FROT06  加速構造/ハドロン加速器  8月2日 テルサホール 14:30-14:50
加速空洞ブレークダウン電流の観測実験およびPICシミュレーションとの比較
Experimental study of the breakdown current in a normal-conducting accelerating cavity and comparison with PIC simulation
 
○山口 孝明,阿部 哲郎,小林 鉄也(高エネ研)
○Takaaki Yamaguchi, Tetsuo Abe, Tetsuya Kobayashi (KEK)
 
極限のルミノシティ性能を目指す電子陽電子衝突型加速器であるSuperKEKB加速器では現在、Sudden Beam Lossと呼ばれる突発的なビーム損失現象によりビーム電流が制限されている。この現象は一般的なビーム不安定性と異なり、ビーム軌道等に予兆が見られず、さらにビームが蓄積リングを1周する約10 µsの早い時間スケールで大きなビーム損失が観測される。原因は未だに解明されていないが、現状有力な仮説としてfireball仮説が提唱されている。この仮説では、fireballと呼ばれる数十µmサイズの高融点の高温微粒子がビームコリメータの銅表面に衝突し、これが引き金となり放電が発生、蓄積ビームを大きく蹴りビーム損失が発生すると考えられている。Fireball起因の放電現象は元々、509 MHz加速空洞のブレークダウン現象の観測実験[1]で初めて発見された。本研究では空洞ブレークダウン実験を再度実施し、fireball仮説の検証を行った。ビームがコリメータ表面に誘起する電界強度は空洞壁面のそれと同程度(~10 MV/m)であり、空洞内で起こる放電と同規模の放電がコリメータでも発生しうると予測できる。観測実験では放電発生時に空洞内を飛散する電子の電流を測定、同時にParticle-in-Cellシミュレーションを行うことで、fireballによる放電電流を定量的に評価した。本発表では、これまでの実験結果、及びシミュレーション結果の比較検討を行う。 [1] T. Abe et al., PRAB 21, 122002 (2018).