THOA01  真空  8月1日 アプローズ 8:40-9:00
放射光源加速器の真空のための高機能コーティング膜の開発
Development of high performance coating films for vacuum of synchrotron radiation accelerators
 
○金 秀光,谷本 育律,内山 隆司,本田 融(高エネルギー加速器研究機構)
○Xiuguang Jin, Yasunori Tanimoto, Takashi Uchiyama, Tohru Honda (High Energy Accelerator Research Organization)
 
非蒸発ゲッター(NEG)コーティングは、NEG材をチェンバーの内壁にコーティングして、従来のガス源である内壁をポンプに変える技術である。CERNの開発したTiZrV合金は比較的低温で再活性化でき、また低い光刺激脱離(PSD)と電子刺激脱離を有することから、多くの加速器のチェンバーに利用されている。 NEGコーティングには2つの改善すべき課題がある。1つは寿命問題である。NEGは大気開放中に大量の酸素と水分を吸収する。そのため、大気開放を繰り返すと表面が酸素リッチになり、排気性能が低下する。もう一つは抵抗率である。TiZrV膜の抵抗率はCuのそれより2桁も大きく、低エミッタンスのリングでは電子ビームが不安定になる原因である。 我々は、Pdの酸素と水分とは反応しないが、水素とCOは吸着する特性に注目し、Pd/TiZrV膜(Pd表面層を導入したTiZrV)を開発した。Pd/TiZrV膜の排気性能は大気開放の影響を受けないことと、水素の排気速度を向上させることを見つけた。また、Pd/TiZrV膜のPSDはTiZrV膜のそれよりさらに低いことも世界初で発見した。続いて、密なPd膜を開発し、PSDがTiZrV膜より低く、また抵抗率はTiZrVより1桁も低いことも確認した。これらのコーティング膜はPF-HLSへの応用が期待される。