装置、次世代放射光源などを含む多種多様な応用において学術、医療、産業など分野を問わずますます高度化・多様化している。そのため、達成すべき目標は非常に高く、直面する課題の複雑さ・難易度は増している。それにもかかわらず他方ではより迅速かつ、確実な成果を得ることが強く要求されている。その状況下において研究・開発に強力なツールの一つが三次元電磁界解析と荷電粒子運動解析ソフトウェアである。新たなソフトウェアの開発と最近のGPUや並列計算などコンピュータのハードウェアテクノロジーの格段の進歩により、今まで現実的ではなかった多様な現象や複雑な解析が行えるようになってきている。本発表では、最新の3次元電磁界解析と荷電粒子運動解析ソフトウェアの現状と、その様々な応用例とともに加速器システム開発における数値解析のメリットと今後の課題について述べる。
 
9:30 - 9:50 
THLR03
p.142
KEK-STFにおけるLバンド9セル空洞の性能試験の最新結果
Recent Results of Performance Tests for L-band 9-cell Cavity at KEK-STF

○山本 康史,加古 永治,宍戸 寿郎,野口 修一,早野 仁司,渡邉 謙(高エネルギー加速器研究機構)
○Yasuchika Yamamoto, Eiji Kako, Toshio Shishido, Shuichi Noguchi, Hitoshi Hayano, Ken Watanabe (KEK)
 
KEK-STFではILCのために開発されたLバンド(1.3GHz)9セル空胴の性能試験(縦測定)が2008年以来、継続的に行われてきた。これまでに測定された空胴は20台以上にのぼり、性能も世界的な水準に達しつつある。空胴の性能評価及び性能向上のために開発されたツールが、温度マッピング/X線マッピング装置、内面検査装置、内面局所研磨装置である。これらのツールを駆使した結果、空胴性能を制限する主たる要因が電子ビーム溶接のビード上に存在する微小な欠陥(defect)であることが判明した。特に、セルの赤道ビード上に存在するdefectは空胴を必ずクエンチに至らせるため、内面検査装置で見つかったものは局所研磨装置により必ず除去される必要がある。KEK-STFでは、defectを持った空胴もそれを除去することによって、性能を大いに向上させることに成功している。また、defectそのものの研究も行われており、特殊な硬化剤によりdefectのレプリカを作成し、レーザー顕微鏡などによりその形状解析を行うことが可能になった結果、defectの形状とクエンチフィールドとの間に相関が認められることも判明した。本学会ではKEK-STFにおける縦測定の最新結果と空胴性能を制限するdefectの詳細な研究結果について報告する。
 
9:50 -10:10 
THLR04
p.150
カンタルコリニアロード終端型 L-band 加速管の設計
Design of Accelerating Structure terminated with Kanthal-coated Collinear Load

○宮原 房史,荒木田 是夫,柿原 和久,紙谷 琢哉,東 保男,肥後 寿泰,松本 修二(高エネルギー加速器研究機構),齋藤一義 一義,桜畠 広明(日立製作所)
○Fusashi Miyahara, Yoshio Arakida, Kazuhisa Kakihara, Takuya Kamitani, Yasuo Higashi, Toshiyasu Higo, Shuji Matsumoto (KEK), Kazuyoshi Saito, Hiroaki Sakurabata (Hitachi)
 
SuperKEKBではルミノシティがKEKBの40倍の8x10^35 [1/cm^2/s]を目標としている。このため入射器には低エミッタンス、大電流のe-/e+ビームが要求される。電子ビームに関しては新たに開発したフォトカソードRF電子銃を用いる。陽電子ビームは3.5 GeV、10 nCの電子ビームをタングステン標的に入射し、発生した陽電子をFlux concentrator(FC)とソレノイドの巻かれた大口径の加速管で構成される陽電子捕獲セクションで捕らえ、ダンピングリングで低エミッタンス化して得る。 FCの後には2本の2.4m-Lバンド加速管と4本の大口径2m-Sバンド加速管を 配置する予定である。これは縦方向と横方向の捕獲効率を高くする事と主加速周波数であるSバンドの5/11倍のLバンドを選択し、両周波数の加速管群間での位相スリップを利用し、ダンピングリングに入射されるべきバケット以外のサテライトを抑制するためである。両端にカプラーを有するLバンド加速管を導入すると導波管部分のソレノイド磁場の落ち込みによる収集効率低下とソレノイドの径が大きくなりコスト、電力、水冷要求が増す問題があるため、出力カプラー部を通常のセル構造にカンタル(Fe-Al-Cr合金)を溶射したコリニアロードに置き換えた加速管を開発中である。カンタルの機械的、電気的特性と加速管の電気的設計を報告する。
 
10:10-10:30 
THLR05
p.154
矩形導波管の真空封止・大電力高周波透過用セラミック窓の開発
Rectangular-waveguide window for a high-power CW UHF input coupler

○惠郷 博文,大橋 裕二,佐伯 宏,佐々木 茂樹(高輝度光科学研究センター)
○Hiroyasu Ego, Yuji Ohashi, Hiroshi Saeki, Shigeki Sasaki (JASRI)
 
SPring-8蓄積リング及びブースターシンクロトロンでは508.58MHzで共振する定在波型空胴でビーム加速を行っている。これらの空胴への大電力高周波投入にWR-1500導波管から同軸へ変換するカプラーを用いており、真空封止状態で高周波を透過させるため、円筒セラミックスが同軸部に接合されている。しかし、その構造からセラミックスが故障破損した場合、カプラー全体を空胴から取り外して交換せねばならず、運転復帰には長い時間を要する。また、廃棄物としても大きい。そこで同軸の空胴結合部と真空封止部を切り離し、セラミックス破損時に窓のみ簡便に交換できるように導波管部で着脱可能なセラミック窓の開発を行った。WR-1500(幅381mm×高190.5mm)導波管でのピルボックス変換型セラミック窓は大型となってしまうため、開発した窓は銅板に開けたR付矩形アイリスに低損失アルミナ(誘電損失<0.0001)を接合した構造とした。その際、窓前後の導波管高を100mmへ低くすることによって小型化と透過周波数帯域の拡大を図った。その結果、VSWRが1.1以下となる帯域は33MHzとなった。SPring-8加速空胴の最大入力電力は連続300kWであるが、将来の投入電力増強を考慮して連続600kWまで透過できるようにした。本発表では、このセラミック窓の高周波・熱構造設計と製作、そして大電力試験の結果について報告する。
 
加速器技術/高周波加速空胴、高周波源、電磁石と電源 (8月9日(木) 共通教育棟大講義室)
10:40-11:00 
THLR06
p.158
SuperKEKB陽電子ダンピングリング用高周波加速空洞の開発
Development of RF Accelerating Cavity for the Positron Damping Ring at SuperKEKB

○阿部 哲郎,竹内 保直,影山 達也,坂井 浩,吉野 一男(高エネルギー加速器研究機構(KEK))
○Tetsuo Abe, Yasunao Takeuchi, Tatsuya Kageyama, Hiroshi Sakai, Kazuo Yoshino (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
ナノビーム・スキームを基にするSuperKEKB主リングへの低エミッタンス・ビーム入射を実現するため、SuperKEKB入射器において陽電子ダンピングリングが導入される。当該ダンピングリングでは加速構造として、KEKB加速器で長期安定運転の実績のあるアレス(ARES)空洞を基にしたUHF帯高次モード減衰型常伝導高周波加速空洞3連構成を採用した。本発表では、試験機として製作した加速空洞に関して、低電力RF測定と高電力試験の結果を中心に報告する。
 
11:00-11:20 
THLR07
p.163
異方性フェライトを用いたクライストロン用集束磁石システム
Ferrite Magnet Focusing System for Klystrons

○不破 康裕,池田 英樹,北原 龍之介,那須 裕司,頓宮 拓,岩下 芳久(京大化研),道園 真一郎,福田 茂樹(KEK)
○Yasuhiro Fuwa, Hideki Ikeda, Ryunosuke Kitahara, Yuji Nasu, Hiromu Tongu, Yoshihisa Iwashita (ICR, Kyoto University), Shinichiro Michizono, Shigeki Fukuda (KEK)
 
ILCの電力供給方式の1つとして提案されているDKS(Distributed Klystron Scheme)では約8000台のクライストロンを使用するため、個々の構成要素の故障率の低減が必須となる。特にクライストロンの電子ビームの集束にソレノイド電磁石を用いた場合には、電磁石電源や冷却水系の故障率低減が大きな課題となる。そこで永久磁石を用いたビーム集束システムを開発し、クライストロンシステムの信頼性向上を目指している。 我々が開発している集束磁石では、磁場の調整機構をかねて磁石部を可動にしてある。そのため磁石部を開いてクライストロンを挿入した後、磁石をクライストロンに近づけて使用することができる。この機構により残留磁化の小さい異方性フェライトの使用が可能となり、製作コストが大幅に抑えられる。また集束には交代磁場ではなく単方向磁場を使用している。これによりパルス立ち上がり時の禁制帯の通過によるビームロスをなくすことができる。 本発表では、製作した集束磁石を用いたDKS用クライストロンの出力試験の結果を中心に発表を行う。
 
11:20-11:40 
THLR08
p.166
J-PARCメインリング 入射キッカー電磁石の性能評価
Performance of the Injection Kicker Magnet for the J-PARC Main Ring

○杉本 拓也,Fan Kuanjun,石井 恒次,松本 浩,外山 毅(高エネルギー加速器研究機構),福岡 翔太(筑波大学大学院)
○Takuya Sugimoto, Kuanjun Fan, Koji Ishii, Hiroshi Matsumoto, Takeshi Toyama (KEK), Shota Fukuoka (Tsukuba University)
 
 J-PARCメインリング(MR)では、これまで分布常数型の入射キッカー電磁石を用いてRCSからの3GeV陽子ビームを入射し、ビームコミッショニングやユーザー利用運転を行って来た。しかし、①励磁パルスのリンギングやテールによるビームロス、②真空容器内部での放電による耐電圧の低下 により、大強度の陽子ビームを安定に入射する事が困難となったため、新たにキッカー電磁石を製作しその性能を評価した。マグネットの構造は集中常数型を採用し、最大35kVのコイル励磁電圧に対して沿面ではなく空間で絶縁距離を確保した。大強度ビームを最小限のロスで入射するために、(1)1%以下のフラットトップ/ボトムの安定性、(2)バンチ間隔300ns以下の立ち上がり時間(0~99%)を要求した。これにはDC~数MHzの帯域でインピーダンスが整合している事が必要で、コイル下流にCR整合回路を配する事で実現した。昨年11月より製作を開始し、12月上旬にサーチコイルによる磁場測定と、ネットワークアナライザによるSパラメータ測定を行った。ビームラインに設置後、陽子ビームを用いた性能評価を行い、以前に比べ安定したビーム入射を確認した。
 
11:40-12:00 
THLR09
p.171
導電性媒質の内部の電磁場の挙動:伝搬と放射、及び、その航跡(ウェーク)
Behavior of Electromagnetic Fields in Conducting Media: Propagation, Radiation and Wake

○佐藤 健次(放医研重粒子),土岐 博(阪大核物セ)
○Kenji Sato (HIMAC, NIRS), Hiroshi Toki (RCNP, Osaka University)
 
抵抗性導体でも完全導体でも、交流においては、導体外部の表面では、電磁波の伝搬と放射とが同時に発生することを、筆者は、理論的に明らかにした。その理論は、JPSJ 81 (2012) 014201に掲載済みであるが、導体内部では、伝導電流のみならず、真電荷もゼロにならない点が新しい。このとき、導体内部の電磁場の挙動を知るためには、「オームの法則」と「連続の方程式」をマクスウェル方程式と組み合わせて得られる、三次元双曲型波動方程式を解く必要があり、それは、その昔、電磁波が伝搬する導電性媒質としてエーテルを想定したときのものと同じである。この方程式から、導体内部では、電磁場のみならず、電荷も電流も波動になるが、三次元の場合の最大の特徴は、伝搬と放射の航跡(ウェーク)が発生することであり、この航跡こそが、従来の「表皮効果」に相当する現象と考えられる。伝搬と放射、及び、その航跡のそれぞれに対して2つのグリーン関数が既に知られてはいるが、これまで、有限の大きさの導電性媒質における解が求められていない。そこで、一本の円柱導体の中央に、「外部電源」として「点電源」を設けた場合の解を求めることにした。近似的な解しか求められないが、それでも、伝搬と放射は、光速で進む波動現象であり、航跡は、従来の「表皮効果」と同じ速度で進む波動現象であることを示すことが出来る。講演では、新しい理論と同時に、近似的な解について、紹介する。
 
技術研修会1 (8月9日(木) 大学会館講堂)
13:00-14:00 
THTL01
KEKBとSuper KEKBのビームモニター
Beam monitors in the KEKB and SuperKEKB rings
○福間 均(高エネルギー加速器研究機構)
○Hitoshi Fukuma (High Energy Accelerator Research Organization)
 
電子-陽電子衝突型加速器における実例としてKEKBのビーム診断技術について紹介する。また、KEKBの高度化として現在建設中であるSuper KEKB加速器のビームモニターについても概要を述べる。具体的には、1)ビーム位置モニター(ボタン電極と電極用チェンバー、信号検出器、ビームを用いたモニター位置の校正、ビームを用いたゲインの校正等)、2)放射光を利用したモニター(干渉計、ストリークカメラ、X線モニター等)、3)高速 ゲートを用いたバンチ毎モニター(チューン・メーター、位置モニター、平衡位相モニター)等について説明する。また、ビームモニターを用いたビーム物理の研究例についても紹介する。
 
受賞講演 (8月9日(木) 大学会館講堂)
16:40-17:00 
THAW01
p.178
パルス6極電磁石による入射方式の開発
BEAM INJECTION SYSTEM WITH A PULSED SEXTUPOLE MAGNET

○高木 宏之(東京大学物性研究所)
○Hiroyuki Takaki (The University of Tokyo, The Institute for Solid State Physics)
 
パルス6極電磁石を用いたによる入射システムは、従来の4台のキッカー電磁石を使ってバンプ軌道を作る入射システムに比べて、入射に必要とするパルス電磁石の数を減らせると共に、キッカー電磁石の個々の製作誤差や磁場追従性等を原因とする入射時の蓄積ビームの重心振動から開放するという大きな利点を持っている。入射時にしか使わず、蓄積ビームの性能に寄与しないパルス電磁石の数を減らせると言うことは、ビーム診断用の計測スペースの確保が制限される小型の蓄積リングにとっては非常に魅力的な提案となりうる。また、現在の電子蓄積型放射光源においては放射光実験中も入射を行うトップアップ運転が主流となっており、放射光強度の安定度を向上させるという点で、入射中の蓄積ビームの重心振動を抑える事は非常に重要となっており、パルス6極入射は有効な手段の1つとなっている。Photon Factoryにおいては、2010年秋からはパルス6極電磁石を使ったトップアップ入射がユーザー運転に使われており(2011年3月に起きた震災後半年間の中断があったが2011年秋より復帰し)大きな成果を上げている。
 
17:00-17:20 
THAW02
p.183
28 GHz 超伝導ECR イオン源の開発
Development of RIKEN 28 GHz SC-ECR Ion Source

○日暮 祥英,大西 純一(理化学研究所),湊 恒明(三菱電機株式会社)
○Yoshihide Higurashi, Junichi Ohnishi (RIKEN), Tsuneaki Minato (Mitsubishi Electric Corporation)
 
理研RIBFにおいてUビームは極めて重要であり、その強度の増強が望まれている。このため、28GHz超伝導ECRイオン源の開発をRIBF完成直後の2007年より開始した。本イオン源では磁場配位に自由度を持たせる為に、軸方向のミラー磁場を生成するソレノイドコイルの数を6個とした。ミラー磁場の最大値は3.8T、径方向の超伝導6極コイルで生成される磁場は真空チェンバーの内壁で2Tである。6極コイルは最大経験磁場が7.3Tと高い上、ミラー磁場により複雑な電磁力を受ける。このためANSYSを用いて構造解析し、コイルの支持構造を見直すことにより所定の磁場強度を達成することができた。超伝導コイルの冷却方式は、プラズマより放射されるX線による熱負荷が数Wオーダーとなるため、LHeによる浸漬冷却を採用した。イオン源停止時は1W以下の熱負荷をGM冷凍機により除去し、さらに2台のGMJT冷凍機を追加設置することにより約8WのX線熱負荷を冷凍する能力をもつ。本イオン源は2009年に完成し、18GHzにて初ビームを生成した。2010年にはRILAC2の完成により移設を行い、ビーム供給と28GHzジャイロトロンの設置運転も実施した。2011年12月には28GHzにて約25μAのU35+ビームを約1.5カ月間RIBFに供給した。現在、約60μAのU35+ビームが得られており、これは従来のイオン源の約30倍である。今後もUビームの大強度化と、ECRイオン源の限界を見極めるべく開発を進めていく。
 
17:20-17:40 
THAW03
p.188
電子陽電子リニアコライダー用加速空洞の研究開発
DEVELOPMENT OF CAVITY FOR ELECTRON AND POSITRON LINEAR COLLIDER ACCELERATOR

○上野 健治(高エネルギー加速器研究機構)
○Kenji Ueno (KEK)
 
 高エネルギー加速器研究機構(KEK)が積極的に参加、推進している国際リニアコライダー(ILC)の開発項目中、空洞製造設備、特に空洞製造技術開発施設と空洞内面研磨仕上げを目的とする電解研磨(EP)設備の建設、これらの運用立上げに取り組んだこと、及びシームレス空洞(3セル)製造設備開発を進めていることについて報告する。  超伝導空洞の製造に関する技術・コスト達成度は、ILCの実現を左右する項目の一つである。近年、KEKにおいても空洞性能の技術上の歩留まりは改善されてきており、これからはコスト上の改善策を検討することが最重要課題である。このため、空洞製造に関する安定した技術確立・リーズバブルなコスト達成の両面から、空洞試作研究をKEK内で取組む目的で空洞製造技術開発施設の建設を進めた。この施設は、KEK内の共用施設とし、5年後、10年後を見据え最新、最適技術を有する機器を選定すること、ILC用としては、本施設が量産向けのモデルルームとなることを基本とした。EP設備についても、空洞性能を決定づける内面研磨技術開発がKEK内で実施できるように設備建設し、基礎的要素開発について研究者自らの意見が反映できるように運用している。 シームレス空洞開発については、3セルのシームレス空洞開発実験装置を開発後、銅パイプにより種々試験を実施して装置の完成度を高めつつ、Nbパイプの開発を進めている。
 
17:40-18:00 
THAW04
p.193
アンジュレータ用In-situ高精度磁場測定装置の開発
Development of in-situ field measurement instrument for undulators

○田中 隆次(理化学研究所XFEL研究開発部門)
○Takashi Tanaka (RIKEN XFEL Research and Development Division)
 
高性能のアンジュレータを開発する上で避けて通ることができない重要な基盤技術の一つが磁場測定であり、一般的には磁石列のギャップに挿入されたホール素子を電子ビーム進行方向へ走査することによって行われる。また、ホール素子の位置変動によって生ずる測定誤差を軽減するため、駆動系には高精度かつ高剛性の石定盤が利用されることが多い。このような“従来型”磁場測定が可能であるためには、磁石列側面からのフリーなアクセスが必要であり、このことがアンジュレータの設計に多大な制約を課している。さらに真空封止型アンジュレータでは、真空槽内部に磁石列を設置した、いわば完成形での磁場測定が、真空槽自体が障害となって実行できないという問題が生ずる。SPring-8では数年前からこの課題に取り組み、レーザー計測を利用した動的な位置フィードバックシステムを備えた、コンパクトで可搬性のある磁場測定装置を開発した。これにより、前述したアンジュレータの設計に関する制約が解除され、より柔軟な設計が可能になっただけではなく、加速器収納部に設置された真空封止型アンジュレータの磁場測定を、測定室などへ搬出することなくその場で行うことができるようになった。本講演では開発された磁場測定システムの概要と、各種アンジュレータへの適用例並びにその有効性について報告するとともに、将来の展望について述べる。
 
18:00-18:20 
THAW05
高精度挿入光源の開発
Development of High Precision Insertion Devices
○村上 豊(元 住友重機械ファインテック株式会社 技術顧問 主席技師)
○Yutaka Murakami (Sumitomo Heavy Industries Finetech, Ltd.(the former job))
 
 従来のアンジュレータ等の挿入光源は、周期磁場を発生する磁石列が大気中にあって真空槽を上下から挟むように配置し、磁石列間のギャップ調整位置決めを可能にした装置である。電子ビームが真空槽内を蛇行すると高輝度放射光を発生するが、真空槽の存在によりギャップ値を狭くできないため磁場の周期長を短くできない。放射光の波長は磁場周期長に比例するので従来型の挿入光源では短波長化の限界がある。  発想を変えて、磁石列を真空槽内に収納すればギャップは大幅に狭め得るので、磁石列の短周期化が可能になり高輝度短波長光の生成に道が開ける。然し、この発想の具現化にはコアー技術となる超高真空技術が加わるがための解決すべき諸問題があった。磁石からの脱ガスの問題やSUS、銅、アルミ材料の選定から品質上あるべき精度と加工法、洗浄、表面処理、取扱方などの諸問題の解決である。その解決に当たって、磁石、真空、機械の三つの基盤技術の同時進行的総合化により対処して、世界で最初に真空封止X線アンジュレータの実用化に成功したのが当時のKEKの北村教授の研究チームであり、機械屋の私も参加しお手伝いをさせていただいた。真空技術の勘所について習得し社内の製作現場への普及と職人の教育を行い、挿入光源のコアー技術である磁石列間のギャップのサブミクロン制御を実現、高精度挿入光源の開発に成功した。この成功は我が国XFEL(SACLA)の成功の大きな原動力となった。
 
放射光・FEL・ERL、加速器技術/制御 (8月10日(金) 大学会館講堂)
8:50 - 9:10 
FRUH01
p.197
SPring-8 蓄積リングの局所的な長直線部ラティス改造
Local Lattice Modification of Long Straight Section in the SPring-8 Storage Ring

○早乙女 光一,藤田 貴弘,深見 健司,金木 公孝,満田 史織,中西 辰郎,大石 真也,岡安 雄一,佐々木 茂樹,下崎 義人,小路 正純,高雄 勝,谷内 友希子,張 超,大熊 春夫(公益財団法人 高輝度光科学研究センター),長谷川 誠,鍛冶本 和幸(スプリングエイトサービス株式会社)
○Kouichi Soutome, Takahiro Fujita, Kenji Fukami, Kimitaka Kaneki, Chikaori Mitsuda, Tatsurou Nakanishi, Masaya Oishi, Yuichi Okayasu, Shigeki Sasaki, Yoshito Shimosaki, Masazumi Shoji, Masaru Takao, Yukiko Taniuchi, Chao Zhang, Haruo Ohkuma (JASRI/SPring-8), Makoto Hasegawa, Kazuyuki Kajimoto (SES)
 
SPring-8蓄積リングには、長さ約30mの長直線部が4カ所存在する。このうちの1カ所に4極トリプレットを2組追加設置して、ラティスの局所的改造を行った。これにより当該長直線部は3分割され、各直線部の中央で垂直ベータ関数を2.5mまで絞ることが可能となった。これらの直線部には、狭ギャップ、短周期の真空封止型アンジュレータが設置され(現状1台)、高フラックス・高輝度の非弾性X線散乱用放射光ビームラインが建設されている。しかし一般には、このような局所的なラティスの改造を行うと、リングの対称性が低下し、ビームの動的安定領域すなわちダイナミックアパーチャーと運動量アクセプタンスが狭くなる。その結果、入射効率が低下してビーム寿命も短くなるため、加速器の安定な運転が妨げられる。我々はこの問題を克服するために、「ベータトロン位相マッチング」、「局所クロマティシティ補正」、「6極電磁石に起因する非線形キックの相殺」という3つの処方を組み合わせて、これらの指針を同時に満足するような局所的長直線部ラティス改造の設計を実施した。改造後のラティスはビーム調整を経て、2011年9月以降、ユーザー運転に適用されている。ビームパラメータはほぼ設計通りであることが確認され、ラティス改造に伴うビーム性能の劣化は認められていない。本報告では、局所的長直線部ラティス改造について、ビーム調整の結果も交えて報告する。
 
9:10 - 9:30 
FRUH02
p.202
KEKデジタル加速器用アインツェルレンズビーム軸方向チョッパー
Einzel Lens Longitudinal Chopper for the KEK Digital Accelerator

○新井 輝夫,高山 健,安達 利一(高エネルギー加速器研究機構),キーワー レオ(総合研究大学院大学),徳地 明(株式会社 パルスパワー技術研究所)
○Teruo Arai, Ken Takayama, Toshikazu Adachi (High Energy Accelerator Research Organization), Leo Kwee Wah (The Graduate University for Advanced Studies), Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Laboratory Ltd.)
 
KEK デジタル加速器は入射器を必要としない10 Hz動作のFirst-cycle Synchrotronである。誘導加速セルに発生するパルス電圧で加速する。旧KEK 500MeV Boosterを3年かけ改装し、昨年より稼働している。1ターン入射条件より、入射ビーム長は5 sec程度に制限される。導入したECRイオン源のプラズマ密度飽和に関する動作特性により、パルスモード運転であってもビーム長はmsec程度になる。リングへの入射前にchoppingは不可欠。このために、横方向収束の目的にイオン源直下流に設置されたEinzel lensの中間電極に印加する正の定電圧(13 kV)に、負のパルス電圧(-5 kV)を必要なビームパルス時間(5 sec)のみ印加する方法でchoppingを実現している[1]。正の定電圧値はEinzel lensの引き出し電圧(10 kV)より大きいので、重畳される負の電圧パルス時間以外にイオン流が下流へ伝搬する事はない。負の電圧パルス生成のため出力6 kV、4段の半導体スイッチで駆動するMarx Generatorが開発され全くの無故障で1年以上に亘って稼働している。  He, Nイオン等でなされたchopper動作試験結果、縦方向choppingに伴うビーム物理上の特徴等について報告する
 
9:30 - 9:50 
FRUH03
p.206
組込みEPICS技術のSuperKEKB加速器制御への応用
Application of Embedded EPICS to SuperKEKB Accelerator Control

○小田切 淳一,古川 和朗,中村 達郎,三増 俊広,久松 広美,照井 真司,中西 功太(高エネルギー加速器研究機構),吉井 兼治,中村 卓也,田中 幹朗(三菱電機システムサービス),林 和孝,出口 久城(三菱電機特機システム)
○Jun-ichi Odagiri, Kazuro Furukawa, Tatsuro Nakamura, Toshihiro Mimashi, Hiromi Hisamatsu, Shinji Terui, Kota Nakanishi (KEK), Kenzi Yoshii, Takuya Nakamura, Mikio Tanaka (MSC), Kazutaka Hayashi, Hisakuni Deguchi (MDT)
 
近年、PLC 等のフロントエンド・コントローラの高機能化が進み、OS を実行する CPU を備えた製品が増えた。その結果、EPICS のコア・プログラムを、これらのフロントエンド・コントローラの上で直接実行すること(組込み EPICS)が可能になった。EPICS のコア・プログラムを被制御機器に近接して配置し、EPICS の標準通信プロトコルである Channel Access (CA) により上位の制御ソフトウェアとフロントエンドを直結することにより、既存のソフトウェア資産を最大限に活用し、開発と維持のコストを低減することが可能になった。このような視点から、現在、構築中の SuperKEKB 制御システムでは、LLRF システムの制御、放射線管理区域の入退域監視システムの状態モニタ、真空機器制御システム、大型特殊電源の上位制御システムとのインタフェースなどに組込み EPICS 技術が応用されている。本稿では、これらの組込み EPICS 技術の SuperKEKB 制御への応用について報告する。
 
9:50 -10:10 
FRUH04
p.209
SPring-8制御用新計算機室の構築
Construction of New Computer Room for SPring-8 Control

○石澤 康秀,杉本 崇,古寺 正彦,増田 剛正,山下 明広,田中 良太郎(公財)高輝度光科学研究センター)
○Yasuhide Ishizawa, Takashi Sugimoto, Masahiko Kodera, Takemasa Masuda, Akihiro Yamashita, Ryotaro Tanaka (JASRI)
 
SPring-8中央制御室から、1GeV線型加速器、8GeVブースターシンクロトロン、8GeV蓄積リング、および53本のビームラインの運転制御を行っている。今回、新たにSPring-8内に建設されたX線自由電子レーザー施設SACLAの運転制御を可能とするために中央制御室を拡張した。SACLA用制御卓等を設置するために、中央制御室の一部として設置・運用してきた制御計算機を移設することにした。また、SPring-8建設後、中央制御室に設置された制御計算機は、増設を繰り返してきており、我々は、計算機の発熱・消費電力・騒音対策を施してきた。今まで実施してきた対策を基に計算機の最適な運用を目指して新計算機室を構築した。 新計算機室は中央制御室に隣接し、空調システム、電源保護、保守性、拡張性を考慮して設計・構築した。冷却は計算機室用28kWエアコンを二重化し、ラック配置とエアフローを最適化することで計算機の安定稼働を維持することを目指した。電源は、瞬低保護電源と商用電源の組み合わせを基本とし、長時間保護が必要なデーターベース機器等に瞬低保護電源と無停電電源を組み合わせた電源とした。また、保守性と将来の拡張性を考慮したラック配置とケーブル配線とした。 新計算機室は2010年夏に機器移設を完了、同年秋より運用を開始し、2012年夏まで障害無く運用を継続している。
 
10:10-10:30 
FRUH05
p.214
FL-net監視システムの開発
The development of FL-net protocol monitoring system

○加嶋 宏章,荒木 夏治,向井 弘幸,仲谷 光司(日立造船株式会社),石井 美保,増田 剛正,植田 倉六(JASRI/SPring-8),福井 達(RIKEN)
○Hiroaki Kashima, Natsuji Araki, Hiroyuki Mukai, Koji Nakatani (HITACHI ZOSEN CORPRATION), Miho Ishii, Takemasa Masuda, Souroku Ueda (JASRI/SPring-8), Toru Fukui (RIKEN)
 
FL-netとは、プログラマブルコントローラ、ディスプレイ、基板、パソコンなどを相互接続するFAネットワークである。FL-netは、UDP/IPを利用しておりその上に独自のFAリンクプロトコルという通信方式を採用している。FL-netは、メーカや機器によって限定されることなく任意の機器が接続できること、マスターレス方式のため特定の機器を切り離すことによってネットワーク全体がダウンしないこと等の利点がある。このような利点によりFL-netは多くの分野で採用されている。一方で、FL-netでは以前から一時的な通信の遅延や機器のネットワーク離脱などの障害が不定期に発生していた。これに対して汎用のネットワーク解析ツールでは、UDP/IPでデータを大量に電送するFL-netのデータ解析を行うことは難しかった。そこで今回、このような問題を解決するため、日立造船はSPring-8と共同して、FL-net監視システムの開発をおこなった。そして、このシステムをSACLAに導入したところ、FL-net監視システムは実際に機器のネットワーク離脱を検出できた。同時に、イベント発生時に保存したパケットデータのファイルを追って解析することで、さらに詳細なFL-netプロトコル上で起きていた現象の解明が行えた。本稿では、FL-net監視システムの機能説明と実際に運用した監視結果について報告する。
 
加速器技術/制御、加速器応用・産業利用 (8月10日(金) 大学会館講堂)
10:40-11:00 
FRUH06
p.218
WebSocketを用いたEPICS Channel Access Clientの開発と実装
Development and Implementation of EPICS Channel Access Client with Real-time Web using WebSocket

○内山 暁仁(総研大),古川 和朗(高エネルギー加速器研究機構)
○Akito Uchiyama (SOKENDAI), Kazuro Furukawa (KEK)
 
(Super) KEKBやRIBFではEPICS(Experimental Physics and Industrial Control System)で制御システムが構築されている。基盤システムにEPICSを用いているメリットの一つに、ハードウェアやコントローラは異なっていても、そのクライアントシステムは同じ手法で開発することが可能であり、ソフトウェア再利用性を高めている、と言う事が挙げられる。一方で従来このケースのGUIはC言語やPythonで書かれたXクライアントやJavaを用いたシステムが主であったが、次世代のクライアントシステムとしてWebSocketを利用したリアルタイムWeb技術に注目している。WebSocketを用いたシステムの一番大きなメリットはネットワークの依存が少なく一般的に利用されているhtml技術を使い、加速器ステータスといった情報を広く提供することが可能になる、と言うことである。 以上を実現する為に必要なEPICS Channel Access 対応なWebSocketサーバを開発する手法として、サーバサイドjavascript言語のNode.jsとそのライブラリであるSocket.IOの組み合わせを選択した。会議では現在のシステムの詳細と実装について報告する。
 
11:00-11:20 
FRUH07
p.222
産総研Sバンド小型リニアックを用いたコヒーレント・テラヘルツ光源の開発と利用
Development of coherent THz source using AIST S-band compact linac and its applications

○黒田 隆之助(産総研),熊木 雅史(早大理工研),平 義隆,田中 真人,清 紀弘,豊川 弘之,山田 家和勝(産総研),坂上 和之(早大理工研),菅 晃一(阪大産研),夏井 拓也,吉田 光弘(高エネ研)
○Ryunosuke Kuroda (AIST), Masafumi Kumaki (RISE, Waseda Univ.), Yoshitaka Taira, Masahito Tanaka, Norihiro Sei, Hiroyuki Toyokawa, Kawakatsu Yamada (AIST), Kazuyuki Sakaue (RISE, Waseda Univ.), Koichi Kan (ISIR, Osaka Univ.), Takuya Natsui, Mitsuhiro Yoshida (KEK)
 
産総研では、Cs-TeフォトカソードRF電子銃を入射器としたSバンド小型リニアック施設において、超短パルス電子ビームを磁気パルス圧縮により生成し、3種類のコヒーレント放射(CSR, CTR, CCR)を利用した高出力テラヘルツ光源の開発と利用研究を行っている。コヒーレント・シンクロトロン放射(CSR)では、その高出力性と広帯域性を利用し、主に封筒内に隠蔽した爆薬・麻薬等の検査をターゲットとしたイメージング研究を行っている。コヒーレント遷移放射光(CTR)では、その微小光源性や低発散性を利用したテラヘルツ時間領域分光システムの開発を進めている。また、誘電体チューブを用いたコヒーレント・チェレンコフ放射(CCR)では、より強力なテラヘルツ光の生成と、それを利用した新たな加速手法への展開を目指し研究を進めている。本年会では、これらコヒーレント・テラヘルツ光源の開発と利用研究の現状について報告する。
 
11:20-11:40 
FRUH08
p.225
超短パルスガンマ線を用いた光子誘起陽電子消滅寿命測定法の開発
Development of photon-induced positron annihilation lifetime spectroscopy using ultra-short gamma ray pulses

○平 義隆(産業技術総合研究所),阿達 正浩,田中 誠一(分子科学研究所),山本 尚人(名古屋大学シンクロトロン光研究センター),加藤 政博(分子科学研究所),豊川 弘之(産業技術総合研究所)
○Yoshitaka Taira (AIST), Masahiro Adachi, Sei-ichi Tanaka (IMS), Naoto Yamamoto (NUSR), Masahiro Katoh (IMS), Hiroyuki Toyokawa (AIST)
 
超臨界水用の配管や原子炉構造材料など、特殊条件下にある金属材料の経年劣化や余寿命には、材料内部に形成される空孔型格子欠陥が重要な影響を及ぼす。空孔型格子欠陥を高感度かつ非破壊で測定する方法として、陽電子消滅寿命測定法がある。陽電子が、空孔型格子欠陥に捕獲されると、その部分は他に比べて電子密度が低いために、陽電子の寿命が長くなる。材料中での陽電子寿命を測定することで、空孔型格子欠陥のサイズに関する情報を得ることが可能となる。 構造材料でより重要な材料内部での空孔型格子欠陥評価のために、高い物質透過性をもつ高エネルギー光子(ガンマ線)が、材料内部で対生成によって陽電子を発生することを利用することで、材料の表面から数センチメートル深部までの分析を行うことが可能となる。この時必要とされるガンマ線のエネルギーは1.0 MeV以上であり、時間幅(パルス幅)は、陽電子の寿命である数100 psよりも十分短くすることが不可欠である。 本研究では、電子加速器を用いて陽電子の消滅寿命よりも十分パルス幅の短い超短パルスガンマ線を発生し、実環境での材料分析を行うことを目的とする。研究の第一段階として、分子科学研究所の放射光源加速器である電子蓄積リングUVSOR-IIを用いてパルス幅5 psの超短パルスガンマ線を発生し、鉛における陽電子消滅寿命を測定した。本年会では、その結果について発表する。
 
11:40-12:00 
FRUH09
p.228
HIMAC可変ビームエネルギー出射制御システムのコミッショニング
Commissioning of variable beam-energy extraction system at HIMAC

○水島 康太,白井 敏之,古川 卓司,佐藤 眞二,岩田 佳之,片桐 健,野田 耕司(放射線医学総合研究所)
○Kota Mizushima, Toshiyuki Shirai, Takuji Furukawa, Shinji Sato, Yoshiyuki Iwata, Ken Katagiri, Koji Noda (National Institute of Radiological Sciences)
 
放射線医学総合研究所(放医研)では、重粒子線治療用加速器HIMACを用いて、1994年から6000件以上の炭素線がん治療を行ってきた。2011年には、より高度な照射線量制御を目的とし、水平・垂直スキャニング電磁石と厚さの異なる複数枚のPMMAプレート(レンジシフター)を用いたレンジシフタースキャニング照射の臨床試験を開始した。さらに2012年秋からは、放医研で開発されたシンクロトロンの可変エネルギー運転をスキャニング照射に適用し、厚いレンジシフターによる不要なビームサイズの拡大を抑えた、ハイブリッドスキャニング照射を開始する予定である。高速なスキャニング照射を実現するために、照射中のビーム強度を高精度で制御する必要があり、これまでの研究で、RFノックアウト法による遅い取り出しを用いたビーム強度フィードバック制御システムを開発した。シンクロトロンの可変エネルギー運転へ対応するため、このビーム強度制御システムと既存のHIMACのビーム出射システムを改良し、2012年秋から可変エネルギー運転とともに適用開始されるビーム強度変調出射のコミッショニングを行った。本研究発表において、そのビーム強度制御システムを用いた可変ビームエネルギー・強度出射制御のコミッショニング結果を示す。
 
加速器技術/電磁石と電源 (8月10日(金) 共通教育棟大講義室)
8:50 - 9:10 
FRLR01
p.232
LHC高輝度アップグレード用超伝導磁石の開発(1) ー 全体計画と高エネ研の開発分担 ー
Development of superconducting magnets for LHC luminosity upgrade (1) - Scenarios and contribution from KEK -

○中本 建志,徐 慶金,飯尾 雅実,荻津 透,木村 誠宏,佐々木 憲一,山本 明,吉田 誠(高エネルギー加速器研究機構),Todesco Ezio,Rossi Lucio(CERN)
○Tatsushi Nakamoto, Qingjin Xu, Masami Iio, Toru Ogitsu, Nobuhiro Kimura, Ken-ichi Sasaki, Akira Yamamoto, Makoto Yoshida (KEK), Ezio Todesco, Lucio Rossi (CERN)
 
CERN-LHC加速器は2010年から運転を開始し、徐々に装置の性能を向上させながらビーム衝突実験を行ってきた。これまでに順調にデータを蓄積しており、近い将来にヒッグス粒子の発見等の新しい成果を上げることが期待されている。しかしその一方で、衝突ルミノシティ(輝度)を向上させるための高輝度化アップグレード計画(High Luminosity LHC Upgrade: HL-LHC)の検討も既に始まっている。これは、現行の設計ルミノシティ(10^34 cm-2 sec-1)に到達すると、それから数年後には統計精度の改善が困難になることが大きな理由である。このため、HL-LHCではATLAS及びCMS実験における衝突ルミノシティを現在の5倍に向上させ、10年間の実験期間で積分ルミノシティ3000 fb-1を達成することを目標としている。この目標を達成するために、入射加速器の改良、クラブ空洞の導入、コリメーターの交換など大掛かりなハードウェアの開発、改良、更新が検討されている。特にその中でも重要なのが、ビーム衝突点超伝導磁石システムの新規開発であり、CERNを中心にCEA-Saclay、米国(BNL, Fermilab, LBNL)及び高エネ研が研究開発、概念設計に参加している。 本報告では、LHC高輝度アップグレード計画の概要と、高エネ研が分担している超伝導磁石の研究開発について発表する。
 
9:10 - 9:30 
FRLR02
p.235
LHC高輝度アップグレード用超伝導磁石の開発(2) ー ビーム分離用大口径双極磁石の概念設計
Development of superconducting magnets for LHC luminosity upgrade (2) - Conceptual design of a large aperture dipole magnet for beam separation

○徐 慶金,中本 建志,飯尾 雅実,荻津 透,佐々木 憲一,山本 明(高エネルギー加速器研究機構),Todesco Ezio(CERN)
○Qingjin Xu, Tatsushi Nakamoto, Masami Iio, Toru Ogitsu, Kenichi Sasaki, Akira Yamamoto (KEK), Ezio Todesco (CERN)
 
Upgrade of the low-beta insertion system for the ATLAS and CMS experiments is proposed in the HL-LHC (High Luminosity LHC upgrade) project. It is comprised of the final beam focusing quadrupoles and the beam separation dipole. KEK is in charge of conceptual design of the new beam separation dipole - D1. Latest design parameters of the new D1 magnet are as follows: a main field of ~ 5 T at 1.9 K with NbTi superconducting technology, a coil aperture of 160 mm, a cos-theta type 1-layer coil fulfilling the required field quality. Since the new D1 is expected to be operated in very high-radiation environment (~10^22 p/m2, ~100 MGy), radiation resistance and cooling scheme are being carefully considered. The collaring-yoke structure is adopted to provide the mechanical support for the NbTi coils. We present the design study of the new D1 magnet, including (i) the very large iron saturation effect on field quality due to the large aperture and limited size of the iron yoke, (ii) the stress management from room temperature assembly to final operation due to the large aperture and corresponding high stress in coil, and (iii) the high-level of heat deposition in the coil due to radiation.
 
9:30 - 9:50 
FRLR03
p.240
CRYRING蓄積リング用パルス幅可変高速キッカーシステム
Adjustable pulse duration fast kicker for the Cryring storage ring

ラヴィヴィル J. P.(シンクロトロンソレイ),○ベークマン ウィリアム,コッソン O.(シグマフィ),ルバスク P.(シンクロトロンソレイ)
J. P. Lavieville (Synchrotron SOLEIL), ○William Beeckman, O. Cosson (SIGMAPHI), P. Lebasque (Synchrotron SOLEIL)
 
ストックホルムのManne Siegbahn Laboratory (MSL) のCRYRING蓄積リングは、反陽子ビームおよびその他の荷電粒子ビームを減速するため、ダルムシュタットのFLAIR加速器複合体に移設される。FLAIRの将来のエネルギー範囲 (30Mev - 0.13 MeV) に適合させるために、加速器のアップグレードが必要である。特に出射用キッカーには、280 ns 以下の立ち上がり時間、1.62 μsから16.3μsまで可変なパルス幅、3200Aまで可変な電流が求められている。これらの仕様の両立は容易ではなく、本システムには新たな技術開発が必要である。SIGMAPHIがSOLEILとの密接な協力によって特別に開発したCRYRING用キッカーは、役割の異なる2台のパルス電源を採用する設計である。まず高圧電源が速い立ち上がり時間を担い、次に低電圧電源によって定められた時間幅のフラットトップを制御し、その後高電圧パルスはフリーホイール回路によって減衰される。各パルス電源がそれぞれ限られた機能を担うため、従来のサイラトロンを用いたPFL/PFNのように50kVの高電圧は必要ではなく、20kVソリッドステートスイッチを使用することが可能である。今回これらの技術課題を達成するための方法と結果について報告する。
 
9:50 -10:10 
FRLR04
p.243
次世代加速器にむけた高磁場超伝導磁石の開発(1) - RHQ-Nb3Alケーブルを用いたレーストラックコイルの開発 -
Development of high field superconducting magnets for future particle accelerators (1) - Development of racetrack coils using RHQ-Nb3Al cable -

○飯尾 雅実,徐 慶金,中本 建志,佐々木 憲一,東 憲男,荻津 透,寺島 昭男,土屋 清澄,山本 明(高エネ研),菊池 章弘,竹内 孝夫(物材研)
○Masami Iio, Qinjin Xu, Tatsushi Nakamoto, Kenichi Sasaki, Norio Higashi, Toru Ogitsu, Akio Terashima, Kiyosumi Tsuchiya, Akira Yamamoto (KEK), Akihiro Kikuchi, Takao Takeuchi (NIMS)
 
高エネ研においては、CERN-LHCアップグレードなどの次世代加速器への応用を見据えた高磁場超伝導磁石の開発研究を行っている。その研究の一つとして、Nb3Alケーブルを用いた13 T級のボア無しサブスケール磁石を試作し、性能評価試験を行う。線材としては、これまで物材機構と共同で開発してきた、加速器応用を目指した急熱急冷法(RHQ)Nb3Al線を用いる。サブスケール磁石は、3台(又は2台)の300 mm長RHQ-Nb3Alコイルに、LBNLで開発された既存のNb3Snコイル2台を組み合わせたハイブリッド型で、いわゆるcommon coil型のコイル配置により効率良く高磁場を発生する設計となっている。現在、試作1台を含む合計3台のNb3Alダブルパンケーキ型レーストラックコイルの製作が完了し、冷却・励磁試験へ向けて磁石の組立及び冷却系の整備が行われている。本講演では、wind & react法で製作されたNb3Alコイルの巻き線、熱処理、含浸などを中心に磁石の開発ついて報告する。
 
10:10-10:30 
FRLR05
p.247
回転ガントリー用超電導電磁石における磁場測定
Magnetic field measurement of the superconducting magnet for rotating gantry

○高山 茂貴,折笠 朝文,高見 正平,渡辺 郁男((株)東芝),岩田 佳之,野田 耕司,白井 敏之,古川 卓司(放射線医学総合研究所)
○Shigeki Takayama, Tomofumi Orikasa, Shohei Takami, Ikuo Watanabe (TOSHIBA), Yoshiyuki Iwata, Koji Noda, Toshiyuki Shirai, Takuji Furukawa (NIRS)
 
現在、重粒子線がん治療装置用超電導回転ガントリーの開発を行っている。本がん治療装置は最大エネルギー430MeV/uの重粒子線をラスタースキャニング照射することで治療を行うが、回転ガントリーを採用することによって照射角0-360度でアイソセンターへ照射することが可能となっている。また、本回転ガントリーにおいて機能結合型超電導電磁石を用いることで、軸長約13 m、回転半径約5.5 mと陽子線用回転ガントリーと同程度への小型化を達成している。今回の超電導回転ガントリーにおいては10台の機能結合型超電導電磁石を用いており、照射領域200mm角を確保するためにアイソセンターに最も近い超電導電磁石ではビームダクトが約φ300の大口径となっている。また、本電磁石ではビームダクトに沿って湾曲した複雑な形状のコイルパターンを採用しており、各電磁石の鉄心構成や導体パターン設計は3次元磁場解析によって詳細な磁場分布を求めることで行った。コイル製作はサーフェイスワインディング法を適用しており、今回、本超電導電磁石の一部に関して製作が完了したため、その磁場分布の測定を実施した。磁場測定は湾曲したビームダクトに沿って詳細に行っており、本発表においては磁場測定結果および、測定値と解析値との比較に関して報告を行う。
 
加速器技術/粒子源、LLRF (8月10日(金) 共通教育棟大講義室)
10:40-11:00 
FRLR06
p.252
理研28 GHz超伝導ECRイオン源のエミッタンス測定
Emittance measurements for RIKEN 28 GHz SC-ECRIS

○大関 和貴,日暮 祥英,大西 純一,中川 孝秀(理研)
○Kazutaka Ozeki, Yoshihide Higurashi, Jun-ichi Ohnishi, Takahide Nakagawa (RIKEN)
 
重イオン加速器の外部イオン源としてのECRイオン源は、そのビーム強度ばかりでなくエミッタンス等、ビームの質も重要な要素となる。理研仁科加速器研究センターでは、加速器の通過効率の向上を通してビーム強度の更なる増強を図るための第一歩として、種々の条件下での28 GHz超伝導ECRイオン源のエミッタンスの測定を行った。テスト実験の結果、U35+イオンビームのエミッタンスが~100π mm mrad (4 rms unnormarized emittance)と、加速器のアクセプタンス~160π mm mradより小さく、大部分のビームが加速できる可能性がある事がわかった。また28 GHzマイクロ波入射によるUビームのエミッタンスが18 GHzマイクロ波入射時と比較してほぼ同じ大きさである事がわかった。通常、高周波数マイクロ波を用いると閉じ込め磁場を強くする必要がある。簡単なモデル計算によるとビーム引き出し部の磁場が高くなるほどエミッタンスが大きくなると予測されていたが、今回の実験ではその傾向が見られず、高周波数を用いることでU35+ビームの輝度を強くできることも判明した。今回は理研28 GHz超伝導ECRイオン源から生成された多価U, Xeビームに関するエミッタンス測定結果の詳細、18 GHzと28 GHzマイクロ波を用いた時のエミッタンスの比較等について報告する。
 
11:00-11:20 
FRLR07
p.255
JAEAでの500-kV光陰極DC電子銃開発
Development of a 500-kV photoemission DC gun at JAEA

○西森 信行,永井 良治,松葉 俊哉,羽島 良一(原子力機構),山本 将博,宮島 司,本田 洋介(高エネ研),飯島 北斗,栗木 雅夫(広大),桑原 真人,奥見 正治,中西 彊(名大)
○Nobuyuki Nishimori, Ryoji Nagai, Shunya Matsuba, Ryoichi Hajima (JAEA), Masahiro Yamamoto, Tsukasa Miyajima, Yosuke Honda (KEK), Hokuto Iijima, Masao Kuriki (Hiroshima University), Makoto Kuwahara, Shoji Okumi, Tsutomu Nakanishi (Nagoya University)
 
次世代ERL放射光源の電子源に対する要求は、エミッタンス0.1~1mm-mrad電流10~100mAの高輝度大電流電子ビームの生成である。このような低エミッタンスビームを生成するには、空間電荷力抑制のため、電子銃の出射ビームエネルギー500keV以上が要求される。 我々は平成20年度より500kV光陰極DC電子銃の開発に着手し、21年度世界に先駆けて550kVのDC印加に成功した。ガードリング付き分割型セラミック管を採用し、サポートロッドからの電界放出電子によるセラミック管へのダメージ回避に成功したことによる。その後、ビーム生成のための電極とNEGポンプを電子銃真空容器にインストールした。22年度には300keVでの電子ビーム生成、23年度には526kVの高電圧印加に成功した。 当面の課題は電子ビーム生成条件下での550kV印加及び、500kVでの8時間連続印加試験であるが、高電圧印加試験中にカソード電極から暗電流が突然発生するという新しい問題に直面している。この原因を、電子銃真空容器内の微細粉塵が、高電圧印加試験中の放電で帯電してカソード電極に付着し暗電流が発生すると推定した。電子銃真空容器内面の低電界化により暗電流問題の解決を図るべく、電極の改造に着手している。 24年度10月にはKEKで建設中のコンパクトERLに本電子銃を移設する予定であり、400keV以上でのビーム生成と大電流試験にも取り組みつつある。開発の現状について報告する。
 
11:20-11:40 
FRLR08
p.260
J-PARC用セシウム添加高周波駆動負水素イオン源の開発状況
Development for J-PARC Cs-seeded RF-driven H- ion source

○山崎 宰春,上野 彰(J-PARCセンター),滑川 裕矢(日本アドバンストテクノロジー),大越 清紀,池上 清,高木 昭,小栗 英知,小泉 勲(J-PARCセンター)
○Saishun Yamazaki, Akira Ueno (J-PARC Center), Yuya Namekawa (Nippon Advanced Technology Co.,Ltd.), Kiyonori Ohkoshi, Kiyoshi Ikegami, Akira Takagi, Hidetomo Oguri, Isao Koizumi (J-PARC Center)
 
現在J-PARC次期計画用イオン源として、ビーム強度:60mA、パルス幅:ビームフラットトップで500μs、繰り返し:25Hzを目標とした、セシウム添加高周波駆動(RF)負水素イオン源の開発を行っている。現在テスト中のRFイオン源は、J-PARCの実機イオン源をベースに様々な改良を施しており、その特徴はSNS (Spallation Neutron Source)で開発された内部RFアンテナを使用、プラズマ生成室の拡大、冷却板付プラズマ電極(PE)の採用、ロッドフィルターマグネットやセシウムオーブンの追加、引出と加速ギャップの短縮、軸磁場補正用(AMFC)コイルの追加等である。ソースプラズマは30MHz-RFを連続的に印加し、2MHz-RFをパルス的に重畳して生成している。セシウムはオーブンを用いて蒸気状にしてプラズマ生成室内に導入している。2MHz-RF電源周波数、PE冷却温度及びセシウム添加温度等の最適化、さらにAMFCコイルとLEBTソレノイドによる軸磁場補正という新しい手法を用いた結果、現在、ビーム電流77mA、さらに1.5πmm・mrad内エミッタンスにおいて90%のビームフラクションを得ており、基本ビーム性能としてはJ-PARC次期計画の要求を十分満たす結果である。
 
11:40-12:00 
FRLR09
p.265
Development and Application of a Frequency Scan-based and a Beam-based Calibration Method for the LLRF Systems at KEK STF
○Mathieu Omet, Ayaka Kuramoto (Sokendai), Hitoshi Hayano, Toshihiro Matsumoto, Shinichiro Michizono, Ken Watanabe (KEK)
 
In preparation for the International Linear Collider (ILC) the Superconducting RF Test Facility (STF) is operated at the High Energy Accelerator Research Organization (KEK), Tsukuba. Thereby calibration methods for the STF RF gun and the Distributed RF Scheme (DRFS) system have been developed and successfully applied. In order to calibrate the ratio of the forward and reflected signal in the waveguide system of the STF RF gun a technique using a resonance circle was developed. The application allowed the reconstruction of the cavity pick-up signal and therewith a stable feedback operation in absence of an actual pick-up antenna. For the determination of the RF phase for on-crest beam acceleration by superconducting 9-cell L band cavities as well as for the calibration of the cavity gradient a method using beam loading effects during an RF phase scan was developed. The optimal position of the waveguide phase shifter step motors and therewith the optimal RF phase for on-crest beam acceleration was found with an accuracy of 3°. A stable feedback operation was established. The cavity gradient was calibrated with an error due to the calibration method less than 5%.
 
技術研修会2 (8月10日(金) 大学会館講堂)
13:00-14:00 
FRTL01
J-PARCのビームモニター
J-PARC Beam Instrumentations and Diagnostics
○外山 毅(高エネルギー加速器研究機構)
○Takeshi Toyama (High Energy Accelerator Research Organization)
 
大強度陽子加速器における実例として、J-PARCのビーム診断技術について紹介する。前半で、ビーム強度モニター、ビーム位置モニター、ビームロスモニター、バンチモニター、ビームプロファイルモニター、チューン・メーター等について概観する。後半では、特に、ビーム位置モニターについて、検出器の設計・製作方法、校正方法、設置方法、処理回路、運用上の技術(ビームベースドアラインメントなど)等について詳述する。
 
加速器応用・産業利用 (8月10日(金) 大学会館講堂)
14:10-14:30 
FRUH10
p.269
高沿面耐電圧セラミックスの開発研究
Research and development on surface flashover voltage of ceramics

○三原 修司(京セラ株式会社),吉岡 正和,松本 浩,栗原 俊一(高エネルギー加速器研究機構),大場 俊幸(日本アドバンストテクノロジー株式会社),前田 岳志(京セラ株式会社)
○Shuji Mihara (KYOCERA Corporation), Masakazu Yoshioka, Hiroshi Matsumoto, Toshikazu Kurihara (KEK, High Energy Accelerator Research Organization), Toshiyuki Ohba (NIPPON ADVANCED TECHNOLOGY Co, Ltd.), Takeshi Maeda (KYOCERA Corporation)
 
アルミナ質セラミックスは、金属との接合が容易で比較的安価であるだけでなく、機械的強度が高く低誘電損失でありベーキングも可能であることから、高電圧絶縁部材や高周波窓として広く使用されている。しかしながら真空中での沿面放電電圧は同一距離でのギャップ放電電圧よりも低いため材料の沿面耐電圧を高める必要があるが、真空中での沿面放電メカニズムが未解明であるため材料自体の本質的な改善が難しい現状である。そこで本研究では、10-9パスカル台の超高真空下でバックグラウンドレベルを下げた高電圧印加試験装置を構築すること、ならびに測定システムの時間分解能をナノ秒オーダーにすることによって、沿面放電の素過程を観測可能とし、極めて短時間で発生する放電現象を測定することに成功した。本開発研究の結果、アルミナに導電性物質を添加することで、放電電界強度を高め放電回数を激減することができた。また、表面近傍のみ更に導電性を高めることで、高電圧印加時のチャージアップを完全に防止でき、放電発生そのものを防ぐことができた。一方、真空中の沿面放電現象はナノ秒オーダーの極めて短時間で発生することが判明した。
 
14:30-14:50 
FRUH11
p.273
コヒーレントX線の短焦点集束システムの開発
Development of the short focal convergence system of coherent X-rays

○佐藤 勇,新富 孝和,石川 紘一,早川 建,田中 俊成,早川 恭史,中尾 圭佐,境 武志,野上 杏子,稲垣 学,桑田 隆生(日本大学),諏訪田 剛,佐藤 政則,道園 真一郎,五十嵐 教之,岩瀬 廣,高橋 由美子(高エネルギー加速器研究機構),遠藤 克己,中川 潤((株)トヤマ),三浦 厚(日本高周波(株)),矢島 健児(三菱マテリアル)
○Isamu Sato, Takakazu Shintomi, Koichi Ishikawa, Ken Hayakawa, Toshinari Tanaka, Yasushi Hayakawa, Keishuke Nakao, Takeshi Sakai, Kyoko Nokami, Manabu Inakaki, Takao Kuwata (nihon-university), Takeshi Suwada, Masanori Satou, Shinishirou Michizono, Noriyuki Igarashi, Hiroshi Iwahe, Yumiko Takahashi (KEK), Katsumi Endou, Jun Nakagawa (toyama), Atsushi Miura (nikoha), Kenji Yajima (MMC)
 
数十keVの空間干渉単色X線を3次元的に集束して、生体組織を照射すると、途中でX線束が組織に吸収されて深さと共に減少しても、生体組織内の単位体積当たりのX線量は、生体表面から深部の集束点まで照射面積が距離の自乗で縮小するので、X線エネルギーを適切に選択することにより、集束点でX線量を最大(ピーク)にすることが出来る。X線焦点の深さとがん組織の場所を一致させると、がん腫瘍部の被爆線量が正常組織より大きいので、がん治療効果が大きいことから、X線の3次元的集束によるがん治療は、重粒子線の生体内の電離損失特性であるブラックピーク特性を活用したがん治療と同様に効果的な治療の可能性を示唆している。一方、X線集束システムはF値が小さい程、正常組織の被爆線量とがん組織の被曝線量との比を大きく出来る。従って、X線集束の短焦点化は、がん治療の治療効果を高めるための必須の条件となる。 X線集束にはラウエレンズや多層膜反射鏡が用いられるが、X線領域では、屈折率nがn<1で非常小さく、また、全反射臨界角も1度以下で、多層膜の反射率も低いので、X線を短焦点集束化は困難であるが、入射角とX線エネルギーを特定し、反射面でブラック条件を満たす条件で楕円ミラーと双曲ミラーを組み合わせた短焦点集束システムを構築すると、X線の短焦点化が可能になる。
 
14:50-15:10 
FRUH12
p.278
茨城BNCT施設用8MeV,80kW陽子加速器の建設
CONSTRUCTION OF A BNCT FACILITY USING AN 8-MeV HIGH POWER PROTON LINAC IN IBARAKI

○小林 仁,栗原 俊一,松本 浩,吉岡 正和,松本 教之(KEK),熊田 博明,松村 明,櫻井 英幸(筑波大学),平賀 富士夫,鬼柳 善明(北海道大学),中村 剛実,中島 宏,柴田 徳思(日本原子力研究開発機構),柱野 竜臣,菅野 東明,井上 典亮,仙入 克也(三菱重工業),田中 進,大場 俊幸(日本アドバンストテクノロジー)
○Hitoshi Kobayashi, Toshikazu Kurihara, Hiroshi Matsumoto, Masakazu Yoshioka, Noriyuki Matsumoto (KEK), Hiroaki Kumada, Akira Matsumura, Hideyuki Sakurai (Tsukuba Univ.), Fujio Hiraga, Yoshiaki Kiyanagi (Hokkaido Univ.), Takemi Nakamura, Hiroshi Nakashima, Tokushi Shibata (JAEA), Tatsuomi Hashirano, Tomei Sugano, Fumiaki Inoue, Katsuya Sennyu (MHI), Susumu Tanaka, Toshiyuki Ohba (NAT)
 
ホウ素を選択的にガン細胞に取り込ませ、外部から中性子を照射してB(n,α)Liの核反応で発生するアルファ粒子とリチウム粒子でガン治療を行うBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)装置の建設を進めている。施設の名称は茨城中性子先端医療研究センター(仮称)で、茨城県のIQBRC(Ibaraki Quantum Beam Research Center)の敷地内(茨城県東海村)に設置される。建物はこの装置に合わせて現在改修が進められている。BNCTは原子炉からの中性子を利用して長年の治療実績が積み重ねられた。病院内に設置できる治療装置として医療側から加速器ベースのBNCT装置の開発が強くのぞまれている。我々は"Hospital Friendly"のBNCT装置を目指し、具体的には極力残留放射能の低い施設を目指して加速器のパラメータを選定した。陽子ビームエネルギーを8MeVとし、ターゲット材料はベリリウムを選択した。治療時間は短いほど良いが目安となる中性子強度がIAEAから提案されており、それを満たす陽子ビームのパワーは80kW(平均電流で10mA)である。加速器のビームダイナミクスはJ-PARCのフロントエンドをベースとしているがデューティサイクルはJ-PARCより1桁近く大きくなる。このため加速管の水冷、ターゲットの熱除去とブリスタリング対策が重要課題となる。本稿では装置の開発状況を報告する。
 
15:10-15:30 
FRUH13
p.282
RF電子銃を用いたMeV超高圧電子顕微鏡の開発
RF Gun Based MeV High-voltage Electron Microscopy

○楊 金峰,菅 晃一,成瀬 延康,近藤 孝文,吉田 陽一,谷村 克己(阪大産研),浦川 順治(高エネ機構)
○Jinfeng Yang, Koichi Kan, Nobuyasu Naruse, Takafumi Kondoh, Yoichi Yoshida, Katsumi Tanimura (ISIR), Jyunji Urakawa (KEK)
 
フェムト秒時間領域での分子や原子集団の動力学研究と高速反応機構の本質的な理解は、物理化学・生物学の分野が関係する重要な研究であり、グリーンイノベーションならびにライフイノベーションの発展に寄与するナノ材料、高効率触媒や生体機能材料の設計・創製、新たな反応経路の設計などの応用科学分野においても極めて重要である。我々は、フォトカソードRF電子銃を用いたフェムト秒MeV電子線回折装置と時間分解MeV超高圧電子顕微鏡の開発を推進し、フェムト秒時間領域・実空間での物質構造変化の動力学や高速反応機構の研究を行っている。 平成22年に、フォトカソードRF電子銃を利用して、エネルギーが3MeV、エミッタンスが0.28mm-mrad、パルス幅は100fsの電子ビームを発生し、その電子ビームを用いたシングルショットMeV電子線回折の測定とフェムト秒時間分解電子線回折の測定に成功した。また、昨年度から、フェムト秒フォトカソードRF電子銃を用いた時間分解MeV電子顕微鏡の原理実証機を開発し、分子や原子レベルでの物質構造変化ダイナミクスの研究を行っている。 本大会では、低エミッタンス・フェムト秒電子線パルスの発生、RF電子銃を用いた時間分解MeV電子線回折装置とMeV超高圧電子顕微鏡の開発現状について報告する。また、それを用いた金属、半導体、絶縁体におけるMeV電子線回折の観測結果や、単結晶シリコンと金における光誘起相転移動力学の研究を紹介する。
 
15:30-15:50 
FRUH14
p.285
超伝導高周波加速方式を用いた電子顕微鏡の開発
The Development of New Electron Microscope Using Superconductive RF Acceleration

○東 直(東大理),古屋 貴章,山本 将博,舟橋 義聖,上野 健治,榎本 收志,神谷 幸秀(高エ研),栗木 雅夫(広島大学大学院先端物質科学研究科),山下 了(東大素セ)
○Nao Higashi (Graduate School of Science/Univ. of Tokyo), Takaaki Furuya, Masahiro Yamamoto, Yoshisato Funahashi, Kenji Ueno, Atsushi Enomoto, Yukihide Kamiya (KEK), Masao Kuriki (ADSM/Hiroshima Univ.), Satoru Yamashita (ICEPP)
 
現在、高エネルギー加速器研究機構(以下KEK)において、超伝導高周波加速方式を利用した電子顕微鏡の開発を行なっている。これは既存の電子顕微鏡における電子加速が静電加速方式を採用しているのに対し、加速器分野では既に一般的な技術となっている超伝導高周波加速方式を採用することで、今までの電子顕微鏡の印加電圧を超え、高分解能を狙うものである。 この開発における課題は、電子顕微鏡に要求される低エネルギー分散(ΔE/E)の実現である。一般的な加速器のエネルギー分散が10-4 程度であるのに対し、高分解能電子顕微鏡に要求されるエネルギー分散は10-7 程度である。この問題を解決するために、世界初の2 モードが共存する加速空洞の開発を進めている。 現在、KEK には産総研から譲渡された300KV 電子顕微鏡が設置されており、この光学系を利用し、電子銃部と加速部の開発に集中することで、原理実証を低コストで行うことが可能となっている。電子銃と加速空洞の基本設計は既に完了しており、現在加速空洞の製作を進めている。 この加速空洞は2モードを共存させるため、制御が困難となる。その問題の一因となる空洞を揺らすノイズへの脆弱性を減らすため、空洞の一部にインゴットから直接削り出した材料を利用している。また、EP(もしくはCP)による表面処理をハーフセルを溶接する前の段階で行うため、それらを十分に考慮した電子ビーム溶接の条件出しを行った。
 
加速器土木・放射線防護 (8月10日(金) 大学会館講堂)
16:00-16:20 
FRUH15
p.289
ILC施設設計の現状
Progress of the ILC CFS Design

宮原 正信,○榎本 収志,細山 謙二(高エネルギー加速器研究機構)
Masanobu Miyahara, ○Atsushi Enomoto, Kenji Hosoyama (KEK)
 
国際リニアコライダー計画(International Linear Collider、略称ILC)の設計は、現在、国際設計チーム(Global Design Effort、略称GDE)によって2012年度末の完成を目指し、新たな工学設計書(Technical Design Report)の作成が進められている。加速器トンネルや実験ホール等ILCの施設設計については、CFS(Conventional Facility and Siting)チームにより、2007年に発行された設計基準書RDR(Reference Design Report)を基に、日・米・欧の3地域のサイト特性に応じた独自の計画案と技術検討が展開されている。 欧米サイトは、敷地が極めて平坦でトンネル深度が比較的浅いため、大電力の高周波発生装置を地上施設にまとめて設置する方式を採用している。これに対し、アジア地域(日本)の計画サイトは起伏に富んだ地形を有する山岳地域を想定しているため、ほぼ全ての加速器装置を大深度の地下構造物内に設置する、独自のシングルトンネル計画案を構想している。本稿では、GDEの施設設計の現状を報告するとともに、アジアチームが提案している各種加速器トンネルや衝突実験ホール地下空洞などの土木構造物、及びヘリウム低温設備や受変電設備、冷却水設備等の基幹設備に関する技術検討や計画案の進展について紹介する。併せて、日本におけるILC施設の建設候補サイトに関する地質調査の進展状況についても報告する。
 
16:20-16:40 
FRUH16
p.292
東日本大震災以降のKEKBリングの周長の変動
Variation of the Circumference of the KEKB Ring after the March 11, 2011 Japan Earthquake

○菅原 龍平,増澤 美佳,大澤 康伸(KEK)
○Ryuhei Sugahara, Mika Masuzawa, Yasunobu Ohsawa (KEK)
 
2011年3月の東日本大震災において、KEKBリングも被害を受け、電磁石などの位置がmm単位で狂ってしまった。現在KEKBリングはSuperKEKBへの改修工事を開始したところであり、SuperKEKBにおいてはリング周長を±10mm(1.7PPM)の精度で合わせる、という厳しい要請がある。KEKBリングの周長は±5mmの精度で合っていたが、この精度は今回の震災のために無くなってしまったと思われる。現在レーザー測距儀やGPSを使って、リング周長の狂いを測定しているところである。 今回はレーザー測距儀を使った、KEKBリングの周長の変動の調査結果を発表する。
 
16:40-17:00 
FRUH17
p.296
研削面上設置架台によるSACLA加速管などの振動結果
Vibration Results of SACLA Accelerator Structures fixed Girders on the Ground Floor

○松井 佐久夫,木村 洋昭,安積 則義,稲垣 隆宏,原 徹(理研)
○Sakuo Matsui, Hiroaki Kimura, Noriyoshi Azumi, Takahiro Inagaki, Toru Hara (RIKEN)
 
SACLA加速器で良質なレーザー発振のためには加速管や電磁石の振動は許容値以内でなければならない。加速器の大きな部分を占めるCバンド加速管(長さ1.8m)用の試験架台を製作し、種々の条件で、振動を測定した。ここでは、コンクリートを研削した面に架台を設置し面タッチを実現することで振動が小さく抑えられることを示し、実機での振動振幅の結果を報告する。  天板水平方向の加振試験では、通常のシムによる調整固定で減衰(1/e)に0.13秒かかったが研削面では0.02秒だった。感圧紙で調べると研削方向に沿って2-3cm間隔で線上でのみ接しているだけで十分な効果があることがわかった。また架台の中に砂を入れたが顕著な効果が見られず採用しなかった。エネルギーが低いため振動の影響が大きいSバンド加速管も含め、実機での加速管の両端の振幅は水平、垂直とも許容値2.3μの一桁下で、隣の加速管との位相にはっきりした相関も見られずキックの増幅も心配なかった。  Q電磁石用架台も研削面の上で、振動は許容値0.7μより一桁以上小さかった。  光源棟ではQ電磁石とBPM用には研削面上の石基台(60×60×74cm、~750kg)を用いている。ここでの振動の伝播方向は床からなので石基台による床の振動の増幅を測定した。水平方向は80Hz付近から少し増幅が見られるが120Hz付近で5db程度、垂直方向は増幅は見られなかった。
 
17:00-17:20 
FRUH18
p.301
PHITSコードを用いたレーザー駆動型イオン加速装置のための線量評価
EVALUATION OF DOSE LEVEL FOR LASER-DRIVEN ION ACCELERATOR USING PHITS CODE

○榊 泰直,福田 祐仁,金崎 真聡,神野 智史,余語 覚文,西内 満美子,上野 正幸,深見 智代(原子力機構),仁井田 浩二(高度情報機構)
○Hironao Sakaki, Yuji Fukuda, Masato Kanasaki, Satoshi Jinno, Akifumi Yogo, Mamiko Nishiuchi, Masayuki Ueno, Tomoyo Fukami (JAEA), Koji Niita (RIST)
 
原子力機構関西では、高強度短パルスレーザーとクラスターターゲットとの相互作用が作り出すプラズマから高エネルギーイオンを加速する手法の開発を進め、コンパクトなレーザー駆動イオン加速器の開発に挑戦し、これまでにHe+Co2ガスを用いたマイクロサイズのクラスターにて、核子当たり50MeVを超えるHeの加速に成功している。 このように、レーザー駆動イオン加速は非常にコンパクトなサイズで、非常に高エネルギーのイオン加速ができるという反面、加速時に用いるプラズマから同時発生され、大きなノイズ源となりえる『大量の電子線・X線などの複合放射線場』が存在する。レーザー駆動型加速器を実現するためには、放射線発生装置として日本政府の許認可を受けなくてはならないが、このような複合的な放射線場によるノイズによって、放射線発生装置としての線量評価方法が確立できずにいる。 そこで我々は、『実験時にガラス線量計で得られた積算線量』と、他施設の放射線線量評価で実績のある『原子核モデルや評価済み核データライブラリを用いたモンテカルロ型粒子輸送コード(PHITSコード)の計算結果』を真値として比較解析することで、レーザー駆動型イオン加速装置の運転時線量の管理手法を確立することを考えているので報告する。
 
加速器技術/ビーム診断、レーザー (8月10日(金) 共通教育棟大講義室)
14:10-14:30 
FRLR10
p.304
SPring-8線型加速器六電極BPMシステムの開発
Development of Six-electrode BPM System in SPring-8 Linac

○柳田 謙一,鈴木 伸介,増田 剛正,花木 博文(公益財団法人高輝度光科学研究センター)
○Kenichi Yanagida, Shinsuke Suzuki, Takemasa Masuda, Hirofumi Hanaki (Japan Synchrotron Radiation Research Institute)
 
SPring-8線型加速器では主にトップアップ運転時に於けるビーム監視機能を増強させるため、非破壊型六電極ビーム位置モニタ(BPM)システムを整備している。1台の六電極BPMを使用した場合、ビーム拡がり(サイズ)に関係する物理量である二次モーメントが測定可能であるが、複数地点に設置された六電極BPMから得られる複数地点の二次モーメントを測定すれば、分散部、非分散部によらずビームサイズを演繹することも可能となる。新規に開発した機器は円形断面六電極BPM、准楕円形断面六電極BPM、低ノイズ六回路BPM信号処理回路及び128ビットディジタル入力ボードである。非分散部用の円形断面六電極BPMは昨年度にL4ビーム輸送系に設置され、ビーム試験が行われた結果、理論とほぼ一致する性能を有することが判明した。分散部用の准楕円形断面六電極BPMは今年3月に納入され、今夏にLSビーム輸送系に設置される。低ノイズ六回路BPM信号処理回路は一次モーメントで0.001mm程度、二次モーメントのビームサイズ換算で0.1mm程度の測定を行うために開発された。また、16ビットディジタル信号×6系統のデータを取得するために128ビット入力ボード(OPT-VME)を開発した。上記以外の機器は四電極BPM用の機器がそのまま流用される。
 
14:30-14:50 
FRLR11
p.309
J-PARC RCSにおけるバイブレーションワイヤモニターの研究開発
Research and Development of vibration wire monitor at J-PARC RCS

○岡部 晃大,吉本 政弘,山本 風海,佐伯 理生二(原研)
○Kota Okabe, Masahiro Yoshimoto, Kazami Yamamoto, Riuji Saeki (JAEA)
 
J-PARC 3-GeV RCSなどの大強度加速器ではビームロスに伴う加速器の放射化がビーム強度の上限を制限する。そのため、将来のビーム強度増強に備え、RCSではビームロスの原因となるビームハローの測定、並びにその測定手法の開発が積極的に行われている。しかし、ビームハローの強度はコアに比べ非常に小さく、測定器付近に存在する残留電子などによるノイズの影響からビームハローの詳細な評価をすることが困難であった。 そこでJ-PARC RCSモニターグループでは新たなビームハロー計測モニターとして、バイブレーションワイヤーモニター(VWM)に着目し、その研究開発が進められている。VWMは振動するワイヤーの周波数がその張力に依存することを利用し、ビームとの相互作用により加熱されたワイヤーの張力の変化を、ワイヤー両端の測定子からピックアップした周波数の変化から求めることでビーム電流値を特定する。VWMはビーム電流値の分解能が数pAと非常に小さいこと、原理的にビーム電流を直接ピックアップしないため自由電子等によるノイズの影響を受けにくいことから将来のビームハロー用モニターとして期待されている。 現在、VWMの基本的な特性を調べるため、電子銃を用いた性能評価実験がJAEAで行われている。本発表ではVWMの性能評価実験の結果を紹介し、その大強度陽子加速器におけるビームハローモニターとしての有用性について議論する。
 
14:50-15:10 
FRLR12
p.313
MARSを用いたJ-PARC MRのベータトロンチューンの解析
Analysis of betatron tune in J-PARC MR by means of MARS

○山田 秀衛(KEK / J-PARC)
○Shuei Yamada (KEK / J-PARC)
 
J-PARC MR は2008年5月からビーム運転を開始し、ニュートリノ実験施設及びハドロン実験施設にビームを供給している。J-PARC MRにおけるtune測定には、1) tune の時間変動を精度よく測定したい、2) 加速後半では Strip-line Kicker の蹴り角が小さく tune の測定が困難、という課題がある。離散的にサンプリングされた信号の周波数と振幅を精度よく求める際に、信号に対して周期性以外の仮定せずに周波数成分を求める手法としては FFT がしばしば用いられる。一方、信号がある決まった数の周波数成分だけを含むことを仮定することで、FFT よりも少ないサンプル数でも精度よく周波数と振幅を決定できる手法として Movable Auto-Regressive System (MARS) が提案されている。 J-PARC MR の tune の解析に MARS を用いることで、1) FFT よりも少ないサンプル数で FFT と同じ周波数分解能が得られ、tune の時間変動をより高い周波数まで解析が可能となり、2) サイドバンドが弱く FFT ではtune の解析が困難な場合でも解析が可能となったので報告する。
 
15:10-15:30 
FRLR13
p.317
SuperKEKBに向けたDAW型RF電子銃用ファイバーレーザーの開発 (2)
Fiber laser development of DAW RF gun for SuperKEKB (2)

○周 翔宇,吉田 光宏,夏井 拓也,小川 雄二郎(高エネルギー加速器研究機構)
○Xiangyu Zhou, Mitsuhiro Yoshida, Takuya Natsui, Yujiro Ogawa (KEK)
 
SuperKEKB増強では非常に高いルミノシティーを得るに対して低エミッタンス化のため、電子陽電子入射器も高電荷・低エミッタンスの電子源として、RF電子銃を導入している。必要な電荷の5nCとエミッタンスの10μmにより、数十ps 以上の長い初期バンチ長が必須であり、レーザーシステムも数十psのパルス長が必要である。 フォトカソードとしては長期間の営業運転に対応するため、十分な量子効率と寿命を合わせ持つIr5Ceカソードを第一候補として選択した。計算により、安定なパルスエネルギーmJレベルのレーザー光源が要ることがわかる。 また,時間方向にガウシアン分布にするより,一様分布にしたほうエミッタンスが抑制されることも確かめている。従って、レーザーパルスの周波数領域の制御によりレーザーパルスの広帯域化が望ましい。 これに合わせレーザーシステムも中心波長260nm、パルス長約30ps、パルスエネルギー1mJのレーザーを開発している。イッテルビウム(Ytterbium:Yb)ファイバー発振器からの種光源を用いてファイバー増幅器と固体増幅器により多重アンプを行い、2段階の第2高調波発生(SHG)による2バンチ、50 Hz繰り返し、258 nm紫外超短光源の開発を行う。Ybは上準位寿命が長いため励起効率が高く、さらに帯域が広いため、周波数方向の制御により効率的にバンチ圧縮を行うための時間構造を変化させる事ができると期待できる。
 
15:30-15:50 
FRLR14
p.322
3次元4枚鏡レーザー蓄積共振器を用いたガンマ線生成実験 共振器制御システムの開発
Gamma-ray generation experiment using the 3D 4-mirror optical resonant cavity: Development of cavity control system

○田中 龍太,赤木 智哉,栗木 雅夫,高橋 徹,吉玉 仁(広島大),荒木 栄,浦川 順治,大森 恒彦,奥木 敏行,清水 洋孝,照沼 信浩,舟橋 義聖,本田 洋介(高エ研),坂上 和之,鷲尾 方一(早稲田大)
○Ryuta Tanaka, Tomoya Akagi, Masao Kuriki, Tohru Takahashi, Hitoshi Yoshitama (Hiroshima univ.), Sakae Araki, Junji Urakawa, Tsunehiko Omori, Toshiyuki Okugi, Hirotaka Shimizu, Nobuhiro Terunuma, Yoshisato Funahashi, Yosuke Honda (KEK), Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio (Waseda univ.)
 
国際リニアコライダーの偏極陽電子源として,レーザーコンプトン散乱からの偏極ガンマ線を用いる方法がある.すでにこの方法で偏極陽電子生成は実験的に検証されており,実用化のためにはガンマ線収量の増大が課題となっている.ガンマ線収量は電子ビームとの衝突点でのレーザー光強度に依存し,我々はレーザー光強度増大のためにレーザー蓄積共振器の開発を行っている. これまでにKEK-ATFのDRに導入された2 枚の鏡で構成された増大率 760 倍のFabry-Perot 型レーザー蓄積共振器を用いガンマ線を生成に成功している.2011年秋に更なるガンマ線収量増大のため,3次元な構造をしたリング共振器の“3次元4枚鏡レーザー蓄積共振器”を新たに導入した.これにより,増大率が1950倍まで上がったが,共鳴維持をするためには共振器の長さを100pm以下と高い精度での維持が求められることになった.この制御のために,3次元4枚鏡共振器の左右の円偏光に対して異なった共鳴条件をもつ特性を用いた新しい制御を実装し,共鳴の維持に成功した.これにより,ガンマ線生成に成功し,ガンマ線収量もFabry-Perot型共振器を用いたときを越える結果を得た. レーザー蓄積共振器の制御システムについて報告する.
 
加速器技術/レーザー、真空 (8月10日(金) 共通教育棟大講義室)
16:00-16:20 
FRLR15
p.325
3次元4枚鏡レーザー蓄積共振器を用いたガンマ線生成実験-マルチバンチガンマ線生成-
Gamma-rays generation experiment using the 3D 4-mirror optical cavity: Generation of multi-bunch gamma-rays

○赤木 智哉,栗木 雅夫,高橋 徹,田中 龍太,吉玉 仁(広島大),荒木 栄,浦川 順治,大森 恒彦,奥木 敏行,清水 洋孝,照沼 信浩,舟橋 義聖,本田 洋介(高エネ研),坂上 和之,鷲尾 方一(早稲田大)
○Tomoya Akagi, Masao Kuriki, Tohru Takahashi, Ryuta Tanaka, Hitoshi Yoshitama (Hiroshima Univ.), Sakae Araki, Junji Urakawa, Tsunehiko Omori, Toshiyuki Okugi, Hirotaka Shimizu, Nobuhiro Terunuma, Yoshisato Funahashi, Yosuke Honda (KEK), Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio (Waseda Univ.)
 
レーザーコンプトン散乱を利用したILC偏極陽電子源の開発を行なっている。パルスレーザーを光共振器内に蓄積し、レーザー光強度を増大させると同時に衝突点において集光することによってレーザーコンプトン散乱で生成されるガンマ線数を増加させている。我々はすでにKEKのATF加速器において2枚鏡レーザー蓄積共振器を用いたガンマ線生成に成功しているが、さらなるガンマ線生成数の増加のためレーザー光強度の増大率と小さいレーザーサイズを同時に達成することが出来る3次元4枚鏡光共振器を設計した。この共振器は増大率1900とレーザーサイズ15umを目標値として設計し、2011年秋にATF加速器のビームラインに設置した。この発表では3次元4枚鏡共振器を用いた、ATFのマルチバンチ電子ビームとのレーザーコンプトン散乱実験結果について報告する。
 
16:20-16:40 
FRLR16
p.328
レーザー駆動誘電体加速器;放射線生物学研究への応用を目指して
Laser Driven Dielectric Accelerator for Radiation Biology Researches

○小山 和義,アイミドラ アイミアディング(東大原子力専攻),松村 陽介(東大原子力国際専攻),上坂 充(東大原子力専攻),吉田 光宏,夏井 拓也(高エネ研加速器)
○Kazuyoshi Koyama, Aimierding Aimidula, Yosuke Matsumura, Mitsuru Uesaka (Univ. Tokyo), Mitsuhiro Yoshida, Takuya Natsui (KEK)
 
レーザー駆動粒子加速器は高電界加速が可能であることから、プラズマを利用する方式と誘電体周期構造を利用する方式の研究開発が進められている。誘電体を使う方式はバンチの電荷量がfCと少ないもののレーザー出力はプラズマ方式の1/100程度で済むので数十kHz以上の高繰り返し動作が可能である。またビーム径はレーザー波長程度である。マイクロビーム、超短パルス、高繰り返しの特徴を生かした応用の一つに、放射線生物学研究がある。我々は,製作の容易さ等を考慮して、放射線生物学研究への応用を想定して、一次元構造のレーザー駆動誘電体加速器の設計を進めている。出力エネルギーは試料セルの構造で左右されるが数百keVから1MeVの範囲である。初期電子の速度は構造の周期L、レーザー波長λで決まりv/c=L/λである。加速につれてLを大きくする必要がある(λに漸近)。光の反射・干渉なども考慮した設計は、シミュレーションコードを用いて行っている(ポスター発表予定)。加速に必要なレーザーは、加速チャンネルの口径を0.5μm×30μm、長さを3.3mmとしてパルス幅が1psで出力が7GWのビームを30本である。これはファイバーで伝送可能である。加速に必要なファイバーレーザー開発も行っている(ポスター発表予定)。 講演では研究の概要と設計にあたっての考え方、課題の整理などを中心に述べる事とし、詳細はポスターで発表する。
 
16:40-17:00 
FRLR17
p.331
ニュースバル偏光ガンマ線ビームライン
NewSUBARU Polarized Gamma-ray Source

○宮本 修治,天野 荘,橋本 智,北川 靖久,小泉 昭久,長谷川 尊之,関岡 嗣久,川田 健二(兵庫県立大),宇都宮弘章 宇都宮弘章,山県 民穂,秋宗 秀俊(甲南大学),早川 岳人(原子力機構),嶋 達志(阪大核物センター),大熊 春夫,濱田 洋輔(高輝度センター),浅野 芳裕(理研),今崎 一夫(レーザー総研),Bernard Denis(Ecole Polytechnique LLR)
○Shuji Miyamoto, Sho Amano, Satoshi Hashimoto, Yasuhisa Kitagawa, Akihisa Koizumi, Takayuki Hasegawa, Tsuguhisa Sekioka, Kenji Kawata (Univ. of Hyogo), Hiroaki Utsunomiya, Tamio Yamagata, Hidetoshi Akimune (Konan Univ.), Takehito Hayakawa (JAEA), Tatsushi Shima (RCNP), Haruo Ohkuma, Yousuke Hamada (JASRI), Yoshihiro Asano (RIKEN), Kazuo Imasaki (ILT), Denis Bernard (Ecole Polytechnique LLR)
 
 ニュースバル電子蓄積リング(放射光施設)のBL01には、レーザー・コンプトン散乱ガンマ線源を設置している。ニュースバル電子蓄積リング内を周回する電子ビームに、レーザー光を集光照射することにより、レーザー光子を高エネルギー電子で散乱させ、ガンマ線領域の光子を発生している。このガンマ線源は、準単色で、偏光特性が良いなど、他のガンマ線源にない優れた特徴を持つため、光核反応を使った核物理研究や、核変換研究、宇宙核物理研究や非破壊検査に利用している。このガンマ線源の特性測定や、偏光特性を利用した応用研究を行う上で、大型計測機器の導入が困難な現ハッチに替わり、新ガンマ線照射ハッチを拡張した。新ハッチでは、 1.8から76.3MeVの偏光(直線偏光, 円偏光ガンマ線を109から106γ/sのフラックスで発生できる。この新ハッチを用いて、ガンマ線偏光計測、光核反応の偏光依存性測定、ガンマ線ポラリメーターの校正試験等を実施する予定である。
 
17:00-17:20 
FRLR18
p.335
SuperKEKB真空システムの建設 - I
Construction of the SuperKEKB Vacuum System - I

○末次 祐介,金澤 健一,柴田 恭,石橋 拓弥,久松 広美,白井 満,照井 真司(KEK)
○Yusuke Suetsugu, Ken-ichi Kanazawa, Kyo Shibata, Takuya Ishibashi, Hiromi Hisamatsu, Mitsuru Shirai, Shinji Terui (KEK)
 
KEKではKEKBをSuperKEKBへアップグレードするプロジェクトが2010年より始まっている。KEKB真空システムも、真空制御システムの刷新や、主に陽電子リングのビームパイプおよび関連する各種真空コンポーネントの新規製作等が進められている。2011年度までに、陽電子リングアーク部およびウィグラー部の設計がほぼ終了し、約2000 m分についてビームパイプ、ベローズチェンバー等を製作した。これらのアップグレードでは、低ビームインピーダンス化、電子雲不安定性対策の強化が主題になっており、例えば、新規ビームパイプ等は、いわゆるアンテチェンバー型の断面を持っている。また、ビームパイプ内面には、二次電子放出率を抑制するためにTiNコーティングが施される予定で、コーティング装置の設置がKEK内で進んでいる。現在、ビームパイプのトンネル設置前に行うベーキング作業を、これもKEKに整備された装置を使って行っている。制御システムは、EPICSを内蔵したPLCの使用、またCAMACを使わないシステムへの移行を予定しており、機器の整備が進んでいる。今回は、特にアーク部の真空システムの建設状況、ベーキング・TiNコーティングシステムの準備状況、制御システムのアップグレード構想等について発表する。
 
施設現状報告ポスター1 (8月8日(水) 共通教育棟2階・3階ロビー・廊下)
16:10-18:10 
WEPS001
p.339
J-PARC加速器の現状
STATUS OF J-PARC ACCELERATORS

○長谷川 和男(J-PARCセンター JAEA/KEK)
○Kazuo Hasegawa (J-PARC Center, KEK/JAEA)
 
J-PARC施設はリニアック、RCS (Rapid Cycling Synchrotron)、MR (Main Ring synchrotron)、RCSからの3GeVビームを利用する物質生命科学実験施設(MLF)、MRからの30GeVビームを利用するハドロン実験施設(HD)およびニュートリノ実験施設(NU)から構成される。 2011年3月11日の地震でライフラインを含めて施設に大きな被害を受け、運転を休止せざるを得なくなったが、施設利用を再開するため、精力的な点検や復旧作業を実施した。その結果、J-PARCセンターが5月に策定した復旧計画通り12月からビーム調整運転を再開し、年度末にリニアックのクライストロン電源が故障して約2週間停止することになったが、それまでに約2ヶ月の利用運転を行った。24年度に入ってからは、(予稿提出時点まで)大きな故障もなくユーザー利用運転を行い、MLFに210kW、NUに160~200kW、HDに3kW(23年度実績、6月に利用運転予定)と、震災前と同等かそれ以上のビームパワーで供給を行っている。また、大強度の試験では、RCSから400kW(相当)、NUへは220kW、HDへは10kWと、さらなるビーム強度向上に向けた調整も進めている。
 
16:10-18:10 
WEPS002
p.344
理研重イオンリニアックの現状報告
Present Status of RILAC

○池沢 英二(理研仁科加速器研究センター),大木 智則,藍原 利光,山内 啓資,内山 暁仁,小山田 和幸,田村 匡史(住重加速器サービス株式会社),渡邉 裕,加瀬 昌之,上垣外 修一(理研仁科加速器研究センター)
○Eiji Ikezawa (RIKEN Nishina Center), Tomonori Ohki, Toshimitsu Aihara, Hiromoto Yamauchi, Akito Uchiyama, Kazuyuki Oyamada, Masashi Tamura (SAS), Yutaka Watanabe, Masayuki Kase, Osamu Kamigaito (RIKEN Nishina Center)
 
理研仁科加速器研究センターの理研重イオンリニアック(RILAC)は、周波数可変型線形加速器であり、前段入射器のFC-RFQ、主加速器のRILAC、ブースターのCSM、及び18GHz-ECRイオン源で構成されている。最大加速エネルギーは、5.8 MeV/nucleonである。1981年に単独運転での各種実験へのビーム供与を開始し、今年で32年目を迎えた。 単独運転としては、主としてリニアック実験室のe3実験ラインで、2002年に開始された超重元素探索関連の実験が継続されている。 入射運転としては、1986年に、後段の理研リングサイクロトロン(RRC)のための入射器としての運転を開始した。また2006年には、超伝導リングサイクロトロン(SRC)などで構成される理研RIビームファクトリー(RIBF)のための入射器としての運転を開始した。 2011年は東北地方太平洋沖地震のため約3週間は運転を取り止めたが、加速器健全性を確認するための4月から運転を再開し、この年は約6200時間の加速器運転を行った。なお、加速器などの運転に必要な電力は自家発電機である6.5MWコージェネレーションシステム(CGS)の電力を主として利用した。 本発表では、RILACの現状報告として、入射運転状況及び超重元素探索実験における単独運転状況ついて報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS003
p.347
理研AVFサイクロトロンの運転状況
Operation status of RIKEN AVF Cyclotron

加瀬 昌之(理研仁科センター),○柴田 順翔(住重加速器サービス),坂本 成彦,影山 正(理研仁科センター),大城 幸光(東大CNS)
Masayuki Kase (RIKEN Nishina Center), ○Junsho Shibata (SHI Accelerator Service Ltd.), Naruhiko Sakamoto, Tadashi Kageyama (RIKEN Nishina Center), Yukimitsu Ohshiro (CNS, the University of Tokyo)
 
理研AVFサイクロトロン(K70)は、1988年に二番目の理研リングサイクロトロン(RRC)の入射器として完成し毎年3000時間を超える運転をしてきている。AVF-RRC(h5)加速モードで数多くの重イオンビームを生成して実験にビームを供給してきた。またAVF単独利用も考慮され、実験装置CRIBでの核物理実験へ供給と、核化学実験、そしてRI製造に3~7MeV/nのビームを供給してきている。 近年理研RIビームファクトリーが完成し、軽イオンの入射器としてRRCへビーム供給し最終段加速器、超伝導リングサイクロトロン(SRC)で250MeV/nの加速も行っている。 昨年真空問題が発生し真空箱の下Oリングの劣化とみられる真空リークが起こったため、Oリングの交換を実施した。また、2011年4月末に#2ディ電極の冷却水路より真空側にリークが発生したため、交換を実施した。 一方、AVFサイクロトロンの高度化の計画が進行中で中心領域の改造が行われ、これまでのh2運転と共にh1運転が可能になりプロトンに対するエネルギーを上げる計画である。
 
16:10-18:10 
WEPS004
p.350
理研の4台のリングサイクロトロン(RRC, fRC, IRC, SRC)の運転状況
Operation status of RIKEN RIBF Ring cyclotrons, RRC, fRC, IRC, SRC

加瀬 昌之(理研仁科加速器研究センター),○濱仲 誠(住重加速器サービス),熊谷 桂子,坂本 成彦,福西 暢尚,山田 一成,渡邊 裕(理研仁科加速器研究センター),大城 幸光(東大CNS)
Masayuki Kase (RIKEN Nishina Center for Accelerator-Based Science), ○Makoto Hamanaka (SHI Accelerator Service Ltd.), Keiko Kumagai, Naruhiko Sakamoto, Nobuhisa Fukunishi, Kazunari Yamada, Yutaka Watanabe (RIKEN Nishina Center for Accelerator-Based Science), Yukimitsu Ohshiro (Center for Nuclear Study, University of TOKYO)
 
理研に現存する4台のリングサイクロトロンは、1986年完成の理研リングサイクロトロン(RRC,K値540MeV)、と2004 2006年にあいついで完成した中間段リングサイクロトロン(IRC,K値 980MeV)周波数固定型リングサイクロトロン(fRC,K 値 580MeV)そして理研RIBFのメイン加速器の超伝導リングサイクロトロン(SRC,K値2500MeV)である。重イオンリニアック(RILAC)とAVFサイクロトロン(AVF)を入射器として、RRC は、これまでに25年間にわたり二種類の加速モード(AVF-RRC、RILAC-RRC)で多種の重イオンビームを供給しつづけてきた。また2008 年より理研 RIBF の本格的運転が開始され、RILAC-RRC-fRC-IRC-SRCモードにより238Uビームを345MeV/n まで加速し、RILAC-RRC-IRC-SRC モードにより48Caビーム同エネルギーまで加速した。2009 年には、新たにAVF-RRC-SRCモードで14Nビームと偏極重イオンビームを250MeV/nまで加速した。2010年には重イオン入射ライナック(RILAC2)が建設され2011年よりRILAC2-RRC-fRC-IRC-SRCモードにより136Xe,238Uを345MeV/uまで加速した。本論文では主に2011年7月から2012年6月までの一年間のこれら4台のリングサイクロトロンの運転の状況を報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS005
p.353
RCNPサイクロトロン施設の現状
Present Status of the RCNP Cyclotron Facility

○畑中 吉治,福田 光宏,依田 哲彦,斎藤 高嶺,植田 浩史,田村 仁志,木林 満,永山 啓一,安田 裕介,森信 俊平,山本 裕史,鎌倉 恵太,濱谷 紀彰(大阪大学核物理研究センター)
○Kichiji Hatanaka, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Takane Saito, Hiroshi Ueda, Hitoshi Tamura, Mitsuru Kibayashi, Keiichi Nagayama, Yuusuke Yasuda, Shunpei Morinobu, Hirofumi Yamamoto, Keita Kamakura, Noriaki Hamatani (RCNP)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)のAVFサイクロトロン、リングサイクロトロンは2011年度も大きな故障もなく、約6,000時間運転された。ビームは共同利用実験、学部学生教育、民間等との共同研究、核化学核医学等の応用研究に利用されている。最近は、半導体照射、核医学関連の利用が増える傾向にある。2011年度は、東日本大震災に対する支援として、被災地で実施予定であった実験に対してビームタイムを充当した。加速ビーム種としては重イオンビームの要求が多くなり、132Xe29+(核子あたり6.8MeV)ビームをAVFサイクロトロンで初めて加速し、実験に供給した。  加速ビームの高輝度化、高品質化に向けた開発を継続している。主な開発項目は、大強度陽子源、重イオン源、エミッタンス測定の高速・自動化、サイクロトロン磁場の三次元解析とビーム軌道解析、AVFビーム輸送系の強化、AVF取り出し用グラディエント・コレクターの製作、等である。ビームダイナミックス研究としては、AVFサイクロトンのRF一周期に相当する短パルスビーを入射し、シングルターン取り出しの診断等を行っている。
 
16:10-18:10 
WEPS006
京都大学原子炉実験所での陽子FFAG加速器の現状
Presnt status of proton FFAGs at KURRI
○森 義治(京大原子炉)
○Yoshiharu Mori (KURRI)
 
京都大学原子炉実験所の陽子FFAG加速器の現状について報告する。陽子ビームによる入射から負水素イオンを用いた荷電変換入射方式への変更により、当初の100倍のビーム増強を実現した。現在さらなるビーム増強と、加えてビームエネルギーの増加を目指して開発を進めている。また、FFAGでの空間電荷効果、racetrack FFAGによるmuon decay ring、serpentine acceleration等、先進FFAG加速器の研究も進めている。本発表ではこれらについて報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS007
p.356
HIMAC加速器の現状報告
Present status of HIMAC

○片桐 健,水島 康太,古川 卓司,佐藤 眞二,村松 正幸,岩田 佳之,白井 敏之,高田 栄一,野田 耕司(放医研),影山 雄生,川島 祐洋,小林 泉,佐野 悦信(加速器エンジニアリング)
○Ken Katagiri, Kota Mizushima, Takuji Furukawa, Shinji Sato, Masayuki Muramatsu, Yoshiyuki Iwata, Toshiyuki Shirai, Eiichi Takada, Koji Noda (NIRS), Yuhsei Kageyama, Masahiro Kawashima, Izumi Kobayashi, Yoshinobu Sano (AEC)
 
 放射線医学総合研究所でのHIMAC加速器による重粒子線がん治療は,1994年の開始から今年で18年目を迎え,6000人以上もの患者に治療が適用されてきた.これまでの拡大ビーム法による治療に加えて,複雑な腫瘍形状や治療期間中における腫瘍患部の形状や大きさの変化に柔軟な対応が可能となる,3次元スキャニング照射法による臨床治療が2011年5月に開始された.2011年度中には,新治療研究棟に新設されたE室において,この3次元スキャニング法による治療が十数名の患者に適用され,2012年にはさらに新設されたF室のコミッショニング,ハイブリッドスキャニング照射法の試験が開始された.また,この3次元スキャニング照射法のさらなる高度化を目的とした,呼吸同期システムの開発,超伝導回転ガントリーの設計開発も同時に行われている.これらの新たな照射技術に対応するためのHIMAC加速器のR&Dとして,ビーム強度変調制御システムの開発,可変エネルギービーム取り出し法の開発,取り出しビームスピルのリップル除去システムの開発等が行われている.本発表では,これらのHIMAC加速器に関連したR&Dを紹介すると共に,運用の現状を報告する.
 
16:10-18:10 
WEPS008
p.359
放医研サイクロトロン(NIRS-930、HM-18)の現状報告
Present status of cyclotrons (NIRS-930,HM-18) at NIRS

○北條 悟,杉浦 彰則,片桐 健,田代 克人,後藤 彰(独立行政法人放射線医学総合研究所),岡田 高典,髙橋 勇一,中山 竜二,神谷 隆,本間 壽廣(加速器エンジニアリング株式会社),Victor Smirnov,Sergey Vorozhtsov(JINR)
○Satoru Hojo, Akinori Sugiura, Ken Katagiri, Katsuto Tashiro, Akira Goto (National Institute of Radiological Sciences), Takanori Okada, Yuichi Takahashi, Ryuji Nakayama, Takashi Kamiya, Toshihiro Honma (Accelerator Engineering Corporation), Smirnov Victor, Vorozhtsov Sergey (Joint Institute for Nuclear Research)
 
放射線医学総合研究所にはNIRS-930サイクロトロンとHM-18サイクロトロンの2台のサイクロトロンがある。NIRS-930においては、分子イメージング研究のためのRI製造を主目的とし、検出器の開発、基礎物理研究、耐放射線性試験など、様々な目的で利用された。改良開発としては、昨年製作を行った位相プローブとシングルギャップバンチャーを導入した。位相プローブでは、各エネルギーにおけるビーム位相の測定が行われ、これを基に各トリムコイルを用いて等時性磁場の整形が実施された。シングルギャップバンチャーでは、問題となっていた点を改善し、ビーム提供に利用されている。また、NIRS-930は、1974年の運転開始より38年が経ち、老朽化への対策が特に重要であり多々実施されている。なかでも冷却水流量が低下し冷却不足となり、充分な電流が流せず問題となっていたマグネティックチャンネルの更新が行われた。マグネティックチャンネルを更新し充分な電流を流すことにより、高いエネルギーの陽子ビームの取出し効率が改善され、提供可能なビーム強度を上げる事ができた。一方、HM-18サイクロトロンは、1994年の運転開始よりRI製造専用として稼働し続けている。本報告では、これら2台のサイクロトロンの運転状況の報告を行う。
 
16:10-18:10 
WEPS009
p.362
原子力機構-東海タンデム加速器の現状
Present Status of JAEA-Takai Tandem Accelerator and Booster

○松田 誠,阿部 信市,石崎 暢洋,田山 豪一,仲野谷 孝充,株本 浩史,中村 暢彦,沓掛 健一,乙川 義憲,遊津 拓洋,長 明彦(原子力機構)
○Makoto Matsuda, Shinichi Abe, Nobuhiro Ishizaki, Hidekazu Tayama, Takamitsu Nakanoya, Hiroshi Kabumoto, Masahiko Nakamura, Kenichi Kutsukake, Yoshinori Otokawa, Takuhiro Asozu, Akihiko Osa (JAEA)
 
昨年発生した東北太平洋沖地震では、東海タンデムは震度6弱の揺れに襲われた。加速器は16.1MVで運転中であり、地震計のインターロックにより自動停止した。施設内の人員は直ちに建屋外に避難し、けが人の発生はなかった。幸い加速器の圧力タンクからのSF6ガスの漏れも発生せず、また超伝導ブースターのHe冷凍機からのHeガスの放出もなかった。建家に関しては、玄関前が15cmの地盤沈下、ブースター建屋との接合部で約2cmの段差ができるなどの被害が発生した。 加速器の主な被害は、絶縁カラムのセラミクス支柱の35本(総数240本)の破損、加速管へのSF6ガスのリーク、ビームライン機器の移動(特に大型偏向電磁石)等であった。地震の揺れの割に被害が少なかったのは、絶縁カラム全体が免震機構によって支えられていたおかげであり、ダンパー部に約±4cmの移動痕が確認された。復旧作業は、施設の安全確保を優先し、高圧ガス施設点検、タンク内ゴンドラの修理、絶縁カラムの修理から着手し、その後、真空リーク修理、光学機器の再アライメントを実施した。約半年におよぶ復旧作業の結果、9月2日には運転を再開することが出来、最高電圧は18MVを保持している。発表では、被災状況と復旧作業および施設の運転状況と最近のビーム開発について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS010
p.367
筑波大学マルチタンデム加速器施設の震災復興現状と6 MVタンデム加速器導入計画
Status of Post-quake Reconstruction Project and Scheduled Introduction of the 6 MV Tandem Accelerator at the Multi Tandem Accelerator Facility, the University of Tsukuba

○笹 公和,石井 聡,大島 弘行,木村 博美,高橋 努,田島 義一,大和 良広,小松原 哲郎,関場 大一郎,喜多 英治(筑波大学 UTTAC)
○Kimikazu Sasa, Satoshi Ishii, Hiroyuki Oshima, Hiromi Kimura, Tsutomu Takahashi, Yoshikazu Tajima, Yoshihiro Yamato, Tetsuro Komatsubara, Daiichiro Sekiba, Eiji Kita (UTTAC, University of Tsukuba)
 
筑波大学UTTACでは、2011年3月11日の東日本大震災により12UDペレトロンタンデム加速器が損壊したが、復興予算によりタンデム加速器の更新が承認された。現在、2014年の完成を目指して、6 MVタンデム加速器の設計・開発を進めている。6 MVタンデム加速器は、施設1階の第2測定室の既存ビームラインを撤去して新設される。加速器システムは、3 台のイオン源とタンデム加速器本体,5 本のビームラインで構成される。また、第1測定室は既存実験装置の継続利用を図り、第2測定室の6 MVタンデム加速器からのビーム輸送ラインを接続する。その他、震災により損壊した偏極イオン源は、施設9階から1階の既存施設外側に実験ブースを新設して移設する予定である。6 MV タンデム加速器はペレトロン型タンデムであり、コンピュータ制御による自動運転が可能となる。高安定加速電圧で陽子・重陽子では3μA、重イオンでは50μA までの直流ビームが提供可能となる。原子核実験での用途についてはエネルギー範囲が限られるが、低エネルギー天体核反応実験や偏極陽子・重陽子による核反応実験に利用される見込みである。また、国内最大の最新鋭AMS システムとして、多核種AMS測定が可能となる。震災からの施設復興の現状と6 MVタンデム加速器の導入計画について報告する。
 
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WEPS011
p.370
九州大学加速器・ビーム応用科学センターにおける8MVタンデム加速器建設計画の現状
Construction of an 8MV tandem accelerator at Kyushu University - Present status report

野呂 哲夫,○寺西 高,相良 建至,若狭 智嗣,藤田 訓裕,坂口 聡志(九大理),池田 伸夫,米村 祐次郎,有馬 秀彦,石橋 健二,魚住 裕介,執行 信寛(九大工),冨増 多喜夫(九大加速器・ビーム応用科学センター),森 義治(京大原子炉)
Tetsuo Noro, ○Takashi Teranishi, Kenshi Sagara, Tomotsugu Wakasa, Kunihiro Fujita, Satoshi Sakaguchi, Nobuo Ikeda, Yujiro Yonemura, Hidehiko Arima, Kenji Ishibashi, Yusuke Uozumi, Nobuhiro Shigyo, Takio Tomimasu (Kyushu Univ.), Yoshiharu Mori (Kyoto Univ.)
 
現在、九州大学加速器・ビーム科学応用センターにおいて8MVのタンデム型静電加速器を京都大学理学部から移設する計画を進めている。このタンデム加速器は現在同センターで調整中のFFAG加速器への入射器としての役割を担うほか単独で低エネルギー重イオン実験やAMSにも用いる予定である。  2011年度に京都大学における加速器解体と九大への移送作業が終わり、2012年度には組立・調整作業が行われる予定である。本発表では設置作業の現状と加速器施設の将来計画の概要を報告する。
 
ポスター1 (8月8日(水) 共通教育棟2階・3階ロビー・廊下)
16:10-18:10 
WEPS012
p.373
J-PARC MRビーム増強のためのバンチ操作
An idea of bunch manipulation for J-PARC MR

○大森 千広,原 圭吾,長谷川 豪志,戸田 信,吉井 正人(KEK),野村 昌弘,島田 太平,Schnase Alexander,田村 文彦,山本 昌亘(JAEA)
○Chihiro Ohmori, Kego Hara, Katsushi Hasegawa, Makoto Toda, Masahito Yoshii (KEK), Masahiro Nomura, Taihei Shimada, Alexander Schanase, Fumihiko Tamura, Masanobu Yamamoto (JAEA)
 
J-PARC MRは現在約200kWのビームを供給している。今後、MRサイクルの短縮とバンチあたりの強度を増やすことで設計値の750kWを実現しようとしている。ここではこれに加え、RCSでの加速中にハーモニクスを2から3に変更することで、RCSの出射とMRでの入射でのロスを減らし、かつMRに現状の4バッチから5または6バッチ入射することでMRでの強度を上げることを検討する。このためMRのハーモニック数を現状の9から12または14へと増やし、出射に必要なキッカー立ち上がり時間を確保する。このバンチ操作を実用化するためには主に高周波LLRF系の改造を必要とするが、他の増強案に比べ加速器本体への大幅な改造は必要ではない。この論文ではバンチ操作に伴う加速中のRFバケツの変化、RCS出射‐MR入射シナリオ、MR出射シナリオについて述べる。
 
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WEPS013
p.377
J-PARCリニアックビームトランスポートにおけるダクトアライメントとビームロス
Beam loss reduction by the beam duct realignment in the J-PARC linac beam transport line

○田村 潤,青 寛幸,浅野 博之(日本原子力研究開発機構),池上 雅紀(高エネルギー加速器研究機構),丸田 朋史,三浦 昭彦,森下 卓俊,小栗 英知,大内 伸夫(日本原子力研究開発機構),澤邊 祐希(三菱電機システムサービス),鈴木 隆洋(日本原子力研究開発機構),山崎 正義(三菱電機システムサービス)
○Jun Tamura, Hiroyuki Ao, Hiroyuki Asano (JAEA), Masanori Ikegami (KEK), Tomofumi Maruta, Akihiko Miura, Takatoshi Morishita, Hidetomo Oguri, Nobuo Ouchi (JAEA), Yuki Sawabe (Mitsubishi Electric System & Service), Takahiro Suzuki (JAEA), Masayoshi Yamazaki (Mitsubishi Electric System & Service)
 
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって、J-PARCリニアックでは加速器トンネルに深刻な変形が生じたため、ほぼ全数の加速空洞および電磁石の精密アライメントが行われた。ドリフトチューブリニアック下流のビームトランスポート(MEBT2およびA0BT)については、精密アライメント後の電磁石に合わせてビームダクトを粗くアライメントした。ビーム運転再開後、MEBT2およびA0BTにおいて、震災前には見られなかったビームロスと残留放射線が確認された。ダクト位置を測量した結果、ロス発生箇所で10mmを超えるビーム軸中心からのずれがあることがわかった。ずれの大きい箇所を再アライメントすることによって、ビームロスおよび残留線量が低下した。ここでは、ダクトのアライメント法による誤差およびミスアライメントによるビームロスについて報告する。
 
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WEPS014
p.381
J-PARC MR 静電セプタムの現状
Present status of electrostatic septa in J-PARC MR

○新垣 良次(高エネ研)
○Yoshitsugu Arakaki (KEK)
 
J-PARC MR静電セプタムは四極電磁石をはさんで2台設置されている。真空糟内のヨークに30μm厚のタングステンリボンを3mmピッチでおよそ500本張り、それと対向するカソード電極との間に高電圧をかけビームを蹴りだす。同軸の高圧ケーブルを電極に接続する為のフィードスルーには絶縁液としてフロリナートFC40が使用されている。放射線や放電等の原因で発生する分解物を除去する目的で、活性アルミナフィルターを用いた循環システムを構築した。エージング電圧は現在まで最大145kVまで達し、ビームタイム中も電圧104kVを安定に印加できるようになっている。これまでに行った改良点や現状について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS015
p.385
J-PARC MRにおける非線形ディスパージョンとクロマティシティの測定
Nonlinear Dispersion and Chromaticity Measurement in J-PARC MR

○五十嵐 進,安東 愛之輔,小関 忠,佐藤 洋一,白形 政司,高野 淳平(高エネルギー研),田村 文彦(原研),外山 毅(高エネルギー研),畠山 衆一郎(原研)
○Susumu Igarashi, Ainosuke Ando, Tadashi Koseki, Yoichi Sato, Masashi Shirakata, Junpei Takano (KEK), Fumihiko Tamura (JAEA), Takeshi Toyama (KEK), Shuichiro Hatakeyama (JAEA)
 
大強度陽子加速器(J-PARC)の主リング(MR)で、ディスパージョン関数(η)とクロマティシティ(ξ)の測定を行い、運動量偏差について線形の関数だけではなく、非線形の関数としてパラメータを求めた。ηはRF周波数により運動量偏差(δp/p)を-1.3% ~ +1.3%の範囲で変えたときの閉軌道の変化から求めた。それぞれδp/pでのビーム位置モニタ(BPM)での測定値を2次の多項式でフィットし、2次までのディスパージョンを求めた。この測定値は計算値と良い一致を示した。またξはδp/pを変えたときのチューンの変化から求めた。偏向電磁石の6極成分を考慮することにより、計算値が測定値と良く一致することが分かった。広い運動量偏差の領域で、J-PARC MRの光学パラメータについて理解することができた。
 
16:10-18:10 
WEPS016
p.388
スクレイパーを用いた横方向レーザー冷却効果の観測
Measurement of transverse laser cooling effect using scrapers

○想田 光,中尾 政夫,頓宮 拓,野田 章(京大化研),神保 光一(京大エネ研),大崎 一哉,岡本 宏己(広大先端研),百合 庸介(原研高崎),グリーザー マンフレッド(マックスプランク原子核研),何 争麒(清華大学)
○Hikaru Souda, Masao Nakao, Hiromu Tongu, Akira Noda (ICR, Kyoto Univ.), Kouichi Jimbo (IAE, Kyoto Univ.), Kazuya Osaki, Hiromi Okamoto (ADSM, Hiroshima Univ.), Yosuke Yuri (TARRI, JAEA), Manfred Grieser (MPI-K), Zhengqi He (Tsinghua Univ.)
 
京都大学化学研究所のイオン蓄積・冷却リングS-LSRでは、シンクロ・ベータトロン共鳴によって進行方向と水平方向の振動を結合させ[1]、レーザー冷却によって横方向を間接的に冷却する実験を進めている。冷却後のビーム温度はビームサイズを測定することで行うが、CCDカメラによる蛍光観測ではレーザーと相互作用する部分しか発光しないため、レーザー径と同程度かそれより大きいビームサイズを正確に測定することができないため、スクレイパーをビーム中心に向けて挿入し、ビーム信号強度から粒子の残存率を測定することで、ビームの分布を再構成することでサイズ測定を行った。実験ではスクレイパーを2枚用い、冷却効率向上のため1枚目のスクレイパーをビーム中心から0.3mmまで挿入して粒子数を1x10^5まで減少させ[2]、2枚目のスクレイパーをビーム中心から0.3mm~1.0mmまで挿入深度を変えてそれぞれの場合のビーム残存率を測定することで、冷却開始後0.5秒から2秒にかけてビームサイズが1-sigmaで0.56mmから0.30mmまで減少する様子を測定した。この時の測定誤差は平均で±0.07mm(スクレイパー位置の再現性誤差±0.05mm、ビーム分布のFitting error±0.04~0.07mm)で、以後ビームサイズがほぼ一定となる冷却開始2秒後のビーム温度は52±30Kと測定された。[1] H. Okamoto et. al. Phys. Rev. Lett. 72, 3977. [2] A. Noda et. al., in this proceedings.
 
16:10-18:10 
WEPS017
p.391
J-PARC MRにおけるスキュー四極電磁石を用いた線形結合共鳴の補正
Linear Coupling Resonance Correction using Skew Quadrupole Magnet in the J-PARC Main Ring

○高野 淳平,安東 愛之輔,五十嵐 進,石井 恒次,小関 忠,佐藤 洋一,白形 政司,染谷 宏彦,中村 衆(KEK),畠山 衆一郎(JAEA)
○Junpei Takano, Ainosuke Ando, Susumu Igarashi, Koji Ishii, Tadashi Koseki, Yoichi Sato, Masashi Shirakata, Hirohiko Someya, Shu Nakamura (KEK), Shuichiro Hatakeyama (JAEA)
 
大強度陽子加速器(J-PARC)の主リング(MR)では四極電磁石のアライメントエラーや六極電磁石内のVertical CODに起因する線形結合共鳴が観測されている。これまではこの共鳴を補正するために2ヶ所の六極電磁石内でVertical Local Bumpを作っていたが、今後のビームの大強度化に向け今回新たに4台のスキュー四極電磁石を導入した。その後のビームを用いたスタディでMRの入射エネルギーである3GeVにおいて線形結合共鳴を補正することに成功した。今回このビームスタディのDCCTを中心とした測定結果と製作したスキュー四極電磁石のスペック・磁場測定結果について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS018
p.394
STRUCTを用いたMRコリメータのシミュレーション
Simulation Study of the MR Collimator using STRUCT

○高野 淳平,石井 恒次,佐藤 洋一,白形 政司(KEK)
○Junpei Takano, Koji Ishii, Yoichi Sato, Masashi Shirakata (KEK)
 
大強度陽子加速器(J-PARC)の主リング(MR)では2012年夏および2013年夏にコリメータを増強する予定である。既存のMRコリメータは水平と垂直のJawが独立して設置されているが、今回新たに導入するMRコリメータはJawの形をL型にし、一台で水平・垂直の両方向を削ることが可能となる。今回粒子散乱シミュレーションコードSTRUCTを用いて、既存のコリメータのみの場合とそれに加えて新規のコリメータを導入した場合のSTRUCTの計算結果を比較した。また、新規のコリメータの配置について、ビームロスの観点からより有利な配置について比較検討を行ったので、その結果についても報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS019
p.397
RCNP 18GHzSC-ECRビームの引出し系及び輸送系の開発
Study of extraction and transport line for 18GHz SCECR at RCNP

○依田 哲彦,畑中 吉治,福田 光宏,木林 満,森信 俊平,民井 淳(大阪大学RCNP)
○Tetsuhiko Yorita, Kichiji Hatanaka, Mitsuhiro Fukuda, Mitsuru Kibayashi, Shunpei Morinobu, Atsushi Tamii (RCNP, Osaka Univ.)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では、AVF サイクロトロン及びリングサイクロトロンでの加速ビームの強度の増強及び加速イオンの多様化を目指し、18GHz 超伝導ECR イオン源を導入し開発を進めてきた。これまでB,C, O, N, Ne, Kr, Xe などのイオン生成の開発が行われ、既に実験ユーザーにも供給されてきた。 今回、更なる加速ビーム増強のため、イオン源出口電極構造の大幅な改造を行った。具体的には開口の拡大、及び印加電圧の最適化を行った。 また、引出されたイオンビームのAVFサイクロトロン入射までのビーム透過効率の向上を目指し、漏れ磁場が問題となっているビーム輸送系へのステアリングマグネットの設置などを行った。 講演ではこれら開発結果の詳細について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS020
大強度DCミューオン源MuSICの進捗状況
Status of the MuSIC, an intense DC muon source
○佐藤 朗,久野 良孝,坂本 英之,日野 祐子,松本 侑樹,Hashin Izyan(阪大理),福田 光宏,畑中 吉治(RCNP),荻津 透,吉田 誠,山本 明(高エ研)
○Akira Sato, Yoshitaka Kuno, Hideyuki Sakamoto, Yuko Hino, Yuki Matsumoto, Izyan Hashin (Osaka University), Mitsuhiro Fukuda, Yoshiharu Hatanaka (RCNP), Toru Ogitu, Makoto Yoshida, Akira Yamamoto (KEK)
 
大阪大学核物理研究センターにおいて、大強度DCミューオン源MuSICの建設を進めている。リングサイクロトロンからの400MeV-1μAの陽子ビームをグラファイト標的に入射し、発生したπ中間子とミューオンを大口径超伝導ソレノイドにより捕獲する。これにより、MuSICでは従来のミューオン施設に比べて数千倍の効率でミューオンを生成し、世界最高強度のDCミューオンを供給することが出来る。本講演では、MuSIC建設の現状と、測定されたミューオンビームの性質について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS021
p.400
九州大学FFAG加速器のビームコミッショニング
Beam commissioning of FFAG accelerator at Kyushu University

○米村 祐次郎,有馬 秀彦,池田 伸夫,魚住 裕介,石橋 健二,野呂 哲夫,是永 忠志,倉富 将伍,米倉 睦人,稲岡 悠士,諸熊 大治郎,宮沖 貴史(九州大学),高木 昭,中山 久義(高エネルギー加速器研究機構),森 義治(京都大学原子炉実験所)
○Yujiro Yonemura, Hidehiko Arima, Nobuo Ikeda, Yusuke Uozumi, Kenji Ishibashi, Tetsuo Noro, Tadashi Korenaga, Shogo Kuratomi, Mutsuhito Yonekura, Yushi Inaoka, Daijiro Morokuma, Takashi Miyaoki (Kyushu University), Akira Takagi, Hisayoshi Nakayama (KEK), Yoshiharu Mori (KURRI)
 
九州大学加速器・ビーム応用科学センターでは、ビームを利用した教育および原子核科学、医療応用基礎科学等におけるビーム応用研究を推進することを目的として、FFAG加速器を主加速器とした加速器施設の整備が進められている。 本加速器施設は、取り出しエネルギー10 MeV の入射器の陽子サイクロトロンとFFAG 加速器によって構成されている。平成23年12月から主リングのビームコミッショニングが開始され、平成24年2月にビームの周回を確認した。現在、ビーム加速に向けて、ビーム入射機器の調整と並行して、ビームモニターと高周波加速空洞の運転試験が行われている。 本発表では、ビームコミッショニングの現状、高周波加速装置、ビームモニター、制御システム等の開発状況について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS022
p.403
九州大学FFAG加速器への多重入射に関する研究
Multi-turn injection into the FFAG accelerator at Kyushu University

○倉富 将伍,池田 伸夫,米村 祐次郎,有馬 秀彦,米倉 睦人,稲岡 悠士,諸熊 大治郎,是永 忠志(九州大学),高木 昭,中山 久義(高エネルギー加速器研究機構),森 義治(京都大学原子炉実験所)
○Shogo Kuratomi, Nobuo Ikeda, Yujiro Yonemura, Hidehiko Arima, Mutsuhito Yonekura, Yushi Inaoka, Daijiro Morokuma, Tadashi Korenaga (Kyushu University), Akira Takagi, Hisayoshi Nakayama (High Energy Accelerator Research Organization (KEK)), Yoshiharu Mori (Research Reactor Institute, Kyoto University)
 
九州大学加速器・ビーム応用科学センターでは、FFAG加速器を主加速器、サイクロトロンを入射器とした新たな加速器施設の整備を進めており、現在はビーム調整および性能向上に向けた要素開発を進めている。入射器として用いているサイクロトロンからのビームは、ピーク電流が小さいため、ビーム入射方法として多重入射を採用して、周回ビーム強度を増強することを本研究の目標としている。 本FFAG加速器は、加速器直線部において主電磁石の漏れ磁場が大きく、直線部に磁性体を用いた機器を設置した場合、漏れ磁場を吸収してベータトロン振動の共鳴を誘起してしまう。よってバンプ電磁石は磁性体を用いない空芯コイルで構成することとした。 現在までにバンプ電磁石の設計・製作、多重入射のビーム入射シミュレーションおよびサイクロトロンからFFAG加速器へのビーム入射試験を行った。本発表では、空芯バンプ電磁石の設計、入射シミュレーションの結果、製作した電磁石の性能試験の結果およびビーム入射試験の結果について報告を行う。
 
16:10-18:10 
WEPS023
p.407
JPARC MR入射用キッカーのアップグレード
Upgrade of JPARC MR injection kicker magnet

○樊 寬軍,松本 浩,石井 恒次,杉本 拓也(高エネルギー加速器研究機構),福岡 翔太(筑波大学)
○Kuanjun Fan, Hiroshi Matsumoto, Koji Ishii, Takuya Sugimoto (High Energy Accelerator Research Organization (KEK)), Shuta Fukuoka (university of tsukuba)
 
The JPARC main ring injection kicker magnets are lumped inductance type magnets. The total inductance in the circuit restricts the rise speed of the kicker field. A mismatch load has to be implemented to reduce the rise time, however the reflection field increases and causes injection errors. In addition the terminator resistors are installed in the air to meet the requirements of vacuum system, and the high voltage discharge is a serious problem, which impairs the performance of the kickers. A new structure of kicker magnet has been studied, which will reduce the total inductance in the circuit to make the kicker field fast. In order to deal with the problem of high temperature of the terminator resistors in future high beam power operation, the new structure enables the terminator resistors be installed in a container filled with insulation oil, which not only cools the resistors efficiently but also reduces the risks of HV discharge.
 
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WEPS024
p.410
JPARC MR速い取り出し用Eddy current型セプタムの設計
Design study of eddy current septa for JPARC MR fast extraction

○樊 寬軍,石井 恒次,松本 浩,杉本 拓也(高エネルギー加速器研究機構),福岡 翔太(筑波大学)
○Kuanjun Fan, Koji Ishii, Hiroshi Matumoto, Takuya Sugimoto (High Energy Accelerator Research Organization (KEK)), Shota Fukuoka (University of tsukuba)
 
The present low field septa of the JPARC main ring fast extraction system are conventional design multi-turn septum magnets. The major problems of the septa are weak mechanical structure, poor gap field quality and large leakage field. These defects may have significant effects on high intensity beam operation and cause beam losses. Eddy current septum has been studied to replace the multi-turn septum. In order to generate sufficient flattop width for the extraction beam, the eddy current septum will be excited by a fundamental sine wave superimposed by third harmonic. The paper will discuss the methods to realize the superposition of third harmonic and to keep the stability of the flatness.
 
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WEPS025
p.413
第2の超伝導リングサイクロトロンの設計研究
Design study of the 2nd superconducting ring cyclotron

○大西 純一,奥野 広樹(理研仁科センター)
○Jun-ichi Ohnishi, Hiroki Okuno (RIKEN)
 
理研RIBFでは生成断面積の小さいRIビームを用いた原子核実験が主たる研究テーマであるため、1次ビームの強度を向上させることは加速器にとって最も重要な課題である。とくにウランはRI生成において重要なイオンでありビーム強度の増加が強く望まれている。ウランビームはU35+がイオン源から引き出されRILAC2, RRCで加速された後、11MeV/uにおいてU71+に、fRC加速後の50MeV/uにおいてU86+に荷電変換(CS)された後、IRC、SRCにより最終の345MeV/uまで加速される。第1CSの収率は約18%、第2CSの収率は約28%であり、イオン源からSRC出口までの荷電変換を含めた通過効率は約1/200と非常に小さい。 そこで本研究ではfRCを超伝導化してU35+のままで加速することを検討する。この場合、第1CSを使用しないことと荷電変換に伴うビームの広がりを抑制できるため、10倍程度の通過効率の向上を見込むことができる。fRC超伝導化において投資が見込める建設コストに抑えることが必須の課題である。そのため以下を基本方針とする。 (1) 加速周波数は固定とする。 (2) 4セクターとする。 (3) 超伝導コイルの冷却は小型冷凍機を使用する。 (4) トリムコイルは常伝導のみとする。 (5) 入射取り出し機器はできるだけ常伝導とする。 超伝導リングサイクロトロンの設計には多くのことを検討する必要があるが、今回の発表ではcase studyとしてセクター超伝導磁石および入射取り出し系の設計検討について示す。
 
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WEPS026
大強度陽子ビーム取り出し用Low-Z静電セプタム開発の現状
Status of developing Low-Z electrostatic septa for high intensity proton beam extraction
○堀川 大輔(総研大),新垣 良次,冨澤 正人(KEK),下川 哲司(佐賀大),岡村 勝也,白壁 義久(KEK)
○Daisuke Horikawa (Sokendai), Yoshitsugu Arakaki, Masahito Tomizawa (KEK), Tetsushi Shimogawa (Saga university), Katsuya Okamura, Yoshihisa Shirakabe (KEK)
 
 大強度陽子ビーム加速器における遅い取り出しビーム増強のためには、取り出し時のビームロスに起因する残留放射能を減らす事が重要な課題である。そのために我々は取り出し装置の1つである静電セプタムに注目し、ビームロスの低減が期待出来る低原子番号材料(Low-Z)を用いた静電セプタムの開発に取り組んでいる。  現在セプタム材料としてカーボンファイバー(CF)を撚糸したワイヤーを使用する事で、従来のタングステンに比べ、大幅なLow-Z化と同時に引張強度、熱特性の向上を期待している。  CFワイヤー実用化に向けた課題として、撚糸ワイヤーの品質および生産性の向上、真空中でのアウトガス対策、ワイヤーを静電セプタムのヨークに密に張る方法を考える必要がある。  そこで、撚糸効率向上とアウトガス対策のためのCF洗浄試験やCF撚糸ワイヤーの固定機構の開発といった試験に取り組んだ。  これらの新素材を用いたESS開発手法、結果に加えて、今後の取り組みについて報告する。
 
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WEPS027
p.417
S-LSRにおけるバンチしたビームの水平方向のレーザー冷却に関連した周波数スペクトルの考察
Examination of frequency spectrum of bunched beam related to transverse laser cooling

○神保 光一(京都大学エネルギー理工学研究所),想田 光,中尾 政夫,頓宮 拓,野田 章(京都大学化学研究所),何 Zhengqi(精華大学物理工学)
○Kouichi Jimbo (Institute of Advanced Energy, Kyoto University), Hikaru Souda, Masao Nakao, Takumi Tongu, Akira Noda (Institute for Chemical Research, Kyoto University), Zhengqi He (Engi. Phys.Tsinghua Univ.)
 
京都大学化学研究所のイオン蓄積リングS-LSR において、RFでバンチされたマグネシウムイオンビームをレーザー冷却した。このビームがRFKOなるピックアップ電極を通過した時の周波数スペクトラムをNetwork Analyzerで観察したところ、RF周波数2.52MHz(周回周波数のハーモニック数h=100)の両側で、対称及び非対称的な特徴が認められた。進行方向がレーザー冷却されたビームにおいて、シンクロ・ベータトロン結合下では、進行方向と水平方向の振動が共鳴してビームの横方向が冷却されると予想される。この共鳴条件が満たされた時、h=99の両側のサイドバンドのうち右側、そしてh=101の両側のサイドバンドのうち左側の振幅がそれぞれ顕著に増大することが認められた。この現象はh=99及び、h=101のサイドバンドを個々に比較してみると非対称ではあるが、RF周波数 (h=100)を中心として眺めると対称である。ビームがレーザー冷却されているか否かでは大きな違いはなかった。 S-LSRにおいて、シンクロ・ベータトロン結合下においてビームの水平方向の冷却が既に達成されている。[1] サイドバンドの振幅の増大は、進行方向と水平方向間のエネルギーのやり取りを示唆し、間接的にビームの水平方向の冷却を証明していると考え、この方法をビーム診断に利用することを目指している。 [1]想田光 他、「Present Status of Ion Accumulation and Cooler Ring, S-LSR」、本学会概要MOPS009(2011)
 
16:10-18:10 
WEPS028
p.420
J-PARCリニアックにおけるRFチョッパーを使用した縦方向ビームプロファイル測定の検討
Simulation study on longitudinal beam profile measurement by using RF chopper at J-PARC linac

○丸田 朋史(原子力機構、J-PARCセンター),池上 雅紀(高エネルギー加速器研究機構、J-PARCセンター)
○Tomofumi Maruta (J-PARC center, JAEA), Masanori Ikegami (J-PARC center, KEK)
 
J-PARCリニアックには、Radio Frequency Quadrupole(RFQ)とDrift Tube Linac(DTL)加速器の間に、長さ3mのビームトランスポートライン(MEBT1)がある。 ここには、RFQから出てきたビーム形状を、DTLアクセプタンスに合わせるために設置されたQ磁石8台とバンチャー空洞2台に加え、高周波偏向空洞(RFチョッパー)が設置されている。 このRFチョッパーは、時間軸(z)方向のビーム構造を、3GeV RCSのリング周回周波数に合わせるために使用している。 不要なビームはRFチョッパーにより水平(x)方向に蹴られ、下流に設置されているスクレーパにより除去される。 そのためRFチョッパーの同期位相は、ビームの偏向角が最大になるように調整されている。 この同期位相を最大偏向が与えられる位相から90度シフトさせた場合、ビームバンチはx-z平面で回転する。つまり、縦方向ビーム分布が横方向分布に変換される。 また、RFチョッパー上流にあるバンチャーのE0TLを変化させると、z-z'平面におけるバンチの回転量が変わる。 現在この2つを組み合わせた縦方向ビーム分布測定法を、シミュレーションによって検討している。 データ収集は10月頭のリニアックコミッショニングにて行う予定である。 本発表では、シミュレーションによる検討結果について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS029
p.424
放医研小型サイクロトロン(HM-18)用位相プローブの開発
Development of the phase probe for the NIRS small cyclotrons HM-18

○北條 悟,片桐 健,本間 壽廣,後藤 彰(放射線医学総合研究所),髙橋 勇一(加速器エンジニアリング株式会社)
○Satoru Hojo, Ken Katagiri, Toshihiro Honma, Akira Goto (National Institute of Radiological Sciences), Yuichi Takahashi (Accelerator Engineering Corporation)
 
放射線医学総合研究所の小型サイクロトロン(HM-18)は、1994年の運転開始よりRI製造専用として稼働し続けている。HM-18はエネルギー固定で陽子と重陽子の加速が可能であり、それぞれのビームにおける等時性磁場の調整のため4つのトリムコイルがある。これまで、このトリムコイルの電流設定は、荷電変換取出し後のビーム強度のみをモニターしながら調整を行っていた。そこで今回、HM-18に銅薄とポリイミド薄を用いた位相プローブを導入し、ビーム位相の測定を行った。この位相プローブは、ピックアップ電極として60 mm ×70 mmで厚さ0.1 mm銅薄の電極4枚をポリイミド薄で絶縁し、ベースの銅薄に張り合わせるといった、簡略化された構造とした。通常採用される上下が対になった構造ではなく下側の電極のみをセクター磁極表面に張り付ける構造とし、設置も非常に簡易的に行えるものとした。このプローブを用いた測定の結果から、トリムコイルによる等時性磁場の整形を行ったので、これについての詳細の報告を行う。
 
16:10-18:10 
WEPS030
p.427
一様磁場中の非中性電子プラズマを用いた不整合駆動ハロー生成の系統的実験
Systematic experiments on the mismatch induced halo formation using non-neutral electron plasmas in a uniform magnetic field

○遠藤 昌大,檜垣 浩之,伊藤 清一,岡本 宏巳(広島大院先端研)
○Masahiro Endo, Hiroyuki Higaki, Kiyokazu Ito, Hiromi Okamoto (AdSM, Hiroshima Univ.)
 
広島大学ビーム物理研究室ではポールトラップや磁場トラップといった荷電粒子閉じ込め装置に閉じ込められた荷電粒子が、ある条件下では加速器中のビームと物理的に等価であることを用いてビームダイナミクスの統計的な実験を行っている。 本研究では主にビームハロー生成の系統的な実験を目的とし、一様磁場と静電(調和)ポテンシャルを使ったペニングトラップ中に非中性電子プラズマを閉じ込める。これまで、プラズマのプロファイルを測定するために蛍光面を備えてた画像撮像系を開発すると共に、プラズマを閉じ込めた領域のポテンシャルを急激に変化させることにより(加速器中の荷電粒子ビームに対するミスマッチに相当する効果をプラズマに与え)、実際にビームハローが生成されることを実験で確認してきた。 今回は、ミスマッチの強度や加える時間を系統的に変化させてハロー生成量を実験的に評価した結果について報告する。定性的には、加えるミスマッチの強度が大きく、その時間が長いほどハローの生成量が大きくなる傾向が確認された。
 
16:10-18:10 
WEPS031
p.430
RCNP AVFサイクロトロンにおける粒子加速軌道の解析
Analysis of accelerated orbit in the RCNP AVF cyclotron

○濵谷 紀彰,植田 浩史,畑中 吉治,福田 光宏,依田 哲彦,木林 満,安田 裕介,鎌倉 恵太(阪大RCNP)
○Noriaki Hamatani, Hiroshi Ueda, Kichiji Hatanaka, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Mitsuru Kibayashi, Yusuke Yasuda, Keita Kamakura (RCNP, Osaka University)
 
核物理研究センター(Research Center for Nuclear Physics、以下RCNP)にはAVFサイクロトロンとRingサイクロトロンの2種類の粒子加速器がある。粒子を高エネルギーまで加速する際にはこのAVFサイクロトロンをRingサイクロトロンの入射器として用いる一方、比較的エネルギーの低いビームが必要である場合にはAVFサイクロトロンのみで粒子を加速する。したがってAVFサイクロトロンは、RCNPでのビームの生成において非常に重要な役割を果たしており、AVFサイクロトロンにより生成されるビームの高品質化は不可欠である。 これまで、AVFサイクロトロンの等時性磁場は建設時に測定された磁場を用いた平衡軌道の計算から求められていた。磁場の測定点数が限られており、内挿の精度が十分ではなく、加速軌道の解析を詳細に行えなかった。最近、有限要素法によりAVFサイクロトロン磁場の三次元解析が可能となった。計算で得られた磁場を用いて、Runge-Kutta-Gill法により入射から取出しまでの加速軌道の詳細な検討を始めている。 これまでの解析により、中心軌道において陽子を最外周まで導く等時性磁場を作成するための最適な条件をおおよそ確定することができた。現在は中心軌道の周りの粒子の軌道及びビーム取出し軌道についての解析を進めており、高品質ビームの高効率取り出し条件を探索している。等時性磁場に関する結果と合わせて、これまでに得られた結果について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS032
p.433
SuperKEKBのビーム光学補正に関する検討
Simulation Study on Beam Optics Correction for SuperKEKB

○杉本 寛,大西 幸喜,森田 昭夫,小磯 晴代,生出 勝宣(高エネルギー加速器研究機構)
○Hiroshi Sugimoto, Yukiyoshi Ohnishi, Akio Morita, Haruyo Koiso, Katsunobu Oide (KEK)
 
SuperKEKBはKEKBの40倍の衝突性能を目指す、電子・陽電子の衝突型円形加速器である。SuperKEKBでは、所謂「砂時計効果」を緩和するためにナノビーム方式が採用されている。ナノビーム方式によって目標性能を達成するためには、衝突点において非常に細く絞られた低エミッタンスのビームを安定に周回させる必要がある。そのためビーム光学の設計は、ビームが感じる非線形磁場やイントラビーム散乱の効果を詳細に検討し、力学口径を最適化することを一つの指標に行われてきた。一方、現実の加速器においては電磁石の磁場の誤差やミスアライメントが不可避に存在するため、ビームの光学が設計値からずれる。ビーム光学の乱れはエミッタンスの増大やビーム寿命の短縮を引き起こし得る。そのためSuperKEKBにおいてもビームの光学補正は必須の検討課題である。 我々はSuperKEKB加速器が種々のエラーに対してどの程度敏感であるかを調べると同時に、光学パラメータの測定手法とその補正方法を計算機シミュレーションにより検討してきた。具体的には、まず、計算機上のSuperKEKBに電磁石の設置誤差や磁場勾配誤差をランダムに設定する。その上で、実際のビーム測定に倣い、BPMの読み値から光学情報を推定する。最後に、測定した光学パラメータが設計値に近づく様に補正用磁石の磁場等を調整する。 本学会では、これまでの検討結果について報告する。 
 
16:10-18:10 
WEPS033
p.436
X-band熱陰極高周波電子銃における電子ビーム圧縮手法に関する検討
Study on bunch compression method for X-band thermionic cathode RF gun

○坂本 文人(秋田工業高等専門学校),土橋 克広,上坂 充(東京大学大学院工学系研究科)
○Fumito Sakamoto (Akita National College of Technology), Katsuhiro Dobashi, Mitsuru Uesaka (Nuclear Professional School, The University of Tokyo)
 
東京大学原子力専攻で開発を進めているコンプトン散乱準単色X線源用X-band電子ライナックは,熱陰極高周波電子銃によりマルチバンチ電子ビームを生成している.これまでの試験により,電子銃からの電子ビーム発生と加速管によるビーム加速が達成されているが,加速管入射前におけるバンチ圧縮の最適化が不完全なために加速効率が悪く,安定したX線発生が達成されていない.これはバンチ圧縮に用いているアルファ電磁石の磁場分布に問題があることが確認されているが,ビームシミュレーションの結果から電子銃からの電子ビームに対しては過圧縮となりX-bandシステムのバンチ圧縮手法には不向きであることが判明した.本研究では,熱陰極高周波電子銃からの電子ビームを圧縮する最適な手法を選択するため,アクロマティックアークを加速管前に設置した体系でビームシミュレーションを行い,加速効率についての検討を実施した.本発表では,シミュレーションの結果と今後の展開予定について報告する.
 
16:10-18:10 
WEPS034
p.439
設計上の機械性能を実現させるための軌道、光学補正
ORBIT AND OPTICS CORRECTION TO REALIZE DESIGNED MACHINE PERFORMANCE

○清宮 裕史(総研大),大見 和史,鎌田 進,森田 昭夫,生出 勝宣(KEK)
○Yuji Seimiya (SOUKENDAI), Kazuhito Ohmi, Susumu Kamada, Akio Morita, Katsunobu Oide (KEK)
 
 現実問題として磁石のエラーは必ず存在するため、設計上の機械性能を実現することは簡単ではない。ここでは、磁石が設計軌道上に乗るよう補正することで、設計上の機械性能の実現を目指す。しかし、現実の加速器において設計軌道がどこにあるかは自明ではない。  KEKBやPFでは、BPMの基準点を4極の中心に一致させるよう調整している。BPM、4極の中心が一致しているとして取り扱うことで、それらの設計軌道に対する設置誤差(回転誤差を除く)を推定することができる。これは、BPM、4極のある場所における設計軌道を求めたことに他ならない。  補正の手順は、以下を採用する。  1.閉軌道からBPM、4極の設置誤差(回転誤差を除く)を推定し、補正する。  2.Opticsから4極の磁場誤差、回転誤差、6極の設置誤差(回転誤差を除く)を推定し、補正する。
 
16:10-18:10 
WEPS035
p.443
J-PARC RCSにおける縦方向エミッタンス増大操作を用いたMR RF捕獲の最適化のシミュレーション
Simulation of optimization for rf capture at J-PARC MR by using controlled longitudinal emittance blow-up in RCS

○山本 昌亘,野村 昌弘,シュナーゼ アレクサンダー,島田 太平,田村 文彦(原子力機構J-PARCセンター),絵面 栄二(高エネ機構),原 圭吾,長谷川 豪志,大森 千広,高木 昭(高エネ機構J-PARCセンター),高田 耕治(高エネ機構),戸田 信,吉井 正人(高エネ機構J-PARCセンター)
○Masanobu Yamamoto, Masahiro Nomura, Alexander Schnase, Taihei Shimada, Fumihiko Tamura (J-PARC/JAEA), Eizi Ezura (KEK), Keigo Hara, Katsushi Hasegawa, Chihiro Ohmori, Akira Takagi (J-PARC/KEK), Koji Takata (KEK), Makoto Toda, Masahito Yoshii (J-PARC/KEK)
 
J-PARC RCSでは大強度陽子ビームを加速し、後段のMRへとビームを渡している。MRの入射における空間電荷効果を緩和しビーム損失を抑えるためには、バンチングファクターの大きなビームをMRへと入射しなければならない。しかし、RCSの縦方向エミッタンスの値が小さいため、単に二倍高調波をRCSの取り出し付近で混ぜるだけの操作では、ビームエミッタンスが非常に扁平な形となり、MRの入射バケツをうまく合わせづらい状態になっている。最近の粒子トラッキングシミュレーションの結果より、RCSの加速後半で基本加速周波数の20~30倍の高調波電圧を加えるとビームエミッタンスを滑らかに増大させられることが分かっており、これを用いれば、適切なMR入射バケツを設定できると考えられる。本発表では、RCSにおける縦方向エミッタンス増大操作を用いたMR RF捕獲の最適化のシミュレーション結果について述べる。
 
16:10-18:10 
WEPS036
p.447
J-PARC MRにおける空間電荷効果、電子雲効果の研究
Space charge and electron cloud effects in J-PARC MR

○大見 和史(KEK)
○Kazuhito Ohmi (KEK)
 
J-PARCにおける空間電荷効果を線形x-y結合の観点から研究する。リングに線形x-y結合があると、ビームの位相空間分布は各sに対して2次元(x-x')x2ではなく4次元空間に(x-x'-y-y')分布する。空間電荷力も傾く、またはx方向のキックがy方向に回り込む。これらは空間電荷力による新たな共鳴項を生む。x-y結合が6極磁石にあった場合も新たな共鳴を生む。ここではこれらの効果を調べる。電子雲効果の簡単な評価も紹介する。
 
16:10-18:10 
WEPS037
p.452
SPring-8次期計画(SPring-8 II)のラティス設計進捗
Latest design for very low-emittance storage ring of the SPring-8 II

○下崎 義人,早乙女 光一,金木 公孝,高雄 勝,中村 剛,大熊 春夫(JASRI / SPring-8)
○Yoshito Shimosaki, Kouichi Soutome, Kimitaka Kaneki, Masaru Takao, Takeshi Nakamura, Haruo Ohkuma (JASRI / SPring-8)
 
SPring-8蓄積リングの全面的なアップグレード計画として、SPring-8次期計画(SPring-8 II)の検討が進められている。SPring-8 IIでは硬エックス線領域おける放射光平均輝度の飛躍的向上を最大の目的としており、このために10 keV放射光の回折限界である10 pm.radを目標に、ナチュラルエミッタンスを極力低減させる。極低エミッタンスラティスの第1候補として、ユニットセルあたり6台の偏向電磁石を有するsextuple-bendラティス(70 pm.rad @ 6 GeV)の設計、検討を行っている。更にダンピングウィグラーなどで回折限界まで低減させることを検討している。 ハミルトニアン解析に基づく非線形オプティクスの最適化を進めてきている。今回、振幅依存チューンシフト補正と共鳴補正を連立的に解くことで、ダイナミックアパーチャー等の六極磁石アライメントエラーに対する許容量が2倍程度まで緩和されることを確認した。ハミルトニアン解析に基づく最適化の妥当性をチェックするために、遺伝的アルゴリズムによる非線形オプティクス最適化の試験も行っている。また更なるフィージビリティ確保のために、5-bendラティス(70 pm.rad @ 4.5 GeV)に関するラティス検討を開始した。 SPring-8 IIラティス設計の、最新の検討結果について報告する予定。
 
16:10-18:10 
WEPS038
p.456
六節点アイソパラメトリック要素を用いたX-band高周波電子銃の高精度有限要素解析
FEM analysis of X-band RF gun using 6-node isoparametric element

○平澤 秀悟,坂本 文人,佐々木 信哉(秋田工業高等専門学校)
○Shugo Hirasawa, Fumito Sakamoto, Shinya Sasaki (Akita National College of Technology)
 
電子線形加速器は医療用放射線源や建築物の非破壊検査用の線源など,多くの医療・産業分野への利用へ向けての高周波化による小型化の研究が積極的になされ,X-band帯域以上になりつつある.線源には低コスト化および利便性のための小型化が求められ,これを実現するためには加速器設計の効率化および高精度化が必要とされる. 本研究では電子線形加速器の設計に特化した高精度なシミュレータの開発を目的に,三角形二次要素を用いた有限要素法による電磁場解析プログラムを作成し,その性能評価を実施した. 性能評価を行うためのテストモデルに球状空洞を採用し,このモデルに対してコードを作成し解析を行ったところ,理論解に沿うTM01モードの電磁場分布が得られた.作成したコードにより求めた固有値を理論解による真値と比較したところ,相対誤差にして10^-6程度の精度を得ることができた.要素の細分化により精度は10^-8程度まで上昇するが,これ以降要素数を増やすと精度の悪化が見られた.この原因を今後の課題として追求していく必要がある.またQ値やシャントインピーダンスといった加速器設計に重要な要素をどの程度の精度で得ることが出来るか,既存の電磁場解析プログラムであるSuperfishと比較検討する. 本発表では,本研究で開発した解析コードの詳細と精度に関する検証および今後の展開について報告する.
 
16:10-18:10 
WEPS039
p.459
高周波加速空洞の高精度解析のための有限要素解析における要素形状に関する検討
Study on element structure dependency for high-precise FEM analysis of RF cavity

○佐々木 信哉,坂本 文人,平澤 秀悟(秋田工業高等専門学校)
○Shinya Sasaki, Fumito Sakamoto, Shugo Hirasawa (Akita National College of Technology )
 
本研究室では高周波加速空洞におけるビームダイナミクスを高精度に解析するための解析コードを作成している。このコードは電磁石やDC電子銃等の静磁場解析と空洞の周波数領域解析、電子ビームのダイナミクス解析をシームレスに実行できることを目指している。本研究では電磁場の周波数領域解析を行うコードを開発し、要素形状が解析に与える影響についての考察を行った。 数値解析手法は有限要素法を採用し、四角形二次要素を使用した。四角形要素を使うメリットは、電子ビームのダイナミクス解析において使用する四角形状と対応が取れることにある。加速空洞を模擬した球状空洞モデルを、開発した解析コードで解析した結果、10~12GHzの共振空洞の設計で必要とされる10^-7程度の精度で電磁場を解析することが出来た。本研究では更なる高精度化を考え、有限要素法で帰着した一般化固有値問題の解法として共役勾配法(CGM)等いくつかの解法で解いたが、解法の違いによる解の変動は確認されなかったため、誤差の原因は解法以外にあると結論づけた。誤差の原因は要素の形状にあると考え、今後は解析するモデルに最適な形状で領域を分割する方法を考えると共に、計算処理の並列化による解析時間の短縮を図っていく。また、四角形要素は三角形要素に比べて領域の分割が難しいというデメリットもあるため、三角形二次要素を使用したコードの解析結果と精度や計算時間を比較・検討し報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS040
p.462
J-PARC主リングシンクロトロンにおける電子雲観測
OBSERVATION OF ELECTRON CLOUD IN J-PARC MAIN RING

○魚田 雅彦,外山 毅(高エネ研)
○Masahiko Uota, Takeshi Toyama (KEK)
 
大強度陽子加速器J-PARCの主リングシンクロトロン(MR)では,速い取り出し(FX)モードでバンチ当たり粒子数が10^12個を越える頃から,運転に伴う真空の圧力上昇やビームロスなど,バンチ電場によると思われる種々の現象が観測されている.2011年の夏に,MRの直線部の水平アパーチャが狭くビームロスの発生しやすい場所に電子収集モニタを設置し,2012年3月以降の2.56秒周期のFX運転時にビーム運転に伴う電子雲を観測した.バンチ当たり1.3×10^13個の大強度の陽子バンチ8個を3GeVから30GeVまで約1.4秒で加速する時,主に加速の前半の期間において,バンチの通過直後にsweep電場無しでも真空壁のスリットを越えて電極に飛び込む電子を観測できた.顕著な電子生成は常時発生するわけではなくバンチ形状,隣り合うバンチとの間隔に依存しており電子雲を形成していると思われる.一方あるビーム強度で連続運転を行う場合,電子雲信号は,頻度が減少し数日のうちに観測できなくなる.また電子雲発生時にリングの複数の場所の真空の圧力が同時にパルス状に上昇し,ビーム運転を繰り返すと同様に収まって行くことがわかった.このことから,大強度運転では,全周の各所で真空表面においてビームロスを種としバンチ電場に誘起された二次電子放出・気体放出が発生し,ビーム運転により真空表面が改質し抑制されていく現象が起こっていると推測されている.
 
16:10-18:10 
WEPS041
p.466
SuperKEKB/PF-AR用陽電子ダンピングリングの電磁石磁場測定
Magnetic Field Measurements for SuperKEKB/PF-AR Positron Damping Ring

○原田 健太郎,長橋 進也(KEK-PF),江川 一美,菊池 光男,多和田 正文(KEK)
○Kentaro Harada, Shinya Nagahashi (KEK-PF), Kazumi Egawa, Mitsuo Kikuchi, Masafumi Tawada (KEK)
 
KEKBリングは2010年6月30日に運転停止し、現在、SuperKEKBへの改造作業が行われている。SuperKEKBは低エミッタンスで高いルミノシティを得る為、ビーム寿命が短く、高い入射効率が必須となる。その為、タングステン標的に電子ビームをあてて作られる陽電子ビームをそのまま入射すると、ビームサイズが大きすぎて入射効率が非常に悪い。そこで、線形加速器途中にダンピングリングを建設し、陽電子ビームのエミッタンスを小さくしてから再加速し、LER(Low Energy Ring:陽電子4GeV)への入射が行われることになる。また、それに伴い、PF-ARについても、4GeV陽電子を入射し、6.5GeVまで加速してユーザー運転を行うことが検討されている。(直接入射路を新たに建設し、6.5GeV電子でtop-upを行う案も検討されている。) ここでは、陽電子ダンピングリングの偏向電磁石及び4極電磁石の磁場測定の途中経過について発表を行う。
 
16:10-18:10 
WEPS042
p.471
J-PARC 3GeV RCS キッカー電磁石電源のサイラトロン運転維持管理
Operation maintenance of the thyratron for the power supply of the extraction kicker magnet in the J-PARC 3GeV RCS

○富樫 智人,渡辺 真朗,菅沼 和明,高柳 智弘,植野 智晶,谷 教夫,渡辺 泰広,金正 倫計(加速器第二セクション)
○Tomohito Togashi, Masao Watanabe, Kazuaki Suganuma, Tomohiro Takayanagi, Tomoaki Ueno, Norio Tani, Yasuhiro Watanabe, Michikazu Kinsyo (Accelerator Section Ⅱ)
 
J-PARC 3-GeVシンクロトロンでは、3GeVに加速した陽子ビームの取り出しに、サイラトロンを採用したキッカー電磁石電源を採用しており年間約5,000時間の連続運転が行われている。連続運転を開始した2009年1月の運転では、約13%であった停止率もサイラトロンの適切なconditioningならびに運転維持管理方法の確立により2012年現在では停止率も0.5% 以下で推移しており安定な運転を継続維持している。本稿では、RCSにおけるサイラトロンの運用に関する統計と、運転維持管理方法について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS043
p.474
SuperKEKB用電磁石電源の開発状況
Development Status of magnet power supplies for the SuperKEKB

○大木 俊征,末野 毅,徳田 登(高エネ研)
○Toshiyuki Oki, Tsuyoshi Sueno, Noboru Tokuda (KEK)
 
現在建設が進められているSuperKEKB加速器の電磁石電源には、高い電流安定度と設定分解能が要求される。使用する電磁石電源には、KEKB加速器で使用してきた電源を再使用するものもあり、これらは適切なオーバーホールを行いつつある。また、各種電源を新規に製作しつつある。昨年度は、ダンピングリング用の電磁石電源の他、偏向電磁石およびウィグラー電磁石を励磁するための、MWクラスの電磁石電源を10台製作した。これらはデジタルフィードバック制御を用いて電流安定度 2ppm/日以下を目指し、16個の20ビットDAC出力をそれぞれ16分の1にしたものを加算して24ビットの電流設定分解能を目指したものである。本報告では、この偏向電磁石およびウィグラー電磁石用電源の性能について紹介する予定である。
 
16:10-18:10 
WEPS044
p.478
大強度加速器のための低インピーダンスキッカー
A low impedance kicker for high intensity proton rings

○大森 千広(KEK)
○Chihiro Ohmori (KEK)
 
J-PARCでは約200kWのビーム運転が行われ始めている。リングの中を周回するビームは加速の後半ではピーク値が100アンペアを超えている。リングの中でビームが作る誘起電磁場によりキッカー電磁石に使用しているフェライトが発熱し、特性が変化する現象が観測され、冷却を強化したキッカーに置き換えるなどの対策が行われている。このようなキッカーの発熱現象はセルンなどでも観測されており、ピーク強度の高い加速器共通の問題となっている。この論文ではフェライトの代わりに薄いリボン構造を持つファインメットのC型形状のカットコアを用いてキッカー磁石をつくることで、ビームの誘起する磁束の影響を減らす効果について述べる。また、この材料はキュリー点が高いため、冷却については条件が緩やかになる。ただし、金属であるため、パルス電流が流れるブスバーとの距離を十分にとる必要がある。小型のカットコアを用いた模型を使ったインピーダンス測定の結果について述べる。
 
16:10-18:10 
WEPS045
p.481
ILC最終収束永久磁石の多極磁場測定用 ローテーティングコイルシステム
Rotating Coil System for ILC Final Focus Magnet Multipole

○北原 龍之介,那須 裕司,不破 康裕,山田 雅子,岩下 芳久(京都大学 化学研究所)
○Ryunosuke Kitahara, Yuji Nasu, Yasuhiro Fuwa, Masako Yamada, Yoshihisa Iwashita (ICR,Kyoto University)
 
多極磁場はビーム光学上重要な要素であり、荷電粒子では四極は集束、その高次要素である六極や八極は非線形成分や色収差の補正に使われる。また冷中性子ビームもその磁気モーメントを使って六極磁場で集束できる。これら多極磁石では半径の冪乗で磁場が増大する。 ILCの最終集束ではnmオーダーに絞ったビームを交差角14mradで衝突させるが、衝突点をすり抜けてきたビームは最終集束磁石の直ぐ横を逃がす必要があり、その外径に制約がある。永久磁石では小型で微細振動の心配のない強力な最終集束系が構成できるため、この試作を行った。 この磁場評価のために、Rotating Coil Systemを用いた多極磁場測定用システムを整備した。測定系の温度依存性を減らすため、線膨張係数の小さい石英ガラスの表面に1ターンのコイルが180度対称位置に2セット印刷されたフレキ基板が貼ってある。両者の和と差を同時記録する事により偶数次と奇数次の成分の分離が可能になる。タンジェンシャルコイルになるが、局所磁場で各コイル位置の校正を行う事が出来、また1ターンであるためコイル位置が明確になるなどの特徴がある。微少電圧を扱う必要上、小型アンプからADCまでをコイル直近の回転系側に置きデジタル化してから、固定系に送信することによりノイズの混入を減らしている。今回、S/N比を上げるために小型アンプなどの回路系を見直し、磁場較正することで、実際に多極磁場の測定を行った。
 
16:10-18:10 
WEPS046
p.485
間接水冷型超耐放射線電磁石の大電流化
Development of Large-Current Indirectly-Cooled Radiation-Resistant Magnets

○高橋 仁,上利 恵三,家入 正治,加藤 洋二,里 嘉典,澤田 真也,白壁 義久,鈴木 善尋,高崎 稔,田中 万博,豊田 晃久,成木 恵(高エネルギー加速器研究機構),野海 博之(大阪大RCNP),広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 亮太郎,山野井 豊,渡邊 丈晃(高エネルギー加速器研究機構)
○Hitoshi Takahashi, Keizo Agari, Masaharu Ieiri, Yoji Katoh, Yoshinori Sato, Shin'ya Sawda, Yoshihisa Shirakabe, Yoshihiro Suzuki, Minoru Takasaki, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Megumi Naruki (KEK), Hiroyuki Noumi (RCNP, Osaka Univ.), Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Ryotaro Muto, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (KEK)
 
J-PARCハドロン実験ホールの二次粒子生成標的直下流という高放射線環境において運転される電磁石コイルとして、我々は、中実型無機絶縁ケーブル(SC-MIC)とSUS配管を用いた間接水冷型コイルを開発、実用化してきた。これまで実用化されたのは、導体断面積78.4mm2のSC-MICを用いたコイルで、真空中でDC1000Aまでの安定な通電に成功している。しかし、そのうち最大のもので1000A通電時の電圧が140Vと、他のビームライン磁石に比べて抵抗が大きくなっており、同サイズのMICを使う限りこれ以上の磁石の大型化が難しい。今後建設が計画されている高運動量ビームライン等にはより大型の磁石が必要になるため、より大電流が流せる間接水冷型MICコイルの開発が急務となっていた。 MICそのものとしては、我々のグループですでに導体断面積168.4mm2の2000A級SC-MICを開発済みである。これを用いた間接水冷型コイルを実用化するにあたっては、その冷却効率が問題であった。これまでの経験から、最も問題となるのは、SUS配管と共に半田中に埋められるコイル本体ではなく、そこからむき出しになる端末リード部であることが分かっている。そこで我々は今回、コイルの端末リード部だけを切り取ったような試験サンプルを用意して、通電試験を行った。 本発表では、その試験結果について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS047
p.489
シンクロトロン電磁石におけるコンデンサを用いたエネルギー貯蔵と電力変動抑制技術
A Capacitive Energy Storage System for Synchrotron Magnet

○小関 国夫,栗本 佳典,森田 裕一(高エネルギー加速器研究機構)
○Kunio Koseki (KEK IPNS), Yoshinori Kurimoto, Yuichi Morita (KEK)
 
J-PARCではビーム強度増強のための様々な研究開発が行われている。シンクロトロンにおいてビーム強度を上げるための一つの手段として加速サイクルを速める事がある。しかしこのためには、電磁石電源の瞬時出力電力を上げる必要があり、これに伴って交流電力系統での電力変動が問題になる。この問題を解決するため、古くはフライホイール発電機の利用や、最近では超電導コイルによるエネルギー貯蔵(SMES ; Superconducting Magnetic Energy Storage)が検討されてきた。フライホイール発電機では力行及び回生動作時に発生するトルクに起因してシャフトの長期信頼性やメンテナンス性等の問題点があり、SMESでは急峻な励磁電流変化によるクエンチや電磁応力等の懸案事項が残る。  近年の自己回復能力を有するフィルムコンデンサの技術進歩は目覚ましく、現在我々は、コンデンサを用いたエネルギー貯蔵装置の開発を行っている。自励式半導体素子であるIGBTを用いた整流回路によりエネルギー貯蔵用コンデンサバンクの電圧をパターン電圧制御し、電磁石に蓄えられた磁気エネルギーをコンデンサバンクへ高効率に回生し、次のサイクルで再利用する技術を開発したので報告する。またこの技術により受電電力を大幅に低減し、シンクロトロンにおける運転経費を大幅に削減する目処を得たので併せて報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS048
p.493
大電力NPCインバータの開発
Development of a High Power NPC Inverter

○小関 国夫,栗本 佳典,森田 裕一(高エネルギー加速器研究機構)
○Kunio Koseki (KEK IPNS), Yoshinori Kurimoto, Yuichi Morita (KEK)
 
電磁石電源では変換器の中性点電圧の変動により発生するコモンモード電流が様々な弊害をもたらす事が報告されている。電磁石電源で利用されている変換器では、自励式半導体素子を高周波でスイッチングする事により力行と還流を交互に繰り返し、出力電流を高精度で制御している。既存のインバータでは還流時に出力両端が高電圧にクランプされており、これによりコモンモード電圧を負荷に印加する事になる。これに対してNPC(Neutral Point Clamped)インバータでは還流動作時の出力端子がグランド電位にクランプされる事になるので、コモンモード電圧を原理的に発生しない。現在までにIGBTを用いたNPCインバータを加速器電源に応用した例は無く、現在高エネルギー加速器研究機構では大電力出力のNPCインバータを先行して開発している。インバータ装置ではスイッチングモードの切り替え時に発生するサージ電圧を低減する事が機器の長期信頼性を高める上で非常に重要となる。今回開発したNPCインバータでは内部構造や配線を最適化する事により300kVAの大電力出力における安定動作を達成したので詳細を報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS049
p.497
NPCインバータを用いた電磁石電源のコモンモードレス運転
A Common Mode-less Power Supply Operation with NPC inverters

○栗本 佳典,小関 国夫,森田 裕一(高エネルギー加速器研究機構)
○Yoshinori Kurimoto, Kunio Koseki, Yuichi Morita (KEK)
 
J-PARC主リングでは、1 MW級の出力ビームを達成するため、現状2.5秒の繰り返し周期を1秒程度に縮めることを目標としている。これを達成する為には、電磁石電源の置き換えは必須である。 この電磁石電源に要求される出力電流精度はppmレベルであり、このような高精度な電源では、主回路から大地へ流れる同相電流によるノイズの寄与が無視できない。しかし、一般的なHブリッジインバーターでは、特定のスイッチングモードで主回路の中性点電位が対地から浮き、同相電流が原理的に流れる。その対策として、同相電流用フィルターや、インバーター二台を直列接続し、中点を接地する方法が知られる。 また、産業界ではHブリッジインバーターの他に、NPCインバーターとよばれる方式も使用されている。NPCインバーターはV, V/2,0,-V/2,-V (Vは直流充電電圧)の5つのレベルをもち、負荷に流れる高調波成分を減らす用途で使用されていた(HブリッジはV,0,-Vの3レベル)。   我々は、J-PARC主リングの新しい電磁石電源としてNPCインバーターを用い、さらにその出力可能なレベルのうち、出力の中性点電位が0である、V,0,-Vの三つのみを使用し同相電流を原理的にゼロにする事を提案し、実験室での原理実証を行った。この方式の場合は、インバーター一台で、かつ同相電流用フィルターの規模を大幅に縮小する事ができる。本発表では、NPCインバーターの動作原理および原理実証実験の結果を報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS050
p.500
電磁石電源における追従誤差除去の新方式
A new method for rejecting tracking error in magnet power supplies

○栗本 佳典,小関 国夫,森田 裕一(高エネルギー加速器研究機構)
○Yoshinori Kurimoto, Kunio Koseki, Yuichi Morita (KEK)
 
 J-PARC主リングでは、1 MW級の出力ビームを達成するため、現状2.5秒の繰り返し周期を1秒程度に縮めることを目標とし、新電磁石電源の開発を精力的に進めている。 電磁石電源の出力電流は、電流指令値(以下、電流パタン)に対して偏差をもつ。特に、系の伝達関数で決まる過渡応答現象による電流偏差(以下、追従誤差)は、繰り返し周期が短く、即ち電流指令値の変化が大きくなるにつれ、深刻なビームロスの原因となる。 以前から、追従誤差を減らす対策として、実際の通電で得られた電流偏差から負荷定数を逆算して、電源の出力電圧をフィードフォワードする方法が考えられていたが、この場合、逆算された負荷定数に速い成分(50 Hz-数百Hz)の電流偏差(以下、リプル)が重畳されてしまう。また、他の対策として電流パタンを滑らかに補間する工夫がなされているが、出力フィルタの次数によっては、電流パタンが滑らかでも電源出力電圧が不連続な場合がある。 我々は、これらを解決するため、電流偏差から負荷定数を逆算するプロセスを複数サイクル行い、得られた各サイクルの負荷定数を平均化しリプル成分を打ち消す方法、および 電源の出力フィルタ等の寄与も考慮した出力電圧が滑らかになる電流パタンを考案した。さらに、ノイズレベルが1 ppm以下の24bit A/D変換ボードを含む、デジタルフィードバックシステムを開発し、考案した手法で追従誤差をゼロにできる事を示した。
 
16:10-18:10 
WEPS051
p.503
電磁石パターン磁場の高精度計測と渦電流の補正方法
High Precision Measurement of Transient Magnetic Field and Compensation of Eddy Current Effect for Magnets

○森田 裕一,小関 国夫,栗本 佳典(高エネルギー加速器研究機構)
○Yuichi Morita, Kunio Koseki, Yoshinori Kurimoto (KEK)
 
現在J-PARC主リングでは繰り返し周期を現行の2.6秒から1秒程度にまで速める事によってビーム強度をMWクラスへ増強する事が検討されている。このためには電磁石のパターン運転周期を速める必要があり、その結果、電磁石の端板等に流れる渦電流により磁場がパターン電流に追従しないという問題が発生する。そこで、パターン磁場を高精度に検出し、電流・磁場伝達関数を算出する事によって、全ての電磁石において相似なパターン磁場を発生させる方式を考案した。上記補正方法の妥当性を検証するため、偏向電磁石を用いたパターン磁場測定を行い、これを取り入れたフィードバックシステムにより磁場の補正試験を行った。本発表では、偏向電磁石を用いたパターン磁場の高精度計測及び、磁場補正方法の実証試験結果について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS052
p.506
SPring-8蓄積リングにおけるブロック型と積層型四極電磁石の磁場特性比較
Comparison of magnetic characteristics between laminated type and massive type of quadrupole magnet in the SPring-8 storage ring

○中西 辰郎,満田 史織,深見 健司,張 超,妻木 孝治(公益財団法人高輝度光科学研究センター),長谷川 誠,鍛治本 和幸(スプリングエイトサービス株式会社)
○Tatsurou Nakanishi, Chikaori Mitsuda, Kenji Fukami, Chao Zhang, Koji Tsumaki (JASRI), Makoto Hasegawa, Kazuyuki Kajimoto (SES)
 
2011年SPring-8蓄積リングの新規挿入光源ID43設置による長直線部のビームオプティクス変更に伴い四極電磁石2台を新たに製作し設置した。新規四極電磁石は製作台数が少ない為、従来型の形状を踏襲しつつ積層鋼板を使用せずに、ブロックからの削り出しにより製作を行った。製作方法により励磁特性の相違が運用上問題ないことを確認する為、SPring-8蓄積リング内の既存の積層型四極電磁石と励磁特性の比較を行った。測定の結果から、いくつかの明確な違いが以下の様に見られた。1.初期化パターンの相違:ブロック型においては0.01%の磁場再現性を実現するのに積層型より多くの初期化経験をさせる必要がある。2.GL積の相違:磁石設計は材質以外は磁極長、ポール形状を含め同構造となっているが600A付近で10%ブロック型の方が大きかった。3.多極成分含有率:殆どの成分が積層型と同等かそれ以下である。4.磁場中心電流値依存性:電流値に対する磁場中心の変化幅は、過去に測定した積層型の統計に対して、各電流値で1σ以内に収まっていた。5.磁場中心位置:機械中心から磁場中心までの距離は、ブロック型では過去の積層型の平均と比べると最大40μm大きかった。ブロック型電磁石は独立電源で励磁されるため上記既設電磁石との相違は運用上問題ない水準であり、局所的に独立電源にてブロック型電磁石を追加配置することの可能性が開けた。
 
16:10-18:10 
WEPS053
p.511
J-PARC 3GeV RCS用キッカーマグネットの製作
Fabrication of Kicker Magnet for 3GeV RCS in J-PARC

○菅沼 和明,荻原 徳男,金正 倫計(原子力機構 J-PARC)
○Kazuaki Suganuma, Norio Ogiwara, Michikazu Kinsho (JAEA J-PARC)
 
東日本大震災後に予備機として製作したRSC用のキッカーマグネットについて報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS054
p.514
阪大RCNPのAVFサイクロトロンのGradient Correctorの設計・開発
Design and Development of Gradient Corrector for the RCNP AVF cyclotron

○植田 浩史,福田 光宏,畑中 吉治,濵谷 紀彰,依田 哲彦,田村 仁志,永山 啓一,木林 満,齋藤 高嶺,安田 裕介,森信 俊平(大阪大学核物理研究センター)
○Hiroshi Ueda, Mitsuhiro Fukuda, Kichiji Hatanaka, Noriaki Hamatani, Tetsuhiko Yorita, Hitoshi Tamura, Keiichi Nagayama, Mitsuru Kibayashi, Takane Saito, Yusuke Yasuda, Shunpei Morinobu (RCNP, Osaka University)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)のAVFサイクロトンの引出ビームの集束力と、引出ビーム軌道とビーム輸送ラインの整合性を改善するため、サイクロトン出口部の磁気チャンネルの下流にある既存の磁気シールドと置換して、偏向機能を付加した新型のグラディエントコレクターを設置することを検討した。これまでの検討により、65MeV陽子のビームに対しては、グラディエントコレクターの設置位置で、ビーム進行方向250mmに亘って4.0~8.3 T/mの磁場勾配が必要であることがわかっている。その他の場合でも、839MeVの129Xe29+、14MeVの陽子に対して、それぞれ5.5~12 T/m、1.8~3.8T/mの磁場勾配が必要である。グラディエントコレクターは鉄心を分離して向かい合わせた 4極型にし、メインコイルの励磁レベルに依らずに直線状の磁場勾配が得られるように磁極形状を最適化した。さらに、左右の磁極のリターンヨーク部分にコイルを巻き、サイクロトロンからの漏れ磁場を考慮して、起磁力を独立に変えることによって互いに逆向きの磁場が発生するようにし、磁場勾配を調整可能にした。講演においては、AVFおよびその周囲磁場計算およびこれらに基づくラディエントコレクターの設計・開発について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS055
p.517
RIビームファクトリー固定周波数サイクロトロン(fRC)の改造
Upgrade of RIKEN fixed-frequency Ring Cyclotron

○熊谷 桂子,福西 暢尚,藤巻 正樹,真家 武士(理化学研究所)
○Keiko Kumagai, Nobuhisa Fukunishi, Masaki Fujimaki, Takeshi Maie (Riken)
 
固定周波数サイクロトロン(fRC)は理研仁科センターのRIビームファクトリーの複合加速器群の一翼を担う重イオンリングサイクロトロンである。K値は590MeVであり、RIビームファクトリー計画においては主にウランビームを核子あたり50MeVまで加速するのに用いられる。fRCは2006年に運転開始され、標準的な運転では71価のウランイオンを90%以上の効率で加速できている。しかしながら、71価のイオンを得るためにfRC上流に設置された炭素薄膜を用いた荷電ストリッパーの寿命が12時間程度と短いことが施設の長時間安定運転における1つの課題となっていた。この問題を解決するために理研では安定に動作するガスストリッパーを開発した。そのR&Dの結果、fRCが64価あるいは65価のウランイオンを加速することが出来れば、炭素薄膜ストリッパーとほぼ同等のビーム強度でストリッパーの寿命を原理的に無限大にすることが可能になることがわかった。  64価あるいは65価のウランイオンを加速するためには、サイクロトロンのメイン磁場を増強する必要があり、メイン磁場用電磁石電源、および一部のトリムコイル電源の増強、入出射用電磁石または電源の増強、磁場の増強に伴い飛躍的に増加する電磁石まわりの漏れ磁場による入射ビーム軌道の補正などの各種改造を行った。  本発表では改造の詳細と、メイン磁場の磁場測定の結果を示し、65価のウランイオンを加速できる見通しであることを報告する。 
 
16:10-18:10 
WEPS056
p.522
並列安定化回路による高ビット電磁石電源
High Bit Magnet Power Supply with Parallel Regulator

○尾崎 俊幸(高エネルギー加速器研究機構)
○Toshiyuki Ozaki (KEK)
 
ERLにおいて、その低エミッタンス・高輝度ビームを安定した軌道に導くためには、非常に安定した磁場が必要である。これまでの電磁石の励磁電源は、サイリスタやIGBTなどを電圧源にして、負荷である電磁石と直列に配線されたトランジスタバンクで、そのトランジスタの抵抗を変える事で、定電流動作を実現してきた。通常は、16bitのDACの電圧と電流計測器(DCCT)の出力電圧をアナログ比較し、その差をフィードバックした。 今回の提案は、定電流電源からの電流を、電磁石負荷と並列に配置された1個トランジスタを可変抵抗として調整するものである。従って、やや多い電流を電源から供給する必要がある。つまりトランジスタは電流吸い取り動作を行う。 今回の試作器は、PF-ARで使用している定格10Aの16bitステアリング電源を電流源として用い、高精度DCCTの出力を24bitのADCで読み、デジタル化された数値を比較し、16bitで補正できる範囲は上記電源で、さらに微小な電流は、8bit制御の並列トランジスタで補正する事にした。この試作器で、原理的な安定化動作が確認できたので報告する。さらに、実際の高精度電源を実現するためには、電流データ(時系列データ)の処理プログラムが必要であり、これを論じる。
 
16:10-18:10 
WEPS057
p.525
Bucket-by-bucket On-axis/Off-axis 入射用キッカーのベンチ試験
Bench test of Fast Kicker for Bucket-by-bucket On/Off-axis Injetion

○中村 剛(高輝度光科学研究センター),安積 隆夫(理化学研究所),出羽 英紀,小林 和生,藤田 貴弘,正木 満博,佐々木 茂樹,大熊 春夫(高輝度光科学研究センター)
○Takeshi Nakamura (JASRI/SPring-8), Takao Asaka (RIKEN/SPring-8), Hideki Dewa, Kazuo Kobayashi, Takahiro Fujita, Mitsuhiro Masaki, Shigeki Sasaki, Haruo Ohkuma (JASRI/SPring-8)
 
SPring-8 では、狭小なダイナミックアパチャの蓄積リングへの入射を可能とするための、キック分布可変高速ストリップラインキッカーを開発している。この高速キッカーは、2ns 間隔のRFバケット単位でのキックの発生が可能であり、かつ、電極配位を工夫して、電極駆動電圧の振幅・極性を変えることにより、on-axis 入射用の双極キックから、off-axis 入射用の4極キックまで、キック場分布が連続可変となっている。SPring-8 IIなどの将来計画で検討中の超低エミッタンスリングでは、強力な4極磁石を用いて分散を抑制しているため大きな自然クロマティシティを持つが、この補正を、抑制された小さな分散で行わなければならず非常に強い6極磁石が必要となる。これにより、リングのダイナミックアパチャは、入射点のベータ関数を大きくとっても2mm程度に制限されるので、従来の入射システムでは対応が非常に困難である。本キッカーはこれを解決するために考案され、蓄積ビームに与える影響を最小化した off-axis 入射を実現し、かつ、コミッショニング時など、アパチャが狭くon-axis 入射が必須な際にも、100mAの実用電流での運転を実施可能と期待される。現在、製作した試験機について、ビームテストにむけてのベンチ試験を行なっている。 この発表では、キッカーの構造、電磁場分布計算、およびベンチでの、時間・周波数特性、高電圧駆動パルス印加試験について、報告する予定である。
 
16:10-18:10 
WEPS058
J-PARC 3GeV RCS 可変偏向電磁石の磁場測定
Field Measurement of pulse dipole magnet for J-PARC 3GeV RCS
○谷 教夫,高柳 智弘,植野 智晶,原田 寛之,サハ プラナブ,富樫 智人,堀野 光喜,林 直樹(原子力機構/J-PARC)
○Norio Tani, Tomohiro Takayanagi, Tomoaki Ueno, Hiroyuki Harada, Pranab Saha, Tomohito Togashi, Koki Horino, Naoki Hayashi (JAEA/J-PARC)
 
J-PACR 3GeVシンクロトロンでは、入射エネルギーを400MeVに向上させるに当たって、入射ビームの位置を変化させずに、パルス毎に傾きのみを変える可変偏向電磁石の開発を行った。この電磁石はリニアックからRCSへのビーム移送ライン(L3BT)の最終段に設置される。可変偏向電磁石の運転にはペイント入射とセンター入射の2つの運転モードが存在する。ペイント入射ではMRとMLFのビームサイズ(emittance)を切り替える運転で、センター入射では入射ビームを周回ビームの全て同じ位相空間上に入れる運転である。電磁石は、前者がパルス励磁で後者がDC励磁で行われる。そのため、磁場測定も2つの運転モードに即した励磁波形で行われる。本発表では、可変偏向電磁石で現在行われている磁場測定試験について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS059
p.528
J-PARC MR 遅い取出しダイナミックバンプ制御システムの改善
Improvement of J-PARC MR Slow Extraction Dynamic Bump Control System

○柳岡 栄一,木村 琢郎,五十嵐 洋一,冨澤 正人(高エネルギー加速器研究機構)
○Eiichi Yanaoka, Takurou Kimura, Youichi Igarashi, Masahito Tomizawa (KEK)
 
J-PARC MR 遅い取出しでは、取出しの際にバンプ軌道をつくっている。ビームロスの低減為の動的バンプシステムでは、チューンの変化にあわせて、リアルタイムに軌道の調整を行っている。本システムは、2009年11月に完成したが、制御システムに不安定な部分がある。 電磁石電源の制御は、チューンの変化を検出するため、取出し四極電磁石の電流値と主四極電磁石の一つのファミリーの電流値をつかっている。電磁石電源の制御の為の入力信号用アンプとDACの安定性向上をおこなった。
 
16:10-18:10 
WEPS060
p.531
広いダイナミックレンジを持つ高精度パルス電磁石電源の設計
Design of a High-Precision and Wide Dynamic Range Pulsed Magnet Power Supply

○渡辺 泰広,谷 教夫(原子力機構),井上 圭吾(日本アドバンスドテクノロジー)
○Yasuhiro Watanabe, Norio Tani (JAEA), Keigo Inoue (NAT)
 
J-PARC 3GeVシンクロトロンでは、入射時に励磁するバンプ電磁石の端部から生じる四極成分を補正するため、パルス四極電磁石の設置を検討している。本論文では、パルス四極電磁石を励磁するための電源の設計について検討する。
 
16:10-18:10 
WEPS061
p.534
サイクロトロンにおける短時間ビーム切替のための電磁石励磁と過渡的磁場変動
Excitation of the Cyclotron Magnet and Transient Variation of the Magnetic Field for a Fast Beam Change

○福田 光宏(阪大RCNP),奥村 進,宮脇 信正,湯山 貴裕,石坂 知久,倉島 俊,柏木 啓次,吉田 健一,石堀 郁夫,百合 庸介,奈良 孝幸,横田 渉(原子力機構高崎研),畑中 吉治,依田 哲彦(阪大RCNP)
○Mitsuhiro Fukuda (RCNP, Osaka University), Susumu Okumura, Nobumasa Miyawaki, Takahiro Yuyama, Tomohisa Ishizaka, Satoshi Kurashima, Hirotsugu Kashiwagi, Kenichi Yoshida, Ikuo Ishibori, Yosuke Yuri, Takayuki Nara, Watalu Yokota (JAEA, Takasaki), Kichiji Hatanaka, Tetsuhiko Yorita (RCNP, Osaka University)
 
サイクロトロンにおいて加速イオン種・エネルギーを短時間で切り替えるためには、電磁石の再励磁時間の短縮と磁場の安定性・再現性の向上が求められる。従来は、磁極のヒステリシス効果による励磁磁場の差異を最小限に抑えるため、メインコイルを一旦最大電流まで通電して磁場を飽和させ、初期状態の違いをキャンセルした後に数分毎に励磁電流を増減させて設定値に収束させるサイクリング励磁法を(所要時間約30分)採用してきた。設定磁場への到達時間を十数分以内に短縮し、且つ短時間で高安定な磁場を形成するためには、ヒステリシス損失や渦電流損失などに起因する鉄心内の磁化の遅れを抑制する必要があり、励磁レベルに応じた励磁パターンの最適化が求められる。そこで、3次元の過渡的磁場変動解析により、1Tを超える高磁場励磁にはメインコイル電流を単調に70秒程度で設定値まで増加させる方法が、0.6~1T程度の中磁場励磁には一旦飽和状態に励磁した後で励磁レベルを上下させながら約15分程度で設定値に収束させるサイクリング励磁法が、0.6T以下の低磁場励磁には完全に飽和させずに励磁レベルを周期的に上下に数回変えることによって設定値に7~8分程度で収束させる励磁法が有効であることを明らかにした。これにより、いずれの励磁法でも、励磁後、20~30分程度で、⊿B/B≦1×10**-4の安定度が得られることが解析により確認でき、実励磁試験においてもそれが実証された。
 
16:10-18:10 
WEPS062
理研リングサイクロトロン(RRC)の電磁石の老朽化
Present status of RIKEN Ring Cyclotron Magnets
○渡邉 裕,今尾 浩士,奥野 広樹,加瀬 昌之,上垣外 修一,熊谷 桂子,込山 美咲,坂本 成彦,須田 健嗣,長瀬 誠,福西 暢尚,藤巻 正樹,眞家 武士,山田 一成(理研仁科センター),石川 盛,小高 康照,小林 清志,小山 亮,柴田 順翔,月居 憲俊,仲村 武志,西田 稔,西村 誠,濱仲 誠,福澤 聖児,矢冨 一慎(住重加速器サービス(株))
○Yutaka Watanabe, Hiroshi Imao, Hiroki Okuno, Masayuki Kase, Osamu Kamigaito, Keiko Kumagai, Misaki Komiyama, Naruhiko Sakamoto, Kenji Suda, Makoto Nagase, Nobuhisa Fukunishi, Masaki Fujimaki, Takeshi Maie, Kazunari Yamada (RIKEN Nishina Center), Shigeru Ishikawa, Yasuteru Kotaka, Kiyoshi Kobayashi, Ryo Koyama, Junsho Shibata, Noritoshi Tsukiori, Takeshi Nakamura, Minoru Nishida, Makoto Nishimura, Makoto Hamanaka, Seiji Fukuzawa, Kazuyoshi Yadomi (SHI Accelerator Service Ltd.)
 
理研リングサイクロトロン(RRC)は,1986年から稼働し、完成から25年以上経過している.RRCには3つの入射系があるが,それらの最初に位置するサイクロトロンとして,様々な重イオンビームを供給してきた.2007年からはRIBFの稼働,2010年からはRILAC2の稼働により,RRCは重イオンビーム供給のための第1サイクロトロンとして,さらに数多く稼働することになる.しかしながら,近年,RRCは経年劣化に伴うと思われる故障が相次いでおり,それらの補修や交換,あるいは新しい機器の製作を進めている.本発表では,メインコイルレアショート,トリムコイル部サブチェンバー水漏れ,RFフィーダー部真空漏れなど,RRCにおけるメンテナンス状況について報告する.
 
16:10-18:10 
WEPS063
p.538
速い繰り返しの電磁石における高精度トラッキング制御
High Precison Tracking Control for Rapid Cycling Mangets

○渡辺 泰広,谷 教夫(原子力機構),安達 利一,染谷 宏彦,入江 吉郎(高エネルギー加速器研究機構)
○Yasuhiro Watanabe, Norio Tani (JAEA), Toshikazu Adachi, Hirohiko Someya, Yoshiro Irie (KEK)
 
J-PARC RCSの主電磁石は、1種類25台の偏向電磁石と7種類合計60台の四極電磁石から構成されている。各電磁石ファミリは独立した共振回路により励磁され、電流パターンは、直流バイアスされた25Hzの正弦波交流波形である。各電磁石ファミリ間の磁場トラッキング精度を向上させるためには、電流に対する磁場の非線形特性の他に、25Hzという速い繰り返しにより生じる渦電流が磁場に与える影響を考慮する必要がある。 本論文では、偏向電磁石はロングフリップコイル、四極電磁石ではハーモニックコイルを用いた動磁場測定シス テムを用いて、各電磁石ファミリが正弦波磁場を得るための電流パターンを求めるとともに、渦電流による25Hz 交流磁場の遅れを電流位相調整で補正することにより、磁場トラッキング精度を向上させることを検討した。
 
16:10-18:10 
WEPS064
p.541
Simplified Analytical Approach to the Beam Ripple Generation Mechanism of the J-PARC MR Slow Extraction Beams
○Yoshihisa Shirakabe (IPNS, KEK)
 
The 30 GeV proton beams are being stably extracted at the J-PARC Main-ring (MR) slow extraction system to supply toward the downstream Hadron Experimental Facilities, however presently the large beam ripples deteriorate the experiments qualities, while the ripple generation mechanisms are still not well understood yet. In order to achieve the better understanding of the beam ripple generation mechanism, a simplified analytical approach is taken, and some of the so far obtained results are presented. The origin of the beam ripples can mainly be attributed to the magnetic field ripples of the main bending and quadrupole magnets of the MR. The simplified model of the magnet circuit allows the analytical solution with the ramping pattern magnet current. The dependence of the magnetic field ripples on the circuit parameters are discussed.
 
16:10-18:10 
WEPS065
p.546
UVSORにおけるパルス六極電磁石を用いた入射システムの研究
STUDY OF PULSED SEXTUPOLE MAGNET SYSTEM FOR BEAM INJECTION AT UVSOR

○肥田 洋平(名古屋大学),全 炳俊(京都大学),山本 尚人(名古屋大学),阿達 正浩,林 憲志,山崎 潤一郎,田中 誠一(分子研),保坂 将人,高嶋 圭史(名古屋大学),加藤 政博(分子研)
○Yohei Hida (nagoya university), Heishun Zen (kyoto university), Naoto Yamamoto (nagoya university), Masahiro Adachi, Kenji Hayashi, Jun-ichiro Yamazaki, Seiichi Tanaka (IMS), Masahito Hosaka, Yosifumi Takashima (nagoya university), Masahiro Katoh (IMS)
 
ストレージリングへのビーム入射には、複数台のキッカー電磁石を用いてバンプ軌道を形成する方法が採られてきた。本研究ではこれに代わる入射方法として、パルス多極電磁石を用いた入射方法を検討する。これは磁極中心を通る蓄積ビームには影響を与えず、中心から離れた入射ビームのみに蹴りを加えることで運動の安定領域に収束させる入射方法である。従来の入射に比べ、バンプ軌道を形成する必要がなく、蓄積ビームの重心移動がないため、恒常的にシンクロトロン光が利用できる。また入射装置の簡略化等も期待できる。 UVSOR-Ⅱでは、3台のキッカー電磁石を用いた入射方式を採用しているが、UVSOR-Ⅲへのアップグレード時に、パルス六極電磁石を用いた入射システムの導入を検討している。この方法は既に大型放射光施設で導入されているが、本施設のような小型施設では、大型施設に比べバンプ軌道の比率が大いため、パルス六極電磁石を用いることの意義は大きい。しかし、電子周回周期が小さいため、短パルス電源が要求される等の課題もある。 本研究では、UVSORにこのシステムを導入するために、自作プログラムによる入射ビームの軌道シミュレーションから、必要な磁場の値を算出し、パルス六極電磁石の設計を行った。そして今春、納品された電磁石の磁場測定を行い、秋ごろに入射実験を行う予定である。本発表では、特にこの磁場測定の様子や、中心磁場の補正について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS066
p.551
UVSOR新オプティカルクライストロンのための バンチャー電磁石の設計とその性能評価
Design and performance of the buncher for new optical klystron at UVSOR

○植松 遥平,高嶋 圭史,関田 創(名大),保坂 将人,山本 尚人(名大SRセンター),阿達 正浩,山崎 潤一郎,林 憲志,田中 誠一,加藤 政博(分子研),全 炳俊(京大エネ研)
○Youhei Uematsu, Yoshifumi Takashima, Sou Sekita (Nagoya Univ), Masahito Hosaka, Naoto Yamamoto (Nagoya Univ SR Center), Masahiro Adachi, Jun-ichirou Yamazaki, Kenji Hayashi, Seiichi Tanaka, Masahiro Katoh (IMS), Heishun Zen (IAE, Kyoto Univ)
 
現在、分子科学研究所UVSOR-Ⅱでは、高調波やテラヘルツ光、FELといった光源の開発を行っている。そのために現在リング内に新直線部を設け、2台の可変偏光型アンジュレータを設置した。この2つのアンジュレータの間にバンチャー電磁石を設置し、オプティカルクライストロンを構成した。バンチャーとは、磁場によって水平方向にバンプ軌道を形成し、これによりエネルギー変調を密度変調に変換することで電子ビームにマイクロバンチングを形成する装置である。このマイクロバンチングによって目標とするコヒーレント光を発生させる。バンチャー電磁石は、以下の3つの条件を満たす設計を行った。 1.2台のアンジュレータ間の限られた空間に設置可能であること。 2.様々な光源開発に対応するため、R56の最大値72 μmを実現できること。 3.コストを考慮し、コイル部分は間接水冷で使用できること。 設計は3次元磁場計算コードRadiaを使用し、発生磁場のシミュレーションを中心に行った。オプティカルクライストロンのスペクトル (バンチャー電磁石による2台のアンジュレータから発生する放射光の干渉スペクトル) の測定を行い、シミュレーションによる計算値との比較によって、オプティカルクライストロンシステムの性質を調べた。本発表では、バンチャー電磁石設計の詳細とその性能評価、また本オプティカルクライストロンを用いたコヒーレント放射光源の概要について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS067
p.556
J-PARCにおけるミュオンキッカーのノイズ対策
Measure to Reduce the Muon Kicker Noise at J-PARC

○藤森 寛,入江 吉郎,小嶋 健児,長友 傑(高エネ研),坂田 茂雄,目黒 学,黒澤 宣之(日本アドバンストテクノロジー),ストラッサー パトリック,三宅 康博(高エネ研)
○Hiroshi Fujimori, Yoshiro Irie, Kenji Kojima, Takashi Nagatomo (KEK), Shigeo Sakata, Manabu Meguro, Noriyuki Kurosawa (NAT), Patrick Strasser, Yasuhiro Miyake (KEK)
 
J-PARC物質生命科学実験施設ミュオンセクションではミュオン標的から生成されるダブルパルミュオンを二つのシングルパルスに分別し、二箇所の実験室に振り分けるキッカーシステムが導入された。ところが、導入当初はキッカーを励磁した際、検出器へのノイズの影響が大きく、実験にはほとんど使えない状況であった。その後、アースラインの整備および放射ノイズ遮蔽を施すことによってノイズレベルの低減を図り、一部の検出器では実験可能なところまできた。しかし、全ての検出器でキッカーノイズの影響をなくすためには、更なるノイズ低減が必要である。本学会では今までに施したノイズ対策およびその改善・効果について報告し、今後の方針について提案する。
 
16:10-18:10 
WEPS068
p.559
J-PARC MR主電磁石電源の可変制御ゲインによる追従性向上
Tracking-error reduction with variable feedback gain of Main Magnet Power Supplies in J-PARC MR

○中村 衆,山田 秀衛,平松 成範(KEK加速器)
○Shu Nakamura, Shuei Yamada, Shigenori Hiramatsu (KEK)
 
J-PARC MRの主電磁石電源において、電源制御量(≒IGBTゲート幅)に対する出力電圧の応答が非線形であるという問題がある。そのため、ビーム加速のために出力電流を徐々に上げていく途中で、電流追従性が悪化する点が存在する。ビーム加速時間を1.9秒から1.4秒に短縮した際に、この非線形応答による影響が無視できなくなるほど電流追従性が悪化する事がわかっていた。この非線形応答は制御ブロック図において、制御フィードバックゲインの変化として表せる。そのため、これへの対処として意図的に制御ゲインを変化させる可変ゲインを組み込むことを考えた。この可変ゲインは非線形応答の逆数に近似した物とすることで、擬似的に変換器ゲインを線形応答に見せることができる。この可変ゲインの導入によって、1.4秒加速においても電流追従性を保つことができた。
 
16:10-18:10 
WEPS069
p.562
KEKB入射器におけるSuperKEKB陽電子ビームライン用ビーム位置モニターの開発
Development of Beam-Position Monitor for the SuperKEKB Positron Beam Line at the KEKB Injector Linac

○諏訪田 剛,佐藤 政則(高エ研・加速器研究施設)
○Tsuyoshi Suwada, Masanori Satoh (KEK, Accelerator Laboratory)
 
KEKB入射器では,次期計画であるSuperKEKBに向けた入射器増強とその高度化が進行中である.これを受けて陽電子ビームライン用の大口径ビーム位置モニターの開発を開始した. 入射器のビーム位置モニター(BPM)は、1995年KEKB計画に向けた入射器増強時に開発したもので、従来型のストリップライン型BPM(電極間内径 φ = 27 mm)である.開発終了後設置された約100台のBPMは、1997年KEKBリングへの入射開始以来、約13年に渡り入射器の安定運転に貢献してきた(2010年KEKB終了).データの読出し系を含め、その位置分解能はσ ~ 0.1 mmであった.2012年、陽電子ビームラインの増強に伴いBPMの大口径化(電極間内径 φ > 60 mm)が要請された.増強にあたりBPMに要求される位置分解能はσ ~ 0.01 mmである.そこで、BPM本体の製造法から始まり全体設計を再度見直すことにした.特に、従来では充分検討していなかった重要なパラメータである電極開口角や電極間の結合度等の最適化を行うための等価回路モデルを構築することにした.モデルの実験的検証を行うためにストリップライン電極の電気特性試験においてもその測定を丹念に行うことにし、特性試験の結果を元に電極の電磁場応答を適切なモデルと比較することでBPM電極部の最適化を行った.本学会では、ストリップライン電極部の製造法、電気回路によるモデル計算と電気特性試験結果の詳細について報告する.
 
16:10-18:10 
WEPS070
p.567
SACLAにおける電子ビーム到達時間測定
MEASUREMENT OF ELECTRON BEAM ARRIVAL TIMING AT SACLA

○大島 隆,前坂 比呂和(理研),松原 伸一(高輝度光科学研究センター),大竹 雄次(理研)
○Takashi Ohshima, Hirokazu Maesaka (RIKEN), Shin-ichi Matsubara (JASRI), Yuji Otake (RIKEN)
 
XFEL施設であるSACLAでは2012年3月からユーザー運転が開始されている。この施設では安定な時間基準信号をビームモニタやユーザー実験装置に供給することが重要である。X線が実験ステーションに到達する時間は電子ビームの到達時間に依存する。そこで、我々はrf-bpmに現れるビーム誘起信号のRF基準信号に対する位相差を測定することにより、電子ビームの到達時間の測定を行ってユーザーにその情報を供給している。100ショットのビームに対してbpmを用いて測定した到達時間の標準偏差はおよそ70fsであった。この到達時間は、RF基準信号の伝送に使用される光ファイバの長さの変動によっても変化し、これは測定確度を悪化させる。この変動の寄与を見積もる為に、我々は18台のIDが設置された光源棟セクションの入り口と出口のbpmで測定した到達時間の差を測定した。この差は1日の測定において100fsP-P以下であった。このことから、X線の到達時間の情報を与える電子ビームの到達時間の測定は、100fs以下の精度が得られていることになる。これは現時点でのユーザー実験においては許容できる性能である。
 
16:10-18:10 
WEPS071
p.571
J-PARCリニアックにおける位相モニタの製作と性能評価
Design and Performances of Phase Monitor in J-PARC Linac

○宮尾 智章,五十嵐 前衛(高エネルギー加速器研究機構),三浦 昭彦(日本原子力研究開発機構),真山 実(三菱電機システムサービス)
○Tomoaki Miyao, Zenei Igarashi (KEK), Akihiko Miura (JAEA), Minoru Mayama (Mitsubishi SC)
 
J-PARCリニアックでは現在、TOF(Time-of-Flight)法を用いてビームエネルギー計算に使用している装置を含め、ビームラインには61台の位相モニタ(FCT: Fast Current Transformer)が用いられている。将来、ACS(Annular Coupled Structure)セクションにはエネルギー増強に必要なACS空洞21台がインストールされ、これに伴って、41台の位相モニタを製作した。さらに、ビーム位置測定のためにストリップライン型ビーム位置モニタ(BPM:Beam Position Monitor)を採用しているが、BPMのストリップラインからの信号は位置の計測と同時に、位相の計測にも使用できることが分かっている。ここでは、FCTの性能を評価するために、新たに製作したFCTの信号感度とカットオフ周波数の測定を行い、結果の比較を実施した。
 
16:10-18:10 
WEPS072
p.574
JAEA AVFサイクロトロンのビーム強度と位相幅に対するバンチャーの影響
Influence of the buncher on beam intensity and phase width in the JAEA AVF cyclotron

○宮脇 信正,倉島 俊,柏木 啓次,奥村 進(原子力機構高崎)
○Nobumasa Miyawaki, Satoshi Kurashima, Hirotsugu Kashiwagi, Susumu Okumura (JAEA Takasaki)
 
原子力機構AVFサイクロトロンでは、マイクロビーム形成に代表される高品位ビームの生成のための技術開発を行っている。加速ビームの質と量の向上のため、入射ビームライン上のバンチャーを用いてきた。これによるビーム電流の増加は容易に確認できるが、ビーム位相幅への効果は、機器設置スペースの問題からサイクロトロンから取出し後でしか測定できなかったため、測定範囲が制限された。そこで、この制限がないサイクロトロン内部でプラスチックシンチレーターを取り付けたプローブを用いて、加速ハーモニックス(H)1,2に対してバンチャーの有無によるビーム位相分布(加速位相に対するビーム強度分布)とビーム電流を測定した。バンチャーを用いずに直流ビームを入射した場合、加速RFの位相アクセプタンスから外れたビームは加速できず、ビーム位相幅は位相アクセプタンスと等しくなる。これに対して、最大ビーム電流が得られるようにバンチャーを調整した場合でもビームの全位相幅はH=1,2ともバンチャーの無い場合とほとんど差が無かった。従ってバンチャーを用いてもビーム位相幅は位相アクセプタンスまで広がることが明らかとなった。一方、H=2の場合、バンチャーが無くてもH=1に比べて全ビーム位相幅が狭いが、ビーム強度比は約2倍高く、加速中のバンチング効果が認められた。H=1の場合、このような効果が無く、バンチャーのビーム電流の増加割合がH=2より大きい結果が得られた。
 
16:10-18:10 
WEPS073
p.577
OTR プロファイルモニターのターゲットの製作と光学系の評価
Target Manufacturing and Evaluation of The Optical System for The J-PARC OTR Beam Profile Monitor

○大津 聡(三菱電機システムサービス(株)),手島 昌己,橋本 義徳,三橋 利行(高エネルギー加速器研究機構)
○Satoru Otsu (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Masaki Tejima, Yoshinori Hashimoto (KEK/J-PARC), Toshiyuki Mitsuhashi (KEK)
 
J-PARCの3-50 BTに,2013年1月に設置予定のOTRを用いたプロファイルモニター[1]のターゲットと光学系に関しての製作状況について,以下の報告を行う.フォイルのビームターゲットには,厚み10mのアルミまたはチタンフォイルを用い,150×150 mm2 の均一な平面に仕上げる.そのためのテンションのかけ方やフレーム形状などの工夫と,張り上げたときの平坦精度についての評価を行う.また,ビームテール部のハローを計測するために,ビームのコア部を通過させるための円形穴をあけるフォイルターゲットはレーザーでの加工を行い,この穴のエッジ部の評価を行う.検出光学系には,大口径オフナー光学系を用い,真空内に設置される.この光学系は,300mmΦの大口径凹面ミラー2枚と200mmΦの凸ミラー1枚を組み合わせたものである.それぞれのミラーについて,焦点の一様性の評価,収差の分布等の基礎的な光学試験を行い,最終的な光学系としてベンチで組み上げた状態での収差,解像度,歪曲などの測定を行う.オフナー光学系で結像したビームプロファイルを計測するための光学系は非球面レンズを用いて構成する.この光学系についての評価も行う. [1] 手島昌己,他,本学会プロシーディングス
 
16:10-18:10 
WEPS074
p.581
負性抵抗回路を用いたカレントモニターの開発
DEVELOPMENT OF A CURRENT MONITOR USING A NEGATIVE INPEDANCE CIRCUIT

○栗田 哲郎(若狭湾エネ研)
○Tetsuro Kurita (WERC)
 
若狭湾エネルギー研究センターでは、負性抵抗回路を用いたたカレントモニターの開発を行っている。通常のトロイダルコイルを用いた CT (Current Transformer) の帯域を、負性抵抗回路を用いて直流領域まで拡大する新しい方式の物である[1]。 ピックアップコイルは通常のCTと同じなので測定回路を切り替えるだけで、高い周波数帯域をの Current Monitor と共有でき、実装が省スペースなので小さいシンクロトロンで有用である。一方で、時定数の調整や温度特性の安定性の確保に困難があり、その克服を試みてきた。 これまで、原理的に実証を経て、時定数の調整、温度特性の改善、周辺の磁石からの漏れ磁場信号をキャンセルする DSP をつかった信号処理回路を開発してきた[2]。 さらに、これまでに行った時定数の調整、温度特性の改善の試みおよびその結果、CT の周波数特性などを報告する。 [1] S. Ninomiya et al., EPAC2004 Proceeding , p1145, 2004, [2] 栗田哲郎 et al., "負性抵抗回路を用いたカレントモニターの開発" 第6回日本加速器学会年会プロシーディング, 2009
 
16:10-18:10 
WEPS075
p.584
エミッタンス自動測定システムの開発
Development of Automatic Emittance Measurement

○鎌倉 恵太,依田 哲彦,畑中 吉治,福田 光宏,永山 啓一,木林 満,安田 裕介,山本 裕史,濵谷 紀彰(阪大RCNP),稲田 洋司(住重加速器サービス)
○Keita Kamakura, Tetsuhiko Yorita, Kichiji Hatanaka, Mitsuhiro Fukuda, Keiichi Nagayama, Mitsuru Kibayashi, Yusuke Yasuda, Hirofumi Yamamoto, Noriaki Hamatani (RCNP, Osaka University), Yoji Inata (SAS)
 
現在、大阪大学RCNPビームライン上には、ECRイオン源下流に水平・垂直方向用、AVF後の0°コースに水平方向用のエミッタンスモニタ(スリット及び三線式ビームプロファイルモニタ)が設置されており、これまで自動測定と解析の高速化を行ってきた。自動測定の実現で水平・垂直両方向の測定が30分以内で行えるようになり、エミッタンス解析ソフトウェアの完成により解析も十数秒に短縮され、計数室の端末で直ちにエミッタンスを確認することができるようになった。また、測定のさらなる高速化のため、高速駆動可能なスリットと回転式ビームプロファイルモニタ(NEC BPM83)によるエミッタンス測定法の開発を行っている。今回新たに製作したスリットを用いることにより、測定時間を2分程度まで短縮することが見込まれている。本研究の最終目標は高速エミッタンス測定によりイオン源の各パラメータの最適化を行うとともに、AVFサイクロトロンのアクセプタンスを評価し、入射ビームの位相空間とAVFアクセプタンスの整合をことによって、高輝度、高品質ビームを加速することである。
 
16:10-18:10 
WEPS076
p.587
LEBRAにおけるOTR光観測システム
OTR Measurement System at LEBRA

○中尾 圭佐,早川 建,早川 恭史,田中 俊成,野上 杏子,稲垣 学(日本大学電子線利用研究施設)
○Keisuke Nakao, Ken Hayakawa, Yasushi Hayakawa, Toshinari Tanaka, Kyoko Nogami, Manabu Inagaki (Laboratory For Electron Beam Research and Application, Nihon University)
 
日本大学電子線利用研究施設(LEBRA: Laboratory for Electron Beam Research and Application)では、 赤外線領域の自由電子レーザ (FEL)および軟X線領域のPXR(Parametric X-ray Radiation)を発生させ、医学、歯学、工学系のユーザに提供している。LEBRAでは、電子ビームを Siの(111)または、(220)面に当てPXRを発生させているが、電子ビームがSi結晶に当たった時に発生する OTR(Optical Transition Radiation)光を、加速器制御室内で常時観測できるシステムが導入されている。このシステムは、Si結晶で発生したOTR光を、放射線シールドの加速器本体から見て反対側まで導いてCMOSカメラで観測している。カメラで取得された画像は、大実験室内に設置されているPCで取り込まれ、制御室内のディスプレイに表示される。OTRを観測することにより、結晶の位置におけるビームの形状およびビームと結晶の相対位置を常時観測することができ、観測中もPXR発生に影響を及ぼさない。本発表では、このPXR運転時のOTR光観測システムについて報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS077
p.590
J-PARC 3-50 BT の OTR ビーム・プロファイル・モニタの開発
Development of an OTR Beam Profile Monitor for 3-50 Beam Transport Line in J-PARC

○手島 昌己,橋本 義徳,三橋 利行(KEK 加速器),大津 悟(三菱電機システムサービス株式会社)
○Masaki Tejima, Yoshinori Hashimoto, Mitsuhashi Toshiyuki (KEK/J-PARC), Satoru Otsu (Mitsubishi Erectric System & Service Co.,Ltd)
 
J-PARC3GeVのシンクロトン加速器(RCS) と30GeVメインリング(MR)の間のビーム輸送ライン(3‐50BT)に遷移放射光モニタ(OTRモニタ)を、2013年1月に設置する予定である。従来、OTRモニタは比較的大きなγのビームにおいて、非破壊的2次元ビームプロファイルの診断装置として使われているが、OTRモニタを設置するビーム輸送路での陽子ビームのサイズの設計値はφ50mmと大きく、また陽子ビームのγが小さい陽子ビームから発生するため、開口角が大きく ( 約500mrad )、この大きな開口角を有効に取り入れるための光学システムの開発が必要である。OTRを発生させるために、厚み10μm程度のアルミ箔のターゲットをビームに対して直角に配置し、ターゲットのすぐ後に大きな開口角のOTRを有効に取り込めるようにオフナー光学系を置いて、OTRを取り出すように設計した。オフナー光学系により取り出されたOTRは焦点面においたスクリーン上に投影され、CCDカメラにて観測される。このOTRモニタは、2次元ビームプロファイルの診断に加えて、J-PARCの大強度化に備えるため、ビームプロファイルの周囲に広がるハローについても診断できるように観測可能な視野をビーム直径の倍に設計した。 本稿では、OTRプロファイルモニタの計画の概要と高精度でかつOffner光学システム開発状況について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS078
p.594
大面積イオンビームの2次元強度分布測定のためのガフクロミックフィルムの校正
Calibration of Gafchromic Dosimetry Films For Large-Area Ion-Beam Distribution Measurement

○石坂 知久(原子力機構高崎),今井 浩二(放射線利用振興協会),百合 庸介,湯山 貴裕,石堀 郁夫,奥村 進(原子力機構高崎)
○Tomohisa Ishizaka (JAEA Takasaki), Koji Imai (RADA), Yosuke Yuri, Takahiro Yuyama, Ikuo Ishibori, Susumu Okumura (JAEA Takasaki)
 
日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所のイオン照射施設TIARAでは、材料科学やバイオ技術分野におけるイオンビーム応用研究のため、多重極電磁石を用いた大面積均一ビーム形成/照射技術の開発を進めている。形成されたビームの均一度や面積の評価にラジオクロミックフィルム線量計の一種であるガフクロミックフィルム(米国ISP社製)を用いた2次元相対強度分布計測を利用するため、イオンビーム照射によるフィルムの着色応答を調べた。ガフクロミックフィルムは、放射線治療において線量分布評価に広く利用されているが、高解像度で大面積を評価でき取り扱いも容易である等の特長を有することから、イオンビームの強度分布の評価に利用可能と考えた。照射したフィルム(HD810、EBT2)をイメージスキャナで読み取りTIFF画像(16ビットRGB)に変換、RGB各成分に対応する吸光度を求めることでフルエンス応答曲線を作成した。LETの異なる3種類(10MeV H、520MeV Ar、及び、490MeV Xe)のビームに対する応答を調べた。520MeVのArビームをHD810フィルムへ照射した場合、B成分において3×10^9個/cm^2までのおよそ2桁のレンジのフルエンス範囲に対して吸光度が線形に増加することが分かった。
 
16:10-18:10 
WEPS079
p.597
アンジュレーター放射を用いたTurn-by-turnビームモニターの開発
Development of the Turn-by-turn Beam Monitor using an Undulator Radiation

○正木 満博,高野 史郎,田村 和宏,持箸 晃,大熊 春夫(公益財団法人 高輝度光科学研究センター)
○Mitsuhiro Masaki, Shiro Takano, Kazuhiro Tamura, Akira Mochihashi, Haruo Ohkuma (JASRI/SPring-8)
 
 SPring-8蓄積リング加速器診断ラインII(BL05SS)のアンジュレーター(ID05)からの放射光を用いたリング周回毎に電子ビームの挙動を観測するためのモニターを設置した。特定のハーモニクスのアンジュレーター放射(光子エネルギー10keV程度)の空間分布を、残光時間が数十ナノ秒のYAG(Ce)蛍光体で可視光イメージに変換し、円筒レンズを用いた1次元集光光学系を通して水平・垂直それぞれの方向に圧縮されたイメージを、イメージインテンシファイヤーと高速CCDカメラを用いて観測することにより、放射光の角度振動および蓄積ビームの水平ビームサイズ、エネルギー拡がりなどをリング周回毎に計測する。これにより、Top-Up入射時の蓄積ビームの振動、およびH24年10月以降の運転から導入が予定されている大電流シングルバンチを含むフィリングパターンのシングルバンチ部のみを切り出して、その安定性監視などに活用することを計画している。本発表では、このTurn-by-turnビームモニターのシステム構成およびビーム観測例などを中心に報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS080
p.600
高放射線領域(J-PARC MR コリメータ部)におけるBPM設置の検討
BPM installation at the high radiation area (J-PARC MR collimator)

○花村 幸篤(三菱電機システムサービス(株)),外山 毅,橋本 義徳(KEK/J-PARC)
○Kotoku Hanamura (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd), Takeshi Toyama, Yoshinori Hashimoto (KEK/J-PARC)
 
大強度陽子加速器施設(J-PARC)の主リング(MR)は大強度の陽子ビームを3GeVで入射し、30GeVまで加速して取り出している。現在までの最大安定供給値は約10^14protons/2.56秒, 約190kWである。 大強度陽子ビーム加速器では、ビームロスのコリメータへの局所化により他の大部分の機器の放射化を最小限にすることが機器の放射線損傷、メンテナンス時の被ばくの軽減のために重要になる。 MRコリメータ部ではシールド強化に伴う機器の配置変更が2012年7月から9月のビーム運転停止期間中に行われる。ビーム重心位置を測定するビームポジションモニタ(BPM)も配置変更の対象である。 BPMは従来ビームラインにインストールする前に、検出器の精密な校正(マッピング)を行い、インストール後に、レーザトラッカで取付け位置の測量を行ってきた。 作業エリアはビームロスの局所化による高放射化エリア(想定吸収線量約10MGy/year)のため、従来の方法では設置・位置測量に時間が掛かり、作業時の被ばくが増加することが予測される。 今回の配置変更では、放射線管理区域の外でBPMとステアリング電磁石を一体としてBPMの設置位置の測量及びアラインメントを予め行っておく。現場コリメータ部への設置は、ステアリング電磁石を台座上に設置すれば位置が再現される台座の用意を行う。 本論文では、MRコリメータ部へのBPM設置と測量について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS081
p.603
電子ビーム用三次元バンチ電荷分布モニターの設計開発 (2)
R&D for a 3 D bunch charge distribution monitor for the electron beam

○岡安 雄一(JASRI)
○Yuichi Okayasu (JASRI)
 
電子加速器における放射光の精密特性評価を行う上で、その光源である電子バンチの電荷分布をシングルショット且つ高分解能で計測することは、不可欠な要素である。 その要求から、我々は電子ビームの縦・横方向のバンチ電荷分布を三次元・シングルショット・非破壊で同時計測し、リアルタイムで再構築可能な測定系の開発を行っている。 測定原理は電気光学 (EO) 効果を用いたスペクトル計測法(Spectral decoding)に基づく。電子ビーム軸に対し8 つの EO 結晶を方位角方向に配置し、1) 広帯域 (300 nm:矩形スペクトル)、2) 線形チャープ(高次分散をNOPA等で補正)、3) レーザーの進行方向に対しらせん状に時間シフトした、4) 偏光方向がバンチ起因クーロン場と同様の放射状である、円環プローブレーザーをEO 結晶群で同時に電子バンチを包むように通過させる。ここで偏光変調したレーザーをマルチチャンネル分光器で、スペクトル形状からバンチ電荷分布情報をリアルタイムで復調する。 従来EO サンプリングにはZnTe やGaP といった無機 EO 結晶が用いられてきたが、時間応答性の制限がある為、他の EO 結晶材料の模索が精力的に行われてきた。今回、我々は 2012 年 2 月に SPring-8 試験加速器において、高時間応答で知られる有機 EO 結晶を用いた EO サンプリングに世界で初めて成功した。現在引き続き、有機 EO 結晶の光学特性、またその放射線依存性について調査を行っている。
 
16:10-18:10 
WEPS082
p.608
高温超伝導電流センサーとSQUIDを用いたビーム電流モニターの高感度化
Sensitivity improvement of beam current monitor with a High-Tc Current Sensor and SQUID

○渡邉 環,福西 暢尚,加瀬 昌之,上垣外 修一(理研),稲森 聡,今 康一(ティーイーピー株式会社)
○Tamaki Watanabe, Nobuhisa Fukunishi, Masayuki Kase, Osamu Kamigaito (RIKEN), Satoru Inamori, Kouichi Kon (TEP)
 
理研仁科加速器研究センターにおいて、重イオンビームのDC電流を、非破壊で高感度に測定するために、脳磁や心磁の測定に利用される超伝導量子干渉素子SQUID (Superconducting Quantum Interference Device)をビーム電流計に応用した、ビーム電流モニターの開発を行っている。本研究では超伝導部に高温超伝導体を用いることにより、製作費やランニングコストの低減化を図っている。既に完成したプロトタイプにおいては電流分解能が100 nAであるので、これを10 nAへ高感度化することを目的として、開発を進めている。高温超伝導電流センサーは、MgO基盤上に500ミクロンの厚さで高温超伝導体を塗布焼成して作成される。従来、塗布は手塗で行われていたが、今回自動吹付の装置を開発することによって、むらがなく均一に塗布を行うことが出来た。また、MgO基盤と高温超伝導体の結合が弱く、剥離の問題があったが、今回サンドブラスト法を用いることによって、その問題を解決した。今回の塗布法で作成した超伝導電流センサーは、臨界温度、臨界電流の測定では、良好な結果が得られた。しかし、模擬電流を用いた試験では、期待したSQUIDの出力が得られなかった。今回の発表では、SQUIDの出力を改善し、環境ノイズのシールドの強化するために、有限要素法を用いた静磁場計算を行った結果について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS083
p.612
残留ガスを用いた非接触ビーム強度モニタの開発
Development of residual gas ionization beam intensity monitor

○里 嘉典,上利 恵三,家入 正治,加藤 洋二,皆川 道文,武藤 亮太郎,成木 恵(高エネ研 素核研),野海 博之(大阪大学核物理研究センター),澤田 真也,白壁 義久,鈴木 善尋,高橋 仁,高崎 稔,田中 万博,豊田 晃久,渡辺 丈晃,山野井 豊(高エネ研 素核研)
○Yoshinori Sato, Keizo Agari, Masaharu Ieiri, Yohji Kato, Michifumi Minakawa, Ryotaro Muto, Megumi Naruki (KEK/IPNS), Hiroyuki Noumi (RCNP), Shin'ya Sawada, Yoshihisa Shirakabe, Yoshihiro Suzuki, Hitoshi Takahashi, Minoru Takasaki, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Hiroaki Watanabe, Yutaka Yamanoi (KEK/IPNS)
 
J-PARCの遅い取り出しビームラインでは、ビーム強度を測定するモニタとして二次電子放出を用いたSecondary Electron Chamber(SEC)を使用している。SECは直線性および長期安定性にすぐれているが、陽子ビームがAl膜に衝突するため、ビームロスが避けられない。大強度陽子ビームにおいてビームロスを低減するためには、非接触型のビーム強度モニタが望ましい。ハドロン実験施設では、これまで1Pa程度の真空中で残留ガスのビームによる電離を用いた残留ガスビームプロファイルモニタを開発し、陽子ビームのプロファイルを非接触で測定し、実際に使用している。本研究は、真空度を精度良く測定することによって、ビーム強度を非接触で測定するモニタを開発することが目的である。プロトタイプの残留ガスビーム強度モニタを製作し、大阪大学核物理研究センターで65MeV陽子ビームを使って最大4μAまでのビーム試験を行った。本発表では、ビーム強度モニタの概要と、ビーム試験の結果、および今後の予定について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS084
p.616
J-PARC 3-50BTにおけるbeam based Twiss beta測定
Beam based measurement of Twiss beta of J-PARC 3-50BT

○佐藤 洋一,白形 政司,橋本 義徳(KEK/J-PARC)
○Yoichi Sato, Masashi Shirakata, Yoshinori Hashimoto (KEK/J-PARC)
 
BTにおけるTwissβ測定手法としては4極磁場スキャンもしくは3点以上のビームプロファイル測定が一般的であるが、プロファイルの広いビームを作り測定精度を上げようとするとビームロスの影響を受け、またプロファイルモニター間の4極磁石の設定と実際の磁場のズレに応じて誤差が積み上がる。そこで上流ステアラー2台1組によりビーム中心を、位相空間上で決まったエミッタンス楕円上をなぞるように複数ショットを重ね、下流側固定位置(プロファイルモニター、BPMの位置)でのビーム中心を重ね合わせれば、ペアステアラーとモニター間の4極磁場を仮定することなくβ測定ができる。水平、鉛直方向それぞれに対して行う。また、α、phase advanceの測定、水平鉛直組み合わせによるx-y coupling測定も可能である。本稿ではこの手法の紹介と適用例としてのJ-PARC 3-50BTのTwissβ測定結果を示す。
 
16:10-18:10 
WEPS085
p.620
J-PARC K1.1BRビームラインにおけるπ/Kフィッチ型差動チェレンコフ検出器の性能評価
Performance Evaluation of pi/K Differential Fitch-type Cherenkov Counter for the J-PARC K1.1BR Beamline

○豊田 晃久,五十嵐 洋一,今里 純(KEK,IPNS),イバシュキン アレクサンダー(INR),内田 誠(東工大),小林 愛音(東大),清水 俊,堀江 圭都(阪大RCNP),山崎 寛仁(東北大電子光理学研究センター),吉原 圭亮(東大)
○Akihisa Toyoda, Youichi Igarashi, Jun Imazato (KEK,IPNS), Alexander Ivashkin (INR), Makoto Uchida (TITECH), Aine Kobayashi (U-Tokyo), Suguru Shimizu (Osaka-U,RCNP), Keito Horie (Osaka-U, RCNP), Hirohito Yamazaki (Tohoku-U, ELPH), Keisuke Yoshihara (U-Tokyo)
 
J-PARC K1.1BRビームラインは、J-PARCハドロン実験施設の2次ビームラインの一つであり、低運動量分離ビームラインとして利用される。J-PARC遅い取り出しビームラインの大強度陽子ビーム(設計:50 GeV, 15 μA)を輸送し、1次標的で生じたパイ中間子やK中間子を利用することで様々な素粒子原子核実験を行う。ビーム繰り返しは約6秒で、ビームのスピル長は約2秒である。前回我々はこのビームラインにおいて740から800 MeV/cの運動量を持つ二次粒子に対して99%以上の高いパイ/K分離性能を持つチェレンコフカウンターを設計製作した。今回我々は実際に740から800 MeV/cのパイ中間子およびK中間子ビームを利用してビームテストを行ったので、その結果について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS086
p.623
誘電体管コヒーレントチェレンコフ放射によるビーム診断の研究
Beam diagnostic based on coherent Cherenkov radiation using dielectric tube

○菅 晃一,楊 金峰,小方 厚,近藤 孝文,樋川 智洋,法澤 公寛,小林 仁,吉田 陽一(阪大産研),萩行 正憲(阪大レーザー研),黒田 隆之助,豊川 弘之(産総研)
○Koichi Kan, Jinfeng Yang, Atsushi Ogata, Takafumi Kondoh, Tomohiro Toigawa, Kimihiro Norizawa, Hitoshi Kobayashi, Yoichi Yoshida (ISIR, Osaka Univ.), Masanori Hangyo (ILE, Osaka Univ.), Ryunosuke Kuroda, Hiroyuki Toyokawa (AIST)
 
本研究では、電子ビームのパルス幅が短いほど、コヒーレント放射により高周波・高強度のテラヘルツ波が発生可能となる特性を利用し、誘電体管と電子ビームを用いたコヒーレントチェレンコフ放射によるビーム診断について報告する。コヒーレントチェレンコフ放射とは、電子ビームが発生する電磁場を誘電体管中に閉じ込めると同時に、誘電体の遅波構造により電子ビームと同じ位相速度の多モードテラヘルツ波を発生する方法である。 実験では、フォトカソードRF電子銃からのピコ秒電子ビームを、加速管により加速・エネルギー変調を行い、磁気パルス圧縮器により≒30 MeVのフェムト秒電子ビームを発生し、コヒーレントチェレンコフ放射に利用した。液体ヘリウム冷却ボロメータを備えたマイケルソン干渉計により、多モードテラヘルツ波の測定・解析を行った。その結果、得られたテラヘルツ波の周波数スペクトルは数値解析により予測できることが明らかとなり、0.7 THzまでの多モードテラヘルツ波放射に成功した。また、バンチ形状因子に基づく理論的なモード解析と実験結果の比較から、現状ではストリークカメラを用いた200 fsまでのパルス幅計測結果と同じ傾向を得た。今後、誘電体管や電子ビーム条件の最適化により、100 fs以下の電子線パルスの発生およびビーム診断方法を確立する。
 
16:10-18:10 
WEPS087
p.626
SACLAにおけるCSRビームバンチ長モニタの開発2
DEVELOPMENT OF BUNCH LENGTH MONITORS UTILIZING COHERENT SYNCHROTRON RADIATION AT SACLA II

○近藤 力,前坂 比呂和(理研播磨XFEL部門),松原 伸一(高輝度光科学研究センター),井上 忍(スプリング8サービス),大竹 雄次(理研播磨XFEL部門)
○Chikara Kondo, Hirokazu Masesaka (RIKEN Harima, XFEL), Shiichi Matsubara (JASRI), Shinobu Inoue (SES), Yuji Otake (RIKEN Harima, XFEL)
 
SACLAでは、安定したX線自由レーザー(XFEL)をユーザーに供給することが重要となる。特にバンチ長の変動はXFEL強度の安定度を左右しており、加速器全体を通じてのピーク電流値の変動を10%以下に抑えられることが要求されている。この安定度を実現するために、3箇所のシケイン型バンチ圧縮器(BC1,BC2,BC3)の直後に、非破壊的にビームのバンチ長を測定するコヒーレント放射光(CSR)モニタを設置し、直上流の加速管のRF位相へとフィードバックすることで、バンチ長の安定化を図る[1]。 昨年には本モニタの設置、およびビームを用いたバンチ長依存性の測定を行い、BC2にてバンチ長300fsに対し測定精度約4%という結果を得た。だが、他の2箇所については検出器の感度不足により、測定精度が不十分であった。また、検出器の応答速度が遅く、SACALの60pps運転に対応したビームのショット毎に独立した測定ができないなどの課題が残っていた。 そこで、真空窓の導入によるCSR光の透過率の向上や、回路定数の最適化による応答速度の改善を行なった。その結果、各BC部において感度の大幅な改善が見られ、また信号の応答速度も60ppsに対応可能になった。本発表では、これらモニタの改善点や、測定結果について発表する。 [1]近藤,他「SACLAにおけるCSRビームバンチ長モニタの開発」第8回加速器学会, 2011
 
16:10-18:10 
WEPS088
p.631
極短バンチ電子ビームの時間構造計測用 RF-Deflector の設計
Design of RF-Deflector cavity for ultrashort electron bunch measurement

○西村 祐一,坂上 和之,高橋 猛之進,鷲尾 方一(早稲田大学)
○Yuichi Nishimura, Kazuyuki Sakaue, Takenoshin Takahashi, Masakazu Washio (Waseda Univ.)
 
早稲田大学ではCs-TeフォトカソードRF-Gunを用いた高品質電子ビームを生成し、応用研究として逆コンプトン散乱による軟X線源の開発、放射線化学反応初期過程の解明のためのパルスラジオリシス実験を行っている。これらの研究開発には非常によく制御された高品質な電子ビームを用いる必要があり、ビームのパラメーターを計測・評価することは重要である。本研究ではビームの時間方向長さと時間方向構造の計測を主目的とし、RF-Deflector法に用いるRF-Deflector空胴の設計開発を行っている。RF-Deflector法とはRF-Gunによって加速された電子ビームをRF-Deflector空胴内に生成した垂直方向磁場によって、バンチの前後を上下に傾けるように蹴り、バンチの時間方向情報を空間方向情報に変換する手法である。これによってビームライン下流のプロファイルモニターでビームサイズを計測し、バンチ長及び縦方向プロファイル測定が可能になる。RF-Deflectorには定在波型で2Cellの空胴を採用した。設計にはAnsoft社のHFSS (High Frequency Structure Simulator) を用い、早稲田大学に設置しているRF-Gunとの同期をとるために2856MHzで共振させ、空胴内にTM120モードが立つように設計した。2Cellの空胴はπモードで動作させ、約5MeVで200fs程度のバンチ長を測定することを想定して設計を進めている。本講演では、早稲田大学で検討しているRF-Deflectorの設計及び、今後の予定・展望について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS089
p.634
空気イオンチャンバーを用いたJ-PARC3-50BTにおけるビームハロー測定
Beam halo monitoring at J-PARC 3-50 beam transport line using long air ionization chambers

○佐藤 健一郎,外山 毅,白形 政司,佐藤 洋一(KEK)
○Kenichirou Satou, Takeshi Toyama, Masashi Shirakata, Yoichi Sato (KEK)
 
J-PARC 3-50BTには同軸ケーブルを利用した3本の空気イオンチャンバーが設置されておりビームロスモニタ(Long AIC)として使用している。3-50BTのコリメータとLong AICを用いることによりRCSからMRに入射されるビームのハロー(テール)成分を常に監視している。発表ではLong AICの校正結果とビームハロー(テール)の測定結果を報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS090
p.638
J-PARCリニアックにおけるビームロス陽子飛跡の測定
Observations of Beam Loss Proton Trajectories in J-PARC Linac

○佐甲 博之,丸田 朋史,三浦 昭彦(原子力機構)
○Hiroyuki Sako, Tomofumi Maruta, Akihiko Miura (JAEA)
 
In J-PARC linac, highest beam loss has been observed in the ACS section at the H- beam energy of 181 MeV. The primary source of the beam loss is considered to be H0's produced by the electron stripping of H-'s by the remnant gas in the beam duct. The H0 conserves almost the same energy and momentum vector of the H- at the point where it has been produced, and almost 100% of the H0's are converted into H+'s (protons) through the beam duct. The H+'s are expected to have small angles around 5 degrees with respect to the beam, with energies 100-150 MeV, according to the GEANT4 simulation. To detect H+'s we reconstructed six-plane scitillating fiber hodoscopes in the ACS section. Each plane consists of 16 4x4x64mm plastic scintillating fibers readout by multi-anode photomultipliers. We present time-of-flight measurements with a fast trigger and show indication of proton signals.
 
16:10-18:10 
WEPS091
p.641
ビーム吸収体の発熱を利用したプロファイルモニタの開発
Development of beam profile monitor measured by temperature distribution of beam absorber

○上利 恵三,家入 正治,加藤 洋二,里 嘉典,澤田 真也,白壁 義久,鈴木 善尋,高橋 仁,髙崎 稔,田中 万博,豊田 晃久,成木 恵(高エネルギー加速器研究機構),野海 博之(大阪大学),広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 亮太郎,山野井 豊,渡辺 丈晃(高エネルギー加速器研究機構)
○Keizo Agari, Masaharu Ieiri, Yohji Katoh, Yoshinori Sato, Shinya Sawada, Yoshihisa Shirakabe, Yoshihiro Suzuki, Hitoshi Takahashi, Minoru Takasaki, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Megumi Naruki (KEK), Hiroyuki Noumi (Osaka University), Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Ryotaro Muto, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (KEK)
 
近年J-PARC、LHCなどに代表される加速器のビーム大強度化により、ビームを制御する電磁石・粒子モニタ・真空・ビームダンプ・コリメータなどの機器に多大な放射化や発熱が予想される。特にビームダンプ・コリメータに代表されるようなビーム吸収体は実験に使用しなかったビームや2次粒子などを吸収するため、他機器より過酷な条件で運転される。 しかしこの大強度化によるビーム吸収体の多大な発熱をプロファイルモニタとして利用する。方法としてはビーム吸収体の直接ビームを吸収する表面に等間隔に熱電対を設置し、ビーム入射前後による温度差を測定することによりビームの空間分布が把握できる。 上記を実証するために有限要素法によるシミュレーションを行った。シミュレーション結果より、実験モデル用ビームダンプの材質は鉄を採用し、中央にはビームの吸収を平均化させる円錐状空洞を加工した。またモデル自体の熱容量が大く熱伝導が低いため空冷を採用した。 次に大阪大学核物理研究センター(RCNP)陽子ビームで実験を行った。実験モデルとして上述のビームダンプを製作し、その表面に熱電対を設置した。実験ではビームの入射前後の温度差を測定し、上流に設置した蛍光板で測定されたプロファイルと比較することにより、正確に動作しているか検証した。 今回は温度上昇分布より測定されたビームプロファイルモニタのシミュレーションやRCNPでの実験結果を報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS092
p.645
J-PARC 3-50BT ビームコリメーションの現状
Present Status of the Beam Collimation in J-PARC 3-50BT Line

○白形 政司,佐藤 洋一,五十嵐 進,石井 恒次,魚田 雅彦,上窪田 紀彦,小関 忠,小林 仁,佐藤 健一郎,杉本 拓也,高野 淳平,外山 毅,中村 衆,橋本 義徳(高エネ研),畠山 衆一郎(原科研(三菱電機システムサービス株式会社)),堀 洋一郎,山田 秀衛,山本 昇,吉井 正人(高エネ研)
○Masashi Shirakata, Yoichi Sato, Susumu Igarashi, Koji Ishii, Masahiko Uota, Norihiko Kamikubota, Tadashi Koseki, Hitoshi Kobayashi, Kenichiro Sato, Takuya Sugimoto, Junpei Takano, Takeshi Toyama, Shu Nakamura, Yoshinori Hashimoto (KEK), Shuichiro Hatakeyama (JAEA (MELCO SC)), Yoichiro Hori, Shuei Yamada, Noboru Yamamoto, Masahito Yoshii (KEK)
 
J-PARC加速器施設において、速い繰り返しのシンクロトロン(RCS)と主リング(MR)を結ぶビーム輸送路を3-50BTと呼ぶ。3-50BT上流に設置されているビームコリメータ群は、54~216πの範囲でアパーチャを調節できるように設計されている。2011年の東北地方太平洋沖地震の際は、ビームラインが変位したためラインを再設定した。電磁石群は新しいラインに沿って再アラインメントしたが、コリメータはそのままとしたため、horizontal方向に2.5 mmオフセットを持ち、vertical方向には2 mm低い状態となっている。またコリメータ位置と対応するビームロスからコリメータ部でのビーム軌道を直接求めた結果、当初の想定よりも大きな軌道変位があることが判明した。ここでは現状の3-50BTコリメータ群で、ビームに対してどういう運転条件が可能であるかを紹介する。
 
16:10-18:10 
WEPS093
p.649
SACLAのビームプロファイルモニターにおけるCoherent-OTR光除去への取り組み
Mitigation of Coherent-OTR light for the Beam Profile Monitor of SACLA

○松原 伸一(高輝度光科学研究センター),前坂 比呂和,大竹 雄次(理化学研究所),井上 忍(スプリングエイトサービス(株))
○Shinichi Matsubara (JASRI), Hirokazu Maesaka, Yuji Otake (RIKEN), Shinobu Inoue (SPring-8 Service Co., Ltd.)
 
X線自由電子レーザ(XFEL)施設であるSACLAでは、電子ビームのプロファイルをモニターするためのスクリーンモニター(SCM)システムを10 umの分解能を目標に開発し、設置した。このSCMは、電子ビームが金属ターゲットに当たる際に発生する遷移放射光(OTR)をレンズでCCDカメラ上に結像することによりビームプロファイルを測定する。SCMは、電子ビームのビームサイズ測定、エミッタンス測定、またRF-deflector と組み合わせてのバンチ長測定に用いられており、SACLAの詳細な調整に必要不可欠な装置である。ところがSACLAの運転が開始されると、Coherent-OTR(COTR)発光の問題が現れた。COTRの影響でショット毎に強度が非常に大きくゆらぎ、スペックルが現れるため、ビームプロファイルを測定することができなかった。そこで、ターゲットをCe:YAG蛍光体に交換した。それでもCOTR光の影響が現れるため、拡がり角が1/γ rad と小さいCOTR光を空間遮光マスクにより除去し、拡がり角が大きい蛍光はこの空間遮光マスクの外側を通り結像するようにした。これにより、10 um (rms) の分解能でプロファイル測定ができ、ビームの規格化エミッタンス 1 um rad が測定でき、また、RF-deflectorにて10 fsの分解能でバンチ長を測定できるようになった。
 
16:10-18:10 
WEPS094
p.653
J-PARCリニアックDTL部で発生したビームロスの計測
Beam Loss Occurred at DTL Cavity in J-PARC Linac

○三浦 昭彦(日本原子力研究開発機構),宮尾 智章(高エネルギー加速器研究機構),伊藤 崇,平野 耕一郎(日本原子力研究開発機構),南茂 今朝雄(高エネルギー加速器研究機構),丸田 朋史,田村 潤(日本原子力研究開発機構),池上 雅紀,内藤 富士雄(高エネルギー加速器研究機構)
○Akihiko Miura (J-PARC/JAEA), Tomoaki Miyao (J-PARC/KEK), Takashi Ito, Koichiro Hirano (J-PARC/JAEA), Kesao Nammo (J-PARC/KEK), Tomofumi Maruta, Jun Tamura (J-PARC/JAEA), Masanori Ikegami, Fujio Naito (J-PARC/KEK)
 
 2011年3月の東北地方太平洋沖地震により、J-PARCでは大きな被害が発生した。リニアックでは、同4月から復旧作業を開始し、11月にビーム調整運転を再開、12月には各施設への供給運転を開始した。震災前の運転に比べ、アライメントが異なることなどから、ビームロスの発生状況の変化が見られると同時に、部分的に非常に大きなビームロスが発生した。また、加速器メンテナンスのための運転停止中、リニアックのドリフトチューブ(DTL)の空洞表面に、残留線量が認められる箇所が見つかった。この部分の残留線量は、運転時間の経過、ビーム出力の増加に伴い高くなっていくことが認められたため、通常のロスモニタに加え、シンチレーションビームロスモニタを追加した。この結果、この部分でも、シンチレーションビームロスモニタでビームロスイベントを捕捉でき、ビーム軌道をパラメータとした測定の結果、ビームロスイベントがこれに伴って変化する様子が観測された。ここでは、このビームロスイベントの補足結果、ビーム軌道に依存したビームロスの発生状況について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS095
p.656
光陰極時間応答性測定のための偏向空洞
Deflecting cavity for a time response measurement of a photocathode

○永井 良治,沢村 勝,西森 信行,羽島 良一(日本原子力研究開発機構)
○Ryoji Nagai, Masaru Sawamura, Nobuyuki Nishimori, Ryoichi Hajima (JAEA)
 
われわれのグループではERL加速器技術を基盤とした共振器型X線自由電子レーザー、レーザーコンプトンガンマ線源などの次世代光源の研究を進めている。電子銃から発生する電子ビームの時間方向に対しての波形整形を 施すことでの電子ビームの輝度向上により、これらの光源の性能の飛躍的な向上が期待される。そのためには、電子銃から発生する電子ビームの時間形状とエミッタンス関係をを詳細に調べ最適な時間形状を明らかにし、それを発生するために必要とされる陰極の時間応答性を計測するために必要な偏向空洞を設計・製作し基本的な特性について評価したので、その結果について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS096
p.659
MuSICにおける低エネルギーミューオン測定のための薄型プラスチックシンチレーションカウンターの開発
Development of thin plastic scintilation counters for low energy muon experiments at MuSIC

○ハシム イズヤンハズワニ(大阪大学大学院理学研究科物理学専攻)
○Izyan Hazwani Hashim (Osaka University, Department of Physics, Graduate School of Science)
 
MuSIC is a highly intense DC muon facility which was constructed at RCNP, Osaka University and officially operated since 2009. Equipped with a superconducting solenoid at the pion capture system and a transport line, the muon yield up to 10^8 muons /sec can be produced from a 400W proton beam. A wide variety of experiments, for particle physics, nuclear physics, and material science, are planed to be carried out with this new muon beam. For DC muon beam, a trigger counter is very important for these muon experiments. We developed a thin plastic counter for the MuSIC trigger counter. A dimension of the plastic scintillator is 30 mm x 380 mm x 0.5 mm. Each plastic scintillator was attached with a wavelength shifting fiber (WLS) and MPPCs for readout. In this presentation, we will report design and performance of the counter system.
 
16:10-18:10 
WEPS097
p.663
SuperKEKB入射器へ向けたBPMデータ収集系アップグレード
BPM DAQ System Upgrade for SuperKEKB Injector Linac

○佐藤 政則,宮原 房史,諏訪田 剛,古川 和朗(KEK加速器研究施設),工藤 拓弥,草野 史郎(三菱電機システサービス)
○Masanori Satoh, Fusashi Miyahara, Tsuyoshi Suwada, Kazuro Furukawa (KEK Accelerator Laboratory), Takuya Kudou, Shiro Kusano (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd)
 
 SuperKEKB入射器では,大電荷量の電子および陽電子ビームを低エミッタンスに保ちつつ安定に輸送し,リングへの高い入射効率を実現することが要求されている。低エミッタンス化のためのダンピングリングは,陽電子ビームにのみ設けられるため,とりわけ,大電荷量電子ビームの低エミッタンス輸送は,入射器アップグレードの主要課題である。この課題実現のためには,精密なビーム位置測定および安定制御が不可欠となる。  現在,KEK電子陽電子入射器では,100台の四電極ビーム位置モニタを,23台のデータ収集系を用いたビーム位置計測をおこなっている。現システムを用いたビーム位置測定精度は50 μm程度であり,SuperKEKB入射器での目標値10μm以下には遠く及ばない。このため,位置測定精度向上を目指したデータ収集系の開発を進めている。新システムでは,帯域制限フィルタを基板としたアンダーサンプリング方式を採用し,現在までに,20 μmの測定精度を達成している。現在,目標性能である10 μm以下のビーム位置測定精度を目指し,さらなる改良を進めている。本稿では,SuperKEKB入射器へ向けたビーム位置モニタ用データ収集系の開発に関する現状および将来の展望について詳細に報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS098
p.667
PLCによるKEKデジタル加速器制御システム
PLC-Based Control System for the KEK Digital Accelerator

○門倉 英一(高エネルギー加速器研究機構)
○Eiichi Kadokura (KEK)
 
KEKの既存の500MeV陽子シンクロトロンを誘導加速シンクロトロン(デジタル加速器)へ改装している。加速器運転は2011年7月22日から行っている。デジタル加速器の制御システムはすべての機器を一社のPLC(Programmable Logic Controller)により制御する。これにより、ソフトウェア開発を勘弁にし、加速器運転に迅速な対応を図ることができる。PLC制御により、運転中の制御機器の停止を軽減し、信頼性が高い制御システムを構築できる。
 
16:10-18:10 
WEPS099
p.672
IFMIF/EVEDA加速器制御系機器保護システム(MPS)の開発状況 (2)
Development Status of MPS for the IFMIF/EVEDA Accelerator (2)

○成田 隆宏,小島 敏行,堤 和昌,高橋 博樹,榊 泰直((独)日本原子力研究開発機構)
○Takahiro Narita, Toshiyuki Kojima, Kazuyoshi Tsutsumi, Hiroki Takahashi, Hironao Sakaki (JAEA)
 
国際核融合材料照射施設(IFMIF)工学実証及び工学設計活動(EVEDA)におけるプロトタイプ加速器は、9MeV/125mA・CWの大強度重陽子ビームの実現を目標とする。この様な大電流加速器におけるコミッショニングをトラブル無く円滑に実現する為に、制御系では機器保護システム(Machine Protection System: MPS)を構築する。 これらはJ-PARCで実績のある既存ハードウェアをベースに、IFMIF/EVEDA加速器用にカスタマイズして構築するという設計方針をとることにした。 IFMIF/EVEDA加速器における機器保護のためのビーム停止機能は、"Fast Beam inhibition (FBI)"、"Slow Beam inhibition (SBI)"、"Beam Reset to Zero (BRTZ)"の3機能とした。現在、それらを踏まえて、「機器保護用ビーム停止機能」と「機能毎の機器保護要素信号と論理回路」を基に、システム構成機器の開発、及び、論理回路インターフェースポイントの検討・協議を進めている。 FBI、SBI各機能は、制御系が用意するMPSユニットと呼ばれる装置にて実現され、入射器のHVPSクロウバー、マグネトロンRFパワーを制御することで高速で信頼性の高いビーム停止を実現する。また、BRTZ機能においては、MPS信号によって入射器タイミングシステムのゲートパルス信号を制御する為、MPS装置としてFPGAを利用した信号処理装置を試作し、機能テストを実施中である。 本発表では、周辺機器との関連も含め、MPSの開発・試験状況を報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS100
p.677
J-PARCにおけるスピルフィードバック制御に関する研究
The research on the spill feedback control for J-PARC

○木村 琢郎,岡村 勝也,白壁 義久,冨澤 正人,中川 秀利,武藤 亮太郎,村杉 茂,柳岡 栄一(高エネルギー加速器研究機構),清道 明男(高輝度光科学研究センター),佐藤 皓(筑波技術大学),下川 哲司(佐賀大学)
○Takuro Kimura, Katsuya Okamura, Yoshihisa Shirakabe, Masahito Tomizawa, Hidetoshi Nakagawa, Ryotaro Muto, Shigeru Murasugi, Eiichi Yanaoka (KEK), Akio Kiyomichi (SPring-8/JASRI), Hikaru Sato (Tsukuba University of Technology), Tetsushi Shimogawa (Saga university)
 
J-PARCのメインリングからハドロン実験施設に取り出される遅い取り出しビームは、原子核や素粒子などの様々な物理実験に利用される。特に実験を効率よく行うためには、取り出しビームの時間構造を表す、スピルが平坦で安定であることが求められる。そのため、主に主電磁石電源に起因するリップルを低減させ、スピルを平坦化するためにスピルフィードバックシステムが用いられている。 スピルフィードバックシステムはスピル制御用電磁石とその電磁石の励磁パターンを導くフィードバック装置で構成される。スピル制御用電磁石は、取り出し用4極電磁石(Extraction Q Magnet: EQ)及び高速リップル除去用4極電磁石(Ripple Q Magnet: RQ)の2種類で構成され、フィードバック装置はスピルモニタの信号から最適なEQ及びRQの励磁パターンを作り出すため、高速のDSPを用いたディジタルフィードバックシステムである。 我々はスピルの時間構造をより改善するため、新たなRQ電源を開発を行った。新RQ電源を用いたビームコミッショニングの最新の研究結果を報告します。
 
16:10-18:10 
WEPS101
p.681
COM Expressモジュールを用いたVME CPUボードの開発
Development of VME CPU board with COM Express module

○増田 剛正,大端 通,竹内 政雄(高輝度光科学研究センター)
○Takemasa Masuda, Toru Ohata, Masao Takeuchi (JASRI)
 
本発表では、COM Expressをプロセッサモジュールとして実装する監視機能付きVMEキャリアボードを開発と、今年3月から開始した実機での使用について報告する。 SPring-8では加速器機器制御フロントエンド計算機としてVMEを用いている。VMEは規格が制定されてから30年近くが経過し、市場も緩やかにではあるが縮小傾向にある。近年はVME CPUボードの選択肢も限られるようになってきている。そこで我々は、COM Expressモジュールを実装することでCPUボードとして動作するVMEキャリアボード(ARKUS社製Axvme2000)を開発した。COM Expressの市場は成長を続けており、幅広い選択肢の中からターゲットにとって最適なプロセッサモジュールを選び続けることが可能となる。またボード上のPCI Expressスイッチチップの設定を変えることにより、XMC/PMCスロットに実装したプロセッサモジュール等からVMEバスの制御が行うことも可能である。加えて、VME計算機の遠隔管理機能を強化するため、キャリアボードに実装出来る監視用ボード(ARKUS社製Axvme2001)の開発も併せて行った。これによりVMEバスの電源電圧や内部温度などの状態監視、BIOS起動画面の表示と操作、VMEバスやプロセッサモジュールのリセットなどを遠隔から行うことが可能となっている。
 
16:10-18:10 
WEPS102
p.686
KEK入射器における加速器情報蓄積システムの現状
Status of Data Archive System at the KEK Injector Linac

○工藤 拓弥,草野 史郎(三菱電機システムサービス(株)),古川 和朗,佐藤 政則(高エネルギー加速器研究機構)
○Takuya Kudou, Shiro Kusano (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.), Kazuro Furukawa, Masanori Satoh (KEK)
 
KEK入射器では、各機器の監視を目的に変化履歴を蓄積しており、変化履歴蓄積システムにはSpallation Neutron Sourceで開発されたEPICSツールのひとつであるChannel Archiverを使用している。このシステムは、2004年の導入以降、安定に運用されてきたが、蓄積データサイズの増大に起因する障害が度々発生した。 このため、DESYで開発が開始され、多くの研究機関が共同開発しているEclipseベースの制御システムツールであるControl System Studio(CSS)の一部である CSS Archiverを導入し、試験運用を開始した。CSS Archiverに蓄積された情報は、CSSのツールであるData Browserで参照が可能だが、端末毎にCSSのインストールが必要となる。しかしながら,機器担当者は,居室あるいは実験室などに設置された複数の端末を利用するため、利便性を考慮し、Webブラウザ上で動作する表示ツールをAdobe Flashを用いて開発した。 本稿では、Channel Archiver の障害、CSS Archiver の導入運用、新規開発した表示ツールの詳細について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS103
p.690
Hadoop・HBaseを利用したJ-PARC運転データアーカイビング
J-PARC operation data archiving using Hadoop and HBase

○吉位 明伸,菊澤 信宏(日本原子力研究開発機構)
○Akinobu Yoshii, Nobuhiro Kikuzawa (JAEA)
 
J-PARC (Japan Proton Accelerator Research Complex) においては多数の機器により制御されており、Linac、RCSに関して約64000点にも及ぶEPICSレコードのデータを収集している。現状では、RDBMSのPostgreSQLを利用したシステムにてデータを格納しているが、性能や容量、拡張性の面で決して十分とは言い切れず、将来的なデータ量増加に対応できる新たなシステムアーキテクチャが求められてきている。 この課題に対応するために、分散処理フレームワークのHadoopと分散データベースのHBaseの利用について検討を行った。1台のMasterNodeと9台のSlaveNodeという構成で、約50TBのHDFSファイルシステムを構築し、この上でHBaseを稼働させ、現行データを様々なデータ構造で投入し、Read/Write性能や挙動について検証を行った。 その結果、システムに適したデータ構造と適切なパラメータチューニングを施した場合に、現行システムと比較してデータ検索の応答時間が1/5程度にまで短縮され、書込みについても性能向上が確認できた。 ただし、検証を行う中で実際の利用に向けて可用性や運用面に関する解決すべき課題が幾つか浮上している。 本学会では、これらの検証から得られた結果や課題並びに今後の対応について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS104
p.694
SPring-8 ブースターシンクロトロン補正電磁石電源制御システムの更新
Upgrade of the control system for steering magnet power supplies at SPring-8 booster synchrotron

○植田 倉六,増田 剛正,深見 健司,青木 毅(高輝度光科学研究センター)
○Souroku Ueda, Takemasa Masuda, Kenji Fukami, Tsuyoshi Aoki (Japan Synchrotron Radiation Research Institute)
 
運用開始から10年以上が経過し、SPring-8で使用している制御ボードの多くが生産中止になっている。ブースターシンクロトロンの補正電磁石電源制御システムで使用しているNIOもその一つであった。そこで、SPring-8で開発を行い数多く使用されている光リンクリモートI/Oシステムである光伝送ボードをベースとしたシステムへ移行することにした。更新に際して新たな制御ボード(OPT-RMT COMBOdao)を開発し、偏向、四極、六極の各電磁石電源のパターン駆動用の10kHz外部クロックに同期したパターン出力機能および電源に対する設定値の読み返し機能を新たに実現することに成功した。 既存の電源への信号ケーブルや19インチラック等を変更しなくても済むようにOPT-RMT COMBOdaoボードとその実装用シャーシの設計を行ったため、約3週間で新システムへの移行を完了することができた。また10kポイントのパターンデータを80台の電源に設定するのに非常に時間が掛かる(約133分)ため、マルチコアCPUボードを導入し、光伝送ボード用デバイスドライバの処理の高速化や並列化を行うことで約1/200に時間を短縮した。 本発表では、更新した新制御システムと、開発したハードウェアやソフトウェアの整備について報告する。
 
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WEPS105
p.698
LAN-SerialモジュールXportによる低コストEPICS制御の試み
Low-cost EPICS control using LAN-Serial module Xport

○吉田 奨(関東情報サービス(株)),上窪田 紀彦,山本 昇,村杉 茂,冨澤 正人(高エネルギー加速器研究機構),名倉 信明(日本アドバンストテクノロジー株式会社)
○Susumu Yoshida (KIS), Norihiko Kamikubota, Noboru Yamamoto, Shigeru Murasugi, Masahito Tomizawa (KEK), Nobuaki Nagura (NAT)
 
XPortは、RJ-45コネクターサイズにCPU、イーサチップ、RTOS、TCP/IPとその上位ア プリケーション層までが実装されたLAN-Serialモジュールである Etherコネクタのサイズに実装されているため小型な機器への搭載も可能であり容易 にシリアルインターフェースのネットワーク化を行うことが出来る 近年、J-PARC MR加速器にて導入されるハードウェアにおいてもXportを搭載した機 器が見られるようになった。 今回、遅い取り出しで導入されたRFアンプ電源に搭載されていたXPortに対して J-PARC制御標準アプリケーションであるEPICSを介し制御を行った結果を報告する。
 
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WEPS106
p.701
SPring-8バンチ純度モニター高速化のための時間測定系の高度化
Upgrade of Time Measurement System for Bunch Purity Monitor at SPring-8

○清道 明男,田村 和宏,増田 剛正,大熊 春夫(高輝度光科学研究センター),竹内 裕嗣,梶 泰之(スプリングエイトサービス)
○Akio Kiyomichi, Kazuhiro Tamura, Takemasa Masuda, Haruo Ohkuma (JASRI), Hiroshi Takeuchi, Yasuyuki Kaji (SES)
 
SPring-8では高純度単パルス放射光を用いた高精度実験(核共鳴散乱実験など)が広く行われており、蓄積ビームの高いバンチ純度を維持した光源リングの運転が重要である。そのためバンチ純度の変化を高精度かつ継続的に計測する純度モニターが不可欠であり、更なる高速化が求められている。 SPring-8で稼働中のバンチ純度モニターはマイクロチャンネルプレート内蔵型光電子増倍管(MCP-PMT)を光子検出器とする光子計数装置に高速光シャッターを組み合わせたモニターである。光子の計数には時間差波高変換器(TAC)とマルチチャンネルアナライザ(MCA)を用いている。MCP-PMTの保護およびMCAのデッドタイムを考慮して、現状では計数レートが約20kカウント/秒に制限されているため、1つの孤立バンチにつき約4分の測定時間を必要としている。 純度測定の高速化のため、以下の高度化を計画している。 1) マルチヒットTDC導入による時間測定系の高性能化、 2) 光子計数装置にHPD(Hybrid Photo Detector)を導入し1Mカウント/秒程度の計測を実現。 今回、リング周回時間4.8μsのトリガ周期で1Mカウント/秒の測定を可能にするため、時間測定系に高時間分解能マルチヒットTDCのVMEボード(CAEN TDC V1290N)を導入し、またVMEバス上ではブロック転送を使用した。本発表では、CAEN TDC V1290N 導入におけるSolarisデバイスドライバとAPI関数の開発、そしてTDCを用いた実ビーム計測について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS107
p.704
PLC/Linuxを用いたJ-PARC MR-RF冷却系のEPICS監視システム
EPICS-based Surveillance of Cooling Water for J-PARC MR-RF using PLC/Linux

○佐藤 健一(高エネルギー加速器研究機構),吉田 奨(関東情報サービス(株)),吉井 正人,上窪田 紀彦,山本 昇(高エネルギー加速器研究機構)
○Kenichi Sato (KEK / J-PARC), Susumu Yoshida (KIS), Masahito Yoshii, Norihiko Kamikubota, Noboru Yamamoto (KEK / J-PARC)
 
J-PARCは、日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で運営している加速器施設である。リニアック、RCS(Rapid-Cycling Synchrotron)、MR(Main Ring)の3つの加速器で構成されている。 2011年夏季に、MRにおいて冷却水システムの増築が行われた。もともとのシステムでは電磁石とRFで共通の冷却水が使用された。しかし、冷却水中の銅イオン(電磁石由来)がRF機器に悪影響を及ぼすと懸念された。両グループの冷却水を独立させるため、RFに新設の冷却水系を用意した。 従来の冷却水監視システムはMR建築時にインフラの一部として構築され、 拡張することを想定していなかった。今回増築分の監視システムも、現システムの拡張は困難であった。そこで、MR加速器制御システム(EPICS)で広く適用しているPLC/Linuxで新設の冷却水系監視システムを開発した。 PLC/Linuxを採用することで、迅速なシステム構築やコストを抑えられる等のメリットが生まれた。
 
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WEPS108
p.707
PF-AR 加速器制御におけるアラームシステムの更新
Upgrade of Alarm System at PF-AR Accelerator Control

○中村 卓也(三菱電機システムサービス(株)),古川 和朗,帯名 崇(高エネルギー加速器研究機構),Kasemir Kay(オークリッジ国立研究所)
○Takuya Nakamura (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.), Kazuro Furukawa, Takashi Obina (KEK), Kay Kasemir (ORNL)
 
KEKB, PF-AR加速器では、加速器の制御ツールとしてpythonやSADといったスクリプト言語を主に利用している。これらのスクリプト言語を用いて、サーバー計算 機上で実行されるプログラムや、運転用のOPI(Operator Interface)パネルを作成している。また運転用のOPIパネルとしては、MEDMというツールも併せて利用 されている。 近年、EPICSコミュニティに Control System Studio(CSS) と呼ばれる制御ツールを集めたソフトウェアが登場し、様々な研究所での開発や利用が進んできている。CSSには加速器の制御で利用されるツールが色々と用意されており、GUIツール、データ収集システム、アラーム監視システムなどのツールが用意されている。 KEKB, PF-ARのアラーム監視システムは、SADスクリプトによって加速器の状態を常時監視するOPIパネルが作成され、運用されてきた。しかし、アラームの発生状況によってはOPIパネルが停止するという不具合がしばしば発生しており、新しいアラーム監視システムへの移行が検討されていた。そこで今回、PF-ARのアラーム監視システムの更新案としてCSSのシステムが検討され、 動作評価試験、及び新システムへの移行が行われた。 ここでは、今回導入されたCSSアラーム監視システムについて報告する。
 
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WEPS109
p.711
J-PARC におけるミュオン回転標的の制御系の現状
Status of Control System for Muon Rotating Target at J-PARC

○小林 庸男(KEK J-PARC MUSE)
○Kobayashi Yasuo (KEK J-PARC MUSE)
 
 高エネルギー加速器研究機構においては日本原子力研究開発機構と共同で大強度陽子加速器計画J-PARC 計画を推進しており、その中でミュオン科学研究施設(J-PARC/MUSE)では世界最高強度のパルス状ミュオンを用いた物性、素粒子実験を展開している。  ミュオンを生成するための黒鉛標的は強い放射線、高温、真空内に設置され、固定された黒鉛材の放射線損傷によってその寿命が決まっている。このため黒鉛材を回転させることによって、その寿命を長期化することを計画している。回転標的制御のためにPLC およびタッチパネルを用いた制御系を構築している。  昨年度以降、この回転制御系をPLCによって構築する事を計画しており、基本的な回転標的実機の回転制御駆動などは完成している。現在は動作ログやアラームログなどの作成やデータ管理などの実際的な運用の為の整備を行っている段階である。  また、これと並行して回転標的のベアリング材評価用の加熱試験器のログも同様に取る事を計画しており、こちらの情報管理や安全制御なども同時に行っている。  本発表ではこれらのJ-PARCミュオン回転標的に使用する制御系の現状に関して報告する。
 
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WEPS110
p.714
J-PARC MLFインヒビットシステムの開発
Development of MLF-Inhibit System for J-PARC

○石山 達也,伊藤 雄一,菊澤 信宏,鈴木 隆洋,大井 元貴,明午 伸一郎,酒井 健二,加藤 裕子(JAEA)
○Tatsuya Ishiyama, Yuichi Ito, Nobuhiro Kikuzawa, Takahiro Suzuki, Motoki Ooi, Shin-ichiro Meigo, Kenji Sakai, Yuko Kato (JAEA)
 
現在J-PARCでは、MLF(物質・生命科学実験施設)とMR(50GeVシンクロトロン)の各施設(ニュートリノ実験施設、ハドロン実験施設)への供用運転が行われている。供用運転をするにあたり、安全性確保と共に、稼働率の向上が重要課題である。 安全性確保には、加速器施設内での突発的なビームロストラブルを回避する目的で、機器の異常信号を検知した際、高速にビームを停止する、MPS(Machine Protection System)が導入されている。 MLFとMRの両施設へのビーム打ち分け時に、MLFにてMPSが発報すると全ビームが停止となり、正常運転状態にあるMRへのビーム供給も停止してしまう。特にミュオンターゲット移動時にはMPSが必ず発報する仕様となっているため、ビーム行先をMRのみに切り替えてターゲットを移動する運用を行っていた。このビーム行先切り替えの際にも全ビーム停止となる。これらによるMR運転稼働率の低下が問題となっていた。 そこで、現状のMLFのMPS信号をMLFインヒビットとして扱い、MLFインヒビット発報時には、MLF行きのビームのみを停止し、MR運転稼働率の向上を図ることとした。勿論、MLFインヒビットを実現するにあたり、安全性を保つことが必須である。今回新たに、MLFインヒビット発報中にMLFにてビーム検出がされた際に、通常のMPSを発報し全ビーム停止を行うロジックを組み込むことで、稼働率向上、安全性確保を両立したMLFインヒビットシステムの構築を行った。
 
16:10-18:10 
WEPS111
p.717
SACLA施設ユーティリティ監視ソフトウェアの開発
DEVELOPMENT OF MONITORING SOFTWARE FOR THE SACLA FACILITY UTILITIES

○藤原 綾潜,増田 剛正,広野 等子,山下 明広(高輝度光科学研究センター)
○Ryosen Fujihara, Takemasa Masuda, Toko Hirono, Akihiro Yamashita (Japan Synchrotron Radiation Research Institute (JASRI/SPring-8))
 
X線自由電子レーザー施設(SACLA)において、施設ユーティリティの状態監視を行うためのソフトウェアを作成した。施設ユーティリティ監視は、施設内の冷却水温度や流量、電気系統の電力値などの監視データの収集と、それらを表示し、判定により警報を発する状態表示画面により構成される。SACLAでは、施設ユーティリティの状態が加速器の性能に与える影響が大きいため、監視データを加速器制御系データベースに収集し、加速器制御、施設ユーティリティ監視のいずれの側からも参照することを可能としている。状態監視ソフトウェアは、この加速器制御系データベース上で、測定機器から収集されるオンラインデータを取得し、また警報基準値などを含むパラメータデータは個別に管理することで、監視データを加速器制御系と共有しながら、互いに干渉しないようにした。状態表示画面については、従来のような全ての監視データを常時表示させる全モニタリング方式を捨て、代表的な警報表示のみ前面に出した。警報発生時、音声により注意喚起がなされたあと、画面上の警報ランプに従って次の画面を開くことにより、詳細な警報を表示させる階層構造を持った表示方式とした。また各画面下部の帳票には、全ての監視対象に関する最新の警報を、逐次、文字で表示させ、常に全体の動向に注意を払えるようにした。これにより限られた数の表示端末で施設ユーティリティ全体を監視することを可能にした。
 
16:10-18:10 
WEPS112
p.722
KEKデジタル加速器に於ける誘導加速の完全予測制御
Full predictive control of induction acceleration in KEK Digital Accelerator

○茨田 優次(東京都市大学),浅尾 博之(NECネットワーク・センサ株式会社),新井 輝夫(高エネルギー加速器研究機構),岡田 喜仁(NECネットワーク・センサ株式会社),原田 新也,持木 幸一(東京都市大学),由元 崇(東京工業大学),髙山 健(高エネルギー加速器研究機構)
○Masatsugu Barata (Tokyo City University), Hiroyuki Asao (NEC Network and Sensor Systems,Ltd.), Teruo Arai (KEK), Yoshihito Okada (NEC Network and Sensor Systems,Ltd.)), Shinya Harada, Koichi Mochiki (Tokyo City University), Takashi Yoshimoto (Tokyo Institute of Technology), Ken Takayama (KEK)
 
デジタル加速器は入射器を用いない低速域から高速域まで重イオンを一台のリングで誘導加速する誘導加速シンクロトロンである[1]。ビーム位置モニターが整備されたKEKデジタル加速器[2]は本格ビームコミッショニングの段階に入った。1対1のパルストランスである誘導加速セルに発生させるパルス電圧で加速を行う。誘導加速セルを駆動する高速スイッチング電源の半導体スイッチのゲートの制御のみで、要求される加速電圧:Vac=CdB/dtに対応させている。主電磁石磁場のランプパターンを一次クロックとしてFPGAに予めプログラムされた制御信号によってこれを行う。全く同じ構造の加速セルで所謂バリアー電圧を発生してイオンビームを縦方向に閉じ込める。 現在の誘導加速システムは以下の「制約」と「機能」を持つ。(1)最大出力電圧値は2kVで設定可変、(2)加速サイクル中の出力電圧値は固定、(3)最大パルス長4sec内で可変、(4)最大繰り返し数1 MHzで可変。FPGAを用いたインテリジェント制御手法によって、デバイスに備わったこれらの「機能」を最大限引き出し、「制約部分」に対処している。具体的には(1)加速に伴うパルス長制御、(2)パルス発生密度制御、(3)複数加速セルのSorting、(4)間歇運転である。これらデジタル加速器に特徴的な誘導加速全般について、ビームコミッショニング結果を含めて紹介する。
 
16:10-18:10 
WEPS113
p.727
SACLA 制御用データベースシステムの増強
MADOCA Database System with Dual Servers for SACLA

○広野 等子,濱野 崇(高輝度光科学研究センター),福井 達,丸山 俊之(理化学研究所 播磨研究所),山鹿 光裕,山下 明広(高輝度光科学研究センター)
○Toko Hirono, Takashi Hamano (JASRI), Toru Fukui, Toshiyuki Maruyama (RIKEN Harima), Mitsuhiro Yamaga, Akihiro Yamashita (JASRI)
 
SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser (SACLA)の制御フレームワークにはMessage and Database Oriented Control Architecture (MADOCA)が採用されており、データベースシステムはデータ収集やアラーム監視などの一部として重要な役割を担っている。しかし、取り扱う信号数やデータベースにアクセスする運転用制御プログラムの増加により高負荷の状態が続いてしまっていた。そこで、1台のデータベースサーバ機から構成されていたデータベースシステムを変更して、2台のデータベースサーバ機で構成することとした。 短時間のシステム停止でデータベースシステムの能力を倍増するには、すでに運用されているMADOCAフレームや運転用制御プログラム等に変更を加える必要のない構成にする必要がある。そこで、1台目には運転用制御プログラムなどから頻繁に使用されるデータを置き、2台目には過去に収集されたデータなどアクセスは稀であるが取り扱うデータ量の多いものを保存した。2台目に保存されたデータは仮想的に1台目にあるようにデータベースを設定した。導入前に行った負荷試験では85000点のデータを2秒周期で収集し、それらのデータを利用できることが確認できた。これはこれまでSACLAで取り扱われてきたデータ数の約2倍である。また、今後SACLAで予定されている加速器やビームラインの増築に対応することができるデータ数である。
 
16:10-18:10 
WEPS114
p.731
KEK入射器におけるコンソールシステムの更新
Upgrade of Console System at the KEK injector Linac

○草野 史郎,工藤 拓弥(三菱電機システムサービス(株)),古川 和朗,佐藤 政則(高エネルギー加速器研究機構)
○Shiro Kusano, Takuya Kudou (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.), Kazuro Furukawa, Masanori Satoh (KEK)
 
KEK入射器の加速器運転コンソールシステムでは,建設当初より専用制御卓が使用されてきた。本制御卓には,17インチ程度のモニタしか設置することができないため,近年主流である,大型液晶モニタの導入が困難であった。また,2011年3月の東日本大震災により、KEK入射器も甚大な地震被害を受け,制御卓上部に設置していた複数台のモニタが落下より破損した。これらの状況を踏まえて,2011年8月に,SuperKEKBへ向けた制御室の更新をおこなった。本稿では、新コンソールシステムについて詳述するとともに,将来の拡張計画についても報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS115
p.734
J-PARC 3GeV RCS 第2、3荷電変換装置制御システム設計
Design of the control system for the 2nd and 3rd charge exchange system at the 3GeV RCS in J-PARC

○川瀬 雅人,吉本 政弘,山崎 良雄,竹田 修(J-PARCセンター)
○Masato Kawase, Masahiro Yoshimoto, Yoshio Yamazaki, Osamu Takeda (J-PARC Center)
 
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)は3枚の炭素薄膜を用いた荷電変換入射方式を採用している。この入射方式を実現するために第1から第3までの荷電変換装置が設置されており、これら3つの装置は、1つの制御システム(荷電変換制御システム)で制御している。現在メンテナンス性の向上と真空排気能力の強化を目的とした第2、3荷電変換装置の高機能化を進めており、これに合わせて制御システムの見直しを行っている。制御システム見直しの基本方針は、3つの装置を一元管理している制御システムから切り離し、それぞれ独立した制御システムとして再構築する。その上で第2、3荷電変換装置の高機能化に対応させることとした。各々の装置を独立に制御することから、特に安全面に関するインターロック機構の見直しが必須となる。これまで荷電変換装置の異常信号は3台分として集約し機器保護システム(MPS)を作動させていた。その為、異常時の原因追究等に時間を要していたが、独立した異常信号でMPSを作動させることで、緊急時の個別対応が容易になるという効果が期待できる。 今回の第2、3荷電変換装置の制御は横河電機製PLC FA-M3のみ用いたシンプルなシステムを採用し、軸駆動系及び真空排気系を融合し且つ同期性のある安全な制御アルゴリズムの設計を進めている。本報告では、この再構築した第2、3荷電変換装置制御システム設計について報告するものである。
 
16:10-18:10 
WEPS116
p.738
核変換実験施設のためのJ-PARCタイミングシステムの設計検討
Design study of J-PARC Timing System for Nuclear Transmutation Experimental Facility

○伊藤 雄一,川瀬 雅人,菊澤 信宏,大内 伸夫(JAEA/J-PARC)
○Yuichi Itoh, Masato Kawase, Nobuhiro Kikuzawa, Nobuo Ouchi (JAEA/J-PARC)
 
J-PARCでは第二期計画として加速器駆動システム(ADS)による核変換実験施設の建設が検討されている。 ADSで利用する予定の陽子ビームは400MeV,250kWであり、LINACから分岐して供給される。 LINACは既存のJ-PARC各実験施設に向けて繰り返し25Hzで運転しているが、 これらへのビームパワーを維持するためには、倍の50Hzで運転しなければならない。 従って、J-PARCタイミングシステムも50Hzとしなければならないが、 特にRCS以降ではDAQシステムなどが25Hzで最適化されているなどの理由により、全体を50Hz化するのは困難であることが予想される。 本稿ではこれらの現状を踏まえてADS対応のタイミングシステムについて検討する。
 
16:10-18:10 
WEPS117
p.741
J-PARC MR制御計算機システムの進展
Improvement of Computer Systems for J-PARC MR Control

○上窪田 紀彦(高エネ研 加速器)
○Norihiko Kamikubota (KEK / J-PARC)
 
J-PARC MR加速器は、2008年5月にビーム運転を開始した。その後着実に加速器性能を向上しつつ、ユーザ実験施設(HadronおよびNeutrino)へのビーム供給を続けてきた。2011年3月の東日本大震災も乗り越え、現在(2012年)は本格的な実験施設向けビーム供給を行っている。 J-PARC加速器はEPICSベースの制御システムで制御・監視されている[1]。 MR向け制御計算機システム資源には制御ネットワーク、disk system、計算サーバ、端末、などがあるが、いずれも運転開始直前の2007年に集中的に導入された[2]。その後5年にわたるビーム運転で、これらの計算機資源がどのように使用され、また増強されてきたかを報告する。また、次の5年を見据えた制御計算機システムの拡張の方向について議論する。 [1] N.Kamikubota, et.al., "J-PARC CONTROL TOWARD FUTURE RELIABLE OPERATION", ICALEPCS 2011, Grenoble, Oct.2011, p.378-381 [2] 上窪田 他、「J-PARC計算機制御システムのインフラ整備」、第4回加速器学会 (理研、和光、2007年8月)、p.378-380
 
16:10-18:10 
WEPS118
p.745
J-PARC MR加速器制御システムにおけるIOC(Input/Output Controller)統合管理
IOC Surveillance System for J-PARC MR Control

○根本 弘幸(アクモス(株)),上窪田 紀彦,山本 昇,山田 秀衛(高エネルギー加速器研究機構),吉田 奨,本橋 重信,飯塚 上夫,高橋 大輔(関東情報サービス(株))
○Hiroyuki Nemoto (ACMOS INC.), Norihiko Kamikubota, Noboru Yamamoto, Shuei Yamada (KEK), Susumu Yoshida, Shigenobu Motohashi, Takao Iitsuka, Daisuke Takahashi (KIS)
 
J-PARC MR加速器制御システムは、EPICSを採用して開発が行われている。 IOC(Input/Output controller)とて主に用いられているのはVMEであった。しかしPLCハードウェアを用いたIOCが導入され、近年ではBlade Server上に作成された仮想OSを用いたVirtual IOCも導入された。また、総数・種類が増加しているIOCの一括監視を行うために、IOC Statusを整備した。これは、PCMONをベースとして、取得データ・一覧画面の追加を行ったEPICSアプリケーションである。 今回の報告では、増加するIOCとその管理について報告する。
 
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WEPS119
p.749
デジタルフィードバックを用いたcERL空洞のチューナー制御
Tuner control for cERL cavities by digital feedback system

○道園 真一郎,荒川 大,片桐 広明,松本 利広,三浦 孝子,矢野 喜治(KEK)
○Shinichiro Michizono, Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Yoshiharu Yano (KEK)
 
ERLの試験施設(cERL)が現在KEKで建設中である.cERLの空洞電圧の振幅・位相安定度の要求仕様はそれぞれ0.1%rms,0.1度rmsであり,J-PARCリニアックやKEKの超伝導高周波試験施設(STF)で実績のあるデジタルフィードバックシステムを採用することが決まっている.cERLの空洞はQ値が高い(たとえば,主リニアックでは2e7であり,周波数半値幅は32.5Hzである.)ことから,1)高周波電圧を一定にするためのフィードバックを安定動作させること,2)高周波源を効率よく使うことを考慮すると,空洞離調の自動調整が重要となる.チューナーは幅広く動作する機械チューナーと,高速動作のピエゾチューナーの組み合わせにより構成されており,機械チューナーはパルスモーターの制御,ピエゾは高電圧電源の電圧制御により行う.これらの制御を空洞電圧制御用デジタルフィードバックと同タイプのマイクロTCA規格のボードを使ってデジタルフィードバックを適用する予定である.現在は実空洞の試験を行うことができないため,空洞およびチューナー系を模擬したテストスタンドを構築しフィードバックの全体評価を行っている.今回はこのチューナー制御系の開発状況を中心に紹介する.
 
16:10-18:10 
WEPS120
p.753
同時入射に対応したRFモニタユニットの開発
RF Monitor Unit for Simultaneous Injection

○片桐 広明,荒川 大,松本 利広,三浦 孝子,道園 真一郎,矢野 喜治(高エネルギー加速器研究機構)
○Hiroaki Katagiri, Dai Arakawa, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Shinichiro Michizono, Yoshiharu Yano (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器では2009年より、PF、KEKB、PF-ARへの同時入射運転を開始した。同時入射では50Hzのパルス毎にRFの位相やタイミングの設定値が変化するため、RFモニタでは50Hzで取りこぼし無くデータを取得し、さらにビームモードごとに振り分ける必要がある。現在運用中のVXIをベースとしたRFモニタは、KEKB加速器建設時に導入されたものでハードウェア性能など制約があり、この要求に完全には対応できないため、新たにアナログIQデモジュレータ、AD/DAボード、FPGAボードを組み合わせたモニタユニットを開発した。入射器のイベントシステムで管理されるビームモードの識別は、当初EPICS経由でソフト上で行うことを検討したが、FPGAボードにSFP光トランシーバを装着し、イベントレシーバ回路を組み込むことで、完全にハードウェアでの処理が可能となった。さらにSiTCPを実装し、EPICSのIOCとなる上位ホストにギガビットイーサネットでデータを転送することにした。ADC最大12チャンネル分のデータを50Hzで送信可能なことを確認している。今後予定されている実機での試験を含め報告する。
 
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WEPS121
p.757
ARES空洞シミュレータの開発
Development of ARES Cavity Simulator

○小林 鉄也,赤井 和憲,中西 功太(高エネ研)
○Tetsuya Kobayashi, Kazunori Akai, Kota Nakanishi (KEK)
 
 高エネルギー加速器研究機構ではSuperKEKB計画(ルミノシティをKEKB加速器の40倍にアップグレード)が進められ、そこで新たにデジタル低電力高周波(LLRF)制御システムの開発を行っている。この新LLRF制御システムの評価試験(大電力試験前の十分な動作試験)および量産時の動作確認が必要であり、そのため、ベンチトップ型の電気式ARES空洞シミュレータを開発した。その詳細について報告する。   ARES空洞は、KEKBで大電流ビーム加速に適応するための特殊な常伝導加速空洞で、加速空洞と貯蔵空洞を結合空洞を介して結合させた3連空洞である。  本シミュレータでは、従来の方式であるベースバンドの状態方程式(差分式)による時間発展の演算(一種のIIRフィルタ)を3連空洞に拡張させた。また、高周波信号(約509MHz)を直接入力し、 その過渡的応答(反射および各空洞モニター)も高周波信号として出力させるものとした。そのためのI,Q変調/復調器を内蔵し、シミュレート演算はFPGAで行っている。更にモータドライブのパルス信号を入力することでチューナー制御 (共振周波数の変化)にも対応している。その他、空洞パラメータ(Q値、結合度等)をシリアル通信で外部から任意に設定可能となっている。  ある種の近似演算のため時間ステップ(クロック周波数)と空洞間結合度の値によっては計算が発散することが分かっていて、その計算の安定条件についても考察する。
 
16:10-18:10 
WEPS122
p.762
J-PARCリニアック RFQテストスタンドのRF制御システム
RF Control System for the RFQ Test Station at J-PARC Linac

○福井 佑治,川村 真人,小林 鉄也,方 志高,二ツ川 健太(高エネルギー加速器研究機構),佐藤 文明,篠崎 信一,鈴木 浩幸,千代 悦司,堀 利彦(日本原子力研究開発機構),山崎 正義(三菱電機システムサービス)
○Yuji Fukui, Masato Kawamura, Tetsuya Kobayashi, Zhigao Fang, Kenta Futatsukawa (KEK), Fumiaki Sato, Shin-ichi Shinozaki, Hiroyuki Suzuki, Etsuji Chishiro, Toshihiko Hori (JAEA), Masayoshi Yamazaki (Mitsubishi SC)
 
J-PARCリニアックでは、RFQ(高周波4重極ライナック)を使用してイオン源からの負水素イオンビームを加速し、DTLへ入射している。このRFQでは過去、ビーム運転中にトリップが頻発するなどして安定性が低下する事象が発生した。そこで現行のRFQのバックアップ機として新たにRFQ2号機が製作された。このRFQ2号機のハイパワーテストを行うために、2011年7月よりRFQテストステーションの構築が始まり、2012年4月下旬からは空洞へのRF投入が開始された。 RFQテストステーションは低電力高周波(LLRF)制御、RF立体回路、324MHzクライストロンやこれを駆動する高圧電源、冷却水系などで構成されており、このうちLLRF制御やクライストロン電源制御ではPLC(Programmable Logic Controller)を使用してRFの制御や運転データの収集などを行っている。本稿ではRFQテストステーションのRF制御システムについて報告を行う。
 
16:10-18:10 
WEPS123
p.765
敷設ケーブルの高周波電力損失の高精度測定
Precise Measurement of the Installed Cable Attenuation

○二ツ川 健太,穴見 昌三,小林 鉄也,方 志高,福井 佑治,道園 真一郎(高エネルギー加速器研究機構),佐藤 文明,篠崎 信一(日本原子力研究開発機構)
○Kenta Futatsukawa, Shozo Anami, Tetsuya Kobayashi, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Shinichiro Michizono (KEK), Fumiaki Sato, Shinichi Shinozaki (JAEA)
 
ほぼ全ての加速器施設で, 加速空洞内の電場や大電力高周波の伝送系, またビームの状態などのモニタ用として, 高周波ケーブルを使用している。これらの敷設されたケーブルにおいては, 運転前に高周波特性を把握しておくことが, 必要不可欠である。一般的には, ケーブル内での高周波電力損失は, ネットワークアナライザを使用して, 透過電力S21を測定する手法で求められる。放射線防護の観点から, 加速器トンネルとその制御システムは, 離れた場所に設置される。この場合は, この間に敷設されたケーブルの透過電力を測定するためには, この間を渡って校正されたケーブルが必要になり容易ではない。また, 場合によっては, ケーブルは敷設後に端末処理され, 事前に測定することができない。そこで, ケーブル内での高周波電力損失の測定手法として, 反射を利用する方法を紹介する。この方法では, ケーブル末端での反射波の位相を回転させることにより, ケーブルの途中での反射と末端での反射を区別する。この測定は, 従来のパワーメータと信号発振器を用いた場合より, 容易であり, かつ高精度である。また, 高周波電力損失という基礎情報の測定であると共に, 加速器で使用する一般的な機器・道具しか使用していないため, 応用範囲が広いと考えている。J-PARC リニアックに新しく敷設するACS用ケーブルの測定でもこの手法を採用する予定である。
 
16:10-18:10 
WEPS124
p.769
J-PARCリニアックLLRFの東日本大震災からの再スタート
Status of J-PARC Linac LLRF after the Tohoku Earthquake

○二ツ川 健太,穴見 昌三,川村 真人,小林 鉄也,方 志高,福井 佑治,道園 真一郎(高エネルギー加速器研究機構),佐藤 文明,篠崎 信一,千代 悦司,堀 利彦(日本原子力研究開発機構),山崎 正義(三菱電機システムサービス)
○Kenta Futatsukawa, Shozo Anami, Masato Kawamura, Tetsuya Kobayashi, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Shinichiro Michizono (KEK), Fumiaki Sato, Shinichi Shinozaki, Etsuji Chishiro, Toshihiko Hori (JAEA), Masayoshi Yamazaki (Mitsubishi SC)
 
2011年3月11日に発生した東日本大震災によって, J-PARCリニアックは, 建屋, ユーティリティー設備, 装置等に甚大な被害が生じた。高周波(RF)システムも立体回路の変形に伴い, 2つの加速空洞に伝送しているRFの位相差を測定し, 再調整を行った。また, 各基準信号の伝送, 制御機器, 増幅機器の動作チェックを行い, 2011年の末にビーム試験を迎えることができた。しかし, SDTL05空洞が, 震災で大気に晒されて空洞内の状態が悪化したこともあり, 運転で使用するパワー領域でRFが安定した状態を保つことが不可能になった。結果, この領域での使用が困難になり, 現在は設計値より高いRFパワーで運転している。不安定な領域は拡大傾向にあるため, 現状の把握と原因の早期究明に努めている。また, 平成24年度3月にRFQ, DTL用の高圧直流電源の変圧整流器が故障した。故障した電源は80 kVと110 kVの引出しがあり他の電源と仕様が異なっていた。ダイオードスタックの物理的破損は確認できたが, この破損原因を究明することができなかったため, 変圧整流器を交換することになった。これにより, RFの運転条件が変わったが, 既存のRF制御システムで対応できている。本発表では, 震災の復旧作業と夏季シャットダウンまでの運転対応について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS125
p.774
SuperKEKB用LLRF制御システム試作評価と改良
Refinements of the new LLRF Control System for SuperKEKB

○林 和孝(三菱電機特機システム),赤井 和憲,海老原 清一,小田切 淳一,可部 農志,小林 鉄也(高エネルギー加速器研究機構),出口 久城(三菱電機特機システム),中西 功太(高エネルギー加速器研究機構),西尾 淳一(三菱電機特機システム),西脇 みちる(高エネルギー加速器研究機構),春松 和孝,水野 隼一,漁師 雅次(三菱電機特機システム)
○Kazutaka Hayashi (Mitsubishi Electric TOKKI Systems), Kazunori Akai, Kiyokazu Ebihara, Jun-ichi Odagiri, Atsushi Kabe, Tetusya Kobayashi (KEK), Hisakuni Deguchi (Mitsubishi Electric TOKKI Systems), Kota Nakanishi (KEK), Jun-ichi Nishio (Mitsubishi Electric TOKKI Systems), Michiru Nishiwaki (KEK), Kazutaka Harumatsu, Jun-ichi Mizuno, Masatsugu Ryoshi (Mitsubishi Electric TOKKI Systems)
 
SuperKEKBは、KEKB加速器のルミノシティを40倍にするため、衝突点におけるナノ・ビーム方式を採用し、かつ、蓄積ビーム電流を2倍にする加速器である。このような大強度かつ高品質ビームを加速し、ビーム不安定性を避けるためには、高周波(加速電場)制御の性能が非常に重要となる。そこでSuperKEKB加速器では、高精度、かつ、フレキシブルな制御を可能にする、新しい低電力高周波(Low Level RF: LLRF)制御システムの開発を行ってきた。 クライストロンや、加速空洞に供給される、RF信号制御は、uTCA規格をプラットフォームとするFPGA制御ボードが行う。チューナー制御、及び、RF信号による高速のインターロック制御も、FPGA制御ボードが担う。通常(真空、温度、安全系)の信号処理全般はPLCが担当する。PLCには、LLRFシステムのシーケンス制御も含まれる。各FPGAボードとPLCには、EPICSが組み込まれIOCとして動作する。 LLRFシステムのプロトタイプの評価結果を、昨年報告した。本報告では、長期変動(温度変動)や、チューナー制御等の課題に対する検討と評価結果、および、実用運転に向けての改良の結果を述べる。
 
16:10-18:10 
WEPS126
p.779
光ファイバーを用いた高精度基準信号伝送システムの開発(II)
Development of a stable RF reference distribution system(II)

○内藤 孝,浦川 順治,照沼 信浩,海老原 清一,野澤 俊介(KEK),雨宮 正樹,鈴山 智也,渡部 兼一(AIST)
○Takashi Naito Naito, Jyunnji Urakawa, Nobuhiro Terunuma, Kiyokazu Ebihara, Syunsuke Nozawa (KEK), Masaki Amemiya, Tomoya Suzuyama, Ken-ichi Watabe (AIST)
 
ビーム加速やビーム信号との同期のために高精度の基準信号が要求されるようになってきた。加速器の巨大化に伴い、伝送距離は長くなり、要求される時間精度はさらに高精度が要求される。既存の同軸ケーブルや光ファーバーのみで、これらの要求を満たすことは難しい。我々は既に位相安定化SM光ファイバーケーブルとフィードバックを組み合わせ、時間精度の安定化がはかれる事を実証した。今年度は、このシステムの安定化の結果と既存の加速器の基準信号をこのシステムで評価した結果について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS127
p.782
KEKBメインリングにおけるベローズチェンバーのX線検査の報告
X-RAY INSPECTION OF BELLOWS CHAMBERS IN THE KEKB MAIN RING

○照井 真司,石橋 拓弥,加藤 茂樹,金澤 健一,柴田 恭,白井 満,末次 祐介,久松 広美(KEK),伊藤 満,田北 雅彦(株式会社IHI検査計測)
○Shinji Terui, Takuya Ishibashi, Shigeki Kato, Ken-ichi Kanazawa, Kyo Shibata, Mitsuru Shirai, Yusuke Suetsugu, Hiromi Hisamatsu (KEK), Mitsuru Ito, Masahiko Takita (IIC)
 
2011年3月の東日本大地震は、SuperKEKBに向けてアップグレード作業中のKEKB真空システムにも大きな被害をもたらした。トンネル内に設置されていた電子リングでは、地震後、作業のため取り外した一部のベローズチェンバーにて内部のフィンガー型RFシールドの損傷が発見された。電子リングのベローズチェンバーはSuperKEKBでもほとんど再利用される予定であり、損傷したものをそのまま使用することは運転時に発熱等の問題を引き起こすことになるため、運転再開までにすべてのベローズチェンバー内部を調査する必要が生じた。しかしながら、ベローズチェンバーの数はリング全体で約800個におよび、すべてを大気解放して調べるには膨大な労力を要すると同時に、真空チェンバーの真空面が大気に曝されるという問題もある。そこで、今回、外部からX線を照射し、大気に解放することなく内部を調査する方法を採用することにした。ポータブルなX線源を用い、イメージングプレートを使って撮影した。2方向の角度から撮影し、内部のフィンガーの曲がり・破損の有無を確認した。その結果、約13個のベローズチェンバーでフィンガーの変形が認められ、今回のX線による内部検査が非常に有効であることが示された。今回の発表では、ベローズチェンバーのX線撮影検査の方法、結果、そしてその有用性について発表する。
 
16:10-18:10 
WEPS128
p.785
蓄積リング次期計画用真空系の検討
Investigation of the vacuum system for the SPring-8 upgrade

○岡安 雄一(JASRI)
○Yuichi Okayasu (JASRI)
 
SProng-8 次期計画に向けた、蓄積リングの真空系の検討について報告する。次期計画では、蓄積リングの水平方向エミッタンスを X 線領域における回折限界まで減少させることを目標の一つに掲げている。このため、1) ラティス構造をマルチベンド化し、光学収束力の極めて高い多極電磁石をストレートセクションに多数導入する必要がある。2) またこの高収束多極電磁石ではその飽和を回避するため、磁石のボア系を狭めざるを得ない (φ~26 mm 程度)。次期計画における真空系は、上記の極めて過酷な空間的・構造的条件をクリアすることが要求される。  本学会では、想定している真空系の概略に加え、現在検討している狭クリアランス・低インピーダンスの実現に向けた、ストレートチェンバーの開発に重点をおいて報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS129
p.790
SuperKEKB 陽電子ダンピングリングのアーク部用ビームダクトの設計
Design work of beam duct for SuperKEKB damping rig arc section

○柴田 恭,金澤 健一,末次 祐介,久松 広美,白井 満,石橋 拓弥,照井 真司(高エネルギー加速器研究機構)
○Kyo Shibata, Ken-ichi Kanazawa, Yusuke Suetsugu, Hiromi Hisamatsu, Mitsuru Shirai, Takuya Ishibashi, Shinji Terui (KEK)
 
SuperKEKBにおいては、陽電子リングの入射率を向上するために、ダンピングリングが新たに建設される。ダンピングリングは2つのアーク部と2つの直線部からなるレーストラック型の蓄積リング(周長約135 m)で、ビームのエネルギーは1.1 GeV、最大蓄積電流は約70 mA、バンチ数は4、バンチ長は約7 mmである。アーク部のビームダクトは、RFシールド付きベローズ、BPMブロック、排気ポートなどを有するアルミ合金製で、対応する偏向電磁石(曲率半径2.63 m)に沿った曲げ加工が施される。ダクトの接続にはRFコンタクト付きの特殊フランジが使用されるが、真空シールはICF152規格で行われる。ラティスとして偏向電磁石の向きが交互に入れ替わる”Reverse-bed FODO”が採用されるため、リング一周あたりで最大約7.2 kWの放射光がリング外側にだけではなく、内側にも照射される。そのため、光マスクと冷却水チャンネルはダクトの両サイドに設置される。電子雲の発生と光マスクのインピーダンスを低減するため、ダクトの両サイドにはアンテチェンバーが設けられ、電子雲対策としては更にグルーブ構造とTiNコーティングが用いられる。一方、コヒーレントシンクロトロン光によるビーム不安定性を抑えるため、ビームチャンネル部の高さは24 mmとした。アーク部のダクトは今年度製作される予定であり、設計は現在最終段階に入っている。今回は、設計や試作品によるテスト結果について詳しく報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS130
p.795
水準器を用いた大型線形加速器のアライメント評価
Evaluation of the Alignment for Long Linear Accelerators Using a Level

○久米 達哉(KEK),奥山 栄樹(秋田大),佐藤 政則,諏訪田 剛,古川 和朗(KEK)
○Tatsuya Kume (KEK), Eiki Okuyama (Akita University), Masanori Satoh, Tsuyoshi Suwada, Kazuro Furukawa (KEK)
 
我々はこれまでに、測定対象上に差し渡された直定規を測定方向に逐次送りながら、その傾斜角を高精度な水準器により検出し、得られた傾斜角を積分して測定対象の形状を求めるアライメント評価法を適用することで、KEK入射器の71 mの直線部分におけるアライメント基準プレート間の並び形状を、標準偏差49μm以下の繰返し性で評価した。今回は、評価対象となるプレート上にオフセットバーを設置し、それらの先端間に差し渡された直定規の傾斜角を検出することで測定時の障害物を回避し、より長距離での評価を可能とした。ここでは、直定規やオフセットバーの形状、姿勢、変形の影響を取り除くために、オフセットバーの傾斜を考慮した反転測定を適用した。その結果、KEK入射器の206 mの直線部分におけるプレート間の並び形状が、KEK入射器に組み込まれたレーザアライメントシステム、および、アライメント望遠鏡により得られたものとほぼ一致した。このとき検出された傾斜角の繰返し性は、標準偏差で約15μradとなった。従来法での繰返し性が約10μradであったことから、オフセットバーを用いることで測定系が複雑になったにも関わらず、従来法と同程度の繰返し性での評価の実現が期待できる。これらのことから、今回考案したアライメント評価法は、従来法と同様に大型の線形加速器に適用可能であると考えられる。
 
16:10-18:10 
WEPS131
p.800
加速器施設用耐放射線性ゴムの開発研究
Research and development of the radiation resistance rubber for accelerator facilities

○近藤 新一(西武ポリマ化成株式会社技術部),小林 仁(高エネルギー加速器研究機構),羽田 誠(西武ポリマ化成株式会社技術部),松本 浩,吉岡 正和(高エネルギー加速器研究機構)
○Shinichi Kondou, Hitoshi Kobayashi, Makoto Hada, Hiroshi Matsumoto, Masakazu Yoshioka ()
 
KEKB、J-PARC、ILC等の大規模加速器施設は構造安定性や放射線遮蔽のため地下トンネル構造となる。ここで伸縮継手やセグメント止水には高度な水密性と耐放射線性が求められる。従来の可撓継手ゴムとして使用しているクロロプレンゴム(CR)は耐候性や耐オゾン性に優れているが耐放射線性には乏しい。放射線劣化とは放射線照射により生じるラジカルがもたらす分子鎖の切断や再結合の架橋に起因する機械的性質の劣化である。このような劣化に対し耐性のあるゴムの選択や劣化抑制のための各種配合剤の添加、他ゴムとのブレンド、各成分等の比率を検討した。その結果エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)をベースとし、CRと比較して1MGy以上の高線量照射後に残存伸びで6~7倍の性能をもつゴムを開発し評価した。評価のための照射試験は株式会社アトックスの協力を得て同社Co-60ガンマ線照射試験施設にて行った。試験条件は気中及び実際の使用環境を想定し水中及び熱環境下において、硬さ、引張強さ、伸びなどの力学特性を測定した。また可撓継手は肉厚製品で内部に補強布を使用する場合もあるので、厚みによる影響や補強布の耐放射線性についても系統的に調査・評価を行った。これらの成果は現在設計が進められているILC大深度地下トンネルや原子力施設における水路シール材及び水密性の必要な貯蔵施設等への応用も考えられる。
 
16:10-18:10 
WEPS132
p.805
SPring-8電子ビームダンプ周りの光子および中性子線量モンテカルロ解析
Monte Carlo calculations of photon and neutron doses around SPring-8 electron beam dumps

○成山 展照(高輝度光科学研究センター)
○Nobuteru Nariyama (JASRI)
 
2010年、SPring-8加速器安全インターロックに「エリア管理」が導入されるのに伴い、従来運転中人が立ち入れなかったエリア、たとえば、線形加速器のみが運転中の場合、シンクロトロンやL3ビームトランスポート内に人が立ち入れるようにする必要が生じた。そこで、局所遮蔽追加の必要性を判断するため、加速器収納部内の線量測定を行ったが、線量分布は、複数箇所での加速電子ロスによる線量の重ね合わせになっており、正確にシミュレーションできるダンプ部からの寄与がわかれば、他からの成分、たとえばシケイン等からの寄与もおよそ推測することが可能になる。そこで、今回、1GeV電子のL2およびL3ダンプ入射時の光子および中性子線量分布をモンテカルロコードFLUKAを用いて計算した。L2ダンプ入射時のシンクロトロンおよびL3BT貫通孔出口での中性子線量に対するL2ダンプからの寄与は40%であった。一方、γ線については、ダンプからではなく他の場所でのロスによる影響が支配的であることが、測定値との比較により明らかになった。
 
16:10-18:10 
WEPS133
p.809
レーザートラッカーAT-401 (Leica)の性能調査とT3(API)との比較
Performance Test of Laser Tracker Leica AT-401 compared with API T3

○木内 淳,甲斐 智也(スプリングエイトサービス㈱),松井 佐久夫,木村 洋昭(理研)
○Jun Kiuchi, Tomoya Kai (SPring-8 Service Co., Ltd.), Sakuo Matsui, Hiroaki Kimura (RIKEN)
 
SPring-8のX線自由電子レーザー施設(SACLA)では現在、加速管やアンジュレータなどの機器のアライメント及び基準モニュメントの測量に、API社製のレーザートラッカーT3(Tracker 3)を使用している。今回導入した、絶対距離計のみ搭載のLeica社製AT-401の基本性能を調査すると共に、実績のあるレーザー干渉計搭載のT3との比較も行った。  まず、風速が0.05m/s以下の室内で、AT-401のサーボモータ位置に温度センサーを貼り、ターゲットの距離約8m地点で電源投入直後から約8時間の連続測定を行った。電源投入直後から温度は上昇し安定するまでに約5時間を要した。測定値も温度が安定するまで約20μmのバラつきが見られた。  また、内蔵水準器のチェックとしてデジタルレベルの結果と比較する。  細長い領域での測量網ではミクロンオーダーの距離の精度が必要とされこれまで干渉計を搭載したT3で行ってきた。同様のことがAT401で可能か、距離測定精度を調べる。約8mおきに6つのターゲット台を直線上に設置した。これらの直線上にAT401とT3を設置して測定する。また逆方向からや距離を変えた直線上からも測定し、距離測定の精度を比較する。  その他、T3と比べAT-401では1秒での連続測定が3回が限度とか、1.5mより短い距離では測定できないという弱点(ソフトウェア上のリミットはない)もある。 これらの結果を報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS134
p.814
エポキシ系グラウトによる高精度平坦床面の評価
Evaluation of High Precision Flat Floor Surface by Epoxy Grout

木村 洋昭(理研),○木内 淳,甲斐 智也(スプリングエイトサービス(株)),安積 則義,松井 佐久夫(理研)
Hiroaki Kimura (RIKEN), ○Jun Kiuchi, Tomoya Kai (SPring-8 Service Co., Ltd.), Noriyoshi Azumi, Sakuo Matsui (RIKEN)
 
我々が高精度平坦床面を作る開発研究を行っているのには2つの目的がある。一つは装置架台の底面を密着させて床面との接触面積を増やして架台の振動特性を改善するためで、もう一つは重量物の精密位置決め用エアーパッド(浮上量約20μm)を用いて水平方向に自由にアライメントを行うためである。平坦な床面を得る方法として、セルフレベリング工法がある。これは固化前の液体状態で粘性の低い材料を使用することにより、自重と重力で平坦な水平面を得る工法で、打設エリアのサイズによらず一定精度の平坦な床面を得ることができ、1m角以上の大面積エリアには有利である。 昨年度の加速器学会では、我々はエポキシ系グラウト(アルファ工業 アルファテック150(1))を使用した工法とR&Dの経過を報告した(2)。その後、5m角以上で50μm/mより良好な平坦面が得られ、また設置した架台の振動試験を行いコンクリート直接研削平坦面に比べて良好な結果が得られたので報告する。 1) http://www.alpha-kogyo.com/ 2) H. Kimura, et al., “セルフレベリング工法による高精度平坦床面の製作”、本学会2011年報告集
 
16:10-18:10 
WEPS135
p.818
理研SACLAユーティリティの省エネルギー性の検証
Inspection of the energy-saving performance of RIKEN SACLA utility

○関口 芳弘(理化学研究所),飛永 隆,上西 雅彦(スプリングエイトサービス)
○Yoshihiro Sekiguchi (RIKEN), Takashi Tobinaga, Masahiko Uenishi (SES)
 
理化学研究所播磨研究所に設置され、本年3月より共用運転を開始したX線自由電子レーザー施設SACLAは、省エネルギー性にも配慮して建設された施設である。たとえば、冷熱源には高効率インバータターボ冷凍機を採用し、通年COPを10.0として計画された。また、この冷凍機で製造される冷水は空調および装置冷却水兼用となっているが、1次冷水の温度変動が少ないため、装置冷却水での過冷却、再熱がそれほど必要がないものとなっている。未だ通年でのデータではないが、供用開始後の運転実績からSACLAの需要エネルギーについて報告し、その省エネルギー性を検証する。
 
16:10-18:10 
WEPS136
p.821
SuperKEKB主リングGPSシステムの構築
GPS Network for SuperKEKB Main Ring

○大澤 康伸,飯沼 裕美,増澤 美佳(高エネルギー加速器研究機構),阿部 直宏,有山 至高,三島 健二(株式会社 パスコ)
○Ysunobu Ohsawa, Hiromi Iinuma, Mika Masuzawa (KEK), Naohiro Abe, Takashi Ariyama, Kenji Mishima (PASCO CORPORATION)
 
KEK主リングはトリスタン実験のために1980年代に建設され、その後KEKB実験に再利用され、現在はSuperKEKBで再々利用するものである。  トンネル建設は、地上から全周3キロのリング全体を見通せる状態で行われ、トンネル内の測量基準点を精度良く設置し、それを基に電磁石のアライメントを行った。続くKEKBでは既存のトンネル測量基準点を利用して、トンネル内を約20m毎の短い範囲に区切り、レーザートラッカーで精密測量し、それらを重ね合わせてリング全周の電磁石設置を行った。SuperKEKBでは、KEKBでのビーム周長情報を加え、電磁石アライメントを行なう予定であった。しかし、震災の影響で頼るべきトンネル内の基準点や電磁石が動いてしまった為、再度、地上にあげて、リング全体を見通せる方法で測量基準点を再構築しなければならない。  現在GPS(Global Positioning System)を導入しリング全体をカバーする地上測量網を構築中である。この地上測量網と、トンネル内の地下測量網を関連づけて、電磁石のアライメント精度がKEKB同等以上の達成を目指す。本発表では、地上測量網と地下測量網を結ぶ方法と、リング周回上4箇所に設置したGPSデータについて紹介する。
 
16:10-18:10 
WEPS137
p.825
KEK先端加速器試験装置(ATF)におけるアライメントの復旧
Present Status of Alignment for KEK-ATF

○荒木 栄,奥木 敏行,浦川 順治,久保 浄,黒田 茂,田内 利明,照沼 信浩,内藤 孝(高エネルギー加速器研究機構)
○Sakae Araki, Toshiyuki Okugi, Junji Urakawa, Kiyoshi Kubo, Shigeru Kuroda, Toshiaki Tauchi, Nobuhiro Terunuma, Takashi Naito (KEK)
 
KEKの先端加速器試験装置(ATF)は1996年からS-bandリニアックのビーム運転を開始し、その後ダンピングリング、取り出しライン、2009年にはATF2ビームラインまで拡張された。それら装置は床基礎を補強した地上に設置されており、ミスアライメントが生じている上に、2011年3月東北・関東大地震で多大なる影響を受けた。2011年6月に加速器の動作確認をするために、LINACとDRの深刻な変形を取り除くラフアライメントを早急に行い、テストビーム運転をすることが出来た。その後、各測量した結果から、季節変動などでDR周長が設計より8月時点で南北方向に最大1.5mm伸びていることが判明し、それに合わせたビーム軌道の設計をやり直して座標位置を再設定した。秋の運転ではDRにて震災以前の性能(リング取り出し直後の電子ビームサイズで、X=215um, Y=13um)に近づいた。また、その他のビーム軌道設計の微調整を行い、加速器性能を上げるために順次アライメントを進めた。2012年6月まで加速器運転の保守期間に測量を続けているが、冬期に周長で3mm程度縮み、春には再び周長の膨張を確認した。高さ方向も若干のばらつきが出てきているので、現在も精密測量を続けている。ATF2ビームラインにおける収束点での到達電子ビームサイズは、X=10um,Y=165nmを測定したが、ビームラインの不安定性が問題になっている。ビーム調整だけでなく、アライメントの変動も大きく影響している。その結果を報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS138
p.829
SACLA加速器における入射部環境磁場の変動によるFEL強度への影響
Influence on the FEL intensity by change of the injector geomagnetism in a SACLA accelerator

○櫻井 辰幸,稲垣 隆宏,松井 佐久夫,大竹 雄次(理研播磨研究所 XFEL研究開発部門)
○Tatsuyuki Sakurai, Takahiro Inagaki, Sakuo Matsui, Yuji Otake (RIKEN SPring-8 Center XFEL Research and Development Division)
 
SACLA加速器において原因不明の電子ビームの軌道変動(最大0.7 mm)が発生し、X線レーザー出力が低下する事象が問題となった。発生するタイミングにおいて入射部に隣接する機器搬入室でトラックからの積み下ろし作業を行なっていたことから、それらの作業とビーム軌道変動の因果関係を調査した。その結果、搬入室にトラックが出入りすることと、積み下ろしの際に使用した搬入室内の天井クレーンの動作に合わせてビーム機動が変動していることが判明した。変動要因を調査すると、問題となった作業手順において建屋内部の入射部近傍の環境磁場が変動していることが確認された。加速器停止時に搬入室クレーンを動かした際の収納部内の環境磁場を測定した所、0.002 Gaussの変動が見られた。この変動がビームに影響するかを調べるために、入射部に設置された地磁気補正用コイルを用いて、前記の環境磁場の変動量を再現した結果、同程度の軌道変動が起こり、FEL強度の低下を引き起こすことが確認された。本件ではSACLA加速器で起こった予期しなかった環境磁場の変動によるFEL強度への影響について報告する。
 
16:10-18:10 
WEPS139
p.834
700mトンネルにおける種々の測距儀の比較テスト
Performance Test of Various Laser Range Finders in 700m Long Tunnel

○菅原 龍平,増澤 美佳,飯沼 裕美,山岡 広,大澤 康伸(KEK),三島 研二,阿部 直宏,宮坂 正樹((株)パスコ)
○Ryuhei Sugahara, Mika Masuzawa, Hiromi Iinuma, Hiroshi Yamaoka, Yasunobu Ohsawa (KEK), Kenji Mishima, Naohiro Abe, Masaki Miyasaka (Pasco Corp.)
 
 2011年3月の東日本大震災において、KEKBリングも被害を受け、電磁石などの位置がmm単位で狂ってしまった。現在KEKBリングはSuperKEKBへの改修工事を開始したところであり、SuperKEKBにおいてはリング周長を±10mm(1.7PPM)の精度で合わせる、という厳しい要請がある。KEKBリングの周長は±5mmの精度で合っていたが、この精度は今回の震災のために無くなってしまったと思われる。現在レーザー測距儀やGPSを使って、リング周長の狂いを測定しているところである。  このために、国土技術政策総合研究所(国総研)の700m道路トンネルという良好なテスト環境において、種々の測距儀の比較テストを行った。テストしたレーザー測距儀はTS-30(Leica製、2台)、Net05X(Sokkia製、2台)、ME5000(Leica製、4台)、その他である。このテスト結果を報告する。
 
施設現状報告ポスター2 (8月9日(木) 共通教育棟2階・3階ロビー・廊下)
14:00-16:00 
THPS001
p.839
ATF(Accelerator Test Facility)の現状
Startus of the Accelerator Test Facility

○ATF International Collaboration(KEKほか)
○International Collaboration Atf (KEK, etc.,)
 
KEKにおけるATF(先端加速器試験装置)では、国際リニアコライダー(ILC)計画など将来の加速器で必要とされるビーム計測技術およびビーム制御技術の開発を行っている。ATFはマルチバンチビーム生成を行うphotocathode RF gun、1.3GeV S-band Linac、低エミッタンスビームに変換するダンピングリング、さらにそのビームを利用しILC最終収束システムの開発試験を行うATF2ビームラインから構成されている。昨年度は震災からの復旧に精力的に取り組んだ結果、ATF2ビームラインでの極小ビーム開発研究において垂直方向165nmのビームサイズ実現まで到達することが出来た。現在は目標値37nmを達成するための研究開発を進めている。これを中心にATF加速器での研究開発状況を紹介する。
 
14:00-16:00 
THPS002
p.842
KEK電子陽電子入射器の現状
Present Status of the KEK Electron/Positron Injector Linac

○三浦 孝子(KEK)
○Takako Miura (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器施設は、全8セクターのうち、下流3セクターを使って放射光施設PF、PF-ARへのビーム入射を行いながら、上流部では、現在も震災後の復旧作業を進めている。昨年度は、震災後、放射光施設への早期入射再開のため、最低限の架台の補強やアライメントを行い、部分仮復旧状態での運転であったが5492時間も運転することができた。また、同時にSuperKEKBに向けた大電流・低エミッタンスビーム供給のためのアップグレード作業が活発化している。3セクター上流には、低エミッタンス電子ビーム生成用フォトカソードRF電子銃が設置され、開発が進められている。カソードに量子効率も高く、安定度が高いと思われるイリジウム・セリウムを採用し、大強度レーザー発振増幅系の改良も進められ、1nCを超えるビームの入射器下流までの加速が確認された。陽電子ビーム増強のためのフラックスコンセントレータと大口径加速システム、および集束系の開発が進められており、また、陽電子ビームの低エミッタンス化のためのダンピングリング(DR)の工事も進められている。更に低エミッタンスビーム実現には、0.1mmに近いアライメントが必要となるため、アライメントに向けた準備が進められている。その他、4リング同時入射やDRとの同期系のためのタイミングシステムの更新や、低エミッタンスビームに向けた高分解能BPM読み出し回路などの様々なモニター系の改良などが進められている。
 
14:00-16:00 
THPS003
p.846
東北大学電子光理学研究センターの加速器施設の現状
PRESENT STATUS OF THE ACCELERATOR IN RESEARCH CENTER FOR ELECTRON PHOTON SCIENCE, TOHOKU UNIVERSITY

河合 正之,柏木 茂,柴崎 義信,高橋 健,長澤 育郎,南部 健一,日出 富士雄(東北大学電子光理学研究センター),黄 暖雅(台湾国立精華大学),武藤 俊哉,○浜 広幸(東北大学電子光理学研究センター)
Masayuki Kawai, Shigeru Kashiwagi, Yoshinobu Shibazaki, Ken Takahashi, Ikurou Nagasawa, Kenichi Nanbu, Fujio Hinode (RESEARCH CENTER FOR ELECTRON PHOTON SCIENCE, TOHOKU UNIVERSITY), Nuan-ya Huang (NATIONAL TSING HUA UNIVERSITY), Toshiya Mutou, ○Hiroyuki Hama (RESEARCH CENTER FOR ELECTRON PHOTON SCIENCE, TOHOKU UNIVERSITY)
 
 平成23年3月の震災いらい1年5ヶ月を経過しました。加速器、及び施設設備は壊滅的な被害をうけました。特に建設から40年以上経過した300MeVリニアックの被害は甚大であり低エネルギー部と高エネルギー部の内、高エネルギー部の復旧を断念し、リング入射専用のリニアッくを新設することとしました。また冷却水設備も各所で水漏れを生じこれについても撤去新設することとしました。本報告では加速器施設の復旧、復興にむけての取り組みについて報告する。
 
14:00-16:00 
THPS004
p.849
東京大学 ライナック・レーザー施設報告 -復旧から復興へ-
Status report of Linac/Laser Facility of University of Tokyo - Forward from Recover to Upgrade-

○中園 祥央,上田 徹,上坂 充(東京大学)
○Yoshihisa Nakazono, Tooru Ueda, Mitsuru Uesaka (the University of Tokyo)
 
復旧作業は順調に進み平成24年4月から全国共同利用を再開しつつある。5月の運転資格者講習会に20名を超える受講者を迎えたことも復興を感じさせた。18 MeVライナックのレーザーフォトカソード高周波電子銃用のレーザー発振器・増幅器を Ti:Sapphireからファイバーレーザーに更新する。小型化も図られレーザー全システムをライナック室の電子銃横に置けることになった。ここまでは旧工作室のレーザー本体から約50mの窒素封入ビームラインを通していたがそれが不要になる。電子・レーザーパルスの同期のジッターとドリフトが画期的に向上すると期待される。950keV, 3.95, 6 MeV Xバンドライナックは全て完成し、定格のX線強度を達成した。それぞれ各種プラントの現場透視非破壊検査、橋梁の現場透視非破壊検査、肺がん動態追跡がん治療に実用化される。30MeV Xバンドライナックコンプトン散乱X線源は地震被害から復旧中で今年度X線利用を目指したい。12TWレーザーはKEKに移設して各種実験に活用する。その代わり、ファイバーレーザー駆動Photonic Crystal Linacによるナノメートル・アト秒電子パルス源の開発を開始している。
 
14:00-16:00 
THPS005
p.853
日大電子リニアックの運転と利用の現状
Status of Electron Linac Operation and Application at Nihon University

○田中 俊成,早川 建,早川 恭史,境 武志,野上 杏子,中尾 圭佐,稲垣 学(日大量科研電子線利用研究施設),佐藤 勇(日大大学院総合科学研究科),榎本  收志,福田 茂樹,大澤 哲,古川 和朗,諏訪田 剛,道園 真一郎,佐藤 政則(KEK 加速器研究施設)
○Toshinari Tanaka, Ken Hayakawa, Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai, Kyoko Nogami, Keisuke Nakao, Manabu Inagaki (LEBRA, Nihon University), Isamu Sato (ARISH, Nihon University), Atsushi Enomoto, Shigeki Fukuda, Satoshi Ohsawa, Kazuro Furukawa, Tsuyoshi Suwada, Shinichiro Michizono, Masanori Satoh (Accelerator Laboratory, KEK)
 
2011年度における125MeV電子リニアックの運転は、主に自由電子レーザー(FEL)とパラメトリックX線(PXR)発生を目的に175日間行われ、2台のクライストロンヒーター電圧印加時間1753時間、モジュレーター高圧印加時間1528時間、ビーム加速時間1122時間であった。この間、クライストロン直流高圧電源制御部で抵抗の焼損、冷却塔循環冷却水ポンプに空気が入り異常停止による加速管冷却系水温の異常上昇、冷却塔制御盤内への雨水漏洩によるブレーカー故障、RFアンプ冷却ファン故障で温度異常による電源遮断、等の故障が発生したが、いずれも1~2日以内に運転を回復した。冷却塔制御盤の漏水は外部ポンプ電源用地中ケーブル配管の老朽化に加え2011年3月11日の地震による影響が考えられている。通常運転時に時折発生する加速器電子銃、クライストロンアセンブリタンク内及びクライストロンRF窓の放電が加速ビーム特性の変化や高圧遮断を招き安く、長時間にわたる安定加速を妨げる原因となっている。リニアック電子銃のバーストモードビーム引き出し実現に伴い、その加速特性、FEL発振の振舞とともに、通常のマクロパルスモードとバーストモードの重畳加速による高いFEL発振強度を利用し、非線形高調波素子における高調波発生の振舞が調べられている。光源の利用では、FELとPXRへのビーム供給を概ね1週間単位で交代で行っているが、通年ではビーム加速時間の約60%がFELに使われている。
 
14:00-16:00 
THPS006
p.856
京都大学中赤外自由電子レーザの現状
Present Status of Kyoto University MIR-FEL Facility

○全 炳俊,奥村 健祐,井門 秀和,島橋 享兵,柴田 茉莉江,Konstantin Torgasin,Negm Hani,Omer Mahamed,Choi Yong-Woon,金城 良太,紀井 俊輝,増田 開,大垣 英明(京都大学エネルギー理工学研究所)
○Heishun Zen, Kensuke Okumura, Hidekazu Imon, Kyohei Shimahashi, Marie Shibata, Torgasin Konstantin, Hani Negm, Mahamed Omer, Yong-woon Choi, Ryota Kinjo, Toshiteru Kii, Kai Masuda, Hideaki Ohgaki (Institute of Advanced Energy, Kyoto University)
 
京都大学エネルギー理工学研究所では、エネルギー材料研究への応用を主な対象とし、S-band熱陰極高周波電子銃を電子源とした小型で経済的な中赤外自由電子レーザ(MIR-FEL)を開発し、中赤外波長可変レーザの発生とその利用研究を行っている。本報告では、FEL加速器システムの現状、将来計画について報告する。 FEL加速器システムは電子銃、LLRF、クライストロンの不安定性によるレーザ強度の不安定性は見られるものの、大きな故障無く動作しており、昨年度の総運転時間は324時間であり、その内の38時間が学外共同研究、30時間が学内共同研究に供された。 FELの開発に関して、昨年度はJAEAのERL-FELにて使用されていたHybrid Undulatorの導入、共振器ミラーの最適化などにより、波長5~15 μmにてレーザ発振を達成した。また、上記の改造と同時に、将来、導入を予定している光陰極高周波電子銃駆動用マルチバンチレーザの周波数(89.25 MHz)に対応する様、光共振器長をこれまでの4.154 m から5.039 mに変更した。 将来計画としては、熱陰極高周波電子銃の三極管型への改造、光陰極高周波電子銃の導入とそれを用いたTHz FELの開発、アンジュレータの狭ギャップ化によるゲイン増強と長波長域への波長域拡大などがある。それぞれについて準備を進めている。
 
14:00-16:00 
THPS007
p.859
産総研Sバンド小型リニアック施設の現状
Present status of S-band compact linac facility at AIST

○黒田 隆之助,熊木 雅史,平 義隆,田中 真人,清 紀弘,オローク ブライアン,大島 永康,豊川 弘之,山田 家和勝(産総研)
○Ryunosuke Kuroda, Masafumi Kumaki, Yoshitaka Taira, Masahito Tanaka, Norihiro Sei, Brian Orourke, Nagayasu Oshima, Hiroyuki Toyokawa, Kawakatsu Yamada (AIST)
 
産総研では、Cs-TeフォトカソードRF電子銃を入射器に持つSバンド小型リニアック施設を用いて超短パルス電子ビームを生成し、レーザーコンプトン散乱X線源の開発、コヒーレント・テラヘルツ光源の開発、及び陽電子消滅分光システムの開発等を行っている。本年会では、施設の現状について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS008
p.862
大阪府立大学放射線研究センターにおける加速器科学研究の現状
Status of the Accelerator Science Research in Radiation Research Center, OPU

○奥田 修一,谷口 良一,宮丸 広幸,下邨 広元,小嶋 崇夫(大阪府大放射線研究センター)
○Shuichi Okuda, Ryoichi Taniguchi, Hiroyuki Miyamaru, Hiromoto Shimomura, Takao Kojima (Radiation Research Center, OPU)
 
放射線研究センター(http://www.riast.osakafu-u.ac.jp/index.html)には、密封放射線源と加速器による総合的な量子ビーム科学研究基盤がある。学内外の利用の成果は、各年度の「共同利用報告書」に取りまとめられている。施設の活用を特徴とする「量子放射線系専攻」が2013年度に大学院工学研究科に新たに設置され、当センターの11名の教員が担当する。 16 MeV電子ライナックは、パルス当り電荷量fC以下の超微弱ビームで、高感度線量計の応答特性研究、電子線ラジオグラフィや新しい非破壊検査法の開発が行われている。コヒーレントTHz放射の吸収分光、液体窒素の照射による反応の研究などが行われている。600 keVコッククロフト・ウォルトン電子加速器では、JAXAと共同で、欠陥生成の閾エネルギー付近で太陽電池半導体の照射試験を行っている。表面分析を主目的とする3 MeV(He)のタンデムイオン加速器は、装置が古く制御系の修理ができなかったが、大阪府立産業技術研究所から同型加速器の委譲を受け、整備、調整を行っている。 2012年度KEK大学等連携支援事業により、電子ライナックとイオン加速器による総合的な分析システムを整備し、教育研究に活用する。電子ライナックの超微弱電子ビーム、THz放射、2次ビームとしてのX線、中性子線を利用し、またイオン加速器では、RBS、PIXEなどの分析法にパルス特性を付加して、新たな分析手法の開発をめざす。
 
14:00-16:00 
THPS009
p.865
京大炉中性子発生装置(電子ライナック)の現状
Status of KURRI-LINAC

○阿部 尚也,高橋 俊晴,堀 順一,窪田 卓見,佐藤 紘一,阪本 雅昭(京大原子炉)
○Naoya Abe, Toshiharu Takahashi, Jun-ichi Hori, Takumi Kubota, Koichi Sato, Masaaki Sakamoto (KURRI)
 
京大炉中性子発生装置(ライナック)の現状を報告する。初めにライナックの利用状況についてだが、昨年のライナックの運転時間は一昨年を127.6時間上回る1769.9時間であった。また相乗りを含まない利用件数が過去最高の58件を記録、総件数は62件であり、1週に1件を上回る高い頻度での利用が行われた。そのため、保守に使用できる時間がほとんどない状態であり、安定運転の継続が重要になっている。 次に更新関係だが、電子の加速エネルギーを20MeV以下で運転した時に拡がっているビーム径縮小を目的に、産総研・清紀弘氏の支援の下、No.2加速管後方にQマグネット(ダブレット)を設置した。設置により、ビーム径の縮小は確認できたが、ビーム位置調整が困難である問題があり、ビーム測定系の充実による調整の簡易化を検討している。 最後にトラブルだが、電子銃パルス充電用コンデンサの損傷が発生した。コンデンサ表面に黒色の放電痕が確認され、高圧を維持できなくなった。損傷したコンデンサの耐電圧はスペック上では150kVであり、通常使用している90kV程度は十分にクリアできる値である。コンデンサ使用開始から10年も経過していないため経年劣化が損傷の原因の可能性は低い。現状では高湿度と表面に付着した汚れとの複合的な事象を原因と考えている。現在は予備品と交換して対応しているが、根本的対策として、油中にコンデンサを入れることを計画している。
 
14:00-16:00 
THPS010
p.868
兵庫県立大学電子線形加速器LEENAの現状と性能向上
Present Status of Electron Linac LEENA at University of Hyogo

○橋本 智,陳 彩華,川田 健二,天野 壮,宮本 修治(兵庫県立大高度研),李 大治(レーザー総研)
○Satoshi Hashimoto, Sayaka Chin, Kenji Kawata, Sho Amano, Shuji Miyamoto (LASTI, Univ. of Hyogo), Dazhi Li (ILT)
 
兵庫県立大学ニュースバル放射光施設内にあるLEENA(Laser Emitted ElectroN Accelerator)加速器は電子ビームエネルギー15MeVの小型電子線形加速器であり、RF電子銃、α電磁石、S-bandクライストロンおよび定在波加速管、偏向および四極電磁石、ビームダンプ、真空機器、制御システム等から構成される。しかし加速器の製作・設置から既に15年以上が経過しておりシステムの旧式化・老朽化が著しく、性能や運用の面で様々な問題を抱えていた。そこで、本装置の性能を向上し最先端の研究開発、特にコンパクト加速器によるテラヘルツ光源の開発を目指し、平成23年度から加速器システムのアップグレードを実施しており最近、ビーム電流の増大およびテラヘルツ領域のスミスパーセル放射の観測に成功した。本発表ではこれまでに実施した加速器システムの改修、特に真空系・制御系の改善による加速器性能向上の成果、現在実施中あるいは検討中の加速器システムの改善、テラヘルツ光源開発現状等について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS011
UVSOR-IIIの建設と立ち上げ
Construction and Comissoning of UVSOR-III Accelerators
○阿達 正浩(1: 分子研UVSOR, 2: 総研大),山崎 潤一郎,林 憲志(1: 分子研UVSOR),許斐 太郎(1: 分子研UVSOR, 2: 総研大),加藤 政博(1: 分子研UVSOR, 2: 総研大, 3: 名古屋大)
○Masahiro Adachi (1: UVSOR, IMS, 2: SOKENDAI), Jun-ichiro Yamazaki, Kenji Hayashi (1: UVSOR, IMS), Taro Konomi (1: UVSOR, IMS, 2: SOKENDAI), Masahiro Katoh (1: UVSOR, IMS, 2: SOKENDAI, 3: Nagoya Univ.)
 
UVSORは周長53 m、エネルギー750 MeVの電子蓄積リングを有する日本の主要なシンクロトロン光源の一つである。UVSORは1983年の稼働以降、数度の改造を行い世界最高レベルの光源性能を維持している。稼働から20年を経た2003年にはラティスを含めた大規模な改造によりそれ以前の6分の1となる27 nm-radの低エミッタンス化を果たし、それ以降UVSOR-IIと呼んでいる。2005年にはそれ以前の3倍の加速電圧を実現する主高周波加速空洞へと更新することで、ビーム寿命を改善した。2006年には入射器及びビーム輸送系のフルエネルギー化を果たし、2008年度からの試験運転を経て2010年度よりトップアップ入射によるユーザー運転へと完全移行した。2010年度末、入射点を変更して新たに直線部を創出し、翌年度、専用アンジュレータとビームラインの設置を完了してコヒーレント光源の実用化へ向けた実験も開始した。今年度、複合機能型偏向電磁石を導入して約17nm-radの低エミッタンスリング、UVSOR-IIIとして生まれ変わる計画である。これまでに、偏向電磁石の導入、UVSORに残された最後の直線部への真空封じ型アンジュレータの導入を完了している。本発表では8月の運転再開へ向けてコミッショニングを開始したUVSOR加速器の高度化へ向けた建設と立ち上げ状況を紹介する。
 
14:00-16:00 
THPS012
p.871
中部シンクロトロン光利用施設の加速器の現状
Present Status of Accelerators of the Central Japan Synchrotron Radiation Facility

○高嶋 圭史,保坂 将人,山本 尚人,高見 清(名大SRセンター),森本 浩行(科学技術交流財団),真野 篤志,高野 琢(名大SRセンター),竹田 美和(科学技術交流財団),加藤 政博(分子研),堀 洋一郎(高エネルギー加速器研究機構),佐々木 茂樹(高輝度光科学研究センター),江田 茂(九州シンクロトロン光研究センター)
○Yoshifumi Takashima, Masahito Hosaka, Naoto Yamamoto, Kiyoshi Takami (NUSR), Hiroyuki Morimoto (ASTF), Atsushi Mano, Takumi Takano (NUSR), Yoshikazu Takeda (ASTF), Masahiro Katoh (IMS), Yoichiro Hori (KEK), Shigeki Sasaki (JASRI), Shigeru Koda (SAGA-LS)
 
中部シンクロトロン光利用施設は、愛知県、産業界、地域の大学が協力して計画を推進しており、学術利用はもとより、産業界からの利用を前提とした施設である。施設の整備・運営は公益財団法人 科学技術交流財団が行い、大学は技術的な支援を行っている。 加速器は、50 MeV直線加速器、1.2 GeVブースターシンクロトロン、1.2 GeV蓄積リングより成っており、蓄積リングへフルエネルギーで入射する。稼働後は、速やかにトップアップ運転へ移行する予定である。蓄積リングは、全12台の偏向電磁石のうち4台がピーク磁場5Tの超伝導偏向電磁石であり、20 keVを超えるX線が10本程度のビームラインで利用可能である。平成24年度中の供用開始を予定しており、当初は6本のビームラインからスタートし、その後増設していく予定である。 建屋は昨年夏に完成し、その後加速器、ビームライン、測定装置類の設置を行った。今年3月から加速器の調整運転を行っている。 本発表では、加速器の現状について報告を行う。
 
14:00-16:00 
THPS013
p.874
大型放射光施設SPring-8加速器の現状
Status of the SPring-8 Accelerators

○高雄 勝,for 加速器部門(公益財団法人 高輝度光科学研究センター)
○Masaru Takao, For Accelerator Div. (JASRI/SPring-8)
 
2011年度のSPring-8利用運転状況は、計画利用運転時間4120時間に対し、実績4058時間32分、利用率98.5 %であった。2006年度以来、5年ぶりに利用率として99 %を割り込むものであったが、これは真空封止挿入光源の冷却水配管系から真空へのリークによる27時間に及ぶダウンタイムが大きかった。ダウンタイムの内、加速器トラブルによるものの占める割合は1/4であった。 SPring-8では、2004年度以降、積分輝度向上、光源強度一定化のため利用運転中も随時ビーム入射を行うトップアップ運転が行われている。蓄積リング電流値変動は0.03 %に抑えられており、2011年度の入射器トラブル等によるトップアップ運転の中断率は1.5 %と安定なものであった。 加速器の性能向上では、輝度向上のためのエミッタンス結合比改善(補正アルゴリズム改良)や狭ギャップ真空封止挿入光源対応のためのラティス変更(長直線部改造)などが実施された。また、低エミッタンス化による輝度向上のため、現状の電磁石配置でのラティス改良を検討している。 電力需給逼迫による節電に対する社会的要請から、様々な施策を検討、実施してきた。昨年度の節電要請期間には蓄積リング、ブースターのRF加速電圧を低下させた運転も実施した。更なる節電に向けて蓄積リングの7 GeV運転が検討され、利用運転への適用可能性の試験を進めている。
 
14:00-16:00 
THPS014
p.878
ニュースバル放射光施設
NewSUBARU Synchrotron Radiation Facility

○宮本 修治,庄司 善彦,橋本 智,天野 荘(兵庫県立大),皆川 康幸,竹村 育浩,川田 健二,濱田 洋輔,大熊 春夫(高輝度センター),浅野 芳裕(理研)
○Shuji Miyamoto, Yoshihiko Shoji, Satoshi Hashimoto, Sho Amano (Univ. of Hyogo), Yasuyuki Minagawa, Yasuhiro Takemura, Kenji Kawata, Yousuke Hamada, Haruo Ohkuma (JASRI), Yoshihiro Asano (RIKEN)
 
 ニュースバル放射光施設は周長118mの電子蓄積リングと9本の放射光ビームラインで構成されている。入射電子ビームはSPing-8線形加速器から供給されており、1GeV/250mA±0.2mAのTopUp 運転、および1.5GeV/350mAの加速/Decay運転を行なっている。蓄積リングのハーモニック数は198で、通常運転時のフィリングパターンはフルバンチ入射後、70バンチ×2個に入射する。TopUp運転中は設定フィリングパターンからのずれたバンチ選択入射を行なっている。利用運転中の電子ビーム軌道制御のため、ステアリング磁石応答特性精度の向上を行い、COD(Closed Orbit Distortion)自動連続補正により、ビーム軌道変動を水平・垂直共に10μm以下に保っている。さらに、6極電磁石および新たに導入した多極電磁石による不整磁場補正によりビーム寿命の改善を行い、Top Up運転電流を250mAとした。また、BL01-LCSガンマ線源ビームラインでは、 大型計測器を用いた実験を可能とするためガンマ線照射ハッチを拡張した。
 
14:00-16:00 
THPS015
p.881
広島大学放射光科学研究センター施設報告
Status report of Hiroshima Synchrotron Radiation Center, Hiroshima University

○宮本 篤,後藤 公徳,佐々木 茂美,谷口 雅樹(広大放射光センター)
○Atsushi Miyamoto, Kiminori Goto, Shigemi Sasaki, Masaki Taniguchi (HSRC)
 
広島大学放射光科学研究センターは、1996年に物質科学研究を推進するために設立され、昨年には共同利用・共同研究拠点に認定された。放射光源リングHiSORは、レーストラック型の小型蓄積リングであり、常伝導で2.7 Tを発生する偏向電磁石を有し、Ee=700 MeVでありながらkeV領域の光が利用可能であることが特徴である。また2本の直線部には、それぞれ直線偏光アンジュレータおよび準周期型APPLE-IIアンジュレータが設置されている。 2011年8月に、それまで設置されていたヘリカルアンジュレータを準周期型APPLE-IIアンジュレータへの更新が完了し、同年10月以降にビームラインの分光器等を用いて各偏光モードでのスペクトルを測定を行った。結果、ほぼ設計通りの性能であることが確認できた。このアンジュレータの最小ギャップをそれまでのものより小さくするために、ビームダクトをそれまでのものより扁平なものへと更新したため、立ち上げ直後は真空度の低下によってビーム寿命がやや短くなり、最大蓄積電流を減少せざるを得なかった。しかし、現在では真空度、ビーム寿命共に長期停止期間前と同等のレベルまで回復しており、他のビームラインも含め、ユーザー利用も順調に行われている。 発表では、運転実績等もあわせて報告する。
 
14:00-16:00 
THPS016
p.885
放射光施設SAGA-LSの加速器の現状
Present status of accelerator at Saga Light Source

○江田 茂,岩崎 能尊,高林 雄一,金安 達夫(九州シンクロトロン光研究センター)
○Shigeru Koda, Yoshitaka Iwasaki, Yuichi Takabayashi, Tatsuo Kaneyasu (SAGA-LS)
 
九州シンクロトロン光研究センター(SAGA-LS)における2011年度及び2012年度現在までの光源加速器の状況を報告する。加速器は1.4GeV蓄積リング、入射器255MeVリニアックから成る。放射光光源として現在、偏向電磁石×6、アンジュレータ×2、超伝導ウィグラー×1が運用中である。蓄積リングは蓄積開始電流300mA、Iτ~1500mAhで1回入射/日、運転時間10.5時間/日、運転日4日/週、年間約1500時間のユーザー運転を行っている。2011年度に発生した重故障は、蓄積リングRF系サーキュレータ冷却水の導波管内への漏水であった。2010年11月にユーザー運用を開始した磁場4T(臨界エネルギー5.2keV)のハイブリッド型3極超伝導ウィグラーは現在まで安定に運用され、中小型蓄積リングでは困難であった20 keV~40 keVの放射光利用が定常的に行われている。ウィグラーの運用が中止となったユーザー運転中のトラブルは、この1年半で、クエンチによる2日間のみであった。加速器のR&Dとしては炭酸ガスレーザーを用いた蓄積リングでのレーザーコンプトン散乱によるガンマー線生成の研究を進めており、ユーザー運転条件での長時間発生実験を行った。リニアックにおいては同期入射のための開発が進行中である。またフルエネルギー入射用ブースターシンクロトロンの実現可能性について現在検討を進めている。
 
14:00-16:00 
THPS017
p.888
産総研陽電子ビーム利用施設の現状
PRESENT STATUS OF THE SLOW POSITRON BEAM FACILITY IN AIST

○大島 永康,オローク ブライアン,木野村 淳,大平 俊行,小川 博嗣,鈴木 良一(産総研)
○Nagayasu Oshima, Brian O'rourke, Atsushi Kinomura, Toshiyuki Ohdaira, Hiroshi Ogawa, Ryoichi Suzuki (AIST)
 
産総研では、1988年頃から現在まで、常伝導電子線形加速器(TELL)を用いて発生した高強度低速陽電子ビーム(毎秒10^7-10^8個)を用いて、先端材料・新機能材料等の空隙評価や表面分析を行ってきた。現在、この低速陽電子ビームラインポートには、陽電子寿命測定装置(PALS)、陽電子プローブマイクロアナライザー(PPMA)、陽電子消滅誘起オージェ分光装置(PAES)が設置されている。これらの陽電子ビーム分析装置は、2年ほど前から産総研・先端機器共用イノベーションプラットフォーム(IBEC)を通して一般公開されており、年間10件以上の研究課題支援が進展中である。 一方、従来用いていたTELLに代わる新しい陽電子発生専用超伝導加速器の開発を行っている。超伝導加速器を用いる利点は、電子ビームのパルス時間構造を、材料分析で必要な陽電子ビームのパルス時間構造と同じにすることができるので、陽電子ビーム生成後のパルス化効率を改善できることである。これにより、低速陽電子ビームを用いた材料分析のスループットが高くなることが期待される。
 
ポスター2 (8月9日(木) 共通教育棟2階・3階ロビー・廊下)
14:00-16:00 
THPS018
p.891
SPring-8線型加速器の機器改良
The component improvement of the SPring-8 Linac

○鈴木 伸介,小林 利明,谷内 努,出羽 英紀,馬込 保,水野 明彦,柳田 謙一,花木 博文(高輝度光科学研究センター)
○Shinsuke Suzuki, Toshiaki Kobayashi, Tsutomu Taniuchi, Hideki Dewa, Tamotsu Magome, Akihiko Mizuno, Kenichi Yanagida, Hirofumi Hanaki (JASRI)
 
昨年よりSPring-8 線型加速器において以下の項目において改良点があったので、報告する。 ○クライストロンの自動切り替え 安定したTop-up 運転のために、継続した高信頼化を進めている。Top-up 運転の中断時間を極力減らすためにクライストロンモジュレータのフォルト時の自動切り替えの運用を開始した。これにより線型加速器が原因の Top-up 運転中断の頻度が激減した。 ○ Sy/NS のビーム振り分けの高速化準備 SPring-8 蓄積リングの短寿命フィリングの採用、長直線部へのアンジュレータの導入による短寿命化等によりSPring-8 への入射頻度が頻繁になってきている。現在の切替方法ではそのうちに限界が来るので、現在の15~20 秒に1 回の切替から、1 秒で振り分けることができるシステムに順次移行している。これまでの磁石、電源、トリガシステムについて報告する。 ○ BT 系ステアリング電磁石等の配置変更 NewSUBARU へのビーム輸送トランスポート系及び電子ビーム試験用トランスポート系の軌道補正の自由度向上のために、ステアリング電磁石の強化、配置変更を行い、上流での軌道変動に対応しての補正範囲が拡がった。
 
14:00-16:00 
THPS019
p.894
光陰極試験装置におけるビームトラッキングシミュレーション
Beam tracking simulation of photocathode test bench

○三好 健太郎,栗木 雅夫,飯島 北斗,郭 磊(広島大学院先端研)
○Kentarou Miyoshi, Masao Kuriki, Hokuto Iizima, Rai Kaku (AdSM, Hiroshima Univ)
 
本研究室では加速器の電子銃に用いられるカソードの研究を行っており、ERL等の次世代放射光源のカソードであるNEA-GaAs光陰極の性質を研究する光陰極試験装置がある。NEA-GaAs光陰極は高量子効率、低エミッタンス、円偏向レーザーの入射による偏極電子の生成等の特長を持つ反面、カソードの短寿命が課題になっている。短寿命の要因として、「①熱によるNEAを形成している分子の脱離」、「②残留ガスの付着によるNEA表面の汚染」および「③電子ビームと残留ガスの衝突によって発生したイオンの衝突によるNEA表面の破壊」が考えられている。これまで当研究室では、NEA-GaAs光陰極の量子効率の温度依存性および真空度依存性の研究より、①と②についてはその傾向と長寿命化への対策が判明したが、③については真空度や引き出し電圧などのカソード劣化に起因する要素の分離が不十分であったため現在取り組んでいる。そこで本研究では、③の実験結果をより定量的に評価するために光陰極試験装置内の電場解析を行い、電子ビーム軌道と電離により発生するイオンの軌道シミュレーションを行った。
 
14:00-16:00 
THPS020
p.898
ワイヤー・スキャナ用センサーへの光ファイバーの応用
Application of Optical Fiber to The Sensor for Wire Scanner

○矢野 喜治,飯田 直子,道園 真一郎(高エネルギー加速器研究機構)
○Yoshiharu Yano, Naoko Iida, Shinichiro Michizono (KEK)
 
 ワイヤースキャナー(WS)で利用されるセンサーとしては光電子増倍管(PMT)を使用するのが一般的である。しかし、PMTのサイズ、ノイズ対策に必要なシールド等を考えると設置する箇所の選択にあまり自由度が無いのが現状である。またエネルギーの異なったビームを扱うトランスポートラインではエネルギーごとに最適な設置箇所が異なるため複数のPMTを設置することが必要になる。今回報告する大口径の光ファイバーをWSのセンサーとして使用すると、本来不可能であったQマグネットの内部にもセンサーを配置する事が出来る。また1本の光ファイバーに時間差で現れる様々な信号を切り出すことで、エネルギーの異なるビームに最適の信号だけを取り出して使用することができる。ここではその方法と応用について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS021
p.902
光ファイバイービームロスモニター
Optical Fiber Beam Loss Monitor

○矢野 喜治,帯名 崇,道園 真一郎(高エネルギー加速器研究機構)
○Yoshiharu Yano, Takashi Obina, Shinichiro Michizono (KEK)
 
 加速管及びビームダクトに密着して敷設した大口径の光ファイバーからの光を光電子増倍管(PMT)で観測するとビームロスの様子が手に取るように分かる。特に電子陽電子加速器の場合、粒子の速度はほぼ光速であるが純粋石英光ファイバー中の光の速度は約1.5倍と遅いためビーム上流側から観測するとほぼ(0.12m/nsec)の時間分解能で荷電粒子がダクトに当っている箇所を特定出来る。さらにリング型加速器へのビーム入射時に発生するビームロスのパターンを解析すると何ターン目の何処でビームロスが多く発生しているかを知ることが出来る。ここではその方法と応用について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS022
p.907
光ファイバーによる加速管フィールドエミッションの調査
Investigation of Acceleration Tube Field Emission by Optical Fiber

○矢野 喜治,肥後 寿康,道園 真一郎(高エネルギー加速器研究機構)
○Yoshiharu Yano, Toshiyasu Higo, Shinichiro Michizono (KEK)
 
 電子陽電子入射器の運転において加速管で発生するフィールドエミッション(FE)は加速管に投入するRFパワーに制限を与えており、安定な運転の妨げになっている。しかし、その観測はビームモニター用に設置されたスクリーンモニターによって行なうのみである。また、我々の加速ユニットは加速管4本に1台のクライストロンからパワーを供給しているためそれらの中からFEの多い加速管を特定することは事実上不可能である。しかし加速管に密着して設置した大口径の光ファイバーでFEにより発生する荷電粒子を観測すればそれらの特定が可能になる。ここではその方法で特定したFEの多い加速管とその内部の様子を紹介する。
 
14:00-16:00 
THPS023
p.912
東北大学電子シンクロトロン入射用90MeVリニアックの新設
New construction of 90MeV injector linac for the electron synchrotron at Tohoku University

○柏木 茂,河合 正之,柴崎 義信,高橋 健,長澤 育郎,南部 健一,日出 富士雄(東北大学電子光),黄 暖雅(国立清華大学),武藤 俊哉,浜 広幸(東北大学電子光)
○Shigeru Kashiwagi, Masayuki Kawai, Yoshinobu Shibasaki, Ken Takahashi, Ikurou Nagasawa, Kenichi Nanbu, Fujio Hinode (Electron Light Science Centre, Tohoku University), Nuan-ya Huang (National Tsing Hua University), Toshiya Muto, Hiroyuki Hama (Electron Light Science Centre, Tohoku University)
 
昨年3月の東日本大震災により、電子光理学研究センターの最大エネルギー300MeVの電子リニアックおよび1.2GeV電子シンクロトロンは甚大な被害を受けた。特に運転中に被災したリニアック部の被害は深刻で、建設から40年が経つこともあり交換部品の入手が難しく、リニアックの全面復旧は不可能であると判断せざるをえなかった。震災までリニアックはRI生成実験および原子核実験に供される電子シンクロトロンの入射器として利用されてきたが、我々は比較的被害の少なかったリニアック低エネルギー部をRI生成実験のために復旧し、電子シンクロトン入射用リニアックを新たに建設することにした。 新設する入射用リニアックは、熱陰極RF電子銃で発生した電子ビームを3m長のSバンド 加速管2本を使い約90MeVまで加速し、シンクロトロンへと入射する。高周波システムは、1本の50MWクライストロンのRF出力を電子銃空洞および2本の加速管へ分配する構成とした。熱陰極RF電子銃は、東北大学でこれまで超短電子バンチ生成用に開発したものであり、低エミッタンスビーム生成およびビームの縦方向位相空間分布制御が可能である。 本発表では、新設する電子シンクロトロン入射用90MeVリニアックの開発状況の詳細を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS024
p.915
東北大学 1.2 GeV 電子シンクロトロンの改造計画
Upgrade project of 1.2 GeV electron synchrotron at Tohoku University

○日出 富士雄,柏木 茂,河合 正之,柴崎 義信,高橋 健,長澤 育郎,南部 健一(東北大・電子光),黄 暖雅(台湾国立精華大学),武藤 俊哉,濱 広幸(東北大・電子光)
○Fujio Hinode, Shigeru Kashiwagi, Masayuki Kawai, Yoshinobu Shibasaki, Ken Takahashi, Ikuro Nagasawa, Ken-ichi Nanbu (Tohoku Univ. Electron Light Science Center), Nuan-ya Huang (National TsingHua Univ.), Toshiya Muto, Hiroyuki Hama (Tohoku Univ. Electron Light Science Center)
 
東北大学・電子光理学研究センターでは、昨年の震災に関わる復旧計画の一貫として、1.2 GeV 電子シンクロトロン(STBリング)の復旧作業が進行している。線形加速器の更新に伴って、入射エネルギーが 90 MeV に下がったことにより、STBリングについても大幅な見直し作業が必要となった。 STBリングにおける今回の改造の要点は、1)パターン運転用電磁石電源の更新、2)入射用パルス電源の更新、3)Q電磁石の更新、の3点である。1)については、破損した偏向電磁石と4極電磁石のパターン運転用の電源をより高性能な電源と置き換えることで、90 MeVから1.3 GeV程度までの広い運転領域で、高い安定度を確保するものである。2)については、もともと低エネルギーでの入射には対応できないうえ、今回の震災で高圧回路の健全性も失われてしまったため更新することにした。3)は、懸案であったクロマティシティーの補正を可能にすることを企図している。これは、直線部の4極電磁石を6極磁場入りの複合機能型電磁石に置き換えるとともに、その直線部に0.6 m程度のディスパージョンを導入するものであり、これにより蓄積電流を制限してきた head-tail instability を抑制することが期待されている。  発表ではこれらの改造計画についての詳細を報告する予定である。
 
14:00-16:00 
THPS025
p.918
PF-AR の運転統計
Operation Statistics of PF-AR

○田中 学(三菱電機システムサービス株式会社),本田 融(高エネルギー加速器研究機構)
○Manabu Tanaka (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.), Tohru Honda (KEK)
 
PF-AR(Photon Factory Advanced Ring)は蓄積エネルギー 6.5 GeV、単バンチ・大電流運転によって大強度のパルスX 線を供給する放射光源リングである。PF-AR はトリスタン計画のブースターと併用で1987 年から放射光利用されていたが、1997 年のトリスタン計画の終了に伴い放射光専用加速器となった。2001年度に真空系の全面入れ替えやステアリング電磁石の増強、制御系の入れ替え等の高度化改造作業が行われ、その後スパッタイオンポンプの増設や偏向電磁石電源の更新作業が行なわれた。PF-AR は高度化改造作業以降に放射光専用加速器となってからは年間約5000時間運転しているが、昨年度は東日本大震災後の復旧に時間を費やすことになり運転時間に影響が出た。今回は2011年度のPF-AR 運転統計について報告をする。
 
14:00-16:00 
THPS026
p.922
SuperKEKB用高電荷低エミッタンスRF gun開発
Development of High-Charge, Low-Emittance, RF Gun for SuperKEKB

○夏井 拓也,吉田 光宏,周 翔宇,小川 雄二郎(高エネルギー加速器研究機構)
○Takuya Natsui, Mitsuhiro Yoshida, Xiangyu Zhou, Yujiro Ogawa (KEK)
 
現在,KEKではSuperKEKBに向けた加速器全体のアップグレードが行われている.SuperKEKBでは非常に高いルミノシティを得るため低エミッタンス化によりダイナミックアパーチャーの減少とビーム寿命の減少が起こる.これに対応して,電子陽電子入射器でも高電荷・低エミッタンス化が求められる. 電子ビームは現在より高電荷低エミッタンスが求められるので,Aセクターに新たにフォトカソードRF gunを導入する予定である.このRF gunで発生したビームで 5 nC,20 mm-mradの電子ビームをリングに入射するためGun単体の性能としては,ビームラインでのエミッタンス増大の効果も考慮して,5 nCで10 mm-mrad 以下を目標とした.RF gunは,Disk and Washer (DAW) typeの開発を進めている.このDAW型RF gunは昨年の秋から入射器棟3セクターにてビームスタディーを開始している. フォトカソード用レーザシステムも並行して開発が進められている.レーザパルスはNd:YAGの4倍波( 波長266 nm)で,パルス幅は30 psecである.発振器は52 MHzで,LDアンプとフラッシュアンプを組み合わせてパルスあたり1.5 mJを達成している. カソードはIr5Ceを採用した.現在,このRF gunで3 nCの電荷発生を達成している.また,さらなる性能向上を目指して新しい空洞形状のRF gunも設計している.当日はビームスタディーの詳細と新規Gunの設計について報告する.
 
14:00-16:00 
THPS027
p.925
中部シンクロトロン入射用50MeVライナックの設計
Design of the 50MeV Linac of the Central Japan Synchrotron Radiation Facility

○山本 昌志,島野 雅子,Villasenor Ed,中西 康介,伊藤 卓,境 武志,樋口 哲一,村上 勝,中村 直樹,草野 譲一,水島 弘二,田辺 英二,冨増 多喜夫((株)エーイーティー),石川 祐介((株)ワイ・デー・ケー),田島 裕二郎,永渕 照康,中山 光一((株)東芝),高嶋 圭史,保坂 将人,山本 尚人,高見 清,真野 篤志,高野 琢(名古屋大学),森本 浩行(科学技術交流財団),加藤 政博(分子科学研究所),堀 洋一郎(KEK),佐々木 茂樹(JASRI/SPring-8),江田 茂(九州シンクロトロン光研究センター)
○Masashi Yamamoto, Masako Simano, Ed Villasenor, Kosuke Nakanishi, Taku Ito, Takeshi Sakai, Tetsuichi Higuchi, Masaru Murakami, Naoki Nakamura, Jyoichi Kusano, Hiroji Mizushima, Eiji Tanabe, Takio Tomimasu (AET), Yusuke Ishikawa (YDK), Yujiro Tjima, Teruyasu Ngafuchi, Koichi Nakayama (Toshiba), Yoshifumi Takashima, ,masahito Hosaka, Naoto Yamamoto, Kiyoshi Tkami, Atsushi Mano, Taku Takano (Nagoya Univ.), Hiroyuki Morimoto (Aichi Science & Technology Fundation), Masahiro Katoh (UVSOR), Yoichiro Hori (KEK), Shigeki Sasaki (JASRI/SPring-8), Shigeru Koda (SAGA-LS)
 
中部シンクロトロン光利用施設の電子ライナックの設計・製作・据え付けが完了し,2012年3月末に仕様のビームの出射に成功した.ビームエネルギー50MeV以上,パルス幅 1nsec以下,電荷量1nC以上が仕様である.30MW出力のクライストロンと100kVの電子銃,バンチャー加速管と2本のレギュラー加速管で50MeV以上の加速を行う.ビーム輸送系を含めた収束系は,低エネルギー部の空芯の収束磁石が一式,ダブレット2台,シングレット3台である.その他に,SF6加圧立体回路,各種ビームモニター,クイックフランジを用いた真空系,電磁石用の直流電源,EPICSを用いた制御系から構成される.これら機器の設計には,計算機シミュレーションを多く用いた.立体回路機器や短パルス伝送路,電磁石の磁極,加速管やプリバンチャーのカップラー部などの3次元電磁場解析にはCST-Studioを,電子銃や電磁石,加速管の二次元電磁場解析にはPOISSONとSUPERFISHを用いた.軌道解析にはGPTとTRACE-3Dを利用した.熱解析にはPOISSONとANSYSを,真空の解析には独自のコードを作成した.機械設計には3次元CADのSolidWorksを用い,それを使った構造計算も実施した.本稿では,ライナックの設計について報告を行う.
 
14:00-16:00 
THPS028
p.930
SuperKEKBでのトンネル沈下の影響評価
Estimation of Tunnel Subsidence Effect on SuperKEKB

○森田 昭夫,小磯 晴代,大西 幸喜,生出 勝宣,杉本 寛(高エネルギー加速器研究機構)
○Akio Morita, Haruyo Koiso, Yukiyoshi Ohnishi, Katsunobu Oide, Hiroshi Sugimoto (KEK)
 
SuperKEKBでは、KEKB B-Factory加速器のトンネルを再利用する。再利用するKEKBトンネルでは、10年間のKEKB運転中に約25mmの沈下が発生した。SuperKEKBの高ルミノシティー運転を続けるためには、垂直エミッタンスの増加を抑えるために、軌道と光学関数の歪みを補正し続ける必要がある。トンネル沈下による垂直エミッタンス増加の評価とそれに対する軌道補正と光学系補正の効果について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS029
SuperKEKB用ポジトロンビーム輸送ラインの偏向電磁石改造
Improvement of Bend Magnet of Positron Beam Transport Line for SuperKEKB
○森 隆志,飯田 直子,菊池 光男,三増 俊広,坂本 裕,鷹崎 誠治,多和田 正文(高エネルギー加速器研究機構)
○Takashi Mori, Naoko Iida, Mitsuo Kikuchi, Toshihiro Mimashi, Yutaka Sakamoto, Seiji Takasaki, Masafumi Tawada (KEK)
 
2015年の物理ランに向けてKEKB加速器をアップグレード するSuperKEKBプロジェクトが推進されている。 ポジトロンのビームエネルギーは3.5GeVから4GeVへと増加されるため、 偏向電磁石については、KEKBで用いたもののギャップを変更し、 一部の電源を変更することで対応した。 ギャップ変更については、磁極に板を挿入し、 底上げをすることによってギャップを狭くした。 この改造によって磁場分布が変更前とは違うことが 考えられる。 また、Energy Compression Systemに用いる偏向電磁石 4台はKEKBで使用したものでは磁極長が足りなくなるため、 新しく製作した。 これらの電磁石の磁極内における磁場分布を測定し、 ビーム輸送ラインとして使用可能であることを確認した。
 
14:00-16:00 
THPS030
p.933
SAGA-LS電子蓄積リングにおけるBPM真空槽設置位置変動の観測
Observation of BPM Vacuum Chamber Movement at the SAGA-LS Electron Storage Ring

○岩崎 能尊,金安 達夫,高林 雄一,江田 茂(九州シンクロトロン光研究センター)
○Yoshitaka Iwasaki, Tatsuo Kaneyasu, Yuichi Takabayashi, Shigeru Koda (SAGA Light Source)
 
SAGA-LS電子蓄積リングにおける電子ビームの軌道は、基準軌道に対して水平・垂直共に20μm以下となるようにCOD補正が行われている。ユーザ運転中における軌道ドリフトは、BPMの場所にもよるが最大で水平方向0.3mm程度、垂直方向0.2mm程度である。SAGA-LS電子蓄積リングは、257MeVの低エネルギー入射を行い、その後、蓄積リング内で1.4GeVまで加速する。そのため、観測されるビーム軌道のドリフト要因のひとつとして放射光強度の変化に伴うBPM真空槽の設置位置変動が考えられた。そこで、電子蓄積リングの代表的な8箇所の水平・垂直各方向に接触式変位計を設置し、BPM真空槽の変位を観測した。測定の結果、BPMで観測する電子ビーム軌道のドリフト量と、BPM真空槽の変位量の間には明らかな関係が見られた。また、BPM真空槽は、冷却水停止状態から、加速器運転、シャットダウンの1日のサイクルに、最大で水平方向1mm程度、垂直方向0.1mm程度変位することがわかった。本学会にて、電子ビーム軌道のドリフト量とBPM真空槽変位の関係、蓄積電流量やBPM真空槽の温度とBPM真空槽設置変位の相関について発表する。
 
14:00-16:00 
THPS031
p.936
RF電子銃中におけるCs2Teフォトカソードからの1msパルス生成
Generation of 1-ms pulse by Cs2Te photo-cathode in a RF electron gun

○細田 誠一,栗木 雅夫,飯島 北斗(広島大学大学院先端物質科学研究科),浦川 順治,早野 仁司,渡邉 謙(高エネルギー加速器研究機構)
○Seiichi Hosoda, Masao Kuriki, Hokuto Iijima (Grad. AdSM, Hiroshima Univ.), Junji Urakawa, Hotoshi Hayano, Ken Watanabe (KEK)
 
現在、茨城県にある高エネルギー加速器研究機構の超電導リニアック試験施設(STF)において、超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発が行われている。そこでは、L-band 1.5セルRF電子銃にCs2Te半導体フォトカソードを使用し、10psec程度の真空紫外レーザーパルスを6.2ns間隔で打ち込むことにより、1msにわたる光電子バンチを生成すると同時に、相対論的エネルギーまで電子を加速する。発生した電子ビームは2台の9セル超伝導加速空洞を用いて電子エネルギーを40MeVまで加速し、収束光学系により10um程度まで絞られた後、レーザーとコンプトン散乱による準単色X線生成に利用される。本研究では、Cs2Teからの電子放出特性の加速電場、RFの位相、レーザーパワー、パルス内の積分電荷量等についての依存性を計測し、 それらについての現象論的な理解を試みる。
 
14:00-16:00 
THPS032
p.942
LバンドフォトカソードRF電子銃の開発(VI)
Development of L-band RF Gun (VI)

○川瀬 啓悟,加藤 龍好,入澤 明典,藤本 將輝,上司 文善,大角 寛樹,矢口 雅貴,磯山 悟朗(阪大産研),渡邉 謙,早野 仁司,浦川 順治,高富 俊和(高エ研),栗木 雅夫(広島大院先端研),柏木 茂(東北大電子光)
○Keigo Kawase, Ryukou Kato, Akinori Irizawa, Masaki Fujimoto, Fumiyoshi Kamitsukasa, Hiroki Ohsumi, Masaki Yaguchi, Goro Isoyama (ISIR, Osaka Univ.), Ken Watanabe, Hitoshi Hayano, Junji Urakawa, Toshikazu Takatomi (KEK), Masao Kuriki (Hiroshima Univ. ), Shigeru Kashiwagi (Tohoku Univ. )
 
現在、大阪大学とKEK、広島大学と共同でLバンドフォトカソードRF電子銃の開発を実施している。このRF電子銃は国際リニアコライダーの試験加速器のためにDESYで開発された1.3 GHz、1.5セルのフォトカソードRF電子銃と同様の設計をもとに、さらに冷却能力を増強したものである。これまでに本研究の設計詳細、組み立て前の各種試験と特性評価などを報告してきた。 昨年度は、ロウ付け試験と空洞本体のロウ付け前後の空洞共振周波数と電場分布の計測結果と、ロウ付け時の空洞の変形に起因すると考えられる周波数と電場分布の設計値からのずれについて報告した。本発表では、共振周波数と電場分布の補正と最終的な低レベルRF試験の結果を報告する。それらに加えて昨年度から開始したカソード駆動用のレーザーシステム開発について、ファイバーレーザー発振器の概要と特性についても報告する。
 
14:00-16:00 
THPS033
p.945
ILCにおけるHLRFのスキーム-TDRに向けて
HLRF Scheme in ILC - Toward the TDR (Technical Design Report)

○福田 茂樹(KEK)
○Shigeki Fukuda (KEK)
 
ILCの国際設計チームであるGDEは2012年までの7年間の間、設計を重ね2007年のRDR,その後の見直しとしてのSB2009レポート、Interim Report などの報告後、2012年のTDR執筆の段階を迎えている。ここではそのILCの加速器設計のうち、HLRF(High Lebel RF)の部分について報告する。昨年度提案の一つとしてDRFS(分布型RFシステム)について報告されたが、その後ATMというトンネル工法でいわゆる蒲鉾型断面を有する単一トンネルの提案を受けて、日本のような山岳地帯でのHLRFの設計もRDRに近い方式に戻り、またもう一つの案と折衷した立体回路系が提案された。本論文ではTDRに向けたHLRFの概要について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS034
p.950
ATF2ビームラインにおけるビーム収束
Beam focusing at ATF2 beamline

○奥木 敏行(高エネ研),ATF グループ(高エネ研 その他)
○Toshiyuki Okugi (KEK), Group Atf (KEK others)
 
ILCでは高いルミノシティを実現するために、衝突点で数ナノメーターまでビームを絞る必要がある。衝突点において急激にビームサイズを絞るため、このようなビームラインでは色収差が大きくなる。更に、色収差を補正するために6極電磁石を使用することになるが、この6極電磁石による幾何学収差の補正も最終収束系においては重要になる。ILCの最終収束系では、このような収差を局所的に補正するように設計されている。 KEKのATFでは、ILCの最終収束系の試験加速器として、ATF2ビームラインをつくり、現在運転をおこなっている。ATF2ビームラインは、ILCの最終収束系と、同じ思想、同じ電磁石の配置、同程度の色収差になるように設計されている。 本発表では、ILC、および、ATF2ビームラインにおける最終収束系の設計、および、ATF2ビームラインにおけるビーム収束試験の結果を発表する。
 
14:00-16:00 
THPS035
p.954
NEA-GaAs光陰極のビーム寿命についての研究
A STUDY OF BEAM LIFE TIME OF NEA-GaAs CATHODE

○郭 磊,栗木 雅夫,飯島 北斗,三好 健太郎(広島大学大学院先端物質科学研究科)
○Lei Guo, Masao Kuriki, Hokuto Iijima, Kentarou Miyosi (Graduate School for Advanced Sciences of Matter, Hiroshima University)
 
NEA(Negative Electron Affinity) GaAsフォトカソードは物質のバンド構造による光励起の選択性を利用した偏極電子ビーム生成、NEAという特殊な表面状態に由来する極低エミッタンスビームの生成、高い量子効率など、多くの特長を有しており、ILCやERLの電子源として開発が進められている。他方,NEA表面の劣化による量子効率の減少が実用化の上で大きな障害となっており、とくに引き出し電荷量による劣化機構の理解と克服が重要課題になっている。我々はこの劣化プロセスを理解するために、1.5E-9Paを下回る極高真空環境下でNEA-GaAs陰極を活性化し、He-Neレーザー633nmを照射して光電流を長時間にわたり引き出し、その寿命測定をおこなった。電子ビームにより残留ガスがイオン化され、そのイオンの逆流衝突によりカソードが劣化するというモデルをもとに解析をおこなった。本発表では、寿命の電圧依存性、ビームスポット径依存性などのデータについて行った解析結果を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS036
p.959
3 GeV ERL およびコンパクトERLのオプティクス設計の進捗状況
Present status of optics designs for 3-GeV ERL and compact ERL

○島田 美帆,宮島 司,中村 典雄,小林 幸則,原田 健太郎(高エネ研),羽島 良一(原研)
○Miho Shimada, Tsukasa Miyajima, Norio Nakamura, Yukinori Kobayashi, Kentaro Harada (KEK), Ryoichi Hajima (JAEA)
 
PFの将来計画である3 GeV ERLでは最終的な目標として、100 mAおよび0.1 mm-mradのビームによる高輝度の放射光源を挙げている。また、アンジュレータ光だけでなくXFELOやEEHGなどをオプションとして提案している。バンチ長を維持するためにアイソクロナスのTBAで構成されており、加速空洞のHOMによるBBUを抑えるために、加速・減速の2つのビームのベータ関数が小さくなるようにオプティクスを設計した。光源の性能を最大限引き出すためには、質のいい状態を保持しながら周回部を通す必要があるため、CSR wakeなどの電子ビームの質を劣化させる要因についてシミュレーションを進めている。 コンパクトERLは段階的にエネルギーを上げていく方針であり、コミッショニングモードである35 MeV・シングルループのオプティクスの設計を行った。アーク部は245 MeVダブルループと同じオプティクスである。線形オプティクスの設計はelegantを用いて行われ、CSR wakeによるエミッタンス増大などの評価を行った。また、35 MeVの低い電子エネルギーでは空間電荷効果によるビームサイズの変化が無視できないため、GPTによるシミュレーションを行ったので、それらの結果をまとめて報告する。
 
14:00-16:00 
THPS037
p.963
UVSORにおけるコヒーレント光源実験ステーションの建設と立上
Construction and commissioning of coherent light source experimental station at UVSOR

○田中 誠一,阿達 正浩,林 憲志,山崎 潤一郎,木村 真一,中村 永研,加藤 政博(分子研),保坂 将人,山本 尚人,高嶋 圭史(名大),高橋 俊晴(KURRI 京大),全 炳俊(IAE 京大)
○Sei-ichi Tanaka, Masahiro Adachi, Kenji Hayashi, Jun-ichiro Yamazaki, Shin-ichi Kimura, Eiken Nakamura, Masahiro Katoh (IMS), Masahito Hosaka, Naoto Yamamoto, Yoshifumi Takashima (Nagoya Univ.), Toshiharu Takahashi (KURRI Kyoto Univ.), Heishun Zen (IAE Kyoto Univ.)
 
従来、UVSORのコヒーレント光源開発は光電子分光用の可変偏光アンジュレーターを一部利用する形で構成された自由電子レーザー用の光学路をさらに流用することで行われていた。この環境での成果により、2008年度から5カ年計画で進められる、「文部科学省量子ビーム基盤技術開発プログラム」に選定されることとなった。 現在、開発プログラムの支援のもと光源開発環境の大幅な改修が進捗している。昨年度までに、ビーム入射輸送路と主加速空洞の移設によって光源開発専用の直線部を創出し、光クライストロン型アンジュレーターの設置、レーザーシステムの増強と移設などを終えており、実用化を目指した技術開発が可能な実験環境が実現されつつある。一方で、新たにTHz/CSR専用のビームラインの設置も行われ、自発放射光スペクトルの観測結果から、新たなコヒーレント光源実験ステーションが所定の性能を達成できていることも確認している。また、実験面ではCSR/CHGシードレーザーを使ったバンチスライスCSR発生にも成功している。FEL開発についても同時に進められており、すでに光共振器の設計を終えて今年度中には設置する予定である。 2012年6月現在、偏向電磁石の更新を行っており、更なる低エミッタンス化が期待される。設計通りに稼働すれば、より高出力のコヒーレント光源開発が可能となる。学会では光源実験ステーションの建設と立上、今後の展望について議論したいと考えている。
 
14:00-16:00 
THPS038
p.967
高繰り返しグリッドパルサーを用いたマクロパルス電子ビーム発生試験
Macropulse Electron Beam Production with a High-Repetition-Rate Grid-Pulser

○川瀬 啓悟,加藤 龍好,入澤 明典,藤本 將輝,上司 文善,大角 寛樹,矢口 雅貴,徳地 明,末峰 昌二,磯山 悟朗(阪大産研)
○Keigo Kawase, Ryukou Kato, Akinori Irizawa, Masaki Fujimoto, Fumiyoshi Kamitsukasa, Hiroki Ohsumi, Masaki Yaguchi, Akira Tokuchi, Shoji Suemine, Goro Isoyama (ISIR, Osaka univ. )
 
大阪大学産業科学研究所量子ビーム科学研究施設に設置されているLバンド電子ライナックでは、パルス幅8 μsのマクロパルスを用いて遠赤外自由電子レーザー(FEL)の研究開発を実施している。現在、FELの研究のためには電子銃から8 μsの電子ビームをdcで発生させ、108 MHzのサブハーモニックバンチャーRF空洞を用いて9.2 ns間隔の電子バンチを生成している。一方FEL共振器のミラー間隔は光パルスの往復時間で37 nsであり、よってこの時間内に電子バンチ、すなわち光パルスが4個存在することになる。FELの増幅率はバンチ当たりの電荷に依存して増大するので、電子バンチ間隔を37 nsにすることでRFへの平均ビーム負荷を現状のままでバンチ電荷を4倍にすることが可能となり、結果、FELの増幅率の増大が期待できる。そのために、パルス幅5 nsでパルス間隔37 ns 、マクロパルス幅8 μsの電子ビームを発生させることができるグリッドパルサーを開発し、ライナック電子銃システムへ導入した。現在、このシステムを用いた電子ビームの加速、およびFELの発生試験を実施している。本発表では、このビーム試験とFEL発生実験の内容とその結果について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS039
p.971
KEK 3-GeV ERLにおける共振器型XFELのシミュレーション
Simulations of XFELO for the KEK ERL

○羽島 良一,西森 信行(原子力機構),清 紀弘(産総研),島田 美帆,中村 典雄(高エネ機構)
○Ryoichi Hajima, Nobuyuki Nishimori (JAEA), Norihiro Sei (AIST), Miho Shimada, Norio Nakamura (KEK)
 
KEK が提案している 3GeV ERL 放射光源では、将来の拡張として共振器型X線自由電子レーザー(XFEL-O)の設置を検討している。XFEL-Oは、空間・時間コヒーレンスを備えたX線パルスが1MHz以上の繰り返しで発生可能な装置である。XFEL-Oでは、ERLを2回加速モードで運転し、6-7 GeVの電子を得て、これをアンジュレータに導く。発表では、周回軌道中における電子ビーム品質の劣化、Bragg ミラーを含んだFEL発振シミュレーションなどについて報告する。
 
14:00-16:00 
THPS040
p.976
中部シンクロトロン光利用施設における光源加速器コミッショニング
Commissioning of Accelerators of the Central Japan Synchrotron Radiation Facility

○山本 尚人,保坂 将人,高見 清,真野 篤志,高野 琢,中村 永研,森本 浩行,高嶋 圭史,加藤 政博(名大シンクロトロン光研究センター),堀 洋一郎(高エネルギー加速器研究機構),佐々木 茂樹(JASRI/SPring-8),江田 茂(SAGA-LS),村田 亜季,中山 光一(株)東芝)
○Naoto Yamamoto, Masahito Hosaka, Kiyoshi Takami, Atsushi Mano, Takumi Takano, Eiken Nakamur, Hiroyuki Morimoto, Yoshifumi Takasima, Masahiro Katou (Nagoya University Synchrotron radiation Research center), Yoishirou Hori (KEK), Shigeki Sasaki (JASRI/SPring-8), Shigeru Koda (SAGA-LS), Aki Murata, Koichi Nakayama (Toshiba)
 
中部シンクロトロン光利用施設の光源加速器群は 周長72m・エネルギー 1.2 GeV の蓄積リング、フルエネルギー入射可能なブースターシンクロトロン、2本のレギュラー加速管を備えた50 MeV ライナックから成る。 中部シンクロトロンでは2012年の3月末に光源機器の据え付けがほぼ終了、これに合わせて光源加速器群のコミッショニングを開始した。コミッショニングは、まずRF系各空洞のエージングから始まり、その後ビーム調整が入射器の上流から順を追って開始されている。内容は主に、実際の電子ビームを用いた各電源及びモニタ系の性能評価・調整である。 これまでにライナックとブースター及びその制御システムまでの調査はほぼ終え、細かな問題は残っているものの大きなものは解決されつつある。また同時に、仕様値より低い電流値ではあるが、1.2GeVの電子ビームをブースターで生成することには成功している。 今後6月以降、我々は蓄積リングまわりの機器について実ビームを用いた性能評価・調整を行い、これと共に入射器の性能向上を目指す予定である。 本発表では光源加速器群の立ち上げ状況を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS041
p.980
LCSガンマ線源単色化のための非対称光共振器の提案
Proposal of an asymetric optical resonator for the monochromatization of an LCS gamma ray source

○永井 良治,羽島 良一(日本原子力研究開発機構)
○Ryoji Nagai, Ryoichi Hajima (JAEA)
 
われわれのグループではERL加速器技術を基盤としたレーザーコンプトン散乱(LCS)ガンマ線源を用いた非破壊核種分析システムの開発をおこなっている。LCSガンマ線源をさらに高度化し単色化を進めることで、ガンマ線非破壊分析システムの精度向上や核内励起状態の探求が可能になる。単色ガンマ線をLCSで発生するには、これまでのLCS光源で用いられている高繰り返し短パルスレーザーのエネルギー広がりが問題となるので、狭帯域レーザーを用いる必要がある。高出力狭帯域レーザーは繰返しが低いためにこれまでのLCSで用いられてきた光共振器では蓄積光が増倍されない。そこで、単色ガンマ線の発生に適したLCS用光共振器について提案し、その性能について評価した結果について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS042
p.983
阪大産研FELスペクトルの時間発展
Temporal evolution of the FEL spectrum at ISIR, Osaka University

○加藤 龍好,川瀬 啓悟,入澤 明典,藤本 將輝,上司 文善,大角 寛樹,矢口 雅貴,末峰 昌二,磯山 悟朗(阪大産研),柏木 茂(東北大 電子光理学研究センター),山本 樹(高エネ研)
○Ryukou Kato, Keigo Kawase, Akinori Irizawa, Masaki Fujimoto, Fumiyoshi Kamitsukasa, Hiroki Ohsumi, Masaki Yaguchi, Shpji Suemine, Goro Isoyama (Osaka Univ., ISIR), Shigeru Kashiwagi (Tohoku Univ., RCEPS), Shigeru Yamamoto (KEK)
 
阪大産研ではLバンド電子ライナックを駆動源とするテラヘルツ自由電子レーザー(FEL)の開発を行っている。最初の出力飽和を確認して以来、発振波長領域の拡大とFELの増幅利得や、波長スペクトル、飽和時出力などの特性測定を行ってきた。昨年は、線形応答性の高いSiボロメータを用いることで、FELパワーの時間発展を4桁以上にわたって評価したことを報告した。そのときは電子ビームのマクロパルス長を短くすることで、FELの時間発展を中断させ、その時点でのFELマクロパルスの持つエネルギーを評価した。今回も同様に電子ビームのマクロパルス長を変化させ、さらに、Ge:Ga 半導体型検出器と平面回折格子型分光器を用いることで、FELパワーの時間発展に伴う波長スペクトルの変化について測定したので、これを報告する。
 
14:00-16:00 
THPS043
p.987
ニュースバルにおける加速器性能改善
Improvement of accelerator performance at NewSUBARU

竹村 育浩,○皆川 康幸(高輝度光科学研究センター),庄司 善彦(兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所)
Yasuhiro Takemura, ○Yasuyuki Minagawa (JASRI), Yoshihiko Shoji (LASTI/NewSUBARU, University of Hyogo)
 
これまでNewSUBARUでは1.0GeV 220mA トップアップ運転と1.5GeV 350mAからの非入射decay運転を行ってきたが、1GeVでは2011年秋に蓄積電流を250mAに上げ、1.5GeVでもビーム寿命の改善が続いている。特に、トップアップ運転の蓄積電流を決めているのは、1シフトの入射電荷量に対する放射線安全上の制限であり、入射効率とビーム寿命の改善が蓄積電流の増加に繋がった。 入射効率改善は、主として入射ビームの4極マッチング調整によって得られた。従来は入射効率を指標とした、言わば盲滅法の調整であった。そこで我々は様々な問題点を洗い出し、最終的にビームトランスポートに設置したスクリーンモニターの分解能を上げた事で(アルミナ蛍光板の厚さを1mm→0.1mmに変更)、高信頼度のマッチング調整を可能とした。 ビーム寿命改善に寄与したのは、多極磁場であった。様々な調整のなかで、効果が高く入射効率と両立したのは、harmonic sextupole familyを増やす事によるdynamic aperture改善と、多機能電磁石による長尺アンジュレーター効果の軽減であった。 その他に入射バケット制御の導入は、寿命改善に加えて、ビームアボート回数の減少にも寄与した。
 
14:00-16:00 
THPS044
p.991
超低エミッタンス蓄積リングのための入射用低エミッタンスシンクロトロンの設計研究
Design Study of a Low Emittance Injector Synchrotron with Multi-bend Achromat Lattices for an Ultra-low Emittance Storage Ring

○妻木 孝治(高輝度光科学研究センター)
○Koji Tsumaki (JASRI/SPring-8)
 
現在世界各地で検討されている次世代の放射光用蓄積リングは、超低エミッタンスを目指しており、ダイナミックアパーチャーが極めて小さく、ビーム寿命も短い。そのため、蓄積ビーム電流を一定に保つために頻繁に入射を繰り返す、いわゆるトップアップ運転が必須になる。トップアップ運転では、入射中も放射光用のシャッターは開いたまま実験が継続されるため、入射効率を上げて、電子ビームの損失を設定された値以下に抑えなければならない。電子ビームを効率よく入射するためには、入射ビームのエミッタンスが小さくなければならないため、低エミッタンスの入射器が必要不可欠になる。入射器としてシンクロトロンを考えた場合、従来のシンクロトロンは、エミッタンスが大きくて入射器としては不適当である。そこでFODOラティスをベースとした低エミッタンスシンクロトロンを検討した[1]。FODOラティスは、セルあたりの電磁石数が少ないため、セル長を短くして偏向電磁石の総数を上げることによりエミッタンスを小さくすることができるが、単位セルあたりでエミッタンスを小さくできるのは、Theoretical Minimum Emittannce (TME)ラティスである。そこで、このラティスに近づけたオプティックスを持つMulti-Bend Achromat ラティスを今回検討したので、その結果について報告する。 [1] K. Tsumaki, Proc. of Part. Accel. Soci. Meeting 2009, p. 808.
 
14:00-16:00 
THPS045
p.995
小型線形加速器LEENAを用いたテラヘルツ光源開発
Development of Terahertz Radiation Sources by Compact Electron Linear Accelerator LEENA

○陳 彩華,橋本 智,川田 健二(兵庫県立大高度研),李 大治(レーザー総研),天野 壮,宮本 修治(兵庫県立大高度研)
○Sayaka Chin, Satoshi Hashimoto, Kenji Kawata (LASTI, University of Hyogo), Dazhi Li (ILT), Sho Amano, Shuji Miyamoto (LASTI, University of Hyogo)
 
 兵庫県立大ニュースバル放射光施設には1.5GeV電子蓄積リングの他に、小型電子線型加速器LEENAがある(エネルギー15MeV、RF周波数2856MHz、熱陰極RF電子銃、マクロパルス幅5μs、繰り返し周波数10Hz、バンチ当り電荷量17.5pC)。現在、テラヘルツ波領域の光源開発を目的として、加速器および光源の高度化に関する研究を行っている。  本研究では偏向電磁石からの放射およびスミス・パーセル放射によるテラヘルツ光源開発の進捗状況について報告する。テラヘルツ領域のシンクロトロン放射光をZero Bias Diodeを使用して計測した結果、6.25μWの放射光が観測された。またスミス・パーセル放射(周期長10mm)によるテラヘルツ波の発生に成功し、9.25μWの放射光強度が観測された。マイケルソン干渉計等によるテラヘルツ波の周波数スペクトル計測から電子ビームバンチ長の評価を行った。今後、電子ビームの大電流化、アルファ電磁石による短バンチ化をすすめ、コヒーレント放射による大強度テラヘルツ光源の開発を目指す。
 
14:00-16:00 
THPS046
p.998
中部シンクロトロン光利用施設用ブースターシンクロトロン
Booster Synchrotron for the Central Japan Synchrotron Radiation Facility

○中山 光一,村田 亜希,都築  直久,永渕 照康,松田 晋弥,渡辺 順子,佐藤 耕輔(株式会社 東芝),高嶋 圭史,保坂 将人,山本 尚人,高見 清,森本 浩行,真野 篤志,高野 琢(名大SRセンター),加藤 政博(分子研),堀 洋一郎(高エネ研),佐々木 茂樹(高輝度光科学研究センター),江田 茂(九州シンクロトロン光研究センター)
○Koichi Nakayama, Aki Murata, Naohisa Tsuzuki, Teruyasu Nagafuchi, Shinya Matsuda, Jyunnko Watanabe, Kousuke Sato (Toshiba Corporation), Yoshifumi Takashima, Masato Hosaka, Naoto Nakamoto, Kiyoshi Takami, Hiroyuki Morimoto, Atsushi Mano, Takumi Takano (Nagoya University SR Center), Masahiro Kato (UVSOR), Youichirou Hori (KEK), Shigeki Sasaki (JASRI/SPring-8), Shigeru Kouda (SAGA-LS)
 
中部シンクロトロン光利用施設の入射用1.2GeVブースターシンクロトロンの設計・製作および据付が完了して、入射用50MeVのライナックを用いたビーム調整作業を開始している。現在は、1.2GeVまでのビーム加速を確認した。 入射および加速のビーム効率向上のためビーム調整運転を行っている。ブースターシンクロトロンは、ライナックからの1ns幅のシングルバンチビームを1HzでOn-AXIS入射する。ラティス設計では、将来のトップアップ運転を考えてビームエミッタンスを200nm以下で設計した。電磁石は10台の偏向電磁石(BM)および各10台のQFおよびQDから構成される。加速立ち上げ時のうず電流による6極磁場の効果を含めて、クロマテシティ補正用の6極磁石6台(SF、SD)を設置した。電磁石の製作および設置誤差による誤差磁場による閉軌道の補正用に、軌道補正電磁石水平8台および垂直用8台を設置する。高周波加速系は、10kWの500MHz半導体アンプで 光源リングと同じ500MHz加速空洞に高周波を伝送する。各電磁石および高周波アンプは、パターンメモリーを用いて1Hzのパターン運転を行う。制御系はEPICSを用いたシステムで、タイミング制御系により入出射電磁石およびパターン電源のタイミング制御を行う。本報告では、ブースターシンクロトロンの設計および現状について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS047
p.1002
中部シンクロトロン光利用施設加速器システム
Accelerator System for the Central Japan Synchrotron Radiation Facility

○村田 亜希,中山 光一,都築 直久,永渕 照康,松田 晋弥,渡辺 順子,佐藤 耕輔(東芝),高嶋 圭史,保坂 将人,山本 尚人,高見 清,森本 浩行,真野 篤志,高野 琢(名大SRセンター),加藤 政博(分子研),堀 洋一郎(高エネ研),佐々木 茂樹(高輝度光科学研究センター),江田 茂(九州シンクロトロン光研究センター)
○Aki Murata, Kouichi Nakayama, Naohisa Tsuzuki, Teruyasu Nagafuchi, Shinnya Matsuda, Jyunko Watanabe, Kousuke Sato (Toshiba Corporation), Yoshifumi Takashima, Masato Hosaka, Naoto Yamamoto, Kiyoshi Takami, Hiroyuki Morimoto, Atsushi Mano, Takumi Takano (Nagoya University SR Center), Masahiro Kato (UVSOR), Youichirou Hori (KEK), Shigeki Sasaki (JASRI/SPring-8), Shigeru Kouda (SAGA-LS)
 
中部シンクロトロン光利用施設の加速器は、50MeV電子ライナック、入射用1.2GeVブースターシンクロトロンおよび1.2GeV光源リングから構成される。 加速器システムは将来のトップアップ運転を考えて、50MeV電子ライナックからの 1nsの電子ビームを入射して、ブースターシンクロトロンをシングルバンチ運転を行い、光源リングの任意なバンチにビーム入射可能なようなタイミング装置を考えた。また、ブースターシンクロトロンへの入射効率向上を考えて、電子銃のトリガーおよびライナックのRF信号を光源リングの加速周波数499.654MHzに同期させる、ライナックの加速周波数をリングの加速周波数に同期させて発生させることにより、時間および電荷量のジッターの少ないシステムとした。光源リングでは、8台の常伝導偏向電磁石と4台の5T超伝導電磁石およびAPPLE-IIタイプのアンジュレーターから発生した放射光用にビームラインを持つ。 本報告では、加速器システムの設計および現状について報告する
 
14:00-16:00 
THPS048
p.1006
FEL照射による非線形光学結晶の発光
LIGHT EMISSION FROM THE NONLINEAR OPTICAL CRYSTAL BY FEL IRRADIATION

○早川 建,田中 俊成,早川 恭史,境 武志,中尾 圭佐,野上 杏子,稲垣 学(日大電子線利用研究施設)
○Ken Hayakawa, Toshinari Tanaka, Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai, Keisuke Nakao, Kyouko Nogami, Manabu Inagaki (LEBRA)
 
日大LEBRA FELの照射による非線形光学結晶BBOの、2次の高調波発生の位相整合角から数度離調した角度で現れる発光について昨年の発表の後に得られた知見を報告する。偏光板による発光の偏光の向きの測定と、光ファイバー入力のモノクロメーターによる部分分光を行った。偏光の測定では、常光線と異常光線がはっきり分離され、それぞれ、中心付近の大きなスポットと外周部の弧状のスポットが観測された。異常光線の弧が上側に現れる場合は、常光線の弧は下側に現れ、また、常光線の弧は観測できる場合は、異常光線の弧に比べ、暗いが、一回り大きい。中心付近のスポットは、分光測定から、どちらの偏光の光も結晶の角度に依存して、スペクトルは大きく変化するが、画像からも容易に推測できるように異常光線のほうが波長の短い成分を含む割合が多いことが明らかとなった。BBOは負の一軸性結晶であるため、2次の高調波発生の場合、Type I、Type IIいずれの位相整合条件の場合でも高調波は異常光線になる。FELの波長が1600nmの場合、可視光として観測される光は、2次の高調波より短い波長であるので、基本波から直接生成されるとは考えにくく、異常光線ばかりでなく、正常光線も含まれることもあり、複雑なプロセスの存在が想像される。また、弧に沿った濃淡の分布は有効非線形係数の方位角依存性に起因するようである。
 
14:00-16:00 
THPS049
p.1010
SACLA加速器のビーム変動解析
Variability analysis of a beam at SACLA

○安積 隆夫,稲垣 隆宏,大島 隆,長谷川 照晃,渡川 和晃,前坂 比呂和,大竹 雄次(理化学研究所)
○Takao Asaka, Takahiro Inagaki, Takashi Ohshima, Teruaki Hasegawa, Kazuaki Togawa, Hirokazu Maesaka, Yuji Otake (RIKEN)
 
 X線自由電子レーザーを実現するためには、RF空胴の加速電圧安定性が100ppm、位相安定性が50fs以下を満たさなければならない。本加速器に設置された各RF空胴単体では、加速電圧・位相安定性ともに目標値を達成した。その結果、線形加速器から出力される7GeV電子ビームは1E-4のエネルギー安定度を実現している。しかしながら、レーザー発振が確認されて以来、以下の2つの変動成分が問題となった。入射部において、0.5Hz周期で0.03mmのビーム位置変動が観測され、これがレーザー強度に影響していることが判明した。もう一つは、数時間経過するとレーザー強度が半減してしまい、加速器の再調整が必要となっていた。これら短・長期変動のメカニズムを解明し、支配的要因となる機器改良、レーザー強度回復のための加速器調整手法の確立をおこなうことでビーム安定化を実現する。  入射部の0.5Hzの周期的ビーム位置変動は、RF空胴冷却水の温度調整用ヒーター電流on/off制御に同期している解析結果から、DC電源を用いた連続制御による安定度改善を図る。また、数時間におよぶレーザー強度変化は、入射部の電子集群用空胴のRF位相ドリフトに起因していることを見出した。これは低電力RF位相が0.1Kの環境温度変化に依存しており、現在、精密温度調整装置の導入することで、現状のレーザー強度変化の1/5の長期安定性を目指す。
 
14:00-16:00 
THPS050
p.1014
SACLA入射部の精密温度調節装置高度化
Upgrade of a precise temperature regulation system for the injector at SACLA

○長谷川 照晃,安積 隆夫,稲垣 隆宏,高橋 直,渡川 和晃,福井 達,前坂 比呂和,大竹 雄次(理化学研究所)
○Teruaki Hasegawa, Takao Asaka, Takahiro Inagaki, Sunao Takahashi, Kazuaki Togawa, Toru Fukui, Hirokazu Maesaka, Yuji Otake (RIKEN SPring-8 Center)
 
X線自由電子レーザー施設SACLAは2012年3月に共用運転を開始した。レーザー強度を長期間にわたり安定に維持するためには、加速器を構成する各コンポーネントの高水準な安定性が必要である。ビームコミッショニング以降、Lバンド加速管における数時間周期のRF位相変動や、入射部から出力される電子ビームにX線レーザーの出力変動と同期した0.5Hz周期の位置変動が観測され、これらが共にRF空洞に流れる冷却水のわずかな温度変動と連動していることが明らかになった。RF空洞の温度制御は、PLCのPWM(Pulse Width Modulation)信号に基づきACヒータをON-OFFする方法で行っている。このシステムの温度安定度は0.08K pk-pkを達成しているが、制御周期とX線レーザー強度との間に強い相関が確認された。このため、精密温度調節装置の温度調節計を従来のPLCモジュール型から温度ドリフトが少ない高分解能型(0.001℃)に置き換え、さらにDC電源を用いた連続レベル制御方式に変更することにより、ビーム位置変動量の低減を実現する。本システム導入に先立った予備的な実験で、高分解能温度調節計のみを実機に設置し、その性能を評価した。空洞温度は0.08K pk-pkから0.01K pk-pkまで安定化され、良好な結果が得られた。本稿では、新たに導入する精密温度調整装置と性能の詳細について述べる。
 
14:00-16:00 
THPS051
p.1018
SACLAにおける電子バンチ圧縮の高次非線形補正によるレーザー高出力化
Higher-order Nonlinear Correction of Electron Bunch Compression Toward Laser Power Enhancement at SACLA

○渡川 和晃,原 徹,田中 均(独立行政法人理化学研究所)
○Kazuaki Togawa, Toru Hara, Hitoshi Tanaka (RIKEN SPring-8 Center)
 
X線自由電子レーザー施設SACLAは、昨年6 月に最初のレーザー発振を成功させた後、精密な加速器調整によって5 keVから15 keV程度の広い波長範囲で100-400μJ/pulseのパルスエネルギーを実現し、高出力レーザー光を実験ユーザーに提供している。しかしながら、より高いパルスエネルギーが必要であるといった要望が出ていることも事実であり、その為には、電子ビームのバンチ長を広げてレーザー発振に有効な電子数を増強しなければならない。SACLAでは複数のバンチ圧縮器により電子バンチを3000倍に圧縮しているのであるが、電子ビームの特性を損なうことなく有効なパルス幅を広げる為には、エネルギーチャープの高次非線形項(2次および3次)を最小化して、可能な限りエネルギーチャープを線形にする必要がある。現在、縦方向一次元モデルの解析により、線形化の為のビーム調整手法を探索している。本学会では、SACLAのおける電子バンチ圧縮の高次非線形補正によるレーザー高出力化に関する計算結果および実験結果を報告する予定である。
 
14:00-16:00 
THPS052
p.1022
トーラス結び目型小型蓄積リングによるHiSOR-II光源リングの設計
Design study of HiSOR-II lightsource ring with torus-knot type compact accumulator ring

○宮本 篤,佐々木 茂美(広大放射光センター)
○Atsushi Miyamoto, Shigemi Sasaki (HSRC)
 
我々は現在、広島大学放射光科学研究センターの将来計画HiSOR-IIの光源リングへ、先頃提案した非常に小型でありながら長い周長を持ち直線部を多く持つトーラス結び目型蓄積リングを適用した設計を進めている。このリングは、直径が15m程度でありながら、3.6mの長直線部を11本も有し、軌道長は約130mとこれまでの小型リングでは達成できない特徴を持っている。偏向電磁石を機能複合型にすることで、第3世代光源並みのエミッタンスを達成できることもわかった。発表では設計の進捗状況を報告し、具体的な光源リングとしての性能を示す。
 
14:00-16:00 
THPS053
p.1026
ERL主ライナックのためのカプラー開発 ― カプラ実機におけるエージング試験―
Development of 20kW input power coupler for 1.3GHz ERL main linac -The high power test of the main linac coupler -

○篠江 憲治,佐藤 昌史,阪井 寛志,梅森 健成(KEK加速器研究施設),Cenni Enrico(総研大),沢村 勝(日本原子力研究開発機構),中村 典雄,古屋 貴章(KEK加速器研究施設)
○Kenji Shinoe, Masato Satoh, Hiroshi Sakai, Kensei Umemori (KEK, High Energy Accelerator Research Organization), Cenni Enrico (The Graduate University for Advanced Studies), Masaru Sawamura (Japan Atomic Energy Agency (JAEA)), Norio Nakamura, Takaaki Furuya (KEK, High Energy Accelerator Research Organization)
 
ERL主加速ライナックに用いる入力カプラの開発を行っている。 カプラについては実機の製作が完了し(2台)エージングを兼ねてハイパワー試験を行った。 試験の電源はクライストロンを用いて行った。 試験の初期では、入力パワーにパルスでゲートをかけ、パルス幅を10マイクロ秒、繰り返し5Hzでパワーを増加させ、一度100KWまで到達させた。その後はパルス幅や繰り返しを増やすことで、入力するパワーを増やしていき、100KWまでの到達を繰り返しながらエージングを行い、最終的には40KW、CWまで到達させた。
 
14:00-16:00 
THPS054
p.1031
KEK-cERL設備におけるMHIの取り組み状況
The development status of KEK-cERL in MHI

原 博史,○人見 晴樹,仙入 克也,井上 典亮(三菱重工業(株))
Hiroshi Hara, ○Haruki Hitomi, Katsuya Sennyu, Fumiaki Inoue (MHI)
 
MHIでは、高エネルギー加速器研究機構にて建設されるcERL設備において、入射部・主加速部の超伝導加速空洞、及びクライオモジュールの開発に取り組んでおり、その状況について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS055
p.1034
PFリング16番直線部の偏光高速スイッチングシステムの現状
Present Status of the Fast Local Bump System for Helicity Switching at the Photon Factory

○原田 健太郎,帯名 崇,長橋 進也,高井 良太(KEK-PF)
○Kentaro Harada, Takashi Obina, Shinya Nagahashi, Ryota Takai (KEK-PF)
 
PFリング16番直線部の偏光高速切り換えシステムは、2台の挿入光源、5台の高速バンプ電磁石と電源、6台の補正電磁石系からなり、現在、スイッチング周波数10Hzで随時ユーザーランを行っている。スイッチング中は16番直線部の2台の挿入光源内に交互に局所的な高速軌道バンプが作られるが、バンプの漏れによるリング全周のビーム振動は、外部補正電磁石によるフィードフォワード補正を行うことで、水平、垂直ともに2~3ミクロン程度に抑えられている。この振動が他のビームラインに与える影響は、およそトップアップ入射と同程度であり、大きな問題はないと言われている。また、スイッチングのON/OFFは挿入光源のモード変更などを行う朝晩の8時半に行われており、その際の軌道変動は約50ミクロン程度である。この発表では、バンプシステムの運用の現状とマシンスタディの結果、今後の展望について発表を行う。
 
14:00-16:00 
THPS056
p.1039
PF及びPF-ARの電磁石測量とアライメント
Survey and Alignment of the magnets for the PF and PF-AR

○原田 健太郎,長橋 進也,島田 美帆,上田 明,尾崎 俊幸,中村 典雄,小林 幸則(KEK-PF)
○Kentaro Harada, Shinya Nagahashi, Miho Shimada, Akira Ueda, Toshiyuki Ozaki, Norio Nakamura, Yukinori Kobayashi (KEK-PF)
 
2011年3月の東日本大震災において、PFリング、PF-AR、それぞれのBTラインの電磁石に位置のずれが生じた。ここでは、震災直後に行われたPF及びPF-ARにおける機器保護と安全確認の為の垂直測量、2011年夏のシャットダウン中に行われた測量と電磁石再アライメントについて発表を行う。
 
14:00-16:00 
THPS057
p.1043
PFリングにおけるハイブリッド運転モードの導入
Introduction of Hybrid Filling Mode in Photon Factory Storage Ring

○高井 良太,帯名 崇,本田 融,谷本 育律(高エネルギー加速器研究機構)
○Ryota Takai, Takashi Obina, Tohru Honda, Yasunori Tanimoto (KEK)
 
放射光源リングにおけるハイブリッド運転とは、リング内にマルチバンチとシングルバンチを同時に蓄積し、高い平均電流を必要とするマルチバンチユーザーと高いピーク電流を必要とするシングルバンチユーザーが共存して実験することを可能にする魅力的な運転モードである。ESRFやSPring-8のような周長の長いリングでは以前から運転モードのひとつとして採用されているが、PFリングのような比較的小型のリングではシングルバンチからの光を選択的に切り出して利用することが難しいといった理由から、これまで導入されてこなかった。PFリングでは、ターボ分子ポンプを改造した高速光チョッパーの開発を機に2008年10月より検討が開始され、いくつかの技術開発と2度の光源・測定器合同スタディを経て、2012年2月にユーザー運転への正式導入を果たした。本発表では、このPFリング初のハイブリッド運転実現に貢献した技術を紹介するとともに、ハイブリッド運転中のリング状況、今後の改善項目等について述べる。
 
14:00-16:00 
THPS058
p.1048
中部シンクロトロン光利用施設加速器真空システムの設計
Vacuum system for the Central Japan Synchrotron Radiation Facility

○松田 晋弥,村田 亜希,永渕 照康,渡辺 順子,都築 直久,中山 光一,佐藤 耕輔(株式会社 東芝),高嶋 圭史,保坂 将人,山本 尚人,高見 清,森本 浩行,真野 篤志,高野 琢(名大SRセンター),加藤 政博(分子研),堀 洋一郎(エネ),佐々木 茂樹(高輝度),江田 茂(九州)
○Shinya Matsuda, Aki Murata, Teruyasu Nagafuchi, Jyunko Watanabe, Naohisa Tsuzuki, Koichi Nakayma, Kousuke Sato (Toshiba Corporation), Yoshifumi Takashima, Masato Hosaka, Naoto Yamamoto, Kiyoshi Takami, Hiroyuki Morimoto, Atsushi Mano, Takumi Takano (Nagoya University SR Cemter), Masahiro Kato (UVSOR), Youichirou Hori (KEK), Shigeki Sasaki (JASRI/SPring-8), Shigeru Kouda (SAGA-LS)
 
中部シンクロトロン光利用施設における加速器真空系は、50MeV電子ライナック及びライナックとブースターを接続する低エネルギービーム輸送系(LBTL)、1.2GeVブースターシンクロトロン系(周長48m)、ブースターシンクロトロンと光源リングを接続する高エネルギービーム輸送系(HBTL)、及び光源リング系(周長72m)から構成される。各系はGVによって区切られており、各系での要求真空度に応じて真空ダクトの材質、表面処理、ベーキング条件及び排気ポンプの総排気量等が設計されている。特にビーム寿命確保の観点から最も厳しい超高真空条件(1.0×10-7 Pa以下)が要求される光源リング系ではビーム照射起因の光脱離ガスがアウトガスの主要因となり、排気ポンプとしてリング全周に周期的に配置された49台のイオンポンプに加えて加熱・昇華方式のチタンサブリメーションポンプ51台、更に分散型排気ポンプとしてNEGポンプ( Non-Evaporation-Getter Pump )8台を採用した。NEGポンプは排気ポートを配置することができない偏向電磁石部の真空ダクト内に設置され、真空ダクト側面に取り付けられた電流導入端子を介して約450℃での通電活性化を行うことに よりその排気能力を発揮する。 本報告では、主としてブースターシンクロトロンおよび光源リングの真空システムの設計および現状について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS059
p.1052
東京理科大学における赤外自由電子レーザーの光利用研究と装置開発
Research Activities on IR-FEL in Tokyo University of Science

○今井 貴之(東京理科大),諸富 哲夫,久積 啓一(三菱電機システムサービス),川崎 平康,小宮 啓輔(東京理科大),設楽 哲夫,吉田 光宏,中島 啓光(高エネルギー加速器研究機構),築山 光一(東京理科大)
○Takayuki Imai (Tokyo University of Science), Tetsuo Morotomi, Keiichi Hisazumi (Mitsubishi SC), Takayasu Kawasaki, Keisuke Komiya (Tokyo University of Science), Tetsuo Shidara, Mitsuhiro Yoshida, Hiromitsu Nakajima (KEK), Koichi Tsukiyama (Tokyo University of Science)
 
東京理科大学・千葉県野田キャンパスにある総合研究機構赤外自由電子レーザー研究センター(FEL-TUS; Free Electron Laser at Tokyo University of Science)では、赤外自由電子レーザー(IR-FEL) のユーザー運転、光利用研究、さらにFEL装置開発と幅広く研究活動を推進している。5-14 umで発振するS-bandライナックを用いた中赤外自由電子レーザー(MIR-FEL; Mid-Infrared FEL) がその中心であり、指紋領域で波長可変、高出力・高輝度のパルス性を活かした、分子科学、生命科学、あるいは計測分析技術などの研究に取り組んでいる。FEL-TUSは、文部科学省・先端研究施設共用促進事業の実施機関の一つであり、ユーザーは本学に限らず、学外にも開放し様々な光利用が行われている。またFEL-TUSには、遠赤外自由電子レーザー(FIR-FEL; Far-Infrared FEL)も設置されており、その開発研究に着手している。DAW型RF電子銃の導入や自発光検出、熱・光複合陰極による電子ビーム生成に成功しており、テラヘルツ領域での発振を目指している。本会では、これらのFEL-TUSでの研究開発について発表する。
 
14:00-16:00 
THPS060
p.1055
日大LEBRAバーストモードビームを用いたPXRの発生と応用の可能性
Parametric X-ray generation using the burst-mode beam at LEBRA and the feasibility of the application

○早川 恭史,早川 建,稲垣 学,中尾 圭佐,野上 杏子,境 武志(日大電子線利用研究施設),佐藤 勇(日大大学院総合研究科),田中 俊成(日大電子線利用研究施設)
○Yasushi Hayakawa, Ken Hayakawa, Manabu Inagaki, Keisuke Nakao, Kyoko Nogami, Takeshi Sakai (LEBRA, Nihon University), Isamu Sato (ARISH, Nihon University), Toshinari Tanaka (LEBRA, Nihon University)
 
日大電子線利用研究施設(LEBRA: Laboratory for Electron Beam Research and Application)では電子リニアックの電子銃に高速グリッドパルサーを導入し、バンチを間引いたバーストモードでの運転が可能となった。既に自由電子レーザ(FEL: free electron laser)での運用が始まっているが、間引き運転によりバンチ間隔が20nsまたは40nsに広がるため、ポンプ-プローブ実験などナノ秒領域の時間分解測定へ応用が広がることが期待される。時間構造についての利点はパラメトリックX線源(PXR: parametric X-ray radiation)においても同様であり、X線吸収端微細構造や位相コントラストイメージングの時間分解測定が可能になると思われる。バーストモードではマクロパルス電流がフルビームモードよりも減少するため、PXRの発生量が制約される。しかしながら、元々PXR線源の運用においてはターゲット結晶の熱的損傷を防ぐためにマクロパルス幅を狭めていたので、FELと同程度のマクロパルス幅にすることによりPXRの発生量をある程度維持することが可能と思われる。このバーストモードで得られるPXRビームの特性や、それを用いて実施した応用実験について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS061
p.1059
産総研におけるコヒーレント遷移放射光源とTHz時間領域分光システムの開発の現状
Present Status of THz coherent transition radiation source and THz Time-Domain Spectroscopy System at AIST

○熊木 雅史,坂上 和之,鷲尾 方一(早大理工研),黒田 隆之助,平 義隆,豊川 弘之,山田 家和勝(産総研)
○Masafumi Kumaki, Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio (RISE Waseda Univ.), Ryunosuke Kuroda, Yoshitaka Taira, Hiroyuki Toyokawa, Kawakatsu Yamada (AIST)
 
近年のTHz技術の進歩により、THz領域での物質固有の指紋スペクトルの存在が確認され、THz波は分光測定による物質の識別など、産業応用としても期待されている。産総研ではS-band小型電子Linacを用いて生成した電荷量1 nCの電子バンチを40 MeVまで加速した後、1 ps以下までバンチ長の圧縮を行い、コヒーレント遷移放射(THz-CTR)により高強度THz波を発生している。現在、この加速器からのTHz波の分光を目指してTHz時間領域分光(THz-TDS)システムの開発を行っている。THz-TDSとは、ポンプ光としてTHz-CTR、プローブ光として加速器と同期させたTi:Saフェムト秒パルスレーザーを用いたポンプ・プローブ法により、THz波の時間波形を計測する手法である。得られた波形のフーリエ変換を行い、THz波の周波数スペクトルを得る。現在はTHz波の電場によるEO結晶のポッケルス効果をレーザーの位相の変化として検出する、EOサンプリング法を用いたTHz-TDSシステムの構築を進めている。実験ではTHz-CTRを二枚の平凸レンズを用いてEO結晶に集光している。この集光したTHz-CTRをショットキーダイオードを用いて計測したところ、進行方向Z偏光の電場分布になると推測されるドーナッツ形状のプロファイルが計測された。我々はこの偏光を制御しEO結晶に集光を行い、EOサンプリング法によるTHz-TDSによる時間波形の取得に成功した。本発表ではTHz-CTRの測定結果及びTHz-TDSシステム開発の現状について発表する。
 
14:00-16:00 
THPS062
p.1062
中部シンクロトロン光利用施設の加速器の放射線遮蔽
Radiation Shielding of the Central Japan Synchrotron Radiation Facility

○高嶋 圭史(名大SRセンター),森本 浩行(科学技術交流財団),保坂 将人,山本 尚人(名大SRセンター),加藤 政博(分子研),渡邉 信久(名大SRセンター),竹田 美和(科学技術交流財団)
○Yoshifumi Takashima (NUSR), Hiroyuki Morimoto (ASTF), Masahito Hosaka, Naoto Yamamoto (NUSR), Masahiro Katoh (IMS), Nobuhisa Watanabe (NUSR), Yoshikazu Takeda (ASTF)
 
中部シンクロトロン光利用施設の加速器は、50 MeV 直線加速器,1.2 GeV ブースターシンクロトロン,1.2 GeV 電子蓄積リングで構成される。電子蓄積リングの周長は72 mであり、この内側に周長48 mのブースターシンクロトロンを配置し、さらに内側に直線加速器を配置している。直線加速器から出射される電子ビームは、パルス幅約1 nsのショートパルスである。これをブースターシンクロトロンにシングルバンチで入射し、加速後に蓄積リングへ入射する。入射の繰り返しは1Hzである。蓄積リングへ入射する電荷量は、毎秒約1 mA(約0.24 nC/s)とし、蓄積電流は300 mAを予定している。稼働後早い時期にトップアップ運転へ移行する予定である。 これらの加速器は実験ホールの中央にあり、周囲と上部を厚さ1 m 及び50 cmのコンクリート遮蔽壁で囲み、部分的に鉛ブロックを配置している。遮蔽壁の天井の上には電磁石電源等を設置しており、中央部分の空間には、蓄積リング用クライストロンを設置している。遮蔽壁の天井には、何カ所かに矩形のコンクリート板で取り外し可能なふたが作ってあり、これを取り外すことで実験ホール天井のクレーンにより遮蔽壁内の基幹チャンネル部や電磁石にアクセスできる。 本発表では、中部シンクロトロン光利用施設の加速器用遮蔽について報告を行う。
 
14:00-16:00 
THPS063
p.1065
FEL実験を目的とした超伝導検出器の特性評価
Characteristic evaluation of superconducting hot-electron bolometers for FEL experiments

○大角 寛樹,加藤 龍好,入澤 明典,川瀬 啓悟,藤本 將輝,上司 文善,矢口 雅貴,磯山 悟朗(阪大産研),Semenov Alexei,Huebers Heinz-Wilhelm,Scheuring Alexander,Il'in Konstantin,Siegel Michael(Institute of Planetary Research, DLR),Thoma Petra(Institute for Micro and Nanotechnology Systems, KIT)
○Hiroki Ohsumi, Ryuukou Kato, Akinori Irizawa, Keigo Kawase, Masaki Fujimoto, Fumiyoshi Kamitsukasa, Masaki Yaguchi, Goro Isoyama (ISIR, Osaka University), Alexei Semenov, Heinz-wilhelm Huebers, Alexander Scheuring, Konstantin Il'in, Michael Siegel (Institute of Planetary Research, DLR), Petra Thoma (Institute for Micro and Nanotechnology Systems, KIT)
 
我々は、大阪大学産業科学研究所のLバンド電子ライナックを用いてテラヘルツ自由電子レーザー(FEL)の開発及び研究利用を行なっている。テラヘルツ領域でのFELの測定には、10ns程度の時間分解能を持つGe-Ga半導体型検出器や、検出感度が高いSiボロメータ、室温で使用できる焦電素子など異なる特性を持つ検出器を使用している。今回、ドイツの惑星科学研究所とカールスルーエ工科大学が開発した検出感度が高く高速でテラヘルツ波を計測することが出来る窒化ニオブ(NbN)及びYBCOを用いた2種類の超伝導ホットエレクトロンボロメータ(Hot Electron Bolometer)を用いてFELの時間発展を測定する試験的な実験を行った。NbN検出器は液体ヘリウムで冷却する一方、高温超伝導体であるYBCO検出器は液体窒素で冷却して使用する。本発表では、その基礎となる2種類の検出器の特性を評価した予備的な結果を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS064
p.1070
SuperKEKB入射器における高量子効率・長寿命フォトカソード新材料(Ir5Ce)の研究開発
High quantum efficiency and long lifetime photocathode materials (Ir5Ce) for the SuperKEKB electron photoinjector.

○佐藤 大輔(東京工業大学大学院),吉田 光宏(高エネルギー加速器研究機構),林崎 規託(東京工業大学原子炉工学研究所)
○Daisuke Satoh (Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Inst. of Technology), Mitsuhiro Yoshida (High Energy Accelerator Research Organization (KEK)), Noriyosu Hayashizaki (Research Laboratory for Nuclear Reactors, Tokyo Inst. of Technology)
 
SuperKEKBの電子入射器には、高いルミノシティーを得るために、高電荷・低エミッタンスの電子源として、光電陰極型RF電子銃が導入されている。純金属よりも量子効率が高く、かつ長い寿命をもつフォトカソードと、高出力レーザーを組み合わせることで、加速器の長期営業運転を目指している。我々は、高融点・低仕事関数という特殊な性質を合わせ持つことで知られるIr5Ce化合物に着目し、フォトカソードとしての利用可能性を研究している。 Ir5Ce化合物に関しては、既に熱陰極として次のような優れた性質をもつことが知られている。①純金属に比べて圧倒的に小さい2.57eVの仕事関数をもつ。これは、フォトカソードに使用した場合に、照射用レーザーシステムの負担が軽くなることを意味する。②他の電子放出材料と比較して、熱陰極の寿命を大きく左右する蒸発速度が極めて遅く、長寿命である。③イオン衝撃に強く、電子放出特性は雰囲気に影響されにくいため、ベーキングなしのシステムでも、陰極として優れた特性を維持可能である。 これらの性質から、Ir5Ce化合物はフォトカソードとしても優れた特性を持つことが期待される。しかし、量子効率をはじめ、フォトカソードとしての基本的な性質は未だ解明されていないため、実際にIr5Ceのフォトカソードを製作し、材料評価や量子効率測定をおこなった。本大会では、その特性評価結果や、RF電子銃としての運転性能などについて発表する。
 
14:00-16:00 
THPS065
p.1074
Prototyping of the Flux Concentrator for SuperKEKB Positron Capture
○Lei Zang, Mitsuo Akemoto, Shigeki Fukuda, Toshiyasu Higo, Takuya Kamitani, Kazuhisa Kakihara, Yujiro Ogawa, Hirohiko Someya, Toshikazu Takatomi (The High Energy Accelerator Research Organization ), Shinji Ushimoto (Mitsubishi Electric System & Service Co.Ltd)
 
The SuperKEKB requires higher positron intensity. We will upgrade the capture system of the injection linac by introducing a Flux Concentrator type of a pulsed solenoid that can generate several tesla solenoid field to focus the positrons emerged from a conversion target. Due to the high temperature environment during brazing, we proposed to use a high strength copper material (HRSC) for FC which has a much better mechanical strength than Oxygen-free Copper (OFC). The experiment is designed to measure and compare the field distribution of two FC prototypes made of HRSC and OFC to evaluate the possibility of using HRSC for FC. Furthermore, in this paper, we will also introduce the different FC geometries: a simple straight slit FC and a SLAC type of spiral slit FC. The measurement results of these two geometries prototypes will be presented and discussed. Based on the experimental data, the simulation results could be cross checked, which allow us to optimize the FC design to improve the performance.
 
14:00-16:00 
THPS066
p.1078
小型永久磁石を用いたECR水素イオン源の開発
Development of very small ECR H+ ion source with small permanent magnets

○那須 裕司,北原 龍之介,不破 康裕,頓宮 拓,岩下 芳久(京都大学化学研究所),市川 雅浩(日本原子力研究開発機構)
○Yuji Nasu, Ryunosuke Kitahara, Yasuhiro Fuwa, Hiromu Tongu, Yoshihisa Iwashita (ICR, Kyoto Univ.), Masahiro Ichikawa (JAEA)
 
 中性子は物質構造を探るプローブとして注目が高まっている。しかし中性子実験施設は日本国内でも限られており、マシンの利用時間の制約などといった問題があるため、広く普及可能な小型中性子源が求められている。そこで陽子線形加速器ベースの小型中性子源開発の第一歩として、我々は小型の永久磁石を用いた小型水素イオン源の開発を進めている。通常のイオン源ではガスを流し続けるため、高電界を発生するために高真空を要求するRFQ等の加速管の運転に必要な真空排気系に大きな負荷が掛かる。そこで現在開発中のイオン源では圧電素子によってガス弁をパルス駆動させ、必要なときにのみ水素ガスを供給できる工夫がなされている。これにより限られたガス流量でプラズマを効率よく発生させ、また、小型の永久磁石を用いることにより小型水素イオン源での大電流ビームの生成を目指している。これまで開発段階の水素イオン源において、性能評価と改良を重ねてきた。現在、プラズマ中でどのようなイオン種が存在しているのかを確認すべく、分光器を用いてプラズマスペクトルを観測している。さらにアナライザーマグネットを用いた質量分析により、引き出しビーム中のイオン種の同定を行っている。また引き出したイオンビームの性質を定量的に評価するため、エミッタンスの測定を予定している。このような最近の性能評価や改良点を含めた進捗状況について主に報告する。
 
14:00-16:00 
THPS067
p.1081
J-PARCイオン源の運転状況
Operation status of the J-PARC ion source

○小栗 英知,池上 清,大越 清紀,小泉 勲,高木 昭(J-PARCセンター),滑川 裕矢(日本アドバンストテクノロジー),山崎 宰春,上野 彰(J-PARCセンター)
○Hidetomo Oguri, Kiyoshi Ikegami, Kiyonori Ohkoshi, Isao Koizumi, Akira Takagi (J-PARC), Yuya Namekawa (NAT), Saishun Yamazaki, Akira Ueno (J-PARC)
 
東日本大震災で大きな被害を受けたJ-PARCは、震災発生から約9ヵ月後の平成23年12月にビーム運転を再開した。イオン源の震災被害は、加速器トンネルの地下水浸水による本体表面の結露、ガラス製ビューイングーポート破損による真空リーク及び振動による真空ポンプの故障等であったが、幸い大規模な復旧作業を要するほどには至らず、10月中旬にはイオン源の試験運転を再開できた。イオン源のメンテナンス頻度を決定するのはフィラメント寿命であるが、17mAのビーム条件下で震災前に1回、震災後に2回の計3回の2か月連続運転を行い、いずれも運転期間途中でのフィラメント交換無しで運転を行うことができた。3回のうち1回は、3GeVシンクロトロンにてビーム出力400kWのデモ運転を行うために6日間の28mAビーム運転を実施したが、フィラメント寿命やビーム安定性に特に問題は発生しなかった。イオン源のメンテナンス所要時間の短縮は加速器の稼働率向上には必須であり、そのためにフィラメントのプレベーキング装置等を整備してきた。現在、24時間メンテナンスを試行中であり、今までに2回実施したが、特に問題なくメンテナンス開始から24時間後に加速器にビームを供給できた。
 
14:00-16:00 
THPS068
新しい18 GHz ECRイオン源の設計
Design of new 18 GHz ECR ion source
○大関 和貴,日暮 祥英,大西 純一,中川 孝秀(理研)
○Kazutaka Ozeki, Yoshihide Higurashi, Jun-ichi Ohnishi, Takahide Nakagawa (RIKEN)
 
理研仁科加速器研究センターでは、RIBFやGARISで行われる実験へのビーム供給の効率を上げることを目的として、線形加速器RILACに大強度多価重イオンビームを供給する新18 GHz ECRイオン源を新たに設置することを計画している ビームラインを併設することにより、実験期間中においても新しいビームの開発を可能にすることも意図するものである。 今回設計を開始した新しいイオン源は、理研で開発された18 GHz ECRイオン源の持つ性能を生かしつつ以下のような新たな特徴を持つ。 1)ミラー磁場を生成するソレノイドコイルが3個あるため、Bmin(ミラー磁場の最小値)を最適値に固定したまま、Bext(ビーム引き出し側のミラー磁場強度)を変化させることが可能である。このため比較的軽いイオンから重いイオンまで生成に最適な磁場分布が形成できる。 2)連続的に周波可変なRF電源(17.2-18.4 GHz)を使用し、プラズマチャンバーサイズに最適な周波数帯を選択できるためビーム強度の更なる増強が見込まれる。 3)清掃や試料交換を簡便に行うために、チェンバーの構造の改良を試みた。 本発表では、これらの設計内容について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS069
p.1084
SuperKEKBに向けた陽電子源増強の現状
Present status of positron source upgrade for SuperKEKB

○紙谷 琢哉,明本 光生,荒木田 是夫,荒川 大,榎本 收志,福田 茂樹,古川 和郎,東 保男,肥後 寿泰,本間 博幸,飯田 直子,池田 光男,門倉 英一,柿原 和久,片桐 広明,倉品 美帆,松下 英樹,松本 修二,松本 利広,道園 真一郎,三川 勝彦,三浦 孝子,宮原 房史,森 隆志,中島 啓光,中尾 克巳,夏井 拓也,大沢 哲,小川 雄二郎,佐藤 政則,設楽 哲夫,白川 明広,諏訪田 剛,杉本 寛,高富 俊和,竹中 たてる,矢野 喜治,横山 和枝,吉田 光宏 ,臧 磊,周 翔宇(KEK),佐藤 大輔(東工大)
○Takuya Kamitani, Mitsuo Akemoto, Yoshio Arakida, Dai Arakawa, Atsushi Enomoto, Shigeki Fukuda, Kazuro Furukawa, Yasuo Higashi, Toshiyasu Higo, Hiroyuki Honma, Naoko Iida, Mitsuo Ikeda, Eiichi Kadokura, Kazuhisa Kakihara, Hiroaki Katagiri, Miho Kurashina, Hideki Matsushita, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Shinichiro Michizono, Katsuhiko Mikawa, Takako Miura, Fusashi Miyahara, Takashi Mori, Hiromitsu Nakajima, Katsumi Nakao, Takuya Natsui, Satoshi Ohsawa, Yujiro Ogawa, Masanori Satoh, Tetsuo Shidara, Akihiro Shirakawa, Tsuyoshi Suwada, Hiroshi Sugimoto, Toshikazu Takatomi, Tateru Takenaka, Yoshiharu Yano, Kazue Yokoyama, Mitsuhiro Yoshida, Lei Zang, Xiangyu Zhou (KEK), Daisuke Satoh (TITECH)
 
KEKB入射ライナックではSuperKEKBに向けての改造が進められている。陽電子ビームについては低エミッタンス化のためのダンピングリングの増設と大強度化のための陽電子捕獲セクション及びビーム収束系の増強を行う。捕獲セクションについては、フラックスコンセントレータ型ソレノイドを用いてアディアバティックマッチング系を実現することによりエネルギーアクセプタンスを2倍にし、さらに大口径加速管を用いることにより横方向アクセプタンスを2倍に拡げることにより、陽電子ビーム強度をこれまでの4倍のバンチ当り4nCに増強する。これに対応して下流のQマグネットによる収束系も必要なアクセプタンスが確保できるように改造する。また同じ収束系にエネルギーの異なる電子ビームと陽電子ビームを通すことに対応できるようにパルス動作するQおよびステアリングマグネットを増設する。この論文ではこれらの陽電子源の増強に関連したコンポーネントの開発及び改造準備の状況について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS070
p.1089
極短バンチ生成用光陰極高周波電子銃開発
Development of photocathode rf electron gun for ultra-short bunch generation

○坂上 和之,小柴 裕也,水柿 将貴,鷲尾 方一(早大理工研),浦川 順治,高富 俊和(高エネ研),黒田 隆之助(産総研)
○Kazuyuki Sakaue, Yuya Koshiba, Masataka Mizugaki, Masakazu Washio (RISE Waseda University), Junji Urakawa, Toshikazu Takatomi (KEK), Ryunosuke Kuroda (AIST)
 
早稲田大学では高エネルギー加速器研究機構と共同でフォトカソードRF電子銃空胴に関する研究を行ってきた。RF電子銃はそれ単体にて約5MeVのエネルギーかつ低エミッタンスのビームが得られることから、様々な応用が可能である。早稲田大学においてもパルスラジオリシス研究やレーザーコンプトン散乱研究に応用している。これらの応用研究のみならず、ビーム物理研究のテーマとしても電子銃単体で極短バンチを生成することは非常に興味のある研究である。 そこで我々は従来の空胴に特殊な形でEnergy Chirp Cell (ECC)を付加することによって電子銃から出てくる電子バンチのエネルギーを線形にチャープし、フェムト秒の時間幅まで圧縮できる電子銃を考案した。セル間のつなぐアイリスの幅やECCの長さを調整することによってECC内で電子が加速されるRF位相を調整し、線形なエネルギーチャープを得ることができる。現在設計している電子銃ではECCによるエネルギーチャープによって2~3mのドリフトスペースを通過させることで100fsec (rms)、100pC/bunchの電子ビームが得られる。現在までに製作は完了しており、ビーム試験を行っていく予定である。 本講演ではECC-RF-Gunの原理と設計結果及び進捗状況について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS071
p.1092
永久磁石型2.45GHzECR陽子源の開発
Development of 2.45GHz permanent-magnet proton source

○山本 裕史,畑中 吉治,福田 光宏,依田 哲彦,植田 浩史,田村 仁志,木林 満,齋藤 高嶺,永山 啓一,安田 裕介,森信 俊平,鎌倉 恵太(大阪大学核物理研究センター)
○Hirofumi Yamamoto, Kichiji Hatanaka, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroshi Ueda, Hitoshi Tamura, Mitsuru Kibayashi, Takane Saito, Keiichi Nagayama, Yusuke Yasuda, Shunpei Morinobu, Keita Kamakura (RCNP)
 
RCNPサイクロトロンでは陽子ビームの強度増強を目指し、大強度、低エミッタンスの高輝度陽子ビームを生成する2.45GHzECR陽子源の開発を進めている。 陽子ビームの大強度化を図るため、これまで使用していた出力200Wのマイクロ波電源を最大出力2kWの電源に更新するとともに、高出力用の導波管を導入し、マイクロ波のハイパワー化を行った。さらに、プラズマチェンバー内のマイクロ波電場を強めるため、プラズマチェンバーのマイクロ波導入部の形状・サイズの最適化を進めている。 また、プラズマ領域に対する引出電極の位置関係を見直し、プラズマ電極をECRゾーンにより近づけると共に、ビームの大強度化に伴う空間電荷効果の影響を考慮してビーム軌道計算コードIGUNを用いて引出電極部の形状、配置の再設計を行い引出ビームの高輝度化を図った。これまではビームの引出位置がECR領域から10mm下流の位置だったのでプラズマ電極の位置を10mm上流側に移し、それに合わせて引出電極部全体の位置も上流側に移動させた上で形状、配置の調整を行った。その際、これまでビームの安定性を欠く原因になっていた引出電極間での放電対策として、電極間の絶縁体の形状・サイズなどを見直し、高安定化を図った。以上の改良により、最大0.8mA以上の陽子ビーム生成が可能になり、長時間の安定性も向上した。本発表では、陽子源開発の現状と陽子ビームの性能評価について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS072
p.1096
三極管型熱陰極高周波電子銃のための同軸共振空胴の設計
Design of a Coaxial RF Cavity for Thermionic Triode RF Gun

○井門 秀和,Torgasin Konstantin,増田 開,金城 良太,崔 龍雲,吉田 恭平,Omer Mohamed,Hani Negm,柴田 茉莉江,島橋 享兵,奥村 健祐,全 炳俊,紀井 俊輝,長崎 百伸,大垣 英明(京都大学エネルギー理工学研究所)
○Hidekazu Imon, Konstantin Torgasin, Kai Masuda, Ryota Kinjo, Yong-woon Choi, Kyohei Yoshida, Mohamed Omer, Negm Hani, Marie Shibata, Kyohei Shimahashi, Kensuke Okumura, Heishun Zen, Toshiteru Kii, Kazunobu Nagasaki, Hideaki Ohgaki (Institute of Advanced Energy, Kyoto University)
 
KU-FEL(京都大学自由電子レーザ)施設では、電子ビーム生成のためS-band4.5空胴熱陰極高周波電子銃を使用している。自由電子レーザの発振には、電子ビームエネルギーが時間的に安定であることが重要であり、これは電子銃の性能に依存している。熱陰極高周波電子銃の欠点は、逆流電子が熱陰極材料を加熱して、結果として電子ビームエネルギーの低下を引き起こすことである。 逆流電子を削減するために新しい三極管型熱陰極高周波電子銃を設計した。粒子シミュレーションにより、逆流電子の電力を90%削減でき、生成ビームの短バンチ化によりエミッタンスを増大することなく高いピーク電流が得られるとの結果を得ている。 三極管型熱陰極高周波電子銃は、既設の熱陰極高周波電子銃の熱陰極に代えて、熱陰極を内導体に備えた短ギャップ(2mm程度)の同軸共振空胴を設置して構成される。この追加同軸共振空胴のプロトタイプを製作した。 製作したプロトタイプについて低電力での実験を行った結果、設計したパラメータとは一致しなかった。また、内導体に備え付けられた熱陰極の加熱により共振周波数が大きく変化するため、熱陰極の動作温度範囲も考慮して、共振空胴設計や周波数調整機構の導入を検討する必要があることも分かった。 本発表では、プロトタイプの試験結果を示し、これらの検討を加えた同軸共振空胴の2号機の設計について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS073
p.1100
透過光型スピン偏極電子源のための電子ビームバンチ長測定システムの開発
Development of an Electron Bunch Length Measurement System for the Transmission-type Polarized Electron Source

○丹羽 貴弘(名大),山本 尚人,保坂 将人,真野 篤志(名大SRセンター),高嶋 圭史(名大),許斐 太郎,阿達 正浩,加藤 政博(分子研),坂上 和之(早大),高富 俊和(高エネ研)
○Takahiro Niwa (Nagoya Univ), Naoto Yamamoto, Masahito Hosaka, Atsushi Mano (Nagoya Univ SR Center), Yoshifumi Takashima (Nagoya Univ), Taro Konomi, Masahiro Adachi, Masahiro Katoh (IMS), Kazuyuki Sakaue (Waseda Univ), Toshikazu Takatomi (KEK)
 
スピン偏極電子ビームは次世代の高エネルギー素粒子実験「国際リニアコライダー」を実現するための必須要素とされている。このスピン偏極電子源開発において名古屋大学では90%を超えるスピン偏極電子ビームの生成に成功した。近年では従来型偏極電子源の高輝度化をめざし、励起レーザーをビームが生成するのと反対側から入射する背面透過光型スピン偏極電子源の開発を行った。この電子源の開発で高いビーム輝度を達成し、さらに電子源設計の自由度を上げることにつながった。また、スピン偏極度としても従来型と遜色ない90%を達成することに成功した。この背面透過光型電子源は既に電子顕微鏡へ応用され、有用性も確かめられている。この電子源を高エネルギー素粒子実験に用いるにはピコ秒スケールのパルス性能を達成する必要がある。しかし、電子ビーム生成時に実現可能なバンチ長や励起レーザーに対する時間応答性は未だ評価されてない。その評価をするためにRF偏向空胴を用いた電子ビームバンチ長計測システムを構築することにし、空胴の設計を行った。偏向空胴は直方体でビーム繰り返しの整数倍周波数である2612.9MHzでTM120モードの電磁場を誘起し、空胴内でビームが受ける力が最大になるよう設計した。詳細な設計はHFSSを用いて行い、十分な横方向磁場が発生することを確認した。本発表では透過光型電子源の優れた性能を紹介すると共に、RF偏向空胴の設計について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS074
p.1105
アーク電流⊿∑フィードバック制御によるJ-PARCイオン源ビームの安定化
Beam stabilization of the J-PARC ion source by arc current ⊿∑feedback control

○大越 清紀,伊藤 雄一,上野 彰,小栗 英知(原子力機構)
○Kiyonori Ohkoshi, Yuichi Itoh, Akira Ueno, Hidetomo Oguri (JAEA)
 
J-PARC負水素イオン源は、六ホウ化ランタン製フィラメントを使用したアーク放電駆動型を採用している。メンテナンス直後のイオン源は、フィラメント表面の相対的に温度の低い部分にボロンが付着して急激にアークインピーダンスが増大する。その結果、アーク電流が減少し、ビーム強度の減少を招く。ビーム強度安定化のためにはアーク電流を一定に保つことが有効であるが、J-PARC利用運転開始当初は、アーク電流を一定に保つために1時間に数回程度のフィラメント電流調整が必要であり、イオン源オペレータの負担が大きかった。このためアーク電流を一定に保つフィードバック(FB)プログラムを作成し、2010年11月より実装した。このプログラムでは、フィラメント電圧をアーク電流の測定値が設定値に一致するように制御する機能を有する。最初に作成した単純なFBでは、フィラメント制御電圧の分解能(0.01V)が不十分なのが原因でアーク電流は鋸波状に変化(約±1.1%)し、それに伴いビーム電流も変動していた。この変動を軽減させるための改善策として、ΔΣ変調方式をFBプログラムに取り入れた。ΔΣ変調によりフィラメント電圧分解能による量子化誤差を時間方向にも分散させた結果、オペレータのフィラメント電圧調整操作を行わなくてもアーク電流変動を約±0.2%まで安定させることに成功し、オペレータの負担を大幅に軽減することができた。
 
14:00-16:00 
THPS075
p.1109
C6+レーザイオン源のビーム特性試験
Measurement of beam characteristics from C6+ Laser Ion Source

○山口 晶子,佐古 貴行,佐藤 潔和((株)東芝),林崎 規託,橋本 清(東工大),服部 俊幸(放医研)
○Akiko Yamaguchi, Takayuki Sako, Kiyokazu Sato (Toshiba), Noriyosu Hayashizaki, Kiyoshi Hashimoto (Tokyo Tech), Toshiyuki Hattori (NIRS)
 
A C6+ laser ion source has been developed for a heavy ion accelerator. A graphite target is irradiated with a Q-switched Nd:YAG laser (1064nm of wavelength, 1.4J of maximum laser energy, 10ns of pulse duration) to generate carbon ions. The characteristics of the accelerated ion beam were measured by using the time-of-flight method and the magnetic analysis. Results of the experiments are presented.
 
14:00-16:00 
THPS076
産業応用を目的としたマイクロ波イオン源の開発
Development of Microwave Ion Source for Industrial Applications
○高橋 伸明,村田 裕彦,桜庭 順二,三堀 仁志,曽我 知洋,青木 康,加藤 隆典(住友重機械工業),作道 訓之(金沢工大)
○Nobuaki Takahashi, Hirohiko Murata, Junji Sakuraba, Shinji Mitsubori, Tomohiro Soga, Yasushi Aoki, Takanori Kato (Sumitomo Heavy Industry), Noriyuki Sakudo (Kanazawa Institute of Technology)
 
マイクロ波イオン源は、その構造上無電極であり、他のフリーマン、バーナス型等のフィラメントタイプのイオン源に対して、長寿命であることが期待される。また、これまでの研究事例から高密度なプラズマも生成可能であることが確認されている。 住友重機械工業ではプラズマ成膜装置、陽子線及び重粒子線がん治療装置、イオン注入装置などイオン源を用いた多くの装置の開発を行っている。マイクロ波イオン源はこれらの装置に搭載可能で、且つ現有商品の性能向上が期待される。 そこで、本研究では、これら商品群に共通して利用できる、マイクロ波イオン源技術開発のため、その基本設計及び基礎データの取得を行った。 基本設計では、発振機の周波数を2.45GHzとし、マッチングセクション、プラズマチャンバー、コイルを主に設計した。 マッチングセクション及びプラズマチャンバーは電磁波シミュレーションにより求めた、プラズマチャンバーと導波管をインピーダンスマッチングしたものと、導波管とプラズマチャンバーの間をなだらかに形状が変化するものを作成した。 コイルは2個の電磁石構成とし、コイル電流、コイルギャップ、コイル中心位置を可変にし、高密度プラズマ生成に最適な磁場分布を発生できるようにした。 今回の報告では、マッチングセクション、プラズマチャンバー、コイルの基本設計結果及び、磁場分布を最適にしたときのプラズマ密度の計測結果を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS077
p.1113
東芝におけるILC向け9セル超伝導空洞の開発
Development of the 9-cell Superconducting Cavity for ILC at TOSHIBA

○太田 智子,澁谷 純市,山田 正博,戸坂 泰造,黒岩 信好,森 和彦,高崎 正浩,金井 芳治,野村 俊自,永渕 照康,渡辺 順子,佐藤 潔和(東芝)
○Tomoko Ota, Junichi Shibuya, Masahiro Yamada, Taizo Tosaka, Nobuyoshi Kuroiwa, Kazuhiko Mori, Masahiro Takasaki, Yoshiharu Kanai, Shunji Nomura, Teruyasu Nagafuchi, Junko Watanabe, Kiyokazu Sato (TOSHIBA)
 
東芝では2009年より高エネルギー加速器研究機構(KEK)との共同研究により国際リニアコライダー(ILC)向け超伝導空洞の開発を行っている。これまでに2台の9セル超伝導空洞を試作し、KEKにて表面処理及び性能測定を実施した。この結果、2号機空洞については目標である最大加速電界35MV/mを達成した。2号機空洞の試作における改良点など、ILC向け超伝導空洞の開発状況について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS078
p.1116
STFにおける超伝導空洞HOMを利用した空洞アライメントの検出
MISSALIGNMENT DETECTION OF SUPERCONDUCTING CAVITIES BY HIGHER ORDER MODES (HOM) AT STF

○倉本 綾佳(総合研究大学院大学),早野 仁司,渡邉 謙(高エネルギー加速器研究機構)
○Ayaka Kuramoto (Sokendai), Hitoshi Hayano, Ken Watanabe (KEK)
 
KEKのSTFでは量子ビーム実験のためのSTF加速器の試験運転を2012年4月から開始した.STF加速器の超伝導リニアックにはILC用9セル超伝導加速空洞2台がクライオモジュール内に納められている.量子ビーム実験では電子ビームを40 MeVまで加速し,1 msecパルス幅,5 Hzの繰り返しで最大ピーク電流10 mA(バンチ当たり62 pCの電荷量)を目標にしている. 電子ビームが超伝導加速空洞を通過する時に励起する高調波モード(High Order Modes:HOM)をHOMカプラーで空洞内から取り出し,そこからHOMの周波数,振幅および位相情報を得る.それらの情報は空洞内を通過するビーム位置および電荷量と関連付けられている.ビーム軌道を位置の基準となるビーム位置モニターで計測しながら,ステアリングマグネットの強度を変えることにより変化するHOMの振幅と位相の相関から,超伝導加速空洞の電気的中心を計測し,ミスアライメント量を検出する.このHOMを用いた空洞アライメント法はDESYのFLASH(Free-Electron Laser in Hamburg)で盛んに追及されてきた技術であり,本研究においてもその技術をSTF加速器の超伝導加速空洞に応用する.今回はダイポールモードTE111とTM110の高インピーダンスを持つモードを用いて,ミスアライメント量を求めた.HOM信号取得はフィルターとRFアンプを経由させた後,高速オシロスコープで行い,振幅と位相をFFT解析により求めた.その結果について報告する.
 
14:00-16:00 
THPS079
p.1120
シームレス超電導空洞における液圧成型のPC自動制御
Automated Hydroforming of Seamless Superconducting RF Cavity

○永田 智啓,篠沢 精一,阿部 知行,長久保 準基,村上 裕彦((株)アルバック),田島 健(ロスアラモス国立研究所),井上 均,山中 将,上野 健治(高エネルギー加速器研究機構)
○Tomohiro Nagata, Seiichi Shinozawa, Noriyuki Abe, Junki Nagakubo, Hirohiko Murakami (ULVAC, Inc.), Tsuyoshi Tajima (LANL), Hitoshi Inoue, Masashi Yamanaka, Kenji Ueno (KEK)
 
ニオブ超電導加速空洞の製造工程において、電子ビーム溶接でセルを作製した場合には溶接ビードに存在する欠陥が加速性能に大きく影響し、この欠陥を除去するための研磨工程まで含めると多大な時間を要する。一方、空洞本体には溶接を必要とせず製造工程を大幅に短縮することが期待できるシームレスパイプを用いた空洞成型については未だ最適な成型条件が定まっておらず歩留まりの向上が課題となっている。そこで我々は、シームレスパイプの液圧成型をPC制御することで、上記課題を解決すべく迅速かつ最適な成型条件の探索を行っている。 開発したPC制御ソフトでは変位や圧力をモニターしつつ内圧や材料押し込み量を制御できる。さらに、パイプの長軸方向や径方向の移動量に制限を設けることで、材料が長軸方向に過剰に供給されて金型に挟まれることや逆に径方向のふくらみが早すぎてバーストする危険を回避している。ネッキング処理を施した銅パイプにおいて中間金型(2段階成型のうち第1段階目)を用いたテストでは約30秒での成型に成功した。この後、金型を取り替えて最終成型を行ったとしても非常に短時間での空洞成形が期待される。 また、液圧成型においては材料そのものの特性が大きく寄与するので、二次イオン質量分析法(SIMS)による不純物分析や結晶サイズ・方位の測定、さらにはこれらの結果と残留抵抗比や伸び率の相関性の評価も併せて行っている。
 
14:00-16:00 
THPS080
p.1124
共振周波数を用いた誘電率測定とRF窓の反射低減
Dielectric Constant Measurement using Resonant Frequencies for Minimizing the Reflection of Pillbox RF Windows

○青 寛幸,浅野 博之,田村 潤,大内 伸夫(原子力機構),高田 耕治,内藤 富士雄(高エネ研)
○Hiroyuki Ao, Hiroyuki Asano, Jun Tamura, Noubo Ouchi (JAEA), Koji Takata, Fujio Naito (KEK)
 
アイリスで導波管と結合した定在波形空洞にRF窓を取り付ける場合、RF窓の反射(VSWR)により、クライストロン側から見た負荷全体(RF窓と空洞)のVSWRが変化する。RF窓のVSWRが変動する一つの要因としてセラミックの誘電率が考えられる。そこで、ピルボックス型RF窓について、製作工程の途中でセラミックの誘電率を共振周波数を用いて測定し、誘電率に応じてピルボックス部の寸法を調整することで、RF窓のVSWRを小さく抑えることを試みた。その結果、ピルボックス部の長さを調整することでVSWRを1.05以下に抑え、RF窓による(空洞単体からの)VSWRの変化を0.05以下に低減することができた。本報告では、誘電率の測定とRF窓の製作についての詳細、および誘電率と密度との相関などについて報告する。
 
14:00-16:00 
THPS081
p.1127
KEK-STFにおける量子ビーム実験のためのキャプチャークライオモジュールの建設とビーム運転
Construction and Beam Operation of Capture Cryomodule for Quantum Beam Experiments at KEK-STF

○山本 康史(高エネルギー加速器研究機構)
○Yasuchika Yamamoto (KEK)
 
KEK-STFで量子ビーム実験に使用されるキャプチャークライオモジュールの建設が2011年9月から始まり、12月に終了した。このクライオモジュールには2台の超伝導9セル空胴(MHI-12, -13)が導入されており、それらは縦測定(空胴単体性能試験)でいずれもILCの要求するスペックを満たしている。また、2010年に行われていたS1-Global実験でその入熱量が問題となっていた入力結合器も改良され、新たに導入されている。空洞の周波数調整機構はS1-Globalの時と同様に、ヘリウムジャケット中央部と端部の2カ所に1台ずつ取り付けられ、運転時の動作比較が行えるようになっている。2012年2月からクライオモジュールの冷却が開始され、2K到達後に低電力試験、高電力試験、熱負荷測定等を経て、4月からビーム運転が始まった。高電力試験を通じて一台の空洞性能が、縦測定時に比べて25%程も劣化していることが判明したが、運転勾配は20MV/mのため深刻な影響は与えなかった。現在、ビーム運転が日夜行われているが、キャプチャークライオモジュールは安定に動作している。本学会では、量子ビーム実験のためのキャプチャークライオモジュールの建設状況から性能試験やビーム運転時の状態などを詳細に報告する。
 
14:00-16:00 
THPS082
p.1133
加速管部品の非接触形状測定
Development of Non-contact 3D Measurement System for Parts of Accelerator Cavities

○江並 和宏,山中 将(高エネ研)
○Kazuhiro Enami, Masashi Yamanaka (KEK)
 
現在,KEKはCFF(Cavity Fabrication Facility,空洞製造技術開発施設)において,性能を高めつつより製造コストを抑えた9セル超伝導加速空洞の製造方法に関する研究開発を進めている.その一環として,超伝導加速管のハーフセルやダンベルといった部品の三次元形状の非接触測定装置の開発を進めている. 加速管の性能を保証する上で,その形状の測定は重要な課題となる.現在,加速空洞の作製の工程において形状測定が必要な箇所は多い.ハーフセルのプレス時のデザイン形状との誤差測定,ダンベル作成時にアイリス溶接による歪み量測定,それを伸ばして形状を戻す時のモニタ等の測定が必要となる.現在この作業には三次元測定機(CMM)を使用しているが,CMMには,装置が大型である,測定時間がかかる,専門の人間が必要,測定痕がついてしまう等の欠問題点がある.そこで,ラインレーザを使用して三次元形状を非接触で高速測定する装置を開発している.現在,0.1mmの精度で化学研磨されたハーフセル形状を安定して測定することを目標に,測定の高精度化・ロバスト化を目指し,アルゴリズムの改良・レーザの改良といったソフト・ハード両面からの装置改善をおこなっている.本報ではアルゴリズム装置の現状について報告する.
 
14:00-16:00 
THPS083
p.1137
Relations between electron beam welding parameters and appearances of weld beads on Nb plates
○Takayuki Kubo, Yasuo Ajima (KEK), Tomohiro Nagata (ULVAC, Inc.), Takayuki Saeki, Kensei Umemori, Yuichi Watanabe (KEK)
 
Surface defects of superconducting rf cavity cause locally enhanced electric and magnetic field, and trigger electron field emissions and thermal magnetic break down. Therefore surfaces must be smooth. On and around electron beam welding (EBW) seams, however, defects are often found. To make matters worse, the electrochemical polishing (EP) processes in order to clean up the surface defects can result in emergence of new defects from inside the surfaces. An optimum parameter of EBW to minimize a number of defects both before and after EP should be studied. One approach to the above problem is analyzing sample Nb plates with weld beads. Fortunately, we have an environment necessary for preparing these sample plates. An EBW machine installed in KEK cavity fabrication facility (CFF), where machines needed to make cavities are all equipped in one clean environment, can be used to prepare weld beads on pure Nb plates right after chemical polishing. In addition, EP process can be applied to welded plates at “lab-EP” which is also a laboratory setup in KEK. As a first step of this approach, we studied relations between parameters of EBW machine and appearances of weld beads.
 
14:00-16:00 
THPS084
p.1143
J-PARC 3 GeVシンクロトロン高周波加速空胴用金属磁性体コアの内直径の測定及びその経年変化
Measurement of inner diameters of MA cores of RF-cavities of J-PARC 3 GeV synchrotron and the over years changes of the diameters

○島田 太平(J-PARCセンター),鈴木 寛光(JAEA IFMIF),山本 昌亘,シュナーゼ アレクサンダー,戸田 信,大森 千広,原 圭吾,長谷川 豪志,野村 昌弘,田村 文彦,吉井 正人(J-PARCセンター)
○Taihei Shimada (J-PARC Center), Hiromitsu Suzuki (JAEA IFMIF), Masanobu Yamamoto, Alexander Schnase, Makoto Toda, Chihiro Ohmori, Keigo Hara, Katsushi Hasegawa, Masahiro Nomura, Fumihiko Tamura, Masahito Yoshii (J-PARC center)
 
J-PARC 3 GeVシンクロトロンの高周波加速空胴では、外直径約850 mm、内直径約370 mmの金属磁性体コア198枚を使用している。2007年10月のシンクロトロンの運転開始以来、いくつかのコアで座屈による損傷が発生した。その原因調査の一環として、メンテナンスで空胴を解体した際、コアの内直径の測定を行った。コアの製造方法の違いにより、内径の真円からズレの度合いに一定の傾向があることがわかった。また、座屈が発生したコアを除き、ほとんどのコアでは、経年による形状変化は認められないが、一部のコアでは、扁平の度合いが大きくなっている傾向が観測されている。約2年の経年による内径の変化についても報告する。なお、現在、座屈防止に有効なコアの製造方法が確立され、夏期のシャットダウン時に順次コアの交換が進められている。
 
14:00-16:00 
THPS085
4ビーム型IH-RFQ線形加速器の検討
Study on four-beam IH-RFQ linear accelerator
○林崎 規託(東工大原子炉研)
○Noriyosu Hayashizaki (RLNR, Tokyo Tech)
 
東京工業大学では,低エネルギー重イオンビームの大強度化に向けて,1本の大強度ビームを複数本に分割し,並列に同時加速することにより空間電荷効果を緩和する,マルチビーム型RFQ線形加速器の開発を進めてきている。そしてこれまでに,2ビーム型IH-RFQ線形加速器とレーザーイオン源の原理実証機を開発し,最終的に108mA(ビーム1本あたり54mA)の炭素2価イオンビームの加速に成功した。その発展型として,本研究では4ビーム型IH-RFQの可能性について,とくに高周波電磁気特性および機械的構造の面から,具体的な検討をおこなった結果を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS086
p.1146
超伝導空胴アイリス部におけるX線検出システムの開発
Development of X-ray detector system at irises of the superconducting cavities

○頓宮 拓,岩下 芳久(京大化研),早野 仁司,山本 康史(高エネルギー加速器研究機構)
○Hiromu Tongu, Yoshihisa Iwashita (ICR), Hitoshi Hayano, Yasuchika Yamamoto (KEK)
 
 京都大学化学研究所では高エネルギー加速器研究機構(KEK)との共同研究で超伝導加速空胴の欠陥検査についての研究を進めている。ILCで使用される加速空胴の加速勾配の上限は空胴内の表面またはそれに近い内部の状態に大きく依存していると考えられ、空胴製作において空胴性能や生産効率の向上から内壁の微小欠陥検査は必要不可欠となっている。  KEKでは超伝導状態の加速管に高周波電力を注入して行う縦測定において局所的欠陥の探索のためX線の検出を行なっている。加速空胴のアイリス部は構造補強のためのスティフナーが溶接されX線センサーを空胴外壁に設置するとスティフナーに開けてある穴のため、場所によって感度にムラが生じる。そのためスティフナー通過で強度が減衰したX線は欠陥位置探索において不適なデータとなる。本研究ではスティフナーの内側にセンサーを設置しスティフナーを通過していないX線を検出するシステム開発を進めてきた。小型センサーの選定とそのためのセンサー回路基板の開発、KEKにて行なった動作試験の結果について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS087
p.1149
cERL計画用入射器クライオモジュールの建設
Construction of Injector Cryomodule for cERL project

○加古 永治,近藤 良也,野口 修一,宍戸 寿郎,山本 康史,渡邉 謙(高エネルギー加速器研究機構),人見 晴樹,仙入 克也(三菱重工業)
○Eiji Kako, Yoshinari Kondo, Shuichi Noguchi, Toshio Shishido, Yasuchika Yamamoto, Ken Watanabe (KEK), Haruki Hitomi, Katsuya Sennyu (MHI)
 
コンパクトERL計画の入射部で用いられるクライオモジュールの建設が現在進行中である。このクライオモジュールは、2セル超伝導加速空洞3台が内蔵されており、連続運転(CW)で10mAの電子ビームをビームエネルギー500keVから5MeVへ加速するために用いられる。このクライオモジュールにおいて、主要な開発要素となる構成部品は、2セル超伝導空洞、入力結合器(インプットカップラー)、高調波取出し結合器(HOMカップラー)、HOMカップラー用RFフィードスルーなどである。各2セル超伝導空洞には、5台のループアンテナ型HOMカップラーが取り付けられ、さらに上下に2本のインプットカップラーが装着される。2セル超伝導空洞の運転加速電界は、6~8MV/mであり、必要となる入力高周波電力は約10kW(CW)である。これらは、それぞれ単体での性能確認試験が行われた後で、クライオモジュールへの組み込み作業が開始された。本年4月より開始されたクライオモジュールの建設作業は順調に進行しており、6月末にはビームラインへの設置が行われ、8月の高圧ガス完成検査を経て、9月に第1回冷却試験および低電力RF試験を行う予定である。
 
14:00-16:00 
THPS088
p.1152
J-PARC SDTL空洞内マルチパクタに関する検討
Multipactor at SDTL Cavity in J-PARC Linac

○伊藤 崇,平野 耕一郎(日本原子力研究開発機構),南茂 今朝雄(高エネルギー加速器研究機構)
○Takashi Ito, Koichiro Hirano (JAEA), Kesao Nanmo (KEK)
 
J-PARCリニアック部の加速空洞であるDTL及びSDTLは、2011年3月の東日本大震災により大きな被害を受けた。復旧作業は4月から10月まで行われ、11月からのハイパワーコンディショニングの後12月からビーム加速を再開している。 復旧後のDTL及びSDTL空洞は、SDTL05B空洞を除き震災前と同等、安定な運転を維持している。SDTL05B空洞は、およそ300kW~400kWの領域で空洞内にパワーが入らず反射のみが増加する、という症状を呈している。このため震災前の運転パワー(370kW)で運転することができないため、約1.4倍のパワー(510kW)を投入して運転している状況である。 現在この症状の原因究明を進めており、空洞内で発生しているマルチパクタの影響を疑っている。本稿では、空洞内マルチパクタに関するシミュレーション結果、これまでに行った各種測定及び対策、並びにそれらに関する考察を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS089
p.1157
KEKの空洞製造施設におけるILC超伝導9セル空洞の製作研究
Study on the fabrication of superconducting 9-cell cavity for ILC at CFF/KEK

○佐伯 学行,安島 泰雄,江並 和宏,早野 仁司,井上 均,加古 永治,加藤 茂樹,小池 重明,久保 毅幸,野口 修一,佐藤 昌史,沢辺 元明,宍戸 寿郎,寺島 昭男,峠 暢一,上野 健治,梅森 健成,渡辺 謙,渡辺 勇一,山口 誠哉,山本 明,山本 康史,山中 将(高エネルギー加速器研究機構),安田 文昭(東京大学理学系研究科物理学専攻),横谷 馨(高エネルギー加速器研究機構)
○Takayuki Saeki, Yasuo Ajima, Kazuhiro Enami, Hitoshi Hayano, Hitoshi Inoue, Eiji Kako, Shigeki Kato, Shigeaki Koike, Takayuki Kubo, Shuichi Noguchi, Masato Satoh, Motoaki Sawabe, Toshio Shishido, Akio Terashima, Nobukazu Toge, Kenji Ueno, Kensei Umemori, Ken Watanabe, Yuichi Watanabe, Seiya Yamaguchi, Akira Yamamoto, Yasuchika Yamamoto, Masashi Yamanaka (KEK), Fumiaki Yasuda (Department of Physics, Faculty of Science, The University of Tokyo), Kaoru Yokoya (KEK)
 
KEKでは、2009年から新らたに空洞製造施設(Cavity Fabrication Facility / CFF)の建設を行ってきた。この施設では、超伝導加速空洞の製作のために必要な機器、すなわち、プレス機、旋盤、化学研磨室、電子ビーム溶接機、等が一か所に集約設置されている。我々は、この施設を使用して、2009年からインターナショナルリニアコライダー(ILC)のための超伝導9セル空洞の製作の研究を行っている。 この研究は、特にILCでの超伝導9セル空洞の量産におけるコスト削減に焦点を絞って行われている。この発表では、この研究の現状を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS090
p.1162
Sバンド加速管の開発
Developing S-band accelerating structures

○三浦 禎雄(三菱重工業株式会社)
○Sadao Miura (MHI)
 
韓国Pohang Accelerator Laboratory (PAL)ではXFEL施設の建設を計画しており、2016年の営業運転を目指して準備中である。本施設のライナック部のエネルギー10GeV、主要周波数はSバンド(2856MHz)で計画されており、100~180本程度のSバンド3m加速管が本ライナックに使用される予定である。 2011年秋にMHIは本計画ライナック用Sバンド加速管試験機としてJ型2開口型カプラーを装備したSバンド3m加速管2本と、準対称型1開口型カプラーを装備したSバンド3m加速管2本の計4本を受注し、2012年6月、7月にPALに納入した。 KEK松本教授が考案したJ型2開口型カプラーは導波管との取り合い口は1箇所であるにもかかわらず、空胴開口部を2ヶ所持つために、開口部の表面電界強度が低く、同時にカプラー空胴での電磁場対象性が確保されるため、ビームエミッタンスの低下を防ぐことができる特性を持つ。準対称型カプラーは、通常の1開口型カプラーの開口部対向面に、1/4波長の導波管を装備し、カプラー空胴での電磁場対象性を確保したものである。 これらの加速管の開発及び製造、低レベルRF測定結果について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS091
p.1165
日立製作所における9セル超伝導加速空洞の開発状況
Status of the 9-cell superconducting cavity development at HITACHI

○綿貫 孝道,渡邊 守,仙波 智行(株式会社日立製作所),山本 康史,渡邉 謙,宍戸 寿郎,佐伯 学行,早野 仁司,加古 永治,野口 修一(高エネルギー加速器研究機構)
○Takamichi Watanuki, Mamoru Watanabe, Tomoyuki Semba (Hitachi Ltd.), Yasuchika Yamamoto, Ken Watanabe, Toshio Shishido, Takayuki Saeki, Hitoshi Hayano, Eiji Kako, Shuichi Noguchi (KEK)
 
日立製作所では2009年よりKEKとの共同研究でILC(International Linear Collider)計画に向けた9セル超伝導加速空洞の開発を行っている。2010年4月に1号機が完成し、KEKでの表面処理及び性能試験の結果、加速電界35.2MV/mを達成した(第7回日本加速器学会で報告済)。1号機の目的は基礎的製造技術の獲得であり、空洞形状は両端のエンドグループにHOM(Higher Order Mode)カプラを取り付けない簡易形状とした。 1号機の開発結果を受け、2011年1月よりHOMカプラを取り付けた2号機の開発に着手した。本開発の目的は、1)1号機で明らかになった製造技術課題を解決する、2)HOMカプラ付きの空洞製造技術を獲得する、ことである。特に前者は最も性能に寄与する赤道溶接の安定化、後者は新規開発品であるHOMカプラ製作に注力した。 上記開発項目に着目し開発を進め、2012年2月に2号機が完成した。2012年4月にKEKで性能試験を行い、加速電界は35.2MV/m以上でノークエンチであった。現在内部欠陥の研磨補修を行っており、2012年7月に再度性能試験を行い、性能限界を評価する予定である。本発表では、2号機の開発内容、性能試験結果について述べる。
 
14:00-16:00 
THPS092
p.1168
SACLA Cバンド加速器の加速電場の向上とトリップ頻度の低減
Improvement of the accelerating gradient and reduction of the trip rate of the C-band accelerator in SACLA

○稲垣 隆宏,櫻井 辰幸,近藤 力,大竹 雄次(理研播磨/SPring-8)
○Takahiro Inagaki, Tatsuyuki Sakurai, Chikara Kondo, Yuji Otake (RIKEN SPring-8 Center)
 
X線自由電子レーザー施設SACLAでは、8GeV加速器の全長を短くするため、加速電場の高いCバンド加速器を64ユニット使用している。昨年3月のビーム調整開始時には、定格の加速電場である35 MV/m以上で運転するには放電によるトリップの頻度が高かったため、ビームエネルギーを7 GeVに下げ、夜間にはコンディショニングを行った。 加速電場38MV/mにて1100時間のコンディショニングを行うことにより、トリップの頻度は約1/10に減少し、ビームエネルギーを上げる目処が立った。次に、トリップの頻度に注目しながら加速電場を41 MV/mまで段階的に上げた。電場Eが上がると、トリップの頻度はEのおよそ30乗に比例して増加した。この測定を行った後に元の電場に戻すと、トリップの頻度は30%減少していたことから、更にトリップ頻度を減らせる余地があることがわかった。 加速器のデッドタイムを減らすため、トリップ後の復旧を早めた。真空度の推移に注目しながら試験し、15秒後にRFを再投入しても問題ないことを確認した、 本年3月からのユーザー利用運転では、電子ビームのエネルギーを最高で8.5 GeVまで上げて運転している。8 GeV以下では、放電によるトリップは10 ppsで数時間に1回と許容範囲内である。但し現状では、サイラトロンの自爆によるトリップが30分に1回程度あり、こちらを低減させることが急務である。
 
14:00-16:00 
THPS093
p.1174
高電界パルス運転での真空放電現象の特性
Characteristics of vacuum breakdowns under high gradient pulsed operation

○肥後 寿泰,阿部 哲郎,荒木田 是夫,設楽 哲夫,高富 俊和,東 保男,松本 修二(KEK)
○Toshiyasu Higo, Tetsuo Abe, Yoshio Arakida, Tetsuo Shidara, Toshikazu Takatomi, Yasuo Higashi, Shuji Matsumoto (KEK)
 
我々は、主加速器にXバンドの高電界加速を用いる常伝導リニアコライダーを検討している。CLICでは2ビーム加速方式が採用され、Xバンド・100MV/mでの加速が想定されているが、我々はCLICのプロトタイプ加速管に対する長期試験運転を行うことによりその高加速勾配の実現可能性を評価している。また、高電界運転で発生する真空放電の頻度と放電の結果として生ずる加速管の劣化が最大加速勾配を制限する要因となっているが、その真空放電現象の特性研究も長期試験運転を通して遂行してきている。本論文では、この長期試験運転から得られた、我々が現在可能と考える加速電界に関して述べるとともに、加速管における放電のメカニズムを解明するために進めてきた各種実験の結果を示しながら放電の特性を議論する。最後に、我々が今後進める基礎研究に関して述べる。
 
14:00-16:00 
THPS094
p.1178
コリニアロードに用いるカンタル溶射膜の特性
Characteristics of Kanthal-Sprayed layer used for Collinear Load

○荒木田 是夫,宮原 房史,松本 修二,東 保男,肥後 寿泰(KEK)
○Yoshio Arakida, Fusashi Miyahara, Shuji Matsumoto, Yasuo Higashi, Toshiyasu Higo (KEK)
 
カンタルを溶射したコリニアロード型の加速管は、古くはオークリッジ研究所のLバンド加速器や医療用のSバンド加速管に用いられてきていたし、最近ではDESYのLINAC-IIのSバンド加速管に採用されている。SuperKEKBに用いるLバンド進行波型加速管では、それを取り巻くソレノイドの内径を小さく抑えるために、出力導波管を無くしてコリニアロード部にRFパワーを吸収させる設計を進めており、この型の加速管とすべく検討を進めている。本稿では、カンタルの溶射技術を確認し直して加速管の設計に反映できるよう、各種の特性を定量した最近の評価を報告する。機械的、電気的、真空的、等々の評価を含む。
 
14:00-16:00 
THPS095
p.1183
高電界Xバンド単セル試験空洞の4分割方式による製作
Quadrant-Type X-Band Single-Cell Structure for High Gradient Tests

○阿部 哲郎,東 保男,荒木田 是夫,設楽 哲夫,高富 俊和,肥後 寿泰,松本 修二(高エネルギー加速器研究機構(KEK))
○Tetsuo Abe, Yasuo Higashi, Yoshio Arakida, Tetsuo Shidara, Toshikazu Takatomi, Toshiyasu Higo, Shuji Matsumoto (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
我々は、Xバンド(11.424GHz)加速管による100MV/m以上の高電界加速技術の確立を目指している。加速構造の製作方法として、ディスク型と4分割方式があるが、どちらも、利点もあれば欠点もある。本研究では、高周波表面電流、局所場の増大、表面処理、コスト削減等の観点から、4分割方式の欠点を克服する製作方法を提案し、導波管ポートによる高次モード強減衰構造を備えた単セル空洞による基礎試験にて実証を行う。
 
14:00-16:00 
THPS096
p.1188
STFの現状
Status of Superconducting RF Test Facility (STF)

○早野 仁司(高エネルギー加速器研究機構)
○Hitoshi Hayano (KEK)
 
The superconducting RF test facility (STF) in KEK is the facility to promote R&D of the International Linear Collider (ILC) cavities and cryomodule. The surface treatment and field test of 9-cell cavities are performed in daily bases. The international project, S1-Global cryomodule test was conducted and successfully finished at STF in 2010. Two DESY cavities, two FNAL cavities and four TESLA-shape KEK cavities were installed into the connected cryomodule. The cool down experiment and RF performance test were performed. Average acceleration gradient was 26MV/m for the 7 cavities combined operation. The Quantum beam project accelerator was installed and started its commissioning. All of the STF development done in 2011-2012 will be summarized in this paper.
 
14:00-16:00 
THPS097
p.1192
J-PARC MR RF空胴の錆対策と現状
Anti-rust and current status of MR RF cavities in J-PARC

○長谷川 豪志,大森 千広,戸田 信,原 圭吾,吉井  正人(高エネルギー加速器研究機構),島田 太平,シュナーゼ アレクサンダー,田村 文彦,野村 昌弘,山本 昌亘(日本原子力研究開発機構)
○Katsushi Hasegawa, Chihiro Omori, Makoto Toda, Keigo Hara, Masahito Yoshii (KEK), Taihei Shimada, Alexander Schnase, Humihiko Tamura, Masahiro Nomura, Masanobu Yamamoto (JAEA)
 
J-PARC MRのRF空胴ではQ値調整のため金属磁性体コアをカットコアとして使用している。しかし、切断面の防錆コーティングは層間絶縁を保つためダイヤモンド研磨により鏡面仕上げされている事から難しく、また冷却水系が主電磁石と同系統だったため酸化銅により錆の進行が早められた。その結果、切断面の錆を要因として徐々に空胴のインピーダンスが低下し、最終的にはコアの内外周に印可される電圧によって損傷する事態につながった。 この錆問題を解決するため、ポリシラザンコーティングやRTVゴムによる切断面の保護、冷却水を主電磁石から分離した独立系の構築などを行ってきた。これらの対策の結果、その有効性が確認でき顕著なインピーダンス低下は見られなくなっている。 本発表では、これまで行ってきた防錆対策とその有効性について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS098
p.1196
cERL入射器空洞HOM coupler用高熱伝導N型フィードスルーの開発
The design of N-type feedthrough of HOM coupler for cERL injector cavity

○渡邉 謙,加古 永治,野口 修一,宍戸 寿郎(高エネルギー加速器研究機構)
○Ken Watanabe, Eiji Kako, Shuichi Noguchi, Toshio Shishido (High Energy Accelerator Research Organization)
 
KEKで開発が進められているcERL入射器用の超伝導加速空洞システムは2セル空洞が3台納められたクライオモジュールを用いて、電子銃で生成した10 mAのCWビームを5 MeV程度まで加速する。空洞あたりの加速電界は7.5-12.5 MV/mとなり、必要とする入力パワーは~30 kWとなる。入射器空洞の高次モード減衰器は同軸型HOM couplerを採用したことからクライオモジュール運転時のHOM coupler周りの発熱を抑制することが課題となっていた。加速モード励振時の発熱箇所はHOM coupler自身とHOMパワー取り出しのためのPick-upアンテナである。HOM couplerについてはTESLA-like空洞のHOM couplerをベースにRF設計を行い、結果、2011年6月の段階で運転電界の12.5 MV/mで問題となる発熱箇所はPick-upアンテナのみに絞られるに到った。 Pick-upアンテナはアルミナ製高周波窓を使用したN型フィードスルーであり、取り出し用のニオブ製アンテナは螺子で取り付けられる。また、内導体および外導体を構成する材料はKovarである。Pick-upアンテナの発熱を抑制するためには、伝熱特性を向上させる必要があるため、高周波窓の材料はそのままで、内導体、外導体およびニオブ製アンテナとの接合方法を改良したモデルを設計、製作し、実機空洞3台のたて測定と同時に試験を行った。本報告では、その試験結果を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS099
p.1201
ERLスポーク空洞モデルの高周波特性
RF Characteristics of Spoke Cavity Model for ERL

○沢村 勝,永井 良治,西森 信行,羽島 良一(原子力機構)
○Masaru Sawamura, Ryoji Nagai, Nobuyuki Nishimori, Ryoichi Hajima (JAEA)
 
我々はエネルギー回収型リニアック(ERL)とレーザーを組み合わせた核物質の非破壊核種分析検査システムを提案している。核保障措置および核セキュリティのためのシステムを構築するには加速空洞を小さくすることが重要であり、空洞のコンパクト化に有利なスポーク空洞を検討している。  スポーク空洞は空洞間隔を短くできることや、マイクロフォニックスによる空洞周波数の変動も小さいこと、セル間のカップリングが強く電界分布調整が容易なことなどERL加速空洞として用いる場合に利点が大きい。ERLに用いるためには加速モードの特性が優れているだけでなく、高調波モードによって起こるBBU(Beam Break Up)に対しても優れた特性を持つ必要がある。そこで空洞の高周波特性を調べるためにアルミニウム製のスポーク空洞モデルを試作し、基本波をはじめ高調波モード(HOM)の高周波特性を調べた。 スポーク空洞モデルは、スポーク、タンクおよびエンドノーズの3つの部分で構成されている。スポークがお互いに直交するように配置され、タンクは円筒形である。  各モードの無負荷Q値は計算の6~8割程度、周波数は-0.5MHz~6MHz差があった。HOMに関してもBBUが問題となりそうな特異なモードは特に見当たらなかった。
 
14:00-16:00 
THPS100
p.1204
金属磁性体コアの磁場中熱処理のためのKAPPA電磁石磁極形状の最適化
Iterative Kappa magnet Pole shape optimization for MA core annealing

○シュナーゼ アレクサンダー(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター),原 圭吾,長谷川 豪志(高エネルギー加速器研究機構 J-PARCセンター),野村 昌弘(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター),大森 千広(高エネルギー加速器研究機構 J-PARCセンター),島田 太平,田村 文彦(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター),戸田 信(高エネルギー加速器研究機構 J-PARCセンター),山本 昌亘(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター),吉井 正人(高エネルギー加速器研究機構 J-PARCセンター)
○Alexander Schnase (JAEA J-PARC Center), Keigo Hara, Katsushi Hasegawa (KEK), Masahiro Nomura (JAEA J-PARC Center), Chihiro Ohmori (KEK), Taihei Shimada, Fumihiko Tamura (JAEA J-PARC Center), Makoto Toda (KEK), Masanobu Yamamoto (JAEA J-PARC Center), Masahito Yoshii (KEK)
 
The accelerator cavities of J-PARC synchrotrons RCS and MR are loaded with Finemet FT3M cores. The performance of such MA (Magnetic alloy) cores can be improved with an external B-field during annealing. Such small size cores are available as FT3L. As the maker has no suitable magnet to operate while annealing large cores, we reused a magnet in the J-PARC Hadron hall for the trial production of large size cores similar to FT3L. This magnet was returned to the experiment group. The next setup uses the so-called Kappa magnet for a mass production scenario. The pole distance of the Kappa magnet is matched to the oven used for annealing. The pole surfaces are extended to reduce the current that gives the required B-field where the MA core is located in the oven. We describe a procedure, where the 2D magnet pole geometry is defined in Excel. An Excel macro calls the static field solver. The simulation results are processed and read back. This allows geometry studies, while keeping simulation results of magnet current and field distribution along the MA core consistent, although the magnet yoke is non-linear and several iterations are needed to find the current for the required B-field.
 
14:00-16:00 
THPS101
p.1209
マルチリング金属磁性体コア装荷高周波加速構造の開発
Development of an RF Accelerating Structure Loaded with Multi-Ring Magnetic Cores

○森田 裕一,影山 達也(高エネ研),加藤 一郎((株)R&K),山下 了(東大素粒子センター)
○Yuichi Morita, Tatsuya Kageyama (KEK), Ichiro Kato (R&K, Ltd.), Satoru Yamashita (ICEPP)
 
J-PARCのビームパワーを増強する一手段として、リング加速器の加速構造のアップグレードが必要とされている。例えば、RCS(Rapid-Cycling Synchrotron)の加速構造の長期運転における信頼性向上は重要課題の一つである。その解決策として、我々はマルチリング構造の金属磁性体コアモジュールを装荷した加速構造を提案し、原理実証機の開発を進めてきた。コアモジュールの構造は、異径のリングコア3環を同心円状に配置し、流路を彫り込んだ2枚のガラスエポキシ板で挟み込んで一体化したものである。従来の水冷式コアから発想を転換し、金属磁性薄帯を巻いたままの柔構造を熱応力緩和に活かすべく、コアにはエポキシ樹脂を含浸しない。そして、鉄系磁性合金であるコアの冷却は、フッ素系不活性冷媒による乱流域強制液冷方式とした。よって、コア表面の防錆コーティングも不要となる。当該加速構造の性能実証試験を行うべく、3式のコアモジュールが装荷された必要最小限の構成であるハーフギャップ加速構造の開発を進めている。それと並行して、性能実証試験用の高効率半導体増幅器も開発中である(ピーク電力60kW、最大duty 50%)。当該増幅器は、ドレイン電源電圧を出力電圧波形の包絡線に同期して変化させることにより直接AM変調を行う方式の完全D級高周波増幅器である。本発表ではハーフギャップ加速構造及び高効率半導体増幅器の開発状況について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS102
p.1213
表面波モードに着目したダクト形マイクロ波吸収体の高周波特性解析
RF Characteristics Analysis of Duct-Shaped Microwave Absorbers focusing on Surface Wave Modes

○竹内 保直(KEK加速器)
○Yasunao Takeuchi (KEK Accelerator)
 
マイクロ波領域で誘電損失特性を持つSiCセラミックスや、磁性損失特性を持つフェライト等を用いたダクト形マイクロ波吸収体は、ビームパイプHOM減衰器、ダクト形マイクロ波ダミーロード等の高周波要素部品として、加速器で広く応用されている。このような形状のマイクロ波吸収体の高周波特性は、吸収体内部及び周辺部(導波路内)を伝搬する表面波モードの性質の影響を強く受ける。本報告では、単純化したモデルを用いて、吸収体内部及び周辺部を伝搬する表面波モードの性質が与える、吸収体の高周波特性への影響を評価する。そして、その結果に基づいて、ダクト形マイクロ波吸収体の高周波特性を議論する。
 
14:00-16:00 
THPS103
p.1218
Lバンド加速管高電力試験
High Power Test of L-Band Accelerator Structure of superKEKB Injector Linac

○松本 修二,荒木田 是夫,池田 光男,柿原 和久,紙谷 琢哉,東 保男,肥後 寿泰(高エネ研)
○Shuji Matsumoto, Yoshio Arakida, Mitsuo Ikeda, Kazuhisa Kakihara, Yakuya Kamitani, Yasuo Higashi, Toshiyasu Higo (KEK)
 
superKEKB計画では、入射器(線形加速器)陽電子発生部での陽電子捕獲効率を稼ぐためにLバンド(1298MHz)加速管を導入する。2010年度より、RF源の40MW Lバンドクライストロンの開発と並行して、Lバンド進行波型加速管の開発製造を開始した。また、真空に保たれた立体回路を採用し、特に長尺部分には、アルミ製導波管を使用するなど、立体回路素子にもいくつかの開発項目があり、プロトタイプの製造も行ってきた。昨年度末より、LバンドRFユニット(地上部のRF源から地下トンネルに設置された加速管まで)の構築をKEKB入射器1セクター第4ユニット部で行い、現在はその試験運転を開始している。RF開発の現状とこれまでに得られた高電力試験の結果を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS104
p.1221
KEK 電子陽電子入射器における大電力高周波源の維持管理(Ⅱ)
Maintenance Activity of High-Power RF System in KEK Electron-Positron Linac(Ⅱ)

○東福 知之,今井 康雄,熊野 宏樹,馬場 昌夫,諸富 哲夫(三菱電機システムサービス(株)),荒川 大,明本 光生,片桐 広明,設楽 哲夫,竹中 たてる,中島 啓光,中尾 克巳,福田 茂樹,本間 博幸,松本 利広,松本 修二,松下 英樹,三浦 孝子,矢野 喜治,道園 真一郎(高エネルギー加速器研究機構)
○Tomoyuki Toufuku, Yasuo Imai, Hiroki Kumano, Masao Baba, Tetsuo Morotomi (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.), Dai Arakawa, Mitsuo Akemoto, Hiroaki Katagiri, Tetsuo Shidara, Tateru Takenaka, Hiromitsu Nakajima, Katsumi Nakao, Shigeki Fukuda, Hiroyuki Honma, Toshihiro Matsumoto, Shuji Matsumoto, Hideki Matsushita, Takako Miura, Yoshiharu Yano, Shinichiro Michizono (KEK)
 
KEK 電子陽電子入射器では、高周波源として約 60 台の大電力クライストロンを1997年~2010年まで年間約 7,000 時間の連続運転を行っていた。2011年3月11日の東日本大震災の後、1ヶ月半の復旧作業を経て 2 つのリングへの入射で必要となる 3 つのセクター(25台)を立ち上げて入射を開始、その後、残り 5 つのセクター(35台)に関しても RF コンディショニングを行い、異常が無い事を確認した。現在は東日本大震災の復旧作業及び SuperKEKB へのアップグレード作業から 2つのリングへの入射に必要となる 3 つのセクター(25台)のみ連続運転を行っている。 震災被害の影響によりクライストロン用電磁石電源を修理に出したところ 9台中 3台が絶縁不良になっているとの報告を受け、高周波源 60台分の電磁石電源の絶縁抵抗調査を実施。多数の電源が絶縁不良を起こしている事が判明した。 本稿ではクライストロン、サイラトロン、導波管高周波窓に関する統計、クライストロン用電磁石電源の維持管理等について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS105
p.1224
J-PARCリニアックにおけるアノード変調器の放電対策
Discharge Suppression for Anode Modulator in J-PARC Linac

○千代 悦司(原子力機構),川村 真人(高エネ機構),堀 利彦,佐藤 文明,篠崎 信一(原子力機構)
○Etsuji Chishiro (JAEA), Masato Kawamura (KEK), Toshihiko Hori, Fumiaki Sato, Shinichi Shinozaki (JAEA)
 
J-PARCリニアックには、絶縁油中に半導体スイッチや抵抗器等を実装したアノード変調器が20台稼働しており、2.4万時間を超えて運転されている。この間、変調器では放電が多数発生しており、加速器の稼働率低下の原因となっている。運転初期に発生した多くの放電は、変流器(CT)部での放電であり、その後、5千時間を超える頃から絶縁油中に設置した固体絶縁体の耐圧劣化による放電が多発した。初期の変調器では、高電界部の電極に絶縁強化のためテフロン管やFRP板を油中に挿入していた。しかしながら長時間運転すると固体絶縁対表面に炭化物が堆積し、耐圧が低下した。そこで、固体絶縁体を用いず絶縁油だけで十分な離隔距離が得られるよう部品等を再配置することで放電対策を行った。CT部の放電対策は、CT内径中の限られた空間で放電を防止するため、CTを貫通する電極をパイプ(外径20㎜)から20D2V同軸ケーブルの心線に交換し対応した。これは、電極の表面電界は20D心線のほうがパイプより高くなるが、心線を覆うポリエチレンの絶縁破壊強度が絶縁油より高いことに着目した対策である。また、変調器気中部では、コロナ放電によるオゾン等の生成物よるハンダ等の腐食が問題化した。この対策として、気中に設置したパルストランスを油中に移設することによりコロナ放電を防止した。発表では、その効果を含め報告を行う。
 
14:00-16:00 
THPS106
p.1227
SPring-8 1GeV線型加速器モジュレータと電子銃テストベンチの現状
Present status of gun test bench and modulator of SPring-8 1GeV linac

○小林 利明,馬込 保,出羽 英紀,鈴木 紳介,水野 明彦,谷内 努,柳田 謙一,花木 博文(公益財団法人 高輝度光科学研究センタ-)
○Toshiaki Kobayashi, Tamotsu Magome, Hideki Dewa, Shinsuke Suzuki, Akihiko Mizuno, Tsutomu Taniuchi, Kenichi Yanagida, Hirohumi Hanaki (SPring-8/JASRI)
 
SPring-8線型加速器のモジュレータは1997年から運転をしており、運転時間は約82000時間に達している。SPring-8線型加速器は2台の電子銃モジュレータと13台のクライストロンモジュレータで構成されており、top-up運転時に電子銃モジュレータ1台と2台のクライストロンモジュレータが待機号機になる。長期の運転でサイラトロン及びクライストロンが、故障・劣化が生じた場合、適宜交換修理を行っている。これまでのサイラトロン及びクライストロンの交換履歴を示し、経緯等について報告する。また、クライストロンモジュレータ安定化及び高信頼化のため、サイラトロンヒータ・リザーバ電源の直流電源化及びサイラトロンヒータ線の改良を行ってきている。その途中経過について報告する。また昨年の震災から関西でも節電が重要になっている。我々は節電のためクライストロンモジュレータの繰り返し10ppsから5ppsに落としているが、更に低繰り返しにしてモジュレータが安定な運転を行えるダブルトリガ運転(サイラトロンを2度通弧させPFN電圧の低下を防ぎ、2発目をビーム加速に用いる)を行うべく、モジュレータ1台で試験を行った。その試験結果について報告する。さらに昨年の報告で、電子銃テストベンチの構成などについて報告したが、電子銃テストベンチでY-845電子銃のエミッション試験等を行ったので報告する。
 
14:00-16:00 
THPS107
p.1231
モジュレーター高圧部品の寿命診断
Life-span Diagnosis about HV Components for the Klystron Modulators of KEKB Injector Linac

○本間 博幸,明本 光生,中島 啓光,設楽 哲夫,道園 真一郎(KEK)
○Hiroyuki Honma, Mitsuo Akemo, Hiromitsu Nakajima, Tetsuo Shidara, Shinichiro Michizono (High Energy Accelerator Research Organization)
 
KEKB入射器大電力クライストロン用モジュレーターは、トリスタン用モジュレーターの平均出力を2倍に改造して運転を始めて以来、14年を経過している。高圧整流電源ユニットの三相トランスやPFN充電チョークトランスは冷却を水冷方式に変更してはいるが、収納タンクはそのままのため、絶縁紙の厚みをあまり大きくは増やすことができなかった。そのため三相トランスのΔ-Δ結線タイプのものと充電チョークトランスは初期故障を起こし、設計の修正をしていた。しかし、Δ-Y結線タイプのものは多少耐圧設計に余裕があり問題なく運転できていたが、2011年になって故障が始めて起きた。これらの経験からKEKの運転条件における耐圧設計と寿命の関係がほぼ明らかになった。 一方モジュレーター出力部PFNの碍管タイプコンデンサーについては、KEKB計画以前から、初期に導入したものに設計上の不具合があり、現在のコンデンサーに置き換えた経緯がある。この際、寿命予測のために電圧加速試験を行ったが、高い電位傾度についての寿命は得られたものの、通常の運転値に近い電位傾度でのデータは中々得られなかった。しかし、これについても2010年に試験サンプルが1台故障したことにより寿命曲線を描くことができるようになった。 本報告ではこれらの高圧部品の寿命診断と、トランス絶縁油の経年変化測定について述べる。
 
14:00-16:00 
THPS108
p.1236
マルクス回路方式によるパルスドループ補償
Pulse droop compensation using a Marx circuit

○明本 光生 光生,本間 博幸,中島 啓光,設楽 哲夫,松本 利広,福田 茂樹(高エネルギー加速器研究機構),徳地 明(パルスパワー技術研究所)
○Mitsuo Akemoto, Hiroyuki Honma, Hiromitsu Nakajima, Tetsuo Shidara, Toshihiro Matsumoto, Shigeki Fukuda (KEK), Akira Tokuchi (PPJ)
 
大電力パルス電源では、パルスドループを抑えようとするとパルス幅が長くなるほど(msオーダ)コンデンサバンクの容量が大きくなり、電源の小型化、低コスト化が課題となる。これを解決する技術として、パルスドループを補償する回路を組み込む方法がある。この回路としてはLC共振回路を用いたバウンサー回路が実用化しているが、これよりも小型化、低コスト化、制御性に優れたマルク回路を応用した補償回路も有望である。現在、KEKではこの回路方式よるILC電源を開発中で、これについて報告する。
 
14:00-16:00 
THPS109
p.1240
J-PARリニアックRFQ2号機大電力試験用テストスタンド
High Power RF Test Station for RFQⅡat J-PARC Linac

○堀 利彦(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター),千代 悦司,篠崎 信一,佐藤 文明,森下 卓俊,近藤 恭弘(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター ),二ツ川 健太,福井 祐治,川村 真人,杉村 高志(KEK J-PARCセンター ),山崎 正義(三菱電機システムサービス(株))
○Toshihiko Hori, Etsuji Chishiro, Shinichi Shinozaki, Fumiaki Sato, Takatoshi Morishita, Yasuhiro Kondo (J-PARC Center Accelarator division, JAEA), Kenta Futatsukawa, Yuji Fukui, Masato Kawamura, Takashi Sugimura (J-PARC Center Accelarator division,KEK), Masayoshi Yamazaki (Mitsubishi Electeric System & Service Co. Ltd.)
 
J-PARCリニアックの324MHz-RFQ2号機は、実機のRFQ空洞で放電頻度が多発していた2008年末に製作することが決定し、2年の歳月を経て2011年3月初旬に納入された。その後、早い時期に大電力試験を行う予定であったが、3月11日に発生した東日本大震災の影響で、試験スケジュールはめどが立たない状況となった。震災後の高周波源グループは機器の復旧とビーム運転の再開を最優先課題として、システムの再立ち上げを9月より本格的に行い、12月初旬にはビーム試験が開始された。実機の運転が順調に推移するなか、残件となっていた大電力試験を早期に行うよう本テストスタンドの構築を2012年1月より本格的に開始した。ハード機器の整備、低電力システムの構築、高圧電源の試運転、クライストロンから空洞までの導波管接続などの作業を順次行い、4月下旬には空洞へ大電力RFを供給可能な環境を整備した。空洞サイドからの主な要求としては、パルス繰り返し数:~50pps、RFパルス幅:~650μs(連続可変)、最大供給電力:400kWなどであったが、5月下旬までの実稼働日数で19日間、高圧印加時間で約150時間の大電力試験を大きなトラブルなく消化した。  本報告では本テストスタンド構成機器の概略並びに、大電力試験時の運転状況や不具合発生時の対策などについて報告する。
 
14:00-16:00 
THPS110
p.1243
J-PARCリニアック用クライストロン電源システムの現状2012 - 震災復旧、高圧直流電源故障、エネルギー増強 -
PRESENT STATUS OF KLYSTRON POWER SUPPLY SYSTEMS FOR J-PARC LINAC 2012 - Recovery from Earthquake Disaster, HVDCPS Breakdown and Energy Upgrade -

○川村 真人(高エネ機構/J-PARC),千代 悦司,堀 利彦,篠崎 信一,佐藤 文明(原子力機構/J-PARC),福井 佑治,二ツ川 健太(高エネ機構/J-PARC),山崎 正義(三菱電機システムサービス(株)),佐川 隆,雪竹 光輝,小川 真一((株)日立製作所)
○Masato Kawamura (KEK/J-PARC), Etsuji Chishiro, Toshihiko Hori, Shin-ichi Shinozaki, Fumiaki Sato (JAEA/J-PARC), Yuji Fukui, Kenta Futatsukawa (KEK/J-PARC), Masayoshi Yamazaki (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Ryu Sagawa, Mitsuteru Yukitake, Shin-ichi Ogawa (Hitachi, Ltd.)
 
過去1年間のJ-PARCリニアック用クライストロン電源システムの運転状況について、東日本大震災による被災からの復旧、加速器の長期運転停止を招いた高圧直流電源の故障を中心に述べる。また、エネルギー増強に向けた作業の状況を報告する。 昨年、被災状況と当時の復旧状況を報告した。以後、建家・設備等は加速器運転の支障となる箇所の復旧、機器はクローバ用イグナイトロンの回復、震災で傾いた制御用19インチラックの高さ調整などを急ピッチで行った。その結果、当電源システムは昨年10月中旬に試運転、11月上旬に181MeV用全機器の終夜連続運転の再開を果たした。再開から今年5月末までの当電源システムの高電圧印加時間は4,100~4,900時間である。 今年3月下旬、高圧直流電源(HVDCPS)1号機の変圧整流器が故障した。絶縁油タンクを開けて内部を確認した結果、整流用ダイオードスタックの破損が見られたので予備品と交換した。試運転を行ったところ再度故障し、別のダイオードスタックが破損した。結局、当該変圧整流器は廃棄し、代りにHVDCPS11号機用を設置して運転を再開した。この影響で当電源システムは12日間停止、リニアックのビーム加速は14日間中断、ユーザーへの供給運転は17日間中断した。故障原因は現在も検討中である。 181MeVから400MeVへのエネルギー増強に向けた作業は昨年10月下旬から行われ、今年6月初めまでに配線作業、シーケンス試験、耐電圧試験等が行われた。
 
14:00-16:00 
THPS111
p.1248
SiC-JFETを用いたKEKデジタル加速器(DA)用小型パルス電源
A Compact Switching Power Supply Utilizing SiC-JFET for the KEK Digital Accelerator (DA)

○岡村 勝也(KEK),水島 俊也(日立製作所),高木 浩一(岩手大学),岩下 大器(日本アドバンストテクノロジー),和気 正芳,高山 健(KEK)
○Katsuya Okamura (KEK), Toshiya Mizushima (Hitachi, Ltd), Koichi Takaki (Iwate University), Taiki Iwashita (NAT), Masayoshi Wake, Ken Takayama (KEK)
 
誘導加速シンクロトロン(IS)とは従来の高周波加速空洞に代わり誘導加速セルを用いてイオンの加速を行うシンクロトロンであり、加速周波数に対する制約が小さいため低エネルギーから高エネルギーまで加速可能という特徴を持っている。我々のグループでは現在このISの特徴を生かした前段加速器不要の誘導加速シンクロトロンであるKEKデジタル加速器のコミッショニングを行っている。スイッチングパワーサプライ(SPS)はISを実現するためのキーデバイスの一つである。世界最初のISではSPSとしてSi-MOSFETをもちいていたが、現在我々はさらなる小型化、高性能化を目指すためSiC-JFETを用いたSPSを開発している。本論文ではプロトタイプSiC-JFETを用いたSPSの開発状況について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS112
p.1253
cERLにおける30kW CW IOT/クライストロン用電源の開発
Development of Power Supply for 30kW CW IOT/Klystron at the cERL

○中島 啓光,明本 光生,設楽 哲夫,本間 博幸,三浦 孝子,福田 茂樹,道園 真一郎(KEK),佐藤 和行,篠原 己拔,熊澤 伸彦(日本高周波)
○Hiromitsu Nakajima, Mitsuo Akemoto, Tetsuo Shidara, Hiroyuki Honma, Takako Miura, Shigeki Fukuda, Shinichiro Michizono (KEK), Kazuyuki Sato, Kibatsu Shinohara, Nobuhiko Kumazawa (Nihon Koshuha)
 
高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、次世代の放射光源としてエネルギー回収型リニアック(ERL)が検討されており、現在、ERLの実現に必要な要素技術の実証を目的としたコンパクトERL(cERL)の建設が進められている。cERLでは、入射器及び主リニアックの超伝導空洞を駆動するために1.3GHzのRF源が用いられ、30kWクラスのRF源としては、IOTまたはクライストロンが用いられる。電源としては、IOT負荷の場合は、最大電圧36kV、出力電流1.6A、クライストロン負荷の場合は、最大電圧20kV、出力電流2.5AのDC電源が必要とされる。本電源は、IOT、クライストロンのどちらが負荷となっても使用できるように開発され、高圧トランスの配線を切り替えることによって、それぞれの負荷に対応した出力を得られるようになっている。また、フローティング電源として、IOTとクライストロン共用のヒーター電源、IOT用のイオンポンプ電源とグリッド電源が筐体内に設置される。本電源は、すでに30kW CWクライストロンの試験に使用され、その動作が確認されており、現在、20kW IOTの試験に使用するための準備が進められている。
 
14:00-16:00 
THPS113
KEK-STF量子ビーム実験における高周波源
RF Source for Quantum Beam Experiment at KEK-STF
○松本 利広,荒川 大,明本 光生,片桐 広明,設楽 哲夫,竹中 たてる,中尾 克己,中島 啓光,福田 茂樹,本間 博幸,松下 秀樹,三浦 孝子,矢野 喜治,道園 真一郎(高エネ研),Omet Mathieu(総研大)
○Toshihiro Matsumoto, Dai Arakawa, Mitsuo Akemoto, Hiroaki Katagiri, Tetsuo Shidara, Tateru Takenaka, Katsumi Nakao, Hiromitsu Nakajima, Shigeki Fukuda, Hiroyuki Homma, Hideki Matsushita, Takako Miura, Yoshiharu Yano, Shinichiro Michizono (KEK), Mathieu Omet (Sokendai)
 
「超伝導加速器によつ次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」プログラムとしてKEK-STFでは量子ビーム実験用ビームラインを建設、2012年2月末からビーム運転が始まった。この量子ビーム実験において、LバンドフォトカソードRF電子銃用に5MWクライストロン、2台の超伝導空洞へはModulating Anode クライストロンによる高周波源が用いられ、各々のRF出力はフィードバックにより制御がなされている。本報告では、これらRF源の現状について報告を行う。
 
14:00-16:00 
THPS114
p.1256
レーザー誘電体加速に向けたファイバーレーザー開発
Fiber Laser Development for Dielectric Laser Accelerator

○松村 陽介,小山 和義,アイミアディング アイミデュラ,上坂 充(東大),吉田 光宏,周 翔宇(高エネ研)
○Yosuke Matsumura, Kazuyoshi Koyama, Aimidula Aimierding, Mitsuru Uesaka (University of Tokyo), Mitsuhiro Yoshida, Zhou Xiangyu (KEK)
 
本研究室は直径マイクロサイズ電子ビーム小型加速器の開発を目指している.この小型加速器はレーザー誘電体加速によって電子を加速する.レーザー光の電場による加速では,数100MeV/mの加速電場が可能となり,加速管長が数mm程度となる.ファイバーレーザーは出力の安定化と位相制御が容易であり,本研究では直径マイクロサイズ電子ビーム小型加速器のレーザー開発を最終目標に,現在チタン・サファイアTWレーザーオシレーター用超短パルスファイバーレーザーの開発を行っている.ファイバーレーザーの利得媒質のYbは発振波長が1064nmでチタン・サファイアの発振波長と異なるため,非線形フォトニッククリスタルファイバー(Photonic Crystal Fiber: PCF)によってスパーコンティニューム(SuperContinuum:SC)光を発生させて波長変換を行う.本研究ではYbファイバーレーザー共振器,増幅器の製作と非線形PCFによるSC光発生に成功した.共振器と増幅器からは中心波長1060nm,パルス幅860fs,繰り返し周波数60MHz,平均出力6.9Wのパルスが得られ,SC光により波長をおよそ930~1080nmまで広げることが出来た.現在はチタン・サファイアの利得波長におけるSC光の位相状態の計測と光パラメトリック増幅に向けて調整を続けている.ポスター発表時には最新の状況を説明する.
 
14:00-16:00 
THPS115
p.1259
次世代小型高輝度光子ビーム源の為のデジタルフィードバックシステムの開発
Development of the digital feedback system for a next-generation small-size high-brightness photon beam source

○吉玉 仁,赤城 智哉,栗木 雅夫,高橋 徹,田中 龍太(広島大),荒木 栄,浦川 順治,大森 恒彦,奥木 敏行,清水 洋孝,照沼 信浩,舟橋 義聖,本田 洋介(高エネ研),坂上 和之,鷲尾 方一(早稲田大)
○Hitoshi Yoshitama, Tomoya Akagi, Masao Kuriki, Tohru Takahashi, Ryuta Tanaka (Hiroshima Univ.), Sakae Araki, Junji Urakawa, Tsunehiko Omori, Toshiyuki Okugi, Hirotaka Shimizu, Nobuhiro Terunuma, Yoshisato Hunahashi, Yosuke Honda (KEK), Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio (Waseda Univ.)
 
レーザーと電子ビームの逆Compton散乱を利用した次世代小型高輝度光子ビーム源開発を行っている。逆Compton散乱を用いれば従来の放射光施設に比べ、光子ビーム源の小型化が可能であり、この反応で生成する光子ビームの輝度上げるために、レーザー蓄積共振器を用いてレーザーの強度を増加させる。この反応による安定した光子ビームを得るためには電子加速器、レーザー共振器そして外部共振器のそれぞれについて同期のとれた制御を行う必要があり、その為のデジタルフィードバックシステムの開発を行っている。本講演ではこれまでの開発状況について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS116
p.1262
Design of Laser Driven Dielectric Accelerator for Basic Radiation Biology Researches
○Aimierding Aimidula, Kazuyoshi Koyama, Yosuke Matsumura, Mitsuru Uesaka (Univ. Tokyo), Mitsuhiro Yoshida, Takuya Natsui (KEK)
 
We are aiming at application of photonic crystal accelerator to on-chip electron beam source for fundamental radiation biology. Its aspects of nm-beam-size and attoseconds-short-pulse has a potential to be used for microscopic and ultra-fast analyses of damage and repair of radiation-irradiated DNA and chromosome. Output electron energy, beam intensity and device-size would be MeVs, fCs and a few cm, respectively. Here we present our first results of numerical analysis for design of the accelerator. We are determining the dimensions of dual grating based acceleration structure. We have also analytically estimated required laser parameters. Finally, we propose a system consisting of electron injector and multi-stage accelerator structures, which is really a miniaturized optical linac.
 
14:00-16:00 
THPS117
p.1265
量子ビーム STF 衝突実験におけるレーザー蓄積装置の開発
Laser Stacking Cavity Development for Quantum Beam STF Collision Experiment

○清水 洋孝,Alexander Aryshev(高エネルギー加速器研究機構 ATF),東 保男,本田 洋介,浦川 順治(高エネルギー加速器研究機構)
○Hirotaka Shimizu, Aryshev Alexander (KEK-ATF), Yasuo Higashi, Yosuke Honda, Junji Urakawa (KEK)
 
量子ビーム基盤技術開発プログラムでは、「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」として超伝導高周波加速器技術とレーザーパルス蓄積技術の融合によって、従来に比べ著しくダウンサイジングを図った高輝度X線発生装置の開発研究を行っている。これはKEK-STF棟内に建設された、L-band 9-cell の超伝導加速空洞を含む直線型電子加速器で40MeVにまで加速された電子ビームと、laser 蓄積装置(laser cavity)内で高強度化されたlaser pulseとを衝突させる事により、数十keV程度の硬X線を毎秒10^10個(10% Bandwidth)程度生成する事を目標とした実験である。 より高増倍率・高安定なlaser 蓄積装置を実現するために、現在我々は平面状に4枚の鏡を配置した光共振器の作成に取り組んでいるが、これまでの光共振器を使った電子線とlaserとの衝突実験に比べて、生成される線量を増加させるべく衝突角度を0度にした正面衝突の実現や、共振器を構成する各鏡をそれぞれ独立にアクチュエータで制御を行う方式を取り入れる等の特徴がある。また単に高反射率の鏡を「使う」だけではなく、共振器特有の収差の影響を取り除くために、最適な形状の鏡の「自作化」にも取り組んでいる。この報告では上で述べたlaser蓄積装置の開発状況について詳しく報告する。
 
14:00-16:00 
THPS118
p.1270
Compact Four Mirror Pulsed Laser Wire System for Quick Measurement of Electron Beam Profile
○Arpit Rawankar (The Graduate University for Advanced Studies), Hirotaka Shimizu, Junji Urakawa, Yousuke Honda, Masafumi Fukuda, Alexander Aryshev (High Energy Accelerator Research Organization [KEK],Tsukuba), You Yan (Tshinghua University, Beijing, China), Tomoya Akagi (Hiroshima University, Hiroshima), Kazuyuki Sakaue (Waseda University, Tokyo), Sakae Araki, Nobuhiro Terunuma (High Energy Accelerator Research Organization [KEK],Tsukuba)
 
A compact prototype four mirror optical cavity is being constructed at KEK-ATF to measure a low-emittance electron beam in the damping ring.In order to achieve the desire value of aspect ratio, distance between adjacent plane mirror and concave mirror are kept very less using special mirror alignment scheme. Total cavity length of four mirror resonator is matched according to pulse repetition of mode locked infra-red laser oscillator. Pulse repetition rate of mode locked laser oscillator is 714 MHz. Electron beam inside ATF Damping Ring has repetition rate of 357 MHz. At present two mirror CW laser wire system is used inside damping ring. Minimum beam waist is obtained in sagittal plane using IR pulsed laser. Electron beam scanning time can be reduced using such type of compact laser wire system and with very small beam size effective electron-photon collision can be observed. Minimum beam waist gets reduced by factor of 2, if green pulsed laser oscillator is used. We report the development and performance studies of such type of compact four mirror laser wire system.
 
14:00-16:00 
THPS119
p.1275
KU-FELにおけるフォトカソードRF電子銃入射用のマルチバンチレーザの開発
Development of multi-bunch laser system for photocathode RF gun in KU-FEL

○島橋 享兵(京都大学エネルギー理工学研究所),黒田 隆之助(産総研),全 炳俊,紀井 俊輝,奥村 健祐,柴田 茉莉江,井門 秀和,Konstantin Torgasin,Negm Hani,Mohamed Omer,吉田 恭平,崔 龍雲,金城 良太,増田 開,大垣 英明(京都大学エネルギー理工学研究所)
○Kyohei Shimahashi (Institute of Advanced Energy, Kyoto University), Ryunosuke Kuroda (AIST), Heishun Zen, Toshiteru Kii, Kensuke Okumura, Marie Shibata, Hidekazu Imon, Torgasin Konstantin, Hani Negm, Omer Mohamed, Kyohei Yoshida, Yong-woon Choi, Ryota Kinjo, Kai Masuda, Hideaki Ohgaki (Institute of Advanced Energy, Kyoto University)
 
京都大学エネルギー理工学研究所では、エネルギー科学への応用を目指して、中赤外自由電子レーザ(KU-FEL)の開発を行っている。現在、S-band4.5空洞熱陰極高周波電子銃、進行波型加速管を用いて、40 MeVまでの電子ビームエネルギーを得ることができ、5~15 umの波長域で発振することに成功している。 我々はさらに安定かつ高出力なFELパワーを得るために、BNL型1.6空洞フォトカソードRF電子銃の導入を予定しており、電子銃の製作がすでに完了し、入射用のマルチバンチレーザの開発を行っている。 マルチバンチレーザの目標値として、マクロパルス中のミクロパルス数300以上、ミクロパルスの繰り返し周波数89.25 MHz、マクロパルスの繰り返し周波数1~10 Hz、ミクロパルスあたりのエネルギーは紫外光に波長変換後で10 uJを目指している。モードロックレーザ出口から1 m先の点において1時間測定したところ、レーザビームの位置が100 um程度、角度が1 mrad程度のドリフトがあることがわかった。そこで、我々はビームアライメントシステムの導入を行うことにより、上記のドリフトを10 um以下、角度を10 urad以下に抑えることに成功した。また、赤外光でのミクロパルスあたりのエネルギーが100 uJを目標値として、4パスでのマルチパスアンプシステムの構築を行った。
 
14:00-16:00 
THPS120
p.1279
cERL電子銃用レーザーシステムの開発
Development of a Photo-injector Laser System for KEK ERL Test Accelerator

○本田 洋介(KEK)
○Yosuke Honda (KEK)
 
KEKでは将来の放射光源にむけてERL試験加速器の建設が行われている。ERLのビーム性能は電子銃できまるが、光陰極を励起するレーザー光が必要になる。レーザー光の特徴は、高繰り返し、高平均出力であるが、ファイバ増幅器と共振器型波長変換を使用したシステムを設計、試験している。
 
14:00-16:00 
THPS121
p.1282
レーザーコンプトン散乱ガンマ線源用フラックスモニターの開発
Development of Flux Monitor for LCS Gamma-ray Source

○北川 靖久,堀川 賢,橋本 智,天野 壮,宮本 修治(兵庫県立大高度研),濱田 洋輔(高輝度光科学研究センター),宇都宮 弘章,山県 民穂(甲南大学),嶋 達志(阪大RCNP),早川 岳人(原子力機構)
○Yasuhisa Kitagawa, Ken Horikawa, Satoshi Hashimoto, Sho Amano, Shuji Miyamoto (LASTI,Univ. of Hyogo), Yosuke Hamada (JASRI), Hiroaki Utsunomiya, Tamio Yamagata (Konan Univ.), Tatsushi Shima (RCNP,Osaka Univ.), Takehito Hayakawa (JAEA)
 
ニュースバル放射光施設のビームライン(BL01a)では蓄積リング内の高エネルギー電子とレーザー光との相対論的コンプトン散乱によりMeV領域のガンマ線が生成できる。 現在、BL01ではNd:YVO4レーザー、CO2レーザー、それにErファーバーレーザーの3レーザーを用いて、1~36MeVのレーザーコンプトン散乱ガンマ線を連続的に発生することができ、様々な実験に合わせたエネルギー選択ができる。 しかし、CO2レーザーによるガンマ線利用時にレーザーの出力安定性が少々悪いため、発生するガンマ線のフラックスもそれに伴い多少変動してしまう。これの対応策として、フラックスモニターを検討中である。フラックスモニターはターゲットにプラスチックを用い、ターゲットから90°方向にガンマ線検出器を設置してある。ターゲットに入射したレーザーコンプトンガンマ線のうち、約5%が立体角4πにコンプトン散乱され、残り95% は透過する。この5%の散乱ガンマ線を90°方向において精度良く測定することで、常にフラックスの変動をモニターすることができる。このフラックスモニターはイメージング実験だけではなく、磁気コンプトン散乱実験やその他CO2レーザーによるガンマ線発生実験の際には大いに活用できる。 今回の発表ではフラックスモニターの結果などについて報告する。
 
14:00-16:00 
THPS122
p.1285
群馬大学重粒子線医学センターにおけるスキャニング照射システムの開発
Development of scanning irradiation system in Gunma University Heavy-Ion Medical Center

○竹下 英里,金井 達明,山田 聰,遊佐 顕,田代 睦,島田 博文,鳥飼 幸太,久保田 佳樹,松村 彰彦,川嶋 基敬(群馬大学重粒子線医学研究センター),原田 久,吉田 克久,花川 和之,本田 泰三(三菱電機株式会社),日向 猛(九州国際重粒子線がん治療センター)
○Eri Takeshita, Tatsuaki Kanai, Satoru Yamada, Ken Yusa, Mutsumi Tashiro, Hirofumi Shimada, Kota Torikai, Yoshiki Kubota, Akihiko Matsumura, Motohiro Kawashima (GHMC), Hisashi Harada, Katsuhisa Yoshida, Kaushi Hanakawa, Taizo Honda (MELCO), Takeshi Himukai (HIMAT)
 
スキャニング照射法は、従来の拡大照射法では実現できないビーム利用効率ほぼ100%を可能にし、ボーラスやコリメータといった患者毎に制作しなければならないものが一切必要にならず、全体の治療期間を短縮化する際にも多大な効果をもたらす次世代の照射方式である。2011年春には、放射線医学総合研究所において日本で初めてハイブリッドスキャニング照射方式を用いた炭素線がん治療が開始された。そこで当学センターでは、研究を主目的として建設された治療室Dにスキャニング照射システムを設置し、普及型スキャニング照射システムの基礎的な研究開発を進めている。スキャニングのような動的照射法においては、加速器から供給されるビーム品質が直接的に照射野形成の健全性に影響を及ぼすため、これらの性能向上は必須であるが、普及型炭素線シンクロトロンを用いた実検証は未だ不十分である。具体的な例として、出射されたビームスピルの時間構造や位置変動による照射野への影響が挙げられ、こういった影響を出来る限り軽減する為に加速器の調整及びビーム試験を行った。また、スキャニング照射を統べる制御システムを新たに構築し、実際にビームを使って照射野を形成した上で平坦度等の検証を行った。
 
14:00-16:00 
THPS123
p.1288
二重走査法を採用した粒子線治療用回転ガントリーの光学設計
Optics Design of Rotating Gantry for Paticle Therapy

○山田 貴啓,野田 文章,藤高 伸一郎((株)日立製作所)
○Takahiro Yamada, Fumiaki Noda, Shinichiro Fujitaka (Hitachi, Ltd.)
 
スキャニング照射が可能な粒子線治療用回転ガントリーでは,ビーム走査電磁石を偏向電磁石の上流に配置することにより回転半径を低減することができるが,一方,偏向電磁石内のビーム通過領域が増大するため偏向電磁石が大型化する.ビーム軌道変位の節に配置した2台のビーム走査電磁石を用いてビームを一方向に走査することで,偏向電磁石内のビーム通過領域を低減するビーム走査方法(二重走査法)を考案した.二重走査法では,偏向電磁石を挟んで2台の走査電磁石を配置し,走査電磁石間の位相差をπ[rad]に調整する.二重走査法を採用し,偏向電磁石に超伝導電磁石を用いた炭素線治療用回転ガントリーのビーム光学系を設計した.この光学系では,ガントリー軌道面内の走査方向に二重走査法を採用し,ガントリー軌道面に垂直な方向には1台のビーム走査電磁石を用いた従来のビーム走査方法を用いる.また,二重走査に用いる2台のビーム走査電磁石間の位相差調整のために,ビーム走査電磁石間に四極電磁石を配置し,また偏向電磁石を四極磁場の励磁が可能な機能結合型とした.光学設計したガントリーの大きさは,回転半径6m,回転軸方向12mである.本光学系では,両方向ともに従来走査を用いた場合と比較して,偏向電磁石内の最大ビーム通過領域の面積を約30%に低減できる.
 
14:00-16:00 
THPS124
p.1291
早稲田大学フォトカソードRF-Gunシステムと応用研究の現状報告
Status report of the photocathode RF-Gun system and application researches at Waseda University

○川内 洋平,保坂 勇志,坂上 和之,坂上 和之,山本 隆之,吉田 靖史,鷲尾 方一(早大理工研),浦川 順治,照沼 信浩,早野 仁司(高エネ研),黒田 隆之助(産総研),柏木 茂(東北大光理研)
○Yohei Kawauchi, Yuji Hosaka, Kazuyuki Sakaue, Mizuki Sakamoto, Takayuki Yamamoto, Yasufumi Yoshida, Masakazu Washio (RISE), Junji Urakawa, Nobuhiro Terunuma, Hitoshi Hayano (KEK), Ryunosuke Kuroda (AIST), Shigeru Kashiwagi (RCEPS)
 
早稲田大学理工学研究所(RISE)では、ピコ秒パルスレーザーとCs-Teをフォトカソードに用いたRF-Gunを用いて、高品質電子ビームの生成とその電子ビームを利用した応用研究を行っている。我々の用いているフォトカソードRF-Gunシステムは全長約2.5mと非常に小型でありながら、約5MeVのエネルギーと低エミッタンスの電子ビームを得ることができる。また、レーザーシステムに組み込まれているLN変調器により、シングルバンチ電子ビームとマルチバンチ電子ビームを用途に応じて使い分けることが可能になっている。 現在応用研究としては主に、放射線化学反応初期過程の解析を目的としたパルスラジオリシス研究と、放射線を利用したガン治療のためのマイクロビーム生成研究を行っている。パルスラジオリシス研究に関しては、分析光源としてXeフラッシュランプを用いたナノ秒分解能システム、スーパーコンティニウム(SC)光を用いたピコ秒分解能システムの2種類のシステムを導入しており、それぞれにおいてシステムの改善に成功している。マイクロビーム生成に関しては、過去にマイクロX線の生成実験を行ったが線量が不足していると考えたため、高い線量が容易に得られる電子線でマイクロビーム生成を行い、表面付近において高いPV比を得ることに成功した。 本講演では、早稲田大学フォトカソードRF-Gunシステム・応用研究の現状と今後の展望を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS125
p.1295
低温ガラス状アルコール中での溶媒和電子生成過程のパルスラジオリシスによる研究
Pulse Radiolysis Study of Solvated Electron Formation in Glassy Alcohols at Low Temperature

○法澤 公寛,樋川 智洋,近藤 孝文,菅 晃一,楊 金峰,吉田 陽一(阪大産研)
○Kimihirop Norizawa, Tomohiro Toigawa, Takafumi Kondoh, Koichi Kan, Jinfeng Yang, Yoichi Yoshida (ISIR, Osaka University)
 
原子力発電所の冷却水や放射線医療などでは水の放射線化学が重要である。水やアルコールに代表される極性溶媒に放射線が照射されるとイオン化によって電子が生成し、電子は周囲の溶媒分子を配向させて溶媒和して安定化することが知られている。我々はフェムト秒パルスラジオリシス(最高時間分解能240fs)を開発し、水中の水和電子の生成過程(~1ps)やアルコール中の溶媒和電子生成過程(~10ps)の観測に成功した。また溶媒和電子の前駆体である溶媒和前電子の観測にも成功した。しかながら、イオン化された電子が溶媒和前電子を経て溶媒和電子へ変化する過程は未だ明らかになっていない。そこで、アルコールを融点以下に冷却し、粘性の高いガラス状態にすることで、ナノ秒時間分解能で光吸収スペクトルの時間挙動を詳細に測定することに成功した。低温アルコールでの光吸収スペクトルの時間挙動を詳細に解析し、溶媒和前・溶媒和電子の生成メカニズムについてエタノールとプロパノールについて報告する。
 
14:00-16:00 
THPS126
p.1298
液体アルゴンTPC検出器用液化循環システムの開発
Development of Liquefaction circulation system for Liquid-Ar TPC detector

○牧 宗慶,笠見 勝祐,丸山 和純,山野井 豊,長谷川 琢哉,春山 冨義,西川 公一朗(高エネルギー加速器研究機構),田中 雅士(早稲田大学)
○Muneyoshi Maki, Katsuyu Kasami, Takasumi Maruyama, Yutaka Yamanoi, Takuya Hasegawa, Tomiyoshi Haruyama, Koichiro Nishikawa (KEK), Masashi Tanaka (Waseda University)
 
液体アルゴンTPC検出器は、将来の「レプトンセクターのCPの破れ」と「核子崩壊」、「暗黒物質探索」などの物理を大型検出器で行うのに非常に有望な検出器である。その為、将来は100ktonクラスの液体アルゴンTPCを建設するための技術開発を250Lサイズの液体アルゴンTPC検出器を製作し行っている。 検出器に関するR&D要素として、(1) 液体アルゴンを純化させる為の高効率な循環系統の確立、(2) 液体アルゴンの長時間にわたる高純度保持、 (3)二相式検出器として用いる場合の仕様の洗い出し、(4)大型容器の為の熱侵入量を抑えた構造、などが挙げられる。 特に液体アルゴンを純化させる為の高い効率の循環系の技術は重要となる。液化-循環システムは、250Lサイズ液体アルゴン容器(以下250容器)内で蒸発したガスアルゴンを純化した後、別に設けた液化装置内で液化して、純化した液体アルゴンを再度250容器に戻すシステムである。本発表では、250Lサイズのクライオスタットに増設した液化-循環システムとその運転結果を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS127
商用陽子線加速器を利用した小型中性子線源の開発
Development of small neutron sources using commercial proton accelerator
○広田 克也,山形 豊,大竹 淑恵,王 盛(理研),永江 知文,岩下 芳久,藤岡 宏之,廣瀬 昌憲(京大),鬼柳 善明,古坂 道弘,木野 幸一(北大)
○Katsuya Hirota, Yutaka Yamagata, Yoshie Otake, Sheng Wang (RIKEN), Tomofumi Nagae, Yoshihisa Iwashita, Hiroyuki Fujioka, Masanori Hirose (Kyoto Univ.), Yoshiaki Kiyanagi, Michihiro Furusaka, Koichi Kino (Hokkaido Univ.)
 
現在、理化学研究所及び京都大学において、商用の小型陽子線加速器を利用した小型中性子線源の開発を進め、中性子ビームの利用を進めようとしている。加速器から発するエネルギー 3.5ー7 MeVの陽子を用い、Beターゲットとの反応により発生する中性子を、中性子減速体により熱中性子あるいは冷中性子にしてビームとして取り出す。この中性子源から発生する中性子ビームは、中性ラジオグラフィや小中角散乱などの測定の他、検出器開発や光学素子などの各種中性子デバイスの開発にも利用できると考えている。 このような小型の中性子源を利用することで、大学においては教育や大規模マシンタイムの予備実験として、企業や公設試験場においては製品に近いところでの利用が可能になると期待している。大規模中性子源と比べて強度は弱いが、身近で手軽に使える装置として相補的な役割を果たすことが可能である。
 
14:00-16:00 
THPS128
p.1301
ダブルデッカー電子ビームを用いたパルスラジオリシスの研究
Pulse radiolysis using double-decker electron beam

○菅 晃一,近藤 孝文,楊 金峰,小方 厚,樋川 智洋,法澤 公寛,小林 仁,吉田 陽一(阪大産研)
○Koichi Kan, Takafumi Kondoh, Jinfeng Yang, Atsushi Ogata, Tomohiro Toigawa, Kimihiro Norizawa, Hitoshi Kobayashi, Yoichi Yoshida (ISIR, Osaka Univ.)
 
パルスラジオリシスの時間分解能は、励起用電子ビームと分析光のパルス幅、両者の同期時間ジッター、サンプルセルにおける両者の速度差に依存し、放射線誘起による反応過程の全貌を解明するためには、時間分解能の向上が不可欠となる。そこで、本研究では、励起電子ビームと分析光の同期時間ジッターを低減するための、ダブルデッカー電子ビームを用いたパルスラジオリシス開発について報告する。 ダブルデッカー電子ビームとは、時間・空間的に分離した2つの電子ビームであり、フォトカソードRF電子銃へ2つのパルス紫外光を入射することにより得られた。2つの電子ビームの時間・空間的間隔は、それぞれ、4.2 ns・4.7 mmであり、エネルギーは、≒30 MeVであった。2つの電子ビームの片方をチェレンコフ放射による可視域の分析光に変換し、片方のビームを励起電子ビームとして利用した。その結果、本手法により、レーザーからの分析光パルスを使わない新しいパルスラジオリシスを実現した。水和電子の過渡光吸収を観測し、時間分解能に相当する10-90%の立ち上がり時間は8.6 psと得られた。また、チェレンコフ光は白色であるため、帯域通過フィルタを用いた中間活性種のスペクトル測定への応用も示唆した。今後、チェレンコフ光の最適化等によりS/Nを改善するとともに、フェムト秒電子ビームによるフェムト秒分析光発生、薄いサンプルの利用により時間分解能を向上する。
 
14:00-16:00 
THPS129
p.1305
9.3GHz Xバンド3.95MeV,950keVライナックX線発生装置のビーム性能評価
Evaluation of 3.95MeV and 950keV X-ray source based on 9.3GHz X-band linac

○土橋 克広,上坂 充,藤原 健,金 明(東大原子力専攻),草野 穣一,中村 直樹,山本 昌志((株)アキュセラ)
○Katsuhiro Dobashi, Mitsuru Uesaka, Takeshi Fujiwara, Ming Jin (UTNS), Joichi Kusano, Naoki Nakamura, Masashi Yamamoto (Accuthera Inc.)
 
我々は9.3GHzのマグネトロンをRF源としたXバンドライナックをベースとしたX線発生装置を開発している。 3.95MeVX線発生装置は、主にコンクリート製の橋梁の非破壊検査を主眼に置いて開発を行っている、また、950keVX線発生装置は、 化学プラントでの配管の非破壊検査が主な目的であるが、鋼製橋梁の検査も可能であると考えている。  950keVX線発生装置一号機の経験を踏まえ、加速管構造は、アキシャルカップリングからサイドカップリングに変更した。  両X線発生装置は東京大学大学院工学系研究科原子力専攻内のブランケット棟医療用小型ライナック室にてビーム発生試験が行われ、ビームエネルギーやビームププロファイル及びX線発生量の評価も行い、X線線量は設計値に達することを確認した。950keVX線発生装置一号機のようなビーム不安定性は無く安定にビームが加速されており、サイトカップリングへの変更が効果的であったことが確認できた。
 
14:00-16:00 
THPS130
p.1308
核物質非破壊検知用レーストラック型マイクロトロン
Racetrack Microtron for Nondestructive Nuclear Material Detection System

○堀 利匡,金城 良太,紀井 俊輝,大垣 英明,全 炳俊,オマル モハマド(京大エネ研),大東 出,小滝 秀行,神門 正城(原研関西),羽島 良一,早川 岳人(原研東海),酒井 文雄(住重田無)
○Toshitada Hori, Ryota Kinjo, Toshiteru Kii, Hideaki Ohgaki, Heishun Zen, Mohamed Omer (IAE, Kyoto Univ.), Izuru Daito, Hideyuki Kotaki, Masaki Kando (JAEA, Kansai), Ryouichi Hajima, Takehito Hayakawa (JAEA, Tokai), Fumio Sakai (SHI, Tanashi)
 
安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策技術等を実用化するプログラム「ガンマ線による核物質非破壊検知システム」の開発が平成22年度から5年計画で進められている。システムの実用化には高輝度かつ小型の逆コンプトン散乱ガンマ線発生装置の開発が不可欠であり、現在、原研関西研に設置されている電子エネルギー150 MeVのレーストラック型マイクロトロンを利用して基礎実験が行われている。 実用化に際しては、電子エネルギーを少なくとも220 MeV以上に増強する必要があり、フォトカソードRFガンを備えたこの150 MeVマイクロトロンをベースにして、より高エネルギーのマイクロトロンの設計が検討されている。ここでは幾種類か考えられるマイクロトロンの基本案を示し、その利害得失や得られるビームの特性について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS131
p.1311
電子線形加速器を用いた超高感度アスベスト検出法の検討
High Sensitivity Detection of Asbestos by Using Electron Linear Accelerator

○谷口 良一,伊藤 憲男,小嶋 崇夫,奥田 修一(大阪府大放射線)
○Ryoichi Taniguchi, Norio Ito, Takao Kojima, Shuichi Okuda (Radiation Reseach Center, Osaka Prefecture University)
 
アスベストには、微量のウラン・トリウムが含まれており、これが他の天然、人工繊維との大きな違いである。この性質を利用すれば、桁違いに高感度かつ信頼性の高いアスベスト検出が可能となるが、アスベストの繊維構造を放射線画像で認識するには、放射線強度が弱すぎるという問題があった。そこで我々は、電子線形加速器から出力される高エネルギーX線をアスベスト模擬試料に照射し、試料に含まれる微量のウラン・トリウムからの放射線を増幅する方法の検討を行った。X線照射によって、ウラン・トリウムの(γ、n)反応および光核分裂反応が誘起され、短寿命のγ線が放出されるようになり放射線強度が増幅される。放射線画像の測定には、イメージングプレート(IP)を用い、低温、低バック環境で照射測定を行った。その結果、増幅度は電子線エネルギーに極めて敏感であるが、有望な測定手段であることが明らかとなった。
 
14:00-16:00 
THPS132
p.1315
パラメトリックX線源を用いたXANES測定における改善
Improvement in XANES Measurement Using Parametric X-ray Source

○稲垣 学,野上 杏子,早川 恭史,早川 建,田中 俊成,中尾 圭佐,境 武志(日本大学量子科学研究所電子線利用研究施設),佐藤 勇(日本大学大学院総合科学研究科)
○Manabu Inagaki, Kyoko Nogami, Yasushi Hayakawa, Ken Hayakawa, Toshinari Tanaka, Keisuke Nakao, Takeshi Sakai (Laboratory for Electron Beam Research and Application (LEBRA), Nihon University), Isamu Sato (Advanced Research Institute for the Sciences and Humanities (ARISH), Nihon University)
 
日本大学電子線利用研究施設(LEBRA)の新しいX線源であるパラメトリックX線放射(PXR)発生装置は、2枚のSi結晶を使用してエネルギー可変な単色X線ビームを供給している。第一結晶はターゲットでありX線の放射源、第二結晶はX線輸送の役割を果たしている。LEBRA-PXRシステムで得られるX線ビームは、コヒーレンスが良く、水平方向に一次関数的なエネルギー(波長)分散があるため、波長分散型X線吸収微細構造(DXAFS)測定や位相コントラストイメージングに応用されている。 XAFS測定を行うにあたり、特にX線吸収端近傍構造(XANES)においてはスペクトル分解能が重要である。LEBRA-PXRシステムで得られるスペクトル分解能を決める要因は、ターゲット結晶面、ターゲット結晶上における電子ビームサイズ、ターゲット結晶から測定位置までの距離である。ターゲット結晶への入射電子ビームサイズを調整するには、ターゲット結晶を破損させてしまう恐れがあるので限度がある。今回はターゲットにSi(220)結晶、ターゲット結晶から測定位置までの距離を従来の測定システムよりも約2m延長して測定を行った。これまでに得られた実験データとの比較をして、その結果について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS133
p.1318
KEK小型電子加速器(LUCX)アップグレード計画(1)
Upgrade plan of Laser Undulator Compact X-ray source (LUCX)(1)

○福田 将史,荒木 栄,Aryshev Alexander,浦川 順治,照沼 信浩,本田 洋介(高エ研),坂上 和之,鷲尾 方一(早大理工研)
○Masafumi Fukuda, Sakae Araki, Alexander Aryshev, Junji Urakawa, Nobuhiro Terunuma, Yosuke Honda (KEK), Sakaue Kazuyuki, Masakazu Washio (RISE, Waseda Univ.)
 
KEK小型電子加速器(LUCX)では、レーザーコンプトン散乱を利用したX線源の開発を行っている。電子ビームはフォトカソードRF電子銃で生成し、加速管で最大40MeVまで加速する。その後、光共振器内のレーザーパルスと衝突させ、15~30keVのX線を生成する。 現在、X線数増強により短時間で鮮明なX線イメージ画像を得ること、最終的には1ショットで撮影することを次の目標としている。このためのアップグレードを計画しており、3.6cell RF電子銃および12cellブースターの導入、4枚ミラー平面光共振器の導入などを予定している。これにより、X線数の増強および加速器の小型化を目指す。電子ビームのバンチ数は現在の10倍の1000バンチに増やし、4枚ミラー平面光共振器では、光共振器内に蓄積するレーザーパルスエネルギーを15倍にする。さらに電子ビームとの衝突角を20°から7.5°にすることで約3倍のX線数の増加を見込む。これらの合計で約450倍のX線数増加を目指す。アップグレード後のX線数の予想値は1.7×10^7 photons/train、エネルギー幅(FWHM)は10%となる。このX線数であれば前回実験時と同じX線画像が約10ショットの照射で撮影でき、より鮮明な画像の取得が期待される。この発表では主に加速器側のアップグレード計画について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS134
p.1322
電子パルス回転と圧縮によるフェムト秒パルスラジオリシスのための等価速度分光法の進展
Progress of the equivalent velocity spectroscopy method for femtosecond pulse radiolysis by pulse rotation and pulse compression

○近藤 孝文,菅 晃一,楊 金峰,吉田 陽一,小林 仁,樋川 智洋,法澤 公寛,小方 厚(阪大産研)
○Takafumi Kondoh, Koichi Kan, Jinfeng Yang, Yoichi Yoshida, Hitoshi Kobayashi, Tomohiro Toigawa, Kimihiro Norizawa, Atsushi Ogata (ISIR, Osaka Univ.)
 
電子ビーム誘起超高速反応の研究のために、アト秒・フェムト秒パルスラジオリシスを開発している。パルス幅100fsの電子パルスは、フォトカソードRF電子銃加速器と磁気パルス圧縮器の最適化により発生される。しかし更なる時間分解能の向上には、サンプル中での電子と分析光の間の速度差に起因した時間分解能の劣化を避けることが本質的に必要である。等価速度分光法では、分析光は電子ビームに対して、サンプルの屈折率に関係した角度傾けて入射し、電子パルスは光パルスと重なって伝搬するように進行方向に対して回転する。これまでは、30MeV電子線のフェムト秒へのパルス圧縮とパルス回転の両立は困難だった。しかし、電子ビーム縦横変調法により電子パルスの圧縮とパルス回転の両立に成功し、等価速度分光法の原理により時間分解能の向上を観測した。これまで4.4 psに留まっていた等価速度分光法の時間分解能は、1.2 psまで向上した。
 
14:00-16:00 
THPS135
p.1325
線形加速器による500KeV電子顕微鏡の開発
Development of a 500 keV Standing Wave Linear Accelerator for a Transmission Electron Microscope

○田辺 英二,ウェバー ラルフ(株式会社エーイーティー),永谷 幸則(大学共同利用機関法人自然科学研究機構)
○Eiji Tanabe, Ralf Weber (AET Inc.), Yukinori Nagatani (National Institute for Physiological Sciences)
 
This paper demonstrates the design and optimization of a 500KeV standing wave linear accelerator, decelerator and a RF chopper as part of a novel high energy transmission electron microscope (TEM) using advanced 3D electromagnetic and particle dynamics simulation software. We show the optimization process of side coupled standing wave accelerator sections, the fine tuning of the electromagnetic fields and the calculation of beam dynamics. A simulation of multi-stage RF chopper designs shows the advantage of using the electric field for beam deflection instead of the commonly used magnetic fields. A high powertest of a recently built prototype TEM was conducted successfully.
 
14:00-16:00 
THPS136
p.1329
HIMAC入射器の運転不具合事例と機器改善実績
Recent trouble cases and improvements of HIMAC injector

○竹内 猛,景山 雄生,小林 泉,佐久間 哲也,佐々木 規之,佐々野 利信,白石 直浩,高杉 亘,福島 恵太(加速器エンジニアリング株式会社),岩田 佳之,村松 正幸(放医研)
○Takeshi Takeuchi, Yuhsei Kageyama, Izumi Kobayashi, Tetsuya Sakuma, Noriyuki Sasaki, Toshinobu Sasano, Naohiro Shiraishi, Wataru Takasugi, Keita Fukushima (Accelerator Engineering Corporation), Yoshiyuki Iwata, Masayuki Muramatsu (NIRS)
 
HIMAC入射器における最近のビーム供給・運用不具合事例について報告する。最近の不具合内容と頻度からは、主に装置の老朽化を起因とする事例の傾向が見られており、機器の改善およびリプレースにより対応している。各装置について現在までの主たる改善実績と今後の作業を以下に示す。 ・18GHz ECR: 新イオン種の生成、MIVOC装置の改良 ・PIG: 高効率高寿命フィラメント、単結晶スパッタ材 ・RF: 新型RFローレベル制御装置、30kW半導体アンプ ・機器制御: UDCから汎用PLCへのリプレース ・統括計算機: 汎用OSとソフトウェアの導入、オペレータ支援プログラム これら項目の内容と進展についての詳細を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS137
p.1332
SAGA-HIMAT建設の現状
Construction status of the SAGA-HIMAT

○金澤 光隆,遠藤 真広,佐藤 弘史,松枝 啓之,落合 康宣,馬場 慎一郎,光武 亨剛,堀田 東洋,岡村 國助,塩山 善之,工藤 祥,北村 信,十時 忠秀(佐賀国際重粒子線がん治療財団)
○Mitsutaka Kanazawa, Masahiro Endo, Hiroshi Sato, Hiroyuki Matsueda, Yasunobu Ochiai, Shinichiro Baba, Toshimasa Mitsutake, Harumi Hotta, Kunisuke Okamura, Yoshiyuki Shioyama, Sho Kudo, Makoto Kitamura, Tadahide Totoki (SAGA HIMAT Foundation)
 
現在、佐賀県鳥栖市において、重粒子線がん治療のため、九州国際重粒子線がん治療センターの施設(SAGA HIMAT)が建築中である。この治療施設は放射線医学総合研究所が開発した普及型のがん治療用炭素イオン加速器からなり、この型の加速器としては群馬大学の施設に続いて国内2例目のものである。群馬大学と施設設計で異なる点は、45度ビームラインの採用及びスポットスキャニング照射を想定した将来整備用治療室(水平及び垂直照射コースの2つを備える)が配置されている事である。しかし、このプロジェクトのもっとも特徴的なところは、運営は財団として民間ベースでするところにあり、経営的に成り立つ事がすべての前提になる。この為に選択された建設場所の鳥栖市は、九州各地から鉄道及び車でアクセスするのに良好な場所であり、九州全域(プラス山口県)からの患者を想定した計画になっている。現在、建物の建設がほぼ完了しており、搬入が完了した装置の立ち上げが急ピッチで進められていて、2012年末にはビームテストを予定している。その後、治療照射の為のアクセプタンステスト、コミッショニングを経て、2013年中に重粒子線治療を開始する予定である。本講演ではこのプロジェクト建設の現状及び今後の予定について述べる。
 
14:00-16:00 
THPS138
p.1336
HIMACにおける治療ビーム再現性確認の高速化
Fast confirmation of therapy beam repeatability at HIMAC synchrotron

○内山 宙志,川島 祥祐,齋藤 俊輔,藤原 秀樹(加速器エンジニアリング株式会社),高田 栄一(放射線医学総合研究所)
○Hiroshi Uchiyama, Masahiro Kawashima, Syunsuke Saito, Hideki Fujiwara (AEC), Eiichi Takada (NIRS)
 
放射線医学総合研究所HIMACでは、新治療棟への供給を除き通常上下2つのリングから各々4種類、計8種類のエネルギーを各々2コース、計4つの治療ポートへ供給している。エネルギーの変更後は、輸送系末端のドリフトスペースを挟んだ2台のプロファイルモニタでのビーム位置を微調整しビームの再現性を保証している。現状ではエネルギーの切り替えは特別な場合を除けば上下各々一日に1回から3回であるが、今後は自由度の高い治療スケジュールを組めるよう、より頻繁なエネルギー変更への対応を求められている。そのためにはエネルギー切り替え後のビーム調整時間を短縮することが必要であり、ビームの確認の方法も簡略し高速化に向かっている。しかしながら医療用シンクロトロンであるHIMACではビーム再現性が保証されていることは最も重要であり、高速化により侵されてはならない。そこで本発表ではビーム確認の高速化と再現性の保証を両立させるために加速器側から行った調査検討の結果を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS139
p.1340
J-PARCハドロン実験施設における間接水冷標的の運転
Operation status of water-cooling fixed target at J-PARC Hadron Facility

○山野井 豊,高橋 仁,上利 恵三,家入 正治,加藤 洋二,里 嘉典,澤田 真也,白壁 義久,鈴木 善尋,田中 万博,豊田 晃久,成木 恵,広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 亮太郎,渡邊 丈晃(高エネルギー加速器研究機構)
○Yutaka Yamanoi, Hitoshi Takahashi, Keizo Agari, Masaharu Ieiri, Yoji Katoh, Yoshinori Sato, Shin'ya Sawda, Yoshihisa Shirakabe, Yoshihiro Suzuki, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Megumi Naruki, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Ryotaro Muto, Hiroaki Watanabe (KEK)
 
T1標的とは、J-PARCハドロン実験ホールの各実験ビームラインに二次粒子を供給する生成標的である。現在、設計最大強度は750kWに向けてビーム強度を上げる努力が続けられ、東日本大震災の復旧後の本年2月には最大5kWの陽子ビームを主リングより取り出し、本水冷Pt標的を用いて実験を行った。また、6月には数十kWの陽子ビームを用いて実験に使用する予定である。 前回の発表では、入射強度50kW(62.5T ppp)以上を想定したPt固定標的を設計する際、内部応力や異なる物性からなる材料間の熱流束などが重要であることを報告した。 今回は実際に運転を行った結果と水冷方式に伴う冷却水中のトリチウムの生成量などを報告すると共に更にビーム強度が大きくなった場合の間接水冷での固定標的の設計について報告する。
 
14:00-16:00 
THPS140
p.1343
SAGA-LSレーザコンプトンガンマ線源の連続運転試験
Continuous operation of the laser Compton gamma-ray source at SAGA-LS

○金安 達夫,高林 雄一,岩崎 能尊,江田 茂(九州シンクロトロン光研究センター)
○Tatsuo Kaneyasu, Yuichi Takabayashi, Yoshitaka Iwasaki, Shigeru Koda (SAGA Light Source)
 
SAGA-LSでは1.4GeV電子蓄積リングとCO2レーザーを用いてレーザーコンプトン散乱(LCS)ガンマ線の生成実験に取り組んでいる.蓄積リングのエネルギーアクセプタンスはガンマ線エネルギー(最大3.5MeV)より充分に大きいため,CO2レーザーによるLCSはビーム寿命へ影響を与えず放射光ユーザー運転と共存可能である.またCO2レーザーは大出力化が比較的容易であり,ガンマ線の大強度化についても有利といえる.これまでにLCSガンマ線の特性評価を目的として,低蓄積電流における基礎実験を進めてきた.基礎実験の結果,スペクトル形状や空間分布はシミュレーションとよく一致すること,ガンマ線強度は設計値の30%程度ではあるがレーザー光学系の調整により強度増加が見込まれること,蓄積ビームへの影響はみられずLCSガンマ線源の基本動作に問題はないことがわかった.その後,現状の実験系における最大強度のLCSガンマ線生成に成功し,昨年度後半からは,ユーザー運転条件におけるガンマ線の安定供給を目指してLCSガンマ線の長時間生成実験に取り組みつつ,一部利用実験へのガンマ線供給も試験的に行っている.講演ではLCSガンマ線源の性能と連続運転試験の報告に加え,ガンマ線利用の利便性向上を目的とした拡張計画についても紹介する.
 
14:00-16:00 
THPS141
p.1346
KEK小型電子加速器(LUCX)アップグレード計画(2)
Upgrade plan of Laser Undulator Compact X-ray source (LUCX)(2)

○坂上 和之,鷲尾 方一(早大理工研),福田 将史,荒木 栄,Aryshev Alexander,浦川 順治,照沼 信浩,本田 洋介(高エネ研)
○Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio (RISE Waseda University), Masafumi Fukuda, Sakae Araki, Alexander Aryshev, Junji Urakawa, Nobuhiro Terunuma, Yosuke Honda (KEK)
 
KEK小型電子加速器(LUCX)では、レーザーコンプトン散乱を利用したX線源の開発を行っている。電子ビームはフォトカソードRF電子銃で生成し、加速管で最大40MeVまで加速する。その後、光共振器内のレーザーパルスと衝突させ15~30keVのX線の生成を行っている。現在、X線数増強により短時間で鮮明なX線イメージ画像を得ること、最終的には1ショットで撮影することを次の目標として今秋までに装置のアップグレードを行っている。本講演では光共振器のアップグレード計画及び生成X線の予想パラメータに関して報告する。 現在光共振器内の蓄積レーザー強度は共振器を構成するミラーのダメージ閾値にて制限されている。そこでミラー上でより大きなスポットを持つ共振器の設計・製作を進めている。蓄積レーザー強度としては現状の15倍を見込んでいる。平行して電子ビームとの衝突角度もより効率の良い正面衝突に近づけることを検討しており、現状の20°から7.5°になり、約3倍のX線数の増加を見込んでいる。 電子ビーム側のアップグレードと合わせて約450倍のX線数増加を目標としており、アップグレード後のX線数の予想値は1.7×10^7 photons/train、エネルギー幅(FWHM)は10%とな る。このX線数であれば前回実験時と同じX線画像が約10ショットの照射で撮影でき、より鮮明な画像の取得が期待される。
 
14:00-16:00 
THPS142
p.1349
重イオン用超伝導回転ガントリーの開発
Superconducting rotating-gantry for heavy-ion therapy

○岩田 佳之,野田 耕司,白井 敏之,古川 卓司,藤田 敬,正田 光一,水島 康太,板野 明史(放医研),藤本 哲也(加速器エンジニアリング),荻津 透(高エネ研),雨宮 尚之(京大工),尾花 哲治(核融合研),渡辺 郁男,折笠 朝史,高見 正平,高山 茂貴(東芝)
○Yoshiyuki Iwata, Koji Noda, Toshiyuki Shirai, Takuji Furukawa, Takashi Fujita, Koichi Shouda, Kota Mizushima, Akifumi Itano (NIRS), Tetsuya Fujimoto (AEC), Toru Ogitsu (KEK), Naoyuki Amemiya (KUEE), Tetsuhiro Obana (NIFS), Ikuo Watanabe, Tomofumi Orikasa, Shohei Takami, Shigeki Takayama (Toshiba)
 
重粒子線がん治療の更なる高精度化のため、我々は回転ガントリーの開発を進めている。この回転ガントリーはアイソセントリック型であり、患者が位置するアイソセンターに対し、核子あたり430MeVの炭素ビームを0度から360度の何れの方向からでも照射可能である。患者を動かすことなく、あらゆる角度から照射が可能となることから、臨床上、回転ガントリーは多くの魅力的特徴を有するが、一方で炭素線治療用回転ガントリーは非常に大型となってしまう。現時点において、世界で唯一建設された炭素線用回転ガントリーはドイツハイデルベルグに存在するが、その総重量は600トン以上と報告されている。 我々は回転ガントリー本体の小型及び軽量化のため、ビーム輸送部に二極成分と四極成分が独立励磁可能な機能結合型超伝導偏向電磁石を採用した超伝導回転ガントリーの設計・製作を進めている。その結果、回転ガントリーの半径は約5.5m、全長は約13m、重量は200トン台と陽子線回転ガントリー相当のサイズとなることを見込んでいる。本発表において、超伝導回転ガントリーの全体構成、ビーム光学設計、機器レイアウト、並びに機能結合型超伝導偏向電磁石の電磁場設計、並びに超伝導電磁石製造の現状を報告する。
 
14:00-16:00 
THPS143
p.1352
電子線による空気の発光とビームモニターとしての応用
Fluorescence of Air by Electron Irradiation and its application for Beam Monitoring

○谷口 良一,伊藤 憲男(大阪府大放射線)
○Ryoichi Taniguchi, Norio Ito (Radiation Research Center, Osaka Prefecture University)
 
電子線形加速器から空気中に取り出した電子線ビームによる空気の発光の分布、寿命等を、冷却型CCDカメラによって観測した。冷却型CCDは安価である上に高感度であり定量性にも優れている。近年では紫外から赤外まで感度を有するものが開発されており、μ秒オーダーのパルス撮像も可能であることから、電子線モニターとしての使用を検討している。今回、紫外域に感度を有する冷却型CCDを用いて、電子線による空気の発光を撮像した。空気発光の大部分は窒素分子の第2励起成分で説明可能であり、340nmから450nmまでに分布する離散的なスペクトルとなっている。窒素分子発光の発光寿命に関しては、様々な報告があり、数ナノ秒程度のものが多いが、今回のパルス撮像による測定結果では、1秒を超える極めて長い減衰成分もあり、これらの寄与が予想よりも大きいことが示されている。
 
14:00-16:00 
THPS144
p.1355
11Cイオン生成のための11CH4ガスの高効率生成法の検討
Investigation of 11CH4 gas production method for 11C ion acceleration

○片桐 健,永津 弘太郎,峯岸 克行,北條 悟,村松 正幸,鈴木 和年(放医研),本間 壽廣(加速器エンジニアリング),後藤 彰(放医研)
○Ken Katagiri, Kotaro Nagatsu, Katsuyuki Minegishi, Satoru Houjyo, Masayuki Muramatsu, Kazutoshi Suzuki (NIRS), Toshihiro Homma (AEC), Akira Goto (NIRS)
 
放射線医学総合研究所でのHIMAC加速器による重粒子線がん治療は,1994年の開始から今年で18年目を迎え,6000人以上もの患者に治療が適用されてきた.これまでの拡大ビーム法による治療に加えて,3次元スキャニング照射法による臨床治療が2011年5月に開始された.さらなる照射精度向上を狙って,この次世代照射法にImage-Guided Radiation Therapy (IGRT) を適用することが望まれている.この重粒子線治療におけるIGRT法では,これまでに使用してきた12Cに代わり,陽電子放出核である11Cイオンを照射ビームとし,オンラインPETを用いた照射野のリアルタイムモニタリングにより照射精度の向上を図る.このIGRT法に必要となる11Cイオンの加速•供給技術の確立を目指して,我々は,プロトン照射によって得られる11CH4ガスをイオン源に供給し,11Cイオンを生成する方法を提案している.この方法では, 11CH4ガスは希少であるために,イオン源では11Cイオンの高い生成効率が必要とされる.このため,イオン源には高純度の(比放射能の高い)11CH4ガスを供給しなければならない.この問題を解決するために,我々は固体標的を用いた11CH4ガスの生成法を検討している.本発表では,これまでに行ったターゲット物質選定のための実験の結果,及びターゲットシステムのデザインを紹介する.