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2020年10月23日 公開
2020年11月27日 更新

プロシーディングス目次(アブストラクト付き) (論文掲載 236 件、○印は発表者)

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9月2日(水)口頭発表セッション
(午前セッションの最後に10分間、萌芽的加速器技術の提案ポスターの要約発表セッション)
 合同セッション(9月2日 講演会場1 09:10 ) 4 件
 電磁石と電源(9月2日 講演会場1 15:10 ) 5 件
 ハドロン加速器(9月2日 講演会場2 15:10 ) 5 件
 高周波源・LLRF(9月2日 講演会場1 17:10 ) 4 件
 加速器制御(9月2日 講演会場2 17:10 ) 5 件
 
9月3日(木)口頭発表セッション
 加速器応用・産業利用(9月3日 講演会場1 09:00 ) 4 件
 加速器土木/レーザー(9月3日 講演会場2 09:00 ) 4 件
 ビーム診断・制御①(9月3日 講演会場1 10:40 ) 4 件
 光源加速器①(9月3日 講演会場2 10:40 ) 4 件
 ビーム診断・制御②(9月3日 講演会場1 15:40 ) 3 件
 光源加速器②(9月3日 講演会場2 15:40 ) 3 件
 学会賞受賞講演(9月3日 講演会場1 18:10 ) 2 件
 
9月4日(金)口頭発表セッション
 企画セッション(9月4日 講演会場1 09:00 ) 2 件
 粒子源/加速構造①(9月4日 講演会場1 15:00 ) 5 件
 ビームダイナミクス/電子加速器(9月4日 講演会場2 15:00 ) 5 件
 加速構造②(9月4日 講演会場1 17:00 ) 2 件
 真空(9月4日 講演会場2 17:00 ) 2 件
 
9月2日(水)ポスターセッション
 ポスターセッション①(9月2日 ポスター会場 12:40 ) 61 件
 
9月3日(木)ポスターセッション
 ポスターセッション②(9月3日 ポスター会場 13:10 ) 64 件
 
9月4日(金)ポスターセッション
 ポスターセッション③(9月4日 ポスター会場 10:30 ) 63 件
 
9月2日(水)- 9月4日(金)萌芽的加速器技術の提案(ポスター/要約口頭発表)
(発表時間帯は各曜日一般ポスターセッションに同じ)
 常設ポスター(9月2日-4日 ポスター会場 10:30 ) 4 件
 
9月2日(水)- 9月4日(金)施設技術報告ポスター
 ポスターセッション①(9月2日 ポスター会場 12:40 ) 10 件
 ポスターセッション②(9月3日 ポスター会場 13:10 ) 11 件
 ポスターセッション③(9月4日 ポスター会場 10:30 ) 8 件

合同セッション (9月2日 講演会場1)
09:10-09:40 
WEOOP01
p.1
同時トップアップ入射のためのKEK電子陽電子入射器の加速モード切替の高度化
Advanced acceleration mode switching for simultaneous top-up injection at KEK electron/positron injector linac

○古川 和朗,明本 光生,荒川 大,荒木田 是夫,飯田 直子,池田 光男,岩瀬 広,惠郷 博文,榎本 收志,榎本 嘉範,大越 隆夫,大澤 哲,大西 幸喜,岡安 雄一,小川 雄二郎,柿原 和久,梶 裕志,片桐 広明,紙谷 琢哉,川村 真人,菊池 光男,佐武 いつか,佐藤 政則,周 翔宇,白川 明広,杉村 仁志,諏訪田 剛,清宮 裕史,染谷 宏彦,竹中 たてる,田中 窓香,張 叡,邱 丰,峠 暢一,中島 啓光,夏井 拓也,東 保男,肥後 壽泰,船越 義裕,本間 博幸,松下 英樹,松本 修二,松本 利広,三浦 孝子,三川 勝彦,三増 俊弘,宮原 房史,矢野 喜治,横山 和枝,吉田 光宏(KEK),王 迪(総研大)
○Kazuro Furukawa, Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Yoshio Arakida, Naoko Iida, Mitsuo Ikeda, Hiroshi Iwase, Hiroyasu Ego, Atsushi Enomoto, Yoshinori Enomoto, Takao Oogoe, Satoshi Ohsawa, Yukiyoshi Ohnishi, Yuichi Okayasu, Yujiro Ogawa, Kazuhisa Kakihara, Hiroshi Kaji, Hiroaki Katagiri, Takuya Kamitani, Masato Kawamura, Mitsuo Kikuchi, Itsuka Satake, Masanori Satoh, Xiangyu Zhou, Akihiro Shirakawa, Hitoshi Sugimura, Tsuyoshi Suwada, Yuji Seimiya, Hirohiko Someya, Tateru Takenaka, Madoka Tanaka, Rui Zhang, Feng Qiu, Nobukazu Toge, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Yasuo Higashi, Toshiyasu Higo, Yoshihiro Funakoshi, Hiroyuki Honma, Hideki Matsushita, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Katsuhiko Mikawa, Toshihiro Mimashi, Fusashi Miyahara, Yoshiharu Yano, Kazue Yokoyama, Mitsuhiro Yoshida (KEK), Di Wang (SOKENDAI)
 
KEK 電子陽電子入射器は、4 つの蓄積リング、SuperKEKB HER, LER と PF, PF-AR、への同時トップアップ入射によって、衝突型素粒子実験と放射光科学実験の双方の実験効率を飛躍的に高めることに成功した。この入射機構の実現にあたっては、数百の加速器装置条件を高速に切り替える必要があり、周到な準備が必要でした。
 
09:40-10:10 
WEOOP02
p.7
RIビームファクトリーのビーム強度増強
Beam-intensity upgrade of RIKEN RI Beam factory

○福西 暢尚(理化学研究所仁科加速器科学研究センター)
○Nobuhisa Fukunishi (RIKEN Nishina center)
 
2006年に運転を開始した重イオン加速器施設RIビームファクトリー(RIBF)は、2台の線型加速器、5台のサイクロトロンを有する複合加速器システムで、多様な重イオンビームを加速し世界最大強度の不安定核ビームをユーザーに供給している。ユーザーにとって最重要かつ加速器技術的にも最も加速が難しいウランビームでは、小型の線型加速器と4台のリングサイクロトロンを用い、途中2カ所で荷電変換を行うスキームで核子当り345 MeVまで加速、これを反応させ極めて希少なRIビームを生成している。よって1次ビーム強度がRIBFの最重要性能指標であるが、新規に製作したリングサイクロトロン群は設計通りの性能を発揮しているにも関わらず2008年時点のビーム強度は0.4 pnAに止まり、建設時の加速器構成で想定していた200 pnAに遠く及ばない状況であった。これには多数の要因、イオン源の性能、荷電変換膜の寿命、旧施設から持ち越したサイクロトロン(RRC)における空間電荷制限、加速システム全体の安定性、などが複雑に絡み合っており、これらを順次解決することで、2019年には当初比240倍となる100 pnAレベルの運用を可能とした。本報告ではRIBFのビーム強度増強の鍵となった一連の技術開発及び多段サイクロトロンシステム運用の実際を紹介し、合わせてRIBFの更なる大強度化に向けた展望をお話ししたい。
 
10:10-10:40 
WEOOP03

ラジオアイソトープの製造と応用 ~新元素の探索からがん治療まで~
Production and Applications of Radioisotopes - Search for New Elements through Therapy of Cancer -
○羽場 宏光(理化学研究所仁科加速器科学研究センター)
○Hiromitsu Haba (RIKEN Nishina center)
 
ラジオアイソトープ(RI)は、トレーサーや放射線源として物理学、化学や生物学の基礎研究から医療、農業、工業などの応用分野にわたり幅広く利用されている。本講演では、国内外の加速器施設におけるRI製造と応用研究の現状について概説する。我々の研究グループでは、理化学研究所(理研)RIビームファクトリー(RIBF)の重イオン加速器を用いて、有用RIの製造技術開発と様々な研究分野におけるRI応用研究を推進している。AVFサイクロトロンと重イオン線形加速器を用いて、ベリリウム(Be)から107番元素ボーリウム(Bh)まで、元素周期表のほぼ全領域を網羅する100種以上のRIを製造している。一方、理研リングサイクロトロンでは、核子当たり135 MeVまで加速した高エネルギーの窒素14ビームをチタン、銀、金やトリウム標的に照射し、標的核の核破砕反応によって多数のRIを同時に製造することができる。我々が製造するRIは、国内外の研究者と共同で、新元素の化学からがんの診断・治療まで、様々な分野における応用研究に用いられている。本講演では、日本アイソトープ協会や科研費短寿命RI供給プラットフォーム等を通じた理研RIの頒布事業についても紹介する。
 
10:40-11:10 
WEOOP04

J-PARC MRの制御システム運用12年
Twelve-year operation and upgrade experiances of J-PARC MR control
○上窪田 紀彦,山田 秀衛,木村 琢郎,佐藤 健一,仁木 和昭,山本 昇(高エネ研),田島 裕斗,青山 俊明,土井 幸之介,小原 直登,飯塚 上夫,吉田 奨(関東情報)
○Norihiko Kamikubota, Shuei Yamada, Takuro Kimura, Kenichi Sato, Kazuaki Niki, Noboru Yamamoto (KEK), Yuto Tajima, Toshiaki Aoyama, Konosuke Doi, Naoto Obara, Takao Iitsuka, Susumu Yoshida (KIS)
 
J-PARC MRは2008年に運転を開始してから12年が経過した。建設期(2006-2008年)に導入された計算機制御システムは、ほとんどが更新された。その内容は多岐に及び、インフラ(サーバ計算機、ネットワーク、front-end(ioc)、端末)、Subsystem(タイミング、PPS/MPS)、ソフトウェア(標準OS, Epics環境やtool, security整備)、などである。 本報告ではその総括を行い、更新にあたって行った折々の選択を検証する。また、12年前には無かった技術や新しい考え方(仮想技術、Security環境、エコロジー)について、対応状況を議論する。
 
電磁石と電源 (9月2日 講演会場1)
15:10-15:30 
WEOO01
p.13
[Slides]
全身MRI用磁石技術を応用したビーム捕捉用超伝導磁石の精密磁場調整
Precise operation of superconducting magnet for beam capture applying whole-body MRI magnet technology

○杉田 萌,飯沼 裕美,大金 千織(茨城大学),佐々木 憲一,阿部 充志,三部 勉,荻津 透,下村 浩一郎(高エネ研)
○Moe Sugita, Hiromi Iinuma, Chiori Ohgane (Ibaraki U.), Ken-ichi Sasaki, Mitsushi Abe, Tsutomu Mibe, Toru Ogitsu, Koichiro Shimomura (KEK)
 
J-PARCでは、基底状態におけるミューオニウム超微細構造(MuHFS)の精密測定実験(MuSEUM実験)を進行中である。先行実験の10倍以上の精度での測定を目指し、現在は高磁場(1.7 T)中での実験にむけた装置開発を行っている。この実験で要求される磁場の時間的・空間的均一度は、回転楕円体の内部領域(短径20 cm、長径30 cm)において0.2 ppm p-p未満である。全身MRI用超電導磁石を利用した小鉄片(鉄シム)による空間磁場均一度調整試験において、これまでに均一度0.45 ppm p-pを達成しており、2倍以上の精度向上に向け技術開発を続けている。本発表では(1)永久電流モード運用時の温度変化に伴う磁場変動の定量的評価と(2)磁性流体や磁性パテを用いた新たなシミング手法の実現可能性について議論する。 時間的な磁場変動要因の一つとして実験空間の温度変化がある。鉄シムの磁化を利用した磁場調整手法では、超電導コイル内に鉄シムを固定するための支持機構が温度変化によって膨張・収縮し、鉄シム位置の変化を引き起こす。また、鉄シムの磁化量も温度に依存する。そこで、容器温度を変化させた際の磁場変化を測定し、温度変化に係る二つの磁場変動要因のシミュレーション計算と比較検討を行った。 更に、既存の鉄シムによる磁場調整よりも高精度化するため、同体積の鉄に比べて磁化が小さい磁性流体や磁性パテを使用した新たな空間磁場調整手法の検討にも取組んでいる。その実現可能性も議論する。
 
15:30-15:50 
WEOO02
p.17
[Slides]
スケルトン・サイクロトロン開発のための高温超電導コイルの要素技術開発
Development of key technologies of high-temperature superconducting coil for the skeleton cyclotron

○久松 万里子,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,中尾 政夫,安田 裕介,友野 大,Koay Hui Wen,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,大本 恭平,荘 浚謙(RCNP),石山 敦士(早稲田大学理工学術院),野口 聡(北海道大学大学院情報科学研究科),植田 浩史(岡山大学大学院自然科学研究科),福井 聡(新潟大学大学院自然科学系),鎌倉 恵太(東京大学原子核科学研究センター),松原 雄二,三上 行雄,鶴留 武尚,高橋 伸明,吉田 潤,平山 貴士(住友重機械工業),長屋 重夫,渡部 智則(中部電力)
○Mariko Hisamatsu, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Masao Nakao, Yusuke Yasuda, Dai Tomono, Hui Wen Koay, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Kyohei Omoto, Tsun Him Chong (RCNP), Atsushi Ishiyama (Waseda Univ.), Sou Noguchi (Hokkaido Univ.), Hiroshi Ueda (Okayama Univ.), Satoshi Fukui (Niigata Univ.), Keita Kamakura (Center for Nuclear Study, University of Tokyo), Yuji Matsubara, Yukio Mikami, Takehisa Tsurudome, Nobuaki Takahashi, Jun Yoshida, Takashi Hirayama (Sumitomo Heavy Industries, Ltd.), Shigeo Nagaya, Tomonori Watanabe (Chubu Electric Power Co., Inc.)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では現在、空芯型高温超電導コイルを用いた高強度小型多機能スケルトン・サイクロトロンの設計・要素技術の開発が行われている。この加速器の開発目的は高輝度な小型サイクロトロンの実現で、加速エネルギー40 MeVの4He2+およびD+ビーム、また50 MeVのH+ビームなどの性能を目標としている。この加速器の実現によって核医学利用のためのRI生成や大強度中性子源開発など医療、産業などの幅広い分野への貢献が期待される。このサイクロトロンは病院内などでの使用を想定し、等時性磁場の生成には空芯型コイルを採用している。これにより加速器全体の小型化、磁場強度の安定・再現性、省電力かつ高磁場の実現を目指す。従来のAVFサイクロトロンのような鉄心を持たないことで内部機器の配置の自由度が増し、磁場分布は複数の円形コイルと3つ或いは4つの非円形セクターコイルの組合せで設計している。この空芯型高温超電導コイルの要素技術開発として、10 GHz ECRイオン源のミラーコイルや六極コイルにも利用可能な小型の円形・非円形コイルを設計・試作し、高温超電導ECRイオン源の開発を兼ねた高温超電導コイルの基本性能試験を行った。今回の発表では試験用コイルの設計と性能試験の結果などについて報告する。
 
15:50-16:10 
WEOO03
p.20
大強度陽子シンクロトロンにおけるリアルタイムCOD補正システムの開発
Development of real-time COD correction system for the high intensity proton synchrotrons

○浅見 高史(東大),栗本 佳典(KEK),小関 忠(KEK/東大)
○Takashi Asami (Univ. of Tokyo), Yoshinori Kurimoto (KEK), Tadashi Koseki (KEK / Univ. of Tokyo)
 
J-PARC メインリング(MR)は陽子を3GeVから30GeVへ加速する大強度陽子シンクロトロンである。その大強度化の最大の障壁は周回する陽子の一部が真空ダクトに衝突しビーム損失が起きることによる機器の放射化である。ビーム損失の原因を探るためにはビーム光学の正確なモデルを立てることが重要であり、加速器構成機器のパラメータの誤差を最小化・補正する手法の開発が不可欠である。MRでは偏向電磁石の200Hz以下の周波数領域の電流リップルがベータトロン振動中心軌道を設計軌道から大きくずらす(Closed Orbit Distortion, COD)ことが示されている。電流リップル由来のCODはパルスごとに再現しないためその補正はリアルタイムに行われる必要がある。我々はその手法としてMRの補正電磁石に常時入力されている電流パターンに、電流リップル由来CODの補正用パターンをリアルタイムで計算し加算するシステムを考案した。本研究では実際にこのような手法で電流リップル由来CODのリアルタイム補正が可能であることを示すため補正電磁石1台に対応するハードウェアのプロトタイプを製作し、システムの原理検証試験を行った。本発表では原理検証試験の詳細及び結果について報告する。
 
16:10-16:30 
WEOO04
p.25
[Slides]
RCSキッカー用半導体スイッチ電源
Semiconductor switch power supply for RCS kicker

○高柳 智弘,小野 礼人,堀野 光喜,植野 智晶,富樫 智人,山本 風海,金正 倫計(J-PARC/JAEA)
○Tomohiro Takayanagi, Ayato Ono, Koki Horino, Tomoaki Ueno, Tomohito Togashi, Kazami Yamamoto, Michikazu Kinsho (J-PARC/JAEA)
 
 J-PARCのRCSキッカー電源を代替する半導体スイッチ電源の開発を進めている。パワー半導体の素子には、現在の主流であるSi製より高周波特性に優れ低損失なSiC製のMOSFETを採用し、回路基板の主要な部分は、低ノイズと低インダクタンスを実現した放射対称型のLTD回路で構成した。また、電源全体は、既存のキッカー電源が備えるサイラトロン、PFN、エンドクリッパに、新たに追加する周回中の大強度ビームのインピーダンス低減を目的として反射波吸収回路を1枚のモジュール基板で実装する主回路基板と、フラットトップのdroopを補正する低電圧出力の補正基板の2種類の組み合わせで構成する。主回路基板は一枚で800V/2kA出力が可能であり、52枚の主回路基板と20枚の補正基板を用いて、RCSキッカー電源に必要な高電圧40kVとフラットトップ平坦度±0.2%以下の出力試験に成功した。更に、キッカー電源の双子型構成を想定した20kVの2並列回路による予備試験を実施した。評価結果と今後の展望について報告する。
 
16:30-16:50 
WEOO05
p.29
J-PARCミューオンg-2/EDM実験のための3次元らせんビーム入射の実証実験の現状報告
The status report of demonstrative experiment of 3D spiral beam injection for J-PARC muon g-2/EDM experiment

○平山 穂香,飯沼 裕美(茨城大学),リーマン モハメド アブドゥル(総研大),古川 和朗,大澤 哲,中山 久義,三部 勉(KEK)
○Honoka Hirayama, Hiromi Iinuma (Ibaraki Univ.), Muhammad Abdul Rehman (SOKENDAI), Kazuro Furukawa, Satoshi Ohsawa, Hisayoshi Nakayama, Tsutomu Mibe (KEK)
 
J-PARCミューオンビームラインでミューオンの異常磁気モーメント(g-2)と電気双極子モーメント(EDM)を測定する超精密実験のために考えられた新しいビーム入射手法である3次元らせん入射技術の開発を進めている。これを実証するために、ミューオンビームの代わりとして電子銃からの80keV電子ビームを82.5ガウスのソレノイド磁場中に入射し、直径24cmの円軌道に蓄積するテスト実験に取り組んでいる。本テスト実験の重要課題は、軸対称なソレノイド磁場中への入射のために、ビーム運動の垂直成分と水平成分を適切に結合(X-Y結合)する技術の確立である。本テスト実験では、輸送区間直線部に任意の回転角に調整できる3つの四極電磁石を配置し、3次元らせん入射に最適なX-Y結合を与えるように設計している。本発表では、電子ビーム源の初期パラメータ測定のために実施したQ-scanをもとに、Twissパラメータやエミッタンス、X-Y結合度の測定結果を議論する。また、ソレノイド磁場中への入射地点におけるX-Y結合度の要求値と、テスト実験ビームライン輸送区間で調整できるX-Y結合度の設計値および実測値の比較をおこなう。さらに、適切なX-Y結合を与えた場合の3次元らせん入射実験による測定結果と、シミュレーションによる予測軌跡との比較をおこない、テスト実験ビームラインにおけるビーム制御の調整精度について議論する。
 
ハドロン加速器 (9月2日 講演会場2)
15:10-15:30 
WEOT01
p.33
Error Studies for the JAEA-ADS Linac
○Bruce Yee-rendon, Jun Tamura, Yasuhiro Kondo, Fujio Maekawa, Shin-ichiro Meigo, Hidetomo Oguri (JAEA)
 
The Japan Atomic Energy Agency (JAEA)- Accelerator Driven System (ADS) linac consists of a CW proton accelerator with a beam current of 20 mA driven with the energy of 1.5 GeV. Most of the beam acceleration is achieved by using superconducting cavities to obtain high acceleration efficiency at CW mode. The main (superconducting) linac is composed of five families of cavities (Half Wave resonators, Spokes resonators, and Elliptical cavities) with theirs respectively magnets. Due to the large beam power in the linac of 30 MW and the high reliability required for the ADS project, a robust beam optic designed is necessary to have a stable beam operation and control the beam loss power. The JAEA-ADS linac is composed of several sections and components; thus, misalignment of these elements together with field errors enhance the beam loss rate and compromise the safety of the linac. To this end, an error linac campaign was launched to estimate the error tolerance of the components and implement a correction scheme to reduce the beam loss power around the linac. In this study, the error analysis for the JAEA-ADS linac was made. It will be discussed with the sensitive parts to the error.
 
15:30-15:50 
WEOT02

[Slides]
COMET実験に向けたJ-PARCメインリングの陽子ビームのエクスティンクション改善と補正キッカーの最適化
Improvement of proton beam extinction and optimization of the compensation kicker magnet of J-PARC main ring for the COMET experiment
○野口 恭平,東城 順治(九大理),西口 創(KEK素核研),冨澤 正人(KEK加速器)
○Kyohei Noguchi, Junji Tojo (Kyushu University), Hajime Nishiguchi (KEK IPNS), Masahito Tomizawa (KEK ACCL)
 
COMET実験は、ミューオン電子転換過程を探索する事で新物理の発見を目指す国際共同実験であり、大強度陽子加速器施設J-PARCにおいて建設中である。COMET実験では遅い取り出しにおいて、ビーム入射直後に発生する背景事象を抑制するためにパルス陽子ビームを用い、パルス内の陽子数に対するパルス外の陽子数の比率であるエクスティンクションが10^-10未満であることを要求している。十分長い陽子ビームの入射間隔を確保するために、J-PARCメインリング(MR)の9バケツ中4つのみに陽子を詰めるが、空のバケツに残留陽子が入射されてしまうことがエクスティンクションを悪化させる要因となる。これを受け、MRの入射キッカーの励磁タイミングを変更し、残留陽子をMRの空のバケツへ入射させないエクスティンクションの改善手法を計画している。シミュレーションにおいてこの手法を評価した結果、エクスティンクションの要求は達成可能であるが、MRの入射キッカーの反射波が問題となり得ることが判明した。速い取り出しにおいては同様の問題を補正キッカーによって解消しているが、チューンの異なる遅い取り出しにおいて最適化は実施されていなかった。本講演では、エクスティンクションの改善手法とシミュレーションによる評価結果、ならびに加速器調整や立ち上げにおいて実施した補正キッカーの最適化結果について報告する。
 
15:50-16:10 
WEOT03
p.38
大強度負重水素イオン加速に向けたCYRIC930型AVFサイクロトロン加速器の軌道計算
Simulation of acceleration in CYRIC 930 AVF cyclotron for high power deuteron beams from D-minus ions

○松田 洋平,伊藤 正俊,篠塚 勉(東北大学サイクロトロン ラジオアイソトープセンター),福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,中尾 政夫(大阪大学核物理研究センター),倉島 俊,宮脇 信正(量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所),涌井 崇志(量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所)
○Yohei Matsuda, Masatoshi Itoh, Tsutomu Shinozuka (Cyclotron and Radioisotope Center, Tohoky University), Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Masao Nakao (Research Center for Nuclear Physics, Osaka University), Satoshi Kurashima, Nobumasa Miyawaki (Takasaki Advanced Radiation Research Institute, National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology), Takashi Wakui (National Institute of Radiological Sciences, National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology)
 
東北大学サイクロトロン ラジオアイソトープセンターでは930型AVFサイクロトロンを用いて、学内共同利用を超えた基礎研究、産学連携、医療応用の強化に向け25 MeV、0.1 mAの重陽子ビームの開発を行う。 大強度の重陽子ビームは、負重水素イオンを加速し、フォイルストリッパーにて荷電変換を行うことで実現される。 CYRICでは2004年に負水素イオンの加速に成功しており、50 MeV、30 μAの陽子ビームの引き出しに成功している。 大強度の重陽子ビームの実現に向けて、(1) フォイルストリッパーの設置箇所(駆動範囲)、(2) 引き出し可能なエネルギーの上限と下限、(3) フォイルストリッパー位置でのビーム形状、(4) 引き出し位置でのビーム形状、(5) 空間電化効果によるビームの広がりについて検討しておく必要がある。 そこで今回、負水素イオンの加速以来行われて来なかった加速シミュレーションを可能にすると共に、PSIで開発されたObject Oriented Parallel Accelerator Libraryを用いて空間電荷効果やビームエミッタンスも考慮したシミュレーションを行えるようにした。 本講演では、このシミュレーションコードを用いて、 先行研究の負水素イオン加速の再現性の確認し、上記の大強度重陽子ビームの実現に向けて検討した結果について報告する。
 
16:10-16:30 
WEOT04
p.43
自動サイクロトロン共鳴加速法を用いた陽子加速器の概念設計
Conceptual design for proton accelerator with cyclotron auto-resonance

○原 隆文,福田 光宏,神田 浩樹,依田 哲彦,中尾 政夫,安田 裕介(RCNP),篠塚 勉,伊藤 正俊,松田 洋平(CYRIC),倉島 俊,宮脇 信正,涌井 崇志(QST)
○Takafumi Hara, Mitsuhiro Fukuda, Hiroki Kanda, Tetsuhiko Yorita, Masao Nakao, Yusuke Yasuda (RCNP), Tsutomu Shinozuka, Masatoshi Itoh, Yohei Matsuda (CYRIC), Satoshi Kurashima, Nobumasa Miyawaki, Takashi Wakui (QST)
 
近年、原子炉に代わる加速器ベースの中性子源の開発が進められており、加速器のさらなる大強度化が求められている。約500 keVまでと低エネルギーながら20 Aもの大強度の電子を加速することに成功した加速法に自動サイクロトロン共鳴加速法がある。自動サイクロトロン共鳴加速法は磁場中を回転する荷電粒子と同じ角速度で回転する電場を発生させ、荷電粒子をその回転方向と同じ向きに常に加速する方法である。我々は自動サイクロトロン共鳴加速法を陽子に適用し、大電流の陽子を数十MeVまで加速する陽子加速器の開発を目指している。サイクロトロン共鳴周波数は磁束密度に比例し、粒子の質量に反比例するため、電子の2000倍の質量を持つ陽子に対するサイクロトロン共鳴加速器の実現には強力な磁場の発生が鍵となる。OPERA-3Dを用いた有限要素電磁場解析により高温超伝導線材を利用したコイルシステムおよびTE111モードの高周波用の共振空洞を設計し、8 Tの静磁場と121 MHzの円偏光を持つ電磁場の設計を行った。さらにこの静磁場と電磁場中の陽子ビームの挙動をOPALによって計算し、30 MeVまでの陽子の加速を確認した。また陽子のバンチに含まれる電荷を増大し、100 mA相当のビームに対しても十分に小さな横方向の広がりで加速を行えることを示した。本発表では、磁場と共鳴空洞の計算と、その電磁場中の陽子の軌道計算結果について発表する。
 
16:30-16:50 
WEOT05

[Slides]
核融合中性子源A-FNSのための大電流重陽子加速器の概念設計
Conceptual Design of a High-Current Deuteron Accelerator for Advanced Fusion Neutron Source (A-FNS)
○増田 開,春日井 敦,佐藤 聡,落合 謙太郎,太田 雅之,小柳津 誠,権 セロム,長谷川 和男,坂本 慶司,石田 真一(量研)
○Kai Masuda, Atsushi Kasugai, Satoshi Sato, Kentaro Ochiai, Masayuki Ohta, Makoto Oyaidzu, Saerom Kwon, Kazuo Hasegawa, Keishi Sakamoto, Shinichi Ishida (QST)
 
核融合中性子源A-FNSは、d-Li反応による~7E16 n/sec CW(目標値)のDT核融合ライクなエネルギースペクトルを有する中性子を発生する強力中性子源であり、現在概念設計を終えて工学設計に向けた準備を進めている。A-FNSにおける加速器の役割は、重陽子ビームを生成、加速し、所定の長方形断面形状に整形して液体Liターゲットに入射することである。発生中性子エネルギーに対する要求から重陽子ビームエネルギーは40 MeV、中性子束に対する要求からビーム電流は125 mA CW、年間中性子フルエンスに対する要求から87 %の高い可動率が求められる。要求されるビーム電流は従来の陽子/重陽子加速器での達成値を超える高い目標値であり、その工学実証のため上流部9 MeVまでのプロトタイプであるIFMIF原型加速器LIPAcの建設が進められている。現在までに低デューティではあるもののRFQ出口で所期の5 MeV、125 mAの重陽子ビーム加速に成功した一方、放射化の評価など今後の高デューティ試験における課題も残されている。また、後段SRF Linacにおける~2E-7 /mの低ビーム損失率の要求などLIPAcにおいては検証が難しい課題もある。A-FNS加速器の工学設計に向けて、今後LIPAcで検証すべき課題、期待される成果や、その結果として必要となるかもしれない代替設計の概念について議論する。
 
高周波源・LLRF (9月2日 講演会場1)
17:10-17:30 
WEOO06

RCNP AVFサイクロトロンのアップグレードのための詳細設計
Design for the RCNP AVF cyclotron upgrade
○福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,安田 裕介,中尾 政夫,畑中 吉治,齋藤 高嶺,森信 俊平,田村 仁志,永山 啓一,吉田 英智,阿野 真治,友野 大,鎌野 寛之,木林 満,Koay Hui Wen,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,大本 恭平,荘 浚謙,久松 万里子(阪大RCNP),鎌倉 恵太(東大CNS)
○Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Yusuke Yasuda, Masao Nakao, Kichiji Hatanaka, Takane Saito, Shunpei Morinobu, Hitoshi Tamura, Keiichi Nagayama, Hidetomo Yoshida, Shinji Ano, Dai Tomono, Hiroyuki Kamano, Mitsuru Kibayashi, Hui Wen Koay, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Kyohei Omoto, Tsun Him Chong, Mariko Hisamatsu (RCNP, Osaka University), Keita Kamakura (CNS, University of Tokyo)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では、K140 AVFサイクロトロンの高性能化を目指したアップグレードを進めている。2019年度は建屋設備の部分的な改修を行い、ビーム強度を従来の10倍以上に高めるための準備を完了した。2020年6月から既存のAVFサイクロトロンの解体工事が始まり、本体電磁石ヨークやメインコイルを除く大半の機器の更新を2021年2月頃までに終える予定である。入射ビームの高輝度化を目指してイオン源での加速電圧を50kV程度まで増やすための絶縁・耐電圧試験等を進めている。AVFサイクロトロン中心領域へのビーム入射効率を高めるため、入射ビームラインのビーム輸送光学を見直すと共に、インフレクター電極等の中心領域の配置や構造なども全面的に更新する。開き角87度の2つのディー電極を対向させた同軸型ショート板方式の共振器システムを採用し、ループ結合によりRFパワーを入力させる。基本波周波数帯域を従来の2倍の16~36MHzに上げ、加速ハーモニクス2を基本とする加速によりエネルギー利得の増大とターンセパレーションの拡大を目指す。また、サブハーモニック・バンチャーとの組み合わせにより後段のリングサイクロトロンとの整合性を確保し、従来と同じ幅広い加速エネルギー範囲をカバーする。本発表においては、AVFサイクロトロンのアップグレード設計とプロジェクトの進行状況などについて報告する。
 
17:30-17:50 
WEOO07
p.46
[Slides]
J-PARCリニアックの低電力高周波機器の湿度変動補正
Phase drift correction system of LLRF for humidity at J-PARC Linac

○二ツ川 健太,Cicek Ersin,方 志高,福井 佑治(高エネルギー加速器研究機構),平根 達也,篠崎 信一(日本原子力研究開発機構),佐藤 福克(日本アドバンストテクノロジー株式会社)
○Kenta Futatsukawa, Ersin Cicek, Zhigao Fang, Yuji Fukui (KEK), Tatsuya Hirane, Shinichi Shinozaki (JAEA), Yoshikatsu Sato (NAT)
 
J-PARCリニアックでは、2018年頃からリニアック出射の運動量を常時モニタできる体制が整ってきた。その測定値を分析すると、リニアック出射の運動量は低電力高周波制御(LLRF)システムを設置しているクライストロンギャラリの湿度に依存して変動していることが明確になった。恒温恒湿槽を用いてLLRFを構成する機器の湿度依存性を測定した結果、一つの機器だけでもギャラリの環境下で最大で4 deg.程度の変動があり得ることが分かった。LLRFシステムの設置場所の全てにおいて恒温恒湿環境を準備することは困難なことから、一部のステーションに対して恒温恒湿環境の体制を整え、その測定結果を元に湿度によるドリフトの補正を実施することで運動量の安定化を図っている。現在、一部は暫定的な測定器を用いて補正を実施しており、本年の夏期シャットダウン以降から本格的な補正を実施する予定である。本講演では、高周波機器のドリフトの補正に関して、現状と今後の計画を発表する予定である。
 
17:50-18:10 
WEOO08
p.51
[Slides]
Sバンド長パルスクライストロン出力窓放電のパルス内遮断の効果
Effect of shut-off of RF window breakdown during the long-pulse operation of S-band klystron

○田中 俊成,境 武志,早川 建,早川 恭史,住友 洋介,高橋 由美子,野上 杏子(日本大学電子線利用研究施設)
○Toshinari Tanaka, Takeshi Sakai, Ken Hayakawa, Yasushi Hayakawa, Yoske Sumitomo, Yumiko Takahashi, Kyoko Nogami (LEBRA, Nihon University)
 
日大FELリニアックのクライストロン(PV-3030A3)は導波管真空排気強化によりRF窓の放電を抑制しRFパルス幅20µs、ピーク出力20MW、12.5ppsでの動作を実現し運用してきた。しかし長期的にはRF窓の放電と破損が避けられず、この数年は対策の一つとして、放電で導波管内真空度が悪化した際にクライストロンモジュレーターのトリガーを遮断する措置を採ってきたが十分ではなかった。一旦生じた放電が長いRFパルスの終端まで持続した結果、セラミックの極端な温度上昇を招き、膨張による応力で最後には破損すると推定された。そこで、RF窓下流の出力モニター波形に現れる放電時の信号レベル変化を検出し、クライストロン入力RFを短時間で遮断し放電を停止する、クライストロン保護システムを製作・導入した。現状では放電検出後約250nsでクライストロン入力RFを遮断し、概ね400ns以内に出力が停止している。また後続のRFパルス幅を抑制し、その後徐々に自動回復させる等の機能も持つ。すでに破損し使用が危ぶまれていたクライストロン2台は、RF窓が放電しても導波管真空度の悪化が緩和され、またパルス間の放電持続も抑制され、停止せずに速やかに正常な運転が回復するため利用実験の遂行に貢献している。この保護システムは加速管側の放電による反射RF増大時にも対応する。さらに利用実験への便宜のため、放電時のクライストロン動作と光源の状況を測定系に反映させる対策も検討中である。
 
18:10-18:30 
WEOO09
p.56
[Slides]
Present Status of Digital Feedback and Feedforward Project Using Red Pitaya STEMlab
○Ersin Cicek, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Kenta Futatsukawa, Satoshi Mizobata (KEK), Shinichi Shinozaki, Tatsuya Hirane, Yasuhiro Fuwa (JAEA), Yuhei Iwama, Yoshikatsu Sato (NAT)
 
In all accelerator facilities, a Low-Level RF (LLRF) system is required to stabilize RF field, to obtain an RF signal with flat amplitude and phase, by suppressing the presence various disturbances in RF system. Currently, a simple Digital Feedback (DFB) system to be applied in the Klystron Test Stand in J-PARC Linac is under construction. For that purpose, a Red Pitaya STEMlab board of high performance, small size, low cost, reconfigurable instrumentation and open source is preferred in our design to build a high performance LLRF setup. All the needed software and hardware components to be used in this project, such as IQ Modulator, IQ Demodulator and STEMlab board containing Field Programmable Gate Array (FPGA), Analog to Digital Converter (ADC) and Digital to Analog Converter (DAC) are supplied by J-PARC resources. The correction of IQ-Modulator and IQ-Demodulator is completed by using a new digitizer based on micro-TCA.4. Also, this digitizer, under developed, will be used to improve the beam quality in the future LLRF system of J-PARC Linac. The preliminary results of the design and tests of the aforementioned compact DFB system are presented in this paper.
 
加速器制御 (9月2日 講演会場2)
17:10-17:30 
WEOT06
p.60
強化学習による実プラント設備への適用検証
Applying reinforcement learning to real equipment system for process control

○高見 豪,旭沢 仁(横河電機株式会社),松原 崇充(奈良先端科学技術大学院大学)
○Go Takami, Hitoshi Asahizawa (Yokogawa Electric Corporation), Takamitsu Matsubara (Nara Institute of Science and Technology)
 
従来より加速器の制御システムには多くのPLCが使用されてきた。 これに加えて、近年ではデータ収集システムにも多く使われるようになっており、例えばビームモニター用途として加速器中のビーム位置を 一定周期で計測することにも使用されている。 今後はその結果をもとにビームロスを自動調整するなど、単なる制御ではなくリアルタイムに収集したデータをもとにフィードバックをかけるなどの用途が期待されている。リアルタイムに収集した多くのデータを活用する技術として、機械学習の技術が考えられる。 機械学習には試行錯誤によって最適な行動規則を学習する強化学習という技術がある。従来の強化学習技術では現実の設備に対して適用することが困難であるとされてきた。強化学習では膨大なサンプル数が必要となるため、実化学プラントへの応用可能性があまり検討されていない。 一方で近年サンプル効率の高い強化学習アルゴリズムが提案されている。我々は強化学習を使ったプラント最適運転の研究を進めており、シミュレータでの有効性を確認している。そこで本研究ではシミュレータではなく、現実の設備である三段水槽に強化学習を適用した。従来のPLCで実施されるPID制御と強化学習による制御を比較し、強化学習の有効性を紹介する。
 
17:30-17:50 
WEOT07
p.64
[Slides]
畳み込みニューラルネットワークによる画像認識技術のマウンテンプロット画像への適用
Applying image recognition technology by convolutional neural networks to mountain plot images

○野村 昌弘,田村 文彦,島田 太平,山本 昌亘(原子力機構 J-PARC),古澤 将司,杉山 泰之 ,原 圭吾,長谷川 豪志,大森 千広,吉井 正人(高エネ研 J-PARC)
○Masahiro Nomura, Fumihiko Tamura, Taihei Shimada, Masanobu Yamamoto (JAEA J-PARC), Masashi Furusawa, Yasuyuki Sugiyama, Keigo Hara, Katsushi Hasegawa, Chihiro Ohmori, Masahito Yoshii (KEK J-PARC)
 
畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)よる画像認識は、幅広い分野で用いられ、優れた結果を残している。最近では、料理の画像からそのカロリーを算出する試み等も行われている。今回この画像認識の技術をJ-PARC RCSで調整時に用いられているマウンテンプロットと呼ばれる画像に適用し、この画像に含まれる情報、前段のLinacからの入射タイミングと入射運動量を求めてみた。マウンテンプロットとは、WCM(Wall Current Monitor) の波形を周回毎にスライスし、縦に並べて表示した画像である。実際に行った内容は、先ず初めに学習用の画像として、乱数で発生させた入射タイミングと入射運動量の値を用いてシミュレーションによりマウンテンプロットの画像を多数作成した。一つ一つの画像に対して、使用した入射タイミングと入射運動量の値が教師データとなる。次に、この作成された多くのマウンテンプロットの画像をCNNに学習させ、画像の特徴から教師データが求められる様にした。これらの準備の後に検証のために、学習済みのCNNを用いて新たなマウンテンプロットの画像から入射タイミングと入射運動量を求め、教師データとの比較を行った。結果は、CNNにより画像から求められた値は教師データを良く再現しており、この画像認識の技術の有効性が確かめられた。
 
17:50-18:10 
WEOT08
p.68
加速器における MTCA 普及に向けて
Towards widespread use of MTCA in accelerators

○田村 文彦,吉井 正人,上窪田 紀彦,高橋 博樹(J-PARCセンター)
○Fumihiko Tamura, Masahito Yoshii, Norihiko Kamikubota, Hiroki Takahashi (J-PARC Center)
 
MTCA (MicroTCA) は加速器における高度な制御の次世代プラットフォームとして期待されている。現在広く用いられている VME よりも高速、大容量のデータ転送が可能なバックプレーン、モジュールなどがホットスワップ可能である高い保守性など、MTCA には利点が多い。KEK において LLRF 制御への適用がなされたのちに、世界の多くの加速器において MTCA は採用されている。日本国内の加速器でのMTCA の広がりには時間を要しているのが実情であるが、最近になり J-PARC RCS の LLRF 制御などの大規模な採用事例も増えてきた。本発表では、MTCA の採用事例を紹介するとともに、なぜ国内では MTCA の普及が遅れているのかについて考察を行なう。また、今後の MTCA 普及のための取り組みについて報告を行う。
 
18:10-18:30 
WEOT09
p.73
SuperKEKBにおけるWhite Rabbitシステム動作試験と初期運用
Performance test and initial application of White Rabbit system at SuperKEKB

○梶 裕志(高エネルギー加速器研究機構),飯塚 祐一(東日本技術研究所)
○Hiroshi Kaji (KEK), Yuichi Iitsuka (EJIT)
 
White Rabbitシステムはネットワーク上の多ノード間での時刻同期を基にした多機能型高速制御システムである。その機能としては「タイミングトリガー伝送」「RF clock伝送」「分散形データ収集システム(Distributed DAQ)」などがすでに実現されており、今後もさらに応用事例が生まれると期待されている。KEKでもWhite Rabbitの高い時刻同期精度と多機能性に注目し、他研究機関からの情報収集や実機での動作検証を行ってきた。その後、2020年4月にはスレイブノード2台の小規模システムながらもSuperKEKB加速器の制御システムへの実装を行い、既存のタイミングシステム・アボートトリガーシステムとの間の時刻同期も実現した。本講演では我々の動作検証結果とSuperKEKBへの最初の実装例について紹介する。
 
18:30-18:50 
WEOT10
p.78
[Slides]
SuperKEKBにおけるRF位相変調を用いたバケットセレクション
Bucket slection with RF phase modulation at SuperKEKB

○杉村 仁志,梶 裕志,佐藤 政則,宮原 房史,小林 鉄也,三浦 孝子,松本 利広(高エネルギー加速器研究機構),飯塚 祐一(東日本技術研究所),王 迪(総研大),草野 史郎,工藤 拓弥(三菱電機システムサービス株式会社)
○Hitoshi Sugimura, Hiroshi Kaji, Masanori Satoh, Fusashi Miyahara, Tetsuya Kobayashi, Takako Miura, Toshihiro Matsumoto (KEK), Yuichi Iitsuka (EJIT), Di Wang (SOKENDAI), Shiro Kusano, Takuya Kudou (MSC)
 
SuperKEKB加速器では電子陽電子衝突のルミノシティを増加させるため、入射パルス頻度50Hzで運転を行っている。50Hzでの運転を全て陽電子ビームの入射に利用する場合、ダンピングリングの最低蓄積時間40msの制約により、ダンピングリング内に陽電子ビームが2パルス蓄積した状態が生じる。この時、タイミングシステムはバケット選択の自由度が1パルス運転に比べ約1/8となり、50Hzのビーム全てをダンピングリングに入射することができない。そのため、2パルス運転では電子陽電子入射器のRFの位相変調を行うことで自由度を11倍に増やし、連続的な入出射を実現しようとしている。これらのアルゴリズムを構築し、2019年10月から位相変調試験を行った。位相変調によりRFのスレッド反転タイミングのずれが生じる。タイミングがずれることによりビームエネルギーにずれが生じる。この影響を調べるため、位相変調に伴うエネルギーのずれを測定し、エネルギーのずれが蓄積リングへの入射に影響を及ぼさないレベルであるかを評価した。本発表では定量的な評価について報告を行う。
 
加速器応用・産業利用 (9月3日 講演会場1)
09:00-09:20 
THOO01
p.83
[Slides]
電子線形加速器を利用したRa-225/Ac-225製造の基礎検討
Study of Ra-225 / Ac-225 production using an electron linac

○尾関 政文,三好 邦博,上坂 充(東大)
○Masafumi Ozeki, Kunihiro Miyoshi, Mitsuru Uesaka (Univ. of Tokyo)
 
東京大学工学系研究科は、電子線形加速器を利用したAc-225国内製造を検討している。国内の放射性医薬品の臨床研究を促進させるためにも、自給生産システムの確立が重要である。製造はRa-226ターゲットにγ線を照射し、226Ra(γ,n)225Ra反応にてRa-225を生成した後、Ra-225から自然崩壊するAc-225を化学抽出する手法を構想している。 本発表では、理想的なRa-226ターゲットを想定し、電子線形加速器を用いたRa-225 / Ac-225の製造量検討と熱設計計算について報告する。電子線形加速器のエネルギー/パワーは35MeV / 35kWとし、製造量の計算にはPHITSシミュレーションを用いた。計算精度向上のため、D-CHAIN機能を利用した計算とPHITSから得られる制動放射線データを抽出し、マクロ計算を行った。 また、照射時の熱設計を行っており、現実的な照射条件を追究している。計算には有限要素法シミュレーションを用いる。PHITSの計算結果から電子ビーム照射時の発熱データを取得し、温度計算を行った。照射時にはHeガスによる空冷を想定した。融点が696℃であるRa-226ターゲットは35MeV / 35kWのハイパワー照射では融解してしまうため、ターゲット設計に工夫が必要である。工学的諸条件を加味した照射条件について報告する。
 
09:20-09:40 
THOO02

cERLにおける電子線を用いた医療用RI製造試験
Medical RI production by using electron beam at cERL in KEK
○森川 祐,原田 健太郎,山本 将博,芳賀 開一,萩原 雅之,東 直,本田 洋介,本田 融,保住 弥紹,加古 永治,神谷 幸秀,河田 洋,小林 幸則,松村 宏,満田 史織,三浦 太一,三浦 孝子,宮島 司,長橋 進也,中村 典雄,中西 功太,濁川 和幸,野上 隆史,帯名 崇,加藤 龍好,下ヶ橋 秀典,阪井 寛志,島田 美帆,多田野 幹人,高井 良太,高木 宏之,田中 織雅,谷本 育律,豊田 晃弘,内山 隆司,上田 明,梅森 健成,舟橋 義聖,吉田 剛,Qiu Feng,道園 真一郎(KEK),川端 方子,太田 朗生,本村 新,本石 章司,佐藤 典仁,柴田 徳思(千代田テクノル)
○Yu Morikawa, Kentaro Harada, Masahiro Yamamoto, Kaiichi Haga, Masayuki Hagiwara, Nao Higashi, Yosuke Honda, Tohru Honda, Mitsugu Hosumi, Eiji Kako, Yukihide Kamiya, Hiroshi Kawata, Yukinori Kobayashi, Hiroshi Matsumura, Chikaori Mitsuda, Taichi Miura, Takako Miura, Tsukasa Miyajima, Shinya Nagahashi, Norio Nakamura, Kota Nakanishi, Kazuyuki Nigorikawa, Takashi Nogami, Takashi Obina, Ryukou Kato, Hidenori Sagehashi, Hiroshi Sakai, Miho Shimada, Mikito Tadano, Ryota Takai, Hiroyuki Takaki, Olga Alexandrovna Tanaka, Yasunori Tanimoto, Akihiro Toyoda, Takashi Uchiyama, Akira Ueda, Kensei Umemori, Yoshisato Funahashi, Go Yoshida, Feng Qiu, Shinichiro Michizono (KEK), Masako Kawabata, Akio Ota, Arata Motomura, Shoji Motoishi, Norihito Sato, Tokushi Shibata (Chiyoda Technol .co)
 
電子線加速器の産業応用に向けてcERLの電子線照射ビームラインではRI製造や材料改質試験が行われている。RI製造試験においては、核医学診断に用いられるRI-99mTcの大量製造に向けた基礎技術確立を目指し、99mTc親核である99Mo製造や照射試料からの99mTc抽出試験が行われている。今回はこれらRI製造/抽出試験の結果や99mTc/99Mo以外の核種製造などの展望について報告する。
 
09:40-10:00 
THOO03

[Slides]
超伝導BNCTシステムの検討
Basic feasibility study for superconducting BNCT system
○片山 領,加古 永治,山口 誠哉,道園 真一郎,梅森 健成(高エネルギー加速器研究機構),近藤 恭弘(日本原子力研究開発機構)
○Ryo Katayama, Eiji Kako, Seiya Yamaguchi, Shinichiro Michizono, Kensei Umemori (KEK), Yasuhiro Kondo (JAEA)
 
超伝導空洞を用いたBNCT用の加速器型中性子源の実現可能性について検討した。BNCTでは患者の治療時間短縮のため10^9 neutrons/cm2/s を産出できる中性子源が必要となる。超伝導空洞は表面抵抗が著しく低いため連続ビーム運転と経済性の両立が可能であり、陽子もしくは重陽子ビームを用いて十分な量の中性子数を確保できる見込みがある。また、経験的に Kilpatrick の放電限界を受けないことから従来にない大胆な設計を取れる可能性がある。そこで、本研究でイオン源とLEBTとRFQのみで構成された最も単純な系を想定したビームダイナミクスシミュレーションを行い、表面発熱による冷凍機負荷、システムに要するRFQの設計、達成できるビーム電流値を総合的に評価して超伝導BNCTシステムの実現可能性を調査した。本発表で当該シミュレーション研究で得られた内容について報告する。
 
10:00-10:20 
THOO04

核融合中性子源A-FNSの概念設計
Conceptual design of fusion neutron source A-FNS
○春日井 敦,バチャフ ロシャン,長谷川 和男,石垣 重明,石田 真一,粕谷 研一,権 セロム,増田 開,中村 誠,落合 謙太郎,太田 雅之,小柳津 誠,坂本 慶司,坂本 良太,佐藤 聡(量研/六ヶ所)
○Atsushi Kasugai, Roshan Bachhav, Kazuo Hasegawa, Shigeaki Ishigaki, Shinichi Ishida, Kenichi Kasuya, Saerom Kwon, Kai Masuda, Makoto Nakamura, Kentaro Ochiai, Masayuki Ohta, Makoto Oyaidzu, Keishi Sakamoto, Ryota Sakamoto, Satoshi Sato (QST/Rokkasho)
 
核融合原型炉の実現に必要な材料照射試験を実施する手段として、40MeVの重陽子ビームをリチウムターゲットに当て大量の高速中性子を発生させる加速器駆動型核融合中性子源(IFMIF)の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA)が日欧の国際協力の下で実施されている。量研は実施機関として、IFMIF原型加速器を六ヶ所核融合研究所に欧州と共同で建設し、連続した重陽子ビームを125mA、9MeVまで加速する実証試験を実施している。また大電流の重陽子ビームのターゲットとなる高速液体リチウム流の安定生成を実証する実規模のリチウム試験ループを製作し、長時間にわたる安定的な液体リチウム流を2014年に実証した。これらの成果を基に、核融合原型炉開発ロードマップに従い核融合中性子源A-FNSの概念設計を進め、2020年に概念設計書を完成させた。A-FNSの基本コンセプトは、加速器系はIFMIFの1ライン分(125mA)とし、IFMIFの中間工学設計をベースにしている。国際協力で進めるIFMIF/EVEDAの成果を活用しA-FNSの加速器系として再構築した。ターゲット系はIFMIF/EVEDAの成果を反映させた。照射モジュール系は核融合材料試験用として日本独自案として9種類のモジュールの検討を実施した。ターゲット系メンテナンスや試験材料の交換などについては高放射線量下での作業となるため、遠隔保守システムの検討を実施した。またA-FNSは、中性子の医療・産業利用も視野に入れた多用途中性子源としている。
 
加速器土木/レーザー (9月3日 講演会場2)
09:00-09:20 
THOT01
p.88
[Slides]
吸着式蓄熱材を用いた大型加速器からの排熱利用に関する研究
Study of Utilizing Waste Heat from A Large-scale Accelerator with Adsorption Thermal Storage Materials

○佐々木 明日香,水戸谷 剛,赤堀 卓央(東日本機電開発株式会社),鈴木 正哉,万福 和子(産業技術総合研究所),小久保 孝,谷野 正幸,佐藤 現,村岡 慎一(高砂熱学工業株式会社),髙橋 福巳,姉帶 康則(株式会社WING),大平 尚(岩手県),吉岡 正和,成田 晋也(岩手大学)
○Asuka Sasaki, Goh Mitoya, Takao Akabori (HKK), Masaya Suzuki, Kazuko Manpuku (AIST), Takashi Kokubo, Masayuki Tanino, Gen Sato, Shinichi Muraoka (Takasago Thermal Engineering Co., Ltd.), Fukumi Takahashi, Yasunori Anetai (WING Co., Ltd.), Hisashi Odaira (Iwate Prefectural Office), Masakazu Yoshioka, Shinya Narita (Iwate University)
 
Construction of the International Linear Collider (ILC) in Japan has been considered. Since a large-scale accelerator such as the ILC is a facility with huge power load, it is important subject to build a sustainable power system in the operation. The electric power supplied to an accelerator is dissipated into the air as thermal energy from the cooling tower at the end. The temperature of the waste heat is usually less than 60 ℃ and it has not been reused so far. The water vapor adsorption material HASClay composed of nano-sized clay has been recently developed. It has a heat storage capacity with a principle of energy transfer in the desorption of water vapor. It particularly has an excellent storage ability for low-grade heat (<100 ℃). In addition, the heat stored can be reused offline by transporting the material with a sealed container. Now it is possible to establish a new heat supplying service if we can recover it by the HASClay from not only the ILC waste, but also various sources in the area around the ILC. In this study, we have developed a new technology to utilize the low-grade heat with a portable container aiming to establish an offline heat transportation system.
 
09:20-09:40 
THOT02
p.93
アラニン線量計を用いた大強度陽子加速器周辺の線量測定の基礎的検討
Feasibility study on dosimetry using alanine dosimeter around high-intensity proton accelerator

○山口 英俊(産総研),橋本 義徳(高エネ研),清水 森人(産総研),山崎 寛仁,中村 一,白形 政司(高エネ研),酒井 浩志(三菱電機SC),黒澤 忠弘(産総研)
○Hidetoshi Yamaguchi (AIST), Yoshinori Hashimoto (KEK), Morihito Shimizu (AIST), Hirohito Yamazaki, Hajime Nakamura, Masashi Shirakata (KEK), Hiroshi Sakai (Mitsubishi SC), Tadahiro Kurosawa (AIST)
 
大強度陽子加速器(J-PARC)のトンネル内では、陽子ビームの発生に伴い非常に多くのガンマ線や中性子線が発生しているため、トンネル内の線量モニタリングが重要である。また、トンネル内で使用される測定器をはじめ各種材料に関しての耐放射線特性を調べる需要が高い。1 Gy 程度から100 kGy 程度までのダイナミックレンジの広い線量計としてアラニン線量計がある。産業技術総合研究所では、滅菌などに使用される大線量測定のために、アラニン線量計を用いた線量測定法を研究している。アラニン線量計は化学線量計の1つであり、大線量の測定の不確かさが小さく、放射線照射後の信号が非常に安定であるため、大線量測定における参照標準線量計として使用されている。本研究では、アラニン線量計を用いて、ガンマ線と中性子線の混在場での実践的測定方法と、解析方法の信頼性を追求する。2019年度には、J-PARCメインリング加速器の異なる三箇所にアラニン線量計を設置し、約二ヶ月間に渡って線量を測定した。比較のために、半導体検出器であるRADMONや個体チップであるOSL(Optical Stimulated Luminescence)線量計での測定も行った。これらの測定結果を合わせて報告する。
 
09:40-10:00 
THOT03
p.97
[Slides]
レーザー駆動イオン加速における炭素イオンのビーム特性診断
Diagnosis for carbon beam characteristic in laser driven ion acceleration

○宮武 立彦(九州大学大学院),小島 完興,榊 泰直(量研機構(関西研)),岩田 佳之(量研機構(放医研)),近藤 康太郎,西内 満美子(量研機構(関西研)),白井 敏之(量研機構(放医研)),神門 正城,近藤 公伯(量研機構(関西研)),渡辺 幸信(九州大学大学院)
○Tatsuhiko Miyatake (Kyushu univ.), Sadaoki Kojima, Hironao Sakaki (QST KPSI), Yoshiyuki Iwata (QST NIRS), Kotaro Kondo, Mamiko Nishiuchi (QST KPSI), Toshiyuki Shirai (QST NIRS), Masaki Kando, Kiminori Kondo (QST KPSI), Yukinobu Watanabe (Kyushu univ.)
 
量研(QST)では、「量子メス計画」と呼ばれる、超電導シンクロトロンとレーザー駆動重イオン加速型インジェクターを用いる超小型重粒子線治療器開発計画が進められている。レーザー駆動イオン加速とは、薄膜ターゲットに10^18W/cm^22以上の集光強度でレーザーを照射することで、ターゲット内の電子が加速され、ターゲット後方に飛び出した電子が生成する荷電分離電場によって高エネルギーイオンを発生させる過程である。このメカニズムは、レーザー・ターゲット条件に応じてプロトンや重イオンである炭素、酸素イオンなどの様々な核種・価数のイオンが広域なエネルギー帯で同時に発生するという特徴を持つため、重イオンのビーム品質を診断する際、対象以外の核種、価数、エネルギーのイオンによる信号が重畳し計測が難しく、重イオンビーム品質について評価が行われた例は極めて少ない。入射器として本メカニズムによる重イオンビームを用いるには、単色エネルギー・単核種イオンのビームを選択的に取り出し、診断する必要がある。そこで本研究では、炭素イオンに関して、イオンの純化を行うために静電磁場によるビーム制御を行ったうえで、エミッタンス、パルス幅及び電流量の計測を行う。そして、多種多様なイオンビームが混在し相互に影響する際のビームダイナミクスを、Particle In Cellコードを用いて解析する。本発表ではその進捗状況を報告する。
 
10:00-10:20 
THOT04
p.100
回折結晶を利用したレーザー・コンプトン散乱ガンマ線のエネルギー、角度分布の再構成
Reconstruction of Laser Compton Scattered gamma-ray in the Energy-Angle Phase Space from Crystal Diffraction Data

○羽島 良一,早川 岳人,静間 俊行(量研),宮本 修治(兵庫県立大),松葉 俊哉(高輝度光科学研究センター)
○Ryoichi Hajima, Takehito Hayakawa, Toshiyuki Shizuma (QST), Shuji Miyamoto (Hyogo U.), Shunya Matsuba (JASRI)
 
レーザー・コンプトン散乱(LCS)によるガンマ線発生では、散乱角度と散乱光子(ガンマ線)エネルギーに相関があるため、コリメータで散乱角度を制限することで準単色化したガンマ線を利用できる。しかしながら、現実の実験では、散乱点において電子とレーザーが有限の角度広がりと運動量広がりを持っていることが、単色性を損なう原因となっている。LCSで発生したガンマ線が、エネルギーと角度の位相空間でどのような分布を持っているのかを測定し、散乱点の情報から計算される分布と比較すれば、LCSガンマ線の単色性を向上し、また、輝度を高めるために必要な情報が得られる。われわれは、シリコン結晶で回折したガンマ線のエネルギースペクトルにトモグラフィーの手法を組み合わせることで、LCSガンマ線のエネルギー角度分布=(E,θ)分布が再構成できることを提案する。再構成の手法とニュースバルで行った実験結果について報告する。本研究は、科研費17H02818の成果である。
 
ビーム診断・制御① (9月3日 講演会場1)
10:40-11:00 
THOO05
p.105
電気光学サンプリングによる電子ビーム周りのテラヘルツ電場計測
Measurement of terahertz electric field around electron beam using electro-optic sampling

○菅 晃一(阪大産研),太田 雅人,中嶋 誠,有川 安信,清水 智貴,瀬川 定志,坂和 洋一(阪大レーザー研),駒田 蒼一朗,松井 龍之介(三重大)
○Koichi Kan (ISIR, Osaka University), Masato Ota, Makoto Nakajima, Yasunobu Arikawa, Tomoki Shimizu, Sadashi Segawa, Youichi Sakawa (ILE, Osaka University), Soichiro Komada, Tatsunosuke Matsui (Mie University)
 
阪大産研では、レーザーフォトカソードRF電子銃ライナックを利用し、高時間分解パルスラジオリシスによる反応解析および電子ビーム発生・計測の研究を行っている。このようなピコ秒・フェムト秒における電子の時間構造の計測手法は、電子ビームを利用した時間分解計測のみならず、慣性核融合分野においてもプラズマの温度・密度ダイナミクスを理解する観点から、必要となっている。 本発表では、電気光学(EO, Electro-optic)結晶を用いた電子ビームの時間分布計測(35 MeV)について報告する。電子ビームの水平位置を変化させながら、電気光学結晶(ZnTe (110), 厚1 mm)および適宜光学遅延したフェムト秒レーザーを用いて、電子ビームの周りのテラヘルツ電場の計測を行った。当日は、測定結果(テラヘルツ電場分布、照射効果等)の解析について報告する。
 
11:00-11:20 
THOO06
p.108
[Slides]
SPring-8における新設計の傾斜配置型光位置モニタと蓄積リングのフィリング・パターンによる影響削減
Newly designed inclined X-ray beam position monitor and reduction of influence due to filling patterns of the SPring-8 Storage Ring

○青柳 秀樹,古川 行人,高橋 直(高輝度光科学研究センター)
○Hideki Aoyagi, Yukito Furukawa, Sunao Takahashi (JSARI)
 
SPring-8蓄積リングのフィリング・パターンを変更した時に、挿入光源ビームライン用光位置モニタ(X-ray Beam Position Monitor, XBPM)の出力値に影響が生じる現象が顕在化してきた。その影響は、水平20 um RMS 鉛直40 um RMS(光軸の角度に換算して1~2uradに相当)に達していた。原因は、検出素子受光部での光電子放出の際の空間電荷効果がバンチ電流値の変化により影響を受けているためである。この問題を解決するために、XBPMのブレード型検出素子を傾斜配置とした新しい設計を取り入れた。実際のビーム運転にて運用し、フィリング・パターンの抑制の効果が高いことを実証した。また、既存の約30台のXBPMに対しては、影響を軽減するための考えうる方法を順次試み、一連の対策により、結果として 数um RMSのレベルまで抑制し、光軸調整時の定点観測等で運用している。
 
11:20-11:40 
THOO07
p.112
AIによる中空ビーム制御手法の開発
Development of hollow beam control method by AI

○森田 泰之,福田 光宏(RCNP),百合 庸介(QST高崎),友野 大,依田 哲彦,神田 浩樹,畑中 吉治,中尾 政夫,安田 裕介(RCNP),中島 悠太(IDS),Koay Hui Wen,武田 佳次朗,原 隆文,大本 恭平,久松 万里子,荘 浚謙(RCNP)
○Yasuyuki Morita, Mitsuhiro Fukuda (RCNP), Yosuke Yuri (QST Takasaki), Dai Tomono, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Kichiji Hatanaka, Masao Nakao, Yusuke Yasuda (RCNP), Yuta Nakashima (IDS), Hui Wen Koay, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Kyohei Omoto, Mariko Hisamatsu, Tsun Him Chong (RCNP)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では、ミューオン源“MuSIC”での低速ミューオン生成効率の向上のため、中空で円形の陽子ビームを生成して円筒形炭素標的の縁に近い領域へ集中的に照射することを検討している。この中空ビームは多重極電磁石の非線形磁場を用いることで形成できることがこれまでの研究で示されている。しかし、多重極電磁石による中空ビームの生成を解析的に検討する場合において、一般的に用いられる輸送行列計算コードではβ関数などを計算することができず、運動方程式を解いてシミュレーションを行う必要がある。そのため、最適なビーム輸送パラメータを求めるのに時間がかかり、理想のビーム形状やビーム径を実現できるよう短時間で調整を行うのは非常に困難である。そこで画像認識技術と強化学習を用いた人工知能(AI)技術を応用した中空ビームの形状やサイズの制御手法の開発を行った。まず、シミュレーションで得られた粒子密度分布を画像認識技術により解析し、目標とする分布とビームの形状やサイズの比較を行う。その後、その結果を踏まえ電磁石のK値を変更し、目標の形状およびサイズに近づけていく。その際、K値の変更の際に強化学習を応用することでK値とビームの形状や半径の関係を自ら学び、より効率的かつ正確な制御を実現する。本発表では、MuSICへの中空ビーム照射のビームライン設計の現状とAIを用いた制御手法の開発状況に関して述べる。
 
11:40-12:00 
THOO08
p.116
[Slides]
理研超伝導線形加速器ビームラインのためのエミッタンス測定及び光学系調整
Emittance measurement and ion optics tuning for SRILAC beamline

○西 隆博,内山 暁仁,上垣外 修一,坂本 成彦,長友 傑,福西 暢尚,藤巻 正樹,渡邉 環,渡邉 裕(理研仁科センター)
○Takahiro Nishi, Akito Uchiyama, Osamu Kamigaito, Naruhiko Sakamoto, Takashi Nagatomo, Nobuhisa Fukunishi, Masaki Fujimaki, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe (Nishina Center, RIKEN)
 
 我々は現在理化学研究所にて超伝導直線加速器及びそのビームラインの試験運転を行っている。この超伝導直線加速器は数 μA ~ 10 μA の重イオンを数 MeV/u まで加速することができるが、このような高強度の重イオンビームを実験標的まで輸送するには、ビームの素性を正確に測定しビームロスを最小限に押さえることが非常に重要である。  我々は今回ワイヤースキャナーを用いたビーム envelope の測定を複数の光学系に対して行ない、そのデータからビームのエミッタンス、及び位相空間での相関を再構成することに成功した。さらに測定されたビームの情報を基にオンラインで再設計した輸送光学系を適用し、最終的にφ 20 mm のビームラインに対して数 μA のビームを通過させることに成功した。本講演では具体的なビームの測定手順、及び輸送光学系の設計などについて報告する。
 
光源加速器① (9月3日 講演会場2)
10:40-11:00 
THOT05
p.120
[Slides]
コヒーレントTHzアンジュレータ放射の偏光スイッチング
Polarization-switching of coherent THz undulator radiation

○柏木 茂,齊藤 寛峻,寺田 健人,石附 勇人,鹿又 健,柴田 晃太朗,髙橋 健,長澤 育郎,南部 健一,日出 富士雄,三浦 禎雄,武藤 俊哉,山田 悠樹,山本 大喜,濱 広幸(東北大電子光),全 炳俊(京大エネ研),入澤 明典(阪大産研)
○Shigeru Kashiwagi, Hirotoshi Saito, Kento Terada, Yuto Ishizuki, Ken Kanomata, Kotaro Shibata, Ken Takahashi, Ikuro Nagasawa, Kenichi Nanbu, Fujio Hinode, Sadao Miura, Toshiya Muto, Hiroki Yamada, Daiki Yamamoto, Hiroyuki Hama (Tohoku Univ., ELPH), Heishun Zen (Kyoto Univ., IAE), Akinori Irizawa (Osaka Univ., ISIR)
 
東北大学電子光理学研究センターでは、フェムト秒時間幅の極短電子ビームによる高輝度コヒーレントテラヘルツ光源の開発を行っている。準単色のコヒーレントアンジュレータ放射(CUR)はその高強度光電場サイクルを直接使った物性研究への利用が期待できる。我々は、マイケルソン干渉計型を用いることで、直線偏光のCURから円偏光、楕円偏光などを作り出す偏光制御システムを開発中である。また、偏光制御システム内の光学ステージを僅か1/4波長(数十ミクロン)移動させるだけでヘリシティを高速にスイッチングすることが可能である。本学会では、波長板を用いた偏光度測定結果などについて報告する。
 
11:00-11:20 
THOT06

長マクロパルス光陰極運転による京都大学中赤外自由電子レーザの高性能化
Improvement of KU-FEL performance by long macro-pulse photocathode operation
○全 炳俊,大垣 英明(京大エネ研),羽島 良一(量研)
○Heishun Zen, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.), Ryoichi Hajima (QST)
 
京都大学中赤外自由電子レーザ(KU-FEL)では、超短パルス高強度中赤外レーザを用いたアト秒硬X線高次高調波発生(HHG)を目指し、KU-FELの性能向上に向けた研究開発を行っている。将来的には新しい光陰極高周波電子銃を追加し、バンチ電荷量1nC程度のマルチバンチ電子ビームを用いて中赤外FELを発振させ、HHGを行う予定である。本研究では、その前段階として、既設の高周波電子銃のLaB6陰極に外部から短パルスレーザを照射し、光陰極運転する事で、FEL発振に使う電子バンチの電荷量を増大させ、どの程度、強度および電子ビームからレーザ光への変換効率(引き出し効率と呼ぶ)が増大するかを試験した。結果として、マクロパルス長7 μs、バンチ繰り返し29.75 MHz、バンチ電荷量 190 pCの電子ビームを発生させ、FELを発振させることにより、波長11μmにおいて1ミクロパルス当り50 μJの強度を得た。また、引き出し効率測定により、最大9.4%の引き出し効率が達成されていることが確認された。これまでに共振器型自由電子レーザで確認された最高の引き出し効率はJAERI-FELの9%であり、今回得られた結果はそれを上回る世界最高記録である。本研究は文部科学省の光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP、JPMXS0118070271)によるものである。
 
11:20-11:40 
THOT07

[Slides]
cERLを用いた中赤外自由電子レーザーの開発とその光発生実験
Development of mid-infrared free-electron laser based on cERL and its lasing experiment
○加藤 龍好,阪井 寛志,土屋 公央,谷本 育律,本田 洋介,宮島 司,島田 美帆,帯名 崇,高井 良太,中村 典雄,原田 健太郎,高木 宏之,満田 史織,東 直,山本 将博,福田 将史,田中 織雅,野上 隆史,内山 隆司,江口 柊,塩屋 達郎,下ヶ橋 秀典,多田野 幹人,上田 明,長橋 進也,濁川 和幸,三浦 孝子,Qiu Feng,荒川 大,梅森 健成,許斐 太郎,加古 永治,中西 功太,本間 輝也,小島 裕二,河田 洋(KEK),羽島 良一,川瀬 啓悟(QST),坂本 文人(秋田高専),Norvell Nora Peak(SLAC)
○Ryukou Kato, Hiroshi Sakai, Kimichika Tsuchiya, Yasunori Tanimoto, Yosuke Honda, Tsukasa Miyajima, Miho Shimada, Takashi Obina, Ryota Takai, Norio Nakamura, Kentaro Harada, Hiroyuki Takaki, Chikaori Mitsuda, Nao Higashi, Masahiro Yamamoto, Masafumi Fukuda, Olga Alexandrovna Tanaka, Takashi Nogami, Takashi Uchiyama, Shu Eguchi, Tatsuro Shioya, Hidenori Sagehashi, Mikito Tadano, Akira Ueda, Shinya Nagahashi, Kazuyuki Nigorikawa, Takako Miura, Feng Qiu, Dai Arakawa, Kensei Umemori, Taro Konomi, Eiji Kako, Kota Nakanishi, Teruya Honma, Yuuji Kojima, Hiroshi Kawata (KEK), Ryoichi Hajima, Keigo Kawase (QST), Fumito Sakamoto (National Institute of Technology, Akita College), Nora Peak Norvell (SLAC)
 
近年、金属に代わる軽量で低コストな工業用素材として樹脂材料の需要が増えている。一方、中赤外波長領域は、物質固有の特異な吸収ピークがみられる波長領域であり、これは分子内の振動モードに由来している。様々な種類の樹脂材料の加工効率の向上を考えたとき、使用される樹脂材料ごとに異なるこの吸収特性を利用した非熱加工が理想的な加工手法と考えられる。しかしながら、各々の樹脂材料において、加工に最も適した波長や必要なパワー密度、パルス幅などの情報はほとんど得られていない。これは中赤外波長領域で、波長制御が可能な高出力の光源が存在しないことに起因している。KEKはNEDOからの競争的資金を得て、中赤外FEL(MIR-FEL)の開発を開始した。目的は、KEKにあるcERLを用いてMIR-FELを建設し、そのFELを産業用レーザーの開発に必要な加工用データベースを構築するための光源として使用することである。今年3月にアンジュレータ1台のみを用いた最初のFEL実験が行われ、自発放射よりも有意に増幅された光が観測された。さらに6月に2台のアンジュレータを用いたFEL実験が開始される予定である。本発表では、このFELシステムの概要とFEL発振実験で得られた性能について報告する。
 
11:40-12:00 
THOT08
p.124
[Slides]
アンジュレータ超放射のコヒーレンスを用いた電子ビーム特性測定の検討
Study of electron beam diagnostics using THz superradiant undulator radiation

○寺田 健人,柏木 茂,齊藤 寛峻,石附 勇人,鹿又 健,柴田 晃太朗,髙橋 健,長澤 育郎,南部 健一,日出 富士雄,三浦 禎雄,武藤 俊哉,山田 悠樹,山本 大喜,濱 広幸(東北大電子光)
○Kento Terada, Shigeru Kashiwagi, Hirotoshi Saito, Yuto Ishizuki, Ken Kanomata, Kotaro Shibata, Ken Takahashi, Ikuro Nagasawa, Kenichi Nanbu, Fujio Hinode, Sadao Miura, Toshiya Muto, Hiroki Yamada, Daiki Yamamoto, Hiroyuki Hama (Tohoku Univ., ELPH)
 
東北大学電子光理学研究センターでは、低エミッタンスかつフェムト秒時間幅の電子ビームを用いた高輝度コヒーレントテラヘルツ光源の開発を行っている。 磁気回路を用いたコヒーレントアンジュレータ放射は、テラヘルツ帯においては空間・時間コヒーレンスをもつ放射となる。この放射の空間コヒーレンスに着目しダブルスリットを用いることによって横方向コヒーレンス度を測定し、非破壊で電子ビームサイズやエミッタンスを測定することが期待できる。 本学会では、現在、検討中の測定システムなどについて報告する。
 
ビーム診断・制御② (9月3日 講演会場1)
15:40-16:00 
THOO09
p.127
[Slides]
J-PARCリニアックDTLの入射マッチング改善に向けた中エネルギービーム輸送系(MEBT1)のビーム測定
Beam measurement of medium energy beam transport line (MEBT1) to improve injection beam matching in J-PARC linac DTL

○楊井 京輔(JAEA, 茨大理工),飯沼 裕美(茨大理工),大谷 将士(KEK),近藤 恭弘(JAEA, 茨大理工),平野 耕一郎(JAEA),宮尾 智章(KEK),守屋 克洋(JAEA)
○Kyosuke Yanai (JAEA, Ibaraki Univ.), Hiromi Iinuma (Ibaraki Univ.), Masashi Otani (KEK), Yasuhiro Kondo (JAEA, Ibaraki Univ.), Koichiro Hirano (JAEA), Tomoaki Miyao (KEK), Katsuhiro Moriya (JAEA)
 
現在のJ-PARCリニアックは、初段RFQ出射ビームと比較して2段目のDTL出射ビームのエミッタンスが20~30%増加しており、今後の安定運転やさらなる大電流化に向けてビーム損失による残留放射線の増加等が懸念されている。エミッタンス増加の原因として、DTL入射ビームの不整合が考えられており、解決にはRFQ-DTL間の全長約3mの中エネルギービーム輸送系MEBT1におけるビームの諸パラメータを正確に把握する必要がある。 MEBT1におけるビームの光学計算にはQ-Scan法で測定したRFQ出射ビームのエミッタンスとTwissパラメータを用いているが、この測定の系統誤差が現状では定量的に評価されていない。このため、予備用RFQ試験設備であるRFQテストスタンドを用い、実機と同様にQ-Scan法により測定したエミッタンス及びTwissパラメータの測定結果を、2重スリット型エミッタンスモニタによる測定の結果と比較することで、系統誤差の評価を行った。 また、MEBT1のBPMで得られるビーム重心位置の測定精度にも疑念があり、現在のDTL入射ビーム軌道の制御にも最適化の余地がある。このため、MEBT1の重心位置情報の正確性確認のため、ビームベーストアライメント(BBA)によるBPMの中心確認と、BPM本体の健全性確認を行った。本発表ではこれらのビーム測定の結果を示す。
 
16:00-16:20 
THOO10
p.130
[Slides]
J-PARC高運動量ビームライン標的近傍のビームプロファイル測定システム
Beam profile measurement system in the neighborhood of the J-PARC High-momentum beamline target.

○武藤 史真,青木 和也,上利 恵三,秋山 裕信,家入 正治,小沢 恭一郎,加藤 洋二,倉崎 るり,小松 雄哉,里 嘉典,澤田 真也,高橋 仁,田中 万博,豊田 晃久,広瀬 恵理奈,皆川 道文,森野 雄平,山野井 豊,渡邉 丈晃(高エネルギー加速器研究機構)
○Fumimasa Muto, Kazuya Aoki, Keizo Agari, Hironobu Akiyama, Masaharu Ieiri, Kyoichiro Ozawa, Yohji Katoh, Ruri Kurasaki, Yusuke Komatsu, Yoshinori Sato, Shinya Sawada, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Yuhei Morino, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (High Energy Accelerator Research Organization)
 
J-PARCハドロン高運動量ビームラインは、10^10/spill(1spillは約2sec)の30 GeV陽子ビームを輸送し、実験標的に照射する。実験標的には銅標的(80μm)2枚、炭素標的(500μm)1枚を並べて使用する。標的総長は原子核相互作用長の0.2%に相当し、標的での反応数は約10 MHzと想定される。これに加えて、ビームハローにより生成される二次粒子が標的周辺の粒子計測率をさらに高め、これは実験の背景事象となる。実験遂行のためには、標的から僅か20 cm程度の場所に設置される飛跡検出器(Silicon Strip Detector:レート耐性30 kHz/mm^2)での背景事象を低く抑える必要があり、それには、二次粒子の生成源であるビームハローの分布測定が必要不可欠である。 そこで、実験標的近傍でのビームプロファイル測定を行うために、複数のビームプロファイル測定用標的と実験標的を一体化した標的チェンバーの開発をおこなった。一体とした機器は、(1)実験標的、(2)ビーム位置測定用蛍光板、(3)ビーム形測定用散乱標的、(4)実験データ校正用ワイヤー標的であり、低物質量化のために、マイラーによるHe封じ切りで製作した。 本発表では、ビームプロファイル測定用標的と実験標的を一体化した標的チェンバーの開発と、2020年のビームタイムで初めて実測したビーム分布について報告する。
 
16:20-16:40 
THOO11
p.135
ガスシートプロファイルモニタのための比感度係数分布測定
Measurement of relative sensitivity distribution for gas sheet beam profile monitor

○山田 逸平(同志社大/J-PARCセンター(原子力機構)),神谷 潤一郎,金正 倫計(J-PARCセンター(原子力機構)),和田 元(同志社大)
○Ippei Yamada (Doshisha Univ./J-PARC center(JAEA)), Junichiro Kamiya, Michikazu Kinsho (J-PARC center(JAEA)), Motoi Wada (Doshisha Univ.)
 
大強度イオン加速器では,破壊型のモニタは測定によりモニタが放射化・破損するため,利用が制限される.そのため,ビームの大強度化や高品質化を行う上で,非破壊型モニタが必要である.本研究では,ガスシートを用いた非破壊型のプロファイルモニタの開発を行っている.本モニタはシート状ガスとビームの相互作用で生じる光子の密度分布を測定してビームプロファイルを得るものである.光子測定に増幅器であるイメージインテンシファイアとCCDカメラを利用することで,ビームの横方向二次元プロファイルを取得できる.この時,ガスシートモニタから得られる信号分布は,ビームプロファイル,シートガスの密度分布,イメージインテンシファイアの増幅率分布,及びCCDカメラの各素子の感度に比例する.ビームプロファイル以外の項をまとめて比感度係数と定義すると,得られる信号をビームプロファイルに変換するためには,比感度係数分布が必要である.そこで電子ビームを用いた比感度係数分布測定手法を考案した.本装置はガスシートモニタ装置に,測定したいビームと比べて十分に細く,プロファイルが既知の電子ビームを照射して,生成する光子分布を取得するものである.電子ビームをシート平面上でスキャンして各点の信号強度比をまとめることで,ガスシートモニタの検出感度校正を行うことができる.本発表では,比感度係数測定装置の詳細,感度係数の測定例について報告する.
 
光源加速器② (9月3日 講演会場2)
15:40-16:00 
THOT09
p.140
[Slides]
次世代光源において過渡的ビーム負荷補償を行うためのキッカー空洞の検討
Study on the kicker cavity used for transient beam-loading compensation in the next-generation light sources

○内藤 大地,坂中 章悟,山本 尚人,高橋 毅,山口 孝明(高エ研)
○Daichi Naito, Shogo Sakanaka, Naoto Yamamoto, Tsuyoshi Takahashi, Takaaki Yamaguchi (KEK)
 
次世代の極低エミッタンス光源では、電子同士のバンチ内散乱によるビーム寿命の低下やエミッタンスの増大が問題となる。 そこで、主空洞と高調波空洞を組み合わせてバンチ長を伸ばす方法が提案されている。 しかしこの方法では電子ビームの位置でRF電圧の勾配を平らにするので、各空洞の電圧変化がバンチ伸長に深刻な影響を与える。 とりわけリングを周回するバンチトレイン中に存在するギャップは、各空洞に過渡的なビームローディング効果を起こしてバンチ伸長を制限する。 そこで我々のグループではこの過渡的ビームローディング効果を、広帯域のキッカー空洞を用いて補正する方法を提案した[1]。 本公演ではKEK-LSのリングパラメータを基にキッカー空洞自身のビームローディング効果やビームに与える影響を評価し、キッカー空洞に最適な空洞パラメータについて論じる。 また、現在検討中のキッカー空洞のデザインについても報告する。 [1] N.Yamamoto, PRAB 21, 012001 (2018)
 
16:00-16:20 
THOT10
p.145
極短周期アンジュレータの開発と光源性能評価試験 II
Development of a very short period undulator and characterization of the undulator radiation II

○山本 樹(高エネ機構・物構研),益田 伸一(高輝度光科学研究センター),細貝 知直(阪大・産研),神門 正城(量研機構)
○Shigeru Yamamoto (KEK-IMSS-PF), Shinichi Masuda (JASRI), Tomonao Hosokai (Osaka Univ., ISIR), Masaki Kando (QST)
 
近年我々は通常数10mmであったアンジュレータの周期長を約1/10に“極短周期化”することを目標にした研究開発を行って来た。周期長の短縮に伴う放射の高エネルギー化が期待できるからである。これまで,周期長4mmを目標に設定し,高精度・高強度のアンジュレータ磁場を生成する方式を開発し,対向させた一対の板状磁石間の隙間(ギャップ)に高精度アンジュレータ磁場(ギャップ1.6mmにおいて約3kG)を生成する方式を確立した。“極短周期”アンジュレータはそれ自体が非常にコンパクトなものになる結果として,光源本体のコンパクト化も期待できる。この意味で,レーザー航跡場を利用したコンパクトな光源開発とも非常に相性が良い。SPring-8 旧SCSS 収納部に建設したレーザー航跡場加速試験施設では,500mm 長磁石を装着した“極短周期”アンジュレータを設置して,レーザー加速電子ビームの開発と併せて放射光生成試験を試みてきた。最近,この施設において100MeV程度のビーム加速に成功し,500mm長10mm周期のアンジュレータから可視領域放射光の生成を確認することができた。放射光観測実験の詳細について報告する。併せて,“極短周期”アンジュレータの実用性を高めるために現在検討している,磁場強度の増強方法についても最新の成果について報告する。
 
16:20-16:40 
THOT11

高温超伝導を用いたアンジュレータの進展
Present Status of Undulators using High-Temperature Superconductors
○金城 良太,田中 隆次(理研放射光センター)
○Ryota Kinjo, Takashi Tanaka (RIKEN SPring-8 Center)
 
高温超伝導を用いたアンジュレータは、2004年に理研の田中隆次らによって提案され、2013年に京大の紀井、金城らによって永久磁石型を超える強度のアンジュレータ磁場の生成と磁場振幅の制御が実証され、現在スイスPSIにおいて放射光リングSLSの次期計画でのユーザー供用を目指した実用化研究がおこなわれている。発表者もそのプロジェクトに参加するため本年会には参加できない予定であったが、Web開催によって望外の発表の機会を得た。そこで本会では、高温超伝導を用いたアンジュレータのレビュー、そして現在シミュレーションを進めているハイブリッド型、クランクリング型といった新しいアイデアについての発表を行う。
 
学会賞受賞講演 (9月3日 講演会場1)
18:10-18:30 
THOP01

超伝導加速空洞の高加速勾配・高Q値化のための理論的基礎
Theoretical foundation for high acceleration gradient and high Q value of superconducting cavities
○久保 毅幸(高エネルギー加速器研究機構)
○Takayuki Kubo (KEK)
 
現在最良の超伝導ニオブ空洞の性能は、温度~2Kにおいて、表面磁場170-200mT(テスラ型楕円空洞の加速勾配40-50MV/m)、Q値は10の10乗から11乗に達する。今も多くの研究者が更なる性能向上に取り組んでいる。2012年、発表者が空洞業界に参入した当時の状況は以下の通りであった。最大表面磁場(∝加速勾配)の向上には、超伝導薄膜と絶縁層を空洞内面に積層した積層薄膜構造が有力だと考えられてきたが、理論的理解は進んでおらず実証実験も成功していなかった。Q値向上の取組は更に深刻で、空洞研究者の手元の道具は、理想的な超伝導体から成る空洞内に弱極限の電磁場が蓄積されている場合に適用可能なマティス・バーディーン理論だけだった。非一様かつ非理想的な超伝導体から成る空洞が超伝導を破壊する程に強い電磁場を蓄えている状況(すなわち普通の超伝導空洞の状況)に適用できる理論は持ち合わせておらず、Q値向上の指針は皆無であった。この状況でも、多次元の絨毯爆撃的条件探索や偶然の発見による性能向上の可能性は有り得るが、貴重な血税と多くの研究者の短い人生を浪費する。効率的な性能向上には、理論と実験の両輪で進む必要がある。発表者は、超伝導理論を空洞内面に適用する事で、性能向上のための理論的指針を得る事を研究の目標としてきた。本講演では2020年現在の空洞性能及びその向上のための理論的基礎を概観する。
 
18:30-18:50 
THOP02

一台の高周波源で駆動する異種加速空洞の速い立ち上げ方法の開発
Development of a rapid start-up for two different types of accelerating cavity driven by one rf source.
○杉村 高志,方 志高,佐藤 将春(高エネルギー加速器研究機構)
○Takashi Sugimura, Zhigao Fang, Masaharu Sato (KEK)
 
いばらき中性子医療研究センターでは、粒子線がん治療法の一つであるホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy, BNCT)の実施を目指し研究開発を行っている。このプロジェクトでは病院設置可能な小型の装置を開発の目標として、RFQ及びDTLを用いて8 MeVの陽子線を作りこれをベリリウム標的に照射して中性子線源とし治療に用いることにしておりiBNCT(いばらきBNCT)方式と呼んでいる。この加速器を含むシステムは医療機器として使用されることから、1時間程度の治療の間安定なビームを供給すること、またインターロックによるビーム停止が発生した場合でもビーム停止時間が無視できる程度に短い間に復旧できることが開発の課題となった。対応としてLLRFシステムを導入しQ値もビームローディングも異なる2つの空洞を1つの高周波源で安定に励振できるようにし、空洞の発熱によるRF特性の非線形的な振る舞いを抑制するべく、ΔT=10℃で設計された空洞冷却系を見直し、空洞の水温制御に専用のものを開発するなどを行い、空洞の安定性を向上させた。さらにLLRFの励振周波数をDTL空洞の共振周波数にあわせ、DTLの可動チューナーをRFQの共振周波数に合わせる周波数変調立ち上げモードを取り入れた。このモードにより、空洞電力が0から定格まで1分程度で立ち上げることができるようになった。これにより、空洞反射増大によりインターロックが発報した際の速やかなビーム復帰が可能となった。
 
企画セッション (9月4日 講演会場1)
09:00-10:00 
FROK01

SiCパワー半導体技術の最前線
Recent Technical Advances in SiC Power Devices
○田中 保宣(産業技術総合研究所先進パワーエレクトロニクス研究センター)
○Yasunori Tanaka (AIST)
 
パワーエレクトロニクスは、パワー半導体デバイスの性能向上とともに発展してきた技術分野であり、その根幹はシリコン(Si)を半導体基材としたパワー半導体デバイスであった。しかし、LSIの分野でSiの性能限界が叫ばれているのと同様に、パワー半導体デバイスでもSiの物性から予測される性能向上の限界が見えつつある状況である。その中で、炭化ケイ素(SiC)に代表されるワイドバンドギャップ(WBG)半導体は、Siと比較して桁違いに高い絶縁破壊電界強度や高い熱伝導率といった、パワー半導体用基板として重要な特性を有していることから、Siに代わる新しいパワー半導体材料として注目されてきた。中でもSiCは、①Siと同じく熱酸化により絶縁膜の形成が可能であり、MOSFETやIGBTといったSiと同じ構造のパワー半導体デバイスが実現可能、②イオン注入によりn, p両型の局所的伝導制御が可能、③イオン注入後の活性化アニールなどの一部のプロセスを除いて、Siのデバイスプロセスとの親和性が高い、等の優れた特徴を有しているため、早くからその実用化研究・開発が進み、現在では鉄道車両や自動車などの分野でもその実用化が着実に進んでいる。一方で、開発が始まった当初に期待されていたような急激な普及拡大に至っていないことも確かであり、その原因は製造方法に起因するSiCウェハの製造コストが高いこと、更にSiCウェハ中に含まれる結晶欠陥がデバイス特性、ひいては製造歩留まりに悪影響を及ぼすことにより、SiCチップの価格低下が想定よりも遅いことにあると言われている。 本講演では、SiCパワー半導体デバイスの特徴からその活用方法、実用化が進んでいる分野について紹介するとともに、更なる普及のために残された課題についても触れる。また、SiCパワー半導体デバイスはSiでは実現不可能な10 kVを超える超高耐圧を実現することが可能であるため、粒子加速器用電源などへの適用への期待も高い。本講演では、それらの分野へのSiCパワー半導体デバイス適用の取組についても紹介する。
 
13:40-14:40 
FROK02

加速器施設の放射化
Activation in the accelerator facilities
○松村 宏(高エネルギー加速器研究機構)
○Hiroshi Matsumura (KEK)
 
加速器の運転中のビームロスにより放射化が起こる。放射化は,1次的には直接ビームロスした物質中での核反応により引き起こされる。さらに,核反応で生成した粒子により,周辺物質にも二次的な放射化が引き起こされる。結果としては加速器施設全体に放射化の可能性があり,放射線管理の対象は,ビームダクト,電磁石,加速器周辺機器,コンクリート,冷却水等,多岐にわたる。加速器の種類,加速粒子の種類,エネルギー,物質等により放射化の様子は異なる。本発表では,実測データを示しながら特徴を解説する。 加速器施設の放射化に関する大きな課題の一つが廃止措置の除染である。例えば,加速器室コンクリート壁床天井は中性子により放射化し,廃止措置を行うような長期間運転した施設では長半減期放射性核種であるEu-152やCo-60の放射能が主要核種として含まれている。放射化している部分を取り除く工事は大変であること,及びコンクリートは物量が非常に大きいことから,可能な限り放射化領域を小さく限定して労力とコストを削減したい。これらへの取り組みとして,我々のグループでは,加速器のタイプによる放射化の恐れのない施設の選別を行っている。非放射化施設と分類されれば,除染作業の苦労は大幅に軽減される。また,除染が必要な施設においても簡便に放射能濃度の推定や放射化/非放射化を判定する方法を考案している。本発表ではこれらの取り組みについても紹介する。 除染作業において,加速器の放射化部位の迅速特定は,放射化物の回収を効率的に行うために有効であり,そのための手段の一つとして,ガンマカメラに着目している。ガンマカメラとは放射能の濃淡を画像化する機器であり,10分程度で放射化部位を特定できる。各社様々なガンマカメラを販売しているが,我々は,実際に放射化している電磁石等を撮影してみて,ガンマカメラの有するべき特徴を整理している。いくつかのガンマカメラでは鮮明な放射化の画像化に成功しており,本発表で紹介する。 加速器施設の廃止措置のための研究は,廃止措置を実施するためのマニュアルとして整備を進めている。一部は今年度,「放射線施設廃止の確認手順と放射能測定マニュアル(日本放射線安全管理学会)」にまとめられて出版された。今年度中にさらに,「放射線発生装置廃止のための放射化評価マニュアル」として,より具体的なマニュアルを出版できるように作業を進めている。
 
粒子源/加速構造① (9月4日 講演会場1)
15:00-15:20 
FROO01

[Slides]
共鳴取出型チャージブリーダーの実証機開発
Development of prototype device for resonant extraction charge breeder
○高木 周(京大),小川原 亮(京大化研),栗山 靖敏(京大複合研),久世 啓太(京大),頓宮 拓,若杉 昌徳(京大化研)
○Shu Takagi (Kyoto Univ.), Ryo Ogawara (KUICR), Yasutoshi Kuriyama (KURNS), Keita Kuze (Kyoto Univ.), Hiromu Tongu, Masanori Wakasugi (KUICR)
 
イオン源からの不安定原子核イオンを多価化し供給するチャージブリーダーの開発を行っている。従来型のチャージブリーダーの方法では生成したイオン20%ほどしか実験に用いることができず、希少なRIの損失が発生してしまう。これは取り出し時にブリーディング中のイオンも一緒に取り出されてしまうことに起因する。我々は、電子ビームによってRIを多価化するEBIT型チャージブリーダーのイオントラップ構造に振動の要素を加え、価数成長の過程での損失率を大きく低減することを目指している。イオンをトラップするポテンシャル構造を振動させることで、目的の価数のイオンは共鳴され、必要なイオンのみを選択的に取り出せることを計算で確認した。この機構の最大の利点として価数成長中のイオンを溜め続けることができる点が挙げられ、入射した希少なRIを全てフルストリップにして供給することを目指している。実験では新たなトラップ構造の原理実証のためのプロトタイプ機の製作及びテストを行っており、励振によるイオン取り出しの価数分解能を評価していく。本発表ではプロトタイプ機の現状と、それに向けて行ったシミュレーション計算結果を合わせて述べる。
 
15:20-15:40 
FROO02
p.150
[Slides]
J-PARC COMET標的の現状
Present status of COMET target at J-PARC

○牧村 俊助,深尾 祥紀,吉田 誠,三原 智(KEK, J-PARC)
○Shunsuke Makimura, Yoshinori Fukao, Makoto Yoshida, Satoshi Mihara (KEK, J-PARC)
 
J-PARCハドロン施設にミューオン電子転換過程を探索するCOMET計画の建設が進んでいる。メインリングから供給される8 GeV陽子ビームは超伝導捕獲ソレノイド電磁石中の標的に照射され、発生したパイオン・ミューオンを実験室に輸送する。第一期計画(陽子ビーム強度3.2 kW)では黒鉛材を第二期計画(陽子ビーム強度56 kW)ではタングステン材などの高密度材料を標的材料として想定している。標的設計のために、陽子ビーム照射による発熱の冷却法、二次粒子の輸送効率、標的材料の選定などを進めている。COMET標的では、陽子ビーム強度は、それほど高くないが、超電導ソレノイド電磁石中に二次粒子輸送経路を妨げないように設置される必要があるため、回転標的方式のような発熱密度を分散させることが困難である。本発表では、COMET標的の冷却方式を中心とした議論を展開する。
 
15:40-16:00 
FROO03
p.154
[Slides]
ミューオン線形加速器APF方式IH-DTLプロトタイプの大電力試験に向けた開発状況
Current status for high-power tests of an APF IH-DTL prototype in the muon LINAC

○中沢 雄河,飯沼 裕美(茨大理工),岩下 芳久(京大理),岩田 佳之(放医研),Cicek Ersin,大谷 将士,河村 成肇,三部 勉,山崎 高幸,吉田 光宏(高エネ研),北村 遼(原研),近藤 恭弘(原研, 茨大理工),長谷川 和男,森下 卓俊(原研),齊藤 直人(J-PARCセンター),須江 祐貴,四塚 麻衣(名大理),竹内 佑甫(九大理),林崎 規託(東工大),安田 浩昌(東大理)
○Yuga Nakazawa, Hiromi Iinuma (Ibaraki Univ.), Yoshihisa Iwashita (Kyoto Univ.), Yoshiyuki Iwata (NIRS), Ersin Cicek, Masashi Otani, Naritoshi Kawamura, Tsutomu Mibe, Takayuki Yamazaki, Mitsuhiro Yoshida (KEK), Ryo Kitamura (JAEA), Yasuhiro Kondo (JAEA, Ibaraki Univ.), Kazuo Hasegawa, Takatoshi Morishita (JAEA), Naohito Saito (J-PARC Center), Yuki Sue, Mai Yotsuzuka (Nagoya Univ.), Yusuke Takeuchi (Kyushu Univ.), Noriyosu Hayashizaki (Tokyo Tech.), Hiromasa Yasuda (Univ. of Tokyo)
 
J-PARCにて計画されているミューオンg-2/EDM精密測定実験では、低エミッタンスミューオンビームを生成するために、超低速ミューオン(25meV)を線形加速器により212MeVまで再加速する必要がある。ミューオン特有の問題である加速中の崩壊損失を抑制するために、初段加速器RFQに続くドリフトチューブ線形加速器(DTL)のタイプとしては、低速領域において高いシャントインピーダンスを有するInter-digital H (IH)型DTLを採用した。さらに高周波電場のみで横方向収束を行うAlternative Phase Focusing(APF)方式を導入することによって、高加速効率と空洞の小型化を実現した。しかし、ミューオン線形加速器としてのAPF IH-DTLの実用例は皆無であり、モデルケースも存在しない。 そこで本研究では、運転周波数324MHzを持ちミューオンを1.3 MeVまで加速させるAPF IH-DTLプロトタイプの開発をする。シミュレーション及び低電力試験での性能評価を終えて大電力試験を実現するためのプロトタイプ空洞及びRFカップラーを製作し、設計電力60kWでの安定運転のためのRFシステムの構築を行った。本講演では、ミューオン専用のIH-DTLプロトタイプ実用化に向けた大電力試験の開発準備状況について報告する。
 
16:00-16:20 
FROO04
p.158
ミューオン線形加速器のためのDisk-and-Washer空洞の開発
Development of Disk-and-Washer cavity for muon linear accelerator

○竹内 佑甫(九大理),飯沼 裕美,中沢 雄河(茨大理工),伊藤 崇,北村 遼,近藤 恭弘,長谷川 和男,森下 卓俊(原研),岩下 芳久(京大化研),岩田 佳之(放医研),Cicek Ersin,大谷 将士,川村 成肇,内藤 富士雄,二ツ川 健太,三部 勉,山崎 高幸,吉田 光宏(高エネ研),齊藤 直人(J-PARCセンター),須江 祐貴,四塚 麻衣(名大理),林崎 規託(東工大),安田 浩昌(東大理)
○Yusuke Takeuchi (Kyushu Univ.), Hiromi Iinuma, Yuga Nakazawa (Ibaraki Univ.), Takashi Ito, Ryo Kitamura, Yasuhiro Kondo, Kazuo Hasegawa, Takatoshi Morishita (JAEA), Yoshihisa Iwashita (Kyoto ICR), Yoshiyuki Iwata (NIRS), Ersin Cicek, Masashi Otani, Naritoshi Kawamura, Fujio Naito, Kenta Futatsukawa, Tsutomu Mibe, Takayuki Yamazaki, Mitsuhiro Yoshida (KEK), Naohito Saito (J-PARC Center), Yuki Sue, Mai Yotsuzuka (Nagoya Univ.), Noriyosu Hayashizaki (Tokyo Tech.), Hiromasa Yasuda (Tokyo Univ.)
 
ミューオン異常磁気モーメント(g-2)やミューオンの電気双極子モーメント(EDM)は素粒子標準模型を超える新物理を探索する上で非常に有用なプローブの一つである。現在、J-PARCではミューオンg-2/EDM精密測定実験の準備が進められており、実験のためのミューオン線形加速器が開発中である。中速部加速にはDisk-and-Washer(DAW)空洞を採用しており、ミューオンは1.3 GHzの運転周波数でv/c=β=0.3から0.7まで加速される。DAWは、高いシャントインピーダンスを持ち高効率加速に適した加速構造である。また、他の結合型加速空洞と比較して構造が単純なことと、結合定数が大きいため加工誤差の許容度が高いと考えられることからコスト的に有利であると見込まれる。本発表では、DAW空洞の開発の現状について報告する。
 
16:20-16:40 
FROO05
p.163
加速空洞用真空容器の消磁手法の検討
Study of demagnetization of a vacuum vessel for Superconducting rf cavities

○増澤 美佳(KEK)
○Mika Masuzawa (KEK)
 
超伝導空洞用磁気シールドを設計する場合には空洞が組み込まれるクライオモジュールの内部磁場、つまり空洞にとっての外場磁場の強さを評価する必要がある。加速空洞用のクライオモジュール内の真空容器は鉄製のものが多く、真空容器自身が地磁気(0.5G程度)に対する第一段としての磁気シールドの役割を担うことが期待される。一方で、真空容器が鉄製であることから、その製作過程で例えばマグチャックの使用があったり溶接があったりした場合には局所的に容易に磁化されてしまうという難点がある。 実際にクライオモジュール内の空間磁場を測定してみると、地磁気よりも高い部分ができていたりする。これでは真空容器が第一段の磁気シールドとしての役割を果たしていないどころか空洞用磁気シールドへの負担を増やす結果となっている。真空容器の局所的な磁化を防ぐためには、例えば製作工程でマグチャックを使わない等のマネジメント強化が考えられるが、それは製作費用アップにつながってしまう可能性がある。そこで我々は様々な理由で局所的に磁化された状態で納品される真空容器を設置現場で消磁する手法についての検討を行った。本論文ではクライオモジュールに巻いた二種類のコイルによる消磁実験について報告する。
 
ビームダイナミクス/電子加速器 (9月4日 講演会場2)
15:00-15:20 
FROT01
p.168
PF 2.5 GeVリングにおけるコヒーレントシンクロトロン振動数の測定とstatic Robinson instabilityの観測
Study on the coherent synchrotron oscillation and the static robinson instability at the PF 2.5 GeV ring

○山口 孝明,坂中 章悟,山本 尚人,内藤 大地,高橋 毅(総研大 加速器科学専攻)
○Takaaki Yamaguchi, Shogo Sakanaka, Naoto Yamamoto, Daichi Naito, Takeshi Takahashi (Dept. Accelerator Science, SOKENDAI)
 
蓄積リングに大電流のビームを蓄積すると、各バンチが位相を揃えて振動するコヒーレントシンクロトロン振動が不安定になる場合がある。これはstatic Robinson instabilityとして知られており、ビーム負荷が大きい次世代放射光源でも重要な問題である。我々は、PF 2.5 GeVリングにおいてstatic Robinson instabilityに関するマシンスタディを行っており、最初の結果を2019年の加速器学会年会で報告した [1]。その後、次の2点についてより進んだスタディを行った。まず、RF位相変調に対するlongitudinal beam transfer functionを測定する方法によりコヒーレントシンクロトロン振動数のビーム電流依存性を測定した。次に、PFリングに大電流のビームを蓄積した状態で、RF電圧を徐々に下げてゆき、static Robinson instabilityによると考えられるビームダンプを発生させた。この時、ビームダンプが発生する瞬間の直前と直後におけるビームの位相と強度をオシロスコープで記録し、static Robinson instabilityがどのように発生し始めるのかを調べた。本発表では、これらの実験結果とその解析について報告する。[1] T. Yamaguchi et al., PASJ2019, FRP1010.
 
15:20-15:40 
FROT02
p.173
[Slides]
ミューオン線型加速器におけるスピンダイナミクスシミュレーション
Spin Dynamics Simulation in the Muon Accelerator

○安田 浩昌(東大理),飯沼 裕美(茨大理工),大谷 将士,河村 成肇(高エ研),北村 遼,近藤 恭弘(原研),齊藤 直人(J-PARCセンター),佐藤 優太郎(茨大理工),須江 祐貴(名大理),竹内 佑甫(九大理),中沢 雄河(茨大理),三部 勉,山崎 高幸(高エ研),森下 卓俊(原研),四塚 麻衣(名大理)
○Hiromasa Yasuda (Univ. of Tokyo), Hiromi Iinuma (Ibaraki Univ.), Masashi Otani, Naritoshi Kawamura (KEK), Ryo Kitamura, Yasuhiro Kondo (JAEA), Naohito Saito (J-PARC), Yutaro Sato (Ibaraki Univ.), Yuki Sue (Nagoya Univ.), Yusuke Takeuchi (Kyushu Univ.), Yuga Nakazawa (Ibaraki Univ.), Tsutomu Mibe, Takayuki Yamazaki (KEK), Takatoshi Morishita (JAEA), Mai Yotsuzuka (Nagoya Univ.)
 
素粒子物理学における大きな問題として、ミューオンの異常磁気モーメント(g-2)の不一致がある。ミューオンg-2の実験値と素粒子標準模型による理論値との間に3.7σの乖離が存在している。これは標準模型を超えた物理を示唆しており、精度を向上した実験にて検証を行う必要がある。我々はブルックヘブン国立研究所での先行実験とは異なる手法による実験をJ-PARCにて行う予定である。本実験はミューオンスピンのダイナミクスを測定する実験であり、測定に至るまでのスピンダイナミクスの理解が重要である。特に我々の研究により、運動量とスピン方向に相関が生じる場合、ミューオンg-2の測定値を系統的にシフトすることがわかった。この運動量-スピン方向の相関を理解するために、ミューオン線形加速器中のスピンダイナミクスを理解する必要がある。従来のミューオン線形加速器のシミュレーションは複数のソフトウェアで行われており、統一的にスピンダイナミクスのシミュレーションを行うことができなかった。この問題を解決するために、GPT(General Particle Tracer)を用いた拡張プログラムによってスピンダイナミクスの計算を行った。本講演ではGPTによるミューオン線形加速器のEnd-to-Endシミュレーション及びスピンダイナミクスシミュレーションの結果について報告する。
 
15:40-16:00 
FROT03
p.177
阪大産研Lバンドライナックにおけるビーム振り分けシステムの開発
Development of beam sharing system for the L-band linac at ISIR, Osaka University

○古川 和弥,誉田 義英,岡田 宥平,徳地 明(大阪大学 産業科学研究所)
○Kazuya Furukawa, Yoshihide Honda, Yuhei Okada, Akira Tokuchi (ISIR, Osaka University)
 
阪大産研LバンドライナックはFELを用いた大強度THz波の発生やパルスラジオリシス実験のために年間3000時間程度運転されている。現状の利用方法でマシンタイムを増やすことは人的に困難なため、2つの照射室で同時利用を行う振り分けシステムを開発することにした。IGBTを用いた10 kWパルス駆動電源を製作し、加速器のレイアウトに変更を加えることなく既存の45°DC偏向電磁石をパルス駆動することで5 ppsまでの振り分け運転が可能であることを確認した。その後更なる高繰り返し運転を目指し、ケイ素鋼板を用いたキッカー電磁石の製作を行った。本会ではシステムの開発とビーム試験結果に関して報告を行う。
 
16:00-16:20 
FROT04
p.181
ライナックの大電流マルチバンチ加速におけるビーム負荷補償と調整法
Beam-loading compensation and commissioning method for a linac with a high beam current multi-bunch acceleration

○栗木 雅夫,リプタック ザカリー,金野 舜,高橋 徹(広大院先進理工),大森 恒彦(高エネ研素核研),横谷 馨(高エネ研加速器),浦川 順治(高エネ研国際),福田 将史(高エネ研加速器)
○Masao Kuriki, Zachary Liptak, Shun Konno, Tohru Takahashi (Hiroshima University ADSE), Tsunehiko Omori (KEK IPNS), Kaoru Yokoya (KEK AL), Junji Urakawa (KEK International D.), Masafumi Fukuda (KEK AL)
 
リニアコライダーは線形加速器による電子・陽電子コライダーである。リングコライダーに比べて、低いビーム電流で大きなルミノシティを実現するのが特徴であるが、ビームは衝突点を一回しか通過しないため、ビーム電流=加速電流である。そのため、大量のビーム生成が必要であり、とくに大量の陽電子(一秒あたり2e+14個)の生成である。国際リニアコライダーでは電子ドライブ方式、アンジュレーターからのガンマ線を利用する方式が検討されているが、電子ドライブ方式では陽電子標的直下の定在波型加速器において1Aを超える大きなビーム負荷電流が発生する。本発表では、その抑制方法と、大電流のマルチバンチ加速を実現するための調整方法について検討する。
 
16:20-16:40 
FROT05
p.188
レーザープラズマ電子加速器への極短電子バンチ入射器のための低ジッタ同期システムの開発
Development of a low jitter synchronization between an ultrashort electron bunch linac and a laser plasma electron accelerator

○益田 伸一,増田 剛正,熊谷 教孝,大竹 雄次(高輝度光科学研究センター)
○Shinichi Masuda, Takemasa Masuda, Noritaka Kumagai, Yuji Otake (JASRI)
 
高強度超短パルスレーザーにより励起される大振幅プラズマ波により電子を加速するレーザープラズマ電子加速の実用化を目指した研究が行われている。我々は、プラズマ波の加速特性を調べるため、プラズマ波への電子入射器として、超短電子バンチを生成するための線形加速器を開発している。本線形加速器開発において重要な点は、典型的なプラズマ波長が10〜100 fs程度であるため、電子バンチ入射とプラズマ波励起間の同期に、極めて高精度のタイミング制御が必要となることである。同期システムは、全ての基準信号となる高精度低位相雑音のRFマスターオシレータ、およびそれに同期した超高速レーザー発振器が基本構成となる。RFマスターオシレータは開発が終わり調整の段階にあり、出力周波数5712MHzの側波帯10Hz点での雑音レベルは-100dBcが達成されている。現在我々は、レーザー発振器の設計を進めている。レーザー発振器のキャビティ長およびポンプパワーに変調を加えることによって、光パルス列を前述のRFマスターオシレータに位相を固定して同期をとる。この技術とRFマスターオシレータの世界最高水準の低雑音性能により、10fs以下の同期精度が期待できる。レーザー発振器からの光パルスは波長変換・増幅した後、プラズマ波励起レーザーおよび光陰極駆動レーザーの種光として供給され、電子発生・電子入射・プラズマ波励起の精密同期が行われる。
 
加速構造② (9月4日 講演会場1)
17:00-17:20 
FROO06

超伝導空洞のための温度・磁場マッピング装置の開発
Development of the temperature and magnetic field mapping system for superconducting cavities
○岡田 貴文(総研大),加古 永治,阪井 寛志,梅森 健成,植木 竜一,増澤 美佳,土屋 清澄,許斐 太郎,近藤 良也(高エネ研),Tajima Tsuyoshi,Poudel Anju,Pizzol Paolo(LANL)
○Takafumi Okada (SOKENDAI), Eiji Kako, Hiroshi Sakai, Kensei Umemori, Ryuichi Ueki, Mika Masuzawa, Kiyosumi Tsuchiya, Taro Konomi, Yoshinari Kondo (KEK), Tsuyoshi Tajima, Anju Poudel, Paolo Pizzol (LANL)
 
The external magnetic field gets trapped in the superconducting cavities as vortices during the phase transition. The trapped magnetic vortices are oscillated by the RF, which results in RF power losses and degrades the cavity performance. The superconducting cavity is operated with a magnetic shielding of a few μT. Statistical performance measurements at the liquid helium temperature of a specific AMR sensor used for magnetic field mapping together with temperature mapping around the cavity during the vertical test were performed. In this paper, the results of the measurements and calibration of the AMR sensor at cryogenic temperatures will be reported.
 
17:20-17:40 
FROO07
p.193
[Slides]
4 K 高 Q 値運転可能な超伝導加速空洞のための電気メッキ法による Nb3Sn 成膜
Nb3Sn Formation Using Electroplating Method for 4 K HIGH-Q Operable SRF Cavity

○井藤 隼人,早野 仁司,文珠四郎 秀昭(高エネルギー加速器研究機構),柏木 茂,本多 史憲(東北大学),菊池 章弘(物質・材料研究機構)
○Hayato Ito, Hitoshi Hayano, Hideaki Monjushiro (KEK), Shigeru Kashiwagi, Fuminori Honda (Tohoku University), Akihiro Kikuchi (NIMS)
 
Forming Nb3Sn onto the inner surface of the SRF cavity allows us to operate the cavity with 1010 Q value at around 4 K instead of the usual 2 K operation, since Nb3Sn becomes superconducting at twice as high temperature as standard SRF material Nb. Also, the superheating field Hsh of Nb3Sn is twice as that of Nb. Here, Hsh is the ultimate limit for an ideal superconductor. this twice Hsh would mean an accelerating gradient of nearly 100 MV/m, which would be extremely beneficial accelerator applications. However, this gradient is far from being realized and alternative formation methods is expected instead of the conventional method. An electroplating method has been developed at FNAL for pursuing the promise of the alternative method. In order to advance the research on this method, KEK has started electroplating of Nb3Sn with the same method but different plating solutions under the US-Japan cooperation. The thermal treatment and characterization of Nb3Sn samples have been performed in the cooperation of NIMS and Tohoku University. In this paper, the evaluation of the Nb3Sn samples and the progress on surface treatments since the year 2019 are reported.
 
真空 (9月4日 講演会場2)
17:00-17:20 
FROT06

無酸素Pd/Tiコーティングを利用した量産型ICF203ゼロレングス非蒸発型ゲッター(NEG)ポンプの性能評価
Evaluation of massproduction-type ICF203 zero-length nonevaporable getter (NEG) pumps using oxygen-free Pd/Ti
西口 宏((有)バロックインターナショナル),小野 真聖,吉岡 和夫,吉川 一朗(東大),佐藤 裕太,大野 真也(横国大),加藤 良浩(入江工研(株)),菊地 貴司(KEK),○間瀬 一彦(KEK、総研大)
Hiromu Nishiguchi (Baroque International Inc.), Masato Ono, Kazuo Yoshioka, Ichiro Yoshikawa (The Univ. of Tokyo), Yuta Sato, Shinya Ohno (Yokohama Natl. Univ.), Yoshihiro Kato (Irie Koken Co., Ltd.), Takashi Kikuchi (KEK), ○Kazuhiko Mase (KEK, SOKENDAI)
 
最近KEKの間瀬らは新しい非蒸発型ゲッター(NEG)である無酸素Pd/Tiを開発した[1,2]。無酸素Pd/Ti は133℃で12時間加熱するとH2とCOを排気する。H2とCOに対する排気速度は、真空排気とベーキング、大気導入のサイクルを繰り返しても低下しないという特長を持つ[3]。KEKは本技術を(有)バロックインターナショナルと入江工研(株)に移転し、低コスト量産技術の開発を進めている。今回(有)バロックインターナショナルが製造したICF203ゼロレングスNEGポンプ2枚について排気速度を測定した結果、150℃、12時間ベーキングで活性化したあとのH2に対する排気速度は、排気量0.07 Pa Lにおいてそれぞれ2800、3200 L/s、150℃、6時間ベーキングで活性化したあとのCOに対する排気速度は排気量0.003 Pa Lにおいてそれぞれ500、1100 L/sであった。H2に対する排気速度は昨年の加速器学会で報告した値[4]よりも2倍以上大きく、COに対する排気速度は昨年の加速器学会で報告した値[4]よりも小さい。以上の結果から、形状と蒸着条件を最適化すれば高排気速度NEGポンプを量産できることがわかった。 [1] PCT/JP2017/042682「非蒸発型ゲッタコーティング部品、容器、製法、装置」(審査請求中)。 [2] T. Miyazawa et al., J. Vac. Sci. Technol. A 36, 051601 (2018). [3] T. Kikuchi et al., AIP Conf. Proc. 2054, 060046 (2019). [4] 佐藤裕太ら、PASJ2019プロシーディングス、FRPH017 (2019)。
 
17:20-17:40 
FROT07
p.197
[Slides]
SuperKEKB加速器用Low-Zコリメータの開発
Development of low-Z collimator for SuperKEKB

○照井 真司,石橋 拓弥,船越 義裕,阿部 哲郎(高エネ研)
○Shinji Terui, Takuya Ishibashi, Yoshihiro Funakoshi, Tetsuo Abe (KEK)
 
SuperKEKBの目標ピークルミノシティはKEKBの約40倍の8×1035 cm-2s-1である。 この目標を実現するためにSuperKEKBでは蓄積電流を2.6 A(電子リング)、3.6 A(陽電子リング)、また、約5 mm(電子リング)、約6 mm(陽電子リング)という短いバンチ長さでデザインしている。 コリメータはビーム軌道近くのハローを削る装置で、素粒子検出器(Belle II)のバックグラウンドを低減するために使用される重要な装置である。 このコリメータは、現在まで4回運転時にビームが衝突して損傷した。 この損傷後は、バックグラウンドの増大が観測され、正常な運転に支障をきたすこともあった。 この事象への対策のために、現在、ビームが衝突しても壊れにくい機器保護に特化したコリメータの開発が行われている。 このコリメータの素材は、大電流のビームが衝突した際にもEnergy depositが小さくなるように、Low-Zな素材を選択する必要があり、計算の結果カーボンが第1候補となった。 本学会では、素材の選択のために行った計算の結果、このコリメータでスキャッタされた後のビームのトラッキング結果、ビームインピーダンス計算の結果、接合試験、空洞を用いた高周波領域でのカーボンの電気伝導度測定試験等について報告する。
 
ポスターセッション① (9月2日 ポスター会場)
12:40-14:40 
WEPP01
p.202
自動サイクロトロン共鳴加速による超低速ミューオン加速の検討
Study of Muon Acceleration by Auto-resonance Cyclotron

○大谷 将士(KEK),近藤 恭弘(JAEA/J-PARC)
○Masashi Otani (KEK), Yasuhiro Kondo (JAEA/J-PARC)
 
自動サイクロトロン加速は、一様磁場中で螺旋運動する荷電粒子に同期した円偏向電場で粒子を加速する手法である。これまでに電子加速で実績があり、近年では陽子加速に関しても開発が進められており、高い加速効率を得ることができる。近年、電子と陽子の中間質量をもつミューオンの冷却手法について、負ミューオニウム生成やミューオニウムレーザーイオン化など様々な手法が発展しており、ミューオンの線形加速やサイクロトロン加速なども実証・開発が進んでいる。本研究では、ミューオンを冷却したのちに、自動サイクロトロン加速を行った場合について、加速効率などをシミュレーションで評価する。
 
12:40-14:40 
WEPP02
p.205
J-PARC大強度化に伴う新ビームダンプの設計
The design of new beamdump for J-PARC MR upgrade

○門脇 琴美,白形 政司(高エネルギー加速器研究機構)
○Kotomi Kadowaki, Masashi Shirakata (KEK)
 
J-PARC MRのビームダンプはMRアボートダンプと呼ばれており、その熱容量は7.5kWである。大強度ビームを用いる場合、熱容量の観点からビーム調整時にダンプに打つことができるショット数は1時間あたり20ショット程度に制限されている。J-PARCではビームのさらなる大強度化が進められており、今後はこの制限がさらに厳しくなることが予想される。そこで、ビームダンプの熱容量を上げるために新規ビームダンプの製作が計画されている。 既存のMRアボートダンプはビームパイプの周辺に鉄およびコンクリートブロックを並べた構造になっている。本研究では、既存のMRアボートダンプのビームパイプ終端に新たに銅製のダンプコアを追加し、熱容量を合計30kWとすることを目標とした。冷却方式は空気の吹き込みによる空冷方式とした。新規ビームダンプの設計にはANSYS(ANSYS inc.)を使用した。まずビームコアの構造について複数のモデルを作成し、構造計算により変形や相当応力を評価した。次に単純な構造のビームコアモデルを作成し、伝熱解析を行った。ビームコアの発熱はShirakata et al.(2019)により計算された熱分布を使用した。解析の結果、銅製のビームコアでは冷却用のフィンをもつ構造にすることで必要な熱容量を達成できることが分かった。当日は構造計算および伝熱解析の結果について詳細に報告する予定である。
 
12:40-14:40 
WEPP03
p.209
J-PARC 3GeVシンクロトロン 1MW運転状況
Results of 1-MW operation in J-PARC 3GeV Rapid Cycling Synchrotron

○山本 風海(原子力機構 J-PARCセンター)
○Kazami Yamamoto (J-PARC Center, JAEA)
 
J-PARC 3GeVシンクロトロン(Rapid Cycling Synchrotoron, RCS)は、中性子実験ユーザーにむけてビーム出力の向上を進めている。近年では、夏の保守期間の直前に、設計出力である1MWの大強度ビームを中性子ターゲットに連続して供給する試験を行っており、2018年7月は1時間、2019年7月は10時間の連続運転を達成した。さらに2020年7月には、40時間以上の連続運転を計画している。RCSではこれら連続運転試験によって、1MWを安定に運転するうえでの課題を抽出し、改善を行っている。本発表では、1MW運転の状況とその結果得られた成果、課題をまとめて報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP04
p.214
AVFサイクロトロンの入射系の更新
Update of injection system of the AVF cyclotron at RCNP

○中尾 政夫,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,安田 裕介,友野 大,鎌倉 恵太,森信 俊平,齋藤 高嶺,畑中 吉治,田村 仁志,永山 啓一,Koay Hui Wen,森田 泰之,武田 佳次朗,大本 恭平(阪大 RCNP)
○Masao Nakao, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Yusuke Yasuda, Dai Tomono, Keita Kamakura, Shunpei Morinobu, Takane Saito, Kichiji Hatanaka, Hitoshi Tamura, Keiichi Nagayama, Hui Wen Koay, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Kyohei Omoto (RCNP, Osaka-u)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)において、高強度かつ高品質のビームを供給するためのAVFサイクロトロンの改良工事が行われている。改良点の一つとして、入射イオンの加速電圧を15 kVから最大50 kVに向上させ低エミッタンスかつ大強度の入射を可能にすることが挙げられる。本発表では、ビームの高強度化・高品質化に必要である、垂直入射ラインからサイクロトロンへ入射するためのバッフルスリット、インフレクター、Deeの電極先端部、位相スリット等からなる入射系について報告する。入射電圧が高くなりインフレクターが大型化した場合でも、ビーム軌道の偏心が最小になるように入射し、位相スリットや位相バンチング技術を用いて位相幅の小さい状態で加速するための検討を行った。また、RCNPで要求される多種のビームを加速するためには、ハーモニクスを1,2,3と変更する必要があるが、それらに対して共通のインフレクターが使用可能な設計を行った。設計のための計算にはOPERA-3d TOSCAによって計算された電場と磁場を用い、空間電荷効果を考慮したビームの軌道を計算するために、ロシアJINRのSmirnov氏らが開発したSNOPと、スイスPSIで開発されたOPALを併用した。
 
12:40-14:40 
WEPP05
p.218
ミューオン加速用Lバンド低エネルギーリニアックの概念設計
Conceptual design of a L-band linac for muon acceleration

○近藤 恭弘(原研、茨大),大谷 将士(高エネ研)
○Yasuhiro Kondo (JAEA, Ibaraki Univ.), Masashi Otani (KEK)
 
近年様々な分野でミューオン加速の要求が高まっている。我々はミューオン異常磁気モーメント/電気双極子モーメント精密測定実験用のミューオンリニアックを開発中である。このリニアックの低ベータ部は324MHzのRFQとIH-DTLから成り、後段のCCLセクションからは周波数は1296MHz(Lバンド)に引き上げられる。低ベータ部をLバンド加速構造に置き換えることで、このリニアックの構成を大幅に簡略化出来る可能性がある。本論文では、このLバンド低エネルギーリニアックの概念設計について発表する。
 
12:40-14:40 
WEPP07
p.222
Extraction Study of High-Temperature Superconducting Skeleton Cyclotron (HTS-SC) for BNCT and Radioisotope Production
○Hui Wen Koay, Mitsuhiro Fukuda, Hiroki Kanda, Tetsuhiko Yorita (RCNP)
 
This work discusses a preliminary design as well as the beam dynamics of the extraction of a High-Temperature Superconducting Skeleton Cyclotron (HTS-SC). In previous works, HTS-SC with an extraction radius of 40 cm was proposed as a compact and high-current accelerator providing 50 MeV H+ beams required by Boron Neutron Capture Therapy (BNCT) as well as radioisotopes production in a hospital environment. In order to avoid Lorentz stripping effect which leads to possible beam loss up to 50% for negative ion acceleration, an H+ beam was adopted, together with an electrostatic deflector extraction in HTS-SC. However, small final-turn separation and significant space charge effect of such a compact machine remains as a challenge to achieve a high extraction efficiency. Therefore, in order to improve the extraction efficiency of HTS-SC, the beam loss upon colliding with a septum electrode of a deflector is minimized by performing an extensive orbit analysis of extraction beam dynamics. Besides, both resonant (precessional) and resonant-free extraction are also considered in order to determine the most efficient system in providing an extracted beam with desired quality.
 
12:40-14:40 
WEPP08

950keV/3.95MeV可搬型X線/中性子源で高速道路PC橋の点検
Highway PC Bridge Inspection using 950keV/3.95MeV Portable X-ray/Neutron Source
○楊 健,上坂 充,三津谷 有貴,土橋 克広(東大),草野 譲一(アキュセラ)
○Jian Yang, Mitsuru Uesaka, Yuki Mitsuya, Katsuhiro Dobashi (Univ.of.Tokyo), Joichi Kusano (Accuthera Inc.,)
 
The 950keV portable LINAC-based X-Ray source is applied to cut-samples from a particular highway PC bridge in Japan. The advanced flat-panel detector adopts a longer data stacking time. For the first time, the inner structure of the 570mm-thick PC concrete is successfully visualized, which is the typical thickness for highway PC bridges. The use of X-ray mesh collimators reduces soft X-ray scattering noises, which improves the X-ray image quality. Grout-filling flaws inside the PC sheath could be confirmed through the visualization as well. When the grout is not adequately filled, the risk of moisture condensation would further damage the wire. As water is a competent moderator, neutrons generated by the beforementioned X-Ray source could be used to detect water inside the sheath. Based on the inspection data acquired and the grout filling condition, a structural numerical analysis could be performed to evaluate the strength degradation of the bridge inspected quantitatively. We propose the guideline of maintenance consisting of (i) screening by eye and hammering, (ii) X-ray and optional neutron inspection, (iii) structural analysis, and (iv) maintenance planning.
 
12:40-14:40 
WEPP09
p.226
可搬型XバンドライナックX線・中性子源による福島ユニット缶入り燃料デブリのU濃度検査/仕分け
U-density Analysis and Classification of Fukushima Fuel Debris in Unit Can by Portable X-band Linac X-ray/Neutron Sources

○上坂 充(東京大学原子力専攻)
○Mitsuru Uesaka (University of Tokyo, Nuclear Professional School )
 
東大とJAEAでは、可搬型XバンドライナックX線・中性子源による福島燃料デブリその場U/Pu濃度分析システムを構築し、東大等作成の模擬デブリを実機相当収納缶(直径200mm,高さ300mm,厚さ10mm、SUS製)に入れ、原理実証実験を行った。950keV/3.95MeVX線源による2色X線CTは、それぞれ最短で5分で完了し、3次元のCT値の再構成ができた。Pb(U模擬)/Zr/Fe/Cr/コンクリートの成分とCT値の関係がかなり得られた。溶融している部分は、成分比を反映したCT値となっている。またここまで取り出された微小デブリの成分分析から、1,2,3号炉から取り出されたデブリの成分比に、かなりの傾向がみられることもわかってきた。この予備知識を生かせば、デブリ中のUの量と濃度をかなり正確に推定できる可能性がある。一方、3.95MeV中性子源による1.5mTOF中性子共鳴透過分析によって、W(U模擬)/In(Pu模擬)20mmx20mmx2mmtの試料を2時間で中性子吸収が測定できた。この実績から短時間測定を検討する。今後は、X線/中性子測定についてUをそれぞれPb/Wで模擬した溶融混合模擬デブリを作成し、2色X線CTと中性子共鳴透過分析を行い、溶融混合状態でも、Uの量と濃度を短時間で評価できることを実証する。今後の実証実験ではこのユニット缶入りU模擬燃料デブリで実証を行う。本成果は文部科学省の公募事業である「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業廃炉加速化研究プログラム」で得られたものです。
 
12:40-14:40 
WEPP10
p.231
サイクロトロンベースLLFP核変換用中性子源の検討
Investigation of neutron source for cyclotrons-based LLFP transmutation

○武田 佳次朗,福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,関 亮一,中尾 政夫,Koay Hui Wen,森田 泰之,原 隆文,大本 恭平(阪大RCNP)
○Keijiro Takeda, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Ryoichi Seki, Masao Nakao, Hui Wen Koay, Yasuyuki Morita, Takafumi Hara, Kyohei Omoto (RCNP, osaka univ.)
 
原子力発電所の使用済核燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物(HLW)の地層処分における負担軽減を目的としてHLWの核変換技術の開発が行われてきた。このうち、我々は長寿命核分裂生成物(Long-Lived Fission Product : LLFP)の核変換を目的として複数のサイクロトロンを並列運転させる核変換システムの検討を進めてきた。対象のLLFPはPd-107(半減期650万年), Cs-135(半減期230万年)の2核種とし、希少金属であるため安定同位体に核変換すれば再資源化が期待できる。核変換には100MeV/uに加速させた重陽子による核破砕反応と高速中性子の(n,2n)や 熱/熱外中性子の捕獲反応を用いる。重陽子ビームを液体Cs標的に照射してCs-135を核変換し、高速の核破砕中性子を減速材(Pd, 重水)で熱/熱外化させPd-107を核変換する。また定量的に核変換量を推定するために、粒子輸送計算コードPHITSと誘導放射能計算コードDCHAIN-PHITSを組み合わせた反復ルーチンを作成し、核変換による核種組成の時間変化を追跡できるようにした。本発表では、核変換用中性子源の構造の検討状況をLLFP核変換量と合わせて議論し、核変換用加速器として我々が想定しているサイクロトロンについても報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP11
p.235
山形大学医学部東日本重粒子センター建設の現状 (2)
Construction status of East Japan Heavy Ion Center, faculty of medicine, Yamagata University (2)

○想田 光,金井 貴幸,宮坂 友侑也,岩井 岳夫,根本 建二,上野 義之,嘉山 孝正(山形大)
○Hikaru Souda, Takayuki Kanai, Yuya Miyasaka, Takeo Iwai, Kenji Nemoto, Yoshiyuki Ueno, Takamasa Kayama (Yamagata Univ.)
 
山形大学では2017年から重粒子線治療施設の建設を行っている。加速器は普及小型重粒子線治療装置の設計を踏襲し、全永久磁石型ECRイオン源と4 MeV/u RFQ+IH-DTL線形加速器、430 MeV/uシンクロトロンからなり、照射室は水平ポートのみの固定照射室1室と、超伝導回転ガントリー照射室1室の計2室である。加速器の運用においては、レンジシフタを設置せず全てシンクロトロンで約600段のエネルギーを変更するフルエネルギースキャンを行う予定である。同じく普及型施設としては初めての設置となる超伝導回転ガントリーは、偏向角を大きくしたスキャニング磁石を最下流に設置することで、放医研で開発された初号機から約2/3に小型化している。建設状況については、2019年5月に建屋が竣工、2019年8月に装置が完成した。シンクロトロンの調整開始時に、冷却水の熱交換・冷却能力が不足することが判明したが、予備系の熱交換器を並列運転することによりビーム試験を実施することができた。高エネルギービーム輸送系の初期調整を経て2020年3月に施設検査に合格し、本格的なビーム調整を開始している。冷却水の冷却能力不足に関する改修工事を今夏に実施した後、クリニカルコミッショニングを経て2021年に治療開始の予定である。
 
12:40-14:40 
WEPP12
p.238
コヒーレントチェレンコフTHz放射の高強度化に向けた光蓄積共振器の設計
Design of the optical cavity for the enhancement of coherent Cherenkov THz radiation

○蓼沼 優一,村上 達希,鷲尾 方一(早大理工総研),坂上 和之(東大光量子研),平 義隆(分子研),黒田 隆之助(産総研)
○Yuichi Tadenuma, Tatsuki Murakami, Masakazu Washio (WISE, Waseda Univ.), Kazuyuki Sakaue (UT-PSC), Yoshitaka Taira (UVSOR, IMS), Ryunosuke Kuroda (AIST)
 
チェレンコフ放射は媒質の屈折率と荷電粒子の速度に依存した角度に進行する放射であるため、進行方向に長いガウシアン分布を持つ電子バンチではコヒーレント放射が得られない。そこで、高周波偏向空洞を用いて電子線の傾きを高精度に制御し、その角度とチェレンコフ放射角を一致させることでコヒーレントチェレンコフ放射を生成する。コヒーレントとなる周波数は電子バンチの横方向のサイズに依存し、本研究ではTHz帯に焦点を当てる。また、生成したコヒーレントパルスの強度増幅のため2枚のミラーを用いた蓄積共振器の設計を行う。早稲田大学に設置されている電子銃では119 MHzで100バンチ程度までのマルチバンチ運転が可能であるため、共振器長を電子バンチの周期に合わせることで全パルスを同位相で蓄積させることが可能となる。ターゲット媒質には非晶性高分子であるTOPASを採用する予定であり、その際のチェレンコフ放射角はおよそ49度であるため、ビームラインと干渉することなく共振ミラーを設置することができる。本発表では、傾き電子線によるTHz帯コヒーレントチェレンコフ放射の生成実験、蓄積共振器の設計および増大率計算と今後の展望を報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP13
p.241
線形加速器用電流モニターにおける信号伝送解析とノイズ低減技術
Signal transmission analysis and noise reduction technique for current monitor in linear accelerators

○諏訪田 剛(高エ研加速器)
○Tsuyoshi Suwada (KEK, Acc. Lab.)
 
電子線形加速器における長パルスビームの電流計測では、一般的にフェライトコアーにコイルを多数回巻いた電流モニター(CM)が用いられることが多い. 筆者の所属するKEK電子陽電子入射器では、小型の電子線形加速器を利用する低速陽電子施設ではCMを利用してビーム電流を計測している. この加速器では既存のCMを2台(電子銃直後/CM1と加速管出口/CM2)と新規に製作した同様なモニター1台(標的前/CM3)、合計3台を利用しビーム電流を非破壊で計測している.新規のものは既存のものを参考にして製作したつもりであった. しかし、ノイズ抑制という観点からすると既存モニターは問題なく利用できていたにも関わらず、新規モニターはノイズの影響を大きく受けることになった.ノイズ低減技術の一つとして有効なチョークコイルを用いたコモンモードを抑制するノイズ対策を何度も試みたがことごとく失敗した.ここでノイズ生成の原理に立ち戻って考える必要性に迫られた. 本報告は、CMにおける伝送線路の基本に立ち戻り、信号伝送とノイズ生成の原理を解析したものである.解析の結果、既存と新規モニターの間にはグランドの取り方に本質的な違いがあり、この違いが信号伝送に大きな影響を与え、信号歪みやノイズ生成の原因になっていることが判明した. 本解析を通してCMにおける信号伝送、グランドの取り方、ノイズ生成の原理等を解説し、最後に具体的なノイズ抑制方法を提案する.
 
12:40-14:40 
WEPP14
p.246
理研RIBFにおけるビームロスによる放射線検出器の開発
Development of new beam loss monitor for RIKEN RIBF

○志熊 良樹(理化学研究所、長岡技術科学大学),三宅 泰斗,奥野 広樹(理化学研究所),髙橋 一匡,佐々木 徹,菊池 崇志(長岡技術科学大学)
○Yoshiki Shikuma (RIKEN,Nagaoka University of Technology), Yasuto Miyake, Hiroki Okuno (RIKEN), Kazumasa Takahashi, Toru Sasaki, Takashi Kikuchi (Nagaoka University of Technology)
 
理研仁科加速器科学研究センターではRIBF高度化計画により重イオンビームの大強度化が検討されている。その際、サイクロトロンから重イオンビームを取り出す静電取り出しチャネル(EDC)に、ビームロスによる深刻な熱的損傷が生じることが懸念される。現在EDCのビームロスを観測するため、熱電対を用いたビームロスモニター(BLM)が採用されている。しかしながら、熱電対の応答時間ではビームロスによるEDCの融解時間を追従できないため、ビームインターロックシステムが機能する前にEDCが融解して加速器運転の不具合を引き起こす。そのため、ビームロスを即時観測可能な検出器として,放射線検出及び電気信号を駆使した新たなBLMとしてイオンチェンバーを開発した。熱伝導解析によりビームロスによるEDCが融解するまでの時間の評価と、粒子・重イオン輸送計算コードによるビームロスによる放射線量の解析に基づき設計・製作を行った。本発表では検出器の設計と性能の見積もりについて報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP15
p.251
大強度陽子ビーム用縦方向分布モニター応答特性評価
Evaluation of the bunch-shape monitor for the high-intensity proton beam

○北村 遼(JAEA),二ツ川 健太(KEK),林 直樹,平野 耕一郎,近藤 恭弘(JAEA),小坂 知史(日本アドバンストテクノロジー株式会社),宮尾 智章(KEK),根本 康雄(日本アドバンストテクノロジー株式会社),森下 卓俊,小栗 英知(JAEA)
○Ryo Kitamura (JAEA), Kenta Futatsukawa (KEK), Naoki Hayashi, Koichiro Hirano, Yasuhiro Kondo (JAEA), Satoshi Kosaka (Nippon Advanced Technology Co.,Ltd.), Tomoaki Miyao (KEK), Yasuo Nemoto (Nippon Advanced Technology Co.,Ltd.), Takatoshi Morishita, Hidetomo Oguri (JAEA)
 
大強度・低エミッタンスな陽子ビーム加速を実現するため、空間電荷効果の影響が大きい 低エネルギー領域での縦方向分布モニター(バンチシェイプモニター; BSM)運用試験を進めている。BSM内部でビームを受ける二次電子生成標的に熱負荷耐性の良い高配向性グラファイト(HOPG)を導入したことで、標的破損による計測中断が無くなり、安定した運用が可能となった。しかしHOPGを導入したBSMで測定した縦方向分布はシミュレーションによる予想分布より系統的に広いため、定量的な測定には改善の余地がある。J-PARCリニアック棟テストスタンドのビームを利用して、BSMの応答特性を調査した。この試験では二次電子ビームの初期広がりを抑制するため、板状に加工されたHOPG標的の幅を1 mmから0.2 mmに縮小した。さらに信号飽和を防ぐため、電子増倍管のゲイン調整を実施した。調整後に測定した縦方向分布はシミュレーション予想と一致した。本公演ではビーム試験から得たBSM応答に関する知見とビームマッチング調整に向けた今後の展望を報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP16
p.254
APF方式IH-DTLによるミューオン加速実証試験のための診断ビームラインの開発
Development of a diagnostic beamline for the demonstration of the muon acceleration with an APF IH-DTL

○中沢 雄河,飯沼 裕美(茨大理工),岩下 芳久(京大理),岩田 佳之(放医研),Cicek Ersin,大谷 将士,河村 成肇,三部 勉,山崎 高幸,吉田 光宏(高エネ研),北村 遼(原研),近藤 恭弘(原研, 茨大理工),長谷川 和男,森下 卓俊(原研),齊藤 直人(J-PARCセンター),須江 祐貴,四塚 麻衣(名大理),竹内 佑甫(九大理),林崎 規託(東工大),安田 浩昌(東大理)
○Yuga Nakazawa, Hiromi Iinuma (Ibaraki Univ.), Yoshihisa Iwashita (Kyoto Univ.), Yoshiyuki Iwata (NIRS), Ersin Cicek, Masashi Otani, Naritoshi Kawamura, Tsutomu Mibe, Takayuki Yamazaki, Mitsuhiro Yoshida (KEK), Ryo Kitamura (JAEA), Yasuhiro Kondo (JAEA, Ibaraki Univ.), Kazuo Hasegawa, Takatoshi Morishita (JAEA), Naohito Saito (J-PARC Center), Yuki Sue, Mai Yotsuzuka (Nagoya Univ.), Yusuke Takeuchi (Kyushu Univ.), Noriyosu Hayashizaki (Tokyo Tech.), Hiromasa Yasuda (Univ. of Tokyo)
 
素粒子標準模型を超える物理探索のため、J-PARCではミューオン異常磁気能率(g-2)の0.1 ppmの測定精度とミューオン電気双極子能率(EDM)の10^-21 e・cmオーダーの測定感度を持つミューオンg-2/EDM精密測定装置の建設を進めている。ビーム由来の系統誤差要因を排除するためには、これまでにない低エミッタンスなミューオンビームが要求される。実験的要請を満たすためにはミューオンを25 meVから212 MeVまでの加速が必要となるが、ミューオンの平均寿命は2.2 µsecと短いため、ミューオン加速器には小型かつ短時間での加速が求められる。そこで、崩壊損失が顕著となる低速領域には、高加速効率を実現するAPF方式IH-DTL(Inter-digital H-mode Drift-Tube-Linac)を採用した。先例の無いIH-DTLでのミューオン加速を実証するために、我々はミューオンを0.34 MeVから1.3 MeVまで加速するIH-DTLプロトタイプによる加速実証試験をJ-PARC MLF Hラインにて計画している。本発表では、ビームシミュレーションによるIH-DTLプロトタイプでのミューオン加速実証の実現性を示し、加速実証試験のための電磁石とバンチャーから構成される診断ビームラインの開発状況について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP17
p.258
シンクロトロンからの遅いビーム取り出しにおけるカラードノイズデータの加工によるスピル強度の増加
Increase of Spill Intensity by Modifying Colored Noise Data in Slow Beam Extraction from a Synchrotron

○奥川 雄太郎,中西 哲也(日大生産工),栗田 哲郎(若狭湾エネルギー研究センター)
○Yutaro Okugawa, Tetsuya Nakanishi (College of Industrial Technology, Nihon University), Tetsuro Kurita (The Wakasa Wan Energy Research Center)
 
シンクロトロンからの遅いビーム取り出しにおいて、一様なスピルを得ることは重要な技術である。筆者らはその方法としてマルチバンドのカラードノイズ(CN)信号を使ったRFKO法を提案している。このノイズ信号は、高次のベータトロン共鳴周波数帯を複数含んだもので、含まれる共鳴周波数帯の数が多いほどスピルが滑らかになることが実験およびシミュレーションで示された。本研究の目的は、CN信号を加工して比較的パワーの小さい高周波アンプでより多くのビームを取り出すことである。その一つが、アンプの最大出力電圧は入力電圧の最大値で決まるため、CN信号が強い部分を下げ、最大値と実効値の比を下げることである。元データでは先の比が5であったが、それを2まで下げても、スピルの変動にはほとんど影響せず、アンプ出力を25/4倍に増加できた。また、RFKOシステムに使用されるITの電圧変換比も4:1から5:1に変更した。これによりシステムの周波数特性が悪化するため、使用する共鳴周波数帯の数を低い方から6つの6バンドとした。それにより悪化するスピルの変動を抑えるために、スピル強度の変動が大きい部分のCN信号のみを低減させる方法を提案する。本論文では、これらのシミュレーションと関連する実験結果について述べる。
 
12:40-14:40 
WEPP19
p.263
遅いビーム取り出しにおける高速ビーム制御とビーム取り出し量を増やすためのマルチバンドRFKOシステムに関する研究
Study on fast beam switching and increasing an extracted beam in slow beam extraction using a multi-band RFKO system

○塩川 智也,奥川 雄太郎,山口 輝人,中西 哲也(日大生産工),栗田 哲郎(若狭湾エネルギー研究センター)
○Tomoya Shiokawa, Yutaro Okugawa, Teruto Yamaguchi, Tetsuya Nakanishi (College of Industrial Technology, Nihon University), Tetsuro Kurita (The Wakasa Wan Energy Research Center)
 
シンクロトロンからの遅いビーム取出しにおいて、一様なスピル強度を得ることは重要な技術である。筆者らはその方法としてマルチバンドカラードノイズ(CN)信号を使ったRadio Frequency Knockout (RFKO)法を提案している。このノイズ信号は、高次のベータトロン共鳴周波数帯を複数含んだもので、含まれる共鳴周波数帯が多いほどスピルが滑らかになることがビームシミュレーション及びビーム実験で示された。実験で用いた共鳴周波数帯の数は10であり、1 MHzから14 MHzであった。この方法は、スピル強度が一様になるだけでなく、スポットスキャニング照射で要求されるビーム出射のON/OFF時間の短縮も期待できる。今回は、CN信号をパルス化して、後者の実験を若狭湾エネルギー研究センターで行った結果について述べる。また、比較的パワーの小さいアンプを用いてより多くの粒子を取り出せるRFKOシステムの検討を行った。RFKOシステムはマルチバンド信号源、40W高周波アンプ、Impedance Transformer (IT)、All Pass Network (APN)及び、RFKO電極から構成される。ITの電圧変換比を1:4から1:5に変更し、それに対応したAPNを開発した。変換比を上げることで、ITとAPNの周波数特性は高周波側で悪化する。それによるスピル強度変動の悪化を抑えるために、元のCN信号を加工する方法を提案する。本論文では、今回開発したRFKOシステムの周波数特性の測定結果とビーム実験結果について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP20
p.268
差周波中赤外光源のためのファイバーレーザーの開発
Development of fiber laser system for a mid infrared light source with the difference frequency generation

○川瀬 啓悟,羽島 良一,永井 良治(QST)
○Keigo Kawase, Ryoichi Hajima, Ryoji Nagai (QST)
 
Q-LEAP基礎基盤研究の課題としてQST、京大、日大、KEKで進めている中赤外FELによるHHGのための基礎研究において、FELのCEPを安定化するためのCEP安定中赤外シード光源を開発している。この光源は、繰り返し20 MHz程度で数10 mW程度のCEP安定化光源を想定しており、現在、Ybファイバーレーザーによる差周波発生光源を設計・構築している。これまでに20 MHzのモードロック発振器、3 W級のプリアンプ、10 W超のアンプの構築し、現在、差周波発生のための波長シフト光発生試験および差周波発生光学系の設計を実施している。本発表では、このレーザーシステム開発についての現状を報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP21
p.272
パルスラジオリシスシステム高度化へ向けたスーパーコンティニューム光源開発
Supercontinuum generation for the improvement of pulse radiolysis system

○佐藤 未宇,金子 悠隆,小柴 裕也(早大理工総研),坂上 和之(早大理工総研/東大光量子研),鷲尾 方一(早大理工総研)
○Miu Sato, Yutaka Kaneko, Yuya Koshiba (WISE,Waseda Univ.), Kazuyuki Sakaue (WISE,Waseda Univ./UT-PSC), Masakazu Washio (WISE,Waseda Univ.)
 
パルスラジオリシスとは、電子線を物質に照射した際に起こる放射線化学反応の初期過程解明のための手法の一つであり、我々はフォトカソード高周波電子銃をベースとしたパルスラジオリシスシステムの高度化を継続的に行ってきた。反応活性種の生成、減衰は極めて短い時間スケールで起こるため、分析光源にもそれと同等のパルス時間幅が求められる。また、分析光源の波長スペクトルが広範であれば、一つの光源で様々な活性種を対象としてパルスラジオリシス実験を行うことができる。パルスラジオリシスにおいて頻繁に測定対象となる反応活性種の吸収波長は可視光領域にあることが多く、可視光領域を分析できる光源が望ましい。こうした特性を有する分析光源としてエルビウムファイバーレーザーの二次高調波をもとに生成するスーパーコンティニューム(SC)光が優れていると考え、本研究では可視光領域に広範なスペクトルを持つSC光生成へ向けたレーザー系の構築を行った。
 
12:40-14:40 
WEPP22

ビーム冷却用の大強度レーザーに向けた自発共振器の開発
Development of a self-start build-up laser cavity for beam cooling applications
○本田 洋介(KEK)
○Yosuke Honda (KEK)
 
大平均強度のレーザー光は、加速器の様々な分野で応用が期待できる。 限られたレーザー出力を光共振器に蓄積することで、実効的な平均強度を著しく上げることができる。これまで、レーザーコンプトン散乱光源の目的で光共振器の開発が行われてきた。 同じレーザーコンプトン散乱の原理は、電子蓄積リングにおけるビーム冷却に用いることも可能である。光共振器の共鳴維持を安定に行うため、自発共振器のスキームが提案され、これまで低出力の増幅器による開発が行われてきた。より大強度を達成するため、新たに、大出力の増幅器を用いて真空環境で開発するシステムを構築した。本発表ではこの開発状況について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP23
p.275
J-PARC RCSにおける機器状態監視システム
Machine status monitoring system for J-PARC RCS

○高橋 博樹(原子力機構),澤邊 祐希,渡邉 和彦(三菱電機システムサービス(株))
○Hiroki Takahashi (JAEA), Yuki Sawabe, Kazuhiko Watanabe (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd)
 
J-PARC加速器の監視・制御は中央制御室から行われるが、加速器構成機器の増加や安全・安定な加速器運転実現のために、運転員や研究者が運転時に監視すべきパラメータ(情報量)が年々増加する傾向にある。そして、監視すべき情報が膨大になったことにより、運転員が警報やパラメータ値を見落とす可能性が高くなっている。これは、パラメータの設定ミスによる誤操作を引き起こすことにもつながるものである。現時点で、PPSやMPSの安全システムが堅固であるので大事に至ったことはないが、J-PARCの安全・安定した運転維持において、このようなヒューマンエラーの発生は憂慮すべきことである。 そこで、機器の設定値(パラメータ)を監視し、運転員にパラメータの設定ミスなどを早期に知らせるシステム設計を開始した。そして、通常のパラメータ(固定値)とビームシミュレーション等により時々刻々と変更されるパラメータ(可動値)の両方を監視することを可能とし、確実性と汎用性を持つシステムの開発を進めている。 本件では、RCSにおける機器設定値監視システムの詳細と今後の計画を報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP24
p.280
SuperKEKBにおけるイベントシステム診断
The fault analysis of timing system in SuperKEKB

○王 迪(総研大 加速器科学),佐藤 政則,古川 和朗,梶 裕志,杉村 仁志(高エネルギー加速器研究機構)
○Di Wang (SOKENDAI Accelerator Science), Masanori Satoh, Kazuro Furukawa, Hiroshi Kaji, Hitoshi Sugimura (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
The high availability of an accelerator timing system is of great significance for the operation of the SuperKEKB electron-positron collider. To distribute the high precision level trigger signals for synchronizing all the relevant components in the accelerator complex, event based timing system is utilized to control the injection procedure in SuperKEKB. Another critical challenge of the timing system is to control the bucket selection of both electron and positron beam bunch. The failure in timing system would definitely affect other systems like pulsed magnet, BPM and so on, and as a consequence leading an unfavourable impact on the effectiveness of the particles collide. Additionally, a newly built positron damping ring decrease the positron emittance but meanwhile brings higher complexity of the bucket selection. In this paper, we will demonstrate the algorithm of the timing system and introduce our fault analysis system which helps up to analyze the timing error, improve the accelerator operation stability.
 
12:40-14:40 
WEPP25
p.284
GigEカメラを用いたスクリーンモニタのEPICS制御システムの開発
Development of EPICS control system for screen monitor using GigE Vision camera

○田丸 哲也(関東情報サービス(株)),内藤 孝(高エネルギー加速器研究機構),塚田 義則,早川 厚(関東情報サービス(株)),坂入 崇(アイワックサービス)
○Tetsuya Tamaru (Kanto Information Service(KIS)), Takashi Naito (High Energy Accelerator Research Organization (KEK)), Yoshinori Tsukada, Atsushi Hayakawa (Kanto Information Service(KIS)), Takashi Sakairi (Iwac Service)
 
KEKの先端加速器試験施設(ATF)では、 ATFLINACに15台、BTラインに8台のスクリーンモニタが設置されている。 撮像用のカメラとしてランダムシャッターカメラ(NTSC信号出力)が用いられていたが、 1)CATVシステムを用いて信号伝送しているための画質の問題、2)ノイズによるカメラの誤動作の問題、3)CATVシステムのメンテナンスの問題等がありカメラの更新が検討されてきた。 その為、画像信号の長距離伝送が可能なGigE Vision規格のカメラの導入を2012年頃から開始した。 ソフトウェアはGigE VisionをサポートしているオープンソースライブラリAravisで作成されたカメラライブラリを利用し、EPICSによるカメラ制御を開発した。 このシステムによる画像取得の動作速度は42msであった。2020年2月からカメラを全てGigE Vision規格のカメラに置き換えて運転を開始し問題なく運用されている。 本発表では、更新したスクリーンモニタの構成と、運用状況、今後の展望について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP26
p.288
3GeV次世代放射光施設の線型加速器と蓄積リングとのタイミング同期
Timing synchronization system between injector LINAC and storage ring at highly brilliant 3GeV light source

○大島 隆,細田 直康,前坂 比呂和,岩井 瑛人(理研),出羽 英紀(高輝度光科学研究センター)
○Takashi Ohshima, Naoyasu Hosoda, Hirokazu Maesaka, Eito Iwai (RIKEN), Hideki Dewa (JASRI)
 
3GeV次世代放射光施設の蓄積リング(SR)はダイナミックアパーチャーが狭いため、低いエミッタンス、短いバンチ長のビームの入射が要求される。SRのバケットに対する入射ビームのタイミングも蓄積リングのバンチ長である6ps程度の精度で安定していることが要求される。この要求を満足させるために、入射器(Li)の基準信号f_LiはSRの基準信号f_srを分周逓倍(n/m)したものを使用することとした。f_srを分周する除数mをSRのハーモニック数hと互いに素となる値を選択することにより、SRの狙ったバケットに合致するタイミングをロジックカウンタの組み合わせで構築することができる。乗数nは、入射器の加速空洞、大電力RF装置など既存のものを使用できるようにf_Liが238MHzから大きくずれないような値を選んだ。このタイミングシステムのプロトタイプをMicroTCA.4規格のモジュールを用いて構築し、性能評価を行った。本発表では、開発したシステムの詳細とそのプロトタイプ器の試験結果について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP27
p.291
KEK LUCX加速器インテリジェント制御システムの現状
Status of KEK LUCX accelerator intelligent control system

○アリシェフ アレクサンダー,荒木 栄,福田 将史,大森 恒彦,照沼 信浩,浦川 順治(高エネルギー加速器研究機構)
○Alexander Aryshev, Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa (KEK)
 
High-quality X-rays / γ-rays quasi-monochromatic photon beams with energy and polarization variability produced by the Laser Compton Scattering (LCS) of an electron and a laser beams are in the demand for many applied studies in medical and industrial fields. To increase the brightness of scattered X-rays the stable high power laser and multi-bunch electron beams are considered. The stabilization of the electron beam parameters requires well-established accelerator diagnostics and control systems which are actively developing at KEK LUCX facility. Moreover, the available computational resources and developed Artificial Neural Network (ANN) algorithms permit to establish real-time optimization routines and enhance compensation of the beam-loading and space-charge effects along with stabilization of the beam parameters in the LCS interaction point. In this presentation, we will report on the current status and future prospects of the development of a new compact linear accelerator control system integrated with ANN.
 
12:40-14:40 
WEPP28
p.294
Nb3Sn薄膜空洞用成膜装置の設計検討および加熱試験結果
Design study and heating test results of Nb3Sn thin film cavity deposition system

○高橋 光太郎(総研大),井藤 隼人,梅森 健成(KEK),岡田 貴文(総研大),加古 永治,許斐 太郎,阪井 寛志(KEK)
○Kotaro Takahashi (SOKENDAI), Hayato Ito, Kensei Umemori (KEK), Takafumi Okada (SOKENDAI), Eiji Kako, Taro Konomi, Hiroshi Sakai (KEK)
 
KEKではvapor diffusionによるNb3Sn成膜装置の立ち上げを進めて いる.この成膜装置は加熱用真空炉,加速空洞設置用Nb容器,スズ加熱用ヒーターから構成される.これまでに,Nb容器の冷却部および内部温度分布のシミュレーションを行い,設計の検討を行った.また,成膜装置の組み上げおよび加熱試験を行う.本発表では,KEKにおけるNb3Sn成膜装置の立ち上げ,加熱試験の結果とシミュレーションの比較を報告する.
 
12:40-14:40 
WEPP29
p.299
ニオブ9セルクーポン空洞を用いた上下反転VEPにおける電流特性と研磨内面の改善
Improvement of current property and polished surface of flipping VEP with Nb 9-cell coupon cavity

○仁井 啓介,チョウハン ヴィジェイ,井田 義明,山口 隆宣(マルイ鍍金工業(株)),早野 仁司,加藤 茂樹,文珠四郎 秀昭,佐伯 学行(KEK)
○Keisuke Nii, Vijay Chouhan, Yoshiaki Ida, Takanori Yamaguchi (Marui Galvanizing Co., Ltd.), Hitoshi Hayano, Shigeki Kato, Hideaki Monjushiro, Takayuki Saeki (KEK)
 
マルイ鍍金工業とKEKでは、ニオブ9セル加速空洞の縦型電解研磨(VEP)の研磨量分布、研磨内面の改善に向けた研究開発を行っている。そしてこれまでに改善のための一つの方法として、VEP中に定期的に空洞の上下を入れ替える上下反転VEPを提案、実験を行い、研磨量分布が改善することを報告してきた。今回、VEPの電流特性と研磨内面の改善を目指してカソード、設備、VEP条件を見直し、ニオブ9セルクーポン空洞を用いて上下反転VEP実験を行った。その結果、IV特性やVEP電流特性に改善が見られた。またVEP後の表面状態にも大きな改善が見られた。
 
12:40-14:40 
WEPP30
p.303
放射光リングPF-AR用加速空洞の高次モード引き出し用ケーブル系の更新
Renewal of higher-order-mode extraction cables of rf cavities for the PF-AR

○坂中 章悟,高橋 毅,山本 尚人,内藤 大地,渡邉 謙(高エネルギー加速器研究機構)
○Shogo Sakanaka, Takeshi Takahashi, Naoto Yamamoto, Daichi Naito, Ken Watanabe (KEK)
 
6.5 GeV放射光リングPF-ARでは、11個の加速セルを持つAPS (Alternating Periodic Structure)型加速空洞6台を用いて、ビームの加速に必要な508.57 MHz, 16 MVのRF電圧を発生している。APS空洞の各加速セルには高次モード結合器が取り付けられ、ビーム不安定性を引き起こす恐れのある高次モード(HOM)を減衰している。高次モード結合器から引き出された高次モードの電磁波は、WX-20D規格の同軸ケーブル(HOMケーブル)を通して水冷式3kWダミーロードに導かれ、そこで消費される。近年、PF-ARの平均ビーム電流の向上とHOMケーブルの老朽化により、運転中にHOMケーブルが発熱し損傷する事例が数件発生した。この問題に対処するため、2019年夏にPF-ARで使用しているHOMケーブル70本を全数更新した。合わせて、水冷式3 kWダミーロード70台のオーバーホールと高次モード結合器のポリエチレン部品の交換を行った。これらにより、発熱の原因と考えられる劣化したポリエチレン部品を一新し、HOMケーブルの設計も改良した。また、発熱の兆候をいち早く察知するため、HOMケーブルの温度モニターおよび温度スイッチの増設を行うと共に、温度モニターシステムを更新した。本発表では、近年のHOMケーブルの故障事例とHOMケーブル系の更新について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP31
p.308
TM020型高調波空洞において寄生モード減衰機構が加速モードに与える影響
Influence of the parasitic-mode damper on the accelerating mode in the TM020-type harmonic cavity

○山口 孝明,坂中 章悟,山本 尚人,内藤 大地,高橋 毅(総研大 加速器科学専攻)
○Takaaki Yamaguchi, Shogo Sakanaka, Naoto Yamamoto, Daichi Naito, Takeshi Takahashi (Dept. Accelerator Science, SOKENDAI)
 
極低エミッタンスを目指す多くの次世代放射光源では、バンチ内の電子同士の散乱によるビームエミッタンスの増大やビーム寿命の低下を抑制するため、バンチを伸長するための高調波空洞の導入が検討されている。我々は、一般的なTM010モードではなくTM020モードを加速モードとして利用する方式[1]の高調波空洞の設計研究を行っている。TM020型の高調波空洞には、(1) TM010空洞に比べてバンチギャップに起因する過渡的電圧変化を抑制することができること、(2) TM020モードの磁場の節の位置に寄生モード減衰機構を搭載することで加速モードに影響を与えることなくほとんどの寄生モードを減衰できること、という利点がある 。この設計研究の中で、TM020型高調波空洞における課題として、(1) 周波数チューナーや入力カップラーを空洞に設けるとTM020モードの磁場分布に歪みが生じ、加速モード自身が減衰されてしまうこと、(2)TM020モードと近い位置に磁場の節を持つTM02n, TM12nモードなどが減衰され難いこと、が判明し、その解決に取り組んでいる。本発表では、主に(1)に対する解決案について報告を行い、(2)についても簡単に報告する予定である。[1] H. Ego, et al., PASJ2019, WEOH03 (2019).
 
12:40-14:40 
WEPP32
p.313
Analysis and Field Emission Characteristic of Niobium Surface Treated with Electropolishing Process
○Vijay Chouhan, Yoshiaki Ida, Keisuke Nii, Takanori Yamaguchi (Marui Galvanizing Co., Ltd.), Hitoshi Hayano, Shigeki Kato, Hideaki Monjushiro, Takayuki Saeki (KEK)
 
Niobium (Nb) coupons in-situ-electropolished (EPed) with an Nb SRF coupon cavity and laboratory EPed Nb samples were analyzed with XPS, SEM, EDX for chemical, morphological and elemental information of their surfaces. The coupons EPed simultaneously showed different peak intensity ratios of Nb0 to Nb5+, different concentrations of O, C and other elements on their top surfaces. The results were related to the number density of particle clusters, which were present on the surface and confirmed to be Nb2O5 by XPS and EDX analyses. Both XPS and EDX analyses revealed that the particles contained C, F, and Cu impurities. Surface analysis results of the laboratory EPed samples were found to be consistent with that of the coupons. Field emission characteristics were measured for the EPed coupon surfaces with two different field emission measurement systems. The surface having particles showed a significantly higher emission current at a lower electric field compared to a relatively clean surface. This article also describes the mechanism of particle formation on the surface and necessary optimized post-EP processes that removed the undesired synthesized particles from the cavity surface.
 
12:40-14:40 
WEPP33
p.317
超伝導スポーク空洞製作のための電子ビーム溶接試験
Electron beam welding test for superconducting spoke cavity fabrication

○沢村 勝,羽島 良一(量研機構),佐伯 学行(高エネ研),岩下 芳久,頓宮 拓(京大),中村 哲朗,渡邉 直久(ミラプロ)
○Masaru Sawamura, Ryoichi Hajima (QST), Takayuki Saeki (KEK), Yoshihisa Iwashita, Hiromu Tongu (Kyoto Univ.), Tetsuro Nakamura, Naohisa Watanabe (Mirapro Co., Ltd)
 
同じ周波数ならば楕円空洞よりサイズが小さく、パッキングファクターにも優れ るスポーク空洞の利点を生かしてERL 加速器を小型化し、LCS-γ/X線源を産業・ 学術分野への利用を図るため、超伝導スポーク空洞の開発を進めている。プレス 加工したニオブ製のハーフスポークをフルスポークにするための電子ビーム溶接 試験を行っている。スポークは形状が複雑な曲線で、プレス成型による板厚の違 いがあるため、溶接個所により条件が変わる。溶接試験の現状について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP35
p.320
SuperKEKBにおけるビームローディングに起因する縦方向不安定性を抑制するRFフィードバックの検証
Verification of RF feedback to suppress longitudinal instability due to beam loading in SuperKEKB

○赤井 和憲,可部 農志,小林 鉄也,中西 功太,西脇 みちる(高エネ研)
○Kazunori Akai, Atsushi Kabe, Tetsuya Kobayashi, Kota Nakanishi, Michiru Nishiwaki (KEK)
 
電子・陽電子衝突型加速器SuperKEKBは、2018年にビーム衝突調整を開始し、現在はフェーズ3として物理データ収集のための運転を続けている。蓄積ビーム電流の設計値は陽電子3.6A、電子2.6Aと、いずれも前身のKEKB実績値の約2倍であり、加速モードへの強いビームローディングに起因するRobinson不安定などの、大電流ビームと高周波システムの相互作用に関係する諸問題への対策が一層重要となる。加速モード帯域のうち加速周波数、すなわちビーム加速に直接関わるゼロモードのビームローディング対策として、LLRF制御系には通常の位相・振幅制御に加え、インピーダンスの高い超伝導空洞の実効的負荷Q値を低減するための直接RFフィードバックや、ビーム振動を検出してリング全周の位相を制御するダンパーなどを組み込んでいる。2019年6月の運転において、ゼロモード振動数の変化やビーム不安定性に関するスタディを行ない、直接RFフィードバック及び位相ダンパーの効果を検証した。本発表では、SuperKEKBの加速モードのビームローディングに起因する縦方向ビーム不安定性とその対策に関する測定結果を示すとともに、理論計算及び制御ループの特性を含めた解析について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP36
p.325
J-PARCリニアックLLRF制御システムにおける恒湿環境の構築
Construction of constant humidity environment for low-level RF system at J-PARC linac

○福井 佑治,方 志高,二ツ川 健太,溝端 仁志(高エネ研),篠崎 信一,平根 達也,不破 康裕(原子力機構),岩間 悠平,佐藤 福克(NAT)
○Yuji Fukui, Zhigao Fang, Kenta Futatsukawa, Satoshi Mizobata (KEK), Shinichi Shinozaki, Tatsuya Hirane, Yasuhiro Fuwa (JAEA), Yuhei Iwama, Yoshikatsu Sato (NAT)
 
J-PARCリニアックから3GeVシンクロトロン(RCS)に出射されるビームの運動量が湿度に依存して変動していることが2017年頃から認知され始めている。リニアックの高周波機器は全長約300mのクライストロンギャラリー内に設置されており、室内の湿度の変動が運動量の変化に影響を与えていることが考えられる。ギャラリー内の室温は27±2℃になるように制御されている一方、湿度に関しては制御されておらず、年間を通じて15%から65%RHまで変動している。そこで2018年からリニアックで使用する高周波機器および高周波ケーブルの湿度依存性を測定すると共に、精密空調機を使用して局所的な恒温恒湿環境を構築することを進めてきた。現在は、高周波基準信号発生器を設置している19インチラックおよびSDTL/ACSの各空洞から1箇所づつLLRF機器用ラックを選び、これらに精密空調機および高気密ラックを導入して運用を行っている。これらのラックではラック内の湿度変動を外気に比べて1/20程度に低減することが可能になった。本件では、リニアック高周波機器に対する恒温恒湿環境の構築に関して、これまでの経緯と今後の対応について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP37
p.329
Cバンド50 MWクライストロンの高効率化
Efficiency enhancement of C-band 50-MW klystron

○阿武 俊郎,大久保 良久(キヤノン電子管デバイス株式会社),稲垣 隆宏(理化学研究所,高輝度光科学研究センター)
○Toshiro Anno, Yoshihisa Okubo (Canon Electron Tubes & Devices Co., Ltd.), Takahiro Inagaki (RIKEN, JASRI)
 
キヤノン電子管デバイス株式会社のCバンド (5712 MHz) 50 MWクライストロンは、国立研究開発法人理化学研究所のX線自由電子レーザー施設SACLAのCバンド加速器に使用されている。このクライストロンの出力空胴部の設計を改良し高効率化したクライストロンを開発した。クライストロンの出力空胴は、集群した電子を減速しその運動エネルギーをマイクロ波のエネルギーとして取り出す機能を持つ。改良設計では出力空胴に接続するドリフト菅の直径を従来よりも小さくすることで、ドリフト菅への電界の漏れを小さくした。これにより出力空胴で電子をより減速し、より大きなマイクロ波のエネルギーが得られるようにした。Cバンド50 MWクライストロンの出力空胴は3つのセルで構成される動作モードπ/2の進行波型空胴であるため、ドリフト菅の直径の変更に伴い各セルの共振周波数とセル同士の結合係数も変更した。従来設計に対して効率を5ポイント以上向上することを目標に設計を行い、FCIコードによるクライストロンの動作シミュレーションで効率が7ポイント向上した。改良設計を適用したクライストロンを1台製作し、2020年3月に試験を実施した。出力電力50 MWでの効率は従来の43%から設計通り約7ポイント向上し50.2%となった。またビーム電圧の規格上限の370 kVでは62.5 MWの出力電力が得られた。
 
12:40-14:40 
WEPP38
p.333
SuperKEKBでの大電力RF分配系におけるビーム負荷差異による空洞間位相調整
Phase adjustment between cavities with beam loadings disparity in high power RF distribution system at SuperKEKB

○小林 鉄也,赤井 和憲,阿部 哲郎,榎本 舜,中西 功太,西脇 みちる,渡邉 謙(高エネ研)
○Tetsuya Kobayashi, Kazunori Akai, Tetsuo Abe, Shun Enomoto, Kota Nakanishi, Michiru Nishiwaki, Ken Watanabe (KEK)
 
SuperKEKB加速器では、クライストロン(KLY)1本で2式の空洞を駆動するシステム(1:2ステーション)が複数ある。この場合、加速電圧は2空洞のベクターサム信号を用いて制御されるが、ビームに対する2空洞間の位相差は大電力RF系(立体回路)の線路長で決まる。SuperKEKBのようにビーム電流が非常に大きな蓄積リングの場合、この空洞間位相は非常に重要である。最初のビーム蓄積前には空洞pickup信号を直接的に測定・比較して立体回路の線路長を合わせ(それで制御系を校正し)、2016年から問題なくコミッショニングが続けられた。しかし昨年ある1:2ステーションで何らかの理由で空洞間位相(あるいは校正)が変わっている(ビーム負荷バランンスが大きくずれた)ことが分かり、このビーム負荷(反射パワー等)の違いから、空洞間位相差を推定し、位相(立体回路移相器)の調整を行なった。この調整方法は運転中(ビーム積み上げ時)のデータを用いるだけで、特別な加速器トンネル入域やビーム・スタディ時間は一切必要としない。  本発表では、上記のように2空洞ベクターサム制御下において、ビーム負荷の差異から空洞間位相差を推定する方法、それによる立体回路調整でビーム負荷バランスが改善した例を紹介する。また、別の方法として、シンクトロン振動の周波数変化により空洞間位相差を確認したダミピング・リング(小電流)での例も紹介する。
 
12:40-14:40 
WEPP39
p.338
イグナイトロン代替半導体スイッチ実用基板の評価
Development of semiconductor switch for replacing Ignitrons

○亀崎 広明,森 均,徳地 明(株式会社パルスパワー技術研究所),小野 礼人,高柳 智弘(JAEA/J-PARC)
○Hiroaki Kamezaki, Hitoshi Mori, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Laboratory Ltd.), Ayato Ono, Tomohiro Takayanagi (JAEA/J-PARC)
 
パルス大電力クライストロンのカソード電源回路の短絡保護用クローバースイッチとして、水銀を使用した放電管イグナイトロンを代替する半導体スイッチの実用基板の評価を行った。MOSゲートサイリスタ素子を16並列3直列接続した単位基板を4直列接続とし、12kVDC40kApの高電圧大電流スイッチング性能を確認したので、その結果について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP40
p.341
J-PARCリニアックRFダウン事象の解析
Analysis of the J-PARC linear accelerator RF down phenomena

○佐藤 福克,岩間 悠平(日本アドバンストテクノロジー株式会社),篠崎 信一,平根 達也,不破 康裕(日本原子力研究開発機構),Cicek Ersin,方 志高,福井 佑治,二ツ川 健太,溝端 仁志(高エネルギー加速器研究機構)
○Yoshikatsu Sato, Yuhei Iwama (NAT), Shinichi Shinozaki, Tatsuya Hirane, Yasuhiro Fuwa (JAEA), Ersin Cicek, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Kenta Futatsukawa, Satoshi Mizobata (KEK)
 
J-PARCリニアックでは、45台のクライストロン(324 MHzと972 MHz)を用いて加速器の運転が行われている。加速器の運転が停止する要因は様々あるが、リニアック高周波の回数が最も多い。このため、高周波ダウンの原因を解析することが重要であり、解析した原因を対策することでJ-PARC の安定した運転に繋がることが期待される。そこで主要箇所に設置してある方向性結合器からの入射波、反射波、加速空洞のピックアップの検波波形をオシロスコープに取り込み、高周波のダウンをトリガーにした自動画像データの取得システムを構築し、高周波ダウン時の波形データの取得をした。本件では、高周波ダウンの解析と今後の対策に関して発表する予定である。
 
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WEPP41
p.346
KEK電子陽電子入射器における高周波源および導波管高周波窓の運転保守(Ⅱ)
Maintenance Activity of RF System and RF Windows in KEK Electron-Positron Linac(Ⅱ)

○東福 知之,今井 康雄,馬場 昌夫,諸富 哲夫(三菱電機システムサービス株式会社),明本 光生,荒川 大,片桐 広明,川村 真人,設楽 哲夫,竹中 たてる,Qui Feng,中島 啓光,夏井 拓也,福田 茂樹,本間 博幸,松本 利広,松下 英樹,三浦 孝子,道園 真一郎,矢野 喜治,松本 修二(高エネルギー加速器研究機構)
○Tomoyuki Toufuku, Yasuo Imai, Masao Baba, Tetsuo Morotomi (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.), Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Masato Kawamura, Tetsuo Shidara, Tateru Takenaka, Feng Qiu, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Shigeki Fukuda, Hiroyuki Honma, Toshihiro Matsumoto, Hideki Matsushita, Takako Miura, Shinichiro Michizono, Yoshiharu Yano, Shuji Matsumoto (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器では高周波源として60台の大電力クライストロン及びサイラトロンを使用しており、4つのエネルギーの異なるリングへの入射を行なっている。2019年度は4月に入ってすぐに試験設備のあった加速管組立室において火災が発生し、その時に発生した煤による被害が電子陽電子入射器にも及んだ。被害にあった機器の復旧作業が行われ、19日後に電子陽電子入射器の運転が再開された。2019年度は約5,500時間の運転が行われ、クライストロンはヒーター断線などにより4台を交換、サイラトロンはヒーターケーブル温度上昇などにより5台の交換を行なった。導波管高周波窓の交換はなかった。現在設置しているクライストロンの平均運転時間は約67,000時間、サイラトロンの平均運転時間は約37,000時間、導波管高周波窓の平均運転時間は約90,000時間であり、年々長くなっている。本稿ではクライストロン,サイラトロン,導波管高周波窓に関する統計及び高周波源に関する不具合事例と運転保守について報告する。
 
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WEPP42
p.350
新しい非蒸発型ゲッターである分子/無酸素Ti薄膜の作製と性能評価
Preparation and performance evaluation of molecular/oxygen-free Ti thin film as a new non-evaporable getter

○小野 真聖(東大),佐藤 裕太(横国大),増田 裕介(東京理科大),菊地 貴司(KEK),大野 真也(横国大),中山 泰生(東京理科大),間瀬 一彦(KEK, 総研大),吉岡 和夫,吉川 一朗(東大)
○Masato Ono (UTokyo), Yuta Sato (YNU), Yusuke Masuda (TUS), Takashi Kikuchi (KEK), Shinya Ohno (YNU), Yasuo Nakayama (TUS), Kazuhiko Mase (KEK, SOKENDAI), Kazuo Yoshioka, Ichiro Yoshikawa (UTokyo)
 
非蒸発型ゲッター(NEG)ポンプは、超高真空中での加熱後に室温に戻すと活性な気体を吸着するNEGの性質を利用した真空ポンプで、排気速度が大きく、オイルフリー、無騒音、無振動、小型、軽量、省エネルギーといった特徴から、加速器で広く使用されている。しかしながら、既存のNEGポンプには、1) 大気曝露時にNEG材料の表面層が酸化し、排気性能が低下する、2) 活性化温度が比較的高い(ZrVFe合金の場合は450℃、TiZrV薄膜の場合は180~200℃)という課題があった。最近我々は125℃、6時間加熱で活性化するNEGである無酸素Pd/Tiを開発したが、H2とCOしか排気しないという課題が残った。そこで我々は超高真空下で無酸素Tiを成膜したのち、特定の気体を導入してTi薄膜に分子を吸着させることで活性なTi膜を保護する分子/無酸素Ti 薄膜を作製した。分子/無酸素Ti薄膜は、1) 大気曝露によるTi表面の酸化を抑制できる、2) 真空中での加熱により分子を脱離することで活性化できる、3) H2OやO2、H2、CO、CO2などの残留ガスを排気できる、という特性が期待できる。本発表ではN2、またはAr、CD3OH、空気を用いて分子/無酸素Ti 薄膜を作製し、活性化後に真空密閉したときの圧力曲線測定や、オリフィス法による排気速度測定を行った結果について報告する。
 
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WEPP43
p.355
無酸素Pd/Ti非蒸発型ゲッター(NEG)コーティングを行ったベローズ、ステンレス箔の性能評価
Evaluation of bellows and foils coated with oxygen-free Pd/Ti nonevaporable getter (NEG)

○狩野 悠,小川 忠良,矢部 学,大島 和馬,加藤 良浩(入江工研),増田 祐介(東理大),小野 真聖(東大),佐藤 裕太(横国大),中山 泰生(東理大),吉岡 和夫,吉川 一朗(東大),大野 真也(横国大),菊地 貴司(KEK),間瀬 一彦(KEK、総研大)
○Yu Kano, Tadayoshi Ogawa, Manabu Yabe, Kazuma Ohshima, Yoshihiro Kato (IKC), Yusuke Masuda (TUS), Masato Ono (UTokyo), Yuta Sato (YNU), Yasuo Nakayama (TUS), Kazuo Yoshioka, Ichiro Yoshikawa (UTokyo), Shinya Ohno (YNU), Takashi Kikuchi (KEK), Kazuhiko Mase (KEK,SOKENDAI)
 
加速器では、完全オイルフリー、無騒音、無振動、省スペース、省エネルギー、低コストでありながら、10-7 Pa以下の超高真空下において高い排気速度を持つ真空ポンプが求められている。KEKの間瀬らはこうした要求に応えるために新しい非蒸発型ゲッター(NEG)である無酸素Pd/Tiを開発した[1]。無酸素Pd/Tiは133℃、12時間のベーキング後に室温に戻すとH2とCOを排気し、真空排気とベーキング、大気導入のサイクルを繰り返しても排気速度が低下しない[2]。本研究では、20μm×100mm×300mmのステンレス箔6枚の両面、ステンレス製ICF114成形ベローズ1個の内面、ステンレス製ICF203成形ベローズ2個の内面に無酸素Pd/Tiコーティングを行い、その排気速度をオリフィス法で測定したので報告する。無酸素Pd/Tiをコートしたベローズ、ステンレス箔はいずれもH2とCOを排気し、加速器の超高真空排気に利用できることが立証された。本研究は(公財)東京都中小企業振興公社平成30年度新製品・新技術開発助成事業の助成のもとに行われた。 [1] T. Miyazawa et al., J. Vac. Sci. Technol. A 36, 051601 (2018). [2] T. Kikuchi et al., AIP Conf. Proc. 2054, 060046 (2019).
 
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WEPP44
p.360
J-PARC MUSEにおける偏向電磁石(DB2)用予備コイル製作のための最適化
Optimization for manufacturing spare coils for the bending magnet DB2 at J-PARC MUSE

○湯浅 貴裕,藤森 寛,池戸 豊,河村 成肇(高エネルギー加速器研究機構),坂田 茂雄,目黒 学,川端 公貴(日本アドバンストテクノロジー)
○Takahiro Yuasa, Hiroshi Fujimori, Yutaka Ikedo, Naritoshi Kawamura (KEK), Shigeo Sakata, Manabu Meguro, Koki Kawabata (NAT)
 
J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)における崩壊ミュオンビームラインに設置されている偏向電磁石(DB2)は製作から40年以上が経過し、コイルの経年劣化が懸念されるため、予備コイルの製作を計画している。しかし、現行コイルと同一な断面形状のホローコンダクター(ホロコン)が入手困難なことから、異なる断面形状のホロコンを用いて予備コイルを製作することになった。現行の断面形状□12×12-□6×6と符合するホロコンとして、□12×12-φ6.5が選定され、電気特性のパラメータを比較することによって両者の整合性を確認した。一方、J-PARCの規定に伴う冷却水の流速、温度上昇等の運用条件を満たすように流量パラメータの調整を行うと共に、高運動量ミュオンの輸送に対しても冷却水の温度上昇が抑えられるように水路数の最適化を行った。さらに、新規コイルによるDB2の磁場評価においては、三次元磁場解析プログラム(OPERA-3d)を用いて磁場の最適化も行ったので、これらの現状を報告する。
 
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WEPP45
p.363
KEK-PFにおけるパルス六極電磁石の精密磁場測定による渦電流効果の評価
Evaluation of Eddy Current Effects on a Pulsed Sextupole Magnet by a Precise Magnetic field Measurement at KEK-PF

○ロ ヨウ(総研大),満田 史織,高木 宏之,帯名 崇,原田 健太郎,高井 良太,小林 幸則,野上 隆史,内山 隆司(高エネ研)
○Yao Lu (SOKENDAI), Chikaori Mitsuda, Hiroyuki Takaki, Takashi Obina, Kentaro Harada, Ryota Takai, Yukinori Kobayashi, Takashi Nogami, Takashi Uchiyama (KEK)
 
Pulsed sextupole magnet (PSM) injection is continuously developed at the photon factory of KEK(KEK-PF) for the new injection scheme in the future light source. We found that a PSM with rectangular aperture (PSM2) has large eddy current effects in accelerator operation, which is against our expectation. Therefore, the magnetic field of the initial prototype, a PSM with circular aperture (PSM1) was measured again. In this case, the AC magnetic field of PSM1 was precisely measured by a small pick-up coil which finished 3D mapping measurement to obtain detailed magnetic field distribution. By comparing DC and AC field measurement results, PSM1 also has eddy currents. This experiment represents that the eddy current effect has to be taken into consideration in PSM injection. We will report the details of measurement setup and observed evidence of eddy current phenomenon in this conference.
 
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WEPP46
p.368
パルス6極電磁石で発生する渦電流の影響を抑えるセラミックチェンバーのコーティングパターンについての評価
Evaluation of coating pattern of ceramics chambers to reduce the effect of eddy currents by the pulsed sextupole magnet

○高木 宏之,満田 史織(高エネ研),魯 垚(総研大),帯名 崇,高井 良太,野上 隆史,内山 隆司,原田 健太朗,上田 明,長橋 進也,小林 幸則(高エネ研)
○Hiroyuki Takaki, Chikaori Mitsuda (KEK), Yao Lu (SOKENDAI), Takashi Obina, Ryota Takai, Takashi Nogami, Takashi Uchiyama, Kentaro Harada, Akira Ueda, Shinya Nagahashi, Yukinori Kobayashi (KEK)
 
フォトンファクトリー(KEK-PF)では,パルス多極電磁石によるトップアップ入射の新技術の開発を不断に進めている。その中で解決すべき重要な課題のひとつとなっているのが多極電磁石本体およびセラミックダクト内面コーティングで発生する渦電流が蓄積ビームへ与える影響である。パルス多極電磁石を使った入射では、蓄積ビームが通過する付近におけるパルス磁場を出来る限り無くして蓄積ビームに対する影響が小さくなるように設計しているが、渦電流が発生するとそれによって発生した磁場が不要な蹴りを蓄積ビームに与えてしまい、入射時に蓄積ビームが振動してしまう事になる。今回この影響を実際のビームを使って評価しその結果について報告する。また、渦電流の影響を小さくするようなコーティングパターンを施したセラミックダクトを製作したのでそれについても合わせて報告する。
 
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WEPP47
p.372
軌道偏心加速器における磁極形状設計手法の開発
Development of magnet design method for cotangential trajectory accelerator

○西田 賢人,堀 知新,青木 孝道,羽江 隆光(日立製作所)
○Kento Nishida, Chishin Hori, Takamichi Aoki, Takamitsu Hae (Hitachi, Ltd.)
 
粒子線治療に向けた小型・可変エネルギーの加速器として、日立製作所では軌道偏心加速器を開発している。開発中の加速器では、固定磁場と周波数変調した加速電場を用いるため、超伝導コイルが適用可能であり、シンクロサイクロトロンと同等以下に小型化できる。また、本加速器では、ビームが周回する円軌道を一方向に偏心させることで軌道の集約領域を形成し、がん治療に必要なエネルギー帯(陽子70~225 MeV、炭素150~430 MeV/u)のビームを集約領域から共鳴取出しすることを特徴としている。本加速器の実現には、偏心した軌道でビームを周回させるために必要となる磁場分布を相対誤差率 0.05 % 以下で再現する必要がある。そこで、磁場分布の生成に必要な磁極形状の解析を、磁場解析の逆問題として定式化し、最小二乗法を用いることで解く。この磁極形状解析と有限要素法による磁場解析を組合せて、偏心軌道用磁場分布を生成できる主電磁石の設計手法を開発した。本手法の適用により、ビームの偏心軌道を実現できる磁極形状を決定し、生成磁場が目標精度である相対誤差率 0.05 % 以下を満たすことを確認した。本発表では、構築した主電磁石設計手法と本手法により算出した磁場分布における粒子軌道解析結果について述べる。
 
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WEPP48
p.376
ナノ結晶材料を用いた磁性コアの特性評価
Characterization of magnetic cores using nanocrystalline materials

○中田 恭輔,生駒 直弥,虫邉 陽一,徳地 明(株式会社パルスパワー技術研究所)
○Kyosuke Nakata, Naoya Ikoma, Yoichi Mushibe, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Lab.)
 
加速器には高電圧,大電流パルスを発生させるパルスパワー電源が用いられる.100kVを超える高電圧のパルスを発生させる場合,パルスパワー電源にはパルストランスを用いることが多い.パルストランスをより小さくする上で,磁性コア材質には高い飽和磁束密度,角型比が求められる.近年登場したナノ結晶材料を用いた磁性コアは,他の材質と比較したとき優れた性質を持つが,製作の過程や製造元により特性が異なっている。本発表では,複数種のナノ結晶材料コアにおける各基礎特性や交流電圧,パルス電圧印加時のB-Hカーブと損失を評価したので報告する.
 
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WEPP49
p.380
高度なX-Y結合を用いた3次元螺旋ビーム入射のための輸送区間のビーム制御およびモニター手法の仕様
Discussions of beam control and monitoring method of transport section for 3-D spiral beam injection using strong X-Y coupling

○飯沼 裕美(茨大理工学研究科),阿部 充志,大澤 哲,佐々木 憲一,中山 久義,古川 和朗,三部 勉(高エネ研),平山 穂香(茨大理工学研究科),Rehman Muhammad Abdul(総研大)
○Hiromi Iinuma (Ibaraki-Univ.), Mitsushi Abe, Satoshi Ohsawa, Ken-ichi Sasaki, Hisayoshi Nakayama, Kazuro Furukawa, Tsutomu Mibe (KEK), Honoka Hirayama (Ibaraki-Univ.), Muhammad Abdul Rehman (SOKENDAI)
 
素粒子ミューオンの異常磁気能率(g-2)および電気双極子(EDM)を同時に超精密測定する実験[1]の要素技術開発を担う3次元螺旋ビーム入射を実現するための輸送区間におけるビームモニターの方法及びビーム制御の手法、要求仕様を議論する。「医療用MRI磁石を応用した超電導磁石の蓄積リング」は有効磁場領域の磁場精度+/-0.1ppm(peak-peak)、蓄積ビームの直径は77㎝ほどになり、前例のない小型かつ超精密磁場の実現になる。このような蓄積磁石への入射は、新規開発した高度なビームX-Y結合(水平方向および垂直方向の位相空間を強く結合)を利用した3次元らせん入射技術[2,3]を用いる。本発表では、強いX-Y結合をもったビームを生成するために輸送区間の概要を紹介し、次の2つの要素技術を議論する:①輸送区間におけるビームモニターの手法:強いX-Y結合度を持ったビームの4次元の位相空間の保存量(ビームのσ行列の行列式)の評価手法の議論、および、電子銃を用いたテストビームラインでの実験結果を踏まえたビーム位相空間制御の性能評価、②小型蓄積磁石内部におけるビーム軌道補正用ステアリング磁石の設計と、試作機の開発状況の報告、を行う。 [1] PTEP 2019, 053C02 (22pages) DOI:10.1093/ptep/ptz030 [2] PASJ2019 THOH08, PASJ2018 WEOM07, PASJ2018 THP006 [3] NIMA, 832 (2016)51
 
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WEPP50
p.385
ゲート回路用高電圧DCDCコンバータの開発
Development of high-voltage DC-DC converter for gate circuits

○中山 響介,森 均,徳地 明((株)パルスパワー技術研究所)
○Kyosuke Nakayama, Hitoshi Mori, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Lab.)
 
FETやサイリスタ、IGBTといった半導体素子を用いて高電圧を扱う回路では、駆動用電源やインターロック機能を持つ制御回路が不可欠である。ただ、この制御回路への電力供給は地上側電位に接地した外部の電源から行うのが一般的であり、高圧部とは絶縁しなければならず、また当然ながらそれが起動していないと半導体回路は動作できなかった。我々はそのような不都合を解消するため、外部電源・外部信号を必要とせず、高圧が印加されるとそこからそれ自身が自動で制御電源を生成する、半導体を用いたDCDCコンバータ回路を開発した。印加電圧がある一定値を超えたときから動作を始め、印加電圧を上げても出力電圧・電流はほぼ一定となるように制御される。この回路は理論的には複数個の直列接続が可能で、現在は2直列までの動作を確認している。その時の条件は以下の通りである。1回路当たりの印加(入力)電圧は最大3000 V、動作開始電圧は370 V、出力電力は5Wである。
 
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WEPP51
p.388
J-PARC MRアップグレードのための速い取り出し用新高磁場セプタム電磁石(2)
The new high-field septum magnet for upgrading of fast extraction in MR J-PARC(2)

○芝田 達伸,松本 教之,石井 恒次,杉本 拓也,松本 浩(高エネ研),Fan Kuanjun(HUST)
○Tatsunobu Shibata, Noriyuki Matsumoto, Koji Ishii, Takuya Sugimoto, Hiroshi Matsumoto (KEK), Kuanjun Fan (HUST)
 
J-PARC MRでは速い取り出しのビームパワーを750kWを経て1.3MWに増強するためアップグレードが進行中である。ビーム増強のためにはビーム運転周期を現在の2.48秒から1.16秒に短縮する。MRの入出射用電磁石システムも1.16秒周期への対応のためアップグレードを行っている。速い取り出し用高磁場セプタム電磁石は4台あり、この内3台について新しいセプタム電磁石に交換する。新しいセプタム電磁石には高繰り返しや大強度ビームが引き起こす問題に対処するためにさまざまな工夫が加えられた。磁極内用ビームダクトは渦電流を抑止するため現状のSUS材からセラミックス材に変更した。周回ビームダクトには大強度ビームのビームロスによる放射化を軽減するため純チタンダクトを採用した。3台の新高磁場セプタム電磁石は2015年に製作され、2018年の秋にその内の1台(SM30)について通電試験を行った。1.16秒周期での運転に問題はなかったが、磁場測定においてニュートリノ取り出し側とビームアボート取り出し側の磁場に0.4%の差が確認された。また周回ダクト内の漏れ磁場分布にも水平方向に沿った磁場分布に非対称性が見つかった。この問題を解決させるため2019年度再び磁場測定を行う事を計画した。本発表ではニュートリノ側とビームアボート側の0.4%の差の原因、漏れ磁場の再測定の結果、そして漏れ磁場軽減対策として新しく製作したフィールドクランプの製作と実装の結果について報告する。
 
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WEPP52
p.393
CsBr保護膜によるCs-Teフォトカソードの高耐久化に関する研究
Study on improving durability of Cs-Te photocathode with CsBr protective films

○江澤 健太朗,丹羽 智朗,福岡 凜大,小柴 裕也(早大理工総研),坂上 和之(早大理工総研/東大光量子研),鷲尾 方一(早大理工総研)
○Kentaro Ezawa, Tomoaki Tanba, Rinto Fukuoka, Yuya Koshiba (WISE, Waseda Univ.), Kazuyuki Sakaue (WISE, Waseda Univ./UT-PSC), Masakazu Washio (WISE, Waseda Univ.)
 
早稲田大学鷲尾研究室ではレーザーフォトカソード高周波電子銃(RF-gun)を用いた高品質ビーム生成に関する基礎研究・応用研究を行っている。重要な要素技術の一つとして、電子ビームを取り出すための電子源(カソード)の開発が挙げられる。高性能なカソードは高品質なビームの生成に貢献するため、様々な応用においてカソードの質を向上させることが求められる。現在、鷲尾研では半導体フォトカソードの1種として実績のあるCs-Teフォトカソードのさらなる高性能化に向けた研究を行っている。Cs-Teフォトカソードは1%程度の高い量子効率(Q.E. :Quantum Efficiency)と2~3ヶ月という比較的長い1/e寿命を誇る優れたフォトカソードである。しかしながら、量子効率、寿命で優れるCs-Teフォトカソードは残存する酸素ガスによって著しくQ.E.が低下してしまうことが知られており、その問題を解決することが求められている。Cs-Teフォトカソードの残存ガスへの耐久性を向上させることを目標に、Cs-TeフォトカソードへCsBrをコーティングする実験を行った。本発表ではCsBr保護膜の膜厚依存性、およびコーティングによってCs-Teフォトカソードの残存ガス耐性が向上したことについて報告する。
 
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WEPP53
p.398
サイクロトロン内部イオン源のRF引出しシミュレータ開発
Development of an RF extraction simulator for cyclotron internal ion sources

○蛭海 元貴,筒井 裕士,宮﨑 修司,北原 龍之介(住重),星野 一生,畑山 明聖(慶大)
○Genki Hirumi, Hiroshi Tsutsui, Shuji Miyazaki, Ryunosuke Kitahara (SHI), Kazuo Hoshino, Akiyoshi Hatayama (Keio Univ.)
 
本研究は、サイクロトロン内部にイオン源を設置したシステムを対象とする。サイクロトロンの中心領域では、RF加速電場が引出し電場としても作用する。引出し電場がイオン源の引出しスリットからプラズマ容器(チムニー)内部に染み出す際、チムニー内部のプラズマがこれを遮蔽し、いわゆるイオン放出面(メニスカス)が形成される。このメニスカス形状はビームの収束・発散を決定し、ビーム特性に大きく寄与する。従来、DC引出し電場の場合を解析した例は多い一方、RF引出し電場の場合を理論的に解析した例は知る限り無い。 そこで、本研究の第1段階では、チムニーと引き出し部をモデル化した2次元Particle in Cellコードを開発し、まずは基礎的なDC引出し電場による水素プラズマからの陽子ビーム引出しを模擬した。その妥当性検証のために、シースの特性とシース理論との比較を行い、両者の良い一致を見た。さらに、DC引出し電場に対するメニスカス形状、ビーム特性の変化などの評価や、実測値や他のシミュレーションコードとの比較を行い、さらなる基礎的検討を進めている。 第2段階では、引出し電場を正弦波的に時間変化させ、RF引出しを模擬した計算におけるメニスカス形状、ビーム特性の時間発展を求める。この結果とDC電場での結果とを比較し、RF引き出し電場がメニスカス形状やビーム特性に及ぼす影響を明らかにする予定である。詳細は、発表に譲る。
 
12:40-14:40 
WEPP55
p.402
J-PARCハドロンビームライン用回転円板型標的の開発(2)
Development of a rotating-disc type target for J-PARC Hadron beamline (2)

○倉崎 るり,青木 和也,上利 恵三,秋山 裕信,家入 正治,加藤 洋二,小松 雄哉(KEK),齋藤 真慶(東北大学),里 嘉典,澤田 真也,高橋 仁,田中 万博,豊田 晃久,広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 史真,森野 雄平,山野井 豊,渡邉 丈晃(KEK)
○Ruri Kurasaki, Kazuya Aoki, Keizo Agari, Hironobu Akiyama, Masaharu Ieiri, Yohji Katoh, Yusuke Komatsu (KEK), Masayoshi Saito (Tohoku University), Yoshinori Soto, Shinya Sawada, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Fumimasa Muto, Yuhei Morino, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (KEK)
 
現在、J-PARCハドロン実験施設では、2次粒子生成標的として間接水冷式の固定型標的を使用している。この方式では、1次陽子ビーム強度で95kW(5.2秒サイクル時)が限界であると予想されている。そこで、さらなる大強度化を目指して回転円板型標的の開発を進めている。これは、円板形状の標的を回転させることにより熱負荷を円周方向に分散させることで、より大強度のビームを受けられるようにするものである。 回転円板型標的の開発を進めるにあたって、冷却方法の最適化が重要である。現在、ヘリウムガスを吹き付けることによる直接冷却式を第一案として設計検討を行っているが、複雑な形状に対する熱伝達率については理論的な算出は困難であるため実験による計測が必要となる。そこで、冷却能力を評価するための実機形状を模擬した装置を構築し、円板の形状を平円板、スポーク型円板、およびターボファン型円板と変えて、冷却能力に関するデータの蓄積を進めている。本発表では、回転円板における冷却能力の測定状況について報告する。
 
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WEPP56
p.407
大型加速器建設におけるUAVレーザー計測及び赤色立体地図の利活用検討
Studying the utilization of UAV laser survey and a Red Relief Image Map (RRIM) in the construction of a large accelerator

○寺澤 弘陽,高野 裕司(アジア航測株式会社 社会インフラマネジメント事業部 PPP/PFI推進室),橋本 貴之(アジア航測株式会社 センシング技術統括部 MMS・UAV計測室),川端 康正(アジア航測株式会社 東北インフラマネジメント技術部 地域創生一課),沖田 潤一郎(元岩手県 ILC推進局 事業推進課),大平 尚(岩手県 理事),成田 晋也,吉岡 正和(岩手大学)
○Hiroaki Terasawa, Yuji Takano (PPP/PFI Promotion office , Social Infrastructure Management Division, ASIA AIR SURVEY CO., LTD.), Takayuki Hashimoto (MMS/UAV Survey Office, Survey Technologies Dept., ASIA AIR SURVEY CO., LTD.), Yasumasa Kawabata (Regional Creation Section No.1, Tohoku Infrastructure Management Dept., ASIA AIR SURVEY CO., LTD.), Junichiro Okita (Project Promotion Division, Bureau of ILC Promotion, Iwate Prefectural Government(until march 2020)), Hisashi Odaira (Chair, Iwate Prefectural Government), Shinya Narita, Masakazu Yoshioka (Iwate University)
 
The International linear collider (ILC) is the world’s largest and most advanced electron-positron collider with a total length of 20 km, and its candidate site is Kitakami mountainous area in Tohoku. The construction of ILC involves the establishment of related ground surface facilities such as an onsite campus, an access road, and an access tunnel entrance, in addition to the collider itself. In this research, while mainly assuming the establishment of an access tunnel entrance facility, we created a red relief image map (RRIM) through UAV laser survey in the ILC candidate site and verified its effect on the detailed facility arrangement study. The UAV laser survey was conducted in prefectural forests of Iwate Prefecture in 2019. The RRIM created based on the survey data made it possible to grasp the ground surface, angle of the slope, collapsed lands, forest roads hidden by trees, traces of an old charcoal kiln. In addition, with the longitudinal and traverse figures and contour lines obtained from the survey data, we considered it possible to conduct the study of the facility location and the arrangement plan appropriately and efficiently.
 
12:40-14:40 
WEPP57
p.410
ILCにおける持続可能なエネルギーマネジメントの研究
Study on a sustainable energy management system for the ILC

○吉岡 正和(岩手大学、岩手県立大学),狩野 徹(岩手県立大学),成田 晋也(岩手大学),大平 尚(岩手県庁),平井 貞義(NTTファシリティーズ・ビジネスソリューション・東北支店),川端 康夫(飛島建設土木部),澤井 淳司(三井住友建設土木部)
○Masakazu Yoshioka (Iwate University, Iwate Prefectural University), Toru Kano (Iwate Prefectural University), Shinya Narita (Iwate University), Hisashi Odaira (Iwate Prefectural Office), Sadayoshi Hirai (NTT FACILITIES, INC., Solution Business Department, Tohoku Branch), Yasuo Kawabata (TOBISHIMA CORPORATION, Civil Engineering Devision), Junji Sawai (Sumitomo Mitsu Construction Co., Ltd. Civil Engineering Division)
 
The large accelerator facility is also a large electric power load facility. In that sense, the largest accelerator in Japan was TRISTAN with maximum contracted power and annual power consumption of 96 MW and 500 million kWh, respectively. For TRISTAN, electricity was received from the commercial grid and the waste heat, which was the final stage of energy flow, was released into the air in the cooling tower. However, in recent years, sustainable energy management of large accelerator facilities has become a prerequisite for their acceptance by society. Since ILC uses more power than TRISTAN, facility design should be based on that idea. In this paper, we discuss not only electric power, but also general and comprehensive management of electric power and thermal energy based on the characteristics of the candidate site of ILC. Energy sources including commercial electricity will be comprehensively taken in, such as co-generation, seasonal solar heat utilization, heat utilization of unused biomass and waste thermal energy recovery. Then, we propose to create an innovative energy management system triggered by ILC.
 
12:40-14:40 
WEPP58
p.414
STF-2アライメントおよびCM2a加速空洞の入替え
STF-2 cryomodule alignment and superconducting cavity replacement

○荒木 栄,加古 永治,山本 康史,早野 仁司(高エネ研),清水 健一((有)エスケーサービス),岡田 昭和((株)ケーバック),今田 信一,泰中 俊介(日本アドバンストテクノロジー(株))
○Sakae Araki, Eiji Kako, Yasuchika Yamamoto, Hitoshi Hayano (KEK), Kenichi Shimizu (SKS), Terukazu Okada (K-VAC), Shinichi Imada, Shunsuke Tainaka (NAT)
 
 2020年春にかけてKEK超伝導高周波試験施設(STF)にて、STF-2加速器に設置されたクライオモジュール(CM2a)に組み込まれている超伝導加速空洞の入れ替え作業が行われた。  クライオモジュールへの組み込みは2014年以来であり、作業手順を確認しながら行い、合わせて空洞のアライメント方法も再考した。CM2aの搬出解体作業から始まり、クリーンルーム内での空洞の入れ替えおよび連結作業が進められた。一般区域に運び出された空洞の基準測量および4連空洞の位置調整、ならびにそれらが組み込まれたクライオモジュールをビームラインに再び設置した。また、STFビームライン測量も合わせて考察した。本講演では、STF空洞アライメントの手順およびクライオモジュールの設置について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP59
p.418
cERLでの縦方向バンチ構造測定のための小型偏向空洞の開発
Development of a compact deflecting cavity to measure the longitudinal bunch structure in cERL.

○内藤 大地,山本 尚人,本田 洋介,宮島 司(高エ研)
○Daichi Naito, Naoto Yamamoto, Yosuke Honda, Tsukasa Miyajima (KEK)
 
cERLでは現在アンジュレーターを用いて赤外自由電子レーザー(FEL)生成を行っている。 その中でも自然放射光型FEL(SASE型FEL)は電子がアンジュレーター中でビーム進行方向に粗密化する事で起こる誘導放射によって生成される。 したがってSASE型FELの品質とアンジュレーター出口での電子ビーム進行方向の密度分布が密接な関係を持つ。 そこでアンジュレーター出口に偏向空洞を置いて、ビーム進行方向の密度分布を測定することを計画している。 偏向空洞では電磁場によってビームを回転させて、ビーム進行方向の分布をビーム水平方向に射影する。 そして後方に置かれたスクリーンにビーム進行方向の分布が拡大投影されることで密度分布の測定が可能となる。 測定はFELの波長が20μmに対して10μmの位置分解能を目指している。 この要求を達成するため、新規にRF入力周波数が高く、入力電力に対する電子の偏向率が高い空洞を開発している。 昨年度は新規のRF入力コネクタの設計と製作、空洞の設計の設計と粗加工を行った。本公演ではこの試作一号機とその調整加工の進捗について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP60
p.423
コンパクトERLの赤外FEL用シケイン電磁石の性能と運転
Performance and operation of a chicane magnet for the cERL IR-FEL

○中村 典雄,東 直,原田 健太郎,島田 美帆,満田 史織,高木 宏之,長橋 進也(高エ研),魯 垚(総研大)
○Norio Nakamura, Nao Higashi, Kentaro Harada, Miho Shimada, Chikaori Mitsuda, Hiroyuki Takaki, Shinya Nagahashi (KEK), Yao Lu (SOKENDAI)
 
コンパクトERL(cERL)の赤外FELにおいて、シケイン電磁石が2台のアンジュレータ間に置かれ、電子バンチ内のエネルギー変調を波長間隔の密度変調(マイクロバンチング)に変換することによって赤外FEL出力を高めるために使用される。このシケイン電磁石はもともと分割型偏光制御軟X線アンジュレータ用移相器のプロトタイプとして開発・製作され、ヒステリシスの小さい積層パーマロイコアを持つ3つの偏向電磁石で構成される。3つの偏向電磁石の磁場はそれぞれのコイルに電流を供給する3つの電源によって独立に制御できる。シケイン電磁石が作り出すバンプ軌道による縦方向分散(R56)の値は、17.5MeVの電子ビームに対して最大で-6mmである。シケイン電磁石は2020年2月にアンジュレータ1号機とともに設置され、3月のcERL運転ではビームを使ったバンプ軌道調整が行われた。アンジュレータ2号機設置後の6月には赤外FELとともに本格的な運転が始まる予定である。本発表では、このシケイン電磁石の性能と運転について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP61
p.428
日大での準単色コヒーレントTHzアンジュレーター放射に向けた開発状況
Development of coherent THz quasi-monochromatic undulator radiations at Nihon University

○住友 洋介,境 武志(日本理工),清 紀弘(産総研),早川 建,早川 恭史,黒澤 歩夢,野上 杏子,岡崎 大樹,田中 俊成(日本理工)
○Yoske Sumitomo, Takeshi Sakai (CST, Nihon U.), Norihiro Sei (AIST), Ken Hayakawa, Yasushi Hayakawa, Ayumu Kurosawa, Kyoko Nogami, Hiroki Okazaki, Toshinari Tanaka (CST, Nihon U.)
 
日本大学LEBRAにおいては、今までエッジ放射や遷移放射を利用した0.1 – 2.5 THz程度の広いバンド幅を持つ白色THz光源の開発を行い、ユーザー利用に提供してきた。X線における放射光の開発の歴史が示すように、THz領域においても単色で高ピーク強度のパルス光の存在により、材料開発や性質変化も含めた物性現象の理解に大きな進展を引き起こすと期待できる。本研究では、進行波型加速管における速度集群を複数組み合わせたバンチ圧縮方法を提案し、自由電子レーザーのアンジュレーター装置におけるコヒーレントアンジュレーター放射を通じた準単色THz光源開発を目的としている。既存のアンジュレーター装置でのTHz放射のためには電子ビームのエネルギーは25 MeV以下となり、無視できない広がりを持つ放射となる。このため、他実験と共存可能な取り出し用のチャンバーを製作し、これをアンジュレーター直後に設置の上、目下電子ビームの調整を行っている。本発表においては現在の開発状況について報告を行う。
 
12:40-14:40 
WEPP62
p.432
PF-AR 5 GeVにおけるトップアップ運転実現の検討
Realization of Top-up operation of PF-AR with 5 GeV

○東 直,満田 史織,長橋 進也,原田 健太郎,野上 隆史,内山 隆司,帯名 崇,中村 典雄(KEK)
○Nao Higashi, Chikaori Mitsuda, Shinya Nagahashi, Kentaro Harada, Takashi Nogami, Takashi Uchiyama, Takashi Obina, Norio Nakamura (KEK)
 
KEKの6.5 GeV放射光, PF-ARは2017年から新たに建設された直接入射路 (BT)を使用し, PF, Super-KEKBとともにトップアップ運転が実現されている. しかし, 昨今の運転経費の削減のため, PF-ARではエネルギーを5 GeVに下げた運転を開始した. しかしPF-BTとAR-BTには共通偏向電磁石が存在し, PF 2.5 GeV, PF-AR 6.5 GeVのエネルギーで軌道が設計されているため, 現時点ではこの共通偏向電磁石の磁場強度を細かく切り替えることによって, 擬似的なトップアップ運転を実現している. この擬似的なトップアップ運転から通常のトップアップ運転に是正するためのBT改造の検討を行った. 本発表では幾つかの検討案を比較しながら, 各特徴について説明する.
 
12:40-14:40 
WEPP63

cERLにおけるテラヘルツ光源の開発
Development of THz source at cERL
○本田 洋介,島田 美帆,宮島 司,帯名 崇,山本 尚人,高井 良太,内山 隆司,加藤 龍好,アリシェフ アレクサンダー(KEK)
○Yosuke Honda, Miho Shimada, Tsukasa Miyajima, Takashi Obina, Naoto Yamamoto, Ryota Takai, Takashi Uchiyama, Ryukou Kato, Alexander Aryshev (KEK)
 
cERL周回部では、バンチ圧縮運転により短バンチ電子ビームが得られ、 テラヘルツ帯域のコヒーレント放射の発生に利用することができる。 とくに、ビームを非破壊に放射を発生することのできる、 CDR(コヒーレント回折放射)光源の開発を行っている。 本発表では、誘導回折放射とテラヘルツ輸送路についての進展状況について報告する。
 
12:40-14:40 
WEPP64

コンパクトERLアンジュレータのビーム調整
Longitudinal and transverse beam tuning of the undulator at the compact ERL
○島田 美帆,中村 典雄,本田 洋介,宮島 司,帯名 崇,加藤 龍好,福田 将史(高エネ研)
○Miho Shimada, Norio Nakamura, Yosuke Honda, Tsukasa Miyajima, Takashi Obina, Ryukou Kato, Masafumi Fukuda (KEK)
 
赤外線発振を目指して長さ3mのアンジュレータをコンパクトERLにインストールした。エネルギー17.7MeV、バンチ電荷量60pCで波長20umの自発発振を目指しており、小さなエネルギー拡がりを維持しながらバンチ長を短くする必要がある。そこで、短バンチのビームダイナミクスを理解するために、バンチ圧縮後のCTRのTHz強度、FEL赤外光、およびエネルギー広がりの測定をR56でスキャンしながら行った。また、垂直方向内径8mmの真空ダクトに合わせるために、Qスキャン法をベースとしたオプティクス調整を実施した。バンチ圧縮とエミッタンス増加の評価も行った。これらのビームスタディ結果を紹介するとともに、トラッキングシミュレーションの結果と比較する。
 
12:40-14:40 
WEPP65

SuperKEKBの偏極ビーム開発
Development of a Polarized Beam for SuperKEKB
○リプタック ザカリー(広島大学)
○Zachary Liptak (Hiroshima University)
 
茨城県つくば市のSuperKEKBコライダーは2016年から電子・陽電子をBelle II実験へ送り、2018年から衝突させています。それ以来ビーム電流を上げ、両ビームを「ナノビーム」まで絞り、前世代加速器であったKEKBの瞬間ルミノシティの40倍、蓄積したデータの50倍を目指しています。その他には、将来SuperKEKBの技術を高めたり、Belle IIの物理プログラムを更に広げるため、偏極電子ビームを開発する可能性を探っています。この発表はSuperKEKBにおける偏極電子ビームの企画やチャレンジ、及び新たに開ける可能性について説明します。
 
ポスターセッション② (9月3日 ポスター会場)
13:10-15:10 
THPP01

IFMIF/EVEDA原型加速器(LIPAc)のRFQ長パルス試験用オプティクスの再設計
Re-optimization of optics for beam commissioning of phase-B+ at LIPAc
○下崎 義人,春日井 敦,近藤 恵太郎,坂本 慶司,杉本 昌義,増田 開(量研/六ヶ所),小林 仁,小林 幸則,高山 健,中村 典雄,山口 誠哉(KEK),Cara Philippe(IFMIF/EVEDA PT),Dzitko Herve,Gex Dominique ,Carin Yann(F4E),Oliver Concepcion,Podadera Ivan(CIEMAT),Bellan Luca,Comunian Michele(INFN-LNL),Chauvin Nicolas(CEA/Caclay)
○Yoshito Shimosaki, Atsushi Kasugai, Keitaro Kondo, Keishi Sakamoto, Masayoshi Sugimoto, Kai Masuda (QST/Rokkasho), Hitoshi Kobayashi, Yukinori Kobayashi, Ken Takayama, Norio Nakamura, Seiya Yamaguchi (KEK), Philippe Cara (IFMIF/EVEDA PT), Herve Dzitko, Dominique Gex, Yann Carin (F4E), Concepcion Oliver, Ivan Podadera (CIEMAT), Luca Bellan, Michele Comunian (INFN-LNL), Nicolas Chauvin (CEA/Caclay)
 
The installation and commissioning of the LIPAc, which is the prototype accelerator to validate the low energy stage of IFMIF, are in progress under the Broader Approach agreement concluded between the Government of Japan and the European Atomic Energy Community (Euratom). The commissioning of the phase B, completed on August 2019, is followed by the next scenario, phase B+. One of the main purposes of the phase B+ is to validate the CW operation of the RFQ with a 125mA 5MeV deuteron beam, before installing the SRF Linac for the coming scenario, phase-C. For the phase-B+, 4 quadrupole magnets, 2 steering magnets and 2 BPMs have been installed at the position of the SRF Linac. In the initial design, 2 power supplies were planned to drive these 4 quadrupoles in order to simply install the phase B+ components. But, experiments uncompleted in the phase-B is carried over to the phase-B+, and it was found in the simulation that 2 power supplies for 4 quadrupoles are insufficient to suppress the beam loss for these experiments. So, additional 2 power supplies are introduced to increase the magnetic freedom and the re-design of the phase-B+ has been performed.
 
13:10-15:10 
THPP02
p.436
J-PARCにおける400MeV負水素イオンのレーザー荷電変換原理実証実験の状況
Status of the proof-of-principle demonstration of 400 MeV H- laser stripping at J-PARC

○サハ プラナブ クマル,原田 寛之,金正 倫計(原子力機構, J-PARC),米田 仁紀,道根 百合奈,渕 葵(電通大, レーザー研),佐藤 篤(NAT),柴田 崇統(KEK)
○Pranab Kumar Saha, Hiroyuki Harada, Michikazu Kinsho (JAEA, J-PARC), Hitoki Yoneda, Yurina Michine, Aoi Fuchi (UEC, ILS), Atsushi Sato (NAT), Takanori Shibata (KEK)
 
We are preparing for a Proof-of-principle (POP) demonstration of 400 MeV H- stripping to proton by using laser at the 3-GeV RCS of J-PARC. The present research aims to establish a completely non-destructive H- charge-exchange injection by using only lasers instead of stripper foil conventionally used for that purpose. A short lifetime, unexpected failure of the foil during operation as well as extremely high residual radiation caused by the foil scattering beam losses are two serious issues at all high intensity proton accelerators. The present method comprises three steps for an H- stripping by using lasers. The H- is neutralized to H0 by using an YAG laser, the H0 is excited to the upper states (called H0*) by using a UV laser, and finally the H0* is stripped to proton by the YAG laser. The YAG laser system and the laser cavity systems are under development and will be tested for 3 MeV H- neutralization at the end of 2020. The UV laser will be produced by higher harmonic generation from the YAG laser. The H- beam manipulations to match with the laser parameters are also being conducted. The present experimental status for the POP demonstration H- laser stripping is presented.
 
13:10-15:10 
THPP03
p.441
J-PARCにおけるレーザー荷電変換実験に向けたレーザー開発状況
Status of laser development for laser stripping experiment at J-PARC

○原田 寛之,サハ プラナブ クマル(原子力機構/J-PARC),米田 仁紀,道根 百合奈,渕 葵(電通大),佐藤 篤(NAT),柴田 崇統(高エネ研),金正 倫計(原子力機構/J-PARC)
○Hiroyuki Harada, Pranab Kumar Saha (JAEA/J-PARC), Hitoki Yoneda, Yurina Michine, Aoi Fuchi (UEC), Atsushi Sato (NAT), Takanori Shibata (KEK), Michikazu Kinsho (JAEA/J-PARC)
 
大強度陽子加速器では、線形加速器で加速された負水素イオンの2つの電子を円形加速器の入射点に設置された荷電変換用炭素膜にて剥ぎ取り、陽子へと変換しながら多周回にわたり入射することで、大強度陽子ビームを形成している。この入射手法は、大強度の陽子ビームを生成できる反面、周回する陽子ビームが膜への衝突を繰り返すため、膜の寿命や膜での散乱によるビーム損失が大強度ゆえに課題となっている。そのため、さらなる大強度出力を目指すには、炭素膜を用いた衝突型の荷電変換入射に代わる非衝突型の新たな入射手法が必要となる。本研究では、レーザーにて電子剥離を行う「レーザー荷電変換入射」を新たに提案し、J-PARCにおける原理実証実験を計画しており、その実験に向けたレーザーシステムの開発を進めている。本発表では、レーザー荷電変換入射の概要を紹介し、レーザーシステムの開発状況を報告する。
 
13:10-15:10 
THPP04
p.446
負水素イオンビームの電子銃を用いた荷電変換に関する研究
Charge-exchange method of H- ion beam using electron beam

○岡部 晃大(J-PARCセンター加速器ディビジョン)
○Kota Okabe (Accelerator division, J-PARC center)
 
陽子加速器のさらなる大強度化に向けて、荷電変換入射方式の高度化は重要な研究テーマの一つである。現在、現在稼働中の大強度陽子加速器施設における荷電変換入射方式では、主に荷電変換フォイルを使用している。しかしながら、この手法では、フォイルから生成される中性子や、フォイルによるビーム散乱等に起因する荷電変換フォイル周辺の放射化が問題となっている。この問題を解決するため、世界各地の加速器施設ではレーザー荷電変換等の新たな荷電変換手法が研究されているが、本研究では電子ビームを用いた荷電変換手法に着目し、その基礎実験を進めている。本講演では電子ビームを用いた負水素イオンビームの荷電変換効率測定実験の進捗状況とその試験結果について報告する。
 
13:10-15:10 
THPP05
p.449
多重極電磁石を用いた大面積均一ビームと中空ビームの形成
Formation of large area uniform beam and hollow beam using multipole magnets

○湯山 貴裕,百合 庸介,石坂 知久,柏木 啓次(量研/高崎研),福田 光宏(大阪大学核物理研究センター)
○Takahiro Yuyama, Yosuke Yuri, Tomohisa Ishizaka, Hirotsugu Kashiwagi (QST/Takasaki), Mitsuhiro Fukuda (RCNP, Osaka Univ.)
 
量研高崎のイオン照射研究施設TIARAでは、多重極電磁石による非線形磁場を用いたビーム形成技術開発に取り組んでいる。近年、非線形集束を用いた大面積均一照射技術の開発に加え、ビームの横方向強度分布において中心部より周縁部の強度が明らかに高くなるような中空化したビームの開発を新たに進めており、これまでに理論解析と実証実験によってその実現性を明らかにした。中空ビームは、中心付近に比べ周縁部の強度が数倍と高い強度比を有するため、円柱状標的の外周部に集中的に照射をするような特殊な利用が期待されているが、実用化のためにはビーム形状を整え、且つ周縁部強度の向上を図るなど、中空ビーム自体の最適化が要求される。本発表では大面積均一照射技術開発の現状に加え、中空ビーム形成に関してビーム断面の小面積化や横方向強度分布の最適化などについて検討を進めたのでこれを報告する。
 
13:10-15:10 
THPP06
p.453
RCNP AVF サイクロトロンのLEBTシステムのアップグレード
Design of LEBT system for RCNP AVF Cyclotron upgrade

○荘 浚謙,福田 光宏,神田 浩樹,畑中 吉治,関 亮一,森信 俊平,齋藤 高嶺,依田 哲彦,友野 大(阪大RCNP),中尾 政夫(群馬大学),鎌倉 恵太(東大CNS),田村 仁志,永山 啓一,安田 裕介,原 周平,Koay Hui Wen,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,大本 恭平,久松 万里子(阪大RCNP)
○Tsun Him Chong, Mitsuhiro Fukuda, Hiroki Kanda, Kichiji Hatanaka, Ryoichi Seki, Shunpei Morinobu, Takane Saito, Tetsuhiko Yorita, Dai Tomono (RCNP, Osaka University), Masao Nakao (Gunma University), Keita Kamakura (CNS, The University of Tokyo), Hitoshi Tamura, Keiichi Nagayama, Yusuke Yasuda, Shuhei Hara, Hui Wen Koay, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Kyohei Omoto, Mariko Hisamatsu (RCNP, Osaka University)
 
The upgrade program of the AVF Cyclotron in RCNP is under way for the improvement of the beam quality and intensity. A new Low Energy Beam Transport(LEBT) system was designed to match the injected ion beam to the acceptable phase space in the center region of the AVF cyclotron for achievement of high injection transmission. This paper summarizes the design of the LEBT system, which transports beams from 18 GHz Superconducting ECR ion source, 2.45 GHz ECR proton source, 10 GHz NEOMAFIOS and NANOGUN ECR sources, polarized ion source and Duoplasmatron to the inflector electrode with high intensity and low emittance. This paper introduces optimum configuration of the LEBT magnets and the design of the strength of each magnet based on the calculation by using MAD-X.
 
13:10-15:10 
THPP07
p.456
30MeVサイクロトロンを用いた小型中性子源の概念設計
Conceptual design of a compact neutron source using a 30 MeV cyclotron

○栗山 靖敏,田中 浩基,石 禎浩,上杉 智教(京大複合研),岩下 芳久(京大化研),日野 正裕(京大複合研)
○Yasutoshi Kuriyama, Hiroki Tanaka, Yoshihiro Ishi, Tomonori Uesugi (KURNS), Yoshihisa Iwashita (KUICR), Masahiro Hino (KURNS)
 
京都大学複合原子力科学研究所(複合研)では、研究用原子炉(KUR)から取り出された中性子を用いた共同利用が盛んに行われているが、現在の計画では、KURの運転は2026年を持って終了する予定となっている。その為、代替中性子源として、BNCT用として複合研に設置されている30MeV陽子サイクロトロンの活用が議論されている。本発表では、本サイクロトロンを用いた小型中性子源の概念設計について報告を行う。
 
13:10-15:10 
THPP09
p.460
周波数変調型可変エネルギー加速器におけるビーム出射解析
Analysis of beam extraction in modulated frequency variable energy accelerator

○中島 裕人,青木 孝道,羽江 隆光,関 孝義,宮田 健治,堀 知新,西田 賢人,野田 文章,えび名 風太郎,平本 和夫((株)日立製作所)
○Yuto Nakashima, Takamichi Aoki, Takamitsu Hae, Takayoshi Seki, Kenji Miyata, Chishin Hori, Kento Nishida, Fumiaki Noda, Futaro Ebina, Kazuo Hiramoto (Hitachi, Ltd.)
 
粒子線治療向け小型加速器として、周波数変調型可変エネルギー加速器を開発中である。本加速器は、らせん軌道を一方向に偏心させることで異なるエネルギーの設計軌道を空間的に集約し、がん治療に必要なエネルギー(陽子70~225 MeV)のビームを出射することを特長としている。ビームの出射に軌道集約領域に印加した横方向RF電場によるベータトロン振動振幅増大と、集約領域の動径方向外側に重畳したピーラ・リジェネレータ磁場によって励起される半整数共鳴を利用することで、遅い取り出しを実現する。これによって、出射ビームのパルス長を横方向RF電場の印加パターンで制御することが可能になる。また出射ビームのエネルギーは加速電圧の印加時間で制御する。本発表では、粒子軌道計算による複数エネルギーでのビーム出射解析の結果について示し、ピーラ・リジェネレータ磁場分布が出射時のチューン及びビーム挙動に与える影響について考察する。
 
13:10-15:10 
THPP10
p.465
電子線形加速器を用いたRa-225/Ac-225製造のためのウラン廃棄物由来Ra-226ターゲット原料の基礎分析
Analysis on Ra-226 from uranium waste material as an irradiation target to produce Ra-225/Ac-225 by photonuclear transmutation with an electron LINAC

○三好 邦博,尾関 政文,上坂 充(東大工)
○Kunihiro Miyoshi, Masafumi Ozeki, Mitsuru Uesaka (U-Tokyo)
 
α線は高い線エネルギー付与を持つため生物作用が強く、組織内の飛程も短いため、分子標的薬と組み合わせ放射性医薬品化することで微小転移癌などの治療に有効だと考えられている。α線放射核のうちAc-225(半減期10日)は特に注目度が高く、世界的に臨床需要が高い核種であるが、供給が限られているという課題がある。その解決策として東大原子力国際専攻では、電子線形加速器から発生するγ線をRa-226(半減期1600年)に照射し(γ,n)光核反応によってRa-225(半減期15日)を生成することで、その娘核種であるAc-225の製造を目指し、一連の工程の検討を行なっている。γ線照射ターゲットであるRa-226は、密封小線源治療用の核種として過去利用されており日本国内でも流通していたが、現在ではCo-60やIr-192などの他の治療用線源に代替され、入手が困難になっている。そこで我々はRa-226がウラン廃棄物中に存在することに着目し、人形峠に貯蔵されている鉱滓廃棄物からRa-226を抽出することで、ターゲット原料を調達するという実現可能性の検討に着手した。本発表では、数十グラム程度の鉱滓試料の分析を行い、Ra-226放射能密度、化学組成、抽出効率など、Ra-226ターゲット生成の実現可能性に関連する指標について報告を行う。また、ターゲット中でRa-226を保持する担持体材料の検討状況や、Ra-225/Ac-225の製造量シミュレーション結果についても併せて報告を行う。
 
13:10-15:10 
THPP11
p.469
パルス大強度相対論的電子ビーム照射による動物プランクトンの活性度解析の検討
Study on activation analysis of zooplankton by irradiation of Pulsed Intense Relativistic Electron Beam

○佐々木 千尋,高橋 一匡,佐々木 徹,菊池 崇志(長岡技科大),本田 匠(電中研),今田 剛(新工大,長岡技科大・極限センター)
○Chihiro Sasaki, Kazumasa Takahashi, Toru Sasaki, Takashi Kikuchi (NUT), Takumi Honda (CRIEPI), Go Imada (NIIT, NUT-EDI)
 
近年、バラスト水に含まれるプランクトンなどの外来種による生態系への影響が問題となっている。現在薬剤を用いたプランクトン処理は存在するが、薬剤による二次汚染などが課題となる。このため、薬剤による二次汚染を処理する工程が増すことやコストが問題となっている。また、濾過や熱処理などの方法あるが、濾過では小さいプランクトンの除去が難しいこと、熱処理では一部の熱に強い卵などがいることが課題である。そのため、本研究ではパルス大強度相対論的電子ビーム(PIREB: Pulsed Intense Relativistic Electron Beam)を用いた方法を検討する。先行研究にて、PIREBを用いることで動物プランクトン(アルテミア)の処理が可能なことが確認されている。しかし、現在用いられている生死のみを確認する方法ではアルテミアがどの程度不活化(死亡または生存活動が望めない状態)できるかの評価が不十分である。そのため、本研究ではPIREBを照射したアルテミアの幼体と未照射のアルテミアの幼体の比較を行い、不活化の程度を調べることを目的とした。活性度の評価方法として、アルテミアが動いている様子を撮影し、その動画を解析することを検討した。活性度の評価は、スマートフォンのカメラで撮影した動画を格子状に区切り1コマごとにアルテミアの位置を比較することで移動量を算出し、照射したアルテミアと照射していないアルテミアの解析結果を比較することで算出する方法を検討した。
 
13:10-15:10 
THPP12

cERL赤外自由電子レーザーを用いたサンプル照射試験
Irradiation test by using infrared light from IR-FEL at KEK
○阪井 寛志,加藤 龍好,本田 洋介(高エネ研),欠端 雅之,佐藤 正健,屋代 英彦(産総研)
○Hiroshi Sakai, Ryukou Kato, Yosuke Honda (KEK), Masayuki Kakehata, Tadatake Sato, Hidehiko Yashiro (AIST)
 
cERLでは、NEDOプロジェクトのもと、赤外光を用いたレーザ加工実験のために赤外自由電子レーザー(IR=FEL)の開発を行っている。cERLの南直線部にアンジュレータ2台を置き、そこから、穴あきミラーを通じ10~20μmの波長のFEL発生を目指している。出てきた光の診断を行った後[1]、その後、サンプル照射試験を行った。本発表はFELを用いたサンプル照射試験を紹介する。具体的には得られたFELの波長依存性を示すとともにサンプルの波長依存性との比較を行う。 [1]本田洋介、他:「cERL赤外自由電子レーザーにおける赤外出力光の診断」
 
13:10-15:10 
THPP13
p.472
レーザー変調を用いた超短パルス電子ビーム発生のシミュレーション
Simulation study on laser modulation for ultrashort electron bunches

○菅 晃一,上野 浩一,楊 金峰,神戸 正雄,吉田 陽一(阪大産研)
○Koichi Kan, Koichi Ueno, Jinfeng Yang, Masao Gohdo, Yoichi Yoshida (ISIR, Osaka University)
 
阪大産研では、レーザーフォトカソードRF電子銃ライナックを導入し、高時間分解能パルスラジオリシスの開発を行っている。パルスラジオリシスの時間分解能を向上するためには超短パルス電子ビームの発生が不可欠である。 本発表では、レーザー変調を用いた超短パルス電子ビーム発生の可能性について報告する。レーザー変調とは、アンジュレータの周期磁場に、共鳴波長に相当するレーザーと電子ビームを同軸で入射し、電子ビームをエネルギー変調する手法である。発表では、レーザー変調を行った場合の電子ビーム輸送のシミュレーションについて、計算結果(バンチング因子、パルス時間分布等)を報告する。
 
13:10-15:10 
THPP14
p.475
J-PARC RCSビームロスモニタの高圧依存性の測定
High voltage dependence measurement of beam loss monitor in J-PARC RCS

○畠山 衆一郎,吉本 政弘,山本 風海(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター)
○Shuichiro Hatakeyama, Masahiro Yoshimoto, Kazami Yamamoto (J-PARC/JAEA)
 
J-PARC の加速器は、線形加速器(LINAC)、3GeVシンクロトロン(RCS)、主リングシンクロトロン(MR)で構成されている。RCSは、物質生命科学実験施設(MLF)にビームを供給するとともに、MRにもビームを転送している重要な施設である。RCSでは87台の比例計数管型のロスモニタ(PBLM)が加速リング及びビーム転送ライン上に設置されており、加速サイクル中のビームロスの積分値が閾値を超えると機器保護システム(MPS)が発報しビームラインの放射化を防いでいる。本発表では、PBLMに印加する高電圧に対する出力応答をビームを用いて測定した結果を述べる。また現在のPBLMの高電圧システムの問題点を解決するための新しいシステムの検討を述べる。
 
13:10-15:10 
THPP15
p.478
J-PARC RCSにおけるビーム電流モニタのビーム強度依存性
Intensity dependence of the beam current monitors at J-PARC RCS

○林 直樹(J-PARC/JAEA)
○Naoki Hayashi (J-PARC/JAEA)
 
ビーム強度、ビーム電流の測定は、加速器の中で、最も重要なビーム診断系の一つである。J-PARC Rapid-Cycling Synchrotron (RCS)では、二つのビーム強度モニタの他、帯域の異なる複数のCT(Current Transformer)を備えている。RCSは、定格で、1 MWのビームパワーを出す大強度加速器であり、近年、ユーザーへの供給するビームパワーも上昇し、パルス当たり定格での運転も、短時間ながら行われてきた。また、パルス当たりで、1 MW相当以上の試験運転も試みられている。初期設計の性能そしてそれを超える運転を通じ、改めて、ビーム電流測定の強度依存性について現状を整理して報告する。
 
13:10-15:10 
THPP16
p.482
チェレンコフ放射を用いたビーム位置モニターの開発
Development of beam monitor utilizing Cherenkov radiation

○南部 健一,柏木 茂,鹿又 健,柴田 晃太朗,髙橋 健,長澤 育郎,日出 富士雄,三浦 禎雄,武藤 俊哉,齊藤 寛峻,寺田 健人,石附 勇人,山田 悠樹,山本 大喜,濱 広幸(東北大学電子光理学研究センター)
○Kenichi Nanbu, Shigeru Kashiwagi, Ken Kanomata, Kotaro Shibata, Ken Takahashi, Ikuro Nagasawa, Fujio Hinode, Sadao Miura, Toshiya Muto, Hirotoshi Saito, Kento Terada, Yuto Ishizuki, Hiroki Yamada, Daiki Yamamoto, Hiroyuki Hama (ELPH)
 
近年、テーブルトップサイズの超小型加速器実現に向け、従来の高周波型加速器に比べて加速勾配が大きいレーザープラズマ加速器の研究が世界中で行われている。現時点において、電子ビームのポインティングスタビリティーには改善の余地があり、シングルショットかつ非破壊でビーム位置測定ができれば、レーザープラズマ加速器の実用化に貢献することができる。東北大学電子光理学研究センターでは、電子ビームが誘電体近傍を通過する際に放射するチェレンコフ光を用いた非破壊ビーム位置モニターの開発を行っている。測定精度や誘電体の形状などについて検討を行ったので報告する。
 
13:10-15:10 
THPP17
p.485
J-PARCハドロン実験施設における新設一次ビームラインのビームコミッ ショニング
Beam commissioning of new primary proton beam line at J-PARC Hadron Experimental Facility

○小松 雄哉(高エネ研)
○Yusuke Komatsu (KEK)
 
J-PARC ハドロン実験施設では2020年1月に、既存の一次陽子ビームラインから~0. 1%を分岐し、実験エリアまで輸送する新たなビームライン(以下、Bラインと呼ぶ。)が完成した。ハドロン実験施設では従来、金標的に一次ビームを入射し、生成されたK中間子とπ中間子を二次ビームとして実験に利用してきた。Bラインでは、 10^10陽子/スピル(5.2秒サイクル、1スピル2秒)の30 GeV陽子ビームを直接実験 標的(カーボン、銅など)に照射してベクトル中間子を生成し、その原子核中での 質量変化を測定する実験が行われる。陽子ビームを固定標的に照射する手法では、 世界最高の統計量を得る事が期待される。2020年5月から6月にかけて本ビームラインに初めてビームを通し、コミッショニングを行う計画である。 コミッショニングではビームライン自体の健全性の確認と、実験利用のためのビ ームの最適化を行う。具体的には 1)ビームロス量が想定内に抑えられているこ と、2)実験側が要求するようなビーム強度、プロファイルで安定にビームを供給 できること、を各種モニターにより確かめる。本ポスターでこれらの結果を報告する。
 
13:10-15:10 
THPP18
p.490
あいちSR電子蓄積リングの逐次的な閉軌道歪みの補正に関する研究
Sequential correction of closed orbital distortion of Aichi SR electron storage ring

○中尾 海斗(名大工),保坂 将人,高嶋 圭史,石田 孝司,真野 篤志,郭 磊(名大SRセンター),加藤 政博(広島大学),大熊 春夫(阪大RCNP)
○Kaito Nakao (Nagoya Univ.), Masahito Hosaka, Yoshifumi Takashima, Takashi Ishida, Atsushi Mano, Lei Guo (SR Center Nagoya Univ.), Masahiro Katoh (Hiroshima Univ.), Haruo Ohkuma (RCNP Osaka Univ.)
 
 あいちシンクロトロン光センター(あいちSR)では、加速器の運転は平日の日中に行い、夜間や休日は運転を停止している。電子蓄積リングでの閉軌道歪みの補正は、毎朝の加速器の起動後、300mAトップアップ運転に移行した直後に行っており、通常は1日の運転中でこの1回のみである。蓄積リング内での電子ビームの閉軌道は、加速器室内の温度変化などによって、1日を通して徐々に変化している。我々は、逐次閉軌道歪みの補正を行うことによって、1日の運転を通して閉軌道の変化を抑える方法について研究を行っている。  あいちSRでは、閉軌道歪みの補正は固有値分解法を用いて行っている。あいちSRにおける、逐次的な閉軌道歪みの補正の試行的な実験において、鉛直方向の軌道について3分毎に固有値分解法による閉軌道歪みの補正を行ったところ、時間が経つにつれて、補正を行っても基準軌道に対するずれが残る結果となった。  本報告では、上記実験結果に対する考察を進めるとともに、逐次的な閉軌道歪みの補正方法として固有値分解法に加えて、機械学習による補正方法についても検討を行う予定である。
 
13:10-15:10 
THPP19
p.494
レーザーコンプトン散乱のためのリング型Thin-disk再生増幅器の開発
Development of a ring type thin-disk regenerative amplifier for laser-Compton scattering

○小柴 裕也,山下 洸輝,鷲尾 方一(早大理工研),坂上 和之(東大光量子研),東口 武史(宇大),浦川 順治(高エ研)
○Yuya Koshiba, Koki Yamashita, Masakazu Washio (WISE, Waseda Univ.), Kazuyuki Sakaue (UT-PSC), Takeshi Higashiguchi (Utsunomiya Univ.), Junji Urakawa (KEK)
 
我々は電子ビームとレーザーを衝突させるレーザーコンプトン散乱において、衝突角に開きがある状況においても正面衝突に近いルミノシティが期待できるクラブ衝突レーザーコンプトン散乱の原理実証を行なっている。そのためのレーザーにはミリジュール級のパルスエネルギーと超短パルス性が求められる。本研究はレーザーシステムとしてThin-diskと呼ばれるレーザー媒質形状を活用した再生増幅器の開発について報告を行う。特にリング型の光共振器を構築し、10ミリジュール、1ピコ秒、M2=1.5の開発を行ったので報告する。
 
13:10-15:10 
THPP20
p.497
レーザーコンプトン散乱光源に向けた自発共鳴型光共振器の現状
Current status of a self-resonating optical cavity for laser-Compton scattering sources

○大塚 誠也,小柴 裕也,鷲尾 方一(早大理工総研),アリシェフ アレクサンダー,浦川 順治,大森 恒彦,照沼 信浩,福田 将史,本田 洋介(高エ研),上杉 祐貴,菅原 直人(東北大多元研),坂上 和之(東大光量子研),高橋 徹(広大先進理工),保坂 勇志(量研)
○Seiya Otsuka, Yuya Koshiba, Masakazu Washio (WISE, Waseda Univ.), Alexander Aryshev, Junji Urakawa, Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Masafumi Fukuda, Yosuke Honda (KEK), Yuuki Uesugi, Naoto Sugawara (IMRAM, Tohoku Univ.), Kazuyuki Sakaue (UT-PSC), Tohru Takahashi (AdSE, Hiroshima Univ.), Yuji Hosaka (QST)
 
電子ビームとレーザーの衝突によって高エネルギーの光子を生成するレーザーコンプトン散乱は、準単色性、エネルギー可変性、偏光可変性、微小光源性等を備えた高品質X線/γ線を小型の装置で生成でき、イメージング等医療・産業分野へ応用が期待されている。しかし従来の放射光施設等の光源と比較して輝度が劣り、実用化に向けてはさらなる高輝度化が求められる。そこで衝突レーザーパルスを光共振器に蓄積し、蓄積光パワーの高強度化およびマルチバンチ電子ビームとの高繰り返し衝突により、単位時間当たりの散乱光子数を増加させ散乱X線の高輝度化を図る。一般に高フィネスの光共振器を用いると蓄積光の強度増大率は大きくなる。しかし従来の光共振器でフィネスを非常に大きくして高増大率の光を蓄積する場合、技術的に達成困難な非常に高い精度での共振器長制御が要求され、この技術的限界によって蓄積増大率がリミットされていた。本課題を克服するため、我々は自発共鳴型光共振器の開発を進めている。この手法では共振器長の変動に追従して共鳴条件を満たす光が自発的に共鳴する。共振器長を制御せずとも共鳴が維持されるため、従来の技術的限界を超えた極めて高増大率の光蓄積が可能となる。既に連続光発振で原理は実証済みで、現在はモードロックパルス発振の試験を進めている。本講演では自発共鳴型光共振器開発の現状と今後の展望について報告する。
 
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THPP21
p.501
Raspberry Pi を用いたEPICS制御システムのリアルタイム性能試験
Real time capability test on the Raspberry Pi based EPICS controller

○王 迪(総研大 加速器科学),古川 和朗,佐々木 信哉,佐藤 政則,帯名 崇,榎本 嘉範(高エネルギー加速器研究機構)
○Di Wang (SOKENDAI Accelerator Science), Kazuro Furukawa, Shinya Sasaki, Masanori Satoh, Takashi Obina, Yoshinori Enomoto (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
Raspberry Pi is an optional and popular solution in building the EPICS Input/output Controller (IOC) owing to its high flexibility, expansion capability and affordability. However, the requirement of the device real time capability is critical in the SuperKEKB accelerator since the special demand of the timing system. To assess the possibility of Raspberry Pi based IOC within a 50 Hz beam repetition rate, we perform a latency test on the Raspberry Pi and compare the standard kernel and real time kernel.
 
13:10-15:10 
THPP22
p.504
Archiver Applianceのアーカイブデータを可視化するためのGrafanaプラグインの開発
Development of Grafana plugin to visualize archive data on Archiver Appliance

○佐々木 信哉,帯名 崇(KEK)
○Shinya Sasaki, Takashi Obina (KEK)
 
EPICSのPV値を収集・記録するアーカイブシステムであるArchiver Applianceは2015年に公開された。それ以来、国内外の研究施設における利用例が報告されている。我々はArchiver Applianceのアーカイブデータを簡便に閲覧することを目的として、OSSであるGrafanaにおいてArchiver Applianceのデータを扱うためのプラグインを開発した。表示基盤としてGrafanaを利用することで、Web上からダッシュボードを作成・閲覧するためのシステムや、可視化のために必要なパネルなどをそのまま利用する事が可能である。そのため、新規に開発が必要な要素はArchiver Appliance用のデータソースプラグインのみであった。また、Grafanaとプラグインのインストール及び簡単なセットアップのみで利用し始めることが出来るため、比較的容易にシステムを導入することが可能である。開発したプラグインの特徴として、正規表現を用いた複数PVのデータ取得・表示が可能であることや、Variableを利用して表示内容の動的な変更が可能であること、取得データに対する後処理が可能な点などが挙げられる。本稿では開発したプラグインの詳細とその利用例に関して報告する。
 
13:10-15:10 
THPP23
p.509
加速器データログのためのNoSQLデータベース(Apache Cassandra)安定運用
A stable operation of NoSQL database (Apache Cassandra) applied to the accerelator data logging

○岡田 謙介,藤原 綾潜(高輝度光科学研究センター),丸山 俊之(理化学研究所)
○Kensuke Okada, Ryousen Fujihara (JASRI), Toshiyuki Maruyama (RIKEN)
 
SPring-8/SACLAでは、各種加速器構成機器からのログデータを一元管理し、運転に利用している。ログデータは10秒周期程度から、SACLAの運転周波数の60Hzまでの時系列ポイントデータが主である。2014年からオンラインデータベースとしてカラム型NoSQL(Apache Cassandra)の利用を始めた。Apache Cassandraは対等なノードの集合で構成され、負荷分散による読み書き性能の向上と共に、データの複製を持ち合う設定によりハードウェア障害時に運転に影響が出ることが少ないという利点がある。現在、第一世代、第二世代の2つの方式の並行運用を計約70台のノード数で行っており、これまで大きなトラブルもなく安定運用を行えている。オンラインデータの書き込みは世代によってゲートウェイサーバを介する方式と機器から直接データベースに接続する方式の2種類で、読み出しについては、GUI作成のための関数ライブラリと定型的なデータ閲覧のためのweb経由のアクセスを提供している。Apache Cassandraの導入によって記録可能データ量を大幅に増やせた一方で、特に読み出しに関しての段取りがかなり必要なこと、過去データを保ちながらのノード数の追加削減などのシステム構成変更は容易でないことが分かってきた。この発表では利用体系やトラブルから見えてきたデータベース設計の要点を紹介する。
 
13:10-15:10 
THPP24
p.514
Webサーバーによるリアルタイム画像配信システムの運用
Operation of real time image distribution system by web server

○中村 卓也(三菱電機システムサービス株式会社),中村 達郎,帯名 崇(高エネルギー加速器研究機構),吉井 兼治(三菱電機システムサービス株式会社)
○Takuya Nakamura (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Tatsuro Nakamura, Takashi Obina (KEK), Kenji Yoshii (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.)
 
KEKB制御グループでは、2007年からWebサーバーを用いた画像をリアルタイムに配信するシステムを運用している。 この画像配信システムは、加速器運転パネルのスクリーンショット画像やビデオ映像を取り込んだ画像を、Webサーバーから各クライアントの Web ブラウザへ定期的に送信することで実現している。 配信する画像ファイルは、加速器運転パネルのスクリーンショット画像を保存するスクリプトや、ビデオ映像を画像ファイルとして取り込む機器を使用して用意している。 なお、初期の画像配信システムでは、同時に表示する画像の数に制限があり、複数の画像を同時に閲覧することはできなかった。 そのような問題に対応しつつ機能を追加した、node.jsを用いた新たな画像配信システムを整備した。 node.jsによる画像配信システムでは、任意の数の画像を一覧で表示する機能や、画像の表示サイズの変更機能などを実現し、ユーザー側で表示方法を自由に選択することができる。 本件では、Webサーバーによるリアルタイム画像配信システムの運用について報告する。
 
13:10-15:10 
THPP25
p.518
SuperKEKBにおけるArchiver Applianceの現状
Present status of Archiver Appliance at SuperKEKB

○廣瀬 雅哉(関東情報サービス株式会社),梶 裕志(高エネルギー加速器研究機構)
○Masaya Hirose (Kanto Information Service Co., Ltd.), Hiroshi Kaji (KEK)
 
KEKB加速器運転時には、加速器に関する各種データのアーカイブシステムとしてKEKBLogを運用していた。SuperKEKB加速器ではKEKBLogに加え、Archiver Applianceを新たに導入し、2019年2月のphase-3運転開始に併せて試験運用を開始した。アーカイブ対象としているレコードは約13万件にも及ぶ。Archiver ApplianceはKEK内でも利用されており、有用性や欠点などは既に挙げられている。そこで我々は、大規模データを安定かつ高速にユーザへ提供できるよう、phase-3では様々な試験・改良を行ってきた。本稿では、Archiver Applianceの導入・運用状況について報告する。
 
13:10-15:10 
THPP26
p.521
J-PARCシンクロトロン、RF電源制御機器の更新とアップグレード
Replacement and upgrade of RF power supply control devices in J-PARC synchrotrons

○古澤 将司,大森 千広,杉山 泰之,原 圭吾,長谷川 豪志,吉井 正人(KEK/J-PARC),島田 太平,田村 文彦,野村 昌弘,山本 昌亘(JAEA/J-PARC)
○Masashi Furusawa, Chihiro Ohmori, Yasuyuki Sugiyama, Keigo Hara, Katsushi Hasegawa, Masahito Yoshii (KEK/J-PARC), Taihei Shimada, Fumihiko Tamura, Masahiro Nomura, Masanobu Yamamoto (JAEA/J-PARC)
 
現在、J-PARCシンクロトロンRFでは、経年劣化が懸念されるRF電源制御盤の内部機器を更新している。その内、製品販売と修理対応が終了した機器は、互換可能な最新機種へアップグレードする予定である。各機器の更新手順は、加速器運転日程との調整、および更新によるRFシステム全体への効果を考慮しながら計画した。初めに、電源制御PLCのCPUモジュールは、使用期間が製品寿命を超過し、近々の故障が懸念される。このモジュールを新機種に更新した場合、プログラム処理時間が約50%短縮され、インターロック信号を高速化できる。このためモジュール全機種を一斉に換装する計画を立て、2019年7月にMRの全RF電源のモジュールを新機種に換装した。2020年夏にRCS の全電源のモジュールを換装する予定である。次に、電源操作用の据付タッチパネルについては、近年液晶画面の故障が頻発している。新旧機種の比較では各種性能は向上したものの、機器更新によって電源自体の性能向上に直接繋がるとは言い難い。このため更新作業は、故障した旧機種から随時新機種に換装する計画を立てた。本発表では、上記を含む今年度までのRF電源制御機器の更新作業の詳細、実施状況について報告する。
 
13:10-15:10 
THPP27
p.524
XBee Dispatcherプログラムを用いた放射線ドーズモニタの機能向上
Upgraded radiation dose monitor system with XBEE dispatcher program

○楊 敏(総研大 加速器科学),山本 昇,上窪田 紀彦(高エネ研)
○Min Yang (SOKENDAI Accelerator Science), Noboru Yamamoto, Norihiko Kamikubota (KEK)
 
The prototype of real-time radiation dose monitor system in J-PARC was developed to realize real-time feedback of exposed radiation dose upon individual worker in radiation environment. It consists of a supervisor part and a sensor part, which communicate with each other wirelessly using XBee modules. The prototype system can only accept one sensor part. To realize the wireless monitoring of multiple sensor parts, an upgraded system with an XBee dispatcher program has been developed. With the XBee dispatcher, we can realize the communication between many sensor parts and a supervisor part. The details of the upgraded system with XBee dispatcher, and test results of the system are presented. #XBee = 短距離無線通信チップ
 
13:10-15:10 
THPP28
p.528
フッ酸を用いないニオブ電解研磨法の探索(2)
Search of niobium electropolishing method without hydrofluoric acid (2)

○仁井 啓介,井田 義明(マルイ鍍金工業(株)),文珠四郎 秀昭(KEK),八代 仁,白取 凌(岩手大学)
○Keisuke Nii, Yoshiaki Ida (Marui Galvanizing Co., Ltd.), Hideaki Monjushiro (KEK), Hitoshi Yashiro, Ryo Shiratori (Iwate university)
 
マルイ鍍金、KEK、岩手大学では従来の濃硫酸とフッ酸に代わる、安全性の高いニオブ電解研磨(EP)液、EP手法の研究開発を行っている。これまでにメタンスルホン酸とフッ化アンモニウムを用いた直流EP、パルス反転電圧を用いたEPの結果について報告した。今回、メタンスルホン酸以外の酸を用いた直流EP、3電極法を用いたパルス反転電圧EP実験を行った。直流EPでは、グリコール酸を用いた直流EPにてニオブの研磨が確認された。パルス反転電圧EPでは、3電極法によりニオブの電位を確定させた上でパルス形状と研磨量、研磨状態の評価を行った。
 
13:10-15:10 
THPP29
p.532
Study on electrolytically deposited copper film on stainless steel surface for RF input couplers
○Vijay Chouhan, Yoshiaki Ida, Tsuyoshi Fujino, Nobuo Kikuchi (Marui Galvanizing Co., Ltd.), Shigeki Kato (KEK)
 
A copper (Cu) film is electrolytically deposited on a stainless steel-made RF coupler used in a particle accelerator machine. The coupler after electroplated with a Cu film goes to a heat-treatment process for the brazing of components of the coupler. The brazing is performed at a temperature of ~800 C in a high-temperature vacuum furnace. A residual resistivity ratio (RRR) of the Cu film decreases owing to the high-temperature heat-treatment process. We have been aiming to achieve a desired RRR value after the heat-treatment process. In this study, we have conducted an analysis of a Cu film, which was electrolytically deposited on a stainless-steel surface with an intermediate Cu strike film, to find atomic diffusion from stainless steel to the Cu film due to heat-treatment. The impact of heat-treatment on the RRR value of the Cu film was evaluated.
 
13:10-15:10 
THPP30

低コスト化を目指したニオブ材を用いた9セル空洞の開発
Investigation of 9-cell cavity made of low cost Nb material
○道前 武,渡邉 勇一,梅森 健成(KEK)
○Takeshi Dohmae, Yuichi Watanabe, Kensei Umemori (KEK)
 
超伝導空洞製造の製造コストの削減は、超伝導空洞の一般応用や大量生産に向けた大きな課題である。KEKの空洞製造技術開発施設(CFF)ではこれまでニオブを用いた超伝導空洞の製造を行っており、現在は空洞製造コスト削減に材料の観点から取り組んでいる。材料コスト削減を目的としてlarge grain(LG)材と呼ばれる、ニオブを溶解して出来たインゴットを直接スライスしたニオブ板を空洞のセルに用いて空洞製造を行っている。LG材は通常ニオブの板材を製造する際の鍛造・圧延の工程をスキップしているため、材料コストを削減することが可能である。本研究ではこのLG材を用いて9セル空洞2台を製造しその性能評価を行った。本発表では、製造工程や性能評価結果について報告する。
 
13:10-15:10 
THPP31
p.536
KEK-STFにおけるTESLA型9セル超伝導空洞の性能評価
Vertical test results of TESLA 9-cell superconducting cavities at KEK-STF

○片山 領,梅森 健成,加古 永治,道園 真一郎,許斐 太郎,井藤 隼人,荒木 隼人(高エネルギー加速器研究機構)
○Ryo Katayama, Kensei Umemori, Eiji Kako, Shinichiro Michizono, Taro Konomi, Hayato Ito, Hayato Araki (KEK)
 
2019年初旬からKEK-STFにて二台の1.3 GHz TESLA型空洞に対する縦測定試験による性能評価を行なっている。両空洞は二台ともRRR > 300 の fine grain のニオブ材を用いて TESLA 型空洞として製作されている。片方には750度3時間のアニールが、もう片方には900度3時間のアニールが施されている。空洞の清浄化と平滑化の努力を積み重ねた結果、最終的に両空洞とも標準的な電解研磨レシピを施した後の空洞性能として 2x10^10 の高い Q 値と 36 MV/m 以上の高い加速電界を達成することができた。その後、両空洞に海外研究機関で空洞性能を向上させる効果があると報告されている前処理を施した状態で縦測定試験を実施した。75度4時間の低温ベーキング、低温下での電解研磨処理、温度差をつけた状態での空洞の急速冷却がそれである。本研究では上記の縦測定試験の結果について報告する。
 
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THPP32
p.541
NbN積層薄膜構造に対する磁束侵入磁場測定
Measurement of vortex penetration field into NbN laminated thin-film structure

○井藤 隼人,早野 仁司,久保 毅幸,佐伯 学行,片山 領(高エネルギー加速器研究機構),岩下 芳久,頓宮 拓(京都大学化学研究所),伊藤 亮平,永田 智啓(アルバック)
○Hayato Ito, Hitoshi Hayano, Takayuki Kubo, Takayuki Saeki, Ryo Katayama (KEK), Yoshihisa Iwashita, Hiromu Tongu (Kyoto ICR), Ryohei Ito, Tomohiro Nagata (ULVAC, Inc.)
 
The maximum accelerating gradient (Eacc) of the SRF cavity can be increased by raising the vortex penetration field (Hv). A laminated thin-film structure, in which a superconductor layer (S’) such as NbN and an insulating layer (I) are coated on bulk Nb (S) (S’-I-S structure), has been proposed to increase the Eacc. By using the S’-I-S structure, the field is screened by the superconductor layer, reducing the field applied to the bulk Nb. Hence, the bulk Nb will withstand against a higher applied magnetic field. It means the cavity can achieve higher Eacc than conventional SRF cavities. S’-S structure in which a superconductor layer (S’) is coated on bulk Nb directly is also expected to increase the Eacc. In order to study the magnetic property of the laminated thin-film structure, we developed the Hv measurement system, which can apply the AC magnetic field locally without the influence of the sample edge effects. Measurements were performed to NbN-SiO2-Nb (S’-I-S structure) samples and NbN-Nb (S’-S structure) samples of various superconductor layer thicknesses. In this report, the measurement results of the NbN-SiO2-Nb samples and NbN-Nb samples will be discussed.
 
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THPP34
p.545
極低温用温度計の低温試験
Low temperature tests of thermometer for very low temperature use

○清水 洋孝,小島 裕二,仲井 浩孝,中西 功太,原 和文,本間 輝也(高エネルギー加速器研究機構)
○Hirotaka Shimizu, Yuuji Kojima, Hirotaka Nakai, Kota Nakanishi, Kazufumi Hara, Teruya Honma (KEK)
 
現在開発を進めている、極低温用の温度計の開発について、進捗を報告する。この温度計は、極低温域での感度の維持のための工夫として、デバイの模型によって示唆される様な、金属結晶の比熱が極端に小さくなる事実を利用しようと考えている。これまでに検討を行ってきた、ブラッググレーティング付き光ファイバの低温特性と、その波長変化を低温領域で補助するバイメタル合金の組み合わせを、実際に低温環境で試験する事で、温度計の実用化に向けた検討を進めている。この点に関して、現在行っている試験の結果を報告する。
 
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THPP35
p.549
1.7kV-SiC-MOSFETを搭載したILC用MARXモジュレータの開発
Developmet of MARX modulator for ILC using 1.7kV-SiC-MOSFET

○澤村 陽,徳地 明(株式会社パスルパワー技術研究所),明本 光生,中島 啓光,川村 真人,夏井 拓也(高エネルギー加速器研究機構)
○Yo Sawamura, Akira Tokuchi (PPJ), Mitsuo Akemoto, Hiromitsu Nakajima, Masato Kawamura, Takuya Natsui (KEK)
 
ILC(国際リニアコライダー)は、計画は、全長約30kmの直線加速器で、現在達成しうる最高エネルギーで電子と陽電子の衝突実験を行う計画。 ILC計画の主線形加速器にはマルチビームクライストロンシステムが搭載される。超伝導加速空洞に加速電場を生成するためのRF電力は、マルチビームクライストロンとそれを駆動するクライストロン電源で構成される。 クライストロン電源はマルクス変調器と呼ばれ、120kV 140A 1.9msのパルス電圧を発生し、マルチビームクライストロンのカソードに供給する。 小型、低コスト、高信頼性が要求される。 試作電源のMARXモジュレータはSiC MOS-FETとSiCダイオードは2.4kVの耐圧が必要であり、1.2kVの耐圧の2つの素子を直列に接続して構成している。 本研究ではさらに信頼性を向上させるため、40%以上デバイス耐圧が高い1.7kV-SiC-MOSFETを使用した開発を行った。連続運転でのデバイス温度評価も実施し、ILC用MARXモジュレータの評価試験について報告する。
 
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THPP36
p.553
J-PARCクライストロン放電現象監視システムの概要
Overview of the J-PARC klystron discharge monitoring system

○溝端 仁志,方 志高,福井 佑治,二ツ川 健太(高エネ研),篠崎 信一,平根 達也,不破 康裕(原子力機構),岩間 悠平,佐藤 福克(日本アドバンストテクノロジー株式会社)
○Satoshi Mizobata, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Kenta Futatsukawa (KEK), Shinichi Shinozaki, Tatsuya Hirane, Yasuhiro Fuwa (JAEA), Yuhei Iwama, Yoshikatsu Sato (NAT)
 
J-PARCリニアックではクライストロン45台を用いて加速器の運転が行われている。クライストロンの交換には数時間かかり、突発的なクライストロンの交換は加速器の運転時間に大きく影響を及ぼす。クライストロンの交換原因は、高電圧印加時のクライストロンでの放電に因るものが多くを占める。しかし、加速器の運転に影響を及ぼしてはいないが放電するクライストロンもいくつか確認されている。この加速器の運転に影響を及ぼさない放電現象を監視・調査することでクライストロンの寿命を予測し、寿命が近づいたクライストロンを事前に交換することで加速器の運転停止時間の低減に寄与できるのでは考えている。本発表では、クライストロンの放電現象監視システムの概要とそこから得られた放電波形について報告する。
 
13:10-15:10 
THPP37
p.555
RF-MPSoCの加速器制御への適用検討
Application study of RF-MPSoC to accelerator control

○漁師 雅次,岩城 孝志,林 和孝,張替 豊旗(三菱電機特機システム)
○Masatsugu Ryoshi, Takashi Iwaki, Kazutaka Hayashi, Toyoki Harigae (Mitsubishi Electric TOKKI Systems)
 
LLRFやBPMでは、ピックアップ電極から出力される高周波信号を周波数変換や検波した信号をA/D(Analog/Digital)変換してデジタル制御・モニタに利用している。これらには非線形特性の回路を使うため特性のばらつきの補正が難しい。そこで、最新のFPGA(Field Programmable Gate Array)であるRF-MPSoC (Radio Frequency - Multi Processor System on Chip)を使い、RF信号を直接A/D変換したり、D/A(Digital/Analog)変換から直接RF信号にしたりして、非線形回路を極力なくす構成の評価をした。また、FPGAにより高速なデジタル信号処理ができ、内蔵されているAPU(Application Processor Unit)・RPU(Real-time Processor Unit)による柔軟なソフトウェア処理が1chipでできるため、DSPモジュールやCPUモジュールが不要にでき、非常に小型にできる可能性があるかを検討した。
 
13:10-15:10 
THPP38
p.560
J-PARCリニアックの低電力高周波制御システムの現状
Present Status of J-PARC Linac LLRF System

○二ツ川 健太,Cicek Ersin,方 志高,福井 佑治,溝端 仁志(高エネルギー加速器研究機構),平根 達也,篠崎 信一(日本原子力研究開発機構),佐藤 福克(日本アドバンストテクノロジー株式会社)
○Kenta Futatsukawa, Ersin Cicek, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Satoshi Mizobata (KEK), Tatsuya Hirane, Shinichi Shinozaki (JAEA), Yoshikatsu Sato (NAT)
 
J-PARCリニアックの低電力高周波制御(LLRF)システムでは、空洞電界の安定度の性能要求を満たすために、FPGAを用いたデジタルフィードバック(DFB)とデジタルフィードフォワード(DFF)を採用している。このシステムは開発期間から20年以上経過して、ハードウエアのモジュールの生産中止やソフトウエアの開発環境の維持が困難になり、次世代への速やかな移行が必要になっている。現状はAD、DAおよびFPGAを含んだデジタイザ部のみを開発して、既設のcPCIのアナログモジュールと組み合わせて、SDTL02とSDTL13ステーションで試験導入している。令和2年の夏期シャットダウン中に17式分の更新を予定している。また、アナログモジュールの開発も進めており、令和3年度に計画しているMEBT1のLLRFシステムの改修は、アナログボードも含めた新システムの開発を進めている。また、令和1年度の夏期シャットダウン中に経年劣化対策で324MHzシステムのPLCの更新や、システム維持の観点から全LLRFシステムに渡ってPLCラダーの共通化を実施するなどの大きな変更を行っている。 本講演では、新規に導入するデジタイザを中心に、現状と今後の計画を発表する予定である。
 
13:10-15:10 
THPP39
p.565
SuperKEKBのための球形空洞型パルス圧縮器の熱解析
Thermal analysis of a spherical-cavity-type pulse compressor for the SuperKEKB project

野村 伊久磨,○佐治 晃弘,井原 功介(トヤマ),肥後 壽泰,惠郷 博文,東 保男(KEK),坂東 佑星(総研大),林 显彩,施 嘉儒(清華大学)
Ikuma Nomura, ○Akihiro Saji, Kosuke Ihara (TOYAMA), Toshiyasu Higo, Hiroyasu Ego, Yasuo Higashi (KEK), Yusei Bando (Graduate University for Advanced Studies), Xiancai Lin, Jiaru Shi (Tsinghua University)
 
SuperKEKBでは、高いルミノシティを得るために、入射器には長期的に安定な運転が望まれている。KEKでは昨年度よりこの入射器で使用する新規の高周波パルス圧縮器の開発を進めている。電気的特性はこれまで使用してきたパルス圧縮器と同等のまま、2個のシリンダー状空洞を1個の球形空洞におきかえる設計となっており、株式会社トヤマは熱解析と機構設計を行った。本稿では、開発中であるパルス圧縮器の熱解析結果について報告する。
 
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THPP40
p.569
SuperKEKB入射器の基準高周波信号位相制御系
Reference RF phase control system for SuperKEKB injector linac

○三浦 孝子,松本 利広,小林 鉄也,荒川 大,片桐 広明,チュウ フェン,矢野 喜治,梶 裕志,佐藤 政則,宮原 房史,杉村 仁志(高エネ研)
○Takako Miura, Toshihiro Matsumoto, Tetsuya Kobayashi, Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Feng Qiu, Yoshiharu Yano, Hiroshi Kaji, Masanori Satoh, Fusashi Miyahara, Hitoshi Sugimura (KEK)
 
KEK電子・陽電子入射器では、SuperKEKBのために、入射器の基準信号(MO)に対し新たに3つの位相制御システムを導入している。一つ目は、508.9MHzの主リングマスター信号(RMO)に対し55/49の関係にある571.2MHzの入射器のマスター信号(LMO)の位相をRMOの位相に追従させるためのMOフィードバックシステム(MOFB)の導入である。2つ目は、電子/陽電子ビームをHER/LERリングに入射するために各入射位相に応じて基準信号の位相を切り替えるためのMO移相器である。トップアップ入射のために速い切り換えが必要となるが、光陰極RF電子銃のレーザーシステムへの同期信号の速い変化は許容されないため、レーザーシステムへ送る基準信号はモード切替によって変更されないように、新たなMO移相器を開発して導入した。3つ目は、陽電子ダンピングリング(DR)下流の入射器のRF位相をバケットセレクションシステムからパルス毎に変更してリングの入射バケツを自由に選択できるようにするためのSバンド移相器である。本発表では、これら入射器基準信号の位相制御系について紹介する。
 
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THPP41
p.573
無酸素銀/パラジウム/チタン(Ag/Pd/Ti)非蒸発型ゲッター(NEG)コーティングの性能評価
Evaluation of oxygen-free silver/palladium/titanium (Ag/Pd/Ti) nonevaporable getter (NEG) coating

増田 裕介,中山 泰生(東理大),小野 真聖,吉岡 和夫,吉川 一朗(東大),佐藤 裕太,大野 真也(横国大),○菊地 貴司(KEK),間瀬 一彦(KEK、総研大)
Yusuke Masuda, Yasuo Nakayama (Tokyo University of Science), Masato Ono, Kazuo Yoshioka, Ichiro Yoshikawa (University of Tokyo), Yuta Sato, Shinya Ohno (Yokohama National University), ○Takashi Kikuchi (KEK), Kazuhiko Mase (KEK,SOKENDAI)
 
非蒸発型ゲッター(NEG)ポンプは、超高真空領域においてH2および活性ガスに対する排気速度が大きいため、10-7 Pa以下の到達圧力を必要とする加速器に広く使用されている。最近我々は、133℃、12時間のベーキング後に室温に戻すとH2とCOを排気する新しいNEGである無酸素Pd/Tiを開発した[1]。また、無酸素Pd/Ti のH2とCOに対する排気速度は、真空排気とベーキング、大気導入のサイクルを繰り返しても低下しないことを確認した [2]。本発表では、無酸素Pd/Tiをコートしたうえでさらに単原子層以下のAgを蒸着した真空容器(無酸素Ag/Pd/Tiコート容器)の排気性能を四重極質量分析計を用いて評価したので報告する。150℃で3時間ベーキングしたあと室温に戻した場合、無酸素Ag/Pd/Tiコート容器では、無酸素Pd/Tiコート容器に比べて、COの分圧が低くなった。一方、H2とH2Oの分圧は、無酸素Pd/Tiコート容器の場合と比較して増加した。この結果は蒸着したAgがCOの排気を促進する一方、H2とH2Oの排気を抑制することを示す。 [1] T. Miyazawa et al., J. Vac. Sci. Technol. A 36, 051601 (2018). [2] T. Kikuchi et al., AIP Conf. Proc. 2054, 060046 (2019).
 
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THPP42
p.577
SuperKEKB加速器真空システムの現状 – 2020bランまでの運転 –
Status of SuperKEKB vacuum system until 2020b run

○末次 祐介,柴田 恭,石橋 拓弥(高エネ研, 総研大),白井 満,照井 真司,金澤 健一,久松 広美(高エネ研),姚 慕蠡(総研大)
○Yusuke Suetsugu, Kyo Shibata, Takuya Ishibashi (KEK, SOKENDAI), Mitsuru Shirai, Shinji Terui, Ken-ichi Kanazawa, Hiromi Hisamatsu (KEK), Mulee Yao (SOKENDAI)
 
SuperKEKBは、KEKの電子・陽電子衝突型加速器で、入射器および蓄積リング(Main Ring, MR)から構成される。MRは8 GeV電子用のHigh Energy Ring (HER)と4 GeV陽電子用のLow Energy Ring (LER)から成る。陽電子入射路の途中には、陽電子ビーム特性向上のためのDamping Ring (DR, 1.1GeV)も稼働している。SuperKEKBでは、2019年3月から本格的な衝突実験(Phase-3と呼ぶ)を開始した(2019aラン)。MR、DR真空システムは、試運転(Phase-1)以来Phase-3でもほぼ順調に稼働し、圧力も順調に下がっている。2020年4月からは2020bランが始まり、5月初めの段階でMRの積算ビーム電流は、LER、HERでそれぞれ 2.3 kAh、 2.1 kAhである。ビーム電流は、Belle II測定器のバックグラウンドや衝突運転条件等により適宜変更されるが、2020bランは主に783バンチで運転されており、LER、HERとも500~550 mAである。DRの積算ビーム電流は8.3 Ahである。運転中は、各種真空機器の状況を確認しつつ、運転中発生する様々な問題に対する対応等を行った。ここでは、2020年6月までの2020bラン時の真空システムの状況、および今後に向けた課題等を報告する。
 
13:10-15:10 
THPP43
p.582
パルスパワー電源への応用に向けたSiC MOSFETの特性評価
The characterization of SiC MOSFET for application to pulsed power supplies

○生駒 直弥,中田 恭輔,虫邉 陽一,徳地 明(株式会社パルスパワー技術研究所)
○Naoya Ikoma, Kyosuke Nakata, Yoichi Mushibe, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Laboratory Ltd.)
 
パルスパワー分野では,従来はスイッチングデバイスとして主に真空管が用いられていたが,近年は半導体素子への置き換えが進んでいる.半導体パルスパワー電源では,大電流のスイッチングに対応するため,それらを多数並列にしてスイッチを構成する手法がとられる.半導体素子として,高耐圧,低損失という優れた特徴を有するSiC MOSFETの普及が進んでおり,さまざまな製品が入手可能であるが,それらをパルスパワー用途に使用するとき,動作速度,電力損失(発熱),そして並列数の削減による電源の小型化,低コスト化の観点から,立上り/立下り時間,及びオン抵抗の評価が特に重要となる.この度,5種類のSiC MOSFETに対し,ドレイン-ソース電圧の立下り時間,及びオン抵抗の,ドレイン電流依存性を評価したので報告する.
 
13:10-15:10 
THPP44
p.585
SiC半導体を用いたキッカーマグネット用40kV-LTD電源の開発と評価
Development and evaluation of 40 kV LTD power supply using SiC-MOSFET for kicker magnet

○虫邉 陽一,中田 恭輔,森 均,徳地 明((株)パルスパワー技術研究所),堀野 光喜,小野 礼人,高柳 智弘(J-PARC/JAEA)
○Yoichi Mushibe, Kyosuke Nakata, Hitoshi Mori, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Lab.), Koki Horino, Ayato Ono, Tomohiro Takayanagi (J-PARC/JAEA)
 
J-PARC RCSキッカーマグネット用に新しいパルス電源を開発している。現状、キッカーマグネット用電源システムには高電圧かつ高速のスイッチとしてサイラトロンスイッチを使用しているが、新しい電源は高電圧大電流かつスイッチング損失が小さいSiC半導体デバイスを使用することで安定性の良い電源システムを期待できる。SiC-MOSFETを多数並列接続したLTD(Linear Transformer Drivers)回路を構成した基板を多段直列接続することで高電圧かつ大電流の出力を可能とする。2019年に20kV/2kAで電源を構成したが、今回は主回路LTD基板52枚と補正LTD基板20枚を直列接続して40kV/2kAのパルス電源を製作し、出力試験を実施した。本発表では電源の構成と試験結果を報告する。
 
13:10-15:10 
THPP45
p.590
J-PARC加速器用イグナイトロン代替半導体スイッチの開発
Development of ignitron alternative semiconductor switch for J-PARC accelerator

○小野 礼人,高柳 智弘,植野 智晶,堀野 光喜,山本 風海,金正 倫計(J-PARC/JAEA)
○Ayato Ono, Tomohiro Takayanagi, Tomoaki Ueno, Koki Horino, Kazami Yamamoto, Michikazu Kinsho (J-PARC/JAEA)
 
大電流・高電圧の放電スイッチとして、イグナイトロンがある。J-PARCでは、LINACの加速器用高周波源で使用するクライストロン電源のクローバー装置にイグナイトロンスイッチを用いている。このイグナイトロンは、世界的に使用が制限されている水銀を使用しており、将来的に製造中止が見込まれる。そこで、MOSゲートサイリスタを用いたイグナイトロン代替用半導体スイッチを開発している。クローバー装置として使用するためには、120kV、40kA、50usの動作出力が必要である。1枚当たり、3kV、40kA、50usの動作出力を実現するオーバル型基板モジュールを開発した。このオーバル型基板モジュール4枚を4直列で接続し、12kV、40kAの動作出力を確認したので、その出力試験結果について報告する。最終的には、本基板モジュールを40枚積み重ねて120kV、40kAを出力する。
 
13:10-15:10 
THPP46
p.594
J-PARC MRアップグレードのための新低磁場セプタム電磁石の開発(6)
The new low-field septum magnet for upgrading of fast extraction in MR J-PARC(6)

○芝田 達伸(高エネ研),濵野 慧,中村 健太,川口 祐介(ニチコン),石井 恒次,杉本 拓也,松本 教之,松本 浩,岩田 宗磨(高エネ研),Fan Kuanjun(HUST)
○Tatsunobu Shibata (KEK), Kei Hamano, Kenta Nakamura, Yusuke Kawaguchi (Nichicon), Koji Ishii, Takuya Sugimoto, Noriyuki Matsumoto, Hiroshi Matsumoto, Soma Iwata (KEK), Kuanjun Fan (HUST)
 
J-PARC MRでは速い取り出しのビームパワーを750kWを経て1.3MWに増強するためアップグレードが進行中である。ビーム増強のためビームの運転周期を現在の2.48秒から1.16秒への短縮する。MRの入出射用電磁石システムも1.16秒周期への対応のためアップグレードを行っている。現行機の低磁場セプタム電磁石はMR運転開始以降使用を続けているため、セプタムコイルの自身の振動による絶縁破壊が懸念されている。他にもQ成分の漏れ磁場が大きいという問題、ビームパワー増強に伴いビームハローの強度も大きくなると予想されるため磁極のアパーチャーを大きくする必要がある。これらの課題を克服するため、我々は新しい低磁場セプタム電磁石として通常のタイプではなく誘導渦電流型、通称Eddy型という電磁石の導入する。新しい低磁場セプタム電磁石と新しい電源は2014年に製作され、MRエリア内の電源棟内にテストベンチを構築し試験を行っている。2020年5月、電源の出力パルス電流の長期安定性の改善と周回ビームライン上の漏れ磁場軽減である。長期安定性はフィードバックにより±10ppmを達成しているが問題が2つある。電流値を独立に測定した場合に安定性を再現しない事、時々数十ppmの大きな変動が見られる点である。漏れ磁場については磁極末端部に存在する大きな漏れ磁場の軽減が日必要であり磁気遮遮蔽体を追加する試験を行っている。本発表ではこれらの問題の解決とその結果について報告する。
 
13:10-15:10 
THPP47
p.599
シアネート樹脂を用いた新しい耐放射線性電磁石の開発
Development of new radiation-resistant magnets using Cyanate ester resins

○高橋 仁,田中 万博,広瀬 恵理奈,小松 雄哉,武藤 史真(高エネ研),齋藤 真慶(東北大)
○Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Erina Hirose, Yusuke Komatsu, Fumimasa Muto (KEK), Masayoshi Saito (Tohoku Univ.)
 
シアネート樹脂は、CERNの将来加速器計画FCCの電磁石コイルや、ITERのトロイダルコイルの絶縁材として有望視されるなど、新しい耐放射線性有機材料として注目されている。我々は、このシアネート樹脂を使った電磁石コイルを実現するために、まずプリプレグテープの開発を行った。試作したシアネート樹脂製プリプレグテープをコイル導体に巻き付けて硬化させ絶縁破壊試験を行った結果、優れた絶縁性能が確認された。さらに、最終的にコイルとして成型する際に導体間の隙間を埋めるためのパテ材についてもシアネート樹脂製のものを開発し、実際にそれを用いてコイル模擬体を成型する試験を行った。また、シアネート樹脂の耐放射線性については、これまでに測定されたのは中性子やガンマ線照射によるもののみで、陽子を照射したデータはない。そこで我々は現在、東北大学サイクロトロン施設で陽子照射による耐放射線性の測定の準備を進めている。 本発表では、以上のような開発の現状と試験の結果について報告する。
 
13:10-15:10 
THPP48
p.604
3次元螺旋ビーム入射実証実験のための垂直ビームキッカー装置の単体性能評価
Test bench study of vertical beam kicker device for 3-D spiral beam injection experiment

○飯沼 裕美(茨大理工学研究科),伊藤 晃太,小田 航大(茨大理),平山 穂香(茨大理工学研究科),高柳 智弘(日本原子力研究開発機構)
○Hiromi Iinuma, Kouta Ito, Koudai Oda, Honoka Hirayama (Ibaraki-Univ.), Tomohiro Takayanagi (JAEA)
 
素粒子ミューオンの異常磁気能率(g-2)および電気双極子(EDM)を同時に超精密測定する実験[1]の要素技術開発を担う3次元螺旋ビーム入射の要素技術の要となる垂直キッカー装置のテストベンチにおける性能評価の結果を報告する。相対論的エネルギーのミューオンビームを蓄積ソレノイド磁場中の円軌道平面での安定制御を実現するため、「医療用MRI磁石を応用した超電導磁石の蓄積リング」へ入射する。有効磁場領域の磁場精度は+/-0.1ppm(peak-peak)、蓄積ビームの直径は77㎝ほどになり、前例のない小型かつ超精密磁場の蓄積リングになる。このような蓄積磁石への入射はビーム入射を3次元らせん軌道[2]にし、垂直ビームキッカー装置を用いて有効磁場領域にビームを蓄積する[2]。本発表では①垂直キッカー装置の概要とキッカー磁場の空間分布の要求仕様[3]を紹介し、②3次元ビーム入射軌道に合わせたパルス磁場の時間構造の要求仕様決定方法の議論、③電子銃を用いた3次元入射テストビームラインのための垂直ビームキッカーの装置単体の試運転の結果を報告する。[1] PTEP 2019, 053C02 (22pages) DOI:10.1093/ptep/ptz030[2] NIMA, 832 (2016)51, PASJ2019 THOH08, PASJ2018 WEOM07[3] PASJ2019 WEPH032
 
13:10-15:10 
THPP49
p.608
Cs-K-Sbのヘテロ接合によるGaAsフォトカソードのNEA活性化
NEA activation of GaAs photocathode by Cs-K-Sb heterojunction

○小杉 直(名大工),郭 磊,高嶋 圭史,真野 篤志,保坂 将人(名大SRセンター),加藤 政博(広島大学)
○Naoki Kosugi (Nagoya Univ.), Lei Guo, Yoshifumi Takashima, Atsushi Mano, Masahito Hosaka (SR Center Nagoya Univ.), Masahiro Katoh (Hiroshima Univ.)
 
NEA-GaAsフォトカソードは,低エミッタンス,高量子効率,赤外線領域での電子励起などの特徴を持ち,先端加速器と電子顕微鏡用高性能電子源として有力な候補と考えられている.しかしながらCs-O蒸着により生成されたNEA表面は高い要求真空度や短寿命が課題となっている.これは残留ガスの表面吸着やイオン化した残留ガスの逆流などのプロセスにより貧弱なCs-O薄膜が破壊するためである.本研究では,丈夫なマルチアルカリフォトカソードであると実証されたCsK2Sbに着目し、ヘテロ接合によるp型GaAsのバンド構造と組み合わせることでNEAとなる可能性を考慮し,GaAs基板にCs-K-Sbを蒸着させることで丈夫なNEAフォトカソードの生成を試みた.その結果,532nmレーザーでの量子効率は最大で8%程度と良好な値を示し,GaAs上に高い結晶性を有するCsK2Sb薄膜を生成できることを確認した.またダーク寿命において1週間以上に高QEを維持できることも確認できた.一方で低エミッタンスと偏極した電子励起が期待される赤外線領域での量子効率は低く,現在はこの原因解明を試みている.
 
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THPP50
p.611
MeV領域のテーブルトップ陽子源の大強度化
Development of intense table-top source of protons in MeV resion

○依田 哲彦,嶋 達志,神田 浩樹,福田 光宏,大本 恭平,荘 浚謙,久松 万里子(大阪大学核物理研究センター),高久 圭二(神戸常磐大学)
○Tetsuhiko Yorita, Tatsushi Shima, Hiroki Kanda, Mitsuhiro Fukuda, Kyohei Omoto, Tsun Him Chong, Mariko Hisamatsu (RCNO, Osaka Univ.), Keiji Takahisa (Kobe Tokiwa Univ.)
 
十数MeVの陽子ビームは、粒子線測定器の校正やPET薬剤などで利用される短寿命RI生成などに利用される。陽子ビームは通常サイクロトロンなどの加速器で生成されるが、より手軽な方法として核融合反応である3He+D→p+4Heを利用することを考えた。この核融合反応の結果放出される14.67MeVの陽子をにより、研究室レベルで気軽に使用できる導入コストが低く小型化な陽子源の実現が期待される。この核融合反応自体は古くから知られているもので、恐らくは過去にもこの反応を使ったビーム生成装置の検討がなされたであろうが、反応率の低さが足枷であったであろうことは想像に難くない。 本研究では最終的にPET関連の研究に耐えうる量のRI製造を3He+D→p+4He反応により実現できる装置の実現を今一度目指す。これまでの研究では強度は弱いものの、300μmのアルミ窓をとおして、数MeVの陽子を大気中に取り出すことに成功している。今回、この真空を遮断している窓構造の改良を行うことで大気側に取り出される陽子のエネルギーロスの低減を図り、イオン源の加速電圧増強による大強度化と合わせた改造を実施し、十数MeVの大強度陽子源の実現を目指した。
 
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THPP51
p.614
グリッド付き熱カソードを用いた低エミッタンス電子銃システム
Low-emittance electron gun system with gridded thermionic-cathode

○安積 隆夫,稲垣 隆宏(RIKEN),大竹 雄次,谷内 努(JASRI),西森 信行(QST),馬込 保,柳田 謙一(JASRI),田中 均(RIKEN)
○Takao Asaka, Takahiro Inagaki (RIKEN), Yuji Otake, Tsutomu Taniuchi (JASRI), Nobuyuki Nishimori (QST), Tamotsu Magome, Kenichi Yanagida (JASRI), Hitoshi Tanaka (RIKEN)
 
SX-FEL用3GeV線型加速器の電子銃システムは、2 mm mrad以下の低エミッタンスビームが要求される。また、長期間の安定運用の観点から、高い耐久性と信頼性を備えたシステム構築が肝要である。こうした点を踏まえ、市販のグリッド付き熱カソードを備えた50kV電子銃と高周波空胴を組み合わせた低エミッタンスRF熱電子銃システムを開発した。グリッド近傍のエミッタンス悪化は、グリッド周辺の電場歪み、すなわちレンズ効果により引き起こされる。この電場分布がビーム軸に平行となるように、カソード、グリッド、アノードの各電極間電場強度を最適化することで、低エミッタンスビーム生成が可能となる。50 kV電子銃で得られた低エミッタンスビームは、直ちに高周波空胴により500keVまで加速することで、空間電荷効果によるエミッタンス増大を回避する。本電子銃システムの実証試験の結果、1.7 mm mrad / 0.6 nCの低エミッタンスビーム生成に成功した。本論では、電子銃システムの概要、ビーム試験の詳細を示し、グリッド近傍の電場分布によるエミッタンスへの影響について議論する。
 
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THPP52
p.617
ソレノイド磁場印加型レーザーイオン源のイオン価数分布の計測
Measurement of ion charge-state distribution of laser ion source with solenoidal magnetic field

○高橋 一匡,延命 慧悟,松本 友樹,片根 弘登,宮崎 翔,佐々木 徹,菊池 崇志(長岡技大)
○Kazumasa Takahashi, Keigo Enmei, Yuki Matsumoto, Hiroto Katane, Kakeru Miyazaki, Toru Sasaki, Takashi Kikuchi (Nagaoka Univ. Tech.)
 
レーザーイオン源はレーザーを固体ターゲットに照射して発生させたアブレーションプラズマからイオンビームを引き出すイオン源である。レーザーで生成したプラズマに対してソレノイド磁場を印加することによりプラズマの収束や横方向への膨張を制限した輸送が可能であり、プラズマ密度を増加させることで、そこから引き出されるイオンビーム電流を増加させることができる。その一方で、ソレノイド磁場がレーザーイオン源のイオン価数分布へ与える影響は十分理解されていない。本研究では電磁石を用いた磁場偏向型のイオン価数分析器を構築し、ソレノイド磁場を印加したレーザーアブレーションプラズマから引き出したイオンビームの価数分布の計測を行った。本発表ではソレノイド磁場の印加がレーザーイオン源のイオン価数分布に与えた影響について議論する。
 
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THPP53
p.620
加速器施設の長期間消費電力トレンド
Long-term electricity power consumption trends at J-PARC accelerator facilities

○佐藤 健一,上窪田 紀彦(高エネ研),田島 佑斗,土井 幸之介,小原 直登(関東情報),伊藤 博(高エネ研)
○Kenichi Sato, Norihiko Kamikubota (KEK), Yuto Tajima, Konosuke Doi, Naoto Obara (KIS), Hiroshi Ito (KEK)
 
J-PARCは大規模加速器施設の1つであり、 加速器運転を監視するための中央監視システムがあり施設部が管理している。 施設部が所掌するJ-PARC中央監視システムには片方向データゲートウェイが設置されており、 加速器制御システム(EPICS)から設備の状態・データを読み出すことができる。 J-PARCにおいては加速器制御システムのアーカイバは2005年から稼働しており、 施設部のデータは2007年12月から記録されている。 電力消費においては2020年現在で12~13年分のトレンドを追うことができる。 本研究では2008年から2020年上半期までの運転における電力消費のトレンドを中心に報告する。
 
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THPP55
p.624
THz FELからの単一パルスの取り出しのためのプラズマスイッチの研究
Study of plasma switch for single pulse extraction for the THz FEL

○川瀬 啓悟(QST),誉田 義英,磯山 悟朗(阪大産研)
○Keigo Kawase (QST), Yoshihide Honda (ISIR, Osaka Univ. ), Goro Isoyama (ISIR, Osaka Univ.)
 
FEL発振器は共振器内で光を繰り返しFEL増幅することで強い光を発生させている。一般にFEL発振器から取り出される光は数マイクロ秒の長さのパルス列であるが、FELの短パルス性を活かした物質科学での利用においては、単一パルスであることが望ましいことも多い。そのため、産研THz FELに対しては、レーザー励起により半導体表面にプラズマを励起し、反射スイッチとして単一パルスを取り出すことを実施している。本研究では、この半導体反射スイッチの材料種や励起レーザー強度による応答の違いを比較計測し、その特性を評価している。本発表では、これまでに実施した実験計測の結果についてのまとめを報告する。
 
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THPP56
p.626
FELパルス光の外部蓄積のための試験蓄積状況
Current status of a test stacking at enhancement cavity for IR-FEL oscillator

○黒澤 歩夢,住友 洋介(日大理工),川瀬 啓悟,羽島 良一(量研),早川 恭史,境 武志(日大理工)
○Ayumu Kurosawa, Yoske Sumitomo (CST,Nihon U.), Keigo Kawase, Ryoichi Hajima (QST), Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai (CST,Nihon U.)
 
現在、日大LEBRAでは高次高調波発生を通じたアト秒光源生成を狙うプロジェクトに参加している。アト秒光源を作り出すには高ピーク強度パルスが必要とされており、これを実現するためFELパルス光を外部共振器に蓄積するための基礎研究を行っている。しかし、日大FELの中赤外での20usのマクロパルスの光では共振器設計は困難が予想される。そこで赤外モードロック・ファイバーレーザーを用いた試験蓄積と光学系づくりを行い、FELパルス蓄積に必要な技術を獲得することを目指す。今回は試験蓄積の状況と、これまでの取り組みやそこから得られる考察を発表する。共振器はモードロック・ファイバーレーザーのパルス繰り返しの倍の周波数で蓄積するように設計し、4枚のミラーによって周回軌道を作る。周回軌道の微調整や入射光のビームサイズおよび発散の調整をすることで共振器内部の蓄積条件に近づけていった結果、透過光からは設計通りの内部蓄積状況になっていることが分かった。他にも、入射光のバックグラウンドノイズがあり、パルス蓄積と区別するための取り組みも紹介する。
 
13:10-15:10 
THPP57
p.629
日本大学LEBRAにおけるコヒーレントエッジ放射源の開発
Development of coherent edge radiation source at LEBRA in Nihon University

○境 武志(日大量科研),清 紀弘(産総研),早川 恭史,住友 洋介,早川 建,田中 俊成,野上 杏子,高橋 由美子(日大量科研),岡崎 大樹,黒澤 歩夢,斉藤 広斗,廣原 匠(日大院理工)
○Takeshi Sakai (LEBRA, Nihon University), Norihiro Sei (AIST), Yasushi Hayakawa, Yoske Sumitomo, Ken Hayakawa, Toshinari Tanaka, Kyoko Nogami, Yumiko Takahashi (LEBRA, Nihon University), Hiroki Okazaki, Ayumu Kurosawa, Hiroto Saito, Takumi Hirohara (CST, Nihon University)
 
 日本大学電子線利用研究施設LEBRAでは、高エネルギー加速器研究機構と産業技術総合研究所との共同研究により加速器の高度化をすすめ、FELとパラメトリックX線放射(PXR)、テラヘルツ波(THz)光源開発、共同利用を行っている。2017年度からFELアンジュレーター下流側に設置している45度偏向電磁石で発生させたTHz領域のコヒーレントエッジ放射(CER)光源開発を進めている。発生したCERの取り出しには穴あきのミラーを用いており、FELの発振状態を妨げることなく取り出すことが可能な光学系となっている。さらに大きな特徴として、FELとTHz輸送光路にITO蒸着ミラー(酸化インジウムスズ蒸着ミラー)をもちいることで、FELビームラインへ重畳し、FELとTHzの同時輸送が可能な輸送光学系となっている。穴あきミラーをトロイダルミラーへ改良し、ビームプロファイル計測用のカメラを導入し、常時立ち入り可能なユーザー実験室への輸送試験を始めている。本発表ではLEBRAにおけるFELラインでのCER光源開発状況、各測定結果に関して報告する。
 
13:10-15:10 
THPP58
p.633
KEK-PFリングトップアップビーム入射用パルス六極電磁石のための渦電流抑制セラミックスダクトの新たな導入
New installation of eddy-current suppressed ceramics duct to the pulsed sextupole magnet for top-up beam injection in KEK-PF ring

○満田 史織,高木 宏之,高井 良太,野上 隆史,内山 隆司(高エネ研),Lu Yao(総研大),小林 幸則,帯名 崇,原田 健太郎,上田 明,長橋 進也(高エネ研),横山 篤志,濱地 健吾(京セラ(株))
○Chikaori Mitsuda, Hiroyuki Takaki, Ryota Takai, Takashi Nogami, Takashi Uchiyama (KEK), Yao Lu (SOUKENDAI), Yukinori Kobayashi, Takashi Obina, Kentaro Harada, Akira Ueda, Shinya Nagahashi (KEK), Atsushi Yokoyama, Kengo Hamaji (Kyocera)
 
KEK-PFでは次世代光源加速器の新たなトップアップ入射技術の要となる多極パルス入射技術の開発を推し進めて来ている。世界に先駆けて入射の成功を収めたパルス六極電磁石入射技術は国内ではUVSOR、あいちSRと利用が展開され、世界的には多極パルス入射技術の開発の先鞭をつけている。KEK-PFでの運転適用後、渦電流を起源とする不整磁場による無摂動入射の弊害が新たな課題として見つかっている。主たる要因の一つであるセラミックスダクト内面コーティングからの渦電流を抑制するための新たなセラミックスダクトの開発が進められ、現在、新セラミックスダクトの製作と既設ダクトとの交換が完了し、パルス六極電磁石に適用する準備が整った。本件発表では、開発に至る経緯と製作の概要について報告し、これに関連し本会では、別に、高木、高井、Luにより、ビームベースドによる渦電流効果の検証、渦電流抑制、ビームインピーダンス低減の観点からのコーティング形状設計の詳細、渦電流生成の証拠となる磁場測定の結果が報告される。
 
13:10-15:10 
THPP59

Puffin によるFEL共振器の完全同期長発振のシミュレーション
Puffin Simulations of FEL Oscillators Operated at the Perfectly Synchronized Optical Cavity Length
○羽島 良一(量研)
○Ryoichi Hajima (QST)
 
FEL共振器の完全同期長発振では数サイクルの極短FELパルスが得られることが実験とシミュレーションで確認されており、このようなパルスを利用したアト秒X線光源の開発が進んでいる。このようなFELのシミュレーションでは、一般的なFELシミュレーションで用いられる近似と平均化操作(エンベロープ近似、電子位相の平均化、アンジュレータ蛇行運動の平均化)が計算の信頼性と精度を損なう可能性が考えらえる。FELシミュレーショコードPuffinは、上記の近似と平均化操作によらない “unaveraged code” であり、数サイクルFELのシミュレーションに有用なツールとなりうる。本報告では、Puffinを使ったFEL共振器シミュレーションの概要を紹介し、完全同期長発振の計算を行う際に注意すべき点を考察する。 本研究は文部科学省の光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP、JPMXS0118070271)によるものである。
 
13:10-15:10 
THPP60
p.638
エネルギー変調によって圧縮した電子バンチによるコヒーレン トアンジュレータ放射
Coherent undulator radiation from an energy chirped electron bunch

○坂上 和之(東京大学光量科学研究センター),大垣 英明(京大エネ研),大塚 誠也,小柴 裕也(早大理工総研),全 炳俊(京大エネ研),蓼沼 優一,鷲尾 方一(早大理工総研)
○Kazuyuki Sakaue (PSC, The University of Tokyo), Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto University), Seiya Otsuka, Yuya Koshiba (RISE, Waseda University), Heishun Zen (IAE, Kyoto University), Yuichi Tadenuma, Masakazu Washio (RISE, Waseda University)
 
エネルギー変調セルを付属した高周波電子銃を用いることで、サブピコ秒かつ10^9個の電子を含む電子バンチを生成することに成功している。電子銃単体でこのような高ピーク電流の電子バンチを得られることから、コヒーレント放射を用いた光源としての利用が期待される。我々はエネルギー変調セルを付属した高周波電子銃に対し、その速度圧縮点近傍にアンジュレータを設置し、コヒーレントアンジュレータ放射の研究を開始した。その結果、コヒーレントアンジュレータ放射の観測(~0.4THz)に成功するとともに、高いピーク強度と取り出し効率であることを確認した。さらに電子ビームエネルギーやバンチ内電子数の向上により、改善が可能であることを見出しており、引き続き研究開発を進める予定です。本講演では、昨年度から開始したエネルギー変調セル付属高周波電子銃によるコヒーレントアンジュレータ放射の試験結果及び今後の展望に関して報告する。
 
13:10-15:10 
THPP61
p.641
PF2.5GeVリングのハイブリッド運転モードへの高調波空洞導入の可能性
Simulation study for bunch lengthening in Photon Factory Hybrid operation mode

○山本 尚人,田中 織雅,高井 良太(高エネ研)
○Naoto Yamamoto, Olga Alexandrovna Tanaka, Ryota Takai (KEK)
 
KEKフォトンファクトリー(PF)はKEKつくばキャンパスにあるエネルギー2.5GeV, 周長187m, エミッタンス34.6 nmradの放射光蓄積リングである。PFリングでは単バンチビームからの放射光を利用した時間分解計測を必要とするユーザー向けにハイブリッド運転を設けている。ハイブリッド運転では通常運転時よりバンチギャップを大きくし、その中央に高電荷の単バンチを蓄積する。  単バンチ部の蓄積電流値はビーム寿命やダクトの発熱、不安定性の発生を考慮して決定しているが、2012年当時に50 mAであったのに対し近年では30 mAまで下がっている。この理由は真空チャンバーの改造によりリングのインピーダンスが低下し、結果としてバンチ長が短縮したことが主であると考えられる。  本研究ではより高い単バンチ電流を実現することを目的にPFリングの過去の運転記録を調査すると共に、高調波空洞によるバンチ伸張可能性を検討した。バンチ伸張の検討にはリングのインピーダンスの存在やハイブリッド運転時に空洞電圧がバケット毎に異なることを考慮する必要があるため、解析的な検討は困難である。そこで、発表者らが近年開発した多粒子トラッキングコードmbtrackを用いることにした。  検討の結果、現在のPFリングに1.5GHzのTM020空洞を1台インストールすることで、2012年の運転時よりも長いバンチ長が実現でき、その結果50 mA以上のシングルバンチ電流を期待できることがわかった。
 
13:10-15:10 
THPP62
p.646
パルス超伝導線形加速器と従来型蓄積リングを組み合わせたハイブリッド光源の提案
Concept of Hybrid Ring Light Source using Ordinary Storage Ring with Pulsed Superconducting LINAC

○原田 健太郎,山本 尚人,本田 融,阪井 寛志,梅森 健成(KEK)
○Kentaro Harada, Naoto Yamamoto, Tohru Honda, Hiroshi Sakai, Kensei Umemori ()
 
LINAC can generate electron beam with short pulse length and/or small emittance. Long-pulsed multi bunch superconducting LINAC (SCL) can generate high beam current of about 0.1 mA with minimum extra construction cost from ordinary normal conducting LINAC (NCL). The capacity of the required cryosystem for pulsed operation is relatively small and the operation cost is also comparable. Using storage ring as single pass beam transport, users can use the beam from SCL. We have three modes; only stored beam mode, only SCL beam mode with on-axis injection/extraction, and the hybrid mode. With hybrid mode, beam from SCL is injected at off-axis with the presence of stored beam. Users can simultaneously use two beams with different photon beam axis. To manage single pass beam, the large flexibility of the beam dynamics and hardware of the ring is essential. The beam quality may be deteriorated in the storage ring with CSR effect. The maximum available current from SCL may be fixed by the radiation safety. There are still many subjects to be solved, but with the hybrid ring, many users can simultaneously use FEL-like beam and diffraction limited storage ring like beam at the same time.
 
13:10-15:10 
THPP63
p.651
PF-ARにおける5GeV運転の状況
The 5GeV operation status at the PF-AR

○長橋 進也,内山 隆司,帯名 崇,影山 達也,坂中 章悟,佐藤 政則,高井 良太,高橋 毅,谷本 育律,内藤 大地,中村 典雄,野上 隆史,原田 健太郎,東 直,本田 融,丸塚 勝美,満田 史織,山本 尚人,吉田 正人,吉本 伸一,渡邉 謙(高エネ研),工藤 拓弥(三菱電機システムサービス)
○Shinya Nagahashi, Takashi Uchiyama, Takashi Obina, Tatsuya Kageyama, Shogo Sakanaka, Masanori Satoh, Ryota Takai, Takeshi Takahashi, Yasunori Tanimoto, Daichi Naito, Norio Nakamura, Takashi Nogami, Kentaro Harada, Nao Higashi, Tohru Honda, Katsumi Marutsuka, Chikaori Mitsuda, Naoto Yamamoto, Masato Yoshida, Shin-ichi Yoshimoto, Ken Watanabe (KEK), Takuya Kudou (Mitsubishi Electric System & Service)
 
高エネルギー加速器研究機構(KEK)のX線領域の単パルス専用放射光源であるPhoton Factory Advanced Ring(PF-AR)は、2017年に直接入射路が完成したことにより、6.5GeVまでの任意のエネルギーの電子ビームを入射することが可能となった。また、2018年11月には、トップアップ入射により蓄積電流値を一定に保ったままユーザー運転を行うことが実現し、ユーザー実験の中断時間を短縮することに成功した。一方、2009年度は年間5,000時間を超えていた運転時間が、運転経費の削減により2016年度には半分以下になるなど、ユーザー運転時間の確保が大きな課題となっていた。そこで、運転エネルギーを6.5GeVから下げることで電気代を削減し、その削減された電気代で運転時間を伸ばすことが提案された。検討の結果、運転エネルギーを5GeVまで下げることで電気代が約60%にまで抑えることがわかり、2018年6月よりマシンスタディを開始した。2019年3月にはビームラインへ光を導いて試験的な利用実験を行い、同年5月の運転から5GeV運転が正式に開始された。 電気代削減の検討からその測定結果、5GeV運転が確立するまでのマシンスタディの内容を報告する。
 
13:10-15:10 
THPP64

cERL赤外自由電子レーザー用の電子銃レーザーシステム
Photo-cathode laser system for cERL-IR-FEL
○本田 洋介(KEK),川瀬 啓悟(QST),加藤 龍好,福田 将史(KEK)
○Yosuke Honda (KEK), Keigo Kawase (QST), Ryukou Kato, Masafumi Fukuda (KEK)
 
cERLでは赤外自由電子レーザー(FEL)の開発を行っている。 FELには高バンチ電荷かつ低エミッタンスおよびエネルギー拡がりが必要である。 とくに電子銃では空間電荷効果によるビーム性能の低下を抑えることが重要で、 カソード励起レーザーには適切なパルス形状が求められる。 Ybモードロック発振器の出力を体積ブラッググレーティング(CVBG)を用いて伸長し、 Ybファイバによる増幅を行なった上で波長変換するレーザーシステムを新たに構築した。本発表ではこのレーザーシステムについて報告する。
 
13:10-15:10 
THPP65

cERL-FELの建設
Construction of cERL-FEL
○東 直,内山 隆司,江口 柊,帯名 崇,加藤 龍好,阪井 寛志,下ヶ橋 秀典,塩屋 達郎,島田 美帆,高井 良太,高木 宏之,多田野 幹人,谷本 育律,土屋 公央,長橋 進也,中村 典雄,濁川 和幸,野上 隆史,原田 健太郎,本田 洋介,満田 史織(KEK),川瀬 啓悟(QST),魯 垚(総研大)
○Nao Higashi, Takashi Uchiyama, Shu Eguchi, Takashi Obina, Ryukou Kato, Hiroshi Sakai, Hidenori Sagehashi, Tatsuro Shioya, Miho Shimada, Ryota Takai, Hiroyuki Takaki, Mikito Tadano, Yasunori Tanimoto, Kimichika Tsuchiya, Shinya Nagahashi, Norio Nakamura, Kazuyuki Nigorikawa, Takashi Nogami, Kentaro Harada, Yosuke Honda, Chikaori Mitsuda (KEK), Keigo Kawase (QST), Yao Lu (SOKENDAI)
 
KEKのエネルギー回収型ライナックの原理実証機, cERLにおいてFELの建設が2019年10月から開始された. このcERL-FEL計画は波長10 – 20 μmの中赤外領域における発振を目的とし, ビーム・エネルギー17.5 MeVに対して, 周期長24 mm, 長さ3 mのアンジュレータを2台並べて配置する. バンチ電荷が60 pCの時、波長20 µmにおいて約1 µJのパルスエネルギーの光が発生, 繰り返しが81.25 MHzの電子銃レーザーを用いたCW運転時には, 平均レーザー出力として最大100 W程度が期待される. アンジュレータ1号機の設置を伴う第1次建設が2020年3月に終了し, 4月から5月までの2ヶ月間でアンジュレータ2号機の設置を行う第2次建設が実施された. 本発表では, これまでのcERLの構成を踏まえ, 新たに建設されたcERL-FELについて説明を行う.
 
13:10-15:10 
THPP66
p.656
ILC クライオモジュール用位置調整機構『アクティブムーバ』の開発
Development of active mover for remote position adjustment of ILC cryomodule

藤原 康宣,○石川 歩(一関高専),阿部 優樹(総研大),早野 仁司(高エネルギー加速器研究機構)
Yasunori Fujiwara, ○Ayumu Ishikawa (National Institute of Technology, Ichinoseki College), Yuki Abe (Graduate University for Advanced Studies), Hitoshi Hayano (KEK)
 
岩手県一関市に建設が予定されているILC(International Linear Collider)は,クライオモジュールとよばれる超伝導空洞等を内蔵した筒形断熱装置を次々と接続し,全長20kmもの直線型加速器を実現する.クライオモジュールの接続部には鉛直・水平2方向の精密な位置決めが求められ,かつこの位置決めを加速器運転中のビーム出力をモニタしながら行うことが要求されている.現状のクライオモジュール試験機の位置調整は調整用ボルトの操作により行われているが,実際のILCではこれを自動で行える装置『アクティブムーバ』の開発が求められている.アクティブムーバには重量約12tのクライオモジュールを鉛直・水平方向に10μmの分解能で位置決めを行える性能が要求されている.筆者らの研究グループでは,これを満足するためにカムを用いた二つの方式を提案し,クライオモジュールの1/7モックアップで性能評価を行った.両方式とも要求仕様を満足することと,フルスケール装置への展開可能性を示すことができた.一方この方式で採用された偏心カムはカムの回転角とクライオモジュールの変位の関係が非線形のため,位置決め分解能が一様にならないという性質があり,これが位置決め性能に影響を及ぼすことも明らかになった.本研究ではこれらの課題を解決する新しいカムの提案と,その位置決め性能に対する効果について報告する.
 
13:10-15:10 
THPP67
p.660
ATF-DRターンバイターンモニターを用いたβ関数の測定
β function measurements by turn-by-turn monitors at ATF-DR

○阿部 優樹(総研大),久保 浄,奥木 敏行,照沼 信浩(KEK)
○Yuki Abe (SOKENDAI), Kiyoshi Kubo, Toshiyuki Okugi, Nobuhiro Terunuma (KEK)
 
KEKの先端加速器試験施設(ATF)のダンピングリング(DR)では極小ビームを実現するために低エミッタンスのビームを生成している。ATF-DRのBPM(96台)システムはCOD測定に加えてターンバイターン測定も可能であるため、今回、DRのβ関数を迅速に測定するツールとしてターンバイターンモニターと調和解析(NAFF)を用いたシステムの整備を行った。ターンバイターン測定自体は数秒で終わるため、調和解析(NAFF)と組み合わせることにより全周のβ関数の測定を迅速かつリアルタイムに行う事ができる。今まではk-modulation法によるβ関数の測定を行っていた。 全周に渡って測定を行うと1シフト程度の時間を必要とするため、opticsの再現性が高いことから現在はビームサイズ測定付近のみでの測定を行っていた。現在、k-modulation法によって測定したβ関数とデザイン値とのフィッテングの一部が合わない事がある。筆者らは非線形磁場による影響を調べることにした。DRに実装されている機能結合型主偏向電磁石(36台)はフリンジ磁場などの影響により軌道が変わると4極のBL積も変化する。このような影響を深く理解するために多重極磁場のスライスの集合としてDRの電磁石をSAD上に再モデリングした。再構築したopticsモデルの評価をk-modulation法とターンバイターンモニターによる2種類のβ関数の測定を基に行った。本発表では、これら作業の進捗と現状について報告する。
 
ポスターセッション③ (9月4日 ポスター会場)
10:30-12:30 
FRPP02
p.665
J-PARCメインリングビームダンプシステムの構成と現状
Design and Status of Current Beam Dump System in J-PARC Main Ring

○冨澤 正人,橋本 義徳,魚田 雅彦,沼尻 正晴(高エネルギー加速器研究機構)
○Masahito Tomizawa, Yoshinori Hashimoto, Masahiko Uota, Masaharu Numajiri (KEK)
 
J-PARCメインリング(MR)は、速い取り出しビームを利用するニュートリノ実験施設と遅い取り出しビームを利用するハドロン実験施設へ、それぞれ約500kW、50kWの30GeV陽子ビームを供給している。MRのビームスタディー、利用運転中のビームアボート時のために、容量7.5 kWのビームダンプが利用されている。このビームダンプはトンネル躯体に埋め込まれており、強制冷却は行っていない。2008年のMR稼働以降現在に到るまで、とくにトラブルもなく稼働を続けている。しかしながら、今後のビーム強度増強に伴ってダンプの容量をアップグレードする検討がニュートリノGの協力のもの開始された。本報告の目的は、このアップグレードも視野におきながら、現在のビームダンプの設計指針、構造、設計性能、運転現状を明確にしておくことである。
 
10:30-12:30 
FRPP03
p.669
ミュオンサイクロトロンの設計と製作
Design and construction of muon cyclotron

○大西 純一,後藤 彰(理研仁科センター),山崎 高幸,永谷 幸則,三宅 康博(KEK物構研),安達 利一(KEK加速器),筒井 裕士,楠岡 新也,恩田 昂,熊田 幸生(住重)
○Jun-ichi Ohnishi, Akira Goto (Riken Nishina Center), Takayuki Yamazaki, Yukinori Nagatani, Yasuhiro Miyake (KEK-IMSS-MSL), Toshikazu Adachi (KEK-ACCEL), Hiroshi Tsutsui, Shinya Kusuoka, Takashi Onda, Yukio Kumata (SHI)
 
J-PARC MLFで生成される極小エネルギー分散の超低速ミュオンを5MeVまでサイクロトロンで再加速することによって透過型ミュオン顕微鏡の実現をめざしている。サイクロトロンは入射エネルギー30keV、取り出し半径262mmで、108MHz(h=2)の加速空洞とエネルギー分散を小さくするための3倍周波数324MHzのフラットトップ空洞を使用する。RFシステムについては別に発表する。電磁石は4セクターで、ヒルギャップ52mm、磁極直径φ698mm、平均磁場0.4T、等時性磁場の目標値は±10-4で、磁場測定を行ってセクター側面のシム厚で調整する。入射ビームの設計エミッタンスは1πmmmrad、パルス幅200psである。トラッキング計算により、エネルギー分散と規格化エミッタンスの増加が小さくなるように、電磁石、中心領域の電極形状、ビーム取り出し用の静電デフレクター(30kV)、passiveタイプの磁気チャンネルを設計した。その結果、取り出しポートでのエミッタンスはH方向(サイクロトロン軌道面)0.44、V方向0.10πmmmrad、エネルギー分散は7.9e-5となった。H方向のエミッタンスは、V方向に比べてdispersionや縦方向とのカップリングにより大きくなっているが、パルス幅の圧縮や入射マッチングにより改善の余地がある。現在、電磁石、RF空洞などの機械部品の製造は完了しており、磁場測定シム調整後に組立、9月からRF系の調整を行って、2020年度内にビームコミッショニングを予定している。
 
10:30-12:30 
FRPP04
p.674
縦方向計算コードBLonDのJ-PARC RCS への適用に向けたベンチマーク
Benchmarking of longitudinal calculation code BLonD for application to J-PARC RCS

○沖田 英史,田村 文彦,山本 昌亘,野村 昌弘,島田 太平(原子力機構 J-PARCセンター),杉山 泰之,吉井 正人,大森 千広,長谷川 豪志,原 圭吾,古澤 将司(高エネ研 J-PARCセンター)
○Hidefumi Okita (J-PARC center, JAEA), Fumihiko Tamura, Masanobu Yamamoto (JAEA J-PARC center), Masahiro Nomura, Taihei Shimada (J-PARC center, JAEA), Yasuyuki Sugiyama, Masahito Yoshii, Chihiro Ohmori, Katsushi Hasegawa, Keigo Hara, Masashi Furusawa (KEK J-PARC center)
 
J-PARC RCSの縦方向ビームシミュレーションにはこれまで内製の計算コードが用いられてきた。縦方向の運動の差分方程式に基づくこのコードは空洞に発生するウェーク電圧および縦方向の空間電荷力の計算も含み、シミュレーション結果はRCSの実際のビームとよく合致するものとなっている。近年、CERNによって開発が続けられている縦方向シミュレーションコードBLonDは主な部分がPythonで書かれているため可読性、汎用性が高く、世界の加速器で利用が進んできている。現在、BLonDのRCSへの適用を目的としたベンチマークを行っている。この発表では、BLonDと内製コードのシミュレーション結果の比較を中心とした、BLonDの適用可能性について議論を行う。
 
10:30-12:30 
FRPP05
p.679
理研超伝導線型加速器SRILACのコミッショニング
Commissioning of superconducting-linac booster for RIKEN heavy-ion linac

○坂本 成彦,山田 一成,須田 健嗣,大関 和貴,長友 傑,内山 暁仁,渡邉 環,藤巻 正樹,西 隆博,池沢 英二,今尾 浩士,上垣外 修一,渡邉 裕(理研仁科センター)
○Naruhiko Sakamoto, Kazunari Yamada, Kenji Suda, Kazutaka Ozeki, Takashi Nagatomo, Akito Uchiyama, Tamaki Watanabe, Masaki Fujimaki, Takahiro Nishi, Eiji Ikezawa, Hiroshi Imao, Osamu Kamigaito, Yutaka Watanabe (Nishina Center, RIKEN)
 
理化学研究所仁科加速器研究センターのRIビームファクトリー(RIBF)では、ニホニウムに続く新元素探索実験を行うため、重イオンビームを加速する線形加速器(RILAC)のエネルギーとビーム強度のアップグレードが進行中である.このプロジェクトでは、28GHzのRF源を用いた超伝導イオン源の導入3)と従来の常伝導線形加速器の後段の4台を10台の高純度ニオブ板材から製作した超伝導空洞を収める3台のクライオモジュールからなる線形加速器(SRILAC)(図1)4,5)で置き換える計画で、これにより全加速電圧で14 MVの増強が実現される.昨年秋に冷却試験に成功し、年末には励振試験を実施。この1月には最初のビーム加速試験(40Ar13+ 6.2 MeV/u)を実施した。これらについて報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP06
p.684
J-PARC MRにおける横方向ビーム不安定性の抵抗性壁効果の影響の調査
Study of the transverse beam instability caused by the resistive-wall impedance at the J-PARC main ring

○小林 愛音,外山 毅(KEK),菖蒲田 義博(JAEA),中村 剛,佐藤 洋一(KEK)
○Aine Kobayashi, Takeshi Toyama (KEK), Yoshihiro Shobuda (JAEA), Takeshi Nakamura, Yoichi Sato (KEK)
 
J-PARC main ring (MR) 速い取り出し運転において、チューンシフトやビーム不安定性を発生させるなど、横方向インピーダンスはビームに強い影響を与える。 その見積もりと対策はビーム強度を現在の3.3x10^13 ppb x 8バンチから4.4x10^13 ppb x 8バンチとする大強度運転に向けて不可欠である。 この研究ではインピーダンス源の特定のための調査を行なった。MRの横方向の主要インピーダンス源は抵抗性壁効果と考えられているが、水平方向には他にキッカー等のインピーダンスがあるため、ここでは他のインピーダンスの寄与が小さいと考えられる垂直方向についてビーム試験を行なった。試験ではマルチバンチビーム不安定性の成長率を、チューンを変えることによりインピーダンスが応答する周波数を変えて測定し、それを抵抗性壁効果の模型と比較することによりインピーダンスを同定することとした。シングルバンチ不安定性の寄与は、バンチ数を変えてバンチ電流を増減させ、かつバンチ内振動の測定を行い確認した。測定結果では抵抗性壁効果の影響が見えており、検証を行っている。試験で用いたビーム位置モニターが遮断周波数120 MHz程度の1次の高域通過フィルター特性を持つので、その波形を積分して位置情報とした。ここでは解析手法やシミュレーションとの比較についても報告する予定である。
 
10:30-12:30 
FRPP07

cERL赤外自由電子レーザーにおける再生増幅FELの検討
RAFEL scheme for upgrading IR-FEL at cERL
○本田 洋介,加藤 龍好(KEK),川瀬 啓悟(QST),島田 美帆(広島大学),住友 洋介(日本大学),坂上 和之(東京大学),坂本 文人(秋田高専)
○Yosuke Honda, Ryukou Kato (KEK), Keigo Kawase (QST), Miho Shimada (Hiroshima university), Yoske Sumitomo (Nihon university), Kazuyuki Sakaue (Tokyo university), Fumito Sakamoto (Akita college)
 
cERLではSASE型の赤外自由電子レーザーの開発を行っている。 SASE型では長いアンジュレータによりFELを発振させるが、 cERLのパラメータでは飽和に到達するには不十分である。 出力の一部を上流から再導入してシードとして機能させる、 再生増幅型FEL(Regenerative Amplifier FEL)の手法を用いると、 発振の立ち上がりが促進され、短いアンジュレータでも飽和に到達することができる。 cERLでは高繰り返しのバンチが特徴であり、この手法に適している。 また、外部シードを組み合わせると、高繰り返しのシードFELに発展させることも可能である。 本発表ではcERLを想定したRAFELのシミュレーション結果について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP08
p.689
長距離ウェーク場を含む不均等蓄積したビームの集団不安定性のIIRフィルターを用いた解析
Analysis of collective instabilities of uneven filled beams including long range wake fields using an IIR filter

○外山 毅,小林 愛音,中村 剛(高エネ研),菖蒲田 義博(原研)
○Takeshi Toyama, Aine Kobayashi, Takeshi Nakamura (KEK), Yoshihiro Shobuda (JAEA)
 
J-PARCの様な大強度ビーム加速器では、ビームが発生するウェーク場がビーム自身に働き不安定な運動を引き起こす。これがビーム損失の原因の一つとなり、ビーム強度の増強に制限を与える。不安定性の理論的計算のほとんどが、リングに対称に蓄積されたバンチを対象にしているため、J-PARC MRでの9個のRFバケツに対して8個のバンチの蓄積、スタディでの不均等な蓄積などの場合、解析が難しくなっている。シミュレーションにおいても、壁抵抗によるウェーク場などの長距離で生き残るものは計算が簡単ではない。例えば、J-PARC MRでは、壁抵抗のウェーク場は減衰時間〜1 ms(200 ターン)程度と見積もられている。この様なウェーク場でも、ビーム振動からキック力への伝達関数をIIR(infinite impulse response)フィルターで近似すると、数ターン前までの履歴情報のみで計算可能となる。壁抵抗ウェーク場は、文献[1], [2]よりexp(-αs)の形の重ね合わせで表現できるので、線形系を記述するIIR filterで表すことができるのである。逆に、ウェーク場が線形系で記述できれば本方法が適用できる。Rigid bunchモデルの場合の計算方法、J-PARC MRに適用した結果、さらに、macro-particle simulation への応用結果を報告する。 [1] Y. Shobuda and K. Yokoya, PHYSICAL REVIEW E 66, 056501, 2002. [2] E. Métral, CERN-AB-2005-084.
 
10:30-12:30 
FRPP09
p.693
レーザー加速イオンの超伝導シンクロトロンへの直接入射の検討Ⅲ
Direct injection of laser-accelerated ions into a superconducting synchrotron Ⅲ

○野田 悦夫,白井 敏之,岩田 佳之,水島 康太,野田 章,野田 耕司(量研機構),藤本 哲也(加速器エンジニアリング)
○Etsuo Noda, Toshiyuki Shirai, Yoshiyuki Iwata, Kota Mizushima, Akira Noda, Koji Noda (QST), Tetsuya Fujimoto (AEC)
 
量研機構では、超伝導技術とレーザー加速技術を用いて重粒子線がん治療装置の小型化を目指す量子メスプロジェクトの開発を進めている。その一環として、レーザー加速イオンのシンクロトロンへの直接入射に関するフィージビリティスタディを行っている。前回は、Beam Transportとパルス圧縮以降のレーザー装置とビーム発生チャンバーをシンクロトロンの内側に設置することを想定して、Beam Transportの設計とシンクロトロンでの最終的な捕捉粒子数の検討を行い、最終的にシンクロトロンに捕捉できた粒子数を計算した。さらに、空間電荷、イオンエネルギー広がり、レーザーによる生成粒子のバラツキ等が、捕捉粒子数に与える影響についても調べ、シンクロトロンに入射後、周回中の空間電荷の効果が最も大きいことを報告した。これまでは、計算を簡単にするため空間電荷の大きさが少し過大評価となる方向、すなわち捕捉粒子数について厳しめになる方向で計算をしていた。今回、シンクロトロン周回中のイオンビームの軌道計算のやり方を一部変更して、空間電荷効果の評価を見直した。その結果、最終捕捉粒子数が20~30%増加することが確かめられた。今後、発生ビームのパラメータリサーチを行うとともに、Beam Transportの最適化を進めていく。
 
10:30-12:30 
FRPP10
p.698
量子メスに向けた高エネルギービーム輸送系及び回転ガントリーの光学設計
Optics design of high energy beam transport and rotating-gantry for quantum scalpel

○阿部 康志,岩田 佳之,水島 康太,浦田 昌身,野田 悦夫,白井 敏之(量研機構 放医研),藤本 哲也(加速器エンジニアリング)
○Yasushi Abe, Yoshiyuki Iwata, Kota Mizushima, Masami Urata, Etsuo Noda, Toshiyuki Shirai (QST), Tetsuya Fujimoto (AEC)
 
現在、国内で普及している重粒子線治療装置の敷地面積は非常に大きく、導入コストも大きい。そこで量子科学技術研究開発機構では超伝導電磁石の技術を利用したシンクロトロンの小型化や高強度レーザー技術を用いた加速入射器により既存の病院施設に設置できるサイズである次世代の小型重粒子治療装置「量子メス」の研究開発を進めている。量子メスの実現にあたり、入射器・シンクロトロンの小型化と共に加速器出口から照射エリアまでビーム輸送系(高エネルギービーム輸送系:HEBT)を短縮することが敷地面積を小さくするにあたり重要課題となる。本研究では回転ガントリーを採用した場合における回転ガントリー入口までのHEBT及び回転ガントリーの輸送系について検討を行った。 量子メスにおける治療では200段階以上のエネルギーのビームがシンクロトロンから供給され最大エネルギーは430 MeV/u、最低エネルギーは56 MeV/uである。HEBT及び回転ガントリーはすべての段数のビームエネルギーに対して最適な光学条件を満たす必要がある。本研究ではこの2つのエネルギー条件においてHEBT及び回転ガントリーの光学設計を行い、敷地面積の縮小化について検討を行った。本研究ではその現状について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP11

電子線加速器によるリヒテンベルグ像製作方法
Method of making Lichtenberg figure by electron beam accelerator
○森川 祐,本田 洋介(KEK),小柴 裕也,大塚 誠也,鷲尾 方一(早稲田大学)
○Yu Morikawa, Yosuke Honda (KEK), Yuya Koshiba, Seiya Otsuka, Masakazu Washio (Waseda University)
 
絶縁体材料中の高電圧放電により生じるツリー状の放電模様をリヒテンベルグ像と呼ぶ。自然界においては雷がリヒテンベルグ像に該当するが、加速器を用いれば人工的にもリヒテンベルグ像を製作できる。リヒテンベルグ像は放電現象の理解にも役立つが、その美しい放電模様からアート作品としても人気がある。そこで、早稲田大学の小型電子加速器を用いてアクリル中でのリヒテンベルグ像の製作試験を行った。この試験ではリヒテンベル像の製作に成功し、必要な照射電荷量や製作される放電パターンの理解が進んだ。今回、このリヒテンベルグ像製作試験の内容と結果、そこから得られた知見について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP12

産総研での小型中性子源用電子加速器の開発状況
Current status of the development an electron accelerator for a compact neutron source at AIST
○オローク ブライアン,藤原 健(産業技術総合研究所、新構造材料技術研究組合),古川 和朗(高エネルギー加速器研究機構),古坂 道弘(新構造材料技術研究組合),林崎 規託(産業技術総合研究所、新構造材料技術研究組合、東京工業大学),堀 利彦(新構造材料技術研究組合),加藤 英俊,木野 幸一,黒田 隆之助,満汐 孝治(産業技術総合研究所、新構造材料技術研究組合),室賀 岳海(新構造材料技術研究組合),濁川 和幸,帯名 崇(高エネルギー加速器研究機構),大島 永康,小川 博嗣,佐藤 大輔,清 紀弘,鈴木 良一,田中 真人(産業技術総合研究所、新構造材料技術研究組合),友田 陽(新構造材料技術研究組合),豊川 弘之,渡津 章(産業技術総合研究所、新構造材料技術研究組合)
○Brian Orourke, Takeshi Fujiwara (AIST, ISMA), Kazuro Furukawa (KEK), Michihiro Furusaka (ISMA), Noriyosu Hayashizaki (AIST, ISMA, Tokyo. Inst. Tech.), Toshihiko Hori (ISMA), Hidetoshi Kato, Koichi Kino, Ryunosuke Kuroda, Koji Michishio (AIST, ISMA), Takemi Muroga (ISMA), Kazuyuki Nigorikawa, Takashi Obina (KEK), Nagayasu Oshima, Hiroshi Ogawa, Daisuke Sato, Norihiro Sei, Ryoichi Suzuki, Masahiro Tanaka (AIST, ISMA), Yu Tomota (ISMA), Hiroyuki Toyokawa, Akira Watazu (AIST, ISMA)
 
新構造材料技術研究組合(ISMA)では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「革新的新構造材料等研究開発」の下、産総研つくばセンターで、輸送機器の構造材料・部品などの非破壊分析向けの小型電子加速器中性子源を用いたコンパクトな中性子解析装置を構築し、最初の中性子ビーム発生に成功した[1]。本装置は、ブラッグエッジイメージングに適したパルス中性子ビームを発生させ、鉄鋼等構造材料開発やマルチマテリアル化接合技術開発に活用する[2]。 電子加速器は,Sバンド(2856 MHz)加速管3本を用いて、約40 MeVまで加速する。電子源には小型DC熱電子銃と高周波追加速方式を組合わせたSバンド小型電子源を採用し、ビーム電流は最大~250 mAを得る。電子ビーム(パルス構造:100 Hz以下, 10 s以下)を、水冷のタンタル製ターゲットに入射し、光核反応によって中性子を発生する。最大ビームパワー(~10 kW)で約2×1013 n/s の中性子発生量を予想される[2,3]。本発表では、開発した加速器の詳細とその運転状況を紹介する。 この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業革新的新構造材料等研究開発の結果により得られたものです。
 
10:30-12:30 
FRPP13
p.702
コンパクトERLにおける赤外FEL設置のためのビーム診断系改造
Beam diagnostic system modification for IR-FEL installation at the compact ERL

○高井 良太,内山 隆司,野上 隆史,谷本 育律,下ヶ橋 秀典,帯名 崇(高エネ研)
○Ryota Takai, Takashi Uchiyama, Takashi Nogami, Yasunori Tanimoto, Hidenori Sagehashi, Takashi Obina (KEK)
 
KEKで稼働中のコンパクトERL(cERL)では、次世代レーザー加工に向けた新規光源開発の一環として、中赤外領域の自由電子レーザー(FEL)が設置された。本発表では、このFEL設置に伴うビーム診断系の移設・新設・改造について報告する。ビーム位置モニター(BPM)に関しては、既存BPMの移設のみで総数の増減はなかったが、アンジュレータ区間のビーム位置精密測定用に市販の信号処理回路“Libera Spark EL”を3台導入した。スクリーンモニターは7台新設,2台廃止,3台移設となり、計5台の増設となった。特に、垂直方向の開口が7.8 mm,ビーム進行方向の長さが3 mと非常に狭長なアンジュレータ用チェンバーには、アンジュレータ磁場中でのビームプロファイルの変化を観測するため、ICF34ポートを利用した小型スクリーンモニターを3台設置した。また、アンジュレータ前後の2段式スクリーンモニターには、従来のCe:YAGシンチレータと切り替えられる形で赤外光導入/取り出し用の穴開き金コートミラーを取り付けた。他にもビームロスモニターやNDフィルターチェンジャーを増設し、2020年3月に行われたFELのファーストコミッショニングではその成功に大きく貢献した。
 
10:30-12:30 
FRPP14
p.707
サイクロトロンの位相プローブを用いたビーム強度測定
Measurement of beam intensity using a phase probe in a cyclotron

○柏木 啓次,宮脇 信正,倉島 俊(量研高崎)
○Hirotsugu Kashiwagi, Nobumasa Miyawaki, Satoshi Kurashima (QST Takasaki)
 
TIARA AVFサイクロトロンでは、材料・バイオ研究等のために様々な軽・重イオンビームを頻繁に切り替えて提供している。このビーム切り替えに伴うビーム入射調整を効率的に行うため、入射ビームのエミッタンスとサイクロトロンのアクセプタンスの計測に基づいた入射調整方法を開発している。 アクセプタンスの測定は、入射ビームの位相空間領域の微小領域をスリットで切り出し、その領域が加速されるか否かをサイクロトロン内部の電流測定プローブで測定する。この測定には数nA以下の測定精度が必要であるが、このプローブによる測定下限電流は約7nAであるため、測定する位相空間微小領域を広げてプローブで測定可能なビーム強度に調整する必要があり、低精度での測定のみが可能であった。この測定電流値の下限を制限しているのは主に水冷や加速RFによるノイズである。そこでより高精度な測定を可能にするため、通常ビーム位相の測定に用いている非水冷の位相プローブによるビーム強度測定を行った。この位相プローブは上下1対の平行平板電極であり、電極間隙を通過したビームによって誘起されたピックアップシグナルを測定に用いる。このシグナルには加速RF信号が重畳されるため、ビーム由来成分のみを測定するためにはロックインアンプを用いる。本発表ではスペクトラムアナライザによるビーム有無での周波数成分測定及びロックインアンプによるビーム強度測定の結果について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP15
p.710
TIARA AVF サイクロトロンの低エネルギービーム輸送系におけるビーム輸送効率改善の検討
Study on improvement of beam transport efficiency in the low energy beam transport system of the TIARA AVF cyclotron

○宮脇 信正,柏木 啓次,石岡 典子,倉島 俊(量研 高崎),福田 光宏(阪大RCNP)
○Nobumasa Miyawaki, Hirotsugu Kashiwagi, Noriko Ishioka, Satoshi Kurashima (QST Takasaki), Mitsuhiro Fukuda (RCNP, Osaka University)
 
量研高崎のTIARA AVFサイクロトロンでは、頻繁なビーム切り替えに伴うサイクロトロンへの効率的なビーム入射調整方法の開発とこれに伴ったビーム輸送効率の向上の検討を行うため、ペッパーポット型エミッタンスモニター(PPEM)を用いた測定を行っている。PPEMを設置したイオン源の分析電磁石直後から下流の既設エミッタンスモニターの区間は、他の区間と比較してビームの輸送効率が低い。この区間には4つのソレノイドレンズと偏向電磁石でビームを制御し、運転毎にビーム損失を最小化するようにこれらを調整する。低いビーム輸送効率の原因は、設計時に比べてイオン源でのビームエミッタンスの差があることや集束要素の配置が最適ではないこと、空間電荷効果の影響等が考えられる。そこで、PPEMの測定で得られたビームエミッタンスを基にビーム輸送計算を実施し、ビーム損失の原因の追究や新たな集束要素による輸送効率の改善の検討を行った。発表では、これらの検討によって得られた改善点について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP16
p.714
カーボンナノチューブワイヤーを用いたビームプロファイル測定試験(4)
Beam profile measurement using Carbon Nanotube Wires (4)

○宮尾 智章(KEK J-PARC)
○Tomoaki Miyao (KEK J-PARC)
 
J-PARCリニアックではピークビーム電流50mAで運転しており、3GeVシンクロトロンから1MW以上の出力を目指している。これを実現するには、ビームプロファイル測定を基にした電磁石のチューニングが重要であり、ビームからの負荷によるビーム診断系への影響を考慮する必要がある。この一つとして、鋼鉄の100倍以上の引張強度を持ち、電気伝導度は銅、銀などの金属以上の高さを有し、熱的に無酸素状態で3000℃まで耐えられる物質として知られているカーボンナノチューブ(CNT)に着目し、ビーム試験を実施している。本発表では、最大ピークビーム電流67mAでの3MeVの負水素イオン(H-)ビームでビームプロファイル測定を行い、問題なく測定できていることを確認した。さらに、ビームエネルギーの依存性に関する結果についても報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP17

J-PARC MRアボートラインプロファイルモニターの運用
Operation of a new multi-ribbon beam profile monitor in the beam abort line of J-PARC main ring
○佐藤 洋一(高エネ研・J-PARC),佐藤 究(東大理),橋本 義徳(高エネ研・J-PARC),酒井 浩志(三菱電機)
○Yoichi Sato (KEK/J-PARC), Kiwamu Sato (Univ. Tokyo), Yoshinori Hashimoto (KEK/J-PARC), Hiroshi Sakai (Mitsubishi Electric)
 
J-PARCメインリング(MR)のアボートラインにおいて新たに設置したマルチリボンプロファイルモニター(MRPM)の運用について述べる。MRでは速い取り出しシステムにより3 GeVでの入射から30 GeV加速までの任意のタイミングでアボートラインにビームを取り出すことが可能である。このアボートラインに新設したMRPMでのビームプロファイル測定により、MR大強度運転(現在の最大陽子数は、バンチ当たり陽子数3.3×10^13、8バンチのパルス)におけるビームエミッタンスの周回および加速中の推移が把握でき、ビーム調整パラメータの最適化が図られている。本報告では、このMRPMの運用状況と今後の展望について紹介する。
 
10:30-12:30 
FRPP19

J-PARC Main Ring の入射ビームのための OTRと蛍光を用いたワイドダイナミックレンジプロファイルモニターの開発
Development of a wide dynamic-range beam-profile monitor using OTR and fluorescence for Injected beams in J-PARC Main Ring
○橋本 義徳,佐藤 洋一,外山 毅(KEK/J-PARC),酒井 浩志(三菱電機システムサービス),堀 洋一郎(KEK/J-PARC),三橋 利行(KEK),手島 昌己,魚田 雅彦(KEK/J-PARC)
○Yoshinori Hashimoto, Yoichi Sato, Takeshi Toyama (KEK/J-PARC), Hiroshi Sakai (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Yoichiro Hori (KEK/J-PARC), Toshiyuki Mitsuhashi (KEK), Masaki Tejima, Masahiko Uota (KEK/J-PARC)
 
J-PARCメインリング (MR) の入射ビーム輸送ライン(3-50BT)で、OTRおよび蛍光スクリーンを使用した、6桁程度の広いダイナミックレンジを持つ2次元ビームプロファイルモニターが運用されている。さらに同様の1台をMR用として導入できれば、3-50BT用のモニターと併せて使用することにより、入射前後の大強度陽子ビームのコアとハローの診断を行うことができる。特にビームコリメータによるビームカット効果の測定とその情報は、大強度ビームの成形に有効である。MR用では、さらに入射後の周回ビーム20ターン程度のビームハローを含む2次元ビームプロファイル測定もビームダイナミクスからの要求である。本報告では、開発されているMR用のモニターの主にハードウエアとしての機能とその特徴について、3-50BT用モニターからの改良した点、測定光学系の特性、ビームインピーダンス試験結果などを報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP20
p.718
理研超伝導リニアック用ビームエネルギー・位置モニターのコミッショニング
Commissioning of the Beam energy position monitor system for the Superconducting RIKEN Heavy-ion Linac

○渡邉 環(理研),外山 毅(高エネ研),花村 幸篤(三菱電機システムサービス),今尾 浩士,内山 暁仁,大関 和貴,上垣外 修一,坂本 成彦,西 隆博,福西 暢尚,山田 一成,渡邉 裕(理研),小山 亮(住重加速器サービス),鴨志田 敦史(日本ナショナルインスツルメンツ)
○Tamaki Watanabe (RIKEN), Takeshi Toyama (KEK), Kotoku Hanamura (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.), Hiroshi Imao, Akito Uchiyama, Kazutaka Ozeki, Osamu Kamigaito, Naruhiko Sakamoto, Takahiro Nishi, Nobuhisa Fukunishi, Kazunari Yamada, Yutaka Watanabe (RIKEN), Ryo Koyama (SHI Accelerator Service Ltd.), Atsushi Kamoshida (National Instruments Japan Corporation)
 
理研重イオン線形加速器RILACの後段に、新規に理研超伝導線形加速器SRILACを建設し、重イオンビーム加速のコミッショニングに成功した。このSRILACは、ニホニウムに続く新超重元素発見や、医療用放射線同位元素の製造を目指す最先端の装置である。しかしながら、特有の問題として、脱ガスによる超伝導加速空洞のQ値の低下・表面抵抗変化、ビームロスを1W / m以下に抑える必要性、が挙げられる。そこで、放物線カットという電極形状のピックアップを用いたビームエネルギー・位置モニター(BEPM)の高感度な非破壊測定によってこの問題を解決し、重イオンビーム加速を達成した。このシステムでは、10 enA台の非常に微弱なビーム電流であっても測定が可能である。ビーム位置の計算には、ワイヤーの位置と各電極の出力の相関を測定する校正作業(マッピング) で得られたデータを用いている。また、2台のBEPMによる飛行時間(TOF)の測定から、ビームの位置情報と同時に、ビームエネルギー値も得られるという利点を有する。このビームエネルギー測定によって、SRILACの適切な高周波加速位相を決定している。さらに、ピックアップに当たったビームロスを素早く検出し、ビームを止めるオペレーションが可能になっている。今回の学会では、BEPMシステムの詳細、コミッショニングの結果とビームサイズ測定の検討について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP21
p.724
Geant4 へのレーザー・コンプトン散乱ガンマ線源の実装
Implementation of a Laser Compton Scattered gamma-ray source in Geant4

○羽島 良一(量研)
○Ryoichi Hajima (QST)
 
レーザー・コンプトン散乱(LCS)は、エネルギー可変かつ準単色のガンマ線ビームを生成する技術であり、基礎科学から産業分野まで幅広い利用が進んでいる。LCSガンマ線の利用では、単色化のためのコリメータ、照射する試料や検出器の配置を実験ごとに組み替えるため、これら配置を最適化するためのツールが必要である。本研究では、ガンマ線の発生から物質との相互作用、検出器のレスポンスまでを一貫してシミュレーションできる環境を実現するため、Geant4にLCSガンマ線源の実装を行った。入力ファイル(マクロファイル)にて電子ビーム、レーザービームのパラメータを指定すれば、これらパラメータを反映したLCSガンマ線を一次ビームとして生成するものである。電子とレーザーの衝突の物理過程を追いかけるのではなく、電子ビームとレーザービームの6次元分布とクライン仁科の式を使ったランダム・サンプリングからLCSガンマ線を生成するので、実用的な速度で一次ビームを生成できる。本研究は、科研費17H02818の成果である。
 
10:30-12:30 
FRPP22

高エネルギーレーザー航跡場加速のためのプラズマ光導波路の開発
Development of plasma optical channel for high energy laser wake-field acceleration
○酒井 泰雄,金 展,パサック ナビーン,入澤 明典,ジドコフ アレクゼイ,細貝 知直(阪大産研)
○Yasuo Sakai, Zhan Jin, Naveen Pathak, Akinori Irizawa, Alexei Zhidkov, Tomonao Hosokai (ISIR, Osaka univ.)
 
実用に耐える高エネルギーレーザー航跡場加速(LWFA)を実現するために,マルチレーザービーム駆動のステージングLWFAを提案し研究を行っている。現在, 理化学研究所播磨キャンパスの旧 SCSS トンネル内にはレーザー加速専用プラットフォームが構築中である。プラットフォームにて構築中のステージングレーザーLWFA実証器は電子ビーム入射部により生成される電子ビームをGeV級の高エネルギー化するための追加速部からなる。本発表ではその概要を紹介するとともに,発生される電子ビームの高エネルギー化の要となるプラズマ光導波路を用いた電子追加速部の開発状況を紹介する。 レーザーとプラズマの相互作用により駆動される航跡場の励起距離を最適に伸長することで,LWFAの加速利得を向上することができる。この際に重要になる技術が,プラズマで形成する光導波路である。本研究ではこれまでに大電流放電を利用して発生させた径方向に正の電子密度勾配をもつプラズマチャンネルの形成によって,集光強度1017 W/cm2オーダーの高強度レーザーパルスをレイリー長の約20倍伝搬することを確認している。このプラズマチャンネルの電子数密度,動力学を評価検討するために,プラズマの発光分光計測の等の診断を行っている。本講演では上記の診断結果も併せて報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP23
p.728
RCNP加速器制御系更新とEPICSの部分的導入
Updating of control system and partial introduction of EPICS at RCNP

○依田 哲彦,神田 浩樹,福田 光宏(大阪大学核物理研究センター)
○Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Mitsuhiro Fukuda (RCNP, Osaka Univ.)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)では現在、K140 AVFサイクロトロンの改造を中心としたサイクロトロン施設の更新が実施されている。AVFサイクロトロンの更新では、加速電極をシングルディーからツーディーに変更する改造、トリムコイルの新規入れ替え、軸入射ラインの新規製作、真空度向上を目指した真空箱改造と廃棄システムの刷新などが行われている。これに伴い、新しく導入される機器制御の追加や、老朽化の懸念がある約50年来使用されてきたリレー制御盤のPLC化などの制御システムの更新を実施している。この制御システム更新の機会に並行して、将来的にEPICSフレームワークの制御システムに移行することを見据えた、各種テストを実施している。現在SCADAシステムを基本としてサイクロトロンの制御が行われているが、EPICSに移行することにより将来、システム拡張をする際に作業が容易になることを期待している。また、ビームスポット画像などの多様な診断系データと運転パラメータのデータの組み合わせから、機械学習による運転の最適化を進められる仕組みを構築することも考慮している。講演ではこれらの制御系更新の現状について詳しく述べる。
 
10:30-12:30 
FRPP24
p.731
SACLA/SPring-8ビーム輸送系における新スクリーンモニタ制御システムへのGigEカメラの適用
Application of GigE Vision camera to new screen monitor control system for beam transport from SACLA to SPring-8

○清道 明男,出羽 英紀(高輝度光科学研究センター),福井 達,丸山 俊之(理化学研究所),石井 健一(スプリングエイトサービス)
○Akio Kiyomichi, Hideki Dewa (JASRI), Toru Fukui, Toshiyuki Maruyama (RIKEN), Kenichi Ishii (SES)
 
SPring-8のアップグレード計画の一環としてSACLA LinacをSPring-8 Storage Ringの入射器として使用するにあたり、SACLAからのビーム輸送系モニタシステムのアップグレードを進めている。スクリーンモニタ用のカメラではPoE給電対応のGigE Vision規格のカメラを採用した。GigE Visionカメラを導入するにあたり、オープンソースライブラリであるAravisを使用し、さまざまなベンダーに対応するカメラ制御ソフトウェアを開発した。さらに、PoE給電の制御ソフトウェアやトリガ分配用PCIeカードを開発し、スクリーンモニタ制御を行うためのコンパクトで一体的な制御システムをPCで構築した。撮像したビームプロファイル画像はDBを活用してメタ情報や保存場所などを管理し、GUIで表示やフィッティング処理を行う。またWeb上の簡易閲覧もできるようにした。 本発表ではGigEカメラのSPring-8制御フレームワークへ組み込みとSACLA/SPring-8ビーム輸送系における新スクリーンモニタへの適用、DBを活用したプロファイル画像管理システムについて報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP25
p.735
KEK電子陽電子入射器におけるArchiver Applianceの運用状況
Operation status of Archiver Appliance in KEK electron positron injector linac

○佐武 いつか,佐藤 政則(高エネルギー加速器研究機構),廣瀬 雅哉(関東情報サービス株式会社),佐々木 信哉(高エネルギー加速器研究機構),草野 史郎,工藤 拓弥(三菱電機システムサービス株式会社),王 迪(総研大)
○Itsuka Satake, Masanori Satoh (KEK), Masaya Hirose (KIS), Shinya Sasaki (KEK), Shiro Kusano, Takuya Kudou (MSC), Di Wang (SOKENDAI)
 
KEK電子陽電子入射器では,電子及び陽電子ビームをSuperKEKB電子,陽電子,PF,PF-ARの異なる4つのリングに供給している.KEK入射器は,2019年には4リング同時入射を実現し,SuperKEKB計画のPhase-IIIに向けてさらなるビーム性能の向上を目指して機器やソフトウェアのアップグレードがなされてきた. KEK入射器では,現在約10万点のデータをアーカイブシステムで記録している.アーカイブ対象の数とデータサイズは,今なお増加している.データ収集ソフトウェアとしては,従来からCSS archiverを運用しており,2019年11月からArchiver Applianceの運用を開始している.Archiver Applianceは,データ読み出しの高速化やディスク消費量の軽減などのメリットがある一方,導入当初からKEK入射器ネットワークにおけるBroadcastの増加やCAサーチの異常な動作などの問題がおきていた.調査のためには,SuperKEKBではすでに運用実績のある,データの可視化ツールであるKibanaを用いた.現在の運用状況も含めて,これらの調査及び対処について詳細を報告する.
 
10:30-12:30 
FRPP26
p.739
RILAC制御系へのArchiver Applianceの導入
Introduction of Archiver Appliance to RILAC control system

○内山 暁仁,込山 美咲(理研仁科センター)
○Akito Uchiyama, Misaki Komiyama (RIKEN Nishina Center)
 
理研仁科センターでは1986年よりリングサイクロトロンへの入射器として線形加速器RILACが運用されてきた。またRILACは入射器としてだけでなく、それ単独での運転も行っており、119番元素以上の超重元素探索実験を目的としたアップグレードとして超電導RILAC(SRILAC)と28GHz超電導イオン源が実装され、2020年より実験を開始する予定である。RILAC制御に必要な多くのコンポーネントはEPICSを基に構築されており、従来それらのアーカイバとして理研で開発されたRIBFCASが用いられてきた。一方でアーカイバの性能向上を目的としてRILACアップグレードに伴い、Archiver Applianceの導入を行った。導入に伴い、データアーカイブをArchiver Applianceで全て置き換えるのではなく、まずは新規に実装された制御コンポーネントに関してArchiver Applianceを用いてデータアーカイブし、既存システムとの併用する手法を検討した。本会議では既存システムと併用するために開発されたアーカイブ Viewerソフトウェアや運用手法、今後の展開について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP27
p.743
強化学習を用いたKEK Linac運転調整のための準備研究
R&D of the KEK Linac accelerator tuning based on reinforcement study

○久野 彰浩(阪市大理),岩崎 昌子(阪市大理, 阪市大南部研, 阪大RCNP, 阪大IDS),佐藤 政則(高エネルギー加速器研究機構, 総研大 加速器科学専攻),佐武 いつか(高エネルギー加速器研究機構),中島 悠太,武村 紀子,長原 一(阪大IDS),中野 貴志(阪大RCNP, 阪大IDS)
○Akihiro Hisano (Osaka City U.), Masako Iwasaki (Osaka City U., NITEP, Osaka U. RCNP, Osaka U. IDS), Masanori Satoh (KEK, SOKENDAI Department of Accelerator Science), Itsuka Satake (KEK), Yuta Nakashima, Noriko Takemura, Hajime Nagahara (Osaka U. IDS), Takashi Nakano (Osaka U. RCNP, Osaka U. IDS)
 
我々はKEK 入射加速器(Linac)における入射効率向上のため、機械学習を使用した運転調整システムの開発を行った。 加速器調整では種々のマシンパラメータを調節して高い入射効率が得られるように最適化している。マシンパラメータ調節に機械学習を導入することで、1.調整時間の高速化、2.調整性能の向上、が期待できる。Linacの加速器運転データ(制御パラメータ、モニタリングデータ、環境データ)を蓄積し,蓄積データをもとに開発を進めた。先行研究により,RF位相および補正磁石の調整方法の開発を行い,加速器運転パラメータと周囲の環境データの相関は,時間の経過とともに変化する傾向が明らかになった。したがって、環境駆動型機械学習(強化学習)の導入が必要である。本発表では、強化学習導入のための準備研究について現状報告を行う。
 
10:30-12:30 
FRPP28

Raspberry Pi を用いた加速器トンネル内の温度湿度測定
Temperature and humidity measurement in an accelerator tunnel using Raspberry Pi
○岩渕 周平(高エネルギー加速器研究機構)
○Syuhei Iwabuchi (KEK)
 
 高エネルギー加速器研究機構のSuperKEKBリングのトンネル内では様々な目的でビームパイプや付随する機器の温度を測定している。主に用いられているのは白金抵抗温度計であり、トンネル-地上間のケーブル口にケーブルを通し、地上部の制御棟にロガーを設置して温度を取得している。新たに白金抵抗温度計を設置するためにはロガーの増設、ケーブル口を経由するケーブルの敷設、計算機の追加が必要である。また、ケーブル口の物理的な容量にも限りがある。そこで、本発表では試験的に行ったRaspberry Piを用いた温度湿度計の設置について紹介する。簡易かつ安価に設置でき、ケーブル口の容量を圧迫せず、既存のトンネル内のネットワークを利用できる利点がある。また、併せてRaspberry Pi用のカメラモジュールを用いたトンネル内の機器の監視システム等についても紹介する。
 
10:30-12:30 
FRPP29
p.747
S’IS構造による加速空洞の高性能化に向けたNb3Sn薄膜の成膜プロセス最適化
Optimization of Nb3Sn thin film deposition process for high performance of accelerated cavity by S'IS structure

○永田 智啓,伊藤 亮平((株)アルバック),井藤 隼人,早野 仁司,久保 毅幸,佐伯 学行,片山 領(高エネ研),岩下 芳久(京大 化学研)
○Tomohiro Nagata, Ryohei Ito (ULVAC, Inc.), Hayato Ito, Hitoshi Hayano, Takayuki Kubo, Takayuki Saeki, Ryo Katayama (KEK), Yoshihisa Iwashita (Kyoto Univ. ICR)
 
近年、超伝導加速空洞内壁面上にさらに超伝導層(Superconductor layer)、または超伝導層に加え絶縁層(Insulator layer)を形成し、S’S構造またはS’IS構造とすることで、加速性能を飛躍的に向上させることができるという理論が提唱されている。この理論予測によれば、超伝導層材としてNb3Snを用いることで、薄膜構造を持たない従来のNb製加速空洞の2倍以上の加速性能向上が期待される。ただし、Nb3Sn薄膜は、Sn含有量の僅かな変化に対して敏感に超伝導特性が劣化するという報告例があり、またNb上もしくは絶縁層上のNb3Sn薄膜の高性能化・膜質向上に関する先行研究例も少ない。S’S構造またはS’IS構造を利用した超伝導加速空洞の実現と、理論実証および理論計算値に近い加速性能の達成のためには、高品質なNb3Sn薄膜の成膜手法・プロセスの確立が求められる。そこで本研究では、Nb上または絶縁層上に高品質なNb3Sn薄膜を形成することを目標とし、NbとSnをスパッタリング法で超多層積層した後にアニーリングを行うことで薄膜の高性能化・結晶性向上を目指した。作製した薄膜は、XRDによる結晶性解析やSEM/EDXによる組成分析・Tc測定による超伝導特性分析などによって評価した。本発表では、成膜手法や膜形成プロセスの詳細や、作製した薄膜の評価結果と考察、およびNb3Sn薄膜の結晶性向上のための技術的知見について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP30
p.752
新しいクリーン環境下でのKEK STF クライオモジュールの超伝導空洞交換作業
Replacement of superconducting cavity of KEK STF cryomodule by using new clean assembly systems

○山田 浩気,今田 信一(日本アドバンストテクノロジー),岡田 昭和(ケーバック),阪井 寛志,山本 康史,加古 永治(高エネ研)
○Hiroki Yamada, Shinichi Imada (NAT), Terukazu Okada (K-vac), Hiroshi Sakai, Yasuchika Yamamoto, Eiji Kako (KEK)
 
超伝導空洞の性能劣化の一つに粒子混入によるフィールドエミッションがある。 その問題を解決するために、スローポンプシステムの導入やクリーンブースの改善を行った。 今回STF-2クライオモジュールにインストールされ、著しい性能劣化を起こした空洞を交換した。 その作業の結果をこの論文で示す。
 
10:30-12:30 
FRPP31
p.758
STF-2加速器のクライオモジュールにおける空洞入替作業
Cavity exchange work for cryomodules in STF-2 accelerator

○山本 康史,加古 永治,梅森 健成,阪井 寛志,仲井 浩孝,小島 裕二,原 和文,本間 輝也,中西 功太,清水 洋孝,近藤 良也,木村 誠宏,荒木 栄,増澤 美佳,植木 竜一(高エネルギー加速器研究機構),岡田 昭和(株式会社ケーバック),今田 信一,山田 浩気,泰中 俊介,菊池 祐亮(日本アドバンストテクノロジー株式会社),早川 厚(関東情報サービス株式会社)
○Yasuchika Yamamoto, Eiji Kako, Kensei Umemori, Hiroshi Sakai, Hirotaka Nakai, Yuuji Kojima, Kazufumi Hara, Teruya Honma, Kota Nakanishi, Hirotaka Shimizu, Yoshinari Kondo, Nobuhiro Kimura, Sakae Araki, Mika Masuzawa, Ryuichi Ueki (High Energy Accelerator Research Organization), Terukazu Okada (K-VAC), Shinichi Imada, Hiroki Yamada, Shunsuke Tainaka, Yusuke Kikuchi (NAT), Atsushi Hayakawa (KIS)
 
2019年8月から2020年5月にかけてKEK内超伝導高周波試験施設(STF)棟にて、STF-2加速器に設置されたクライオモジュールに用いられている超伝導空洞の入れ替え作業が行われた。新たに入れ替わった空洞には、国際リニアコライダー(ILC)計画のためのコストダウンを目的とした特殊な熱処理(窒素インフュージョン)が行われている。2014年のクライオモジュール建設は製造会社により行われたが、今回は、4台の空洞が収納されたクライオモジュールを解体し、クリーンルームにて新たな空洞と入れ替え、その後、再組立て・ビームライン設置までをKEKスタッフとSTF関連業者とで行ったことが大きく異なる点である。2020年6月に空洞入替後初となる冷却試験を行い、周波数チューナー駆動や各Q値測定を実施する予定である。本講演では、STF初の空洞入替作業およびその後の冷却試験の詳細について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP33

第三高調波電圧誘導法によるNbTiN多層薄膜構造の超伝導特性の評価
EVALUATION OF SUPERCONDUCTING CHARACTERISTICS OF NbTiN MULTILAYER THIN-FILM STRUCTURE BY THE THIRD HARMONIC VOLTAGE METHOD
○佐伯 学行,片山 領,早野 仁司,井藤 隼人,久保 毅幸(KEK),岩下 芳久,頓宮 拓(京都大学),Rimmer Robert,Valente-Feliciano Anne-Marie,Hannon Fay(JLab)
○Takayuki Saeki, Ryo Katayama, Hitoshi Hayano, Hayato Ito, Takayuki Kubo (KEK), Yoshihisa Iwashita, Hiromu Tongu (Kyoto University), Robert Rimmer, Anne-marie Valente-feliciano, Fay Hannon (JLab)
 
In recent years, it has been pointed out that the maximum accelerating gradient of a superconducting RF cavity can be increased by coating the inner surface of the cavity with a multilayer thin-film structure consisting of alternating insulating and superconducting layers. In this structure, the principal parameter that limits the performance of the cavity is the critical magnetic field, or in other words the effective Hc1, at which vortices begin penetrating into the superconductor layer. We made samples that have a NbTiN/Insulator thin-film structure on a pure Nb substrate. We measured the effective Hc1 of the NbTiN/Insulator/Nb-structure samples by using the third-harmonic voltage method. This presentation reports details of the measurement results. 登録番号 10184 に同様の発表がありますが、発表者と要旨に漏れや間違いがあります。ご面倒をおかけしますが、登録番号 10184 はcancelとしてください。よろしくお願いいたします。
 
10:30-12:30 
FRPP34

超伝導多層薄膜の生成実験のためのクーポン装着型3-GHz単セル空洞の製作
Fabrication of coupon-detachable 3-GHz single-cell cavities for creation experiments of superconducting multi-layer thin-films.
○佐伯 学行(KEK),岩下 芳久,頓宮 拓(京都大学),早野 仁司,井藤 隼人,片山 領,久保 毅幸(KEK),伊藤 亮平,永田 智啓(ULVAC Inc.),Rimmer Robert,Hannon Fay,Valente-Feliciano Anne-Marie(JLab)
○Takayuki Saeki (KEK), Yoshihisa Iwashita, Hiromu Tongu (Kyoto University), Hitoshi Hayano, Hayato Ito, Ryo Katayama, Takayuki Kubo (KEK), Ryohei Ito, Tomohiro Nagata (ULVAC Inc.), Robert Rimmer, Fay Hannon, Anne-marie Valente-feliciano (JLab)
 
Recently, thin-film creation on the inside surface of Superconducting Radio-Frequency (SRF) cavity is hot topics because the thin-film might be thought to overcome the intrinsic limit of super-heating magnetic field (Hsh) of niobium material. In the film-creation process of cavity, it is important to keep the uniformity of film all over the inner surface of cavity. To investigate the film-quality at several positions of cavity, like beam-pipe, equator, and cell-wall, we fabricated the 3.0-GHz single-cell cavity with detachable coupons. The coupon disks are made of Cu or Nb, and these are set into the coupon cavities. The films created on the coupon disks can be analyzed in various methods to test the SRF characteristics. This presentation reports details of the fabrication of coupon-detachable 3-GHz superconducting single-cell cavities for experiments of multi-layer thin-film creation.登録番号 10186 に同様の発表がありますが、発表者名に漏れがあります。ご面倒をおかけしますが、登録番号 10186 はcancelとしてください。よろしくお願いいたします。
 
10:30-12:30 
FRPP35
p.763
高電圧サイリスタを用いたサイラトロン代替半導体スイッチの開発
Development of solid-state switching module using high voltage thyristor

○近藤 力(高輝度光科学研究センター/理研),稲垣 隆宏(理研/高輝度光科学研究センター),大竹 雄次(理研),森 均,徳地 明(パルスパワー技術研究所)
○Chikara Kondo (JASRI/RIKEN), Takahiro Inagaki (RIKEN/JASRI), Yuji Otake (RIKEN), Hitoshi Mori, Akira Tokuchi (PPJ)
 
線型加速器のクライストロン・モジュレータ電源などの大電力高電圧パルスを生成する機器では、スイッチング動作をサイラトロンなどの放電管で行っている。だが、放電管は、自己着火、長期的な不安定性、数万時間程度の寿命などの原理的な問題があり、加速器の安定運転への障害となってきた。これらの問題を解決するため、我々は高速・大電流の半導体素子による高電圧スイッチの開発を進めてきた。今回、4.7 kV耐圧の高速サイリスタ素子を用い、SACLAの絶縁油密封型モジュレータ電源で使用可能な半導体スイッチを開発した。このスイッチは、サイリスタ素子を14直列2並列に使い、定格電圧50kV, ピーク電流5kA, 繰り返し60ppsにて使用可能とした。また、外形サイズは、従来のサイラトロンや周辺回路と同程度の0.5m×0.3m×0.65mに収まるものとした。このとき、サイリスタをヒートシンクに密接させ、これを縦に連ねた構造とすることで、ヒートシンク内を絶縁油が通り抜け易くし、自然対流のみで素子を冷却できるものとした。製作したスイッチをSACLAで使用するモジュレータ電源の予備機に実装し、高電圧試験を行った。45kV, 3kA, 60ppsの条件にて動作試験を行い、ターンオン速度は約0.5μsとサイラトロンと同等であり、また発熱は約300Wとサイラトロンよりも良好な結果が得られた。
 
10:30-12:30 
FRPP36
p.768
サイラトロン代替用半導体スイッチの評価
Solid-state switch evaluation for thyratron replacement

○明本 光生,福田 茂樹,本間 博幸,川村 真人,夏井 拓也,中島 啓光,設楽 哲夫(高エネルギー加速器研究機構)
○Mitsuo Akemoto, Shigeki Fukuda, Hiroyuki Honma, Masato Kawamura, Takuya Natsui, Hiromitsu Nakajima, Tetsuo Shidara (KEK)
 
KEK電子・陽電子入射器は高周波源として60台の最大50 MW、パルス幅4 µs、繰り返し50ppsのマイクロ波を出力するSバンドクライストロンを使用している。それを駆動する電源としてサイラトロンを使用したPFNタイプのパルス電源が用いられている。本発表では、このサイラトロン代替用43kV, 4.3kA半導体スイッチの評価について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP38
p.771
スカンジノバ クライストロン用モジュレータのMAX-IV運転状況
The latest operation status of ScandiNova klystron modulator at MAX-IV

○湯城 磨(スカンジノバ・システムズ株式会社),Kumbaro Dionis(MAX IV Laboratory),Lindholm Mikael(スカンジノバ・システムズ株式会社)
○Osamu Yushiro (ScandiNova Systems K.K.), Dionis Kumbaro (MAX IV Laboratory), Mikael Lindholm (ScandiNova Systems K.K.)
 
The MAX-IV facility consists of a 3 GeV storage ring, a 1.5 GeV storage ring, and a linear accelerator which serves as a full-energy injector to the rings. ScandiNova Systems AB contracted all the RF units including klystrons for a 3 GeV linac. In this proceeding, we report the latest operational status of modulators at MAX-IV linac.
 
10:30-12:30 
FRPP39
p.775
SuperKEKBのためのSバンド球形空洞型パルス圧縮器の設計
Design of S-band spherical-cavity-type pulse compressor for SuperKEKB

○肥後 壽泰,惠郷 博文,東 保男(高エネルギー加速器研究機構),坂東 佑星(総研大),佐治 晃弘,野村 伊久磨,井原 功介((株)トヤマ),林 显彩,施 嘉儒(清華大学)
○Toshiyasu Higo, Hiroyasu Ego, Yasuo Higashi (KEK), Yusei Bando (Graduate University for Advanced Studies), Akihiro Saji, Ikuma Nomura, Kosuke Ihara (TOYAMA), Xiancai Lin, Jiaru Shi (Tsinghua University)
 
高周波パルス圧縮器は多くの加速器で加速エネルギーアップのために用いられている。KEK電子陽電子入射器ではKEKBのためにシリンダー型空洞2個を用いたSLED型のパルス圧縮器を1990年代初頭より用いてきたが、老朽化や予備不足が現実のものとなったため、現行圧縮器と置き換え可能なモデルの開発を始めた。再開発にあたり、高電力での安定性、量産への対応、小型軽量化、を目標として球形空洞型を採用した。このタイプは最初Xバンド帯でSLACのLCLS用に開発され、その後清華大学でSバンドでも開発されたが、今回の開発では上記の開発目標に沿って、電気、熱、機械設計にわたって、高電力安定性の向上、各種誤差解析に基づく製作方法の最適化、高い平均電力対応の冷却効率の上昇、確実で量産への見通しができる製造方法の適用、などの観点から検討し直した。本稿では、これら設計関連について述べ、更に試験機製作の初期段階にある実験結果について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP40
p.780
J-PARCクライストロン高圧電源における電圧ドループの影響解析
Analysis of Voltage Droop on J-PARC Klystron High Voltage Power Supply

○不破 康裕,小野 礼人,高柳 智弘,篠崎 信一(JAEA),溝端 仁志,方 志高(KEK)
○Yasuhiro Fuwa, Ayato Ono, Tomohiro Takayanagi, Shinichi Shinozaki (JAEA), Satoshi Mizobata, Zhigao Fang (KEK)
 
J-PARC リニアックではクライストロンを駆動する電源として直流高圧電源を使用している。これらの高圧電源は定格電圧 110 kV のアノード変調型電源で、1 台の直流高圧電源に対して最大で 4 本のクライストロンを接続して運用している。このように複数のクライストロンを 1 台の直流高圧電源で駆動しているため、ビームパルス後半において高圧電源のコンデンサバンクの電圧ドループが生じる。この影響でクライストロンの出力低下が起こり、安定なビーム加速を維持する上での課題となっている。また、現有の直流高圧電源の半数は J-PARC 建設当初に導入され、残りの半数はリニアック 400 MeV アップグレード時に導入されたものであり経年劣化が現れ始めている。今後、経年劣化が生じたコンデンサを部分的あるいは全面的に交換するなどの対策が必要になり、安定運転を維持するためにはコンデンサバンクの構成を変更した際の直流高圧電源の運転挙動を改めて評価する必要がある。本発表では、現状の構成での電圧ドループやそれによる電圧低下がクライストロンに与える影響、及びコンデンサバンクの構成を変更した際の影響を数値計算や実測結果を用いて評価し、今後の安定なビーム運転に必要な対策を論じる。
 
10:30-12:30 
FRPP41
p.783
銅粉を溶射したアルミ表面からの二次電子放出率とSuperKEKBでの実用可能性
Study on the secondary electron yield of aluminum surface thermal-sprayed with copper powder and its feasibility to the SuperKEKB beam pipes

○ヤウ ムーリー(総研大),末次 祐介,柴田 恭(総研大, KEK),久松 広美(KEK),石橋 拓弥(総研大, KEK),照井 真司(KEK),西殿 敏朗,地場 弘行(コミヤマエレクトロン株式会社)
○Mulee Yao (SOKENDAI), Yusuke Suetsugu, Kyo Shibata (SOKENDAI, KEK), Hiromi Hisamatsu (KEK), Takuya Ishibashi (SOKENDAI, KEK), Shinji Terui (KEK), Toshiro Nishidono, Hiroyuki Chiba (Komiyama Electron Corp.)
 
To investigate the effect of the copper thermal-sprayed coating on reducing the secondary electron yield (SEY) and verify its feasibility for accelerators as a countermeasure against the electron cloud effect (ECE), we coated the aluminum substrates (A6063) with copper powder by thermal spraying and measured their SEY, roughness, and outgassing rate. In addition, to establish the coating method for the beam pipes of the SuperKEKB positron ring, we also tested two different ways of the thermal spray to the cutting models of the extruded alumimum pipes of the SuperKEKB. Thus, we can observe the effects of spraying at different angles on SEY etc. In the study of the relationship between SEY and roughness, we found that SEY is more correlated with Sa√Spd, where Sa is arithmetical mean height and Spd is density of peaks, than Sdr (developed interfacial area ratio). Because Sa and Spd have lower resolution requirements for the microscope than Sdr, the experimental results obtained so far can be more consistent with the simulation results by using Sa√Spd.
 
10:30-12:30 
FRPP42
p.788
J-PARCハドロン実験施設におけるセミリモート型ベローズダクトの開発
Development of a bellows duct with a semi-remote handling system at J-PARC Hadron Facility

○渡邉 丈晃,上利 恵三,秋山 裕信,青木 和也,家入 正治,加藤 洋二,倉崎 るり,里 嘉典,澤田 真也,高橋 仁,田中 万博,豊田 晃久,広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 史真,森野 雄平,山野井 豊(KEK)
○Hiroaki Watanabe, Keizo Agari, Hironobu Akiyama, Kazuya Aoki, Masaharu Ieiri, Yohji Katoh, Ruri Kurasaki, Yoshinori Sato, Shinya Sawada, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Fumimasa Muto, Yuhei Morino, Yutaka Yamanoi (KEK)
 
J-PARCハドロン実験施設では、30GeVに加速された陽子ビームを使用して生成されるK中間子等の2次粒子を利用したバラエティーに富んだ原子核・素粒子実験を遂行している。2019年度には陽子ビームの1部をスロープ区間にて分岐して原子核実験等に利用するHigh-Pビームラインの建設が完了し、 2020年度にビーム取り出しに成功している。このビームの分岐にはランバートソン型電磁石を利用しており、 磁極へ陽子ビームの一部が必ず当たる光学となるため、分岐部近傍ではある程度の放射化が避けられない。そこで作業者の被ばくを低減する目的で、真空ダクト間の接続部で使用するセミリモート型ベローズダクトの開発を行った。 特に本開発においては、2.1度傾斜のあるスロープ区間であること、 ビーム分岐直後でかつ鉄遮蔽体などもあり使用可能な空間が限られていること、またクレーンによる鉛直方向への着脱となる取り合いからベローズの伸縮長を大きく取る必要性などの 制約や要求事項を満たせるよう設計検討を行った。 本発表では、セミリモート型ベローズダクトの設計および実機による試験結果などについて報告を行う。
 
10:30-12:30 
FRPP43
p.793
J-PARC MR新入射セプタム1の追加磁気シールドによる漏れ磁場軽減
The reduction of the leakage field of the new injection septum magnet 1 with the new magnetic shield in MR J-PARC

○芝田 達伸,松本 教之,石井 恒次,杉本 拓也,松本 浩(高エネ研)
○Tatsunobu Shibata, Noriyuki Matsumoto, Koji Ishii, Takuya Sugimoto, Hiroshi Matsumoto (KEK)
 
2016年J-PARCのMRに新しい入射用高磁場セプタムがインストールされた。従来使用されていた入射用高磁場セプタム(入射セプタム1)はMRのアップグレードのために交換する必要があった。そこで2016年に新しい高磁場用のセプタム電磁石に交換された。通称新入射セプタム1と呼ぶ。新入射セプタム1は導入以降初期不良を除いては安定した運転を続けている。一方残された課題は周回ラインへの漏れ磁場である。周回ダクトは純鉄製を使用し、そのダクトをさらに二重の鉄シールドで覆ってあるため周回ダクト内の漏れ磁場は±1Gauss以下になっている。しかし周回ダクトより上流の領域には最大10Gauss程度の磁場の領域が存在する事が分かっていた。それはビーム加速開始直後の0.2秒間で積分磁場の最大が0.2mTmであった。この値は従来よりも小さい値であり漏れ磁場軽減に成功したという結果である。最大10Gaussのその磁場は入射セプタム1の入射側に見えるむき出しのコイルが作る空間磁場である。そのため更なる漏れ磁場の軽減が可能であると考えた。そこで新しく漏れ磁場を設計し漏れ磁場の軽減を試みた。ただし重要な条件がある。周回ラインのすぐ上流にはQマグネットがあり、Qマグネットの漏れ磁場を磁気シールドで軽減するとビーム収束が変化してしまう。よってQマグネットの漏れ磁場には影響しないように磁気シールドを設計する必要があった。本発表では磁気シールドの製作と試験結果について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP44
p.798
J-PARCメインリング入射キッカー電磁石のための新しい終端抵抗器の性能評価
Performance of new termination resistors of J-PARC Main Ring injection kicker magnet

○杉本 拓也,石井 恒次,芝田 達伸,松本 浩(高エネ研)
○Takuya Sugimoto, Koji Ishii, Tatsunobu Shibata, Hiroshi Matsumoto (KEK)
 
J-PARCメインリングでは、バンチ当たりの粒子数を増やし、繰り返し周期を短縮する事により、早い取り出し方式による陽子ビーム出力を1.3MWへアップグレードする事を計画している。これまでの研究により、1.3MW運転では、パルス励磁電流による発熱と陽子ビームにより誘起される電流により、入射キッカー電磁石の終端抵抗器では最大で1kWの発熱が見積もられ、その結果、抵抗器の表面温度が350℃を超える事がわかったため、終端抵抗器の容量を増加する事が求められた。導電性セラミックで作られた抵抗体と電極金具との境界における放電を抑制するため、電極を抵抗体にろう付けしている。抵抗器の容量を増加するには、大口径の抵抗体を製作する必要があったが、ろう付け可能な材料で製作できる抵抗体の外径は30mmが上限であった。そのため、中空の抵抗体内部に熱伝導率が高い絶縁体を挿入する事で、抵抗体を間接的に冷却する手法を採用した。本報告では、試験設備における通電試験によって得られた、絶縁体の種類や形状の違いによる抵抗体表面温度の測定結果ならびに長時間連続運転における安定性について議論する。
 
10:30-12:30 
FRPP45
p.802
ビームコリメータ部のQSC電磁石用六軸架台の試作
Protoype of six-axis mount for QSC magnet in beam collimator area

○白形 政司(高エ研)
○Masashi Shirakata (KEK/J-PARC)
 
茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCでは、取り扱う陽子ビームの品質を上げるためにビームラインおよび加速器の各所にビームコリメータを設置している。ビームコリメータはビームのハロー成分を物理的に取り除く際、多量の高エネルギーγ線、中性子線を周囲に放射するため、鉄やコンクリートを使って適切に遮蔽を行う必要がある。MR行きビームを整形する3-50BTコリメータでは、MRの大強度化に向けて2010年に許容するビームロス量を450 Wから2 kWまで増やし、環境への放射線量増加にはビームライン全体を覆う鉄製の門型遮蔽を建築することで対応した。しかしながら、門型遮蔽の増築によってコリメータ部では作業者が立てる空間さえ無くなり、コリメータ本体およびコリメータ間に設置してある四極電磁石の保守作業性は大幅に低下した。特に四極電磁石のアラインメント作業は、今後残留放射線量が上昇すると、ほとんど不可能となる。そのため、遮蔽体の下に作業者が潜り込んだりする必要の無い、簡便な電磁石アラインメントを可能とする六軸架台を考案した。ここでは試作機の概要、操作性、安定性について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP46
p.807
g-2/EDM精密計測用超電導磁石内設置能動磁気遮蔽型ステアリング磁石の試設計
Trial design of a steering magnet to be placed in Muon Storage Magnet for g-2/EDM precision Measurement

○阿部 充志,萩津 透,齊藤 直人,佐々木 憲一,三部 勉,中山 久義(高エネ研),飯沼 裕美(茨城大)
○Mitsushi Abe, Toru Ogitsu, Naohito Saito, Ken-ichi Sasaki, Tsutomu Mibe, Hisayoshi Nakayama (KEK), Hiromi Iinuma (Ibaraki Univ.)
 
J-PARCではミューオンの磁気・電気モーメント高精度測定の準備を進めている。ミューオンを周回・蓄積するシリンダー状の領域(断面3cm幅、10cm高で直径66.6cm)に高磁場(3.0T)で超高均一磁場(磁場振幅±0.1ppm、均一度0.2ppm)を持つビーム蓄積用磁石(MBSM: Muon Beam Storage Magnet)を用いる。ミューオンを磁石上部から鉄yoke中の通過穴を通り、フリンジ磁場で軸方向の粒子速度を減速させ、キッカー磁石で蓄積領域にとどめる螺旋入射を行う。しかし、磁石には製作・組み立て誤差があり、設計磁場に誤差磁場が加わる。また、弱集束磁場コイルによる磁場も、螺旋入射にとっては誤差磁場となり得る。このような誤差磁場が入射に与える影響を補正するために、フリンジ磁場領域にBL積±0.001Tmのダイポール磁場を持つステアリング磁石(STM)を設置する計画である。このSTMは、鉄yoke温度上昇と周囲の構造物や鉄yokeとの磁気的相互作用による新たな誤差磁場を避けるために、能動遮蔽(AS: Active Shield)機能を持つSTM(ASSTM)となり、らせん入射に同期(25Hz)したパルス通電を行う。試設計を行い、どのような規模の磁石であるかを推定した。その結果、直径10cm、長さ17cm、発熱量1W以下の磁石を30A・120V電源で駆動でき、MBSM内に配置可能な見通しを得た。
 
10:30-12:30 
FRPP47
p.812
サイリスタのアバランシェモードを用いた高電圧•高電流パルス電源の開発[III]
Development of a high voltage and high current pulse generator using Thyristor Avalanche mode [III]

○内藤 孝,明本 光生(高エネルギー加速器研究機構)
○Takashi Naito, Mitsuo Akemoto (KEK)
 
電子銃などで使用する高圧パルス電源としてサイリスタのアバランシェモードを使った高電圧•高電流パルススイッチの開発を行っている。パルススイッチで生成した短パルスをパルストランスで昇圧することによって、パルスピーク電圧65kV、電流45A、パルス幅300ns(半値幅)を達成した。パルススイッチによる一次電流はマグネチックスイッチを入れることによってスイッチング速度は多少遅くなったが出力電圧11kV、ピーク電流1.4kA(8Ω負荷時)で動作した。本報告では、その開発状況について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP49
p.815
重粒子線小型シンクロトロン用超伝導電磁石の設計 II
Design of the superconducting magnet for a compact heavy-ion synchrotron II

○藤本 哲也(加速器エンジニアリング),岩田 佳之,水島 康太,阿部 康志,浦田 昌身,野田 悦夫,白井 敏之(量研機構放医研)
○Tetsuya Fujimoto (AEC), Yoshiyuki Iwata, Kota Mizushima, Yasushi Abe, Masami Urata, Etsuo Noda, Toshiyuki Shirai (QST)
 
普及型と呼ばれる重粒子線がん治療施設が国内に普及しつつあるが、専用の建屋を必要とする巨大で高コストな装置であり、これが更なる普及の妨げとなっている。そこで量研機構放医研では更なる装置の小型化、低コストを実現する量子メスの開発を進めている。量子メスプロジェクトの一つは超伝導技術を用いたシンクロトロンの開発である。現在シンクロトロン用超伝導電磁石の磁場設計の最適化を進めている。本シンクロトロンでは0.3Tから3.5 Tの磁場を連続的に10秒周期で上げ下げを実現する冷凍機伝導冷却方式を採用し、従来型シンクロトロンの半分以下の周長28 mで炭素イオンを4 MeV/uから最大430 MeV/uまで加速することを目標としている。超伝導線には開発中のφ1mm低損失型NbTiモノリス線の使用を想定し、二極磁場の起磁力を下げるため断面が楕円形状のコイル配置を考えた。またマルチターン入射のシミュレーションからアパーチャーサイズの見直しを行い、更にヨーク形状を工夫することで高磁場側での磁場安定度の改善を狙うとともに起磁力の低減を実現している。その他、ダイナミックアパーチャーを広く確保するための多極成分補正やコイルエンドに生じる六極磁場成分の低減に関する検討も行ったので本発表で報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP50
p.819
RCNPにおける高輝度陽子源の開発
Development of high-brightness proton source at RCNP

○大本 恭平(阪大RCNP),福田 光宏,依田 哲彦,神田 浩樹,中尾 政夫,安田 祐介,友野 大,鎌倉 恵太,森信 俊平,齋藤 高嶺,畑中 吉治,田村 仁志,永山 啓一,Koay Hui Wen,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,荘 浚謙,久松 万里子(大阪大学RCNP)
○Kyohei Omoto (RCNP, Osaka University), Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Hiroki Kanda, Masao Nakao, Yusuke Yasuda, Dai Tomono, Keita Kamakura, Shunpei Morinobu, Takane Saito, Kichiji Hatanaka, Hitoshi Tamura, Keiichi Nagayama, Hui Wen Koay, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Tsun Him Chong, Mariko Hisamatsu (Osaka University RCNP)
 
RCNP(大阪大学核物理研究センター)のAVFサイクロトロンは、現在アップグレードを実施中である。このアップグレードの主な目的の一つは、陽子ビームの強度の増強である。ビーム強度は現行の10倍を目指しており、この実現によって、ミューオン科学、中性子照射やRI製造などといった基礎科学から産業利用や医学利用などの研究が飛躍的に発展することが期待される。このAVFサイクロトロンのアップグレードの一環として、陽子源の高輝度大強度化を目指す。サイクロトロンのビーム増強のためには、ビーム強度の増強だけではなく、サイクロトロンの入射アクセプタンスにマッチした低エミッタンスの陽子ビームを陽子源から供給する必要がある。それを実現させるため、陽子源の加速電圧を従来の15kVから50kVに上げて、低エミッタンス化と高強度化を目指す。陽子源で生成される陽子ビームの強度の加速電圧依存性についてビーム軌道シミュレーションコードIGUNを用いて解析し、最適な陽子源の引き出し電極構造を決定する。この陽子源は、マイクロ波導入部、プラズマ生成部、イオン引き出しの電極部などから構成される。今回は、インピーダンス整合を取るためのマイクロ波の導波管、プラズマ生成のチェンバー、イオン引き出しのための電極の形状や構成をシミュレーションなどを用いて検討した。
 
10:30-12:30 
FRPP51
p.822
J-PARCハドロン実験施設における新型標的の運転状況とその解析
Operation status and analysis of the new production target at J-PARC hadron experimental facility

○齋藤 真慶(東北大学),青木 和也,上利 恵三,秋山 裕信,家入 正治,加藤 洋二,倉崎 るり,小松 雄哉,里 嘉典,澤田 真也,高橋 仁,田中 万博,豊田 晃久,広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 史真,森野 雄平,山野井 豊,渡邉 丈晃(高エネルギー加速器研究機構)
○Masayoshi Saito (Tohoku University), Kazuya Aoki, Keizo Agari, Hironobu Akiyama, Masaharu Ieiri, Yohji Katoh, Ruri Kurasaki, Yusuke Komatsu, Yoshinori Sato, Shinya Sawada, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Fumimasa Muto, Yuhei Morino, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (High Energy Accelerator Research Organization)
 
J-PARCハドロン実験施設ではこれまで設計値で50kWまでのビームパワーを想定した2次粒子生成標的を運用していた(50kW標的)。この標的は標的部の金、熱伝達部の銅、冷却水配管のステンレスをHIP接合した間接水冷標的であり、発熱状態による運転状況の確認を目的として主に標的部に多数の熱電対が組み込んであった。入射ビームのパワー増強に伴い2019年末にこの50kW標的の運用を終えると共に、新たに開発した95kWまでのビームを受けられる標的(95kW標的)への置き換えを完了させた。95kW標的では2台の50kW標的を上下に配置したような構造であり、ビームの半分が50kW標的1台相当分を照射する形になっている。これに伴い熱電対も上下2台分に増え以前より詳細な発熱分布が得られるようになった。この95kW標的導入後初めてのビーム照射運転が5月に行われた。本発表ではその最初のビーム運転により得られた結果について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP52
p.827
レーザーイオン源用静電イオンアナライザの高分解能化
Improvement of resolution of electrostatic ion analyzer for laser ion source

○松本 友樹,片根 弘登,宮﨑 翔,高橋 一匡,佐々木 徹,菊池 崇志(長岡技大)
○Yuki Matsumoto, Hiroto Katane, Kakeru Miyazaki, Kazumasa Takahashi, Toru Sasaki, Takashi Kikuchi (Nagaoka Univ. Tech.)
 
レーザーイオン源は固体ターゲットに高出力のパルスレーザーを集光して照射することで固体から直接プラズマを生成し,引き出し電圧によりイオンビームを供給するイオン源である。重イオン慣性核融合や粒子線医療を実現するための大電流イオンビームを供給できるイオン源としてレーザーイオン源が研究されている。レーザーイオン源からの出力に含まれるイオン種の特定には,2つの扇形電極間に発生する電場によってイオン軌道を曲げてTime-of-flight(TOF)法により分離して計測を行う静電イオンアナライザが用いられている。このアナライザで得られる信号波形はスペクトル状であり,質量分解能はマススペクトルのTOFの時間幅に依存する。レーザーイオン源ではレーザーのパワー密度を大きくすると固体表面の垂直方向に対するプラズマのドリフト速度も大きくなる。このため,質量電荷比が近く高速なイオンの場合,スペクトルの時間幅に対してイオン種間のTOFの差が小さくなり分離・観測が困難になる。そこで,静電イオンアナライザでのイオン軌道の数値計算を行い,高分解能化するための構造を検討した。本研究では,提案する静電イオンアナライザを実機で構成し,実験により検証した結果について議論する。
 
10:30-12:30 
FRPP53
p.831
マルチイオン照射のための小型ECRイオン源の設計
Design of compact ECR ion source for multi ion therapy

○村松 正幸(量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所),大内 章央,鈴木 太久,髙橋 勝之,白石 直浩,佐々野 利信(加速器エンジニアリング株式会社),水島 康太,稲庭 拓,岩田 佳之(量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所)
○Masayuki Muramatsu (QST-NIRS), Fumihisa Ouchi, Taku Suzuki, Katsuyuki Takahashi, Tadahiro Shiraishi, Toshinobu Sasano (AEC), Kota Mizushima, Taku Inaniwa, Yoshiyuki Iwata (QST-NIRS)
 
現在、放射線医学総合研究所(QST-NIRS)では数種類のイオンを標的に照射することで理想的なLETおよび線量分布を形成するマルチイオン照射を推進している。想定されるイオン種はHe、C、O、Neの4種類で、複数のイオン源を専有すれば比較的容易に切り替えが可能となるが、普及型の治療施設では、コストと運転・メンテナンスの観点から、永久磁石型のECRイオン源1台で対応することが望まれる。現在普及型施設で使用されている永久磁石型ECRイオン源のKeiシリーズでは、ネオンの多価イオン生成には十分な閉じ込め磁場が得られていないため、我々は新規イオン源の設計と既存のイオン源を用いた開発を行っている。これまでに既存の18 GHz ECRイオン源(NIRS-HEC)において、上記4種類のイオン生成試験を行い、同一の磁場分布で4種類のイオンの要求値を満たすことができている。この時のミラー磁場の値は1.14/0.475/0.9 T(Binj/Bmin/Bext)となっている。 今回は、NIRS-HECの磁場分布を永久磁石で再現させるためにPOISSON/SUPERFISHを用いて磁場計算を行い、磁石の形状と配置を決定した。また、プラズマチェンバーや真空箱など、イオン源全体の構造設計を行ったので、これらについて報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP54
p.834
マルチイオン供給用新規ECRイオン源の開発に向けた炭素イオン生成試験
Beam test of carbon ion production for development of new compact ECR ion source for multi ion therapy

○鈴木 太久,高橋 勝之,大内 章央,佐々野 利信,白石 直浩(加速器エンジニアリング(株)),村松 正幸,岩田 佳之(量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所)
○Taku Suzuki, Katsuyuki Takahashi, Fumihisa Ouchi, Toshinobu Sasano, Tadahiro Shiraishi (AEC), Masayuki Muramatsu, Yoshiyuki Iwata (QST-NIRS)
 
現在、放医研では数種類のイオンを標的に照射することで、がん治療における生物学的効果比が理想的なLETおよび線量分布を形成するマルチイオン照射を推進している。マルチイオン照射に用いられる各イオン種について、複数のイオン源を専有すれば比較的容易に切り替えが可能となるが、普及型の治療施設では、コストと運転・メンテナンスの観点から、1台のイオン源から複数のイオンビームを供給することが望ましい。そこで我々はマルチイオン照射で利用する4種イオン(He2+、C4+、O3+、Ne7+)に対応する、永久磁石型ECRイオン源の新規開発を行っている。これまでに既存のミラー電磁石型ECRイオン源(NIRS-HEC)で試験を行い、同一の磁場において4種イオンの要求値を満たすビーム電流が得られることを確認している。 現在、普及型治療施設において、治療供給以外に生物・物理実験にビームを利用したいと言う要求がある。また、入射器のコストダウンを考慮すると、イオン源において炭素以外のイオンを生成するとともに、治療供給時よりも大強度のビームが必要となる。そこで今回は、新規イオン源を治療以外の用途にも応用できるかを確認するために、NIRS-HECを用いて新規イオン源のミラー磁場を再現し、C4+及びC5+の生成を行う事とした。複数のガス種を用いてアフターグローで調整を行った結果、C4+においては800μA、C5+では500μAと実験供給を行うのに十分なビーム電流を得られる事が分かった。
 
10:30-12:30 
FRPP55
p.837
日大におけるアンジュレーター減磁対策のための放射線モニター開発
Development of a radiation monitor for undulator demagnetization at Nihon University.

○岡崎 大樹,黒澤 歩夢,早川 恭史,境 武志,住友 洋介,早川 建,野上 杏子,田中 俊成(日大理工)
○Hiroki Okazaki, Ayumu Kurosawa, Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai, Yoske Sumitomo, Ken Hayakawa, Kyoko Nogami, Toshinari Tanaka (CST, Nihon U.)
 
日本大学電子線利用研究施設には電子線形加速器で作られる電子ビームとアンジュレーターと光共振器から構成される共振器型自由電子レーザーがある。自由に波長を変えることのできる単色で中赤外のパルス光の生成を行い、多くの実験に利用されている。自由電子レーザーでは、アンジュレーターによって電子ビームが周期的な蛇行運動を行い、光と電子を多く相互作用させることによって、単色かつ短いパルス幅の光の生成が可能となる。しかし、20年程度にわたる電子ビーム由来の放射線によるダメージの蓄積により上流部の30%以上が減磁していることが判明し、令和元年度にアンジュレーター磁石の更新を行った。このため、更新された磁石を放射線によるダメージから保護をすることが急がれる。まずは、CsI(Tl)シンチレーターと光電子増倍管による放射線モニターを製作し、これをアンジュレーター上流部の減磁が確認されている箇所周辺に設置した。これによって、アンジュレーター付近の放射線モニタリングを行うことが可能になり、放射線から保護をするための運転調整や遮蔽の設置検討を行うことができる。本発表においては、モニターの開発、運転状況におけるモニター稼働状況や、遮蔽状況について報告を行う。
 
10:30-12:30 
FRPP56
p.840
国際リニアコライダー電子ビームドライブ方式陽電子源のターゲット周辺の施設設計
Facility Design for the positron production target station of ILC E-Driven positron source

○栗木 雅夫,リプタック ザカリー,高橋 徹(広大院先進理工),大森 恒彦,宮本 彰也(高エネ研素核研)
○Masao Kuriki, Zachary Liptak, Tohru Takahashi (Hiroshima University ADSE), Tsunehiko Omori, Akiya Miyamoto (KEK IPNS)
 
国際リニアコライダーは超伝導線形加速器による電子・陽電子コライダーであり、低いビーム電流で大きなルミノシティを実現するのが特徴である。一方で、ビームは衝突点を一回しか通過しないため、加速電流とビーム電流が等しく、大量の陽電子ビーム生成が必要となる。ILCでは電子ビームドライブ方式での陽電子生成を検討しているが、運転中、および運転停止後を通じて放射線の適切な遮蔽が必要となる。本発表では、とくに放射線レベルが高く、また交換などの定期的なメンテナンスが必要となるターゲット周辺における放射線防護、およびターゲットのメンテナンス手法についての検討結果を報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP57
p.845
J-PARC MRにおける専用ネットワーク装置とモバイルアプリによる防災システムの構築
Construction of disaster prevention system by dedicated network devices and mobile application in J-PARC MR

○川端 康夫,松田 浩朗,松元 和伸(飛島建設株式会社),田頭 茂明(関西大学),石井 恒次,山本 昇,別所 光太郎(高エネルギー加速器研究機構),吉岡 正和(岩手大学,東北大学)
○Yasuo Kawabata, Hiroaki Matsuda, Kazunobu Matsumoto (Tobishima Corporation), Shigeaki Tagashira (Kansai University), Koji Ishii, Noboru Yamamoto, Kotaro Bessho (KEK), Masakazu Yoshioka (Iwate Univ.,Tohoku Univ.)
 
大規模加速器トンネルにおける防災システムとして、作業者のリアルタイム位置情報、及び緊急時の双方向情報伝達等を実現するために、測位機能を有した防災システムの開発を進めてきた。2019年度に厚生労働省の科学研究費補助金に採択され、今後3年間でJ-PARC MRでの完全運用を目指している。2019年度はMRトンネル内全周1.57 kmに約50 m間隔で30か所のアクセスポイントを配線して設置、端末(スマートフォン、時計型ウェアラブル)及びサーバの準備とアプリのインストールを完了した。2020年度以降は作業者に対して利用を開始、フィードバックによる課題抽出、安定性・信頼性の高めるためのシステム冗長化を予定している。開発した防災システムは、発災時のみならず日常においても様々な情報発信や警告等に活用できる。MRでは頻繁に電磁石等の通電試験が行われるが、本防災アプリを活用することで、地上(電源棟)と地下(トンネル内)の情報共有サポートや、トンネル入域者に注意を促すようなサポートを考えている。またMRには残留放射線量が高いところがあるため、いつどこで被爆したかの見える化や高領域に近づいた際の自動警告等が、放射線測定と本防災アプリとの連動で可能と考えている。本稿ではこれらの研究開発についても言及する。
 
10:30-12:30 
FRPP58

cERL赤外自由電子レーザーにおける赤外出力光の診断
Diagnostics of infrared light from IR-FEL at cERL
○本田 洋介,加藤 龍好(KEK),川瀬 啓悟(QST),阪井 寛志(KEK)
○Yosuke Honda, Ryukou Kato (KEK), Keigo Kawase (QST), Hiroshi Sakai (KEK)
 
cERLでは、産業応用を念頭に赤外自由電子レーザーの開発を行っている。 FELのアンジュレータからの光は、ビーム軸上の穴あきミラーを用いて大気中に取り出される。 光の特性を評価する赤外光診断システムを構築した。 波長、偏光、プロファイル、強度絶対値について測定を行い、目標とした光出力を確認した。 また、反射光学系による光の発散の調整についても確立した。 本発表では赤外光診断システムとその診断結果について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP59
p.850
cERL自由電子レーザー用アンジュレータの磁場調整
Magnetic adjustment of the tandem undulators for the cERL-FEL

○土屋 公央,阿達 正浩,塩屋 達郎,江口 柊,加藤 龍好(KEK加速器)
○Kimichika Tsuchiya, Masahiro Adachi, Tatsuro Shioya, Shu Eguchi, Ryukou Kato (Accelerator Laboratory,KEK)
 
現在、高エネルギー加速器研究機構のエネルギー回収型ライナック(cERL)においては新たに赤外波長域の自由電子レーザーの開発研究が行われている。この計画では、各種樹脂材料の加工に有用な光源となる中赤外波長領域(波長10~20 μm )の波長可変な高出力レーザー光源を開発する事を目標とする。このために長さ3mの2台のアンジュレータを建設し、磁場調整の後、cERLリングに設置して運用を開始した。このアンジュレータは、最小ギャップが10mmと狭いもののアウトバキューム型を採用している。また波長変更のためには、通常行われる磁石列間のギャップ調整ではなく、下側磁石列を長手方向にスライドさせるadjustable phase undulator (APU)として使用する。これらの方式を採用したのは計画全体でのコストを抑制しつつ、自由電子レーザーの発振を目指すためである。このアンジュレータの開発に当たって重要な課題のひとつにアンジュレータ内部の電子ビームの輸送が挙げられる。cERLの電子ビームエネルギーは17.5MeVと低いために、アンジュレータの各極で生じる積分磁場の微小な誤差が積み重なることで電子軌道を大きく曲げてしまう。これは狭い真空チャンバーの中を3mに渡りビーム輸送するためにアンジュレータ磁場分布を十分に整えることが必要となる。本発表ではcERL自由電子レーザー用アンジュレータの磁場調整方法の詳細と磁場測定の結果、及びコミッショニングについて報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP60

コンパクトERLの高出力赤外FEL運転に向けた運動量アクセプタンス改善の検討
Study on improvement of momentum acceptance for high-power IR-FEL operation at cERL
○中村 典雄,谷本 育律,東 直,原田 健太郎,島田 美帆,上田 明,加藤 龍好(高エ研)
○Norio Nakamura, Yasunori Tanimoto, Nao Higashi, Kentaro Harada, Miho Shimada, Akira Ueda, Ryukou Kato (KEK)
 
コンパクトERL(cERL)の赤外FELの運転が6月から本格的に始まる予定である。FELの発振が効率的に起きるとビームの運動量広がりが格段に大きくなり、運動量分散を持つアーク部やダンプラインの運動量アクセプタンスを越えることでビームロスにつながる可能性がある。特にcERLのエネルギー回収の利点を活かした高い平均電流での運転を行ってFELの高出力化を目指す場合、放射線の観点から赤外FEL下流のcERLの運動量アクセプタンスを広げてビームロスを極力抑え込むことが要求される。本発表ではエネルギー回収運転でのcERLの運動量アクセプタンスとそれを改善するための検討について報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP61

クライオ・ハイブリッド・スタガードアレイアンジュレータの再評価
Reevaluation of Hybrid Staggered-Array Undulator in Cryogenic Operation
○金城 良太,田中 隆次(理研放射光センター)
○Ryota Kinjo, Takashi Tanaka (RIKEN SPring-8 Center)
 
1990年にStanfordのA. H. Hoらによって提案されたスタガードアレイアンジュレータは、電子ビーム軸方向のソレノイド磁場中に強磁性体を互い違い構造に配置することで交番磁場を生成する。2004年にAPSの佐々木によって提案されたハイブリッド・スタガードアレイアンジュレータは、強磁性体と反対向きの磁化を持つ永久磁石を組み合わせ、軸上磁場強度を数割程度増強するものである。この論文の中で佐々木は、理研の原らが2004年のクライオアンジュレータの論文中で提唱した77 Kで1.5 Tの残留磁束密度を持つPrFeB磁石と3.2 Tの飽和磁化を持つDy単結晶の組み合わせを、ハイブリッドスタガードアレイに適用した計算も行っており、同一材料のクライオアンジュレータより磁場が1割以上強いことを報告している。しかしながら、Dy単結晶は非常に高価であり、体積に比例して値段が上がると想定されるためハイブリッドスタガードアレイアンジュレータには適さない。そこで我々は、強磁性体としてパーメンジュールとDy単結晶を組み合わせ、Dy単結晶の体積を1割程度に減らしつつ95 %以上の軸上磁場を生成させる方法を提案する。本発表では、クライオアンジュレータより格段に磁気回路の組立が簡単であること、リング入射のためにアンジュレータ磁場をゼロにする手法、運転時のソレノイド磁場の影響を低減する手法についても報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP62
p.853
極短電子ビームによるコヒーレントスミス=パーセル放射の研究
Study of coherent Smith-Purcell radiation using ultra-short electron bunch

○山田 悠樹,日出 富士雄,柏木 茂,齊藤 寛峻,石附 勇人,寺田 健人,鹿又 健,柴田 晃太朗,高橋 健,南部 健一,三浦 禎雄,武藤 俊哉,濱 広幸(東北大電子光)
○Hiroki Yamada, Fujio Hinode, Shigeru Kashiwagi, Hirotoshi Saito, Yuto Ishizuki, Kento Terada, Ken Kanomata, Kotaro Shibata, Ken Takahashi, Kenichi Nanbu, Sadao Miura, Toshiya Muto, Hiroyuki Hama (ELPH, Tohoku Univ.)
 
現在東北大学電子光理学研究センターの試験加速器t-ACTSでは速度集群法による100fs以下の極短バンチの生成および極短電子バンチを用いたテラヘルツ光源の開発研究を行っている。今回、新たな放射方法としてスミス=パーセル放射によってコヒーレントテラヘルツ光を得る実験を行った。スミス=パーセル放射は周期的構造を持った金属表面近傍を電子が通過するときにおきる放射現象であり、放射角によって放射波長が規定される。これにより放射角度分布から周波数分布を得ることが出来る。そこでt-ACTSにおいて極短電子ビームによるコヒーレントスミス=パーセル放射の観測実験とFDTD計算との比較検討を行い、スミス=パーセル放射の特性測定と計算との比較を行った。この結果、約1.5THzのスミス=パーセル放射の観測に成功した。本学会では、スミス=パーセル放射スペクトル測定の結果などについて報告する。
 
10:30-12:30 
FRPP63
p.857
Lattice design for a future plan of UVSOR
Elham Salehi, ○Masahiro Katoh (UVSOR)
 
The lattice of UVSOR electron storage ring was upgraded twice. In 2003, the quadrupole magnets were replaced and rearranged to reduce the emittance and increase the number of the straight sections for undulators. In 2012, the bending magnets were replaced to reduce the emittance more. In this study, we explore a possibility to realize a diffraction limited light source in the VUV range. We investigate a new lattice for UVSOR which would give smaller emittance as keeping the present circumference. The latest results will be presented.
 
10:30-12:30 
FRPP64
p.860
あいちSRにおけるAPPLE-Ⅱ型アンジュレータ運転中のビーム不安定性とその抑制
Beam instability caused by apple-II undulator and its suppression at Aichi-SR

○保坂 将人(名大SR センター),木村 圭吾(名古屋大学),高嶋 圭史,真野 篤志,石田 孝司,郭 磊(名大SR センター),大熊 春夫(阪大RCNP),藤本 將輝(分子研UVSOR),加藤 政博(広島大学)
○Masahito Hosaka (NUSR ), Keigo Kimura (Nagoya Univ.), Yoshifumi Takashima, Atsushi Mano, Takashi Ishida, Lei Guo (NUSR), Haruo Ohkuma (RCNP), Masaki Fujimoto (UVSOR), Masahiro Katoh (Hiroshima Univ.)
 
あいちSRでは水平偏光、垂直偏光、円偏光の各偏光の準単色な放射光を得ることが可能なAPPLE-Ⅱ型アンジュレータが設置されている。アンジュレータを垂直偏光モードで運転した場合、蓄積電流値300mAにおいて、アンジュレータギャップが35mm以下になると水平方向の結合型ビーム不安定性が励起される現象が観測されている。これまでの研究により、アンジュレータが電子ビームのベータトロン振動の広がりに影響を与えることが明らかになった。そのことからアンジュレータによってランダウ減衰の効果が減ぜられることで不安定性が励起されるということが考えられた。そこでマルチワイア法によって、アンジュレータの多極磁場を補正し、不安定性の抑制を試みた。実験の結果、ベータトロン振動数広がりが回復し、さらに不安定性発生のしきい値となる最小アンジュレータギャップが5mm程度改善されることが確認された。
 
10:30-12:30 
FRPP65

SACLA線形加速器からSPring-8蓄積リングに入射する過程で生成される不純電子バンチ成分の除去について
Reduction of the impure electron bunch generated in an injection process from the SACLA linac to the SPring-8 storage ring
○渡川 和晃,前坂 比呂和(理研放射光科学研究センター),松原 伸一(高輝度光科学研究センター),稲垣 隆宏,原 徹,田中 均(理研放射光科学研究センター)
○Kazuaki Togawa, Hirokazu Maesaka (RIKEN SPring-8 Center), Shinichi Matsubara (JASRI), Takahiro Inagaki, Toru Hara, Hitoshi Tanaka (RIKEN SPring-8 Center)
 
SPring-8キャンパスでは、X線自由電子レーザー(XFEL)加速器SACLAをSPring-8蓄積リング(SR)の入射器として併用し、XFEL光の発生と低エミッタンスビームの入射をショット毎に振り分けて行う複合運転が始まっている。高い入射効率でSRにビームを蓄積することに成功したものの、少数ではあるが標的とするRFバケット以外のバケットにも電子が入射されて蓄積してしまう現象が発見された。また、これらの電子は18 ns離れた特定のバケットに局在化するといった奇妙な解析結果も得られた。この不純な電子バンチはバックグラウンド放射光の要因となるため、精度を要する放射光実験を行うためには可能な限り排除しなければならない。最近行った粒子シミュレーションにより、不純電子はSACLA加速器の低エネルギー入射部 (<40 MeV) において発生することが明らかとなった。また、この過程で発生する別の不純電子が電子銃の方向に逆流してカソードにダメージを与えている可能性があることも分かってきた。本研究会では、不純電子の発生メカニズムの解明とその解決方法について報告する予定である
 
10:30-12:30 
FRPP66
p.863
大口径Alternate Periodic Structure空洞によるILC陽電子源の設計研究
A design study of ILC positron source with Alternate Periodic Structure cavity

○金野 舜(広島大学先進理工)
○Shun Konno (Hiroshima University ADSE)
 
現在建設予定のILCは重心エネルギーが250GeVから1TeVの電子陽電子衝突型線形加速器(リニアコライダー)である。リニアコライダーでは一度入射したビームは再び使用することができないので、常に電子、陽電子を供給し続けなければならず、従来のリング型コライダーに比べて大量の電子、陽電子が必要となる。本研究では金属標的に電子ビームを照射することで金属内での対生成反応により陽電子を生成する電子ビームドライブ方式を検討する。金属標的の破壊を起こさないため、効率よく陽電子を捕獲することを目標とし、大口径のAlternate Periodic Structure空洞(APS空洞)を設計し、陽電子捕獲率を評価した。
 
10:30-12:30 
FRPP68
p.866
KEK 7 GeV 電子陽電子入射器の 20 万時間運転の達成
Achievement of 200,000 hours of operation at KEK 7-GeV electron positron injector linac

○古川 和朗,明本 光生,阿部 哲郎,荒川 大,荒木田 是夫,飯田 直子,池田 光男,岩瀬 広,惠郷 博文,榎本 收志,榎本 嘉範,大越 隆夫,大澤 哲,岡安 雄一,小川 雄二郎,柿原 和久,梶 裕志,片桐 広明,紙谷 琢哉,川村 真人,佐武 いつか ,佐藤 政則,設楽 哲夫,周 翔宇,白川 明広,杉村 仁志,諏訪田 剛,清宮 裕史,染谷 宏彦,竹中 たてる,田中 窓香,張 叡,邱 丰,峠 暢一,中島 啓光,夏井 拓也,東 保男,肥後 壽泰,本間 博幸,松下 英樹,松本 修二,松本 利広,三浦 孝子,三川 勝彦,宮原 房史,矢野 喜治,横山 和枝,吉田 光宏(KEK)
○Kazuro Furukawa, Mitsuo Akemoto, Tetsuo Abe, Dai Arakawa, Yoshio Arakida, Naoko Iida, Mitsuo Ikeda, Hiroshi Iwase, Hiroyasu Ego, Atsushi Enomoto, Yoshinori Enomoto, Takao Oogoe, Satoshi Ohsawa, Yuichi Okayasu, Yujiro Ogawa, Kazuhisa Kakihara, Hiroshi Kaji, Hiroaki Katagiri, Takuya Kamitani, Masato Kawamura, Itsuka Satake, Masanori Satoh, Tetsuo Shidara, Xiangyu Zhou, Akihiro Shirakawa, Hitoshi Sugimura, Tsuyoshi Suwada, Yuji Seimiya, Hirohiko Someya, Tateru Takenaka, Madoka Tanaka, Rui Zhang, Feng Qiu, Nobukazu Toge, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Yasuo Higashi, Toshiyasu Higo, Hiroyuki Honma, Hideki Matsushita, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Katsuhiko Mikawa, Fusashi Miyahara, Yoshiharu Yano, Kazue Yokoyama, Mitsuhiro Yoshida (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器は、1982年からフォトンファクトリー(PF)放射光実験施設への電子入射運転を始めた。以来、TRISTAN、PF-AR、KEKB、SuperKEKBへの入射を重ね、運転期間は39年目を迎えている。その総運転時間(加速管への高電界印加時間)について5月7日の午前8時50分03秒に20万時間が達成された。先輩方の積み上げて来られた運転成果を引き継いで、20万時間運転の節目を迎えられたことは、我々が大変誇りに思うところである。コロナ・ウィルスなどのために特に行事は予定されなかったが、ビデオ会議を通してコーヒーで乾杯し、祝うことができた。電子陽電子入射器は1978年に建設を始め、1982年にPFへの2.5GeV電子の入射を開始した。並行して1981年から陽電子生成用入射器を建設し、1986年にTRISTANへの2.5GeV電子・陽電子の入射を開始した。また、1992年から低速陽電子施設も運用を始めた。さらに、1998年からはKEKB電子陽電子非対称エネルギーコライダへの8GeV電子と3.5GeV電子の入射を行い、2バンチ入射や連続入射などのさまざまな加速器技術の開発が行われた。東日本大震災による大きな被災があったが、その後大幅な改造を経て2016年からはSuperKEKBへの7GeV電子と4GeV陽電子の入射を続けており、2019年からはPFとPF-AR両放射光施設を含めた4リング同時トップアップ入射運転により、飛躍的な実験効率向上に貢献している。
 
10:30-12:30 
FRPP69
p.871
SuperKEKB における陽電子入射ビームのエミッタンス保存
Emittance preservation of positron injection beam for SuperKEKB

○飯田 直子,菊池 光男,清宮 裕史,森 隆志,紙谷 琢哉,柿原 和久,大越 隆夫,荒木田 是夫,多和田 正文(高エネ研)
○Naoko Iida, Mitsuo Kikuchi, Yuji Seimiya, Takashi Mori, Takuya Kamitani, Kazuhisa Kakihara, Takao Oogoe, Yoshio Arakida, Masafumi Tawada (KEK)
 
SuperKEKB , a B-factory of electron and positron collider ring, aims for luminosity of 8x10 ^35/cm^2/sec which is about forty times the world's highest record. In order to achieve this luminosity, it is essential that not only the storage beams but also the injected beams have high charges and low emittances. The final required values for the positron injected beam from SuperKEKB are 4nC/bunch with invariant horizontal and vertical emittances of 100 μm, and 15 μm, respectively. The low emittance positron beam after damped through the 1.1 GeV-damping ring is returned to the injector LINAC via a bunch-compression-system, and a beam transport line having four arc sections with an energy-compression-system. It is not so easy to transport the beam to preserve emittances in order of 10μm. It is essential to control the dispersions generated by the arcs and chicanes at the compression cavities, and reduce x-y couplings form the arcs. Currently, the measured emittance of 1 nC beam has been reduced from 450 μm to 150 μm in horizontal, and from 70 μm to 30 μm in vertical. This paper summarizes the corrections made to preserve the emittance of the positron beam.
 
常設ポスター (9月2日-4日 ポスター会場)
10:30-15:10 
HGKP01
p.875
非破壊型遅いビーム取り出し装置の開発状況
Status of nondestructive device development for slow extraction

○下川 哲司(高エネ研),原田 寛之(日本原子力研究開発機構),佐藤 篤(日本アドバンスドテクノロジー),山本 風海(日本原子力研究開発機構)
○Tetsushi Shimogawa (KEK), Hiroyuki Harada (JAEA), Atsushi Sato (NAT), Kazami Yamamoto (JAEA)
 
粒子加速器で加速されたビームは、原子核・素粒子実験等の学術研究や放射線がん治療等の医療応用に利用されており、世界中で科学技術の基盤の一つとなっている。リング型粒子加速器に貯め込み、周回しながら加速されたビームは、「速い取り出し」と「遅い取り出し」のどちらかによって下流側の実験・治療施設へ供給されている。その「遅い取り出し」 では、周回するビームを広げながら、静電セプタムと呼ばれる装置に近づけ、徐々に削りながらビームを取り出している。既存の手法では、周回側と取り出し側の境界に設置している 電極やワイヤー等へのビームの衝突を原理的に避けることができず、取り出し効率の限界や、 装置の損傷や放射化によるビーム出力の制限が生じている。我々は、周回側と取り出し側の境界面に物質を設置しない「非破壊型」の遅い取り出し用の静電セプタムの提案した。本講演では、提案装置の試験用小型機の設計状況について発表する。
 
10:30-15:10 
HGKP02
p.879
誘電体導波管を用いたGeVスケール極短バンチ測定のためのテラヘルツ・デフレクター
THz deflector using dielectric-lined waveguide for ultra-short bunch measurement in GeV scale

○森 紳悟,吉田 光宏(KEK)
○Shingo Mori, Mitsuhiro Yoshida (KEK)
 
We propose an RF deflector in the THz regime to measure the bunch length of the ultrashort electron beam in GeV scale by using the dielectric-lined circular waveguide (DLW) structure. We show the design of the deflector and the possible resolution in the attosecond scale with a reasonable input pulse energy of THz. We investigate the short-range wakefield effect in the DLW to the time resolution using the analytical model based on the eigenmode calculation and show the scaling law in terms of the beam size, the bunch length. We found the ideal resolution of the deflector can reach order O(100) [as] with pulse energy of several mJ with a negligible wakefield effect. Example calculations are given for a structure with the vacuum hole radius of 0.5, 0.4, 0.3 [mm], the dielectric constant of 3.75, the operating frequency of 0.2, 0.4, 0.6 [THz], respectively.
 
10:30-15:10 
HGKP03
p.885
ミュオンマイクロビーム生成のためのフラットトップRF空洞の開発
Development of a flat-top RF system for muon microbeam production

○山崎 高幸,三宅 康博,永谷 幸則(KEK物構研ミュオン),安達 利一,吉田 光宏(KEK加速器),後藤 彰,大西 純一(理研仁科センター),熊田 幸生,楠岡 新也,恩田 昂,筒井 裕士(住友重機械)
○Takayuki Yamazaki, Yasuhiro Miyake, Yukinori Nagatani (KEK-IMSS-MSL), Toshikazu Adachi, Mitsuhiro Yoshida (KEK-ACCEL), Akira Goto, Jun-ichi Ohnishi (RIKEN Nishina Center), Yukio Kumata, Shinya Kusuoka, Takashi Onda, Hiroshi Tsutsui (SHI)
 
加速器で生成されたミュオンビームはエミッタンスが大きいため、通常ミュオンビーム施設においてはcmレベルまでしか集光できない。しかし、このミュオンビームを一旦ターゲット中で静止・再放出することで超低速化したミュオンを再加速すれば高輝度なミュオンビームが得られる。ミュオンの寿命は2.2μsと短いため、短時間で効率よく加速する必要があるが、再加速方式として小型AVFサイクロトロンを用いることで約1μsでミュオンを30keVから5MeVまで加速することが可能である。本研究では再加速後のミュオンビームの色収差を抑制するため、フラットトップRFシステムを導入するが、このフラットトップ空洞として従来にはない形状の1/2波長同軸共振器を開発する。本発表では、フラットトップ空洞の開発状況を報告する。
 
10:30-15:10 
HGKP04

高熱負荷加速器材料としての超耐熱高靭性タングステンの開発
Development of Toughened Fine-Grained Recrystallized Tungsten for high-heat-load device in accelerators
○牧村 俊助,栗下 裕明(KEK, J-PARC),新倉 高一,尾ノ井 正裕,鄭 憲採,石崎 博之,木村 惇郎(金属技研),猪爪 正志,松本 康裕(サンリック),阪本 辰顕,大藤 弘明(愛媛大),能登 裕之(核融合研)
○Shunsuke Makimura, Hiroaki Kurishita (KEK, J-PARC), Kouichi Niikura, Masahiro Onoi, Hun-chea Jung, Hiroyuki Ishizaki, Atsuo Kimura (MTC), Masashi Inotsume, Yasuhiro Matsumoto (Sunric), Tatsuaki Sakamoto, Hiroaki Ofuji (Ehime Univ.), Hiroyuki Noto (NIFS)
 
タングステンは、高い密度、高融点の観点から高熱負荷加速器材として期待されているが、融点(3420℃)より遥かに低い再結晶温度(1200℃)に晒された後に室温で脆くなる再結晶脆化や陽子・中性子照射によって脆くなる照射脆化といった致命的な欠点を持っており、ビームによる昇温・降温の繰り返しで破損してしまう。これらの脆化現象によって受け入れ可能なビーム強度は大きく制限されている。 東北大で開発された超耐熱高靭性タングステン合金は、1650℃に加熱後でも室温で延性を示すなど圧倒的に高い性能を持つことが既に実証されている。KEKでは金属技研株式会社、サンリック株式会社、愛媛大学、核融合研との共同研究によって、その技術を継承し、更に高性能なタングステン合金の開発を進めている。 本発表では、超耐熱高靭性タングステンの開発状況に関して報告する。
 
ポスターセッション① (9月2日 ポスター会場)
12:40-14:40 
WESP01
p.888
都市大タンデムの現状(2020年度)
Status of the TCU-Tandem (FY2020)

○羽倉 尚人(都市大)
○Naoto Hagura (TCU)
 
東京都市大学原子力研究所では、1.7MVペレトロン・タンデム加速器(都市大タンデム(TCU-Tandem))の運転を2018年5月開始した。本学には、2008年にスタートした理工学部・原子力安全工学科(定員45名)と、早稲田大学と共同運営する大学院・共同原子力専攻(定員15名×2大学)がある。国内でも数少ない原子力を冠する学科および専攻を有することから原子力・放射線分野の人材育成に尽力しており、本加速器システムは、そうした人材育成に資することを目的として、立ち上げられた。2019年度からは学科3年生を対象とした実験実習科目の一テーマとして、加速器実験を取り入れ、PIXE(Particle Induced X-ray Emission:荷電粒子励起X線分光)分析法による元素分析手法の実験を行っている。本タンデム加速器は、廃止措置中の研究用原子炉「武蔵工大炉」施設内に設置されているので、廃止措置に関連する研究テーマを立ち上げ、卒業論文や修士論文として実施している。2018年7月には第31回タンデム研究会、2019年11月には第35回PIXEシンポジウムを開催し、学内外の関係者に、本学におけるアクティビティの紹介と今後の連携についての呼びかけを行っている。2020年度中にはビームラインを拡張し、さらなるビーム応用研究が展開できる体制にする計画である。
 
12:40-14:40 
WESP02
p.890
QST高崎イオン照射施設(TIARA)の現状報告
Present Status of TIARA at QST

○宮脇 信正,千葉 敦也,吉田 健一,山田 圭介,湯山 貴裕,石坂 知久,横山 彰人,平野 貴美,細谷 青児,柏木 啓次,百合 庸介,石堀 郁夫,奥村 進,倉島 俊(量研 高崎)
○Nobumasa Miyawaki, Atsuya Chiba, Ken-ichi Yoshida, Keisuke Yamada, Takahiro Yuyama, Tomohisa Ishizaka, Akihito Yokoyama, Yoshimi Hirano, Seiji Hosoya, Hirotsugu Kashiwagi, Yosuke Yuri, Ikuo Ishibori, Susumu Okumura, Satoshi Kurashima (QST Takasaki)
 
量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設(TIARA)にはAVFサイクロトロン(K110)、3MVタンデム加速器、3MVシングルエンド加速器、400kVイオン注入装置の4台の加速器が設置されており、主に材料・バイオ技術の研究開発への利用のために、広範囲のエネルギー及び多様なイオン種のビームを提供している。サイクロトロンでは、2018年度に約10ヶ月の期間をかけて層間短絡が生じたメインコイルを更新し、2019年5月から利用運転を再開した。新メインコイルの起磁力は以前と同じであるが、寸法や上下コイル間の距離が若干異なるため、以前と同じ励磁電流でも加速平面における磁場強度がわずかに異なることが予想された。そこで、コイル更新前に主な加速条件での磁場強度を核磁気共鳴プローブによって計測し、更新後も同じ磁場強度が得られるように励磁電流を補正することで問題なくビーム取出しができた。タンデム加速器では、MeV級C60イオンマイクロビーム形成装置の開発を実施している。注入装置では、量子センサーへの展開が期待できる多量子ビット形成技術の開発に用いられるアデニンイオンの生成及び加速を可能にした。本発表では、これらの概要を述べるとともに、その他の保守・整備及び技術開発や施設の利用状況についても報告する。
 
12:40-14:40 
WESP03
p.893
理研RIBFにおけるリングサイクロトロンの運転報告
Status report of the operation of RIBF ring cyclotrons

石川 盛,福澤 聖児,濱仲 誠,小林 清志,小山 亮,仲村 武志,西田 稔,西村 誠,柴田 順翔,月居 憲俊,矢冨 一慎(住重加速器サービス),○須田 健嗣,段塚 知志,藤巻 正樹,藤縄 雅,福西 暢尚,長谷部 裕雄,日暮 祥英,池沢 英二,今尾 浩士,上垣外 修一,金井 保之,加瀬 昌之,木寺 正憲,込山 美咲,熊谷 桂子,真家 武士,長友 傑,中川 孝秀,中村 仁音,大西 純一,奥野 広樹,大関 和貴,坂本 成彦,内山 暁仁,渡部 秀,渡邉 環,渡邉 裕,山田 一成,山澤 秀行(理研仁科センター)
Shigeru Ishikawa, Seiji Fukuzawa, Makoto Hamanaka, Kiyoshi Kobayashi, Ryo Koyama, Takeshi Nakamura, Minoru Nishida, Makoto Nishimura, Junsho Shibata, Noritoshi Tsukiori, Kazuyoshi Yadomi (SHI Accelerator Service Ltd.), ○Kenji Suda, Tomoyuki Dantsuka, Masaki Fujimaki, Tadashi Fujinawa, Nobuhisa Fukunishi, Hiroo Hasebe, Yoshihide Higurashi, Eiji Ikezawa, Hiroshi Imao, Osamu Kamigaito, Yasuyuki Kanai, Masayuki Kase, Masanori Kidera, Misaki Komiyama, Keiko Kumagai, Takeshi Maie, Takashi Nagatomo, Takahide Nakagawa, Masato Nakamura, Jun-ichi Ohnishi, Hiroki Okuno, Kazutaka Ozeki, Naruhiko Sakamoto, Akito Uchiyama, Shu Watanabe, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe, Kazunari Yamada, Hideyuki Yamasawa (RIKEN Nishina Center)
 
理研RIBFにおける4台のリングサイクロトロン (RRC, fRC, IRC, SRC) の2019年8月から2020年7月までの運転状況を報告する。ビーム強度増強と安定供給に向けて、改造、ビーム調整、保守に取り組んでいる。本稿ではこれまでの加速ビームの実績、当該期間の運転時間と調整時間の統計、また発生した故障とその対処等について報告する。
 
12:40-14:40 
WESP04
p.898
京大複合研電子線型加速器施設(KURNS-LINAC)の現状
Status of KURNS-LINAC

○阿部 尚也,高橋 俊晴,堀 順一,窪田 卓見,高見 清(京大複合研)
○Naoya Abe, Toshiharu Takahashi, Jun-ichi Hori, Takumi Kubota, Kiyoshi Takami (KURNS)
 
京大複合研電子線型加速器施設(KURNS-LINAC)の2019年度の利用運転時間は2,494.7時間となり、6年連続で2,000時間を超える長時間の利用がなされた。利用ビーム別では、電子線が2018年度に引き続き。全利用時間の5割弱の1,100時間を超える利用がなされた。以下、中性子線、X線、放射光源と続く。前回の報告からの主な更新は、二次冷却水流量計の設置と加速管室ターゲット室の照明のLED化である。二次冷却水流量計の設置については、フィルター目詰まりによる流量低下の事前発見が目的である。冷却水配管を改造する時間がとれないことから、配管に外付けするだけで設置できる超音波流量計を選定した。屋内で放射線影響の少ない場所に設置することで、現在まで大きなトラブルなく使用できている。加速管室ターゲット室の照明のLED化については、従前の両室の照明は蛍光灯による照明であったが、放射線の影響を避けるために遠距離に設置している安定器の劣化により点灯しない箇所が徐々に増加していた。安定器の交換を試みたが、遠距離で使用できる安定器がなく、失敗に終わった。そのため、安定器が不要であるLED照明を導入することにした。放射線損傷による不具合が心配されたが、放射線量の強いターゲット室においても約1年の使用では不点灯を発生させることなく、現在まで使用できており、代替品として期待できる結果となっている。
 
12:40-14:40 
WESP05
p.901
阪大産研量子ビーム科学研究施設の現状報告
Status report of Research Laboratory for Quantum Beam Science, ISIR, Osaka University

○古川 和弥,誉田 義英,磯山 悟朗,岡田 宥平,徳地 明,吉田 陽一,楊 金峰,菅 晃一,神戸 正雄,細貝 知直(大阪大学 産業科学研究所)
○Kazuya Furukawa, Yoshihide Honda, Goro Isoyama, Yuhei Okada, Akira Tokuchi, Yoichi Yoshida, Jinfeng Yang, Koichi Kan, Masao Gohdo, Tomonao Hosokai (ISIR, Osaka University)
 
阪大産研量子ビーム科学研究施設はLバンド40 MeV電子ライナック、フォトカソードRF電子銃ライナック、Sバンド150 MeV電子ライナック、コバルト60γ線照射装置を有する放射線共同利用施設である。Lバンドライナックはナノ秒とサブピコ秒領域のパルスラジオリシスを用いた放射線化学の研究や、FELによる大強度テラヘルツ波の発生と利用に用いられている。昨年度は電子銃の暗電流の日和見的増加への対応、冷却装置と圧空動作ラインの補修と改良、FEL構成機器の更新、複数ビームポートへのビーム振り分けによる同時利用に向けた10 pps以上の繰り返しに対応するキッカー電磁石の製作等を行った。RF電子銃ライナックについては、ピコ秒レーザーや充電電源のトラブルに対処しながら、フェムト秒・アト秒パルスラジオリシスの研究、超短パルス電子ビーム発生とフェムト秒電子線パルスによるTHz光の発生等の研究を進めている。150 MeVのSバンドライナックはモジュレータの放電に伴うノイズやSF6リーク等のトラブルに対処しながら、低速陽電子ビーム生成と放電生成プラズマを用いたビームレンズの集束特性評価実験等に利用している。本発表では当施設の保守管理・開発の状況に関して報告する。
 
12:40-14:40 
WESP06
p.905
日本大学125MeV電子線形加速器および光源開発の現状報告
Status report of 125 MeV electron linac and light sourde development at Nihon University

○野上 杏子,早川 恭史,境 武志,住友 洋介,高橋 由美子,早川 建,田中 俊成(日大量科研),清 紀弘,小川 博嗣(産総研),古川 和朗,道園 真一郎,土屋 公央,吉田 光宏,諏訪田 剛,福田 茂樹,榎本 收志,大澤 哲,山本 樹,新冨 孝和(高エネ研)
○Kyoko Nogami, Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai, Yoske Sumitomo, Yumiko Takahashi, Ken Hayakawa, Toshinari Tanaka (LEBRA, Nihon University), Norihiro Sei, Hiroshi Ogawa (AIST), Kazuro Furukawa, Shinichiro Michizono, Kimichika Tsuchiya, Mitsuhiro Yoshida, Tsuyoshi Suwada, Shigeki Fukuda, Atsushi Enomoto, Satoshi Ohsawa, Shigeru Yamamoto, Takakazu Shintomi (KEK)
 
2019年度における日本大学電子線利用研究施設(LEBRA)125MeV電子線形加速器の稼働日数は175日、クライストロン通電時間は約1576時間、電子ビーム加速時間は約237時間であった。通電時間は前年度に比べ約25%増加したのに対して、電子ビーム加速時間は約34%減少した。これは昨年度から続くクライストロン1号機のRF出力窓での放電・出力低下対応およびアンジュレータ永久磁石・THz光源に関する更新工事などが原因である。特に、クライストロン1号機は2018年9月中旬からRF出力窓の放電が頻発したためエージングに長時間を要したが、所定のRFパルス幅・出力電力までほぼ回復している。また、例年よりビームラインなどの更新工事の回数も多く、これに伴う大気ばく露からの真空回復に時間がかかり、電子ビーム加速運転ができない期間が長くなったことも一因である。これらの状況について報告する。
 
12:40-14:40 
WESP07
p.909
ナノビーム方式においてクラブ・ウエストの導入を含めたSuperKEKB加速器の最近の運転状況
Highlights from SuperKEKB commissioning for early stage of nano-beam scheme and crab waist scheme

○大西 幸喜(KEK)
○Yukiyoshi Ohnishi (KEK)
 
The SuperKEKB electron-positron collider is being commissioned at KEK to study a new physics in the B-meson decays. The target luminosity is 40 times of the highest luminosity record at KEKB, 8 x 10^35 cm^-2s^-1. We have applied a novel "nano-beam scheme" to squeeze the beta function at the interaction point (IP) down to 1 mm in the vertical, 60 mm in the HER and 80 mm in the LER in the horizontal direction, respectively. The beta function at the IP is the smallest value for the existing circular colliders in the world. However, the design value is 0.3 mm which is about 1/3 of the achievement. Recently, we also applied a "crab waist scheme" which proposed by P. Raimondi et al. to improve the luminosity. We present the early stage of the commissioning of the nano-beam scheme as well as the crab waist scheme in Autumn run 2019 and Spring run 2020.
 
12:40-14:40 
WESP08

名古屋大学加速器中性子源施設NUANSの現状
Present status of Nagoya University Accelerator-driven Neutron Source (NUANS)
○鬼柳 善明,土田 一輝,釣田 幸雄,吉橋 幸子,本田 祥梧,渡辺 賢一,山崎 淳,瓜谷 章(名大院工),広田 克也,北口 雅暁,清水 裕彦(名大院理),宮島 司(高エネ研)
○Yoshiaki Kiyanagi, Kazuki Tsuchida, Yukio Tsurita, Sachiko Yoshihashi, Shogo Honda, Kenichi Watanabe, Atsushi Yamazaki, Akira Uritani, Katsuya Hirota, Masaaki Kitaguchi, Hirohiko Shimizu (Nagoya University), Tsukasa Miyajima (KEK)
 
名古屋大学では、ボロン中性子捕捉療法(BNCT)関連の研究を主たる目的とする中性子源施設を建設し、現在、ビーム実験も進めながら加速器パワーの増強をはかっている。加速器はIBA社の静電陽子加速器ダイナミトロンで定格は2.8MeV、15mAである。加速器ビームラインはストレート、第一、第二ビームランの三本で、ストレートは陽子ビームテスト用、第一ビームラインが、メインのBNCT用の照射実験を行うためのものであり、固体密封型のLiターゲットを中性子発生に用いている。第二ビームランは理工応用のためで、Beターゲットを用いており、0.75mA までの電流を受けられ、中性子イメージングテスト実験を実施している。第一ビームラインでは、水ファントム中の中性子測定を行い、軸方向熱中性子強度分布などを得た。その時のビーム電流から、定格電流に達した場合には予定通りの中性子強度が得られる見通しが得られている。また、可能な細胞照射実験も行い、ボロン薬剤の効果も観測できた。現在、加速電流を増加させるために、ビーム輸送系のシミュレーション、ビーム特性の詳細検討を行っている。また、ビームスキャニングテストとして1次元のスキャニングを行い、4mAの安定運転を達成している。さらなるビーム電流増加に向けて、ビーム調整とスキャニングの改善を進めて行く予定である。本発表では、加速器やBNCT用システムなど施設の現状について報告する。
 
12:40-14:40 
WESP09
p.915
ニュースバル放射光施設の現状
Present status of the NewSUBARU synchrotron light facility

○橋本 智,庄司 善彦,藤井 将(兵庫県立大 高度研),皆川 康幸,鍛治本 和幸,濱田 洋輔(高輝度センター)
○Satoshi Hashimoto, Yoshihiko Shoji, Hitoshi Fujii (LASTI, Univ. of Hyogo), Yasuyuki Minagawa, Kazuyuki Kajimoto, Yousuke Hamada (JASRI)
 
兵庫県立大学高度産業科学技術研究所の運用する、ニュースバル放射光施設加速器の現状を報告する。本施設は、周長118mの電子蓄積リングと9本の放射光ビームラインで構成されている。入射電子ビームはSPing-8線形加速器から供給されており、1GeV/300mA±0.2mAのTopUp 運転、および週に1、2日は1.5GeV/350mAの加速/Decay運転を行なっている。2019年度の加速器の運転ではトラブルがいくつかあり、利用運転停止時間は少し多い31時間程度になっている。トラブルの主な内容としては、偏向電磁石の電源の発振、バンプ電磁石のミスファイア、BLハッチのトラブルが発生している。リングは建設から21年が経過し、故障する機器が多くなってきており、順次更新を行なっていく方向である。今年3月にモノサイクルFEL実証実験のための新挿入光源が設置され、調整運転を開始した。また新入射器の設置・稼働に向けて理研・JASRIの支援・協力の下、クライストロンの移設が令和元年度に完了し、今年8月より入射器の設置工事が始まる予定である。
 
12:40-14:40 
WESP10
p.918
あいちSR光源加速器の現状
Present status of accelerators of Aichi Synchrotron Radiation Center

○高嶋 圭史,保坂 将人,郭 磊,石田 孝司(名大SRセンター),平山 英之,金木 公孝,鈴木 遥太(スプリングエイトサービス),大熊 春夫(阪大RCNP),加藤 政博(HiSOR),竹田 美和(あいちSR)
○Yoshifumi Takashima, Masahito Hosaka, Lei Guo, Takashi Ishida (Nagoya Univ.), Hideyuki Hirayama, Kimitaka Kaneki, Youta Suzuki (SES), Haruo Ohkuma (RCNP), Masahiro Katoh (HiSOR), Yoshikazu Takeda (AichiSR)
 
あいちシンクロトロン光センター(あいちSR)は、愛知県の科学技術政策である「知の拠点あいち」計画における中核施設として、中部地区を中心とする大学、研究機関、産業界、愛知県の協力によって建設され、あいちSRが運営してきた。2013年3月26日の供用開始から今年で8年目となる。 加速器は、50 MeV直線加速器、1.2 GeVブースターシンクロトロン、1.2 GeV蓄積リングから成っている。蓄積リングは周長72 m、ラティス構成はTriple-bendの4回対称であり、12台の偏向電磁石のうち、4台はピーク磁場5T、偏向角12°の超伝導電磁石、8台は磁場強度1.4 T、偏向角39°の常伝導電磁石である。直線部にはAPPLE-II型アンジュレータ1台が設置されている。 供用開始当時のシンクロトロン光ビームラインは6本であったが、現在では企業専用および大学によるビームラインそれぞれ1本を含む11本のビームラインが稼働している。2019年度における加速器の総運転時間は1942時間であり放射光ユーザーの利用時間は1317時間であった。計画されたユーザー利用運転時間に対して光源が運転できなかった時間は約25時間であり、稼働率は約98.2 %であった。 本発表では、あいちSR光源加速器の現状について報告する。
 
ポスターセッション② (9月3日 ポスター会場)
13:10-15:10 
THSP01
p.921
理研AVFサイクロトロン運転の現状報告
Status report on the operation of RIKEN AVF cyclotron

西田 稔(住重加速器サービス),○大関 和貴,後藤 彰,大西 純一(理研仁科センター),大城 幸光(東京大学原子核科学研究センター),福澤 聖児,濱仲 誠,石川 盛,小林 清志,小山 亮,仲村 武志,西村 誠,柴田 順翔,月居 憲俊,矢冨 一慎(住重加速器サービス),藤巻 正樹,福西 暢尚,長谷部 裕雄,日暮 祥英,今尾 浩士,上垣外 修一,加瀬 昌之,木寺 正憲,込山 美咲,熊谷 桂子,真家 武士,長友 傑,中川 孝秀,奥野 広樹,坂本 成彦,須田 健嗣,内山 暁仁,渡部 秀,渡邉 環,渡邉 裕,山田 一成(理研仁科センター),鎌倉 恵太,小高 康照(東京大学原子核科学研究センター)
Minoru Nishida (SHI Accelerator Service Ltd.), ○Kazutaka Ozeki, Akira Goto, Jun-ichi Ohnishi (RIKEN Nishina Center), Yukimitsu Ohshiro (Center for Nuclear Study, University of Tokyo), Seiji Fukuzawa, Makoto Hamanaka, Shigeru Ishikawa, Kiyoshi Kobayashi, Ryo Koyama, Takeshi Nakamura, Makoto Nishimura, Junsho Shibata, Noritoshi Tsukiori, Kazuyoshi Yadomi (SHI Accelerator Service Ltd.), Masaki Fujimaki, Nobuhisa Fukunishi, Hiroo Hasebe, Yoshihide Higurashi, Hiroshi Imao, Osamu Kamigaito, Masayuki Kase, Masanori Kidera, Misaki Komiyama, Keiko Kumagai, Takeshi Maie, Takashi Nagatomo, Takahide Nakagawa, Hiroki Okuno, Naruhiko Sakamoto, Kenji Suda, Akito Uchiyama, Shu Watanabe, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe, Kazunari Yamada (RIKEN Nishina Center), Keita Kamakura, Yasuteru Kotaka (Center for Nuclear Study, University of Tokyo)
 
理研AVFサイクロトロンの2019年8月から2020年7月までの運転状況について報告する。理研AVFサイクロトロンは、東京大学原子核科学研究センターのCRIBを用いた原子核実験、及びRI製造のための単独加速器として使用されると共に、理研リングサイクロトロン(RRC)の入射器としての役割も担っている。本稿ではこれまでの加速ビームの実績、当該期間の運転時間と調整時間の統計、装置の更新状況について報告する。
 
13:10-15:10 
THSP02
p.925
京都大学自由電子レーザ施設の現状
Present status of free electron laser facility at Kyoto University

○全 炳俊,紀井 俊輝,大垣 英明(京大エネ研)
○Heishun Zen, Toshiteru Kii, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.)
 
京都大学エネルギー理工学研究所では、エネルギー材料研究への応用を主な対象とし、S-band高周波電子銃を電子源とした小型で経済的な中赤外自由電子レーザ(KU-FEL)を開発し、中赤外波長可変レーザの発生とその利用研究を行っている。加えて、2018年度から中赤外自由電子レーザにより駆動するガス高次高調波アト秒光源の実現に向けた基盤技術研究を開始した。また、近年、光陰極高周波電子銃を電子源として用いたコヒーレントアンジュレータ放射光源の開発も行っている。本報告では、これら光源の現状について報告する。
 
13:10-15:10 
THSP03

東大ライナック・レーザー施設報告 2020
STATUS REPORT OF LINAC/LASER FACILITY OF UNIVERSITY OF TOKYO IN 2020
○橋本 英子,安見 厚志,土橋 克広,山下 真一,上坂 充(東大原子力専攻),草野 譲一,田辺 英二(アキュセラ)
○Eiko Hashimoto, Atsushi Yasumi, Katsuhiro Dobashi, Shinichi Yamashita, Mitsuru Uesaka (NPS, UTokyo), Joichi Kusano, Eiji Tanabe (Accuthera Inc.)
 
東大原子力専攻で有する加速器群の運転及び利用状況について報告する。 S バンドツインライナックは、は順調に研究・共同利用が実施されている。放射線化学における原子炉高温冷却水の基礎実験、イオンビームの生物への影響、極短量子現象の解明などに貢献している。X バンドライナック群は、小型・可搬可能である利点を利用して、産業・社会インフラ、特に実際の橋梁でのX 線撮像の実証試験が進展している。さらに、福島第一原子力発電所の炉内に存在する燃料デブリ塊に含まれる物質の分析研究も展開している。また、DNA 損傷のメカニズム解明を目的として、卓上用レーザーを用いたレーザー誘電体電子加速システムの開発を進めている。
 
13:10-15:10 
THSP04
p.929
KEK放射光源加速器PFリングとPF-ARの現状
PRESENT STATUS OF PF RING AND PF-AR AT KEK

○小林 幸則(KEK加速器研究施設)
○Yukinori Kobayashi (Accelerator Laboratory, KEK)
 
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光科学研究施設(フォトンファクトリー:PF)は、1982 年から今日まで大学共同利用を中心にした運営を行い、物質科学および生命科学を中心にした基礎科学の発展に貢献してきた。現在では、2.5GeV PFリングと6.5 GeV PFアドバンストリング(PF-AR)の2つの放射光専用リングを運転し、年間3,500 人を超えるユーザに対して紫外線からX線までの放射光を供給している。PFリング、PF-ARともに稼働から約40年経過しており、各種装置の老朽化が顕著になってきているが、随時対策を講じながら故障率1%台の安定な運転を維持している。2019年度は特に発熱が課題となっていたPF-AR高周波加速空洞の高次高調波減衰ケーブルの全数交換を実施した。また2020年度は、冷却水配管に課題を抱えているPFリングのセプタムII電磁石の更新を含めた新入射スキームへの改造を予定している。本年会では、このような老朽化対策を含めたPFリングとPF-ARにおける運転の現状について報告する。
 
13:10-15:10 
THSP05

UVSOR光源加速器の現状2020
Status of UVSOR-III synchrotron electron accelerator in 2020
○平 義隆,藤本 將輝,太田 紘志,林 憲志,山崎 潤一郎,水口 あき(分子研UVSOR),加藤 政博(分子研UVSOR/広大HiSOR)
○Yoshitaka Taira, Masaki Fujimoto, Hiroshi Ota, Kenji Hayashi, Jun-ichiro Yamazaki, Aki Minakuchi (UVSOR, IMS), Masahiro Katoh (UVSOR, IMS/HiSOR, Hiroshima University)
 
分⼦科学研究所の放射光源加速器UVSOR-IIIの最近の加速器及び光源開発の状況を報告する。UVSORは1983年のファーストライト以降、⾼度化を⽬的とした2度にわたる⼤規模改修を⾏い、エミッタンスが17 nm-radまで低下した。電⼦ビームエネルギー750 MeV、電流値300 mAのトップアップ運転でユーザーに定常的に真空紫外から軟X線領域の⾼輝度光及びガンマ線を供給している。光源開発研究では、所外の研究者との共同研究が活発であり、アンジュレータ光による光渦の発⽣やベクトルビームの発生、原子の量子状態制御、レーザーコンプトン散乱ガンマ線の利⽤法の開拓などの研究を進めている。これらUVSOR-IIIの現状を報告する。
 
13:10-15:10 
THSP06
p.934
東北大学電子光理学研究センター加速器施設の現状
Current status of accelerator facility in Research Center for Electron Photon Science, Tohoku University

○日出 富士雄,柏木 茂,鹿又 健,柴田 晃太朗,高橋 健,長澤 育郎,南部 健一,三浦 禎雄,武藤 俊哉,濱 広幸(東北大電子光)
○Fujio Hinode, Shigeru Kashiwagi, Ken Kanomata, Kotaro Shibata, Ken Takahashi, Ikuro Nagasawa, Kenichi Nanbu, Sadao Miura, Toshiya Muto, Hiroyuki Hama (ELPH, Tohoku Univ.)
 
東北大学電子光理学研究センターでは、1.3 GeV ブースター蓄積(BST)リングにおいて制動放射により生成した高エネルギーガンマ線を用いたクォーク・ハドロン核物理の研究をはじめ、60 MeV大強度電子線形加速器によるRI製造や放射核化学の研究、さらには50 MeV試験加速器 (t-ACTS) における超短パルス電子ビームの生成とこれによるコヒーレントテラヘルツ光源の開発研究などが進められている。RI製造用大強度線形加速器では長年の懸案であった旧型の熱電子銃陰極に対する代替品(EIMAC Y646B)の導入やターゲット照射システムの改善に取り組むことでビームパワーの更なる増強がなされている。また新たに極低運動量移行の電子弾性散乱による陽子半径測定を実施するためのビームラインの構築も進められており、間もなくコミッショニングが開始される予定となっている。これら加速器群の現状や今後の予定などについて報告する予定である。
 
13:10-15:10 
THSP07
p.937
KEK先端加速器施設(ATF)におけるナノビーム技術開発
Nanobeam R&D at the KEK Accelerator Test Facility (ATF)

○照沼 信浩,久保 浄,黒田 茂,奥木 敏行,内藤 孝,福田 将史,アリシェフ アレクサンダー,荒木 栄,森川 祐(KEK),阿部 優樹(総研大)
○Nobuhiro Terunuma, Kiyoshi Kubo, Shigeru Kuroda, Toshiyuki Okugi, Takashi Naito, Masafumi Fukuda, Alexander Aryshev, Sakae Araki, Yu Morikawa (KEK), Yuki Abe (SOKENDAI)
 
KEKの先端加速器試験施設(ATF)は、国際リニアコライダー(ILC)の衝突ビームの実現に必要な技術開発を進めている。国際コラボレーション体制の下で、ビーム最終収束システムの試験ビームライン(ATF2)を用いて、ILCでの衝突ビームサイズ7nm(垂直方向)に対応する37nmの極小ビームの実現と、それをナノメートルで位置制御するための技術の開発を進めている。  現在までに、ビーム収束点(仮想衝突点)において41 nmの達成を確認した。測定は、レーザー干渉縞を用いた逆コンプトン散乱の計測で行われ、得られる値はビームサイズの上限値である。目標に近い値が得られており、ナノメートルビームへの収束技術はほぼ確認できたといえる。一方、ビームサイズに対する明らかな電流依存性が確認されており、ウェイク場によるビームの挙動について研究を進めてきた。ビームサイズで数10から100nmの変化である。ILCはエネルギーが高くウェイク場の影響は限定的と評価されているが、その信頼性を上げるためにもATFでの研究は重要である。ATFのビームエネルギーは1.3 GeV、ILCの約1/100である。ビームパイプは内径24mmであり、その点からもWakefieldの影響が強い。ATF2ビームラインには、数10nmの位置分解能を有する空洞型BPMが並び、ナノメートルを測定する極小ビームモニターがある。ATFはWakefieldの研究に適した施設である。本ポスターではATFにおけるナノメートルビーム技術開発を紹介する。
 
13:10-15:10 
THSP08
p.942
九州大学加速器・ビーム応用科学センターの現状報告2020
Status report of center for accelerator and beam applied science of Kyushu University in 2020

○米村 祐次郎,有馬 秀彦,池田 伸夫,魚住 裕介,執行 信寛(九大工),森田 浩介,若狭 智嗣,寺西 高,坂口 聡志,郷 慎太郎,岩村 龍典(九大理),中山 久義,高木 昭(高エネ研),森 義治(京大)
○Yujiro Yonemura, Hidehiko Arima, Nobuo Ikeda, Yusuke Uozumi, Nobuhiro Shigyo (Faculty of Engineering, Kyushu University), Kosuke Morita, Tomotsugu Wakasa, Takashi Teranishi, Satoshi Sakaguchi, Shintaro Go, Tatsunori Iwamura (Faculty of Science, Kyushu University), Hisayoshi Nakayama, Akira Takagi (KEK), Yoshiharu Mori (Kyoto University)
 
九州大学加速器・ビーム応用科学センターでは、FFA加速器と8 MVタンデム静電型加速器を利用した加速器施設の整備が進められている。FFA加速器棟では、取り出しビーム強度増強のためのビーム実験と並行して、FFA加速器の性能向上を目的とした加速器要素技術の研究が行われている。タンデム加速器棟・実験棟では、タンデム加速器のビーム強度増強のための機器調整と本格的なビーム利用へ向けた実験室の整備が進められている。本発表では、FFA加速器とタンデム加速器の現在の整備状況について報告する。
 
13:10-15:10 
THSP09
p.944
RCNPサイクロトロン施設の現状
Status of the RCNP cyclotron facility

○神田 浩樹,福田 光宏,畑中 吉治,関 亮一,森信 俊平,齋藤 高嶺,依田 哲彦,友野 大,中尾 政夫,鎌倉 恵太,田村 仁志,永山 啓一,安田 裕介,原 周平,Koay Hui Wen,森田 泰之,武田 佳次朗,原 隆文,大本 恭平,荘 浚謙,久松 万里子(阪大RCNP)
○Hiroki Kanda, Mitsuhiro Fukuda, Kichiji Hatanaka, Ryoichi Seki, Shunpei Morinobu, Takane Saito, Tetsuhiko Yorita, Dai Tomono, Masao Nakao, Keita Kamakura, Hitoshi Tamura, Keiichi Nagayama, Yusuke Yasuda, Shuhei Hara, Hui Wen Koay, Yasuyuki Morita, Keijiro Takeda, Takafumi Hara, Kyohei Omoto, Tsun Him Chong, Mariko Hisamatsu (RCNP, Osaka University)
 
大阪大学核物理研究センター(RCNP)ではK140 AVFサイクロトロンとK400リングサイクロトロンを稼働しており、原子核物理学、加速器科学、情報科学、物性物理学、宇宙物理学、医学等に向けたビームの利用を推進している。ビーム強度をこれまでより10倍に増強する目的で、2019年2月に加速器運転を終了し、2020年度にかけてAVFサイクロトロン本体や付属機器類、施設の老朽化対策および性能の向上を目的とした集中メンテナンス、アップグレードを実施している。AVFサイクロトロンのアップグレードとしては大強度高品質一次ビームの供給を中心とし、近年需要の増えてきたRI製造能力の向上を図るとともに、ミューオンや中性子、RIビームといった二次粒子ビームおよび高分解能ビームの強度の増大を図る。施設のアップグレードとしては、大強度化するビームに対応した遮蔽増強や冷却能力の向上、RI排水施設の更新によるRI取扱い能力の向上を図る。 2019年度には施設関連の改修作業を終えた。AVFサイクロトロンのアップグレードは2020年度内に完了させるべく作業を進めており、2020年度末頃には更新作業と加速器のコミッショニングを実施しつつビーム供給を開始する予定である。この発表では、2019年度のサイクロトロン施設改修とAVFサイクロトロンアップグレードの現在の状況に関して報告を行う。
 
13:10-15:10 
THSP10

ILC計画実現に向けたKEK超伝導加速空洞製造施設(Cavity Fabrication Facility: CFF)の現状
The status of the superconducting Cavity Fabrication Facility (CFF) at KEK toward the realization of International Linear Collier (ILC)
○佐伯 学行,道前 武,江並 和宏,平木 雅彦,井上 均,加古 永治,道園 真一郎,文珠四郎 秀昭,梅森 健成,渡邉 勇一,山中 将(KEK)
○Takayuki Saeki, Takeshi Dohmae, Kazuhiro Enami, Masahiko Hiraki, Hitoshi Inoue, Eiji Kako, Shinichiro Michizono, Hideaki Monjushiro, Kensei Umemori, Yuichi Watanabe, Masashi Yamanaka (KEK)
 
We had constructed a facility for the fabrication-technology R&D of superconducting RF cavity at KEK from 2009 to 2011 toward the realization of International Linear Collier (ILC). The facility is simply called "Cavity Fabrication Facility (CFF)". In the facility, we had installed a deep-drawing machine, a half-cup trimming machine, an electron-beam welding machine, and a chemical treatment room in one place for efficient fabrication of cavities. We have been studying on the fabrication-technology of ILC-shape 9-cell cavity and the studies are focusing on the cost reduction with keeping high performance of cavity. The goal is the establishment of mass-production procedure for ILC. Recently, we fabricated several 9-cell cavities with the large-grain niobium material instead of fine-grain niobium material to reduce the material cost. And the high-pressure gas safety act of 9-cell cavity is studied for the installation of cavities in the ILC tunnel. This article reports the current status of the facility.
 
13:10-15:10 
THSP11
p.946
広島大学放射光科学研究センター光源加速器の現状
Present Status of HiSOR

○加藤 政博,島田 美帆,後藤 公徳(HiSOR)
○Masahiro Katoh, Miho Shimada, Kiminori Goto (HiSOR)
 
広島大学放射光科学研究センターは電子シンクロトロンHiSORを中核とする放射光の共同利用・共同研究拠点である。150MeVの入射用マイクロトロンと700MeVの小型シンクロトロン、2台のアンジュレータからなる光源加速器は、1996年の建設稼働以降、20年以上安定に稼働を続けている。共同利用のための年間のビームタイムは1500時間に及び、真空紫外・軟X線領域の放射光を国内外の物質・生命科学を中心とする研究者に供給している。最近では、より高輝度な放射光への要望の高まりを受け、将来計画の検討も進められている。本センター加速器群の現状と将来計画の検討状況を報告する。
 
ポスターセッション③ (9月4日 ポスター会場)
10:30-12:30 
FRSP01

KEKコンパクトERLの現状
Present status of the compact ERL at KEK
○加藤 龍好(KEK)
○Ryukou Kato (KEK)
 
エネルギー回収型線形加速器(Energy Recovery Linac, ERL)の小型実証機として建設されたコンパクトERL(cERL)は、昨年度から応用超伝導加速器センター(CASA)の管理下となり、超伝導加速器技術・ERL技術の産業応用を念頭に置いた運用を目指している。昨年度は、民間資金の導入によって建設された照射部ビームラインを用いて、4月・6月・10月に核医学用検査用のRI製造やアスファルトの長寿命化の基礎的な研究が行われた。またNEDOの競争的資金によって進められてきた中赤外FELの開発は、今年2月にFELシステムを構成する2台のアンジュレータのうち1台の設置が完了し、3月にはFEL発振の試験運転が行われた。その後、4月・5月で2台目のアンジュレータも設置され、6月にはFELシステム全体を使用した発振実験が予定されている。ここでは2019年度のコンパクトERLの保守・維持の状況と、ビーム運転により得られた研究成果の概略について報告する。
 
10:30-12:30 
FRSP02
p.948
原子力機構-東海タンデム加速器の現状
Status of JAEA-Tokai tandem accelerator

○松田 誠,田山 豪一,石崎 暢洋,株本 裕史,中村 暢彦,沓掛 健一,乙川 義憲,遊津 拓洋,松井 泰,阿部 信市(原子力機構)
○Makoto Matsuda, Hidekazu Tayama, Nobuhiro Ishizaki, Hiroshi Kabumoto, Masahiko Nakamura, Ken-ichi Kutsukake, Yoshinori Otokawa, Takuhiro Asozu, Yutaka Matsui, Shin-ichi Abe (JAEA)
 
原子力機構-東海タンデム加速器は最高加速電圧が約18MVの大型静電加速器であり、核物理、核化学、原子物理、材料照射などの分野に利用されている。昨年度の利用運転日数は118日であり、主として核物理実験に利用された。最高加速電圧は16.2MVであった。加速電圧が上がらない原因は、高電圧端子内の発電機を駆動するための絶縁シャフトが放電により放電痕ができ破損するなど絶縁性能が劣化したためであった。この事象はこれまで経験したことがなく、原因を探っているところである。 2019年度はSF6高圧ガス施設において貯槽の開放検査実施のため7月から約3ヵ月をの施設検査に充てることになり、7月から5か月の長期の運転停止(定期整備)となった。2020年度も同様の検査のため長期の整備となる予定である。発表では加速器の運転・整備状況およびビーム利用開発等について報告する。
 
10:30-12:30 
FRSP03
p.953
放医研サイクロトロン施設の現状報告
Status report of NIRS cyclotron facility

○北條 悟,涌井 崇志,片桐 健,杉浦 彰則(量研機構 放医研),岡田 高典,立川 裕士,山口 道晴(加速器エンジニアリング),白井 敏之(量研機構 放医研)
○Satoru Hojo, Takashi Wakui, Ken Katagiri, Akinori Sugiura (QST NIRS), Takanori Okada, Yuji Tachikawa, Michiharu Yamaguchi (AEC), Toshiyuki Shirai (QST NIRS)
 
量⼦科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所(放医研)のサイクロトロン施設では、放射性同位元素の製造を主⽬的とした2台のサイクロトロンが稼働している。1台は、1974年に運転を開始したNIRS-930サイクロトロンで、もう1台は、1994年に運転を開始したPET診断⽤核種製造専⽤のHM-18サイクロトロンである。NIRS-930は、放射性同位元素の製造以外に物理実験や⽣物実験等にも利⽤されており、2019年度の総運転時間は1688時間であった。故障による停⽌時間は32時間で、その主な要因としては、電⼒管⽤⾼圧電源の故障による停⽌があった。また、HM-18の総運転時間は1547時間であった。故障による停⽌時間はなく、順調な供給を行うことができた。本発表では、放医研のサイクロトロン施設の利⽤状況や運転状況等について報告する。
 
10:30-12:30 
FRSP04
p.956
秋田高専におけるS-band大電力高周波試験装置の開発と共同利用展開
Development of S-band RF source for high power test bench at NIT, Akita college

○坂本 文人,飛沢 瑠伽(秋田高専),黒田 隆之助(産総研),林崎 規託(東工大)
○Fumito Sakamoto, Ruka Tobisawa (NIT, Akita College), Ryunosuke Kuroda (AIST), Noriyosu Hayashizaki (Tokyo Institute of Technology)
 
東北地方においては,宮城から岩手に跨る国際リニアコライダーの誘致や山形大学医学部の重粒子治療センター,東北大学に建設中の東北放射光施設など,高エネルギー加速器の開発が近年活発に行われ,これに伴い産業界での加速器要素開発が盛んになっている.秋田県においても産官学が連携して加速器の要素技術開発に取り組み,加速器産業への参入を展開している.秋田高専と産総研では2020年より共同研究を締結し,加速器用先進高周波機器の開発を目指して小型大電力クライストロンを秋田高専に設置した.秋田県に隣接する他県には大電力高周波実験装置は存在しないため,これは東北地方における加速器用高周波機器の開発の発展に大きな効果が期待できる.また,秋田高専には超精密マシニングセンタも設置されていることから,高専における高周波機器の設計・製作・試験が完結できる.これにより,高専における加速器に関連した高度な知見と技術を有する人材育成にも極めて有効であると考えている.本発表では,秋田高専に設置した高周波試験装置とこれを用いた研究内容,および教育の状況について今後の展望も含めて報告する.
 
10:30-12:30 
FRSP05
p.958
若狭湾エネルギー研究センターシンクロトロンの現状
Preset Status of the Synchrotron at WERC

○栗田 哲郎,羽鳥 聡,山田 裕章,廣戸 慎,清水 雅也,山口 文良,淀瀬 雅夫,渕上 隆太,小田部 圭佑,古川 靖士(若エネ研),田村 文彦(J-PARC センター)
○Tetsuro Kurita, Satoshi Hatori, Akihiro Yamada, Shin Hiroto, Masaya Shimizu, Fumiyoshi Yamaguchi, Masao Yodose, Ryuta Fuchigami, Keisuke Otabe, Yasushi Furukawa (WERC), Fumihiko Tamura (J-PARC Center)
 
若狭湾エネルギー研究センター加速器施設(W-MAST)は、タンデム加速器および、それを入射器としたシンクロトロンによって、広範囲のエネルギーのイオンビーム(陽子 : 数MeV-200MeV; He, C : 数 MeV- 55MeV/u)を様々な実験に供給している。 現在、加速高周波制御のLLRFの開発に取り組んでいる。これまで、DSPとDDSおよびアナログ回路によって構成されていたものをFPGAを用いたデジタル制御に置き換える。2018-2019年にFPGA回路の設計および制作を行なった。2020年度は、動作試験および制御ソフトウェアの制作を進めている。 運転状況と合わせて、高周波制御系の開発状況を報告する。
 
10:30-12:30 
FRSP06
p.962
理研重イオンリニアックの現状報告
Present Status of RILAC

○池沢 英二(仁科加速器科学研究センター),小山田 和幸,大木 智則,山内 啓資,田村 匡史,遊佐 陽,金子 健太(住重加速器サービス株式会社),今尾 浩士,内山 暁仁,大関 和貴,坂本 成彦,須田 健嗣,長友 傑,西 隆博,藤巻 正樹,山田 一成,渡邉 環,渡邉 裕,上垣外 修一(仁科加速器科学研究センター)
○Eiji Ikezawa (RIKEN Nishina Center), Kazuyuki Oyamada, Tomonori Ohki, Hiromoto Yamauchi, Masashi Tamura, Akira Yusa, Kenta Kaneko (SHI Accelerator Service Ltd.), Hiroshi Imao, Akito Uchiyama, Kazutaka Ozeki, Naruhiko Sakamoto, Kenji Suda, Takashi Nagatomo, Takahiro Nishi, Masaki Fujimaki, Kazunari Yamada, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe, Osamu Kamigaito (RIKEN Nishina Center)
 
理研仁科加速器科学研究センターの理研重イオンリニアック(RILAC)は、1981年に 単独運転が開始され、今年で40年目を迎えた。1986年には後段の理研リングサイクロ トロン(RRC)のための入射器としての運転も開始し、2006年には理研RIビームファ クトリー(RIBF)の複合加速器ための入射器としての運転も開始した。 新たなビーム強度の増強として超伝導ECRイオン源(28GHz-SCECRIS)及び超伝導リニ アック(SRILAC)が2019年に導入された。2019年12月から2020年3月にかけて総合加 速試験運転が行われた。 本発表ではこの加速器の現状報告として、この10年間の運転状況、及びこの1年間に おける保守作業などについて報告する。
 
10:30-12:30 
FRSP07
p.965
筑波大学タンデム加速器施設の現状報告
Status report of the tandem accelerator complex at the University of Tsukuba

○笹 公和,石井 聡,高橋 努,大和 良広,田島 義一,松村 万寿美,森口 哲朗,上殿 明良(筑波大応用加速器)
○Kimikazu Sasa, Satoshi Ishii, Tsutomu Takahashi, Yoshihiro Yamato, Yoshikazu Tajima, Masumi Matsumura, Tetsuaki Moriguchi, Akira Uedono (UTTAC)
 
 筑波大学研究基盤総合センター応用加速器部門(UTTAC)では、6 MVタンデム加速器と1 MVタンデトロン加速器からなる複合タンデム加速器施設の維持管理と運用、および学内外との共同利用研究を推進している。6 MVタンデム加速器は、5台の負イオン源と12本のビームラインを有している。2019年度は学内課題11件、学外共用課題3件(成果専有課題1件を含む)が採択されており、112日間のマシンタイムを実施した。加速器稼働時間は1349.7時間であり、ビーム加速時間は1036.6時間であった。6 MVタンデム加速器の主な利用分野は、加速器質量分析(AMS)とマイクロビームを用いたイオンビーム分析(IBA)及びラムシフト型偏極負イオン源(PIS)からの偏極陽子ビームを用いた原子核実験などである。また、宇宙用素子の放射線耐性試験装置について本格的な運用を開始している。1 MVタンデトロン加速器については、2019年3月の加速器整備時に加速器本体のアライメントを実施した。アライメントの結果として、ビーム透過率が東日本大震災以前の状態より改善した。2019年度は、台風19号による浸水により、中性子用モニタリングポストと純水冷却水用チラーが破損した。この影響により、1MVタンデトロン加速器が1か月ほど稼働を停止した。なお、これらの故障した加速器周辺装置は、2020年度中の更新を予定している。本報告では、加速器の整備と運用状況およびビーム実験装置の開発状況について報告する。
 
10:30-12:30 
FRSP08
p.968
放医研HIMACの現状報告
Present status of HIMAC

○水島 康太,阿部 康志,稲庭 拓,岩田 佳之,浦田 昌身,片桐 健,北川 敦志,佐藤 眞二,高田 栄一,野田 悦夫,原 洋介,古川 卓司,村松 正幸,Lee Sung-Hyun,白井 敏之(量研/放医研),川島 祐洋,小林 千広,鈴木 太久,田久保 篤,中島 猛雄,藤本 哲也,若勇 充司(加速器エンジニアリング)
○Kota Mizushima, Yasushi Abe, Taku Inaniwa, Yoshiyuki Iwata, Masami Urata, Ken Katagiri, Atsushi Kitagawa, Shinji Sato, Eiichi Takada, Etsuo Noda, Yousuke Hara, Takuji Furukawa, Masayuki Muramatsu, Sung-hyun Lee, Toshiyuki Shirai (QST/NIRS), Masahiro Kawashima, Chihiro Kobayashi, Taku Suzuki, Atsushi Takubo, Takeo Nakajima, Tetsuya Fujimoto, Mitsuji Wakaisami (AEC)
 
放射線医学総合研究所(放医研)は、1993年に重粒子線がん治療用加速器HIMACを建設し、炭素イオンを用いた重粒子線がん治療を行ってきた。1994年の治療開始から今年で27年目を迎え、現在までの重粒子がん治療の登録患者数は延べ12000人以上となっている。2010年にはHIMACの既存施設に連結する形で新治療研究棟を建設し、複雑な腫瘍形状や治療期間中における腫瘍形状の変化にも対応可能な三次元スキャニング照射法を適用した治療を2011年から開始している。また、2017年からは超伝導電磁石を用いた回転ガントリー照射装置による治療も開始され、0-360度の角度範囲から任意の方向を選択して照射できるようになり、より良い治療成果が期待されている。 現在放医研では、レーザー駆動イオン加速技術を用いた入射器やシンクロトロンへの超伝導電磁石技術の適用などによって実現される次世代重粒子線治療装置「量子メス」の研究開発を進めている。量子メスでは、複数のイオン種を組み合わせて照射するマルチイオン照射法の確立による難治性がんの治療成績向上や治療期間の短縮などの治療高度化も目指しており、それに関連した研究開発もあわせて進められている。本発表では、最近の研究開発の概要を紹介するとともに、運用の現状について報告を行う。