WEOB16  ビームダイナミクス・加速器理論  8月30日 13号館1326教室 17:50-18:10
J-PARC RCSにおけるさらなる大強度化に向けたビーム損失起源の同定と抑制
Identification and compensation of beam loss sources for further beam power ramp-up in J-PARC RCS
 
○小島 邦洸,原田 寛之,サハ プラナブ(原子力機構, J-PARC センター)
○Kunihiro Kojima, Hiroyuki Harada, Pranab Saha (JAEA/J-PARC)
 
大強度陽子加速器において出力を制限する最大の要因はビーム損失に起因する装置の放射化である。そのため、ビーム損失の低減は大強度化を目指す上で重要度の高い課題である。現在、J-PARC加速器の心臓部である3 GeVシンクロトロン (Rapid cycling synchrotron : RCS) では、設計出力1MWの大強度ビームにおいてビーム損失を0.1%程度にまで低減することに成功している。このビーム損失に寄与するのは、主に空間電荷力の影響を受けにくい位相空間内の振幅の大きな粒子である。つまり、動作点近傍のビーム損失起源となる共鳴の同定と補正は安定領域の拡大とビーム損失の低減をもたらし、より一層の大強度化に貢献する。 RCSにおけるビーム損失起源の同定に向け、ビーム重心が水平・進行方向の位相空間内を大振幅で振動するような特殊な入射ビームを用いた実験を実施した。その結果、クロマティシティとシンクロトロン振動で生じるチューンシフトによるビームの2次非構造共鳴(2νx=13)への抵触が大きなビーム損失に繋がることを明らかにした。さらに、既設の補正四極電磁石6台をそれぞれ励磁し、当該共鳴が補正可能であることを実証した。一方、この補正状況において大強度運転時のビーム損失がむしろ増加したことから他の非構造共鳴の励起が示唆されており、関係する共鳴の同時補正を検討している。本発表では、これらの実験結果を報告し、ビーム損失起源とその補正手法について議論する。