THOI11 光源加速器 8月1日 国際科学イノベーション棟5階 ホール 16:20-16:40 |
アンジュレータ位相誤差の普遍的表式と系統的不整磁場への適用 |
Universal representation of undulator phase errors and its application to systematic field errors |
○田中 隆次(理研放射光センター) |
○Takashi Tanaka (RIKEN SPring-8 Center) |
不整磁場によるアンジュレータ光強度の劣化は、位相誤差と呼ばれる物理量で評価できることが知られている。位相誤差は、アンジュレータ磁場分布から複雑な数値計算無しで求められるため、磁場性能に課す条件として標準的に用いられている。この条件は高調波の次数に比例して厳しくなり、例えば1次光の強度劣化を10%に抑制する位相誤差の上限が18°である一方、15次光では1.2°となり、特に後者の仕様を満たすには、アンジュレータの設計や調整に多大な労力が必要である。一方で、有限エミッタンスやエネルギー幅等の影響を考慮した実用条件では、これらの仕様は大幅に緩和されることが指摘されている。言い換えると、従来の定義による位相誤差は不整磁場の影響を(実用条件下では)過大評価する。 上記の問題を解決するために我々は、実用条件下でも適用可能な位相誤差の普遍的表式を導出し*、様々な条件においてその妥当性を確認した。さらにこれを利用して、機械的誤差によって生ずる系統的な不整磁場の影響を解析した。この結果、エネルギー幅0.1%程度の一般的な蓄積リング(低エミッタンスリングを含む)では、上記条件(15次光の強度劣化10%以下)を満たす位相誤差は6°程度と大幅に緩和されることがわかった。この結果は、高次光の積極的な利用が想定されるアンジュレータの仕様策定に大幅な修正が必要であることを示唆する。 *T. Tanaka, PRAB21, 110704 (2018) |