TUP097  ビームダイナミクス・加速器理論  8月9日 コンベンションホール 13:10 - 15:10
SPring-8蓄積リングのオフモーメンタム粒子の運動とモーメンタムアクセプタンスについて
Off-Momentum Particle Motion and Momentum Acceptance at the SPring-8 Storage Ring
 
○高雄 勝,早乙女 光一,下崎 義人((公財)高輝度光科学研究センター)
○Masaru Takao, Koichi Soutome, Yoshito Shimosaki (JASRI)
 
高輝度放射光リングなど低エミッタンス電子蓄積リングでは、バンチ内電子電子散乱即ちTouschek散乱がビーム寿命に対して支配的な影響を与える。元来、Touschek散乱では衝突によりエネルギー交換した電子がRFバケットから溢れて失われるのであるが、オフモーメンタム粒子にとってはディスパージョンが中心軌道であるため、これを中心にモーメンタム偏差に応じた振幅で振動するので、モーメンタムアクセプタンスは横方向の力学によっても制限を受ける。 SPring-8蓄積リングは、44 double bend unit cellと30 mの長直線部4箇所からなり、蓄積リングの安定性は長直線部(上下流のマッチングセルを含む)のオンモーメンタム粒子に対する位相整合とオフモーメンタム粒子に対する局所クロマティシティ補正で確保されている。後者は、マッチングセルの収束6極電磁石を調整することで行われるが、これによりモーメンタムアクセプタンスはRFバケットで決まるアクセプタンスまで広げられている。Touschek散乱(オフモーメンタム)粒子の運動のトラッキング解析により、モーメンタム偏差が6極電磁石で決まる閾値を超えると運動はstochasticな様相を示すようになり、振動振幅は増幅してビーム損失に至るなど、アクセプタンスの境界領域ではstochastic現象が重要な役割を果たしていることが理解できる。