THOP02  学会賞受賞講演  9月3日 講演会場1 18:30-18:50
一台の高周波源で駆動する異種加速空洞の速い立ち上げ方法の開発
Development of a rapid start-up for two different types of accelerating cavity driven by one rf source.
 
○杉村 高志,方 志高,佐藤 将春(高エネルギー加速器研究機構)
○Takashi Sugimura, Zhigao Fang, Masaharu Sato (KEK)
 
いばらき中性子医療研究センターでは、粒子線がん治療法の一つであるホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy, BNCT)の実施を目指し研究開発を行っている。このプロジェクトでは病院設置可能な小型の装置を開発の目標として、RFQ及びDTLを用いて8 MeVの陽子線を作りこれをベリリウム標的に照射して中性子線源とし治療に用いることにしておりiBNCT(いばらきBNCT)方式と呼んでいる。この加速器を含むシステムは医療機器として使用されることから、1時間程度の治療の間安定なビームを供給すること、またインターロックによるビーム停止が発生した場合でもビーム停止時間が無視できる程度に短い間に復旧できることが開発の課題となった。対応としてLLRFシステムを導入しQ値もビームローディングも異なる2つの空洞を1つの高周波源で安定に励振できるようにし、空洞の発熱によるRF特性の非線形的な振る舞いを抑制するべく、ΔT=10℃で設計された空洞冷却系を見直し、空洞の水温制御に専用のものを開発するなどを行い、空洞の安定性を向上させた。さらにLLRFの励振周波数をDTL空洞の共振周波数にあわせ、DTLの可動チューナーをRFQの共振周波数に合わせる周波数変調立ち上げモードを取り入れた。このモードにより、空洞電力が0から定格まで1分程度で立ち上げることができるようになった。これにより、空洞反射増大によりインターロックが発報した際の速やかなビーム復帰が可能となった。