THOH13  ハドロン加速器①  8月1日 百周年時計台記念館 百周年記念ホール 17:00-17:20
核破砕中性子源のための非線形光学によるビーム収束技術
Nonlinear beam focus for a spallation neutron source
 
○明午 伸一郎(J-PARC/JAEA)
○Shin-ichiro Meigo (J-PARC/JAEA)
 
J-PARCセンター核破砕中性子源(MLF)における水銀標的では、陽子ビーム(3 GeV, 1 MW)の入射に伴う衝撃波により、著しいピッティング損傷を生じており重大な問題となる。この損傷はビームのピーク電流密度の4乗に比例するため、安定した運転のためにはピーク電留密度の減少が重要な課題となる。通常用いられる線形光学では、ビーム形状はガウス分布となり、標的上のビーム拡大によりピーク密度減少が行えるが、標的周辺機器の発熱の増大が問題となる。この問題の解決のため、八極電磁石を用いた非線形ビーム収束システムの開発を行った。ビームの非線形光学による条件を明確にするために、ビームエミッタンスとβ関数との積の平方根で一般化した座標系においてトラッキングを行った。β関数とエミッタンスで規格化した八極磁場強度(K8*)と、八極磁石から標的までの位相進行差(φ)としパラメータを一般化した。K8*>3とすることにより、ビーム形状をほぼ平坦となることが示された。ただし、八極電磁石から標的間の位相(ψ)において、tanψ<0となる状態が存在する場合には、非線形発散によるビーム損失が顕著になることが示された。MLFの場合では非線形発散状態が存在するため、ビーム損失を抑えた状態でピーク電流密度を抑える解を探索した結果、K8*=1、cot φ=3とすることでほぼ最適な解を得ることがわかり、この成果により、MLFでは500 kWの大強度運転を安定に行う事が可能となった。