MOOTA2  学会賞受賞講演  8月5日 豊田講堂ホール 17:00 - 17:20
高速重イオンビームのためのガス荷電変換装置の開発
Development of gas charge stripper for intense heavy ion beam
 
○今尾 浩士,奥野 広樹,久保木 浩功(理化学研究所)
○Hiroshi Imao, Hiroki Okuno, Hironori Kuboki (RIKEN)
 
我々のグループでは大強度重元素イオンビーム加速の新要素技術として、厚いガスを用いた荷電ストリッパーの開発を行って来た。RIBFでは11MeV/uと51MeV/uで2回の荷電変換を行っているが、従来用いてきた固体荷電変換膜の耐久性が大強度化の原理的ボトルネックであり、これは米国FRIB 計画等を含む、次世代RI生成施設の共通問題でもあった。ガスは耐久性、安定性等に優れているが、平衡電荷が固体に比べて低いという弱点もある。開発当初の命題は「最適ガス種は何か?」という事であり、入射イオン種、エネルギー、必要価数、ビーム品質、蓄積性、取扱性等の様々な要素で決まる。我々は実際にウラン等の高速ビームを用い、いくつかのガスの基礎データを取得し、低い平衡電荷を補える「低原子数ガス」の有用性をいち早く見出した。その真空中への窓なし蓄積が次なる命題であったが、大規模差動排気技術におけるいくつかのブレークスルーがあり、蓄積可能なガス量が飛 躍的に増大した。 2012年にはウランビーム加速の為の11MeV/u「ヘリウムガスストリッパー」の実装に世界で初めて成功し、その耐久性、安定性が実証され、ビームの大強 度化に大きな貢献をしている。更に2013年にはXeビーム加速の為の 51 MeV/u「空気ストリッパー」が実装され、初めてガスのみでの2回荷電変換も実現された。講演では開発現状と将来についても述べる。