SAP004  ポスターセッション1  8月3日 豊田講堂1階アトリウム 13:00 - 15:00
宇宙用太陽電池の低エネルギー電子線照射実験
Irradiation experiments for space solar cells with low-energy electron beams
 
○奥野 泰希,奥田 修一,小嶋 崇夫,岡 喬(阪府大),川北 史朗,今泉 充,艸分 宏昌(宇宙航空研究開発機構)
○Yasuki Okuno, Shuichi Okuda, Takao Kojima, Takashi Oka (OPU.), Shirou Kawakita, Mitsuru Imaizumi, Hiroaki Kusawake (JAXA)
 
宇宙用太陽電池として宇宙環境における放射線耐性が高い化合物太陽電池が用いられる。この太陽電池の放射線照射特性に関して多くの研究が行われており、陽子照射やエネルギー1 MeV以上の電子線照射によって太陽電池内に含まれる原子がはじき出され欠陥が生成することによって太陽電池の性能が劣化することが先行研究で明らかになっている。しかしながら、欠陥による太陽電池の性能劣化のメカニズムはまだ詳しく解明されていない。本研究では、欠陥する元素を選択的に生成することができる1MeV以下の電子線で太陽電池用化合物半導体結晶中に特定の欠陥を生成し、発電効率の低下に対する欠損の影響を調べた。照射試験装置として、大阪府立大学放射線研究センターの600 keVコッククロフト・ウォルトン電子線加速器を用いた。試料を真空中に置き液体窒素冷却が可能なシステムを開発し、宇宙環境を模した照射条件へと最適化した。このような条件を満たす加速器システムは、世界でも画期的なものである。250keVの電子線の照射試験を行った結果、電子線照射による特性の向上などの現象が新たに認められた。また電子ビームを磁場で偏向しない場合、理論値よりも太陽電池の劣化が大きくなった。これはビーム内にわずかに含まれるイオンによる影響と考えられる。また照射に伴う半導体表面における不純物の付着が観測された。現在これらの現象の原因を解明し、加速器の改良方法について検討している。