FRSP01  企画セッション②  9月1日 13号館1325/1326教室 9:00-10:00
サイクロトロンによる医療用RIの製造 ~アルファ線放出核種(At-211、Ac-225)を中心に~
Cyclotron production for medically important alpha emitters - 211At and 225Ac
 
○永津 弘太郎(量研・量医研・先進核医学基盤研究部)
○Kotaro Nagatsu (Advanced Nuclear Medicine Sciences, QST)
 
PET・SPECT診断はもとより,放射線治療薬の有効性が数多く報告される昨今,加速器を利用した放射性核種の製造・供給需要が著しく高まっている。α線放出核種は従来,内部被ばく時の危険性にのみ強い関心が集まっていたが,放射線による細胞障害性や影響を医学的に制御・活用する手法が定まった結果,文字通り,毒を以て毒を制するがん治療薬の原料として利用されはじめた。周知のとおり,核医学で利用される放射性核種には高い品質が求められる。製品品質に影響を及ぼす照射条件の最適化と共に,容易かつ高効率な分離精製や短時間での処理,可能な限りの省廃棄物プロセス等の実現を考慮しつつ,我々は211At(EC+α,T1/2=7.2 h)及び225Ac(α,T1/2=10 d)の製造法を確立した。前者はHeイオンをBiに,後者は陽子を226Ra(α,T1/2=1600 y)にそれぞれ照射し,以降,化学的な分離精製を経て治療薬剤の標識に利用される。特に後者で用いる226Raは,入手性に大きな制限がある貴重な試料であり,長寿命の放射性廃棄物にもなることから,繰り返し226Raを利用する再生方法も確立させた。本講演では,PETに代表される診断用の放射性核種の製造・利用が主体であったホットラボに上述する2種類の治療用α線源の利用環境を整え,照射や分離精製といった具体的な製造法開発に関する我々の取組みと結果について報告を行う。