THOS01  企画セッション①  8月1日 テルサホール 15:10-16:10
大電流蓄積リング真空システムの技術的課題 -KEKB加速器での経験-
Technical challenges of vacuum system for high-current storage rings - Experiences at the KEKB accelerator -
 
○末次 祐介(高エネ研)
○Yusuke Suetsugu (KEK)
 
加速器の真空システムは、高エネルギーの荷電粒子ビームが通る/蓄積されるビームパイプに直接関係した、加速器のサブシステムの中で最もビームに近いシステムである。真空システムの役割は、粒子ビームの“通り道を確保”し、そして粒子ビームを“安定に維持”することである。つまり、ビームパイプを超高真空にして残留気体分子との衝突によるビームロスを低減する、ビームパイプ内の余計な電磁場やイオン・電子の影響を軽減してそれらに起因するビーム不安定性を抑制する、等である。ビームに最も近いシステムということは、ビームへの影響が大きいと同時にビームの影響を強く受けやすい、ということでもあり、上記を実現するためには様々な課題を解決していく必要がある。具体的には、シンクロトロン放射光による熱負荷・ガス負荷、光電子放出、ビームに伴う高次電磁波の励起、パルス的壁電流の誘起、機器のインピーダンスやパイプ内に発生した電子やイオンによるビーム不安定性励起、ビームと機器やダスト粒子との衝突、などである。これらの課題は、蓄積ビーム電流が高いほど顕著になり、厳しいものとなる。ここでは、アンペア台の電子・陽電子ビームを蓄積するKEKB、SuperKEKB加速器の真空システムでの具体的事例を引用しつつ、大電流ビーム蓄積リング真空システムの技術的課題とそれらへの対処法を紹介する。