第1回(2004年度)加速器学会賞受賞者決まる。 2005年4月30日開催の学会賞選考委員会における選考をもとに、評議員会で審議した結果、以下のとおり決定した。 |
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受賞者の氏名(敬称略)
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受賞者の氏名(所属)、研究課題等、推薦理由は、以下のとおりである。 [A] 奨励賞(3名) A-1. 氏名:宮島 司(高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所・技師補) 研究課題等:非線形共鳴近傍でのビームダイナミックスに関する研究 推薦理由: 蓄積リング中での非線形ベータトロン振動の位相空間での振舞いを、簡潔な手段で直接測定し、Poincare Map として明示した。特に垂直方向の、六極磁場成分による3次共鳴及び八極磁場成分による4次共鳴については、共鳴の詳細なパラメータのみならずそれらの発生源も明らかにした。氏がその有効性を実証したこの測定と解析法は、非線形成分の寄与が無視できない、挿入光源を有する電子蓄積リングや、長時間蓄積が不可欠なイオン蓄積リングなどの、高性能化において強力な役割を果たすことが期待される。 A-2. 氏名:古川卓司(放射線医学総合研究所博士号取得若手研究員) 研究課題等:がん治療用シンクロトロンでのRF-KO遅い取り出し法によるビーム制御に関する研究 推薦理由: 重イオンシンクロトロンHIMACにおける遅いビーム取り出しに関して、RF-knockout法を三次共鳴と併用するのに加えて、有限のクロマティシティーの条件でシンクロトロン振動を介したチューン変動によるセパラトリックスの収縮・拡大を活用し、取り出しビームのON/OFFを高速で行う手法を開発し、ビーム遮断時間の短縮を実現した。この手法は取り出しビームスピルの改善及びサイズの制御に対しても有用であり、HIMACにおける粒子線がん治療に日常的に実用化されており、照射野形成の信頼性・高速性を高める上で多大の貢献を果たしている。 A-3. 氏名:細貝知直(東京大学大学院工学系研究科付属原子力工学研究施設助手) 研究課題等:レーザープレパルス効果の発見、衝撃波制御型音速ジェット標的の発明、Z放電プラズマ光導波路の発明 推薦理由: TWレーザー1パルスでプラズマからの電子入射と加速を行える自己入射方式レーザープラズマカソードを実証した。電子入射のためのプリパルスによるプラズマ密度勾配の達成をプラズマ発光分析で確かめた。それに必要なベース技術である密度一様超音波ガスジェットも発明した。安定追加速のためのキャピラリ放電プラズマチャンネルも実証し、近く世界で初めて合体させる。レーザープラズマカソードに関する実験物理の若手のリーダー格としての活躍が目覚しい。 [B] 技術貢献賞(1名) 氏名:橋本義徳(高エネルギー加速器研究機構加速器研究施設・技師) 研究課題等:酸素分子ガスシートビームプロファイルモニターの開発 推薦理由: これまで困難と考えられていた重イオンシンクロトロンでの2次元ビームプロファイルの高速・リアルタイム・非破壊測定をガスターゲットの周回ビームによる電離を応用したモニターにより実現した。 このモニターの製作にあたっては、低温・高密度ガスシートターゲット生成のためのノズル系の最適化、リング真空度への影響を抑えるためのガス導入のパルス化、ターゲット密度をより高めるための磁気モーメントを持つ酸素分子ガスの磁場による収束、シングルバンチ測定を実現するための極めて発光減衰時間の短いスクリーンの採用など、課題を解決するための様々な独創的な開発が行われた。 この結果、放射線医学研究所の重イオンシンクロトロン(HIMAC)において、100nsec以下の測定時間で、加速中のビーム形状の変化を測定することに成功した。このような高速・非破壊モニターの実現は、すでに共鳴現象によるビームサイズ増大のメカニズムの解明など、加速器物理・工学への多大な寄与がなされており、今後も加速器で起こる様々な現象の解明、加速器の安定な運転に大きな貢献が期待できる。 [C] 特別功労賞(1名) 氏名:飯野 陽弼(柏菱(株)) 研究課題等:線形加速器の生産技術に関する功績 推薦理由: わが国における電子および陽子リニアックの生産技術に関するパイオニアであると同時に、長年、企業の加速器グループをリードし、日本企業の先端的工業技術を駆使して、電子及び陽子リニアック加速空洞の独創的な量産技術や世界に誇る超伝導加速空洞の生産技術の開発を行った。これらを通して、わが国の加速器科学の発展に多大の貢献をした。 |