日本加速器学会とリニアック技術研究会の共催による第5回日本加速器学会年会・第33回リニアック技術研究会が2008年8月6日(水)から8日(金)にかけて東広島市の中央公民館で開催されました。長い歴史を誇るリニアック技術研究会及び本年会の前身である加速器科学研究発表会の時代を含めて、加速器科学の関連分野を網羅した学術会議が広島県を含む中四国地区で開催されるのは初めてのようです。
たまたま開催初日が第63回原爆忌という広島市にとって最大のイベントと重なりましたが、会議を午後のスタートとしたため前もって慰霊祭に参列された学会参加者もおられたようです。内容的には研究発表に加えて、恒例となってきた感のある一般公開講演以外の特別セッションを時間の関係で組むことができませんでしたが、講演テーマとしては国立大学法人で唯一広島大学が所有する放射光源に関連した話題と、原爆放射線やセミパラチンスク・チェルノブイリでの被爆状況の紹介など、広島ならではといえるテーマを考案したつもりです。願わくば、加速器の啓蒙に本企画が貢献していることを企画側で実感できる程度の一般聴衆の参加が実現できればよかったのですが…今後の課題となりました。
今回で第4回目となる日本加速器学会賞では、原田健太郎氏が奨励賞を、末次祐介氏が技術貢献賞を、また馬場斉氏と遠藤元正氏が揃って特別功労賞を受賞されました。そして、原田・末次・馬場の三氏による受賞講演が最終日の午前中にありました。その午後、会議終了後に施設見学会があり、広島大学が誇るふたつのユニークな研究装置、即ち放射光科学研究センターの小型放射光源"HiSOR"と宇宙科学センターの光学赤外線望遠鏡"かなた"を百数十名の参加者に見ていただきました。またその前日、中日の懇親会では、日本の三大酒処のひとつとして有名な"西条"の美酒を味わっていただこうと、予め西条酒造協会の加盟10社より寄贈していただいた十種類の銘酒が飲み比べられるように企画しました。勿論、お酒以外に料理でも質・量の両面から参加者の納得が得られるように実行委員会として配慮したつもりです(ご満足いただけたでしょうか)。
さて、加速器学会の年会も今年で5回を数えるに至りました。第1回日大(船橋)、第2回佐賀LS(鳥栖)、第3回東北大(仙台)、第4回理研(和光)、第5回広島大(東広島)と各地を巡ってきています。詳しくは2008年10月末発行の学会誌5巻3号の本会議報告をお読み頂くとして、傾向としてここ数年は安定期にあり学会として定着期に入っているという印象を得ました。
まず参加者数について、今回は学会への参加者が413名、うち懇親会への出席者が276名となっています。加速器学会では参加者の懇親会への出席比率が高いという会議を切り盛りする実行委員にとって喜ばしいデータが得られています。懇親会には出来るだけ沢山の人に参加していただき大いに歓談し盛り上がってもらえれば幸いです。次に発表件数の推移をみますと、一般公開講演と学会賞受賞講演を含めた口頭発表が85件、ポスター発表が251件で合計336件。一応、トータルで過去最高ですが、第3回あたりからほぼ三百件超で落ち着いています。
以下に、会場となった東広島市中央公民館の使用料を半額に減免してもらうための申請書に記述した本会の概要を再掲します ―自然科学の発展のみならず、がんの診断と治療を始めとする医療応用など実生活にも不可欠の加速器を中心に、その応用分野を含めた広範囲の研究者・技術者が一同に会し、我が国および世界の加速器科学と技術の更なる発展のために、年に一度の意見交換がおこなえる場を設ける。期間中、80数件の口頭発表と240件程度のポスター発表がある。他に、一般市民を対象に2題の公開講座をおこなう。発表終了後、放射光科学研究センターと宇宙科学センターを対象に見学ツアーを実施する― ほぼ事前に予想した通りの内容と規模の年会だったと総括できるのではないでしょうか。
経費に関してひと言。今回は参加者の負担を千円アップさせていただき、参加費5,000円、懇親会費4,000円、計9,000円にさせてもらいました。収支バランスの改善を図りつつ他の学会との整合性を図る第一歩に踏み出したとお考えください。実行委員会としては、近い将来合計10,000円を参加者に負担していただくのが妥当と考えています(本件に関しては、皆さんのご意見をお待ちします)。現在、参加者からの収入(参加費と懇親会費)は全体の36%に過ぎず、収入の過半を協賛していただいている企業展示の出展料で賄っているのが現状です。ここ数年と同じく、今年も34社に協賛していただきました。ここに協賛してくださった各社に対して厚く御礼申し上げます。そして、今後とも引き続き変わらぬサポートをお願いいたします。一方、会員諸兄には、これまでにも増して積極的な参加を期待します。参加すること自体が、年会の運営に貢献していることを認識していただければ幸いです。
最後に、今回の年会・リニアック技術研究会の開催にご尽力くださった組織委員・プログラム委員・実行委員のメンバーと学会事務局の皆様及びアルバイトの学生諸君に厚く御礼申し上げます。
2008年8月11日
実行委員会委員長 堀 利匡