THOA06  ビームダイナミ/レーザー  8月1日 アプローズ 10:30-10:50
マイクロバンチの空間コヒーレント成分抽出によるFELシミュレーションの高速化
Reduction of numerical cost in FEL simulations by retrieving a spatially coherent component of microbunching
 
○田中 隆次(理研放射光センター)
○Takashi Tanaka (RIKEN SPring-8 Center)
 
自由電子レーザー(FEL)シミュレーションにおいては、電子の運動や光との相互作用、さらに光の伝播を記述する一連の方程式を数値計算で解くことによって光の増幅を評価する。一般的なシミュレーションコードでは、多数の電子を適切な初期条件が与えられたマクロ粒子で近似することで計算コスト(メモリや計算時間)の軽減が図られている。一方、同近似に伴うアーティファクト(人為的エラー)はマイクロバンチやFELゲインを過大評価するため、信頼できる計算結果を得るためには十分な数のマクロ粒子が必要となり、結果として計算コストが増大する。上記の問題を克服するため、マイクロバンチの空間プロファイルから実際に増幅に寄与するコヒーレントな成分を抽出し、これを源とするFEL増幅を記述する計算手法を開発した。これにより、従来の手法よりも遥かに少ないマクロ粒子数で数値収束に至ることが確認され、この結果、信頼できる結果を得るための計算時間が1桁から2桁程度短縮可能であることが示された[1]。学会では本手法の概要と、計算例について紹介する。 [1] T. Tanaka, Phys. Rev. Accel. Beams 27, 030703 (2024)