第6回(2009年度)加速器学会賞受賞者決まる。
2010年6月5日開催の学会賞選考委員会における選考をもとに、評議員会で審議した結果、以下のとおり決定した。 |
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受賞者の氏名(敬称略)
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受賞者の氏名(所属)、研究課題等、推薦理由は、以下のとおりである。 |
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奨 励 賞 | ||||||||||||||||||
氏名:黒田 隆之助 所属:産業技術総合研究所 業績:小型高輝度レーザーコンプトン散乱X線源の開発と医用イメージングへの応用に関する研究 <推薦理由> 黒田隆之助氏は、実験室規模の小型Sバンド線形加速器とTi:Sapphireレーザーをベースとして、レーザーコンプトン散乱準単色X線発生装置の開発研究を精力的に進め、その高コントラスト・高精細・低被爆医用イメージングへの適用可能性を実証することに成功した。特に加速器の電子源として、Cs-Teを陰極材料とするレーザーフォトカソードRF電子銃のQ値の向上や暗電流の低減を図り、その高輝度化に成功した。 同時にマルチバンチ電子ビーム生成のための小型全固体レーザーシステムの開発や、コンプトン散乱用高出力Ti:Sapphireレーザーの高度化など、レーザーコンプトン散乱X線源の弱点とも言える光子収量を増やすための要素技術開発で多大な功績を残している。また将来の医用イメージングへの応用を目指した生体イメージングの様々なデータを取得して、この分野の世界の研究を先導している。さらに、その短パルス性を生かし、ピコ秒パルスX線によるシングルショットイメージングにも成功した。同氏は独自の手法によりマルチパルスX線生成にも成功しており、現在、実用的な医用イメージングシステムの実現を目指してX線の更なる高収量化研究を精力的に進めている。 このように、世界で最も実験実績のある電子線形加速器ベース・コンプトン散乱準単色X線源の若き科学技術者である。運転に関しても利用研究支援にしても、中心になって貢献・活躍している。PAC等の大規模の国際会議でも招待・一般講演も多く、ICFA Workshopでも最優秀口頭発表賞を受賞している。本賞に十分に値する人物と業績と考える。さらに国際的メジャーな賞を狙える人材と判断されるので、本賞がさらなる発展のための励みとなることを期待するものである。以上の理由により、黒田隆之助氏を加速器学会奨励賞に推薦する。 |
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特 別 功 労 賞 | ||||||||||||||||||
氏名:千田 勝久 所属:元・高エネルギー加速器研究機構 業績:重イオン加速器における超高真空技術の確立 <推薦理由> 千田氏は1956年3月、東大・原子核研究所に技官として入所し、同位体分離室において真空技術の基本を学ぶと同時に、貴重な多数の分離同位体ターゲットを共同研究者に提供してきた。その後、TARNⅠの建設に伴い、1976年、溝渕教授の率いる超高真空グループへ参加した。 TARNⅠ、Ⅱの建設においては、リブ付き薄肉SUS加速管、大型セラミック加速管等の開発、加速管の直接通電によるプレヒーティング技術の開発、及び2~3×10-11Torrの超高真空の達成に多大な貢献をなした。このような超高真空の達成と維持なくして、TARNⅠでの確率ビーム冷却、TARNⅡでの電子ビーム冷却の成功は成し得なかった。その後、KEKへの移動に伴い、田邊教授とともに静電生体分子イオン蓄積リング(静電リング)の建設を行った。静電リングは、たんぱく質などの非常に重いイオンを蓄積するという要請から超高真空が必須であり、ここでも千田氏の技術が大いに活かされている。また、千田氏等の確立した超高真空技術は、放医研・HIMACのシンクロトロンにも活かされ、炭素線によるがん治療は勿論、Xeイオンなどの全裸ではないイオンの加速を可能とし、共同利用実験に大いに貢献している。 このように、千田氏は長年にわたり、地道に、そして着実に超高真空技術開発を行い、加速器科学のみならず、原子核研究、生体分子学研究、重イオンがん治療に多大な貢献をなした。 |
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