第2回(2005年度)加速器学会賞受賞者決まる。
2006年4月22日開催の学会賞選考委員会における選考をもとに、評議員会で審議した結果、以下のとおり決定した。 |
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受賞者の氏名(敬称略)
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受賞者の氏名(所属)、研究課題等、推薦理由は、以下のとおりである。 [A] 奨励賞(1名) 氏名:Fadil Hicham 所属:マックスプランク原子核研究所博士研究員 業績:ホット・イオン・ビームの電子ビーム冷却の実証 推薦理由: 氏はドイツハイデルベルグのマックスプランク原子核研究所のイオン蓄積・冷却リングTSRを用いて、運動量の拡がりの大きなホットイオンビームの冷却効率がイオンビームと電子ビームの相対速度の掃引により増大できることを初めて実験により実証し、その結果をNucl. Instr. & Meth. A517 (2004)pp1-8に公表し、博士(理学)の学位を取得している。さらに京大・化研のイオン蓄積・冷却リングS-LSR用に自らが、設計・製作し、計算機シミュレーションコード -coolを駆使して調整した電子ビーム冷却装置を用いて、運動量広がりの大きな陽子について、相対速度の掃引による冷却時間の低減に関する定量的な測定を行い、大きな運動量拡がりを有するイオンビームの電子ビーム冷却過程を定量的に明らかにした。 以上の理由により、同氏の「ホットイオンビームの電子ビーム冷却の実証」に関する研究は、第2回加速器学会奨励賞を授与するに値すると判断する。 [B] 技術貢献賞(1名) 氏名:上田 徹 所属:東京大学工学系研究科原子力専攻 業績:極短電子リニアックの安定運転技術 推薦理由: 氏は、1977年以来約30年間一貫して、ピコ・フェムト秒Sバンド電子リニアック の要素技術の向上、安定運転、共同利用運営に貢献してきた。氏が主導的役割を果たし た要素技術は、まず安定マイクロ波発生・同期システムである。電子リニアックとフェ ムト秒レーザーとの同期運転において、電子・レーザーパルスのジッターの除去にも、 ストリークカメラやサンプリングオシロなど最新鋭の様々な計測手法により、奇数比の 周波数増倍器・分周器に、機器の信頼性がなく、数ピコ秒の主なジッター源になってい ることを突き止めた。さらに長期的ドリフトの除去に関して、0.01℃精度の加速管水冷 システムと1℃精度のライナック室空調導入を提案し、実証した。これら業績は、ピコ 秒電子シングルバンチ生成と放射線化学利用、フェムト秒電子シングルバンチの生成と 計測、日本発のレーザーフォトカソード高周波電子銃の運転と放射線化学応用(高エネ 研、原研、住友重機械、JASRIと共同)など極短電子リニアック技術と研究成果に多大 に貢献した。またリニアック技術研究会・日本加速器学会にほぼ毎年技術発表し、技術 専門職員の技術発信の中心的役割を果たしし続けている。よって本学会技術貢献賞に適 うと判断できる。 [C] 特別功労賞(1名) 氏名:高見 清 所属:アドバンストテクノロジー株式会社 (元)京都大学原子炉実験所 業績:長年にわたる電子加速器の性能向上と技術開発 推薦理由: 高見清氏は、1965年京都大学原子炉実験所に設置された小型電子リニアックの運転、維持に40年近く携わり、全国共同利用実験に貢献した。この間、少ない予算や人手の中で、手作りモジュレータによるエネルギー増強やビームの安定化など、加速器の性能向上につとめ、維持費の半減や打切りの困難にもかかわらず、共同利用時間を延ばしてきた。また、「遊び心」を大切にし、高速グリッドパルサーなどのすぐれた技術開発を行なった功績により、「特別功労賞」に推薦する。 |