THOA15  加速器応用・産業利用  8月31日 13号館1325教室 17:30-17:50
ビーム窓の散乱を利用した数GeV二次陽子利用法の高度化
Advanced secondary GeV protons utilization using scattering at beam window
 
○明午 伸一郎,山口 雄司,岩元 大樹(J-PARC/JAEA)
○Shinichiro Meigo, Yuji Yamaguchi, Hiroki Iwamoto (J-PARC/JAEA)
 
宇宙開発事業において、衛星搭載用の宇宙線センサーの応答測定のため数百MeVからGeV領域の陽子の利用が必要となるが、400 MeV以上のエネルギー領域で供給が可能な加速器施設は世界的に少なく、国内にはJ-PARCが唯一となる。J-PARC加速器施設ではユーザー運転を安定に継続するために、利用者の実験装置を陽子ビームダクト内への設置は困難となる。このため、我々はビームダンプ入口のビーム窓(Al)における散乱陽子を利用した手法を開発した。既にまた、加速器駆動核変換システム等の大強度陽子加速器施設では核内カスケードモデル(INCL)の高度化が重要となる。INCLの改良のためには、最前方方向の放出粒子の二重微分断面積が重要となるが、実験値が殆どないため新たなデータの取得が望まれる。宇宙開発利用の推進およびINCLの高精度化のため、J-PARC 3NBTにおいて400 MeV陽子を用いた二重微分断面積を行った。この結果、陽子スペクトルには弾性散乱の鋭いピークを有する構造となることが明らかになった。 PHITSの計算は、このピークをよく再現するものの、準弾性散乱の寄与を3倍程度過大評価することが明らかになった。この不一致はINCLによるものと考えられ、計算モデルに量子論的分子動力学モデル(QMD)を適用したところ、実験をよく再現することが明らかになった。以上より確信をもって宇宙開発に向けた数GeV領域の陽子利用が可能になり、昨年度末から宇宙線センサーの試験を開始した。